(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電荷輸送性モノマーまたは数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマーもしくはポリマーからなる電荷輸送物質、またはこの電荷輸送物質およびドーパント物質からなる電荷輸送性材料と、少なくとも1種の良溶媒および少なくとも1種の貧溶媒を含んで構成される混合溶媒と、を含有し、
前記良溶媒および貧溶媒の沸点差ΔT℃の絶対値が、|ΔT|<20℃を満たし、
25℃での粘度が7.5mPa・s以下、かつ、23℃での表面張力が30.0〜40.0mN/mであり、
前記電荷輸送性材料が、前記混合溶媒中に溶解または均一に分散していることを特徴とする電荷輸送性ワニス(但し、前記混合溶媒が、前記良溶媒および貧溶媒の組み合わせとして、N,N−ジメチルアセトアミドおよびシクロヘキサノールを含むものを除く。)。
前記良溶媒が、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、りん酸トリメチル、りん酸トリエチル、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の電荷輸送性ワニス。
前記貧溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、オクチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−メトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリメチレングリコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、グリシドール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジアセトンアルコール、2−エチルヘキサノール、2−フェノキシエタノール、α−テルピネオール、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、n−ブチルフェニルエーテル、ベンジルイソアミルエーテル、o−クレジルメチルエーテル、m−クレジルメチルエーテル、p−クレジルメチルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジグリシジルエーテル、1,4−ジオキサン、トリオキサン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シオネール、メチラール、ジエチルアセタール、ギ酸プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、n−ヘキシルアセテート、酢酸第二ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−ブチル、酪酸イソアミル、オキシイソ酪酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、アセト酪酸メチル、アセト酪酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n−アミル、乳酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジアミル、マロン酸ジエチル、クエン酸トリブチル、セバチン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、2,6,8−トリメチルノナン−4−オン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、乳酸、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、ヘプタン、オクタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、メシチレン、テトラリン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキセン、α−ピネン、およびジペンテンから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の電荷輸送性ワニス。
電荷輸送性モノマーまたは数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマーもしくはポリマーからなる電荷輸送物質、またはこの電荷輸送物質および電荷受容性ドーパント物質からなる電荷輸送性材料と、溶媒とを含む電荷輸送性ワニスを用いて作製される電荷輸送性薄膜の平坦性向上方法であって、
前記溶媒として、少なくとも1種の良溶媒および少なくとも1種の貧溶媒を含んで構成される混合溶媒を用いるとともに、これら良溶媒および貧溶媒の沸点差ΔT℃の絶対値を|ΔT|<20℃とし、
前記電荷輸送性ワニスの25℃での粘度を7.5mPa・s以下とし、かつ、前記電荷輸送性ワニスの23℃での表面張力を30.0〜40.0mN/mとすることを特徴とする電荷輸送性薄膜の平坦性向上方法(但し、前記混合溶媒が、前記良溶媒および貧溶媒の組み合わせとして、N,N−ジメチルアセトアミドおよびシクロヘキサノールを含むものを除く。)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性モノマーまたは数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマーもしくはポリマーからなる電荷輸送物質、またはこの電荷輸送物質およびドーパント物質からなる電荷輸送性材料と、少なくとも1種の良溶媒および少なくとも1種の貧溶媒を含んで構成される混合溶媒と、を含有し、良溶媒および貧溶媒の沸点差ΔT℃の絶対値が、|ΔT|<20℃を満たし、25℃での粘度が7.5mPa・s以下、かつ、23℃での表面張力が30.0〜40.0mN/mであり、電荷輸送性材料が、混合溶媒中に溶解または均一に分散しているものである。
ここで電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性、電子輸送性、正孔および電子の両電荷輸送性のいずれかを意味する。本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
なお、本発明において、溶媒の沸点および沸点差は1.01×10
5Pa(大気圧)下での値である。
【0011】
本発明の電荷輸送性ワニスでは、電荷輸送性物質または電荷輸送性材料の溶解能に優れた良溶媒と、電荷輸送性物質または電荷輸送性材料の溶解能を有しない貧溶媒とを併用するが、それらの沸点差ΔT℃の絶対値が|ΔT|<20℃を満たす必要がある。
この範囲を外れる沸点差の溶媒組成では、得られる薄膜の均一性や平坦性が低下する。より均一性、平坦性の良好な薄膜を得るためには、ΔT℃の絶対値が|ΔT|≦19℃が好ましく、|ΔT|≦18℃がより好ましい。
【0012】
良溶媒の具体例としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、りん酸トリメチル、りん酸トリエチル、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、N,N−ジメチルアセトアミド(166.1℃)、N−メチルピロリドン(202.0℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(225.0℃)が好ましい(括弧内は沸点、以下同様)。
【0013】
