(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さRzが0.8μm以上1.99μm以下である請求項1に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、表面粗さRzの標準偏差が0.01μm以上0.55μm以下である請求項1又は2に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さRzが0.9μm以上1.9μm以下である請求項2又は3に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さRzが1.0μm以上1.8μm以下である請求項4に記載のキャリア付銅箔。
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面高さ分布のとがり度Skuが1.00以上3.60以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層の上に積層された極薄銅層とを備える。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0039】
本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzが0.8μm以上2.0μm未満となるように制御されている。キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングして回路を形成する。このようにして基板を多層構造にしてプリント配線板を作製している。ここで、このようなプリント配線板の集積回路密度を上昇させるためには、レーザー穴を形成し、当該穴を通じて内層と外層とを接続させる。このとき、極薄銅層にレーザー穴を空けるのが困難であると当然に問題であるし、レーザー穴は大きすぎても小さすぎても種々の問題を引き起こすため適度な大きさに形成する必要がある。このように、極薄銅層のレーザー穴空け性は、穴径精度並びにレーザー出力等の諸条件に関わるため集積回路の設計及び生産性に大きく影響を及ぼす重要な特性である。本発明では、この極薄銅層のレーザー穴空け性は、キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzを0.8μm以上2.0μm未満に制御することで良好となることを見出した。当該触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzが0.8μm未満であると、極薄銅層の表面の粗さが不足して穴空け加工の際のレーザーの吸収性が悪くなり、穴が空け難くなり、空けたとしても小さな穴となってしまうという問題が生じる。また、当該触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzが2.0μm以上であると、極薄銅層の表面の粗さが大き過ぎて穴空け加工の際のレーザーの吸収性が過剰となり、穴が大きくなり過ぎてしまうという問題が生じる。当該触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzは、0.8μm以上1.99μm以下が好ましく、0.9μm以上1.9μm以下μmがより好ましく、1.0μm以上1.8μm以下が更により好ましい。なお、上記「220℃で2時間加熱」は、キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着する場合の典型的な加熱条件を示している。
【0040】
また、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzの標準偏差が0.62μm以下となるように制御されている。当該触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzの標準偏差が0.62μmを超えると、レーザー穴径のばらつきが大きくなったり(すなわち標準偏差が大きくなる)、エッチングファクターのばらつきが大きくなる(すなわち標準偏差が大きくなる)という問題が生じる。また、当該触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzの標準偏差は、0.01μm以上0.55μm以下であるのが好ましく、0.02μm以上0.45μm以下であるのが更により好ましく、0.05μm以上0.40μm以下であるのがより好ましく、0.05μm以上0.35μm以下であるのがより好ましい。
【0041】
また、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される極薄銅層の中間層側の表面高さ分布のとがり度(クルトシス)Skuが0.50以上3.70以下に制御されているのが好ましい。Skuが0.50未満であると、極薄銅層の表面の凸部の形状が平らになるため、穴空け加工の際のレーザーの吸収性が悪くなり、穴が空け難くなり、空けたとしても小さな穴となってしまうという問題が生じるおそれがある。また、3.70より大きい場合、極薄銅層の表面の凹凸の凸部が鋭い形状となり、レーザーのエネルギーが局所的に吸収され、レーザーの照射径に対して、実際の穴の大きさが大きくなるという問題が生じるおそれがある。本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される極薄銅層の中間層側の表面高さ分布のとがり度Skuが1.00以上3.60以下に制御されているのがより好ましく、1.50以上3.30以下に制御されているのが更により好ましく、1.50以上3.20以下に制御されているのが更により好ましく、1.50以上3.10以下に制御されているのが更により好ましく、1.50以上3.00以下に制御されているのが更により好ましい。
【0042】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCDフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0043】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。
【0044】
本発明の上述の触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さRzは、キャリアの極薄銅層側表面形態を調整することで制御することができる。以下に、本発明のキャリアの作製方法について説明する。
【0045】
キャリアとして電解銅箔を使用する場合の製造条件の一例は、以下に示される。
<電解液組成>
銅:90〜110g/L
硫酸:90〜110g/L
塩素:50〜100ppm
