【実施例】
【0061】
以下、実施例と比較例を示す。
【0062】
以下で説明する各実施例および比較例において、透明フィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(0.1mm厚)、光硬化樹脂としてUV硬化樹脂のオグソール(登録商標)EA−F5003(大阪ガスケミカル(株)社製)を用いた。
【0063】
凹凸面の表面形状(具体的には、三次元表面形状パラメータ)を共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス(株)製レーザー顕微鏡LEXT OLS4000)を用いて計測し、カットオフ値は80μmとした。
【0064】
また、作製された映像投影構造体100の光学特性(可視光透過率、ヘイズ、可視光反射率等)を、D65光源を用いて測定した。
【0065】
作製された映像投影窓の反射視野角の広さを比較する方法として、高輝度光源(超高圧水銀ランプなど)の光を映像投影窓に照射し、検出角度を変えながら分光放射輝度計(例えばコニカミノルタ製 CS−1000など)を用いて反射光強度を測定する方法で行った。すなわち、映像投影窓の法線方向から光を入射させ、同窓で反射し後方散乱した光強度を、検出角度5°〜70°まで変え測定する(映像投影窓の法線方向を0°、同窓に平行な方向を90°とする)。白色校正板についても、同様に検出角度を変えて反射光強度を測定し、各検出角度において、白色校正板による反射光強度を1とした場合の映像投影窓による反射光強度相対値を求めた。さらに、検出角度70°および5°での反射光強度相対値から求めた減衰率(10log
10(検出角度70°での反射光強度相対値/検出角度5°での反射光強度相対値)をランプ反射光強度減衰率(dB)とした。
【0066】
以下の実施例および比較例において、映像投影構造体100として、室内等に設けられた窓において使用される構造体を想定し、映像投影構造体100を、映像投影窓と表現する。ただし、以下の実施例における映像投影構造体100は、映像投影窓に限定されない。
【0067】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの上に、UV硬化樹脂をダイコートにより塗布し、この上に成形型90を載置した。成形型90は凹凸90aが形成されている面が、UV硬化樹脂の上になるように置き、成形型90の側から1000mJのUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化した。成形型90を剥がし、凹凸面の表面形状を測定した。次いで凹凸面にスパッタリング法によりAg膜を12nm製膜した。Ag膜の上にUV硬化樹脂をダイコートにより塗布し、UV硬化樹脂の側から1000mJのUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化した。
【0068】
図7は、実施例1の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。
【0069】
なお、
図7(A)には、第1の透明層21の凹凸面の三次元形状が示されている。なお実施例1では、
図7(A)に示す転写面を作製可能な凹凸を有する成形型90を使用した。
【0070】
表2および表3には、計測された130μm角の三次元表面形状パラメータが示されている。表2には、測定された光学特性(可視光の透過率、ヘイズ、可視光の拡散反射率(Rv))も示されている。表2には、ランプ反射光強度減衰率も示されている。ランプ反射光強度減衰率については後述する。表2には、二次元断面プロファイルにおける10μmあたりの変曲点の個数が示されている。表2には、10μmあたりの変曲点の個数とともに、ヘイズおよびヘイズを可視光の拡散反射率で除した値も示されている。また、表2および表3では、比較例3の場合を除き、小数点以下2桁目の値は四捨五入されている。
【0071】
なお、表2および表3には、実施例2、3および比較例1〜3の三次元表面形状パラメータおよび光学特性等も示されている。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表2に示されるように、D65光源における透過率は49.0%、ヘイズは5.0%であった。また、作製された映像投影窓の反射強度の視野角を調べるために、映像投影窓の法線方向から光を入射させ、映像投影窓で反射し後方散乱した光強度を、検出角度を変えて測定した。映像投影窓の法線方向を0°、映像投影窓に平行な方向を90°とし、検出角度70°および5°での反射強度から求めた減衰率(10log
10(検出角度70°での反射強度/検出角度5°での反射強度):ランプ反射光強度減衰率)は、−4.9dBであった。
【0075】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値(0dBに近い値)が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0076】
[実施例2]
図8は、実施例2の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例2では、
図8(A)に示す転写面を作製可能な凹凸を有する成形型90を使用した。
【0077】
表2に示されるように、D65光源における透過率は44.9%、ヘイズは6.1%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−4.1dBであった。
【0078】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値(0dBに近い値)が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0079】
[実施例3]
図9は、実施例3の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状の負荷曲線を示す説明図である。
【0080】
表2に示されるように、D65光源における透過率は51.2%、ヘイズは1.7%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−2.1dBであった。
