(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絞り段階において、絞り速度が低下した場合に、前記ガラスロッドの加熱温度が上昇するように調整する段階を含む請求項1または2に記載のガラスロッドの加工方法。
前記絞り速度に対応した加熱温度を予め格納した加熱温度テーブルを参照して、前記絞り段階における前記ガラスロッドの加熱温度を決定する段階を有する請求項3に記載のガラスロッドの加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[実施例1]
【0010】
図1は、ガラスロッド6の下端に絞り部20を形成する絞り加工に用いる絞り加工装置100の構造と、当該絞り加工装置100を用いた絞り加工のひとつの段階を示す概略図である。絞り加工装置100は、コラム1、キャリッジ4、トップチャンバ11、加熱装置7、および架台17を備える。
【0011】
コラム1は、ガイドレール2およびボールネジ3を有する。ガイドレール2は、重力方向に延在して、キャリッジ4の移動方向を案内する。ボールネジ3は、ガイドレール2に沿ってキャリッジ4を駆動する。キャリッジ4の下部には吊下げシャフト5が取り付けられている。吊下げシャフト5には、ガラスロッド6が垂下される。
【0012】
コラム1の下部には加熱装置7が配される。図示の加熱装置7は、ヒーター8、断熱材9、および炉体10の他に、ヒーター8に電力を供給する電極等を有する電気炉として形成される。加熱装置7の熱源としては、ヒーター8に換えて、ガスバーナー等を用いてもよい。
【0013】
ヒーター8、断熱材9等の材料をカーボンとする場合は、炉内に大気が混入すると炉材が損耗する。よって、少なくとも炉体10の内部を不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。図示の絞り加工装置100においては、炉体10上部からの大気混入を防ぐ目的で、ガラスロッド6を覆うトップチャンバ11が、トップチャンバ吊下げ機構12を介してキャリッジ4に取り付けられている。また、炉体10下部からの大気混入を防ぐ目的で、炉体10底面における開口径を調整するシャッター13が加熱装置7の底部に装着されている。
【0014】
架台17は、加熱装置7の下方に配される。架台17は、ガイドローラー14、引取り部21、およびロードセル18を有する。ガイドローラー14は、引取りダミー19またはガラスロッド6を挟むか否かについて開閉自在な2つ以上のローラーを含む。引取りダミー19等を挟んだ場合、ガイドローラー14は、引取りダミー19の昇降に従って自由に回転する。ガイドローラー14は、引取りダミー19等を把持することにより、引取りダミー19および引取りダミー19に接続されたガラスロッド6を、図中水平方向について位置を決めする。
【0015】
引取り部21は、引取りローラー(上)15および引取りローラー(下)16を有する。引取りローラー(上)15および引取りローラー(下)16のそれぞれは、引取りダミー19およびガラスロッド6の少なくとも一方を挟むか否かについて、個別に開閉自在な2つ以上のローラーを含む。これにより、ガラスロッド6および引取りダミー19の外径が不連続な場合等に、複数の引取りローラーを使いわけて、ガラスロッド6の引取り速度を継続的に制御できる。また、複数の引取りローラーを、ガラスロッド6の引取り方向に配列することにより、引取り部21全体として、ガラスロッド6を引取り始めてから引取り終わるまでの期間を長くして、ガラスロッド6の端から端まで制御を継続できる。
【0016】
また、引取りローラー(上)15および引取りローラー(下)16のそれぞれは、モーター等により回転駆動され、把持した引取りダミー19またはガラスロッド6を、図中水平方向に位置決めすると共に、図中上下方向に移動させる。なお、以降の説明において引取り部21と記載した場合は、引取りローラー(上)15および引取りローラー(下)16の少なくとも一方を指すものとする。
【0017】
ロードセル18は、架台17の図中下部に結合され、架台17を下方から支持すると共に、架台17に作用する正および負の荷重を測定する。ロードセル18による荷重測定値は、引取り部21が何も把持していない状態時をゼロ荷重として風袋引きしてある。よって、キャリッジ4および引取り部21の少なくとも一方がガラスロッド6を昇降させた場合に、引取りダミー19およびガラスロッド6にかかる荷重を測定できる。また、キャリッジ4および引取り部21の少なくとも一方を駆動してガラスロッド6に絞り部を形成する場合に、ロードセル18の測定値と、加熱装置7より下方に位置するガラスロッド6の重量とに基づいて、ガラスロッド6に作用する絞り荷重を算出できる。
【0018】
