(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明における、液晶組成物の波長分散の制御方法について説明する前に、逆波長分散重合性液晶化合物の構造の特徴と逆波長分散特性の発現の原理について、特許文献2に示した発明を例にとって説明する。なお、本発明で逆波長分散重合性液晶材料という場合は、フィルム等にした場合に逆波長分散特性を有する材料となり得る化合物や組成物をいい、液晶組成物とは逆波長分散重合性液晶化合物のような液晶化合物を含む組成物をいう。本発明の液晶組成物は、通常は逆波長分散特性を有し、また、通常は重合性を有する。
【0019】
特許文献2に記載されている発明では、下記に示すような分子構造の逆波長分散重合性液晶化合物が例示されている。この逆波長分散重合性液晶化合物にはメソゲン1aとメソゲン1bの2つのメソゲン骨格が存在し、互いに交差していることがわかる。なお、上記2つのメソゲンをあわせて1つのメソゲンとすることもできるが、本発明では、2つのメソゲンに分けて表記することにする。
【0021】
逆波長分散重合性液晶化合物において、メソゲン1aの長軸方向における屈折率をn1、メソゲン1bの長軸方向における屈折率をn2とする。屈折率n1の絶対値や波長分散はメソゲン1aの分子構造に由来する。また、屈折率n2の絶対値や波長分散はメソゲン1bの分子構造に由来することになる。なお液晶相において、逆波長分散重合性液晶化合物はメソゲン1aの長軸方向を回転軸として回転運動を行っている。よって、ここでいう屈折率n1、n2とは、回転体としての屈折率を表すものとする。
【0022】
メソゲン1a、メソゲン1bの分子構造に由来して、屈折率n1の絶対値は屈折率n2の絶対値より大きい。加えて、屈折率n1、n2の波長分散はともに順波長分散で、かつ屈折率n1は屈折率n2と比較して小さな屈折率波長分散n(450)/n(550)を有する。ここで、屈折率が順波長分散であるとは、波長λが大きくなるほど屈折率の絶対値が小さくなることをいう。これを図に示したものが
図1である。なお、以下の図面は模式的なものである。実際の図面は、液晶化合物を均一配向した状態で硬化させて、フィルム状にした状態での波長分散特性を測定することで作成できる。ここで均一配向とはメソゲン1aとメソゲン1bの光軸角度が一定になるように配向することをいう。
【0023】
上記の結果、屈折率n1(グラフ中の線2)と屈折率n2(グラフ中の線3)の差である逆波長分散重合性液晶化合物の複屈折Δnの波長分散特性(グラフ中の線4)は、
図1に示す通り、逆波長分散特性を示すことになる。ここで、複屈折が逆波長分散特性を示すとは、波長λが大きくなるほど複屈折が大きくなることを表す。
【0024】
このように、複屈折Δnの波長分散の大きさはメソゲン1aとメソゲン1bの分子構造に大きく依存することになる。そのため、複屈折Δnの波長分散の大きさを変化させたい場合は、メソゲン骨格の構造を変化させることが求められるので、大きな困難をともなっていた。
【0025】
次に、本発明における液晶組成物の波長分散の制御方法について説明する。
【0026】
最初に、液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を小さくする方向へ変化させる方法について、
図2、
図3を用いて説明する。ここで複屈折Δnの波長分散を小さくする方向とは、Δn(450)/Δn(550)が大きくかつΔn(650)/Δn(550)が小さくなる方向のことである。また、Δn(450)は、波長λ=450nmにおける液晶組成物の複屈折Δnを示す。さらに、Δn(550)は、波長λ=550nmにおける液晶組成物の複屈折Δnを示す。また、Δn(650)は、波長λ=650nmにおける液晶組成物の複屈折Δnを示す。
【0027】
図2は逆波長分散重合性液晶化合物に添加物モノマーとして順波長分散重合性液晶化合物を添加した液晶組成物について、その屈折率の波長分散の変化を示した図である。
ここで逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向の屈折率をne(図中の線5)とする。逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向とは、屈折率の絶対値が大きい方向、すなわち、逆波長分散重合性液晶化合物におけるメソゲン1aの長軸方向を示す。
さらに、逆波長分散重合性液晶化合物の進相軸方向の屈折率をno(図中の線6)とする。逆波長分散重合性液晶化合物の進相軸方向とは、遅相軸方向と垂直方向、すなわち、逆波長分散重合性液晶化合物におけるメソゲン1bの長軸方向を示す。
さらに、順波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向の屈折率をne1’(図中の線7)とする。
また、順波長分散重合性液晶化合物の進相軸方向の屈折率をno1’(図中の線8)とする。
このとき、波長λ=380〜780nmにおける範囲において、ne、no、ne1’、no1’は下記(式4)の関係にある。
ne<ne1’かつ no>no1’ (式4)
【0028】
逆波長分散重合性液晶化合物と添加した順波長分散重合性液晶化合物の間に親和性があると、両者は互いの遅相軸方向を平行にして均一配向する。その結果、均一配向した直後または硬化した状態において、液晶組成物の遅相軸方向の屈折率ne1”と進相軸方向の屈折率no1”は、下記(式5)、(式6)に従う。
ne1”= ne*a/(a+b)+ne1’*b/(a+b) (式5)
no1”= no*a/(a+b)+no1’*b/(a+b) (式6)
ここで、「a」は逆波長分散重合性液晶化合物の部数、「b」は順波長分散重合性液晶化合物の部数を表す。また、前記の部数は、モル基準の量を表す。
【0029】
このように(式4)で表される屈折率を有する順波長分散重合性液晶化合物を加えることによって、逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向及び進相軸方向の屈折率が、(式5)及び(式6)のように変化する。その結果、液晶組成物の複屈折Δn1”は逆波長分散重合性液晶化合物単体と比較して大きくなる。その結果、複屈折Δn1”の波長分散は複屈折Δnと比較して小さくなり(
図3)、下記(式7)を満たす。
Δn(450)/Δn(550)<Δn1”(450)/Δn1”(550)かつ
Δn(650)/Δn(550)>Δn1”(650)/Δn1”(550) (式7)
ここで、Δn1”(450)は、波長λ=450nmにおける液晶組成物の複屈折Δn1”を示す。また、Δn1”(550)は、波長λ=550nmにおける液晶組成物の複屈折Δn1”を示す。さらに、Δn1”(650)は、波長λ=650nmにおける液晶組成物の複屈折Δn1”を示す。
【0030】
続いて、液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を大きくする方向へ変化させる方法について、
図4、
図5を用いて説明する。ここで複屈折Δnの波長分散を大きくする方向とは、Δn(450)/Δn(550)が小さくかつΔn(650)/Δn(550)が大きくなる方向のことである。
【0031】
図4は逆波長分散重合性液晶に添加物モノマーとして順波長分散重合性液晶化合物を添加した液晶組成物について、その屈折率の波長分散の変化を示した図である。
ここで逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向の屈折率をne(図中の線5)とする。
また、逆波長分散重合性液晶化合物の進相軸方向の屈折率をno(図中の線6)とする。
さらに、順波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向の屈折率をne2’(図中の線7)とする。
また、順波長分散重合性液晶化合物の進相軸方向の屈折率をno2’(図中の線8)とする。
このとき、波長λ=380nm〜780nmにおける範囲において、ne、no、ne2’、no2’は下記(式8)の関係にある。
ne>ne2’かつ no<no2’ (式8)
【0032】
逆波長分散重合性液晶化合物と添加した順波長分散重合性液晶化合物の間に親和性があると、両者は互いの遅相軸方向を平行にして均一配向する。その結果、液晶組成物の遅相軸方向の屈折率ne2”と進相軸方向の屈折率no2”は、下記(式9)、(式10)に従う。
ne2”= ne*a/(a+b)+ne2’*b/(a+b) (式9)
no2”= no*a/(a+b)+no2’*b/(a+b) (式10)
ここで、「a」は逆波長分散重合性液晶化合物の部数、「b」は順波長分散重合性液晶化合物の部数を表す。また、前記の部数は、モル基準の量を表す。
【0033】
このように(式8)で表される屈折率を有する順波長分散重合性液晶化合物を加えることによって、逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向及び進相軸方向の屈折率が、(式9)及び(式10)のように変化する。その結果、液晶組成物の複屈折Δn2”は逆波長分散重合性液晶単体と比較して小さくなる。その結果、複屈折Δn2”の波長分散は複屈折Δnと比較して大きくなり(
図6)、下記(式11)を満たす。
Δn(450)/Δn(550)>Δn2”(450)/Δn2”(550) かつ
Δn(650)/Δn(550)<Δn2”(650)/Δn2”(550)(式11)
ここで、Δn2”(450)は、波長λ=450nmにおける液晶組成物の複屈折Δn2”を示す。また、Δn2”(550)は、波長λ=550nmにおける液晶組成物の複屈折Δn2”を示す。さらに、Δn2”(650)は、波長λ=650nmにおける液晶組成物の複屈折Δn2”を示す。
【0034】
なお、液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を大きくする方向へ変化させる際、添加物モノマーとして、液晶化合物でない(屈折率異方性のない)樹脂モノマーを、逆波長分散重合性液晶の液晶性を損なわない範囲で添加してもよい。前記の樹脂モノマーは、液晶化合物と異なり屈折率異方性がないため、逆波長分散重合性液晶化合物を含む液晶組成物中に添加された状態でもあらゆる方向に同一の屈折率n’を有する。そこで、下記(式12)に示すような屈折率を有する樹脂モノマーを選んでもよい。
ne>n’>no (式12)
【0035】
次に逆波長分散重合性液晶化合物を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を制御する方法について説明する。上述した通り、(式4)を満たす屈折率を有する添加物モノマーを加えることで逆波長分散重合性液晶を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散は小さくなり、(式8)もしくは(式12)を満たす屈折率を有する添加物モノマーを加えることで逆波長分散重合性液晶化合物を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散は大きくなる。この複屈折Δnの波長分散の変化の大きさを制御するには、添加物モノマーの添加量を制御する。
【0036】
例えば、逆波長分散重合性液晶を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を少しだけ小さくするには、(式4)を満たす屈折率を有する添加物モノマーを少しだけ加えうる。また、逆波長分散重合性液晶を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散をさらに小さくするには、(式4)を満たす屈折率を有する添加物モノマーをさらに加えうる。
【0037】
一方、逆波長分散重合性液晶を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を少しだけ大きくするには、(式8)もしくは(式12)を満たす屈折率を有する添加物モノマーを少しだけ加えうる。また、逆波長分散重合性液晶を含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散をさらに大きくするには、(式8)もしくは(式12)を満たす屈折率を有する添加物モノマーをさらに加えうる。
【0038】
