特許第6429264号(P6429264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6429264ボラノホスフェート化合物、及び核酸オリゴマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429264
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ボラノホスフェート化合物、及び核酸オリゴマー
(51)【国際特許分類】
   C07H 23/00 20060101AFI20181119BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   C07H23/00
   C12N15/09ZNA
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-234384(P2013-234384)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-93853(P2015-93853A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】和田 猛
(72)【発明者】
【氏名】植原 渉
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−523601(JP,A)
【文献】 特表2006−518999(JP,A)
【文献】 特表2006−518197(JP,A)
【文献】 特表2005−529589(JP,A)
【文献】 特開2011−184318(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0245099(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/085272(WO,A1)
【文献】 Journal of Organic Chemistry,2014年 3月28日,79(8),3465-3472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C07F
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるボラノホスホネート化合物。
【化1】

(一般式(I)中、Rは水素原子又はアセチル基、フェノキシアセチル基、ピバロイル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、ベンゾイル基、トリフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリチル(DMTr)基、4−メトキシトリチル(MMTr)基、9−フェニルキサンテニル基、トリメチルシリル基、シアノメトキシメチル基、2−(シアノエトキシ)エチル基及びシアノエトキシメチル基からなる群より選ばれる水酸基の保護基を表し、Bsは、ベンジル基、4−メトキシベンゾイル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、フェニルアセチル基、4−tert−ブチルフェノキシアセチル基、4−イソプロピルフェノキシアセチル基及び(ジメチルアミノ)メチレン基からなる群より選ばれる保護基を有してもよいアデニン、グアニン及びシトシン並びにチミン及びウラシルからなる群より選ばれる核酸塩基を表し、Xはカウンターカチオンを表す。)
【請求項2】
一般式(I)におけるBsが、アデニン、ウラシル、グアニン、チミン又はシトシンである請求項1に記載のボラノホスホネート化合物。
【請求項3】
一般式(I)におけるRが、前記水酸基の保護基である請求項1又は請求項2に記載のボラノホスホネート化合物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のボラノホスホネート化合物をモノマーの1つとして用いて、前記モノマーを縮合する縮合工程を含む、核酸オリゴマーの製造方法
【請求項5】
前記縮合工程で得られた核酸オリゴマーを酸化剤により酸化する酸化工程を更に含み、 前記酸化工程で得られた核酸オリゴマーが、一般式(II)で示される構造及び一般式(III)で示される構造のうち少なくとも1つを有する、請求項4に記載の核酸オリゴマーの製造方法
【化2】

(一般式(II)中、Rは水素原子又はアセチル基、フェノキシアセチル基、ピバロイル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、ベンゾイル基、トリフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリチル(DMTr)基、4−メトキシトリチル(MMTr)基、9−フェニルキサンテニル基、トリメチルシリル基、シアノメトキシメチル基、2−(シアノエトキシ)エチル基及びシアノエトキシメチル基からなる群より選ばれる水酸基の保護基を表す。一般式(II)及び一般式(III)中、Bsはベンジル基、4−メトキシベンゾイル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、フェニルアセチル基、4−tert−ブチルフェノキシアセチル基、4−イソプロピルフェノキシアセチル基及び(ジメチルアミノ)メチレン基からなる群より選ばれる保護基を有してもよいアデニン、グアニン及びシトシン並びにチミン及びウラシルからなる群より選ばれる核酸塩基を表し、Xはカウンターカチオンを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボラノホスフェート化合物、及び核酸オリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸と相補的な塩基配列を有するアンチセンス分子は、標的核酸と相補的な二重鎖を形成し、標的核酸からのタンパク質生成を阻害することができる。標的核酸として疾病関連遺伝子を選択した場合には、アンチセンス分子は、疾病関連遺伝子に直接働きかけるため、遺伝子治療に有効な医薬として注目されている。
【0003】
アンチセンス分子(核酸オリゴマー)は、標的となるタンパク質の生成を効率よく阻害する観点から主として、細胞膜透過性、ヌクレアーゼ耐性、体内(例えば、pH7.4の環境下)での化学的安定性、及び特定の塩基配列とのみ安定な二重鎖を形成する性質を有することが求められる。アンチセンス分子としては、例えば、ホスホロチオエート化合物を用いて得られる核酸オリゴマー(以下、「ホスホロチオエート型核酸オリゴマー」と称する)が知られている(非特許文献1)。
【0004】
