(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発熱体と放熱体とを熱伝達路で繋いで、前記発熱体で発生した熱を前記放熱体から放出して冷却する冷却構造において、前記発熱体または前記放熱体と前記熱伝達路とを接続する接続体であって、
前記発熱体または前記放熱体の表面と接触する接触手段と、
前記熱伝達路と連結する連結部とを備え、
前記接触手段が前記発熱体または前記放熱体と接触する箇所と、前記連結部との間に絶縁性を有する絶縁部を備えた
接続体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述した問題を鑑み、所望の位置に設置された発熱体と放熱体とに容易に接続して冷却できる接続体および該接続体を備えた冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、発熱体と放熱体とを熱伝達路で繋いで、前記発熱体で発生した熱を前記放熱体から放出して冷却する冷却構造において、前記発熱体または前記放熱体と前記熱伝達路とを接続する接続体であって、前記発熱体または前記放熱体と接触する接触手段と、前記熱伝達路と連結する連結部とを備
え、前記接触手段が前記発熱体または前記放熱体と接触する箇所と、前記連結部との間に絶縁性を有する絶縁部を備えることを特徴とする。
【0011】
前記発熱体とは、電子的な計算処理などにより発熱する電子機器類などやエンジンの内燃機関で燃料が爆発した際に生じる熱が外部に伝達することで熱くなるエンジン本体を含む概念である。具体的には、エンジンコントロールユニット(ECU)や、自動運転システムなどの運転支援装置、アンチブレーキシステム(ABS)や横滑り防止装置(ESC)、エンジン本体、エキゾーストマニホールド、自動車用触媒、モータ、蓄電池、などの運転制御装置などを含む概念である。
【0012】
前記放熱体とは、車体の外部に直接的に露出している、または間接的に露出していることにより、熱を車体の外部に放出することができるものであり、エンジンルーム内の装置類、これらの装置を構成する部品、車体の一部などを含む概念である。具体的には、エンジンルームのボンネットやフロントフェンダ、エアーダクト、冷却装置の冷却媒体が流れる配管、ヒートパイプなどを含む概念である。
【0013】
前記熱伝達路とは、前記発熱体と前記放熱体とを接続可能であるとともに、熱を伝達することができる伝熱体を指し、熱伝導性を有する紐状体、長尺状の面状体や棒状体、固体形状のものを含む概念である。具体的には、帯状体、線状体、単線を束ねた紐状体やより合わせたより紐状体などの形状であって、熱伝導率の高い金属類や、繊維強化プラスチックやピッチ系炭素繊維などで構成されているものを含み、素材や形状などを問わず、熱を伝導できるものを含む概念である。
なお、前記熱伝達路は、必ずしも熱伝導率が高い材質により構成される必要はなく、熱を伝達できる材質で形成されたものを含む概念である。
【0014】
前記接触手段とは、前記発熱体または前記放熱体と前記接続体とが接触する場合において、前記発熱体または前記放熱体と対向している前記接続体の表面(以下、「対向面」とする。)の全面が、前記対向面と対向している前記発熱体または前記放熱体と接触している場合における接触面を構成する部位、前記対向面の少なくとも一部が前記発熱体または前記放熱体と接触している場合における接触面および接触していない面から構成する部位、前記発熱体または前記放熱体と前記接続体との接触が線や点で接触されている場合における該接触部位、間接的に前記接続体が前記発熱体または前記放熱体に接している場合における接触面を構成する部位などを含む概念である。
なお、上記の前記発熱体または前記放熱体の表面とは、前記発熱体または前記放熱体の外面や内面を含む概念である。
【0015】
上記の絶縁性を有する絶縁部とは、導電性をほとんど有さないが伝熱性を有する材質で形成されたものであり、例えば、シリコンやポリエチレン系樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂や、合成樹脂に適量のカーボンナノチューブなどを配合することにより導電性を抑制したまま熱伝導性を高めた絶縁体を含む概念である。
【0016】
上述の前記接触手段が前記発熱体または前記放熱体と接触する箇所と、前記連結部との間とは、前記発熱体または前記放熱体と接する前記接触手段の接触面、前記接続体に備える前記連結部、前記接触面と前記連結部との間であって前記対向面から前記連結部に熱が伝達する際に熱が通過する面などを含む概念である。
また、上記接触する箇所とは、前記接触手段が前記発熱体または前記放熱体と接する前記対向面の全面や、前記対向面の一部などを含む概念である。
【0017】
この発明によれば、所望の位置に設置された前記発熱体と前記放熱体とに容易に接続して前記発熱体を冷却することができる。
詳述すると、前記接続体を前記発熱体と接触させることにより、前記接続体は前記接触手段を介して前記発熱体から熱を吸収することができる。また、前記接続体が前記放熱体と接触させることにより、前記接続体は前記放熱体と接触した前記接触手段を介して熱を前記放熱体に放熱することができる。
【0018】
したがって、所望の位置に配置された前記発熱体および前記放熱体と接触した前記接続体に前記熱伝達路を連結することにより、前記熱伝達路を介して前記発熱体と前記放熱体とを繋ぐことができる。よって、所望の位置に配置された前記発熱体と接触した前記接続手段から熱を吸熱し、前記熱伝達路を介して熱を前記放出体へと移動し、放熱することができる。
【0019】
さらに、前記発熱体と接続する前記接続体と連結した前記伝達路を余剰空間において所望の経路に配索し、前記放熱体と繋げることができる。すなわち、前記熱伝達路をエンジンルームの余剰空間に合わせて配索することができ、狭い空間内であっても、前記熱伝達路を介して前記発熱体と前記放熱体とを容易に接続し、発熱体から放熱体へと熱を移動することができる。
【0020】
また、前記接続体は、前記発熱体から電気を通すことなく吸熱することができ、同様に、前記接続体は導電することなく前記放熱体に放熱することができる。
仮に、高い熱伝導率を有すると同時に高い導電率を有する銅などの金属線を前記熱伝達路に用いた場合、熱の移動を効率的に行うことができるが、同時に前記熱伝達路に電流が流れることとなる。このため、熱伝達路に意図しない電流が流れることにより、制御機器などに必要な電力を供給することができなくなるおそれや、前記熱伝達路に流れた意図しない電流によって生じる磁界に起因してノイズが発生し、電子機器にノイズが混入するおそれがある。
【0021】
これに対し、本発明においては、前記接触手段が前記発熱体または前記放熱体と接触する箇所と、前記連結部との間に絶縁性を有する絶縁部を備えるため、前記絶縁部が、電気の流れを妨げることとなり、少なくとも前記連結部を介して連結した前記熱伝達路に電流が流れることを防止することができ、また、磁界の発生なども防止することができる
したがって、前記接続体は、前記発熱体から電気を通すことなく吸熱することができ、同様に、前記接続体は前記放熱体に電気を流すことなく熱を放熱することができる。
