(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発酵飼料の製造方法)
本発明の発酵飼料の製造方法は、容器に飼料原料を収容して発酵させる発酵飼料の製造方法であって、前記飼料原料の露出表面が、前記露出表面に対向する、前記容器の開口位置又は内壁よりも前記容器の内側に位置することを特徴とする。
【0011】
−容器−
前記容器としては、前記飼料原料を収容できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂製容器、金属製容器、袋状容器、ラップサイロ(幅広のラップで巻き上げて成型、梱包したもの;例えば、ロールベールサイロ)、バンカーサイロなどが挙げられる。これらの中でも、樹脂製容器、金属製容器、袋状容器が好ましく、前記飼料原料を密閉封入できる点で、密閉可能な樹脂製容器、金属製容器がより好ましい。
前記樹脂製容器としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂製の自立型の容器(例えば、ドラム型容器、コンテナ、ボトル型容器)などが挙げられる。
前記金属製容器としては、例えば、ステンレス製、アルミ製等の金属製の自立型の容器(例えば、ドラム型容器、コンテナ、ボトル型容器)などが挙げられる。
前記袋状容器としては、例えば、フレキシブルコンテナバック、チューブバッグ、ビニール袋、ラミネート袋などが挙げられる。
前記容器の容量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1L〜20,000Lが好ましく、1L〜2,000Lがより好ましく、1L〜200Lが特に好ましい。
【0012】
−飼料原料−
前記飼料原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、穀物、牧草などが挙げられる。また、前記飼料原料としては、各種飼料原料を混合して発酵調製する発酵TMR(完全混合飼料:Total Mixed Ration)に適用してもよい。
前記穀物としては、例えば、米(例えば、籾米、玄米、精米、古米、飼料用米等)、トウモロコシなどが挙げられる。
前記牧草としては、例えば、イネ科牧草(例えば、イタリアンライグラス、トウモロコシ、チモシー等);マメ科牧草(例えば、アルファルファ、クローバー等)などが挙げられる。
前記発酵TMRの原料としては、前述の穀物等の濃厚飼料;牧草類等の乾草及びサイレージ;各種食品製造副産物などが挙げられる。
【0013】
前記容器に前記飼料原料を収容する方法としては、前記飼料原料の露出表面が、前記露出表面に対向する、前記容器の開口位置又は内壁よりも前記容器の内側に位置するよう入れる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、「内側に位置する」とは、前記飼料原料の露出表面と、前記露出表面に対向する、前記容器の開口位置又は内壁との間に空間が存在する(空間を設ける)ことを意味する。
【0014】
前記容器に前記飼料原料を収容する方法としては、例えば、前記飼料原料を前記容器の上部に空間を設けて、圧縮して入れる方法;前記飼料原料を揺らす等により前記飼料原料を自身の重さで均して、前記容器の上部に空間を設けて入れる方法などが挙げられる。
なお、従来の発酵乳酸菌を添加し、水分量を調整した飼料の製造方法においては、容器内に残存する酸素を少なくするために、容器内に空間を設けずに、飼料原料を詰込み、圧縮する方法が行われている。また、前記方法に加え、更に脱気を行い、前記容器内の残存酸素を更に低減させる方法が行われている。しかし、本発明の発酵飼料の製造方法によれば、前記飼料原料の露出表面が、前記露出表面に対向する、前記容器の開口位置又は内壁よりも前記容器の内側に位置するものであれば、前記飼料原料を圧縮してもよいが圧縮しなくてもよく、また、脱気してもよいが脱気しなくてもよい。
圧縮乃至脱気を省くことが可能となることにより、収容作業の軽減を図ることができる。また、前記容器に過度な内圧がかかることがなく、容器の破損や開口部の変形を低減することができる。その結果、容器の破損や開口部の変形による気密性の低下に起因する発酵飼料の品質劣化やかびの発生を防ぐことができ、安定した発酵飼料の製造を行うことができる。
【0015】
前記容器に収容する前記飼料原料の体積(以下、「充填率」ということがある)としては、前記飼料原料の露出表面が、前記露出表面に対向する、前記容器の開口位置又は内壁よりも前記容器の内側に位置するような体積であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、容器の容量に対して、15体積%〜99体積%が好ましく、30体積%〜99体積%がより好ましく、50体積%〜99体積%が特に好ましく、70体積%〜99体積%が最も好ましい。
前記充填率が、15体積%未満であると、発酵品質が従来法と同等となることがあり、容器容量に対する発酵飼料の生産性が低い点で好ましくない。前記充填率が、99体積%超であると、空間を設けた効果が得られないことがあり、容器の開口部付近にかびが発生することがある。一方、前記充填率が、15体積%〜99体積%であると、容器の開口部付近のかび発生を効果的に抑制することができ、発酵品質が向上及び安定化する点で有利である。前記充填率が30体積%〜99体積%であると、さらに、容器内での発酵の均一性が向上した発酵飼料を製造できる点で有利である。
