(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1端域は、複数の前記第1分離部から構成された、前記縦中心線に対して斜めに延びる少なくとも1つの分離ユニットを有し、前記分離ユニットにおいて隣り合う前記第1分離部どうしの一部が前記縦方向と前記横方向とに傾斜する方向において互いに重なるように配置される請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜3を参照すると、本発明の吸収性物品の一例として示す生理用ナプキン10は、縦方向Y及び横方向Xと、横方向Xにおける寸法を2等分する縦中心線P及び縦寸法Yにおける寸法を2等分する横中心線Qとを有し、着用者の肌と対向する表面及びその反対側の裏面と、凸曲状の第1及び第2端縁10a,10bと、横中心線Qの位置する中央部において凸曲する両側縁10c,10dと、表面側に位置する透液性の表面シート11と、裏面側に位置する不透液性の裏面シート12と、これら両シート11,12間に位置する吸液性の吸液層13と、吸液層13の底面を覆う防漏シート14とを含む。生理用ナプキン10の柔軟性を向上させるために、表面シート11と吸液層13との間に比較的に嵩高の繊維不織布製の中間シートを配置してもよい。第1及び第2端縁10a,10bと両側縁10c,10dとから画定された生理用ナプキン10の外周縁は、周方向に連続して延びる凹凸状であって、それらが直線状である場合に比して柔軟な印象を与え、全体的に統一的な美観を有して意匠性に優れる。
【0012】
本発明においては、吸液層13の存在領域において、表面側に位置する単数又は複数のシート部材から構成される層を表面層18(本実施形態においては、表面シート11のみ)、吸液層13の裏面側に位置する単数又は複数のシート部材から構成される層を裏面層19(本実施形態においては、裏面シート12と防漏シート14)という。したがって、吸液層13は、表面層18と裏面層19との間に介在されて配置される。
【0013】
裏面シート12は、表面シート11よりもさらに横方向Xの外側へ延出しており、その表面側において一対のサイドシート20が固定されている。サイドシート20は、生理用ナプキン10の両側縁10c,10dから吸液層13の底面まで延在している。表面シート11、裏面シート12及びサイドシート20の一部によって吸液層13より縦方向Yの外側に位置するエンドフラップ22が形成され、裏面シート12とサイドシート20によって、吸液層13より横方向Xの外側に位置し、横中心線Q近傍において外方へ凸曲する一対のウイング部23を有するサイドフラップ24が形成される。吸液層13の底面に防漏シート14が配置されていることによって体液の漏れを防止することができる。また、本実施形態において、一対のサイドシート20は、裏面シート12と別体のシート部材から形成されているが、サイドシート20を配置せず、裏面シート12を生理用ナプキン10全体の大きさを有するシート材料から形成し、ウイング部23を裏面シート12から形成してもよい。
【0014】
図2を参照すると、生理用ナプキン10の裏面側、すなわち、裏面シート12の外面には、下着等の着衣に生理用ナプキン10を取り付けるための、感圧性接着剤から形成された、その中央部において縦方向Yへライン状に延び、横方向Xへ所定寸法離間して並ぶ複数の第1止着部31が配置される。また、ウイング部23の外面にも、感圧性接着剤から形成された第2止着部32が配置される。第1及び第2止着部31,32は、プラスチックフィルム製又は繊維不織布製のセパレータ33で被覆される。第1及び第2止着部31,32は、実用レベルにおいて十分な着用者の着衣に対する止着強度を有するものであること好ましく、具体的には、約2.0〜4.0Nの止着強度を有する。
【0015】
