(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(1)の前に、ロールに巻き取られた前記ガスバリアフィルムを、前記ガスバリアフィルムの前記表面に接触しない段付ロールを使用して端部保持のみで搬送することを含み、かつ、前記(1)の塗布が、前記ガスバリアフィルムの前記表面に接触しないダイコーターまたはスリットコーターを用いて行われる請求項11または12に記載の製造方法。
前記ガスバリアフィルムと光拡散層形成材料塗布膜との積層体、および、前記ガスバリアフィルムと前記光拡散層と前記平坦化層形成材料塗布膜との積層体からなる群から選択される1つ以上の積層体を、温風加熱または加熱ローラー加熱することを含む請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
前記(2)の光照射および前記(4)の光照射からなる群から選択される1つ以上の光照射をそれぞれの前記積層体のガスバリアフィルム側から30℃以上100℃未満の温度で加熱しながら行う請求項11〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味を表す。「(メタ)アクリロイル基」等も同様である。
【0014】
<機能性積層フィルム>
本明細書において、機能性積層フィルムとは、バリア性およびフレキシビリティとともに追加の光学的機能を有するフィルムを意味する。光学的機能としては、フィルムの一方の面側に設けられる発光素子などからの発光を他方の面方向に効率良く取り出すことができる機能およびフィルムの一方の面側に設けられる発光素子などからの発光を他方の面方向に拡散(散乱)させる機能が挙げられる。機能性積層フィルムは有機電界発光装置用フィルム基板として用いることができる。
機能性積層フィルムは、ガスバリアフィルムおよび光取り出し層を含み、ガスバリアフィルムおよび光取り出し層の積層構造を有する。ガスバリアフィルムおよび光取り出し層は直接接しており、ガスバリアフィルム中の1層の無機層と光取り出し層中の光拡散層とが直接接している。機能性積層フィルムにおいてガスバリアフィルムと光取り出し層との積層体の両外側には他の層が含まれていても含まれていなくてもよいが含まれていないことが好ましい。外側にある他の層としては、保護層などが挙げられる。
図1に機能性積層フィルムの一例の概略断面図を示す。
図1に示す例では、ガスバリアフィルムが、基材フィルム側から有機層、無機層、有機層、無機層がこの順に積層された構成を有しており、基材フィルム側から遠い方の無機層が光取り出し層における光拡散層と直接接している。
機能性積層フィルムの膜厚は20μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜150μmであることがより好ましい。
以下、機能性積層フィルムに含まれる各層について説明する。
【0015】
<光取り出し層>
光取り出し層は、層の一方の面側に設けられる発光素子などからの発光を他方の面方向に効率良く取り出しかつ拡散させる機能を有していればよい。例えば、機能性積層フィルムが有機電界発光装置用フィルム基板として用いられる場合、光取り出し層の一方の面側に有機電界発光層を形成した構成で、有機電界発光層からの発光を他方の面側にあるガスバリアフィルム方向に、効率よく取り出して拡散させることができればよい。
光取り出し層の膜厚は1μm〜20μmであることが好ましく、3μm〜15μmであることがより好ましい。
光取り出し層は、光拡散層および平坦化層を含む。光取り出し層は、光拡散層および平坦化層以外の他の層を含んでいてもよいが、光拡散層および平坦化層からなることが好ましい。機能性積層フィルムにおいては、光拡散層がガスバリアフィルム側にあり、ガスバリアフィルム中の無機層に接している。
【0016】
<光拡散層>
光拡散層は層の一方の面側に設けられる発光素子などからの発光を他方の面方向に効率良く取り出しかつ拡散させる機能を有する。具体的には、屈折率がガラス基板(n(屈折率)=1.5程度))または(メタ)アクリレートの重合により形成されるポリマー層(n=1.6程度)よりも高くなるように調整されていればよい。
光拡散層は光拡散粒子とバインダーとを含む光拡散層形成材料から形成される。光拡散層形成材料は下記バインダーに光拡散粒子を分散させた分散液として形成されていればよい。光拡散層形成材料はバインダーと光拡散粒子とを攪拌などにより混合すること、下記バインダー各成分と光拡散粒子とを溶媒に添加し混合することなどにより調製することができる。
【0017】
<バインダー>
バインダーは、酸化チタン微粒子と、多官能アクリルモノマーと、シランカップリング剤とを含有する組成物である。バインダーは必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0018】
<酸化チタン微粒子>
酸化チタン微粒子の添加により、光拡散層の屈折率を上げることができる。酸化チタン微粒子としては、特に限定されないが、光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子を用いることが好ましい。光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子としては、(1)酸化チタン微粒子表面をアルミナ、シリカ、及びジルコニアの少なくとも1種で被覆した酸化チタン微粒子、(2)上記(1)の被覆した酸化チタン微粒子の被覆表面に樹脂を被覆してなる酸化チタン微粒子などが挙げられる。上記樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)などが挙げられる。
光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子が、光触媒活性を有さないことの確認は、例えばメチレンブルー法により行うことができる。
【0019】
光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子における酸化チタン微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。
酸化チタン微粒子は、酸化チタン以外の金属酸化物を添加して複合化されたものであってもよい。
酸化チタン微粒子に複合化させることができる金属酸化物の例としては、Sn、Zr、Si、Zn、及びAlから選択される少なくとも1種の金属酸化物が好ましい。金属酸化物のチタンに対する添加量は、1モル%〜40モル%が好ましく、2モル%〜35モル%がより好ましく、3モル%〜30モル%が更に好ましい。
【0020】
酸化チタン微粒子の一次平均粒径は、1nm〜30nmが好ましく、1nm〜25nmがより好ましく、1nm〜20nmが更に好ましい。一次平均粒径が、30nmを超えると、分散液が白濁し、沈降が起きることがあり、1nm未満であると、結晶構造がはっきりせずアモルファスに近いものとなり、経時でゲル化などの変化が起こるようになる。
一次平均粒径は、例えば、X線回折装置で測定された回折パターンの半値幅からの計算や電子顕微鏡(TEM)撮影像の直径からの統計計算などにより測定することができるが、本明細書においては、電子顕微鏡(TEM)撮影像の直径からの統計計算に基づき測定された値を基準とするものとする。
酸化チタン微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、又は不定形状が好ましい。酸化チタン微粒子は、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0021】