【0081】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値(0dBに近い値)が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0082】
[比較例1]
図10は、比較例1の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。比較例1では、
図10(A)に示す転写面を作製可能な凹凸を有する成形型90を使用した。
【0083】
表2および表3に示されているように、かつ、
図10(A)、(B)からわかるように、SpkおよびSvkの値が大きい。
【0084】
表2に示されるように、D65光源における透過率は45.5%、ヘイズは19.3%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−10.2dBであった。実施例1および実施例2に比べて、ヘイズが大きく、映像投影窓として良好な特性が得られなかった。
【0085】
[比較例2]
図11は、比較例2の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。比較例2では、
図11(A)に示す転写面を作製可能な凹凸を有する成形型90を使用した。
【0086】
表2および表3に示されているように、かつ、
図11(A)、(B)からわかるように、比較例1と同様、SpkおよびSvkの値が大きい。
【0087】
また、表2に示されるように、D65光源における透過率は40.5%、ヘイズは17.7%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−4.3dBであった。実施例1および実施例2に比べて、ランプ反射光強度減衰率の程度はさほど変わらないが、ヘイズが大きく、映像投影窓として良好な特性が得られなかった。
【0088】
[比較例3]
図12は、比較例3の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する2つの断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。比較例3では、
図12(A)に示す転写面を作製可能な凹凸を有する成形型90を使用した。
【0089】
表2および表3に示されているように、かつ、
図12(A)、(B)からわかるように、表面形状はほぼ平坦であるが、クルトシス(尖度)Skuの値が大きい。
【0090】
また、表2に示されるように、D65光源における透過率は51.1%、ヘイズは2.8%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−25.1dBであった。実施例1および実施例2に比べて、ヘイズは小さいが、ランプ反射光強度減衰率が大きく、映像投影窓として良好な特性が得られなかった。
【0091】
[実施例4]
図13は、実施例4の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例4では、転写面が
図13(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0092】
表4および表5には、計測された三次元表面形状パラメータが示されている。表4には、測定された光学特性(可視光の透過率、ヘイズ、可視光の拡散反射率(Rv))も示されている。表4には、ランプ反射光強度減衰率も示されている。表4には、10μmあたりの変曲点の個数が示されている。表4には、変曲点の個数とともに、ヘイズおよびヘイズを可視光の拡散反射率で除した値も示されている。
【0093】
なお、表4および表5には、実施例5〜10の三次元表面形状パラメータおよび光学特性等も示されている。
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
表4に示されるように、D65光源における透過率は50.1%、ヘイズは5.0%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−16.9dBであった。
【0097】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として大きくはない値(0dBに近い値)が得られている。その結果、低ヘイズと比較的広い視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0098】
[実施例5]
図14は、実施例5の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例5では、転写面が
図14(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0099】
表4に示されるように、D65光源における透過率は48.6%、ヘイズは6.5%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−15.5dBであった。
【0100】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として大きくはない値が得られている。その結果、低ヘイズと比較的広い視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0101】
[実施例6]
図15は、実施例6の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例6では、転写面が
図15(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0102】
表4に示されるように、D65光源における透過率は47.5%、ヘイズは8.2%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−14.0dBであった。
【0103】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として大きくはない値が得られている。その結果、低ヘイズと比較的広い視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0104】