また、上記の説明では添加物モノマーは一種類のみ加えているが、(式4)を満たす添加物モノマーを複数種加えてもよく、(式8)もしくは(式12)を満たす添加物モノマーを複数種加えてもよい。さらには、(式4)を満たす添加物モノマーと(式8)もしくは(式12)を満たす添加物モノマーを両方加えてもよい。このように添加物モノマーを含む液晶組成物において、(式4)を満たす添加物モノマーの添加量と(式8)もしくは(式12)を満たす添加物モノマーの添加量を制御することで、さらなる繊細な複屈折Δnの波長分散の制御が可能になる。
【0039】
(逆波長分散重合性液晶化合物)
本発明において、逆波長分散重合性液晶化合物とは、液晶組成物として配合し均一配向させた際に、液晶相を呈し、かかる液晶相を呈した状態で、液晶相における分子の均一配向を維持したまま重合し、重合体となりうる液晶化合物であって、得られた重合体が逆波長分散を示す重合性液晶化合物である。
【0040】
本発明において、逆波長分散重合性液晶化合物は、その分子中に主鎖メソゲンと、主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを有する。逆波長分散重合性液晶化合物が均一配向した状態において、側鎖メソゲンは、主鎖メソゲンと異なる方向に配向しうる。したがって、光学異方性層において、主鎖メソゲンの光軸及び側鎖メソゲンの光軸は異なる方向に配向しうる。そのような配向により、前記光学異方性層の複屈折Δn
L’が逆波長分散特性を呈しうる。ここで、Δn
L’は、本発明の液晶組成物を硬化させてなる光学異方性層の複屈折を表す。
【0041】
逆波長分散重合性液晶化合物の例としては、下記式(I)で示される化合物(以下において「化合物(I)」という場合がある。)を挙げることができる。
【0043】
逆波長分散重合性液晶化合物が化合物(I)である場合、基−Y
3−A
2−Y
1−A
1−Y
2−A
3−Y
4−が主鎖メソゲンとなり、一方、基>A
1−C(Q
1)=NM(A
x)A
yが側鎖メソゲンとなり、基A
1は、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンの両方の性質に影響する。
【0044】
式中、Y
1〜Y
6はそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。
【0045】
ここで、R
1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
R
1の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
R
1としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0046】
これらの中でも、Y
1〜Y
6は、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であるのが好ましい。
【0047】
G
1、G
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の2価の脂肪族基としては、鎖状構造を有する脂肪族基;飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等の脂環式構造を有する脂肪族基;等が挙げられる。
【0048】
その置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられ、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0049】
また、該脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。
これらの中でも、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−C(=O)−が好ましい。
【0050】
ここで、R
2は、前記R
1と同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0051】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−NR
2−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−NR
2−CH
2−、−CH
2−NR
2−CH
2−CH
2−、−CH
2−C(=O)−CH
2−等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G
1、G
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH
2)
4−〕、及び、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕が特に好ましい。
【0053】
Z
1、Z
2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z
1及びZ
2のアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0054】
Z
1及びZ
2の炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
3−CH=CH−CH
2−等が挙げられる。
【0055】
なかでも、Z
1及びZ
2としては、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、それぞれ独立して、CH
2=CH
2−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、又は、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−であるのが好ましく、CH
2=CH
2−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−であるのがより好ましく、CH
2=CH
2−であるのが更に好ましい。
【0056】
A
xは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
本発明において、「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、及び硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を意味する。ここで、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造とは、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造を意味する。また、ヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を有する化合物の例としては、チオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0057】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を有するものであってもよい。
【0058】
前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等の縮合環の芳香族複素環;等が挙げられる。
【0059】
A
xが有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
4;−C(=O)−OR
4;−SO
2R
4;等が挙げられる。ここでR
4は、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0060】
また、A
xが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよい。
なお、A
xの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
yにて同じである。)。
【0061】
A
xの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;等が挙げられる。
【0062】
A
yは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、−C(=O)−R
3、−SO
2−R
6、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
【0063】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基の炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0064】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
4;−C(=O)−OR
4;−SO
2R
4;等が挙げられる。ここでR
4は前記と同じ意味を表す。
【0065】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基の炭素数2〜12のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。
【0066】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0067】
A
yの、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
4;−C(=O)−OR
4;−SO
2R
4;等が挙げられる。ここでR
4は前記と同じ意味を表す。
【0068】
A
yの、−C(=O)−R
3で表される基において、R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。これらの具体例は、前記A
yの、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0069】
A
yの、−SO
2−R
6で表される基において、R
6は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、フェニル基、又は、4メチルフェニル基を表す。
R
6の、炭素数1〜12のアルキル基、及び炭素数2〜12のアルケニル基の具体例は、前記A
yの、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0070】
前記A
x及びA
yが有する芳香環は置換基を有していてもよい。また、前記A
xとA
yは一緒になって、環を形成していてもよい。
【0071】
A
yの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記A
xで例示したのと同様のものが挙げられる。
また、A
yが有する芳香環は、任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、前記A
xが有する芳香環の置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0072】
A
x、A
yが有する芳香環の具体例を以下に示す。但し、本発明においては、A
x、A
yが有する芳香環は以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記化合物中、[−]は芳香環の結合手を示す(以下にて同じである。)。
【0077】
上記式中、Eは、NR
5、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R
5は、水素原子;又は、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;を表す。
【0079】
上記式中、X、Y、Zは、それぞれ独立して、NR
5、酸素原子、硫黄原子、−SO−又は、−SO
2−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。R
5は前記と同じ意味を表す。
【0080】
A
x、A
yが有する芳香環は、上記した芳香環の中でも、下記のものが好ましい。
【0083】
A
x、A
