(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学異方性層の厚さdが1000〜5000nmであり、Re(550)が10〜400nmであり、Re(550)及びdの単位をnmとした場合におけるRe(550)/dが0.01〜0.1であり、かつコントラストが100,000以上200,000以下である、請求項1または2に記載の光学異方性層。
前記重合性組成物がネマチック相を示した状態で固定化されている光学異方性層であって、前記光学異方性層の屈折率が最大となる方向の、前記光学異方性層面に対する傾きが10°以下である、請求項1から5の何れか1項に記載の光学異方性層。
波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値であるRe(450)、Re(550)およびRe(650)が式(1)〜(3)を満足する、請求項11に記載の光学異方性層。
式(1) 100≦Re(550)≦180nm
式(2) 0.70≦Re(450)/Re(550)≦1.00
式(3) 0.99≦Re(650)/Re(550)≦1.30
支持体上に設けられた重合性棒状液晶化合物を含む重合性組成物からなる層を、スメクチック液晶相とネマチック液晶相の相転移温度以上まで加熱し、次いで、前記相転移温度より5℃以上低い温度まで冷却した後に重合を行う工程を含む、請求項1から12の何れか1項に記載の光学異方性層の製造方法。
請求項1から12の何れか1項に記載の光学異方性層の表面上に、厚さ方向の屈折率が面内の屈折率よりも大きい1軸性の複屈折層が積層されている、請求項14に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、角度について「直交」及び「平行」とは、厳密な角度±10°の範囲を意味するものとし、並びに角度について「同一」及び「異なる」は、その差が5°未満であるか否かを基準に判断できる。
【0012】
本発明において、「傾斜角」とは、傾斜した液晶が層平面となす角度を意味し、液晶化合物の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向が層平面となす角度のうち、最大の角度を意味する。従って、正の光学的異方性を持つ棒状液晶化合物では、傾斜角は棒状液晶化合物の長軸方向すなわちダイレクター方向と層平面とのなす角度を意味する。また、本発明において、「平均傾斜角」とは、光学異方性層の上界面での上記傾斜角から下界面までの上記傾斜角の平均値を意味する。 傾斜角(即ち、光学異方性膜の屈折率が最大となる
方向の、上記光学異方性膜面に対する傾き)は、自動複屈折率計(例えば、KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて測定することができる。
【0013】
本発明において、フィルムの「コントラスト」とは、(平行ニコル下における最大輝度)/(クロスニコル下における最小輝度)を意味する。コントラストの測定は、テーブル上に、下から順に直下型蛍光管バックライト光源、上側偏光板、試料、下側偏光板を各面が水平になるように設置する。この時、試料と上側偏光板は回転可能とする。光源から出射し、上側偏光板、試料、下側偏光板と順に透過した光を垂直方向から輝度計(例えば、BM−5A(TOPCON製))を用いて輝度を測定する。測定は、まず試料のない状態で上側偏光板を回転させて最も輝度が暗くなる位置に合わせる(クロスニコルの状態)。試料を挿入し、クロスニコル下で試料を回転させて最小となる輝度を測定する。次に上側偏光板と下側偏光板の2枚の偏光板を平行ニコル配置にして、試料を回転させて最大となる輝度を測定する。
上側偏光板および下側偏光板に起因する輝度漏れの寄与を除去するため、下記式により求められる値を、フィルムのコントラストと定義する。
コントラスト = 1/((フィルム設置時のクロスニコル下における最小輝度)/(フィルム設置時の平行ニコル下における最大輝度)-(試料のない状態でのクロスニコル下における最小輝度)/(試料のない状態での平行ニコル下における最大輝度))
【0014】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
【0015】
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(7)及び数式(8)によりRthを算出することもできる。
【0018】
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
【0019】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(OPTIC AXIS)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにより算出される。
【0020】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRにおいてnx、ny、nzが算出される。この算出されたnx、ny、nzによりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0021】
従来の液晶表示装置では液晶を配向させるためにラビング基板を用いることが行われていた。しかしながら、液晶セルのスペーサー付近では基板のラビング処理が難しく、液晶を適切に配向させることが難しく、光漏れが発生しやすい課題があった。ここで、ラビング基板を用いずに液晶を配向させる方法として、光配向が知られている。光配向は、非接触の偏光照射によって、液晶を配向させるため、スペーサー付近の液晶にも配向も付与できる。結果として、液晶表示装置の光漏れが低減され、高コントラストが実現できる。特に、IPS方式はプレ傾斜角が必要無いために、光配向を好適に適用することができる。そして、本発明者らは、光配向を用いたIPS方式では、液晶セル中の液晶のプレ傾斜角がほぼ0°であるため、この表示装置に使用される位相差フィルムを構成する光学異方性層もプレ傾斜角が小さい、特に0°であることが好ましいことを発見した。これは、光学異方性層のプレ傾斜角が大きくなると光学的に非対称性が生じ、斜め方向の色味変化の視野角依存性が大きくなってしまうためと考えられる。
【0022】
[光学異方性層]
本発明は、重合性棒状液晶化合物がスメクチック相を発現した状態を固定した光学異方性層、または、重合性棒状液晶化合物がスメクチック相とネマチック相を示し、ネマチック相を発現した状態を固定化した光学異方性層に関する。本発明の光学異方性層は、膜又はフィルムの形態、即ち、光学異方性膜又は光学異方性フィルムとして提供することができ、光学異方性膜又は光学異方性フィルムとして単独の層として提供されてもよいし、他の層との積層体の形で提供されてもよい。
光学異方性層中、液晶化合物の分子はホモジニアス配向(水平配向)または液晶化合物が10°以下の傾斜角を有した略水平の傾斜配向のスメクチック相又はネマチック相の状態で固定されている。
【0023】
本明細書において、スメクチック相とは、一方向に揃った分子が層構造を有している状態をいう。
本明細書において、ネマチック相とは、その構成分子が配向秩序を持つが、三次元的な位置秩序を持たない状態をいう。
【0024】
スメクチック相は規則性の高い配向状態にある液晶化合物分子の層からなる1次構造が連続して形成されてなる。
液晶化合物分子の層内の液晶化合物分子の流動性は液晶化合物分子の層間の相互作用が弱いために生じている。一方、液晶化合物分子の層は液晶化合物分子の高い規則性により堅牢である。発明者らは、液晶化合物分子の層が光学異方性層を形成する際、特に液晶化合物分子の重合時の重合収縮により、液晶化合物分子同士が近接すると液晶化合物分子の層内の液晶化合物分子同士の規則性を保ったまま液晶化合物分子の層の層間の相互作用の影響を低減させるために液晶化合物分子が大きく傾斜してしまい、その傾斜した状態で固定されるために屈折率の最大方向と層平面となす角が大きくなってしまうことをつきとめた。
本発明では、液晶化合物分子の層間の相互作用を低減させることによって液晶化合物の分子がホモジニアス配向もしくは略水平の傾斜配向(以降、(略)水平配向と称する。)の状態のスメクチック相を固定化することで、屈折率の最大方向と層平面となす角が10°以下、好ましくは3°以下、特に好ましくは1°以下である光学異方性層を得る。屈折率の最大方向と層平面となす角の下限は0°以上であれば特に限定されない。
【0025】
本発明の光学異方性層は、スメクチック液晶を固定化して作製できる。スメクチック液晶を用いる場合は、まずスメクチック液晶を(略)水平配向させた後、重合や光架橋や熱架橋によって固定することによって形成する。
スメクチック液晶は配向揺らぎによる光学異方性層の散乱偏光解消が小さいために100nm以上の比較的大きなレターデーションが必要な使用においてより好ましく用いることができる。なお、スメクチック相としては特に限定が無くSmA,SmB,SmCや、より高次の相であってもよい。
スメクチック相の状態で液晶化合物が固定されているかを確認するには、X線回折パターンによる観察によって行うことができる。スメクチック相の状態で固定されていれば、層秩序に由来するX線回折パターンが観察されるため、固定されている状態の判別が可能である。本発明の光学異方性層は、スメクチック液晶を、ネマチック相を示した状態で固定化したものでもよい。ネマチック相の状態で液晶化合物が固定されているかを確認するには、X線回折パターンによる観察によって行うことができる。ネマチック相の状態で固定されていれば、層形成に由来する低角側のシャープなピークは観測されず、広角側にブロードなハローピークのみが観測されることにより、固定されている状態の判別が可能である。
【0026】
本発明の光学異方性層の厚さdは、用いる素材や設定する位相差値によっても異なるが、本発明の重合性棒状液晶化合物は複屈折性が大きいため、薄膜でも十分な性能が得られる特徴があり、厚さdは、100nm〜5000nmであることが好ましく、1000〜5000nmであることがさらに好ましく、また別の観点では200nm〜3000nmであることも好ましく、300nm〜2000nmであることがさらに好ましい。
また、光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)は、用途によって好ましい範囲が異なるが、10〜400nmであることが好ましく、20〜375nmであることがより好ましい。
例えば、円偏光板等に用いられるλ/4板として作成する場合は、位相差がλ/4程度である位相差領域とするため、Re(550)が、10〜200nmであることが好ましく、20〜165nmであることがより好ましく、20〜155nmであることがさらに好ましく、また別の観点では110〜165nmであることも好ましく、115〜150nmであることも更に好ましく、120〜145nmであることが特に好ましい。
Rth(550)としては特に制限されないが、Aプレートであることから、(Rth/Re)+0.5として表されるNz係数の範囲が0.8〜1.2を満たす値であることが好ましく、1.0であることが最も好ましい。
また、λ/2板として作成する場合は、位相差がλ/2程度である位相差領域とするため、Re(550)が、200〜400nmであることが好ましく、200〜375nmであることがより好ましく、220〜325nmであることがさらに好ましく、250〜300nmであることが特に好ましい。
Rth(550)としては特に制限されないが、Aプレートであることから、(Rth/Re)+0.5として表されるNz係数の範囲が0.8〜1.2を満たす値であることが好ましく、1.0であることが最も好ましい。
また、Re(550)/dは、0.01〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましく、0.02〜0.06であることがさらに好ましく、0.03〜0.06であることが特に好ましい。
さらに、コントラストは高ければ高いほど表示性能も向上するが、Re(550)/dと反比例の関係にあることから、40,000〜1,200,000であることが好ましく、50,000〜200,000であることがより好ましく、100,000〜200,000であることがさらに好ましい。