【0016】
前記容器の容量(L)×充填率(%)あたりの飼料原料の質量(g)、即ち、飼料原料の密度(g/L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、圧縮して収容する従来法を100%とした場合、約100%(同等)であってもよいが、100%未満とすることができる。前記飼料原料が穀物の場合、従来法に対する前記密度の割合としては、20%〜100%であってもよい。また、前記飼料原料が牧草の場合、従来法に対する前記密度の割合としては、20%〜100%であってもよい。
なお、従来法における密度としては、例えば、水分量を30質量%に調整した破砕籾米(穀物)の場合は約584g/Lであり、水分量を68質量%に調整した飼料イネ(牧草)の場合は約193g/Lである。
【0017】
前記容器の開口位置又は内壁と前記飼料原料の露出表面との距離dとしては、前記飼料原料の露出表面が、前記露出表面に対向する、前記容器の開口位置又は内壁よりも前記容器の内側に位置するような距離であれば、特に制限はなく、目的及び用いる容器のサイズに応じて適宜選択することができるが、その下限値としては、0.1cm以上が好ましく、0.5cm以上がより好ましく、1cm以上が特に好ましい。また、数値範囲としては、用いる容器のサイズによるが、高さ100cmの容器であれば、0.1cm〜80cmが好ましく、0.5cm〜50cmがより好ましく、1cm〜30cmが特に好ましい。
ここで、前記距離d(cm)とは、前記露出表面に対向する、容器の開口位置又は内壁と、前記飼料原料の前記露出表面との最短距離を意味する。
前記距離dが、0.1cm未満であると、空間を設けた効果が得られないことがあり、容器の開口部付近にかびが発生することがある。一方、前記距離dが、0.1cm以上であると、容器の開口部付近のかび発生を効果的に抑制することができ、発酵品質が向上し、容器内での発酵の均一性が向上した発酵飼料を製造できる点で有利である。
【0018】
前記飼料原料の露出表面の面積S(cm
2)としては、特に制限はなく、用いる容器の種類や目的に応じて適宜選択することができるが、10cm
2〜1.0×10
7cm
2が好ましく、50cm
2〜1.2×10
5cm
2がより好ましく、50cm
2〜1.0×10
4cm
2が特に好ましい。
前記容器がドラム型容器の場合、前記面積S(cm
2)としては、100cm
2〜100,000cm
2が好ましく、500cm
2〜10,000cm
2がより好ましく、600cm
2〜6,000cm
2が特に好ましい。
前記容器が袋状容器の場合、前記面積S(cm
2)としては、100cm
2〜100,000cm
2が好ましく、500cm
2〜10,000cm
2がより好ましく、600cm
2〜6,000cm
2が特に好ましい。
ここで、前記面積S(cm
2)とは、前記露出表面が水平かつ平面(略平面)である場合、前記露出表面で切断したときの、前記容器内部の断面積を意味する。また、前記露出表面が水平かつ平面(略平面)ではない場合、前記面積S(cm
2)とは、前記露出表面のd方向における平均高さであり、かつd方向に対して垂直な平面で切断したときの、前記容器内部の断面積を意味する。
【0019】
以下に、各種容器を用いた本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
[ボトル型容器を用いた実施形態]
図1及び2は、前記容器が、前記樹脂製容器、前記金属製容器などのフタ付きのボトル型容器である場合の実施形態を説明するための図である。
図1及び2は、それぞれ本発明の発酵飼料の製造方法におけるボトル型容器を用いた実施形態の一例を示す概略断面図及び概略斜視図である。なお、説明のため、
図2では、半透明のボトル型容器を示す。
図1及び2に示すボトル型の容器10は、開口部12を有する本体部分11と、フタ部分14とからなり、乳酸菌を添加し、水分量を調整した飼料原料15を入れてフタ部分14を閉めることにより、飼料原料15を収容する。飼料原料15の露出表面16が、露出表面16に対向する容器10の開口位置13よりも容器10の内側に位置する。
【0020】
ここで、前記距離d(cm)とは、露出表面16に対向する容器の開口位置13と、飼料原料15の露出表面16との最短距離を意味し、具体的には、開口位置13と、露出表面16における最も開口位置13に近い部位(符号17)との距離に相当する。
また、前記面積S(cm
2)とは、露出表面16が水平かつ平面(略平面)である場合、露出表面16で切断したときの、容器内部の断面積を意味する。また、露出表面16が水平かつ平面(略平面)ではない場合、前記面積S(cm
2)とは、露出表面16のd方向における平均高さであり、かつd方向に対して垂直な平面(A−A’断面)で切断したときの、容器内部の断面積を意味する。
【0021】
[ドラム型容器を用いた実施形態]
図3及び4は、前記容器が、前記樹脂製容器、前記金属製容器などのフタ付きのドラム型容器である場合の実施形態を説明するための図である。
図3及び4は、それぞれ本発明の発酵飼料の製造方法におけるドラム型容器を用いた実施形態の一例を示す概略断面図及び概略斜視図である。なお、説明のため、
図4では、半透明のドラム型容器を示す。
