特許第6429710号(P6429710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000002
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000003
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000004
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000005
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000006
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000007
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000008
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000009
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000010
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000011
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000012
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000013
  • 特許6429710-使い捨ての着用物品 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429710
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】使い捨ての着用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   A61F13/496 100
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-74467(P2015-74467)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193055(P2016-193055A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】向井 敬智
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 海陽
(72)【発明者】
【氏名】石神 信
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−236850(JP,A)
【文献】 国際公開第00/047151(WO,A1)
【文献】 特開2014−028492(JP,A)
【文献】 特開2003−024382(JP,A)
【文献】 特開2010−131193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向を有し、前後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、吸収体を有するおむつ本体と、前記前後ウエスト域を連結するための一対のウエストベルトと、ウエスト開口と一対のレッグ開口とを備える使い捨ての着用物品において、
前記一対のウエストベルトは、前記前後ウエスト域において、前記レッグ開口側から前記ウエスト開口側へ前記横方向の外側から内側へ向かうように傾斜する接合ラインを介して前記おむつ本体に接合されており、
前記接合ラインは、前記縦方向の寸法よりも前記横方向の寸法が大きい下接合部と、前記横方向の寸法よりも前記縦方向の寸法が大きい上接合部を有し、
前記下接合部が前記横方向に複数並んで横接合区域が形成され、
前記上接合部が前記縦方向に複数並んで縦接合区域が形成され、
前記接合ラインは、前記レッグ開口側に位置する下端部に前記横接合区域を有し、前記ウエスト開口側に位置する上端部に前記縦接合区域を有することを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記横接合区域は、前記横方向へ間隔をあけて配置された複数の前記下接合部によって形成される請求項1に記載の着用物品。
【請求項3】
前記横方向において隣り合う前記下接合部の離間寸法は、前記縦方向において隣り合う前記下接合部の離間寸法よりも小さい請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項4】
前記縦方向において隣り合う前記横接合区域において、一方の横接合区域における前記下接合部の間に位置する非接合部分は、他方の横接合区域における前記下接合部の間に位置する非接合部分と前記縦方向において互いに重ならない請求項1〜3のいずれかに記載の着用物品。
【請求項5】
前記横接合区域において、前記おむつ本体と前記ウエストベルトとは互いに融着されている請求項1〜のいずれかに記載の着用物品。
【請求項6】
前記下端部において、前記おむつ本体と前記ウエストベルトとの前記縦方向における剥離強度は、前記横方向における剥離強度よりも高い請求項1〜のいずれかに記載の着用物品。
【請求項7】
前記下端部において、前記おむつ本体と前記ウエストベルトとの前記縦方向における剥離強度は、10N/25mm以上である請求項1〜のいずれかに記載の着用物品。
【請求項8】
前記接合ラインは、前記上端部と前記下端部との間に位置する中間部とを有しており、前記中間部において前記接合ラインの短手方向の寸法よりも長手方向の寸法が大きい中間接合部を有し、前記中間接合部を前記長手方向へ並べて配置することによって形成された中間接合区域を有する請求項1〜のいずれかに記載の着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨ての着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域と、前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有し、吸収体を有するおむつ本体と、前後ウエスト域を連結するための一対のウエストベルトと、ウエスト開口と一対のレッグ開口とを備える使い捨ての着用物品は公知である。例えば、特許文献1に開示された着用物品では、一対のウエストベルトが、レッグ開口側からウエスト開口側に向かって縦中心線に近づく接合ラインを介しておむつ本体に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2945336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の着用物品では、装着操作において、着用物品に脚を入れて引っ張り上げる際には、接合ラインの下端部に縦方向の上方(脚側からウエスト側)へ引っ張る力が強く作用する。
