(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
各種固形物を、乾燥炉にて重油、灯油やプロパンを燃料としてバーナで燃焼加熱して含有水分を気化蒸発させることは、産業分野で多くおこなわれている。最近、LNG(液化天然ガス)サテライト設備が普及し始めたことにより、都市を離れた遠隔地でも燃料として重油、灯油やプロパンに代わって天然ガスが使用されるようになってきた。アスファルト合材を製造するプラントでは、粉砕された石材を骨材として、乾燥炉で骨材中の水分を気化蒸発させた後、バインダ材としてのアスファルトをミキシングして道路の路面材料として製造している。このアスファルト製造プラントにおいても、乾燥炉の燃料を天然ガスに切り替えることで環境にやさしいプラントに作り変えられるようになった。
【0003】
天然ガスを燃料として用いるには、LNG(液化天然ガス)サテライト設備が用いられる。LNGサテライト設備においては、LNG(液化天然ガス)を液体貯槽に蓄え、気化器などで蒸発気化させてガス状にする。LNGは−160℃以下の低温で貯蔵している。気化器の加熱源としては、ガスの物性に応じて様々なものを使用することができるが、最近ではLNGサテライト設備の気化器として空気に加えて温水(液体熱媒)が使用されるようになっている。
【0004】
空気を加熱源とした空温式LNG気化器については、例えば特許文献1に開示されている。同文献に開示された気化器においては、伝熱管の内部に−160℃に近い低温液体が導入されると同時に外部から雰囲気空気で加熱されるため、空気中の水分が伝熱管の表面で氷結し、伝熱効率が著しく低下する可能性がある。
【0005】
これに対して、温水を用いた温水式LNG気化器としては、例えば特許文献2に開示されている。温水式の気化器においては、シェル(熱媒容器)の内部に伝熱管が設けられている。気化器の稼働時には、シェル側に温水を流しつつ伝熱管側に−160℃近い低温液体(LNG)を流す。このような温水式の気化器によれば、加熱源である温水は温水ボイラなどを使用することにより温度調節できる。また、液体である温水を加熱源として使用する場合、空気を加熱源する場合に比べて、外部環境等の温度変化によって当該加熱源自体の温度は変化し難く、年間を通じて安定した性能が維持できる。特許文献2においては、温水の供給温度は「好ましくは40〜70℃である」となっており、温水の温度は比較的に高い。天然ガスを供給するLNGサテライト設備では、気化器を加熱するための温水が必要であり、従来は温水ボイラで水道水や工業用水を50℃以上に加熱して循環使用していた。
【0006】
一方、アスファルト製造プラントの乾燥炉は骨材の水分を蒸発気化させるだけのものである。このため、乾燥炉出口から排出されるガスの温度はせいぜい100℃程度で比較的に低温であり、乾燥炉からの排ガスを排熱回収に利用するのは経済性がないとされていた。したがって、アスファルト製造プラントの乾燥炉のように比較的低温の排ガスを排出しているところから排熱を回収して、LNGサテライト設備の気化器のように比較的高温の温水を作ることは適当でないとされていた。
【0007】
また、アスファルト製造プラントについては、アスファルト合材という道路の路面材料を加熱して流動性を持たせたまま近隣の工事現場に1時間以内で届ける必要があるので、需要量に合わせて、また、輸送トラックの入場時間に間に合わせるため運転および停止を頻繁におこなうことが要求されている。乾燥炉からの排熱を回収して温水の加熱に利用することを検討するに際し、上記のような間欠運転では、連続して乾燥炉からの排熱を回収することが困難である。その一方、運転を開始する場合には、排熱が回収される前に予め天然ガスのバーナへの供給が必要であるので、LNGサテライト設備を熱源なしで稼働させることが要求される。しかしながら、乾燥炉の起動とLNGサテライト設備の起動順序が逆になるため、運転を開始することが難しかった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る液化天然ガス気化システムの一実施形態を示している。本実施形態の液化天然ガス気化システムX1は、LNG貯槽1と、気化器2と、乾燥炉3と、熱交換器4と、熱媒タンク5と、これらに接続される各ラインとを備えて構成されている。
【0021】
