特許第6426489号(P6426489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6426489
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   H01L21/302 201A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-19114(P2015-19114)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-143781(P2016-143781A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 信博
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】萩原 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 考司
(72)【発明者】
【氏名】松永 淳一郎
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−245512(JP,A)
【文献】 特開2013−225604(JP,A)
【文献】 特表2008−547238(JP,A)
【文献】 特開2013−251471(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0126039(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0126040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンとシリコンゲルマニウムを有する被処理基板をチャンバー内に配置し、エッチングガスのガス系をFガスおよびNHガスとし、FガスとNHガスとの比率を変化させることにより、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングと、シリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行うことを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
シリコンはシリコン膜であり、シリコンゲルマニウムはシリコンゲルマニウム膜であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%でそれぞれ0〜15%とし、シリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%で18〜50%とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%でそれぞれ0〜10%とし、シリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%で30〜50%とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングの際に、被処理基板を載置する載置台の温度を30〜130℃の範囲とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチングの際に、チャンバー内の圧力を66.7〜667Paとすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングおよびシリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングのいずれも、エッチング工程を複数回繰り返すサイクルエッチングにより行うことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記エッチング工程の間で、前記チャンバー内の排気を行うことを特徴とする請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記選択的エッチングに先立って、NHガスとHFガスを前記チャンバー内に導入して被処理基板表面の自然酸化膜の除去を行うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記選択的エッチングの後に、NHガスとHFガスを前記チャンバー内に導入して、被処理基板のエッチング面の保護処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項10のいずれかのエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンゲルマニウム(SiGe)およびシリコン(Si)が共存する被処理基板において、一方に対して他方を高選択比でエッチングするエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、SiとSiGeとが共存する被処理基板において、SiおよびSiGeの一方を他方に対して選択的にエッチングする技術が求められている。このような技術としては、例えばSiとSiGeとの積層構造を有する被処理基板において、SiおよびSiGeの一方を他方に対して選択的にサイドエッチングするものが挙げられる。
【0003】
このような要求に対して、Siに対してSiGeを選択的にエッチングする技術としては、エッチングガスとしてClF、XeFを用いるもの(特許文献1)、およびHFを用いるもの(特許文献2)が知られており、SiGeに対してSiを選択的にエッチングする技術としては、SFやCFを含むエッチングガスに、ゲルマニウムを含むガスを加えてエッチングする技術が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−510750号公報
【特許文献2】特開2003−77888号公報