【0005】
そのため、接合ラインの下端部において、縦方向の力に対する剥離強度を高く設定する必要があるが、単に接合部の面積を広くした場合には、接合ラインの剛性が過度に高くなって、着用者に違和感を与えるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来の技術の改良であって、接合ラインの下端部の剥離強度を高めることができる使い捨ての着用物品の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明が対象とするのは、縦方向及び横方向と、前記横方向の寸法を2等分する縦中心線とを有し、前後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、吸収体を有するおむつ本体と、前記前後ウエスト域を連結するための一対のウエストベルトと、ウエスト開口と一対のレッグ開口とを備える使い捨ての着用物品である。
【0008】
本発明は、上記着用物品において、前記一対のウエストベルトは、前記前後ウエスト域において、前記レッグ開口側から前記ウエスト開口側へ前記横方向の外側から内側へ向かうように傾斜する接合ラインを介して前記おむつ本体に接合されており、前記接合ラインは、前記縦方向の寸法よりも前記横方向の寸法が大きい下接合部と、前記横方向の寸法よりも前記縦方向の寸法が大きい上接合部を有し、前記下接合部が前記横方向に複数並んで横接合区域が形成され、前記上接合部が前記縦方向に複数並んで縦接合区域が形成され、前記接合ラインは、前記レッグ開口側に位置する下端部に前記横接合区域を有し、前記ウエスト開口側に位置する上端部に前記縦接合区域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る使い捨ての着用物品の一つ以上の実施形態によれば、接合ラインが下端部において前記横方向へ延びる横接合区域を有しているため、下端部において、接合ラインの剛性が過度に高くなるのを抑制しながら、縦方向の力に対して剥離強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本開示に係る使い捨ての着用物品の一例として示すおむつの斜視図。
図2図1に示すおむつをおむつ本体の肌対向面側から視た平面図。
図3図2に示すおむつにおいて、前ウエスト域における接合ラインの接合を解いた状態における一部破断展開平面図。
図4図2のIV−IV線に沿う模式的断面図。
図5図1においてVで囲んだ領域の一部拡大図
図6】(a)接合ラインの上端部の一部拡大図。(b)接合ラインの下端部の一部拡大図。(c)接合ラインの中間部の一部拡大図。
図7】(a),(b)図1に示すおむつを着用する際の状態を示す正面図。
図8】接合ラインの変形例の一例である、変形例1の図5と同様の図。
図9】(a)変更例1における接合ラインの上端部の一部拡大図、(b)接合ラインの下端部の一部拡大図。(c)接合ラインの中間部の一部拡大図。
図10】変形例2の図5と同様の図。
図11】変形例3の図5と同様の図。
図12】(a)接合ラインに直交する方向の剥離強度の測定方法に関する、切り出すサンプルの様子を示す図。(b)ウエストベルトの横方向の剥離強度の測定方法に関する、切り出すサンプルの様子を示す図。(c1),(c2)ウエストベルトの縦方向の剥離強度の測定方法に関する、切り出すサンプルの様子を示す図。
図13】(a)図12(a)で切り出したサンプルを引張試験機にセットした様子を示す図。(b)図12(b)で切り出したサンプルを引張試験機にセットした様子を示す図。(c)図12(c1)で切り出したサンプルを引張り試験機にセットした様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の実施の形態は、本発明の一例である図1〜13に示す使い捨てのおむつに関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。図2及び図3において、後述する各弾性体は、横方向X及び縦方向Yへの収縮力により、各弾性体が取り付けられた部材に生じたギャザーが自然な視覚によって実質的に無くなっているように見える程度にまで伸長された状態にある。
【0012】
図1〜4を参照すると、本発明に係る使い捨ての着用物品の一例であるおむつ10は、縦方向Y及びそれに交差する(直交する)横方向Xと、肌対向面及びその反対側の非肌対向面と、横方向Xの長さ寸法を2等分する縦中心線Pと、縦方向Yの長さ寸法を2等分する横中心線Qとを有し、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前ウエスト域11および後ウエスト域12の間に位置するクロッチ域13とを含む。おむつ10は縦中心線Pに関してほぼ対称であって、ウエスト開口14と一対のレッグ開口15とを有する。
【0013】
おむつ10は、吸収体23を有し縦方向Yに延びるおむつ本体16と、前後ウエスト域11,12を連結するための一対のウエストベルト17とを含む。一対のウエストベルト17は、縦中心線Pに関してほぼ対称に配置されており、レッグ開口15側からウエスト開口14側へ向かって横方向Xの外側から内側へ向かうように傾斜する接合ライン18を介しておむつ本体16に接合される。接合ライン18は、後述するおむつ本体16の前後端縁16a,16bに沿って配置される複数の接合部19によって形成される。接合部19は、公知の接合手段、例えば、熱エンボス加工、ソニック加工等の各種の融着手段が施された部位である。後記の本実施形態の効果を奏する限りにおいて、接合部19は融着手段の他に、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段を用いることができる。本実施形態において、前後ウエスト域11,12は、パンツ型のおむつ10において接合ライン18の縦方向Yにおける内端縁からウエスト開口14側に位置する部位であり、図2における符号11,12は、おむつ本体16の前後ウエスト域11,12を示している。図1の拡大図で示すとおり、接合ライン18においては、おむつ本体16の両側縁部の肌対向面8とウエストベルト17の両側縁部の肌対向面9とが互いに当接した状態で接合されている。
【0014】
<おむつ本体>
