【文献】
INOUE, O et al.,Novel synthetic collagen fibers, poly(PHG), stimulate platelet aggregation through glycoprotein VI,FEBS Letters,2009年,Vol. 583,p. 81-87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、二重抗血小板療法試験(「DAPT(商標)」)を提供する。このDAPT(商標)試験は、異なる合成コラーゲン濃度に基づく独特の定量的機能性試験であり、アスピリンと同時に投与される異なる種類の抗血小板薬に対する患者の応答、ならびにアスピリンおよび抗血小板薬で阻害された患者の血小板の合わせた残留血小板反応性を測定するものである。試験結果は、アスピリンと抗血小板薬との組み合わせに対する患者の応答、ならびに個別の、および合わせた残留血小板活性についての情報を医師に提供する。本発明の二重抗血小板療法試験は、血小板凝集または血小板凝集の阻害を測定するために血小板凝集アッセイを用いるものであり、それは、これらに限定されないが、光透過型凝集測定法(LTA)(多血小板血漿(「PRP」)を用いる);フローサイトメトリー(全血を用いる);全血インピーダンス凝集測定法が挙げられる。
【0023】
本発明はまた、患者の血小板応答を経時でモニタリングすることによる二重療法レジメンでの患者コンプライアンスを試験するための方法も提供する。二重療法でのコンプライアンスとは、両方の医薬(アスピリンおよび抗血小板薬)を服用すること、およびそのリスク低減抗血小板効果を維持するために適切な時間にそれらを服用することの両方を意味する。二重療法では、抗血小板薬をプロセッシングする経路が、その他の薬物もプロセッシングすることから、第二の薬物(抗血小板薬)を調整することが重要であることも知られている。例えば、一方の薬物がチカグレロルである二重抗血小板療法を受けている患者では、スタチンの血漿中レベルが上昇し、治療レベルを超える場合がある。高用量のスタチン療法を避けることが、FDAによって推奨されている。ジゴキシンなどのその他の薬物は、患者が二重抗血小板療法を受けている場合、定期的にモニタリングを行う必要がある。ちなみに、アスピリン用量は、100mgを超えてはならず、そうでなければ、チカ
グレロルの効果が低下し、MACEのリスクが上昇する。
【0024】
残留血小板活性は、血小板が二重抗血小板薬療法に暴露された後の血小板の活性(機能性)である。100%の血小板を阻害する治療用量というものはなく、また、いかなる組み合わせであっても100%には到達しない(そのことが所望されてもいない)。この場合、主要有害臨床イベント(MACE)は、重篤な出血である。しかし、これらの非阻害血小板の反応性は、個人の完全な血小板応答およびMACEリスクを理解する上で重要な因子である。例えば、二重抗血小板薬療法が、血小板の80%を阻害することになる場合(80%の血小板が凝集せずに保持される)、依然として、極めて活性である場合は血栓性リスクを引き起こす可能性を持ち、血小板が活性ではなく凝集しない場合(従って凝血しない)は出血死のリスクを招く可能性を持つ個人の血小板が20%存在する。
【0025】
本発明は、個人が二重抗血小板薬療法レジメンを受けているか、またはその候補である場合に、抗血小板薬に対する個人の機能性応答を特定するための方法を提供する。二重抗血小板療法レジメンとは、アスピリン、および、典型的には、クロピドグレルなどの第一世代チエノピリジン、または増えつつあるチカグレロル、シクロペンチルトリアゾロピリミジンである少なくとも1つのその他の抗血小板薬の低用量、または患者特異的用量の投与を含む抗血小板凝集レジメンを意味する。
【0026】
アスピリンは、その活性成分がアセチルサリチル酸(ASAまたはASS)である一般的な薬物である。これは弱酸であり、胃および小腸の粘膜内層を通して吸収される。吸収後、ASAは、酢酸およびサリチル酸に(代謝)加水分解される。ほとんどの個人では、アスピリンは、血小板凝集の阻害を引き起こし、従って、アスピリンは、血小板凝集を最小限に抑えることが望まれる多くの治療法で用いられる。このような個人は、場合によっては正常または平均アスピリン感受性と称される。
【0027】
しかし、アスピリン服用後であっても血小板が依然として凝集を起こし、従って、アスピリン療法が有益でないか、または少なくとも単独では有益でない個人も存在する。このような個人は、多くの場合、アスピリン耐性もしくはアスピリン非応答性、または治療時血小板高反応性(患者が治療中であっても、血小板が依然として高い反応性を有する)と称される。この状況では、患者がアスピリンに非応答性であるのではなく、その治療法レジメンを順守しているか順守していないかを知ることが、医師にとって重要である。いくつかの研究から、患者の非コンプライアンスは、30〜70%の範囲であると報告されている。現時点では患者とのインタビューによってのみ記録される非コンプライアンスは、予後の変動性の主たる原因であり得る。
【0028】
さらに、非常に少ない用量のアスピリンであっても、重篤な出血病変に繋がる可能性のある血小板凝集の強い阻害が引き起こされる個人も存在する。このような個人は、アスピリン高感受性と称され得る。このような個人にとって、アスピリン療法は、出血のリスクが高まるため、得られる有益性よりも害の方が多い場合がある。アスピリン投与が、命に関わるアナフィラキシー反応を引き起こす個人もいる。このような個人は、アスピリン不耐性と称される。従って、患者/ドナーをアスピリンに対するその応答について試験して、患者の血小板凝集に対するアスピリンの持つ効果を見極め、アスピリン療法が望ましくない血小板凝集の予防に有用であるかどうか、またはアスピリン療法をまったく避けるべきか、もしくは場合によってはその代わりにアスピリン効果を高める別の薬物と共に用いられるべきかを判定することができることが非常に望ましい。
【0029】
低用量アスピリン(81mg)は、心臓発作または脳卒中に対する予防レジメンとして用いられる最も一般的な用量である。しかし、アスピリンの一日量は、81mgから500mgの範囲であってよい。「低用量アスピリン」として市販されている錠剤は、81m
gのアスピリンを含有している。1つの成人用濃度錠剤は、約325mgのアスピリンを含有しており、「最新」の特別高濃度のものは、500mgを含有している。患者に特異的なアスピリン用量は、81mgから500mgまで様々であり得る。抵抗性または非感受性は、これらの用量のいずれでも発生し得る。
【0030】
抗血小板薬は公知であり、これらに限定されないが、アブシキシマブ(Reopro(登録商標))、アナグレリド、(Agrylin(登録商標))、アピキソバン(Eliquis(登録商標))、クロピドグレル二硫酸塩(Plavix(登録商標))、エプチファバチド(Integrilin(登録商標))、チロフィバン(Aggrastat(登録商標))、ジピリダモール/アスピリン(ASA)、(Aggrenox(登録商標))、シロスタゾール(Pletal(登録商標));ジピリダモール(Persantine(登録商標))、チクロピジン(Ticlid(登録商標))、チカグレロル(Brilinta(登録商標))、アロキシプリン(アセチルサリチル酸アルミニウム)、カルバサラートカルシウム(アセチルサリチル酸カルシウムと尿素との混合物)、クロリクロメン、クロリンジオン、ジタゾール、インドブフェン、ピコタミド、ラマトロバン、テルボグレル、テルトロバン、およびトリフルサル、ならびにカングレロル、エリノグレル、プラスグレルなどのように様々な開発段階にある類似の薬物に分類されるものが挙げられる。アスピリンも抗血小板薬と見なされる。本出願の目的のために、「二重療法」と称する場合、それは、アスピリンおよび抗血小板薬(アスピリン以外)を含む治療法を意味する。
【0031】
本発明の方法は、個人が抗血小板薬およびアスピリンを経口摂取した後に、個人の血小板の凝集能力を試験することができる。加えて、本発明の方法は、アスピリンの血小板凝集に対する効果を「考慮に入れない」または「無視する」が、それでも抗血小板薬の血小板凝集に対する効果は測定するアッセイを提供する。さらに、本発明は、抗血小板薬の効果を「考慮に入れない」または「無視する」が、それでもアスピリンの血小板凝集に対する効果は測定するアッセイも提供する。
【0032】
ほとんどの個人では、種々の抗血小板薬が、様々な度合いの血小板凝集阻害を引き起こす。これらの個人は、平均/正常応答を有するとして、または「治療上の血小板反応性が低い」と称される場合がある。しかし、中には、標準用量の抗血小板薬を服用した後であっても、血小板が依然として凝集し、従って特定の抗血小板薬は、有益ではなく、血栓性リスクが制御されない、低下されない、または医師にとって明らかにならないという理由から、それがむしろ有害である個人も存在する。このような個人は、非応答性であると称される場合が多い。そのような個人の場合、医師は、医薬の用量を変更する、別の種類の薬物を試してみる、またはさらには、出血のリスクが妥当である場合は、第三の薬物を抗血小板レジメンに追加する可能性がある。さらには、非常に少ない用量の抗血小板薬であっても、場合によっては命に関わる、または死に至るものとなる出血病変に繋がる可能性のある血小板凝集の強い阻害が引き起こされる個人も存在する。このような個人は、高感受性と称され得る。このような個人にとって、特定の抗血小板薬療法は、このような種類の医薬の使用に付随する公知の出血リスクのために、得られる有益性よりも害の方が多い場合がある。従って、患者/個人を特定の抗血小板薬に対するその応答について試験して、患者の血小板凝集および残留血小板反応性に対する抗血小板薬の持つ効果を見極め、抗血小板薬療法が望ましくない血小板凝集の予防に有用であるかどうか、または出血、他の薬物療法による干渉、もしくはその他の重篤なリスクのために特定の抗血小板薬療法を避けるべきかどうかを判定することができることが非常に望ましい。
【0033】
加えて、これらの試験を用いて、処方された抗血小板薬の服用における患者コンプライアンスをモニタリングすることもできる。非コンプライアンスは、複数の研究において重大な事象として識別されており、患者にとって非常に高いリスクを持つ。上記のことは、
増加しつつある個別化医療重視への移行の基礎となるものであり、個々の患者に対する適正な薬物または薬物の組み合わせの選択の重要な要素である。DAPTは、この現時点で満たされていない必要性を満たすものである。
【0034】
本発明の実施形態は、フローサイトメトリー、および光透過型凝集測定法(LTA)、および全血インピーダンス凝集測定法が挙げられるがこれらに限定されない本技術分野で公知の方法を用いて、血小板凝集を試験することができる。フローサイトメトリーは、全血を用い、血小板凝集の検出に用いることができる。光透過型凝集測定法(LTA)による試験は、血小板凝集試験の「至適標準」として知られる。光透過型凝集測定法(LTA)は、アゴニスト(コラーゲン、ADP、エピネフリン、リストセチン、アラキドン酸、トロンビン、およびTRAPなど)の添加後の多血小板血漿(PRP)を通る光透過率の変化から(例:血小板凝集のないサンプルと比較して、血小板凝集が発生したサンプルでは、より多くの光が透過する)、複数の光学パラメーターを定量的に測定する生体外診断機能性アッセイである。比較のためにブランクが用いられることが多く、それは血小板が存在しないドナーの血漿であり、「少血小板血漿」(「PPP」)と称される場合が多い。
【0035】
アゴニストは、多血小板血漿に添加された場合に血小板の凝集を引き起こす物質である。本発明の方法において、アゴニストは、合成コラーゲンである。LTAAにおいて、PRPは、通常、キュベット中37℃で撹拌され、キュベットは、光路と光電セルとの間に配置される。アゴニストが多血小板血漿(PRP)に添加されると、血小板が凝集し、光の吸収が減少し、従って、光透過率が増加し、それが光電セルによって検出される。
【0036】
LTAAは、凝集パターンの形態のデータを作成する。LTAAは、x/y格子上にプロットされるパラメーターを作成する。x軸は、通常、直線時間軸である(通常は、分の単位)。y軸は、光透過率に基づく対数スケールである。この光透過率は、凝集パーセント(%)に対応する。
【0037】
LTAAパターンまたは曲線が作成されると(一次データ)、傾き(Sa);最大凝集;最終凝集;曲線下面積(AUC)、傾き下面積(AUS)などを含む種々の誘導される尺度が算出される。本発明のある実施形態では、AUCは、他よりも感受性が高いと思われることから、好ましい尺度の局面である。凝集の傾き(Sa)は、反応が進行する速度の尺度である。希釈プロファイル(DUP)は、試験混合物中の反応体濃度の増分変化である。コラーゲン試験において、DUPは、用いたコラーゲン試薬の濃度に対する変化から成る。分析において、その他の希釈プロファイルが定められ、用いられてよい。希釈プロファイルの傾き(Sd)は、一般的に、濃度変化の回帰分析である。反応プロファイルの傾き(Sr)は、一般的に、希釈の変化に対する反応の変化の回帰分析である。回帰分析は、一次、多項式、またはその他のモデルであってよい。曲線下面積(AUC)は、反応の開始から反応の終了までの算出されたグラフ上の量である受信者操作曲線であり、凝集および凝集の傾き(Sa)によって定められる。AUCパラメーターの使用は、(1もしくは複数の)DAPTアッセイの感受性を高める。これは、反応によって作り出される「パワー」と見なされ得る。
【0038】
本発明は、合成コラーゲンを用いるものであり、それは、生物学的コラーゲンよりも非常に感受性、効力、予測性、および正確性が高いことが分かり、さらには希釈が可能であり、そのことによって、従って極めて少ない量の合成コラーゲンの使用が可能となる。合成コラーゲンを用いることで、本発明の方法は、患者がアスピリンおよび抗血小板薬を経口摂取した後に、患者の血小板が凝集に抵抗する度合いを測定することができる。これは、医師が血栓性リスクを正確に評価し、MACEを回避し、患者の予後を改善することを可能とする重要な要素である。加えて、以下でより詳細に述べるように、合成コラーゲン
は希釈可能であり、多くの異なる濃度(従って、最大感受性のための適正濃度)で用いることができることから、残留血小板活性の試験のために、抗血小板薬が血小板活性に対して有する効果の試験のために、およびアスピリンが血小板活性に対して有する効果の試験のために、コラーゲンの種々の濃度を用いて試験を操作することができる。
【0039】
さらに、合成コラーゲンは、残留血小板反応性を定量的に評価する手段も提供し、これは、予後リスクの重要な指標であり、従って、血小板阻害と称される現在利用可能である定性的で非常に変動しやすいパラメーターよりも有用な情報である。凝集の阻害は、残留血小板反応性と同じではないことを指摘しておくことは重要である。最近まで、「血小板阻害」は、包括的な用語であり、抗血小板薬に暴露された際の血小板の挙動を理解するためのものとして認められる試験パラメーターであった。凝集パーセントまたは凝集阻害パーセントは、血小板凝集の報告の仕方であるため、容易に受け入れられた。従って、阻害は、単に、患者の元の凝集の結果と治療後の結果との間の相違であった。患者の元の凝集結果が82%であり、治療後の凝集結果が23%であった場合、阻害パーセントは、59%として報告された。この場合、残りの41%の血小板は阻害されなかったと仮定された。目標は、60から80%までの間の阻害パーセントを得ることであり、それは、そうであれば、患者が凝血も出血も起こさないことを意味するからである(理想的な予後)。しかし、この単純過ぎる構成または理解は、すべての状況を物語るものではなく、従って、残留血小板反応性(すなわち、経口摂取された医薬に対して応答しなかった血小板の反応性)を理解する手助けにはまったくならないことから、役に立たないことがここで明らかとなった。単に、阻害パーセントと残留血小板反応性との間の測定可能または予測可能である直接の関係性は存在しないのである。
【0040】
