【文献】
Liang Du and Arthur Lowery,Experimental Demonstration of XPM Compensation for CO-OFDM Systems with Periodic Dispersion Maps,OFC/NFOEC 2011,米国,2011年 3月
【文献】
岩城 亜弥子 他,Walk−off制御分散補償によるDP−QPSK信号のXPM抑圧評価,2011年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信2,日本,2011年 2月28日,p.365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による光伝送システムを説明する。
図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号11は、波長1を使用する光送信機である。符号12は、波長2を使用する光送信機である。符号13は、波長N(Nは自然数)を使用する光送信機である。符号2は、光送信機11、12、13が出力する光信号を合波する合波部である。符号3は、光ファイバである。符号4は、光ファイバ3を介して伝送される光信号を中継するために光学分散補償機能を有する光ノードである。符号5は、光信号を分波する分波部である。
【0019】
符号61、62、63は、複数の波長チャネルを同時処理して非線形劣化を補償する非線形劣化補償機能を有する光受信機である。
図1に示す光伝送システムは、複数の送受信機と複数の中継器(光ノード)からなるデジタルコヒーレントWDM伝送システムである。複数の送受信機は、デジタル信号処理により非線形光学効果(SPMおよびXPM)を補償する機能を有し、中継器(光ノード)においてはスパン毎に分散補償することで、信号歪を光学的に補償し、光パワーの強いファイバ入力端における波形がどのスパンにおいても一定にできる。従って、例えばMスパン分の非線形光学補償を、1スパン分の位相回転をM倍した位相回転を1回行うことで実現できる。「同時処理」とは、複数の光送信機同士又は複数の光受信機同士の少なくともいずれか一方が、複数波長チャネル(自波長チャネルおよび他波長チャネルを含む)の光パワーを、同時に処理することである。
【0020】
図2は、
図1に示す光伝送システムの動作を示す説明図である。
図2において、光強度と分散の変化のグラフ、及び伝送距離を経ることによる波形の進展を2波長を例に模式的に表している。スパン毎に分散補償されるため、ファイバ入力波形はスパン毎に一定となり、その結果光受信機において1回の位相回転で非線形補償を実現することができる。
【0021】
次に、
図3を参照して、
図1に示す光受信機61の構成を説明する。
図3は、
図1に示す光受信機61の構成を示すブロック図である。光受信機61、62、63の構成は、同じ構成であるため、ここでは、光受信機61を例にして説明する。
図3に示す構成は、1回の位相回転で非線形補償を実現する光受信機61の構成である。光受信機61は、光信号を電気信号に変換するO/E変換部611、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部612、A/D変換の標本化時刻を合わせるトリガ信号生成部613、非線形等化部614及び復調部615から構成される。受信WDM光信号(波長1、波長2、・・・、波長Nを含む)は、O/E変換部611およびA/D変換部612を通過しそれぞれ電気デジタル信号に変換され、非線形等化部614において1回の位相回転が施され非線形効果が補償され、復調部615において信号データ識別が行われる。
【0022】
次に、
図4を参照して、
図3に示す非線形等化部614の構成を説明する。
図4は、
図3に示す非線形等化部614の構成を示す図である。非線形等化部614は、スキュー調整部6141および位相回転部6142から構成される。スキュー調整部6141は、
図3におけるA/D変換部612内部の変換遅延を補償するためのものである。
図3に示すA/D変換部612では、各WDM光信号に対しA/D変換を開始する時刻を合わせるため、共通のトリガ信号を基準にしている。一方でA/D変換部612内部で変換に要する時間は、使用するA/D変換器の製造個体差のため異なり、変換された各WDMデジタル信号間で時間差が生じる。例えば数百ピコ秒程度の時間差が生じることがある。スキュー調整部6141はこれらの時間差を解消するためのものである。
【0023】