おむつ本体16は、縦方向Yにおいて離間対向する前端縁16a及び後端縁16bと、横方向Xにおいて離間対向する両側縁16c,16dとによって画定されており、縦方向Yにおいて離間対向する前端部20A及び後端部20Bと、前後端部20A,20Bの間に位置する中間部20Cとを有する。両側縁16c,16dは縦方向Yに直線状に延び、前後端縁16a,16bは、横方向Xにおける中央部が縦方向Yの外側へ向かって凸状をなし、おむつ本体16は略六角形状をなしている。
【0015】
図3及び図4を参照すると、おむつ本体16は、肌対向面に位置する透液性の内層シート21と、非肌対向面に位置する外層シート22と、内外層シート21,22の間に位置する吸収体23と、吸収体23と外層シート22との間に位置する難透液性又は不透液性の防漏シート24とを含む。内外層シート21,22の両側には、横方向Xに離間し縦方向Yへ延びる一対のサイドシート25が配置されている。
【0016】
内層シート21は、略六角形状をなし、質量が約15〜35g/m、好ましくは約18〜24g/mの親水処理した不織布で形成され、エアスルー不織布等の短繊維不織から形成されていることが好ましい。外層シート22は、不透液性又は透液性であり、質量が約10〜30g/m、好ましくは約15〜25g/mの疎水性のスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(以下SMSとする)繊維不織布、スパンボンド繊維不織布又は透液性のスパンレース繊維不織布から形成されていることが好ましい。
【0017】
吸収体23は、縦方向Yの外側へ凸曲した前後端縁23a,23bと、前後端縁23a,23b間を縦方向Yへ延びる凹曲状の両側縁23cとを有し、所要の形状に賦型された吸液性コアと、吸液性コアを覆うティッシュペーパ等の液拡散性のコアラップシートとを含む。吸液性コアとしては、木材フラッフパルプ、高吸収性ポリマー粒子、またはこれらの混合物を用いることができる。吸液性コアとコアラップシートとは、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段を用いて互いに接合することができる。
【0018】
防漏シート24は、少なくとも吸収体23の非肌対向面(底面)の全体を覆っており、吸収体23の被覆シートと外層シート22との間において、図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって接合することができる。防漏シート24としては、例えば、難透液性、好ましくは、不透液性かつ通気性のプラスチックフィルムを用いることができる。
【0019】
一対のサイドシート25は、吸収体23の横方向Xの両側に配置されており、底辺が縦方向Yへ延びる略台形状であって、防漏シート24と内層シート21との間において、図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって接合することができる。サイドシート25としては、例えば、質量が約10〜30g/mの疎水性のSMS繊維不織布またはスパンボンド繊維不織布を用いることができる。サイドシート25は、肌対向面側に位置する第1サイドシート25Aと、非肌対向面側に位置する第2サイドシート25Bとを含む。第2サイドシート25Bの横方向Xにおける外側縁部は、第1サイドシート25Aの横方向Xの外側に延出するとともに、肌対向面側に折り返されたスリーブ状をなしており、その内部にはレッグ弾性体26が配置される。レッグ弾性体26は、おむつ本体16の前端縁16aから後端縁16bまで縦方向Yへ延びている。レッグ弾性体26としては、縦方向Yへ伸長状態で収縮可能に取り付けられた少なくとも一条のストリング状またはストランド状の弾性材料を用いることができる。おむつ本体16の両側部にレッグ弾性体26が配置されることによって、吸収体23の両側縁23cの横方向Xの外側部分にはレッグ弾性域40が形成される。レッグ弾性域40は、前ウエスト域11に位置する接合ライン18から後ウエスト域12に位置する接合ライン18まで延びている。サイドシート25は、レッグ弾性体26が伸長状態で収縮可能に取り付けられる限りにおいて、一枚の繊維不織布から形成してもよいし、外層シート22の延出部分から形成してもよい。
【0020】
<ウエストベルト>
図2及び図3を参照すると、ウエストベルト17は、長さ方向及びそれに直交する幅方向と、長さ方向へ延びて幅方向において互いに離間する第1側縁及び第2側縁と、第1側縁から第2側縁まで延びて長さ方向において互いに離間する第1端縁及び第2端縁とを有する。なお、ウエストベルト17の長さ方向は、図2においておむつ10の縦方向Yと一致し、幅方向は、図2においておむつ10の横方向Xと一致する。第1端縁は前ウエスト域11に位置し、第2端縁は後ウエスト域12に位置しており、第1側縁はウエスト開口14を形成し、第2側縁はレッグ開口15を形成する。第1及び第2端縁のそれぞれは、接合ライン18において、おむつ本体16の前後端縁16a,16bにそれぞれ接合される。また、ウエストベルト17は、後記の接合ライン18を介しておむつ本体16に接合された固定部35と、前後ウエスト域11,12に位置する固定部35間においてウエスト回り方向へ延びる自由部36を有する。本実施形態において、一対のウエストベルト17の第1側縁は互いに縦中心線P上において接している。ウエストベルト17がかかる構成を有することによって、縦中心線P上において連続する1つの弾性パネルから形成することができる。かかる場合には、一対のウエストベルト17を別体に形成する場合よりも、製造工程を簡易にすることができる。ただし、一対のウエストベルト17は、その第1側縁どうしが横方向Xにおいて互いに離間していてもよい。かかる場合には、おむつ本体16の傾斜縁の長さ寸法がウエストベルト17の両端縁の長さ寸法よりも大きくなり、交点45はウエストベルト17から上方へ突出するような先鋭状を有する。
【0021】