【0022】
またこの発明
は、発熱体と放熱体とを熱伝達路で繋いで、前記発熱体で発生した熱を前記放熱体から放出して冷却する冷却構造において、前記発熱体または前記放熱体と前記熱伝達路とを接続する接続体であって、前記発熱体または前記放熱体の表面と接触する接触手段と、前記熱伝達路と連結する連結部とを備え、前記接触手段と前記連結部とを一体の端子状に形成した熱伝達端子と、該熱伝達端子を収納するキャビティを有するハウジングとを備えることができる。
前記ハウジングとは、単数の前記キャビティを備えていている場合や、複数の前記キャビティを備えている場合などを含む概念である。
【0023】
上述の前記接触手段と前記連結部とを一体の端子状に形成したとは、例えば、板状の形状、ネジ型圧着端子の形状、ピン形状、通電用被覆電線を圧着接続することで該被覆電線と一体として形成することができる圧着端子と同形の形状としたことなどを含む概念である。なお、前記端子状が圧着端子と同形とした場合においては、雄型圧着端子や雌型圧着端子を含む概念である。
【0024】
この発明により、前記ハウジングに対して前記熱伝達端子を確実に挿入することができる。
また、このハウジングを用いた前記冷却構造は、前記ハウジングに収納した前記熱伝導端子を確実に前記発熱体または前記放熱体と接触することができる。
【0025】
詳述すると、例えば、雌型ハウジングのキャビティに前記熱伝達端子を収容するとともに、雄型ハウジングのキャビティに発熱体や放熱体に熱伝導可能な被接触部を収容し、前記雌型ハウジングと前記雄型ハウジングとを嵌合させるだけで、前記雌型ハウジングに収納した前記熱伝導端子と前記被接触部とを熱伝導可能かつ確実に熱伝導することができる。
これにより、上記のように、前記熱伝達端子を予め収納した前記ハウジングに対応する前記発熱体などに備えたハウジングに確実に接触することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記ハウジングに、通電用被覆電線を接続した端子を挿入する複数のキャビティを備えることができる。
前記通電用被覆電線とは、例えば、電子機器類とジャンクションボックスなどを接続することで電気回路を形成し、該回路に電気を流すことを主たる目的とした被覆電線を指す。
前記端子とは、被覆電線を圧着接続する圧着部がU字型に開口しているオープンバレル型圧着端子や、圧着部がO字型に閉口しているクローズドバレル型圧着端子などが含まれる概念である。
【0027】
この発明により、前記ハウジングを嵌合するだけで前記端子を介して前記通電用被覆電線同士を接続できるとともに、前記発熱体または前記放熱体と前記熱伝達路とを接続することができる。さらに、前記通電用被覆電線と前記熱伝達路とを束ねることにより、前記通電用被覆電線の配索と同時に前記熱伝達路を配索することができる。
【0028】
詳述すると、運転支援装置などの装置において処理を実行すると発熱する発熱体は、ジャンクションボックスや他の電子機器との間で電気信号の送受信を行うために前記通電用被覆電線が接続されている。
【0029】
ここで、例えば、前記熱伝達端子を収納する前記キャビティ及びジャンクションボックスと接続した前記通電用被覆電線に接続された前記端子を挿入する前記キャビティとを有する雌型ハウジングと、前記端子と接続可能な端子を収納可能なキャビティ及び前記接触手段と接触可能に形成された前記被接触部を収納可能なキャビティとを備える雄型ハウジングとを接続することにより、前記電子部品とジャンクションボックスとを確実に接続するとともに、前記発熱体と前記接触手段とを確実に接続することができる。
【0030】
このように、前記発熱体と前記放熱体とを前記熱伝達路で繋いだ前記冷却構造における、前記熱伝達路と、前記端子に接続した前記通電用被覆電線とを束ねることで、前記通電用被覆電線を配索するのと同時に前記熱伝達路を配索することができ、配索のための工数を削減することができる。
また、従来から用いている圧着端子やハウジングを前記ハウジングとして使用することで、新たな圧着端子を作る必要が無く、汎用性の高い接続体を提供することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記接触手段に、前記発熱体または前記放熱体に形成された被嵌合部と嵌合する嵌合部を備えることができる。
上記嵌合するとは、前記嵌合部と前記被嵌合部とを嵌め合わせることを指すが、前記嵌合部の形状と前記被嵌合部の形状とが完全に合致して嵌め合わせることができる場合、前記嵌合部と前記被嵌合部の形状が部分的に合致して嵌め合わせることができる場合を含む概念である。
【0032】
前記嵌合部とは、前記発熱体または前記放熱体に形成された前記被嵌合部と形が合うように形成された嵌合部であって、形状を問わず、例えば、波状の形状や、凹凸形状、規則性のない形状の被嵌合部に嵌合できる形状とした嵌合部を含む概念である。
【0033】
この発明により、前記発熱体または前記放熱体の表面と接触している前記接触手段の接触面積を増やすことができ、効率的に熱の吸熱または放熱を行うことができる。また、前記発熱体または前記放熱体と前記接続体が嵌合できるため、前記発熱体または前記放熱体と前記接続体とがしっかりと接触することとなる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記嵌合部を、前記被嵌合部を構成する複数の被嵌合片と嵌合する複数の嵌合片で構成することができる。
前記被嵌合片及び前記嵌合片とは、例えば、針状体、剣山のような錐体状に形成された形状、細い柱体に形成された形状、薄い板状に形成された形状などを含む概念である。
【0035】
この発明により、前記発熱体または前記放熱体と接触している前記接触手段の表面積を増やすことができ、より効率的に熱の吸熱または放熱を行うことができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記嵌合片と前記被嵌合片の間に伝熱性を有する熱伝導材を備えることができる。
前記熱伝導材とは、例えば、放熱ゴムや熱伝導性の高いグリス、面状体である放熱シートなどを含む概念である。
【0037】
この発明により、前記嵌合片と前記被嵌合片との密着性を高めることができるため、効率的に熱を伝達できる。また、例えば嵌合片と被嵌合片との間に熱伝導率の高い前記熱伝導材を用いることで、効率的に熱の移動を促すことができる。さらにまた、前記熱伝導材として、絶縁性を有する部材を用いることが可能であるため、電気を通さずに熱のみを前記接続体に伝達することができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記嵌合部を、前記被嵌合部を構成する被係止部に対して、嵌合方向と交差する方向で係止する係止部で構成とすることができる。
この発明により、前記接触手段と前記発熱体などを嵌合方向と交差する方向で、係止できるため、前記発熱体または前記放熱体と接続体とを確実に接続することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記係止部を、弾性材で構成することができる。
