特許第6427290号(P6427290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427290磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6427290
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスク
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/73 20060101AFI20181112BHJP
   G11B 5/82 20060101ALI20181112BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20181112BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20181112BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20181112BHJP
【FI】
   G11B5/73
   G11B5/82
   !C22C21/00 E
   !C22F1/04 L
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 630B
   !C22F1/00 661D
   !C22F1/00 681
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-106052(P2018-106052)
(22)【出願日】2018年6月1日
【審査請求日】2018年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-224297(P2017-224297)
(32)【優先日】2017年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155572
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 恵視
(72)【発明者】
【氏名】北脇高太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山賢
(72)【発明者】
【氏名】中村肇宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本遼
(72)【発明者】
【氏名】畠山英之
(72)【発明者】
【氏名】米光誠
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−186597(JP,A)
【文献】 特開2017−031507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/62−5/858
C22C 5/00−25/00
C22C 27/00−28/00
C22C 30/00−30/06
C22C 35/00−45/10
C22F 1/00−3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク用アルミニウム合金基板において、アルミニウム合金基板の板厚と損失係数の積が0.7×10−3mm以上であり、Fe:0.10〜3.00mass%及びMn:0.10〜3.00mass%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
【請求項2】
前記アルミニウム合金基板のヤング率が70GPa以上であり、かつ、耐力が70MPa以上である、請求項1に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が、Mg:0.100〜5.000mass%、Ni:0.100〜5.000mass%、Cr:0.010〜5.000mass%、Zr:0.010〜5.000mass%、Zn:0.005〜5.000mass%、Cu:0.005〜5.000mass%及びSi:0.10〜0.40mass%からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1又は2に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
【請求項4】
前記アルミニウム合金が、含有量の合計が0.005〜5.000mass%のTi、B及びVからなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面に、無電解Ni−Pめっき処理層とその上の磁性体層が設けられていることを特徴とする磁気ディスク。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載される磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、前記アルミニウム合金を用いて鋳塊を半連続鋳造する半連続鋳造工程と、鋳塊を熱間圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延板を冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延板を円環状に打ち抜くディスクブランク打抜き工程と、打ち抜いたディスクブランクを加圧焼鈍する加圧焼鈍工程と、加圧焼鈍したブランクに切削加工と研削加工を施す切削・研削工程と、切削・研削したブランクを加熱処理する加熱処理工程とを含み、前記加熱処理工程において、130〜280℃で0.5〜10.0時間ブランクを加熱保持することを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
【請求項7】
前記半連続鋳造工程と熱間圧延工程の間に、鋳塊を均質化熱処理する均質化熱処理工程を更に含む、請求項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
【請求項8】
前記冷間圧延の前又は途中に圧延板を焼鈍する焼鈍処理工程を更に含む、請求項又はに記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載される磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、前記アルミニウム合金を用いて鋳造板を連続鋳造する連続鋳造工程と、鋳造板を冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延板を円環状に打ち抜くディスクブランク打抜き工程と、打ち抜いたディスクブランクを加圧焼鈍する加圧焼鈍工程と、加圧焼鈍したブランクに切削加工と研削加工を施す切削・研削工程と、切削・研削したブランクを加熱処理する加熱処理工程とを含み、前記加熱処理工程において、130〜280℃で0.5〜10.0時間ブランクを加熱保持することを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
【請求項10】