ところで、ガラスロッド6を光ファイバ母材として用いる場合、光ファイバとして用いることができない非有効部分が、ガラスロッド6の端部に存在する。非有効部は、線引き工程に先立って加熱溶断して除去される。また、非有効部を取り除いたガラスロッド6の有効部の端部には、絞り加工により紡錘形の絞り形状が形成される。これにより、ガラスロッド6から光ファイバを円滑に線引きできる。
【0019】
絞り加工装置100を用いてガラスロッド6の絞り加工を実行する場合は、まず、ガラスロッド6の上端を、吊下げシャフト5の下端に結合して、トップチャンバ11の内部にガラスロッド6を垂下させる。ここで、キャリッジ4は、ボールネジ3によりコラム1に沿って上昇しており、トップチャンバ11は、図中上下方向に延伸している。また、ガラスロッド6は、その下端近傍が加熱装置7のヒーター8の内部に位置する。
【0020】
図2は、絞り加工装置100を用いた絞り加工の他の段階を示す概略図である。図示のように、ガラスロッド6に続いて、引取りダミー19が絞り加工装置100に装填される。引取りダミー19は、ガイドローラー14に案内されつつ、引取り部21により駆動されて、加熱装置7に図中下側から進入する。
【0021】
加熱装置7において、ガラスロッド6の下端は、ヒーター8により加熱されて軟化する。加熱装置7に進入した引取りダミー19の上端は、軟化したガラスロッド6の下端に当接して、ガラスロッド6に接続される。こうして、ガラスロッド6と引取りダミー19とが一体化する。ここまでの段階において、シャッター13は、引取りダミー19の外径に合わせて開口を狭めている。
【0022】
図3は、絞り加工装置100を用いた絞り加工のまた他の段階を示す概略図である。次に、ボールネジ3によりキャリッジ4を降下させることにより、ガラスロッド6と引取りダミー19との接続部を、ヒーター8よりも下方に移動させる。この状態でヒーター8を稼働させることにより、ガラスロッド6自体の下端近傍の位置を加熱して、ガラスロッド6の一部を部分的に軟化した軟化部を形成する。
【0023】
図4は、絞り加工装置100を用いた絞り加工のまた他の段階を示す概略図である。続いて、キャリッジ4を固定した状態で、引取り部21により引取りダミー19を引き取ることによりガラスロッド6の一端に対して他端を移動させ、ガラスロッド6に絞り荷重としての張力を作用させる。これにより、ヒーター8の加熱で軟化した軟化部においてガラスロッド6が引き延ばされて、外径が漸減する絞り部20がガラスロッド6に形成される。
【0024】
なお、ガラスロッド6に絞り荷重が作用した状態であって、例えば、ガラスロッド6の軟化の程度に対して絞り荷重が過大になった場合、引取りローラー(上)15および引取りローラー(下)16のいずれかに把持された引取りダミー19またはガラスロッド6が滑ってしまい、引取り速度の制御精度が低下する。よって、ガラスロッド6に作用させる絞り荷重は、ガラスロッド6または引取りダミー19を把持する引取りローラーが滑り始める絞り荷重よりも低く設定してもよい。
【0025】
また、ガラスロッド6に絞り荷重が作用した状態であって、例えば、ガラスロッド6の軟化の程度に対して絞り荷重が過剰に低い場合、引取り部21による引取り速度に関わりなく、軟化したガラスロッド6が自重で融け落ちて絞り部20に曲がりが生じる、絞り部20の形状が通常と異なったものになる、等の現象が生じる。よって、ガラスロッド6に作用させる絞り荷重は、ロードセル18の指示値が示す絞り荷重が、引取りダミー19の重さと、絞り部20より先端側の除去する部分の重さとの合計を超えないように設定してもよい。
【0026】
更に、図示の状態においては、ガラスロッド6の下端近傍の一部が、加熱装置7の図中下端から抜け出る。この状態のガラスロッド6に対する干渉を防止する目的で、ガラスロッド6の外径に合わせてシャッター13の開口を開いてもよい。
【0027】
図5は、上記のような絞り加工の開始に至るまでの絞り加工装置100の動作を示すグラフである。図示のグラフの横軸は、経過時間を示す。また、図示の上段のグラフにおける縦軸は、引取り部21の動作方向および動作速度を示す。また、図示の下段のグラフにおける縦軸は、ロードセル18の指示値を示す。
【0028】
図1に示したように、当初、引取りダミー19を接続される前のガラスロッド6の下端は、加熱装置7の内部に位置する。一方、ロードセル18に支持された架台17においては、加熱装置7の内部に上端が位置する引取りダミー19を、引取りローラー(上)15が保持する。よって、ロードセル18は、引取りダミー19の重量に相当する指示値を示す。図示の例では、
図5の区間aに示すように、ロードセル18の指示値が10kgfとなる。
【0029】
次に、上記の状態で加熱装置7の温度を例えば2000℃まで上げ、ガラスロッド6の下端と、引取りダミー19の上端とを軟化させる。次いで、
図5の区間bに示すように、引取りローラー(上)15を駆動して引取りダミー19を上昇させる。これにより、