LNG貯槽1は、燃料となる液化天然ガス(LNG)を貯蔵するためのものである。このLNG貯槽1は、外壁が2重とされており、当該2つの壁の間には断熱材が充填されるとともに真空に減圧されて、外気からの侵入熱を遮断する構造になっている。LNG貯槽1には、LNGが最低−161.5℃の温度と0.25〜0.3MPaGの圧力で貯蔵されている。
【0022】
LNG貯槽1の下部には、LNG導入ライン61およびLNG移送ライン62が接続されている。LNG導入ライン61は、LNG貯槽1に液化天然ガスを補給するための流路であり、例えばタンクローリによって輸送されたLNGがLNG導入ライン61を通じてLNG貯槽1内に導入される。LNG導入ライン61には、逆止弁611が設けられている。LNG移送ライン62は、LNG貯槽1から排出されるLNGを気化器2に移送するための流路である。LNG移送ライン62には、遮断弁621が設けられている。
【0023】
気化器2は、液体熱媒である温水を加熱源として、LNGを蒸発気化するためのものである。気化器2は、容器体21と、容器体21の内部に配置された伝熱管22とを備えている。伝熱管22は、容器体21内に導入されるLNGが流れる流路であり、例えばコイル状に巻かれている。
【0024】
容器体21は、液体熱媒を収容するための密封状容器である。容器体21には、伝熱管22内のLNGを加熱気化するための液体熱媒が補充可能に収容されている。当該液体熱媒としては、例えば温水が挙げられる。容器体21には、熱媒ライン63,64が接続されている。熱媒ライン63,64は、気化器2と熱交換器4との間で液体熱媒を循環させるためのものである。熱媒ライン63は、容器体21の下部に接続されており、熱交換器4を経た液体熱媒が熱媒ライン63を介して容器体21内に導入される。熱媒ライン64は、容器体21の上部に接続されており、容器体21の内部を通過した液体熱媒が熱媒ライン64に排出される。詳細は後述するが、容器体21から排出される液体熱媒は、熱交換器4において再加熱され、再び気化器2(容器体21)に供給されて循環利用される。
【0025】
伝熱管22は、容器体21内に導入されるLNGが流れる流路であり、例えばコイル状に巻かれている。伝熱管22の上流側端は、容器体21の下部壁を貫通してLNG移送ライン62に繋がっている。容器体21の上部側壁には、ガスライン65が接続されており、伝熱管22の下流側端は、容器体21の上部側壁を貫通してガスライン65に繋がっている。
【0026】
伝熱管22内のLNGは、周囲にある液体熱媒により加熱されて蒸発気化し、気化した天然ガスが、容器体21の外部に通じるガスライン65に排出される。ガスライン65には、ガバナ651が設けられている。
【0027】
ここで、液体熱媒の使用温度は、例えば−40〜40℃の範囲に設定される。液体熱媒として温水を用いる場合、当該温水の温度は、好ましくは40℃から10℃である。伝熱管22内において気化した天然ガスは、例えば、0℃以上の温度に加温されて0.20MPaG程度の圧力で排出される。
【0028】
液体熱媒としては、温水の他に、エタノールやプロピレングリコール、あるいはエチレングリコールなどの液体を用いることができる。これら液体を60wt%未満の濃度になるよう希釈したものは、凍結温度が低く冷凍剤として用いられ、また、消防法による危険物として適用されない。例えば、冷凍剤エタブライン(商品名、「エタブライン」は登録商標)として販売されている防錆剤入りの60wt%濃度未満のエタノールは、その凍結温度が−40℃よりも低くなる。
【0029】
図2は、例えば60wt%濃度未満のエタノールを主成分とする冷凍剤エタブライン(商品名)の凍結温度とエタブラインの濃度との関係を示すグラフである。この図からわかるように、例えばエタブラインを80wt%濃度となるように水と混合すると、正味のエタノール濃度が約48wt%濃度となり凍結温度は−40℃となる。そしてそのエタブラインの濃度を80wt%以下で適宜薄めていくと、凍結温度は次第に上がっていく。したがって、液体熱媒としてエタブラインの水溶液を用いると、エタブラインの濃度を変えることで液体熱媒の凍結温度を調整することができる。
【0030】
図1に戻り、乾燥炉3は、アスファルト用骨材を加熱乾燥させるものである。乾燥炉3は、例えばロータリーキルンタイプであり、アスファルト製造プラントにおいて一般的に用いられるものである。乾燥炉3には、燃焼空気ブロア付きのガスバーナ31が設けられている。気化器2を経てガスライン65に排出された天然ガスは、乾燥炉3の燃料となる。具体的には、ガスバーナ31にガスライン65が接続されており、ガスライン65を流れる天然ガスは、ガバナ651で0.06MPaGにまで減圧調整され、ガスバーナ31に導入されて燃焼される。