一方、貧溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、オクチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−メトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリメチレングリコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、グリシドール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジアセトンアルコール、2−エチルヘキサノール、2−フェノキシエタノール、α−テルピネオール、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、n−ブチルフェニルエーテル、ベンジルイソアミルエーテル、o−クレジルメチルエーテル、m−クレジルメチルエーテル、p−クレジルメチルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジグリシジルエーテル、1,4−ジオキサン、トリオキサン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シオネール、メチラール、ジエチルアセタール、ギ酸プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、n−ヘキシルアセテート、酢酸第二ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−ブチル、酪酸イソアミル、オキシイソ酪酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、アセト酪酸メチル、アセト酪酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n−アミル、乳酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジアミル、マロン酸ジエチル、クエン酸トリブチル、セバチン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、2,6,8−トリメチルノナン−4−オン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、乳酸、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール
、キシレノール、ヘプタン、オクタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、メシチレン、テトラリン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
これらの中でも、2,3−ブタンジオール(182.0℃)、シクロヘキサノール(161.1℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230.4℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(217.4℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(159.6℃)、n−ヘキシルアセテート(169.2℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(188.4℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(156.8℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216.0℃)、2−フェノキシエタノール(237.0℃)、1,3−ブタンジオール(207.4℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249.0℃)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(255.9℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(246.8℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(243.0℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(208.1℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(195.0℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120.0℃)が好ましく、2,3−ブタンジオール(182.0℃)、シクロヘキサノール(161.1℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230.4℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(217.4℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(159.6℃)、n−ヘキシルアセテート(169.2℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(188.4℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(156.8℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216.0℃)、2−フェノキシエタノール(237.0℃)、1,3−ブタンジオール(207.4℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(243.0℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(208.1℃)がより好ましい。
【0015】
良溶媒および貧溶媒の好適な組み合わせとしては、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオール、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノール、N,N−ジメチルアセトアミドとジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドとn−ヘキシルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンとトリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチルピロリドンと1,3−ブタンジオール、N−メチルピロリドンとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオールとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオールとシクロヘキサノール、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオールとジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオールとn−ヘキシルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノールとジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノールとn−ヘキシルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノールとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとジエチレングリコールジメチルエーテルとn−ヘキシルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとジエチレングリコールジメチルエーテルとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとn−ヘキシルアセテートとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと2−フェノキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテルとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテルと2−フェノキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテルと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテルとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテルとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテルと2−フェノキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテルと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテルとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテルとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノールと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノールとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノールとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと1,3−ブタンジオールとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと1,3−ブタンジオールとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリプロピレングリコールモノメチルエーテルとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとジエチレングリコールジエチルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとトリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと1,3−ブタンジオール、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテルとトリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテルと1,3−ブタンジオール、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテルとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドンとトリエチレングリコールジメチルエーテルと1,3−ブタンジオール、N−メチルピロリドンとトリエチレングリコールジメチルエーテルとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとトリエチレングリコールジメチルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドンと1,3−ブタンジオールとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンと1,3−ブタンジオールとジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドンとエチレングリコールモノヘキシルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
これらの中でも、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオール、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノール、N,N−ジメチルアセトアミドとジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドとn−ヘキシルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとエチレングリコールモノヘキシルエーテル、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドと2,3−ブタンジオールとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと2−フェノキシエタノールが特に好ましい。
なお、良溶媒および貧溶媒の少なくとも一方を2種以上用いる場合、良溶媒と貧溶媒との沸点差が最も大きくなる2種を選んだ場合の沸点差ΔT℃の絶対値が、上記範囲を満たす必要がある。
【0017】
本発明で用いる電荷輸送物質は、上記良溶媒に溶解可能であるとともに、ワニスに用いる混合溶媒に溶解または分散可能な電荷輸送性モノマー、電荷輸送性オリゴマーまたはポリマーであれば特に限定されないが、共役単位を有する電荷輸送性モノマー、数平均分子量200〜5000であり、単一の共役単位が連続している、または相異なる2種以上の共役単位が任意の順序の組み合わせで連続している電荷輸送性オリゴマーが好ましい。
【0018】
この場合、共役単位とは電荷を輸送できる原子、芳香環、共役基などであれば特に限定されるものではないが、有機溶媒に対する溶解性や良好な電荷輸送性の発現ということを考慮すると、置換または非置換の、かつ、2〜4価のアニリン、チオフェン、ジチイン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−または無金属−フタロシアニン、金属−または無金属−ポルフィリンなどを用いることが好ましい。
なお、共役単位が連結して形成される共役鎖は、環状である部分を含んでいてもよい。また、非置換とは、水素原子が結合していることを意味する。
【0019】
共役単位上の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、りん酸基、りん酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0020】
一価炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、1−メチル−2−プロペニル、1,2または3−ブテニル、ヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル、キシリル、トリル、ビフェニル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基などや、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などで置換された基が挙げられる。
【0021】