図2に示したように、引取りダミー19の上端がガラスロッド6の下端に当接する。この時点で、
図5のタイミングcに示すピークのように、ロードセル18の指示値は、引取りダミー19の重量よりも大きくなる。
【0030】
その後、ロードセル18の指示値が大きくなりすぎないように引取りダミー19の上昇速度を調整する。そのような制御は、例えば、ロードセル18の指示値を目標値(例えば15kgf)として引取りローラー(上)15の駆動速度をPID制御することで実現できる。あるいは、
図5の区間dに示すように、引取りダミー19の上昇速度パターンを予め決めておいて、当該上昇速度パターンを踏襲するように引取りローラー(上)15を駆動してもよい。次いで、上昇量が所定の値に達した時点で引取りダミー19の上昇を停止することにより、
図2に示したように、引取りダミー19とガラスロッド6とを溶着する。
【0031】
次に、加熱装置7の温度を例えば1300℃程度まで低下させて、引取りダミー19とガラスロッド6との溶着部を固化させる。このとき、軟化していたガラスが固化すると共に熱収縮するので、
図5の区間eに示すように、ロードセル18の指示値は低下する。
【0032】
次に、引取りローラー(上)15を開いて引取りダミー19を解放した状態で、ボールネジ3によりキャリッジ4を下降させる。これにより、ガラスロッド6と引取りダミー19を下降させて、
図3に示したように、ガラスロッド6において絞り加工する部分を、加熱装置7のヒーター8の位置に合わせる。次いで、引取りローラー(上)15を閉じて、ガラスロッド6に接続された引取りダミー19を把持させる。この間、
図5の区間fに示すように、ロードセル18の指示値は零となる。
【0033】
こうして、引取りダミー19を接続したガラスロッド6が用意されたので、ガラスロッド6の絞り加工を開始できる状態になる。そこで、加熱装置7のヒーター8を稼働させてガラスロッド6の加熱を開始し、更に、引取りローラー(上)15に駆動させて、引取りダミー19を図中で降下する方向に移動させる。引取りローラー(上)15による駆動は、
図5の区間gに示すように、ロードセル18の指示値が予め定めた駆動停止閾値(図示の例では−40kgf)に達した時点で停止する。
【0034】
図5に示した区間gの終期に引取りローラー(上)15が停止した時点で、ガラスロッド6には引張り力が作用している。ガラスロッド6に絞り部20を形成する場合は、例えば、ガラスロッド6を2100℃に加熱して絞り加工する。しかしながら、ガラスロッド6の温度が絞り加工の温度に達していない場合、ガラスロッド6は、軟化せずに固い状態のまま熱膨張する。このため、
図5の区間h1に示すように、ガラスロッド6に作用する引張り力は一旦弱まり、ロードセル18の指示値は増加する。
【0035】
次に、増加したロードセル18の指示値が予め定めた駆動開始閾値(図示の例では10kgf)に達すると、引取りローラー(上)15が再度駆動して、引取りダミー19を図中で降下する方向に移動させる。引取りローラー(上)15による駆動は、
図5の区間k1に示すように、ロードセル18の指示値が上記の駆動停止閾値(図示の例では−40kgf)に達するまで継続する。これにより、ロードセル18の指示値が再び上昇する。
【0036】
以降は、
図5の区間h〜h7および区間k2〜k6に示すように、ロードセル18の指示値が駆動開始閾値に達すると引取りローラー(上)15を駆動させ、ロードセル18の指示値が駆動停止閾値に達した時点で引取りローラー(上)15の駆動を停止させる動作を繰り返す。このように引取りローラー(上)15の駆動と停止を、ロードセル18の指示値を基準として繰り返すうちに、ガラスロッド6の温度が上昇して、ガラスロッド6が軟化する。
【0037】
これにより、引取りローラー(上)15が引取りダミー19を降下させる駆動時間が相対的に長くなり、ガラスロッド6が延伸するのを待って引取りローラー(上)15が停止する時間が相対的に短くなる。そこで、
図5の区間k7に示すように、引取りローラー(上)15が引取りダミー19を降下させる駆動時間が、予め定めた閾値時間(例えば1分間)を超えても、ロードセル18の指示値が駆動停止閾値に達しない状態になった場合、ガラスロッドが十分に軟化したと判断して、絞り加工装置100の動作は、
図4に示した絞り加工に移行する。こうして、絞り加工装置100において、ガラスロッド6の絞り加工が開始される。
【0038】
このように、絞り加工装置100を用いて絞り加工をする場合は、加熱したガラスロッド6に継続的な絞り荷重を掛けて絞り加工する前に、ガラスロッドに僅かわずかな引張り張力を作用させた状態で引張り操作を停止し、その後の絞り荷重の変化を検知することによりガラスロッドの軟化の状態を判断する段階を設けてもよい。これにより、ガラスロッドの軟化が足りないうちに絞り加工を開始した場合に、わずかな引張り操作により過大な絞り荷重が発生し、吊下げシャフト5や吊下げダミー等に機械的なダメージを生じることが防止できる。