非線形効果のXPMは、光ファイバ中の光信号のうち、時刻が揃った各波長の光信号パワーが互いに影響を与える。従って異なる時刻の光信号を受信すると、異なる時刻の光信号パワーを用いて計算することになり、XPM補償効果が低減する可能性がある。XPM補償効果を高めるためには時刻を揃える必要があり、スキュー調整部6141によってこれを施す。従来の方法(例えば参考文献:Photonics Journal vol.2, no.5, 2010, pp.816-832, "Nonlinear impairment compensation for polarization-division multiplexedWDM transmission using digital backward propagation")では、1つの受信機で受信した信号の周波数成分をフィルタを用いて分割し、それぞれを別の波長チャネルとみなして処理を施していた。そのためスキュー調整は不要であった。
【0024】
しかし、参考文献の例では、受信できる波長帯域は光受信機の帯域で制限され、50GHz間隔の波長分割多重伝送における1波長チャネル相当分の帯域しかなく、複数波長チャネルを扱うことができない。従って、複数波長チャネルを扱うためには、本実施形態のように、複数の光受信機を用いて時刻同期した処理を施す必要がある。「同期」とは、サンプリング周波数が同じであり、波長チャネル間のデータにスキュー(時間差)がある場合は、信号処理でスキューを無くすように、複数の光送信機同士又は複数の光受信機同士の少なくともいずれか一方が「時刻同期」することである。
【0025】
なお、スキュー調整部6141の代わりに、
図3におけるA/D変換の標本化時刻を合わせるトリガ信号を入力する時間を調整しても同様の効果がある。位相回転部6142は、複数波長の信号を処理し非線形効果を補償する。この処理は後述する。このように、各波長のデジタル信号は、スキュー調整部6141、位相回転部6142を通り、非線形効果が補償された信号となる。
【0026】
次に、
図5に
図3に示す非線形等化部614の変形例を説明する。
図5は、
図3に示す非線形等化部614の変形例を示す図である。
図5に示す構成では、スキュー調整部6141と位相回転部6142の後にそれぞれ波長分散調整部6143を追加している。本変形構成を用いる意図を
図6、
図7を参照して説明する。分散係数が比較的大きいファイバ(例えばシングルモードファイバ)の場合、波長分散により伝搬途中の波形歪が大きくなりビットの境界のピークパワーが、ファイバ入射端時のパワーより大きくなる場合がある。SPMおよびXPMは、伝送信号のピークパワーに比例するので、SPM・XPM補償は、ファイバ入射端の波形情報を用いるのではなく、ピークパワーが最大となる伝搬途中の波形情報を用いるほうが、より補償効果が得られることになる。
【0027】
図7は、
図6に基づく非線形等化処理の動作フローを示す図である。まず、伝搬途中のピークパワーが最大となる波形になるように分散補償(波長分散調整)を行う(ステップS1)。そして、ピークパワー最大時の情報を利用して1回の位相回転を行う(ステップS2)。ただし、信号パワーは、ファイバ入射端のパワーではなくて、ステップS1で得られた波形のピークパワーを用いる。続いて、波長分散調整を行って、ステップS1の分散補償をキャンセルする(ステップS3)。
【0028】
分散補償を行うため、デジタル信号処理の負荷が大きくなるが、システム全体が分散補償されているため、スパン数分の分散補償を行う必要はなく、位相回転の前後に1回ずつ分散補償をすればよいだけであるので、デジタル信号処理回路規模は、あまり大きくならない。以上のようにファイバの分散係数が大きい場合には、伝搬途中のピークパワーに基づくSPM・XPM補償を行うことにより、より補償効果を向上させることが可能となる。調整する波長分散量の最適値は、システムの最小・最大積算分散量の間で、例えば局所探索法を用いて予め何度か測定を繰り返すことで見積もることができる。
【0029】
第1実施形態の効果を確認する実験結果について説明する。
図8は実験系の構成を示す図である。188.5THz、188.55THzのレーザ光源(Laser Diode:LD)を、それぞれ光変調器(I/Q Modulator:IQ Mod.)を通すことで、50GHz間隔の2チャネル32Gbaud(11ビット疑似ランダムパターン(PN11))の偏波多重(Polarization division multiplexing:PDM)QPSK信号で変調する。減衰器(Attenuator:Att.)を通した後、これらを50/100GHzのインターリーブフィルタ(ILF)により合波する。エルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium doped fiber amplifier:EDFA)で増幅し、音響光学変調器(Acoust-optic modulator:AOM)をスイッチとして周回伝送系に挿入して伝送する。
【0030】
信号光源および局発光(LD)は、線幅<100kHz以下の外部共振器型のレーザである。偏波多重部(PDM)では、カプラで信号を2分岐した後、一方のみ320シンボル分の遅延を加えて、偏波ビームカプラで合波することにより偏波多重信号が得られる。