オルガノオキシ基の具体例としては、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ基などが挙げられ、これらの基を構成するアルキル基、アルケニル基およびアリール基としては、上で例示した基と同様のものが挙げられる。
【0022】
オルガノアミノ基の具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ラウリルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジノニルアミノ、ジデシルアミノ基等のジアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
【0023】
オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリペンチルシリル、トリヘキシルシリル、ペンチルジメチルシリル、ヘキシルジメチルシリル、オクチルジメチルシリル、デシルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0024】
オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ラウリルチオ基などのアルキルチオ基が挙げられる。
アシル基の具体例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ベンゾイル基等が挙げられる。
一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基およびアシル基の炭素数は、特に限定されるものではないが、炭素数1〜20が好ましく、1〜8がより好ましい。
【0025】
これらの中でも、フッ素原子、スルホン酸基、置換もしくは非置換のオルガノオキシ基、アルキル基、オルガノシリル基が好適であるが、良好な電荷輸送性を発揮させるという点から、特に、共役単位上には置換基を有しない(水素原子である)ことが好ましい。
【0026】
本発明において、電荷輸送性オリゴマーまたはポリマーからなる電荷輸送物質の数平均分子量は200〜50万である。数平均分子量が200未満では、揮発性が高くなりすぎて電荷輸送性が充分に発現されない可能性が高く、一方、50万を超えると溶剤に対する溶解性が低すぎて使用に適さない可能性が高い。
特に、電荷輸送物質の溶剤に対する溶解性を向上させることを考慮すると、その数平均分子量は5000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がより一層好ましい。
さらに、電荷輸送性物質の溶解性や電荷輸送性を均一にするということを考慮すると、分子量分布のない(分散度が1の)オリゴマーまたはポリマーであることが好ましい。
なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン換算)による測定値である。
【0027】
電荷輸送物質としては、高溶解性および高電荷輸送性を示すとともに、適切なイオン化ポテンシャルを有することから、特に、式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体、またはその酸化体であるキノンジイミン誘導体を用いることが好ましい。
【0029】
式(1)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、りん酸基、りん酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基またはスルホン酸基を示し、AおよびBは、それぞれ独立して、式(2)または(3)で表される2価の基であり、mおよびnは、それぞれ独立して、1以上、かつ、m+n≦20を満足する整数である。
【0031】
式(2)および(3)中、R
4〜R
11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、りん酸基、りん酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基またはスルホン酸基を示す。
【0032】
上記R
1〜R
11の具体例としては、先に共役単位上の置換基で述べたものと同様の置換基が挙げられ、これらの置換基は、さらにその他の任意の置換基で置換されていてもよい。
また、m+nは、良好な電荷輸送性を発現させるという点から、4以上が好ましく、溶媒に対して良好な溶解性を発現させるという点から、16以下、特に、10以下が好ましい。
【0033】
このような化合物の具体例としては、フェニルテトラアニリン、フェニルペンタアニリン、テトラアニリン(アニリン4量体)、オクタアニリン(アニリン8量体)、ヘキサデカアニリン(アニリン16量体)、(フェニルトリアニリノ)トリフェニルアミン、(フェニルトリアニリノ)ジフェニルオクチルアミン、ヘキサデカ−o−フェネチジン(o−フェネチジン16量体)、アミノテトラアニリン、フェニルテトラアニリンスルホン酸(スルホン酸基数1〜4)、(ブチルフェニル)テトラアニリン等の有機溶媒に可溶なオリゴアニリン誘導体が挙げられる。
なお、これらのオリゴアニリン誘導体等は、例えば、ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)(1994年 第67巻 p.1749−1752)、シンセティック・メタルズ(Synthetic Metals)(1997年、第84巻、p.119−120)、国際公開2008/032617号、国際公開2008/032616号、国際公開2008/129947号などに記載の方法等で製造することができる。
【0034】
なお、上記キノンジイミン構造とは、芳香族化合物の炭素環内の二重結合が一つ減り、代わりにパラあるいはオルト位にC=N二重結合を2個有する構造である。例えば、互いにパラ位にある2つのアミノ基を有するアリールジアミン化合物であれば、式(4)に示すような構造となる。
【0036】
好適な電荷輸送性物質としては、式(5)および(6)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の電荷輸送性ワニスの電荷輸送能等を向上させるために、必要に応じて電荷受容性ドーパント物質が用いられる。具体的には、正孔輸送性物質に対しては電子受容性ドーパント物質が、電子輸送性物質に対しては正孔受容性ドーパント物質が用いられる。
電荷受容性ドーパント物質の溶解性に関しては、ワニスに使用する少なくとも一種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、無機系の電子受容性物質、有機系の電子受容性物質のいずれも使用できる。
【0039】
無機系の電子受容性物質としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl
3)、四塩化チタン(IV)(TiCl
4)、三臭化ホウ素(BBr
3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF
3・OEt
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、塩化銅(II)(CuCl
2)、五塩化アンチモン(V)(SbCl
5)、五フッ化アンチモン(V)(SbF
5)、五フッ化砒素(V)(AsF
5)、五フッ化リン(PF
5)、トリス(4−ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等の金属ハロゲン化物;Cl
2、Br
2、I
2、ICl、ICl
3、IBr、IF
4等のハロゲン;リンモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸などが挙げられる。
【0040】
有機系の電子受容性物質としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p−スチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7−ジブチル−2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3−ドデシル−2−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4−ヘキシル−1−ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2−オクチル−1−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7−へキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−ヘキシル−2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7−ジノニル−4−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7−ジノニル−4,5−ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号に記載されているアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号に記載されているアリールスルホン酸化合物、ポリスチレンスルホン酸等の芳香族スルホン化合物;10−カンファースルホン酸等の非芳香族スルホン化合物;7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)等の有機酸化剤が挙げられる。
これら無機系および有機系の電子受容性物質は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらの中でも、芳香族スルホン酸化合物が好ましく、式(7)で示されるアリールスルホン酸化合物がより好ましく、特に式(8)で示されるアリールスルホン酸化合物が好適である。
【0043】
上記式(7)において、XはOまたはSを表すが、Oが好ましい。
Aは、Xおよびp個のSO
3H基以外の置換基として、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、りん酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のビシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基および炭素数1〜20のアシル基から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい、ナフタレン環またはアントラセン環を表すが、特に、SO
3H基以外の置換基を有しないナフタレン環またはアントラセン環が好ましい。
Bは、2価もしくは3価のベンゼン環、2価のp−キシリレン基、2価もしくは3価のナフタレン環、2〜4価のパーフルオロビフェニル基、または2価の2,2−ビス((ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロピル基を表す。
AおよびBにおける、各置換基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
pは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1〜4の整数である。
qは、BとXとの結合数を示し、2〜4の整数である。
【0045】
正孔受容性ドーパントの具体例としては、アルカリ金属(Li,Na,K,Cs)、リチウムキノリノラート(Liq)、リチウムアセチルアセトナート(Li(acac))等の金属錯体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、以上で説明した、良溶媒、貧溶媒、電荷輸送性物質および必要に応じて用いられる電荷受容性ドーパントを含んだ上で、25℃での粘度を7.5mPa・s以下、かつ、23℃での表面張力を30.0〜40.0mN/mとする必要がある。
上述した良溶媒と貧溶媒との沸点差の絶対値|ΔT|が20℃未満であっても、ワニスの粘度および表面張力のいずれか一方でも上記範囲外であると、得られる電荷輸送性薄膜の均一性が低下し、表面に凹凸が生じるようになる。
電荷輸送性薄膜の表面均一性をより高めるとともに、その再現性を良好にすることを考慮すると、ワニスの粘度は、25℃で7.0mPa・s以下がより好ましく、6.9mPa・s以下がより一層好ましい。なお、その粘度の下限値は特に限定されないが、通常1.0mPa・s程度である。
また、同様の理由から、ワニスの表面張力は、23℃で30.5〜39.0mN/mがより好ましく、30.7〜38.5mN/mがより一層好ましい。
【0047】
このようなワニスの粘度調整等の観点から、本発明の電荷輸送性ワニスに用いる良溶媒および貧溶媒の1種には、25℃で0.1〜200mPa・s、特に0.1〜100mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃、特に100〜250℃の溶媒を用いることが好ましい。
このような溶媒の具体例としては、上記貧溶媒として例示した、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジクリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、適切な粘度および沸点を有し、基板に対して良好な塗布性を示すという点から、特に、シクロヘキサノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
なお、粘度は、東機産業(株)製 TVE−22L型粘度計(恒温槽の温度を25℃に設定)により測定した値である。
【0048】
本発明の電荷輸送性ワニスにおいて、良溶媒および貧溶媒の使用量はワニスの粘度および表面張力が上記範囲を満たすよう、用いる溶媒の種類、並びに電荷輸送性物質等の種類および使用量等に応じて変動するものであるため一概には規定できないが、通常、良溶媒の使用量は、溶媒全体に対して1〜90質量%(貧溶媒10〜99質量%)であり、好ましくは10〜90質量%(貧溶媒10〜90質量%)、より好ましくは20〜90質量%(貧溶媒10〜80質量%)、より一層好ましくは30〜90質量%(貧溶媒10〜70質量%)である。なお、この際、良溶媒によって電荷輸送性材料が溶解することが好ましい。
【0049】
また、電荷輸送性ワニスの固形分濃度も、ワニスの粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、好ましくは0.5〜5.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量
%である。
そして、電荷輸送性物質と電荷受容性ドーパント物質の物質量(mol)比も、発現する電荷輸送性、電荷輸送性物質等の種類を考慮しつつワニスの粘度および表面張力等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、物質量比で、電荷輸送性物質1に対し、電荷受容性ドーパント0.1〜10、好ましくは0.5〜5.0、より好ましくは1.0〜3.0である。
【0050】
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることで基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられるが、本発明の電荷輸送性ワニスは、均一性および平坦性により優れた薄膜を与えるため、大面積基板等への塗布に用いられるスリットコート法に特に適している。