また、酸化チタン微粒子は、平均二次粒子径が100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることがさらに好ましい。
二次粒子径は、微粒子が理想的に分散した状態の粒子径と定義される一次粒径に対し、その一次粒子がある状態(環境中)で凝集した際の凝集体の大きさとして定義されるものである。一般的な微粒子が含有されている分散体中では、ある程度の大きさを持って凝集している場合が多い。また、平均二次粒子径の測定方法としては、動的光散乱法、レーザー回折法、画像イメージング法が挙げられるが、本明細書において定義される、平均二次粒子径の値は、動的光散乱法に基づくものとする。
平均二次粒子径を制御する方法として、分散剤の添加が挙げられる。分散剤の種類・添加量にて、分散状態を制御し、平均二次粒子径を調整する。
分散剤としては アミン系、ポリカルボン酸アルキルエステル系、ポリエーテル系の分散剤が挙げられ、特に限定されない。所望の平均二次粒子径に分散した市販品を用いてもよい。
【0022】
酸化チタン微粒子は、屈折率が2.2以上3.0以下であり、2.2以上2.8以下がより好ましく、2.2以上2.6以下が更に好ましい。屈折率が、2.2以上であれば、光拡散層の屈折率を効果的に高めることができ、屈折率が、3.0以下であれば、酸化チタン微粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。
ここで、酸化チタン微粒子のように屈折率が高く(1.8以上)、平均一次粒径が1〜100nm程度の微粒子の屈折率を測定することは困難であるが、次のようにして屈折率を測定することができる。屈折率既知の樹脂材料に酸化チタン微粒子をドープし、酸化チタン微粒子が分散された樹脂材料をSi基板、又は石英基板上に塗布膜を形成する。塗布膜の屈折率をエリプソメーターで測定し、塗布膜を構成する樹脂材料と酸化チタン微粒子の体積分率から、酸化チタン微粒子の屈折率が判る。
【0023】
以下の式から算出される酸化チタン微粒子の含有量は、バインダーの体積(溶媒を除く)に対し、10体積%以上30体積%以下であり、10体積%以上25体積%以下がより好ましく、10体積%以上20体積%以下が更に好ましい。
式:酸化チタン微粒子の含有率(体積%)=(酸化チタン微粒子の質量/4(比重))/{(酸化チタン微粒子の質量/4(比重))+(多官能アクリルモノマーの質量/多官能アクリルモノマーの比重)}
【0024】
<多官能アクリルモノマー>
本明細書において、「多官能アクリルモノマー」とは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するモノマーを意味する。多官能アクリルモノマーとして、具体的には、例えば特開2013−43382号公報の段落0024〜0036または特開2013−43384号公報の段落0036〜0048に記載の化合物を用いることができる。多官能アクリルモノマーはフルオレン骨格を有することが好ましい。
【0025】
フルオレン骨格を有する多官能アクリルモノマーとしては、WO2013−047524に記載の式(2)で表される式の化合物が挙げられる。具体的な例としては以下が挙げられる。下記の例の中で、特に、一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0029】
多官能アクリルモノマーとしては、体積収縮率が10%以下のアクリルモノマーを用いることが好ましく、5%以下のアクリルモノマーを用いることがより好ましい。
体積収縮率とは紫外線硬化前のモノマーの状態と硬化した後のポリマーの状態になったあとの体積の差である。(技術情報協会:「UV硬化における硬化不良・阻害要因とその対策」、2003年12月11日 第1版発行 第1章3節参照)体積収縮率は、硬化前後の厚み測定や、プラステッィクフィルム上に形成した際のカールの量を測定する方法で測定することができるが、一般的な測定装置(松尾産業株社製、樹脂硬化収縮応力測定装置)等で測ることができる。体積収縮率はアクリルモノマーの分子量、官能基などを調製することにより調整することができる。
多官能アクリルモノマーの、バインダーの固形分(揮発分が揮発した後の残分)中に占める割合は、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0030】
バインダーは添加剤として、多官能アクリルモノマー以外に、特開2012−155177号公報の段落<0020>〜<0045>に記載の熱可塑性樹脂、反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、他の多官能モノマーや多官能オリゴマーなどを含んでいてもよい。
【0031】
<シランカップリング剤>
バインダーは、シランカップリング剤を含む。本発明者らの研究の結果、ガスバリアフィルムの無機層と接するように設けられる光拡散層の形成用材料にシランカップリング剤を添加することにより、無機層と光拡散層とが強固に密着し、また、光拡散層に無機層を保護する機能も付与されることがわかった。特に、後述のように、無機層表面に光拡散層形成用材料を塗布し、加熱、紫外線照射を行って光拡散層を形成することにより、無機層と光拡散層とが強固に密着する。
【0032】
シランカップリング剤としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルキルオキシ基またはアセトキシ基等の加水分解可能な反応基と、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、ハロゲン基、メルカプト基、および(メタ)アクリロイル基から選択される1つ以上の反応性基を有する置換基とが同じケイ素に結合した構造を有する化合物、2つのケイ素が酸素または―NH−を介して結合している部分構造を有し、これらのケイ素のいずれかに上記の加水分解可能な反応基と、上記の反応性基を有する置換基とが結合した構造を有する化合物などが挙げられる。シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基を有していることが特に好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、WO2013/146069に記載の一般式(1)で表されるシランカップリング剤およびWO2013/027786に記載の一般式(I)で表されるシランカップリング剤などが挙げられる。
好ましいシランカップリング剤としては、以下の一般式(1)で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0034】
式中、R1は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R2はハロゲン元素またはアルキル基を示し、R3は水素原子またはアルキル基を示し、Lは2価の連結基を示し、nは0から2のいずれかの整数を示す。
【0035】
ハロゲン元素としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基、または後述の置換基のうちアルキル基を含む置換基中のアルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、直鎖アルキル基が好ましい。
【0036】
