特許第6424950号(P6424950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6424950
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】複合ケーブル、複合ハーネス、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20181112BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20181112BHJP
   H01B 11/06 20060101ALI20181112BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20181112BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20181112BHJP
   F16D 121/20 20120101ALN20181112BHJP
【FI】
   H01B7/00 310
   H01B7/18 D
   H01B11/06
   H01B7/00 301
   H01B7/00 306
   B60T13/74 G
   F16D65/18
   F16D121:20
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-507209(P2017-507209)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058887
(87)【国際公開番号】WO2016151753
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直也
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
(72)【発明者】
【氏名】林 真也
(72)【発明者】
【氏名】及川 実
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
(72)【発明者】
【氏名】坂口 寛史
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−216550(JP,A)
【文献】 特開2013−237428(JP,A)
【文献】 特開2016−119245(JP,A)
【文献】 特開2003−92028(JP,A)
【文献】 特開2013−122825(JP,A)
【文献】 実開平6−54143(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B60T 13/74
F16D 65/18
H01B 7/18
H01B 11/06
F16D 121/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ中心導体と前記中心導体を被覆する絶縁体とを有する絶縁電線であり電源供給対象に電源を供給するための2本の電源線と、
一対の第1の絶縁電線を撚り合せたツイストペア線からなり第1の電気信号を伝送する第1の信号線を第1のシールド部材で被覆してなり、最外層が前記第1のシールド部材である第1のシールド電線と、
一対の第2の絶縁電線を撚り合せたツイストペア線からなり第2の電気信号を伝送する第2の信号線を第2のシールド部材で被覆してなり、最外層が前記第2のシールド部材である第2のシールド電線と、
前記2本の電源線と前記第1及び第2のシールド電線とを一括して被覆するシースと
を備え、
前記第1のシールド電線と前記第2のシールド電線とが前記2本の電源線により離間されており
前記第1の絶縁電線の外径及び前記第2の絶縁電線の外径は、前記2本の電源線の外径よりも小さく、前記2本の電源線間の距離よりも大きい
複合ケーブル。
【請求項2】
前記電源供給対象は、車両の車輪に制動力を発生させる電動ブレーキ装置である、
請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記第1の電気信号は、前記電動ブレーキ装置を制御するための信号である、
請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記第2の電気信号は、車輪の回転速度を検出する車輪速検出用の信号である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記第1の信号線及び前記第2の信号線は、それぞれが一対の絶縁電線を撚り合わせたツイストペア線からなり、