【特許文献3】特開2013−225604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術は、いずれも、SiGeをSiに対して選択的にエッチングするか、またはSiをSiGeに対して選択エッチングするのみであるが、SiGeの選択的エッチングおよびSiの選択的エッチングの両方を同じガス系を用いて同一の装置で行うことが求められている。
【0006】
したがって、本発明は、シリコンゲルマニウム(SiGe)およびシリコン(Si)が共存する被処理基板において、Siに対するSiGeの選択的エッチングおよびSiGeに対するSiの選択的エッチングを同じガス系を用いて同一の装置で行うことができるエッチング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、シリコンとシリコンゲルマニウムを有する被処理基板をチャンバー内に配置し、エッチングガスのガス系をFガスおよびNHガスとし、FガスとNHガスとの比率を変化させることにより、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングと、シリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行うことを特徴とするエッチング方法を提供する。
【0008】
上記エッチング方法において、シリコンとしてシリコン膜を用い、シリコンゲルマニウムとしてシリコンゲルマニウム膜を用いることができる。
【0009】
シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%で0〜15%とし、シリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%で18〜50%とすることが好ましい。シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%でそれぞれ0〜10%とし、シリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングを行う際には、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%で30〜50%とすることがさらに好ましい。
【0010】
前記エッチングの際に、被処理基板を載置する載置台の温度を30〜130℃の範囲とすることが好ましい。
【0011】
また、前記エッチングの際に、チャンバー内の圧力を66.7〜667Paとすることが好ましい。
【0012】
シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチングおよびシリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングのいずれも、エッチング工程を複数回繰り返すサイクルエッチングにより行うことが好ましい。この場合に、前記エッチング工程の間で、前記チャンバー内の排気を行うことが好ましい。
【0013】
さらに、前記選択的エッチングに先立って、NHガスとHFガスを前記チャンバー内に導入して被処理基板表面の自然酸化膜の除去を行ってもよく、また、前記選択的エッチングの後に、NHガスとHFガスを前記チャンバー内に導入して、被処理基板のエッチング面の保護処理を行ってもよい。
【0014】
また、本発明は、コンピュータ上で動作し、エッチング装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記エッチング方法が行われるように、コンピュータに前記エッチング装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エッチングガスのガス系をFガスおよびNHガスとし、FガスおよびNHガスの比率を変化させることにより、同じガス系かつ同一チャンバーで、シリコンに対するシリコンゲルマニウムの選択的エッチング、およびシリコンゲルマニウムに対するシリコンの選択的エッチングの両方を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るエッチング方法を実施するために用いられるエッチング装置を搭載した処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2図1の処理システムに搭載された熱処理装置を示す断面図である。
図3図1の処理システムに搭載されたエッチング装置を示す断面図である。
図4】実験例1における、NHガス流量とpoly−Si膜およびSiGe膜のエッチング量との関係を示す図である。
図5】poly−Si膜とSiGe膜の積層膜を形成したウエハについて、サイクル数を変えてエッチングを行った際のエッチング面の状態を示すSEM写真である。
図6】poly−Si膜を形成したウエハについて、サイクル数を変えてエッチングを行った際のエッチング面の状態を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
<本発明の実施形態に用いる処理システムの一例>
図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング方法を実施するエッチング装置を搭載した処理システムの一例を示す概略構成図である。この処理システム1は、SiとSiGeとが共存する被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを搬入出する搬入出部2と、搬入出部2に隣接させて設けられた2つのロードロック室(L/L)3と、各ロードロック室3にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対して熱処理を行なう熱処理装置4と、各熱処理装置4にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対してエッチングを行う本実施形態に係るエッチング装置5と、制御部6とを備えている。