医師は、患者が同じ阻害パーセントを共有していたとしても、種々の治療に対する患者の予後が変動することを見出した。例えば、LTAにおいて41パーセント阻害を示す(従って、59%の凝集を有する)2人の患者は、非常に異なって応答する可能性がある(一方は、望ましくない凝血の問題を依然として有し、他方は、出血の問題を有するという可能性がある)。この観察結果により、阻害パーセントの数値(残留または非阻害血小板の数)が同一であり得るとしても、患者の応答は非常に異なり得るものであるということが次第に認識されてきた。このことから、最近、機能亢進および機能低下、ハイパーおよびハイポレスポンダー、血小板反応性、残留血小板反応性、ならびに治療上の血小板反応性が高い、などの用語が使用されるようになってきた。
【0041】
重要なことは、阻害パーセントが残留血小板反応性と同じものではないということである。血小板応答が、血小板機能に対する攻撃の測定可能な効果、すなわち、特定の薬物が血小板機能経路へどの程度干渉するかということであることは明らかである(血小板および代謝の遺伝的性質、薬物の作用および薬物動態、ならびにその他の因子のすべてが、残留血小板反応性に関与している)。本発明は、残留血小板反応性を測定することができ、それは、3つの事項を組み合わせて、基本的には単一の測定値にまとめたものである。第一のコンポーネントは、主薬物(例:抗血小板薬)に基づく用量応答であり、その薬物および用量に対する特定の患者の個々の応答に基づいて、部分的機能性または非機能性とされた患者の血小板の割合を示すものである。第二のコンポーネントは、残りの血小板の反応性の程度に関する。これらの血小板は、阻害された血小板と同様に、異なる医薬に対して、機能亢進、機能低下、または連続的に続くこれら2つの点の間のどこかであり得る。第三のコンポーネントは、第二の薬物(例:アスピリン)の効果についての情報を提供するものであり、これは、第一の薬物とまったく同じ考慮事項を有する。
【0042】
合成コラーゲンは、特定の濃度においてアスピリンに対して非感受性になるという特有の能力を有し、それによって、第二の抗血小板薬の評価が、その残留血小板反応性と共に可能となり、さらに、アスピリン感受性単独の評価を可能とする極めて低い濃度でも用い
ることができ(
図1および2参照)、さらには、その他の濃度において、残留血小板活性の評価に用いることもできる(抗血小板薬およびアスピリンの両方に応答して残った血小板の活性。
図1は、合成コラーゲン濃度が高い場合のアスピリン非感受性を示している。
図2は、合成コラーゲン濃度が低い場合のアスピリン感受性を示している。アスピリンに対する非感受性は、第二の抗血小板薬の測定における重要な因子であり、一方アスピリンに対する感受性は、残留血小板活性(2つの薬物のそれぞれの効果にも関わらず残った活性)の評価に必要である。
【0043】
1つの態様では、合成コラーゲンは、試験が、アスピリンが血小板活性に対して持つ可能性のある効果を無視または考慮に入れないが、それでも抗血小板薬の血小板活性に対する効果の測定は可能となる濃度で用いられる。この態様では、濃度は、40ng/mLよりも高く、好ましくは、50ng/mLよりも高い。
【0044】
別の態様では、合成コラーゲンは、試験が、抗血小板薬が血小板に対して持つ可能性のある効果を無視または考慮に入れないが、それでもアスピリンの血小板活性に対する効果の測定は可能となる濃度で用いられる。
【0045】
別の態様では、合成コラーゲンの量は、アスピリンおよび抗血小板薬へ暴露された後の血小板の残留活性を試験する濃度で用いられる。この態様では、合成コラーゲンの濃度は、約25ng/mLから約35ng/mLである。
【0046】
個人が抗血小板薬を摂取した後に発生する血小板凝集には範囲があり、このような範囲を用いて、抗血小板薬に対して高感受性応答、正常/平均応答、または非応答を有するとして個人を特徴付けることができる。特定の抗血小板薬に対する応答は個人によって異なり、従って、本発明は、抗血小板薬に対する応答、ならびに残留血小板反応性を測定する方法を提供する。個人が医薬に対して所望されるような応答を示さない場合、医師は次に、用量を変更するか、異なる抗血小板薬を処方するか、または第三の薬物を追加することさえも行い得る。
【0047】
本発明はまた、合成コラーゲンの再現性および感受性、ならびにある範囲の濃度にわたって再現可能に希釈されるその能力を利用する実施形態も提供し、従って、合成コラーゲンの複数の希釈を用いて(本明細書にて「希釈プロファイル」と称される)、個人が抗血小板薬および/またはアスピリンに対して感受性であるかどうかを医師が判断することだけでなく、個人の抗血小板薬および/またはアスピリン感受性状態(例:個人が抗血小板薬および/またはアスピリン感受性であるか、非応答性であるか、または高感受性である度合い)をさらに理解することの手助けとなる。この情報は、処方された治療レジメンにおける抗血小板薬および/またはアスピリンの適切な用量(患者に特異的な)を、または場合によっては第二もしくは第三の治療薬が必要であるかどうかを、または抗血小板薬および/もしくはアスピリンの使用を完全に断念して別の選択肢としての治療法を考慮すべきかどうかを医師が判断するために有用であり得る。
【0048】
合成コラーゲンの感受性をさらに利用し、希釈プロファイルの概念をさらに用いることで、本発明はまた、ドナーが抗血小板薬を経口摂取する前であっても、個人の抗血小板薬および/またはアスピリン感受性を予測することができる実施形態も提供する。アスピリンおよび抗血小板薬の非レスポンダー(抵抗性)ドナーは、合成コラーゲンの種々の濃度にわたって実施されるLTAAに対して独特の応答を有し(本明細書にて「跳ね返り」と称される)、それを用いて、アスピリンおよび抗血小板薬に対するドナーの応答を診断することができる。この、およびその他の実施形態は、本明細書にて以降でより詳細に考察する。
【0049】
上述のように、LTAAは、多血小板血漿(PRP)を用いるものであり、これは、適切に抗凝固剤処置された全血から調製される。個人の血液が回収され、遠心分離されてPRPが得られる。血小板は、非常に感受性が高く、PRPの調製の過程で容易に活性化され得ることから、個人の血液は、通常、特定の抗凝固剤を含有するチューブ中に回収される。例えば、静脈血液は、3.2%クエン酸ナトリウム中に、1:9の比率(9部の血液に対して1部の抗凝固剤)で採取、回収される。全血サンプルは、回収から4時間以内に処理されるべきであり、血小板を冷却すると、活性化して、誤った試験結果に繋がりかねないことから、血小板凝集試験用の血液サンプルは、室温で保存される必要がある。PRPは、通常、20℃、150〜200gにて10〜15分間の遠心分離によって調製されるか、またはPAP 8E用のPDQ遠心分離機セットなどの血小板機能遠心分離を用いることで、PRPは4分間以内に調製することができる。PRPは、注意深く取り出され、ストッパー付きプラスチックチューブに投入される。PRPは、室温で保存されなければならない。
【0050】
次に、少血小板血漿(PPP)を、残りの血漿を2700gで15分間さらに遠心分離することによって調製することができる。少血小板血漿(PPP)は、血小板やその他の細胞物質を含有しておらず、LTAサンプル分析においてブランクとして用いられることが多い。PDQ血小板機能遠心分離機を用いることによって、この時間は、約3分間まで短縮することができる。特定の実施形態では、典型的な45〜60分間ではなく、約5分間でPRPおよびPPPを繰り返し作製することができる特殊な遠心分離が用いられる。これによって、緊急の救命治療の状況または高処理量の臨床状況において、LTAAがさらにより実用的となる。迅速なサンプル調製に加えて、合成コラーゲンの特定の濃度の使用を用いることにより、緊急時に患者の包括的残留血小板反応性を得ることも可能である。
【0051】
PRPに血小板アゴニストを添加することは、通常は、血小板の活性化に繋がり、円盤形状からトゲのある球形状へのその形状の変化が引き起こされ、それは、一過性の光学密度の上昇を伴う。その例外は、形状変化を起こさないエピネフリン、および凝集ではなく血小板膠着を引き起こす、すなわち、フィブリノーゲンの結合が存在しないリストセチンである。アゴニストは、通常、強アゴニストまたは弱アゴニストに分類される。強アゴニスト(例:コラーゲン、トロンビン、TRAP、高濃度ADP、およびU46619(TxA2の類似体))は、血小板凝集、TxA2合成、および血小板顆粒分泌を直接誘発する。弱アゴニスト(例:低濃度ADPおおびエピネフリン)は、分泌を誘発することなく、血小板凝集を誘発する。
【0052】
一般的に、LTAは、37℃で実施される。凝集測定装置の較正は:1)光透過率0%に対応するPRP含有キュベット;および2)光透過率100%に対応するPPP含有の第二のキュベットによって行われる。血小板は、通常、活性化され(アゴニストによって)、互いに接触する場合にのみ凝集することから、試験の実施中は、撹拌する必要がある。撹拌を行わない場合、凝集が起こらないか、または少なくとも大きく減少する。
【0053】
本発明は、光透過型凝集測定法(「LTA」)において、生物源から得られるコラーゲンの代わりに、合成コラーゲンをアゴニストとして用いる。合成コラーゲンの使用により、生物学的コラーゲンの使用と比較した多くの予想外な有益性が提供され、それは本明細書にて記載される。
【0054】
特定の実施形態では、本発明のLTAAに用いられるLTAとして、Bio/DataのPAP 8E LTAが使用される(米国特許第7,453,555号参照)。
【0055】
通常、血小板自然凝集(spontaneous platelet aggregation;SPA)についての試験
が実施される。SPAは、健康な個人では稀であるが、機能亢進性血小板を持つ人で発生し、一部の血栓形成促進性状態、フォン・ヴィルブランド病(vWD)の一部のケース、一部の糖尿病患者、一部の脂質障害、および様々なその他の障害の独立したマーカーとしても認識されている。SPAの存在は、未希釈のPRPを凝集測定装置中に配置し、15分間撹拌することによって試験される。SPAの場合、PRPを希釈することでこれが破壊され得るものであり、血小板数が>200×10
9/Lに維持されている場合は、凝集試験を進めてよい。
【0056】
一般的に、約225μLのPRPが、凝集測定用試験キュベットに添加され、37℃に加温される。次に、25μLのアゴニストが添加され、応答が記録される。記録される典型的な読み取りまたは応答としては、一次凝集(「PA」)(通常は凝集量を示す値を提供する)、一次傾き(「PS」)(通常は凝集速度に関連する値を提供する)、および曲線下面積(「AUC」)(一般的にはPAとPSとの組み合わせに関連する値を提供する)が挙げられる。本技術分野で用いられる凝集測定分析器は、通常、これらの読み取りを、凝集のグラフ画像と共に提供する。各凝集測定装置またはシステムは、これらの値を少し異なった形で算出し、システムソフトウェアに埋め込まれた固有の式を用いる場合がある。
【0057】
例えば、最大凝集%は、ベースライン[凝集0%‐多血小板血漿]と少血小板血漿[凝集100%]との間の長さ[Y]を測定し、この数値を最大凝集[X]で除することによって算出され得る。従って、Y=100mmおよびX=89mmの場合は、最大凝集パーセント=X/Y=89%である。
【0058】
本発明の方法/アッセイでは、患者にアスピリンを経口摂取させ、その後に血液サンプルを採取する代わりに、まったくアスピリンを経口摂取する前に血液のサンプルを採取してよく、そのサンプルを、「アスピリン添加」(または「アスピリン化」)してもよい(すなわち、アスピリン溶液(アスピリンのリジン塩またはAspisol(登録商標)であってもよい)がPRPに添加され、続いて試験される)。本発明の方法/アッセイのすべてにおいて、患者がアスピリンを経口摂取してもよく、またはサンプルがアスピリン添加されてもよいと判断された。このことにより、患者がアスピリンを経口摂取して、アスピリンが患者の系内に入るまでの経過時間を持つ必要がないことから、試験を迅速に行うことができる。その代わりに、血液が採取されてPRPサンプルが得られ、一方がアスピリン添加され、他方がアスピリン添加されず、このようにして、2つのサンプルを並行して試験することも可能である。
【0059】
A.二重抗血小板薬療法を受けている個人における抗血小板薬に対する血小板感受性に関する試験(アッセイのこの段階ではアスピリンの効果を無視するが、別の段階で測定することができる)
本発明の1つの実施形態は、個人が二重抗血小板薬療法を受けている(すなわち、アスピリンおよび抗血小板薬を受けている)場合に、抗血小板薬に対する個人の血小板感受性を特定することができる試験を提供する。これらの実施形態では、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験がアスピリンの血小板凝集に対する効果を無視するが、それでも抗血小板薬の血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約50ng/mLから約500ng/mLの範囲であるか;または>40ng/mLであるか;または>50ng/mLであるか;または約40から約500ng/mLの範囲であるか;または約40から約400ng/mLの範囲であるか;または約40から300ng/mLの範囲であるか;または約40から約200ng/mLの範囲であるか;または約40から約100ng/mLの範囲であるか;または約40から約90ng/mLの範囲であるか;ま
たは約40から約80ng/mLの範囲であるか;または約40から約70ng/mLの範囲であるか;または約40から約60ng/mLの範囲であるか;または約50から約400ng/mLの範囲であるか;または約50から約300ng/mLの範囲であるか;または約50から約200ng/mLの範囲であるか;または約50から約100ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイである場合に用いられ、サンプルは、試験されるPRPサンプルである。しかし、それらは、他の分析器に用いられてもよく、フローサイトメーター、およびインピーダンス凝集測定装置、またはこれらの均等物が挙げられる。
【0060】
この方法は、光透過型アッセイまたはフローサイトメトリーなどの1つ以上の血小板凝集アッセイを実施することを含み、ここで、第一の多血小板サンプルまたは全血サンプルが個人から採取され、これが合成コラーゲンと混合されて、第一の処理サンプルが形成される。第一の処理サンプルでは、個人は、約24時間、好ましくは72〜96時間にわたって抗血小板薬を経口摂取していない。この趣旨は、個人が、血小板凝集試験に影響を与える抗血小板薬を自身の系内にまったく有していないことを確実にすることである。第一の処理サンプルは、血小板凝集について試験/測定され、経口摂取抗血小板薬の非存在下における個人の血小板凝集ベースラインレベルを特定するための第一の読み取りが得られる。LTAが用いられる場合、サンプルは、LTA凝集測定装置中に配置され、第一の処理サンプルを通る光透過率が得られ、第一の読み取りが得られる。
【0061】
特定の実施形態では、初期LTAAまたはその他の血小板凝集アッセイが、自然凝集について確認し、血小板が固有の機能亢進を有するかどうかについて試験するために実施されてよい。
【0062】
続いて、個人に抗血小板薬が投与され(個人は既にアスピリン療法を受けており、アスピリンを経口摂取したものと推定)、抗血小板薬を代謝させるのに充分な時間(例:少なくとも約2時間から約16時間)が経過した後、第二の多血小板血漿サンプルがドナーから採取される。第二の多血小板血漿サンプルに対して、これを合成コラーゲンで処理して第二の処理サンプルを形成することにより、LTAAなどの別の血小板凝集アッセイが実施される。血小板凝集が測定され、第二の読み取りが得られる。血小板凝集の測定に用いられるアッセイがLTAAである場合、第二のサンプルを通る光透過率が測定され、第二の読み取りが得られる。
【0063】