アンチセンス分子のなかでも、ボラノホスフェート化合物を用いて得られる核酸オリゴマー(以下、「ボラノホスフェート型核酸オリゴマー」と称する)は、優れた水溶性、脂溶性、及び生体内のヌクレアーゼ耐性を有し、かつホスホロチオエート型核酸オリゴマーに比べ、細胞毒性が低いことなどの利点を有することが知られている(非特許文献2)。この観点から、ボラノホスフェート化合物は、アンチセンス分子(核酸オリゴマー)を構成するモノマーとしての使用が提案され、多くの側面から種々検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ボラノホスフェート及びその他の含リン酸−ホウ素結合修飾型RNAの効率的な合成に有用なリボヌクレオチドH−ボラノホスホネート化合物が開示されている。また、特許文献2〜3及び非特許文献1〜5には、ボラノホスフェート型核酸オリゴマーの効率的な製造に有用なボラノホスフェート化合物及びそれを用いたオリゴヌクレオチド誘導体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−184318号公報
【特許文献2】特開2011−225598号公報
【特許文献3】特許第4814084号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nucleic Acids, Research, 2010, Vol.38, No.20, pp.7100-7111
【非特許文献2】Chem Rev.,2007, Vol.107, pp.4746-4796
【非特許文献3】J.Org.Chem.,2006, Vol.71,pp.4262-4269
【非特許文献4】J.Org.Chem.,2004, Vol.69,pp.5261-5268
【非特許文献5】Chem.Commun.,2009, pp.2466-2468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ボラノホスフェート型核酸オリゴマーは、疎水的、かつ立体障害の大きな官能基であるボラノ基(BH)を構造上有しているため、ボラノ基を構造上有さない核酸オリゴマーに比べ、相補鎖との二重鎖形成能が低い。
【0009】
本発明は、従来のボラノホスフェート型核酸オリゴマーと比較して、相補鎖との二重鎖形成能に優れた核酸オリゴマーを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記核酸オリゴマーを合成するのに適した新規ボラノホスフェート化合物を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(I)で示されるボラノホスフェート化合物。
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(I)中、Rは水素原子又は水酸基の保護基を表し、Bsは保護基を有してもよい核酸塩基を表し、Xはカウンターカチオンを表す。)
<2> 一般式(I)におけるBsが、アデニン、ウラシル、グアニン、チミン又はシトシンである<1>に記載のボラノホスフェート化合物。
<3> 一般式(I)におけるRが、水酸基の保護基である<1>又は<2>に記載のボラノホスフェート化合物。
<4> 少なくとも2つの塩基からなる塩基配列を有し、かつ、該塩基配列に含まれる少なくとも1つの塩基が、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造中の塩基である核酸オリゴマー。
<5> 一般式(II)で示される構造及び一般式(III)で示される構造のうち少なくとも1つを有する<4>に記載の核酸オリゴマー。
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(II)中、Rは水素原子又は水酸基の保護基を表す。一般式(II)及び一般式(III)中、Bsは保護基を有してもよい核酸塩基を表し、Xはカウンターカチオンを表す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のボラノホスフェート型核酸オリゴマーと比較して、相補鎖との二重鎖形成能に優れた核酸オリゴマーを提供することができる。
また、本発明によれば、上記核酸オリゴマーを合成するのに適した新規ボラノホスフェート化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は、精製前のLNAPBO−ODNのイオン交換HPLCのグラフである。(B)は、精製後のLNAPBO−ODNのイオン交換HPLCのグラフである。
図2】(A)は、100mM NaCl条件下での相補鎖DNAとアンチセンス分子(天然型DNA、PBO−DNA、LNAPBO−ODN)との融解曲線である。(B)は、100mM NaCl条件下での相補鎖mRNAとアンチセンス分子(天然型DNA、PBO−DNA、LNAPBO−ODN)との融解曲線である。
図3】(A)は、1M NaCl条件下での相補鎖DNAとアンチセンス分子(天然型DNA、PBO−DNA、LNAPBO−ODN)との融解曲線である。(B)は、1M NaCl条件下での相補鎖mRNAとアンチセンス分子(天然型DNA、PBO−DNA、LNAPBO−ODN)との融解曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のボラノホスフェート化合物は、上記一般式(I)で示される化合物である。この化合物は、核酸オリゴマーを製造するモノマーとして用いることができる。
また、本発明の核酸オリゴマーは、少なくとも2つの塩基からなる塩基配列を有し、かつ、塩基配列に含まれる少なくとも1つの塩基が、一般式(I)で示されるボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造中の塩基である核酸オリゴマーである。
【0018】
本発明のボラノホスフェート化合物は、リボース構造の2位の炭素原子に結合する酸素原子と4位の炭素原子とがメチレン基を介して環化した所謂固定化核酸(locked nucleic acid:LNA)構造を有するボラノホスフェート化合物である。そのため、このボラノホスフェート化合物をモノマーとして用いて得られた核酸オリゴマーは、従来のボラノホスフェート型核酸オリゴマーに比べ、核酸オリゴマーと標的核酸との二重鎖形成能を高めることができる。
【0019】
一般式(I)で示される固定化核酸(LNA)構造を有するボラノホスフェート化合物を、本明細書では、適宜「LNA修飾ボラノホスフェート化合物」と称する。
本発明において「モノマー」とは、核酸オリゴマーを製造する際に、核酸オリゴマーのヌクレオシド単位を導入するため使用される核酸を意味する。
【0020】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0021】
<LNA修飾ボラノホスフェート化合物>
本発明のLNA修飾ボラノホスフェート化合物は、下記一般式(I)で示される。一般式(I)中、Rは水素原子又は水酸基の保護基を表し、Bsは保護基を有してもよい核酸塩基を表し、Xはカウンターカチオンを表す。
【0022】
【化3】

【0023】
