特許第6427205号(P6427205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427205リガンド化合物、有機クロム化合物、オレフィンオリゴマー化用触媒システム、およびこれを用いたオレフィンのオリゴマー化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427205
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】リガンド化合物、有機クロム化合物、オレフィンオリゴマー化用触媒システム、およびこれを用いたオレフィンのオリゴマー化方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/46 20060101AFI20181112BHJP
   C07F 11/00 20060101ALI20181112BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20181112BHJP
   C07C 2/32 20060101ALI20181112BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   C07F9/46CSP
   C07F11/00 A
   B01J31/24 Z
   C07C2/32
   C07C11/02
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-565684(P2016-565684)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公表番号】特表2017-524650(P2017-524650A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】KR2015006199
(87)【国際公開番号】WO2015194887
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0074370
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0180749
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ウン−チ
(72)【発明者】
【氏名】パク チン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】サ、ソク−ピル
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ−ス
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515601(JP,A)
【文献】 Sarcher, Christian; Lebedkin, Sergei; Kappes, Manfred M.; Fuhr, Olaf; Roesky, Peter W.,Bi- and tetrametallic complexes of the noble metals with PNP-ligands,Journal of Organometallic Chemistry ,2014年,751,343-350
【文献】 Gaw, Kirsty G.; Smith, Martin B.; Steed, Jonathan W.,Facile syntheses of new multidentate (phosphino)amines: X-ray structure of 1,4-{(OC)4Mo(Ph2P)2NCH2}2C6H4,Journal of Organometallic Chemistry,2002年,664(1-2),294-297
【文献】 Kayan, Cezmi; Biricik, Nermin; Aydemir, Murat; Scopelliti, Rosario,Synthesis and reactivity of bis(diphenylphosphino)amine ligands and their application in Suzuki cross-coupling reactions,Inorganica Chimica Acta,2012年,385,164-169
【文献】 Ghisolfi, Alessio; Fliedel, Christophe; Rosa, Vitor; Monakhov, Kirill Yu.; Braunstein, Pierre,Combined Experimental and Theoretical Study of Bis(diphenylphosphino)(N-thioether)amine-Type Ligands in Nickel(II) Complexes for Catalytic Ethylene Oligomerization,Organometallics,2014年,33(10),2523-2534
【文献】 Zhang, Baojun; Yu, Buwei; Wang, Gang; Li, Jianzhong; Wang, Sihan; Xu, Xianming; Wang, Guizhi,Chromium-based catalyst for ethylene tetramerization to 1-octene,Advanced Materials Research (Durnten-Zurich, Switzerland),2012年,347-353,3392-3395,(Pt. 6, Renewable and Sustainable Energy)
【文献】 Blann, Kevin; Bollmann, Annette; De Bod, Henriette; Dixon, John T.; Killian, Esna; Nongodlwana, Palesa; Maumela, Munaka C.; Maumela, Hulisani; McConnell, Ann E.; Morgan, David H.; Overett, Matthew J.; Pretorius, Marie; Kuhlmann, Sven; Wasserscheid, Peter,Ethylene tetramerization: Subtle effects exhibited by N-substituted diphosphinoamine ligands,Journal of Catalysis ,2007年,249(2),244-249
【文献】 Jiang, Tao; Chen, Hongxia; Ning, Yingnan; Chen, Wei,Preparation of 1-octene by ethylene tetramerization with high selectivity,Chinese Science Bulletin,2006年,51(5),521-523
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/46