【0039】
図6は、
図5に示した段階に続いて、ガラスロッド6を絞り加工する絞り加工装置100の動作を示すグラフである。図示のグラフの横軸は、経過時間を示す。図示の上段におけるグラフの縦軸は、加熱装置7におけるヒーター8の設定温度の変化を示す。図示の中段のグラフにおける縦軸は、引取りローラー(上)15および引取りローラー(下)16を併せた引取り部21の動作方向および動作速度を示す。図示の下段のグラフにおける縦軸はロードセル18の指示値を示す。
【0040】
絞り加工装置100においてガラスロッド6の絞り加工が開始されると、引取り部21により駆動される引取りダミー19およびガラスロッド6の下端近傍の移動速度である絞り速度は、ガラスロッド6に対する絞り荷重の値として設定された目標値によりPID(Proportional−Integral−Derivative Controller)制御される。ここで、ガラスロッド6の絞り荷重は、ロードセル18の指示値として検出できる。
【0041】
これにより、ガラスロッド6に形成される絞り部20にかかる張力(絞り荷重)が略一定となるように、絞り速度が制御される。ここで言う絞り速度とは、引取り部21によるガラスロッド6端部の牽引速度を意味し、ガラスロッド6両端間の離間速度でもある。このように、ガラスロッド6に対する絞り荷重を略一定に制御することにより、絞り部20の過度な軟化による絞り部20の曲がりや垂れを防止できる。
【0042】
絞り加工装置100における絞り速度のPID制御においては、絞り加工を開始した当初の期間と、ガラスロッド6に継続的な絞り荷重をかける絞り加工中の期間とでPIDパラメータを変えてもよい。絞り加工を開始した当初の期間は、ガラスロッド6の加熱が不十分でガラスロッド6の粘度が高い場合があり、そのような場合は、僅かな絞り荷重の変化に対して、絞り速度が大きく変化する鋭いPIDパラメータを用いると、制御が安定しにくい。よって、絞り加工を開始した当初の期間は、
図6に示す期間mのように、比例ゲインが低く、感度の鈍いPIDパラメータを用いることにより、安定した絞り荷重で絞り加工を実行できる。
【0043】
また、ガラスロッド6が十分に加熱されると、引取り部21による引取りダミー19の駆動速度が徐々に大きくなり、ガラスロッド6に継続的な絞り荷重をかけて絞り加工ができる状態になる。この期間は、
図6に示す期間nのように、絞り加工の開始当初の期間よりも比例ゲインが高く、感度の鋭いPIDパラメータにより、絞り荷重の変化に対してより大きく絞り速度を変化させる高精度なPID制御ができる。図示の例では、引取り部21の駆動速度は、ロードセルの指示値を略一定(例えば30kgf)とするようにPID制御される。
【0044】
なお、PIDパラメータの切り替えタイミングは、例えば引取り部21による引取りダミー19の駆動速度が予め決めた閾値を越えたときに行ってもよい。また、ロードセルの指示値が制御値よりも予め決めた値(例えば20kgf)だけ大きくなったとき(図示の例では−10kgf)に行ってもよい。
【0045】
なお、絞り加工の開始当初の期間と継続的な絞り加工との間でPIDパラメータを切り替えるタイミングは、例えば、絞り加工装置100による絞り速度を基準とすることができる。即ち、絞り荷重により定めた目標値により絞り速度をPID制御した場合、加熱によりガラスロッド6が軟化するにつれて絞り速度が上昇するので、絞り速度が予め定めた閾値に達した時点で、PIDパラメータを切り換えることにより、制御の過大なハンチングを起こさずに絞り操作を継続できる。
【0046】
また、絞り加工中のPIDパラメータは、ガラスが十分に軟化しているため、絞り開始時よりも比例ゲインを強くした、鋭いPIDパラメータを用いるとロードセル指示値が安定しやすい。なお、絞り加工を進めて行くと、ガラスロッド6における被加熱部の外径が小さくなり、ロードセル18の指示値を一定に保つために引取り部21の駆動速度が上昇する。ここで、
図6の区間nに示すように、引取り部21の駆動速度に応じて加熱装置7の温度を徐々に下げてガラスの粘度を上昇させ、引取り部21による引取りダミー19の駆動速度が過度に大きくなることを防止してもよい。これにより、ガラスロッド6における絞り部20の長さの制御が困難になることを回避できる。
【0047】
上記絞り加工において、制御した絞り速度に応じてガラスロッド6の加熱量を調整してもよい。例えば、絞り加工において、ガラスロッド6の一端を引き取る絞り速度が上昇した場合、ガラスロッド6の加熱温度が低下するように調整して、絞り速度を抑制できる。また、ガラスロッド6の絞り速度が低下した場合は、ガラスロッド6の加熱温度が上昇するように調節することにより、絞り速度を上昇させることができる。
【0048】