前記弾性材とは、天然ゴム、シリコン樹脂やなどのような合成樹脂を含む概念である。
上記弾性材で構成することとは、前記係止部のみを弾性材とした場合、前記被係止部も弾性材とした場合を含む概念であり、また、前記係止部の全部または一部を弾性材とした場合も含む概念である。
【0040】
この発明により、前記被係止部を備える前記発熱体または前記放熱体と前記係止部を備える前記接続体とをより確実かつ強固に接続することができるとともに、前記発熱体または前記放熱体と前記接続体との熱交換をより効率的に行うことができる。
【0041】
詳述すると、例えば、前記係止部を弾性材とすることにより、前記係止部を前記被係止部との嵌合方向に挿入した際、前記係止部が前記被係止部の嵌合方向と交差する方向の形状に合わせて変形して挿入される。この場合において、挿入位置の形状と比べて、前記被係止部の嵌合方向と交差する方向の形状が、嵌合方向に沿って大きくなると、前記係止部が弾性変形することにより元の形状に戻ろうとする。これにより、前記係止部が前記被係止部と係止することとなる。
【0042】
このため、前記被係止部を備える前記発熱体または前記放熱体と前記係止部を備える前記接続体とをより確実かつ強固に接続することができる。
また、前記係止部が弾性変形することで、前記係止部と前記被係合部とが密着することとなる。したがって、接触面積が増加し、熱伝導がより効率的になる。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、所望の位置に設置された発熱体と放熱体とに容易に接続して冷却することができる接続体および該接続体を備えた冷却構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は冷却構造体1の概要図を示し、
図2は接続体3の実施例の概要斜視図を示し、
図3は他の実施例である接続体3aの説明図を示している。
また、
図4は接続体3の他の実施例である接続体3bの斜視図を示し、
図5は接続体3bの断面図を示し、
図6は接続体3cの斜視図を示している。さらに、
図7は発熱体100に接続体3cを嵌合する際の説明図を示し、
図8は熱伝導端子80とハウジング70により構成した接続体3dの斜視図を示し、
図9は熱伝導端子80とハウジング70により構成した接続体3dの分解斜視図を示し、
図10は熱伝達路2を構成する多層熱伝達路40の説明図を示し、
図11は多重熱伝達路40aの説明図を示している。
なお、
図3(b)は、
図3(a)中のA−A矢視断面図を示し、
図5(a)は
図4(b)中のB−Bを、
図5(b)は
図4(b)中のC−C矢視断面図を示す。
【0046】
ここで、
図2乃至
図4において、熱伝達路2の挿入方向をY軸方向とし、図中の上下方向をZ軸方向とする。そして−Y軸方向及びZ軸方向の双方に対して垂直な方向をX軸方向とする。さらに、図中の左側を+X方向、あるいは正面側とし、図中の右側を−X方向、あるいは背面側とする。さらにまた、熱伝達路2の挿入方向を−Y方向とし、図中の上側を上方側(+Z方向)とし、下側を下方側(―Z方向)とする。
【0047】
冷却構造体1は、
図1に示すように、発熱体100と放熱体200とを連結する熱伝達路2、発熱体100または放熱体200と接触する接続体3とで構成している。
【0048】
冷却構造体1で冷却する発熱体100は、エンジンルーム内に設置され、運転の際に様々な制御などを行う電子機器類や、ガソリンなどの燃料をエネルギー源として自動車本体を動かすエンジンなどのように、自動車の稼働中に大量の熱を発生する部分である。
【0049】
なお、本実施例においては、具体的な形状を特定していないが、発熱体100としては、例えば、エンジン本体や、エキゾーストマニホールド、自動車触媒、モータ、蓄電池などであってもよく、またエンジンコントロールユニット(ECU)、自動運転システムなどの運転支援装置、アンチブレーキシステム(ABS)や横滑り防止装置(ESC)などの運転制御装置などの装置であってもよい。また、上記の装置自体でなく、これらの装置を収納する収納ボックスであってもよい。
【0050】
冷却構造体1によって伝達された熱を放熱する放熱体200は、エンジンルーム内、あるいはエンジンルームを囲繞するとともに、直接的または間接的に外部に露出する装置類、これらの装置を構成する部品、あるいは車体の一部であって、熱を外部に放出することが可能な部分である。
【0051】
また、本実施例においては、発熱体100と同様に、具体的に特定のものとしていないが、例えば、エンジンルームのボンネットやフロントフェンダなどの外部に露出している部分であってもよいし、エアーダクト、冷却装置の冷却媒体が流れる配管、バッテリなどで発生した熱を伝達するためのヒートパイプなどであってもよい。
【0052】
熱伝達路2は、後述する接続体3を介して、発熱体100及び放熱体200に取り付けることにより、発熱体100で生じた熱を放熱体200に伝達するための熱伝達路であり、表面の絶縁被覆の内部に図示省略する熱導線を備えている。
【0053】
なお、熱伝達路2は、発熱体100から放熱体200へと熱を伝達することができれば、特に形状を限定する必要はないが、熱伝達路2は余剰空間の少ないエンジンルーム内で、発熱体100及び放熱体200を接続するためのものであるため、細い長尺体である方が好ましい。
【0054】
接続体3は、発熱体100または放熱体200に直接接触させて吸熱または放熱を行う接続体である。
接続体3は、発熱体100または放熱体200と接触する接続体3の本体部分である接続本体部31と、熱伝達路2の一端と連結可能な連結部32と、発熱体100または放熱体200に直接接触させる接触部60とで構成している。
【0055】
接続本体部31は、
図1に示すように、発熱体100の接触表面に沿う薄い板状体であり、熱伝導率の高い材質で構成している。
連結部32は、
図2に示すように、接続本体部31の上面に形成され、一端が開口した中空状の略円筒体である筒本体33で構成している。
【0056】
筒本体33は、+Y方向端部に開口部34を有する中空状の筒状体であり、開口部34の外径と等しい径を有する開口筒体33aと、開口部34の外径よりもひと回り小さい径を有し、−Y軸側端部が閉口している閉口筒体33bとで構成し、開口筒体33aと閉口筒体33bとがY軸方向に並んで一体として形成している(
図2参照)。
なお、閉口筒体33bの中空部分には、少なくとも熱伝達路2を構成する熱伝導線42(
図9及び
図11参照)を挿入できる大きさの径を有し、また、閉口筒体33bの内周面は、熱伝導性を有する熱誘導部36としている。
【0057】
開口部34は、筒本体33の+Y方向端面に備わる開口部であり、筒本体33が形成する開口は、熱伝達路2を−Y方向に挿入することができるように、熱伝達路2の外径よりもひと回り大きい径で形成している。
なお、開口部34が挿入された熱伝達路2の熱導線を圧着する部分である熱導線圧着部35は、筒本体33を形成する外径が小さくなった円柱の+Y方向外周面に形成されている。
【0058】