伝送路は、分散シフトファイバ(Dispersion shifted fiber:DSF)20kmと光ノード部から成る。実験に用いたDSFの零分散波長は、1573nmであった。光ノード部は、伝送路の損失を補償する光アンプとマルチチャネル可変光学分散補償器(Tunable optical dispersion compensator:TODC)を集積化したLiquid crystal on silicon(LCOS)技術を用いた波長選択スイッチ(Wavelength selective switch:WSS,Finisar社WaveShaper利用)からなる。
【0031】
DSFでの波長分散は光ノード部で完全に補償される。またWSS部分で利得等化も行う。16周回後の受信信号の光SN(Optical signal-to-noise ratio:OSNR)が18dB一定になるように、ASEノイズ付加部を調整した。周波数188.5THz、188.55THzの各信号は、光フロントエンドで電気信号に変換され、サンプリングオシロスコープで同期受信し、オフラインで非線形効果補償を行った後、信号処理で復調される。本実験では、1シンボル時間の10分の1程度の時間差以内で同期受信することで、後述の非線形補償効果がより明確に得られた。
【0032】
図9は、非線形効果補償の計算手順を示す図である。波長188.5THz(Ch.1)、188.55THz(Ch.2)の各信号に対し、偏波毎に遅延時間τ
1x、τ
1y、τ
2x、τ
2yに相当するスキュー調整を行い、D1
ch1およびD1
ch2で表される波長分散量を調整する(Fはフーリエ変換、F
−1は逆フーリエ変換を表す)。次に、以下の(1)式で表される位相回転を、各偏波成分に対して複素指数関数で1回施す。
Δθ=(α
SPMP
ch1+α
XPMP
ch2)γ
mL
effM ・・・(1)
ただし、α
SPM,α
XPMはそれぞれSPM補償係数、XPM補償係数であり、P
ch1,P
ch2はCh.1およびCh.2の各偏波成分の絶対値2乗を計算することで得られるファイバ入力パワーであり、γ
m,L
eff,Mはそれぞれ非線形係数、有効長、スパン数である。
【0033】
その後D1
−1ch1を施すことで元の波長分散量に戻し、復調処理する。本実験の測定対象波長が188.5THz(Ch.1)であるため、この波長のみ復調しているが、もう一方の波長についても同様の処理で復調することができる。遅延時間τ
1x、τ
1y、τ
2x、τ
2yの具体的な値は、複数の受信機間の処理時間の違いを既知の情報パターンの信号を受信するなどの手段で予め測定し、それを補償するように設定する。復調処理では、デジタルコヒーレントシステムで通常用いられる偏波分離、周波数オフセット補償、位相推定、硬判定処理を行い信号データが識別される。
図9に示す例では2チャネルの例のみ示しているが、チャネル数が増加した場合は(1)式の第2項がチャネル数分に増やすことで計算できる。
【0034】
図10は、
図8に示す実験系によって得られた本実施形態の効果を示す実験結果である。
図10(a)は、ファイバ入力パワーを変化させて、非線形効果による受信信号品質(Q値)を示している。非線形効果を補償しない場合(凡例● No comp.)と、SPM補償する場合(凡例□ SPM comp.)、XPM補償する場合(凡例◇ XPM comp.)、SPM及びXPMの両方を補償する場合(凡例△ SPM+XPM)を併せて示している。ファイバ入力パワーが高くなると受信信号品質が低くなり、非線形効果を補償するほど受信信号品質が高くなる様子が分かる。
図10(b)は、非線形効果補償によって得られた同図(a)における受信信号品質の改善量を示している。ファイバ入力パワーが1dBm/chの場合、SPMとXPMの両方を補償した場合、受信信号品質はQ値で約2.4dB程度改善している。また
図10(b)には受信信号の位相配置コンスタレーションも併せて示しており、非線形効果の補償により位相分布が収束しており、受信信号品質が改善している様子が分かる。
【0035】
よって、本実施形態の光学的分散補償と、デジタル信号処理によるSPMおよびXPM補償を組み合わせることで、非線形光学効果を補償できることが分かる。更に、SPMおよびXPMの補償は、単純な位相回転を1回施すのみで良いので、受信端での信号処理が軽減されて、受信回路規模を抑えることができることになる。例えば非特許文献1から換算すると従来の手法における計算回数はおよそ160回であるのに対し、本実施形態ではそれを1回に低減できる。
【0036】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態による光伝送システムを説明する。
図11は、本発明の第2実施形態の構成を示す図である。
図1に示す第1実施形態の場合は、ポイントートゥーポイントの伝送システムであったが、
図11は、光ノードが多方路を有する、光クロスコネクト(Optical Cross Connect:OXC)やマルチディグリーROADM(reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexing)システムに相当する。