プロセス全体を通して同じ種類の血小板凝集アッセイが用いられることが好ましい。例えば、LTAAが第一の処理サンプルに用いられる場合、好ましくは、第二の処理サンプルにもLTAAが用いられる。
【0064】
経口摂取抗血小板薬なしでの血小板凝集のベースラインレベルの読み取りが、第二の処理サンプルの読み取り(抗血小板薬経口摂取後に得られる)と比較され、この比較の結果から、個人の抗血小板薬応答状態が特定される。例えば、個人が、ベースラインサンプルと比較して、抗血小板薬経口摂取後に(第二のサンプルにおいて)血小板凝集の著しい低下を示す場合、個人は、正常または平均抗血小板薬感受性を持つとして特徴付けられ得る。個人が、抗血小板薬服用後において血小板凝集にほとんど違いを示さない場合(すなわち、個人が抗血小板薬を経口摂取した後も、血小板は依然として凝集を起こした)、個人は、抗血小板薬非応答性であるとして特徴付けられ得る。個人が、抗血小板薬の経口摂取後に、血小板凝集のほとんど完全な欠如を示した場合、個人は、抗血小板薬高感受性であるとして特徴付けられ得るものであり、これはそれ自体、患者にとって非常に高リスクの状態である。
【0065】
特定の実施形態では、試験は、血小板凝集測定にLTAAを用いる。LTAAからの読
み取りは、傾き、一次凝集、曲線下面積、ラグフェイズ、脱凝集、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0066】
例えば、Bio/DataのPAP 8E凝集測定装置を用いる場合、および抗血小板薬高感受性個人に対して、50ng/mLの合成コラーゲン「試験内」濃度を用いる場合、PAに対するベースラインは、40%から100%の範囲である。PSに対するベースラインは、20から60の範囲である。AUCに対するベースラインは、300から700の範囲である。抗血小板薬後、AUCは、100から400の範囲となる。PS、PA、およびLPは、それぞれのベースラインと異なる。抗血小板薬感受性および抗血小板薬非レスポンダーは、ベースラインとの相違を示し;感受性個人は、より少ない凝集を示す。特定の実施形態では、このデータを、医師にとって有用である利用可能な形態へと組み合わせ、分類するアルゴリズムである。
【0067】
これらの試験において、個人は、試験のためにアスピリンも摂取していてよく、または摂取していなくてもよい。1つの実施形態では、個人は、ベースライン読み取りのために第一の血小板サンプルが採取される前はアスピリンを摂取しておらず、しかしその後、第二のアッセイが実施される前にアスピリンを摂取する。別の実施形態では、個人は、既にアスピリン療法を受けており、ベースライン読み取りの取得前にアスピリンを経口摂取しており、試験の過程にて、アスピリンの服用を継続した。この試験は、血小板へのアスピリンの効果に対して非感受性である濃度範囲の合成コラーゲンを用いていることから、個人がアスピリンを摂取しているかどうかは試験結果にとって無関係である。この試験の利点は、試験で見られる血小板凝集の阻害はすべて、アスピリンではなく抗血小板薬による血小板活性への効果によって発生しているということである。
【0068】
別の実施形態では、ベースライン読み取りの取得は行われない。この状況では、必須ではないが、個人が二重抗血小板薬療法を開始する前にこの個人に対して実施された過去の試験をベースライン読み取りとして用いることが望ましい場合がある。ベースラインが取得されない状況では、アッセイは、光透過型アッセイなどの1つ以上の試験を実施することを含み、ここで、第一の多血小板サンプルが個人から採取され、これが合成コラーゲンと混合されて処理サンプルが形成される。サンプルは、試験され、LTAAの場合は、LTA凝集測定装置中に配置され、処理サンプルを通る光透過率が得られて、個人の血小板凝集レベルを特定するための読み取りが得られる。特定の実施形態では、自然凝集の確認のために、初期試験が実施されてよい。この処理サンプルアッセイの結果を用いて、個人の抗血小板薬応答状態が特定される。例えば、個人が、血小板凝集の著しい低下を示す場合、個人は、正常または平均抗血小板薬感受性を持つとして特徴付けられ得る。個人が、抗血小板薬服用後において血小板凝集の阻害をほとんど示さない場合(すなわち、個人が抗血小板薬を経口摂取した後も、血小板は依然として凝集を起こした)、個人は、抗血小板薬非応答性であるとして特徴付けられ得る。個人が、抗血小板薬の経口摂取後に、血小板凝集のほとんど完全な欠如を示した場合、個人は、抗血小板薬高感受性であるとして特徴付けられ得る。
【0069】
試験がLTAAを用いる場合は、LTAAからの血小板凝集の読み取りは、傾き、一次凝集、曲線下面積、ラグフェイズ、脱凝集、最終凝集、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0070】
B.二重抗血小板薬療法を受けている個人における抗血小板薬に対する血小板感受性に関する希釈プロファイルを用いた試験(アスピリンの血小板への効果は無視する)
別の実施形態では、個人の全血またはPRPサンプルに対して実施された複数の異なる血小板凝集試験全体にわたって、合成コラーゲンの希釈プロファイルが用いられる。本発明のこの実施形態では、3つ以上の反応(抗血小板薬経口摂取前のベースライン試験だけ
でなく、抗血小板薬後の試験も)が実施される。一連のLTAAなどの一連の血小板凝集試験は、複数の異なる量の合成コラーゲンを用いて実施される。これは、本明細書にて、「希釈プロファイルアッセイ」または「希釈プロファイル」と称される。本実施形態では、複数の異なる全血またはPRPサンプルが、抗血小板薬経口摂取前(ベースライン希釈プロファイルを得るために)、および抗血小板薬経口摂取後(抗血小板薬後希釈プロファイルを得るために)に、個人から採取される。各個人の抗血小板薬前血小板サンプルは、異なる量の合成コラーゲンと混合され、各サンプルに対してLTAAなど血小板凝集アッセイが実施されて、濃度範囲全体にわたるベースライン希釈プロファイルが得られる。次に、個人に抗血小板薬が投与され、確実に抗血小板薬が代謝されるように充分な時間を経過させる。複数の全血またはPRPサンプルが、抗血小板薬経口摂取後の個人から採取され、異なる量の合成コラーゲンと混合される。各異なるサンプルに対してLTAAなど血小板凝集試験が実施されて、抗血小板薬後希釈プロファイルが得られる。抗血小板薬前ベースライン血小板凝集試験で用いられたものと同じ合成コラーゲン濃度が、抗血小板薬後血小板凝集試験で用いられることが好ましい。結果が分析され、抗血小板薬前および抗血小板薬後試験での血小板凝集の変化、ならびに合成コラーゲンの異なる量全体にわたる凝集の変化が調べられ、個人の抗血小板薬感受性応答(個人が、抗血小板薬高感受性、平均抗血小板薬感受性、または抗血小板薬非応答性であるかどうか、およびその中での感受性の度合い)が特定される。
【0071】
試験がLTAAを用いた場合、抗血小板薬前および抗血小板薬後LTAでのPA、PS、もしくはAUC、またはこれらの組み合わせ、ならびに合成コラーゲンの異なる量全体にわたるPA、PS、もしくはAUC、またはこれらの組み合わせの変化が調べられ(多くの場合、データまたは情報を分類してデータの報告を行うアルゴリズムが用いられる)、個人の抗血小板薬感受性応答(個人が、抗血小板薬高感受性、平均抗血小板薬感受性、または抗血小板薬非応答性であるかどうか、およびその中での感受性の度合い)が特定される。特定の実施形態では、結果は、システムソフトウェア中に埋め込まれた凝集測定装置所有のアルゴリズムを用いて特徴付けられ、これよって、診断医が分析を理解し、適切な臨床的判断を下すことがより容易となる。
【0072】
他の実施形態では、抗血小板薬前ベースラインは、LTAAにおいて1つの合成コラーゲンの濃度(50ng/mLなど)を用いて個人の抗血小板薬前血小板サンプルに対して実施された1つの血小板凝集試験(LTAAなど)によって確立され、一方抗血小板薬後希釈プロファイルの作製には、LTAAなどの異なる抗血小板薬後血小板凝集試験において、合成コラーゲンの複数の異なる濃度が依然として用いられる。この場合、結果が分析され、異なる量の合成コラーゲンで見られる血小板凝集の変化が、調べられ、互いに対して、ならびにベースライン(抗血小板薬前)に対して比較されて、ドナーの抗血小板薬感受性応答(抗血小板薬高感受性、正常/平均抗血小板薬感受性、または抗血小板薬非応答性であるかどうか、およびその中での感受性の度合い)が特定される。
【0073】
血小板凝集試験がLTAAを用いる場合、合成コラーゲンの異なる量からのPA、PS、もしくはAUC、またはこれらの組み合わせが調べられ、互いに対して、ならびにベースライン(抗血小板薬前)LTAAに対して比較されて、ドナーの抗血小板薬感受性応答が特定される。
【0074】
他の実施形態では、抗血小板薬前ベースラインまたは抗血小板薬後希釈プロファイルは取得されない。これは、抗血小板薬前ベースラインを取得することが実行可能ではない場合、または抗血小板薬療法を受けてきたかどうかを患者から判断することができないような、救急の臨床状況において有用であり得る。本実施形態では、複数の異なる多血小板血漿サンプルまたは全血サンプルが個人から採取され、各々が独立して、異なる濃度の合成コラーゲンと混合されて、希釈プロファイル試験のための複数の異なる処理サンプルが得
られる。LTAAなどの血小板凝集試験が、これらのサンプルの各々について実施され、異なる濃度の範囲全体にわたる希釈プロファイルが得られる。データが取得され、評価される。
【0075】
血小板凝集試験がLTAAである場合、合成コラーゲンの異なる範囲全体にわたって、AUC、PA、および/もしくはPS、またはこれらの組み合わせが取得され、分析される。特定の実施形態では、結果は、システムソフトウェア中に埋め込まれた凝集測定装置所有のアルゴリズムを用いて分析される。
【0076】
発明者らは、本実施形態を用いて、ドナーの血小板抗血小板薬応答を予測することができることを明らかにした。平均または「正常」抗血小板薬感受性を有する個人の場合、傾き、凝集パーセント、および/またはAUCを希釈プロファイル全体にわたって調べると、傾き、凝集パーセント、および/またはAUCは、用いられた合成コラーゲンの量の減少に沿った、それに対応しての減少を示している。従って、例えば、合成コラーゲンの種々の希釈の任意の範囲内では、濃度が低下するに従って、傾き、凝集パーセント、およびAUCも減少する。合成コラーゲンの濃度とほぼ平行して進行するか、またはほぼ直接の相関を有して、傾き、凝集パーセント、およびAUCがほぼ直線的に減少していると思われる。他方、抗血小板薬非レスポンダーである個人の場合、合成コラーゲンの減少に対応して直線的に減少する傾き、凝集パーセント、および/またはAUCを有する代わりに、希釈プロファイルに沿って、傾きの増加、予想外の一時的な凝集パーセントの増加、および/またはAUCの一時的な増加が見られる地点が、減少するべきところ(合成コラーゲンの濃度が減少することから)で存在する。そして、希釈プロファイルが継続して減少するに従って、傾きおよびAUCは、それがあるべきところへ(合成コラーゲンの希釈に基づいて)、および一時的な増加を見せる前にあったところへ、「跳ね返って戻り」、そして減少を続ける。跳ね返りが発生する地点は、合成コラーゲンの異なる濃度であり、医薬の種類および用量、ならびに患者の代謝および血小板受容体の遺伝的特徴に依存する。
【0077】
抗血小板薬高感受性の個人は、期待される/正常な結果と比較して、PA、PS、およびAUCの増加を示す。
【0078】
希釈プロファイルの概念を用いる本発明の特定の実施形態では、一連の7、6、または5つの異なる濃度が希釈プロファイルの作製に用いられ、他の実施形態では、4つの異なる濃度が用いられ、さらに他の実施形態では、3または2つの異なる濃度が用いられる。用いる異なる濃度が多過ぎると、試験が煩雑で時間の掛かるものとなりかねず、一方用いる濃度が少な過ぎると、得られるデータの量が少なくなり、感受性分析が制限される。
【0079】
用いられる合成コラーゲンの範囲は、希釈プロファイルであり、好ましくは、「抗血小板薬感受性範囲」内であり、これは、本明細書にて、平均抗血小板薬感受性個人において、測定される血小板活性/凝集が、合成コラーゲン濃度の量の減少に対応して低下する(例:AUCおよび/または傾きがコラーゲンの濃度と共に減少する)濃度範囲として定義される。
【0080】
このような実施形態において、希釈プロファイルで用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験がアスピリンの血小板凝集に対する効果を無視するが、それでも抗血小板薬の血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。特定の実施形態では、異なる合成コラーゲン希釈量は、約50ng/mLから約500ng/mLの濃度範囲内、または約50ng/mLから約250ng/mLの範囲内から選択される複数の異なる合成コラーゲン量を含む。
【0081】
例えば、特定の実施形態では、以下の通りの7つの異なる合成コラーゲン量が、最終「試験内」濃度として存在する:500ng/mL;325ng/mL;250ng/mL;150ng/mL;100ng/mL;75ng/mL;および50ng/mL。他の実施形態では、各々約50ng/mLから約500ng/mLの範囲内から選択される、または各々約50ng/mLから約250ng/mLの範囲内から選択される、または約40ng/mLから約500ng/mLの範囲内から選択される異なる合成コラーゲン量(2、3、4、5、6、または7つの異なる希釈)が存在する。いくつかの限定されない例として、特定の実施形態では、7つの異なる濃度が存在する(50ng/mL、75ng/mL、100ng/mL、150ng/mL、250ng/mL、325ng/mL、および500ng/mL)。特定の実施形態では、6つの異なる濃度が存在する(50ng/mL、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、および300ng/mL)。特定の実施形態では、5つの異なる濃度が存在する(100ng/mL、200ng/mL、300ng/mL、400ng/mL、および500ng/mL)。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。しかし、それらはまた、フローサイトメーターおよびインピーダンス凝集測定装置、またはこれらの均等物を含むその他の分析器で用いられてもよい。
【0082】
C.二重抗血小板薬療法を受けている個人におけるアスピリンに対する血小板感受性についての試験(抗血小板薬の効果は無視する)
本発明の1つの方法は、個人が二重抗血小板薬療法を受けている場合に、個人のアスピリンに対する血小板感受性を特定することができる試験を提供する。本実施形態では、合成コラーゲンの濃度は、血小板活性への抗血小板薬の効果に対しては非感受性であるように充分低いが、血小板活性へのアスピリンの効果に対しては感受性であるように充分に高い。言い換えると、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験が抗血小板薬の血小板凝集に対する効果を無視するが、それでもアスピリンの血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。本態様における合成コラーゲンの濃度は、低濃度範囲であり、実際、非常に低いため、生物学的コラーゲンではこのような低濃度まで希釈することはできない。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約0.01ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約0.5ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.5ng/mLの範囲であるか;または約0.5ng/mL以下からであるか;または約0.5ng/mLから約2.0ng/mLの範囲であるか;または2.0ng/mL未満であるか;または10ng/mL未満であるか;または5ng/mL未満である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0083】