図示していないが、第1及び第2端縁10a,10bと両側縁10c,10dとから画成される生理用ナプキン10の外周縁では、各シート部材が、公知の接合手段、例えば、熱エンボス加工、ソニック加工等の各種熱溶着手段によって接合されたシール部(ラウンドシール)が形成される。また、シール部によって接合されている該外周縁を除いて、互いに重なり合うシート部材どうしは、この種の分野において公知のホットメルト接着剤を用いることができるが、生理用ナプキン10全体の伸縮性を阻害しないために、公知のゴム系接着剤等及びそれらの混合物を材料とするホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0016】
表裏面シート11,12には、スパンボンド繊維不織布やSMS繊維不織布等の公知の繊維不織布シート、防漏シート14には、防漏性のプラスチックフィルムが好適に使用される。吸液層13は、所定の形状、大きさに賦形されたパネル形状であって、シート部材に比して剛性の高い半剛性かつ弾性復元性を有する吸収性コア28と、オプションとして、保形性及び液拡散性の向上のために吸収性コアを包被する透液性のコアラップシート29とを有する。
【0017】
図4を参照すると、吸液層13は、縦方向Yにおいて互いに離間対向する曲状の第1及び第2端縁13a,13bと、両端縁13a,13b間に位置する両側縁13c,13dとを有する。また、吸液層13は、説明の便宜上、縦方向Yにおいて、着用者の腹部側に位置する第1端域41と、着用者の背部側に位置する第2端域42と、両端域41,42の間に位置する中間域43とに区分され、また、横方向Xにおいて、縦中心線Pと側縁13cとの間に位置する第1側方部45と縦中心線Pと側縁13dとの間に位置する第2側方部46とに区分される。
【0018】
本実施形態において、第1端域41と第2端域42との縦方向Yの寸法L2,L3は、吸液層13の縦方向Yの寸法L1の約25〜35%の大きさであって、中間域43の縦方向の寸法L4は、吸液層13の縦方向Yの寸法L1の約30〜50%の大きさである。ただし、第1及び第2端域41,42と中間域43とは、吸液層13の縦方向Yの寸法L1を3等分した大きさであってもよいし、第1及び第2端域41,42の縦方向Yの寸法L2,L3が中間域43のそれよりも大きく又は小さくてもよいし、第1端域41の縦方向Yの寸法L2と第2端域42の縦方向Yの寸法L3とは相違してもよい。吸液層13には、それを厚さ方向(Z方向)へ貫通する複数のスリットからなる第1〜第4分離部51〜54が配置される。
【0019】
<第1分離部>
図4〜
図6を参照すると、本実施形態において、第1及び第2端域41,42の第1及び第2方側部45,46のそれぞれには、互いに独立した複数の第1分離部51が配置される。第1分離部51は、縦中心線P側に位置する内端51aと、側縁13c,13d側に位置する外端51bとを有し、内外端51a,51bを通る直線状の仮想線Kが縦中心線Pに対して傾斜して延びている。第1分離部51は、傾斜方向Rの内側又は外側へ向かって凸曲した形状を有し、その内端51aは、外端51bよりも縦中心線Pとの離間距離が小さくなっている。ここで、「傾斜方向R」とは、縦中心線Pと横中心線Qとに対して約10〜80度傾斜した方向を意味する。
【0020】
図6を参照すると、第1分離部51の内端51aと外端51bとを結ぶ仮想線Kと縦中心線Pとにおける横中心線Qと向かい合う交角αが鋭角(90度以下)になっている。また、第1及び第2端域41,42は、横中心線Q側から縦中心線Pへ向かって斜めに延びる、単数または複数の第1分離部51を規則的に配列して構成された分離ユニット60を有する。具体的には、分離ユニット60は、好ましくは第1端域41の第1側方部45と第2側方部46とに縦中心線Pに関して対称であって、かつ、第1端縁13a側から横中心線Q側へ向かって互いに離間する第1〜第4分離ユニット61〜64が配置されている。第4分離ユニット64は、1つの第1分離部51のみから構成される。第1〜第3分離ユニット61〜63を構成する第1分離部51の内外端51a,51bのうち少なくとも一方は、隣接する第1分離部51の一部と後記の傾斜方向Rにおいて互いに重なっている。「隣接する第1分離部51どうしの一部が傾斜方向Rにおいて互いに重なる」とは、傾斜方向Rに沿う仮想線が隣接する2つの第1分離部51の一部と交差することを意味する。