ウエストベルト17は、肌対向面に位置する内面シート31と、非肌対向面に位置する外面シート32と、内外面シート31,32の間に取り付けられ、長さ方向に延びる複数条のベルト弾性体33とを含む。内外面シート31,32は、ほぼ同形同大であり、図2に示す平面視において底辺が縦方向Yへ延びる略台形状をなしており、例えば、質量が約10〜30g/mのスパンボンド繊維不織布、SMS繊維不織布等を用いることができる。ベルト弾性体33としては、幅方向において互いに離間し、長さ方向へ伸長状態で収縮可能に取り付けられた複数本のストリング状またはストランド状の弾性体を用いることができる。なお、ベルト弾性体33はこれに限られず、例えば、帯状またはシート状の弾性体を取り付ける構成であってもよい。各シート間における接合には、図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段を用いることができる。なお、後述する本発明の効果を奏する限りにおいて、ウエストベルト17は、ベルト弾性体33を有していない、エラストマー繊維からなる伸縮性繊維不織布等を用いることができる。なお、図示していないが、おむつ10の製造工程において、おむつ本体16とウエストベルト17とを1つの積層体から形成することができる。すなわち、おむつ本体16に対応する中央部と、中央部の両側にウエストベルト17に相当する弾性両側部とを有する積層体を機械方向へ搬送しながら、中央部と弾性両側部との境界近傍において機械方向へ延びるくり抜き開口を形成することによってレッグ開口15を形成し、レッグ開口15を縦断する折曲線に沿って弾性両側部を中央部に向かって折り曲げて、機械方向において互いに対向する接合ライン18で互いに接合することによって、おむつ10を形成することができる。このような製造工程によれば、おむつ本体16とウエストベルト17とが一体の積層体から形成されるので、それらが別体から形成される場合に比して、接合ライン18における下端部62のシート強度を高くすることができる。
【0022】
一対のウエストベルト17は、前後ウエスト域11,12において接合ライン18を介しておむつ本体16の肌対向面側に接合される。ウエストベルト17をおむつ本体16の非肌対向面側に接合した場合、着用状態において、おむつ本体16の前後端縁16a,16bや接合部19がおむつ10の内面側に位置し、肌に当たって違和感を与えるおそれがある。本実施形態のおむつ10では、おむつ本体16の肌対向面にウエストベルト17の内面シート31を接合しており、接合部19がおむつ10の非肌対向面側に位置するため、違和感を与えるおそれはない。
【0023】
図2を参照すると、おむつ10(おむつ本体16)の縦方向Yの寸法L1は、約550〜875mmであり、吸収体23の縦方向Yの寸法は、約440〜780mmである。吸収体23の寸法L2は、おむつ10(おむつ本体16)の寸法L1の約65〜95%の大きさを有することが好ましい。通常、パンツ型おむつの縦方向の寸法に対して吸収体の縦方向の寸法は約60%の大きさであって、おむつの吸収体から縦方向の外側に位置するシート部材のみから形成された部分の面積が比較的に大きくなっている。本実施形態においては、吸収体23が所要の吸収性能を発揮しうるのに十分な長さ寸法を有する一方、それよりも縦方向Yの外側に位置するシート部材のみからなる部分の面積を比較的に小さくすることによって、より少ない資材で製造することができ、製造コストを抑えることができる。また、吸収体23の前後端縁23a,23bとおむつ本体16の前後端縁16a,16bとが、通常のパンツ型おむつに比べて近接しているために、着用状態においてウエスト開口14が臍部よりも下に位置するようなローウエストタイプ(ローライズタイプ)の着用態様となる。
【0024】
<接合ライン>
接合ライン18は、前後ウエスト域11,12において、縦中心線Pに関して対称となるように配置された一対の直状の第1ラインと第2ラインとを有する。本実施形態において、第1ラインと第2ラインとの交点45は縦中心線P上に位置しているが、本発明の効果を奏する限りにおいて、接合ライン18は、レッグ開口15側からウエスト開口14側へ横方向Xの外側から内側へ向かうように傾斜していればよい。すなわち、交点45が縦中心線P上ではなく、おむつ10の正面から視て左右のいずれかにずれて位置していてもよい。なお、第1及び第2ラインは曲線状であってもよい。図3を参照すると、前ウエスト域11に位置する接合ライン18の第1ライン(又は第2ライン)と縦中心線Pとの交角である第1交角θ1は、後ウエスト域12に位置する接合ライン18の第1ライン(又は第2ライン)と縦中心線Pとの交角である第2交角θ2よりも大きいことが好ましい。このように交角θ1,θ2の値が異なることで、前側においてはウエストベルト17が横方向X外側に向かって端が上がる形状となり、脚の動きが阻害されることはなく、後側においてはウエストベルト17が横方向X外側に向かって端が下がる形状となって、臀部に食い込み難くなり、臀部の全体を被覆するようにフィットされる態様を有することができる。
【0025】
図5を参照すると、かかる配置態様を有する接合ライン18は、複数の接合部19と、接合部19が配置されていない非接合部85とを含み、おむつ本体16との境界線(内側縁)18aと、外側縁18bと、ウエスト開口14側に位置する上端部61と、レッグ開口15側に位置する下端部62と、上端部61と下端部62との間に位置する中間部63とを有する。接合ライン18は、その長さ寸法L3及び/又は面積が3等分に区分されていてもよいが、中間部63を有さずに、上下端部61,62との2つに区分されていてもよい。本実施形態においては、上端部61と下端部62とは、ほぼ同等の長さ寸法及び面積を有するものであって、例えば、それぞれ、接合ライン18の長さ寸法L3の約25〜50%の大きさ及び/又は、その全体面積のうちの約20〜50%の面積を有する。本発明の効果を有する限りにおいて、上端部61よりも下端部62の面積が大きくてもよいし、下端部62の面積が上端部61のそれよりも大きくてもよい。なお、以下においては、接合ライン18のうちの一方側のライン(第1ライン)の接合部19の構成について説明するが、他方側のライン(第2ライン)も同様の特徴構成を有している。また、前後ウエスト域11,12の接合ライン18のうちの少なくとも一方のウエスト域が、かかる接合部19の特徴構成を有していればよい。
【0026】
接合部19において、上端部61に位置する上接合部19Aは、縦方向Yへ延びる複数の第1接合区域(縦接合区域)81を形成しており、下端部62に位置する下接合部19Bは、横方向Xへ延びる複数の第2接合区域(横接合区域)82を形成しており、中間部63に位置する中間接合部19Cは、接合ライン18の長さ方向Kへ延びる複数の第3接合区域(中間接合区域)83を形成している。ここで、接合ライン18の長さ方向Kとは、接合ライン18の境界線18aの両端縁を結ぶ仮想直線が延びる方向をいい、本実施形態では、境界線18aが延びる方向と一致している。また、上端部61と下端部62とは、それぞれ、最も力のかかりやすいウエスト開口14及びレッグ開口15の開口縁から長さ方向Kへ少なくとも約30mmの寸法を有する領域を意味し、それぞれの領域内において、第1及び第2接合区域81,82のそれぞれが少なくとも一つ存在していればよい。第1接合区域81、第2接合区域82及び第3接合区域83は、それぞれ、不連続的に配置された複数の接合部19からなる。
【0027】