図3及び4に示すドラム型の容器20は、開口部22を有する本体部分21と、フタ部分24とからなり、乳酸菌を添加し、水分量を調整した飼料原料25を入れてフタ部分24を閉めることにより、飼料原料25を収容する。飼料原料25の露出表面26が、露出表面26に対向する容器20の開口位置23よりも容器20の内側に位置する。
【0022】
ここで、前記距離d(cm)とは、露出表面26に対向する容器の開口位置23と、飼料原料25の露出表面26との最短距離を意味し、具体的には、開口位置23と、露出表面26における最も開口位置23に近い部位(符号27)との距離に相当する。
また、前記面積S(cm
2)とは、露出表面26が水平かつ平面(略平面)である場合、露出表面26で切断したときの、容器内部の断面積を意味する。また、露出表面26が水平かつ平面(略平面)ではない場合、前記面積S(cm
2)とは、露出表面26のd方向における平均高さであり、かつd方向に対して垂直な平面(B−B’断面)で切断したときの、容器内部の断面積を意味する。
【0023】
[袋状容器を用いた実施形態]
図5は、前記容器が、前記袋状容器である場合の実施形態を説明するための図である。
図5は、本発明の発酵飼料の製造方法における袋状容器を用いた実施形態の一例を示す概略断面図である。
図5に示す袋状の容器30は、図示しない開口部を有し、乳酸菌を添加し、水分量を調整した飼料原料35を入れて開口部を閉じることにより、飼料原料35を収容する。飼料原料35の露出表面36が、露出表面36に対向する容器30の内壁38の位置(符号33)よりも容器30の内側に位置する。
【0024】
ここで、前記距離d(cm)とは、露出表面36に対向する内壁38と、飼料原料35の露出表面36との最短距離を意味し、具体的には、内壁38(符号33)と、露出表面36における最も内壁38に近い部位(符号37)との距離に相当する。
また、前記面積S(cm
2)とは、露出表面36が水平かつ平面(略平面)である場合、露出表面36で切断したときの、容器内部の断面積を意味する。また、露出表面36が水平かつ平面(略平面)ではない場合、前記面積S(cm
2)とは、露出表面36のd方向における平均高さであり、かつd方向に対して垂直な平面(C−C’断面)で切断したときの、容器内部の断面積を意味する。
【0025】
[ラップサイロを用いた実施形態]
図6A〜
図6Cは、前記容器が、前記ラップサイロである場合の実施形態の一例を説明するための図である。この実施形態は、円柱状の飼料原料の成形体における底面の片方にスペーサ49を設置した形態である。
図6A及び
図6Bは、それぞれ本発明の発酵飼料の製造方法におけるラップサイロを用いた実施形態の一例を示す概略斜視図及び概略断面図である。
図6Cは、
図6Aの実施形態において、ラップで被覆する前の状態を示す概略斜視図である。
図6A及び
図6Bに示すラップサイロの容器40は、被覆資材であるラップ41からなり、乳酸菌を添加し、水分量を調整した飼料原料45の成形体(例えば円柱状)の少なくとも一部の表面(底面の片方)上にスペーサ49を設置し(
図6C参照)、前記成形体及びスペーサ49の外周を隙間がないように巻き上げて被覆したものである。これにより、飼料原料45を収容する。飼料原料45の露出表面46は、スペーサ49に対向する飼料原料45の表面(この場合、底面の片方)に相当し、飼料原料45の露出表面46が、露出表面46に対向するラップサイロ40の内壁48の位置(符号43)よりもラップサイロ40の内側に位置する。
なお、従来のラップサイロは、スペーサを設けることなく、前記成形体の周りに空間ができないようラップを巻き上げて被覆したものである。
【0026】
ここで、前記距離d(cm)とは、露出表面46に対向する内壁48と、飼料原料45の露出表面46との最短距離を意味し、具体的には、内壁48(符号43)と、露出表面46における最も内壁48に近い部位(符号47)との距離に相当する。また、前記距離dは、スペーサ49の厚みに相当する。
また、前記面積S(cm
2)とは、飼料原料45の露出表面46の面積であり、言い換えると、スペーサ49に対向する飼料原料45の表面(この場合、底面の片方)の面積である。前記面積Sは、飼料原料45に対向するスペーサ49の面積に相当する。
【0027】
図7A〜
図7Cは、前記容器が、前記ラップサイロである場合の実施形態の他の例を説明するための図である。他の実施形態であるラップサイロ50は、円柱状の成形体における側面の全面にスペーサ59を設置した形態である。
図7A及び
図7Bは、それぞれ本発明の発酵飼料の製造方法におけるラップサイロを用いた実施形態の他の例を示す概略斜視図及び概略断面図である。
図7Cは、
図7Aの実施形態において、ラップで被覆する前の状態を示す概略斜視図である。
図7A及び
図7Bに示すラップサイロの容器50は、被覆資材であるラップ51からなり、乳酸菌を添加し、水分量を調整した飼料原料55の成形体(例えば円柱状)の少なくとも一部の表面(側面の全面)上にスペーサ59を設置し(
図7C参照)、前記成形体及びスペーサ59の外周を隙間がないように巻き上げて被覆したものである。これにより、飼料原料55を収容する。飼料原料55の露出表面56は、スペーサ59に対向する飼料原料55の表面(この場合、側面の全面)に相当し、飼料原料55の露出表面56が、露出表面56に対向するラップサイロ50の内壁58の位置(符号53)よりもラップサイロ50の内側に位置する。