加熱量の調整は、例えば、絞り速度と加熱量との関係を関数あるいはテーブルなどで予め設定し、これを参照して加熱量を調整することにより、絞り速度の増減に対応した加熱量を迅速に決定できる。例えば、加熱装置が電気ヒーターの場合は、設定温度や電流、電圧、電力値で行い、加熱装置がバーナーの場合には、燃焼ガスあるいは支燃ガスの流量や流路の選択で行うことができる。これにより、絞り加工の進行に従って絞り部の径が縮小した場合に上昇する絞り速度を加熱量により調整して、絞り速度の過度の上昇を抑制できる。
【0049】
ガラスロッド6に口出し部を形成する絞り加工において、ガラスロッドの口出し位置付近の加熱を、予め設定した加熱時間の経過により管理した場合は、加熱装置7の状態により加熱能力が変化した場合、あるいは、ガラスロッド6の外径のばらつきにより、ガラスロッド6の軟化が不足する場合がある。軟化が不十分な状態でガラスロッド6を引っ張ると、相対的にガラスロッド6よりも細いダミー棒の破断、絞り加工装置100の故障等が生じる場合がある。
【0050】
また、ガラスロッド6が軟化し過ぎた場合は、溶融したガラスが重力により垂れて、ガラスロッド6における絞り部20先端の口出し部が曲がってしまう場合がある。特に、ガラスロッド6の上部に口出し部を形成した場合、長尺のガラスロッド6の中央を加熱して、上下に2分割しつつその両端に口出し部を形成した場合には、過度の軟化による口出し部の同芯度が悪化する。
【0051】
図7は、引取り部21により引取りダミー19を駆動する場合の駆動速度と、加熱装置7によるガラスロッド6の加熱温度との関係を例示するグラフである。図示のような関係を予め決定して記録したテーブルを用意し、絞り加工装置100においてガラスロッド6を加熱する場合に参照することにより、加熱装置7の制御を簡素化できる。ただし、加熱装置7による温度調整は必ず必要なものではなく、絞り部20の長さに対する要求精度が低い場合や、絞り部20の目標径が比較的太く、絞り加工開始直後に加熱を停止する場合は、絞り工程中の温度調整を省略してもよい。
【0052】
再び
図6を参照すると、絞り加工装置100を用いた絞り加工においては、引取りダミー19の引き下げ長さが所定の値に達した時点で、
図6に示す区間pのように、加熱装置7の加熱を停止してもよい。この時点では引取り部21による引取りダミー19の駆動を停止せず、ロードセル18の指示値を目標としたPID制御を継続する。
【0053】
加熱装置7による加熱を停止した後は、ガラスロッド6の温度が低下するに連れて、ガラスロッド6の粘度が上昇する。粘度の上昇に伴い、引取りローラーの駆動速度の小さな変動に対してロードセル18の指示値が大きく変化するようになるので、加熱を停止した後であって、ガラスロッド6の粘度がある程度上昇した時点でPIDパラメータを絞り加工の終盤に適したパラメータに切り換えてもよい。
【0054】
ここで、PIDパラメータを切り替えるタイミングは、例えば引取り部21による引取りダミー19の駆動速度が、予め決めた閾値を下回った場合にしてもよい。また、ロードセルの指示値のハンチング周期が予め決めた値よりも小さくなった場合に、PIDパラメータを切り替えてもよい。絞り加工の終盤に設定するPIDパラメータを、絞り加工中よりも比例ゲインを低くした鈍いPIDパラメータにすることにより、
図6に示す区間qのように、ロードセル18の指示値を安定させることができる。
【0055】
更に、加熱装置7の温度が予め設定した温度(例えば1300℃)まで下がった時点で引取り部21の駆動を完全に停止する。このとき、ガラスロッド6が固化し切っていない場合は、絞り部20よりも図中下方に位置する部分の荷重が徐々にロードセル18にかかるので、
図6に示す区間rのように、ロードセル18の指示値が一旦上昇する。しかしながら、ガラスロッド6が固化し切った後は、ガラスロッド6の熱収縮に伴って引取り部21を持ち上げる力が生じるので、
図6に示す区間sのように、ロードセル18の指示値が低下する。
【0056】
こうして、絞り加工装置100を用いて、ガラスロッド6の絞り加工が完了する。上記のように、ロードセル18の指示値の低下によりガラスロッド6の完全な固化を確認した後、
図6に示す区間tのように、引取り部21により引取りダミー19を解放してから、キャリッジ4によりガラスロッド6を引き下げ、絞り部20をガラスロッド6から切断もしくは溶断により除去して、ガラスロッド製品とすることができる。
[作製例1]
【0057】
絞り加工装置100を用いて、
図1〜
図7を参照して説明した手順に従って絞り加工を実行し、ガラスロッド6の端部に絞り部20を形成した。用いたガラスロッド6は、外径が略一定の直胴部において外径φ150mm、絞り加工装置100に装填した状態で下端側の外径φ120mmの物を用いた。ガラスロッド6に接続した引取りダミー19は、長さは2314mm、外径はφ50mm、重量10kgfであった。また、引取りダミー19において、ガラスロッド6に接続する上端は、僅かに凸型になるように研削した。
