【文献】
阿部 順一,中平 勝也,杉山 隆利,帯域分散アダプタにおけるブラインド型位相歪み補償方式の実験的検証,2012年電子情報通信学会総合大会講演論文集,2012年 3月 6日,p.297
【文献】
阿部 順一,中平 勝也,鈴木 義規,杉山 隆利,衛星通信の周波数利用効率を向上させる帯域分散伝送技術,NTT技術ジャーナル,2012年 3月 1日,第24巻,第3号,pp.55-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の無線通信システムは、送信信号の信号電力をモニタリングして各サブスペクトラムの送信信号の位相を調整するため、複数回の送信信号の送受信を行う必要がある。すなわち、従来の無線通信システムは、各サブスペクトラムの送信信号の位相が調整されるまでに、時間がかかるという問題がある。
【0007】
また、ステップトラック制御では、アンテナごとにサブスペクトラムの送信信号の位相を順次に調整するため、アンテナの数が増加するに従い調整の時間がかかってしまう。
【0008】
本発明は、アンテナの数に依存することなく、従来と比べて短い時間で各サブスペクトラムの送信信号の位相を調整できる無線通信システムの送信装置および無線通信システムの送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、周波数軸上において送信信号のスペクトラムを複数のサブスペクトラムに分割するスペクトラム分割手段と、
振幅および位相の校正係数を用いて複数のサブスペクトラムの送信信号の振幅および位相を調整し、隣接するサブスペクトラム間において重畳する周波数帯域の送信信号のうちいずれか一方の
重畳する周波数帯域の送信信号の位相を反転させる振幅・位相調整手段と、振幅・位相調整手段により調整された
複数のサブスペクトラムの送信信号を
それぞれ送信する複数の送信機と、
複数の送信機により送信された送信信号が空間合成された合成信号のうち、隣接するサブスペクトラム間ごとに
重畳する周波数帯域
の合成信号の電力を取得する電力取得手段と、電力取得手段により取得された
重畳する周波数帯域の合成信号の電力を用い、振幅・位相調整手段
で用いる振幅および位相の校正係数を更新する更新手段とを備え
、更新手段は、隣接するサブスペクトラム間ごとに重畳する周波数帯域の合成信号の電力を最小にする当該サブスペクトラム間の位相差であるオフセット位相角を算出し、基準となるサブスペクトラムと更新対象のサブスペクトラムとの間の全ての隣接するサブスペクトラム間で算出されたオフセット位相角を加算した加算値を更新対象のサブスペクトラムの送信信号の位相の校正係数として更新する。
【0011】
第
2の発明は、周波数軸上において送信信号のスペクトラムを複数のサブスペクトラムに分割
するスペクトラム分割処理と、
振幅および位相の校正係数を用いて複数のサブスペクトラムの送信信号の振幅および位相を調整し、隣接するサブスペクトラム間において重畳する周波数帯域の送信信号のうちいずれか一方の
重畳する周波数帯域の送信信号の位相を反転させ
る振幅・位相調整処理と、振幅・位相調整
処理により調整された
複数のサブスペクトラムの送信信号を
それぞれ送信
する送信処理と、
送信処理により送信された送信信号が空間合成された合成信号のうち、隣接するサブスペクトラム間ごとに
重畳する周波数帯域
の合成信号の電力を取得
する電力取得処理と、
電力取得処理により取得された
重畳する周波数帯域の合成信号の電力を用い、
振幅・位相調整処理で用いる振幅および位相
の校正係数を更新する
更新処理とを実行し、更新処理では、隣接するサブスペクトラム間ごとに重畳する周波数帯域の合成信号の電力を最小にする当該サブスペクトラム間の位相差であるオフセット位相角を算出し、基準となるサブスペクトラムと更新対象のサブスペクトラムとの間の全ての隣接するサブスペクトラム間で算出されたオフセット位相角を加算した加算値を更新対象のサブスペクトラムの送信信号の位相の校正係数として更新する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、アンテナの数に依存することなく、従来と比べて短い時間で各サブスペクトラムの送信信号の位相を調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0016】
図1は、無線通信システムの送信装置の一実施形態を示す。
【0017】