接触部60は、接続本体部31の下面に形成される発熱体100と接触する接触部分であり、表面形状が発熱体100の表面形状と沿うように形成されている。また、導電性を向上させることなく熱伝導性を向上させるため、合成樹脂にカーボンナノチューブを適量充填した絶縁体により構成される絶縁部61で接触部60の表面を覆っている。
なお、本実施例では接触部60を発熱体100と接続する構成としているが、放熱体200と接続することもできる。
【0059】
このように各要素を構成した冷却構造体1は、熱伝達路2の両端部をそれぞれ連結部32を介して接続体3と連結し、一方の接続体3に備わる接触部60を発熱体100に接触させて取付け、他方の接続体3に備わる接触部6を放熱体200と接触させる取り付けることにより、所望の位置にある発熱体100と放熱体200とに容易に取り付けることができる。そして、発熱体100と放熱体200とを跨ぐように取り付けた冷却構造体1は、一方の接続体3を介して発熱体100から吸熱した熱を熱伝達路2を介して他方の接続体3まで伝達し、他方の接続体3を介して放熱体200から放熱することができる。
【0060】
換言すると、発熱体100と放熱体200とを熱伝達路2で繋いで、発熱体100で発生した熱を放熱体200から放出して冷却する冷却構造体1において、発熱体100または放熱体200と熱伝達路2とを接続する接続体3であって、発熱体100または放熱体200の表面と接触する接触部60と、熱伝達路2と連結する連結部32とを備えることにより、所望の位置に設置された発熱体100と放熱体200とに容易に接続して発熱体100を冷却することができる。
【0061】
詳述すると、接続体3を発熱体100と接触させることにより、接続体3は接触部60を介して発熱体100から熱を吸収することができる。また、接続体3が放熱体200と接触させることにより、接続体3は放熱体200と接触した接触部60を介して熱を放熱体200に放熱することができる。
【0062】
したがって、所望の位置に配置された発熱体100および放熱体200と接触した接続体3に連結された熱伝達路2を介して発熱体100と放熱体200とを熱伝達可能に繋ぐことができる。よって、所望の位置に配置された発熱体100と接触した接続手段から熱を吸熱し、熱伝達路2を介して熱を放出体へと移動し、放熱することができる。
【0063】
さらに、発熱体100と接続する接続体3と連結した熱伝達路2をエンジンルームの余剰空間において所望の経路に配索し、放熱体200と繋げることができる。すなわち、熱伝達路2をエンジンルームの余剰空間に合わせて配索することができ、狭い空間内であっても、熱伝達路2を介して発熱体100と放熱体200とを容易に接続し、発熱体100から放熱体200に熱伝導することができる。
【0064】
また、接触部60が発熱体100または放熱体200と接触する箇所と、連結部32との間に絶縁性を有する絶縁部61を備えることにより、接続体3は、発熱体100から電気を通すことなく吸熱でき、同様に、接続体3は導電することなく放熱体200に放熱することができる。
【0065】
仮に、高い熱伝導率を有すると同時に高いと導電率を有する銅などの金属線を熱伝達路2に用いた場合、熱の移動を効率的に行うことができるが、同時に熱伝達路2に電流が流れることとなる。このため、熱伝達路2に意図しない電流が流れることにより、制御機器などに必要な電力を供給することができなくなるおそれや、熱伝達路2に流れた意図しない電流によって生じる磁界に起因してノイズが発生し、電子機器にノイズが混入するおそれがある。
【0066】
これに対し、本発明においては、接触部60が発熱体100または放熱体200と接触する箇所と、連結部32との間に絶縁性を有する絶縁部61を備えるため、絶縁部61が、電気の流れを妨げることとなり、少なくとも連結部32を介して連結した熱伝達路2に電流が流れることを妨げることができ、磁界の発生なども防ぐことができる。
したがって、接続体3は、発熱体100から電気を通すことなく吸熱することができ、同様に、接続体3は放熱体200に電気を流すことなく熱を放熱することができる。
【0067】
なお、上述したように、熱伝達路2と接続体3とで構成する冷却構造体1において、例えば、接触部60を以下のような構成とする冷却構造体1aとしてもよい。
以下で説明する冷却構造体1aの構成のうち、上述した実施例における冷却構造体1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
冷却構造体1aは、
図3に示すように、冷却構造体1と同様に熱伝達路2及び接続体3で構成され、接続体3を、接続本体部31、連結部32、筒本体33及び接続嵌合部62とで構成している。
【0069】
接続本体部31は、発熱体100の表面に設けられた筐体である発熱体側嵌合体20と上下方向に対向するように配置されており(
図3(a)参照)、接続本体部31の底面には、発熱体側嵌合体20と嵌合できる接続嵌合部62が形成されている。接続嵌合部62は複数の嵌合片63を所定間隔を隔てて配置して構成している。嵌合片63、発熱体側嵌合体20に形成された被嵌合部21と嵌合可能に形成された凸状の柱体であるが、針状に形成してもよい(
図3(b)参照)。
【0070】
このような構成とした冷却構造体1aの接続体3は、発熱体側嵌合体20の上方向から接続体3を組付けることで(
図3(b)参照)、被嵌合部21と嵌合片63とが嵌合し、接続体3と発熱体100とを確実に接触させることができる。
【0071】
また、接続本体部31の下面及び発熱体側嵌合体20の上面を凹凸状とすることにより、接続体3と発熱体100との接触面積を増加させ、発熱体100から接続体3に効率よく熱伝達することができる。
【0072】
このように構成した冷却構造体1aは、上述の冷却構造体1と同様の効果を奏するとともに、接触部60に、発熱体100または放熱体200に形成された被接続嵌合部21と嵌合する接続嵌合部62を備えることにより、発熱体100または放熱体200と接触している接触部60の表面積を増加させることができ、効率的に熱の吸熱または放熱を行うことができる。また、発熱体100または放熱体200と接続体3が嵌合できるため、発熱体100または放熱体200と接続体3とがしっかりと接触することとなる。
【0073】
また、接続嵌合部62を、被接続嵌合部21を構成する複数の上向板状体23と嵌合する複数の嵌合片63で構成することにより、発熱体100または放熱体200と接触している接触部60の表面積を増加させることができ、より効率的に熱の吸熱または放熱を行うことができる。
【0074】
さらには、例えば、
図4に示すように、接触部60を複数の板状である嵌合片63で構成した冷却構造体1bとしてもよい。
詳述すると、発熱体100の表面に設けられた被接続部20は、溝部22と上向板状体23から構成され、溝部22は発熱体側嵌合体20の内部に凹状に設けられた窪みを形成する開口部である。また、上向板状体23は、溝部22の底面から上方(+Z方向)にX軸方向に並んで突出する板状の突部であり、+Y方向の端部は溝部22の内周面と接している。なお、上向板状体23の高さは、溝を形成する溝部22の高さに比べてひと回り低く形成している(