前記冷間圧延の前又は途中において、鋳造板又は圧延板を焼鈍する焼鈍処理工程を更に含む、請求項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、この磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの記憶装置に用いられる磁気ディスクは、良好なめっき性を有するとともに機械的特性や加工性が優れる基板を用いて製造される。例えば、JIS5086(Mg:3.5〜4.5mass%、Fe:0.50mass%以下、Si:0.40mass%以下、Mn:0.20〜0.70mass%、Cr:0.05〜0.25mass%、Cu:0.10mass%以下、Ti:0.15mass%以下及びZn:0.25mass%以下を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる)によるアルミニウム合金を基本とした基板などから製造されている。
【0003】
一般的な磁気ディスクの製造は、まず円環状アルミニウム合金基板を作製し、該アルミニウム合金基板にめっきを施し、次いで該アルミニウム合金基板の表面に磁性体を付着させることにより行われている。
【0004】
例えば、前記JIS5086合金によるアルミニウム合金製磁気ディスクは以下の製造工程により製造される。まず、所定の化学成分としたアルミニウム合金素材を鋳造し、その鋳塊を熱間圧延し、次いで冷間圧延を施し、磁気ディスクとして必要な厚さを有する圧延材を作製する。この圧延材には、必要に応じて冷間圧延の途中等に焼鈍を施すことが好ましい。次に、この圧延材を円環状に打抜き、前記製造工程により生じた歪み等を除去するため、円環状としたアルミニウム合金板を積層し、上限の両面から加圧しつつ焼鈍を施して平坦化する加圧焼鈍を行って、円環状アルミニウム合金基板が作製される。
【0005】
このようにして作製された円環状アルミニウム合金基板に、前処理として切削加工、研削加工、脱脂、エッチング及びジンケート処理(Zn置換処理)を施し、次いで下地処理として硬質非磁性金属であるNi−Pを無電解めっきし、該めっき表面にポリッシングを施した後に、Ni−P無電解めっき表面に磁性体をスパッタリングしてアルミニウム合金製磁気ディスクが製造される。
【0006】
ところで、近年になって、磁気ディスクには、マルチメディア等のニーズから大容量化及び密度化が求められている。更なる大容量化のため、記憶装置に搭載される磁気ディスクの枚数が増加しており、それに伴い磁気ディスクの薄肉化も求められている。しかしながら、磁気ディスク用アルミニウム合金基板を薄肉化すると強度が低下してしまう問題がある。強度が低下すると、基板が変形し難い程度を示す耐衝撃性が低下してしまうため、アルミニウム合金基板には耐衝撃性の向上が求められている。
【0007】
しかしながら、薄肉化、高速化に伴い剛性の低下や高速回転による流体力の増加に伴う励振力が増加し、ディスク・フラッタが発生し易くなる。これは、磁気ディスクを高速で回転させると不安定な気流がディスク間に発生し、その気流により磁気ディスクの振動(フラッタリング)が発生することに起因する。このような現象は、基板の剛性が低いと磁気ディスクの振動が大きくなり、ヘッドがその変化に追従できないために発生するものと考えられる。フラッタリングが起きると、読み取り部であるヘッドの位置決め誤差が増加する。そのためディスク・フラッタの減少が強く求められている。
また、記憶装置の分野は激しいコスト競争にさらされており、生産性等の向上によるコストダウンも強く求められている。
【0008】
このような実情から、近年では高い強度を有し、めっき表面の優れた平滑性を備える磁気ディスク用アルミニウム合金基板が強く望まれ、検討がなされている。例えば、特許文献1では、アルミニウム合金板の強度向上に寄与するMgを多く含有させて、耐衝撃性を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−241513号公報
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されるMg量を増加して強度のみを向上させる方法では、耐衝撃性の低下を大幅に抑制することはできず、目標とする良好な耐衝撃性は得られていないのが現状であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、この磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は請求項1において、磁気ディスク用アルミニウム合金基板において、アルミニウム合金基板の板厚と損失係数の積が0.7×10−3mm以上であり、Fe:0.10〜3.00mass%及びMn:0.10〜3.00mass%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板とした。
【0013】
本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム合金基板のヤング率が70GPa以上であり、かつ、耐力が70MPa以上であるものとした。
【0015】
本発明は請求項では請求項1又は2において、前記アルミニウム合金が、Mg:0.100〜5.000mass%、Ni:0.100〜5.000mass%、Cr:0.010〜5.000mass%、Zr:0.010〜5.000mass%、Zn:0.005〜5.000mass%、Cu:0.005〜5.000mass%及びSi:0.10〜0.40mass%からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
【0016】
本発明は請求項では請求項1〜のいずれか一項において、前記アルミニウム合金が、含有量の合計が0.005〜5.000mass%のTi、B及びVからなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
【0017】
本発明は請求項において、請求項1〜のいずれか一項に記載の磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面に、無電解Ni−Pめっき処理層とその上の磁性体層が設けられていることを特徴とする磁気ディスクとした。
【0018】
本発明は請求項において、請求項1〜のいずれか一項に記載される磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、前記アルミニウム合金を用いて鋳塊を半連続鋳造する半連続鋳造工程と、鋳塊を熱間圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延板を冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延板を円環状に打ち抜くディスクブランク打抜き工程と、打ち抜いたディスクブランクを加圧焼鈍する加圧焼鈍工程と、加圧焼鈍したブランクに切削加工と研削加工を施す切削・研削工程と、切削・研削したブランクを加熱処理する加熱処理工程とを含み、前記加熱処理工程において、130〜280℃で0.5〜10.0時間ブランクを加熱保持することを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法とした。
【0019】
本発明は請求項では請求項において、前記半連続鋳造工程と熱間圧延工程の間に、鋳塊を均質化熱処理する均質化熱処理工程を更に含むものとした。
【0020】
本発明は請求項では請求項又はにおいて、前記冷間圧延の前又は途中に圧延板を焼鈍する焼鈍処理工程を更に含むものとした。
【0021】