【0019】
搬入出部2は、ウエハWを搬送する第1ウエハ搬送機構11が内部に設けられた搬送室(L/M)12を有している。第1ウエハ搬送機構11は、ウエハWを略水平に保持する2つの搬送アーム11a,11bを有している。搬送室12の長手方向の側部には、載置台13が設けられており、この載置台13には、ウエハWを複数枚並べて収容可能なキャリアCが例えば3つ接続できるようになっている。また、搬送室12に隣接して、ウエハWを回転させて偏心量を光学的に求めて位置合わせを行なうオリエンタ14が設置されている。
【0020】
搬入出部2において、ウエハWは、搬送アーム11a,11bによって保持され、第1ウエハ搬送機構11の駆動により略水平面内で直進移動、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台13上のキャリアC、オリエンタ14、ロードロック室3に対してそれぞれ搬送アーム11a,11bが進退することにより、搬入出させられるようになっている。
【0021】
各ロードロック室3は、搬送室12との間にそれぞれゲートバルブ16が介在された状態で、搬送室12にそれぞれ連結されている。各ロードロック室3内には、ウエハWを搬送する第2ウエハ搬送機構17が設けられている。また、ロードロック室3は、所定の真空度まで真空引き可能に構成されている。
【0022】
第2ウエハ搬送機構17は、多関節アーム構造を有しており、ウエハWを略水平に保持するピックを有している。この第2ウエハ搬送機構17においては、多関節アームを縮めた状態でピックがロードロック室3内に位置し、多関節アームを伸ばすことにより、ピックが熱処理装置4に到達し、さらに伸ばすことによりエッチング装置5に到達することが可能となっており、ウエハWをロードロック室3、熱処理装置4、およびエッチング装置5間で搬送することが可能となっている。
【0023】
熱処理装置4は、図2に示すように、真空引き可能なチャンバー20と、その中でウエハWを載置する載置台23を有し、載置台23にはヒーター24が埋設されており、このヒーター24によりエッチング処理が施された後のウエハWを加熱してウエハWに存在するエッチング残渣を気化して除去する。チャンバー20のロードロック室3側には、ロードロック室3との間でウエハを搬送する搬入出口20aが設けられており、この搬入出口20aはゲートバルブ22によって開閉可能となっている。また、チャンバー20のエッチング装置5側にはエッチング装置5との間でウエハWを搬送する搬入出口20bが設けられており、この搬入出口20bはゲートバルブ54により開閉可能となっている。チャンバー20の側壁上部にはガス供給路25が接続され、ガス供給路25はNガス供給源30に接続されている。また、チャンバー20の底壁には排気路27が接続され、排気路27は真空ポンプ33に接続されている。ガス供給路25には流量調節弁31が設けられており、排気路27には圧力調整弁32が設けられていて、これら弁を調整することにより、チャンバー20内を所定圧力のNガス雰囲気にして熱処理が行われる。Arガス等、Nガス以外の不活性ガスを用いてもよい。
【0024】
制御部6は、処理システム1の各構成部を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ91を有している。プロセスコントローラ91には、オペレータが処理システム1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理システム1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有するユーザーインターフェース92が接続されている。また、プロセスコントローラ91には、処理システム1で実行される各種処理、例えば後述するエッチング装置5における処理ガスの供給やチャンバー内の排気などをプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや処理条件に応じて処理システム1の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムである処理レシピや、各種データベース等が格納された記憶部93が接続されている。レシピは記憶部93の中の適宜の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。そして、必要に応じて、任意のレシピを記憶部93から呼び出してプロセスコントローラ91に実行させることで、プロセスコントローラ91の制御下で、処理システム1での所望の処理が行われる。
【0025】
本実施形態に係るエッチング装置5は、Siに対するSiGeの選択的エッチングおよびSiGeに対するSiの選択的エッチングを同じガス系を用いてエッチングするものである。その具体的な構成については、後で詳細に説明する。
【0026】
このような処理システム1では、ウエハWとして、エッチング対象であるSiを有し、さらにSiGeを有するものを用い、そのようなウエハWを複数枚キャリアC内に収納して処理システム1に搬送する。
【0027】
処理システム1においては、大気側のゲートバルブ16を開いた状態で搬入出部2のキャリアCから第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりウエハWを1枚ロードロック室3に搬送し、ロードロック室3内の第2ウエハ搬送機構17のピックに受け渡す。
【0028】
その後、大気側のゲートバルブ16を閉じてロードロック室3内を真空排気し、次いでゲートバルブ54を開いて、ピックをエッチング装置5まで伸ばしてウエハWをエッチング装置5へ搬送する。
【0029】
その後、ピックをロードロック室3に戻し、ゲートバルブ54を閉じ、エッチング装置5において後述するようにしてエッチング処理を行う。