前記第1の信号線の前記絶縁電線の外径と、前記第2の信号線の前記絶縁電線との外径が同等である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記一対の電源線、前記第1のシールド電線、及び前記第2のシールド電線によって囲まれた領域は、介在物が配置されていない空間とされている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の複合ケーブルと、
前記シースから露出した前記一対の電源線、前記第1のシールド電線、及び前記第2のシールド電線の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタとを有する、
ワイヤハーネス。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の複合ケーブルによって車輪側と車体側とを接続した、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブル、複合ハーネス、及び車両に関し、特に自動車等の車両において車輪側と車体側とを接続する車両用の複合ケーブル、複合ハーネス、及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両において、車輪に制動力を付与するための電動式のブレーキ装置(電動ブレーキ装置)が用いられている。このような電動ブレーキ装置は、環境負荷の高いブレーキオイルを使用しないことや、坂道発進を好適に補助できること等による高い利便性のため、利用が拡大している。
【0003】
この種の電動ブレーキ装置として、具体的には、電気機械式ブレーキ(Electro-Mechanical Brake、EMB)や、電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake、EPB)が用いられている。また、最近では、両者の機能を併せ持つパーキングブレーキ付き電動ブレーキ装置の利用も拡大している。
【0004】
電気機械式ブレーキは、運転者によるブレーキペダルの操作量(踏力又は変位量)に応じて電動モータの回転駆動力を制御し、当該電動モータにより駆動されるキャリパによりブレーキパッドを車輪のブレーキロータに押し付け、運転者の意図に応じた制動力を発生させるように構成されている。
【0005】
電動パーキングブレーキは、車両の停止後に運転者がパーキングブレーキ作動スイッチを操作することにより電動モータを駆動させ、当該電動モータによってキャリパを駆動してブレーキパッドを車輪のブレーキロータに押し付け、ラッチ機構によって車輪に制動力を付与した状態を維持するように構成されている。
【0006】
また、近年では、車両の高度な電子制御化に伴い、走行中の車輪の回転速度を検出するABS(Anti-lock Brake System)センサや、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ、温度センサなどのセンサ類が車輪に搭載されることが多い。
【0007】
そこで、車輪に搭載されたセンサ用の信号線や電動ブレーキ装置の制御用の信号線と、電動ブレーキ装置に電力を供給する電源線とを共通のシースに収容した複合ケーブルを用い、車輪側と車体側とを接続することが行われている。また、この複合ケーブルの端部にコネクタを一体に設けたものは、複合ハーネスと呼称されている。
【0008】
上記のように構成された複合ケーブルでは、電源線と信号線とが共通のシースに収容されるため、電源線を流れる電流に起因する電磁波ノイズが発生するおそれがある。そこで、この電磁波ノイズの対策として、シールド部材により被覆した信号線を用いた複合ケーブルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−166450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、車輪側と車体側とを接続する複合ケーブルでは、車両の走行中等に車輪と車体との位置関係が変化して繰り返し屈曲されることになるため、高い耐屈曲性を有することが望まれる。しかしながら、上述の従来の複合ケーブルでは、複数の信号線を用いる場合に、当該複数の信号線のシールド部材同士が接触してしまい、複合ケーブルが繰り返し屈曲を受けることでシールド部材が摩耗してしまうおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明は、シールド部材を有する複数の信号線と電源線とが共通のシースに収容された複合ケーブルにおいて、繰り返し屈曲されてもシールド部材の摩耗を抑制することが可能な複合ケーブル、及びこの複合ケーブルを含む複合ハーネスならびに車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電源供給対象に電源を供給するための一対の電源線と、第1の電気信号を伝送する第1の信号線を第1のシールド部材で被覆してなる第1のシールド電線と、第2の電気信号を伝送する第2の信号線を第2のシールド部材で被覆してなる第2のシールド電線と、前記一対の電源線と前記第1及び第2のシールド電線とを一括して被覆するシースとを備え、前記第1のシールド電線と前記第2のシールド電線とが前記一対の電源線により離間されている、複合ケーブルを提供する。