本発明は請求項において、請求項1〜のいずれか一項に記載される磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法であって、前記アルミニウム合金を用いて鋳造板を連続鋳造する連続鋳造工程と、鋳造板を冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延板を円環状に打ち抜くディスクブランク打抜き工程と、打ち抜いたディスクブランクを加圧焼鈍する加圧焼鈍工程と、加圧焼鈍したブランクに切削加工と研削加工を施す切削・研削工程と、切削・研削したブランクを加熱処理する加熱処理工程とを含み、前記加熱処理工程において、130〜280℃で0.5〜10.0時間ブランクを加熱保持することを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法とした。
【0022】
本発明は請求項10では請求項において、前記冷間圧延の前又は途中において、鋳造板又は圧延板を焼鈍する焼鈍処理工程を更に含むものとした。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐衝撃性に優れた磁気ディスク用基板及びその製造方法、ならびに、この磁気ディスク用基板を用いた磁気ディスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、基板の耐衝撃性と基板の素材との関係に着目し、これら特性と基板(磁気ディスク材料)の特性との関係について鋭意調査研究し、強度以外に損失係数も耐衝撃性に大きな影響を与えることを見出した。その結果、本発明者らは、基板の板厚と損失係数の積が0.7×10−3mm以上である磁気ディスク用アルミニウム合金基板において、耐衝撃性が向上することを見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至ったものである。
【0026】
以下、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板について詳細に説明する。
【0027】
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板(以下、単に「基板」と記す場合がある)の特性として、板厚と損失係数との積、ヤング率及び耐力について説明する。
【0028】
1.基板の板厚と損失係数の積:
基板の損失係数を向上させることによって、基板の耐衝撃性を向上させる効果が発揮される。これは、HDDの落下時等に基板に力が加わって基板の振動が生じた際に、損失係数が高いほど基板の振動が収束する時間が短時間で済むので他の基板との接触を回避でき、基板同士の接触による塑性変形を防止することができるためである。なお、適正な損失係数は基板の板厚によって大きく変化する。これは板厚が薄くなるほど流体による励起力に対して抗力が失われるためである。基板の損失係数と板厚(単位mm)との積が0.7×10−3mm以上の場合に、耐衝撃性に優れた基板を得られることが分かった。そのため、基板の板厚と損失係数の積は0.7×10−3mm以上とする。基板の板厚と損失係数の積は、好ましくは0.8×10−3mm以上、より好ましくは0.9×10−3mm以上である。基板の板厚と損失係数の積の上限は特に限定されるものではないが、合金組成や製造条件によって自ずと決まるものであり、本発明においては、10.0×10−3mm程度である。
損失係数とは、減衰自由振動波形の隣り合う振幅の比の自然対数をとったものをπで割ったものであり、時刻tにおけるn番目の振幅a、同様にn+1・・・n+m番目の振幅をan+1, ・・・an+mとすると損失係数は、{(1/m)×ln(a/an+m)}/πで表される。
【0029】
2.基板のヤング率と耐力
次に、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の耐衝撃性を更に向上させるために有効な、基板のヤング率と耐力について説明する。
【0030】
2−1.基板のヤング率:
アルミニウム合金基板のヤング率を向上させることにより、基板の耐衝撃性を向上させる効果が発揮される。これは、HDD落下時等に基板に力が加わって基板の振動が生じた際に、ヤング率が高いほど基板の振動による変形を弾性域内に留めることが可能となり、基板の塑性変形を防止することができるためである。基板のヤング率が70GPa以上の場合に、アルミニウム合金基板の耐衝撃性を一層高めることができる。そのため、基板のヤング率は70GPa以上が好ましく、71GPa以上がより好ましく、72GPa以上が更に好ましい。なお、基板のヤング率の上限は特に限定されるものではないが、合金組成や製造条件によって自ずと決まるものであり、本発明においては、90GPa程度である。
【0031】
2−2.基板の耐力:
アルミニウム合金基板の耐力を向上させることにより、基板の耐衝撃性を向上させる効果が発揮される。これは、HDD落下時等に基板に力が加わって基板の振動が生じた際に、耐力が高いほど基板の振動による変形を弾性域内に留めることが可能となり、基板の塑性変形を防止することができるためである。基板の耐力が70MPa以上の場合に、アルミニウム合金基板の耐衝撃性を一層高めることができる。そのため、基板の耐力は70MPa以上が好ましく、80MPa以上がより好ましくはで、90MPa以上が更に好ましい。なお、基板の耐力の上限は特に限定されるものではないが、合金組成や製造条件によって自ずと決まるものであり、本発明においては、300MPa程度である。
【0032】
3.アルミニウム合金の合金組成
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板に用いるアルミニウム合金は、耐衝撃性やめっき性を更に向上させるために、第1の選択的元素として、Fe:0.10〜3.00mass%(以下、単に「%」と記す)及びMn:0.10〜3.00%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
【0033】
また、上記アルミニウム合金は第2の選択的元素として、Mg:0.100〜5.000%、Ni:0.100〜5.000%、Cr:0.010〜5.000%、Zr:0.010〜5.000%、Zn:0.005〜5.000%、Cu:0.005〜5.000%及びSi:0.10〜0.40%からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。
【0034】
更に、上記アルミニウム合金は第3の選択的元素として、含有量の合計が0.005〜5.000%のTi、B及びVからなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。
以下に、上記各選択的元素について説明する。
【0035】
Fe:
Feは、主として第二相粒子(Al−Fe系金属間化合物等)として、一部はマトリックスに固溶して存在し、アルミニウム合金基板の損失係数とヤング率、及び強度を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子と転位との相互作用により振動エネルギーが速やかに吸収され、良好な損失係数が得られる。また、アルミニウム母材よりもヤング率が高い第二相粒子が増加することで、ヤング率が向上する。更に、第二相粒子が増加することで、分散強度により強度が向上する。アルミニウム合金中のFe含有量が0.10%以上であることによって、アルミニウム合金基板の損失係数とヤング率、及び強度を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のFe含有量が3.00%以下であることによって、粗大なAl−Fe系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。その結果、このような粗大なAl−Fe系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性を向上させる効果を一層高めることができ、また、めっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のFe含有量は、0.10〜3.00%の範囲とするのが好ましく、0.60〜2.40%の範囲とするのがより好ましい。