また、ポジティブCプレートと組合せた積層体を用いる場合は、組み合わせるCプレートの物性によって最適値は異なるが、例えば、100nm≦Re(550)≦180nmが好ましく、100nm≦Re(550)≦150nmがより好ましく、120nm≦Re(550)≦140nmがさらに好ましい。また、光学異方性層の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRth(550nm)も用途によって好ましい範囲が異なるが、例えば、30nm≦Rth(550)≦100nmが好ましく、40nm≦Rth(550)≦90nmがより好ましく、50nm≦Rth(550)≦80nmがさらに好ましい。
【0027】
[光学異方性層の作製に用いられる重合性棒状液晶化合物]
本発明で用いるスメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物は、メソゲン基といわれる剛直部位と重合性基を少なくとも有する液晶化合物を用いる。
重合性棒状液晶化合物は分子量が大きくなると、MEK等の工業的に用いられる有機溶剤への溶解性が低下する現象がおき、溶剤塗布により所望の塗布膜を得ることが困難になり製造適性が悪化し得られる光学異方性層の表面性状等の膜質も劣るため、スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物の分子量は1300以下が望ましい。
【0028】
重合性棒状液晶化合物は、特に以下の一般式(I)で表される構造の化合物であることが好ましい。
一般式(I):
Q1−SP1−X1−M
1−(Y1−L−Y2−M
2)n−X2−SP2−Q2
式中、
nは(Y1−L−Y2−M
2)の繰り返しの数を示す0以上の整数であり、
Q1及びQ2は、重合性基であって、
SP1およびSP2は、直鎖または分岐のアルキレン基、直鎖または分岐のアルキレン基と−O−もしくは−C(=O)−の少なくとも一方との組み合わせからなる基、全炭素数が2〜8の整数の基であり;
X1およびX2は、単結合または酸素原子であり;
−Y1−L−Y2−は、直鎖のアルキレン基、またはこれと−O−および/または−C(=O)−との組み合わせからなり、全炭素数が3〜18の整数の基であり;
M
1は
−Ar1−COO−Ar2−COO―Ar3―COO―
あるいは
−Ar1−COO−Ar2−COO―Ar3―
あるいは
−Ar1−COO−Ar2−Ar3―
で示される基であり;
M
2は
−Ar3−OCO−Ar2−OCO―Ar1―OCO―
あるいは
−Ar3−OCO−Ar2−OCO―Ar1―
あるいは
−Ar3−OCO−Ar2−Ar1―
で示される基であり;
Ar1、Ar2、Ar3は、独立に任意の数の臭素原子、メチル基、メトキシ基で置換されたフェニレンあるいはビフェニレンである。
【0029】
重合性基Q1・Q2は、重合性基は、ラジカル重合性基(例、エチレン性不飽和基)または開環重合性基(例、エポキシ基、オキセタン基)が好ましく、開環重合性基であると重合収縮が小さいため層間の近接を抑制することができ、特に好ましい。
【0030】
SP1・SP2はスペーサー基と称される、重合性基とメソゲン基を連結する構造である。
スペーサー基は炭素数2〜12のアルキレン基、アルキレンオキシドが好ましく、
アルキレンオキシドがより好ましい。
アルキレンオキシドはエチレンオキシドであることが好ましく、2〜3単位含む構造であると液晶相の温度域が広く制御できるため特に好ましい
【0031】
X1・X2は連結基を表し、単結合または酸素原子より選ばれる。
【0032】
nは0以上の整数を表す。nが増えると既に重合されたメソゲン基を有する液晶分子が作成されたことになるため、光学異方性層形成時の重合収縮を減らすことができる。
ただし、スメクチック液晶は分子間の相互作用が強いため、nを大きくすると粘度が上昇し、配向に高温・長時間が必要になるため、nは0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が特に好ましい。
【0033】
Ar1・Ar2・Ar3はそれぞれ独立に任意の数の臭素原子、メチル基、メトキシ基で置換されたフェニレンあるいはビフェニレンであり、Ar1、Ar2、Ar3に含まれるベンゼン環の総数は3〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましく、3〜4であることが特に好ましい。
【0034】
上記一般式(1)で表される重合性棒状液晶化合物の具体例をあげるが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【表1】
【化2】
【0035】
上記一般式(I)で表される本発明の化合物は、既知の合成反応を組み合わせて合成することができる。即ち、様々な文献(例えば、Methoden derOrganischen Chemie(Houben-Weyl編)、Some specific methods (Thieme-Verlag, Stuttgart著)、実験化学講座及
び新実験化学講座)に記載の方法を参照して合成できる。また、合成方法としては、米国特許4683327号、同4983479号、同5622648号、同5770107号、国際特許(WO)95/22586号、同97/00600号、同98/47979号、及び英国特許2297549号の各明細書の記載も参照できる。
【0036】
重合性棒状液晶化合物は、下記一般式(II)からなる化合物が特に好ましい。
L
1−G
1−D
1−Ar−D
2−G
2−L
2 一般式(II)
式中、
D
1およびD
2は、それぞれ独立に、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)O−、
−O−C(=S)−、−CR
1R
2−、−CR
1R
2−CR
3R
4−、−O−CR
1R
2−、−CR
1R
2−O−、−CR
1R
2−O−CR
3R
4−、−CR
1R
2−O−CO−、−O−CO−CR
1R
2−、−CR
1R
2−O−CO−CR
3R
4−、−CR
1R
2−CO−O−CR
3R
4−、−NR
1−CR
2R
3−、−CR
1R
2−NR
3−、−CO−NR
1−、または−NR
1−CO−を表し、
R
1、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表し、
G
1およびG
2は、それぞれ独立に炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−、−NH−、−NH−で置換されていてもよく、
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L
1およびL
2からなる群から選ばれる少なくとも一種が、重合性基を有する1価の基を表し、
Arは下記一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)、または(II−4)で表される2価の芳香環基を表し:
【0038】
式(II−1)〜(II−4)中、Q
1は、−S−、−O−、またはNR
11−を表し、R
11は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、
Y
1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3〜12芳香族複素環基を表し、
Z
1、Z
2、および、Z
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR
12R
13またはSR
12を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよく、R
12およびR
13は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、
A
1およびA
2は各々独立に、−O−、−NR
21−(R
21は水素原子または置換基を表す。)、−S−およびCO−からなる群から選ばれる基を表し、Xは水素原子または置換基が結合していてもよい第14〜16族の非金属原子を表し、Axは芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表し、Ayは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表し、AxおよびAyが有する芳香環は置換基を有していてもよく、AxとAyは結合して、環を形成していてもよく、
Q
2は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0039】
一般式(II)で表される化合物の各置換基の定義および好ましい範囲については、特開2012−21068号公報に記載の化合物(A)に関するD
1、D
2、G
1、G
2、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、R
4、X
1、Y
1、Q
1、Q
2に関する記載をそれぞれD
1、D
2、G
1、G
2、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、R
4、X
1、およびY
1、Z
1、Z
2について参照でき、特開2008−107767号公報に記載の一般式(I)で表される化合物についてのA
1、A
2、およびXに関する記載をそれぞれA
1、A
2、およびXについて参照でき、WO2013/018526に記載の一般式(I)で表される化合物についてのAx、Ay、Q
1に関する記載をそれぞれAx、Ay、Q
2について参照できる。Z
3については2012−21068号公報に記載の化合物(A)に関するQ
1に関する記載を参照できる。
特に、L
1、L
2で示される有機基としては、それぞれ、特に、−D
3−G
3−Sp−P
3で表される基であることが好ましい。D3は、D1と同義であり、G3は、炭素数6〜12の2価の芳香環または複素環、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−、−NH−、−NH−で置換されていてもよく、Spは−(CH
2)
n−、−(CH
2)
n−O−、−(CH
2−O−)
n−、−(CH
2CH
2−O−)
m(nは2〜12の整数を表し、mは2〜6の整数を表す。)などで表されるスペーサー基を表し、P
3はアクリロイル基などの重合性基を示す。
一般式(II)で表される化合物として好ましい例を以下に示すが、これらに特に限定されない。
【0047】
スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物は、重合性組成物全固形分質量の50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。
【0048】
[重合性組成物]
本発明で用いる重合性組成物には、少なくとも1種のスメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物の他に、重合性棒状化合物、任意の溶剤、添加剤を併用することができる。
【0049】
(重合性棒状化合物)
重合性組成物には、重合性棒状液晶化合物以外に、重合性棒状化合物を加えることができる。この重合性棒状化合物は液晶性の有無を問わない。重合性棒状化合物の添加により、重合性組成物のスメクチック相温度域を制御することができる。
スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物と混合して重合性組成物として扱うため、スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物と相溶性が高いものであれば好ましく用いることができる。
特に、以下一般式(2)の構造のものを好ましく用いることができる。
一般式(2):
Q3−SP3−X3−M
3−(Y3−L−Y4−M
4)
m−X4−SP4−Q4
式中、mは(Y3−L−Y4−M
4)の繰り返しの数を示す0以上の整数であり
Q3及びQ4は重合性基であって、
SP3およびSP4は、同一の基であって、直鎖または分岐のアルキレン基、またはこれと、−O−および/または−C(=O)−との組み合わせからなり、全炭素数が2〜8の整数の基であり;
X3およびX4は、同一の基であって、単結合または酸素原子であり;