yが有する芳香環は、下記のものが特に好ましい。
【0085】
また、A
xとA
yは一緒になって、環を形成していてもよい。その中でも、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の不飽和複素環、又は、炭素数6〜30の不飽和炭素環を形成していることが好ましい。
炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(I)中の
【0087】
として表される部分を示すものである。
【0091】
式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。
また、これらの環は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−R
4、−C(=O)−OR
4、−SO
2R
4等が挙げられる。ここで、R
4は前記と同じ意味を表す。
【0092】
A
xとA
yに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上18以下であるのがより好ましい。
【0093】
A
x、A
yの好ましい組合わせとしては、A
xが炭素数4〜30の芳香族基で、A
yが水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である組合わせ、及び、A
xとA
yが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成しているものが挙げられる。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基として好ましいものは、シクロアルキル基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
【0094】
更に好ましい組み合わせとしては、A
xが下記構造でありA
yが水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基である組合わせである。
【0097】
特に好ましい組み合わせとしては、A
xが下記構造であり、A
yが水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基である。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基として好ましいものは、シクロアルキル基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子である組み合わせである。式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。
【0099】
A
1は置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であっても、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましい。なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y
1、Y
2を便宜上記載している(Y
1、Y
2は、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0101】
なかでも、A
1としては、下記に示す式(A11)〜(A22)で表される基がさらに好ましく、式(A11)で表される基が特に好ましい。
【0103】
A
1の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記A
Xの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。A
1としては、置換基を有さないものが好ましい。
【0104】
A
2、A
3はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
A
2、A
3の芳香族基は単環のものであっても、多環のものであってもよい。
A
2、A
3の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0106】
上記A
2、A
3の具体例として挙げた有機基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR基;等が挙げられる。ここでRは、炭素数1〜6のアルキル基である。これらの中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0107】
これらの中でも、A
2、A
3としては、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A23)及び(A24)で表される基が好ましく、置換基を有していてもよい式(A23)で表される基がより好ましい。
【0109】
Q
1は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記A
Xで例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Q
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
【0110】
化合物(I)のより具体的な例としては、下記式(I)−1〜(I)−3で表される化合物を挙げることができる。
【0112】
(化合物(I)の製造方法)
化合物(I)は、例えば、下記に示す反応により製造することができる。
【0114】
(式中、Y
1〜Y
6、G
1、G
2、Z
1、Z
2、A
x、A
y、A
1〜A
3、Q
1は、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(3)で表されるヒドラジン化合物(ヒドラジン化合物(3))を、式(4)で表されるカルボニル化合物(カルボニル化合物(4))と、〔ヒドラジン化合物(3):カルボニル化合物(4)〕のモル比で、1:2〜2:1、好ましくは1:1.5〜1.5:1の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする式(I)で示される化合物を製造することができる。
【0115】
この場合、(±)−10−カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸;等の酸触媒を添加して反応を行うことができる。酸触媒を添加することで反応時間が短縮され、収率が向上する場合がある。酸触媒の添加量は、カルボニル化合物(4)1モルに対して、通常0.001〜1モルである。また、酸触媒はそのまま添加してもよいし、適当な溶液に溶解させた溶液として添加してもよい。
【0116】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;NM−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0117】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラジン化合物(3)1gに対し、通常1〜100gである。
【0118】
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0119】
ヒドラジン化合物(3)は、次のようにして製造することができる。
【0121】
(式中、A
x、A
yは、前記と同じ意味を表す。X
aは、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0122】
すなわち、式(2a)で表される化合物とヒドラジン(1)を、適当な溶媒中、(化合物(2a):ヒドラジン(1))のモル比で、1:1〜1:20、好ましくは1:2〜1:10で反応させて、対応するヒドラジン化合物(3a)を得ることができる。さらに、ヒドラジン化合物(3a)と式(2b)で表される化合物を反応させることで、ヒドラジン化合物(3)を得ることができる。
【0123】
ヒドラジン(1)としては、通常1水和物のものを用いる。ヒドラジン(1)は、市販品をそのまま使用することができる。
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;NM−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0124】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラジン1gに対し、通常1〜100gである。
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0125】
また、ヒドラジン化合物(3)は、次のように、従来公知の方法を用いて、ジアゾニウム塩(5)を還元することによっても製造することができる。
【0127】
式(5)中、A
x、A
yは、前記と同じ意味を表す。X
b−は、ジアゾニウムに対する対イオンである陰イオンを示す。X
b−としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等の無機陰イオン;ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等の有機陰イオン;等が挙げられる。
【0128】
上記反応に用いる還元剤としては、例えば、金属塩還元剤が挙げられる。
金属塩還元剤とは一般に低原子価金属を含む化合物、もしくは金属イオンとヒドリド源からなる化合物である(「有機合成実験法ハンドブック」1990年社団法人有機合成化学協会編 丸善株式会社発行810ページを参照)。
金属塩還元剤としては、例えば、NaAlH
4、NaAlH
n(OR
7)
m、LiAlH
4、iBu
2AlH、LiBH
4、NaBH
4、SnCl
2、CrCl
2、TiCl
3等が挙げられる。ここで、m、nはそれぞれ独立して1〜3の整数を表し、m+n=4である。R
7は炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、iBuとは、イソブチル基を表す。
【0129】
還元反応においては公知の反応条件を採用することができる。例えば、特開2005−336103号公報、新実験化学講座 1978年 丸善株式会社発行 14巻、実験化学講座 1992年 丸善株式会社発行 20巻、等の文献に記載の条件で反応を行うことができる。
また、ジアゾニウム塩(5)は、アニリン等の化合物から常法により製造することができる。
【0130】
カルボニル化合物(4)は、典型的には、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)NH−、−NHC(=O)−)の形成反応を任意に組合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合又は修飾することにより製造することができる。
【0131】
エーテル結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(i)式:D1−hal(halはハロゲン原子を表す。以下にて同じ。)で表される化合物と、式:D2−OMet(Metはアルカリ金属(主にナトリウム)を表す。以下にて同じ。)で表される化合物とを混合して縮合させる(ウイリアムソン合成)。なお、式中、D1及びD2は任意の有機基を表す(以下にて同じ。)
(ii)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iii)式:D1−J(Jはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iv)式:D1−OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
(v)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物とを、銅あるいは塩化第一銅存在下、混合して縮合させる(ウルマン縮合)。
【0132】
エステル結合及びアミド結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(vi)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、脱水縮合剤(NM−ジシクロヘキシルカルボジイミド等)の存在下に脱水縮合させる。