図6(a)を参照すると、上端部61において、第1接合区域81は長さ方向Kへ互いに離間して複数配置される。第1接合区域81を形成する上接合部19Aは、縦方向Yへ複数並んでおり、本実施形態では、縦方向Yに長い形状である。ここで、「上接合部19Aが縦方向Yへ複数並んでいる」とは、任意の上接合部19Aにおいて、その横方向Xの寸法(幅寸法)と同一幅を有して縦方向Yへ延びる縦断域Sに位置する上接合部19Aの総面積と、該縦断域Sと同一幅を有して横方向Xへ延びる横断域Sに位置する上接合部19Aの総面積とを比較したときに、前者が後者よりも大きいことを意味する。また、縦横断域S,Sは、所定幅を有する領域でなくてもよく、直線であってもよい。かかる場合には、例えば、任意の上接合部19Aの中心を通って縦方向Yへ延びる縦断線が複数(又は単数)の上接合部19Aと重なる縦断線上の長さ寸法の合計と、その中心を通って横方向Xへ延びる横断線が複数(又は単数)の上接合部19Aと重なる横断線上の長さ寸法の合計とを対比した場合に、前者が後者よりも大きいときには、上接合部19Aが縦方向Yに並んでいるといえる。本実施形態において上接合部19Aは、縦長の略楕円形状となっているが、形状はこれに限られず、例えば、矩形状等の縦長の多角形状や、縦方向Yに長い曲線形状等であってもよい。
【0028】
上接合部19Aの縦方向Yの寸法(長さ寸法)M1は、縦方向Yの寸法(幅寸法)N1の約1.1〜5倍であることが好ましい。また、縦方向Yにおいて互いに隣り合う上接合部19Aの離間寸法(互いに隣り合う上接合部19Aの間の非接合部分の距離)R1は、横方向Xにおいて互いに隣り合う上接合部19Aの離間寸法、及び横方向Xにおいて互いに隣り合う第1接合区域81の離間寸法R2のそれぞれよりも小さい。
【0029】
図6(b)を参照すると、下端部62において、第2接合区域82は長さ方向Kへ互いに離間して複数配置される。第2接合区域82を形成する下接合部19Bは、横方向Xへ複数並んでおり、本実施形態では、横方向Xに長い形状である。ここで、「下接合部19Bが横方向Xへ複数並んでいる」とは、任意の下接合部19Bにおいて、その縦方向Yの寸法(幅寸法)と同一幅を有して横方向Xへ延びる横断域Sに位置する下接合部19Bの総面積と、該横断域Sと同一幅を有して縦方向Yへ延びる縦断域Sに位置する下接合部19Bの総面積とを比較したときに、前者が後者よりも大きいことを意味する。また、縦横断域S,Sは、所定幅を有する領域でなくてもよく、直線であってもよい。かかる場合には、例えば、任意の下接合部19Bの中心を通って横方向Xへ延びる横断線が複数(又は単数)の下接合部19Bと重なる横断線上の長さ寸法の合計と、その中心を通って縦方向Yへ延びる縦断線が複数(又は単数)の下接合部19Bと重なる縦断線上の長さ寸法の合計とを対比した場合に、前者が後者よりも大きいときには、下接合部19Bが横方向Xに並んでいるといえる。図示例では、任意の下接合部19Bの縦方向Yにおける寸法(幅寸法)N2と同一幅を有し、横方向Xへ延びる横断域Sにおいて、3つの下接合部19Bのほぼ全域が位置しており、下接合部19Bの面積の3つ分(下接合部19Bの面積の3倍)の総面積を有するのに対し、縦断域Sでは、3つの下接合部19Bの一部のみが位置しており、下接合部19Bの面積の2つ分以下の総面積となっている。本実施形態において下接合部19Bは、横長の略矩形状となっているが、形状はこれに限られず、例えば、楕円形状や、横方向Xに長い曲線形状等であってもよい。
【0030】
下接合部19Aの横方向Xの寸法(長さ寸法)M2は、約1〜5mmであり、縦方向Yの寸法(幅寸法)N2の約1.1〜5倍であることが好ましく、本実施形態では約2倍となるように、寸法M2が2mm、寸法N2が1mmとなっている。また、横方向Xにおいて互いに隣り合う下接合部19Bの離間寸法(互いに隣り合う下接合部19Bの間の非接合部分の距離)R3は、縦方向Yにおいて互いに隣り合う下接合部19Aの離間寸法、及び縦方向Yにおいて互いに隣り合う第2接合区域82A,82Bの離間寸法R4のそれぞれよりも小さい。離間寸法R3は、約0.5〜2mmであり、縦方向Yの離間寸法R4は、横方向Xの離間寸法R3の約1.2〜5倍であることが好ましく、本実施形態では、離間寸法R3が1mm、離間寸法R4が2mmとなっている。
【0031】
図6(c)を参照すると、中間部63において、第3接合区域83は長さ方向Kと直交する方向(接合ライン18の幅方向)へ互いに離間して複数配置される。第3接合区域83を形成する中間接合部19Cは、長さ方向Kへ複数並んでおり、本実施形態では、長さ方向Kへ延びる矩形状であるが、形状はこれに限られず、例えば、長さ方向Kへ延びる楕円形状や、曲線形状等であってもよい。ここで、「中間接合部19Cが長さ方向Kへ複数並んでいる」とは、任意の中間接合部19Cにおいて、その幅寸法と同一幅を有して長さ方向Kへ延びる第1傾斜域Sに位置する中間接合部19Cの総面積と、該第1傾斜域Sと同一幅を有して長さ方向Kと直交する方向へ延びる第2傾斜域Sに位置する中間接合部19Cの総面積とを比較したときに、前者が後者よりも大きいことを意味する。ただし、第1及び第2傾斜域S,Sの長さ寸法は等しく、接合ライン18の幅寸法と同一寸法とする。また、第1及び第2傾斜域S,Sは、所定幅を有する領域でなくてもよく、直線であってもよい。かかる場合には、例えば、任意の中間接合部19Cの中心を通って長さ方向Kへ延びる第1傾斜線が複数(又は単数)の中間接合部19Cと重なる第1傾斜線上の長さ寸法の合計と、その中心を通って長さ方向Kと直交する方向へ延びる第2傾斜線が複数(又は単数)の中間接合部19Cと重なる第2傾斜線上の長さ寸法の合計とを対比した場合に、前者が後者よりも大きいときには、中間接合部19Cが長さ方向Kに並んでいるといえる。図示例では、任意の中間接合部19Cの幅寸法N3と同一幅を有し、長さ方向Kへ延びる第1傾斜域Sに位置する中間接合部19Cの数は3つであって、それらのほぼ全域が位置しているが、第2傾斜域Sには、3つの中間接合部19Cの一部のみが位置している。
【0032】
中間接合部19Cの長さ寸法M3は、幅寸法N3の約1.1〜5倍であることが好ましい。また、長さ方向Kにおいて互いに隣り合う中間接合部19Cの離間寸法(互いに隣り合う中間接合部19Cの間の非接合部分の距離)R5は、長さ方向Kと直交する方向において互いに隣り合う中間接合部19Cの離間寸法R6よりも小さい。離間寸法R6は、長さ方向Kの離間寸法R5の約1.2〜5倍であることが好ましい。接合ライン18の幅方向において隣り合う第3接合区域83A,83Bにおいて、一方の第3接合区域83Aにおける中間接合部19Cの間に位置する非接合部分は、他方の第3接合区域83Bにおける中間接合部19Cの間に位置する非接合部分と接合ライン18の幅方向において互いに重なっていない。中間部63では、接合ライン18の幅方向に延びる任意の直線を引いた場合に、該直線上に少なくとも一つの中間接合部19Cが存在している。