【0021】
図4を参照すると、第2端域42においても、第1端域41と同様に、複数の第1分離部51から構成された複数の分離ユニット60が配置されている。第2端域42は、第1端域41よりも縦方向Yの寸法が大きいことから、第1端域41よりも多い分離ユニット60が配置されており、縦方向Yの斜めに離間して位置する第1〜第5分離ユニット61〜65が配置される。
【0022】
本実施形態において、第1分離部51は、第1及び第2端域41,42に複数配置されているが、後記の本願発明の効果を奏する限りにおいて、第1及び第2端域41,42のうちの一方において、第1側方部45と第2側方部46とにそれぞれ少なくとも1つ配置されていればよい。また、第1分離部51は、湾曲状ではなく、直線状、凸角状等であってもよいし、第1側方部41又は/及び第2側方部42において、縦中心線Pの近傍から両側縁13c,13dまで連続して一連に延びていてもよい。
【0023】
<第2分離部>
図4〜
図6を参照すると、第1端域41及び第2端域42の縦中心線P上には、それぞれ、第1及び第2端縁13a,13bへ向かって凸状を有する第2分離部52が配置される。第2分離部52は、好ましくは縦中心線Pに関して対称であって、縦方向Yにおいて互いに離間して配置される。第2分離部52は、縦中心線P上に位置する限りにおいて、縦中心線Pに関して対称でなくてもよいし、直線状、角状及、曲状及び扁平状等のいずれかの公知の形状であってもよい。
【0024】
<第3,4分離部>
中間域43を中心として第1端域41の横中心線Q側の部分と第2端域42の横中心線Q側の部分とには、横方向Xへ波状に延びる、縦方向Yに互いに離間した複数の第3分離部53が位置する。第3分離部53は、縦中心線Pと交差するように横方向Xへ延びており、その両端は吸液層13の両側縁13c,13dまで延びていない。また、中間域43において、縦方向Yにおいて互いに離間する第3分離部53の間には、横方向Xへ波状に延びて、縦中心線Pと交差せずに縦中心線Pに関して対称に配置された第4分離部54が位置する。第4分離部54は、その外端縁が吸液層13の両側縁13c,13dまで延びており、両側縁13c,13dは、第4分離部54によって部分的に分離されている。
【0025】
本実施形態に係る吸液層13としては、高吸収性ポリマー粒子を含まない、エアレイド繊維不織布を単層又は複数層に重ねて形成されたものを使用することが好ましい。高吸収性ポリマー粒子を含まないことによって、その製造工程において各分離部51〜54を形成し易く、それら各分離部51〜54から微細な粒子状の高吸収性ポリマー粒子が漏れ出ることはないからである。吸液層13に各分離部51〜54を形成する方法としては、公知の切断手段を採用することができるが、吸液層13が高吸収性ポリマー粒子を含む場合には熱可塑性繊維等の熱融着材料を混在させ、吸収性コア28のみ又はそれをコアラップシート29で包被した状態において切断手段で部分的に切断するときに、切断と同時又は切断の前後において熱融着性材料(コアラップシート29が熱可塑性繊維から形成される場合には、コアラップシート29も同時に融着される)を融着させ、該熱融着性材料によって切断面から高吸収性ポリマー粒子が漏れ出るのを防止することができる。
【0026】