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の複合ケーブルと、前記シースから露出した前記一対の電源線、前記第1のシールド電線、及び前記第2のシールド電線の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタとを有するワイヤハーネスを提供する。
【0014】
またさらに、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の複合ケーブルによって車輪側と車体側とを接続した車両を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る複合ケーブル、複合ハーネス、及び車両によれば、複合ケーブルが繰り返し屈曲されても、複数の信号線のシールド部材の摩耗を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る複合ハーネスが用いられた車両の構成例を示す模式図である。
図2】車輪の周辺部の構成例を示す概略図である。
図3】ワイヤハーネスの構成例を示す構成図である。
図4】ワイヤハーネスを構成する複合ケーブルの一端部を示す概略図である。
図5A】複合ケーブルの断面図である。
図5B】複合ケーブルの第1のシールド電線を構成する絶縁電線の断面図である。
図5C】複合ケーブルの電源線の断面図である。
図5D】複合ケーブルの第2のシールド電線を構成する絶縁電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
図1は、本実施の形態に係る複合ハーネスが用いられた車両の構成を示す模式図である。
【0018】
車両1は、車体10に4つのタイヤハウス100を有し、4つの車輪11がそれぞれのタイヤハウス100内に配置されている。本実施の形態では、車両1が前輪駆動車であり、左右前輪としての一対の車輪11がエンジンや電動モータからなる図略の駆動源の駆動力を受けて駆動される駆動輪であり、左右後輪としての一対の車輪11は、駆動源の駆動力が伝達されない従動輪である。
【0019】
また、車両1には、それぞれの車輪11に対応して、電動ブレーキ装置12及び車輪速センサ13が設けられている。電動ブレーキ装置12は、車体10に搭載された制御装置14から動作電源が供給され、車輪11に制動力を発生させる。電動ブレーキ装置12の動作は、制御装置14から出力される制御信号によって制御される。
【0020】
本実施の形態では、電動ブレーキ装置12がパーキングブレーキ付きの電動ブレーキ装置であり、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じて車輪11に制動力を付与すると共に、車室内に設けられたパーキングブレーキ作動スイッチが操作された際には、車両の停止状態を維持するための制動力を車輪11に付与する。電動ブレーキ装置12が電動パーキングブレーキとして機能する際には、電動ブレーキ装置12に内蔵されたラッチ機構によって制動力が維持される。
【0021】
車輪速センサ13は、それ自体は周知のものであり、車輪11と共に回転する環状の磁気エンコーダの磁界を検出する磁界検出素子を有し、この磁界の向きが変化する周期によって車輪速を検出する。また、車輪速センサ13は、検出した車輪速に応じた電気信号を制御装置14に出力する。
【0022】
制御装置14と、左右前輪としての一対の車輪11に対応して設けられた電動ブレーキ装置12及び車輪速センサ13とは、複数の電線からなる前輪用電線群151及びワイヤハーネス2によって電気的に接続されている。前輪用電線群151とワイヤハーネス2とは、車体10に固定された前輪用中継ボックス152内で接続されている。前輪用中継ボックス152は、車体10における前輪側のタイヤハウス100のそれぞれの近傍に配置されている。
【0023】
また、制御装置14と、左右後輪としての一対の車輪11に対応して設けられた電動ブレーキ装置12及び車輪速センサ13とは、複数の電線からなる後輪用電線群153及びワイヤハーネス2によって電気的に接続されている。後輪用電線群153とワイヤハーネス2とは、車体10に固定された後輪用中継ボックス154内で接続されている。後輪用中継ボックス154は、車体10における後輪側のタイヤハウス100のそれぞれの近傍に配置されている。
【0024】