B01J 31/24
C07C 2/32
C07C 11/02
C07F 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式B−08、化学式B−09、化学式B−15、化学式B−16、または化学式B−17に示す構造を有するリガンド化合物。
【化28】

【化29】

【化30】

[前記式中、AおよびA’は、以下の化学式1で表す基であり、AおよびA’は、互いに同一または異なっていてもよい。]
【化31】
前記化学式1において、
Nは、窒素であり、
Xは、リン(P)であり、
1〜R4は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基である。
【請求項2】
下記化学式で表される、請求項1に記載のリガンド化合物。
【化32】
【請求項3】
化学式B−08’、化学式B−09’、化学式B−15’、化学式B−16’、または化学式B−17’に示す構造を有する有機クロム化合物。
【化33】

【化34】

【化35】

[前記式中、A’’およびA’’’は、以下の化学式3で表す基であり、A’’およびA’’’は、互いに同一または異なっていてもよい。]
【化36】
前記化学式3において、
Nは、窒素であり、
Xは、リン(P)であり、
1〜R4は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基であり、
Crは、クロムであり、
1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、ハロゲン、水素、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、または炭素数1〜10のヘテロヒドロカルビル基である。
【請求項4】
i)クロムソース、請求項1または2に記載のリガンド化合物、および助触媒;または
ii)請求項3に記載の有機クロム化合物、および助触媒を含むオレフィンオリゴマー化用触媒システム。
【請求項5】
前記クロムソースは、クロミウム(III)アセチルアセトネート、クロミウム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロミウム(III)2−エチルヘキサノエート、クロミウム(III)アセテート、クロミウム(III)ブチレート、クロミウム(III)ペンタノエート、クロミウム(III)ラウレート、クロミウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、およびクロミウム(III)ステアレートからなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項4に記載のオレフィンオリゴマー化用触媒システム。
【請求項6】
前記助触媒は、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、および改質されたメチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)からなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項4または5に記載のオレフィンオリゴマー化用触媒システム。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の触媒システムの存在下、オレフィンのオリゴマー化反応によってアルファ−オレフィンを形成する段階を含むオレフィンのオリゴマー化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2014年6月18日付の韓国特許出願第10−2014−0074370号および2014年12月15日付の韓国特許出願第10−2014−0180749号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、リガンド化合物、有機クロム化合物、前記リガンド化合物または有機クロム化合物を含むオレフィンオリゴマー化用触媒システム、およびこれを用いたオレフィンのオリゴマー化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1−ヘキセン、1−オクテンなどのような線状アルファ−オレフィン(Linear alpha−olefin)は、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用され、特に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時、ポリマーの密度調節のための共単量体として多く使用される。
【0004】
このような線状アルファ−オレフィンは、Shell Higher Olefin Processにより主に生産された。しかし、前記方法は、Schultz−Flory分布により多様な長さのアルファ−オレフィンが同時に合成されるため、特定のアルファ−オレフィンを得るためには、別途の分離工程を経なければならないという煩わしさがあった。
【0005】
このような問題を解決するために、エチレンの三量化反応により1−ヘキセンを選択的に合成したり、エチレンの四量化反応により1−オクテンを選択的に合成する方法が提案された。そして、このような選択的なエチレンのオリゴマー化を可能にする触媒システムに対する多くの研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、オレフィンのオリゴマー化反応において、高い触媒活性と選択度の発現を可能にする新規なリガンド化合物を提供する。
【0007】
また、本発明は、オレフィンのオリゴマー化反応において、高い触媒活性と選択度の発現を可能にする新規な有機クロム化合物を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、前記リガンド化合物または有機クロム化合物を含むオレフィンオリゴマー化用触媒システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記触媒システムを用いたオレフィンのオリゴマー化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
分子内に下記化学式1で表される2以上のグループ、および
前記化学式1で表されるそれぞれのグループの間を4〜7個の炭素−炭素結合で連結するリンカーを含み;
前記リンカーは、炭素数5〜20の脂肪族グループからなるか、炭素数1〜20の脂肪族グループおよび炭素数6〜20の芳香族グループが結合したグループからなり;
前記リンカーの少なくともいずれかの末端には炭素数6〜20のアリール基が置換もしくは非置換であるものの;前記リンカーが炭素数5〜20の脂肪族グループからなると、少なくともいずれかの末端に炭素数6〜20のアリール基が置換されている、リガンド化合物が提供される:
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
Nは、窒素であり、
Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であり、
1〜R4は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基である。
【0013】
そして、本発明によれば、
分子内に下記化学式3で表される2以上のグループ、および
前記化学式3で表されるそれぞれのグループの間を4〜7個の炭素−炭素結合で連結するリンカーを含み;
前記リンカーは、炭素数5〜20の脂肪族グループからなるか、炭素数1〜20の脂肪族グループおよび炭素数6〜20の芳香族グループが結合したグループからなり;
前記リンカーの少なくともいずれかの末端には炭素数6〜20のアリール基が置換もしくは非置換であるものの;前記リンカーが炭素数5〜20の脂肪族グループからなると、少なくともいずれかの末端に炭素数6〜20のアリール基が置換されている、有機クロム化合物が提供される:
【0014】
【化2】
【0015】
前記化学式3において、
Nは、窒素であり、
Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であり、
1〜R4は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基であり、
Crは、クロムであり、
1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、ハロゲン、水素、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、または炭素数1〜10のヘテロヒドロカルビル基である。
【0016】
そして、本発明によれば、
i)クロムソース、前記リガンド化合物、および助触媒;または
ii)前記有機クロム化合物、および助触媒を含むオレフィンオリゴマー化用触媒システムが提供される。
【0017】
そして、本発明によれば、前記触媒システムの存在下、オレフィンのオリゴマー化反応によってアルファ−オレフィンを形成する段階を含むオレフィンのオリゴマー化方法が提供される。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るリガンド化合物、有機クロム化合物、オレフィンオリゴマー化用触媒システム、およびこれを用いたオレフィンのオリゴマー化方法についてより詳細に説明する。
【0019】
それに先立ち、本明細書全体において、明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文章がこれと明らかに反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。また、明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0020】
そして、本明細書において、「触媒システム」とは、クロムソース、リガンド化合物、および助触媒を含む3成分、または代案的に、有機クロム化合物、および助触媒の2成分が同時にまたは任意の順に添加され、活性のある触媒組成物として得られる状態のものを意味する。前記触媒システムの3成分または2成分は溶媒および単量体の存在または不存在下で添加され、担持または非担持状態で使用される。
【0021】
I.リガンド化合物
発明の一実施形態によれば、
分子内に下記化学式1で表される2以上のグループ、および
前記化学式1で表されるそれぞれのグループの間を4〜7個の炭素−炭素結合で連結するリンカーを含み;
前記リンカーは、炭素数5〜20の脂肪族グループからなるか、炭素数1〜20の脂肪族グループおよび炭素数6〜20の芳香族グループが結合したグループからなり;
前記リンカーの少なくともいずれかの末端には炭素数6〜20のアリール基が置換もしくは非置換であるものの;前記リンカーが炭素数5〜20の脂肪族グループからなると、少なくともいずれかの末端に炭素数6〜20のアリール基が置換されている、リガンド化合物が提供される:
【0022】
【化3】
【0023】
前記化学式1において、
Nは、窒素であり、
Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であり、
1〜R4は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基である。
【0024】
本発明者らの継続的な実験の結果、前記条件を満足するリガンド化合物をオレフィンのオリゴマー化用触媒システムに適用する場合、優れた触媒活性を示しながらも、1−ヘキセンまたは1−オクテンに対する高い選択度を示して、より効率的なアルファ−オレフィンの製造を可能にすることが確認された。
【0025】
発明の実施形態によれば、前記リガンド化合物は、分子内に前記化学式1で表されるグループ(特に、ジホスフィノアミニル残基(diphosphino aminyl moiety))を2以上含み、前記化学式1で表されるそれぞれのグループの間を連続した4〜7個、あるいは4〜6個、あるいは4〜5個、あるいは4個の炭素−炭素結合で連結するリンカーを有する。
【0026】
ここで、前記化学式1で表されるそれぞれのグループの間が4〜7個の炭素−炭素結合で連結されるとは、下記の例のように、前記化学式1で表される任意のグループから他の1グループに達する最短距離に4〜7個の連続した炭素−炭素結合(または5〜8個の炭素原子)が含まれていることを意味する。前記炭素−炭素結合は、それぞれ独立に、単一結合または二重結合であってもよい。下記の例において、前記化学式1で表されるグループは、便宜上AまたはA’で表され、前記AおよびA’は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
前記構造を満足するリガンド化合物は、オレフィンオリゴマー化用触媒システムに適用され、前記化学式1で表される各グループおよびこれに隣接のクロム活性点の間の活発な相互作用を可能にして、高いオリゴマー化反応活性と、1−ヘキセン、1−オクテンなどに対する高い選択度を示すようにする。
【0030】
それに対し、前記条件を満足しない化合物、例えば、1つの前記化学式1で表されるグループを有する化合物、または前記化学式1で表される2以上のグループの窒素原子の間を4個未満または7個超過の炭素−炭素結合で連結するリンカーを有する化合物の場合、前記化学式1で表されるグループとクロム活性点との間の相互作用が低くて触媒活性が低下したり、1−ヘキセン、1−オクテンに対する選択度が低下するおそれがある。
【0031】
一方、発明の実施形態によれば、前記化学式1において、Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であってもよい。好ましくは、前記化学式1で表されるグループは、それぞれのXがリン(P)であるジホスフィノアミニル残基(diphosphino aminyl moiety)であってもよい。
【0032】