2価の連結基としては、1〜20個の炭素を含む連結基であることが好ましい。好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6の炭素を含む連結基であればよい。2価の連結基の例としては、アルキレン基(例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−プロピレン基(2,2−プロピリデン基、1,1−ジメチルメチレン基とも呼ばれる)、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基、およびこれらの2価の基が複数個直列に結合した2価残基(例えば、ポリエチレンオキシエチレン基、ポリプロピレンオキシプロピレン基、2,2−プロピレンフェニレン基等)を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよい。また、これらの基の2個以上が複数直列に結合して形成された連結基であってもよい。この中でも、アルキレン基、アリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基がより好ましい。置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などが挙げられる。
【0037】
以下に、シランカップリング剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0039】
シランカップリング剤の、バインダーの固形分(揮発分が揮発した後の残分)中に占める割合は、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。シランカップリング剤を2種類以上含んでいてもよく、この場合、それらの合計量が、上記範囲となっていればよい。
【0040】
<重合開始剤>
バインダーは、重合開始剤を含有していてもよい。
重合開始剤の例としては、特開2012−155177号公報の段落<0046>〜<0058>に記載の光重合開始剤などが挙げられる。具体的な例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合に関与する化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。
【0041】
<フッ素系界面活性剤>
バインダーは、フッ素系界面活性剤を含有していてもよい。
フッ素系界面活性剤の例としては、特開2002−255921号、特開2003−114504、特開2003−140288号、特開2003−149759号、特開2003−195454号、特開2004−240187号の各公報に記載のフッ素系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性(ベタイン性)のいずれであってもよく、特に限定されない。
具体的な化合物としては、特開2002−255921号公報記載のFS−1〜FS−29のアニオン性フッ素系界面活性剤、特開2003−114504号公報に記載のFS−1〜FS−71のカチオン性および両性フッ素系界面活性剤、特開2003−140288号公報に記載のFS−1〜FS−38のアニオン性フッ素系界面活性剤、特開2003−149759号公報に記載のFS−1〜FS−39のカチオン性フッ素系界面活性剤、特開2003−195454号公報のFS−1〜FS−32のアニオン性、カチオン性およびノニオン性フッ素系界面活性剤を挙げることができる。
フッ素系界面活性剤は光拡散層形成材料の固形分全質量(溶媒を除いた後の質量)に対し、0.01質量%以上含まれていればよい。
【0042】
<溶媒>
バインダーは上記各成分を溶媒に溶解し、形成したものであればよい。上記各成分と光拡散粒子とを溶媒に混合してバインダー中に光拡散粒子が分散した分散液として光拡散層形成材料を調製してもよい。溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、SP値(Solubility Parameter(溶解度パラメータまたは溶解性パラメータ)が14 (cal/cm
3)
1/2以下の有機溶媒が好ましい。なお、1 (cal/cm
3)
1/2は約2.05(MPa)
1/2に相当する。
【0043】
溶媒の例としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えばメチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、芳香族炭化水素、ケトン類が好ましく、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンがより好ましく、トルエン、キシレンが特に好ましい。
【0044】
<光拡散粒子>
光拡散粒子としては、光を拡散可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機粒子であればよい。2種以上の光拡散粒子を用いてもよい。
【0045】
有機粒子としては、例えばポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、アクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、などが挙げられる。
【0046】
これらの中でも、光拡散粒子としては、耐溶剤性とバインダー中の分散性の点で架橋状態の樹脂粒子が好ましく、架橋ポリメチルメタクリレート粒子が特に好ましい。
光拡散粒子が、架橋状態の樹脂粒子であることは、溶剤、例えばトルエン中に分散させ、樹脂粒子の溶け難さを見ることで確認することができる。
【0047】
光拡散粒子の屈折率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0〜3.0が好ましく、1.2〜1.6がより好ましく、1.3〜1.5が更に好ましい。屈折率が、1.0未満及び3.0を超えると、光拡散(散乱)が強くなりすぎるため、光取り出し効率が低下することがある。
光拡散粒子の屈折率は、例えば自動屈折率測定器(KPR−2000、株式会社島津製作所製)を用い、屈折液の屈折率を測定してから、精密分光計(GMR−1DA、株式会社島津製作所製)で、シュリブスキー法により測定することができる。
【0048】
バインダーの屈折率Aと光拡散粒子の屈折率Bとの屈折率差|A−B|(絶対値)は、0.2以上1.0以下でればよく、0.2以上0.5以下が好ましく、0.2以上0.4以下が更に好ましい。
【0049】
光拡散粒子の平均粒径は、0.5μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜6μmがより好ましく、1〜3μmが更に好ましい。光拡散粒子の平均粒径が、10μmを超えると、光の大部分が前方散乱になり、光拡散粒子による光の角度を変換する能力が低下してしまうことがある。一方、光拡散粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、可視光の波長より小さくなり、ミー散乱がレイリー散乱の領域に変化し、光拡散粒子の散乱効率の波長依存性が大きくなり、有機電界発光素子の色度が大きく変わってしまったり、後方散乱が強くなり、光取り出し効率が低下したりすることがあると予想される。
光拡散粒子の平均粒径は、例えば日機装株式会社製ナノトラックUPA−EX150等の動的光散乱法を利用した装置や、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
【0050】
光拡散粒子の、バインダーの固形分(揮発分が揮発した後の残分)中に占める割合は、20〜50質量%が好ましく、25〜40質量%がより好ましい。
【0051】
<光拡散層及び平坦化層の形成方法>
光拡散層は、光拡散層形成材料を、ガスバリアフィルム表面に塗布し、さらに塗布膜を硬化することにより形成することができる。必要に応じて、塗布後の乾燥や、硬化前、硬化時もしくは硬化後の加熱を行ってもよい。なお、後述のように、ガスバリアフィルム表面ではなく、光拡散層表面に形成されるという点を除き、平坦化層も同様に形成すればよい。