溶媒の蒸発法としては、特に限定されるものではなく、ホットプレートやオーブン等の加熱装置を用い、大気中、窒素等の不活性ガス中または真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する薄膜を得ることが可能である。
焼成温度は、溶媒を蒸発できる限り特に制限はないが、40〜250℃が好ましい。この場合、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。
【0051】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で電荷注入層として用いる場合、5〜200nmであることが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いれば、スリットコート法で厚み30nmの薄膜を形成した場合に、バラツキが±4nm以内の薄膜を作製することができ、±3nm以内の薄膜をも再現性良く作製することができる。
【0052】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてOLED素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、予め、洗剤、アルコール、純水等で洗浄しておくことが好ましい。さらに、例えば、陽極基板では、使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0053】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたOLED素子の作製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
陽極基板上にスリットコート法などで本発明の電荷輸送性ワニス(正孔輸送性ワニス)を塗布し、上記の方法により蒸発、焼成を行い、電極上に正孔輸送性薄膜を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。発光領域をコントロールするために任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0054】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体(TPD)、(α−ナフチルジフェニルアミン)ダイマー(α−NPD)、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー(Spiro−TAD)等のトリアリールアミン類、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のスターバーストアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
【0055】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq
3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)および4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、電子輸送材料または正孔輸送材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
電子輸送材料としては、Alq
3、BAlq、DPVBi、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられる。
【0056】
発光性ドーパントとしては、キナクリドン、ルブレン、クマリン540、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)、(1,10−フェナントロリン)−トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオナート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)
3phen)等が挙げられる。
【0057】
キャリアブロック層を形成する材料としては、PBD、TAZ、BCP等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、Liq、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0058】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたPLED素子の作製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
陽極基板上にスリットコート法などで本発明の電荷輸送性ワニス(正孔輸送性ワニス)を塗布し、上記の方法により蒸発、焼成を行い、電極上に正孔輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに陰極電極を蒸着してPLED素子とする。
【0059】
使用する陰極および陽極材料としては、上記OLED素子作製時と同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
発光性電荷輸送性高分子層の形成法としては、発光性電荷輸送性高分子材料、またはこれに発光性ドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層を形成してある電極基板に塗布した後、溶媒の蒸発により成膜する方法が挙げられる。
発光性電荷輸送性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)などのポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を挙げることができる。
【0060】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解または均一分散法としては撹拌、加熱撹拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
溶媒の蒸発法としては、不活性ガス下または真空中、オーブンまたはホットプレートで加熱する方法を挙げることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた装置は以下のとおりである。
(1)粘度
装置:東機産業(株)製 TVE−22L型粘度計
測定温度:粘度計の恒温槽を25℃に設定して測定
(2)表面張力
装置:協和界面科学(株)製 自動表面張力計CBVP−Z
測定温度:環境温度23℃において測定
(3)薄膜の作製
装置:テクノマシーン(株)製 スリットダイコーターT2
(4)膜厚測定
装置:(株)小坂研究所製 微細形状測定機サーフコーダーET−4000
(5)基板洗浄
装置:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
【0062】
[1]化合物の合成
[合成例1]アニリン誘導体の合成
実施例において使用する式(6)で示されるオリゴアニリン誘導体(以下、BDPA−PTAと略す)を、国際公開第2008/129947号の記載に基づき、下記反応式に従い合成した。得られたオリゴアニリン化合物の
1H−NMRによる測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.83(S,2H),7.68(S,1H),7.26−7.20(m,8H),7.01−6.89(m,28H).