前輪用電線群151の複数の電線は、束ねられた状態で車体10に設けられた配線路150に配置されている。また、後輪用電線群153の複数の電線も、前輪用電線群151と同様に、束ねられた状態で車体10に設けられた配線路150に配置されている。
【0025】
図2は、後輪側における車輪11の周辺部の構成例を示す概略図である。車輪11は、車体10に対して懸架装置16によって支持されている。懸架装置16は、アッパアーム161と、ロアアーム162と、ショックアブソーバ163と、サスペンションスプリング164とを有して構成されている。アッパアーム161及びロアアーム162は、それぞれの一端部がナックル165に連結され、他端部が車体10に連結されている。ナックル165には、ハブユニット17の外輪171が固定されている。アッパアーム161は、ナックル165の第1取付部165aにショックアブソーバ163と共に連結され、ロアアーム162は、ナックル165の第2取付部165bに連結されている。
【0026】
サスペンションスプリング164は、ショックアブソーバ163の外周に同軸状に配置され、路面に対する車体10の上下動に応じて伸縮する。そして、このショックアブソーバ163の伸縮に伴って、アッパアーム161及びロアアーム162が車体10に対して揺動する。
【0027】
また、ナックル165には、第3取付部165cが突設され、この第3取付部165cに電動ブレーキ装置12が固定されている。電動ブレーキ装置12は、本体部120と、キャリパ121と、一対のブレーキパッド122とを有している。
【0028】
ワイヤハーネス2は、その一端部が固定具19によってナックル165に固定されている。そして、ワイヤハーネス2は、車両1の走行によるサスペンションスプリング164及びショックアブソーバ163の伸縮に伴って屈曲される。なお、ワイヤハーネス2の一端部は、ナックル165に限らず、車輪11の回転に伴って回転せず、かつサスペンションスプリング164及びショックアブソーバ163の伸縮に伴って車輪11と共に車体10に対して上下動する非回転部材に固定されていればよい。
【0029】
ハブユニット17は、外輪171と、外輪171に対して回転自在に支持されたハブ輪172とを有している。ハブ輪172には、車輪取付フランジ172aが設けられ、この車輪取付フランジ172aに車輪11が取り付けられている。ハブユニット17の外輪171の内周面とハブ輪172の外周面との間には、図示しない複数の転動体が保持器に保持されて配置されている。
【0030】
ハブ輪172の車輪取付フランジ172aには、円板状のブレーキロータ18が、車輪11のホイール110と共に固定されている。ホイール110には、ゴムからなるタイヤ111が装着されている。ブレーキロータ18は、電動ブレーキ装置12のブレーキパッド122が摩擦係合する摩擦部18aと、ハブ輪172の車輪取付フランジ172aに固定される固定部18bとを一体に有している。摩擦部18aは、その側面が電動ブレーキ装置12のブレーキパッド122に対向している。
【0031】
電動ブレーキ装置12が作動すると、本体部120に内蔵された電動モータの回転駆動力によってキャリパ121が本体部120に引き込まれ、ブレーキパッド122がブレーキロータ18の摩擦部18aに押し付けられる。これにより、ブレーキパッド122とブレーキロータ18との間に摩擦力が発生し、この摩擦力が車両1の制動力となる。
【0032】
(ワイヤハーネス2の構成)
図3は、ワイヤハーネス2の構成例を示す構成図である。図4は、ワイヤハーネス2を構成する複合ケーブル2Aの一端部を示す概略図である。図5Aは、複合ケーブル2Aの断面図、図5Bは、複合ケーブル2Aの第1のシールド電線3を構成する絶縁電線31の断面図、図5Cは電源線21の断面図、図5Dは第2のシールド電線4を構成する絶縁電線41の断面図である。
【0033】
図3では、図面左側に車輪11側の端部を示し、図面右側に前輪用中継ボックス152又は後輪用中継ボックス154側の端部を示している。以下の説明では、ワイヤハーネス2の車輪11側の端部を「一端部」といい、その反対側の端部を「他端部」という。
【0034】
複合ケーブル2Aは、電源供給対象である電動ブレーキ装置12に電源を供給するための一対の電源線21,22と、電動ブレーキ装置12を制御するための信号(第1の電気信号)を伝送する第1のシールド電線3と、車輪11の回転速度を検出するため車輪速検出用の信号(第2の電気信号)を伝送する第2のシールド電線4と、一対の電源線21,22と第1及び第2のシールド線3,4とを一括して被覆するシース20と、シース20に収容された介在物5とを有している。車両1は、複合ケーブル2Aによって車輪11側と車体10側とが接続されている。
【0035】