図5(b)参照)。
このように溝部22と上向板状体23とで形成する溝部分及び各上向板状体23の間に形成する溝部分は、後述する嵌合片63と嵌合する被接続嵌合部21を構成する。
【0075】
本実施例の嵌合片63は、接続本体部31の下面から下方に突出する板状体である両端下向板状体63aと下向板状体63bとで構成している。
両端下向板状体63aは、接続本体部31の下面から下方に突出している嵌合片63のX軸方向両端側に形成されている板状体であり、溝部22の高さと等しい高さで形成するとともに、溝部22のX軸方向の内壁から該内壁と対向する上向板状体23の面までの距離と等しい幅で形成している。
【0076】
また、両端下向板状体63aの長手方向(Y軸方向)の長さは、溝部22が形成する溝部のY軸方向の長さと略同じ長さに形成している。なお、両端下向板状体63aは絶縁体である絶縁部61で表面を覆うように構成としている(図示省略)。
【0077】
これに対し、下向板状体63bは、両端下向板状体63aよりもひと回り低く形成し、対向する上向板状体23の面同士の垂直距離よりも短い幅を有する板状体であり(
図5(b)参照)、上向板状体23の長さと略同一の長さを有する。
【0078】
このように構成した接続体3を上方から発熱体側嵌合体20に組付けることにより、両端下向板状体63aが−X軸方向両端に形成された上向板状体23と溝部22とが形成する被接続嵌合部21に嵌合するとともに、下向板状体63bが各上向板状体23の間に形成される溝部分である被接続嵌合部21に入り込むこととなる(
図5(a)参照)。この際、両端下向板状体63a及び下向板状体63bの端部は、上向板状体23の−Y側の側面と接することとなる。
【0079】
また、このように構成された冷却構造体1bにおいて、接続体3と発熱体側嵌合体20とを組付けることで、溝部22と上向板状体23とで形成する被接続嵌合部21と両端下向板状体63aが嵌合して確実に固定されるとともに、両端下向板状体63aと上向板状体23とが接することとなり、効率的に熱交換することができる。
【0080】
さらにまた、本実施例においては、下向板状体63bの側面と上向板状体23の側面とが接触しない構成としているが、溝部22が形成する溝部に、電導性を有さず熱伝導性に優れる熱伝導グリス24を充填することにより、下向板状体63bと上向板状体23とが熱伝導グリス24を介して間接的に接触し、熱伝導グリス24によりさらに効率的に熱交換することができる(
図5(a)、(b)参照)。
【0081】
なお、本実施例では、上向板状体23と下向板状体63bとの間を埋めるように熱伝導グリス24を充填しているが、熱伝導グリス24などのゲル状である必要はなく、例えばサーマルシートなどのようなシート状や帯状のような熱交換性の高いものを上向板状体23と下向板状体63bとの間に挟み込んでもよい。
【0082】
また、熱伝導グリス24のようなゲル状とした場合には、接続体3と発熱体側嵌合体20とを組付けた際に熱伝導グリス24が充填されることとなるため、上向板状体23及び下向板状体63bとの接触面積量が増加し、より効率よく熱交換をすることができる。
【0083】
このように構成した冷却構造体1bは、上述の冷却構造体1及び冷却構造体1aと同様の効果を奏するとともに、上向板状体23と下向板状体63bの間に伝熱性を有する熱伝導グリス24を備えることにより、上向板状体23と下向板状体63bとの密着性を高めることができるため、効率的に熱を伝達できる。また、例えば下向板状体63bと上向板状体23との間に熱伝導率の高い熱伝導グリス24を用いることで、効率的に熱の移動を促すことができる。さらにまた、熱伝導グリス24として、絶縁性を有する部材を用いることが可能であるため、電気を通さずに熱のみを接続体3に伝達することができる。
なお、本実施例において、上向板状体23と下向板状体63bとは、直接接しない構成としているが、これに限定されるわけではなく、直接接触する構成としても良い。
【0084】
次に、
図6及び
図7に基づいて、他の実施形態である冷却構造体1cについて説明する。
なお、上記と同様に、以下で説明する冷却構造体1cの構成のうち、上述の冷却構造体1,1aと同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
また、
図6および
図7においては、上下方向をZ軸方向とし、ギボシ型突部65を係合穴25に挿入する方向をY軸方向とする。そして−Y軸及びZ軸と直交する方向をX軸方向とする。なお、ギボシ型突部65の挿入方向を−Y方向(前方)とし、逆方向を+Y方向(後方)とする。
【0086】
冷却構造体1cは、冷却構造体1,1bと同様に、熱伝達路2及び接続体3から構成され、
図6及び
図7に示すように、接続体3には発熱体側嵌合体20と対向する接続本体部31の側面に−Y軸方向に突出するギボシ型突部65を備えている。一方、発熱体側嵌合体20の接続体3と対向する面には、ギボシ型突部65と対向する位置にギボシ型突部65の挿入可能な係合穴25を設けている。
【0087】
詳述すると、ギボシ型突部65は、弾性体で構成されたギボシ形状の筒体であり、接続本体部31に後方部分が埋め込まれた円柱体65aと、円柱体65aの前方(−Y軸方向)にX軸方向及びZ軸方向に対して、円柱体65aの底面を形成する円の径よりも大きい径を有しY軸方向に対しては該円の径よりも小さい径を有する楕円球65bを備えている。なおX軸方向及びZ軸方向に対する径の大きさは等しい。すなわち、楕円球65bは、−Y方向から観察した場合において、正円となる楕円球である。
また、円柱体65aの後方は接続体3の+Y方向に形成される面に備わる連結部32の内部に形成される熱誘導部36と繋がっている(
図7参照)。
【0088】
一方、係合穴25は、挿入口25a、差込口25b、収容部25cで構成されている。
挿入口25aは、発熱体側嵌合体20の表面に形成されるとともに、楕円球65bのX軸方向に対応する径よりも長い径を有する挿入口であり、差込口25bは、挿入口25aから発熱体側嵌合体20の前方内部に形成されるとともに、楕円球65bのX軸方向に対する径よりもひと回り短い径を有する円形状の差込口である。
【0089】
収容部25cは、差込口25bの内側には、
図7に示すように、楕円球65bの外径と略等しい大きさを有する突部収容空間Sを形成する収容部である。
なお、挿入口25aと差込口25bとはテーパ状に形成されている。換言すると、係合穴25は、発熱体側嵌合体20の−Y方向側面において、縮径した挿入口を有しており、差込口25bと収容部25cにより、発熱体側嵌合体20内部に一部が開口した突部収容空間Sを形成している。
【0090】
このように形成された、ギボシ型突部65を備える接続体3は、発熱体側嵌合体20に形成された係合穴25にギボシ型突部65を挿入することで確実に接続体3を発熱体100に接触させることができる。
【0091】
詳述すると、挿入口25aの内径は、楕円球65bの対応する外径よりも大きく、また、挿入口25aと差込口25bとがテーパ状に形成されているため、ギボシ型突部65を−Y軸方向に移動させることにより、楕円球65bを差込口25bに導くことができる。