【0028】
ここで、前記距離d(cm)とは、露出表面56に対向する内壁58と、飼料原料55の露出表面56との最短距離を意味し、具体的には、内壁58(符号53)と、露出表面56における最も内壁58に近い部位(符号57)との距離に相当する。また、前記距離dは、スペーサ59の厚みに相当する。
また、前記面積S(cm
2)とは、飼料原料55の露出表面56の面積であり、言い換えると、スペーサ59に対向する飼料原料55の表面(この場合、側面の全面)の面積である。前記面積Sは、飼料原料55に対向するスペーサ59の面積に相当する。
【0029】
前記スペーサとしては、前記飼料原料の少なくとも一部の表面と、前記表面に対向する前記容器(ラップサイロ)の内壁との間に空間が存在する(空間を設ける)ことができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、厚み(距離dに相当)を有するメッシュ素材(例えば、プラスチック製メッシュ、金属製メッシュ等)、厚みを有する枠(例えば、木枠、金属枠、プラスチック枠等)などが挙げられる。
【0030】
なお、
図6A〜
図6C及び
図7A〜
図7Cでは、円柱状の飼料原料の成形体の例を説明したが、これらには限定されず、成形体が円柱状以外の形状(例えば、立方体、直方体、球体、不定形など)であってもよい。
また、成形体の少なくとも一部の表面上に空間が設けられていればよく、成形体が円柱状である場合には、
図6A〜
図6Cで説明した底面の片方にスペーサを設置した実施形態、
図7A〜
図7Cで説明した側面の全面にスペーサを設置した実施形態以外にも、2面ある底面の両方にスペーサを設けてもよく、側面の一部にスペーサを設けてもよく、これらの組合せであってもよい。
【0031】
前記飼料原料を収容した前記容器は、前記容器のフタを十分に閉めること等により容器の気密性を保つことが好ましい。
また、前記容器が前記ラップサイロの場合は、前記ラップを隙間なくかつたるみなく重ねることにより前記容器の気密性を保つことが好ましく、前記容器が前記バンカーサイロの場合は、上部に覆いを被せることにより前記容器の気密性を保つことが好ましい。
なお、前記容器が前記バンカーサイロの場合は、前記覆いが容器のフタに相当するため、バンカーサイロの容量は前記飼料原料の収容量(乃至前記覆いの位置)に応じて適宜設定され得る。
【0032】
前記発酵させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて従来公知の方法を適宜選択することができ、例えば、乳酸菌を添加し、水分量を調整した前記飼料原料を前記容器に収容し、環境温度下で1日間以上静置する方法などが挙げられる。
前記乳酸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて従来公知のものを適宜選択することができ、例えば、
Lactobacillus plantarum、
Lactobacillus casei、
Lactobacillus buchneri等の
Lactobacillus属菌;
Leuconostoc citreum、
Leuconostoc mesenteroides等の
Leuconostoc属菌;
Lactococcus lactis、
Lactococcus rhamnosus等の
Lactooccus属菌;
Enterococcus facialis、
Enterococcus faecium等の
Enterococcus属菌;
Pediococcus acidilactici等の
Pediococcus属菌;
Weissella confuse、
Weissella oryze等の
Weissella属菌などが挙げられる。
これらの中でも、
Lactobacillus plantarumが好ましい。
【0033】
前記乳酸菌の混合量(菌数)としては、特に制限はなく、目的に応じて従来公知のものを適宜選択することができるが、前記飼料原料1gに対して10
2個〜10
8個が好ましく、10
4個〜10
6個がより好ましい。
【0034】
前記飼料原料に混合する水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水道水、井戸水、湧水などが挙げられる。
前記水の混合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳酸菌と水分とを混合した前記飼料原料の混合物における水分量が、10質量%〜80質量%(好ましくは、20質量%〜50質量%)となるように、前記水を混合することが好ましい。
なお、前記混合物の水分量とは、前記飼料原料そのものに含まれる水分量と、前記乳酸菌の培養液中の水分量と、混合する前記水との合計量である。
前記飼料原料そのものに含まれる水分量は、例えば、乾燥法(65℃、48時間)により測定することができる。
【0035】
本発明の発酵飼料の製造方法において、脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の少なくともいずれかが、容器に収容されることが好ましく、飼料原料における露出表面の少なくとも一部を被覆することがより好ましい。