−Y3−L−Y4−は、直鎖のアルキレン基、またはこれと−O−および/または−C(=O)−との組み合わせからなり、全炭素数が3〜18の整数の基であり;
M
3およびM4は2環以上の芳香環と−O−および/または−C(=O)−からなる基で
ある。
なお、一般式(2)を構成する基は一般式(1)と同じものを用いることができる。また、重合性棒状液晶化合物の重合性基と、重合性棒状化合物の重合性基とは、同一又は異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
また、これら重合性棒状化合物を用いる場合は、スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物に対して1〜50質量%、好ましくは5〜45質量%の範囲で用いることができる。
本発明では、結晶化を抑制するために、異なる二種以上の棒状液晶化合物を併用することも好ましい態様である。併用する棒状液晶は、単官能や非重合性の液晶であってもよい。
本発明の特に好ましい態様は、上記一般式(II)で表される重合性棒状液晶化合物の異なる二種を併用する態様であって、上記一般式(II)におけるArが(II-2)であって、この(II-2)の構造が異なる二種を併用することが最も好ましい態様である。
【0050】
(非液晶性の多官能重合性化合物)
重合性組成物に非液晶性の多官能重合性化合物を加えることができる。非液晶性の多官能重合性化合物を加えることによりスメクチック相の層間が非液晶性の多官能重合性化合物で連結されることになり層間の近接が抑止できる。
この様な非液晶性の多官能重合性化合物としては、
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが含まれる。
ただし、非液晶性の多官能重合性化合物の添加量が増えることによって光学異方性層の位相差の発現性が希釈されるため、添加量としては固形分濃度で0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましく、0〜5質量%であることが特に好ましい。添加する場合の固形分濃度は、0、1〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが特に好ましく、又は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0051】
(重合開始剤)
液晶化合物は、配向状態を維持して固定するため、液晶化合物に導入した重合性基の重合反応によって行われる。そのためには、上記塗布液中には、重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応、及び電子線を用いるEB硬化が含まれる。このうち、光重合反応が好ましく、その添加量は、スメクチック相を示す重合性棒状液晶化合物および他の重合性棒状化合物を含む全重合性化合物に対して1〜5質量%となる様に添加することが好ましい。
【0052】
重合性組成物を用いて光学異方性層を形成する場合の添加剤の例として上記以外には、表面性状や表面形状を制御するための界面活性剤、液晶化合物の傾斜角を制御するための添加剤(配向助剤)、配向温度を低下させる添加剤(可塑剤)、重合性モノマー、その他機能性を付与するための薬剤等が挙げられ、適宜用いることができる。
【0053】
(溶剤)
光学異方性層の形成時に粘度を下げる等の製造適性を改良するために重合性組成物に溶剤を加えることができる。
用いることのできる溶剤としては製造適性を落とさない限り、特に限定はされないがケトン、エステル、エーテル、アルコール、アルカン、トルエン、クロロホルム、メチレンクロライドからなる群の少なくとも1種から選択されることが好ましく、
ケトン、エステル、エーテル、アルコール、アルカンからなる群の少なくとも1種から選択されることがより好ましく、
ケトン、エステル、エーテル、アルコール、からなる群の少なくとも1種から選択されることが特に好ましい。
溶剤の使用量は、重合性組成物中の濃度として一般的には50〜90質量%であるが、特に限定されない。
【0054】
[積層体及びその製造方法]
本発明の積層体は、本発明の光学異方性層を含む。
本発明の積層体の例としては、光配向膜の表面上に本発明の光学異方性層が形成されて積層体、ラビング配向膜の表面上に本発明の光学異方性層が形成されている積層体、並びに本発明の光学異方性層の表面上に、
厚さ方向の屈折率が面内の屈折率よりも大きい1軸性の複屈折層が積層されている積層体などが挙げられるが、特には限定されない。
【0055】
[光学異方性層及び積層体の製造方法]
本発明の光学異方性層は前述の重合性組成物を支持体上に塗布し、配向処理を行った後で配向状態を固定することで得られる。
【0056】
(支持体)
光学異方性層を形成するために用いる支持体は特に限定されない。
光学異方性層を形成後、剥離して用いる場合は剥離しやすい表面性状の材質を用いても良く、このような形成用の仮支持体としては、ガラスや易接着処理をしていないポリエステルフィルムなどを用いることができる。
また、透明なポリマーフィルム上に形成してそのまま積層体として用いても良く、積層して用いる場合のポリマーフィルムの材料としては、セルロース、環状オレフィン、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコールなど光学材料に用いられている材料を特に好ましく用いることができる。
また、ポリマーフィルムと積層をせずに、偏光子をラビングして直接光学異方性層を形成した薄膜の偏光板や液晶セルなどのガラス基板上に直接作成しても良い。
【0057】
(配向処理と配向膜)
光学異方性層を形成する際には、組成物中の液晶化合物の分子を所望の配向状態にするための技術が必要になる。例えば、配向膜を利用して、液晶化合物を所望の方向に配向させる技術が一般的である。配向膜としては、ポリマー等の有機化合物からなるラビング処理膜や無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、あるいはω−トリコサン酸やジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルの如き有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB膜を累積させた膜などがあげられる。配向膜としては、ポリマー層の表面をラビング処理して形成されたものが好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより実施される。配向層に使用するポリマーの種類は、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9−152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、特開2005−97377号公報、特開2005−99228号公報、及び特開2005−128503号公報記載の直交配向膜等を好ましく使用することができる。なお、本発明で言う直交配向膜とは、本発明の重合性棒状液晶化合物の分子の長軸を、直交配向膜のラビング方向と実質的に直交するように配向させる配向膜を意味する。配向層の厚さは配向機能を提供できれば厚い必要はなく、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
また、光配向性の素材に偏光又は非偏光を照射して配向膜とした、いわゆる光配向膜も用いることもできる。即ち、支持体上に、光配光材料を塗布して光配向膜を作製してもよい。偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向又は斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
【0058】
本発明に利用可能な光配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。本発明の光配向膜では、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステル、特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報、WO2010/150748号公報、特開2013−177561号公報、特開2014−12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物、クマリン化合物が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、エステル、シンナメート化合物、カルコン化合物である。
【0059】
特に好ましい光配向材料の具体例としては、特開2006−285197号公報に記載されている下記式(X)で示される化合物を挙げることができる。
【化11】
(式中、R
1及びR
2は、各々独立して、ヒドロキシ基、又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基、及びマレイミド基からなる群から選ばれる重合性基を表す。
X
1は、R
1がヒドロキシ基の場合、単結合を表し、R
1が重合性基の場合、−(A
1−B
1)
m−で表される連結基を表し、X
2は、R
2がヒドロキシ基の場合、単結合を表し、R
2又はR
8が重合性基の場合、−(A
2−B
2)
n−で表される連結基を表す。ここで、A
1はR
1又はR
7と結合し、A
2はR
2又はR
8と結合し、B
1及びB
2は各々隣接するフェニレン基と結合する。A
1及びA
2は各々独立して単結合、又は二価の炭化水素基を表し、B
1及びB
2は各々独立して単結合、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−CO−O−、又は−O−CO−NH−を表す。m及びnは各々独立して0〜4の整数を表す。但し、m又はnが2以上のとき、複数あるA
1、B
1,A
2及びB
2は同じであっても異なっていても良い。但し、二つのB
1又はB
2の間に挟まれたA
1又はA
2は、単結合ではないものとする。R
3およびR
4は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、−OR
7(ただしR
7は、炭素原子数1〜6の低級アルキル基、炭素原子数3〜6シクロアルキル基又は炭素原子数1〜6の低級アルコキシ基で置換された炭素原子数1〜6の低級アルキル基を表す)、炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基、又は−CONR
8R
9(R
8及びR
9は、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜6の低級アルキル基を表す)、またはメトキシカルボニル基を表す。但し、カルボキシル基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
R
5およびR
6は各々独立して、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基を表す。但し、カルボキシル基、スルホ基はアルカリ金属と塩を形成していても良い。)
【0060】
また、配向膜の素材を選択することで、光学異方性層形成用仮支持体から剥離したり、光学異方性層のみ剥離させることができ、転写つまり剥離した光学異方性層を貼合することで数μmの薄い光学異方性層を提供することができる。さらに、直線偏光子に直接ラビング配向膜や光配向膜を塗布積層し、ラビング又は光配向処理して配向機能を付与する態様も好ましい。即ち、本発明の積層体は、直線偏光子を有し、上記直線偏光子の表面上に光配向膜又はラビング配向膜を有する積層体でもよい。
【0061】
本発明では、光学異方性層に含まれる重合性棒状液晶化合物のプレ傾斜角を0°に出来ることから、光配向膜を配向膜として使用する態様が特に好ましく、プレ傾斜角が0°の光学異方性層を含む位相差フィルムを、特に、光配向を用いたIPS方式に使用することによって、正面の光漏れが低減された高いコントラストと、斜めの色味変化が低減された、良好な視野角依存性の両立が可能となる。本発明で用いる光配向膜では、光配向膜に対して、垂直方向又は斜め方向から偏光照射する工程、または、斜め方向から非偏光照射する工程により配向規制力を付与する態様が好ましい。斜め方向から照射する場合の斜め方向とは、光配向膜に対して、5度〜45度の角度の方向が好ましく、10度〜30度の角度の方向がより好ましい。照射強度としては、好ましくは200〜2000mJ/cm