【0092】
ここで、差込口25bの内径は楕円球65bのX軸及びZ軸に対する外径よりも小さいが、楕円球65bが弾性材で形成されていることから、ギボシ型突部65を−Y方向に押し込むことで、楕円球65bが変形して楕円球65bを突部収容空間Sに挿入することができる(
図7(b)参照)。
【0093】
ここで、収容部25cが形成する突部収容空間Sは楕円球65bと略同等の大きさを有する空間であるため、楕円球65bの後方部分(円柱体65aの前方端部)が差込口25bを通過した際には、楕円球65bは弾性変形し、もとの形状に戻ることとなる(
図7(c)参照)。
【0094】
これにより、ギボシ型突部65を発熱体側嵌合体20に挿入することができるとともに、楕円球65bが弾性変形することにより楕円球65bが収容部25cと係合し、接続体3と発熱体100とがより確実に固定されることとなる。すなわち、楕円球65bの嵌合方向と交差する方向で楕円球65bと収容部25cとが係合することとなる。また、ギボシ型突部65が弾性材で形成されているため、ギボシ型突部65が突部収容空間Sに挿入されると楕円球65bが弾性変形して元の形状に戻り、楕円球65bと収容部25cとが密着する。
【0095】
したがって、接続体3が発熱体100と接触する接触面積が増大するため、接続体3は発熱体100から効率的に熱を吸収することができる。また、ギボシ型突部65は、接続本体部31の内部において熱誘導部36と接続されていることから、吸熱した熱を連結部32と連結した熱伝達路2に伝達することができる。
【0096】
このように構成した冷却構造体1cは、上述の冷却構造体1と同様の効果を奏するとともに、接続嵌合部62を、被接続嵌合部21を構成する係合穴25に対して、嵌合方向と交差する方向で係止するギボシ型突部65で構成とすることにより、接触部60と発熱体100などを嵌合方向と交差する方向で、係止できるため、発熱体100または放熱体200と接続体3とを確実に接続することができる。
【0097】
またギボシ型突部65を、弾性材で構成することにより、係合穴25を備える発熱体100または放熱体200とギボシ型突部65を備える接続体3とをより確実かつ強固に接続することができるとともに、発熱体100または放熱体200と接続体3との熱交換をより効率的に行うことができる。
【0098】
詳述すると、ギボシ型突部65を弾性材とすることにより、ギボシ型突部65を係合穴25との嵌合方向に挿入した際、ギボシ型突部65が係合穴25の嵌合方向と交差する方向の形状に合わせて変形して挿入される。この場合において、挿入位置の形状と比べて、係合穴25の嵌合方向と交差する方向の形状が、嵌合方向に沿って大きくなると、ギボシ型突部65が弾性変形することにより元の形状に戻ろうとする。これにより、ギボシ型突部65が係合穴25と係止することとなる。
【0099】
このため、係合穴25を備える発熱体100または放熱体200とギボシ型突部65を備える接続体3とをより確実かつ強固に接続することができる。
また、ギボシ型突部65が弾性変形することで、ギボシ型突部65と被係合部とが密着することとなる。したがって、接触面積が増加し、熱伝導がより効率的になる。
【0100】
次に、他の実施例として、
図8及び
図9に示すように、接続体3を端子状に形成した熱伝導端子80と熱伝導端子80を収容することができるキャビティ71を備えるハウジング70から構成された接続体3dについて説明する。
【0101】
以下、接続体3dに関して、
図8及び
図9に基づいて説明する。
なお、上記と同様に、以下で説明する冷却構造体1dの構成のうち、上述した実施例における冷却構造体1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0102】
また、
図8乃至
図11の図中において、図中の上下方向をZ軸方向とし、熱伝導端子80をハウジング開口部27に挿入する方向をY軸方向とする。そして−Y軸方向及びZ軸方向の双方に垂直な方向をX軸方向とする。また、上側を+Z方向、下側を−Z方向とし、上述の熱伝導端子80をハウジング開口部27に挿入する方向を−Y方向または前方向、上述の熱伝導端子80をハウジング開口部27に挿入する方向と逆方向を+Y方向または後方向とする。また、図中の左側を+X方向または左方向と、右側を−X方向または右方向とする。
【0103】
冷却構造体1dにおいて、発熱体100の表面に形成される発熱体側嵌合体20は、ハウジング開口部27と、ハウジング開口部27に設けられた複数の雄型端子28と、ハウジング70を挿入した後にハウジング70の固定する固定レバー29とを備える。
【0104】
ハウジング開口部27は、発熱体側嵌合体20の背面に設けられた開口部であり、後述する熱伝導端子80を収容できるような熱伝導端子80の外形と略等しい大きさを有するハウジング収容空間Hを発熱体側嵌合体20に形成する開口部である。
【0105】
雄型端子28は、後述する端子状に形成された熱伝導端子80の伝熱用ボックス部82などに挿入可能な雄型圧着端子である。なお、雄型端子28は熱伝導用端子である熱伝導用雄型端子28aと、導電用の端子である導電用雄型端子28bとがあり、それぞれの前方側には発熱体100と処理装置などと接続されている(図示省略)。
【0106】
固定レバー29は、発熱体側嵌合体20の上面と下面とにまたがって形成されたレバーであって、ハウジング70をハウジング収容空間Hに挿入したのちに、−X方向に形成された固定レバー29の挟持部29aを前方に押しこむことでハウジング70の接続を固定することができる。
【0107】
接続体3dは、上述したように、端子状に形成された熱伝導端子80と当該端子の挿入を許容するキャビティ71を備えたハウジング70とで構成されている。
ハウジング70は、雄型端子28が形成するハウジング収容空間Hに収納可能な筐体であって−Y軸方向に貫通する貫通孔であるキャビティ71が6個(上下方向に2個、左右方向に3個)形成されている。キャビティ71は後述する熱伝導端子80を収納可能な熱端子用キャビティ71aと導電圧着端子90を収納可能な導電端子用キャビティ71bとから構成し、熱端子用キャビティ71aは6個あるキャビティ71のうちの左右上下端に形成された4つのキャビティを指し、導電端子用キャビティ71bは、ハウジング70の真ん中に形成された2つのキャビティ71である。
【0108】
熱伝導端子80は、
図9に示すように、熱伝達路接続部81と熱端子用ボックス部82とが後方からこの順に並び、連結部を介して一体として構成されている。なお、熱伝達路接続部81及び伝熱用ボックス部82の内面側には絶縁体である加工しやすいシリコンなどで構成される絶縁部61により成形加工されている。
【0109】
熱伝達路接続部81は、U字型に開口した熱伝達路2を接続するための接続部であり、被覆圧着部81a及び熱伝導線圧着部81bから構成されている。被覆圧着部81aと熱伝導線圧着部81bは、後方から2つ並んで配置され、後方に位置する被覆圧着部81aは熱伝達路2の外周面を圧着する圧着部である。前方に位置する熱伝導線圧着部81bは、熱伝達路2の絶縁被覆などを剥いで露出させた熱導線及び先端側の絶縁被覆を圧着接続する圧着部である。