光拡散層形成材料を塗布するガスバリアフィルム表面は無機層となるようにすればよい。光拡散層と無機層との間にはSi−O−Siの結合が形成されていることが好ましい。Si−O−Siの結合の確認は、FT−IR等により行うことができる。具体的には、約1050cm
-1にあるSi−O−Siのピークの有無を確認すればよい。
【0052】
塗布、乾燥、硬化の工程はロールツーロール(RtoR)方式を用いて、連続プロセスで行うことが好ましい。すなわち、ガスバリアフィルムまたは積層体をロールに巻き取ったり、巻き戻したり(ほどいたり)しながら、連続プロセスで行うことが好ましい。なお、光拡散層の形成と、光拡散層と同様に形成される平坦化層の形成も連続プロセスで行うことが好ましい。連続プロセスについては、特開2013−031794号公報の記載を参照することができる。
上記のプロセスにおいて、塗布膜の最終到達温度は、光拡散層形成材料(バインダー)の溶剤、平坦化層形成材料の溶媒、もしくはシランカップリング剤の副生成物の沸点、または、それら溶剤の共沸点よりも高い温度とすることが好ましい。加熱は乾燥風、温風による方法または加熱ローラーによる方法などで基板となるガスバリアフィルムごと加熱することにより行うことができる。
【0053】
ガスバリアフィルムの最表面にある無機層の表面に光拡散層形成材料塗布を行うためのロールツーロール方式での搬送の際に用いるパスロールとしては、表面に接触しない段付ロールを使用することが好ましい。このようにすることにより、端部保持のみの非接触搬送を行うことができる。非接触搬送については、特開2009−179853号公報の記載を参照することができる。
塗布は、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で行うことができる。このうち、下地無機層に接触しないような、非接触搬送と、ダイコーターもしくはスリットコーターを用いたエクストルージョンコート法による塗布が好ましい。エクストルージョンコート法においては、無機層に対し光拡散層形成材料を塗布する際、液溜りのみが接触し、塗布装置が直接接することはないため、物理的な接触による無機層のクラックやヒビなどの損傷が生じにくいからである。
【0054】
光拡散層形成材料塗布膜は、次いで、乾燥してもよい。乾燥はガスバリアフィルムと光拡散層形成材料塗布膜との積層体に行えばよい。積層体は、乾燥部に搬送され、乾燥工程に付されればよい。好ましい態様として、乾燥部は、表面側(塗布膜側)から加熱して乾燥を行う乾燥部と、裏面側(ガスバリアフィルム側)から加熱して乾燥を行う乾燥部を有し、表面側と裏面側の両方から、塗布された重合性組成物の乾燥を行う態様が挙げられる。例えば、表面側の乾燥部が温風乾燥部であって、かつ裏面側の乾燥部がヒートローラ(加熱機構を有するパスローラ)であってもよい。
【0055】
乾燥部は、積層体ごと加熱することにより光拡散層形成材料塗布膜の乾燥を行っていてもよく、光拡散層形成材料塗布膜は、ガスバリアフィルム側からも十分に加熱されて、乾燥が行われていてもよい。乾燥手段は、特に限定されず、支持体の搬送速度等に応じて、被成膜材料が光照射部に至る前に、光拡散層形成材料を乾燥(有機溶剤を除去)して、重合性化合物の重合が可能な状態にできるものであれば、いずれの乾燥手段を用いてもよい。乾燥手段の具体例としては、ヒートローラ、温風機、伝熱板等が挙げられる。
これらの乾燥手段を用いることにより、シランカップリング剤等の加水分解反応を進行させ、光拡散層形成材料(バインダー)を効率的に硬化させ、かつ、ガスバリアフィルム等にダメージを与えずに成膜することができる。これらの乾燥手段の1つのみを用いてもよく、複数を併用してもよい。公知の乾燥手段のいずれも利用可能である。
【0056】
光拡散層形成材料は、光(例えば、紫外線)、電子線、または熱線にて、硬化させればよく、光によって硬化させることが好ましい。特に、光拡散層形成材料を25℃以上の温度(例えば、30〜130℃)をかけて加熱しながら、硬化させることが好ましい。加熱により、多官能アクリルモノマーの自由運動を促進させることで効果的に硬化させ、かつ、ガスバリアフィルムにダメージを与えずに成膜することができる。
【0057】
光照射の光源は、光重合開始剤の反応する波長(吸収波長)付近であればいずれでもよく、吸収波長が紫外領域の場合、光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350nm〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、吸収波長が赤外領域の場合、光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750nm〜1,400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0058】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。酸素濃度範囲は0〜1,000ppmが好ましく、0〜800ppmがより好ましく、0〜600ppmが更に好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1mW/cm
2〜100mW/cm
2が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は、100mJ/cm
2〜10,000mJ/cm
2が好ましく、100mJ/cm
2〜5,000mJ/cm
2がより好ましく、100mJ/cm
2〜1,000mJ/cm
2が特に好ましい。
【0059】
光照射量が、100mJ/cm
2未満であると、光拡散層が十分に硬化せず、光拡散層上に平坦化層を塗布する際に溶解、また、基板洗浄時に崩壊することがある。一方、光照射量が、10,000mJ/cm
2を超えると、光拡散層の重合が進み過ぎ表面が黄変し、透過率が低下し、光取り出し効率が低下することがある。
【0060】
ガスバリアフィルム側から加熱できるように、ロールツーロール工程において、バックアップロール側がガスバリアフィルムとなるようにバックアップロールに製造中のフィルムを巻くことが好ましい。また、ガスバリアフィルム側から30℃以上100℃未満の温度で加熱しながら光照射を行うことも好ましい。
【0061】
<光拡散層>
光拡散層における光拡散粒子の含有量は、30体積%以上66体積%以下が好ましく、40体積%以上60体積%以下がより好ましく、45体積%以上55体積%以下が特に好ましい。含有量が、30体積%未満であると、光拡散層に入射してきた光が光拡散粒子に散乱される確率が小さく、光拡散層の光角度を変換する能力が小さいので、光拡散層の厚みを充分に厚くしないと光取り出し効率が低下することがある。また、光拡散層の厚みを厚くすることはコストの増加に繋がり、光拡散層の厚みのバラツキが大きくなり、発光面内の散乱効果にバラツキが生じるおそれがある。一方、含有量が、66体積%を超えると、光拡散層の表面が大きく荒れ、内部にも空洞が生じることで、光拡散層の物理的強度が低下することがある。
【0062】
光拡散層の平均厚みは、0.5〜15μmが好ましく、1〜7μmがより好ましく、1.5〜5μmが特に好ましい。光拡散層の平均厚みは、例えば光拡散層の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定して、求めることができる。
また、光拡散層と平坦化層との膜厚の総計は1μm〜30μmであることが好ましい。
【0063】