は、水素原子又は水酸基の保護基を表す。水酸基の保護基としては、例えば、アセチル基、フェノキシアセチル基、ピバロイル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、ベンゾイル基、トリフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリチル(DMTr)基、4−メトキシトリチル(MMTr)基、9−フェニルキサンテニル基、トリメチルシリル基、シアノメトキシメチル基、2−(シアノエトキシ)エチル基、シアノエトキシメチル基等を挙げることができる。これらの水酸基の保護基のうち、4,4’−ジメトキシトリチル基が、酸性条件下で容易に除去可能であり、固相合成における鎖長伸長に適しているため、より好ましい。
【0024】
Bsは保護基を有してもよい核酸塩基を表す。核酸塩基としては、アデニン、ウラシル、チミン、グアニン、及びシトシンからなる群から選ばれる核酸塩基の他、例えば、リボチミジン、5−メチルウリジン等の修飾された核酸塩基を挙げることができる。これらのうち、アデニン、ウラシル、グアニン、チミン及びシトシンが好ましい。
【0025】
核酸塩基が保護基を有する場合、保護基の種類は特に限定されない。核酸塩基として、アミノ基を有するアデニン、グアニン、及びシトシンが選択される場合、核酸塩基のアミノ基を保護する観点から、保護基として、例えば、ベンジル基、4−メトキシベンゾイル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、フェニルアセチル基、4−tert−ブチルフェノキシアセチル基、4−イソプロピルフェノキシアセチル基、(ジメチルアミノ)メチレン基等を挙げることができる。
【0026】
はカウンターカチオンを表す。カウンターカチオンとしては、例えば、有機アミン化合物由来のカチオン、又は金属カチオン等を挙げることができる。有機アミン化合物由来のカチオンとしては、有機溶媒への溶解度、及びカウンターカチオンの揮発性の観点から、例えば、三級アルキルアミン化合物由来のカチオンを挙げることができる。三級アルキルアミン化合物由来のカチオンとしては、例えば、トリエチルアミン由来のカチオン(HNEt)を挙げることができる。金属カチオンとしては、Na、Li、K等が挙げられる。
【0027】
一般式(I)で表されるLNA修飾ボラノホスフェート化合物は、光学的に純粋な化合物、ラセミ体、ジアステレオ混合物等、任意の形態の物質であってもよい。
【0028】
LNA修飾ボラノホスフェート化合物は、公知の方法で製造することができる。具体的には、LNA修飾ボラノホスフェート化合物の製造方法は、LNA修飾デオキシリボ核酸をH−ボラノホスフィニル化剤を用いてH−ボラノホスフェート化する工程(ボラノホスフェート化工程)を含むことができる。
【0029】
LNA修飾デオキシリボ核酸とは、LNA構造を有するデオキシリボ核酸を意味し、LNA修飾デオキシリボ核酸の有する官能基又は核酸塩基が保護基を有するLNA修飾デオキシリボ核酸の誘導体も含まれる。
【0030】
ボラノホスフェート化工程で使用されるH−ボラノホスフィニル化剤としては、例えば、H−ボラノホスホネートの有機アミン塩等を挙げることができ、H−ボラノホスホネートの有機アミン塩としては、例えば、ピリジニウム H−ボラノホスホネート、トリエチルアンモニウム H−ボラノホスホネート等を挙げることができる。H−ボラノホスフェート化反応におけるLNA修飾デオキシリボ核酸とH−ボラノホフィニル化剤との量比は、H−ボラノホスフェート化反応が進行すれば特に限定されないが、LNA修飾デオキシリボ核酸に対して、H−ボラノホスフィニル化剤が1.2当量以上2.0当量以下、好ましくは2.0当量で使用することができる。
【0031】
H−ボラノホスフェート化反応は、副反応の進行を抑制する観点から、縮合剤の存在下で行うことができる。縮合剤としては、例えば、N,N−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロライド(BopCl)、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル−トリス(ピロリジン−1−イル)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(PyNTP)等を挙げることができ、核酸オリゴマーの伸長効率の点で、N,N−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロライド(BopCl)であることが好ましい。
【0032】
H−ボラノホスフェート化反応は、必要に応じて、さらに求核触媒の存在下で行ってもよい。求核触媒としては、例えば、3−ニトロトリアゾール等を挙げることができる。
【0033】
H−ボラノホスフェート化反応は、氷冷下(0℃)以上室温(25℃)以下、数分以上数時間以下、例えば30分以上1時間以下の範囲で行うことができる。
【0034】
反応溶媒としては、例えば、含窒素有機溶媒を挙げることができる。含窒素有機溶媒としては、例えば、ピリジン等を挙げることができる。
【0035】
H−ボラノホスフェート化工程は、H−ボラノホスフェート化反応後、反応溶液を不活性有機溶媒で希釈し、その反応溶液を添加して、反応系中に生じた副生成物(例えば、塩化ピリジン、BopClの残渣等)を中和して反応を停止することができる。不活性有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等を挙げることができる。また、保護基の脱離を抑制する観点から、反応を停止する前に、緩衝溶液を添加することが好ましい。緩衝溶液としては、例えば、炭酸水素トリエチルアンモニウム(TEAB)溶液、炭酸水素ナトリウム溶液(NaHCO)、炭酸アンモニウム水溶液((NHCO)等を挙げることができる。不活性溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等を挙げることができる。
緩衝溶液を添加するのは、反応を停止する前に反応溶媒を留去すると副生成物の酸性によって保護基が脱離する場合があるからである。
【0036】
また、本発明のLNA修飾ボラノホスフェート化合物の製造方法は、必要に応じて、ボラノホスフェート化工程で得られた一般式(I)で示されるLNA修飾ボラノホスフェート化合物から水酸基の保護基を脱離する工程(脱離工程)を含むことができる。保護基の脱離工程に用いられる脱離化剤の種類、脱離反応に適用されるpH及びその他の反応条件等については、LNA修飾ボラノホスフェート化合物中の保護基の種類により適宜選択することができる。
【0037】