【0031】
乾燥炉3には、骨材供給ライン66、骨材排出ライン67および排ガスライン71が接続されている。乾燥炉3には、骨材供給ライン66を介して、アスファルトの原料となる骨材が連続的に供給される。骨材は、石材を砕石したものであり、例えば6〜10wt%程度の水分を含んでいる。乾燥炉3内に供給された骨材は、ガスバーナ31からの熱風により熱せられ、骨材排出ライン67から連続的に抜き出されていく。その結果、骨材中の水分が気化蒸発し、乾燥炉3の排ガスとなって排ガスライン71に排出されていく。排ガスライン71に排出される排ガスの温度は、例えば80〜150℃である。当該排ガスは、比較的に低温である一方、多量の水蒸気を含んでいる。また、当該排ガスの露点温度は、60〜80℃である。なお、乾燥炉3から排出される骨材については、当該乾燥炉3内で加熱されることによって乾燥し、例えば水分含量が0.1wt%以下程度まで低下する。
【0032】
熱交換器4は、乾燥炉3から排出される排ガスを用いて液体熱媒を加熱するためのものである。本実施形態においては、熱交換器4は、縦型の多管式熱交換器であり、胴体41と、この胴体41内に配置された複数の伝熱管42とを備えている。胴体41は、円筒容器状とされており、
図3に示すように、内部には仕切板411,412が設けられている。
【0033】
仕切板411は、胴体41の上端寄りに設けられており、各伝熱管42の上端部を保持している。仕切板411には、伝熱管42の上端部が挿通される貫通孔が設けられている。伝熱管42の上端部は、仕切板411の貫通孔に挿通された状態にて溶接などにより仕切板411に固着されている。
【0034】
仕切板412は、胴体41の下端寄りに設けられており、各伝熱管42の下端部を保持している。仕切板412には、伝熱管42の下端部が挿通される貫通孔が設けられている。伝熱管42の下端部は、仕切板412の貫通孔に挿通された状態にて溶接などにより仕切板412に固着されている。
【0035】
胴体41は、流体収容室415,416および流体収容室417を有する。また、胴体41の適所には、熱媒ライン63,64、排ガスライン71,73、およびドレンライン74が接続されている。
【0036】
流体収容室415は、仕切板411と胴体41の上部とによって囲われた領域であり、各伝熱管42の上端と連通している。また、胴体41の上端には排ガスライン71が接続されており、排ガスライン71の下流側端は流体収容室415に通じている。
【0037】
流体収容室416は、仕切板412と胴体41の下部とによって囲われた領域であり、各伝熱管42の下端と連通している。また、胴体41の下端には排ガスライン72およびドレンライン74が接続されている。排ガスライン72およびドレンライン74の各々の端部は、流体収容室416に通じている。排ガスライン71を介して乾燥炉3からの排ガスが流体収容室415に導入されると、当該排ガスは、複数の伝熱管42の内部を通過し、流体収容室416を経て排ガスライン73に排出される。
【0038】
流体収容室417は、仕切板411,412と胴体41とによって囲われ、かつ伝熱管42の外側に位置する領域である。流体収容室417は、胴体41に接続された熱媒ライン63,64と連通している。熱媒ライン64は、流体収容室417の図中下方左側の部位につながり、熱媒ライン63は、流体収容室417の図中上方右側の部位につながる。熱媒ライン64を介して流体収容室417に液体熱媒が導入されると、当該液体熱媒は、流体収容室417を通過し、熱媒ライン63に送り出される。
【0039】
排ガスライン73は、流体収容室416から排出されるガスを系外に排出するためのものである。
図1に戻り、排ガスライン73には、ブロア731およびスタック732が設けられている。
【0040】
本実施形態において、熱媒タンク5は、熱媒ライン64に設けられている。熱媒タンク5は、所定容量を有しており、液体熱媒が充填されている。なお、熱媒ライン64には、熱媒タンク5および熱交換器4の間においてポンプ641が設けられている。
【0041】