光拡散層中のバインダーの屈折率は、1.7〜2.2が好ましく、1.7〜2.1がより好ましく、1.7〜2.0が更に好ましい。バインダーの屈折率が、1.7未満であると、光取り出し効率が低下することがあり、2.2を超えると、光拡散層中のバインダー内の光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子量が増えているため、散乱が強くなりすぎ、光取り出し効率が低下することがある。
また、光拡散層中のバインダーの屈折率は、有機電界発光層中の発光層や電極の屈折率と同等乃至高いことが好ましい。
【0064】
さらに、光拡散層の屈折率は具体的には1.5〜2.5程度であればよく、1.6〜2.2であることが好ましい。また、光拡散層は平坦化層との屈折率差(Δn)が0.05以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。
光拡散層は表面に光拡散粒子が均一に分散していることが好ましく、高低差が0.3μm〜2μmであることが好ましい。
【0065】
<平坦化層>
平坦化層は光拡散層表面の凸凹形状を平坦化するための層である。光拡散層表面の凸凹形状は主に光拡散粒子が分散されていることに起因して生じやすい。光拡散層表面に形成された平坦化層の表面では、表面粗さ(Ra)が10μm角(1辺が10μmの正方形)中で3nm以下となることが好ましい。なお、本明細書において、表面粗さの値は分子間力顕微鏡にて10μm角の大きさで測定したものとする。
【0066】
平坦化層としては、光拡散層形成材料において光拡散粒子を含まない組成(バインダーの組成)の材料から形成されたものであることが好ましく、光拡散層と同様にして形成することができる。また、光拡散層形成材料におけるシランカップリング剤を含んでいてもよいが、含んでなくてもよく、含んでいないことが好ましい。平坦化層形成材料は光拡散層形成材料について上記したバインダーの組成またはその組成からシランカップリング剤を除いた組成物であればよいが、1つの光取り出し層における光拡散層と平坦化層との形成材料の多官能アクリルモノマー、重合開始剤、界面活性剤、その他の添加剤等は共通していてもよく、異なっていてもよい。
平坦化層形成材料は光拡散層表面に塗布すればよい。この塗布の際、平坦化層形成材料は固形分濃度50%以下で溶媒を含む状態で、塗布量3mL/m
2以上で塗布されることが好ましい。溶剤を含有した状態で形成することにより、下層となる光拡散層の一部を溶解し、アンカリングすることで、強固な密着性を確保することができる。また、その後乾燥して所望の乾膜を得ることが好ましい。乾燥は、減率乾燥の時間が1秒以上となるように行うことが好ましい。
【0067】
平坦化層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μ〜5μmが好ましく、1〜3μmがより好ましく、1.5〜2.5μmが特に好ましい。
光拡散層と平坦化層の合計平均厚みは、2μm〜15μmが好ましく、3μm〜14μmがより好ましく、5μm〜12μmが特に好ましい。
平坦化層の屈折率は、1.7〜2.2が好ましく、1.7〜2.1がより好ましく、1.7〜2.0が更に好ましい。
【0068】
平坦化層の屈折率は、光拡散層の屈折率と同じであるか、または光拡散層の屈折率よりも高いことが好ましい。光拡散層の屈折率の差(Δn)は上述のように0.05以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。
光拡散層と平坦化層の間には5nm以上の混合層が形成されていることが好ましい。
混合層の確認は、断面TEMにより行うことができる。また、混合層の膜厚の調整は平坦化層の形成の際の乾燥速度、拡散層形成材料の固形分濃度の調整により行うことができ、溶剤量を増やし、乾燥時間を長くすることによっては混合層の膜厚を厚くでき、平坦化層形成材料の固形分濃度を増やすことによっては混合層の膜厚を薄くできる。
【0069】
<ガスバリアフィルム>
機能性積層フィルムにおいて、ガスバリアフィルムはバリア性を有する層として機能し、また光取り出し層の基板として機能する。
ガスバリアフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成されたバリア性積層体とを有する。ガスバリアフィルムにおいて、バリア性積層体は、基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
ガスバリアフィルムはバリア性積層体、基材フィルム以外の構成成分(例えば、易接着層、または易滑性層等の機能性層)を有していてもよい。機能性層はバリア性積層体の上、バリア性積層体と基材の間、基材上のバリア性積層体が設置されていない側(裏面)のいずれに設置してもよい。
ガスバリアフィルムの膜厚は20μm〜200μmであることが好ましく、50μm〜150μmであることがより好ましい。
【0070】
(基材フィルム)
ガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、バリア性積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
基材フィルムの膜厚は10μm〜250μmであることが好ましく、20μm〜130μmであることがより好ましい。
【0071】
(バリア性積層体)
バリア性積層体は、少なくとも1層の有機層と少なくとも1層の無機層を含むものであり、2層以上の有機層と2層以上の無機層とが交互に積層しているものであってもよい。バリア性積層体は、少なくとも1つの無機層がその外側に有機層を有しないように構成される。
バリア性積層体を構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。また、有機層および無機層以外の他の構成層を含んでいてもよい。
バリア性積層体の膜厚は0.5μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましい。また、バリア性積層体と上記光取り出し層との合計膜厚は1.5μm〜30μmであることが好ましく、2μm〜25μmであることがより好ましい。
【0072】
バリア性積層体は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、バリア性積層体を構成する組成が膜厚方向に有機領域と無機領域が連続的に変化するいわゆる傾斜材料層を含んでいてもよい。特に、特定の有機層とこの有機層の表面に直接形成される無機層との間に傾斜材料層を含みうる。傾斜材料層の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(2005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機領域と無機領域が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。以降、簡略化のため、有機層と有機領域は「有機層」として、無機層と無機領域は「無機層」として記述する。
【0073】
(有機層)
有機層は、好ましくは、重合性化合物を含む重合性組成物の硬化により形成することができる。
(重合性化合物)
上記重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物であることが好ましい。重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が特に好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、特にアクリレート系化合物が好ましい。
【0074】
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