【0036】
Mn:
Mnは、主として第二相粒子(Al−Mn系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の損失係数とヤング率、及び強度を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子と転位との相互作用により振動エネルギーが速やかに吸収され、良好な損失係数が得られる。また、アルミニウム母材よりもヤング率が高い第二相粒子が増加することで、ヤング率が向上する。更に、第二相粒子が増加することで、分散強度により、強度が向上する。アルミニウム合金中のMn含有量が0.10%以上であることによって、アルミニウム合金基板の損失係数とヤング率、及び強度を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のMn含有量が3.00%以下であることによって、粗大なAl−Mn系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。その結果、このような粗大なAl−Mn系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性を向上させる効果を一層高めることができ、また、めっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のMn含有量は、0.10〜3.00%の範囲とするのが好ましく、0.10〜1.50%の範囲とするのがより好ましい。
【0037】
Mg:
Mgは、主としてマトリックスに固溶して存在し、一部は第二相粒子(Mg−Si系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の強度とヤング率を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のMg含有量が0.100%以上であることによって、アルミニウム合金基板の強度とヤング率を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のMg含有量が5.000%以下であることによって、損失係数の低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のMg含有量は、0.100〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.100〜0.800の範囲とするのがより好ましい。
【0038】
Ni:
Niは、主として第二相粒子(Al−Ni系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のNi含有量が0.100%以上であることによって、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のNi含有量が5.000%以下であることによって、粗大なAl−Ni系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。その結果、このような粗大なAl−Ni系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のNi含有量は、0.100〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.100〜1.000%の範囲とするのがより好ましい。
【0039】
Cr:
Crは、主として第二相粒子(Al−Cr系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のCr含有量が0.010%以上であることによって、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のCr含有量が5.000%以下であることによって、粗大なAl−Cr系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。その結果、このような粗大なAl−Cr系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のCr含有量は、0.010〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.100〜1.000%の範囲とするのがより好ましい。
【0040】
Zr:
Zrは、主として第二相粒子(Al−Zr系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のZr含有量が0.010%以上であることによって、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のZr含有量が5.000%以下であることによって、粗大なAl−Zr系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。その結果、このような粗大なAl−Zr系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性の低下及びめっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のZr含有量は、0.010〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.100〜1.000%の範囲とするのがより好ましい。
【0041】
Zn:
Znは、ジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、次工程のめっき工程での平滑性及び密着性を向上させる効果を発揮する。また、他の添加元素と第二相粒子を形成し、ヤング率と強度を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のZn含有量が0.005%以上であることによって、ジンケート処理時のAl溶解量を減少させ、またジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、めっきの平滑性を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のZn含有量が5.000%以下であることによって、ジンケート皮膜が均一となりめっき表面の平滑性が低下することを一層抑制することができ、また、めっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のZn含有量は、0.005〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.100〜0.700の範囲とするのがより好ましい。
【0042】
Cu:
Cuは、主として第二相粒子(Al−Cu系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の強度とヤング率を向上させる効果を発揮する。また、ジンケート処理時のAl溶解量を減少させる。更に、ジンケート皮膜を均一に、薄く、緻密に付着させ、次工程のめっき工程での平滑性を向上させる効果を発揮する。アルミニウム合金中のCu含有量が0.005%以上であることによって、アルミニウム合金基板のヤング率と強度を向上させる効果及び平滑生を向上させる効果とを一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のCu含有量が5.000%以下であることによって、粗大なAl−Cu系金属間化合物粒子が多数生成することを抑制する。その結果、このような粗大なAl−Cu系金属間化合物粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時において脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性を向上させる効果を一層高めることができ、また、めっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のCu含有量は、0.005〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.005〜1.000%の範囲とするのがより好ましい。
【0043】
Si:
Siは、主に第二相粒子(Si粒子やAl−Fe−Si系金属間化合物等)として存在し、アルミニウム合金基板の損失係数とヤング率及び強度を向上させる効果を発揮する。このような材料に振動を加えると、第二相粒子と転位との相互作用により振動エネルギーが速やかに吸収され、良好な損失係数が得られる。また、アルミニウムよりもヤング率が高い第二相粒子が増加することで、ヤング率が向上する。更に、第二相粒子が増加することで、分散強度により、強度が向上する。アルミニウム合金中のSi含有量が0.100%以上であることによって、アルミニウム合金基板の損失係数とヤング率及び強度を向上させる効果を一層高めることができる。また、アルミニウム合金中のSi含有量が0.400%以下であることによって、粗大なSi粒子が多数生成することを抑制する。このような粗大なSi粒子が、エッチング時、ジンケート処理時、切削加工時や研削加工時に脱落して大きな窪みが発生することを抑制し、めっき表面の平滑性を向上させる効果を一層高めることができ、また、めっき剥離が生じることを一層抑制することができる。また、圧延工程における加工性低下を一層抑制することができる。そのため、アルミニウム合金中のSi含有量は、0.100〜0.400%の範囲とするのが好ましく、0.100〜0.350%の範囲とするのがより好ましい。
【0044】
Ti、B、V:
Ti、B及びVは、鋳造時の凝固過程において、第二相粒子(TiBなどのホウ化物、或いは、AlTiやTi−V−B粒子等)を形成し、これらが結晶粒核となるため、結晶粒を微細化することが可能となる。その結果、めっき性が改善する。また、結晶粒が微細化することで、第二相粒子のサイズの不均一性を小さくし、アルミニウム合金基板中の減衰率とヤング率、及び強度のバラツキを低減させる効果を発揮する。但し、Ti、B及びVの含有量の合計が0.005%未満では、上記の効果が得られない。一方、Ti、B及びVの含有量の合計が5.000%を超えてもその効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。そのため、Ti、B及びVを添加する場合のTi、B及びVの含有量の合計は、0.005〜5.000%の範囲とするのが好ましく、0.005〜0.500%の範囲とするのがより好ましい。なお、合計量とは、Ti、B及びVのいずれか1種のみを含有する場合にはこの1種の量であり、いずれか2種を含有する場合にはこれら2種の合計量であり、3種全てを含有する場合にはこれら3種の合計量である。
【0045】
その他の元素:
また、本発明に用いるアルミニウム合金の残部は、Al及び不可避的不純物からなる。ここで、不可避的不純物としてはGa、Snなどが挙げられ、各々が0.10%未満で、かつ合計で0.20%未満であれば、本発明で得られるアルミニウム合金基板としての特性を損なうことはない。
【0046】
なお、金属間化合物とは析出物や晶出物を意味し、具体的には、Al−Fe系金属間化合物(AlFe、AlFe、Al(Fe、Mn)、Al−Fe−Si、Al−Fe−Mn−Si、Al−Fe−Ni、Al−Cu−Fe等)、Mg−Si系金属間化合物(MgSi等)などの粒子等をいう。その他の金属間化合物としては、Al−Mn系金属間化合物(AlMn、Al−Mn−Si)、Al−Ni系金属間化合物(AlNi等)、Al−Cu系金属間化合物(AlCu等)、Al−Cr系金属間化合物(AlCr等)、Al−Zr系金属間化合物(AlZr等)などが挙げられる。なお、第二相粒子は金属間化合物以外にSi粒子等も含む。
【0047】
4.磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法
以下に、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造工程の各工程及びプロセス条件を詳細に説明する。
【0048】
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板、ならびに、これを用いた磁気ディスクの製造方法を、図1のフローに従って説明する。ここで、アルミニウム合金成分の調整(ステップS101)〜冷間圧延(ステップS105)は、アルミニウム合金基板を製造する工程であり、ディスクブランクの作製(ステップS106)〜磁性体の付着(ステップS111)は、製造されたアルミニウム合金基板を磁気ディスクとする工程である。
【0049】
まず、上述の成分組成を有するアルミニウム合金素材の溶湯を、常法に従って加熱・溶融することによって調製する(ステップS101)。次に、調製されたアルミニウム合金素材の溶湯から半連続鋳造(DC鋳造)法や連続鋳造(CC鋳造)法等によりアルミニウム合金を鋳造する(ステップS102)。ここで、DC鋳造法とCC鋳造法は、以下の通りである。
【0050】
DC鋳造法においては、スパウトを通して注がれた溶湯が、ボトムブロックと、水冷されたモールドの壁、ならびに、インゴット(鋳塊)の外周部に直接吐出される冷却水で熱を奪われ、凝固し、鋳塊として下方に引き出される。
【0051】
CC鋳造法では、一対のロール(又は、ベルトキャスタ、ブロックキャスタ)の間に鋳造ノズルを通して溶湯を供給し、ロールからの抜熱で薄板を直接鋳造する。
【0052】
DC鋳造法とCC鋳造法の大きな相違点は、鋳造時の冷却速度にある。冷却速度が大きいCC鋳造法では、第二相粒子のサイズがDC鋳造に比べ小さいのが特徴である。両方の鋳造法において、鋳造時の冷却速度は0.1〜1000℃/sの範囲とするのが好ましい。鋳造時の冷却速度を0.1〜1000℃/sとすることによって、第二相粒子が多数生成し、損失係数とヤング率が向上する。また、Fe固溶量が多くなり、強度を向上させる効果を得ることができる。鋳造時の冷却速度が0.1℃/s未満では、Fe固溶量が少なくなり、強度が低下する虞がある。一方、鋳造時の冷却速度が1000℃/sを超えると、第二相粒子の個数が少なくなる虞があり、十分な損失係数とヤング率が得られない場合がある。
【0053】
つぎに、DC鋳造されたアルミニウム合金鋳塊について必要に応じて均質化処理を実施する(ステップS103)。均質化処理を行う場合は、280〜620℃で0.5〜30時間の加熱処理を行うことが好ましく、300〜620℃で1〜24時間の加熱処理を行うことがより好ましい。均質化処理時の加熱温度が280℃未満又は加熱時間が0.5時間未満の場合は、均質化処理が不十分で、アルミニウム合金基板毎の損失係数のバラツキが大きくなる虞がある。均質化処理時の加熱温度が620℃を超えると、アルミニウム合金鋳塊に溶融が発生する虞がある。均質化処理時の加熱時間が30時間を超えてもその効果は飽和し、それ以上の顕著な改善効果が得られない。