(vii)式:D1−COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:D1−CO−halで表される化合物を得、このものと式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
(viii)式:D1−COOHで表される化合物に酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得た後、このものに、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物を反応させる。
(ix)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0133】
より具体的には、例えば、カルボニル化合物(4)のうち、前記式(4)中、式:Z
2−Y
6−G
2−Y
4−A
3−Y
2−で表される基が、式:Z
1−Y
5−G
1−Y
3−A
2−Y
1−で表される基と同一であり、Y
1が、Y
11−C(=O)−O−で表される基である化合物(4’)は、以下に示す反応により製造することができる。
【0135】
(式中、Y
3、Y
5、G
1、Z
1、A
1、A
2、Q
1は、前記と同じ意味を表す。Y
11は、Y
11−C(=O)−O−がY
1となる基を表す。Y
1は前記と同じ意味を表す。Lは、水酸基、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0136】
上記反応においては、式(6)で表されるジヒドロキシ化合物(化合物(6))と式(7)で表される化合物(化合物(7))とを、(化合物(6):化合物(7))のモル比で、1:2〜1:4、好ましくは1:2〜1:3の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(4’)を得ることができる。
【0137】
化合物(7)が、式(7)中、Lが水酸基の化合物(カルボン酸)である場合には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下に反応させることにより、目的物を得ることができる。
脱水縮合剤の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1〜3モルである。
【0138】
また、化合物(7)が、式(7)中、Lがハロゲン原子の化合物(酸ハライド)である場合には、塩基の存在下に反応させることにより、目的物を得ることができる。
用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1〜3モルである。
化合物(7)が、式(7)中、Lがメタンスルホニルオキシ基、又はp−トルエンスルホニルオキシ基の化合物(混合酸無水物)である場合もハロゲン原子の場合と同様である。
【0139】
上記反応に用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N−メチルピロリドン、NM−ジメチルホルムアミド、NM−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ジヒドロキシ化合物(6)1gに対し、通常1〜50gである。
【0140】
化合物(7)の多くは公知化合物であり、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)NH−、−NHC(=O)−)の形成反応を任意に組合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合又は修飾することにより製造することができる。
【0141】
いずれの反応においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、蒸留法等の公知の分離又は精製手段を施すことにより、目的物を単離することができる。
【0142】
目的とする化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0143】
また、逆波長分散重合性液晶化合物の例としては、下記式(II)で示される化合物(以下において「化合物(II)」という場合がある。)を挙げることができる。
【0145】
式中、Y
1w〜Y
8wはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1w−C(=O)−、−C(=O)−NR
1w−、−O−C(=O)−NR
1w−、−NR
1w−C(=O)−O−、−NR
1w−C(=O)−NR
1w−、−O−NR
1w−、又は、−NR
1w−O−を表す。
【0146】
ここで、R
1wは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
R
1wの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
R
1wとしては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0147】
本発明の重合性化合物においては、Y
1w〜Y
8wは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であるのが好ましい。
【0148】
G
1w、G
2wはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の二価の脂肪族基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基;炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数4〜20のシクロアルケンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等の二価の脂肪族基;等が挙げられる。
【0149】
G
1w、G
2wの二価の脂肪族基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。なかでも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0150】
また、前記脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2w−C(=O)−、−C(=O)−NR
2w−、−NR
2w−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R
2wは、前記R
1wと同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記脂肪族基に介在する基としては、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−が好ましい。
【0151】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−NR
2w−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−NR
2w−CH
2−、−CH
2−NR
2w−CH
2−CH
2−、−CH
2−C(=O)−CH
2−等が挙げられる。
【0152】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G
1w、G
2wは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH
2)
4−〕、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕、オクタメチレン基〔−(CH
2)
8−〕、及び、デカメチレン基〔−(CH
2)
10−〕が特に好ましい。
【0153】
Z
1w、Z
2wはそれぞれ独立して、無置換又はハロゲン原子で置換された炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z
1w及びZ
2wのアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0154】
Z
1w及びZ
2wの炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−CH
2−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
3−CH=CH−CH
2−等が挙げられる。
【0155】
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z
1w及びZ
2wとしては、それぞれ独立して、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、又は、CH
2=C(CH
3)−CH
2−CH
2−であるのが好ましく、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−であるのがより好ましく、CH
2=CH−であるのが特に好ましい。
【0156】
A
xwは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
【0157】
A
xwの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を有するものであってもよい。
【0158】
前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チアゾロピリジン環、オキサゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、オキサゾロピラジン環、チアゾロピリダジン環、オキサゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、オキサゾロピリミジン環等の縮合環の芳香族複素環;等が挙げられる。
【0159】
A
xwが有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
5w;−C(=O)−OR
5w;−SO
2R
11w;等が挙げられる。ここで、R
5wは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は、炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、R
11wは後述するR
4wと同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0160】
また、A
xwが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよく、不飽和環であっても、飽和環であってもよい。
なお、A
xwの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
ywにて同じである。)。
【0161】
A
xwの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;等が挙げられる。
【0162】
A
xwの好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明においては、A
xwは以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「−」は環の任意の位置からのびる結合手を表す(以下にて同じである。)。
(1)芳香族炭化水素環基
【0168】
上記式中、E
wは、NR
6w、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R
6wは、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0170】
上記式中、X
w、Y
w、Z
wは、それぞれ独立して、NR
7w、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO
2−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO
2−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。R
7wは、前記R
6wと同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0172】
(上記式中、X
wは前記と同じ意味を表す。)
(3)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基
【0174】
(4)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基
【0176】
(5)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基
【0178】
上記したA
xwの中でも、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数4〜30の芳香族複素環基であることが好ましく、下記に示すいずれかの基であることがより好ましく、
【0181】
下記に示すいずれかの基であることが更に好ましい。
【0183】
A
xwが有する環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R
12w;−C(=O)−OR
12w;−SO
2R
6w;等が挙げられる。ここでR
12wは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。なかでも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0184】
また、A
xwが有する環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよい。
なお、A
xwの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するA
ywにて同じである。)。
【0185】
A
ywは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3w、−SO
2−R
4w、−C(=S)NH−R
9w又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、R
3wは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12の芳香族炭化水素基を表し、R
4wは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表し、R
9wは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。
【0186】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
【0187】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
【0188】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0189】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の炭素数2〜20のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基等が挙げられる。
【0190】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、少なくとも1個がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルコキシ基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;−C(=O)−R
13w;−C(=O)−OR
13w;−SO
2R
8w;−SR
10w;−SR
10wで置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。ここで、R
13w及びR
10wはそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表し、R
8wは前記R
4wと同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0191】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R
7w;−C(=O)−OR
7w;−SO
2R
8w;水酸基;等が挙げられる。ここでR
7w、R
8wは前記と同じ意味を表す。
【0192】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基と同様な置換基が挙げられる。
【0193】
A
ywの、−C(=O)−R
3wで表される基において、R
3wは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12の芳香族炭化水素基を表す。これらの具体例は、前記A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0194】
A
ywの、−SO
2−R
4wで表される基において、R
4wは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
R
4wの、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数2〜20のアルケニル基の具体例は、前記A
ywの、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0195】
A
ywの、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記A
xwで例示したのと同様のものが挙げられる。
【0196】
これらの中でも、A
ywとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R
3w、−SO
2−R
4w、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基で表される基が好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、−C(=O)−R
3w、−SO
2−R
4wで表される基が更に好ましい。ここで、R
3w、R
4wは前記と同じ意味を表す。
【0197】
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10wが好ましい。ここで、R
10wは前記と同じ意味を表す。
A
ywの、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基の置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基が好ましい。
【0198】
また、A
xwとA
ywは一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環が挙げられる。
【0199】
前記炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(II)中の
【0201】
として表される部分を示すものである。
【0205】
(式中、X
w、Y
w、Z
wは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、A
xwが有する芳香環の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0206】
A
xwとA
ywに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上20以下であるのがより好ましく、6以上18以下であるのが更に好ましい。
【0207】
A
xwとA
ywの好ましい組み合わせとしては、
(α)A
xwが炭素数4〜30の、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であり、A
ywが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10wのいずれかである組み合わせ、及び、
(β)A
xwとA
ywが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成しているもの、
が挙げられる。ここで、R
10wは前記と同じ意味を表す。
【0208】
A
xwとA
ywのより好ましい組み合わせとしては、
(γ)A
xwが下記構造を有する基のいずれかであり、A
ywが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10wのいずれかである組み合わせである。ここで、R
10wは前記と同じ意味を表す。
【0211】
(式中、X
w、Y
wは、前記と同じ意味を表す。)
A
xwとA
ywの特に好ましい組み合わせとしては、
(δ)A
xwが下記構造を有する基のいずれかであり、A
ywが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR
10wのいずれかである組合せである。下記式中、X
wは前記と同じ意味を表す。ここで、R
10wは前記と同じ意味を表す。
【0213】
A
1wは置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であっても、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がさらに好ましい。
なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y
1w、Y
2wを便宜上記載している(Y
1w、Y
2wは、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0215】
これらの中でも、A
1wとしては、下記に示す式(A
w11)〜(A
w25)で表される基がより好ましく、式(A
w11)、(A
w13)、(A
w15)、(A
w19)、(A
w23)で表される基がさらに好ましく、式(A
w11)、(A
w23)で表される基が特に好ましい。
【0217】
A
1wの、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記A
Xwの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。A
1wとしては、置換基を有さないものが好ましい。
【0218】
A
2w、A
3wはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等が挙げられる。
【0219】
炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基としては、シクロプロパンジイル基;シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基等のシクロブタンジイル基;シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基等のシクロペンタンジイル基;シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロへキサンジイル基;シクロヘプタン−1,2−ジイル基、シクロヘプタン−1,3−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基等のシクロへプタンジイル基;シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,3−ジイル基、シクロオクタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロオクタンジイル基;シクロデカン−1,2−ジイル基、シクロデカン−1,3−ジイル基、シクロデカン−1,4−ジイル基、シクロデカン−1,5−ジイル基等のシクロデカンジイル基;シクロドデカン−1,2−ジイル基、シクロドデカン−1,3−ジイル基、シクロドデカン−1,4−ジイル基、シクロドデカン−1,5−ジイル基等のシクロドデカンジイル基;シクロテトラデカン−1,2−ジイル基、シクロテトラデカン−1,3−ジイル基、シクロテトラデカン−1,4−ジイル基、シクロテトラデカン−1,5−ジイル基、シクロテトラデカン−1,7−ジイル基等のシクロテトラデカンジイル基;シクロエイコサン−1,2−ジイル基、シクロエイコサン−1,10−ジイル基等のシクロエイコサンジイル基;等が挙げられる。