この方法は、光透過型アッセイなどの1つ以上の血小板凝集試験を実施することを含み、ここで、第一の多血小板サンプルまたは全血サンプルが個人から採取され、これが合成コラーゲンと混合されて、第一の処理サンプルが形成される。
【0084】
この第一の処理サンプルでは、個人は、約24時間、好ましくは72〜96時間にわたってアスピリンを経口摂取していない(患者は抗血小板薬療法を受けていると推定)。この趣旨は、個人が、血小板凝集試験に影響を与えるアスピリンを自身の系内にまったく有していないことを確実にすることである。サンプルは、LTA凝集測定装置中に配置することなどのよって測定され、第一の処理サンプルを通る光透過率が得られ、経口摂取アスピリンの非存在下における個人のベースラインレベルを特定するための第一の読み取りが得られる。特定の実施形態では、初期血小板凝集アッセイが、自然凝集について確認し、
血小板が固有の機能亢進を有するかどうかについて試験するために実施されてよい。
【0085】
続いて、個人にアスピリンが投与され、アスピリンを代謝させるのに充分な時間(例:少なくとも約2時間から約16時間)が経過した後、第二の多血小板血漿サンプルまたは全血サンプルがドナーから採取される。第二の多血小板血漿サンプルに対して、これを合成コラーゲンで処理して第二の処理サンプルを形成することにより、LTAAなどの血小板凝集試験が実施される。第二のサンプルは、第二の処理サンプルを通る光透過率を測定することによるLTAAなどで分析され、第二の読み取りが得られる。
【0086】
経口摂取アスピリンなしでのベースラインレベルの読み取りが、第二の処理サンプルの読み取り(アスピリン経口摂取後に得られる)と比較され、この比較の結果から、個人のアスピリン応答状態が特定される。例えば、個人が、ベースラインサンプルと比較して、アスピリン経口摂取後に(第二のサンプルにおいて)血小板凝集の著しい低下を示す場合、個人は、正常または平均アスピリン感受性を持つとして特徴付けられ得る。個人が、アスピリン服用後において血小板凝集にほとんど違いを示さない場合(すなわち、個人がアスピリンを経口摂取した後も、血小板は依然として凝集を起こした)、個人は、アスピリン非応答性であるとして特徴付けられ得る。個人が、アスピリンの経口摂取後に、血小板凝集のほとんど完全な欠如を示した場合、個人は、アスピリン高感受性であるとして特徴付けられ得る。
【0087】
患者にアスピリンを経口摂取させる代わりに、サンプルがアスピリン添加されてもよい(アスピリンの溶液がPRPサンプル(または全血サンプル)に添加される。
【0088】
血小板凝集試験がLTAAを用いる場合、LTAからの読み取りは、傾き、一次凝集、曲線下面積、またはこれらの組み合わせであり得る。アスピリン感受性およびアスピリン非レスポンダーは、ベースラインとの相違を示し;感受性個人は、より少ない凝集を示す。特定の実施形態では、このデータを、医師にとって有用である利用可能な形態へと組み合わせ、分類するアルゴリズムが用いられる。これらの試験の過程にて、個人は、抗血小板薬も服用していることが好ましい。用いられる合成コラーゲンの量が非常に低いため、試験は、抗血小板薬による血小板へのいかなる作用に対しても非感受性である。このことにより、試験者は、個人が二重抗血小板薬療法を受けている間に、血小板活性に対するアスピリンの効果を分析することが可能となる。このことは、例えば個人がアスピリン非レスポンダーであることが分かった場合に、有用な情報を提供し得る。この場合、医師は、患者へのアスピリン投与をまったく停止し、第二の抗血小板薬を処方する可能性がある。または、患者がアスピリンに対して高感受性であることが分かる場合もあり、これは、患者を望ましくない出血性の合併症に対して高リスクとしてしまいかねない。この場合、医師は、患者へのアスピリン投与をまったく停止し、第二の抗血小板薬を処方する可能性がある。
【0089】
別の実施形態では、ベースライン読み取りの取得は行われない。ベースラインが取得されないこの状況では、試験は、1つの血小板凝集アッセイを実施することを含み、ここで、多血小板サンプルまたは全血サンプル(フローサイトメトリーの場合)が個人から採取され、これが合成コラーゲン(例:約1.0ng/mLから約0.1ng/mLの範囲の濃度にて)と混合されて処理サンプルが形成される。サンプルは、LTA凝集測定装置中に配置することによるLTAAなどにおいて血小板凝集について測定され、処理サンプルを通る光透過率が得られて、個人の血小板凝集レベルを特定するための読み取りが得られる)。特定の実施形態では、自然凝集の確認のために、初期アッセイが実施されてよい。この処理サンプルの結果を用いて、個人のアスピリン応答状態が特定される。例えば、個人が、血小板凝集の著しい低下を示す場合、個人は、正常または平均アスピリン感受性を持つとして特徴付けられ得る。個人が、アスピリン服用後において血小板凝集の阻害をほ
とんど示さない場合(すなわち、個人がアスピリンを経口摂取した後も、血小板は依然として凝集を起こした)、個人は、アスピリン非応答性であるとして特徴付けられ得る。個人が、アスピリンの経口摂取後に、血小板凝集のほとんど完全な欠如を示した場合、個人は、アスピリン高感受性であるとして特徴付けられ得る。
【0090】
LTAAからの読み取りは、一次傾き、一次凝集、曲線下面積、ラグフェイズ(LP)、脱凝集(DA)、最終凝集(FA)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0091】
D.二重抗血小板薬療法を受けている個人におけるアスピリンに対する血小板感受性についての希釈プロファイルを用いた試験(抗血小板薬の効果は無視する)
二重抗血小板薬療法を受けている個人におけるアスピリンに対する血小板感受性を試験するための別の実施形態では、個人のPRPまたは全血サンプルに対して実施されるLTAAまたはフローサイトメトリーなどの複数の異なる血小板凝集アッセイ全体にわたって、合成コラーゲンの希釈プロファイルが用いられる。本実施形態では、複数の異なるPRPまたは全血サンプルが、アスピリン経口摂取前(ベースライン希釈プロファイルを得るために)、およびアスピリン経口摂取後(アスピリン後希釈プロファイルを得るために)に、個人から採取される。各血小板サンプルは、異なる量の合成コラーゲンと混合され、各サンプルに対してLTAAまたはフローサイトメトリーなどの血小板凝集アッセイが実施されて、濃度範囲全体にわたるベースライン希釈プロファイルが得られる。次に、個人にアスピリンが投与され、確実にアスピリンが代謝されるように充分な時間を経過させる。複数のPRPまたは全血サンプルが、次にアスピリン経口摂取後の個人から採取され、異なる量の合成コラーゲンと混合される。特定の実施形態では、患者にアスピリンを経口摂取させる代わりに、サンプルにアスピリン添加が行われる。各サンプルに対して血小板凝集アッセイが実施されて、アスピリン後希釈プロファイルが得られる。アスピリン前ベースラインアッセイで用いられたものと同じ合成コラーゲン濃度が、アスピリン後アッセイで用いられることが好ましい。試験全体を通して同じ種類の血小板凝集アッセイが用いられることが好ましい。例えば、各サンプルの血小板凝集の測定に、フローサイトメトリーが用いられる。別の例として、各サンプルの血小板凝集の測定に、LTAAが用いられる。
【0092】
結果が分析され、アスピリン前およびアスピリン後アッセイでのPA、PS、AUC、LP、DA、もしくはFA、またはこれらの組み合わせの変化、ならびに合成コラーゲンの異なる量全体にわたるPA、PS、AUC、LP、DA、もしくはFA、またはこれらの組み合わせの変化で見られる血小板凝集の変化が調べられ(多くの場合、データまたは情報を分類してデータを報告するアルゴリズムを用いて)、個人のアスピリン感受性応答(個人が、アスピリン高感受性、平均アスピリン感受性、またはアスピリン非応答性であるかどうか、およびその中での感受性の度合い)が特定される。特定の実施形態では、結果は、システムソフトウェア中に埋め込まれた凝集測定装置所有のアルゴリズムを用いて特徴付けられ、これよって、分析の結果を診断医が理解し、適切な臨床的判断を下すことがより容易となる。
【0093】
他の実施形態では、アスピリン前ベースラインは、1つの合成コラーゲン濃度(1つのLTAAにおいて0.5ng/mLなど)を用いて個人の抗血小板薬前血小板サンプルに対して実施された1つの血小板凝集アッセイによって確立され、一方アスピリン後希釈プロファイルアッセイの作製には、異なるアスピリン後血小板凝集アッセイにおいて、合成コラーゲンの複数の異なる濃度が依然として用いられる。この場合、血小板凝集の結果が分析され、互いに対して比較される。LTAAが血小板凝集アッセイとして用いられた場合、PA、PS、AUC、LP、DA、もしくはFA、またはこれらの組み合わせの、合成コラーゲンの異なる量からの変化が調べられ、および/またはベースライン(アスピリン前)LTAAに対して比較されて、ドナーのアスピリン感受性応答(アスピリン高感受
性、正常/平均アスピリン感受性、またはアスピリン非応答性であるかどうか、およびその中での感受性の度合い)が特定される。
【0094】
他の実施形態では、アスピリン前ベースラインまたはアスピリン後希釈プロファイルは取得されない。これは、アスピリン薬前ベースラインを取得することが実行可能ではない場合、またはアスピリン療法を受けてきたかどうかを患者から判断することができないような、救急の臨床状況において有用であり得る。本実施形態では、複数の異なる多血小板血漿サンプルまたは全血サンプルが個人から採取され、各々が独立して、異なる濃度の合成コラーゲンと混合されて、希釈プロファイルアッセイのための複数の異なる処理サンプルが得られる。血小板凝集アッセイが、これらのサンプルの各々について実施され、異なる濃度の範囲全体にわたる希釈プロファイルが得られる。データが取得され、評価される。この場合、血小板凝集の結果が分析され、互いに対して比較される。LTAAが血小板凝集アッセイとして用いられた場合、PA、PS、AUC、LP、DA、もしくはFA、またはこれらの組み合わせの、合成コラーゲンの異なる量からの変化が調べられ、および/またはベースライン(アスピリン前)LTAAに対して比較されて、ドナーのアスピリン感受性応答(アスピリン高感受性、正常/平均アスピリン感受性、またはアスピリン非応答性であるかどうか、およびその中での感受性の度合い)が特定される。特定の実施形態では、結果は、システムソフトウェア中に埋め込まれた凝集測定装置所有のアルゴリズムを用いて分析される。
【0095】
発明者らは、本実施形態を用いて、ドナーの血小板アスピリン応答を予測することができることを明らかにした。平均または「正常」アスピリン感受性を有する個人の場合、傾き、凝集パーセント、およびラグフェイズ、またはAUCを希釈プロファイル全体にわたって調べると、傾き、凝集パーセント、またはAUCは、用いられた合成コラーゲンの量の減少に沿った、それに対応しての減少を示している。従って、例えば、合成コラーゲンの種々の希釈の任意の範囲内では、濃度が低下するに従って、傾き、凝集パーセント、およびAUCも減少する。合成コラーゲンの濃度とほぼ平行して進行するか、またはほぼ直接の相関を有して、傾き、凝集パーセント、およびAUCがほぼ直線的に減少していると思われる。他方、アスピリン非レスポンダーである個人の場合、合成コラーゲンの減少に対応して直線的に減少する傾き、凝集パーセント、およびAUCを有する代わりに、希釈プロファイルに沿って、傾きの増加、予想外の一時的な凝集パーセントの増加、および/またはAUCの一時的な増加が見られる地点が、減少するべきところ(合成コラーゲンの濃度が減少することから)で存在する。そして、希釈プロファイルが継続して減少するに従って、傾きおよびAUCは、それがあるべきところへ(合成コラーゲンの希釈に基づいて)、および一時的な増加を見せる前にあったところへ、「跳ね返って戻り」、そして減少を続ける。跳ね返りが発生する地点は、合成コラーゲンの異なる濃度であり、アスピリンの用量、ならびに患者の代謝および血小板受容体の遺伝的特徴に依存する。
【0096】
アスピリン高感受性である個人は、期待される/正常な結果と比較して、PA、PS、およびAUCの増加を示す。
【0097】
希釈プロファイルLTAAの概念を用いる本発明の特定の実施形態では、一連の7、6、または5つの異なる濃度が希釈プロファイルの作製に用いられ、他の実施形態では、4つの異なる濃度が用いられ、さらに他の実施形態では、3または2つの異なる濃度が用いられる。希釈プロファイルは、図として表示される場合、独特の形状を有し、これはさらに、EKGに非常に類似して、迅速な画像評価が可能である。用いる異なる濃度が多過ぎると、試験が煩雑で時間の掛かるものとなりかねず、一方用いる濃度が少な過ぎると、得られるデータの量が少なくなり、感受性分析が制限される。
【0098】
用いられる合成コラーゲンの範囲は、好ましくは、「アスピリン感受性範囲」内であり
、これは、本明細書にて、平均アスピリン感受性個人において、測定される血小板活性/凝集が、合成コラーゲン濃度の量の減少に対応して低下する(例:AUCおよび/または傾きがコラーゲンの濃度と共に減少する)濃度範囲として定義される。
【0099】
特定の実施形態では、異なる合成コラーゲン希釈量は、抗血小板薬の効果は考慮に入れないが、それでもアスピリンの効果は取り出すように充分低い濃度範囲内から選択される複数の異なる合成コラーゲン量を含む。特定の実施形態では、各々、0.01ng/mLから1.0ng/mLの範囲より選択されるか;または0.1ng/mLから0.5ng/mLの範囲より選択されるか;または0.1ng/mLから1.0ng/mLの範囲より選択されるか;または0.1ng/mLから1.5ng/mLの範囲より選択されるか;または0.5ng/mLから2.0ng/mLの範囲より選択される異なる合成コラーゲン量(2、3、4、5、6、または7つの異なる希釈)が存在する。いくつかの限定されない例として、ある実施形態は、0.01ng/mL、0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、および1.0ng/mLなど、0.01ng/mLから1.0ng/mLの範囲内から選択される5つの異なる希釈を有する。いくつかの限定されない例として、ある実施形態は、0.5ng/mL、0.75ng/mL、1.0ng/mL、1.25ng/mL、1.75ng/mL、および2.0ng/mLなど、0.5ng/mLから2.0ng/mLの範囲内から選択される6つの異なる希釈を有する。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。しかし、それらはまた、フローサイトメーターおよびインピーダンス凝集測定装置、またはこれらの均等物を含むその他の分析器で用いられてもよい。
【0100】
E.二重抗血小板薬療法を受けている個人における残留血小板活性についての試験(抗血小板薬およびアスピリンへの暴露後の血小板活性の度合い)
本発明の1つの実施形態は、個人が二重抗血小板薬療法を受けている(すなわち、アスピリンおよび抗血小板薬を受けている)場合に、二重療法(アスピリンおよび抗血小板薬)に対する個人の残留血小板活性を特定することができる試験を提供する。言い換えると、本実施形態では、アスピリンおよび抗血小板薬の両方に感受性である合成コラーゲンのレベルが用いられる。この試験は、個人における全体としての血小板感受性/反応性を医師に知らせるものである。この試験は、医師が主として患者の血小板状態を知ることのみが必要であり、必ずしもアスピリンまたは抗血小板薬の血小板反応性に対する個人における効果を知る必要がない場合の緊急の状況において非常に有用である。通常、抗血小板薬は、その作用機構に基づいて、5種類の抗血小板薬に細分されてきた。以下の表は、いくつかの例を提供する。アスピリンは抗血小板薬と見なされるが、本出願において、二重療法が言及される場合、アスピリンおよび第二の抗血小板薬(アスピリン以外)を含む治療法が意図されることには留意されたい。