そして、前記化学式1において、R1〜R4は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基であってもよい。非制限的な例として、前記R1〜R4は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数4〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7〜15のアリールアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基であってもよい。
【0033】
ここで、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、およびアルコキシ基に含まれている少なくとも1つの水素は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基で置換されてもよい。
【0034】
好ましくは、前記R1〜R4は、それぞれ独立に、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、プロペニル(propenyl)、プロピニル(propynyl)、ブチル(butyl)、シクロヘキシル(cyclohexyl)、2−メチルシクロヘキシル(2−methylcyclohexyl)、2−エチルシクロヘキシル(2−ethylcyclohexyl)、2−イソプロピルシクロヘキシル(2−isopropylcyclohexyl)、ベンジル(benzyl)、フェニル(phenyl)、トリル(tolyl)、キシリル(xylyl)、o−メチルフェニル(o−methylphenyl)、o−エチルフェニル(o−ethylphenyl)、o−イソプロピルフェニル(o−isopropylphenyl)、o−t−ブチルフェニル(o−t−butylphenyl)、o−メトキシフェニル(o−methoxyphenyl)、o−イソプロポキシフェニル(o−isopropoxyphenyl)、m−メチルフェニル(m−methylphenyl)、m−エチルフェニル(m−ethylphenyl)、m−イソプロピルフェニル(m−isopropylphenyl)、m−t−ブチルフェニル(m−t−butylphenyl)、m−メトキシフェニル(m−methoxyphenyl)、m−イソプロポキシフェニル(o−isopropoxyphenyl)、p−メチルフェニル(p−methylphenyl)、p−エチルフェニル(p−ethylphenyl)、p−イソプロピルフェニル(p−isopropylphenyl)、p−t−ブチルフェニル(p−t−butylphenyl)、p−メトキシフェニル(p−methoxyphenyl)、p−イソプロポキシフェニル(p−isopropoxyphenyl)、クミル(cumyl)、メシチル(mesityl)、ビフェニル(biphenyl)、ナフチル(naphthyl)、アントラセニル(anthracenyl)、メトキシ(methoxy)、エトキシ(ethoxy)、フェノキシ(phenoxy)、トリルオキシ(tolyloxy)、ジメチルアミノ(dimethylamino)、チオメチル(thiomethyl)、またはトリメチルシリル(trimethylsilyl)グループであってもよい。
【0035】
そして、前記リガンド化合物は、前記化学式1で表される2以上のグループの窒素原子の間を4〜7個の炭素−炭素結合で連結するリンカーを含む。
【0036】
ここで、前記化学式1で表される2以上のグループがそれぞれ4〜7個の炭素−炭素結合で連結するとは、前記化学式1で表される任意のグループから他の1グループに達する最短距離に4〜7個の連続した炭素−炭素結合(または5〜8個の炭素原子)が含まれていることを意味する。つまり、前記最短距離上に置かれた炭素−炭素結合が4〜7個であれば、前記リンカーをなす全体構造は特に制限されない。
【0037】
具体的には、前記リンカーは、炭素数5〜20の脂肪族グループ、例えば、アルキレングループまたはアルケニレングループからなり、より具体的には、炭素数5〜15、あるいは炭素数5〜10の直鎖もしくは分枝鎖アルキレングループまたはアルケニレングループからなってもよい。
【0038】
また、前記リンカーは、炭素数1〜20の脂肪族グループおよび炭素数6〜20の芳香族グループが結合したグループからなってもよい。より具体的には、前記リンカーは、炭素数1〜20、あるいは炭素数1〜10、あるいは炭素数1〜5の直鎖もしくは分枝鎖アルキレングループまたはアルケニレングループの1つ以上(例えば、1つまたは2つのアルキレングループまたはアルケニレングループ)と、炭素数6〜20、あるいは炭素数6〜10のアリーレングループの1つ以上(例えば、1つまたは2つのアリーレングループ)が結合したグループからなり、この時、炭素数6〜10のアリーレングループは、炭素数1〜5のアルキル基で追加置換もしくは非置換であってもよい。
【0039】
そして、前記リンカーの少なくともいずれかの末端(例えば、化学式1が結合したリンカーのいずれかの末端)には炭素数6〜20、あるいは炭素数6〜10のアリール基が置換もしくは非置換であってもよい。特に、前記リンカーが炭素数5〜20の脂肪族グループからなると、少なくともいずれかの末端に炭素数6〜20のアリール基が置換される。また、このようなアリール基は、炭素数1〜5のアルキル基で追加置換もしくは非置換であってもよい。
【0040】
一方、発明の実施形態によれば、分子内に2つの前記化学式1で表されるグループを有するリガンド化合物として、下記化学式2で表される化合物が提供される。
【0041】
【化6】
【0042】
前記化学式2において、
Lは、前記リンカーであり、
Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であり、
1〜R8は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基である。
【0043】
前記化学式2で表されるリガンド化合物は、分子内に2つの前記化学式1で表されるグループを有する化合物に対する一例である。
【0044】
前記化学式2において、Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であってもよく、好ましくは、リン(P)であってもよい。
【0045】
そして、前記化学式2において、R1〜R8は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基であって、非制限的な例として、置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数4〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7〜15のアリールアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基であってもよい。
【0046】
ここで、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、およびアルコキシ基に含まれている少なくとも1つの水素は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基で置換されてもよい。