図7を参照すると、吸液層13は、それを縦方向Y及び傾斜方向Rの外方へ引っ張ろうとする力F1,F2が作用した状態において、第1〜第4分離部51〜54が開口して、両方向R,Yへ僅かに伸長された状態となる。吸液層13は、各分離部の開口によってその縦方向Yの寸法Lが大きくなるが、吸液層13の外周縁と第1及び第4分離部51,54が交差することから、外周縁が部分的に複数の箇所において切欠された状態となり、より吸液層13が伸長されてその縦方向Yの寸法L1が大きくなるといえる。生理用ナプキン10に配置された吸液層13は、表裏面層18,19に固定されているから、生理用ナプキン10全体にそれを縦方向Y及び傾斜方向Rの外方へ引っ張ろうとする力F1,F2が作用したときに、それ本来の伸長性が抑制される。したがって、吸液層13の伸長度合いは、繊維不織布シート製の表裏面層18,19の非弾性的な伸長性に依存するものであるところ(表裏面層18,19が弾性的な伸長性を有する場合には、その弾性的伸長性に依存する)、製品状態において、力F1,F2が作用したときに、少なくとも縦方向Y及び傾斜方向Rへ約5〜25%伸長できることが好ましい。
【0027】
図8を参照すると、出願人の知見によれば、生理用ナプキン10の着用状態において、生理用ナプキン10が取り付けられたショーツ70の一部、特に鼠蹊部と対向する部分には、着用者が歩行中等において前後方向へ脚部を動かす動作をしたときに、その縦中心線(生理用ナプキン10の縦中心線Pと重なるライン)に沿って延びる力が付与されて伸長されるのでなく、縦中心線Pに対して傾斜方向Rへ引っ張る力F2が付与されて、傾斜方向Rへ伸長されることが分かった。ショーツ70は、通常、伸縮性に富む素材から形成されているので、着用者の動作によってそれを傾斜方向Rへ引っ張ろうとする力F2が作用したときに伸長され易いところ、ショーツ70に取り付けられた生理用ナプキン10がかかるショーツ70の動きに追従できなかった場合には、着用感が損なわれて異物感を与えるだけでなく、位置ずれして第1及び第2止着部31,32がショーツ70から外れてしまうおそれがある。
【0028】
本実施形態における生理用ナプキン10の第1及び第2端域41,42において、縦中心線Pに対して傾斜した複数の第1分離部51が配置されていることから、第1及び第2端域41,42に対してショーツ70の動きに連動してそれを傾斜方向Rへ伸長しようとする力が作用したときに、第1分離部51が開口して第1及び第2端域41,42が傾斜方向Rへ伸長されて、吸液層13及びそれを含む生理用ナプキン10は、ショーツ70の動きに追従することができる。したがって、着用者が歩行した際に、生理用ナプキン10の着用感が損なわれて異物感を与えることはなく、また、ショーツ70から位置ずれして第1及び第2止着部31,32が解除されるおそれもない。
【0029】
既述のとおり、第1分離部51の内端51aと外端51bとを結ぶ仮想線Kと縦中心線Pとの横中心線Q側の交角αが鋭角であることから、引っ張り力F2が作用したときに第1及び第2端域41,42が傾斜方向Rの外方へ伸長される。交角αが直角(≒90度。その場合には、第1分離部51は横中心線Qと平行)や鈍角(90度以上)の場合、すなわち、第1分離部51が、横中心線Qとほぼ並行して横方向X延びる形状であったり、第1端縁13a側から縦中心線Pへ近づくように斜めに延びる形状であったりする場合には、第1及び/又は第2端域41,42が傾斜方向Rの外方へ伸長され難いので、生理用ナプキン10がショーツ70の動きに追従することができない。したがって、交角αは、鋭角(0〜90度)であることが好ましく、約50〜80度であることがさらに好ましい。交角αが50度以下、80度以上の場合には、生理用ナプキン10を傾斜方向Rへ伸長しようとする力の大きさや向きによって第1分離部51が開口し難くなるおそれがあるからである。
【0030】
ショーツ70の腹側又は背側のうちの一方において、生理用ナプキン10が追従すれば着用者に大きな異物感を与えるおそれはないので、第1及び第2端域41,42の少なくとも一方において、第1及び第2側方部45,46にそれぞれ少なくとも1つの第1分離部51が配置されていることが好ましい。また、第1及び/第2端域41,42の両側が傾斜方向Rへ同じように伸長されるために、第1及び第2側方部45,46に配置された第1分離部51が横方向Xにおいて互いに対向して位置することが好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のように、第1及び第2側方部45,46に、それぞれ、縦中心線Pと対称となるように、複数の第1分離部51を配置することによって、第1及び第2端域41,42の両側において傾斜方向Rへの伸長部分が同じになるので、非対称の場合に比べて全体の追従性は向上する。
【0031】
また、吸液層13は、縦中心線Pに関して斜めに位置する、複数の第1分離部51から構成された複数の分離ユニット60を有する。第1分離部51がかかる配置態様を有することから、第1分離部51が縦中心線Pに関して対称に配置されているものの不規則に配列されている場合に比して、分離ユニット60の位置する領域全体を規則的に伸長させることができ、より傾斜方向Rへの伸長性を高めることができる。
【0032】
さらに、第1分離部51は、分離ユニット60を構成する任意の第1分離部51の内端51a及び/又は外端51bは、隣り合う第1分離部51と傾斜方向Rにおいて互いに重なっており、かつ、隣り合う第1分離部51どうしが互いに反対方向へ湾曲した曲状を有する。ショーツ70の鼠蹊部と対向する部分には、着用者の動作や姿勢の変化等によってそれ全体を捩じらせようとする力が作用されるおそれがあるところ、第1分離部51がこのような形状及び配置態様を有することによって、ショーツ70にそれを捩じらせようとする力が作用しても、吸液層13の第1分離部51の間に位置する部分が着用者の身体側へ向かって凸曲することによって第1及び第2端域41,42は立体的な変形をして身体に対するフィット性が向上する。このような立体的な変形によって、生理用ナプキン10はそれを捩じろうとする力を吸収し、吸液層13のひび割れによる吸収性の低下を抑制することができる。
【0033】
第1及び第2端域41,42には、縦中心線P上に位置する第2分離部52が配置されていることから、第1及び第2端域41,42は、傾斜方向Rの外方だけではなく、縦方向Yへも伸長可能である。また、吸液層13の中間域43には、第3及び第4分離部53,54が位置することによって、生理用ナプキン10が縦方向Yへ伸長されたときに、それら分離部53,54間は縦方向Yにおいて一部がつながった複数の短冊状となる。このように、縦方向Yへの伸長性に優れることから、生理用ナプキン10全体が着用者の身体形状に沿った湾曲状を呈することができ、着用感を向上させることができる。なお、図示していないが、表裏面層18,19において、ギア延伸加工によって縦方向へ交互に延びる凹凸を形成し、生理用ナプキン10の横方向Xにおける伸長性を向上させることもできる。かかる場合には、ショーツ70が横方向Xへ伸長されたときに、吸液層13の第1分離部51が開口し、生理用ナプキン10はショーツ70の動きに追従することができる。このように、第1分離部51は、縦方向Y及び横方向Xに傾斜する傾斜方向Rへ開口可能であるから、生理用ナプキン10にそれを横方向X及び縦方向Yへ引っ張ろうとする力が作用したときに、所要程度開口して吸液層13は伸長しうる。
【0034】
本実施形態においては、各分離部51〜54において、吸収性コア28とともにコアラップシート29が分離されて開口が形成されるが、各分離部51〜54を吸収性コア28にのみ配置し、各分離部が配置された吸収性コア28をコアラップシート29が包被するような態様であってもよい。かかる実施態様の場合には、各分離部51〜54が開口することによって吸収性コア28が伸長されるのに応じてコアラップシート29が伸長できるようにするために、コアラップシート29は、伸長性を有するシート部材から形成されていることが好ましい。また、吸液層13の肌対向面側において第1分離部51の外形輪郭に沿って、外部から視認可能な色彩を付与してもよい。吸液層13に着色された部分が表面層18及び/又は裏面層19を介して着用者に視認されることによって、意匠性が向上する。また、着用者に視覚的に第1分離部51の存在を認識させて、生理用ナプキン10がショーツ70に追従可能であるという安心感を与えることができ、かつ、着用時に実際に伸長されていることを認識させることができる。