一対の電源線21,22の一端部には、電動ブレーキ装置12との接続のための電源コネクタ23が取り付けられ、一対の電源線21,22の他端部には、前輪用電線群151又は後輪用電線群153との接続のための電源コネクタ24が取り付けられている。
【0036】
第1のシールド電線3には、一端部に電動ブレーキ装置12との接続のための接続コネクタ33が取り付けられ、他端部に前輪用電線群151との接続のための接続コネクタ34が取り付けられている。また、第2のシールド電線4には、一端部に車輪速センサ13が取り付けられ、他端部には前輪用電線群151又は後輪用電線群153との接続のための接続コネクタ43が取り付けられている。
【0037】
ワイヤハーネス2は、複合ケーブル2A、電源コネクタ23,24、接続コネクタ33,34,43、及び車輪速センサ13によって構成されている。
【0038】
電動ブレーキ装置12は、一対の電源線21,22から電力の供給を受け、キャリパ121を駆動して制動力を発生させる。また、電動ブレーキ装置12は、第1のシールド電線3によって制御装置14から送信される制御信号に基づいて、電気機械式ブレーキ(EMB)として動作するか、電動パーキングブレーキ(EPB)として動作するかが切り替わる。また、第1のシールド電線3によって、電動ブレーキ装置12の動作状態を制御装置14に送信することも可能である。
【0039】
車輪速センサ13から出力される電気信号は、第2のシールド電線4によって制御装置14に伝送される。制御装置14は、この電気信号に基づいて車輪11がロックしたことを検出すると、電動ブレーキ装置12による制動力を緩和して車輪11のロック状態を解除する。
【0040】
介在物5は、シース20の内部において、一対の電源線21,22と第1及び第2のシールド電線3,4との間に介在している。この介在物5により、複合ケーブル2Aの中心軸に直交する断面におけるシース20の外周面20a(図5A参照)が円形状に近づけられ、複合ケーブル2Aの配策性が高められている。
【0041】
シース20は、絶縁性の樹脂からなり、その素材として具体的には、柔軟性及び耐久性に優れた軟質ポリウレタンを特に好適に用いることができる。図5Aに示すように、シース20の外径をDとし、厚みをtとすると、Dは8.0〜10.0mmであり、tは1.0〜2.0mmである。
【0042】
一対の電源線21,22は、それぞれが銅等の良導電性の導線からなる中心導体210,220を絶縁性の樹脂からなる絶縁体211,221で被覆した絶縁電線である。絶縁体211,221は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。一対の電源線21,22のうち、一方の電源線21の中心導体210の外径、絶縁体211の厚さ、及び絶縁体211の外径は、他方の電源線22の中心導体220の外径、絶縁体221の厚さ、及び絶縁体221の外径と共通である。図5Cに示すように、一方の電源線21の中心導体210の外径をD01、絶縁体211の厚さをt、絶縁体211の外径をD02とすると、D01は1.8〜2.3mm、tは0.3〜0.5mm、D02は2.9〜3.1mmである。
【0043】
第1のシールド電線3は、ツイストペア線からなる第1の信号線30を第1のシールド部材300で被覆してなる。また、第2のシールド電線4は、ツイストペア線からなる第2の信号線40を第2のシールド部材400で被覆してなる。第1のシールド部材300は第1のシールド電線3の最外層に配置され、第2のシールド部材400は第2のシールド電線4の最外層に配置されている。すなわち、本実施の形態では、第1のシールド部材300及び第2のシールド部材400が、絶縁体等によって被覆されていない。また、本実施の形態では、第1のシールド部材300及び第2のシールド部材400が、複数本の導線束を編み合せて筒状に形成された編組シールドからなる。ただし、導電性を有する帯状のシールド部材を第1の信号線30及び第2の信号線40のそれぞれに螺旋状に巻き回して第1のシールド電線3及び第2のシールド電線4を構成してもよい。
【0044】
第1の信号線30は、一対の絶縁電線31,32を有し、これらの絶縁電線31,32によって電動ブレーキ装置12を制御するための信号を伝送する。一対の絶縁電線31,32によって伝送される信号は、移相が逆位相となる差動信号である。一対の絶縁電線31,32は、それぞれが中心導体310,320を絶縁性の樹脂からなる絶縁体311,321で被覆してなる。
【0045】
第2の信号線40も、第1の信号線30と同様に構成されている。すなわち、第2の信号線40は、一対の絶縁電線41,42を有し、これらの絶縁電線41,42によって車輪速検出用の信号を伝送する。一対の絶縁電線41,42によって伝送される信号は、移相が逆位相となる差動信号である。一対の絶縁電線41,42は、それぞれが中心導体410,420を絶縁性の樹脂からなる絶縁体411,421で被覆してなる。