【0054】
次に、必要に応じて均質化処理を施した、或いは、均質化処理を施していないアルミニウム合金鋳塊を熱間圧延し板材とする(ステップS104)。熱間圧延するに当たっては、特にその条件は限定されるものではないが、熱間圧延開始温度を好ましくは250〜600℃とし、熱間圧延終了温度を好ましくは230〜450℃とする。
【0055】
次に、熱間圧延した圧延板又は連続鋳造法で鋳造した鋳造板を冷間圧延して1.3mmから0.45mm程度のアルミニウム合金板とする(ステップS105)。冷間圧延によって所要の製品板厚に仕上げる。冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、必要な製品板強度や板厚に応じて定めれば良く、圧延率を10〜95%とするのが好ましい。冷間圧延の前、或いは、冷間圧延の途中において、冷間圧延加工性を確保するために焼鈍処理を施してもよい。焼鈍処理を実施する場合には、例えばバッチ式の加熱ならば、300〜450℃で0.1〜10時間の条件で行うことが好ましく、連続式の加熱ならば、400〜500℃で0〜60秒間保持の条件で行うことが好ましい。ここで、保持時間が0秒とは、所望の保持温度に到達後直ちに冷却することを意味する。
【0056】
アルミニウム合金板を磁気ディスク用として加工するには、アルミニウム合金板を円環状に打ち抜き、ディスクブランクを作成する(ステップS106)。次に、ディスクブランクを大気中にて、例えば150〜270℃で0.5〜10時間の加圧焼鈍を行い平坦化したブランクを作製する(ステップS107)。次に、ブランクに切削加工、研削加工を施し(ステップS108)、130〜280℃の範囲において0.5〜10.0時間保持する加熱処理を行い(ステップS109)、アルミニウム合金盤を作製する。
【0057】
このように、130〜280℃の範囲において0.5〜10.0時間保持する加熱処理を行うことで、損失係数の向上に必要な転位の減少を抑制することが可能となり、耐衝撃性を向上させることができる。加熱処理温度が280℃を超える場合、又は、加熱処理時間が10.0時間を超える場合は転位が減少し、その結果、損失係数が低下して耐衝撃性が低下する。一方、加熱処理温度が130℃未満の場合、又は、加熱処理時間が0.5時間未満の場合は、加工により導入された歪の除去が不十分となり、その結果、経時変化により基板の平坦度が悪化して磁気ディスク用アルミニウム合金基板としての使用が困難となる。そのため、切削・研削した後のブランクの加熱処理は、130〜280℃の範囲において0.5〜10.0時間保持を行う。また、温度範囲は180〜250℃が好ましく、保持時間は、0.5〜5.0時間が好ましい。
【0058】
次に、アルミニウム合金基板表面に脱脂、エッチング、ジンケート処理(Zn置換処理)を施す(ステップS110)。更に、ジンケート処理した処理表面に下地処理として無電解Ni−Pめっき処理を施し(ステップS111)、アルミニウム合金基盤を作製する。最後に、無電解Ni−Pめっき処理面にスパッタリングによって磁性体を付着させて(ステップS112)磁気ディスクとする。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
まず、第1の実施例として、DC鋳造法によって鋳造したアルミニウム合金を用いた磁気ディスク用アルミニウム合金基板の実施例について説明する。表1〜3に示す成分組成の各合金素材を常法に従って溶解し、アルミニウム合金溶湯を溶製した(ステップS101)。表1〜3中「−」は、測定限界値未満を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
次に、アルミニウム合金溶湯をDC鋳造法により鋳造し、厚さ400mmの鋳塊を作製した(ステップS102)。均質化処理前に、鋳塊の両面を15mm面削した。
【0065】
次に、No.A2以外は380℃で10時間の均質化処理を施した(ステップS103)。次に、熱間圧延開始温度370℃、熱間圧延終了温度230℃の条件で熱間圧延を行ない、板厚3.0mmの熱間圧延板とした(ステップS104)。
【0066】
熱間圧延後に、No.A3、A5及びAC1の合金の熱間圧延板は300℃で2時間の条件で焼鈍(バッチ式)を行った。このようにして作製した全ての熱間圧延板は、冷間圧延(圧延率73.3%)により最終板厚の0.8mmまで圧延し、アルミニウム合金板とした(ステップS105)。このアルミニウム合金板から外径96mm、内径24mmの円環状に打抜き、ディスクブランクを作製した(ステップS106)。
【0067】
このようにして作製したディスクブランクを230℃で3時間加圧焼鈍(加圧平坦化処理)を施した(ステップS107)。端面加工(切削加工)を行い外径95mm、内径25mmとし、グラインディング加工(表面25μm研削加工)を行った(ステップS108)。その後、表4〜6に示す条件で加熱処理を実施した(ステップS109)。なお、表6の比較例12において、130〜280℃の範囲における保持時間が「0.0h」とは、加熱保持温度が130℃未満であることを表している。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
冷間圧延(ステップS105)後のアルミニウム合金板、加熱処理(ステップS109)後のアルミニウム合金基板について以下の評価を行った。なお、各試料については、冷間圧延後に外観検査を行った。その結果、実施例17及び18では、長さ30〜50mmの割れが表面に沿って発生し、実施例43〜50では長さ50mmを超える割れが表面に沿って発生したが、割れが発生していない部分をサンプルとして使用して試作及び評価を実施した。また、各試料については、加熱処理工程直後と加熱処理工程から1週間経過した後に平坦度を測定した。ここで、比較例12及び14では、加熱処理工程から1週間経過後の平坦度が20μm以上悪化しており、磁気ディスク用アルミニウム合金基板としては不適であるため、以下の評価は行わなかった。
【0072】
〔損失係数×板厚〕
加熱処理(ステップS109)工程後のアルミニウム合金基板から、60mm×8mmのサンプルを採取し、減衰法により損失係数を測定し、損失係数×板厚(mm)を算出した。損失係数の測定は、日本テクノプラス株式会社製のJE−RT型の装置を用い室温で行った。減衰性能の評価は、損失係数×板厚が0.9×10−3mm以上の場合をA(優)、0.8×10−3mm以上0.9×10−3mm未満をB(良)、0.7×10−3mm以上0.8×10−3mm未満をC(可)、0.7×10−3mm未満はD(劣)とした。なお、加熱処理後の磁気ディスクやアルミニウム合金基盤のめっきを剥離し、表面を10μm研削した基板から試験片を採取し、評価を行ってもよい。結果を表7〜9に示す。なお、表7〜9において、損失係数×板厚の単位はmmである。
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
〔ヤング率〕
加熱処理(ステップS109)工程後のアルミニウム合金基板から、60mm×8mmのサンプルを採取し、共振法によりヤング率を測定した。ヤング率の測定は、日本テクノプラス株式会社製のJE−RT型の装置を用い室温で行った。ヤング率の評価は、ヤング率が72GPa以上の場合をA(優)、71GPa以上72GPa未満をB(良)、70GPa以上71GPa未満をC(可)、70GPa未満はD(劣)とした。なお、加熱処理後の磁気ディスクやアルミニウム合金基盤のめっきを剥離し、表面を10μm研削した基板から試験片を採取し、上記評価を行ってもよい。結果を表7〜9に示す。