これにより、より一層、発酵品質が向上及び安定化し、飼料原料表面におけるかび発生を抑制する効果が得られる。また、前記脱酸素剤及びエタノール蒸散剤が、飼料原料の露出表面に設置される場合には、発酵飼料製造後の回収が容易であり、発酵飼料への混入を低減できる点で有利である。
【0036】
<脱酸素剤>
前記「脱酸素剤」とは、密閉容器の中を脱酸素状態にする薬剤であり、酸化されやすい物質が包装された形状が主流である。
前記脱酸素剤は、容器包装内の酸素と酸化されやすい物質が反応し、酸素を吸収することで、安全に食品等の好気性生物の生育を防止することに加え、腐敗防止、害虫防止、変色防止など食品の品質保持に優れた効果を発揮し、品質保持剤として利用されている。
前記酸化されやすい物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、ビタミンC、カテキン、油脂などが挙げられる。
前記酸化されやすい物質を包装する包装材料としては、酸素を透過させることができ、前記酸化されやすい物質が放出されない材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、布、紙、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0037】
前記脱酸素剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、モデュランW、モデュランS、モデュランNH、モデュランTG(いずれも、日本化薬フードテクノ株式会社製);エージレスS、エージレスSA(いずれも、三菱ガス化学株式会社製);サンソカットFW、サンソカットGA(いずれも、アイリス・ファインプロダクツ株式会社製);ワンダーキープLP、ワンダーキープCLP(いずれも、パウダーテック株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
前記脱酸素剤の空気容量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、容器の容量に対し、0.01倍〜20倍が好ましく、0.1倍〜10倍がより好ましく、0.5倍〜2倍が特に好ましい。前記空気容量が、0.01倍未満であると、発酵過程(仕込みから給与までの期間中)において、容器内の酸素濃度を0.1体積%以下にできないことがあり、20倍を超えると、不経済である。一方、前記空気容量が、0.01倍〜20倍であると、作業時の空気暴露による脱酸素剤の劣化があった場合でも、発酵過程(仕込みから給与までの期間中)において、容器内の酸素濃度を0.1体積%以下にできる点で有利である。
なお、「空気容量」とは、脱酸素剤が酸素を吸収することができる空気の容量を示し、空気容量1Lの場合、酸素は空気中の約20体積%であることから、約0.2Lの酸素を吸収することを意味する。
【0039】
<エタノール蒸散剤>
前記「エタノール蒸散剤」とは、気体状のエタノールを蒸散する薬剤であり、別名、アルコール蒸散剤、アルコール揮散剤、アルコール徐放剤などとも言う。また、液体状のエタノールを吸着剤に吸着させたものが包装された形状が主流である。
前記エタノール蒸散剤は、容器包装内に気体状のエタノールが徐々に蒸散することで、安全に食品等の好気性生物の生育を防止して食品の品質保持に優れた効果を発揮し、品質保持剤として利用されている。
前記吸着剤としては、液体状のエタノールを吸着(担持)できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合成シリカ、珪藻土、パルプ、不織布、セルロース、脱脂綿、ゲルなどが挙げられる。
前記液体状のエタノールを吸着させた吸着剤を包装する包装材料としては、気体状のエタノールを透過させることができ、前記吸着剤が放出されない材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、布、紙、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0040】
前記エタノール蒸散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、オイテックL、オイテックCA、オイテックCA H、オイテックCA−ME(いずれも、日本化薬フードテクノ株式会社製);ETパックNT(上野製薬株式会社製);アルベール(株式会社鳥繁産業製)などが挙げられる。
【0041】
前記エタノール蒸散剤のエタノール量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、容器の容量1Lあたり、0.01mL〜20mLが好ましく、
0.1mL〜10mLがより好ましく、0.5mL〜2mLが特に好ましい。前記エタノール量が、0.01mL未満であると、発酵過程(仕込みから給与までの期間中)において、容器内の気体状のエタノール濃度を0.3体積%以上にできないことがあり、20mLを超えると、不経済である。一方、前記エタノール量が、0.01mL〜20mLであると、作業時の空気暴露によるエタノール蒸散剤の劣化があった場合でも、発酵過程(仕込みから給与までの期間中)において、容器内の気体状のエタノール濃度を0.3体積%以上にできる点で有利である。
【0042】
<脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の組合せ>