【0046】
第1の信号線30における一方の絶縁電線31の中心導体310の外径、絶縁体311の厚さ、及び絶縁体311の外径と、他方の絶縁電線32の中心導体320の外径、絶縁体321の厚さ、及び絶縁体321の外径とは、それぞれ共通である。すなわち、一方の絶縁電線31,32は、共通の諸元からなる。図5Bに示すように、一方の絶縁電線31の中心導体310の外径をD11、絶縁体311の厚さをt、絶縁体311の外径をD12とすると、D11は0.6〜0.9mm、D12は1.3〜1.6mm、tは0.25〜0.4mmである。
【0047】
第2の信号線40における一方の絶縁電線41の中心導体410の外径、絶縁体411の厚さ、及び絶縁体411の外径と、他方の絶縁電線42の中心導体420の外径、絶縁体421の厚さ、及び絶縁体421の外径とは、それぞれ共通である。すなわち、一方の絶縁電線41,42は、共通の諸元からなる。図5Dに示すように、一方の絶縁電線41の中心導体410の外径をD21、絶縁体411の厚さをt-、絶縁体411の外径をD22とすると、D21は0.7〜1.0mm、D22は1.4〜1.8mm、tは0.25〜0.4mmである。
【0048】
本実施の形態では、第1の信号線30の一対の絶縁電線31,32の外径(太さ)D12と、第2の信号線40の一対の絶縁電線41,42の外径(太さ)D22とが同等である。具体的には、D12のD22に対する比(D12/D22)が0.8以上1.2以下である。また、D12のD22に対する比(D12/D22)のより望ましい範囲は、0.9以上1.1以下である。
【0049】
第1のシールド電線3と第2のシールド電線4とは、一対の電源線21,22によって離間されている。換言すれば、シース20内の空間が、一対の電源線21,22によって第1のシールド電線3の収容空間と第2のシールド電線4の収容空間とに区画されている。
【0050】
具体的には、一対の電源線21,22の間の間隔が、第1のシールド電線3の一対の絶縁電線31,32のそれぞれの太さ、及び第2のシールド電線4の一対の絶縁電線41,42のそれぞれの太さよりも狭く、第1のシールド電線3の第1のシールド部材300と、第2のシールド電線4の第2のシールド部材400とが、直接接触することがないようにされている。図5Aに示す例では、一対の電源線21,22が互いに接触しているので、この間隔がゼロである。
【0051】
また、前述のように第1のシールド電線3の一対の絶縁電線31,32の外径D12と、第2のシールド電線4の一対の絶縁電線41,42の外径D22とが同等であるので、複合ケーブル2Aの断面における第1のシールド電線3及び第2のシールド電線4の並び方向において、一対の電源線21,22がシース20の中央部に位置し、一対の電源線21,22と、第1及び第2のシールド電線3,4との相対的な位置関係が安定する。これにより、上記の効果がより顕著となる。
【0052】
また、図5Aに示すように、本実施の形態では、一対の電源線21,22、第1のシールド電線3、及び第2のシールド電線4によって囲まれた領域A11,A12が空間とされおり、この領域A11,A12には介在物5が充填されていない。これにより、複合ケーブル2Aの端末処理が容易になる。つまり、複合ケーブル2Aを端末処理する際には、シース20の一部を切除して、一対の電源線21,22、第1及び第2の信号線30,40、ならびに介在物5を露出させ、さらにシース20の端部から露出した介在物5を切除する必要があるが、この際、領域A11,A12に介在物5が充填されていると、この介在物5を切除する作業が、一対の電源線21,22や第1及び第2のシールド電線3,4に邪魔されて困難となる。そこで、本実施の形態では、領域A11,A12に介在物5を充填しないことにより、複合ケーブル2Aの端末処理を容易化している。
【0053】
介在物5としては、ケーブルの介在物として一般的に用いられるポリプロピレンヤーン、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の各種の繊維状体や、紙もしくは綿糸等を用いることができるが、本実施の形態では、介在物5に人造ポリペプチド繊維を含有させている。この人造ポリペプチド繊維は、クモ(蜘蛛)糸繊維とも呼ばれ、天然クモ糸タンパク質に由来するポリペプチドを主成分として含む人造繊維であり、例えば応力が350〜628.7MPa、タフネスが138〜265.4MJ/m3である。介在物5に人造ポリペプチド繊維を含有させることで、複合ケーブル2Aの強度を高めることができる。
【0054】
また、シース20に上記の人造ポリペプチド繊維を含有させてもよい。人造ポリペプチド繊維を含有させることによって強度が高まるので、シース20を薄肉化することができ、複合ケーブル2Aの強度を保ちながら屈曲性を高めると共に、軽量化を図ることも可能となる。