図1に示した無線通信システムの送信装置200は、変調器10、DFT(Discrete Fourier Transform)部20、n個のスペクトラム分割回路30(30(1)−30(n))およびn個の振幅・位相調整回路40(40(1)−40(n))を有する。送信装置200は、n個のIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部50(50(1)−50(n))、n個の送信機60(60(1)−60(n))、受信機70およびスペクトラム分析器80を有する。
【0018】
変調器10は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)等の変調方式に基づいて、送信するデータを含む送信信号を生成し、生成した送信信号をDFT部20に出力する。
【0019】
DFT部20は、変調器10から受信した送信信号に離散フーリエ変換の処理を実行し、送信信号のスペクトラムを算出する。DFT部20は、算出した送信信号のスペクトラムを、各スペクトラム分割回路30に出力する。
【0020】
スペクトラム分割回路30は、受信した送信信号のスペクトラムのうち、予め設定された帯域分割重み係数CW(CW1−CWn)に応じた周波数帯域のサブスペクトラムの送信信号を通過させる。例えば、スペクトラム分割回路30は、受信した送信信号のスペクトラムと帯域分割重み係数CWとを乗算する乗算器31を有する。例えば、スペクトラム分割回路30(1)の場合、乗算器31は、送信信号のスペクトラムのうち帯域分割重み係数CW1に応じたサブスペクトラムの送信信号を通過させる。スペクトラム分割回路30(2)−30(n)についても、スペクトラム分割回路30(1)と同様に動作し、帯域分割重み係数CW2−CWnに応じた互いに異なる周波数帯域のサブスペクトラムの送信信号をそれぞれ通過させる。すなわち、スペクトラム分割回路30(1)−30(n)は、コサインロールオフフィルタ等として動作し、送信信号のスペクトラムをn個のサブスペクトラムに分割する。
【0021】
なお、帯域分割重み係数CWは、送信装置200に含まれるメモリ等の記憶装置に予め記憶される。帯域分割重み係数CW1−CWnは、各サブスペクトラムの帯域幅が同じになるように設定されてもよく、送信機60の送信性能(すなわちEIRP)に応じて設定されてもよい。
【0022】
振幅・位相調整回路40は、スペクトラム分割回路30を通過してきた送信信号のサブスペクトラムにおける振幅および位相を、スペクトラム分析器80により指示された
校正係数を用いて調整する。すなわち、振幅・位相調整回路40は、スペクトラム分析器80から指示された振幅および位相の
校正係数を用いて、サブスペクトラムの送信信号の振幅および位相を、他のサブスペクトラムの送信信号の振幅および位相と互いに揃うように調整する。振幅および位相が調整されたサブスペクトラムの送信信号が各送信機60を介して送信されることで、送信前の送信信号が有するスペクトラムと同じスペクトラムの信号が空間合成される。
【0023】
また、振幅・位相調整回路40は、互いに隣接するサブスペクトラム間において重畳する周波数帯域の送信信号のうちいずれか一方の周波数帯域の送信信号の位相を反転させる。振幅・位相調整回路40による位相の反転処理については、
図2で説明する。その後、振幅・位相調整回路40は、処理したサブスペクトラムの送信信号をIDFT部50に出力する。なお、帯域分割重み係数CWを調整することで、振幅・位相調整回路40は、スペクトラム分割回路30と合わせた構成にしてもよい。
【0024】
IDFT部50は、振幅・位相調整回路40から受信したサブスペクトラムの送信信号に逆離散フーリエ変換の処理を実行し、時間方向に変化するサブスペクトラムの送信信号に変換する。IDFT部50は、変換したサブスペクトラムの送信信号を送信機60に出力する。
【0025】
送信機60は、電力増幅器およびBUC(Block Up Converter)等を含み、IDFT部50から受信したサブスペクトラムの送信信号の電力を増幅するとともに、サブスペクトラムの送信信号の周波数をKuバンド等の送信周波数に変換する。送信機60は、送信機60に含まれるアンテナを介してサブスペクトラムの送信信号を送信する。
【0026】
受信機70は、受信機70が有するアンテナを介して、各送信機60により送信されたサブスペクトラムの送信信号を、空間合成された合成信号として受信する。なお、衛星通信の場合、受信機70は、通信衛星等からの折り返し信号を、合成信号として受信してもよい。
【0027】
スペクトラム分析器80は、受信機70により受信された合成信号のうち、隣接するサブスペクトラム間ごとに互いに重畳する周波数帯域における合成信号の信号電力を取得する。スペクトラム分析器80は、取得した各周波数帯域の合成信号の信号電力を用い、振幅・位相調整回路40が調整する各サブスペクトラムの送信信号の振幅および位相の校正係数を更新する。スペクトラム分析器80の動作については、