前記脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の少なくともいずれかは、前記脱酸素剤及び前記エタノール蒸散剤の組合せからなることが好ましい。これにより、飼料原料表面におけるかび発生を抑制することができ、発酵品質が向上及び安定化し、発酵飼料製造後の回収が容易であることに加え、容器内の発酵の均一性をより向上させることができる。
前記組合せとしては、前記脱酸素剤と前記エタノール蒸散剤との併用であってもよいし、脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の両機能を合わせ持つ薬剤であってもよい。
前記脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の両機能を合わせ持つ薬剤としては、例えば、エージレスSE(三菱ガス化学株式会社製);ネガモールド(フロイント産業株式会社製)などが挙げられる。
【0043】
前記脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の少なくともいずれかの被覆率としては、前記飼料原料における露出表面の少なくとも一部が被覆されれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記飼料原料における前記露出表面に対し、5面積%以上が好ましく、10面積%以上がより好ましく、20面積%以上が特に好ましい。また、前記露出表面が均一に被覆されることが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0045】
(実施例1−1)
2014年に茨城県つくばみらい市で栽培され、完熟期に収穫された「べこあおば」の籾米を飼料用カッター(スター式 型式0、株式会社豊平農機製作所製)にて破砕し、籾米の破砕物(物差しで測定した粒径約0.2mm〜3mm)を調製した。籾米の破砕物の水分量は、乾燥法を用いて測定したところ、14質量%であった。
実験に供する検体の水分量が30質量%となるように、11.4Lの水と100mLの乳酸菌の培養液(
Lactobacillus plantrum chikuso−1、10
5個/mL)とを混合した液を、籾米の破砕物50kgに添加して良く混和した。これを、1L容量の半透明なプラスチックボトル容器(アイボーイ 広口1L、ポリプロピレン製、アズワン株式会社製)の容量の93体積%となるよう、かつ籾米の破砕物の露出表面が容器の開口位置よりも容器の内側に位置するように、均して入れ、フタをしっかりと閉じて、容器に収容した(充填率93体積%)。これにより、実施例1−1の検体を調製した。この条件の検体を3本調製した。
なお、容器の開口位置と飼料原料の露出表面との距離dは、3.4cmであり、前記露出表面の面積Sは、52.8cm
2であった。
【0046】
実施例1−1の検体を25℃の恒温室で43日間静置し、乳酸菌で発酵した発酵飼料(以下、サイレージ)としての実施例1−1のサイレージを製造した。
【0047】
<評価>
作製した実施例1−1のサイレージについて、以下のように評価した。
【0048】
<<かび発生個数及び発生平均日数>>
実施例1−1の検体(3本)の静置期間中、毎日容器を開けることなく、容器外から目視で観察し、菌糸形状(白色から灰色又は緑色から黒色)のかびの発生の有無を確認した。かびが発生した検体の個数(かび発生個数)、及びかびが発生するまでの日数の平均値(発生平均日数)を表1に示す。
【0049】
<<乳酸及び酢酸の濃度、乳酸/酢酸比>>
実施例1−1のサイレージについて、乳酸及び酢酸の濃度を以下の方法により測定した。
上部及び下部から採取した各サイレージ抽出液1.5mLに、20mgのイオン交換樹脂(Amberlite IR 120B H AG;オルガノ株式会社製)を加え、撹拌後に6,000G、5分間の遠心分離(CS−15R、ベックマンコールター、ブレア社製)を行い、上澄みをメンブランフィルター(DISMIC 13HP045AN、アドバンテック東洋株式会社製)を通した後に、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(Prominence organic acid analyzing system、株式会社島津製作所製)で乳酸及び酢酸の濃度を測定した。サイレージ抽出液における乳酸及び酢酸の濃度(質量%)、並びに乳酸/酢酸比(質量比)を表2に示す。なお、表2中、各値を平均値±標準偏差で示した。
ここで、「上部」とは、得られた発酵飼料の容器開口部側の露出表面を含む部位であり、「下部」とは、得られた発酵飼料の容器底部と前記発酵飼料の1/2高さとの間であり、かつ前記発酵飼料の1/2高さから下方向に8cm以下の部位である。いずれも、容器側面に接しない部位から採取した。
【0050】
−高速液体クロマトグラフィー条件−
カラム:Shim−pack SCR−102H(株式会社島津製作所製)
カラム温度:40℃
検出器:電気伝導度検出器
溶媒:1.0mL/min(5mmol/L p−トルエンスルホン酸)
ポストカラム反応液:1.0mL/min〔5mmol/L p−トルエンスルホン酸、20mmol/L ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、100μmol/L エチレンジアミン四酢酸(EDTA)〕
【0051】