図11において、
図1に示す構成(第1実施形態)と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図11において、符号11〜14は、光送信機である。符号2は、合波部である。符号3は、光ファイバである。符号4は、光ノードである。符号5は、分波部である。符号61〜65は、光受信機である。
【0037】
第1実施形態と同じく、各光ノードにおいてスパン毎の光学的分散補償と、受信機においてデジタル信号処理によるSPMおよびXPM補償を1回施す。波長1と波長2は、光送信機11、12から光受信機61、62まで同一の経路を通るため、デジタル信号処理でSPM、XPMを1回で補償することができる。複数の方路から信号が入力される光ノードにおいては、経路に応じて、分散補償量を変える必要がある。このため、光ノード4は、スパン毎に分散補償を行うために、波長チャネルによって経路が異なる場合には伝送経路に応じた分散補償を行う。本実施形態においては、光伝送システムの途中の経路で波長チャネル数が増減した場合、XPM補償効果が低減することがある。
【0038】
例えば
図12を参照して説明すると、送信機から受信機にかけて同一の経路を通る元々の波長1・波長2と、途中で合流する波長3とは、通過ノード数すなわちスパン数が異なる。このとき、(1)式のように波長1・波長2のスパン数から位相回転量を計算すると、波長3に対してのスパン数とは異なるため、波長3から受けるXPMの補償効果が低減する。一方で、複数波長を1つのチャネルとみなし伝送容量拡大を図るスーパーチャネル伝送方式では、1つのチャネルを構成する複数波長は、送信機から受信機にかけて必ず同一の経路を通過するため、この光伝送システムにおいてもXPM補償効果がある。
【0039】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態による光伝送システムを説明する。
図13は、第3実施形態による光伝送システムの構成を示す図である。
図13において、
図1に示す構成(第1実施形態)と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態では受信端でSPMおよびXPM補償を行なっていたものを、第3実施形態では、光送信機11〜13で予等化する点が異なる。信号の位相成分を制御できるベクトル変調器を用いれば、伝送途中でうけるSPM・XPMによる非線形効果をキャンセルするように、変調することが可能である。受信信号を用いてデジタル信号処理にてSPM・XPM補償する場合には、受信信号にはASEノイズが含まれているため、SPM・XPM以外の影響を受けていることになる。一方送信機で予等化する場合には、無歪、無雑音の信号を処理するため、よりSPM・XPM補償の効果が期待できる。本実施形態は、伝送路で生じる波長分散や非線形効果の影響が既知である場合、もしくは未知であっても受信端で計測した非線形効果を送信端にフィードバックできる場合に適している。
【0040】
さらに、デジタル信号処理によるSPM・XPM補償を、送信・受信における位相回転量の和が(1)式を満足すれば、送信機における予等化と、受信機における処理に分けて両方で行うことでも構わない。このとき、時刻同期は複数の送信機間、もしくは複数の受信機間で必要であり、送信機と受信機の間の同期は必要でない。
【0041】
なお、ここでは、受信端で計測した影響を送信端にフィードバックする構成自体の説明は省略したが、同一経路の逆方向の通信路その他の通信路を用いてフィードバックすればよい。
【0042】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態による光伝送システムを説明する。
図14は、本発明の第4実施形態による光伝送システムの構成を示す図である。
図14において、
図1に示す構成(第1実施形態)と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。第4実施形態による光伝送システムと第1実施形態による光伝送システムとの違いは、各光ノード4においてスパン毎に光学分散補償するのに加え、偏波間の遅延を光学的に付与することである。この結果、チャネル間非線形効果の1つである相互偏波偏重(Cross polarization modulation:XPolM)の発生を抑圧することができる。偏波間の遅延を光学的に付与する手段としては、偏波保持光ファイバ、偏波合分波器と遅延線の組み合わせ、LCOS技術を用いたWSSデバイスなどがある。本実施形態では、デジタル信号処理によるSPM・XPM補償に加え、光学的にXPolMが抑圧できるため、非線形効果の影響がより低減され更なる受信信号品質の改善が実現できる。本実施形態は、非線形効果のうちXPolMの影響が大きい伝送路に適している。
【0043】
図15は、
図14に示す光伝送システムの動作を示す説明図である。