【0220】
炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基としては、デカリン−2,5−ジイル基、デカリン−2,7−ジイル基等のデカリンジイル基;アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基等のアダマンタンジイル基;ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,5−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,6−ジイル基等のビシクロ[2.2.1]へプタンジイル基;等が挙げられる。
【0221】
これらの二価の脂環式炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記A
Xwの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0222】
これらの中でも、A
2w、A
3wとしては、炭素数3〜12の二価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基がより好ましく、下記式(A
w31)〜(A
w34)
【0224】
で表される基がさらに好ましく、前記式(A
w32)で表される基が特に好ましい。
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、Y
1w、Y
3w(又はY
2w、Y
4w)と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型、トランス型の立体異性体が存在し得る。例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基の場合には、下記に示すように、シス型の異性体(A
w32a)とトランス型の異性体(A
w32b)が存在し得る。
【0226】
本発明においては、シス型であってもトランス型であっても、あるいはシス型とトランス型の異性体混合物であってもよいが、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
【0227】
A
4w、A
5wはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
A
4w、A
5wの芳香族基は単環のものであっても、多環のものであってもよい。
A
4w、A
5wの好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0229】
上記A
4w、A
5wの二価の芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR
14w基;等が挙げられる。ここでR
14wは、炭素数1〜6のアルキル基である。なかでも、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0230】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、A
4w、A
5wは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A
w41)、(A
w42)及び(A
w43)で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい式(A
w41)で表される基が特に好ましい。
【0232】
Q
1wは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記A
Xwで例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Q
1wは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
【0233】
化合物(II)は、前述の化合物(I)と同様な手順で得ることができる。
【0234】
(添加物モノマー)
本発明における添加物モノマーは、逆波長分散重合性液晶化合物を含む液晶組成物に加えられるモノマーであり、逆波長分散液晶化合物と重合や架橋をすることのできる化合物である。
【0235】
液晶組成物は、添加物モノマーとして、添加物モノマーA又は添加物モノマーBを含む。添加物モノマーA及び添加物モノマーBは、いずれか一方だけを用いてもよく、両方を組み合わせて用いてもよい。
【0236】
逆波長分散重合性液晶化合物中に添加物モノマーAを分散させたとき、波長λ=380nmから780nmの範囲で、添加物モノマーAは下記式(i)を満たす。
また、逆波長分散重合性液晶化合物中に添加物モノマーBを分散させたとき、波長λ=380nmから780nmの範囲で、添加物モノマーBは下記式(ii)を満たす。
ne>nea かつ no<noa 式(i)
ne<neb かつ no>nob 式(ii)
【0237】
前記の式(i)及び式(ii)において、neは、逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向の屈折率を表す。また、noは、逆波長分散重合性液晶化合物の進相軸方向の屈折率を表す。さらに、neaは、逆波長分散重合性液晶化合物に分散したときの添加物モノマーAのne方向の屈折率を表す。また、noaは、逆波長分散重合性液晶化合物に分散したときの添加物モノマーAのno方向の屈折率を表す。さらに、nebは、逆波長分散重合性液晶化合物に分散したときの添加物モノマーBのne方向の屈折率を表す。また、nobは、逆波長分散重合性液晶化合物に分散したときの添加物モノマーBのno方向の屈折率を表す。
【0238】
(式4)から(式12)を用いた前記の説明から分かるように、式(i)を満たす添加物モノマーAを含む液晶組成物の複屈折Δnは、逆波長分散重合性液晶化合物の複屈折Δnと比べて小さくなる。そのため、添加物モノマーAを含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を、逆波長分散重合性液晶化合物の複屈折Δnの波長分散と比べて大きくできる。
また、式(ii)を満たす添加物モノマーBを含む液晶組成物の複屈折Δnは、逆波長分散重合性液晶化合物の複屈折Δnと比べて大きくなる。そのため、添加物モノマーBを含む液晶組成物の複屈折Δnの波長分散を、逆波長分散重合性液晶化合物の複屈折Δnの波長分散と比べて小さくできる。
したがって、液晶組成物中の添加物モノマーA及び添加物モノマーBの量を制御することにより、液晶組成物の波長分散の大きさを制御することができる。
【0239】
また、添加物モノマーAの屈折率nea及びnoa並びに添加物モノマーBの屈折率neb及びnobと、前記の(式4)から(式12)に係る屈折率との対応は、次の通りである。
添加物モノマーAの屈折率neaは(式8)に係る屈折率ne2’又は(式12)に係る屈折率n’に対応し、添加物モノマーAの屈折率noaは(式8)に係る屈折率no2’又は(式12)に係る屈折率n’に対応する。
また、添加物モノマーBの屈折率nebは(式4)に係る屈折率ne1’に対応し、添加物モノマーBの屈折率nobは(式4)に係る屈折率no1’に対応する。
【0240】
前記のように、式(i)及び式(ii)に係る屈折率nea、noa、neb及びnobは、逆波長分散重合性液晶化合物中に添加物モノマーA又はBを分散させたときの屈折率である。この屈折率は、必ずしも、逆波長分散重合性液晶化合物中に添加物モノマーA又はBを分散させた状態で測定しなくてもよい。逆波長分散重合性液晶化合物中に添加物モノマーA又はBを分散させた状態での逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向及び進相軸方向並びに添加物モノマーA又はBの遅相軸方向及び進相軸方向が判明している場合には、逆波長分散重合性液晶化合物中に分散させない状態の添加物モノマーA又はBから、前記の添加物モノマーAの屈折率nea及びnoa、並びに、添加物モノマーBの屈折率neb及びnobを測定してもよい。例えば、添加物モノマーA又はBとして液晶化合物を用いた場合、通常は、液晶化合物の遅相軸方向と逆波長分散重合性液晶化合物の遅相軸方向とは液晶組成物において平行となる。したがって、このように液晶組成物中での遅相軸方向が判明している場合には、逆波長分散重合性液晶化合物中に添加物モノマーA又はBを分散させない状態で測定した添加物モノマーA又はBの屈折率から、前記の屈折率nea、nob、neb及びnobを求めることができる。
【0241】
添加物モノマーBの場合、式(ii)を満たすモノマーであれば特に制限はないが、順波長分散重合性液晶化合物であるものが挙げられ、特に、BASF社製重合性液晶化合物LC1057、下記化合物(2)などが挙げられる。
添加物モノマーAの場合、(式i)を満たすモノマーであれば特に制限はないが、順波長分散重合性液晶化合物や液晶化合物でない(屈折率異方性のない)樹脂モノマーを使用することができる。具体的には、下記化合物(3)などが挙げられる。
【0242】
逆波長分散重合性液晶化合物に対する添加物モノマーの量比は、複屈折Δnの波長分散の変化の大きさの制御の必要性に応じて変化させることができるが、通常は、逆波長分散重合性液晶性化合物100重量部に対して、添加物モノマーを好ましくは1重量部以上100重量部以下、より好ましくは5重量部以上50重量部以下である。
【0245】
(液晶組成物の他の成分、光学異方性層を有する位相差板の製造方法)
続いて、本発明における逆波長分散重合性液晶化合物を用いた位相差板の製造方法について説明する。その手段については種々考えられるが、支持体上に逆波長分散重合性液晶化合物並びに添加物モノマーA又はBを含む液晶組成物としての溶液を塗工し、露光により硬化させるというものが簡便である。これにより、支持体上に光学異方性層を形成することができるので、この光学異方性層を備える位相差板を得ることができる。
【0246】
溶液は、上記逆波長分散重合性液晶化合物、添加物モノマーA及びB並びに溶媒の他、キラル剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、多官能モノマーあるいはオリゴマー、樹脂、界面活性剤、貯蔵安定剤、密着向上剤その他必要な材料を含みうる。これらは、当該液晶組成物が液晶性を失わない範囲でかつ、波長分散特性を損なわない範囲で加えることができる。
【0247】
溶媒としては、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶媒等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
溶媒は、逆波長分散重合性液晶化合物100重量部に対して、100重量部〜1000重量部、好ましくは150重量部〜600重量部の量で用いることができる。
【0248】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。
光重合開始剤は、逆波長分散重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部、好ましくは0.5重量部〜10重量部の量で用いることができる。
【0249】
上記光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。
増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で含有させることができる。
【0250】
さらに逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液には、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。