2の紫外線を照射すればよい。
【0062】
(相転移の制御)
棒状液晶化合物の液晶相は、一般に温度または圧力の変化により転移させることができる。リオトロピック性をもつ液晶の場合には、溶媒量によっても転移させることができる。本発明では、その後のスメクチック相の状態を固定する操作を考慮して温度変化により相転移させることが好ましい。
棒状液晶化合物がネマチック相を発現する温度領域の方が、棒状液晶化合物がスメクチック相を発現する温度領域よりも高いことが普通である。従って、棒状液晶化合物がネマチック相を発現する温度領域まで棒状液晶化合物を加熱し、次に、加熱温度を棒状液晶化合物がスメクチック相を発現する温度領域まで低下させることにより、棒状液晶化合物をネマチック相からスメクチック相に転移させることが好ましい。
本発明の重合性棒状液晶化合物を含む重合性組成物の、スメクチック相からネマチック相に転移する温度は、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましく、70℃以下であることが特に好ましい。上記のスメクチック相からネマチック相に転移する温度の下限値は特に限定されないが一般的には、20℃以上である。
ここで、重合性組成物のスメクチック相からネマチック相に転移する温度は、組成物の偏光顕微鏡観察により、容易に測定することができる。例えば、ネマチック相では、ネマチック相特有のシュリーレンテクスチャーが観測されるが、スメクチックA相では、フォーカルコニックファンテクスチャーに転移するため、温度を昇温または降温させながら、偏光顕微鏡でテクスチャーを観察することにより測定することができる。
棒状液晶化合物がネマチック相を発現する温度領域では、棒状液晶化合物がモノドメインを形成するまで一定時間加熱する必要がある。加熱時間は、10秒間〜20分間が好ましく、10秒間〜10分間がさらに好ましく、10秒間〜5分間が最も好ましい。
棒状液晶化合物がスメクチック相を発現する温度領域では、棒状液晶化合物がスメクチック相を発現するまで一定時間加熱する必要がある。加熱時間は、10秒間〜20分間が好ましく、10秒間〜10分間がさらに好ましく、10秒間〜5分間が最も好ましい。
【0063】
また、本発明では、重合性棒状液晶化合物として、ネマチック相と同時に、より高次のスメクチック相も発現する重合性棒状液晶化合物を用いることにより、ネマチック相も通
常のネマチック相とは異なり、光散乱成分が少なく、高いコントラストが実現できるネマチック相とできる。この特徴は、特に、上記一般式(II)で表される逆波長分散液晶化合物を用いることにより、顕著に達成される
【0064】
したがって、本発明では、棒状液晶化合物がネマチック相を発現する温度領域で加熱し、この温度領域でモノドメインを形成させた後、固定化することも好ましい態様である。かかる態様で作製された位相差は、通常のネマチック相しか発現しない棒状液晶化合物から作製された位相差より格段に高いコントラストが得られることを発見した。
棒状液晶化合物がネマチック相を発現する温度領域では、棒状液晶化合物がモノドメインを形成するまで一定時間加熱する必要がある。加熱時間は、10秒間〜20分間が好ましく、10秒間〜10分間がさらに好ましく、10秒間〜5分間が最も好ましい。
【0065】
また、温度が上昇するのに応じて、スメクチック相→ネマチック相→等方相の順に転移する組成物を用いる場合は、一旦、上記組成物を、ネマチック相−等方相の相転移温度以上に加熱して、その後、所定の速度で、スメクチック相―ネマチック相の相転移温度またはスメクチック相―等方相の相転移温度以下に徐々に温度を低下することで、ネマチック相を経て、スメクチック相へ転移させることができる。低下後の温度は、スメクチック相−ネマチック相の相転移温度またはスメクチック相―等方相の相転移温度より10℃以上低いのが好ましい。冷却速度は1〜100℃/分の範囲内で行うことが好ましく、5〜50℃/分の範囲内であることが好ましい。冷却速度が速すぎると配向欠陥を生じてしまい、遅すぎると製造時間がかかる。
【0066】
また、本発明ではスメクチック相の1次構造を適度に離間させた状態で、液晶化合物分子を傾斜させて光学異方性層の傾斜角を制御することもできる。
液晶化合物の傾斜角を制御する手段としては、ラビング条件を制御した配向膜によりプレ傾斜角を付与する方法、および液晶層に傾斜角制御剤を添加することにより支持体側あるいは空気界面側の極角を制御する方法があり、併用することが好ましい。
傾斜角制御剤は、一例としてフルオロ脂肪族基含有モノマーの共重合体をもちいることができ、芳香族縮合環官能基との共重合体、あるいはカルボキシル基、スルホ基またはホスホノキシ基もしくはその塩を含むモノマーとの共重合体を用いることが好ましい。また、複数の傾斜角制御剤を用いることにより、さらに精密かつ安定に制御可能となる。このような傾斜角制御剤としては、特開2008−257205号公報の段落0022〜0063、特開2006−91732号公報の段落0017〜0124の記載を参酌できる。
【0067】
ネマチック液晶は高度な秩序構造を有しないため、配向状態を重合固定する際に重合収縮の影響を受けにくく、結果として傾斜角が10°以下のホモジニアス配向が得られる。一方、スメクチック液晶は層構造を形成するため、重合または過冷却で固定化する過程における体積収縮や歪により、層全体が傾斜し、傾斜角が大きくなり、ホモジニアス配向が得られず、(i)傾斜により欠陥が発生し光散乱が生じ、コントラストが大幅に低下する
、(ii)傾斜により非対称性が生じ、特に、光配向を使用したIPSモードの液晶表示(セル液晶の傾斜角が0°)を補償することができないという問題がある。本発明においては、スメクチック液晶の重合固定化プロセスにおいて傾斜角10°以下を達成する具体的手段として、
・一般式(I)の化合物と一般式(2)で表される化合物を併用して、スメクチック相の層構造の歪を緩和する方法;
・逆波長分散性スメクチック液晶(一般式(II)で示される化合物など)を使用する方法(分子長軸の直交方向に分子構造が張り出しており、平面性が大きくなっているため面内配向、すなわち傾斜角が10°以下が達成できる);
・傾斜角制御剤(空気界面傾斜角制御剤)を用いて、空気界面にも極角方向のアンカリング力を付与する方法;及び
・光配向膜を使用する方法;
があることを見出された。
【0068】
(配向状態の固定)
配向状態の固定は、熱重合や活性エネルギー線による重合で行うことができ、その重合に適した重合性基や重合開始剤を適宜選択することで行うことができる。製造適性等を考慮すると紫外線照射による重合反応を好ましく用いることができる。紫外線の照射量が少ないと、未重合の重合性棒状液晶が残存し、光学特性の温度変化や、経時劣化の起きる原因となる。
そのため、残存する重合性棒状液晶の割合が5%以下になる様に照射条件を決めることが好ましく、その照射条件は重合性組成物の処方や光学異方性層の膜厚にもよるが目安として200mJ/cm
2以上の照射量で行われることが好ましい。
【0069】
[光学異方性層の用途]
本発明の光学異方性層は、スメクチック相に由来する液晶化合物の高い配向秩序性によって、高い位相差の発現性や偏光解消性が低いため、種々の用途に好ましく用いることができる。例えば、液晶セルを光学補償するための光学補償フィルムや、有機EL表示装置で外光の反射を防止するための広帯域λ/4板、または、λ/2板やλ/4板の位相差板として有用である。
さらに、本発明の光学異方性層は、散乱成分が少ない、高コントラストなAプレートまたは準Aプレートが得られる。特に、逆波長分散性のAプレートまたは準Aプレートが得られるので、有機EL表示装置の広帯域λ/4板や液晶表示装置の光学補償フィルムとして好ましく用いることができる。
特に、本発明の光学異方性層は、傾斜角が抑制された、Aプレートまたは準Aプレートが得られるので、プレ傾斜角0°の光配向膜を使用したIPS型やFFS型の液晶表示装置の光学補償フィルムとして好ましく用いることもできる。
【0070】
本明細書では、傾斜角が10°以下、特に1°以下の低傾斜(低傾斜角)の光学異方性膜は、実質的に面内に遅相軸を有する、一軸性の複屈折層とみなす。
本発明の光学異方性層の実施態様の一例としては、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値であるRe(450)、Re(550)およびRe(650)が下記式(1)〜(3)を満足する、ポジティブAプレートを挙げることができる。
式(1) 100≦Re(550)≦180nm
式(2) 0.70≦Re(450)/Re(550)≦0.90
式(3) 1.00≦Re(650)/Re(550)≦1.30
【0071】
さらに、この光学異方性層に、波長550nmで測定した厚さ方向のレターデーション値であるRth(550)が下記式(4)を満足する、ポジティブCプレートが積層された態様にすることによって、例えば、IPS型の光学補償フィルムや有機EL表示装置用反射防止フィルムとして、斜め方向の色味変化や光漏れを大幅に改善できる。
式(4) −180≦Rth(550)≦−10
【0072】
また、本発明のポジティブCプレートは、−5≦Re(550)≦5(|Re(550)|≦5)を満たすことが好ましく、−3≦Re(550)≦3(|Re(550)|≦3)を満たすことがより好ましい。
また、ポジティブCプレートは、−300≦Rth(550)≦0を満たすことが好ましく、−200≦Rth(550)≦−60を満たすことがより好ましく、−180≦Rth(550)≦−80を満たすことがさらに好ましい。
さらに、波長450nm、550nmおよび650nmで測定した厚さ方向のレターデーション値であるRth(450)、Rth(550)およびRth(650)が下記式(1)及び(2)を満足する、ポジティブCプレートであることが特に好ましい。
式(1) 0.70≦Rth(450)/Rth(550)≦1.00
式(2) 0.99≦Rth(650)/Rth(550)≦1.30
このような範囲とすることにより、IPS用液晶表示装置に組み込んだときにより効果的に本発明の効果が発揮される。
【0073】
また、使用する形態としても特に限定されない。例えば、液晶セル基板や偏光子にラビング処理を施して直接光学異方性層を形成させても良いし、ポリマーフィルムや他の光学フィルムと積層または貼合させて組み合わせ、光学的・機械的な特性を制御した積層体で使用することもできる。
【0074】
[偏光板]
本発明は、偏光子と、本発明の光学異方性層又は積層体とを少なくとも有する偏光板に
も関する。本発明の偏光板の一態様は、偏光子の一方の表面に本発明の光学異方性層又は積層体が積層され、他方の表面に保護フィルムが積層された偏光板である。保護フィルムについては特に制限はなく、上記した支持体として利用可能なポリマーフィルムの例から選択するのが好ましい。保護フィルムの好ましい一例は、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースアシレートフィルムである。
【0075】
偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0076】
本発明の光学異方性層の遅相軸と、直線偏光子の吸収軸とがなす角は45°±10°〜90°±10°であることが好ましく、45°〜90°であることがより好ましい。
偏光子、ポジティブAプレートおよびポジティブCプレートがこの順となるように積層するときは、ポジティブAプレートの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角は90°±10°の範囲であることが好ましい。
また、偏光子、ポジティブCプレートおよびポジティブAプレートをこの順がこの順となるように積層するときは、ポジティブAプレートの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向が平行であることが好ましい。このような角度に設定することにより、IPS用液晶表示装置に組み込んだときにより効果的に本発明の効果が発揮される。
【0077】