【0033】
なお、中間部63には、中間接合部19Cではなく、第1接合区域81及び第2接合区域82のいずれか一方を配置してもよいし、接合部を配置せずに全体的に非接合部85としてもよいし、上端部61側に第1接合区域81、下端部62側に第2接合区域82を配置してもよい。このように、中間部63に配置する接合部を適宜変更することによって、接合ライン18全体の剛性や一定方向に対する剥離強度を適切にコントロールすることができる。
【0034】
図7(a)(b)を参照すると、おむつ10の着用操作において、接合ライン18のレッグ開口15側に位置する下端部62では、脚を入れておむつ10を引き上げる際に、上方(縦方向Y)へ引っ張る力F2が強く作用する。通常のパンツ型おむつであれば、前後ウエストベルトを連結する接合ラインが縦方向Yへほぼ並行して延びており、着用者がおむつの両側部を掴んで引っ張り上げる場合には、把持する部分(力の作用点)と接合ラインとが近接しており、また、大腿部に沿って引き上げるのみであるから、接合ラインの下端部に引っ張り力が集中することはない。本実施形態のおむつ10においては、接合ライン18がレッグ開口15側からウエスト開口14側に縦中心線Pへ向かって斜めに延びていることによって、下端部62が鼠蹊部に当接した状態となるので、おむつ10を上方へ引っ張ろうとすると、上方に位置する鼠蹊部の一部が当接して下端部62の移動が阻止され、さらに引っ張り上げることによって上方へ向かう引っ張り力が局所的に集中して作用することになる。さらに、下端部62には、レッグ弾性体26の収縮力により下方へ引っ張ろうとする力が作用するので、破れが生じやすい。通常、ある方向へ引っ張り力が作用する場合、接合部が力の作用方向に延びているものよりも、力の作用方向に対して直交/交差している方が、剥離強度が高くなる。
【0035】
本実施形態では、接合ライン18の下端部62に横方向Xへ延びる第2接合区域82が複数形成されているため、力F2の作用方向に対し、接合領域を大きくして剥離強度を高めることができる。剥離強度を高めるために、接合ライン18において接合部19の面積を比較的に大きくした場合には、接合ライン18全体の剛性が比較的に高くなって、着用者に違和感を与えるおそれがあるが、下端部62では、複数の第2接合区域82が接合ライン18の長さ方向Kへ離間して配置され、その間に非接合部85が位置しているため、過度に剛性が高くなるのを抑えることができる。このような第2接合区域82が位置する下端部62では、おむつ本体16とウエストベルト17との縦方向Yにおける剥離強度が、横方向Xにおける剥離強度よりも高くなっている。下端部62において、縦方向Yにおける剥離強度は、10N/25mm以上であることが好ましく、15N/25mm以上であることがより好ましい。さらに、本実施形態における下接合部19Bは、横方向Xへ延びる形状であるため、個々の下接合部19Bにおいても縦方向Yの力F2に対して剥離強度が高い。
【0036】
また、第2接合区域82は、下接合部19Bを横方向Xへ複数並べたものであり、下接合部19Bの間に非接合部分が位置しているため、接合ライン18の剛性をより低減することができる。また、第2接合区域82において、このような非接合部分を設けることにより、下端部62において破れが生じた場合に、下接合部19Bをつたってシートが連続的に横方向Xへ破断するのを防止することができる。
【0037】
図6(b)を参照すると、縦方向Yにおいて隣り合う第2接合区域82A,82Bにおいて、一方の第2接合区域82Aにおける下接合部19Bの間に位置する非接合部分は、他方の第2接合区域82Bにおける下接合部19Bの間に位置する非接合部分と縦方向Yにおいて互いに重なっていない。このように、複数の第2接合区域82を形成する下接合部19Bは、千鳥状に配置されており、下端部62では、縦方向Yに延びる任意の直線を引いた場合に、該直線上に少なくとも一つの下接合部19Bが存在している。第2接合区域82を形成する下接合部19Bをこのように配置することにより、下端部62において縦方向Yへ破れが生じた場合に、縦方向Yへ破断ラインが連続的に延びるのを防止することができる。
【0038】
図7(a)(b)を参照すると、接合ライン18の上端部61は、着用操作においてウエスト開口14を拡げる際に、ベルト弾性体33の収縮作用によってウエスト周り方向(横方向X)へ引っ張る力F1が強く作用する。本実施形態では、接合ライン18の上端部61に縦方向Yへ延びる第1接合区域81が複数形成されているため、力F1の作用方向に対し、接合領域を大きくして剥離強度を高めることができる。
【0039】
また、ウエストベルト17を把持して引き上げるので、接合ライン18全体には、それと直交する方向(斜め上方)に向かう引っ張り力F3が作用される。本実施形態では、中間部63において、第3接合区域83が接合ライン18の長さ方向Kへ延びているため、接合ライン18の境界線18aに直交する方向の剥離強度が高くなっている。接合ライン18において、長さ方向Kと直交する方向における剥離強度は、少なくとも10N/25mmであることが好ましい。なお、図7(a)(b)においては、接合ライン18のうちで引っ張り力F1〜F3のそれぞれが最も強く作用する部分において矢印で示しているが、引っ張り力F1〜F3は接合ライン18全体に作用するものといえる。
【0040】
図5を参照すると、接合ライン18において、レッグ弾性体26とベルト弾性体33とは、厚さ方向において互いに重なっていない。下端部62においてレッグ弾性体26とベルト弾性体33とが互いに重なる場合には、相互の収縮力によってレッグ開口15周りにおいて反対方向へ引っ張り合って、よりそれを破断させようとする力が作用する。したがって、かかる重なる領域において、両弾性体26,33を互いに平面視において重ならないように配置することによって、それらが平面視において重なっている場合に比して、互い反対方向へ引っ張る力が直接的に作用し合うことはなく、それを破断させようとする力の集中を避けることができる。
【0041】
なお、おむつ10は、ウエスト開口14の縁部とレッグ開口15の縁部とのうちの少なくとも一方において、ウエストベルト17及び/又はおむつ本体16の一部を内面側に折り曲げて固定してもよい。このように、ウエスト開口14及び/又はレッグ開口15の縁部を複数のシート部材で形成し、隣接する部位よりも剛性が高くなるようにすることによって、接合ライン18の上下端部61,62の剥離強度をより高くすることができる。また、それらの縁部に別体の補強シートを配置してもよいし、上下端部61,62にのみ補強シートを配置してもよい。
【0042】
<変形例1>