本発明のLNA修飾ボラノホスフェート化合物の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明のLNA修飾ボラノホスフェート化合物(3a−d)は、例えば、以下のスキーム1に従って製造される。なお、スキーム1では、縮合剤としてN,N−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロライド(Bop−Cl)を用いている。また、出発物質として、H−ボラノホスフィニル化剤(2)及びリボース構造の3位の炭素原子に水酸基が結合したLNA修飾デオキシリボ核酸の誘導体(1a−d)を用いている。
【0038】
【化4】
【0039】
スキーム1におけるBproは保護基を有する核酸塩基を表し、R11及びXは各々一般式(I)中のR及びXと同義である。
LNA修飾ボラノホスフェート化合物(3a−d)は、LNA修飾デオキシリボ核酸の誘導体(1a−d)をH−ボラノホスフィニル化剤(2)によりH−ボラノホスフェート化することによって製造することができる。
【0040】
<核酸オリゴマー>
本発明の核酸オリゴマーは、少なくとも2つの塩基からなる塩基配列を有し、かつ、塩基配列に含まれる少なくとも一つの塩基が、一般式(I)で示されるLNA修飾ボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造中の塩基である核酸オリゴマーである。核酸オリゴマーは、LNA修飾ボラノホスフェート化合物をモノマーの1つとして用いて、このモノマーを縮合することにより得られる構造を有する。
【0041】
核酸オリゴマーの長さ(塩基長)については、2つ以上の塩基を有する核酸オリゴマーであれば特に制限はなく、標的核酸の種類、長さ等に応じて所望の長さを適宜選択できる。本発明の核酸オリゴマーの長さは、特に限定されないが、アンチセンス医薬への応用の観点から、10量体以上30量体以下であることが好ましく、10量体以上21量体以下が好ましい。
核酸オリゴマーの塩基配列は、標的核酸の塩基配列に基づいて設定される。二重鎖形成能の観点から、核酸オリゴマーの塩基配列は、標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列となるように適宜選択されるが、場合によって、異なる塩基を1つ以上含む塩基配列であってもよい。
【0042】
核酸オリゴマーは、LNA修飾ボラノホスフェート化合物のみに由来する核酸オリゴマーであってもよく、LNA修飾ボラノホスフェート化合物と、LNA修飾ボラノホスフェート化合物中のヌクレオシド構造以外のヌクレオシド構造を有する核酸を含む核酸オリゴマー(キメラオリゴマー)であってもよい。本明細書では、LNA修飾ボラノホスフェート化合物中のヌクレオシド構造以外のヌクレオシド構造を有し、核酸オリゴマーを製造する際にモノマーとして使用可能な核酸を、単に「核酸誘導体」と称する場合がある。
【0043】
キメラオリゴマーの場合、LNA修飾ボラノホスフェート化合物の位置については、特に制限はなく、核酸オリゴマー中に連続して存在してもよく、前記核酸誘導体を介在させて不連続に存在してもよい。
【0044】
核酸オリゴマーは、5’末端及び3’末端の少なくとも一方にLNA構造を有することが好ましく、5’及び3’の両末端にLNA構造を有することがより好ましい。5’末端及び3’末端の両末端に存在しうるLNA構造を有するヌクレオシドは、それぞれ独立に、リボース構造の2’位の炭素原子にフッ素原子、水酸基、及びメトキシ基から選択されるいずれか1つが結合したヌクレオシドであってもよい。
【0045】
核酸オリゴマーが他の核酸誘導体を含む場合、LNA修飾ボラノホスフェート化合物の核酸オリゴマー全体における含有数については、特に制限はなく、核酸オリゴマーの長さによって異なるが、10量体以上30量体以下の核酸オリゴマーの場合、LNA修飾ボラノホスフェート化合物由来のヌクレオシドの数は3以上10以下が好ましい。
【0046】
核酸オリゴマーは、核酸オリゴマーにおけるH−ボラノホスフェート基の塩基性溶液中での安定性の観点から、一般式(I)で示される構造のH−ボラノホスフェート基(−O−(BH)PH(O-)−)を酸化した酸化型のボラノホスフェート基(−O−(BH)P(O-)−O−:以下、酸化型ボラノホスフェート基と称する場合がある)を有するヌクレオシド構造中の塩基を含むことが好ましい。
【0047】
前記酸化型のボラノホスフェート基を含む核酸オリゴマーは、以下の構造、すなわち一般式(II)で示される構造及び一般式(III)で示される構造のうち少なくとも1つを有することができる。なお、一般式(II)で示される構造は、LNA修飾ボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造中の塩基が、核酸オリゴマーの5’末端の塩基である場合を意味する。一般式(II)で示される構造が核酸オリゴマー中に含まれる場合、核酸オリゴマーは通常、一般式(II)で示される構造を1つのみ含む。一般式(III)で示される構造は、LNA修飾ボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造中の塩基が、核酸オリゴマーの5’末端及び3’末端以外の塩基である場合を意味する。一般式(III)で示される構造が核酸オリゴマー中に含まれる場合、核酸オリゴマーは、一般式(III)で示される構造を1つ以上含むことができる。
【0048】
【化5】

【0049】
一般式(II)及び(III)中、R、Bs及びXは、一般式(I)におけるR、Bs及びXと同義である。
【0050】
核酸オリゴマーは、LNA修飾ボラノホスフェート化合物以外のモノマー(以下、単に「他のモノマー」と称する場合がある)に由来する他のヌクレオシド構造中の塩基を含むことができる。
核酸オリゴマーを得る際に用いる他のモノマーについては特に制限はなく、例えば、以下の一般式(IV)で表されるボラノホスフェート化合物(以下、LNA未修飾ボラノホスフェート化合物」と称する)、一般式(V)で表される核酸、一般式(VI)で表されるLNA修飾核酸などを挙げることができる。
【0051】
【化6】

【0052】
一般式(IV)〜(VI)中、R、R及びRは一般式(I)中のRと同義であり、Rは、水素原子、保護基を有する水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基)を表し、Bsは一般式(I)中のBsと同義であり、Xは一般式(I)中のXと同義である。
【0053】
前記他のモノマーの由来するヌクレオシド構造は、核酸オリゴマーのいずれの位置に存在してもよい。例えば、一般式(VI)で表されるモノマーは、Rが水素原子を表す場合、核酸オリゴマーの3’末端のヌクレオシドとして使用されてもよい。
【0054】
本発明の核酸オリゴマーは、標的核酸の塩基配列と相補的な塩基配列となるように、LNA修飾ボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造中の塩基を少なくとも1つ以上を用いて、公知の製造方法を用いて得ることができる。具体的には、本発明の核酸オリゴマーの製造方法は、3’末端のLNA修飾ボラノホスフェート化合物を少なくとも1つ含むモノマーから、標的核酸の塩基配列に相補的となる塩基配列となるようにモノマーを選択して、3’末端の塩基となる塩基を含むモノマーに他のモノマーを順次縮合させる工程(縮合工程)を含む。