なお、乳酸の濃度は、目的とする乳酸発酵の指標となる値であり、酢酸の濃度は、目的としない好気的発酵の指標となる値である。したがって、乳酸/酢酸比(質量比)の値が高い方が、乳酸発酵が優勢であることを示し、好ましい。また、好気的発酵が優勢である場合には、酢酸の濃度が高まる。
【0052】
<<pH>>
実施例1−1のサイレージ抽出液のpHを、pHメーター(装置名:Laqua F−72、株式会社堀場製作所製)を用いて25℃で測定した。結果を表2に示す。なお、表2中、各値を平均値±標準偏差で示した。
【0053】
(実施例1−2〜実施例1−5)
実施例1−1において、充填率93体積%から下記表1に示す充填率に変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜実施例1−5のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表1及び2に示す。
なお、実施例1−5(充填率19体積%)では、サイレージの上部に相当する部位の1箇所のみを採取した。
【0054】
(比較例1)
実施例1−1において、飼料原料である籾米の破砕物を容器の開口位置まで均してしっかりと入れ、フタをしっかりと閉じて、容器に収容したこと以外は、実施例1−1と同様にして、比較例1のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
これらの結果から、容器内に空間を設けることにより、即ち、飼料原料の露出表面が、露出表面に対向する容器の開口位置よりも容器の内側に位置することにより、飼料原料におけるかびの発生(特に、問題となる飼料原料表面におけるかび発生)を抑制することができ、乳酸及び酢酸の濃度、乳酸/酢酸比、並びにpHを指標とする発酵品質が向上及び安定化することが分かった。中でも、充填率が37体積%〜93体積%である実施例1−1〜1−4では、発酵品質の中でも、特に上部の発酵品質が向上及び安定化するとともに、容器の上部及び下部における乳酸/酢酸比の差が小さいことから、容器の部位によらず発酵の均一性が得られることが分かった。
【0058】
(実施例2−1)
2014年に茨城県つくばみらい市で栽培され、完熟期に収穫された「べこあおば」の籾米を飼料用カッター(スター式 型式0、株式会社豊平農機製作所製)にて破砕し、籾米の破砕物(物差しで測定した粒径約0.2mm〜3mm)を調製した。籾米の破砕物の水分量は、乾燥法を用いて測定したところ、14質量%であった。
実験に供する検体の水分量が30質量%となるように、11.4Lの水と100mLの乳酸菌の培養液(
Lactobacillus plantrum chikuso−1、10
5個/mL)とを混合した液を、籾米の破砕物50kgに添加して良く混和した。これを、1L容量の半透明なプラスチックボトル容器(アイボーイ 広口1L、ポリプロピレン製、アズワン株式会社製)の容量の79体積%となるよう、かつ籾米の破砕物の露出表面が容器の開口位置よりも容器の内側に位置するように、均して入れ、フタをしっかりと閉じて、容器に収容した(充填率79体積%)。これにより、実施例2−1の検体を調製した。この条件の検体を3本調製した。
【0059】
実施例2−1の検体を室温で57日間静置し、乳酸菌で発酵した発酵飼料(以下、サイレージ)としての実施例2−1のサイレージを製造し、実施例1−1と同様にして、これらの評価を実施した。結果を表3及び4に示す。
【0060】
(実施例2−2)
実施例2−1において、脱酸素剤(モデュランW−1000×10包/容器、日本化薬フードテクノ株式会社製)を用い、籾米の破砕物の露出表面を被覆するように同封したこと以外は、実施例2−1と同様にして、実施例2−2のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表3及び4に示す。
なお、前記脱酸素剤の空気容量は、10L(1,000mL×10)である。
また、前記脱酸素剤の面積は、縦:5.0cm×横:4.5cm=22.5cm
2であり、籾米の破砕物の露出表面58.1cm
2に対する被覆率は、重なり部分を除いて、64面積%である。
【0061】
(実施例2−3)
実施例2−2において、前記脱酸素剤に代えてエタノール蒸散剤(オイテックL 5.0G×3包/容器、日本化薬フードテクノ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2−2と同様にして、実施例2−3のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表3及び4に示す。
なお、前記エタノール蒸散剤のエタノール量は、7.5mL(2.5mL×3)である。
また、前記エタノール蒸散剤の面積は、縦:7.0cm×横:7.0cm=49.0cm
2であり、籾米の破砕物の露出表面58.1cm
2に対する被覆率は、重なり部分を除いて、84面積%である。
【0062】
(実施例2−4)
実施例2−2において、前記脱酸素剤に加えてエタノール蒸散剤(オイテックL 5.0G×3包/容器、日本化薬フードテクノ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2−2と同様にして、実施例2−4のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表3及び4に示す。