【0110】
伝熱用ボックス部82は、
図9で示すように、−Y軸方向を長手方向とする中空状の筐体であって、伝熱用ボックス部82の内面下方には、伝熱用ボックス部82に熱伝導用雄型端子28aを挿入した際に熱伝導用雄型端子28aとの接続を固定する係止片が設けられている(図示省略)。また、伝熱用ボックス部82の左側側面には貫通孔がある。
【0111】
導電圧着端子90は、導電性を有する被覆電線2bを挿入し圧着接続する電線圧着部91と、導電用雄型端子28bを挿入可能な筐体からなる導電ボックス部92とで構成される圧着端子である。なお、被覆電線2bは、導線を絶縁体である絶縁被覆で被覆して構成している。
【0112】
なお、本実施形態においてはハウジング70に挿入する端子の形状を雌型圧着端子状に形成しているが、該形状に限定されるわけではなく、例えばオス型圧着端子の形状としてもよいし、ピン型圧着端子の形状としてもよい。すなわち、接続体3dを発熱体100に接続する際に、雄型端子28と熱伝導端子80及び導電圧着端子90とが相互に接続できる端子であればどのような形状であってもよい。
【0113】
このような構成を有する接続体3dを、発熱体100と接続する方法について、以下説明する。
先ず、熱伝達路2の先端側を覆う絶縁被覆を剥いで熱導線を露出させ、熱導体線及び絶縁被覆を熱伝導線圧着部81bおよび被覆圧着部81aにそれぞれ配置する。そして、被覆圧着部81a及び81bを左右方向からかしめるとともに、上下方向からかしめることにより、熱伝達路2と熱伝導端子80とを接続する(
図9参照)。
【0114】
同様に、被覆電線2bも先端側の絶縁被覆を剥いで内部の導線を露出させ、導線を電線圧着部91に配置し、左右方向及び上下方向からかしめ、被覆電線2bと導電圧着端子90とを接続する(
図9参照)。
【0115】
次に、伝熱用ボックス部82が前方となるように、熱端子用キャビティ71aに熱伝導端子80を挿入するとともに、導電ボックス部92が前方となるように、導電端子用キャビティ71bに導電圧着端子90を挿入する。この際、熱伝導端子80及び導電圧着端子90を接続されている熱伝達路2及び被覆電線2bを図示しない結束バンドで束ねる(
図8(a)参照)。
【0116】
そして、ハウジング70及び熱伝導端子80とで構成した接続体3dを発熱体側嵌合体20と接続する。
詳しくは、熱伝導端子80及び導電圧着端子90を装着したハウジング70を、発熱体側嵌合体20に形成されたハウジング収容空間Hに挿入することにより、ハウジング70に備わる熱伝導用雄型端子28aが伝熱用ボックス部82に接続され、また、導電端子用キャビティ71bに挿入した導電圧着端子90の導電ボックス部92に導電用雄型端子28bを挿入することができる。
【0117】
このように構成された接続体3dは、予め熱伝導端子80及び導電圧着端子90をハウジング70に確実に接続した構成であり、また、発熱体側嵌合体20には雄型端子28を接続した構成となっている。したがって、ハウジング70を発熱体100の表面に形成された発熱体側嵌合体20の内部空間であるハウジング収容空間Hに挿入し、固定レバー29を+Y方向に押し込むことで、雄型端子28と熱伝導端子80や導電圧着端子90とを確実かつ一括して接続することができる。
【0118】
また、熱伝導端子80は内部を、絶縁体である絶縁部61で成型加工しているため、仮に雄型端子28の前方が導電性を有する金属線などでつながっている状態であっても、伝熱用ボックス部82と雄型端子28との間に絶縁部61を挟むこととなり、伝熱用ボックス部82より後方にある熱伝達路2などに電流が流れることがなく、ノイズ等が発生する危険を排除することができる。
【0119】
さらに、ハウジング70に熱を伝達する熱伝導端子80と電気を流すための導電圧着端子90とを収納できる構成とすることで、キャビティ71と接続されて熱伝達路2と熱伝達路接続部81と接続された被覆電線2bとを結束バンドなどで束ねて一体としてとり扱うことができる。これにより、熱伝達路2と被覆電線2bとを一括して取り扱うことができ、被覆電線2bの配索経路を熱伝達路2の配索経路とすることができる。したがって、熱伝達路2の配索経路を検討する工程を削減することができる。
【0120】
さらにまた、従来から用いていた端子と熱伝導端子80とを同形状とすることにより、従来から用いてきた圧着端子やハウジングを使用することができるため、新たに専用の部品などを生産する必要を排除することができる。したがって、生産に係る工程を減らすことができ、コストの削減を図ることができる。
【0121】
このように構成した冷却構造体1dは、上述の冷却構造体1と同様の効果を奏するとともに、また、接触部60と連結部32とを一体の端子状に形成した熱伝導端子80と、熱伝導端子80を収納する熱端子用キャビティ71aを有するハウジング70とを備えることにより、ハウジング70に対して熱伝導端子80を確実に挿入することができる。
また、このハウジング70を用いた冷却構造体1により、ハウジング70に収納した熱伝導端子80を確実に発熱体100または放熱体200と接触することができる。
【0122】
詳述すると、上述のように、複数の熱伝導端子80を収納する複数のキャビティ71を形成するハウジング70を雌型ハウジング70とし、該雌型ハウジング70を、予め接触部60と接触可能に形成された発熱体100に備える複数の被接触部分を収納する雄型ハウジングとなる発熱体側嵌合体20に挿入することにより、雌型ハウジング70に収納した複数の接触部60と発熱体100の被接触部分とを確実に接触することができる。
これにより、上記のように、熱伝導端子80を予め収納したハウジング70に対応する発熱体100などに備えたハウジングを構成する発熱体側嵌合体20に確実に接触することができる。
【0123】
また、ハウジング70に、被覆電線2bを接続した導電圧着端子90を挿入する複数の導電端子用キャビティ71bをさらに備えることにより、発熱体100と接続した熱伝達路2と被覆電線2bとを束ねて一体としてハウジング70から延びる形状とすることができるため、熱伝達路2に用いた配索を被覆電線2bの配索を使用することができる。したがって、被覆電線2bの配索に用いる工数を削減することができる。
【0124】
詳述すると、運転支援装置などの装置に必要な処理などを実行処理する際に発熱する発熱体100はジャンクションボックスや他の電子機器との間で電気信号の送受信を行うために被覆電線2bが接続されている。
【0125】
ここで、上述のように、ハウジング70を、熱伝導端子80を収納するキャビティ71と、ジャンクションボックスと接続した被覆電線2bに接続された導電圧着端子90を挿入する複数のキャビティ71とを有する雌型ハウジング70とする。
【0126】
また、発熱体100の電子部品と接続する被覆電線2bであって、導電圧着端子90と接続可能な導電用雄型端子28bと、接触部60と接触可能に形成された熱伝導用雄型端子28aを収納可能なハウジングを構成した発熱体側嵌合体20を、雄型ハウジングとして発熱体100に備えることとする。この場合において、雌型ハウジング70と雄型ハウジングである発熱体側嵌合体20とを接続することにより、電子部品とジャンクションボックスとを確実に接続するとともに、発熱体100と接触部60とを確実に接続することができる。