【0058】
ガラスロッド6に対する引取りダミー19の溶着は、加熱装置7の設定温度を2000℃として、ロードセル18の指示値が約15kgfとなるように制御しながら、引取りダミー19がガラスロッド6に接触してからの上昇量が25mmとなるまで引取りダミー19を上昇させ、その後、加熱装置7の設定温度を1300℃にして溶着部分を固化させた。
【0059】
絞り加工装置100において、まず、引取りローラー(上)15を開いてからキャリッジを250mm下降させて、ガラスロッド6において絞り部20とする部分を加熱装置7の中に移動した。次に、引取りローラー(下)16を閉じて、引取りダミー19を把持させた。次いで、加熱装置7の設定温度を2100℃として、ガラスロッド6を加熱し、加熱装置7の内部において引取りダミー19を部分的に軟化させた。
【0060】
次に、ロードセル18指示値による駆動停止閾値を−40kgf、駆動開始閾値を−10kgfとして、ガラスロッド6に与える張力を制御しつつ、引取り部21を1mm/分の速度で下方向に間欠駆動してガラスロッド6の軟化を待った。引取り部21により引取りダミー19を駆動して1分間引き下げても、ロードセル18の指示値が駆動停止閾値に達しなくなった時点で、絞り加工装置100の動作を絞り段階へ移行した。加熱装置7の設定温度を2100℃にしてから、絞り加工を開始するまでの軟化待ちの時間は、加熱装置7の温度が2100℃に到達してから15分であった。
【0061】
絞り加工装置100における絞り工程では、ロードセル18の指示値による絞り荷重で−30kgを目標値として、引取り部21の駆動速度をPID制御した。絞り加工開始当初の期間は、PIDパラメータを、P=350、I=15、D=0とした。絞り加工中のPIDパラメータは、P=150、I=15、D=0とした。なお、絞り加工中の加熱装置7の温度設定は、引取り部21による駆動速度と、
図7に示した対応表とを参照して決定した。に従って加熱炉の設定温度を変更した。
【0062】
その後、引取りダミーの引き下げ長が120mmとなった時点で加熱装置7のヒーター8を停止し、引き続き絞り加工を行いながら、引取り部21の駆動速度が1mm/分を下回った時点で、PID制御のPIDパラメータを、絞り加工中のパラメータから絞り終盤のパラメータへ切り替えた。絞り加工終盤のPIDパラメータは、P=800、I=15、D=0とした。絞り開始時から絞り加工中へのPIDパラメータの切替は、引取りローラーの駆動速度が6mm/分を越えた時点で行った。
【0063】
最終的にガラスが固化した時点で、絞り部20の長さは220mmであった。また、絞り部20の最細部の外径はおよそφ25mmであった。ガラスロッド6を絞り加工装置100から取り出して絞り部20の最細部をダイヤモンドカッターで切断し、絞り加工を終了した。得られたガラスロッド6において、絞り部20の形状精度を示す指標として、
図8に示すように、ガラスロッド6の直胴部の中心線と、絞り部20先端の中心線とのズレ量dを測定したところ、0.6mmと極めて小さかった。
[比較例1]
【0064】
作製例1と同じ仕様のガラスロッド6および引取りダミー19を用いて、比較例1としてのガラスロッド6を絞り加工した。ガラスロッド6に引取りダミー19を接続するまでの手順も、作製例1と同様に実行した。
【0065】
比較例1においては、ガラスロッド6に引取りダミー19を接続した後、ガラスロッド6において絞り部20となる部分を加熱装置7の中にセットした。次に、加熱装置7を2100℃まで昇温させた後、25分間にわたってガラスロッド6を加熱してから、引取り部21を20mm/分の速度で8分間下向きに駆動させて加熱を停止した。更に、さらに引取り部21の駆動を3分間続けてから停止した。
【0066】
このように、処理時間により管理して絞り加工したガラスロッド6において、形成された絞り部20最細部の外径はおよそφ25mmであった。ガラスロッド6を絞り加工装置100から取り出して、絞り部20の最細部をダイヤモンドカッターによって切断した。当該切断により形成された切断面における中心と、
図8に示した、ガラスロッド6の直胴部の中心線とのズレ量を測定したところ、絞り部20の先端における中心のズレ量dは1.8mmと、作製例1よりも大きかった。
[比較例2]
【0067】
使用したガラスロッド6および引取りダミー19の仕様は作製例1と同様のものを用い、ガラスロッド6に引取りダミー19を接続するまでの段階も、作製例1と同様にして、ガラスロッド6の絞り加工を試みた。ガラスロッド6に引取りダミー19を接続した後、ガラスロッド6において絞り部20となる部分を加熱装置7の中にセットして、ガラスロッド6を2100℃まで昇温した。その後、15分間加熱してから、引取り部21を20mm/分の速度で下向きに駆動させたところ、引取りダミー19とガラスロッド6との溶着面が剥がれ、ガラスロッド6に絞り部20を形成できなかった。