上記した液化天然ガス気化システムX1の稼働時には、LNG貯槽1を介して液化天然ガス(LNG)が排出され、当該LNGは、LNG移送ライン62を通って気化器2に導入される。気化器2内においてLNGは蒸発気化して天然ガスとなり、当該天然ガスはガスライン65を通じて乾燥炉3(ガスバーナ31)に送られる。ガスバーナ31では天然ガスが燃焼し、当該燃焼ガスが乾燥炉3内を通流する。乾燥炉3から排出される排ガスは、排ガスライン71を介して熱交換器4(流体収容室415)に導入される。熱交換器4に導入された排ガスは、流体収容室415を経て複数の伝熱管42の内部を通過し、流体収容室416を経て排ガスライン73に排出される。
【0042】
ここで、排ガスライン71より熱交換器4の流体収容室415に導入された排ガス(例えば約80℃)によって、伝熱管42周囲の流体収容室417を流れる液体熱媒(例えば約35℃)が加熱され、例えば約40℃まで上昇する。
【0043】
伝熱管42を通過する排ガスは、当該排ガス中に含まれる水分が凝縮し、その凝縮水は胴体41の下部のドレンライン74から外部に排出される。排ガスの露点が80℃である場合、排ガス中の水蒸気の一部が凝縮し、このとき放出される凝縮熱が液体熱媒との熱交換に費やされ、排ガスライン73に排出されるガスの温度は例えば約79℃になる。排ガスライン73に排出されたガスは、ブロア731およびスタック732を介して大気中へ放出される。
【0044】
液化天然ガス気化システムX1の熱バランスについて、乾燥炉3においてアスファルト用骨材が1時間あたり約60トン連続的に乾燥される場合を例にして説明する。まず、ガスバーナ31にて天然ガスが約600Nm
3/h燃焼されると、理論燃焼空気量より約1.2倍の空気量で燃焼され、例えば約12,250Nm
3/hの排ガスが100℃前後の温度となって乾燥炉3から排出される。ここで排出されるガスは、アスファルト用骨材から蒸発した水分を多量に含み、当該排ガスの露点は例えば60〜80℃となる。本発明者は、この多量の水分を含んだ排ガス中の凝縮熱を回収することで、例えば80℃の排ガスの温度を殆ど下げずに、排熱を高効率で回収できることに着目した。例えば、熱交換器4に送入される液体熱媒の温度が35℃であれば排ガスとの温度差が45℃となり、当該液体熱媒の温度が10℃であれば排ガスとの温度差が70℃となる。さらに液体熱媒として冷凍剤エタブラインを使用し、当該液体熱媒の温度を例えば−40℃とすれば、排ガスとの温度差が120℃となるので、十分な温度差を確保することができ、排熱回収が充分になされる。
【0045】
本実施形態においては、熱交換器4の伝熱管42の内部に乾燥炉3からの排ガスを導入し、伝熱管42の外側(流体収容室417)に液体熱媒を流して排熱回収を行う。具体的には80℃の排ガスを35℃の液体熱媒で冷却すると、排ガスの露点が80℃であれば凝縮熱を液体熱媒に与えながら、ドレン水をドレンライン74から放出する。そして、伝熱管42を通過後のガスの温度は、約79℃になっており、液体熱媒の冷却による温度降下は僅か1℃である。したがって、排ガスと液体熱媒との温度差が充分にとれ、排熱回収の熱交換能力を有効に活用することができる。このときの交換熱量の具体例を挙げると約100,000kcal/hであり、この内、凝縮熱量は約96,000kcal/h(約96%)を占める。この乾燥炉3からの排ガスの排熱については、例えば液体熱媒の流量が20m
3/hであれば、35℃の液体熱媒が40℃まで加熱回収される。液体熱媒の温度が10℃であれば15℃まで加熱回収され、−40℃の液体熱媒(冷凍剤エタブライン)を用いると−35℃まで加熱回収される。
【0046】
本実施形態において、液体熱媒の使用温度は、−40〜40℃の範囲で設定される。ここで、例えば液体熱媒の使用範囲が40℃から10℃であったものが40℃から−40℃までに広がる場合について検討する。熱交換器4での排ガスの温度は殆ど変化せずに約80℃であるので、排ガスと液体熱媒との温度差は平均で80−(40+10)/2=55℃から80−(40−40)/2=80℃にまで大きくなる。その結果、排ガスと液体熱媒との伝熱面積は(55/80)×100≒69%にまで小さくでき、伝熱効率が約30%改善され、熱交換器4をコンパクトにすることができる。
【0047】