【0127】
このように、発熱体100と放熱体200とを熱伝達路2で繋ぐ冷却構造体1において、発熱体100と接続した接続体3から熱伝達路2と、導電圧着端子90に接続した被覆電線2bとが同様に延びる構成としているため、これらを合わせて配索することができる。このため、熱伝達路2の配索経路を被覆電線2bの配索経路として利用することとなり、新たな被覆電線2bのための経路を配索する必要がない。したがって、新たな被覆電線2bのための経路を配索するための工数を削減することができる。
【0128】
また、従来から用いている圧着端子やハウジングをハウジング70として使用することで、新たな圧着端子を作る必要が無く、汎用性の高い接続体3を提供することができる。
【0129】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、被嵌合片は、上向板状体23に対応し
熱伝導材は、熱伝導グリス24に対応し
被係止部は、係合穴25に対応し
接触手段は、接触部60に対応し
嵌合部は、接続嵌合部62に対応し
係止部は、ギボシ型突部65に対応し
熱伝達端子は、熱伝導端子80に対応し
端子は、導電圧着端子90に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるのもではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0130】
例えば、接触部60などは導電性を向上させることなく熱伝導性を向上させた絶縁体により構成されているが、当該形態に限定されるわけではなく、例えば、高い導電率を有する金属などで構成してもよいし、熱伝導率が低い材質で構成してもよい。しかし、このような材質を用いた冷却構造体1とすることにより、発熱体100から電流が熱伝達路2に流れることなく、熱伝達路2には熱のみを伝達することができる。
【0131】
また、実施例において、導電性を向上させることなく熱伝導性を向上させた絶縁体は、発熱体100と接する面などに形成する構成としているが、この構成に限定されるわけでなく、例えば、熱誘導部36をこのような材質で構成してもよいし、接続本体部31の高さが真ん中となる位置のXY平面などのように、接続本体部31の内部であって、発熱体100から連結部32へと熱が伝達する際の、伝達経路に配置する構成としてもよい。
【0132】
また、発熱体100及び放熱体200と接続する接続体3は必ずしも同一の接続体3である必要はなく、例えば、発熱体100に接続体3dを接続し、放熱体200に接続体3aを接続させるなど、発熱体100及び放熱体200の形状などに合わせて適宜変更することができる。
【0133】
なお、上述の説明における熱伝達路2を、
図10に示す多層熱伝達路40で構成してもよい。多層熱伝達路40は、第1熱導体41、内部絶縁体42、第2熱導体43及び外側絶縁被覆44とで構成している。
第1熱導体41は、熱伝導率が高い銅製の導体であり下向きに凸な略半円状断面で構成している。また、第1熱導体41は熱伝達路2に沿って、一端側(図中で+X方向)から他端側(図中で−X方向)に向かって熱伝達路2の断面の下半部に配置し、第1熱導体41は熱伝達路2の他端側に貫通していない。
【0134】
内部絶縁体42は、円形断面の多層熱伝達路40の高さ方向中央部分において、上述の第1熱導体41と後述の第2熱導体43との間で挟まれるように配置され、誘電率の低い熱伝導体で構成し、熱伝達路2の一端側から他端側まで貫通している。
【0135】
第2熱導体43は、熱伝導率が高い銅製の導体であり上向きに凸な略半円状断面で構成している。また、第2熱導体43は熱伝達路2の一端側端部には露出しておらず、熱伝達路2の他端側に露出している。
【0136】
なお、第1熱導体41及び第2熱導体43は、銅製に限らず、電導性を有する金属、繊維強化プラスチック、ピッチ系炭素繊維などで構成してもよく、第1熱導体41と第2熱導体43とを同素材で構成してもよいし、別素材で構成してもよい。
【0137】
このように構成した第1熱導体41、内部絶縁体42、第2熱導体43を上下方向に積層して断面円形状を構成するとともに、絶縁体であるポリエチレン樹脂で構成された外側絶縁被覆44でその外周全体を覆って多層熱伝達路40を構成している。
【0138】
上記構成である多層熱伝達路40を熱伝達路2として用いる場合、多層熱伝達路40の一端側に露出する第1熱導体41を発熱体100に取り付ける接続体3の連結部32に連結し、多層熱伝達路40の他端側に露出する第2熱導体43を、放熱体200に取り付ける接続体3の連結部32に連結することによって、上述の冷却構造体1と同様の効果を奏することができる。
【0139】
詳述すると、発熱体100に取り付けられた接続体3に連結された第1熱導体41が接続体3を介して吸熱された熱を他端側に向かって熱伝達する。そして、多層熱伝達路40内部において、第1熱導体41の長さ全体において、内部絶縁体42を介して第2熱導体43に熱伝達する。内部絶縁体42は介して第1熱導体41から熱伝達された第2熱導体43は、放熱体200に取り付けられた接続体3を介して放熱体200まで熱伝達し、放熱体200から放熱することができる。
【0140】
さらに、多層熱伝達路40を熱伝達路2として用いた冷却構造体1は、例えば、熱伝達路2の一端側を電気供給源と接続し、他端側を電気回路と接続しても、電気を流す導線である第1熱導体41が他端側まで延びていないため、電気回路とは接続できず、第1熱導体41には通電されない。同様に、第2熱導体43が一端側まで延びていないため、電気供給源とは接続できず、第2熱導体43には通電されない。また、第1熱導体41と第2熱導体43との間には、絶縁体である内部絶縁体42が配置されているため、第1熱導体41と第2熱導体43とが導通し、通電されるおそれもなく、熱伝達路2を、発熱体を組み込んだ回路などに直接つないだ場合であっても、多層熱伝達路40における第1熱導体41や第2熱導体43に通電することで生じるノイズによる悪影響を及ぼすことはない。
【0141】
さらにまた、多層熱伝達路40の構造は
図10に示した構成に限定されることはなく、例えば、
図11に示すように、多層熱伝達路40における第1熱導体41を線状の第1熱導線41aで構成するとともに中心に配置し、第1熱導線41aを内部絶縁体42で覆うとともに、その外周面を第2熱導体43で覆い、さらにその外側を外側絶縁被覆44で覆って多重熱伝達路40aを構成してもよい。
【0142】
このような構成とすることで第1熱導線41aから内部絶縁体42へと放射線状に伝わる熱を内部絶縁体42の外周面を覆う第2熱導体43で効率的に回収することができ、より効率のよい熱伝達を行うことがきる。
【0143】
なお、上述の多層熱伝達路40や多重熱伝達路40aを熱伝達路2として用いる場合、多層熱伝達路40や多重熱伝達路40a自体が絶縁性を備えているため、接続体3における接触部60に絶縁部61を形成しない、つまり、絶縁部を備えていない接続体3を用いてもよい。