偏光子、ポジティブAプレートがこの順となるように積層するときは、ポジティブAプレートの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角は45°±10°の範囲であることが好ましい。このような角度に設定することにより、有機EL表示装置に組み込んだときにより効果的に本発明の効果が発揮される。
【0078】
[液晶表示装置]
本発明は、本発明の光学異方性層又は積層体を含む、液晶表示装置にも関する。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましく、IPSモードであることがより好ましい。光配向を用いたIPSモードであることが特に好ましい。
【0079】
[有機EL表示装置]
本発明は、本発明の光学異方性層又は積層体を有する有機EL表示装置にも関する。
有機EL表示装置において、反射防止板は、例えば、偏光子、光学異方性層、有機ELパネルがこの順になるように設けられていればよい。
【0080】
有機ELパネルは、陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物薄膜を形成した部材であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0081】
陽極は正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが好ましい。陽極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜500nmである。
【実施例】
【0082】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0083】
[実施例1]
<支持体の作成>
特開2009−098674号公報の実施例1に記載されたセルロースアシレートフィルムF−2の製造方法で60μmのセルロースアシレートフィルム(Re:1nm、Rth:−6nm、ヘイズ:0.2%)を作成した。
【0084】
<支持体の鹸化>
支持体として、市販されているトリアセチルセルロースフィルム「Z−TAC」(富士フイルム社製)を用いた。Z−TACを温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m
2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m
2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したアセチルセルロース透明支持体を作製した。
───────────────────────────────────
アルカリ溶液の組成(質量部)
───────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C
14H
29O(CH
2CH
2O)
20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
───────────────────────────────────
【0085】
<配向膜の作成>
上記アセチルセルロース透明支持体を用い、下記の組成の配向膜A形成用塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜Aを形成した。
───────────────────────────────────
配向膜A形成用塗布液の組成
───────────────────────────────────
下記変性ポリビニルアルコール 2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
───────────────────────────────────
【化12】
【0086】
<光学異方性層の作成>
続いて、下記の光学異方性層用塗布液Aを作成した。この塗布液をスライドガラスの表面に塗布し、加熱しながら偏光顕微鏡で観察した。その結果、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は82℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Aの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−1 85質量部
棒状化合物 RL−1 15質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
──────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm-1
【化13】
【化14】
【化15】
表面に配向膜Aを形成した上記アセチルセルロース透明支持体の表面にラビング処理を施した。ラビング処理面上に光学異方性層用塗布液Aを、バーコーターを用いて塗布した。次いで、膜面温度100℃で60秒間加熱熟成し、70℃まで冷却した後に、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層を形成した。形成された光学異方性層は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行に棒状液晶化合物が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さは0.8μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角(即ち、光学異方性膜の屈折率が最大となる方向の、上記光学異方性膜面に対する傾き)を測定したところ、波長550nmにおいてReが128nm、光軸の傾斜角が2°であった。
【0087】
(X線回折測定)
作成した光学異方性層を下記の装置を用いて条件でX線回折測定を行った。
X線回折装置ATXG、Cu線源(50kV・300mA)、0.45ソラースリット
実施例1で作成した光学異方性層の測定結果を
図1示す。2θ=2.2°に層構造を示すピークが観察され、スメクチック相の秩序性に起因する回折光が確認できた。
【0088】
[実施例2]
紫外線を照射する温度を83℃とする以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。
【0089】
[実施例3]
紫外線の照射量を100mJ/cm2とする以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。
【0090】
[実施例4]
ガラス上に、下記の組成の配向膜B形成用塗布液をワイヤーバーで塗布した。100℃の温風で120秒乾燥し、空気下にて300mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照射した。作製した光配向膜に、空気下にて160mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を垂直に照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を光配向膜の面と平行に、かつ、ワイヤーグリッド偏光子の透過軸と偏光板の吸収軸が平行になるようにセットして露光を行った。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm
2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm
2とした。
───────────────────────────────────
配向膜B形成用塗布液の組成
───────────────────────────────────
下記光配向用素材 2質量部
クロロホルム 98質量部
───────────────────────────────────
【0091】
光配向用素材:
【化16】
【0092】
その後、配向膜B上に実施例1と同様の方法で、光学異方性層を作成した。形成された光学異方性層は、偏光子の透過軸に対し遅相軸方向が平行に棒状液晶化合物が配向していた。
【0093】
[実施例5]
光学異方性層用塗布液Aを以下の光学異方性層用塗布液Bに変え、紫外線を照射する温度を85℃とする以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。光学異方性層用塗布液Bの、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は100℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Bの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−1 100質量部
光重合開始剤A 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
───────────────────────────────────
【0094】
[実施例6]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Cに変え、熟成温度を90℃、紫外線照射温度を70℃に変える以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。光学異方性層用塗布液Cの、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は75℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Cの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−2 55質量部
棒状化合物 RL−2 45質量部
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート 3.0質量部
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm-2
【化17】
【化18】
【0095】
[実施例7]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Dに変え、熟成温度を120℃、紫外線照射温度を90℃に変える以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。スメクチック液晶化合物 Sm−3は、メチルエチルケトンへの溶解性が不足していたため、溶媒としてクロロホルムを用いた。光学異方性層用塗布液Dの、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は115℃、スメクチックC相−スメクチックA相の相転移温度は85℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Dの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−3 80質量部
棒状化合物 RL−3 20質量部
光重合開始剤A 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
クロロホルム 588質量部
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−3
【化19】
【化20】
【0096】
[実施例8]
光学異方性層用塗布液Dを光学異方性層用塗布液Eに変え、紫外線照射温度を70℃に変える以外、実施例7と同様の手順で光学異方性層を作成した。光学異方性層用塗布液Eの、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は115℃、スメクチックC相−スメクチックA相の相転移温度は85℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Eの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−3 80質量部
棒状化合物 RL−3 20質量部
カイラル剤A 0.05質量部
光重合開始剤A 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