一方、気化器2内での液体熱媒の使用範囲が40℃から10℃であったものが40℃から−40℃までに広がる場合について検討する。伝熱管22内のLNGの気化温度は高くても−140℃付近であるので、液体熱媒と伝熱管22内のLNGとの温度差は平均で140+(40+10)/2=165℃から140+(40−40)/2=140℃となり、その影響度は割合として(165−140)/165×100≒15%となる。したがって、上記の熱交換器4での伝熱効率の改善効果(約30%)に比べて、気化器2での熱交換の効率低下の影響は小さい。
【0048】
熱交換器4で熱回収した液体熱媒は熱媒ライン63を通って気化器2に導入される。気化器2内では液体熱媒に浸かった伝熱管22内のLNGが加熱され、約−140℃から−40℃以上の温度にまで上昇して天然ガスとなる。続いて、液体熱媒は気化器2から熱媒ライン64に排出される。
【0049】
本実施形態において、熱媒ライン64には熱媒タンク5が設けられている。このため、気化器2から排出された液体熱媒は、熱媒タンク5に一旦蓄えられる。この熱媒タンク5では、比較的高い温度、例えば35℃の液体熱媒を蓄えておくと、乾燥炉3が停止して液体熱媒による排熱回収が行われていなくても、常にポンプ641を運転させることにより、液体熱媒が熱媒ライン64、熱交換器4、熱媒ライン63、気化器2を循環さえしていれば、35℃から−40℃までの温度差で蓄えられた熱量で充分にLNGを蒸発気化させることができる。したがって、停止中の乾燥炉3を再稼働させる際、乾燥炉3の稼働に先行して気化器2を起動させることができる。その結果、熱媒タンク5は液体熱媒に回収された排熱を蓄えておくのに好都合な蓄熱器としての役割を果たす。なお、熱媒タンク5の設置位置について、
図1では気化器2の下流側(熱媒ライン64)に設置されているが、より高温の液体熱媒を蓄えておくために、熱交換器4の下流側であって気化器2の上流側(熱媒ライン63)に設置してもよい。また、本実施形態において、
図3に示した多管式熱交換器の流体収容室415,416には排ガスが流れ、流体収容室417には液体熱媒が流れる場合について説明したが、これら流体収容室に流れる流体(排ガスと液体熱媒)を逆にして流して熱交換させてもよい。
【0050】
このようにして、本実施形態の液化天然ガス気化システムX1によれば、乾燥炉3から排出される低温の排ガスが保持する熱量を低温の液体熱媒で効率よく回収して、気化器2で常時LNGを蒸発気化させて天然ガス燃料を乾燥炉3に送ることができる。
【0051】
図4は、上記した液化天然ガス気化システムX1に適用可能な熱交換器の他の例を表す。同図に示した熱交換器4Aは、コイル状の伝熱管43が胴体41内に配置されている。胴体41は、円筒容器状ではあるが、内部には仕切板がない。排ガスライン71から導入された排ガスは、伝熱管43に衝突することによって伝熱管43内を流れる液体熱媒を加熱し、排ガスライン73から排出されてスタック732に向かう。
【0052】
図4に示した熱交換器4Aを含んで構成された液化天然ガス気化システムX1によれば、
図1、
図3の構成に基づいて上述したのと同様に、乾燥炉3から排出される低温の排ガスが保持する熱量を低温の液体熱媒で効率よく回収して、気化器2で常時LNGを蒸発気化させて天然ガス燃料を乾燥炉3に送ることができる。
【0053】
図5は、本発明に係る液化天然ガス気化システムの他の実施形態を示している。本実施形態の液化天然ガス気化システムX2は、LNG貯槽1と、気化器2と、乾燥炉3と、熱交換器4Bと、熱媒タンク5と、これらに接続される各ラインとを備えて構成されている。本実施形態においては、熱交換器4Bの構成が上述の熱交換器4と異なっており、それに伴い種々の変更が施されている。なお、本実施形態において、
図1、
図3を参照して上述した実施形態と同一または類似の要素には同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0054】
図6に示すように、本実施形態の熱交換器4Bは、
図3に示した縦型の多管式熱交換器の下部に
図4に示したコイル状の伝熱管を備えた熱交換器を接続したような形になっている。また、コイル状の伝熱管43は、流体収容室416に配置されており、当該伝熱管43の内部に液体熱媒が流れる。胴体41は、上述の流体収容室417に代えて、流体収容室418を有する。また、胴体41には、排ガスライン72が追加的に接続されている。
【0055】