【0030】
エッチング処理が終了した後、ゲートバルブ22、54を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックによりエッチング処理後のウエハWを熱処理装置4に搬送し、チャンバー20内にNガスを導入しつつ、ヒーター24により載置台23上のウエハWを加熱して、エッチング残渣等を加熱除去する。
【0031】
熱処理装置4における熱処理が終了した後、ゲートバルブ22を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックにより載置台23上のエッチング処理後のウエハWをロードロック室3に退避させ、第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりキャリアCに戻す。これにより、一枚のウエハの処理が完了する。
【0032】
なお、処理システム1において、熱処理装置4は必須ではない。熱処理装置4を設けない場合には、エッチング処理が終了した後のウエハWを第2ウエハ搬送機構17のピックによりロードロック室3に退避させ、第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりキャリアCに戻せばよい。
【0033】
<エッチング装置の構成>
次に、本実施形態のエッチング方法を実施するためのエッチング装置5について詳細に説明する。
図3は、エッチング装置5を示す断面図である。図3に示すように、エッチング装置5は、密閉構造のチャンバー40を備えており、チャンバー40の内部には、ウエハWを略水平にした状態で載置させる載置台42が設けられている。また、エッチング装置5は、チャンバー40にエッチングガスを供給するガス供給機構43、チャンバー40内を排気する排気機構44を備えている。
【0034】
チャンバー40は、チャンバー本体51と蓋部52とによって構成されている。チャンバー本体51は、略円筒形状の側壁部51aと底部51bとを有し、上部は開口となっており、この開口が蓋部52で閉止される。側壁部51aと蓋部52とは、シール部材(図示せず)により密閉されて、チャンバー40内の気密性が確保される。蓋部52の天壁には上方からチャンバー40内に向けてガス導入ノズル61が挿入されている。
【0035】
側壁部51aには、熱処理装置4のチャンバー20との間でウエハWを搬入出する搬入出口53が設けられており、この搬入出口53はゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0036】
載置台42は、平面視略円形をなしており、チャンバー40の底部51bに固定されている。載置台42の内部には、載置台42の温度を調節する温度調節器55が設けられている。温度調節器55は、例えば温度調節用媒体(例えば水など)が循環する管路を備えており、このような管路内を流れる温度調節用媒体と熱交換が行なわれることにより、載置台42の温度が調節され、載置台42上のウエハWの温度制御がなされる。
【0037】
ガス供給機構43は、Fガスを供給するFガス供給源63、NHガスを供給するNHガス供給源64、HFガスを供給するHFガス供給源65、Arガスを供給するArガス供給源66を有している。また、Fガス供給源63に接続されたFガス供給配管67、NHガス供給源64に接続されたNHガス供給配管68、HFガス供給源65に接続されたHFガス供給配管69、Arガス供給源66に接続されたArガス供給配管70を有している。これらの配管は集合配管71に接続され、集合配管71は上述したガス導入ノズル61に接続されている。そして、Fガス、NHガス、HFガス、Arガスが、供給配管67,68,69,70および集合配管71を経てガス導入ノズル61からチャンバー40へ導入されるようになっている。
【0038】
ガス供給配管67、NHガス供給配管68、HFガス供給配管69、Arガス供給配管70には、流路の開閉動作および流量制御を行う流量制御器72が設けられている。流量制御器72は例えば開閉弁およびマスフローコントローラにより構成されている。
【0039】
なお、チャンバー40の上部にシャワープレートを設け、シャワープレートを介して励起されたガスをシャワー状に供給してもよい。
【0040】
上記ガスのうち、FガスおよびNHガスはメインのエッチングに用いられるエッチングガスである。また、HFガスは自然酸化膜除去やエッチング処理後の膜の終端処理に用いられる。また、Arガスは、希釈ガスやパージガスとして用いられる。Arガスの代わりにNガス等の他の不活性ガスを用いてもよく、2種以上の不活性ガスを用いてもよい。
【0041】
排気機構44は、チャンバー40の底部51bに形成された排気口81に繋がる排気配管82を有しており、さらに、排気配管82に設けられた、チャンバー40内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)83およびチャンバー40内を排気するための真空ポンプ84を有している。
【0042】
チャンバー40の側壁には、チャンバー40内の圧力を計測するための圧力計として2つのキャパシタンスマノメータ86a,86bが、チャンバー40内に挿入されるように設けられている。キャパシタンスマノメータ86aは高圧力用、キャパシタンスマノメータ86bは低圧力用となっている。載置台42に載置されたウエハWの近傍には、ウエハWの温度を検出する温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0043】
エッチング装置5を構成するチャンバー40、載置台42等の各種構成部品の材質としては、Alが用いられている。チャンバー40を構成するAl材は無垢のものであってもよいし、内面(チャンバー本体51の内面など)に陽極酸化処理を施したものであってもよい。一方、載置台42を構成するAlの表面は耐摩耗性が要求されるので、陽極酸化処理を行って表面に耐摩耗性の高い酸化被膜(Al)を形成することが好ましい。