なお、籾米の破砕物の露出表面58.1cm
2に対する被覆率は、重なり部分を除いて、84面積%である。
【0063】
(比較例2)
実施例2−1において、飼料原料である籾米の破砕物を容器の開口位置まで均してしっかりと入れ、フタをしっかりと閉じて、容器に収容したこと以外は、実施例2−1と同様にして、比較例2のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表3及び4に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
また、
図8に、実施例2−1〜2−4及び比較例2の乳酸/酢酸比(質量比)を示すグラフを示す。
【0067】
s
これらの結果から、実施例2−2〜2−4では、容器内に空間を設けることに加えて、脱酸素剤及びエタノール蒸散剤の少なくともいずれかを用いることにより、比較例2及び実施例2−1に比べて、かびの発生(特に、問題となる飼料原料表面におけるかび発生)が抑制されることが分かった。また、容器の上部及び下部共に、乳酸/酢酸比を指標とする発酵の品質が向上することが分かった。
【0068】
(実施例3−1)
2014年に茨城県つくばみらい市で栽培され、完熟期に収穫された「べこあおば」の籾米を飼料用カッター(スター式 型式0、株式会社豊平農機製作所製)にて破砕し、籾米の破砕物(物差しで測定した粒径約0.2mm〜3mm)を調製した。籾米の破砕物の水分量は、乾燥法を用いて測定したところ、14質量%であった。
実験に供する検体の水分量が30質量%となるように、11.4Lの水と100mLの乳酸菌の培養液(
Lactobacillus plantrum chikuso−1、10
5個/mL)とを混合した液を、籾米の破砕物50kgに添加して良く混和した。これを、20L容量のプラスチックボトル型容器(商品名:PE広口大型瓶、ポリエチレン製、株式会社サンプラテック製)の容量の79体積%となるよう、かつ籾米の破砕物の露出表面が容器の開口位置よりも容器の内側に位置するように、均して入れ、フタをしっかりと閉じて、容器に収容した(充填率79体積%)。これにより、実施例3−1の検体を調製した。この条件の検体を3本調製した。
なお、容器の開口位置と飼料原料の露出表面との距離dは、18cmであり、前記露出表面の面積Sは、660cm
2であった。
【0069】
実施例3−1の検体を室温で59日間静置し、乳酸菌で発酵した発酵飼料(以下、サイレージ)としての実施例3−1のサイレージを製造し、実施例1−1と同様にして、これらの評価を実施した。結果を表5及び6に示す。
【0070】
(実施例3−2)
実施例3−1において、脱酸素剤(モデュランW−1000×20包/容器、日本化薬フードテクノ株式会社製)を用い、籾米の破砕物の露出表面を被覆するように同封したこと以外は、実施例3−1と同様にして、実施例3−2のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表5及び6に示す。
なお、前記脱酸素剤の空気容量は、20L(1,000mL×20)である。
また、前記脱酸素剤の面積は、縦:5.0cm×横:4.5cm=22.5cm
2であり、籾米の破砕物の露出表面660cm
2に対する被覆率は、重なり部分を除いて、3面積%である。
【0071】
(実施例3−3)
実施例3−2において、前記脱酸素剤に加えてエタノール蒸散剤(オイテックL 5.0G×10包/容器、日本化薬フードテクノ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例3−2と同様にして、実施例3−3のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表5及び6に示す。
なお、前記エタノール蒸散剤のエタノール量は、25mL(2.5mL×10)である。
また、前記エタノール蒸散剤の面積は、縦:7.0cm×横:7.0cm=49.0cm
2であり、籾米の破砕物の露出表面660cm
2に対する、前記脱酸素剤及び前記エタノール蒸散剤の被覆率は、重なり部分を除いて、7面積%である。
【0072】
(比較例3)
実施例3−1において、飼料原料である籾米の破砕物を容器の開口位置まで均してしっかりと入れ、フタをしっかりと閉じて、容器に収容したこと以外は、実施例3−1と同様にして、比較例3のサイレージを製造し、これらの評価を実施した。結果を表5及び6に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
また、
図9に、実施例3−1〜3−3及び比較例3の乳酸/酢酸比(質量比)を示すグラフを示す。
【0076】
これらの結果から、より容量の大きい容器を用いた場合にも、容器内に空間を設けた実施例3−1〜3−3では、比較例3に比べて、飼料原料におけるかびの発生(特に、問題となる飼料原料表面におけるかび発生)を抑制することができ、乳酸及び酢酸の濃度、乳酸/酢酸比、並びにpHを指標とする発酵品質が向上及び安定化することが分かった。
中でも、脱酸素剤を用いた実施例3−2、並びに脱酸素剤及びエタノール蒸散剤を併用した実施例3−3では、発酵品質の中でも、特に上部の発酵品質が向上及び安定化するとともに、容器の上部及び下部における乳酸/酢酸比の差が小さいことから、容器の部位によらず発酵の均一性が得られることが分かった。