流体収容室418は、仕切板411,412と胴体41とによって囲われ、かつ伝熱管42の外側に位置する領域である。流体収容室418は、胴体41に接続された排ガスライン72,73と連通している。排ガスライン72は、流体収容室418の図中右側の部位につながり、排ガスライン73は、流体収容室418の図中左側の部位につながる。
【0056】
排ガスライン72は、流体収容室416から排出されるガスを流体収容室418に導入するためのものである。排ガスライン72の一端(上流側端)は流体収容室416に連通しており、排ガスライン72の他端(下流側端)は流体収容室418に連通している。
【0057】
本実施形態の熱交換器4Bにおいては、排ガスライン71を介して乾燥炉3からの排ガスが流体収容室415に導入されると、当該排ガスは、複数の伝熱管42の内部を通過し、流体収容室418内の排ガスを加熱した後、流体収容室416に入り排ガスライン72から上部の流体収容室418に導かれる。したがって、
図3の熱交換器4の伝熱管42外側の空間は液体熱媒の収容室(流体収容室417)であったのに対して、
図6の熱交換器4Bの伝熱管42外側の空間は排ガスライン72に通ずるガスの収容室(流体収容室418)になっている。これは、流体収容室416で排ガスが液体熱媒によって露点まで冷却され、凝縮水であるドレン水をドレンライン74で排出した後、流体収容室418で再加熱させるためである。
【0058】
本実施形態の液化天然ガス気化システムX2の稼働時には、LNG貯槽1を介して液化天然ガス(LNG)が排出され、当該LNGは、LNG移送ライン62を通って気化器2に導入される。気化器2内においてLNGは蒸発気化して天然ガスとなり、当該天然ガスはガスライン65を通じて乾燥炉3(ガスバーナ31)に送られる。ガスバーナ31では天然ガスが燃焼し、当該燃焼ガスが乾燥炉3内を通流する。乾燥炉3から排出される排ガスは、排ガスライン71を介して熱交換器4B(流体収容室415)に導入される。熱交換器4Bに導入された排ガスは、流体収容室415を経て複数の伝熱管42の内部を通過し、流体収容室416に送られる。複数の伝熱管42を通過した排ガスは、流体収容室416にてコイル状の伝熱管43と衝突し、伝熱管43の内部に流れる液体熱媒を加熱しながら排ガスライン72に排出される。
【0059】
伝熱管43に衝突して加熱された排ガスは、当該排ガス中に含まれる水分が凝縮し、その凝縮水は胴体41の下部のドレンライン74から外部に排出される。排ガスの露点が80℃である場合、排ガス中の水蒸気の一部が凝縮し、このとき放出される凝縮熱が液体熱媒との熱交換に費やされ、排ガスライン72に排出されるガスの温度は例えば約79℃になる。
【0060】
排ガスライン72に排出されたガス(伝熱管通過ガス)は、その後、流体収容室418に導入され、
図6に示すように、当該流体収容室418において伝熱管42が延びる方向と交差する方向(図中左方)に流れ、相対的に高温である伝熱管42内の排ガスによって加熱され、排ガスライン73に排出される。排ガスライン73を流れるガスは、スタック732を介して大気中へ放出される。
【0061】
本実施形態では、熱交換器4Bにおいて液体熱媒との熱交換を経て排ガスライン72に排出されたガス(伝熱管通過ガス)は、再び熱交換器4B(流体収容室418)に導入される(
図6参照)。例えば、乾燥炉3から約100℃前後で排出された排ガスが排ガスライン71を通流する際に放熱して85℃程度まで温度降下していた場合、伝熱管42を流れる高温ガスと熱交換器4Bから一旦排出された79℃の排ガス(伝熱管通過ガス)とを再び熱交換させることができる。ここで、流体収容室418を流れるガスは、水分飽和状態から再加熱され、例えば79℃から84℃まで温度上昇する。流体収容室418を通過したガスについては、排ガスライン73に排出され、ブロア731で誘引されてスタック732を経た後、白煙を出さずに大気中へ放出される。即ち、排ガスライン72に排出されたガス(伝熱管通過ガス)は、含有水分の一部が凝縮することによって水分飽和となっており、そのまま大気中に放出すると白煙を生ずるところ、本実施形態では、流体収容室418にて相対的に低温の排ガス(伝熱管通過ガス)を再過熱することにより、白煙の発生を防止することができる。
【0062】
本実施形態の液化天然ガス気化システムX2によれば、
図1、
図3の構成に基づいて上述したのと同様に、乾燥炉3から排出される低温の排ガスが保持する熱量を低温の液体熱媒で効率よく回収して、気化器2で常時LNGを蒸発気化させて天然ガス燃料を乾燥炉3に送ることができる。