【0044】
<エッチング装置によるエッチング方法>
次に、このように構成されたエッチング装置によるエッチング方法について説明する。
【0045】
本実施形態においては、被処理体であるウエハWとして、SiとSiGeとが共存したものを用い、Siに対するSiGeの選択的エッチングおよびSiGeに対するSiの選択的エッチングを行う。一例として、poly−Si膜とSiGe膜の積層構造において、poly−Si膜およびSiGe膜の一方を他方に対して選択的にエッチングする場合を挙げることができる。
【0046】
本実施形態のエッチング方法を実施するにあたっては、エッチング装置5のゲートバルブ54を開放した状態で、ロードロック室3内の第2ウエハ搬送機構17のピックによりウエハWを搬入出口53からチャンバー40内に搬入し、載置台42に載置する。載置台42は温度調節器55で温調されており、載置台42に載置されたウエハWの温度が所定の温度に制御される。
【0047】
その後、ピックをロードロック室3に戻し、ゲートバルブ54を閉じ、チャンバー40内を密閉状態とする。
【0048】
次いで、チャンバー40内の圧力を調節しつつ、NHガスおよびHFガスをチャンバー40内へ導入し、ウエハWに形成された自然酸化膜を除去する。このとき、NHガスおよびHFガスの他、希釈ガスとしてArガスを供給してもよい。また、NHガスを先にチャンバー40内に導入して圧力を安定させた後にHFガスを導入することが好ましい。
【0049】
その後、チャンバー40内にパージガスとしてArガスを供給しつつ真空排気してチャンバー40内のパージを行い、引き続きガスをFガスおよびNHガスに切り替え、エッチングガスのガス系をFガスおよびNHガスにしてメインのエッチングを行う。このとき、希釈ガスとしてArガスを加えてもよい。メインのエッチングにおいては、Siに対するSiGeの選択的エッチングと、SiGeに対するSiの選択的エッチングとで、FガスおよびNHガスの比率を変えてエッチングを行う。すなわち、FガスおよびNHガスのガス系において、FガスによりSiGeはエッチングされるがSiはほとんどエッチングされないため、Fガスの比率が多い領域(F:100%を含む)においてSiに対するSiGeの選択的エッチングを行うことができる。一方、NHガスの比率が高くなるとSiがエッチングされるが、NHによりSiGeが保護されてSiGeがエッチングされ難くなるため、SiGeに対するSiの選択的エッチングが行われるようになる。
【0050】
具体的には、Siに対するSiGeの選択的エッチングでは、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%(流量%)で0〜15%(Fガスの比率は85〜100%)とすることが好ましく、SiGeに対するSiの選択的エッチングでは、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率を体積%(流量%)で18〜50%(Fガスの比率は50〜82%)とすることが好ましい。これにより、ほぼ2以上の選択比で選択的エッチングを行うことができる。さらに好ましくは、Siに対するSiGeの選択的エッチングでは、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率が体積%(流量%)で0〜10%であり、SiGeに対するSiの選択的エッチングでは、FガスおよびNHガスの合計に対するNHガスの比率が体積%(流量%)で30〜50%である。これにより、ほぼ10以上の選択比で選択的エッチングを行うことができる。
【0051】
Siに対するSiGeの選択比を高くする観点からは、Fガスを100%(NHガスを0%)とすることが好ましいが、NHガスを適宜の量で添加することにより、エッチングレートの調整等を行うことができる。
【0052】
メインのエッチングの際におけるチャンバー40内の圧力は、SiGeの選択的エッチングおよびSiの選択的エッチングのいずれも66.7〜667Pa(0.5〜5Torr)の範囲が好ましい。また、載置台42の温度(ほぼウエハの温度)は、SiGeの選択的エッチングおよびSiの選択的エッチングのいずれも30〜130℃の範囲が好ましい。
【0053】
メインのエッチングは、SiGeの選択的エッチングおよびSiの選択的エッチングのいずれも、エッチング工程を複数回繰り返すサイクルエッチングにより行うことが好ましい。
【0054】
サイクルエッチングでは、各エッチング工程の間でチャンバー40内のパージを行う。チャンバー40内のパージは、単にチャンバー内の真空排気のみであってもよいが、真空排気と同時にパージガスとしてArガスを流してもよい。
【0055】
サイクルエッチングを行うことにより、一回のエッチングの場合に比べ、エッチング表面のラフネスを小さくすることができる。また、NHの比率を高くしてSiGeの保護機能を持たせても、SiGeは多少エッチングされるが、SiGeエッチングの際のインキュベーションタイムがSiエッチングの際のインキュベーションタイムよりも長いため、Siの選択的エッチングの際にサイクルエッチングを行うことにより、SiGeのエッチングを抑制して選択性を高めることができる。
【0056】
サイクルエッチングにおいては、エッチング工程の時間を短くして回数を増加することにより、上記効果を高めることができるが、回数が多くなりすぎるとスループットが低下するため、スループットも考慮して適切なサイクル数とすることが好ましい。
【0057】
メインのエッチングの際に、NHガスおよびFガスの両方を用いる場合は、先にNHガスをチャンバー40内に導入して圧力を安定させた後にFガスを導入することが好ましい。また、Arガスにより圧力を安定させてもよい。
【0058】
以上のようにしてメインのエッチングを行った後、チャンバー40内にパージガスとしてArガスを供給しつつ真空排気してチャンバー40内のパージを行い、次いで、ガス系をNHガスおよびHFガスに切り替えてエッチング面の保護処理を行う。