[実施例2]
【0068】
図9は、絞り加工装置100を用いた他の絞り加工方法を説明する図である。図示の例では、ガラスロッド6を絞り加工して、ガラスロッド6の図中上端に絞り部20を形成する。
【0069】
なお、ガラスロッド6の一端を固定し、他端を移動させて絞り加工する場合は、固定されている側に形成される絞り部20に対して、移動する側の絞り部の方が長くなる傾向がある。このため、ガラスロッド6の図中上端に絞り部20を形成する場合は、ガラスロッド6の直胴部側を固定し、ガラスロッド6の上端側を移動させて絞り部20を形成することにより、絞り部20の長さを抑制できる。
【0070】
まず、絞り加工装置100において、ガラスロッド6の図中上端を吊下げシャフト5に接続する。次いで、ボールネジ3によりキャリッジ4を駆動して、ガラスロッド6において絞り部20を形成する部分を、加熱装置7の内部に移動させた後、引取りローラー(下)16によりガラスロッド6を保持して、ガラスロッド6の下端側を固定する。なお、本実施例の方法においては、引取りダミー19は用いない。
【0071】
次に、キャリッジ4および引取りローラー(下)16を固定したまま加熱装置7を稼働させてガラスロッド6を加熱する。加熱によるガラスロッド6の軟化が十分か否かは、キャリッジ4または引取り部21によりガラスロッド6に張力を間欠的に作用させることにより、
図5を参照して説明したように確認できる。
【0072】
次いで、加熱により軟化したガラスロッド6に対して、絞り部20を形成する絞り加工段階が開始される。
図10は、絞り加工装置100によるガラスロッド6に対する絞り加工段階を示す概略図である。絞り加工段階においては、キャリッジ4または引取り部21を駆動することによりガラスロッド6に張力を作用させる。本実施例では、キャリッジ4を上昇させることによりガラスロッド6に張力を作用させて、ガラスロッド6に絞り部20を形成できる。
【0073】
上記の方法によれば、ガラスロッド6に引取りダミー19を溶着する段階を省くことができる。このため、絞り加工に要する時間を短縮できると共に、引取りダミー19の消費も回避できる。よって、製品として吊下げダミーが必要ない場合に、コストおよび生産性の面で有利である。
【0074】
なお、上記の例では、引取り部21を固定して、キャリッジ4を駆動してガラスロッド6に絞り荷重を発生させた。しかしながら、引取り部21を動作させてガラスロッド6に絞り荷重を発生させることもできる。また、キャリッジ4および引取り部21を両方動作させて、ガラスロッド6に絞り荷重を発生させながら、加熱装置7による加熱位置を調整することもできる。
【0075】
更に、例えば、ひとつのガラスロッド6を長さ方向に分割してそれぞれに絞り部20を形成する場合は、キャリッジ4と引取り部21とを同時に動作させて、分割する位置に対して上下でガラスロッド6が互いに遠ざかるように移動させる。これにより、分割したガラスロッド6のそれぞれに、短い絞り部20が形成される。このようにして形成した短い絞り部20を有するガラスロッド6は、ストロークの短い線引き機でも線引きできるので使いやすい。
【0076】
上記の方法において、キャリッジ4の上昇速度は、次に説明するようにステップ制御してもよい。
図11は、絞り加工段階におけるキャリッジ4の上昇速度をステップ制御する場合に参照するキャリッジ4の上昇速度とステップ番号との関係を示すグラフである。
【0077】
キャリッジ4の上昇速度をステップ制御する場合、制御対象の上昇速度に対して、ガラスロッド6の絞り荷重について,低速側の閾値と高速側の閾値とを設定する。本実施例では、低速側閾値を−40kgf、高速側閾値を−10kgfと設定した。
【0078】
上昇速度を制御する場合は、まず、最初のステップ番号に対応するキャリッジ上昇速度でキャリッジ4を上昇させ、ロードセル18の指示値を読む。ここで、ロードセル18の指示値が上記の高速側閾値を上回った場合は、
図11に示したグラフにおいてステップ番号を1つ増やす。これにより、キャリッジ4の上昇速度が上昇する。一方、キャリッジ4が上昇している場合にロードセル18の指示値が低速側閾値を下回った場合は、
図11に示したグラフにおいてステップ番号を1つ減らす。これにより、キャリッジ4の上昇速度は低下する。
【0079】
上記のようにステップ制御によると、ロードセルの指示値、即ち、ガラスロッド6にかかる張力である絞り荷重の変動は、予め定めた低速側閾値と高速側閾値との間の範囲に収まる。よって、過大なハンチングが生じないので、絞り加工によりガラスロッド6に過大な絞り荷重がかかることが防止される。また、絞り加工装置100の稼働にPID調節計が不要になるので、設備コストも低減される。
【0080】