【0077】
〔耐力〕
耐力は、JISZ2241に準拠し、冷間圧延(ステップS105)後のアルミニウム合金板に230℃で3時間の焼鈍(加圧焼鈍模擬加熱)を行った後に、表4〜6に示す条件で加熱処理を行い、圧延方向に沿ってJIS5号試験片を採取してn=2にて測定した。強度の評価は、耐力が90MPa以上の場合をA(優)、80MPa以上90MPa未満をB(良)、70MPa以上80MPa未満をC(可)、70MPa未満はD(劣)とした。結果を表7〜9に示す。なお、加熱処理後のアルミニウム合金基板から、或いは、アルミニウム合金基盤や磁気ディスクのめっきを剥離して表面を10μm研削した基板から試験片を採取し、耐力を評価することも可能である。その際の試験片の寸法は、平行部の幅5±0.14mm、試験片の原標点距離10mm、肩部の半径2.5mm、平行部長さ15mmとする。
【0078】
〔生産性〕
冷間圧延(ステップS105)後のアルミニウム合金板を用い外観検査を行った。表面に沿った割れが、長さ30mm未満の場合をAとし、長さ30〜50mmの割れが表面に沿って発生した場合をBとし、50mmを超える割れが表面に沿って発生した場合をCとした。結果を表7〜9に示す。
【0079】
表7、8に示すように実施例1〜56ではいずれも、減衰性能、ヤング率、耐力及び生産性が優れ、良好な耐衝撃性を得ることが出来た。
【0080】
これに対して、表9に示すように比較例1〜20では、減衰性能、ヤング率及び耐力のいずれかが劣っていたため、良好な耐衝撃性を得ることが出来なかった。
【0081】
具体的には、比較例1では、アルミニウム合金のFe含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0082】
比較例2では、アルミニウム合金のMn含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0083】
比較例3では、アルミニウム合金のSi含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0084】
比較例4では、アルミニウム合金のNi含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0085】
比較例5では、アルミニウム合金のCu含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0086】
比較例6では、アルミニウム合金のMg含有量が多過ぎたため、減衰性能及びヤングが劣った。
【0087】
比較例7では、アルミニウム合金のFe含有量及びSi含有量が少な過ぎ、また、Mg含有量が多過ぎたため、減衰性能及びヤングが劣った。
【0088】
比較例8では、Cr含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0089】
比較例9では、Zr含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0090】
比較例10では、Zn含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0091】
比較例11では、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0092】
比較例12では、加熱処理工程における加熱保持温度が低過ぎ、かつ、加熱保持時間が短過ぎたため、加熱処理工程から1週間経過後の平坦度が20μm以上悪化し評価を行なわなかった。
【0093】
比較例13では、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0094】
比較例14では、加熱処理工程における加熱保持時間が短過ぎたため、加熱処理工程から1週間経過後の平坦度が20μm以上悪化し評価を行なわなかった。
【0095】
比較例15では、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0096】
比較例16では、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0097】
比較例17では、アルミニウム合金のFe含有量が少な過ぎたため、また、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0098】
比較例18では、アルミニウム合金のFe含有量が少な過ぎたため、また、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0099】
比較例19では、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0100】
比較例20では、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0101】
次に、第2の実施例として、CC鋳造法によって鋳造したアルミニウム合金を用いた磁気ディスク用アルミニウム合金基板の実施例について説明する。第1の実施例と同じく、表1〜3に示す成分組成の各合金素材を常法に従って溶解し、アルミニウム合金溶湯を溶製した(ステップS101)。
【0102】
次に、アルミニウム合金溶湯をCC鋳造法により鋳造し、厚さ8mmの鋳造板を作製した(ステップS102)。
【0103】
次に、No.A1以外の合金の鋳造板は、450℃で2時間の条件で焼鈍(バッチ式)を行った。このようにして作製した全ての鋳造板は、冷間圧延(圧延率90.0%)により最終板厚の0.8mmまで圧延し、アルミニウム合金板とした(ステップS105)。このアルミニウム合金板から外径96mm、内径24mmの円環状に打抜き、ディスクブランクを作製した(ステップS106)。
【0104】
このようにして作製したディスクブランクを230℃で3時間加圧焼鈍(加圧平坦化処理)を施した(ステップS107)。端面加工(切削加工)を行い外径95mm、内径25mmとし、グラインディング加工(表面25μm研削加工)を行った(ステップS108)。その後、表10〜12に示す条件で加熱処理を実施した(ステップS109)。なお、表12の比較例32において、130〜280℃の範囲における保持時間が「0.0h」とは、加熱保持温度が130℃未満であることを表している。
【0105】
【表10】
【0106】
【表11】
【0107】
【表12】
【0108】
冷間圧延(ステップS105)後のアルミニウム合金板、加熱処理(ステップS109)後のアルミニウム合金基板について以下の評価を行った。なお、各試料については、冷間圧延後に外観検査を行った。その結果、実施例73及び74では、長さ30〜50mmの割れが表面に沿って発生し、実施例99〜106では長さ50mmを超える割れが表面に沿って発生したが、割れが発生していない部分をサンプルとして使用して試作及び評価を実施した。また、各試料については、加熱処理工程直後と加熱処理工程から1週間経過した後に平坦度を測定した。ここで、比較例32及び34では、加熱処理工程から1週間経過後の平坦度が20μm以上悪化しており、磁気ディスク用アルミニウム合金基板としては不適であるため、以下の評価は行わなかった。
【0109】
〔損失係数×板厚〕