【0059】
エッチング面は極めて酸化が生じやすくなっているが、NHガスおよびHFガスによる処理を行うことにより、エッチング面を水素終端することができ、酸化を防止することができる。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、エッチングガスのガス系をFガスおよびNHガスとし、FガスおよびNHガスの比率を変化させることにより、同じガス系かつ同一チャンバーで、Siに対するSiGeの選択的エッチング、およびSiGeに対するSiの選択的エッチングの両方を行うことができる。
【0061】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
【0062】
[実験例1]
ここでは、poly−Si膜が形成されたブランケットウエハと、SiGe膜が形成されたブランケットウエハとを準備し、エッチングガスとしてFガスとNHガスを用い、NHガス流量を変化させてpoly−Si膜およびSiGe膜のエッチングを行った。その際の条件は、Fガス流量:180sccm、Arガス流量:1200sccm、温度:80℃、圧力:4Torr/2Torr、処理時間:8sec/8secとし、NHガスの流量を0〜100sccmの間で変化させた。
【0063】
その結果を図4に示す。図4は、NHガス流量とpoly−Si膜およびSiGe膜のエッチング量との関係を示す図である。この図に示すように、エッチングガスがFガスのみの場合には、poly−Si膜はほとんどエッチングされず、SiGe膜のみが選択的にエッチングされることが確認された。これに対して、NHガスが増加するにつれ、poly−Si膜のエッチング量が増加し、反対にSiGe膜のエッチング量が低下することが確認された。これは、NHガスの増加によりpoly−Si膜のエッチング性が増加するが、NHガスが増加するとその保護作用によりSiGe膜のエッチング性が低下するためであると考えられる。
【0064】
そして、NHガスの流量が0〜30sccm程度(NHガス流量のエッチングガスの合計流量に対する流量比率(体積比率):0〜15%程度)ではpoly−Si膜に対するSiGe膜のエッチング選択比がほぼ2以上となり、0〜20sccm(NHガス流量のエッチングガスの合計流量に対する流量比率(体積比率):0〜10%)では、poly−Si膜に対するSiGe膜のエッチング選択比がほぼ10以上となり、SiGe膜の選択的エッチングが実現されることが確認された。一方、NHガスの流量が40sccm(NHガス流量のエッチングガスの合計流量に対する流量比率(体積比率):18.2%)では、SiGe膜に対するpoly−Si膜のエッチング選択比が2程度となり、NHガスの流量が100sccm(NHガス流量のエッチングガスの合計流量に対する流量比率(体積比率):35.7%)では、SiGe膜に対するpoly−Si膜のエッチング選択比が15程度となり、図4からNHガスの体積比率が18%以上でエッチング選択比がほぼ2以上、NHガスの体積比率が30%以上でエッチング選択比がほぼ10以上で、poly−Siの選択的エッチングが実現されることが確認された。NHガスの流量をさらに増加させることにより、さらにpoly−Si膜のエッチング選択性が高まることが期待される。
【0065】
[実験例2]
ここでは、サイクルエッチングの効果について評価した。
最初に、SiにSiGe膜を形成したウエハについて、サイクル数を変えてエッチングを行った。具体的には、Fガス流量;180sccm、Arガス流量:390sccm、Nガス流量:810sccm、温度:80℃、圧力:0.7Torrとし、1回あたりのエッチング時間およびサイクル数を48sec×1サイクル、16sec×3サイクル、8sec×6サイクル、4sec×12サイクルと変化させた。
【0066】
図5は、その際のSiGe膜のエッチング面の状態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。この図に示すように、1回あたりのエッチング時間を短時間としてサイクル数を増加させるほどSiGe膜のエッチング面のラフネスが良好になることが確認された。
【0067】
次に、poly−Si膜を形成したウエハについて、サイクル数を変えてエッチングを行った。具体的には、Fガス流量;250sccm、NHガス流量:50sccm、Arガス流量:1680sccm、温度:80℃、圧力:2Torrとし、1回あたりのエッチング時間およびサイクル数を16sec×2サイクル、11sec×3サイクル、8sec×4サイクルと変化させた。
【0068】
図6は、その際のpoly−Si膜のエッチング面の状態を示すSEM写真である。この図に示すように、poly−Si膜の場合にも1回あたりのエッチング時間を短時間としてサイクル数を増加させるほどエッチング面のラフネスが良好になることが確認された。
【0069】
<本発明の他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態の装置は例示に過ぎず、種々の構成の装置により本発明のエッチング方法を実施することができる。また、Siとしてpoly−Si膜、SiGeとしてSiGe膜を用いた例を示したが、エピタキシャル成長させた単結晶であってもよい。さらに、被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1;処理システム
2;搬入出部
3;ロードロック室
5;エッチング装置
6;制御部
11;第1ウエハ搬送機構
17;第2ウエハ搬送機構
40;チャンバー
42;載置台
43;ガス供給機構
44;排気機構
61;ガス導入ノズル
63;Fガス供給源
64;NHガス供給源
65;HFガス供給源
67:Fガス供給配管
68;NHガス供給配管
71;集合配管
W;半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6