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10〜30ppm
レべリング剤2(アミン化合物):10〜30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
【0046】
【化1】
(上記化学式中、R
1及びR
2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0047】
<製造条件>
電流密度:70〜100A/dm
2
電解液温度:50〜60℃
電解液線速:3〜5m/sec
電解時間:0.5〜10分間
【0048】
極薄銅層の中間層側の表面粗さRz及びその標準偏差は、キャリアの極薄銅層側表面形態を調整することで制御する。当該キャリアの極薄銅層側表面形態の調整としては、以下の(1)〜(3)の調整法が挙げられる。なお、表2のように、キャリアの極薄銅層側表面の形態と、キャリア側極薄銅層表面の形態とは近い形態となる。そのため、キャリアの極薄銅層側表面の形態を調整することで、所望のキャリア側極薄銅層表面の形態を有するキャリア付極薄銅箔を得ることができる。
【0049】
(1)低粗度及び高光沢のキャリアに対して、ソフトエッチング処理または逆電解処理を行う。
具体的には、表面粗さRzが0.2μm〜0.6μmで60度鏡面光沢度が500%以上のキャリアに対して、ソフトエッチング処理(例えば、硫酸5〜15vol%、過酸化水素0.5〜5.0wt%の水溶液で、10〜30℃にて0.5〜10分間のエッチング処理)、或いは、逆電解処理(光沢面に電解研磨して凹凸を形成する処理)を行う。
なお、上記「逆電解研磨」は電解研磨である。一般に、電解研磨は平滑化を目的とするので、電解銅箔に電解研磨を施すとすれば、光沢面とは逆側の表面(粗面)が対象となるのが通常の考え方である。しかしながら、ここでは光沢面に電解研磨して凹凸を形成するので、通常とは逆の考え方の電解研磨処理、すなわち逆電解研磨処理となる。なお、逆電解処理による銅の溶解量は2〜20g/m
2とする。また、逆電解研磨処理の電流密度は0.5〜50A/dm
2とする。
【0050】
(2)サンドブラストで処理した圧延ロールでの圧延によりキャリアを製造する。
具体的には、キャリアとして圧延銅箔を用意し、当該圧延銅箔に対し、サンドブラストにより表面を粗化した圧延ロールを用いて仕上げの冷間圧延を行う。このとき、圧延ロール粗さRa=0.39〜0.42μm、油膜当量29000〜40000とすることができる。
ここで油膜当量は以下の式で表される。
油膜当量={(圧延油粘度[cSt])×(通板速度[mpm]+ロール周速度[mpm])}/{(ロールの噛み込み角[rad])×(材料の降伏応力[kg/mm
2])}
圧延油粘度[cSt]は40℃での動粘度である。
油膜当量を29000〜40000とするためには、高粘度の圧延油を用いたり、通板速度を速くしたりする等、公知の方法を用いればよい。
【0051】
(3)所定の電解条件によりキャリアを製造する。
具体的には、硫酸銅電解液(銅濃度:80〜120g/L、硫酸濃度70〜90g/L)を用いて、添加剤として高濃度ニカワ(ニカワ濃度:3〜10質量ppm)を用い、高電流密度(75〜110A/dm
2)且つ高線流速(3.7〜5.0m/sec)条件にて電解銅箔のキャリアを作製する。
【0052】
<中間層>
キャリアの片面又は両面上には中間層を設ける。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。
また、例えば、中間層はキャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物からなる層を形成することで構成することができる。
中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。なお、中間層をクロメート処理や亜鉛クロメート処理やめっき処理で設けた場合には、クロムや亜鉛など、付着した金属の一部は水和物や酸化物となっている場合があると考えられる。
また、例えば、中間層は、キャリア上に、ニッケル、ニッケル−リン合金又はニッケル−コバルト合金と、クロムとがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロムとの界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。中間層におけるニッケルの付着量は好ましくは100μg/dm
2以上40000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上4000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上2500μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上1000μg/dm
2未満であり、中間層におけるクロムの付着量は5μg/dm
2以上100μg/dm
2以下であることが好ましい。中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。
【0053】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には1〜5μm、更に典型的には1.5〜5μm、更に典型的には2〜5μmである。
【0054】
<粗化処理>
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
【0055】
例えば、粗化処理としての銅−コバルト−ニッケル合金めっきは、電解めっきにより、付着量が15〜40mg/dm
2の銅−100〜3000μg/dm
2のコバルト−100〜1500μg/dm
2のニッケルであるような3元系合金層を形成するように実施することができる。Co付着量が100μg/dm
2未満では、耐熱性が悪化し、エッチング性が悪くなることがある。Co付着量が3000μg/dm
2 を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、エッチングシミが生じ、また、耐酸性及び耐薬品性の悪化がすることがある。Ni付着量が100μg/dm
2未満であると、耐熱性が悪くなることがある。他方、Ni付着量が1500μg/dm
2を超えると、エッチング残が多くなることがある。好ましいCo付着量は1000〜2500μg/dm
2であり、好ましいニッケル付着量は500〜1200μg/dm
2である。ここで、エッチングシミとは、塩化銅でエッチングした場合、Coが溶解せずに残ってしまうことを意味しそしてエッチング残とは塩化アンモニウムでアルカリエッチングした場合、Niが溶解せずに残ってしまうことを意味するものである。