図15において、光強度と分散の変化のグラフ、及び伝送距離を経ることによる波形の進展を2波長を例に模式的に表している。スパン毎に分散補償されるため、ファイバ入力波形はスパン毎に一定となり、その結果光受信機において1回の位相回転で非線形補償を実現することができる。
【0044】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態による光伝送システムを説明する。
図16は、第5実施形態による光伝送システムの構成を示す図である。
図16において、
図1に示す構成(第1実施形態)と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。第5実施形態による光伝送システムと第1実施形態による光伝送システムとの違いは、各光ノード4においてスパン毎に光学分散補償するのに加え、波長間の遅延を光学的に付与することである。
この結果XPMの発生を抑圧することができる。波長間の遅延を光学的に付与する手段としては、波長合分波器と遅延線の組み合わせ、LCOS技術を用いたWSSデバイスなどがある。本実施形態では、各光ノードでXPMの発生を抑圧するのに加えて、受信機での補償を組み合わせることで、よりXPM補償効果が期待できる。また各光ノードでXPMの発生が十分抑圧されれば、受信機におけるXPM補償の必要がなくなり、デジタル信号処理の処理軽減と回路規模の削減が実現できる。
【0045】
図17は、
図16に示す光伝送システムの動作を示す説明図である。
図17において、光強度と分散の変化のグラフ、及び伝送距離を経ることによる波形の進展を2波長を例に模式的に表している。スパン毎に分散補償されるため、ファイバ入力波形はスパン毎に一定となり、その結果光受信機において1回の位相回転で非線形補償を実現することができる。
【0046】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態による光伝送システムを説明する。
図18は、本発明の第6実施形態による光伝送システムの構成を示す図である。
図18において、
図1に示す構成(第1実施形態)と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図18に示す光ノード4は、第4実施形態による光ノード4と第5実施形態に光ノード4とを組み合わせたものである。これにより、各光ノード4においてスパン毎に光学分散補償するのに加え、偏波間ならびに波長間の遅延を光学的に付与することで、XPolMならびにXPMの発生を抑圧することができる。
【0047】
図19は、
図17に示す光伝送システムの動作を示す説明図である。
図19において、光強度と分散の変化のグラフ、及び伝送距離を経ることによる波形の進展を2波長を例に模式的に表している。スパン毎に分散補償されるため、ファイバ入力波形はスパン毎に一定となり、その結果光受信機において1回の位相回転で非線形補償を実現することができる。
【0048】
なお、第4、第5、第6実施形態は、それぞれ第2実施形態のように光ノードが多方路を有するOXCやROADMシステムにも適用できる。更に第3実施形態のように送信機におけるデジタル信号処理、並びに送信機・受信機の両方におけるデジタル信号処理でSPM・XPM補償する実施形態にも適用できる。
【0049】
次に、前述した光ノード4の構成を説明する。
図20〜
図45は、前述した光ノード4の構成を示す図である。前述した第1〜第6実施形態において、光ノード4の必須機能は、スパン毎の分散補償を行う分散補償機能部41とスパン毎の損失を補償する光増幅器42である。これらの2つの機能はどの順番でも構わない。
図20は、分散補償機能部41、光増幅器42の順で構成した例である。
図21は、光増幅器42、分散補償機能部41の順で構成した例である。
【0050】
図22〜
図25は第4実施形態による光ノード4の構成を示す図である。第4実施形態による光ノード4は、必須である分散補償機能部41と光増幅器42に加えて偏波間遅延付与機能部43を追加している。
図22は、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43、光増幅器42の順で構成した例である。
図23は、偏波間遅延付与機能部43、分散補償機能部41、光増幅器42の順で構成した例である。
図24は、光増幅器42、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43の順で構成した例である。
図25は、光増幅器42、偏波間遅延付与機能部43、分散補償機能部41の順で構成した例である。
【0051】
図26〜
図29は第5実施形態による光ノード4の構成を示す図である。第5実施形態による光ノード4は、必須である分散補償機能部41と光増幅器42に加えて波長間遅延付与機能部44を追加している。
図26は、分散補償機能部41、波長間遅延付与機能部44、光増幅器42の順で構成した例である。