【0063】
【0064】
[2]ワニスの調製並びに薄膜の製造および評価
[実施例1]
ブレンティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bullentin of Chemical Society)、1994年、第67巻、pp.1749−1752記載の方法に従って製造した式(5)で示されるフェニルテトラアニリン(以下、PTAと略す)1.056g(2.385mmol)と、式(8)で示されるナフタレンジスルホン酸オリゴマー(以下、NSO−2と略す)3.230g(3.578mmol)とを、窒素雰囲気下、良溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)189gに完全に溶解させた。
得られた溶液に、貧溶媒である2,3−ブタンジオール(以下、2,3−BDと略す)21gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0065】
【化9】
【0066】
[実施例2]
DMAcの使用量を105gとし、貧溶媒として2,3−BD21gの代わりにジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、Diglymeと略す)105gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0067】
[実施例3]
DMAc189gの代わりに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと略す)105gを用い、2,3−BD21gの代わりにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下ECAと略す)105gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0068】
[実施例4]
DMAc189gの代わりにDMI178.5gを用い、2,3−BD21gの代わりにジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、DEGMBEと略す)31.5gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0069】
[実施例5]
DMAcの使用量を147gとし、2,3−BDの使用量を63gとした以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0070】
[実施例6]
DMAcの使用量を84gとし、2,3−BD21gの代わりにシクロヘキサノール(以下、CHAと略す)126gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0071】
[実施例7]
DMAcの使用量を105gとし、2,3−BDの使用量を105gとした以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0072】
[実施例8]
DMAcの使用量を94.5gとし、2,3−BDの使用量を115.5gとした以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0073】
[実施例9]
DMAc189gの代わりにN−メチルピロリドン(以下、NMPと略す)84gを用い、2,3−BD21gの代わりにジエチレングリコールジエチルエーテル(以下、Ethyl diglymeと略す)126gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0074】
[実施例10]
DMAc189gの代わりにNMP105gを用い、2,3−BD21gの代わりにEthyl diglyme105gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0075】
[実施例11]
DMAcの使用量を147gとし、2,3−BD21gの代わりにn−ヘキシルアセテート(以下nHAcと略す)63gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0076】
[実施例12]
DMAcの使用量を105gとし、2,3−BD21gの代わりに2,3−BD21gとエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下EGMEEAcと略す)84gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0077】
[実施例13]
DMAcの使用量を84gとし、2,3−BD21gの代わりにDiglyme126gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0078】
[実施例14]
DMAc189gの代わりにDMI105gを用い、2,3−BD21gの代わりにトリエチレングリコールジメチルエーテル(以下、Triglymeと略す)105gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0079】
[実施例15]
DMAc189gの代わりにDMI84gを用い、2,3−BD21gの代わりに2−フェノキシエタノール(以下、2−PEと略す)63gとECA63gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0080】
[実施例16]
DMAc189gの代わりにDMI168gを用い、2,3−BD21gの代わりに1,3−ブタンジオール(以下、1,3−BDと略す)42gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0081】
[実施例17]
DMAc189gの代わりにDMI126gを用い、2,3−BD21gの代わりにトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、TPGMMEと略す)84gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0082】
[実施例18]
DMAcの使用量を147gとし、2,3−BD21gの代わりにエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、EGMEEAcと略す)63gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0083】
[実施例19]
DMAc189gの代わりにDMI126gを用い、2,3−BD21gの代わりにエチレングリコールモノヘキシルエーテル(以下、EGMHEと略す)84gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0084】
[比較例1]
DMAcの使用量を84gとし、2,3−BDの使用量を126gとした以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0085】