【0102】
本発明のこの方法は、1つの血小板凝集試験、好ましくはLTAAを実施することを含み、ここで、多血小板サンプルが個人から採取され、これが合成コラーゲンと混合されて処理サンプルが形成される。サンプルは、LTA凝集測定装置中に配置され、処理サンプルを通る光透過率が得られて、個人の凝集パーセントを特定するための読み取りが得られる。特定の実施形態では、自然凝集について確認し、血小板が固有の機能亢進を有するかどうかについて試験するために、初期LTAが実施されてよい。次に、凝集のレベルに応じて、または(PA、PS、AUC、LP、DA、またはFAを通して読み取られるよう
に)個人が血小板凝集の著しい低下を示す場合、個人は、正常または平均血小板反応性/感受性を持つとして特徴付けられ得る。個人が、血小板凝集の阻害をほとんど示さない(高血小板活性を示す)場合(すなわち、個人が二重抗血小板薬を経口摂取した後も、血小板は依然として凝集を起こした)、個人は、非応答性であるとして特徴付けられ得る。個人が、二重抗血小板薬の経口摂取後に、血小板凝集のほとんど完全な欠如を示した場合、個人は、高感受性であるとして特徴付けられ得る。LTAからの読み取りは、傾き、一次凝集、曲線下面積、ラグフェイズ、脱凝集(DA)、もしくは最終凝集(FA)、またはこれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態では、このデータを、医師にとって有用である利用可能な形態へと組み合わせ、分類するアルゴリズムが用いられてよい。
【0103】
言い換えると、これは、患者が二重療法の抗血小板薬およびアスピリンを経口摂取した後の血小板の反応性の度合い(凝集しやすさ)である残留血小板活性を試験するものである。これらの実施形態では、合成コラーゲンの濃度は、抗血小板薬およびアスピリンの両方による血小板凝集に対する効果が考慮され、血小板の活性が、医薬がそれぞれの効果を現した後に残留する活性となるような濃度である。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、好ましくは、約25ng/mLから35ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLであるか;または2.0ng/mLから12.5ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約25ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLからから約35ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLからから約39ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLであるか;または約12.5ng/mLからから約25ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLからから約35ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLからから約39.0ng/mLの範囲であるか;または約25ng/mLからから約39ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。しかし、それらはまた、フローサイトメーターおよびインピーダンス凝集測定装置、またはこれらの均等物を含むその他の分析器で用いられてもよい。
【0104】
F.二重療法を受けている患者における残留血小板活性についての希釈プロファイルを用いた試験
二重抗血小板薬療法を受けている個人における残留血小板活性を試験するための別の実施形態では、個人のPRPまたは全血サンプルに対して実施されるLTAAまたはフローサイトメトリーなどの複数の異なる血小板凝集アッセイ全体にわたって、合成コラーゲンの希釈プロファイルが用いられる。本実施形態では、患者が二重療法を開始する前に、ベースライン凝集アッセイが実施される。ベースライン凝集アッセイは、1つの試験であってよく、または希釈プロファイルベースラインであってもよい。個別の試験または希釈プロファイルのベースラインの結果が、患者が二重療法受けた後に得られた希釈プロファイルの結果に対して比較される。本実施形態では、複数の異なるPRPまたは全血サンプルが個人から採取され、各血小板サンプルは、異なる量の合成コラーゲンと混合され、各サンプルに対してLTAAまたはフローサイトメトリーなどの血小板凝集アッセイが実施されて、希釈プロファイルが得られる。好ましくは、試験全体を通して同じ種類の血小板凝集アッセイが用いられる。例えば、各サンプルにおいて、血小板凝集の測定にLTAAが用いられる。また、ベースラインに希釈プロファイルが用いられる場合も、好ましくは、患者が二重療法を受けた後の血小板の試験に、同じ希釈が用いられる。
【0105】
結果が分析され、患者が二重療法を受けた後の試験に対して比較した、PA、PS、AUC、LP、DA、もしくはFAのベースラインからの変化、またはこれらの組み合わせの変化で見られる血小板凝集の変化、ならびに異なる合成コラーゲンの量全体にわたる凝集の比較が調べられ(多くの場合、データまたは情報を分類してデータを報告するアルゴリズムを用いて)、個人の残留血小板反応性が特定される。特定の実施形態では、結果は
、システムソフトウェア中に埋め込まれた凝集測定装置所有のアルゴリズムを用いて特徴付けられ、これよって、分析の結果を診断医が理解し、適切な臨床的判断を下すことがより容易となる。
【0106】
他の実施形態では、二重療法前ベースラインまたはベースラインプロファイルは取得されない。これは、二重療法薬前ベースラインを取得することが実行可能ではない場合、または二重療法を受けてきたかどうかを患者から判断することができないような、救急の臨床状況において有用であり得る。本実施形態では、複数の異なる多血小板血漿サンプルまたは全血サンプルが個人から採取され、各々が独立して、異なる濃度の合成コラーゲンと混合されて、希釈プロファイルアッセイのための複数の異なる処理サンプルが得られる。血小板凝集アッセイが、これらのサンプルの各々について実施され、異なる濃度の範囲全体にわたる希釈プロファイルが得られる。データが取得され、評価される。この場合、血小板凝集の結果が分析され、互いに対して比較される。LTAAが血小板凝集アッセイとして用いられた場合、PA、PS、AUC、LP、DA、もしくはFA、またはこれらの組み合わせの、合成コラーゲンの異なる量からの変化が調べられ、ドナーの残留血小板活性が特定される。特定の実施形態では、結果は、システムソフトウェア中に埋め込まれた凝集測定装置所有のアルゴリズムを用いて分析される。
【0107】
希釈プロファイルLTAAの概念を用いる本発明の特定の実施形態では、一連の7、6、または5つの異なる濃度が希釈プロファイルの作製に用いられ、他の実施形態では、4つの異なる濃度が用いられ、さらに他の実施形態では、3または2つの異なる濃度が用いられる。希釈プロファイルは、図として表示される場合、独特の形状を有し、これはさらに、EKGに非常に類似して、迅速な画像評価が可能である。用いる異なる濃度が多過ぎると、試験が煩雑で時間の掛かるものとなりかねず、一方用いる濃度が少な過ぎると、得られるデータの量が少なくなり、感受性分析が制限される。
【0108】
用いられる合成コラーゲンの範囲は、好ましくは、「アスピリン感受性範囲」内であり、これは、本明細書にて、平均アスピリン感受性個人において、測定される血小板活性/凝集が、合成コラーゲン濃度の量の減少に対応して低下する(例:AUCおよび/または傾きがコラーゲンの濃度と共に減少する)濃度範囲として定義される。
【0109】
これらの実施形態では、合成コラーゲンの濃度は、抗血小板薬およびアスピリンの両方による血小板凝集に対する効果が考慮され、血小板の活性が、医薬がそれぞれの効果を現した後に残留する活性となるような濃度である。特定の実施形態では、各々、約2.0ng/mLから約12.5ng/mLの範囲内より;または約2.0ng/mLから約25ng/mLの範囲内より;または約2.0ng/mLから約35ng/mLの範囲内より;または約2.0ng/mLから約39ng/mLの範囲内より;または約12.5ng/mLから約25ng/mLの範囲内より;約12.5ng/mLから約39.0ng/mLの範囲内より;または約25ng/mLから約39ng/mLの範囲内より選択される異なる合成コラーゲン量(2、3、4、5、6、または7つの異なる希釈)が存在する。限定されない例として、12.5ng/mLから約35ng/mLの範囲内より選択される5つの異なる濃度が用いられ、それらは以下の通りである:12.5ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、30ng/mL、および35ng/mL。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。しかし、それらはまた、フローサイトメーターおよびインピーダンス凝集測定装置、またはこれらの均等物を含むその他の分析器で用いられてもよい。
【0110】
G.試験の組み合わせ
二重抗血小板薬療法に応答する個人の血小板活性のより詳細な分析のために、上述の試
験のいずれかを組み合わせてよい。例えば、特定の患者において、LTAAは、抗血小板薬単独が血小板反応性に与える影響の度合いについての見識を医師に提供する合成コラーゲンの量を用いて実施されてよい(例:約50ng/mLの合成コラーゲン最終試験内濃度)(アスピリンの血小板への効果を考慮に入れないことにより)。次に、医師は、アスピリン単独が血小板反応性に与える影響の度合いについての見識を医師に提供する合成コラーゲンの量を用いて別のLTAAを実施してよい(例:約1.0ng/mLから約0.1ng/mL)(抗血小板薬の血小板への効果を考慮に入れないことにより)。そして最後に、医師は、アスピリンおよび抗血小板薬の組み合わせが血小板反応性に与える影響の度合いについての見識を医師に提供し、従って残留血小板活性についての情報を提供する合成コラーゲンの量を用いて別のLTAAを実施してよい(例:約25ng/mLから35ng/mL)。これらの試験または組み合わせのいずれにおいても、医薬またはアスピリンの経口摂取前にベースラインが取得されてよく、さらに、試験は、本明細書にて上述する希釈プロファイルの概念を用いて実施されてもよい。
【0111】
H.コンプライアンス試験
本発明はまた、アスピリン、抗血小板薬、および/または二重療法でのコンプライアンスについて患者を検査するために用いることができる試験も提供する。上述のように、コンプライアンスとは、正しい時間に(処方された投与スケジュールに従って)医薬を服用し、および薬物治療を受けることの両方を意味する。例えば、患者は、抗血小板薬治療には従うが、アスピリン療法には従わない場合があり、その逆も同様である。本発明は、患者を自身のコンプライアンスについて試験するためのメカニズムを提供する。非コンプライアンスとしては、医薬を服用しないこと、適切な用量を服用しないこと、または有効投与(時間)スケジュールに従わないことが挙げられる。最近の研究から、アスピリンおよびその他の療法での患者の非コンプライアンスが、医療における大きな問題であることが示された。以前はアスピリン耐性と見なされていたものが、そうではなく、アスピリンに対する血小板阻害応答を評価するために複数の標準化されていない実験室試験を用いることによって複雑化された非コンプライアンスの顕在化であり得ると現在では考えられている。
【0112】
I.アスピリン療法レジメンのコンプライアンス
従って、コンプライアンスを測定するために、患者は、週1回、月2回、月1回、3か月に1回など定期的に試験され、その結果が互いに対して比較されてよい。凝集の結果が検査ごとに大きく変動する場合、患者はさらに試験されて、アスピリン耐性が発達したかどうか特定されてよく、または患者は、アスピリンの処方された用量の服用における自身のコンプライアンスについて質問されてもよい。患者がアスピリンを服用していなかったか、または投与ウィンドウ内でそれを服用していなかったことが疑われる場合、患者の血漿がアスピリンで処理され、次に試験されてよい。凝集がアスピリン添加サンプルにおいて見られる場合は、患者が指示通りにアスピリンを服用していなかったと結論付けられ得る。場合によっては、患者は、アスピリンを時々服用し、毎日の同じ時間には服用していないということもあり得る。凝集試験は、試験ごとの変動性を示す場合があり、この変動性は、患者が処方された定期的な投与レジメンに従っていなかったことの指標として用いることが可能である(用量を毎日は服用していないか、または一日の異なる時間に用量を服用している)。アスピリン療法を受けている患者で、治療法に従わないが、毎日はアスピリンを服用していない、または一日の異なる時間に服用している場合、その患者は、実際のところ、血栓性イベントのリスクがベースラインレベルよりも高くなることが見出された。アスピリン添加サンプル中に凝集が見られない場合、患者がアスピリン耐性を発達させた可能性がある。患者が、2つの異なる抗血小板薬による異なる二重療法、または場合によっては、まったくアスピリンを用いない異なる抗血小板薬によるレジメンを受けるべきであるかどうかを判断するために、さらなる試験が実施されてよい。
【0113】
これらの試験において、合成コラーゲンの濃度は、血小板活性への抗血小板薬の効果に対しては非感受性であるように充分低いが、血小板活性へのアスピリンの効果に対しては感受性であるように充分に高い。言い換えると、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験が抗血小板薬の血小板凝集に対する効果を無視するが、それでもアスピリンの血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。本態様における合成コラーゲンの濃度は、低濃度範囲であり、実際、非常に低いため、生物学的コラーゲンではこのような低濃度まで希釈することはできない。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約0.01ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約0.5ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.5ng/mLの範囲であるか;または約0.5ng/mL以下からであるか;または約0.5ng/mLから約2.0ng/mLの範囲であるか;または2.0ng/mL未満であるか;または10ng/mL未満であるか;または5ng/mL未満である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0114】
J.抗血小板薬療法レジメンのコンプライアンス
凝集の結果が、試験によって大きく変動する場合、患者はさらに試験されて、抗血小板薬に対する耐性が発達したかどうか特定されてよく、または患者は、抗血小板薬の処方された用量の服用における自身のコンプライアンスについて質問されてもよい。患者が抗血小板薬を服用していなかったか、または投与ウィンドウ内でそれを服用していなかったことが疑われる場合、患者の血漿が抗血小板薬で処理され、次に試験されてよい。凝集が処理サンプルにおいて見られる場合は、患者が指示通りに抗血小板薬を服用していなかったと結論付けられ得る。場合によっては、患者は、アスピリンを時々服用し、毎日の同じ時間には服用していないということもあり得る。処理サンプルにおいて凝集が見られない場合、患者は、抗血小板薬に対する耐性を発達させた可能性がある。患者が、2つの異なる抗血小板薬による異なる二重療法、または場合によっては、まったくアスピリンを用いない異なる抗血小板薬によるレジメンを受けるべきであるかどうかを判断するために、さらなる試験が実施されてよい。
【0115】
これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験がアスピリンの血小板凝集に対する効果を無視するが、それでも抗血小板薬の血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約50ng/mLから約500ng/mLの範囲であるか;または>40ng/mLであるか;または>50ng/mLであるか;または約40から約500ng/mLの範囲であるか;または約40から約400ng/mLの範囲であるか;または約40から300ng/mLの範囲であるか;または約40から約200ng/mLの範囲であるか;または約40から約100ng/mLの範囲であるか;または約40から約90ng/mLの範囲であるか;または約40から約80ng/mLの範囲であるか;または約40から約70ng/mLの範囲であるか;または約40から約60ng/mLの範囲であるか;または約50から約400ng/mLの範囲であるか;または約50から約300ng/mLの範囲であるか;または約50から約200ng/mLの範囲であるか;または約50から約100ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0116】
K.二重療法のコンプライアンス
凝集の結果が、試験によって大きく変動する場合、患者はさらに試験されて、二重療法
に対する耐性が発達したかどうか特定されてよく、または患者は、二重療法の処方された用量の服用における自身のコンプライアンスについて質問されてもよい。患者が二重療法を服用していなかったか、または投与ウィンドウ内でそれを服用していなかったことが疑われる場合、患者の血漿が、抗血小板薬で処理され、次に試験されてよく、およびアスピリンでも処理され、次に試験されてよい。凝集が処理サンプルにおいて見られる場合は、患者が指示通りに(1もしくは複数の)医薬を服用していなかったと結論付けられ得る。場合によっては、患者は、アスピリンおよび/または抗血小板薬を時々服用し、毎日の同じ時間には服用していないということもあり得る。処理サンプルにおいて凝集が見られない場合、患者は、二重療法に対する耐性を発達させた可能性がある。患者が、2つの異なる抗血小板薬による異なる二重療法、または場合によっては、まったくアスピリンを用いない異なる抗血小板薬によるレジメンを受けるべきであるかどうかを判断するために、さらなる試験が実施されてよい。
【0117】
これらの実施形態において、合成コラーゲンの濃度は、抗血小板薬およびアスピリンの両方による血小板凝集に対する効果が考慮に入れられ、ならびに血小板の活性が、これらの医薬がその効果を及ぼした後に残留する活性であるようなものである。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、好ましくは、約25ng/mLから35ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLであるか;または2.0ng/mLから12.5ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約25ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約35ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約39ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLであるか;または約12.5ng/mLから約25ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLから約35ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLから約39.0ng/mLの範囲であるか;または約25ng/mLから約39ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0118】
本発明の方法/アッセイでは、患者にアスピリンを経口摂取させ、その後に血液サンプルを採取する代わりに、アスピリンが経口摂取される前に血液のサンプルが採取されてよく、このサンプルが「アスピリン添加」(または「アスピリン化」)されてもよい(すなわち、アスピリン溶液(アスピリンのリジン塩またはAspisol(登録商標)であってもよい)がPRPに添加され、その後試験される)。本発明の方法/アッセイのすべてにおいて、患者がアスピリンを経口摂取してもよく、またはサンプルがアスピリン添加されてもよいと判断された。このことにより、患者がアスピリンを経口摂取して、アスピリンが患者の系内に入るまでの経過時間を持つ必要がないことから、試験を迅速に行うことができる。その代わりに、血液が採取されてPRPサンプルが得られ、一方がアスピリン添加され、他方がアスピリン添加されず、このようにして、2つのサンプルを並行して試験することも可能である。
【0119】
場合によっては、試験のアスピリン化される部分は、アスピリンをPRPに添加して所望される最終濃度とすることによって製造されてよい。特定の実施形態では、アスピリンの濃度は、25から150μM、25〜100μM、50〜150μM、50〜100μM、75〜150μM、75〜100μMの範囲であり、好ましくは、100μMの最終濃度である。
【0120】
L.アスピリン、抗血小板薬、または二重療法に対する患者の応答を予測する方法
本発明はまた、アスピリン、抗血小板薬、または二重療法の特定の処方が患者にとって有益であるかどうか、ならびに患者にとってどの種類の抗血小板薬が最適であるかどうか(個別化医療/療法)を特定または算出する方法も提供する。
【0121】
L1.アスピリン療法の効果の予測
例えば、医師が患者にアスピリン療法を開始することを考慮していた場合、患者のPRPサンプル(または全血サンプル)がアスピリン添加(またはアスピリン化)され、次にLTAAなどの本技術分野にて公知の手段を用いて血小板凝集について試験されてよい。血小板凝集試験の結果から、アスピリンによる処理後に所望される健康なレベルまで血小板が凝集しなかったことが示された場合、患者がアスピリンに対して非感受性であると思われることから、医師は、アスピリン療法を処方しようと思わないことが考えられる。言い換えると、医師は、LTAAの結果を用い、合成コラーゲンおよびアスピリンの存在下で発生した血小板凝集の量に基づいて、アスピリン療法が患者にとって有益であるかまたは有害であるかを予測することが可能であり得る。場合によっては、患者の血小板の凝集が強すぎ、残留活性を持たないこともあり得る。この場合、患者が出血性の合併症を起こしやすい場合があることから、医師は、アスピリン療法レジメンを処方しないことが考えられる。この場合、医師は、アスピリンによる血小板凝集阻害の効果が強すぎると予測し、別の抗血小板薬を選択することになる。
【0122】
本実施形態では、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約0.01ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約0.5ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.5ng/mLの範囲であるか;または約0.5ng/mL以下からであるか;または約0.5ng/mLから約2.0ng/mLの範囲であるか;または2.0ng/mL未満であるか;または10ng/mL未満であるか;または5ng/mL未満である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0123】
L2.二重療法レジメンの効果の予測
加えて、血小板凝集アッセイにおいて合成コラーゲンの特定の濃度範囲を用いることによって、血小板凝集に対する抗血小板薬の効果を考慮にいれないことを可能とする試験を発明者らが開発したことにより、本発明の試験は、抗血小板薬を現在受けており、医師がアスピリン療法レジメンの追加を考慮し得る患者に対して用いることができる。従って、本発明は、二重療法レジメンの効果を予測する(患者の抗血小板薬療法レジメンにアスピリンを追加することによる効果を予測する)方法を提供する。この状況では、抗血小板薬を受けている患者から、全血サンプルまたはPRPサンプルが採取される。次に、サンプルはアスピリン化され、血小板凝集について試験される。血小板凝集試験の結果から、アスピリンによる処理後に所望される健康なレベルまで血小板が凝集しなかったことが示された場合、患者がアスピリンに対して非感受性であると思われることから、医師は、アスピリン療法を処方しないことが考えられる(試験から、アスピリン療法が効果的とならないことが予測される)。患者の血小板の凝集が強すぎ、残留活性を持たなかった場合、この患者は出血性の合併症を起こしやすい可能性があることから、医師は、アスピリン療法レジメンを処方しないことが考えられる(試験から、アスピリン療法の効果が強すぎることが予測される)。血小板が、許容されるレベルの凝集を示した場合、医師は、抗血小板薬とアスピリン療法との二重療法を処方することを考慮し得る(試験から、所望される、または許容されるレベルの血小板凝集が予測される)。
【0124】
本実施形態では、合成コラーゲンの濃度は、血小板活性への抗血小板薬の効果に対しては非感受性であるように充分低いが、血小板活性へのアスピリンの効果に対しては感受性であるように充分に高い。言い換えると、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験が抗血小板薬の血小板凝集に対する効果を無視するが
、それでもアスピリンの血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約0.01ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約0.5ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.0ng/mLの範囲であるか;または約0.1ng/mLから約1.5ng/mLの範囲であるか;または約0.5ng/mL以下からであるか;または約0.5ng/mLから約2.0ng/mLの範囲であるか;または2.0ng/mL未満であるか;または10ng/mL未満であるか;または5ng/mL未満である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0125】
L3.抗血小板薬の効果の予測(患者がアスピリン療法を受けている場合)
さらに、本発明は、血小板凝集へのアスピリンの効果を考慮に入れず、血小板活性への抗血小板薬の効果を試験することができるアッセイも提供する。従って、患者がアスピリン療法を受けており、医師が、抗血小板薬を追加することによる二重療法を患者に対して開始することを考慮していた場合、患者のPRPまたは全血サンプルが採取され、抗血小板薬で処理され得る。合成コラーゲンの添加後、血小板凝集が調べられる。血小板凝集のレベルが許容されると判断される場合、医師は、その医薬を処方し得る。または、血小板凝集のレベルが許容されるものではなかった場合、医師は、異なる抗血小板薬を試験し、処方し得る。
【0126】
これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものであり、試験がアスピリンの血小板凝集に対する効果を無視するが、それでも抗血小板薬の血小板凝集に対する効果は測定する濃度である。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約50ng/mLから約500ng/mLの範囲であるか;または>40ng/mLであるか;または>50ng/mLであるか;または約40から約500ng/mLの範囲であるか;または約40から約400ng/mLの範囲であるか;または約40から300ng/mLの範囲であるか;または約40から約200ng/mLの範囲であるか;または約40から約100ng/mLの範囲であるか;または約40から約90ng/mLの範囲であるか;または約40から約80ng/mLの範囲であるか;または約40から約70ng/mLの範囲であるか;または約40から約60ng/mLの範囲であるか;または約50から約400ng/mLの範囲であるか;または約50から約300ng/mLの範囲であるか;または約50から約200ng/mLの範囲であるか;または約50から約100ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0127】
L4.抗血小板療法の効果の予測
さらに、本発明は、血小板活性への抗血小板薬の効果を予測するアッセイも提供する。実施例2を参照されたい。従って、医師が、抗血小板薬を患者に対して開始することを考慮していた場合、患者のPRPまたは全血サンプルが採取され、抗血小板薬で処理され得る。合成コラーゲンの添加後、サンプル中のアスピリン有りまたは無しにおいて、血小板凝集が調べられる。血小板凝集のレベルが許容されると判断される場合、医師は、その医薬を処方し得る。または、血小板凝集のレベルが許容されるものではなかった場合、医師は、異なる抗血小板薬を試験し、処方し得る。
【0128】
これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、アゴニスト(合成コラーゲン)の存在下で血小板が凝集する能力を試験するものである。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、約12
.5ng/mLから約100ng/mLの範囲であるか;または約50ng/mLから約500ng/mLの範囲であるか;または>40ng/mLであるか;または>50ng/mLであるか;または約40から約500ng/mLの範囲であるか;または約40から約400ng/mLの範囲であるか;または約40から300ng/mLの範囲であるか;または約40から約200g/mLの範囲であるか;または約40から約100ng/mLの範囲であるか;または約40から約90ng/mLの範囲であるか;または約40から約80ng/mLの範囲であるか;または約40から約70ng/mLの範囲であるか;または約40から約60ng/mLの範囲であるか;または約50から約400ng/mLの範囲であるか;または約50から約300ng/mLの範囲であるか;または約50から約200ng/mLの範囲であるか;または約50から約100ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0129】
試験で用いられる医薬の濃度は、医薬および合成コラーゲン濃度に依存する。合成コラーゲン誘導血小板凝集は、機能性試験であることから、個別化抗血小板療法の処方前に、遺伝および代謝試験データが入手可能である必要はない。用いられる医薬の濃度は、患者に与えられる用量、および血漿中に得られる所望されるレベルに依存し得る。本発明の方法で用いる最良濃度を特定するために、当業者であれば、実施例2に従い、健康なドナーを確保し、ならびに抗血小板薬および合成コラーゲンの最良の範囲(一群の健康なドナー全体において最も感受性が高く、最も信頼性の高い範囲)を特定するガイドとして血漿レベルを用いて、抗血小板薬および合成コラーゲンの種々の範囲を試験することができる。
【0130】
L5.患者が二重療法を受けている場合の残留血小板活性の予測