【0056】
このような3元系銅−コバルト−ニッケル合金めっきを形成するための一般的浴及びめっき条件の一例は次の通りである:
めっき浴組成:Cu10〜20g/L、Co1〜10g/L、Ni1〜10g/L
pH:1〜4
温度:30〜50℃
電流密度D
k:20〜30A/dm
2
めっき時間:1〜5秒
【0057】
このようにして、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔が製造される。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がして銅張積層板とし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0058】
また、キャリアと、キャリア上に中間層が積層され、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔は、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群のから選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
【0059】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0060】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂などを含む樹脂を好適なものとしてあげることができる。
【0061】
これらの樹脂を例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエンなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート皮膜層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。
【0062】
前記樹脂層を備えたキャリア付銅箔(樹脂付きキャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリヤを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0063】
この樹脂付きキャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張り積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0064】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
【0065】
この樹脂層の厚みは0.1〜80μmであることが好ましい。
【0066】
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。
【0067】
一方、樹脂層の厚みを80μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
【0068】
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0069】
更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0070】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0071】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0072】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0073】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0074】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0075】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0076】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0077】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0078】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0079】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0080】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0081】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0082】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0083】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0084】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0085】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔を例に説明するが、これに限られず、粗化処理層が形成されていない極薄銅層を有するキャリア付銅箔を用いても同様に下記のプリント配線板の製造方法を行うことができる。
まず、
図2−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、
図2−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、
図2−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、
図3−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、
図3−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図3−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、
図4−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、
図4−Hに示すように、ビアフィル上に、上記
図2−B及び