クロロホルム 588質量部
───────────────────────────────────
カイラル剤A(BASF製 LC−756)
【化21】
【0097】
[実施例9]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Fに変え、熟成温度を140℃、紫外線照射温度を123℃に変える以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。スメクチック液晶化合物 Sm−3は、メチルエチルケトンへの溶解性が不足していたため、溶媒としてクロロホルムを用いた。光学異方性層用塗布液Fの、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は130℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Fの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−4 55質量部
棒状化合物 RL−4 45質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
クロロホルム 588質量部
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm-4
【化22】
【化23】
【0098】
[実施例10]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Gに変える以外は、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Gの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−1 85質量部
棒状化合物 RL−1 15質量部
光重合開始剤B 3.0質量部
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
───────────────────────────────────
光重合開始剤B
【化24】
【0099】
[実施例11]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Hに変える以外は、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。
─────────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Hの組成
─────────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−1 90質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート 10質量部
(V#360、大阪有機化学(株)製)
光重合開始剤A 3.0質量部
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
─────────────────────────────────────
【0100】
実施例2〜11で作成した光学異方性層についても実施例1と同様にX線回折測定を行った結果、2θ=約2°に層構造を示すピークが観察され、スメクチック相の秩序性に起因する回折光が確認できた。
【0101】
[実施例21]
<配向膜21の作成>
実施例1で作製したトリアセチルセルロース透明支持体を用い、下記の組成の光配向膜21形成用塗布液をワイヤーバーで塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、光配向膜21を形成した。
───────────────────────────────────
配向膜21形成用塗布液の組成
───────────────────────────────────
下記光配向用素材21 1.0質量部
ブトキシエタノール 33質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 33質量部
水 33質量部
───────────────────────────────────
光配向用素材21
【化25】
【0102】
<光学異方性層21の作成>
続いて、下記の光学異方性層用塗布液21を作成した。この塗布液をスライドガラスの表面に塗布し、加熱しながら偏光顕微鏡で観察した。その結果、148℃から明瞭なスメクチックA相を与え、183℃でネマチック相に転移し、等方相転移温度は255℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液21の組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−21 10質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア819、BASF製)
上記フッ素化合物A 0.8質量部
クロロホルム 990質量部
──────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−21;II−2−2
【化26】
作製した光配向膜21に、空気下にて160mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を垂直に照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を光配向膜21の面と平行にセットして露光を行った。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm
2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm
2とした。
【0103】
次いで、光配向処理面上に光学異方性層用塗布液21を、バーコーターを用いて塗布した。膜面温度200℃で60秒間加熱熟成し、175℃まで冷却した後に、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層21を形成した。形成された光学異方性層21は、偏光照射方向に対し遅相軸方向が直交に棒状液晶化合物Sm−21が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが130nm、Rthが65nm、Re(550)/dが0.065、Re(450)/Re(550)が0.80、Re(650)/Re(550)が1.05、光軸の傾斜角は0°であった。また、光学異方性層のコントラストは140,000であった。
【0104】
[実施例22]
<光学異方性層22の作成>
実施例21と同様の方法にて光配向処理した光配向膜21に、実施例21で使用した光学異方性層用塗布液21を、バーコーターを用いて厚さdが2.1μmになるように塗布した。膜面温度200℃で60秒間加熱熟成し、その200℃の状態で、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層22を形成した。形成された光学異方性層22は、偏光照射方向に対し遅相軸方向が直交に棒状液晶化合物Sm−21が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2.1μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが138nm、Rthが69nm、Re(550)/dが0.065、Re(450)/Re(550)が0.80、Re(650)/Re(550)が1.05、光軸の傾斜角は0°であった。また、光学異方性層のコントラストは50,000であった。
【0105】
[実施例23]
<光学異方性層23の作成>
実施例21で作製した光配向膜21に、空気下にて160mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射した。このとき、ランプを光配向膜21の面に対して15°の角度でセットして露光を行った。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm
2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm
2とした。
実施例21で使用した光学異方性層用塗布液21を、バーコーターを用いて厚さ2.0μmになるように塗布した。膜面温度200℃で60秒間加熱熟成し、その後、175℃まで降温し、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層23を形成した。形成された光学異方性層23は、光照射方向に対し遅相軸方向が平行に棒状液晶化合物Sm−21が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2.0μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが130nm、Rthが65nm、Re(550)/dが0.065、Re(450)/Re(550)が0.80、Re(650)/Re(550)が1.05、光軸の傾斜角は5°であった。また、光学異方性層のコントラストは120,000であった。
【0106】
[実施例24]
<光学異方性層24の作成>
実施例21で使用した光学異方性層用塗布液21のスメクチック液晶化合物Sm−21をSm−24に変更し、光学異方性層用塗布液24を作製した。この塗布液をスライドガラスの表面に塗布し、加熱しながら偏光顕微鏡で観察した。その結果、124℃から明瞭なスメクチックA相を与え、164℃でネマチック相に転移し、等方相転移温度は247℃であった。
スメクチック液晶化合物 Sm−24;II−2−1
【化27】
【0107】
実施例21と同様の方法にて光配向処理した光配向膜21に、光学異方性層用塗布液24を、バーコーターを用いて厚さ2.0μmになるように塗布した。膜面温度200℃で60秒間加熱熟成し、その155℃まで降温して、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層24を形成した。形成された光学異方性層24は、偏光照射方向に対し遅相軸方向が直交に棒状液晶化合物Sm−24が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2.0μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが130nm、Rthが65nm、Re(550)/dが0.065、Re(450)/Re(550)が1.00、Re(650)/Re(550)が0.99、光軸の傾斜角は0°であった。また、光学異方性層のコントラストは140,000であった。
【0108】
[実施例25]
<光学異方性層25の作成>
実施例24で使用した光学異方性層用塗布液24のスメクチック液晶化合物Sm−24をSm−25に変更し、光学異方性層用塗布液25を作製した。この塗布液をスライドガラスの表面に塗布し、加熱しながら偏光顕微鏡で観察した。その結果、160℃から明瞭なスメクチックA相を与え、169℃でネマチック相に転移し、等方相転移温度は224℃であった。
スメクチック液晶化合物 Sm−25
【化28】
【0109】
実施例21と同様の方法にて光配向処理した光配向膜21に、光学異方性層用塗布液25を、バーコーターを用いて厚さ2.0μmになるように塗布した。膜面温度200℃で60秒間加熱熟成し、その160℃まで降温して、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層25を形成した。形成された光学異方性層25は、偏光照射方向に対し遅相軸方向が直交に棒状液晶化合物Sm−25が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2.0μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが130nm、Rthが65nm、Re(550)/dが0.065、Re(450)/Re(550)が0.81、Re(650)/Re(550)が1.03、光軸の傾斜角は0°であった。また、光学異方性層のコントラストは120,000であった。