図3で説明する。
【0028】
図2は、送信信号のスペクトラムとサブスペクトラムとの関係の一例を示す。
図2(a)は、
図1に示したDFT部20の離散フーリエ変換により算出された送信信号のスペクトラムSPの分布を示す。
図2(b)は、
図2(a)に示した送信信号のスペクトラムSPが、例えば、5つのスペクトラム分割回路30により分割周波数f1−f4ごとに分割された5つのサブスペクトラムSB1−SB5を示す。なお、5つのサブスペクトラムSB1−SB5は、各分割周波数f1−f4で分割されるように設定された帯域分割重み係数CW1−CW5に応じた周波数の帯域幅を示す。そして、設定された帯域分割重み係数CW1−CW5の値は、送信装置200の記憶装置に記憶される。
【0029】
振幅・位相調整回路40は、例えば、
図2(b)に示した隣接するサブスペクトラムSB1、SB2間で互いに重畳する周波数帯域Δf1において、サブスペクトラムSB2の送信信号の位相を180度反転させる。振幅・位相調整回路40は、周波数帯域Δf2−Δf4の各々についても、周波数帯域Δf1と同様に、サブスペクトラムSB3−SB5の各々の送信信号の位相を180度反転させる。なお、振幅・位相調整回路40は、各周波数帯域Δf1−Δf4において、サブスペクトラムSB1−SB4の送信信号の位相をそれぞれ反転させてもよい。また、帯域分割重み係数CW1−CW5の値を調整することで、各スペクトラム分割回路30が、各周波数帯域Δf1−Δf4におけるサブスペクトラムSB2−SB5の送信信号の位相をそれぞれ反転させてもよい。
【0030】
図3は、
図2に示したサブスペクトラムSB1−SB5が空間合成された合成信号のスペクトラムSP2の一例を示す。合成信号のスペクトラムSP2は、各周波数帯域Δf1−Δf4のサブスペクトラムSB2−SB5の送信信号の位相が反転されるため、各周波数帯域Δf1−Δf4における合成信号の信号電力は、
図2(a)に示した送信信号のスペクトラムSPの信号電力と比べて小さくなる。そして、
図2(b)に示した各サブスペクトラムSB1−SB5の送信信号の振幅および位相が互いに一致する場合、合成信号のスペクトラムSP2の信号電力は、分割周波数f1−f4において最小値を示す。
【0031】
スペクトラム分析器80は、例えば、DFT部20と同様のDFT処理を合成信号に対して実行し、
図3に示した合成信号のスペクトラムSP2を算出する。スペクトラム分析器80は、算出した合成信号のスペクトラムSP2のうち、周波数帯域Δf1−Δf4における合成信号の信号電力をそれぞれ取得し、取得した各周波数帯域Δf1−Δf4の合成信号の信号電力をモニタリングする。そして、スペクトラム分析器80は、取得した各周波数帯域Δf1−Δf4の合成信号の信号電力(すなわち、各分割周波数f1−f4における信号電力)が最小となるように、隣接するサブスペクトラム間の位相差を補償するオフセット位相を算出する。
【0032】
例えば、スペクトラム分析器80は、振幅およびオフセット位相角の
校正係数に正負の所定の偏差を与え、モニタリングする周波数帯域Δf1−Δf4ごとに合成信号の信号電力が小さくなる方を新たな
校正係数としてそれぞれ算出し更新するステップトラック制御を実行する。あるいは、スペクトラム分析器80は、周波数帯域Δf1−Δf4ごとに、合成信号の信号電力が最小に維持される(すなわち、隣接するサブスペクトラム間それぞれの位相差が0となる)振幅およびオフセット位相角の
校正係数を算出し更新してもよい。そして、スペクトラム分析器80は、更新した振幅およびオフセット位相角を、各振幅・位相調整回路40にフィードバックする。
【0033】
このように、スペクトラム分析器80は、各周波数帯域Δf1−Δf4における合成信号の信号電力を並列にモニタリングすることで、隣接するサブスペクトラム間ごとのオフセット位相角を並列に算出できる。そして、送信装置200は、従来と比べて短い時間で各サブスペクトラムの送信信号の位相を調整できる。
【0034】
なお、スペクトラム分析器80が算出するオフセット位相角は、隣接するサブスペクトラム間ごとの位相差である。このため、スペクトラム分析器80は、式(1)を用いてサブスペクトラムごとに加算したオフセット位相角を各サブスペクトラムの送信信号に対する位相の
校正係数として、各振幅・位相調整回路40にフィードバックする。
【0036】
Δθは、スペクトラム分析器80により隣接するサブスペクトラム間において互いに重畳する周波数帯域で算出されたオフセット位相角を示す。θは、振幅・位相調整回路40が調整するサブスペクトラムの送信信号に対するオフセット位相角であり、位相の