図2−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、
図4−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図5−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、
図5−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
【0086】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、
図4−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0087】
上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば
図5−Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、
図5−J及び
図5−Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
【0088】
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂(レジン)には本明細書に記載の樹脂層および/または樹脂および/またはプリプレグを使用することができる。
【0089】
また、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔の表面に基板または樹脂層を有してもよい。当該基板または樹脂層を有することで一層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板または樹脂層には、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板または樹脂層を用いることが出来る。例えば前記基板または樹脂層として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0091】
(実施例1〜9、11、比較例1〜6)
電解槽の中に、チタン製の回転ドラムと、ドラムの周囲に極間距離を置いて電極を配置した。次に、電解槽において表1に記載のキャリア箔製造条件で電解を行い、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に厚さ18μmの電解銅箔を製造し、これを銅箔キャリアとした。実施例1、2、6、8及び9および比較例6については、銅箔キャリアに表1に記載の条件で表面処理を行った。電解時間は0.5〜2分、電解液温度は40〜60℃とした。なお、実施例1、2、6、8及び9および比較例6については表面処理後の銅箔キャリアの厚みがそれぞれ12μm、5μm、70μm、12μm、35μm、35μmであった。また、比較例3については厚み12μmの銅箔キャリアとした。
ここで、実施例2及び8の表面処理について説明する。実施例2及び8では、形成した電解銅箔の析出面(マット面またはM面ともいう)側にカソードを配置し、銅箔をアノードとして、直流による電解処理を施すことにより、銅箔のマット面に逆電解研磨処理を行い、銅を実施例2では3〜8g/m
2、実施例8では8〜15g/m
2溶解させた。なお、逆電解研磨処理の電流密度は実施例2では5〜15A/dm
2、実施例8では16〜25A/dm
2とした。銅箔幅方向の60度鏡面光沢度は13〜40、銅箔長さ方向の60度鏡面光沢度は20〜94であった。なお、60度鏡面光沢度はJIS Z8741に準拠した日本電色工業株式会社製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1を使用して入射角60度で測定した。
【0092】
続いて、以下の条件にて中間層を形成した。
以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより4000μg/dm
2の付着量のNi層を形成した。
【0093】
・Ni層
硫酸ニッケル:250〜300g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:15〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
pH:4〜6
浴温:50〜70℃
電流密度:3〜15A/dm
2
【0094】
水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、Ni層の上に11μg/dm
2の付着量のCr層を以下の条件で電解クロメート処理することにより付着させた。
・電解クロメート処理
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0.1〜2.6A/dm
2
クーロン量:0.5〜30As/dm
2
【0095】
中間層の形成後、中間層の上に厚み1〜10μmの極薄銅層を以下の条件で電気めっきすることにより形成し、キャリア付銅箔とした。
・極薄銅層
銅濃度:30〜120g/L
H
2SO
4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm
2
なお、実施例2、3には極薄銅層の上に更に、粗化処理層、耐熱処理層、クロメート層、シランカップリング処理層を設けた。
・粗化処理
Cu:10〜20g/L
Co:1〜10g/L
Ni:1〜10g/L
pH:1〜4
温度:40〜50℃
電流密度Dk:20〜30A/dm
2
時間:1〜5秒
Cu付着量:15〜40mg/dm
2
Co付着量:100〜3000μg/dm
2
Ni付着量:100〜1000μg/dm
2
・耐熱処理
Zn:0〜20g/L
Ni:0〜5g/L
pH:3.5
温度:40℃
電流密度Dk :0〜1.7A/dm
2
時間:1秒
Zn付着量:5〜250μg/dm
2
Ni付着量:5〜300μg/dm
2
・クロメート処理
K
2Cr
2O
7
(Na
2Cr
2O
7或いはCrO
3):2〜10g/L
NaOH或いはKOH:10〜50g/L
ZnO或いはZnSO
47H
2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80℃
電流密度0.05〜5A/dm
2
時間:5〜30秒
Cr付着量:10〜150μg/dm
2
・シランカップリング処理
ビニルトリエトキシシラン水溶液
(ビニルトリエトキシシラン濃度:0.1〜1.4wt%)
pH:4〜5
時間:5〜30秒
【0096】
(実施例10)