【0055】
以上説明した実施の形態によれば、第1のシールド電線3と第2のシールド電線4とは、一対の電源線21,22によって離間されているので、第1のシールド電線3の第1のシールド部材300と、第2のシールド電線4の第2のシールド部材400とが直接接触しない。これにより、車両1の走行に伴って複合ケーブル2Aが繰り返し屈曲されても、第1及び第2のシールド部材300,400の摩耗を抑制することが可能となる。このため、第1及び第2のシールド部材300,400によるシールド効果が適切に保たれ、一対の電源線21,22を流れる電流による電磁ノイズによって第1のシールド電線3及び第2のシールド電線4を介した電気信号の伝送が妨げられることが抑制される。
【0056】
また、上記実施の形態によれば、第1のシールド部材300及び第2のシールド部材400の外側に絶縁体等からなる被覆層が設けられていないので、第1のシールド電線3及び第2のシールド電線4の細径化を図ることができ、ひいては複合ケーブル2Aの細径化を図ることができる。
【0057】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0058】
[1]電源供給対象(電動ブレーキ装置12)に電源を供給するための一対の電源線(21,22)と、第1の電気信号を伝送する第1の信号線(30)を第1のシールド部材(300)で被覆してなる第1のシールド電線(3)と、第2の電気信号を伝送する第2の信号線(40)を第2のシールド部材(400)で被覆してなる第2のシールド電線(4)と、前記一対の電源線(21,22)と前記第1及び第2のシールド電線(300,400)とを一括して被覆するシース(20)とを備え、前記第1のシールド電線(3)と前記第2のシールド電線(4)とが前記一対の電源線(21,22)により離間されている、複合ケーブル(2A)。
【0059】
[2]前記電源供給対象(12)は、車両(1)の車輪(11)に制動力を発生させる電動ブレーキ装置(12)である、前記[1]に記載の複合ケーブル(2A)。
【0060】
[3]前記第1の電気信号は、前記電動ブレーキ装置(12)を制御するための信号である、前記[2]に記載の複合ケーブル(2A)。
【0061】
[4]前記第2の電気信号は、車輪(11)の回転速度を検出する車輪速検出用の信号である、前記[1]乃至[3]の何れか1つに記載の複合ケーブル(2A)。
【0062】
[5]前記第1の信号線(30)及び前記第2の信号線(40)は、それぞれが一対の絶縁電線(31,32/41,42)を撚り合わせたツイストペア線からなり、前記第1の信号線(30)の前記絶縁電線(31,32)の外径(D12)と、前記第2の信号線(40)の前記絶縁電線(41,42)との外径(D22)が同等である、前記[1]乃至[4]の何れか1つに記載の複合ケーブル(2A)。
【0063】
[6]前記一対の電源線(21,22)、前記第1のシールド電線(3)、及び前記第2のシールド電線(4)によって囲まれた領域(A11,A12)が空間とされている、前記[1]乃至[5]の何れか1つに記載の複合ケーブル(2A)。
【0064】
[7]前記[1]乃至[6]の何れか1つに記載の複合ケーブル(2A)と、前記シース(20)から露出した前記一対の電源線(21,22)、前記第1のシールド電線(3)、及び前記第2のシールド電線(4)の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタ(23,24,33,34,43)とを有する、ワイヤハーネス(2)。
【0065】
[8]前記[1]乃至[7]の何れか1つに記載の複合ケーブル(2A)によって、車輪(11)側と車体(10)側とを接続した、車両(1)。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0067】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第2のシールド電線4が車輪速検出用の信号を伝送する場合について説明したが、これに限らない。つまり、第2のシールド電線4によって伝送される信号は、例えばタイヤ111の空気圧や温度を示す信号であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…車両
11…車輪
12…電動ブレーキ装置(電源供給対象)
14…制御装置
2…ワイヤハーネス
2A…複合ケーブル
20…シース
21,22…電源線
23,24…電源コネクタ
3…第1のシールド電線
30…第1の信号線
31,32…絶縁電線
33,34,43…接続コネクタ
4…第2のシールド電線
40…第2の信号線
41,42…絶縁電線
5…介在物
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D