図27は、波長間遅延付与機能部44、分散補償機能部41、光増幅器42の順で構成した例である。
図28は、光増幅器42、分散補償機能部41、波長間遅延付与機能部44の順で構成した例である。
図29は、光増幅器42、波長間遅延付与機能部44、分散補償機能部41の順で構成した例である。
【0052】
図30〜
図41は、第6実施形態による光ノード4の構成を示す図である。第6実施形態による光ノード4は、必須である分散補償機能部41と光増幅器42に加えて、偏波間遅延付与機能部43と波長間遅延付与機能部44とを追加している。
図30は、分散補償機能部41、波長間遅延付与機能部44、偏波間遅延付与機能部43、光増幅器42の順で構成した例である。
図31は、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43、波長間遅延付与機能部44、光増幅器42の順で構成した例である。
図32は、波長間遅延付与機能部44、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43、偏波間遅延付与機能部43の順で構成した例である。
図33は、偏波間遅延付与機能部43、分散補償機能部41、波長間遅延付与機能部44、光増幅器42の順で構成した例である。
図34は、波長間遅延付与機能部44、偏波間遅延付与機能部43、分散補償機能部41、光増幅器42の順で構成した例である。
図35は、偏波間遅延付与機能部43、波長間遅延付与機能部44、分散補償機能部41、光増幅器42の順で構成した例である。
【0053】
図36は、光増幅器42、分散補償機能部41、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43の順で構成した例である。
図37は、光増幅器42、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43、波長間遅延付与機能部44の順で構成した例である。
図38は、光増幅器42、波長間遅延付与機能部44、分散補償機能部41、偏波間遅延付与機能部43の順で構成した例である。
図39は、光増幅器42、偏波間遅延付与機能部43、分散補償機能部41、波長間遅延付与機能部44の順で構成した例である。
図40は、光増幅器42、波長間遅延付与機能部44、偏波間遅延付与機能部43、分散補償機能部41の順で構成した例である。
図41は、光増幅器42、偏波間遅延付与機能部43、波長間遅延付与機能部44、分散補償機能部41の順で構成した例である。
【0054】
図42〜
図45は、必須である分散補償機能部41と光増幅器42に加えて、偏波間遅延と波長間遅延とを付与する偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45を備える光ノード4の構成を示す図である。
図42は、分散補償機能部41、偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45、光増幅器42の順で構成した例である。
図43は、偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45、分散補償機能部41、光増幅器42の順で構成した例である。
図44は、光増幅器42、分散補償機能部41、偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45の順で構成した例である。
図45は、光増幅器42、偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45、分散補償機能部41の順で構成した例である。
【0055】
図20〜
図45に示す光ノード4において分散補償機能部41を分散補償ファイバ(Dispersion Compensation Fiber:DCF)を用いて行う場合には、DCFのコア径が、通常の伝送路ファイバよりも小さく、DCF内での非線形発生が問題となるため、光信号パワーが小さいところで用いるのが通常である。そのためDCFは光増幅機能の前で用いる構成にするのがよい。一方、分散補償機能部41を第1実施形態に示すLCOS WSSのTODC機能により実現する場合には、光信号パワーに依存しないため、どの構成でも構わない。
【0056】
次に、偏波間遅延付与機能部43の構成を説明する。
図46〜
図48は、前述した偏波間遅延付与機能部43の構成を示す図である。
図46は、波長分波機能部431によって3波長に分波して、偏波間遅延付与部432により波長毎に異なる偏波間遅延量を付加してから、波長合波機能部433により合波する構成を示している。ここで、波長分波機能部431に周回性を有するAWG(Arrayed Waveguide Grating)を用いると、3波長周期で、同一ポートに信号がルーチングされるので、広い波長範囲での動作が可能になる。
【0057】