(メタ)アクリレート系化合物として具体的には、例えば特開2013−43382号公報の段落0024〜0036または特開2013−43384号公報の段落0036〜0048に記載の化合物を用いることができる。また、上述のフルオレン骨格を有する多官能アクリルモノマーを用いることもできる。
【0075】
(重合開始剤)
有機層形成のための重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合に関与する化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0076】
(シランカップリング剤)
有機層形成のための重合性組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤としては、ケイ素に結合するメトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基等の加水分解可能な反応基とともに、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、ハロゲン基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基から選択される1つ以上の反応性基を有する置換基を同じケイ素に結合する置換基として有するものが好ましい。シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基を有していること特に好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、WO2013/146069に記載の一般式(1)で表されるシランカップリング剤およびWO2013/027786に記載の一般式(I)で表されるシランカップリング剤などが挙げられる。
シランカップリング剤の、重合性組成物の固形分(揮発分が揮発した後の残分)中に占める割合は、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0077】
(有機層の作製方法)
有機層の作製のため、上記重合性組成物はまず、層状とされる。層状にするためには、通常、基材フィルムまたは無機層等の支持体の上に、重合性組成物を塗布すればよい。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法(ダイコート法とも呼ばれる)が例示され、この中でもエクストル−ジョンコート法が好ましく採用できる。
無機層の表面に有機層形成のための重合性組成物を塗布する際は、エクストルージョンコート法により行なうことが好ましい。
【0078】
塗布された重合性組成物は、次いで、乾燥してもよい。乾燥方法は特に限定されないが、乾燥方法の例として、光拡散層形成材料塗布膜の乾燥について上述した方法が挙げられる。
【0079】
重合性組成物は、光(例えば、紫外線)、電子線、または熱線にて、硬化させればよく、光によって硬化させることが好ましい。特に、重合性組成物を25℃以上の温度(例えば、30〜130℃)をかけて加熱しながら、硬化させることが好ましい。加熱により、重合性組成物の自由運動を促進させることで効果的に硬化させ、かつ、基材フィルム等にダメージを与えずに成膜することができる。
【0080】
照射する光は、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線であればよい。照射エネルギーは0.1J/cm
2以上が好ましく、0.5J/cm
2以上がより好ましい。重合性化合物は空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm
2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うことが特に好ましい。
【0081】
硬化後の重合性組成物における重合性化合物の重合率は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0082】
有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として3nm未満であることが好ましく、1nm未満であることがより好ましい。
【0083】
有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いことが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
【0084】
有機層の膜厚については特に限定はないが、脆性や光透過率の観点から、50nm〜5000nmが好ましく、200nm〜3500nmがより好ましい。
【0085】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でもよい。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有していてもよい。例えば、無機層の表面において水酸化ケイ素となっていてもよい。
無機層としては、特に、Siを含む無機層が好ましい。より透明性が高く、かつ、より優れたガスバリア性を有しているからである。その中でも特に、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうち少なくともいずれかを含む無機層が好ましく、窒化ケイ素からなる無機層がより好ましい。
【0086】
無機層は、例えば、金属の酸化物、窒化物もしくは酸窒化物が水素を含むことにより、適宜水素を含んでいてもよいが、前方ラザフォード散乱における水素濃度が30%以下であることが好ましい。
本発明により形成される無機層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として3nm未満であることが好ましく、1nm以下がより好ましい。
【0087】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは15〜50nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
【0088】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し成膜することにより行うことができる。
【0089】
(機能層)
本発明のバリア性積層体は、機能層を有していてもよい。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層等が挙げられる。
上記のように、ガスバリアフィルムにおいて、基材フィルムと、有機層(バリア積層体において最も基材フィルム側にある有機層)との間に配される構成となるように、易接着層または易滑性層を設けてもよい。
易接着層の例としては、ウレタンやウレタンアクリレート、アクリレートを材料として形成された層が挙げられる。また易滑性層の例としては、上記の易接着層の形成に用いられる材料にフィラーや粒子を添加して形成した層が挙げられる。
【0090】
<機能性積層フィルムの用途>
機能性積層フィルムは、フィルムに、バリア性とともに、光拡散機能等が必要とされる用途のいずれに用いることもできる。機能性積層フィルムは特に有機電界発光装置用フィルム基板として用いられることが好ましい。
【0091】
(有機電界発光装置用フィルム基板)