加熱処理(ステップS109)工程後のアルミニウム合金基板から、60mm×8mmのサンプルを採取し、減衰法により損失係数を測定し、損失係数×板厚(mm)を算出した。損失係数の測定は、日本テクノプラス株式会社製のJE−RT型の装置を用い室温で行った。減衰性能の評価は、損失係数×板厚が0.9×10−3mm以上の場合をA(優)、0.8×10−3mm以上0.9×10−3mm未満をB(良)、0.7×10−3mm以上0.8×10−3mm未満をC(可)、0.7×10−3mm未満はD(劣)とした。なお、加熱処理後の磁気ディスクやアルミニウム合金基盤のめっきを剥離し、表面を10μm研削した基板から試験片を採取し、評価を行ってもよい。結果を表13〜15に示す。なお、表13〜15において、損失係数×板厚の単位はmmである。
【0110】
【表13】
【0111】
【表14】
【0112】
【表15】
【0113】
〔ヤング率〕
加熱処理(ステップS109)工程後のアルミニウム合金基板から、60mm×8mmのサンプルを採取し、共振法によりヤング率を測定した。ヤング率の測定は、日本テクノプラス株式会社製のJE−RT型の装置を用い室温で行った。ヤング率の評価は、ヤング率が72GPa以上の場合をA(優)、71GPa以上72GPa未満をB(良)、70GPa以上71GPa未満をC(可)、70GPa未満はD(劣)とした。なお、加熱処理後の磁気ディスクやアルミニウム合金基盤のめっきを剥離し、表面を10μm研削した基板から試験片を採取し、上記評価を行ってもよい。結果を表13〜15に示す。
【0114】
〔耐力〕
耐力は、JISZ2241に準拠し、冷間圧延(ステップS105)後のアルミニウム合金板に230℃で3時間の焼鈍(加圧焼鈍模擬加熱)を行った後に、表10〜12に示す条件で加熱処理を行い、圧延方向に沿ってJIS5号試験片を採取してn=2にて測定した。強度の評価は、耐力が90MPa以上の場合をA(優)、80MPa以上90MPa未満をB(良)、70MPa以上80MPa未満をC(可)、70MPa未満はD(劣)とした。結果を表13〜15に示す。なお、加熱処理後のアルミニウム合金基板から、或いは、アルミニウム合金基盤や磁気ディスクのめっきを剥離して表面を10μm研削した基板から試験片を採取し、耐力を評価することも可能である。その際の試験片の寸法は、平行部の幅5±0.14mm、試験片の原標点距離10mm、肩部の半径2.5mm、平行部長さ15mmとする。
【0115】
〔生産性〕
冷間圧延(ステップS105)後のアルミニウム合金板を用い外観検査を行った。表面に沿った割れが、長さ30mm未満の場合をAとし、長さ30〜50mmの割れが表面に沿って発生した場合をBとし、50mmを超える割れが表面に沿って発生した場合をCとした。結果を表13〜15に示す。
【0116】
表13、14に示すように実施例57〜112ではいずれも、減衰性能、ヤング率、耐力及び生産性が優れ、良好な耐衝撃性を得ることが出来た。
【0117】
これに対して、表15に示すように比較例21〜40では、減衰性能、ヤング率及び耐力のいずれかが劣っていたため、良好な耐衝撃性を得ることが出来なかった。
【0118】
具体的には、比較例21では、アルミニウム合金のFe含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0119】
比較例22では、アルミニウム合金のMn含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0120】
比較例23では、アルミニウム合金のSi含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0121】
比較例24では、アルミニウム合金のNi含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0122】
比較例25では、アルミニウム合金のCu含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0123】
比較例26では、アルミニウム合金のMg含有量が多過ぎたため、減衰性能及びヤングが劣った。
【0124】
比較例27では、アルミニウム合金のFe含有量及びSi含有量が少な過ぎ、また、Mg含有量が多過ぎたため、減衰性能及びヤングが劣った。
【0125】
比較例28では、Cr含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0126】
比較例29では、Zr含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0127】
比較例30では、Zn含有量が少な過ぎたため、減衰性能、ヤング率及び耐力が劣った。
【0128】
比較例31では、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0129】
比較例32では、加熱処理工程における加熱保持温度が低過ぎ、かつ、加熱保持時間が短過ぎたため、加熱処理工程から1週間経過後の平坦度が20μm以上悪化し評価を行なわなかった。
【0130】
比較例33では、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0131】
比較例34では、加熱処理工程における加熱保持時間が短過ぎたため、加熱処理工程から1週間経過後の平坦度が20μm以上悪化し評価を行なわなかった。
【0132】
比較例35では、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0133】
比較例36では、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0134】
比較例37では、アルミニウム合金のFe含有量が少な過ぎたため、また、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0135】
比較例38では、アルミニウム合金のFe含有量が少な過ぎたため、また、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0136】
比較例39では、加熱処理工程における加熱保持温度が高過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【0137】
比較例40では、加熱処理工程における加熱保持時間が長過ぎたため、減衰性能及び耐力が劣った。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明により、耐衝撃性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、これを用いた磁気ディスク基板ディスクが得られる。
【要約】
【課題】良好な耐衝撃性を有する磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、この磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用いた磁気ディスクを提供する。
【解決手段】基板の板厚と損失係数の積が0.7×10−3以上であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法、ならびに、当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板の表面に、無電解Ni−Pめっき処理層とその上の磁性体層が設けられていることを特徴とする磁気ディスク。
【選択図】図1
図1