【0110】
[実施例26]
<光学異方性層26の作成>
実施例21で使用した光学異方性層用塗布液21を、下記光学異方性層用塗布液26に変更した。この塗布液をスライドガラスの表面に塗布し、加熱しながら偏光顕微鏡で観察した。その結果、室温から73℃で明瞭なスメクチックA相を与え、73℃から128℃でネマチック相を発現した。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液26の組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−26−1 57.5質量部
スメクチック液晶化合物 Sm−26−2 30質量部
棒状化合物 RL−26 12.5質量部
光重合開始剤 6.0質量部
(イルガキュア819、BASF製)
上記含フッ素化合物A 0.85質量部
クロロホルム 600質量部
───────────────────────────────────
【0111】
スメクチック液晶化合物 Sm−26−1;II−2−3
【化29】
【0112】
スメクチック液晶化合物 Sm−26−2;II−2−4
【化30】
【0113】
棒状化合物 RL−26
【化31】
【0114】
TD80UL(富士フイルム製)の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得たのち、上記処理したTD80ULをポリビニルアルコール系接着剤水溶液を用いて貼合した。
他方の表面に、上記実施例21で作製した光配向膜21形成用塗布液をワイヤーバーで塗布した。60℃の温風で60秒、さらに80℃の温風で120秒乾燥し、光配向膜21を形成した。作製した光配向膜21に、空気下にて160mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を垂直に照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を光配向膜21の面と平行に、かつ、ワイヤーグリッド偏光子の透過軸と偏光子の吸収軸が平行になるようにセットして露光を行った。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm
2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm
2とした。このようにして、直線偏光子と光配向膜21が直接接している積層体26を作製した。
【0115】
次いで、光配向処理面上に光学異方性層用塗布液26を、バーコーターを用いて塗布した。膜面温度90℃で30秒間加熱熟成し、60℃まで冷却した後に、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層26を形成した。形成された光学異方性層26は、偏光照射方向に対し遅相軸方向が直交に(すなわち、偏光子の吸収軸に対して直交に)棒状液晶化合物Sm−26−1及びSm−26−2が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2.8μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが140nm、Rthが70nm、Re(550)/dが0.050、Re(450)/Re(550)が0.90、Re(650)/Re(550)が1.00、光軸の傾斜角は0°であった。また、光学異方性層のコントラストは140,000であった。
【0116】
[実施例27]
<光学異方性層27の作成>
<直交配向膜27の作成>
実施例26で作製した、直線偏光子の他方の表面に、下記の組成の直交配向膜27形成用塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに80℃の温風で120秒乾燥し直交配向膜27を作製した。作製した直交配向膜27をラビング処理した。このとき、ラビング軸と偏光子の吸収軸が直交するようにセットしてラビング処理を行った。このようにして、直線偏光子と直交配向膜27が直接接している積層体27を形成した。
───────────────────────────────────
配向膜27形成用塗布液の組成
───────────────────────────────────
下記直交配向膜素材 2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
───────────────────────────────────
【化32】
【0117】
次いで、ラビング処理面上に光学異方性層用塗布液26を、バーコーターを用いて塗布した。膜面温度90℃で30秒間加熱熟成し、60℃まで冷却した後に、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層26を形成した。形成された光学異方性層27は、ラビング軸に対し遅相軸方向が平行に(すなわち、偏光子の吸収軸に対して直交に)棒状液晶化合物Sm−26−1及びSm−26−2が配向していた。このとき、光学異方性層の厚さdは2.8μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが140nm、Rthが70nm、Re(550)/dが0.050、Re(450)/Re(550)が0.90、Re(650)/Re(550)が1.00、光軸の傾斜角は0°であった。また、光学異方性層のコントラストは50,000であった。
【0118】
実施例21〜27で作成した光学異方性層についても実施例1と同様にX線回折測定を行った結果、2θ=約2°に層構造を示すピークが観察され、スメクチック相の秩序性に起因する回折光が確認できた。なお、実施例22で作成した光学異方性層では、サイボタクチック(スメクチックとネマチックの中間相)による、ややブロードなピークとして観察された。
【0119】
[比較例2]
紫外線を照射する温度を90℃とする以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。
得られた光学異方性層を実施例1と同様にX線回折測定を行ったところ、実施例1では確認できた2θ=1.5〜3の範囲にピークは存在しなかった。重合性組成物のスメクチック相−ネマチック相の相転移温度が82℃であるため、90℃では重合性組成物はネマチック相となっていたため、その状態を固定しても秩序度が低いネマチック相であることから回折光のピークが検出されなかったと考えられる。比較例2ではサイボタクチックは観測されず、高コントラストなフィルムは提供できない。
【0120】
[比較例3]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Iに変え、熟成温度を90℃、紫外線照射温度を70℃に変える以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。光学異方性層用塗布液Hの、スメクチックA相−ネマチック相の相転移温度は75℃であった。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Iの組成
───────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm−5 55質量部
棒状化合物 RL−4 45質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
──────────────────────────────────
スメクチック液晶化合物 Sm-5
【化33】
【0121】
[比較例4]
光学異方性層用塗布液Aを光学異方性層用塗布液Jに変え、熟成温度を70℃、紫外線照射温度を70℃に変える以外、実施例1と同様の手順で光学異方性層を作成した。光学異方性層用塗布液Jはスメクチック相を示さず、ネマチック相−等方相の相転移温度は110℃であった。比較例ではサイボタクチックは観測されず、高コントラストなフィルムは提供できない。
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Jの組成
───────────────────────────────────
棒状化合物 RL−4 80質量部
棒状化合物 RL−5 20質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、BASF製)
含フッ素化合物A 0.8質量部
メチルエチルケトン 588質量部
───────────────────────────────────
棒状化合物 RL−5
【化34】
【0122】
[比較例41]
光配向膜を実施例1記載の配向膜Aに変更し、ラビング処理した以外、実施例24と同様に光学異方性層41を作製した。このとき、光学異方性層の厚さは2.0μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが110nm、Rthが75nm、Re(550)/dが0.055、Re(450)/Re(550)が1.00、Re(650)/Re(550)が0.99、光軸の傾斜角は12°であった。また、光学異方性層のコントラストは7,000であった。
【0123】
[比較例42]
光配向膜を実施例1記載の配向膜Aに変更し、ラビング処理した以外、実施例25と同様に光学異方性層42を作製した。このとき、光学異方性層の厚さは2.0μmであった。自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性および光軸の傾斜角を測定したところ、波長550nmにおいてReが108nm、Rthが78nm、Re(550)/dが0.054、Re(450)/Re(550)が0.81、Re(650)/Re(550)が1.03、光軸の傾斜角は14°であった。また、光学異方性層のコントラストは5,000であった。
【0124】
[液晶表示装置による評価]
<ポジティブCプレートの作成>
配向膜Aの変性ポリビニルアルコールを市販の未変性ポリビニルアルコールPVA103(クラレ社製)に変更し、形成用仮支持体上に実施例1と同様の手順で配向膜Cを作成した。この上に、下記塗布液Kを塗布し、60℃60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、重合性棒状液晶化合物を垂直配向させ、ポジティブCプレートを作成した。波長550nmにおいてReが0nm、Rthが−115nmであった。また、Rth(450)/Rth(550)が1.07、Rth(650)/Rth(550)が0.95であった。
【0125】
───────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Kの組成
───────────────────────────────────
液晶化合物B01 80質量部
液晶化合物B02 20質量部
垂直配向剤(S01) 1質量部
垂直配向剤(S02) 0.5質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
イルガキュアー907(BASF製) 3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
B03 0.4質量部
メチルエチルケトン 170質量部
シクロヘキサノン 30質量部
───────────────────────────────────
【0126】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0127】
<光学異方性層とポジティブCプレートの貼合>
実施例1で作成した光学異方性層の塗布面側に、粘着剤を用いて上記ポジティブCプレートの塗布面側を貼合した。貼合後に形成用仮支持体を剥離して、積層光学フィルムを作成した。
【0128】
<偏光板の作製>
TD80UL(富士フイルム製)の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。
他方の表面に、上記で準備した積層光学フィルムの塗布面と反対の面を貼合して、偏光子を挟みこみ、TD80ULと積層光学フィルムが偏光子の保護フィルムとなっている偏光板を作製した。貼合には、ポリビニルアルコール系接着剤水溶液を利用した。また、貼合は、光学異方性層の遅相軸と、偏光子の吸収軸とを直交にして積層して行った。