【0047】
好ましくは、前記R1〜R8は、それぞれ独立に、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、プロペニル(propenyl)、プロピニル(propynyl)、ブチル(butyl)、シクロヘキシル(cyclohexyl)、2−メチルシクロヘキシル(2−methylcyclohexyl)、2−エチルシクロヘキシル(2−ethylcyclohexyl)、2−イソプロピルシクロヘキシル(2−isopropylcyclohexyl)、ベンジル(benzyl)、フェニル(phenyl)、トリル(tolyl)、キシリル(xylyl)、o−メチルフェニル(o−methylphenyl)、o−エチルフェニル(o−ethylphenyl)、o−イソプロピルフェニル(o−isopropylphenyl)、o−t−ブチルフェニル(o−t−butylphenyl)、o−メトキシフェニル(o−methoxyphenyl)、o−イソプロポキシフェニル(o−isopropoxyphenyl)、m−メチルフェニル(m−methylphenyl)、m−エチルフェニル(m−ethylphenyl)、m−イソプロピルフェニル(m−isopropylphenyl)、m−t−ブチルフェニル(m−t−butylphenyl)、m−メトキシフェニル(m−methoxyphenyl)、m−イソプロポキシフェニル(o−isopropoxyphenyl)、p−メチルフェニル(p−methylphenyl)、p−エチルフェニル(p−ethylphenyl)、p−イソプロピルフェニル(p−isopropylphenyl)、p−t−ブチルフェニル(p−t−butylphenyl)、p−メトキシフェニル(p−methoxyphenyl)、p−イソプロポキシフェニル(p−isopropoxyphenyl)、クミル(cumyl)、メシチル(mesityl)、ビフェニル(biphenyl)、ナフチル(naphthyl)、アントラセニル(anthracenyl)、メトキシ(methoxy)、エトキシ(ethoxy)、フェノキシ(phenoxy)、トリルオキシ(tolyloxy)、ジメチルアミノ(dimethylamino)、チオメチル(thiomethyl)、またはトリメチルシリル(trimethylsilyl)グループであってもよい。
【0048】
発明の実施形態によれば、上述したリガンド化合物は、次のような構造を有する化合物であってもよい。下記の例において、前記化学式1で表されるグループは、便宜上AまたはA’で表され、前記AおよびA’は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】
【化15】
【0058】
【化16】
【0059】
本発明に係るリガンド化合物は、前記例以外にも、上述した条件を満足する範囲で多様な組み合わせにより実現できる。
【0060】
そして、前記リガンド化合物は、公知の反応を応用して合成され、より詳細な合成方法は実施例の部分で説明する。
【0061】
II.有機クロム化合物
一方、本発明の他の実施形態によれば、
分子内に下記化学式3で表される2以上のグループ、および
前記化学式3で表されるそれぞれのグループの間を4〜7個の炭素−炭素結合で連結するリンカーを含み;
前記リンカーは、炭素数5〜20の脂肪族グループからなるか、炭素数1〜20の脂肪族グループおよび炭素数6〜20の芳香族グループが結合したグループからなり;
前記リンカーの少なくともいずれかの末端には炭素数6〜20のアリール基が置換もしくは非置換であるものの;前記リンカーが炭素数5〜20の脂肪族グループからなると、少なくともいずれかの末端に炭素数6〜20のアリール基が置換されている、有機クロム化合物が提供される。
【0062】
【化17】
【0063】
前記化学式3において、
Nは、窒素であり、
Xは、それぞれ独立に、リン(P)、砒素(As)、またはアンチモン(Sb)であり、
1〜R4は、それぞれ独立に、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル基であり、
Crは、クロムであり、
1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、ハロゲン、水素、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、または炭素数1〜10のヘテロヒドロカルビル基である。
【0064】
前記有機クロム化合物は、上述したリガンド化合物のクロム錯化合物(complex compound)であって、任意のクロムソースに含まれているクロム原子が前記化学式1で表されるグループのX部分に配位結合をなした形態を有する。このような有機クロム化合物は、オレフィンのオリゴマー化反応用触媒システムに適用され、優れた触媒活性と、1−ヘキセンまたは1−オクテンに対する高い選択度を示すことができる。
【0065】
前記化学式3において、XとR1〜R4に関する説明は、前記化学式1における説明に替える。
【0066】
そして、前記化学式3において、Crは、クロムであり、前記Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、ハロゲン、水素、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、または炭素数1〜10のヘテロヒドロカルビル基である。
【0067】
前記化学式3の有機クロム化合物は、前記リガンド化合物のクロム錯化合物を形成する通常の方法で得られる。
【0068】
III.オレフィンオリゴマー化用触媒システム
本発明のさらに他の実施形態によれば、
i)クロムソース、上述したリガンド化合物、および助触媒;または
ii)上述した有機クロム化合物、および助触媒を含むオレフィンオリゴマー化用触媒システムが提供される:
つまり、前記オレフィンオリゴマー化用触媒システムは、i)クロムソース、上述したリガンド化合物、および助触媒を含む3成分系触媒システム;またはii)上述した有機クロム化合物、および助触媒を含む2成分系触媒システムであってもよい。
【0069】
前記触媒システムにおいて、前記クロムソースは、クロムの酸化状態が0〜6の有機または無機クロム化合物であって、例えば、クロム金属であるか、または任意の有機または無機ラジカルがクロムに結合した化合物であってもよい。ここで、前記有機ラジカルは、ラジカルあたり1〜20の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、エステル、ケトン、アミド、カルボキシレートラジカルなどであってもよく、前記無機ラジカルは、ハライド、硫酸塩、酸化物などであってもよい。
【0070】