【0055】
前記縮合工程では、核酸オリゴマーのヌクレオシド構造中のリボース構造の5’位の炭素原子に結合する水酸基とモノマーのリン酸部とが縮合する。
前記縮合工程では、縮合剤を用いることができる。
縮合剤としては、例えば、N,N−ビス(2−オキソ−3−オキサゾニル)ホスフィン酸クロライド、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル−トリス(ピロリジン−1−イル)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(PyNTP)、又は1,3、−ジメチル−2−(3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−ピロリジン−1−イル−1,2,3−ジアザホスホリジウム・ヘキサフルオロホスフェート(MNTP)等を挙げることができる。このうち、副反応を抑制し、かつ反応が速やかに完結する観点から、MNTPが好ましい。
【0056】
前記縮合工程、さらに塩基性化合物の存在下で行うことができる。
塩基性化合物としては、例えば、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(DMAN)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMP)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、2,6−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン等を挙げることができる。このうち、副反応を抑制する観点から、2,6−ルチジンが好ましい。
【0057】
前記縮合工程における縮合反応は、氷冷下(0℃)以上室温(25℃)以下、好ましくは20℃以上25℃以下の範囲で、数分以上数時間以下、例えば15分以上1時間以下の範囲で行うことができる。
【0058】
反応溶媒としては、例えば、不活性溶媒等を挙げることができる。不活性溶媒のうち、アセトニトリル等を挙げることができる。
【0059】
本発明の核酸オリゴマーの製造方法は、固相担体を用いた反応により核酸オリゴマーを製造することができる(固相法)。
固相反応により核酸オリゴマーを製造する場合、核酸オリゴマーの3’末端の塩基を含むモノマーは、リボース構造の3’位の炭素原子に結合する酸素原子を介して、固相担体と結合することができる。この場合、モノマーと固相担体との間には、必要に応じてリンカーが存在してもよい。
【0060】
前記固相担体の種類は特に限定されず、例えば、定孔ガラス、オキサリル化−定孔ガラス、TentaGel支持体−アミノポリエチレングリコール誘導体化支持体、高架橋アミノメチルポリスチレン、Pros−ポリスチレン/ジビニルベンゼンの共重合体等を挙げることができる。前記固相担体とモノマーとの連結には、固相担体上のアミノ基を利用することができる。前記固相担体上のアミノ基としては、3−アミノプロピル基、長鎖アルキルアミノ基(LCAA)等を挙げることができる。前記固相担体とモノマーとの間には、リンカーが存在してもよい。前記リンカーとしては、スクニシル基、オキサリル基等を挙げることができる。
【0061】
本発明の核酸オリゴマーの製造方法は、縮合工程で得られた核酸オリゴマーを酸化剤により酸化する酸化工程を含んでもよい。
酸化剤としては、例えば、(+)−カンフォリルスルホニルオキサジリジン(CSO)(+)−(8,8−ジクロロカンフォリルスルホニル)−オキサジリジン(DCSO)、メチルエチルケトン過酸化物、及びポジティブハロゲン試薬(四塩化炭素、四臭化炭素、ヨウ素、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド等)などを挙げることができる。
酸化反応は塩基性化合物存在下で行ってもよい。塩基性化合物としては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン等を挙げることができる。
【0062】
本発明の核酸オリゴマーの製造における縮合工程は、核酸オリゴマーのヌクレオチド構造中のリボース構造の5’位の炭素原子に結合する水酸基とモノマーのリン酸部とが縮合する反応を含む。このため、5’位の炭素原子に結合する水酸基が保護基を有する場合、脱保護試薬と反応させて保護基を脱離させる工程(第1の保護基脱離工程)を含む。第1の保護基脱離工程は、核酸オリゴマーの製造における縮合反応の前に行う。
前記第1の保護基脱離工程には、脱保護剤を用いることができる。第1の保護基脱離工程で使用し得る脱保護剤としては、例えば、ハロゲン化アルキルカルボン酸等を挙げることができる。ハロゲン化アルキルカルボン酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸等を挙げることができる。保護基を有する核酸オリゴマーが2〜100当量の脱保護剤と反応することが好ましい。
【0063】
また、核酸オリゴマーの製造方法に用いられるモノマー中の塩基に保護基を有する場合、前記製造方法は、塩基の保護基を脱離させる工程(第2の保護基脱離工程)を更に含む。第2の保護基脱離工程は、最終的に得られる核酸オリゴマー中の塩基が保護基を有さないようにすれば、どの段階で行うかは特に限定されない。
第2の保護基脱離工程では、例えば、モノマー又は核酸オリゴマーをアンモニア水で処理することができる。第2の保護基脱離工程で用いられるアンモニア水としては、例えば、25質量%アンモニア水又は25質量%アンモニア水−エタノール混合溶液(3:1、v/v)が挙げられる。
【0064】
得られた核酸オリゴマーは、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)、イオン交換HPLC、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の精製方法により精製することができる。
【0065】
本発明の核酸オリゴマーの製造方法の一例について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。以下のスキーム2は、固相担体に連結された核酸オリゴマー(スキーム2では二量体)を製造する工程の一例を示す。
【0066】
【化7】
【0067】
LNA修飾ボラノホスフェート化合物(3a−d)と固相担体に連結した他のモノマー(4)とを塩基の存在下で縮合剤を用いて、反応させて核酸オリゴマー(LNAPBH−DNA(二量体))(5a−d)を得る。
【0068】
他のモノマー(4)のBproはLNA修飾ボラノホスフェート化合物(3a−d)の有するBproと同義である。