圧延銅箔(タフピッチ銅、JIS H3100 C1100)を準備し、当該圧延銅箔に対し、サンドブラストにより表面を粗化した圧延ロールを用いて仕上げの冷間圧延を行った。このとき、圧延ロール粗さRa=0.39〜0.42μm、油膜当量35000とした。これにより銅箔キャリアを得た。
続いて、実施例1と同様にして電解銅箔の表面(マット面)に中間層及び極薄銅層を形成することでキャリア付銅箔を作製した。
【0097】
上記のようにして得られた実施例及び比較例のキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
【0098】
<極薄銅層の厚み>
作製したキャリア付銅箔の極薄銅層の厚みは、FIB−SIMを用いて観察した(倍率:10000〜30000倍)。極薄銅層の断面を観察することで30μm間隔で5箇所測定し、平均値を求めた。
【0099】
<極薄銅層の表面粗さ>
キャリア付極薄銅層と基材(三菱ガス化学(株)製:GHPL−832NX−A)に対して、220℃で2時間加熱の積層プレスを行った後、銅箔キャリアをJIS C 6471に準拠して引き剥がし、極薄銅層を露出させた。次に、以下の手順により、極薄銅層の露出面の各種粗さを測定した。
(1)極薄銅層の中間層側の表面粗さ
極薄銅層の中間層側の表面粗さRz(触針)を、JIS B0601−1982に準拠して、株式会社小阪研究所製接触粗さ計Surfcorder SE−3C触針式粗度計を用いて測定した。Rz(触針)を任意に10箇所測定し、そのRz(触針)の平均値をRz(触針)の値とした。また、Rz(触針)について10箇所の値の標準偏差を算出した。
さらに、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS4000(LEXT OLS 4000)にて、極薄銅層の中間層側の表面のSku(レーザー)をISO25178ドラフトに準拠して測定した。
(2)極薄銅層を形成する側の、キャリアの表面粗さ
極薄銅層を形成する側の、キャリアの表面粗さRz(触針)を、JIS B0601−1982に準拠して、株式会社小阪研究所製接触粗さ計Surfcorder SE−3C触針式粗度計を用いて測定した。Rz(触針)を任意に10箇所測定し、そのRz(触針)の平均値をRz(触針)の値とした。また、Rz(触針)について10箇所の値の標準偏差を算出した。
さらに、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS4000(LEXT OLS 4000)にて、銅箔表面のSkuをISO25178ドラフトに準拠して測定した。
Skuの測定については、極薄銅層及びキャリア表面の観察において評価長さ(基準長さ)257.9μm、評価面積(基準面積)66524μm
2、カットオフ値ゼロの条件で、キャリアが圧延銅箔である場合は圧延方向と垂直な方向(TD)の測定で、または、キャリアが電解銅箔である場合は電解銅箔の製造装置における電解銅箔の進行方向と垂直な方向(TD)の測定で、それぞれ値を求めた。なお、レーザー顕微鏡による表面のSkuの測定環境温度は23〜25℃とした。なお、実施例1、2、6、8及び9および比較例6については表面処理後の銅箔キャリアのRz及びSkuを測定した。
【0100】
<レーザー穴空け性>
次に、極薄銅層の未処理表面に、レーザーを下記条件にて1ショット照射し、照射後の穴形状を顕微鏡にて観察し、計測を実施した。表では、穴空けの「実数」として、12個の地点に穴空けを試みて実際に何個(X)の穴が空けられたかを示し(X/12)、さらにそのときの穴の空いた「割合」(%)を示している。また、表には、このとき生じた穴の平均径、生じた穴の径の標準偏差及び平均径/ビーム径についても示す。なお、穴の径は、穴を取り囲む最小円の直径とした。
・ガス種:CO
2
・銅箔開口径(狙い):80μm径
・ビーム形状:トップハット
・出力:2.40W/10μs
・パルス幅:33μs
・ショット数:1ショット
・穴空け数:12穴/エリア
【0101】
<エッチング性>
キャリア付銅箔をポリイミド基板に貼り付けて220℃で2時間加熱圧着し、その後、極薄銅層をキャリアから剥がした。続いて、ポリイミド基板上の極薄銅層表面に、感光性レジストを塗布した後、露光工程により50本のL/S=5μm/5μm幅の回路を印刷し、銅層の不要部分を除去するエッチング処理を以下のスプレーエッチング条件にて行った。
(スプレーエッチング条件)
エッチング液:塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
液温:60℃
スプレー圧:2.0MPa
エッチングを続け、回路トップ幅が4μmになるまでの時間を測定し、さらにそのときの回路ボトム幅(底辺Xの長さ)及びエッチングファクターを評価した。エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。
図1に、回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このXは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。なお、a=(X(μm)−4(μm))/2で計算した。エッチングファクターは回路中の12点を測定し、平均値をとったものを示す。これにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。また、12点のエッチングファクターの標準偏差も算出することで、エッチングにより形成した回路の直線性の良し悪しを判定することができる。
本発明では、エッチングファクターが4以上をエッチング性:○、2.5以上4未満をエッチング性:△、2.5未満或いは算出不可または回路形成不可をエッチング性:×、剥離不可をエッチング性:−と評価した。また、エッチングファクターの標準偏差は小さいほど回路の直線性が良好であると云える。エッチングファクターの標準偏差が0.8未満を直線性:○、0.8〜1.2未満を直線性:△、1.2以上を直線性:×と判断した。
試験条件及び試験結果を表1及び表2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
(評価結果)
実施例1〜11は、いずれも極薄銅層の中間層側の表面粗さRz(触針)が0.8μm以上2.0μm未満であり、且つ、表面粗さRz(触針)の標準偏差が0.62μm以下であったため、レーザー穴空け性及びエッチング性が良好であった。
比較例1、5は、極薄銅層の中間層側の表面粗さRz(触針)がいずれも0.8μm未満であったため、レーザー穴空け性が不良であった。
比較例2〜4は、極薄銅層の中間層側の表面粗さRz(触針)がいずれも2.0μm以上であったため、エッチング性が不良であった。
比較例6は、極薄銅層の中間層側の表面粗さRz(触針)の標準偏差が0.62μmを超えたため、レーザー穴空け性が不良であった。