【0129】
[実施例12]
配向膜A形成用塗布液の変性ポリビニルアルコールを市販のポリビニルアルコールPVA103(クラレ社製)に変更する以外は、実施例1と同様にして、光学異方性層を作成した。実施例1と同様にX線回折測定を行った結果、2θ=約2°に層構造を示すピークが観察され、スメクチック相の秩序性に起因する回折光が確認できた。
TD80UL(富士フイルム製)の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。 続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。
他方の表面に、上記で支持体をセルロースアシレートフィルムから形成用仮支持体に変更して準備した光学異方性層の塗布面側を貼合して、偏光子がTD80ULと光学異方性層に挟まれている偏光板を作製した。このとき、貼合は、光学異方性層の遅相軸と、偏光子の吸収軸とを直交にして積層して行った。この偏光板より、光学異方性層の形成用仮支持体を剥離し、続いて、粘着剤を用い前述のポジティブCプレートの塗布面側を、上記偏光板の光学異方性層の側に貼りあわせ、ポジティブCプレートの形成用仮支持体を剥離し、偏光板を得た。
【0130】
[実施例13]
TD80UL(富士フイルム製)の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。この偏光子を、上記のTD80ULと貼りあわせ、片側に偏光子が露出した偏光板を得た。上記の偏光子を、吸収軸と直交する方向にラビングし、これを配向膜として用い、実施例1と同様の方法で光学異方性層つき偏光板を作成した。光学異方性層についても実施例1と同様にX線回折測定を行った結果、2θ=約2°に層構造を示すピークが観察され、スメクチック相の秩序性に起因する回折光が確認できた。上記光学異方性層つき偏光板の光学異方性層の側に、前述のポジティブCプレートを貼合し、ポジティブCプレートの形成用仮支持体を剥離し、積層光学異方性層のついた偏光板を得た。
【0131】
<液晶表示装置の作製1>
iPad(Apple社製)の液晶セルから視認側の偏光板を剥し、IPSモードの液晶セルとして利用した。
剥がした偏光板の代わりに、上記で作成した積層光学フィルムを含む偏光板を液晶セルに貼合し、実施例1の液晶表示装置を作成した。このとき、液晶セル基板面に対して垂直な方向から観察したとき、偏光板の吸収軸と、液晶セル内の液晶層の光軸とが垂直な方向になるように貼りあわせた。
実施例2〜13及び比較例2〜4においても、光学異方性層を変更する以外は、実施例1と同様にポジティブCプレートとの貼合、偏光板の作成、液晶表示装置の作成を行った。
比較例1は、積層光学フィルムの代わりに実施例1で作成したセルロースアシレートフィルムだけを用い、その他は実施例1と同様にして液晶表示装置を作成した。
【0132】
<液晶表示装置の作製2>
iPad(光配向膜使用、Apple社製)の液晶セルから視認側の偏光板を剥し、光配向膜を使用したIPSモードの液晶セルとして利用した。なお、液晶セル中のプレ傾斜角は0°であった。
次に、実施例21〜27、比較例41〜42においても、光学異方性層を変更する以外は、実施例1と同様にポジティブCプレートとの貼合、偏光板の作製、液晶表示装置の作製を行った。
【0133】
<評価1>
表示性能の測定は、市販の液晶視野角、色度特性測定装置Ezcom(ELDIM社製)を使用し、バックライトは市販の液晶表示装置iPad(Apple社製)を使用した。偏光板を貼り合わせた液晶セルを、光学異方性層がバックライト側と反対側になるように、設置して測定を行った。結果を下記表4に示した。
【0134】
(パネルコントラスト)
白表示におけるパネルに対して垂直方向からの輝度(Yw)及び黒表示におけるパネルに対して垂直方向からの輝度(Yb)を測定し、パネルに対して垂直方向のコントラスト比(Yw/Yb)を算出し、正面コントラストとし、以下の基準で評価した。
A:正面コントラストが比較例1に対して95%以上
B:正面コントラストが比較例1に対して85%以上95%未満
C:正面コントラストが比較例1に対して75%以上85%未満
D:正面コントラストが比較例1に対して75%未満
【0135】
(斜め方向の光漏れ)
上方向(方位角0〜180°、5°刻み)および下方向(方位角180〜360°、5°刻み)のそれぞれの黒輝度(Cd/m
2)の最大値を平均した値(輝度max)を示した。
数値が小さいほど黒表示の光漏れは少ないこと示し、下記のA〜Dの4段階で評価した。
A:1以下
B:1を超え2以下
C:2を超え5以下
D:10を超える
【0136】
(色味視野角)
暗室内で液晶表示装置の黒表示時に測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて色度を計測した。具体的には極角60°における方位角0°から345°まで15°刻みで色度u’、v’を算出し、各々u’、v’の最小値(u’min、v’min)、最大値(u’max、v’max)を抜き出し、以下の式で色変化Δu’v’を評価した。
Δu’v’=√((u’max - u’min)
2+(v’max - v’min)
2)
数値が小さいほど色味視野角が良いことを示し、下記のA〜Dの4段階で評価した。
A:Δu’v’ < 0.12
B:0.12 ≦ Δu’v’ <0.15
C:0.15 ≦ Δu’v’ <0.18
D:0.18 ≦ Δu’v’
【0137】
(残存モノマー量)
光学異方性層を支持体ごと24時間クロロホルムで抽出し、抽出液をフィルター(Milipore Milex-FG 0.2μm)で濾過し、下記の条件の高速カラムクロマトグラフィーにて残存するスメクチック液晶化合物の量を定量し、塗布量に対して残存する未重合のスメクチック液晶化合物の比率を求めた。
カラム: TSK−GEL ODS−80Ts 2.0 mmID×150 mm、
グラジェント条件: H
2O (0.1% AA、TEA) /MeOH (0.1% AA、TEA)= 90/10→0/100 (20→50 min)、
run time: 50 min
post run: 15 min
流速: 0.2 mL/min、
カラム温度: 40℃、
注入量: 5 mL、
モニター波長: 254 nm
【0138】
<評価2>
上記作製2で作製した液晶表示装置の表示性能の測定も、評価1同様、市販の液晶視野角、色度特性測定装置Ezcom(ELDIM社製)を使用し、バックライトは市販の液晶表示装置iPad(光配向膜使用、Apple社製)を使用した。偏光板を貼り合わせた液晶セルを、光学異方性層がバックライト側と反対側になるように、設置して評価1と同様の方法にて測定を行った。結果を下記表5に示した。
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
[実施例31]
<有機EL用反射防止板の作製>
(反射防止板の作製)
偏光板は片面だけがトリアセチルセルロース(厚さ40μm)で保護された厚さ20μmの偏光子を有する偏光板を用いて、上記偏光板の保護されていない面(延伸したポリビニルアルコールよりなる偏光子)と上記実施例21にて作製した、ポジティブAプレートとポジティブCプレート(ただし、550nmにおけるRthが−65nmとなるように、ポジティブCプレートの厚さは制御している)を積層した光学異方性層とを光学的に等方性の接着剤によって貼り合わせ、有機EL用反射防止板(円偏光板)を作製した。このとき、偏光子の透過軸とポジティブAプレートの光学異方性層の遅相軸とのなす角は45°とした。
【0142】
[実施例32〜35]
実施例31の光学異方性層の作製において、ポジティブAプレートを実施例22〜25で作製したポジティブAプレートに変更した以外は実施例31と同様の手順に従って、反射防止板を作製した。
【0143】
<比較例51〜52>
実施例31の光学異方性層の作製において、ポジティブAプレートを比較例41〜42で作製したポジティブAプレートに変更した以外は実施例31と同様の手順に従って、反射防止板を作製した。
【0144】
<有機EL素子への実装及び表示性能の評価>
(表示装置への実装)
有機ELパネル搭載のSAMSUNG社製GALAXY SIIを分解し、円偏光板を剥離して、実施例31〜35および比較例51〜52の反射防止板を貼合し、表示装置を作製した。
【0145】
(表示性能の評価)
作製した有機EL表示装置について、明光下にて視認性および表示品位を評価した。
表示装置に白表示、黒表示、画像表示をして、正面および極角60度から蛍光灯を映し込んだときの反射光を観察した。正面および極角60度の表示品位を下記の基準で評価した。
4:色味付きが全く視認されない。(許容)
3:色味差が視認されるものの、ごくわずか(許容)
2:色味差が視認されるが反射光は小さく、使用上問題はない。(許容)
1:色味差が視認され、反射光も多く、許容できない。
【0146】
【表6】
【0147】
[IPS液晶表示装置による評価2]
<逆波長分散ポジティブCプレートの作成>
上記ポジティブCプレート用塗布液Kを下記逆波長分散ポジティブCプレート用塗布液Lに変更した以外、上記ポジティブCプレートと同様の手順で逆波長分散ポジティブCプレートLを作成した。波長550nmにおいてReが0nm、Rthが−97nmであった。また、Rth(450)/Rth(550)が0.87、Rth(650)/Rth(550)が1.01であった。
【0148】
───────────────────────────────────
逆波長分散ポジティブCプレート用塗布液Lの組成
───────────────────────────────────
逆波長分散液晶化合物Sm41−1 68質量部
液晶化合物B01 25.6質量部
液晶化合物B02 6.4質量部
垂直配向剤(S02) 0.5質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア819、BASF製)
B03 1.0質量部
メチルエチルケトン 242質量部
───────────────────────────────────
【0149】
スメクチック液晶化合物 Sm41−1;II−3−30
【化40】
【0150】
[実施例41]
<光学異方性層とポジティブCプレートLの貼合>
実施例21で作成した光学異方性層の塗布面側に、粘着剤を用いて上記逆波長分散ポジティブCプレートLの塗布面側を貼合した。貼合後に形成用仮支持体を剥離して、積層光学フィルム41を作成した。
【0151】
<偏光板41の作製>
TD80UL(富士フイルム製)の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。
他方の表面に、上記で準備した積層光学フィルム41の塗布面と反対の面を貼合して、偏光子を挟みこみ、TD80ULと積層光学フィルム41が偏光子の保護フィルムとなっている偏光板41を作製した。貼合には、ポリビニルアルコール系接着剤水溶液を利用した。また、貼合は、光学異方性層の遅相軸と、偏光子の吸収軸とを直交にして積層して行った。
【0152】
<IPS液晶表示装置の作製41>
iPad(光配向膜使用、Apple社製)の液晶セルから視認側の偏光板を剥し、光配向膜を使用したIPSモードの液晶セルとして利用した。なお、液晶セル中のプレ傾斜角は0°であった。次に、剥がした偏光板の代わりに、上記で作成した積層光学フィルムを含む偏光板41を液晶セルに貼合し、実施例41のIPS液晶表示装置を作成した。このとき、液晶セル基板面に対して垂直な方向から観察したとき、偏光板の吸収軸と、液晶セル内の液晶層の光軸とが垂直な方向になるように貼りあわせた。
【0153】
[実施例42]
次に、実施例42〜47、比較例61〜62においても、光学異方性層を上記実施例22〜27、比較例41〜42の光学異方性層に変更する以外は、実施例41と同様にポジティブCプレートとの貼合、偏光板の作製、IPS液晶表示装置の作製を行った。
【0154】
上記実施例41〜47及び比較例61〜62で作製したIPS液晶表示装置の表示性能の測定も、評価1同様、市販の液晶視野角、色度特性測定装置Ezcom(ELDIM社製)を使用し、バックライトは市販の液晶表示装置iPad(光配向膜使用、Apple社製)を使用した。結果を下記表7に示した。
【0155】
【表7】