他のモノマー(4)の有するRは、水酸基、保護基を有する水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、又はアルコキシ基(例えば、メトキシ基)を表す。Rが保護基を有する水酸基を表す場合、その保護基は、一般式(I)中のRの表す水酸基の保護基と同義である。
核酸オリゴマー(LNAPBH−DNA(二量体))(5a−d)中のR11及びBproは、各々一般式(I)中のR及びLNA修飾ボラノホスフェート化合物(3a−d)中のBproと同義である。
核酸オリゴマー(5a−d)は、その後、標的核酸と相補鎖な塩基配列となるように、モノマーを適宜選択し、この反応を繰り返して行うことにより、所望の配列を有する核酸オリゴマーを得ることができる。
【0069】
また、縮合工程で得られた核酸オリゴマーは、更に酸化して酸化型の核酸オリゴマーとしてもよい。一例として、以下のスキーム3に、上記スキーム2で得られた二量体の核酸オリゴマー(LNAPBH−DNA)から、酸化型の核酸オリゴマー(LNAPBO−ODN)(6a−d)を得る工程を示す。
核酸オリゴマー(LNAPBO−ODN(二量体))(6a−d)中のR11、R及びBproは、各々核酸オリゴマー(LNAPBH−DNA(二量体))(5a−d)中のR11、R及びBproと同義である。
【0070】
【化8】

【0071】
本発明の核酸オリゴマーは、標的核酸の塩基配列に相補的となるように設計することにより、標的核酸に対する二本鎖形成能に優れたアンチセンス分子として使用することができる。例えば、標的核酸が疾患関連遺伝子の部分配列に相当する場合には、本発明の核酸オリゴマーは、翻訳阻害能の高いアンチセンス医薬等の医薬用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各種分析器は以下に示した機種を用いた。
H−核磁気共鳴スペクトル(H−NMR):バリアン Mercury 300(300MHz)
13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR):バリアン Mercury 300(75MHz)
31P−核磁気共鳴スペクトル(31P−NMR):バリアン Mercury 300(121.5MHz)
なお、H−NMRにはテトラメチルシラン(TMS)を、13C−NMRにはCDCl(δ77.16ppm)を内部標準として用い、31P−NMRは85%HPOを外部標準として用いた。
【0073】
MALDI−TOF MS: AB SCIEX TOF/TOFTM 5800 System
紫外可視分光光度計:JASCO V−550 UV/VIS spectrophotometer
イオン交換HPLC:GE Healthcare AKTA purifier 10S
カラムクロマトグラフィーに充填するシリカゲルには、KANTO CHEMICALのSilica Gel 60Nを用いた。
逆相HPLCに使用したカラム(分析):water μ−BOUNDASPHERE,C18 5μm,100Å,3.9mm×159mm
イオン交換HPLCに使用したカラム(分析・分取):GE Healthcare MiniQTM 4.6/50PE, 3μm,4.6mm×50mm)
【0074】
なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。実施例中、HNEtはトリエチルアミンを示し、Bproは保護基を有する核酸塩基を示し、TbzはN−ベンゾイルチミン−1−イルを示し、AbzはN−ベンゾイルアデニン−9−イルを示し、CibuはN−イソブチリルシトシン−1−イルを示し、Gce,ibuはO−シアノエチル−N−イソブチリルグアニン−9−イルを示し、DMTrは4,4’−ジメトキシトリチルを示し、Bop−Clはビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロライドを示し、その他の略号は上記説明中のものと同義である。
【0075】
<LNA修飾ボラノホスフェート化合物の合成>
以下、スキーム4に従って、LNA修飾ボラノホスフェート化合物(9)を合成した。
【0076】
【化9】

【0077】
(1R,3R,4R,7S)−3−(N3−ベンゾイルチミン−1−イル)−1−ジメトキシトリチルオキシメチル−7−ヒドロキシ−2,5−ジオキサビシクロ[2.2.1]へプタン(7)0.69g(1.0mmol)とピリジニウム H−ボラノホスホネート(8)0.30g(2.0mmol)をアルゴン雰囲気下で、ピリジン(2ml×3)で共沸乾燥してピリジン(10ml)に溶解した。得られたピリジン溶液を氷浴下(0℃)にて撹拌しつつBop−Cl:0.51g(2.0mmol)を加え、その後反応温度を室温(25℃)に上げ、20分間撹拌した。この溶液をジクロロメタン50mlで希釈した後、溶液に1M 炭酸アンモニウム水溶液 (50mL)を添加した。水層をジクロロメタン(200ml×2)で逆抽出した。有機層に再度、1M TEAB緩衝溶液(100ml×3)を添加した。水層をジクロロメタン(500ml×1)で抽出し、有機層中の水分を無水硫酸ナトリウムを用いて除去した。次いで、有機層の溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン(2:1=v/v)中トリエチルアミン0.5%〜ジクロロメタン−メタノール0.5%、トリエチルアミン0.5%)で分離精製することにより、目的化合物を得た。収率75%。
【0078】
H−NMR(CDCl)δ・8.00−7.93(m,2H),7.82(dd,J=7.2,1.1Hz,1H),7.64(m,1H),7.53−7.46(m,4H),7.41−7.30(m,6H),7.36(br d,PH=399Hz,1H),7.24−7.21(m,1H),6.89−6.85(m,4H),6.21(m,1H),5.63(s,1H),4.79(dd,J=78,6.6Hz,1H),4.65(d,J=11Hz,1H),3.98(q,J=3.9Hz,1H),3.80(s,6H),3.78−3.72(m,1H),3.51(dd,J=27,11Hz,2H),2.90(q,J=7.2Hz,7.5H),1.67(dd,,J=6.0,0.9Hz,3H),1.21(t,J=7.2Hz,11H),0.90−0.00(br,3H);13C−NMR(CDCl)δ169.2,163.2,158.9,149.1,149.1,144.7,144.6,135.7,135.6,135.5,135.3,135.3,134.7,134.7,131.7,131.6,130.9,130.8,130.4,130.3,130.2,129.5,129.4,128.4,128.4,128.3,128.2,127.3,113.7,113.6,110.7,110.7,88.4,88.4,88.3,87.8,86.9,79.0,78.9,77.8,77.6,77.4,77.0,75.0,74.8,72.6,72.4,71.9,58.2,57.9,55.5,45.7,13.0,12.9,8.7;31P−NMR(CDCl)δ107.5(m).