多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物を用いうる。多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(NM−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオールは、1種または2種以上混合して用いることができる。
多官能チオールは、逆波長分散重合性液晶化合物100重量部に対して、0.2〜150重量部、好ましくは0.2〜100重量部の量で用いることができる。
【0251】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0252】
さらに逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、逆波長分散重合性液晶化合物100重量部に対して、0.1〜10重量部の量で含有させることができる。
【0253】
また逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液には、支持体との密着性を高めるために、シランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。
シランカップリング剤は、逆波長分散重合性液晶化合物100重量部に対して、0.01〜100重量部の量で含有させることができる。
【0254】
次にこの溶液を支持体上に塗工する。この際、支持体の表面には必要に応じて配向処理を施しておく。塗工には、スピンコート法、スリットコート法、凸版印刷法、スクリーン印刷、平版印刷、反転印刷、グラビア印刷その他の印刷方法又はこれらの印刷法にオフセット方式を組み合わせた方法、インキジェット法、バーコート法その他既知の成膜法が適用可能である。
【0255】
支持体の種類は、特に限定されず、有機又は無機の公知の材料からなる板又はフィルムとしうる。また、支持体としては、透明の支持体を用いることが好ましい。有機材料の例としてはポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、及びアペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、及びポリエーテルスルホンが挙げられる。無機材料の例としてはシリコン、ガラス、及び方解石が挙げられる。コスト及び取り扱い性の良好さから、有機材料が好ましい。プラスチックフィルム等の光透過性フィルム、ガラス板あるいは樹脂板などが好適である。
【0256】
支持体の面上には、配向膜を設けうる。その場合、かかる配向膜上に、光学異方性層を形成しうる。配向膜は、液晶組成物中の液晶化合物を、面内で一方向に配向させうる。
配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリマーを含有するものである。配向膜は、このようなポリマーを含有する溶液(配向膜用液晶組成物)を支持体上に膜状に塗工し、乾燥させ、そして一方向にラビング処理等することで、得ることができる。
配向膜の厚さは0.001〜5μmであることが好ましく、0.001〜1μmであることがさらに好ましい。
【0257】
支持体又は配向膜の面に、必要に応じてラビング処理を施すことができる。かかるラビング処理を施すことにより、液晶組成物中の液晶性を呈しうる化合物を均一配向させる配向能を、かかる面に賦与することができる。
ラビング処理の方法は、特に制限されないが、例えばナイロン等の合成繊維、木綿等の天然繊維からなる布又はフェルトを巻き付けたロールで一定方向に支持体又は配向膜の面を擦る方法が挙げられる。ラビング処理した時に発生する微粉末(異物)を除去して処理された面を清浄な状態とするために、ラビング処理後に、処理された面をイソプロピルアルコール等によって洗浄することが好ましい。
また、ラビング処理する方法以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、配向膜に液晶層を面内で一方向に配向規制する機能を持たせることができる。
また、それ以外の方法としてAr
+などのイオンビームを支持体に対して斜めに入射させることにより、支持体に均一配向能を賦与させるイオンビーム配向法を使用することもできる。
【0258】
かかる塗工により液晶組成物の層を形成し、層内の液晶化合物を、所望の態様に均一配向させうる。すなわち、塗工した液晶組成物の配向を均一化しうる。かかる配向は、塗工により直ちに達成される場合もあるが、必要に応じて、塗工の後に、加温などの配向処理を施すことにより達成される場合もある。このときの加熱温度は、液晶相−等方相転移温度をTNとした場合に、通常はTN−50℃〜TN+10℃の範囲である。好ましくはTN−10℃〜TN+10℃の範囲である。さらに好ましくはTN−5℃〜TN℃の範囲である。
【0259】
液晶組成物の層の乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、溶媒を除去することができる。
【0260】
液晶組成物の層中の重合性化合物の重合の方法としては、重合性化合物及び重合開始剤等の、液晶組成物の成分の性質に適合した方法を適宜選択しうる。例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び熱重合法が挙げられる。加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。活性エネルギー線としては、紫外線や電子線、可視光線、赤外線等の放射線のうち1種類あるいは複数種類を使用することができる。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、赤外線及び電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。紫外線照射時の温度は、30℃以下とすることが好ましい。紫外線照射強度は、通常、0.1mW/cm
2〜1000mW/cm
2の範囲、好ましくは0.5mW/cm
2〜200mW/cm
2の範囲である。重合により、液晶組成物の均一化した配向状態が固定化される。
【0261】
(光学異方性層)
光学異方性層において、逆波長分散重合性液晶化合物の主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンは、異なる方向に配向する。光学異方性層における「逆波長分散重合性液晶化合物のメソゲン」とは、逆波長分散重合性液晶化合物の分子内に存在していたメソゲンであって、逆波長分散重合性液晶化合物が重合することにより生成した重合体内のメソゲンである。このように、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンが異なる方向に配向することにより、光学異方性層の複屈折Δn
L’が逆波長分散特性を有し、それにより、良好な位相差板としての特性を発現しうる。
光学異方性層の複屈折Δn
L’が逆波長分散特性を有することは、位相差解析装置(AXOMETRICS社製の製品名「AxoScan」等)を用いて、様々な波長λにおいて複屈折Δn
L’を測定することにより確認しうる。
【0262】
光学異方性層は、上述したように、本発明の液晶組成物を硬化させてなる層である。したがって、この光学異方性層は液晶組成物の配向状態と同様の配向状態を有しうるので、液晶組成物と同様にして波長分散を制御することが可能である。そのため、光学異方性層の製造方法において液晶組成物中の添加物モノマーA又は添加物モノマーBの含有量を制御することにより、光学異方性層の波長分散の大きさを制御することが可能である。
【0263】
例えば、逆波長分散重合性液晶化合物と添加物モノマーAを含む液晶組成物からなる光学異方性層では、液晶組成物を硬化させてなる光学異方性層の複屈折Δn
L’の波長分散を、逆波長分散重合性液晶化合物のみを均一配向させて形成される光学異方性層の複屈折Δn
Lの波長分散と比べて大きくできる。したがって、前記の複屈折Δn
L’及び複屈折Δn
Lは、下記式(iii)の関係を示しうる。
Δn
L(450)/Δn
L(550)>Δn
L’(450)/Δn
L’(550)かつ
Δn
L(650)/Δn
L(550)<Δn
L’(650)/Δn
L’(550) 式(iii)
【0264】
また、例えば、逆波長分散重合性液晶化合物と添加物モノマーBを含む液晶組成物からなる光学異方性層では、液晶組成物を硬化させてなる光学異方性層の複屈折Δn
L’の波長分散を、逆波長分散重合性液晶化合物のみを均一配向させて形成される光学異方性層の複屈折Δn
Lの波長分散と比べて小さくできる。したがって、前記の複屈折Δn
L’及び複屈折Δn
Lは、下記式(iv)の関係を示しうる。
Δn
L(450)/Δn
L(550)<Δn
L’(450)/Δn
L’(550)かつ
Δn
L(650)/Δn
L(550)>Δn
L’(650)/Δn
L’(550) 式(iv)
【0265】
前記の式(iii)及び式(iv)において、Δn
L(450)は波長λ=450nmにおける複屈折Δn
Lを示し、Δn
L(550)は波長λ=550nmにおける複屈折Δn
Lを示し、Δn
L(650)は波長λ=650nmにおける複屈折Δn
Lを示す。また、Δn
L’(450)は波長λ=450nmにおける複屈折Δn
L’を示し、Δn
L’(550)は波長λ=550nmにおける複屈折Δn
L’を示し、Δn
L’(650)は波長λ=650nmにおける複屈折Δn
L’を示す。
【0266】
光学異方性層の厚さは、特に限定されず、リターデーションなどの特性を所望の範囲とできるよう適宜調整することができる。具体的には、厚さの下限は0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、一方厚さの上限は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0267】
(位相差板:その他の構成要素)
本発明の位相差板は、上に述べた光学異方性層のみからなってもよく、又は必要に応じてその他の層を有していてもよい。例えば、光学異方性層の製造に用いた支持体、配向膜等の部材を、剥離せずそのまま備えた状態で、位相差板として用いてもよい。この場合、光学異方性層以外の層は、通常は光学的に等方な層とすることができる。任意の層のさらなる例としては、各層間を接着する接着層、フィルムの滑り性を良くするマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚層等が挙げられる。
【0268】
(画像表示装置)
本発明の画像表示装置は、前記本発明の位相差板を備える。本発明の画像表示装置において、位相差板は、直線偏光子と組み合わされ、円偏光板として設けられていてもよい。
本発明の画像表示装置の例としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、及びSED(表面電界)表示装置を挙げることができるが、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置が特に好ましい。
【0269】
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式、バーチカルアラインメント(VA)方式、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)方式、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)方式、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)方式、ツイステッドネマチック(TN)方式、スーパーツイステッドネマチック(STN)方式、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)方式などが挙げられる。中でもインプレーンスイッチング方式及びバーチカルアラインメント方式が好ましく、インプレーンスイッチング方式が特に好ましい。インプレーンスイッチング方式の液晶セルは視野角が広いが、位相差板を適用することにより視野角を更に広げることが可能である。