別の実施形態では、医師は、二重療法レジメンを受けている間の患者の残留血小板活性を予測する方法として、血小板がアスピリンおよび抗血小板薬へ暴露された後に残存する残留血小板活性を試験することを考え得る。この場合、患者は、アスピリン療法を受けていてよく、サンプルは、抗血小板薬で処理されるか、または患者は、抗血小板薬を受けていてよく、サンプルは、アスピリンで処理されるか、または患者は、すでに二重療法を受けていてもよい。これらの実施形態では、合成コラーゲンの濃度は、抗血小板薬およびアスピリンの両方による血小板凝集に対する効果が考慮に入れられ、および血小板の活性が、医薬がそれぞれの効果を及ぼした後に残存する活性であるような濃度である。好ましくは、これらの実施形態において、用いられる合成コラーゲンの最終試験内濃度は、好ましくは、約25ng/mLから35ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLであるか;または2.0ng/mLから12.5ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約25ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約35ng/mLの範囲であるか;または約2.0ng/mLから約39ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLであるか;または約12.5ng/mLから約25ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLから約35ng/mLの範囲であるか;または約12.5ng/mLから約39.0ng/mLの範囲であるか;または約25ng/mLから約39ng/mLの範囲である。これらの値および範囲は、好ましくは、血小板凝集試験が光透過型アッセイであり、試験されるサンプルがPRPサンプルである場合に用いられる。
【0131】
本明細書で述べる試験のいずれにおいても、血小板凝集または血小板凝集阻害のいずれが用いられてもよい。特定の好ましい実施形態では、LTAAが用いられる。特定の他の好ましい実施形態では、血小板凝集の測定にフローサイトメトリーが用いられる。
【0132】
種々の実施形態に関する上記の考察から分かるように、実施される試験、または評価のための医師の要望に応じて、様々な量の合成コラーゲンが用いられてよいことは明らかである。用いられる合成コラーゲンの量は、生物源コラーゲンによってLTAAを実施する
場合に一般的に用いられる量に比べて、約2桁以上少ない。例えば、通常、仔ウシ皮由来生物学的コラーゲンを用いるLTAAは、一般的に、0.19mg/mL(ミリグラム/mL)のコラーゲン(「試験内」濃度として)を用い;ウマ腱由来コラーゲンを用いるLTAAは、一般的に、LTAA試験において2.0μg/mL(マイクログラム/mL)のコラーゲンを用い(「試験内」濃度として)、一方、一般的に、本発明の方法は、各LTAA試験において、約500ng/mLから約0.10ng/mL(ナノグラム/mL)の合成コラーゲンを用いる(「試験内」濃度として)。
【0133】
フローサイトメトリーを用いて血小板凝集を試験する場合、生物学的コラーゲンの通常の濃度は、0.01〜100μg/mLの範囲であり、20μg/mLが最も一般的である。しかし、合成コラーゲンを用いると、用いられる量は、これより非常に少なく、約2.0ng/mLから約640ng/mLの範囲である。
【0134】
上記に含まれる範囲が存在するが、本発明は、最初と最後の終点の列挙によって、その最初と最後だけを意味することには限定されず、最初と最後の終点、ならびにその終点間の濃度のすべてを明白に含む。本明細書にて、列挙した範囲内に含まれるすべての濃度をリストにすることが煩雑過ぎるというだけのことである。本発明者らは、2つ以上の濃度、および2つ以上の範囲、さらには列挙した範囲内の2つ以上の濃度を用いて、最も感受性が高く正確な結果を得ることを考慮した。
【0135】
そのような低濃度のコラーゲン、ならびにコラーゲンの希釈プロファイルを用いることができることは、合成コラーゲンを用いることによってのみ可能である。発明者らは、生物学的コラーゲンを同様の低濃度まで希釈することを試みたが、合成コラーゲンによる本発明のLTAAで用いられる濃度に匹敵するレベルまで生物学的コラーゲンを希釈することは物理的に不可能であった。生物学的コラーゲンは、不溶性、粘稠、不均質な物質であり、三重らせんに巻かれた長い繊維状構造タンパク質を有する。このような物理的特性により、合成コラーゲンの場合に100倍分近付く濃度であっても、生物学的コラーゲンをそれに匹敵する低濃度まで希釈することができないか、または予測可能もしくは有用な形でのそのようないかなる希釈をも実施することができなかった。さらに、0.19mg/mL(ミリグラム/mL)よりも少し低い濃度にて(「試験内」濃度として)仔ウシ皮由来コラーゲンを用いた場合も;2.0μg/mL(マイクログラム/mL)よりも少し低い濃度にてウマ腱由来コラーゲンを用いた場合も、LTAAは機能しなかった(凝集が発生しなかった)。
【0136】
Chrono Log凝集測定装置の全血モードを用いて全血に対して実施された試験において、生物学的コラーゲンを希釈した場合、有用ないかなる結果も得られないが、合成コラーゲンは、100ng/mLから12.5ng/mLまで希釈され、それでも同じ応答を得ることが可能であることが示された。
図14および15を参照されたい。
【0137】
合成コラーゲン
特定の実施形態では、合成コラーゲンは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/520,508号に記載されている。特定の実施形態では、合成コラーゲンは、三重らせんに自己組織化してフィブリルを形成する能力を有する合成コラーゲンであり、それによって、合成コラーゲンはI型コラーゲンを模倣することが可能となる(合成コラーゲンが、I型コラーゲンとして認識され、または機能することが可能となる)。特定の実施形態では、合成コラーゲンは、式(I)で表されるペプチド断片を有するポリペプチドを含み:
【0139】
式中、XはHypを表し;nは20から5000の整数を表し;およびここで、ポリペプチドは、10000から500000000の範囲の分子量を有する。特定の実施形態では、式(I)の構造を有する合成コラーゲンは、三重らせんに自己組織化してフィブリルを形成する能力を有し、それによって、合成コラーゲンはI型コラーゲンを模倣することが可能となる。本発明のすべてのアッセイで用いられる合成コラーゲンは、三重らせんに自己組織化してフィブリルを形成する能力を有し、それによって、合成コラーゲンはヒトI型コラーゲンを模倣することが可能となる。
【0140】
特定の実施形態では、用いられる合成コラーゲンは、米国特許第7,262,275号に記載されている。合成コラーゲン分子は、米国特許第7,262,275号に記載されている方法によって作製された(例えば、実施例6および実施例7を参照)。この分子の分子量は、同特許の実施例セクションに記載の方法により、1000000超であると測定された。
【0141】
特定の実施形態では、合成コラーゲンは、GPC−MALs(ゲル浸透クロマトグラフィー−多角度レーザー光散乱)に基づく以下の値を有する;平均分子量(M
n)1.3×10
4;M
w(重量平均分子量)=1.6×10
4;サイズ平均分子量(M
z)2.0×10
4。他の実施形態では、合成コラーゲンは、GPC‐MALs(ゲル浸透クロマトグラフィー‐多角度レーザー光散乱)に基づく以下の値を有する;平均分子量(M
n)2.8×10
4;M
w(重量平均分子量)=4.1×10
4;サイズ平均分子量(M
z)6.1×10
4。
【0142】
合成コラーゲンは、GPC‐Malsによって測定することができる。本発明で試験される合成コラーゲン分子は、東ソー製のHLC‐8120GPCデバイスを用い、以下の条件で測定した。
カラム:TSKgel α‐M(内径7.8mm×30cm)×2(東ソー製)
密度検出器:示差屈折率計(RI検出器)、極性=(+)
MALS:DAWN HELEOS(ウィアットテクノロジー(Wyatt Technology)製)
MALSレーザー波:658nm
溶出液:HFIP(1,1,1,3,3,3‐ヘキサフルオロ‐2‐プロパノール)セントラル硝子製 + 5mM CF
3COONa(1級、和光純薬製)
流速:0.6mL/分
カラム温度:40℃
RI検出器温度:40℃
MALS温度:室温
サンプル密度:2mg/mL
サンプル量:100μL
サンプルの前処理:サンプルの秤量後、任意の量の溶出液を添加することでこれを溶解し、室温で一晩静置した。サンプルを緩やかに混合し、次に0.5μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過した。
【0143】
特定の実施形態では、nは、20から250の整数である。特定の実施形態では、nは、20から200の整数である。特定の実施形態では、nは、20から150の整数である。特定の実施形態では、nは、30から100の整数である。特定の実施形態では、nは、20から2500;20から2000;20から1500;20から1000;20
から500;20から250;30から2500;30から2000;30から1500;30から1000;30から500;または30から250の整数である。上記で考察した合成コラーゲン分子は、三重らせんに自己組織化してフィブリルを形成する能力を有することが好ましく、それによって、合成コラーゲンはI型コラーゲンを模倣することが可能となる。
【0144】
合成コラーゲン選択の際に考慮される2つの因子は、溶解性および取扱いの容易さである。分子量が小さすぎると、合成コラーゲンは、低い溶解度特性を有し得る。分子量が大きすぎると、合成コラーゲンは、良好な取扱い特性を持たない可能性がある(粘稠過ぎる、および分散性が悪い可能性がある)。従って、式(I)[−(Pro−X−Gly)
n]の好ましい合成コラーゲンは、良好な溶解性および良好な取扱い特性の両方を有する。
【0145】
以下の合成コラーゲン分子について試験を行った:n=24(Mn=6300);n=28(Mw=7500);n=49(Mn=13000);n=60(Mw=16000);n=75(Mz=20000);n=105(Mn=28000);n=153(Mw=41000);n=229(Mz=61000)。種々の合成分子を試験すると、49〜75のn値を有する分子が、望ましい溶解性と取扱い特性との最良の組み合わせを示した。
【0146】
本発明の特定の実施形態では、合成コラーゲンは、すべて1つの長さであってよく(例えば、すべての合成分子においてn=49、特定の実施形態では、合成コラーゲンは、多くの異なる長さの混合物であってよい(例えば、これに限定されないが、合成コラーゲンは、49〜75のnを有する分子の混合物である)。
【0147】
キット
本発明は、血小板凝集を試験するのに有用である、合成コラーゲンを含むキットも提供する。合成コラーゲンは、上述の通りであり、多くの異なる濃度であってよい。加えて、キットは、1つ以上の希釈、ならびにコントロールを含んでもよい。
【0148】
合成コラーゲンは、「試験内」濃度として用いられるよりも高い濃度でバイアル中に供給されてよい。特定の実施形態では、バイアル中の合成コラーゲンは、好ましくは、所望される最終「試験内」濃度の量の10倍超である。
【0149】
特定の実施形態では、合成コラーゲンは、合成コラーゲンの希釈を作り出す必要性を回避するために、本発明の方法で用いられることが考慮される濃度でキット中に供給される。言い換えると、合成コラーゲンは、それが本発明の方法で直接用いられることになる濃度であるように提供される。
【0150】
他の実施形態では、バイアルは、より高い濃度の量を含有してよく、キットに含まれる説明書きが、合成コラーゲンの所望される最終「試験内」濃度を達成するようにアッセイで用いられる所望される濃度に関する使用説明を提供する。
【0151】
他の実施形態では、キットは、合成コラーゲンの少なくとも1つの単回使用バイアルおよび/または少なくとも1つの多数回使用バイアルを含有する。単回使用バイアルの場合バイアルは、1回の試験に必要とされる合成コラーゲンの量のみを含有する。多数回使用バイアルの場合、合成コラーゲンは、所望される試験内濃度で供給されてよいが、バイアルは、2回以上の試験に必要とされる体積を超える量を含有する。
【0152】
本発明のキットは、本明細書で述べる方法を用いる光透過型アッセイで合成コラーゲンを用いるための使用説明を含有することが好ましい。
【0153】
他の実施形態では、本発明のキットは、同じ濃度の合成コラーゲンのバイアルを2つ以上含有し、または他の実施形態では、キットは、異なる濃度のバイアルを2つ以上含有する。異なる濃度のバイアルを2つ以上有するキットは、本発明の希釈プロファイル試験で有用である。例えば、本発明の1つのキットは、異なる濃度範囲の合成コラーゲンを有する7、6、5、4、または3つのバイアルを含有してよい。各バイアルは、特定の実施形態では、所望される最終「試験内」濃度の合成コラーゲンを提供し、単回使用または多数回使用バイアルとして供給されてよい。
【0154】
本発明は、(特定の実施形態では)合成コラーゲンを用いて作製された希釈プロファイルと共に、血小板凝集能力を測定すること、ならびにそれに続くデータ分析および利用可能である報告に基づいている。合成コラーゲンを用いて1つ以上の抗血小板およびアスピリン療法レジメンに対する血小板の応答ならびにその他の尺度を測定するためのその他の方法も、有用であることが期待され、例えば、全血およびポイントオブケア血小板機能分析器、方法、および技術などであり、インピーダンスおよび多電極インピーダンス凝集測定、高せん断応力コーンプレート式フローサイトメトリー、ならびに血小板機能または反応性のその他のポイントオブケア技術およびアッセイなどである。
【0155】
発明者らは、合成コラーゲンの保存に用いられるバイアルの性質が、コラーゲンをある予測不能な度合いで活性化することによってコラーゲンに影響を与え得ることを見出した。合成コラーゲンを保存するために用いられる容器は、コラーゲンを活性化せず、合成コラーゲンがバイアルから取り出されて試験系中に導入された際に、合成コラーゲンの活性化および接着の度合いが予測可能であり、試験系だけに起因することを確保することが好ましい。言い換えると、コラーゲンと容器との相互作用による意図しない活性化によって引き起こされるアーチファクトは、試験中に導入されない。合成コラーゲンを含むコラーゲンは、汎用ポリプロピレンバイアルまたはその他の容器中に保存されると、未知の度合いで活性化され、その後容器に接着し、従って試験系に加えることができない。容器および/またはキャップに接着したために試験系に用いることができないコラーゲンの量は未知であり、安定性データに基づいて、不定である。発明者らは、ホモポリマー容器中で作製され、保存された合成コラーゲンを用いることで、試験結果の高い度合いの変動性が排除されることを見出した。従って、合成コラーゲンは、ホモポリマー容器中で作製され、保存されることが好ましい。
【0156】
ポリプロピレンとして示されるほとんどの容器は、単一のプラスチックではなく、製造プロセスの過程で種々の添加剤を含めることによってその性能が修飾され得るプラスチックのファミリーである。従って、製造プロセス自体によって、異なる様々なポリプロピレンが作製され得る。さらに、添加剤の性質の大部分は、購入者/一般には未知であるか、または開示されておらず、それは、この情報が、製造業者にとって所有財産であると見なされているからである。加えて、離型剤により、評価することのできない別の変動要素が追加される。
【0157】
発明者らは、最も長期的な安定性を有し、合成コラーゲンとの相互作用を起こさない容器が、以下の特性を有することを見出した:a)化学構造は、繰り返される特定の同一のモノマーに基づいている(ホモポリマー − 同一のモノマーユニットから成るポリプロピレンポリマー);b)キャップは、チューブと同じ材料から作製される;およびc)キャップは、シリコーンOリングまたはワッシャーなどの追加の内部シールを有するか、またはキャップの中に成型された二次シールを有する。代表的なバイアルとしては、シムポート(T310シリーズ);レークチャールズマニュファクチャリング(54Aシリーズ);およびBD Falconチューブ 352096シリーズ)から入手されるクライオバイアルおよびキャプが挙げられる。
【0158】
加えて、本発明者らは、合成コラーゲンが、精製水の代わりに生理食塩水で希釈された場合に、より良好な安定性が達成されることを見出した。
【0159】