ESI−HRMS:Calcd forC3939BN10[M−H];737.2441,found;737.2443.
【0079】
<PBO−DNAの合成方法>
下記スキーム5に従って、上記化合物(7)に代えてデオキシリボ核酸(10a−d)を用いること以外はLNA修飾ボラノホスフェート化合物と同様にして、アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンの各塩基を有するLNA未修飾ボラノホスフェート化合物(11a−d)をそれぞれ合成した。
【0080】
【化10】

【0081】
LNAPBO−ODN(12量体)の合成方法−固相法−>
アポB(apoB)蛋白質をコードするmRNAの一部、アポB蛋白質mRNA(3’−CGU AAC CAU AAG−5’:相補鎖RNA、配列番号1)(アポ蛋白質B−100:Nature,2006,Vol.441,pp111−114)と、対応するアポB蛋白質DNA(3’−CGT AAC CAT AAG−5’:相補鎖DNA、配列番号2)を標的核酸として選択した。相補鎖RNA及び相補鎖DNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有し、LNA修飾ボラノホスフェート化合物由来の塩基を含むアンチセンス分子、LNAPBO−ODNを以下のようにして合成した。
【0082】
5’-O−DMTr−N-ベンゾイルチミジンをスクシニルリンカーを介して担持させた固相担体(0.5μmol)を、3%ジクロロ酢酸/ジクロロメタン溶液(1mL)で15秒間反応させて保護基を脱離させた後、反応溶液を除去した。同様の操作を4回繰り返した後、ジクロロメタン(1mL)で4回、アセトニトリル(1mL)で4回洗浄を行い、固相担体の真空乾燥を行った。
【0083】
次に、以下の(i)工程と(ii)の組み合わせを11回繰り返すことでオリゴマーの鎖長伸長反応を行った。なお、モノマーは、標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列となる順序で、塩基配列におけるチミジンには上記で合成したLNA修飾ボラノホスフェート化合物(9)を選択し、塩基配列におけるチミジン以外の塩基には上記合成のLNA未修飾ボラノホスフェート化合物(11a−d)を選択し、5’末端となるモノマーは、5’位に遊離の水酸基と、塩基としてグアニンを有するヌクレオシドとした。
【0084】
(i)工程: 配列に応じて選択されたモノマー(20μmol)、MNTP(50μmol)、及び2,6−ルチジン(100μmol)を、アセトニトリル(0.2mL)で混合し、1分間反応させた。1分後、反応溶液を除去し、反応後の固相担体を、アセトニトリルで4回、ジクロロメタンで4回洗浄を行った。
【0085】
(ii)工程: 前記(i)工程後の固相担体を、3%ジクロロ酢酸/ジクロロメタン―トリエチルシラン(1:1、v/v)溶液(1mL)で5秒間反応させた。同様の操作を6回繰り返した後、ジクロロメタン(1mL)で4回、アセトニトリル(1mL)で4回洗浄を行い、固相担体を真空乾燥させた。
【0086】
鎖長伸長後の固相担体に、トリエチルアミン(0.1M)/四塩化炭素−2,6−ルチジン−HO(5:12.5:1,v/v/v)溶液を0.2mL加え、1時間反応させた。その後、反応後の固相担体を、アセトニトリル(1mL)で4回、ジクロロメタン(1mL)で洗浄した。
その後、洗浄後の固相担体に対して、25%アンモニア水−エタノール(3:1、v/v)を50℃下12時間反応させることで、核酸塩基部位の保護基の除去と固相担体からの核酸オリゴマーの切り出しを行った。固相担体をろ別し、ろ液を回収した後、減圧留去した。残留物を4mLのH2Oに溶解し、クロロホルム(500μL)で6回洗浄した。
【0087】
得られた核酸オリゴマー(12量体、LNAPBO−ODN)を、イオン交換HPLCにて分離精製した。分離精製前後のイオン交換HPLCの結果を図1に示す。イオン交換HPLC及び分離精製は、室温下、0〜1M NaCl、50〜25%アセトニトリルの10mM トリスHCl緩衝溶液(pH8.0)を流速0.8ml/分、20分間の条件で行われた。図1(A)に分精精製前のイオン交換HPLCのグラフを示す。図1(A)のメインピークに相当するフラクションを分取し精製した。図1(B)に分離精製後のイオン交換HPLCのグラフを示す。
収率7%。MALDI−TOF MS: Calcd for [M−H]; 3767.02, found; 3767.06.