本発明の機能性積層フィルムを含む有機電界発光装置は、例えば機能性積層フィルム上に、透明電極と反射電極とを含み、さらに透明電極と反射電極の間に有機電界発光層とを含む構成を有する。有機電界発光装置は、機能性積層フィルム、透明電極、有機電界発光層、および反射電極をこの順で含むことが好ましい。有機電界発光装置はボトムエミッション型であることが好ましい。有機電界発光層は、少なくとも発光層を有し、さらに発光層以外の機能層として、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層を含んでいてもよい層を意味する。
有機電界発光装置はさらに、透明電極、反射電極、有機電界発光層を封止するための封止缶などの構成を含んでいてもよい。機能性積層フィルム中のガスバリアフィルムと追加の封止構造により、透明電極、反射電極、有機電界発光層、平坦化層、及び光拡散層が封入されていてもよい。光取り出し層の表面に透明電極が設けられる場合は、透明電極と光取り出し層との屈折率差(Δn)を小さくすることが好ましい。Δnは好ましくは0.2以下、0.15以下であることがより好ましい。なお、透明電極として一般的なITOは屈折率nが1.8〜2程度である。
【0092】
有機電界発光層、有機電界発光層中各層、透明電極と反射陰極の作製材料や構成、積層順、および有機電界発光装置の構成については、特開2012−155177号公報の段落0081〜0122の記載を参照することができる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0094】
<実施例1>
(ガスバリアフィルムの作製方法)
(第1層の形成)
重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、ダイセルサイテック社製)100質量部、光重合開始剤(IRGACURE819、チバケミカル社製)、およびメチルエチルケトン(MEK)を含む有機層塗布用組成物を調製した。MEKの量は、「{(重合性化合物の質量+光重合開始剤の質量)/全塗布液質量}×100%」が15%になるようにした。
基材フィルムとしてのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポン社製、テオネックスQ65FA、厚さ100μm、幅1000mm)上に、上記で得られた有機層塗布用組成物をダイコーターを用いてロールツーロールにより塗布量が9mL/m
2になるように塗布し、50℃の乾燥ゾーンを3分間通過させた。その後、これに紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm
2)して硬化させ、巻き取った。基材フィルム上に形成された第一の有機層の厚さは、1μmであった。
【0095】
(第2層の形成)
次に、ロールツーロールのCVD装置を用いて、上記第一の有機層の表面に無機層(窒化ケイ素層)を第2層として形成した。原料ガスとして、シランガス(流量160sccm:0℃、1気圧の標準状態、以下同じ)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)、および窒素ガス(流量240sccm)を用いた。電源としては、周波数13.56MHzの高周波電源を用いた。成膜圧力は40Pa、到達膜厚は50nmであった。このようにして第一の有機層の表面に無機層を積層した。
得られた積層フィルムを巻き取った。
【0096】
(第3層の形成)
重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA:ダイセルサイテック社製)100質量部、光重合開始剤(IRGACURE819:チバケミカル社製)、シランカップリング剤(KBM5103、信越シリコーン社製)3質量部およびメチルエチルケトン(MEK)を含む有機層塗布用組成物を調整した。MEKの量は、「(重合性化合物+光重合開始剤)/全塗布液」の重量比率を塗布液中の固形分の比率としたときに、この比率が15%になるようにした。
この有機層塗布用組成物を、ダイコーターを用いてロールツーロールにより上記無機層表面に塗布量が9mL/m
2になるように直接に塗布し、100℃の乾燥ゾーンを3分間通過させた。その後、60℃に加熱したヒートロールに抱かせながら、これに紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm
2)して硬化させ、巻き取った。基材フィルム上に形成された第二の有機層の厚さは、1μmであった。
得られた積層フィルムを巻き取った。
【0097】
(第4層の形成)
次に、ロールツーロールのCVD装置を用いて、上記第二の有機層の表面に無機層(窒化ケイ素層)を形成した。原料ガスとして、シランガス(流量160sccm)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)、および窒素ガス(流量240sccm)を用いた。電源としては、周波数13.56MHzの高周波電源を用いた。成膜圧力は40Pa、到達膜厚は50nmであった。このようにして第二の有機層の表面に無機層を積層した。次いで、保護PEフィルムを貼り付けた後、巻き取り、長さ100mのガスバリアフィルムを作製した。
【0098】
(光取り出し層の形成)
(光拡散層の形成)
酸化チタン微粒子分散液(HTD1061、テイカ社製)2050gに、バインダー樹脂材料として2官能のアクリレートモノマー(EB150:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ダイセルサイテック社製)500g、シランカップリング剤(KBM5103、信越シリコーン社製)150gを加え、MIBK(メチルイソブチルケトン、和光純薬製)1500gで希釈しバインダーを用意した。得られたバインダーを攪拌しながら、ここに790gの光拡散粒子(MX−150:平均粒子サイズ1.5μmの架橋アクリル系粒子、屈折率1.49、綜研化学社製)加え、1時間攪拌した。得られた光拡散粒子入りバインダーに重合開始剤(IRGACURE819、チバケミカル社製)10gを入れ、光拡散層形成用材料を5000g作製した。
【0099】
ガスバリアフィルムの保護PEフィルムを剥がしながら、光拡散層形成用材料を、このガスバリアフィルムの第4層表面上にダイコーターにて塗布した。塗布量18mL/m
2になるように送液量を調整した。乾燥後の塗膜の厚みは4μmであった。ガスバリアフィルムの保護PEフィルムを剥がした後は、ダイコーターまで、第4層表面がパスロールに接触しないように、搬送した。具体的には、非接触な段付ロールを膜面タッチロールとして用い、ガスバリアフィルムの端部のみを保持して搬送した。ダイコーターにより塗布された塗布膜を、常温で10秒放置後に、60℃の乾燥風を2分間、その後110℃の乾燥風を2分間あてて、基板フィルムの温度が110℃になるまで乾燥させた。その後、ガスバリアフィルムの基材フィルム表面側がロール側になるように保持したバックアップロールを80℃に加熱しながら伝熱させつつ、積算照射量が600mJ程度になるように設定された紫外線照射装置によってこれに紫外線を照射した。このようにして塗布膜を硬化させて光拡散層を形成した。得られた積層フィルムを巻き径に応じて、巻き取りテンションが一定になるように制御しながら巻き取って、光拡散層が形成されたフィルムロールを作製した。
【0100】
(平坦化層の形成)
酸化チタン微粒子分散液(HTD1061、テイカ社製)3000gに、フルオレン誘導体(オグソールEA−0200((9,9− ビス(4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)フェニル)フルオレン)、大阪ガスケミカル社製)860g、を加え、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル、和光純薬)1130gで希釈した。得られた溶液に重合開始剤(IRGACURE819、チバケミカル社製)10gを加え、平坦化層形成材料を5000g作製した。