図8は、接合ライン18の変形例の一例である、変形例1の図5と同様の図、図9(a)は、変形例1における接合ライン18の上端部61の一部拡大図、(b)は、接合ライン18の下端部62の一部拡大図、(c)は、接合ライン18の中間部63の一部拡大図である。
【0043】
本変形例では、上下接合部19A,19B及び中間接合部19Cがいずれも同形同大のドット状である。上接合部19Aは、縦方向Yへ複数並んでおり、第1接合区域81を形成している。下接合部19Bは、横方向Xに複数並んでおり、第2接合区域82を形成している。中間接合部19Cは、接合ライン18の長さ方向Kへ複数並んでおり、第3接合区域83を形成している。
【0044】
第1接合区域81において、縦方向Yにおいて互いに隣り合う上接合部19Aの離間寸法R1は、横方向Xにおいて互いに隣り合う上接合部19Aの離間寸法、及び横方向Xにおいて互いに隣り合う第1接合区域81A,81Bの離間寸法R2のそれぞれよりも小さい。第2接合区域82において、横方向Xにおいて互いに隣り合う下接合部19Bの離間寸法R3は、縦方向Yにおいて互いに隣り合う下接合部19Bの離間寸法、及び縦方向Yにおいて互いに隣り合う第2接合区域82A,82Bの離間寸法R4のそれぞれよりも小さい。第3接合区域83において、長さ方向Kにおいて互いに隣り合う中間接合部19Cの離間寸法R5は、長さ方向Kと直交する方向において互いに隣り合う中間接合部19Cの離間寸法R6よりも小さい。また、接合部19の直径Mは、離間寸法R1、R3及びR5のそれぞれよりも大きいことが好ましい。接合部19の直径Mは、約1〜10mmであり、本実施形態では約2mmである。
【0045】
このように、上下接合部19A,19B及び中間接合部19Cが同形同大であっても、その配置パターンを変更することによって、下端部62においては、横方向Xに延びる複数の第2接合区域82を形成し、縦方向Yの剥離強度を高めることができる。また、上端部61では第1接合区域81によって横方向Xの剥離強度を高め、中間部63では、接合ライン18の長さ方向Kと直交する方向の剥離強度を高めることができる。
【0046】
<変形例2>
図10は、接合ライン18の変形例の一例である、変形例2の図5と同様の図である。
【0047】
本変形例では、上端部61において、第1接合区域81が接合ライン18の長さ方向Kへ互いに離間して複数配置されており、第1接合区域81は、接合ライン18の外側縁18bから境界線(内側縁)18aまで縦方向Yへ連続して延びる上接合部19Aからなる。また、下端部62において、第2接合区域82が接合ライン18の長さ方向Kへ互いに離間して複数配置されており、第2接合区域82は、接合ライン18の外側縁18bから境界線18aまで横方向Xへ連続して延びる下接合部19Bからなる。第1接合区域81の横方向Xにおける離間寸法R2及び第2接合区域82の縦方向Yにおける離間寸法R4は、それぞれ、約1〜10mmである。このように、下端部62に接合ライン18の幅寸法全域に連続して横方向Xへ延びる複数の第2接合区域82が配置されていることによって、下端部62は縦方向Yの剥離強度が高くなる。また、上端部61では、接合ライン18の幅寸法全域に連続して縦方向Yへ延びる複数の第1接合区域81が配置されていることによって、横方向Xの剥離強度が高くなっている。
【0048】
第2接合区域82の横方向Xにおける寸法(長さ寸法)は、約4〜15mmであって、本実施形態では約7mmであり、縦方向Yにおける寸法(幅寸法)は、約0.5〜5mmであって、本実施形態では約1mmであり、本実施形態における第2接合区域82の離間寸法R4は、約4mmである。
【0049】
中間部63に位置する中間接合部19Cは、上接合部19Aと同様に接合ライン18の幅方寸法全域に延びる第1接合区域81と、下接合部19Bと同様に横方向へ延びる第2接合区域82とが、接合ライン18の長さ方向Kにおいて交互に配置された形状を有する。中間部63に位置する第2接合区域82の縦方向Yにおける離間寸法は、下端部62における第2接合区域82の離間寸法R4よりも大きい。中間接合部19Cがかかる形状を有することによって、中間部63では、縦方向Yと横方向Xとにおいてほぼ同等の剥離強度を有するといえる。
【0050】
<変形例3>
図11は、接合ライン18の変形例の一例である、変形例3の図5と同様の図である。
【0051】
本変形例においては、接合ライン18において、上下端部61,62の上下接合部19A,19Bが、それぞれ、外側縁18bから境界線18aまで縦方向Yへ延びる複数の第1接合区域81と横方向Xへ延びる複数の第2接合区域82とを有する。上下接合部19A,19Bの第1接合区域81と第2接合区域82とはその幅寸法がほぼ同じであって、上端部61おいては、第1接合区域81の本数が第2接合区域82の本数よりも多く、下端部62においては、第2接合区域82の本数が第1接合区域81の本数よりも多くなっている。具体的には、上端部61において、第1接合区域81の横方向Xにおける離間寸法R2は、第2接合区域82の縦方向Yにおける離間寸法よりも小さく、約1〜10mmである。また、下端部62において、第2接合区域82の縦方向Yにおける離間寸法R4は、第1接合区域81の横方向Xにおける離間寸法よりも小さく、約1〜10mmである。
【0052】
<ウエストベルトの剥離強度の測定方法>
図12(a)は、接合ライン18に直交する方向の剥離強度の測定方法に関する、切り出すサンプルの様子を示す図、図12(b)は、ウエストベルト17の横方向Xの剥離強度の測定方法に関する、切り出すサンプルの様子を示す図、図12(c1),(c2)は、ウエストベルト17の縦方向Yの剥離強度の測定方法に関する、切り出すサンプルの様子を示す図である。図13(a)は、図12(a)で切り出したサンプルを引張試験機にセットした様子を示す図、図13(b)は、図12(b)で切り出したサンプルを引張試験機にセットした様子を示す図、図13(c)は、図12(c1)で切り出したサンプルを引張り試験機にセットした様子を示す図である。なお、図12(a)〜(c2)及び図13(a)〜(c)において、説明の便宜上、ベルト弾性体33については、省略している。ここで、「ウエストベルト17の剥離強度」は、ウエストベルト17の剥離が開始する時点からウエストベルト17がおむつ本体16から完全に分離するまでの間における最大の引っ張り力(N/25mm)を意味する。
【0053】
ウエストベルト17の剥離強度の各測定は、それぞれ、島津製作所株式会社製のオートグラフ試験機(AG−X10plus)を用いて測定した。図12(a)〜(c2)は、図3において一点鎖線XIIで囲んだ領域の拡大図である。なお、以下においては、後ウエスト域12側の接合ライン18に関する剥離強度のみを測定しているが、前ウエスト域11側の接合ライン18も同様の剥離強度を有する。
【0054】
<直交する方向の剥離強度>