[実施例7]
図16は、実施例7の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例7では、転写面が
図16(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0105】
表4に示されるように、D65光源における透過率は45.9%、ヘイズは8.2%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−9.6dBであった。
【0106】
すなわち、ヘイズとして小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0107】
[実施例8]
図17は、実施例8の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例8では、転写面が
図17(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0108】
表4に示されるように、D65光源における透過率は44.9%、ヘイズは11.5%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−8.0dBであった。
【0109】
すなわち、ヘイズとして比較的小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0110】
[実施例9]
図18は、実施例9の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例9では、転写面が
図18(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0111】
表4に示されるように、D65光源における透過率は39.7%、ヘイズは11.9%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−6.0dBであった。
【0112】
すなわち、ヘイズとして比較的小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0113】
[実施例10]
図19は、実施例10の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。実施例10では、転写面が
図19(A)に示される凹凸となる成形型90を使用した。
【0114】
表4に示されるように、D65光源における透過率は40.3%、ヘイズは13.0%であった。また、ランプ反射光強度減衰率は、−4.4dBであった。
【0115】
すなわち、ヘイズとして比較的小さい値が得られ、かつ、ランプ反射光強度減衰率として小さい値が得られている。その結果、低ヘイズと広視野角とが両立され、映像投影窓として良好な特性が得られた。
【0116】
[実施例11]
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの上に、アクリル微粒子(平均粒子径3μm)を分散させた熱可塑性樹脂をダイコートにより塗布することで、表面に凹凸90aが形成されている成型型90を作製した。次に、別途用意したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの上に、UV硬化樹脂をダイコートにより塗布し、この上に成形型90を載置した。成形型90は凹凸90aが形成されている面が、UV硬化樹脂の上になるように置き、成形型90の側から1000mJのUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化した。成形型90を剥がし、凹凸面の表面形状を測定した。次いで凹凸面にスパッタリング法によりAg膜を12nm製膜した。Ag膜の上にUV硬化樹脂をダイコートにより塗布し、UV硬化樹脂の側から1000mJのUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化した。
【0117】
図20は、実施例11の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。
【0118】
[実施例12]
実施例11に使用したアクリル微粒子とは平均粒子径が異なるアクリル微粒子(平均粒子径1μm)を分散させた熱可塑性樹脂を用いる以外は実施例11と同様に成形型90を作製した。
図21は、実施例12の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。
【0119】
[実施例13]
実施例11に使用したアクリル微粒子とは平均粒子径が異なるアクリル微粒子(平均粒子径0.8μm)を分散させた熱可塑性樹脂を用いる以外は実施例11と同様に成形型90を作製した。
図22は、実施例13の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。
【0120】
[比較例4]
実施例11に使用したアクリル微粒子とは平均粒子径が異なるアクリル微粒子(平均粒子径5μm)を分散させた熱可塑性樹脂を用いる以外は実施例11と同様に成形型90を作製した。
図23は、比較例4の映像投影窓の一部における第1の透明層21の凹凸面の三次元形状(A)、および基材10の表面と直交する一断面における二次元表面形状(二次元断面プロファイル)(B)および負荷曲線(C)を示す説明図である。
【0121】
実施例11〜13、比較例4における、表4および表5と同様の三次元表面形状パラメータおよび光学特性等が表6および表7に示される。
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
なお、背景が透過する窓としての十分な機能を得るためにヘイズが17%以下であることが好ましいが、実施例1〜13の映像投影窓のヘイズは、いずれも17%以下になっている。背景の視認性をより良好にするには、ヘイズが10%以下であることが好ましいが、実施例1〜7の映像投影窓のヘイズが10%以下になっている。ヘイズが7%以下であると、背景の視認性をさらに良好にするために好ましいが、実施例1〜5の映像投影窓のヘイズが7%以下になっている。
【0125】
表2、表4および表6から明らかなように、実施例1〜13の映像投影窓の可視光の透過率は、いずれも、好ましい範囲に入っている。