好ましくは、前記クロムソースは、オレフィンのオリゴマー化に高い活性を示すことができ、使用および入手が容易な化合物であって、クロミウム(III)アセチルアセトネート、クロミウム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロミウム(III)2−エチルヘキサノエート、クロミウム(III)アセテート、クロミウム(III)ブチレート、クロミウム(III)ペンタノエート、クロミウム(III)ラウレート、クロミウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、およびクロミウム(III)ステアレートからなる群より選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0071】
好ましくは、前記助触媒は、13族金属を含む有機金属化合物であって、一般に遷移金属化合物の触媒下でオレフィンを重合する時に用いられるものであれば、特に限定なく適用可能である。
【0072】
例えば、前記助触媒は、下記化学式4〜6で表される化合物からなる群より選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0073】
【化18】
【0074】
前記化学式4において、R41は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、ハロゲンラジカル、炭素数1〜20のヒドロカルビルラジカル、またはハロゲンで置換された炭素数1〜20のヒドロカルビルラジカルであり、cは、2以上の整数であり、
【0075】
【化19】
【0076】
前記化学式5において、Dは、アルミニウムまたはボロンであり、R51は、炭素数1〜20のヒドロカルビルまたはハロゲンで置換された炭素数1〜20のヒドロカルビルであり、
【0077】
【化20】
【0078】
前記化学式6において、
Lは、中性ルイス塩基であり、[L−H]+は、ブレンステッド酸であり、Qは、+3形式酸化状態のホウ素またはアルミニウムであり、Eは、それぞれ独立に、1以上の水素原子がハロゲン、炭素数1〜20のヒドロカルビル、アルコキシ官能基、またはフェノキシ官能基で置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜20のアルキル基である。
【0079】
一実施形態によれば、前記化学式4で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンであってもよい。
【0080】
そして、一実施形態によれば、前記化学式5で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジメチルイソブチルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−s−ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどであってもよい。
【0081】
また、一実施形態によれば、前記化学式6で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p−トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルカルボニウムテトラフェニルボロン、トリフェニルカルボニウムテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルカルボニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどであってもよい。
【0082】
また、非制限的な例として、前記助触媒は、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機リチウム化合物、またはこれらの混合物であってもよい。
【0083】
一実施形態によれば、前記助触媒は、有機アルミニウム化合物であることが好ましく、より好ましくは、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethylaluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、および改質されたメチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)からなる群より選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0084】
一方、前記触媒システムを構成する成分の含有量比は、触媒活性と線状アルファ−オレフィンに対する選択度などを考慮して決定される。一実施形態によれば、前記3成分系触媒システムの場合、前記リガンド化合物のジホスフィノアミニル残基:クロムソース:助触媒のモル比は、約1:1:1〜10:1:10,000、または約1:1:100〜5:1:3,000に調節されることが有利である。そして、前記2成分系触媒システムの場合、前記有機クロム化合物のジホスフィノアミニル残基:助触媒のモル比は、1:1〜1:10,000、または1:1〜1:5,000、または1:1〜1:3,000に調節されることが有利である。
【0085】
そして、前記触媒システムを構成する成分は、同時にまたは任意の順に、適切な溶媒および単量体の存在または不在下で添加され、活性のある触媒システムとして作用できる。この時、好適な溶媒としては、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1−ヘキセン、1−オクテン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、メタノール、アセトンなどが使用される。
【0086】
また、発明の一実施形態によれば、前記触媒システムは、担体をさらに含むことができる。つまり、前記化学式1のリガンド化合物は、担体に担持された形態でエチレンオリゴマー化に適用可能である。前記担体は、通常の担持触媒に適用される金属、金属塩、または金属酸化物などであってもよい。非制限的な例として、前記担体は、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどであってもよいし、Na2O、K2CO3、BaSO4、Mg(NO32などのような金属の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩成分を含むことができる。
【0087】
IV.前記触媒システムを用いたオレフィンのオリゴマー化方法
一方、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記触媒システムの存在下、オレフィンのオリゴマー化反応によってアルファ−オレフィンを形成する段階を含むエチレンのオリゴマー化方法が提供される。
【0088】
本発明に係るオレフィンのオリゴマー化方法は、オレフィン(例えば、エチレン)を原料として、上述した触媒システムと通常の装置および接触技術を適用して行われる。
【0089】
非制限的な例として、前記オレフィンのオリゴマー化反応は、不活性溶媒の存在または不在下での均質液相反応、または前記触媒システムが一部溶解しないか全部溶解しない形態のスラリー反応、または生成物のアルファ−オレフィンが主媒質として作用するバルク相反応、またはガス相反応で行われる。
【0090】