図12(a)及び図13(a)を参照すると、前ウエスト域11側の接合ライン18の接合を解除してウエストベルト17を横方向Xに伸展した状態において、境界線18aと交差して長さ方向Kに直交する方向へ延びる細長矩形片をおむつ10から切り出してサンプルとした。サンプルは、25mm幅であって、ウエストベルト17の固定部35と自由部36とを含む第1部分93とおむつ本体16から形成された第2部分94とを有する。第1部分93と第2部分94とは、同形同大であって、ウエストベルト17を展開する前の状態において、それらの一部が厚さ方向において互いに重なる(図2参照)。切り出したサンプルにおいて、第1部分93のうちの自由部36からなるシート片93aを一方のチャック(可動治具)95に把持し、第2部分94を他方のチャック(固定治具)96に把持した状態で、サンプルをオートグラフ試験機にセットし、引っ張り速度1000mm/minにおけるサンプルの剥離強度(最大強度)を求めた。チャック幅は約50mmであって、サンプルについて25mm幅で切り出すことができない場合には、測定結果に基づいて25mm幅に換算して算出する。図12(a)に示すように、上下端部61,62及び中間部63においてサンプルを切り出し、それぞれの直交方向における剥離強度を求め、平均した値を境界接合域の直交する方向の剥離強度(N/25mm)とした。
【0055】
<横方向の剥離強度>
図12(b)及び図13(b)を参照すると、ウエストベルト17を横方向Xへ展開した状態の上下端部61,62近傍において、境界線18aと交差して横方向Xへ延びる細長矩形片をおむつ10から切り出してサンプルとした。サンプルは、25mm幅であって、ウエストベルト17の固定部35と自由部36とを含む第1部分93とおむつ本体16から形成された第2部分94とを有する。第1部分93と第2部分94とは、ウエストベルト17が展開する前の状態において、それらの一部が厚さ方向において互いに重なる(図2参照)。切り出したサンプルにおいて、第1部分93のうちの自由部36から形成されたシート片93aを一方のチャック(可動治具)95に把持し、第2部分94を他方のチャック(固定治具)96に把持した状態で、サンプルをオートグラフ試験機にセットし、直交方向の剥離強度の測定と同一条件で測定して横方向Xの剥離強度(N/25mm)とした。
【0056】
<縦方向の剥離強度>
図12(c1),(c2)及び図13(c)を参照すると、ウエストベルト17を伸展する前の状態の上下端部61,62近傍において、境界線18aと交差して縦方向Yへ延びる細長矩形片をおむつ10から切り出してサンプルとした。サンプルは、25mm幅であって、ウエストベルト17の固定部35と自由部36と含む第1部分93と、それと厚さ方向において対向する、おむつ本体16からなる第2部分94とを有する。ウエストベルト17を弛緩して縦方向Yの外側へ伸展した状態において、第1部分93のうちの自由部36からなるシート片93aを一方のチャック(可動治具)95で把持し、第2部分94を他方のチャック(固定治具)96で把持した状態で、サンプルをオートグラフ試験機にセットし、該サンプルを直交する方向の剥離強度の測定と同様の条件で測定して、それぞれの縦方向の剥離強度(N/25mm)を求めた。
【0057】
本発明のおむつ10を構成する各構成部材には、明細書に記載されている材料のほかに、この種の物品において通常用いられている各種公知の材料を制限なく用いることができる。また、明細書及び特許請求の範囲において、「第1」及び「第2」の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられる。
【0058】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記の事項に整理することができる。
【0059】
縦方向及び横方向を有し、前後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、吸収体を有するおむつ本体と、前記前後ウエスト域を連結するための一対のウエストベルトと、ウエスト開口と一対のレッグ開口とを備える使い捨ての着用物品において、前記一対のウエストベルトは、前記前後ウエスト域において、前記レッグ開口側から前記ウエスト開口側へ前記横方向の外側から内側へ向かうように傾斜する接合ラインを介して前記おむつ本体に接合されており、前記接合ラインは、前記縦方向の寸法よりも前記横方向の寸法が大きい下接合部と、前記横方向の寸法よりも前記縦方向の寸法が大きい上接合部を有し、前記下接合部が前記横方向に複数並んで横接合区域が形成され、前記上接合部が前記縦方向に複数並んで縦接合区域が形成され、前記接合ラインは、前記レッグ開口側に位置する下端部に前記横接合区域を有し、前記ウエスト開口側に位置する上端部に前記縦接合区域を有する
【0060】
上記段落0059に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の態様を含むことができる。
(1)前記横接合区域は、前記横方向へ間隔をあけて配置された複数の前記下接合部によって形成される。
)前記横方向において隣り合う前記下接合部の離間寸法は、前記縦方向において隣り合う前記下接合部の離間寸法よりも小さい。
)前記縦方向において隣り合う前記横接合区域において、一方の横接合区域における前記下接合部の間に位置する非接合部分は、他方の横接合区域における前記下接合部の間に位置する非接合部分と前記縦方向において互いに重ならない。
)前記横接合区域において、前記おむつ本体と前記ウエストベルトとは互いに融着されている。
)前記下端部において、前記おむつ本体と前記ウエストベルトとの前記縦方向における剥離強度は、前記横方向における剥離強度よりも高い。
)前記下端部において、前記おむつ本体と前記ウエストベルトとの前記縦方向における剥離強度は、10N/25mm以上である。
)前記接合ラインは、前記上端部と前記下端部との間に位置する中間部とを有しており、前記中間部において前記接合ラインの短手方向の寸法よりも長手方向の寸法が大きい中間接合部を有し、前記中間接合部を前記長手方向へ並べて配置することによって形成された中間接合区域を有する。
【符号の説明】
【0061】
10 おむつ
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
14 ウエスト開口
15 レッグ開口
16 おむつ本体
17 ウエストベルト
18 接合ライン
19 接合部
81 第1接合区域(縦接合区域)
82 第2接合区域(横接合区域)
83 第3接合区域(中間接合区域)
X 横方向
Y 縦方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13