【0088】
得られた核酸オリゴマー(12量体、LNAPBO−ODN)は、dGCAT'T'GGT'AT'T'C(T'はLNA修飾したチミジンを表す。配列番号3)の塩基配列を有するアンチセンス分子である。
【0089】
<PBO−DNA(12量体)の合成方法−固相法−>
LNAPBO−ODNと同様にして標的核酸(アポB蛋白質)の塩基配列と相補的な配列となるようにN−イソブチリルシチジンと、アデニン、グアニン、チミン又はシトシンを塩基として有するLNA未修飾ボラノホスフェート化合物(11a−d)を用いて、順次、保護基を有する水酸基の脱保護反応、縮合反応を12量体が得られるまで繰り返し行った後、酸化反応及び核酸塩基の脱保護反応を行い、PBO−DNA(12量体)を得た。
得られたPBO−DNA(12量体)を含む溶液を、25%NH −エタノール水溶液(3:1 v/v)で処理し、エタノール(2ml×4)で洗浄した。水溶液は減圧下で溶媒を留去した。残渣を水(4ml)に溶解し、クロロホルム(500μL×6)で洗浄した。逆相HPLCにて分離精製した。逆相HPLC及び分離精製は、30℃で、0〜60%アセトニトリルの0.1M 酢酸トリメチルアンモニウム緩衝溶液(pH7.0)を流速0.5ml/分で60分間行われた。
収率44%。MALDI−TOF MS: Calcd for [M−H]−; 3627.05, found; 3626.82.
【0090】
得られたPBO−DNA(12量体)は、LNA修飾ボラノホスフェート化合物に由来するヌクレオシド構造を含まず、GCATTGGTATTCの塩基配列を有するアンチセンス化合物である。
【0091】
<実施例1>
相補鎖DNAの最終モル数が0.60nmolとなるように、及び上記合成方法で得たLNAPBO−ODN(12量体)の最終濃度が4.0μMとなるように、相補鎖DNA及びLNAPBO−ODN(12量体)を10mM NaHPO−NaHPO緩衝溶液(pH7.0)に溶解し、測定試料を調製した。この測定試料の塩濃度を100mM NaClに調整した。その後、測定試料を光路長1cmのセルに入れ、可視紫外分光光度計により260nmにおける吸光度を、0.5℃/minの速度で温度を0℃から90℃まで変化させて測定した。そして、100mM NaClにおける相補鎖DNAとLNAPBO−ODN(12量体)との融解曲線を得た。その結果を図2(A)に示す。この融解曲線から、二重鎖融解温度(Tm)を得た。その結果を表1に示す。
なお、融解温度(Tm)は、中線法で求めた。具体的には、得られた融解曲線の前遷移領域及び後遷移領域にそれぞれにおいて2点を指定し、回帰計算によりベースラインを求め、2つのベースラインの中線と融解曲線との交点を融解温度とした。
【0092】
相補鎖DNAを相補鎖mRNAに変更した以外は上記と同様にして、100mM NaClにおける相補鎖mRNAとLNAPBO−ODN(12量体)との融解曲線を得て、二重鎖融解温度を決定した。それらの結果を図2(B)及び表1に示す。融解温度は、実施例1と同様に決定した。
【0093】
塩濃度を1Mに変更した以外は上記と同様にして、1M NaClにおける相補鎖DNA又は相補鎖mRNAとLNAPBO−ODN(12量体)との融解曲線を得て、二重鎖融解温度を決定した。それらの結果をそれぞれ図3(A)及び図3(B)、並びに表1に示す。
【0094】
<比較例1>
LNAPBO−ODN(12量体)に代えて、標的核酸と相補的な塩基配列を有する天然型DNAを用いた以外は、実施例1と同様にして、100mM又は1Mの塩濃度における相補鎖DNA又は相補鎖mRNAと天然型DNAとの融解曲線を得て、二重鎖融解温度を決定した。それらの結果を図2図3及び表1に示す。
【0095】
<比較例2>
LNAPBO−ODN(12量体)に代えて、標的核酸と相補的な塩基配列を有するPBO−DNA(12量体)を用いた以外は、実施例1と同様にして、100mM又は1Mの塩濃度における相補鎖DNA又は相補鎖mRNAとPBO−DNA(12量体)との融解曲線を得て、二重鎖融解温度を決定した。それらの結果を図2図3及び表1に示す。
【0096】
なお、表1中のΔTm(℃)は天然型DNAの二重鎖融解温度との差を示す。図2図3の各図において、実線は天然型DNAを用いた場合の融解曲線を表し、点線はPBO−DNA(12量体)を用いた場合の融解曲線を表し、一点鎖線はLNAPBO−ODN(12量体)を用いた場合の融解曲線を表す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、100mM NaCl及び1M NaClのいずれの条件下においても、PBO−DNA(比較例2)の相補鎖DNA又は相補鎖mRNAに対する二重鎖溶解温度は、天然型DNA(比較例1)の相補鎖DNA又は相補鎖mRNAに対する二重鎖溶解温度に比べ低い。このことから、天然型DNAへのボラノ基(BH)導入により二重鎖形成能が低減することがわかる。
【0099】
これに対して、LNAPBO−ODN(実施例1)は、100mM NaCl及び1M NaClのいずれの条件下においても、天然型DNA(比較例1)及びPBO−DNA(比較例2)に比べ、高い二重鎖融解温度を示した。このことから、PBO−DNAへのLNA修飾により、ボラノ基導入による二重鎖形成能の低減を抑制し、かつ二重鎖形成能を高めていることがわかる。
【0100】
このように、LNAPBO−ODNは優れた二本鎖形成能を有する核酸オリゴマーであり、有用なアンチセンス分子として使用可能であることが示された。
従って、本発明によれば、従来のボラノホスフェート型核酸オリゴマーと比較して、相補鎖との二重鎖形成能に優れた核酸オリゴマーと、この核酸オリゴマーを合成するのに適した新規ボラノホスフェート化合物を提供することができる。
図1
図2
図3
【配列表】
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