特定の実施形態では(本明細書で述べる方法およびキットを含む)、合成コラーゲンは、ポリプロピレンホモポリマー中にて供給および/または保存される。特定の実施形態では、キャップは、バイアル/チューブと同じ材料である。特定の実施形態では、容器は、追加の内部シールを有するか、またはその中に成型された二次シールを持つキャップを有する。特定の実施形態では、容器は、上述したすべての特徴を有する。
【実施例】
【0160】
実施例1:正常およびアスピリン化ヒト多血小板血漿中におけるチカグレロル、シロスタゾール、ならびにアブシキシマブの抗血小板活性を検出するための合成コラーゲンの使用の評価
【0161】
物質:抗血小板薬
チカグレロル(Brilinta(登録商標)、アストラゼネカ,ロンドン,英国;ロットAL0153,有効期限2014年2月)を、ロヨラ大学医療センター入院患者向け調剤部より、90mg錠剤として入手した。錠剤を乳鉢および乳棒を用いて粉砕し、続いて10mg/mLの濃度でDMSO中に溶解した。このストック溶液を脱イオン水で希釈し、0.5、0.1、および0.05mg/mLの作業溶液を作製した。
【0162】
シロスタゾール(Pletal(登録商標)、大塚製薬(Otsuka Laboratories),徳島,日本;ロット0B91M)を、粉末として入手した。シロスタゾールをDMSO中に溶解した5mMのストック溶液とした。このストック溶液を脱イオン水で希釈し、250、125、および50μMの作業溶液を作製した。
【0163】
アブシキシマブ(ReoPro(登録商標)、イーライリリー(Eli-Lilly),インディアナポリス,インディアナ州;ロット12D09AA、有効期限2015年5月)を、2mg/mLの溶液として入手し、これを生理食塩水で希釈して、12.5、25、および50μg/mLの作業溶液を作製した。
【0164】
アスピリン粉末を100%メタノールに溶解し、100mMのストック溶液を作製した。このストック溶液を脱イオンで希釈して、1mMの作業溶液を作製した。
【0165】
物質:血小板アゴニスト
ADPを、Bio/Dataコーポレーション,ホルシャム,ペンシルバニア州より入手した。各バイアルを1mLの脱イオン水で再構成し、100μMの作業溶液を作製した。凝集キュベット中のADPの最終濃度は、10μMであった。
【0166】
アラキドン酸を、Bio/Dataコーポレーション,ホルシャム,ペンシルバニア州より入手した。各バイアルを0.5mLの脱イオン水で再構成し、5mg/mLの作業溶液を作製した。凝集キュベット中のアラキドン酸の最終濃度は、500μg/mLであった。
【0167】
生物学的コラーゲンを、Bio/Dataコーポレーション,ホルシャム,ペンシルバニア州より入手した。各バイアルを0.5mLの脱イオン水で再構成し、1.9mg/mLの作業溶液を作製した。凝集キュベット中のBio/Dataコラーゲンの最終濃度は、190μg/mLであった。
【0168】
生物学的コラーゲンを、Chrono Logコーポレーション,ハバータウン(Havertown),ペンシルバニア州より、1mg/mL溶液として入手した。生理食塩水で希釈することにより、100μg/mLの作業溶液を作製した。凝集キュベット中のChrono Logコラーゲンの最終濃度は、10μg/mLであった。
【0169】
合成コラーゲンは、JNCコーポレーション,横浜,日本より、80、160、320、および640ng/mLの作業濃度で提供を受けた。凝集キュベット中の合成コラーゲンの最終濃度は、64、32、16、および8ng/mLであった。
【0170】
方法:血液採取
健康なヒト提供者からの全血の採取については、ロヨラ大学シカゴ校保健学部施設内治験審査委員会(Institutional Review Board of the Health Sciences Division of Loyola University)による認可を受けた。全血は、肘前静脈からダブルシリンジ技術を用いて採取し、1部の3.2%クエン酸ナトリウム(1部のクエン酸塩に対して9部の血液)を添加することで抗凝固剤処置を行った。クエン酸血に、室温、80×gにて、15分間の遠心分離を行い、多血小板血漿(PRP)を調製した。PRPの上清を回収し、キャップ付きチューブ中、室温で保存した。残りのクエン酸血に、1100×gにて15分間、再度遠心分離を行い、少血小板血漿(PPP)を調製した。PRPの血小板数は、ICHOR II Analyzer、ヘレナラボラトリーズ、ボーモント、テキサス州、を用いて特定した。PRPの血小板数は、同一源PPPを添加することによって、250000〜300000/μLに調節した。
【0171】
この実験では、6人の血液ドナーを用いた。プロトコルの「非アスピリン化」および「アスピリン化」の部分用に、それぞれ別の日に採取を行った。プロトコルの「非アスピリン化」部分については、凝集応答が他の5人のドナーと大きく異なっていたため、1人のドナー(CS)を最終分析から除外した。プロトコルの「アスピリン化」部分については、3人のドナーが、血液採取の<48時間前にアスピリンを経口服用した。他の3人のドナーについては、アスピリンを、100μMの最終濃度でPRPに生体外添加した。
【0172】
方法:血小板凝集
血小板凝集は、PAP 8E血小板凝集測定装置(Bio/Data)を用いて測定した。各ウェルを、PPPを用いてブランク調整した。25μLの生理食塩水または抗血小板薬、および200μLのPRPを、マグネティックスターラーチップを入れたキュベットへ添加し、3分間インキュベートして、サンプルを37℃に平衡化した。25μLのアゴニストを各キュベットに添加し、安定状態が得られるまで凝集プロファイルをモニタリングした。結果を、最大凝集レベルについての表にした。ある反応条件下では、可逆的な凝集が見られた。これは、チカグレロルまたはシロスタゾールの存在下、ADPおよびアラキドン酸誘導凝集で最もよく見られた。最終凝集レベルについても表にした。
【0173】
結果:
チカグレロル
非アスピリン化血漿において、ADP誘導凝集は強く阻害された(
図8)。アラキドン酸誘導凝集も、同様の度合いで阻害された。Bio/Dataコラーゲン、Chrono
Logコラーゲン、または64ng/mL合成コラーゲンのいずれも、チカグレロルによって大きく影響を受けることはなかった。チカグレロル(登録商標)の抗血小板効果は、32ng/mLおよびそれより低い濃度の合成コラーゲンによって凝集が誘導された場合に識別することができた。チカグレロル検出に対する感受性は、合成コラーゲン濃度の低下に伴って高まるように思われた。アスピリン添加は、ADP誘導凝集応答に影響を与えなかった(
図9)。対照的に、アラキドン酸および8ng/mL合成コラーゲン誘導凝集アッセイでは、抗血小板効果は観察されず、16および32ng/mL合成コラーゲン
誘導凝集アッセイでは、その効果は低下された。
【0174】
シロスタゾール
非アスピリン化血漿において、シロスタゾールの最も著しい効果は、アラキドン酸誘導凝集に対するものであり(
図10)、ここでは、≧12.5μMの濃度にて、約20%の凝集レベルが観察された(シロスタゾールの非存在下での95%に対して)。ADP誘導凝集への影響は、最小限であった(25μMにて約30%阻害)。25μMまでの濃度のシロスタゾールは、Bio/Dataコラーゲン、Chrono Logコラーゲン、または64ng/mL濃度の合成コラーゲンによって誘導される凝集は阻害しなかった。これより低い濃度の合成コラーゲンでは、より高濃度のシロスタゾールによる抗血小板効果を観察することができた。PRPにアスピリンを添加すると、シロスタゾールを検出する能力が失われた(
図11)。
【0175】
アブシキシマブ
非アスピリン化血漿において、アブシキシマブは、試験した濃度範囲全体にわたって(1.25〜5μg/mL)、アゴニスト誘導凝集の濃度依存的阻害を示した(
図12)。アラキドン酸および合成コラーゲン(8および16ng/mL)は、アブシキシマブの存在の検出に対して最も感受性が高かった。Bio/DataおよびChrono Logコラーゲン誘導凝集の阻害は、5μg/mLの濃度でのみ見られた。
【0176】
アスピリン化血漿において、アラキドン酸に対する応答は、ほぼ完全に弱められた(<20%凝集)(
図13)。アスピリン化血漿にアブシキシマブを添加すると、アラキドン酸誘導凝集の完全な阻害が得られる結果となった。10μMのADPおよび0.19mg/mLのBio/Dataコラーゲンによって誘導される凝集に対するアスピリンの存在による影響は、最小限であったように発明者には思われた。アスピリンは、10μg/mL Chrono Logコラーゲン誘導凝集は阻害しなかったが、アブシキシマブは、アスピリン化PRP中でのChrono Logコラーゲン誘導凝集のより強い阻害を示した。試験したすべての濃度において、合成コラーゲン試薬は、非アスピリン化血漿よりもアスピリン化血漿中にて、より低い凝集レベルを示した。
【0177】
考察:
ADP、アラキドン酸、および生物学的コラーゲンは、血小板機能の研究に一般的に用いられるアゴニストである。チカグレロルは、ADPおよびアラキドン酸によって誘導される凝集を阻害したが、生物学的コラーゲン誘導凝集に対しては、ほとんど効果を示さなかった。シロスタゾールは、アラキドン酸誘導凝集を強く阻害したが、ADP誘導凝集に対しては、より弱く、濃度依存的である阻害を示した。生物学的コラーゲン誘導凝集は、シロスタゾールによる影響を受けなかった。アブシキシマブは、ADP、アラキドン酸、および生物学的コラーゲンによって誘導される凝集を阻害したが、ADPおよびアラキドン酸の方がより感受性が高かった。
【0178】
合成コラーゲン試薬は、8から64ng/mLの濃度範囲で試験した。64ng/mLの濃度の合成コラーゲンによって誘導される凝集は、チカグレロルまたはシロスタゾールによる凝集応答に対する効果が最小限であったという点で、Bio/DataおよびChrono Logコラーゲン試薬のそれと同等であった。コラーゲンまたは64ng/mLの濃度の合成コラーゲンによって誘導される凝集は、同等の度合いでアブシキシマブによって阻害された。合成コラーゲンのより低い濃度では、チカグレロル、シロスタゾール、およびアブシキシマブの抗血小板効果は、容易に明らかであった。
【0179】
試験した濃度において、Bio/DataコラーゲンまたはChrono Logコラーゲンによって誘導される凝集は、アスピリンで阻害されることはなかった。合成コラー
ゲン試薬は、他の抗血小板薬の非存在下にて、いずれの生物学的コラーゲンよりもアスピリンに対するより高い感受性を示したが、アスピリンの存在は、これらの濃度においてチカグレロルまたはシロスタゾールの存在を検出する合成コラーゲンの能力に影響を及ぼした。
【0180】
結論:
アブシキシマブは、本研究で提供された合成コラーゲン濃度を用いて、アスピリンの存在下にて容易に検出可能である。チカグレロルは検出可能であるが、その濃度依存性は、アブシキシマブの場合ほど良好に明らかではない。
【0181】
実施例2:LTAAおよび合成コラーゲンを用い、PRPサンプルに抗血小板薬を添加することによる血小板凝集試験
アブシキシマブ(ReoPro(登録商標))
2人の健康なドナーからPRPサンプルの提供を受けた。4つの異なる合成コラーゲン濃度の群を試験した(12.5ng/mL、25ng/mL、50ng/mL、および100ng/mL。アブシキシマブを、異なる濃度の合成コラーゲンの4つの群の各々に添加した。1つの群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、コントロールとして生理食塩水を添加した。第二の群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、12.5μg/mL(マイクログラム/mL)のアブシキシマブを添加した。第三の群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、25μg/mLのアブシキシマブを添加した。第四の群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、50μg/mLのアブシキシマブを添加した。各々に対してLTAAを実施し、PA、PS、SA、SS、AUC、LP、DA、MA、およびFAを各々について測定した。試験を、ドナーのサンプルの各々に対して実施した。
【0182】
チカグレロル(Brilinta(登録商標))
2人の健康なドナーからPRPサンプルの提供を受けた。4つの異なる合成コラーゲン濃度の群を試験した(12.5ng/mL(ナノグラム/mL)、25ng/mL、50ng/mL、および100ng/mL。チカグレロルを、異なる濃度の合成コラーゲンの4つの群の各々に添加した。1つの群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、コントロールとして生理食塩水を添加した。第二の群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、0.05mg/mL(ミリグラム/mL)のチカグレロルを添加した。第三の群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、0.1mg/mLのチカグレロルを添加した。第四の群では、4つの濃度の合成コラーゲンの各々に、0.5mg/mLのチカグレロルを添加した。各々に対してLTAAを実施し、PA、PS、SA、SS、AUC、LP、DA、MA、およびFAを各々について測定した。試験を、ドナーのサンプルの各々に対して実施した。
【0183】
結果は、合成コラーゲンが、4つの異なる濃度で薬物を検出したことを示した。合成コラーゲンおよび2つの薬物は、血小板の凝集を引き起こした。結果はまた、2つの薬物の異なる希釈が、合成コラーゲンの4つの希釈すべてで機能し、血小板の凝集を引き起こしたことも示した。試験はまた、特定の薬物希釈と組み合わせた合成コラーゲンの特定の組み合わせが、他よりも感受性が高いことも明らかにした。
【0184】
アブシキシマブおよびチカグレロルは、2つの異なる種類の薬物であるが、このアッセイは、両方で機能した。
【0185】
別の試験において、抗血小板薬およびアスピリンの二重療法によるドナー血小板に対する効果を試験するために、サンプルをアスピリン化することも可能である。
【0186】
実施例3:血小板凝集試験のためのフローサイトメトリーの使用
BioData仔ウシ皮由来コラーゲンのバイアルを、0.5mLの水で再構成して、1.9mg/mLの溶液を作製した。合成コラーゲンのバイアルを、1mLの合成コラーゲン用希釈液で再構成して、0.0005mg/mLの溶液を作製した。Chrono Logコラーゲンを生理食塩水で希釈して、100μg/mLの溶液を作製した。2%のパラホルムアルデヒドストック溶液を、カルシウム非含有タイロード緩衝液で希釈して、1%のパラホルムアルデヒド溶液を作製した。1mLの1%パラホルムアルデヒドを入れたチューブ一式を作製した。30μLのコラーゲン試薬および30μLの抗血小板薬を入れた第二のチューブ一式を作製し、37℃の加熱ブロックに設置した。健康な個人から全血をクエン酸ナトリウム中へ採取した。240μLのクエン酸血を、15〜20秒の間隔でチューブに添加し、緩やかに混合した。3分間のインキュベーション時間の後、50μLの活性化血を、対応するパラホルムアルデヒド含有チューブへ移した。4℃で30分間インキュベートした後、サンプルを、1600rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。細胞ペレットを、750μLのタイロード緩衝液中に再懸濁した。CD61FITCおよびCD62PE(BDバイオサイエンス)の各10μLを、一式の清浄なチューブに添加した。100μLの再懸濁した細胞を、これらの抗体チューブに添加した。室温、暗所での30分間のインキュベーション時間の後、700μLのタイロード緩衝液を各チューブに添加し、サンプルをフローサイトメーター(EPICS‐XL、ベックマン‐コールター)で分析した。血小板活性化を、P‐セレクチンを発現する血小板のパーセントおよび凝集した血小板のパーセントについて評価した。