【0126】
図24には、実施例1〜13および比較例1〜4について、視野角に関係する指標であるランプ反射光強度減衰率と、ヘイズに関係する指標であるヘイズ/可視光拡散反射率の比とがプロットされている。両特性がトレードオフになる実施例4〜13のラインに対し、実施例1〜3はその内側の領域、すなわち、ランプ反射光強度減衰率・ヘイズともに低い領域にプロットされ、これらがより好ましいことがわかる。これに対し比較例1〜4は、実施例4〜13のラインの外側の領域にプロットされ、好ましくない例であることがわかる。
【0127】
図25は、実施例1、2、4〜10の映像投影窓における第1の透明層21の表面形状に関する最短の自己相関長さSalとヘイズを可視光の拡散反射率で除した値との関係が示された説明図である。
図26は、コア部のレベル差Skとランプ反射強度減衰率との関係が示された説明図である。
【0128】
図24および
図25に示されるように、実施例では、ヘイズを可視光の拡散反射率で除した値は、0.1以上になっている。また、比較例では、0.08および1.06以上になっていることから(表2参照)、ヘイズを可視光の拡散反射率で除した値の好ましい値は、ほぼ0.1以上1.0以下であるといえる。
【0129】
背景の視認性をより良好にするには、ヘイズを可視光の拡散反射率で除した値は、0.1以上0.5以下が好ましい(実施例1〜7が該当)。また、背景の視認性をさらに良好にするには、ヘイズを可視光の拡散反射率で除した値は、0.1以上0.3以下が好ましい(実施例1〜5が該当)。
【0130】
広い視野角を確保するにはランプ反射強度減衰率の値が小さい(絶対値で)ことが好ましいが、
図24および
図26に示されるように、実施例1〜13の場合には、−18dBよりも小さい(絶対値で)。
【0131】
なお、ランプ反射強度減衰率に着目すると、比較例3と比較して、視野角が広くなるよう改善するために、その値は、−20dB以下(絶対値で)あることが好ましい。より広い視野角を得るには、ランプ反射強度減衰率は、−10dB以下(絶対値で)あることがより好ましい(実施例1〜3、7〜1
3が該当)。さらに広い視野角を得るために、ランプ反射強度減衰率は、−5dB以下(絶対値で)あることがさらに好ましい(実施例1〜3
、10〜12が該当)。
【0132】
図27は、クルトシスSkuが4以上である(表4参照)実施例4〜10の場合の最短の自己相関長さSalをコア部のレベル差Skで除した値(Sal/Sk)と、ヘイズを可視光の拡散反射率で除した値との関係(A)およびランプ反射強度減衰率との関係(B)が示された説明図である。
【0133】
実施例1〜13および比較例1〜4の映像投影構造体100における第1の透明層21の表面形状の凹凸を評価した。具体的には、面分解能0.12μmおよび高さ分解能0.01μmにて測定された130μm角の領域の三次元表面形状プロファイルを、基材10の表面と直交する断面で1024分割することで得られた、二次元断面プロファイル(測定長さ130μm×1024本)における、変曲点の数を計数した。基材10の表面と直交する一断面における二次元断面プロファイル(具体的には、第1の透明層21の法線方向に平行な断面における断面曲線)における変曲点の数を計数した。
図28は、測定長さ10μmあたりの変曲点の個数と、ヘイズを可視光の拡散反射率で除した値との関係が示された説明図である。
図28において、変曲点の数が0.1個/10μm以上、28個/10μm以下は視認性が良好であった。
【0134】
実施例1〜13における二次元表面粗さパラメータが表8に示される。
実施例1〜13の二次元表面粗さパラメータにおいて、粗さ曲線要素の平均長さを表わすRsmは、三次元表面粗さパラメータにおいて最短の自己相関長さであるSalと、概ね正の相関を示した(表2、4、6、8参照)。また、RqとSqおよびRaとSaは、各々、概ね正の相関を示した。実施例1〜13において、Rkuは、概ねSkuと正の相関を示した。実施例1〜13において、RΔqは粗さ曲線の傾きを表わし、Sal/Sqと概ね負の相関が見られた。また、実施例1〜13において、ヘイズ/Rvと正の相関があり、RΔqの値が小さい場合に、ヘイズ/Rvの値が小さいものが得られた。
【0135】
【表8】
【0136】
さらにRp、Rz、Rt、Ra、Rqについても、ヘイズ/Rvと概ね正の相関がみられた(実施例2、4〜13)。また、Rp、Rz、Rt、Ra、Rqの値が大きいほど、ランプ反射光強度の減衰率が概ね小さくなる、すなわち視野角が広くなる傾向が見られた(実施例1〜13)。
【0137】
次に、上記の実施の形態および実施例の映像投影構造体100の用途を説明する。
【0138】
建物等の構造物における構造体の使い方として、以下の用途が挙げられる。
・ショーケース、展示ケース、ショールーム、ドア・パーティション・壁等のインテリア等に用い、映像を投影して展示品の情報や教育情報などの各種情報を表示させる
・建物等の外壁に用い、映像を投影してCMなどの各種情報やプロジェクションマッピングを表示させる。
【0139】
テーブルトップ、ケーシング等における用途として、以下の用途が挙げられる。
・テーブルトップ、カウンター、机(デスクトップ)、キッチンカウンター、自動販売機の窓
【0140】
また、本発明の透明スクリーンの背後に別の表示装置を配置すると、奥行きのある映像が表示できたり、異なる動きをする映像を重ねて表示させることができる。
【0141】
また、車両における用途として、以下の用途が挙げられる。
鉄道車両においては、
・運転席の背面の窓ガラス、鉄道用側窓ガラス、広告中吊り
自動車等においては、
・フロントガラスのシェード部分、自動車用フロントガラス自動車用サイドガラス自動車用サンバイザー、車内パーティション、メーター周囲
【0142】
反射光の拡散機能を利用するものとして、防眩ガラス、防眩ミラーが挙げられる。また、その他、特殊用途として、信号機カバーガラス(種々の信号表示の統合)等が挙げられる。また、自動車、電車等において、ヘッドアップディスプレイおよび透明スクリーンの両方に利用できる。
なお、2015年9月30日に出願された日本特許出願2015−192576号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。