そして、前記オレフィンのオリゴマー化反応は、不活性溶媒下で行われる。非制限的な例として、前記不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n−ヘキサン、1−ヘキセン、1−オクテンなどであってもよい。
【0091】
そして、前記オレフィンのオリゴマー化反応は、約0〜200℃、または約0〜150℃、または約30〜100℃、または約50〜100℃の温度下で行われる。また、前記反応は、約15〜3000psig、または15〜1500psig、または15〜1000psigの圧力下で行われる。
【発明の効果】
【0092】
本発明に係るオレフィンオリゴマー化用触媒システムは、優れた触媒活性を有しながらも、1−ヘキセンまたは1−オクテンに対する高い選択度を示して、より効率的なアルファ−オレフィンの製造を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらにのみ限定するわけではない。
【0094】
下記の実施例および比較例において、全ての反応は、Schlenk techniqueまたはgloveboxを用いてアルゴン下で進行した。合成されたリガンドは、Varian 500MHz spectrometerを用いて1H(500MHz)と31P(202MHz)NMR spectraを撮って分析した。Shiftは、residual solvent peakをreferenceとしてTMSからdownfieldにおいてppmで示した。Phosphorous probeは、aqueous H3PO4でcalibrationした。
【0095】
実施例1:化合物C−01の合成
【0096】
【化21】
【0097】
乾燥およびAr置換された250ml schlenk flaskに、1,4−dibenzoylbutane5mmolを注入した。2M NH3エタノール溶液25mL(50mmol)を取って、常温で前記flaskに撹拌および滴加した。Inert雰囲気下、titanium(IV)isopropoxide5.9mL(20mmol)をsyringeで取って、water bath下で撹拌し、前記flaskにdropwise滴加した。注入の終わった混合物はwater bath下でovernight撹拌した。
【0098】
乾燥およびAr置換された他のflaskに、sodium borohydride0.6g(15mmol)を入れて、これに先立って準備された反応混合物をice bath下でcannulaを通してdropwise滴加した。注入の終わった混合物を常温にゆっくり上げた後、4時間以上撹拌した。Ice bath下で反応混合物にammonium hydroxide水溶液(50mmol)をゆっくり滴加してquenchingした。そして、これをCHCl3でextractionし、有機層の残留水分をMgSO4で除去した後、真空減圧条件でsolventを除去して、oilyな状態の反応混合物を得た。
【0099】
シリカを固定相としてカラムクロマトグラフィーにより溶離液(MC:MeOH:NH4OH=100:10:1)で分離して、0.27gの1,6−diphenylhexane−1,6−diamine(収率20%)を得た。
【0100】
Ar下、1,6−diphenylhexane−1,6−diamine(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(20mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物C−01)を得た。
【0101】
31P NMR(202MHz,CDCl3):63.8−58.7(br d)
1H NMR(500MHz,CDCl3):7.23−6.51(50H,m),3.61(2H,m),1.65(2H,m),0.70(6H,m)。
【0102】
実施例2:化合物C−02の合成
【0103】
【化22】
【0104】
乾燥およびAr置換された250ml schlenk flaskに、1,1’−(1,3−phenylene)diethanone3.3g(20mmol)を注入した。2M NH3エタノール溶液100mL(200mmol)を取って、常温で前記flaskに撹拌および滴加した。Inert雰囲気下、titanium(IV)isopropoxide23.7mL(80mmol)をsyringeで取って、water bath下で撹拌し、前記flaskにdropwise滴加した。注入の終わった混合物はwater bath下でovernight撹拌した。
【0105】
乾燥およびAr置換された他のflaskに、sodium borohydride2.3g(60mmol)を入れて、これに先立って準備された反応混合物をice bath下でcannulaを通してdropwise滴加した。注入の終わった混合物を常温にゆっくり上げた後、4時間以上撹拌した。Ice bath下で反応混合物にammonium hydroxide水溶液(100mmol)をゆっくり滴加してquenchingした。そして、これをCHCl3でextractionし、有機層の残留水分をMgSO4で除去した後、真空減圧条件でsolventを除去して、oilyな状態の2g(12mmol)の1,1’−(1,3−phenylene)diethanamineを得た。
【0106】
1H NMR(500MHz,CDCl3):7.31−7.19(4H,m),4.10(2H,m),1.58(4H,br s),1.37(6H,d)。
【0107】
Ar下、1,1’−(1,3−phenylene)diethanamine(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(20mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物C−02)を得た。
【0108】
31P NMR(202MHz,CDCl3):54.0(br s),46.1(br s)
1H NMR(500MHz,CDCl3):7.7−6.9(44H,m),4.6−4.4(2H,m),1.5−1.3(6H,m)。
【0109】
比較例1:化合物D−01の合成
【0110】
【化23】
【0111】
Ar下、cyclohexane−1,4−diamine(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(20mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物D−01)を得た。
【0112】
31P NMR(202MHz,CDCl3):49.63(br s),54.77(br s)
1H NMR(500MHz,CDCl3):1.15(4H,m),2.19(4H,m),3.36(2H,m),6.5−8.0(40H,m)。
【0113】
比較例2:化合物D−02の合成
【0114】
【化24】
【0115】
Ar下、cyclohexane−1,3−diamine(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(20mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物D−02)を得た。