図47は、波長分波機能部431と波長合波機能部433にILFを用いた場合の構成である。奇数番目と偶数番目の波長チャネルがそれぞれ別の経路で、偏波間遅延付与部432より異なる偏波間遅延量を付与されることになる。
図48は、LCOS WSS(例えばFinisar社WaveShaper)を用いた波長毎偏波間遅延付与部434の構成を示している。LCOS WSSの内部で波長チャネル毎に異なる偏波間遅延量を付与することが可能であるので、一つのデバイスでシンプルな構成が可能である。なお、
図46および
図47での偏波間遅延付与部432は、その遅延量が可変である必要はなく、波長毎に異なる固定の遅延量でも構わない。
【0058】
次に、波長間遅延付与機能部44の構成を説明する。
図49〜
図51は、波長間遅延付与機能部44の構成を示す図である。
図49は、波長分波機能部441によって3波長に分波して、遅延付与部442により波長毎に異なる遅延量を付与してから、波長合波機能部443により合波する構成を示している。ここで、波長分波機能部441に周回性を有するAWG(Arrayed Waveguide Grating)を用いると、3波長周期で、同一ポートに信号がルーチングされるので、広い波長範囲での動作が可能になる。
【0059】
図50は、波長分波機能部441と波長合波機能部443にILFを用いた場合の構成である。奇数番目と偶数番目の波長チャネルがそれぞれ別の経路で、遅延付与部442より異なる遅延量を付与されることになる。
図51は、LCOS WSS(例えばFinisar社WaveShaper)を用いた波長毎遅延付与部444の構成を示している。
LCOS WSSの内部で波長チャネル毎に異なる偏波間遅延量を付与することが可能であるので、一つのデバイスでシンプルな構成が可能である。なお、
図49および
図50での遅延付与部442は、その遅延量が可変である必要はなく、波長毎に異なる固定の遅延量でも構わない。
【0060】
次に、偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45の構成を説明する。
図52〜
図57は、偏波間遅延付与+波長間遅延付与機能部45の構成を示す図である。
図52は、波長分波機能部451によって3波長に分波して、偏波間遅延付与部452、遅延付与部453により波長毎に異なる遅延量を付与してから、波長合波機能部454により合波する構成を示している。
図53は、波長分波機能部451によって3波長に分波して、遅延付与部453、偏波間遅延付与部452により波長毎に異なる遅延量を付与してから、波長合波機能部454により合波する構成を示している。ここで、波長分波機能部451に周回性を有するAWG(Arrayed Waveguide Grating)を用いると、3波長周期で、同一ポートに信号がルーチングされるので、広い波長範囲での動作が可能になる。
【0061】
図54は、波長分波機能部451と波長合波機能部454にILFを用いた場合の構成である。奇数番目と偶数番目の波長チャネルがそれぞれ別の経路で、偏波間遅延付与部452、遅延付与部453により異なる遅延量を付与されることになる。
図55は、波長分波機能部451と波長合波機能部454にILFを用いた場合の構成である。奇数番目と偶数番目の波長チャネルがそれぞれ別の経路で、遅延付与部453、偏波間遅延付与部452により異なる遅延量を付与されることになる。
【0062】
図56は、LCOS WSS(例えばFinisar社WaveShaper)を用いた波長毎偏波間遅延付与部455、波長毎遅延付与部456の構成を示している。
図57は、LCOS WSS(例えばFinisar社WaveShaper)を用いた波長毎遅延付与部456、波長毎偏波間遅延付与部455の構成を示している。LCOS WSSの内部で波長チャネル毎に異なる偏波間遅延量を付与することが可能であるので、一つのデバイスでシンプルな構成が可能である。
【0063】
なお、前述した説明において、1スパン分の位相回転をN倍した位相回転を1回行うことで非線形補償する例を説明したが、位相回転を複数回に分割してもよく、1スパン分の位相回転に伝播距離を乗じて1スパン分の距離を除した位相回転することで非線形補償してもよい。
【0064】
以上説明したように、光学的分散補償機能を備えることでDSP(Digital Signal Processor)での等化処理を軽減することができる光伝送システムを提供することが可能となる。特に、波長分散によりピークパワーが最大となる伝搬途中の波形情報を用いて位相回転を補償すること、又は自チャネル強度によるSPMのみならず隣接チャネル強度によるXPMによる位相回転を補償することの少なくともいずれか一つを行うようにした。これにより、デジタル信号処理のみによる非線形光学効果補償の場合よりも、光学的補償を併用することにより、単純な構成によるSPMおよびXPM補償で信号品質を改善することが可能となり、かつ装置規模も小さくすることができる。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。