なお、上記の方法において、ロードセル18の配置は、架台17の下に限られるわけではない。例えば、キャリッジ4にロードセル18を取り付けて、吊下げシャフト5にかかる荷重を測定することによってガラスロッド6にかかる絞り荷重を検出してもよい。また、ガラスロッド6の上端に絞り部20を形成する上記のような場合であっても、キャリッジ4の上昇速度を、第一の実施形態と同様に、ロードセル18の指示値を目標としてPID制御してもよいことはもちろんである。
[作製例2]
【0081】
絞り加工装置100を用いて、
図9〜
図11を参照して説明した実施例2の手順に従って、ガラスロッド6の上端部に絞り部20を形成した。絞り加工したガラスロッド6は、外径φ180mmの直胴部を有していた。
【0082】
まず、絞り加工装置100において、吊下げシャフト5の下端にガラスロッド6を接続した。次いで、ボールネジ3によりキャリッジ4を降下させて、絞り部20となる部分を加熱装置7の中に移動し、設定温度を2100℃でガラスロッド6を加熱した。
【0083】
次に、ロードセル18の指示値による駆動停止閾値を−40kgf、駆動開始閾値を−10kgfとしてガラスロッド6に加わる張力を制御しながら、キャリッジを1mm/分の速度で上方向に間欠駆動させてガラスロッド6の軟化を待った。やがて、1mm/分の速度で1分間キャリッジ4を駆動し続けても駆動停止閾値に達しなくなった時点で、絞り加工装置100の動作を絞り段階へ移行した。なお、加熱装置7が設定温度に達してから絞り加工段階に移行するまでの軟化待ちの時間は19分であった。
【0084】
絞り加工段階においては、低速側における絞り荷重の閾値を−40kgf、高速側の絞り荷重の閾値を−10kgfに設定し、
図11に示したステップ番号とキャリッジ4の上昇速度との関係に従ってキャリッジ4の上昇速度を決定した。最初のステップ番号のキャリッジ上昇速度から開始して、ロードセル18の指示値が高速側の絞り荷重の閾値を上回った時点でステップ番号を1つ増やし、キャリッジ4の上昇速度を上昇させた。また、ロードセル18の指示値が低速側における絞り荷重の閾値を下回った時点でステップ番号を1つ減らし、キャリッジ4の上昇速度を下げた。これにより、ロードセル18の指示値の変動は、−10〜−40kgfの範囲に収まった。
【0085】
ガラスロッド6の軟化が進行してキャリッジ4の上昇量が60mmを越えた時点で、加熱装置7を停止させた。ただし、ロードセル18の指示値に基づいて絞り速度を管理しつつ、ボールネジ3によるキャリッジ4の駆動を継続した。ガラスロッド6の温度の低下に従ってキャリッジ4の上昇速度は徐々に下がった。やがて、キャリッジ4の上昇量が105mmになった時点でキャリッジ4の上昇を停止した。
【0086】
こうして絞り加工したガラスロッド6において、絞り部20の外径はおよそφ50mmであった。ガラスロッド6を絞り加工装置100から取り出して、絞り部20の最細部をダイヤモンドカッターで切断し、
図8に示した通りの方法で測定したガラスロッドの中心線からの絞り部先端中心線のズレ量dは0.3mmと極めて小さかった。
[比較例3]
【0087】
作製例2と同じ仕様のガラスロッド6を絞り加工して、絞り部20を形成した比較例3を作製した。絞り加工段階を開始するのでの手順は、作製例2と同様に実行した。
【0088】
比較例3においては、ガラスロッド6において絞り部20となる部分を加熱装置7の中にセットして、2100℃まで昇温した後、40分間加熱してから、キャリッジを15mm/分の速度で4分間上向きに駆動させて加熱を停止した。更に、キャリッジの駆動を3分間続けてから停止した。ガラスロッド6に形成された絞り部20の外径はおよそφ50mmであったが、絞り部20は座屈して、くの字型に湾曲していた。絞り加工装置100からガラスロッド6を取り出して、絞り部20の最細部をダイヤモンドカッターによって切断した後、
図8に示すようにして測定したガラスロッドの中心線からの絞り部20の先端中心線のズレ量dを測定したところ、25mmあった。
【0089】
上記の通り、ガラスロッド6を絞り加工する場合に、ガラスロッド6に形成される絞り部20にかかる張力(絞り荷重)が略一定となるように絞り速度を制御することにより、絞り部20の曲がりおよび中心線のズレ量dを抑制できることが判った。また、ガラスロッド6の加熱不足に起因する引取りダミー19、吊下げシャフト5、吊下げダミー等の破損を防止できる。よって、高精度に形成された絞り部20を有するガラスロッド6を安定に製造できる。上記の方法は、MCVD法、PCVD法、VAD法、OVD法、ロッドインチューブ法などのいずれの方法で製造されたガラスロッドにも適用できる。
【0090】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0091】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。