【0270】
本発明の画像表示装置は、前記本発明の位相差板を1枚のみ備えてもよく2枚以上を備えてもよい。本発明の画像表示装置において、前記本発明の位相差板は、液晶セル等の、他の構成要素に、接着剤を介して貼付することにより設けうる。
【実施例】
【0271】
以下、本発明の実施の形態について記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明で用いる材料は光に対して極めて敏感であるため、自然光などの不要な光による感光を防ぐ必要があり、全ての作業を黄色、または赤色灯下で行なうことは言うまでもない。なお、実施例および比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。
【0272】
(製造例1) 化合物1の合成
【0273】
【化55】
【0274】
〈ステップ1:中間体Aの合成〉
【0275】
【化56】
【0276】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド 20g(144.8mmol)、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSH社製) 105.8g(362.0mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン 5.3g(43.4mmol)、及びN−メチルピロリドン200mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC) 83.3g(434.4mmol)を加え、25℃にて12時間攪拌した。反応終了後、反応液を水1.5リットルに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液からロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1(体積比))により精製し、白色固体として中間体Aを75g得た(収率:75.4%)。
構造は
1H−NMRで同定した。
【0277】
1H−NMR(400MHz,CDCl3,TMS,δppm):10.20(s,1H)、8.18−8.12(m,4H)、7.78(d,1H,J=2.8Hz)、7.52(dd,1H,J=2.8Hz,8.7Hz)、7.38(d,1H,J=8.7Hz)、7.00−6.96(m,4H)、6.40(dd,2H,J=1.4Hz,17.4Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.4Hz)、5.82(dd,2H,J=1.4Hz,10.6Hz)、4.18(t,4H,J=6.4Hz)、4.08−4.04(m,4H)、1.88−1.81(m,4H)、1.76−1.69(m,4H)、1.58−1.42(m,8H)
【0278】
〈ステップ2:化合物1の合成〉
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ1で合成した中間体A 10.5g(15.3mmol)、2−ヒドラジノベンゾチアゾール3.0g(18.3mmol)、及びテトラヒドロフラン(THF)80mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、(±)−10−カンファースルホン酸 18mg(0.08mmol)を加え、25℃にて3時間撹拌した。反応終了後、反応液を10%重曹水800mlに投入し、酢酸エチル100mlで2回抽出した。酢酸エチル層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液からロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:2(体積比))により精製し、淡黄色固体として化合物1を8.0g得た(収率:62.7%)。目的物の構造は
1H−NMR、マススペクトルで同定した。
【0279】
1H−NMR(500MHz,DMSO−d6,TMS,δppm):12.30(br,1H)、8.19(s,1H)、8.17−8.12(m,4H)、7.76(d,1H,J=3.0Hz)、7.68(d,1H,J=7.5Hz)、7.45−7.39(m,3H)、7.28(t,1H,J=8.0Hz)、7.18−7.14(m,4H)、7.09(t,1H、J=8.0Hz)、6.33(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.18(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.944(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、5.941(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.14−4.10(m,8H)、1.80−1.75(m,4H)、1.69−1.63(m,4H)、1.53−1.38(m,8H)
LCMS(APCI):calcd for C
46H
47N
3O
10S:833[M+];Found:833
【0280】
〈相転移温度の測定〉
化合物1を10mg計量し、固体状態のままで、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板2枚に挟んだ。この基板をホットプレート上に載せ、50℃から200℃まで昇温した後、再び50℃まで降温した。昇温、降温する際の組織構造の変化を偏向光学顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE LV100POL型)で観察した。その結果、昇温の過程において、102℃において固相からネマチック液晶相に転移し、165℃においてさらに等方性液体相に転移した。一方降温の過程において、140℃で等方性液体相からネマチック液晶相に転移し、50℃以下においてさらに固層に転移した。
【0281】
[比較例1]
まず、比較例として波長分散制御を行っていない逆波長分散重合性液晶化合物を用いた位相差板の製造方法とその光学特性を説明し、続いて実施例として波長分散制御を行った逆波長分散重合性液晶化合物を含む液晶組成物を用いた例について説明する。
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合し、孔径0.45μmのフィルタで濾過して逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液を得た。
逆波長分散重合性液晶化合物:化合物1 19.3部
光重合開始剤:イルガキュア−379(BASFジャパン株式会社製) 0.6部
界面活性剤:フタージェント209F 1%溶液 (ネオス株式会社製) 5.8部
溶媒:シクロペンタノン 74.3部
【0282】
光学的に等方な支持体(COPゼオノアフィルム、商品名「ZF16」、日本ゼオン株式会社製)の一方の面を、ラビングすることにより配向処理を行った。かかる面上に、上記逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液を、スピンコーターで乾燥膜厚が1.4μmになるように塗工した。ホットプレートにて120℃で2分間加熱乾燥し、複層物を得た。
次に当該液晶配向基板にメタルハライドランプを用いて紫外線を露光した。紫外線の照射量は、波長λ=365nmにおいて照度16mW/cm
2で露光量を100mJ/cm
2とした。これにより支持体、及びその上に設けられた膜厚1.4μmの光学異方性層からなる位相差板を得た。
【0283】
<屈折率の波長分散測定>
作製した位相差板について、Metricon社製の屈折率測定装置:プリズムカプラにて遅相軸方向と進相軸方向における屈折率測定を行った。波長λ=407nm、532nm、633nmにおける屈折率を測定し、得られた値をCauchyモデルに適用することにより、波長分散特性を算出した。その結果を
図6に示す。波長λ=550nmにおける値はne=1.708、no=1.610となった。
【0284】
<複屈折Δnの波長分散測定>
作製した位相差板について、AXOMETRICS社製の位相差解析装置:AxoScanにて面内位相差Reの波長分散特性の測定を行った。Δn=Re/膜厚の関係からΔnを算出し、Δn(450)/Δn(550)=0.92、Δn(650)/Δn(550)=1.01を得た。
【0285】
[実施例1]
下記表1に示す組成物1、組成物2、組成物3と名付けた各種混合物を均一になるように攪拌混合し、孔径0.45μmのフィルタで濾過して逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液を得た。位相差板の製造は比較例と同様に行った。ここで、添加物モノマーとして用いたLC1057は、化合物1に分散させて均一配向した状態において、LC1057の遅相軸方向と化合物1の遅相軸方向とが平行になることが判明している。
【0286】
【表1】
【0287】
<屈折率の波長分散測定>
支持体(COPゼオノアフィルム、商品名「ZF16」、日本ゼオン株式会社製)の一方の面を、ラビングすることにより配向処理を行った。かかる面上に、添加物モノマーLC1057 20部をシクロペンタノン 80部に溶解した溶液を、スピンコーターで乾燥膜厚が1.4μmになるように塗工した。ホットプレートにて120℃で2分間加熱乾燥し、複層物を得た。次に当該複層物にメタルハライドランプを用いて紫外線を露光した。紫外線の照射量は、波長λ=365nmにおいて照度16mW/cm
2で露光量を100mJ/cm
2とした。Metricon社製の屈折率測定装置:プリズムカプラにて遅相軸方向と進相軸方向における、LC1057の屈折率測定を行った。その結果、λ=380〜780nmにおける全波長領域において、遅相軸方向の屈折率は化合物1より大きく、進相軸方向の屈折率は化合物1より小さいことを確認した。波長λ=550nmにおける屈折率はne=1.763、no=1.551であった。
【0288】
続いて、各液晶組成物の遅相軸方向と進相軸方向における屈折率測定を行った。その結果を
図7に示す。添加物モノマーの添加量が増加するに従い、遅相軸方向の屈折率はより大きく、進相軸方向の屈折率はより小さくなることが確認できた。この結果より、添加物モノマーの添加量により液晶組成物の屈折率を制御できていることが示唆される。
【0289】
<複屈折Δnの波長分散測定>
製造した位相差板について、AXOMETRICS社製の位相差解析装置:AxoScanにて波長分散特性の測定を行った。得られたRe波長分散特性と膜厚から、各組成のΔn(λ)/Δn(550)を算出した結果を
図8および下記表2に示す。添加物モノマーの添加量が増加するに従い、複屈折Δnの波長分散が小さくなっていることが確認できた。この結果より、添加物モノマーの添加量により液晶組成物の複屈折Δnの波長分散が制御できていることが示唆される。
【0290】
【表2】
【0291】
[実施例2]
下記表3の組成物4、組成物5と名付けた各種混合物を均一になるように攪拌混合し、0.45μmのフィルタで濾過して逆波長分散重合性液晶化合物を含む溶液を得た。位相差板の製造は比較例と同様に行った。
【0292】
【表3】
【0293】
【化57】
【0294】
<屈折率の波長分散測定>
添加物モノマー(化合物3)について実施例1と同様に、Metricon社製の屈折率測定装置:プリズムカプラにて遅相軸方向と進相軸方向における屈折率測定を行った。その結果、λ=380〜780nmにおける全波長領域において、遅相軸方向の屈折率は化合物1より小さく、進相軸方向の屈折率は化合物1より大きいことを確認した。また、化合物3は異方性がなく、波長λ=550nmにおける屈折率はne=1.635であった。
【0295】
<複屈折Δnの波長分散測定>
製造した位相板について、AXOMETRICS社製の位相差解析装置:AxoScanにて波長分散特性の測定を行った。得られたRe波長分散特性と膜厚から、各組成のΔn(λ)/Δn(550)を算出した結果を
図9および表4に示す。添加物モノマーの添加量が増加するに従い、複屈折Δnの波長分散が大きくなっていることが確認できた。この結果より、添加物モノマーの添加量により液晶組成物の複屈折Δnの波長分散が制御できていることが示唆される。
【0296】
【表4】