[比較例2]
DMAcの使用量を73.5gとし、2,3−BDの使用量を136.5gとした以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0086】
[比較例3]
DMAcの使用量を63gとし、2,3−BDの使用量を147gとした以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0087】
[比較例4]
DMAcの使用量を126gとし、2,3−BD21gの代わりにnHAc84gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0088】
[比較例5]
DMAc189gの代わりにDMI189gを用い、2,3−BD21gの代わりに2−PE21gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0089】
[比較例6]
DMAcの使用量を147gとし、2,3−BD21gの代わりにトリエチレングリコールモノメチルエーテル(以下、TEGMMEと略す)63gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0090】
[比較例7]
DMAc189gの代わりにDMI105gを用い、2,3−BD21gの代わりにトリエチレングリコールモノエチルエーテル(以下、TEGMEEと略す)105gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0091】
[比較例8]
DMAc189gの代わりにDMI126gを用い、2,3−BD21gの代わりにジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、DEGMBEAcと略す)84gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0092】
[比較例9]
DMAc189gの代わりにDMI105gを用い、2,3−BD21gの代わりにジエチレングリコールモノエチルエーテル(以下、DEGMEEと略す)105gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0093】
[比較例10]
DMAc189gの代わりにDMI168gを用い、2,3−BD21gの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMEと略す)42gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0094】
[比較例11]
PTA1.056g(2.385mmol)と、NSO−2 3.230g(3.578mmol)とを、窒素雰囲気下、DMAc210gに完全に溶解させて、電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0095】
[比較例12]
DMAcの代わりにDMIを用いた以外は、比較例11と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した(固形分2.0質量%)。
【0096】
上記各実施例および比較例で調製したワニスを、スリットダイコーターを用いてITOベタ基板(縦120mm×120mm、厚み0.7mm)に塗布した後、大気中、50℃のホットプレート上で5分乾燥し、230℃のホットプレート上で15分焼成して基板上に薄膜を形成した。
なお、ITO基板は、O
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて表面上の不純物を除去してから使用し、スリットコーターの塗布条件は、塗布エリアが120mm×120mm、Gapが20μm、塗工待機時間が4sec、塗工速度が10mm/sec、目標膜厚は30nmとした。
【0097】
次いで、得られた薄膜の膜厚分布を評価した。評価は、正方形状に作製した薄膜の四隅と中央付近の計5箇所を測定し、5箇所の膜厚の面内均一性を膜厚分布として数値化して行った。各ワニスの粘度および表面張力、ワニスの調製に使用した良溶媒と貧溶媒の沸点差〔良溶媒の沸点(℃)−貧溶媒の沸点(℃)〕およびその絶対値、並びに膜厚分布の評価結果を表1〜4に示す。
なお、表1ではワニスの粘度が膜厚分布に及ぼす影響を評価し易い例を、表2ではワニスの表面張力が膜厚分布に及ぼす影響を評価し易い例を、表3では良溶媒および貧溶媒との沸点差が膜厚分布に及ぼす影響を評価しやすい例を、それぞれ抽出して列挙した。
また、表4では、単一溶媒組成の比較例11,12の結果を示した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示されるように、ワニスの粘度が7.5mPa・s以下である実施例1〜8で調製したワニスを用いて作製した薄膜は、粘度が7.5mPa・s超である比較例1〜3で調製したワニスを使用して作製した薄膜に比べ、膜厚のバラツキが小さいことがわかる。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示されるように、ワニスの表面張力が30.0〜40.0mN/mの範囲内である実施例で調製したワニスを用いて作製した薄膜は、表面張力が上記範囲外の比較例4,5で調製したワニスを使用して作製した薄膜に比べ、膜厚のバラツキが小さいことがわかる。
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示されるように、良溶媒と貧溶媒との沸点差の絶対値|ΔT|<20℃である実施例で調製したワニスを用いて作製した薄膜は、|ΔT|が20℃以上の比較例6〜10で調製したワニスを使用して作製した薄膜に比べ、膜厚のバラツキが小さいことがわかる。
【0104】
【表4】
【0105】
表4に示されるように、良溶媒単独で用いた比較例11,12のワニスを用いた場合は、スリットダイコーターでは薄膜を作製できないことがわかる。
【0106】
〔調製例1〜19,比較調製例1〜10〕
PTAの代わりにBDPA−PTAを用いた以外は、実施例1〜19,比較例1〜10と同様の方法により、電荷輸送性ワニスを調製した。各ワニスの粘度および表面張力、ワニスの調製に使用した良溶媒と貧溶媒の沸点差〔良溶媒の沸点(℃)−貧溶媒の沸点(℃)〕およびその絶対値を表5〜7に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
表5〜7に示されるように、電荷輸送性物質としてBDPA−PTAを用いた場合でも、PTAを用いた場合と同様の粘度および表面張力を実現できることがわかる。
したがって、この場合もスリットダイコーターにて膜厚のバラツキの少ない薄膜を作製できることが示唆され、本発明においては、PTAのみならず、BDPA−PTAのような式(1)に包含される化合物は、好適に電荷輸送性物質として用いることができると言える。