【0035】
本実施形態においては、生理用ナプキン10を第1端域41が着用者の前側(腹側)に位置するように配置したが、第1端域41が後側(背側)となるように配置してもよい。また、記述のとおり、吸液層13の各分離部は、生理用ナプキン10の第1及び第2端域41,42のうちの少なくとも一方端域に配置されていればよいが、一方にのみ配置する場合には、後側に位置する端域にのみ配置することが好ましい。ショーツ70は、前側よりも後側において着用者の臀部に沿って傾斜方向Rへ引き伸ばされるからである。また、本実施形態のように、各分離部51〜54が縦中心線Pに関して対称に配置されることによって、すなわち、第1及び/又は第2端域41,42において第1側方部45と第2側方部46とに配置された各分離部51〜54が対称に配置されていることによって、傾斜方向Rへの追従性に優れるが、それらの全体又は一部が対称ではなく、横方向Xにおいて位置ずれした態様で配置されていてもよく、第1及び第2側方部45,46における各分離部51〜54の個数、形状、仮想線Kの交角がそれぞれ相違するものであってもよい。
【0036】
<変形例>
図9(a)は、生理用ナプキン10の変形例の一例における吸液層13の平面図であって、本変形例においては、吸液層13の第1及び第2端域41,42に第2分離部52、第3及び第4分離部53,54が配置されていない。このように、第2〜第4分離部53〜54が配置されていないことによって、生理用ナプキン10に対して傾斜方向Rへ引っ張ろうとする力F2が作用したときに、第1及び第2端域41,42は縦方向Yへ伸長されずに傾斜方向Rの外方へのみ伸長される。したがって、使用する際にショーツ70に取付けたり、使用後にショーツ70から剥がす際に、ショーツ70とともに縦方向へ伸長されることなく取扱い易くなり、また、着用状態におけるR方向へのショーツ70の追従性も向上する。
【0037】
図9(b)は、生理用ナプキン10の他の変形例の一例における吸液層13の平面図であって、本変形例においては、第1分離部51が、縦中心線Pに対して傾斜して直状に延びるスリットから形成される。第1分離部51が、このように曲状ではなく直状であっても、その内外端51a,51bを通る仮想線Kが縦中心線Pと交差し、かつ、横中心線Qと対向する交角αが鋭角となるので、既述の技術的効果を奏する。
【0038】
<第2実施形態>
図10を参照すると、本実施形態において、表面層18と裏面層19とは、単数又は複数のシート部材から構成(表面層18は、表面シート11と中間シート、裏面層19は、裏面シート12と防漏シート14)されて、縦方向Y及び/又は横方向Xへ伸長性を有している。すなわち、表裏面層8,9を構成するすべてのシートが弾性的又は非弾性的な伸長性を有する。非弾性かつ伸長性を有するシートとしては、例えば、スパンボンド繊維不織布もしくは、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)や繊維不織布等の各種公知の繊維不織布やプラスチックフィルムにギア延伸加工やスリット加工を施すことによって、縦方向Yへの所定の伸長性を付与したものを用いることができる。本実施形態においては、表裏面層を構成する各シートには、ギア延伸加工によって伸長性を付与した繊維不織布シート又はプラスチックシートを用いている。
【0039】
ここで、本発明における、「伸長性を有するシート」とは、自然状態から縦方向Yへ30mN/25mmの力で対象のシートを伸長した場合において、自然状態における縦方向Yにおける寸法から3%以上伸長可能であるもの、すなわち、伸長力を作用させる前の長さから1.03倍以上の長さになることが可能になるものである。
【0040】
<伸長性を有するシートの伸長率の測定>