【0116】
31P NMR(202MHz,CDCl3):49.99(br m)。
【0117】
比較例3:化合物D−03の合成
【0118】
【化25】
【0119】
Ar下、3,3,5−trimethylcyclohexanamine(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(10mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物D−03)を得た。
【0120】
31P NMR(202MHz,CDCl3):45.5(br s),55.5(br s)。
【0121】
比較例4:化合物D−04の合成
【0122】
【化26】
【0123】
Ar下、2−isopropyl−6−methylaniline(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(10mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物D−04)を得た。
【0124】
31P NMR(202MHz,CDCl3):57.0(br s)
1H NMR(500MHz,CDCl3):0.8(6H),1.6(3H),3.13(1H),7.0−7.3(3H),7.4−8.0(20H)。
【0125】
比較例5:化合物D−05の合成
【0126】
【化27】
【0127】
Ar下、4,4’−methylenebis(2−methylaniline)(5mmol)とtriethylamine(3−10equiv.to amine)をdichloromethane(80mL)に溶かした。フラスコをwater bathに浸漬した状態で、chlorodiphenylphosphine(20mmol、2equiv.to amine)をゆっくり入れて、一晩撹拌した。真空を取って溶媒を飛ばした後、THFを入れて十分に撹拌し、air−free glass filterでtriethylammonium chloride saltを除去した。ろ過液で溶媒を除去して、product(化合物D−05)を得た。
【0128】
31P NMR(202MHz,CDCl3):61.7(s)
1H NMR(500MHz,CDCl3):1.6(6H),3.7(2H),6.54(2H),6.75(2H),7.0−7.8(42H)。
【0129】
実験例1
(段階I)
アルゴンガス雰囲気下、クロミウム(III)アセチルアセトネート(17.5mg、0.05mmol)と実施例1によるリガンド化合物C−01(0.025mmol)をフラスコに入れた後、これに100mLのメチルシクロヘキサンを添加および撹拌して、0.5mM(Cr基準)の溶液を準備した。
【0130】
(段階II)
600ml容量のParr反応器を準備して、120℃で2時間真空を取った後、内部をアルゴンに置換し、温度を60℃に下げた。その後、175mLのメチルシクロヘキサンおよび2mlのMMAO(isoheptane solution、Al/Cr=1200)を注入し、前記0.5mM溶液5mL(2.5マイクロモルのCr)を注入した。1分間500rpmで撹拌後、60barに合わされたエチレンラインのバルブを開けて反応器の中をエチレンで満たした後、60℃に制熱されるように調節して、500rpmで15分間撹拌した。エチレンラインバルブを閉じ、反応器をドライアイス/アセトンbathを用いて0℃に冷やした後、未反応エチレンをゆっくりventし、0.5mLのノナン(GC internal standard)を入れた。10秒間撹拌した後、反応器の液体部分を2mL取って水でquenchし、得られた有機部分をPTFE syringe filterでフィルターして、GC−FID分析を行った。
【0131】
(段階III)
残りの反応液に400mLのethanol/HCl溶液(10vol% of aqueous 12M HCl solution)を入れて撹拌およびフィルタリングして、ポリマーを得た。得られたポリマーを65℃のvacuum ovenにて一晩乾燥した後、その無機を測定した。
【0132】
実験例2
前記化合物C−01の代わりに、実施例2による化合物C−02(0.025mmol)をリガンド化合物として用いたことを除いて、実験例1と同様の方法で実施した。
【0133】
比較実験例1
(段階I)
アルゴンガス雰囲気下、クロミウム(III)アセチルアセトネート(17.5mg、0.05mmol)と比較例1によるリガンド化合物D−01(0.025mmol)をフラスコに入れた後、これに10mLのシクロヘキサンを添加および撹拌して、5mM(Cr基準)の溶液を準備した。
【0134】
(段階II)
600ml容量のParr反応器を準備して、120℃で2時間真空を取った後、内部をアルゴンに置換し、温度を45℃に下げた。その後、90mLのシクロヘキサンおよび2mlのMMAO(isoheptane solution、Al/Cr=1200)を注入し、前記5mM溶液0.5mL(2.5マイクロモルのCr)を注入した。2分間500rpmで撹拌後、45barに合わされたエチレンラインのバルブを開けて反応器の中をエチレンで満たした後、45℃に制熱されるように調節して、500rpmで15分間撹拌した。エチレンラインバルブを閉じ、反応器をドライアイス/アセトンbathを用いて0℃に冷やした後、未反応エチレンをゆっくりventし、0.5mLのノナン(GC internal standard)を入れた。10秒間撹拌した後、反応器の液体部分を2mL取って水でquenchし、得られた有機部分をPTFE syringe filterでフィルターして、GC−FID分析を行った。
【0135】
(段階III)
残りの反応液に400mLのethanol/HCl溶液(10vol% of aqueous 12M HCl solution)を入れて撹拌およびフィルタリングして、ポリマーを得た。得られたポリマーを65℃のvacuum ovenにて一晩乾燥した後、その無機を測定した。
【0136】
比較実験例2
前記化合物D−01の代わりに、比較例2による化合物D−02(0.025mmol)をリガンド化合物として用いたことを除いて、比較実験例1と同様の方法で実施した。
【0137】
比較実験例3
前記化合物D−01の代わりに、比較例2による化合物D−03(0.05mmol)をリガンド化合物として用いたことを除いて、比較実験例1と同様の方法で実施した。
【0138】
比較実験例4
前記化合物D−01の代わりに、比較例2による化合物D−04(0.05mmol)をリガンド化合物として用いたことを除いて、比較実験例1と同様の方法で実施した。
【0139】
比較実験例5
前記化合物C−01の代わりに、比較例5による化合物D−05(0.025mmol)をリガンド化合物として用いたことを除いて、実験例1と同様の方法で実施した。
【0140】
【表1】
【0141】
前記表1を参照すれば、実施例の場合、比較例に比べて触媒活性が高くなっただけでなく、1−ヘキセンと1−オクテンに対する選択度の合計が高くなったことが確認された。