上記フィルムロールを塗布機の送り出しにセットし、搬送速度10m/minでダイコーター部まで搬送し、このフィルムロールの光拡散層表面に、作製した平坦化層形成材料を塗布した。送液量で調整し、塗布量9mL/m
2となるようにした。塗布膜を常温で10秒放置した後、60℃の乾燥風を2分間、その後110℃の乾燥風を2分間あてて、基板温度が110℃になるまで乾燥させた。乾燥後の膜厚は2μmであった。その後、ガスバリアフィルムの基材フィルム表面側がロール側になるように保持したバックアップロールを80℃に加熱しながら伝熱させつつ、積算照射量が600mJ程度になるように設定された紫外線照射装置によってこれに紫外線を照射した。このようにして塗布膜を硬化させて平坦化層を形成した。得られた積層フィルムを巻き径に応じて、巻き取りテンションが一定になるように制御しながら巻き取って、機能性積層フィルムとしてのフィルムロールを作製した。
【0101】
(密着性の評価)
ガスバリアフィルム上に形成された光取り出し層に対し、クロスカット100マス法を用いてカッターにてケガキを入れて日東電工社性粘着テープNITTOTAPE(No31−B)を貼り付け剥離し、残存しているマス数に基づく以下の基準で密着性を評価した。
100〜90マス以上:AA
90未満〜80マス以上:A
80未満〜70マス以上:B
70未満〜60マス以上:C
60マス以下:D
【0102】
(光取り出し効率の評価)
機能性フィルム及び有機電界発光素子を含む有機電界発光装置を作製し、光取り出し効率を評価した。有機電界発光装置は、機能性積層フィルム上に有機電界発光素子を以下のようにして形成して作製した。
機能性積層フィルムの平坦化層上に、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)を厚みが100nmとなるように成膜した。次に、上記ITO上に、下記構造式で表される4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)に、下記構造式で表されるF4−TCNQを0.3質量%ドープした正孔注入層を、厚みが250nmになるように共蒸着した。次に、上記正孔注入層上に、第一の正孔輸送層としてα−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine)を厚みが7nmとなるように真空蒸着法にて形成した。次に、上記第一の正孔輸送層上に、下記構造式で表される有機材料Aを真空蒸着して、厚み3nmの第二の正孔輸送層を形成した。
【0103】
【化6】
【化7】
【0104】
次に、第二の正孔輸送層上に、ホスト材料としてのmCP(1,3−Bis(carbazol−9−yl)benzene)に、該mCPに対して40質量%の発光材料Aをドープした発光層を厚みが30nmになるように真空蒸着した。発光材料Aは、燐光発光材料であり下記構造式で表される。
【0105】
【化8】
【0106】
次に、発光層上に、電子輸送層として、下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III))を厚みが39nmとなるように真空蒸着した。
【0107】
【化9】
【0108】
次に、電子輸送層上に、電子注入層として、下記構造式で表されるBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を厚みが1nmとなるように蒸着した。
【0109】
【化10】
【0110】
次に、電子注入層上にバッファ層としてLiFを厚みが1nmとなるように蒸着し、該バッファ層上に電極層としてアルミニウムを厚みが100nmとなるように蒸着し、機能性積層フィルム上に有機電界発光素子を作製した。次に、ガスバリアフィルム、光取り出し層及び有機電界発光素子からなる積層体に窒素ガス雰囲気中にて乾燥剤を貼り付け、封止ガラス缶によって光取り出し層及び有機電界発光素子を囲った。ガスバリアフィルム及び封止ガラス缶の外周部に封止材を塗って、挟み込んで封入した。以上により、有機電界発光装置を作製した。
【0111】
有機電界発光装置の構成をより明確にするために表現を変更しましたが、不具合はございませんでしょうか。もとの表現においては基板や封止ガラス缶が急に登場するため、順々に説明するつもりで文章を補充しましたが、このような認識でよろしいでしょうか。
【0112】
作製した有機電界発光装置について、以下のようにして、光取り出し効率を評価した。
外部量子収率は、浜松ホトニクス株式会社製の外部量子効率測定装置「C9920−12」を用いて、直流定電流を各有機電界発光装置に印加して発光させ測定した。光取り出し効率の算出は、以下の式に従って行った。
光取り出し率=(各実施例及び比較例の外部量子効率/光り取り出し層の無いガスバリアフィルム上に有機電界発光素子を形成した際の外部量子効率)×100
評価は以下の基準で行った。
光り取り出し率180%以上:AA
180未満150%以上:A
150未満130%以上:B
130未満110%以上:C
110%未満:D
【0113】
(経時安定性(素子耐久性)の評価)
発光面積のシュリンク測定にて、有機電界発光装置の経時変化の評価を行った。温度40℃、湿度90%RH中に各実施例及び比較例の有機電界発光装置を入れ、1週間放置した。1週間放置前後の発光面積の変化を比較し、変化が大きければ経時に弱く、変化が少なければ経時に強い結果となる。
発光面積の変化
90%以上:AA
90%未満80%以上:A
80%未満70%以上:B
70%未満60%以上:C
60%未満:D
結果を表1に示す。
【0114】
さらに、実施例1の手順において、以下に示すように変更を加えて機能性積層フィルムおよび有機電界発光装置を作製して実施例2〜17、比較例1〜9として、上記と同様に評価した。結果を表1に示す。
<実施例2>
光拡散層形成材料のモノマー全量を大阪ガスケミカルのオグソールEA−0200に変更した。
<実施例3>
光拡散層形成材料のシランカップリング剤全量を信越シリコーン社製のKR513に変更した。
<実施例4>
光拡散層形成材料のEB150を10g減らし代わりにフッ素系界面活性剤(3M社製FC4430)を10g添加した。平坦化層形成材料のオグソールEA−0200を10g減らし代わりにフッ素系界面活性剤(3M社製FC4430)を10g添加した。
【0115】
<実施例5>
光拡散層の膜厚を6μmとした。
<実施例6>
光拡散層の膜厚を10μmとした。
<実施例7>
平坦化層の膜厚を2.8μmとした。
<実施例8>
平坦化層の膜厚を4μmとした。
<実施例9>
固形分濃度を半分にし、塗布量を2倍にし、更に常温での乾燥時間を2倍にすることで光拡散層と平坦化層との間に光拡散層と平坦化層との混合層を膜厚20nmで形成した。
【0116】
<実施例10>
平坦化層形成材料の塗布量を12mL/m
2とした。
<実施例11>
平坦化層形成材料の塗布量を6mL/m
2とした。
<実施例12>
光拡散層形成材料塗布膜の乾燥温度を110℃とし、乾燥時間を4分とした。
<実施例13>
光拡散層形成材料塗布膜の乾燥温度を乾燥温度を100℃とし、乾燥時間を4分とした。
<実施例14>
光拡散層形成時の紫外線照射時の加熱温度を60℃とした。
<実施例15>
光拡散層形成時の紫外線照射時の加熱温度を40℃とした。
<実施例16>
平坦化層形成材料の溶媒をMIBKとした。
【0117】
<比較例1>
光拡散層形成材料からシランカップリング剤を除き、かつ、モノマーとして、EB150の代わりにTMPTA(ダイセルサイテック社製)を用いた。
<比較例2>
第4層の表面に有機層である第5層を形成し、第5層の表面に光拡散層を形成した。
第5層は第2層と同様に形成した。
【表1】