伸長性を有するシートの伸長率の測定には、インストロン型万能引張試験機(島津製作所製、オートグラフAG−1)を用いた。具体的な測定方法としては、伸長性を有するシートから縦方向Yと横方向Xとにおける寸法が50mm×25mmの大きさであるサンプルを切り出して、サンプルの両端をチャックで把持するようにセットして、縦方向Yにおける長さ30mmを100mm/minの速度で引っ張って、横方向Xの寸法25mm幅当たりについて30mNの伸長力が縦方向Yに作用したときの伸び率(%)を測定した。
【0041】
また、表裏面層18,19を構成するシート部材のうちの少なくとも1つのシート部材を縦方向Y及び/又は横方向Xへ伸縮性を有するものから構成することもできる。かかる伸縮性を有するシートは、既述の弾性伸縮性不織布のほかに、弾性繊維のみから構成されたスパンボンド不織布もしくは、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)繊維不織布やSM(スパンボンド・メルトブロー)繊維不織布の複数層等を用いることができ、また、かかる伸縮性の繊維不織布を非伸縮性繊維から構成された非伸縮性の繊維不織布と接合してなる伸縮性複合シートから形成することもできる。伸縮性複合シートは、2枚の非伸縮性の繊維不織布の間に伸縮性の繊維不織布が配置された複数層から形成することもできる。非伸縮性の繊維不織布は、スパンボンド繊維不織布のほかに、エアースルー繊維不織布、ヒートロール繊維不織布等の各種公知の繊維不織布から形成される。非弾性シートとして用いる不織布の構成繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)等からなる繊維等が挙げられる。
【0042】
また、生理用ナプキン10は、肌対向面側において、吸液層13の存在領域に位置する凹状の圧搾溝81〜83を有する。圧搾溝81〜83は、縦長環状の外周部81と、外周部81内に位置するハート状の装飾部82と、縦方向Yにおいて離間対向して位置する曲状部83とを有する。圧搾溝81〜83は、体液を拡散させるための体液誘導溝及び身体形状に合わせた変形を可能とする変形補助手段としての役割を果たすとともに、本実施形態においては、複数の分離部51〜54が配置された吸液層13を含め、生理用ナプキン10を構成する部材がすべて伸長性を有するものであるから、生理用ナプキン10がショーツ70に追従して過度に一方向へ伸長されるのを抑制するための伸長抑制手段としての役割も果たし得る。
【0043】
図11を参照すると、生理用ナプキン10の裏面側には、それをショーツ70に止着するための止着手段が配置される。止着手段は、生理用ナプキン10の横方向Xの中央部において縦方向Yへ延びる中央止着手段85と、両ウイング部23に配置された一対のサイド止着手段86と、中央止着手段85の縦方向Yの外側に位置する一対の端部止着手段87とを有する。このように、生理用ナプキン10の裏面側に一対のサイド止着手段86と一対の端部止着手段87とが配置されることによって、生理用ナプキン10をショーツ70に取り付けた状態において、ショーツ70の動きに追従して、生理用ナプキン10はサイド止着手段86及び端部止着手段87間において縦方向Yと横方向Xとに伸長される。また、端部止着手段87は、吸液層13の第1及び第2端縁13a,13bと交差して配置されていることから、ショーツ70の動きに追従するように生理用ナプキン10にそれを縦方向Yへ引っ張る力が作用したときに、吸液層13が縦方向Yへ伸長される。
【0044】
止着手段85〜87の配置領域においては、表裏面層18,19を構成する各シートの非伸長性領域(ギア延伸加工されていない領域)が位置することが好ましい。各シートのギア延伸加工された伸長性領域が各止着手段85〜87の配置領域に位置する場合には、各止着手段85〜87がショーツ70に固定されることによって伸長性が発揮され難くなり、また、着用後にショーツ70から各止着手段85〜87を剥離するときにその配置領域が伸長する場合には、特に、裏面層19が伸長されてしまって剥離力が作用せず、剥離操作がし難くなるおそれがあるといえる。
【0045】
なお、生理用ナプキン10を構成する各構成部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「第1」〜「第4」の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いている。
【0046】
以上の記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に整理することができる。
【0047】
本願の第1発明は、縦方向及び横方向と、縦中心線と、横中心線と、透液性の表面層と、不透液性の裏面層と、前記表裏面層間に介在する吸液層とを含む吸収性物品において、前記吸液層は、前記縦方向において互いに対向する第1及び第2端域を有し、前記第1及び第2端域のうちの少なくとも前記第1端域は、前記縦中心線を挟んで対向する第1及び第2側方部と、前記第1及び第2側方部の少なくとも一方に配置された前記吸液層を貫通する少なくとも1つのスリット状の第1分離部とを有し、前記第1分離部は、前記縦中心線側に位置する内端と外端とを有し、前記内外端を通る仮想線が前記縦中心線に対して斜めに延びており、前記仮想線と前記縦中心線との交角のうちの前記横中心線と向かい合う交角が鋭角であって、
前記第1端域には、前記縦中心線上に位置し、前記縦方向の外側へ凸となる形状を有する前記吸液層を貫通するスリット状の第2分離部が配置されており、前記吸液層は、前記第1端域と前記第2端域との間に位置する中間域をさらに有し、前記中間域には、前記吸液層を貫通するスリット状の複数の第3及び第4分離部が配置されており、前記第3分離部は、互いに前記縦方向において離間して位置し、前記縦中心線と交差して前記横方向へ延びており、前記第4分離部は、前記第3分離部間において前記吸液層の側縁から前記縦中心線へ向かって延び、かつ、前記縦中心線を挟んで対向して位置することを特徴とする。
本願の第2発明は、縦方向及び横方向と、縦中心線と、横中心線と、透液性の表面層と、不透液性の裏面層と、前記表裏面層間に介在する吸液層とを含む吸収性物品において、前記吸液層は、前記縦方向において互いに対向する第1及び第2端域を有し、前記第1及び第2端域のうちの少なくとも前記第1端域は、前記縦中心線を挟んで対向する第1及び第2側方部と、前記第1及び第2側方部の少なくとも一方に配置された前記吸液層を貫通する少なくとも1つのスリット状の第1分離部とを有し、前記第1分離部は、前記縦中心線側に位置する内端と外端とを有し、前記内外端を通る仮想線が前記縦中心線に対して斜めに延びており、前記仮想線と前記縦中心線との交角のうちの前記横中心線と向かい合う交角が鋭角であって、前記吸液層の前記表面層又は前記裏面層には、前記第1分離部に沿って着色がされていることを特徴とする。
【0048】
上記段落0047に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記第1分離部は、前記第1側方部と前記第2側方部とに前記横方向において互いに対向するように配置される。
(2)前記横方向と向かい合う交角
が50〜80度である。
(3)前記第1端域は、複数の前記第1分離部から構成された、前記縦中心線に対して斜めに延びる少なくとも1つの分離ユニットを有し、前記分離ユニットにおいて隣り合う前記第1分離部どうしの一部が前記縦方向と前記横方向とに傾斜する方向において互いに重なるように配置される。
(4)前記第1分離部は、湾曲状であって、隣り合う分離部分どうしが互いに反対方向へ湾曲している。
(
5)前記第1及び第4分離部は、前記縦中心線に関して対称に位置し、前記第2及び第3分離部は、前記縦中心線に関して対称の形状を有する。
(
6)前記吸液層は、吸収性コアと、前記吸収性コアを包被するコアラップシートとを有し、前記コアラップシートは、伸長性を有するシートから形成される。
(
7)前記表面層及び前記裏面層のうちの少なくとも一方が、伸長性を有するシートから形成される。
(
8)前記前記表面層及び前記裏面層のうちの少なくとも一方が、伸縮性を有するシートから形成される。