校正係数を示す。kは2からnの整数である。なお、サブスペクトラムSB1の送信信号に対するオフセット位相角θ1は、他のサブスペクトラムの送信信号におけるオフセット位相角の基準となるため0に設定される。
【0037】
また、合成信号の信号電力は、隣接するサブスペクトラム間で重畳する周波数帯域(例えば、
図3に示した各周波数帯域Δf1−Δf4)で減衰するため、送信装置200における送信可能な通信容量が減少する。そこで、送信装置200は、隣接するサブスペクトラム間で重畳する周波数帯域の幅をスペクトラムSP2と比べて小さく設定するとともに、誤り訂正処理を合成信号に実行することで、復調時のC/N比劣化を回避してもよい。
【0038】
また、例えば、スペクトラム分析器80が振幅およびオフセット位相角の
校正を実行しない場合、振幅・位相調整回路40は、隣接するサブスペクトラム間の送信信号のうち重畳する周波数帯域のいずれか一方のサブスペクトラムの送信信号の位相を反転しなくてもよい。これにより、送信装置200は、通信容量の低下を回避できる。
【0039】
図4は、
図1に示した無線通信システムの送信装置200における送信処理の一例を示す。
図4に示した処理は、例えば、送信装置200に含まれるプロセッサ等が記憶装置に記憶される制御プログラム等を実行することにより実現される。なお、
図4に示した処理は、送信装置200に設けられるハードウェアにより実行されてもよい。
【0040】
ステップS100では、変調器10は、QPSK等の変調方式に基づいて、送信するデータを含む送信信号を生成し、生成した送信信号をDFT部20に出力する。
【0041】
ステップS110では、DFT部20は、ステップS100で生成された送信信号に離散フーリエ変換の処理を実行し、送信信号のスペクトラムを算出する。DFT部20は、算出した送信信号のスペクトラムを、各スペクトラム分割回路30に出力する。
【0042】
ステップS120では、各スペクトラム分割回路30は、受信した送信信号のスペクトラムを、帯域分割重み係数CWに応じたサブスペクトラムに分割する。スペクトラム分割回路30は、分割したサブスペクトラムの送信信号を振幅・位相調整回路40に出力する。
【0043】
ステップS130では、振幅・位相調整回路40は、ステップS120で分割されたサブスペクトラムの送信信号に対する振幅および位相を調整する。
【0044】
ステップS140では、振幅・位相調整回路40は、隣接するサブスペクトラム間の送信信号のうち重畳する周波数帯域のいずれか一方の送信信号の位相を反転させる。振幅・位相調整回路40は、処理したサブスペクトラムの送信信号をIDFT部50に出力する。
【0045】
ステップS150では、IDFT部50は、振幅・位相調整回路40から受信したサブスペクトラムの送信信号に逆離散フーリエ変換の処理を実行し、時間方向に変化するサブスペクトラムの送信信号に変換する。IDFT部50は、変換したサブスペクトラムの送信信号を送信機60に出力する。
【0046】
ステップS160では、送信機60は、送信機60に含まれるアンテナを介して、各サブスペクトラムの送信信号を送信する。
【0047】
ステップS170では、受信機70は、各送信機60により送信されたサブスペクトラムの送信信号を、空間合成された合成信号として受信する。
【0048】
ステップS180では、スペクトラム分析器80は、ステップS170で受信された合成信号のうち隣接するサブスペクトラム間ごとに重畳する周波数帯域の信号電力を用い、隣接するサブスペクトラム間ごとの振幅およびオフセット位相角Δθを算出する。例えば、スペクトラム分析器80は、DFT処理を合成信号に対して実行し、合成信号のスペクトラムSP2を算出する。スペクトラム分析器80は、算出した合成信号のスペクトラムSP2のうち、隣接するサブスペクトラム間において互いに重畳する周波数帯域での合成信号の信号電力を取得する。スペクトラム分析器80は、取得した各周波数帯域における合成信号の信号電力(例えば、
図3に示した各分割周波数f1−f4における信号電力)が最小となるように、隣接するサブスペクトラム間ごとの振幅および位相差を補償するオフセット位相Δθを算出する。
【0049】
ステップS190では、スペクトラム分析器80は、隣接する全てのサブスペクトラム間のオフセット位相角Δθを算出したか否かを判定する。スペクトラム分析器80が全てのサブスペクトラム間のオフセット位相角Δθを算出した場合、送信装置200の処理はステップS200に移る。一方、スペクトラム分析器80が全てのサブスペクトラム間のオフセット位相角Δθを算出していない場合、送信装置200の処理はステップS180に移る。
【0050】
ステップS200では、スペクトラム分析器80は、ステップS180で算出した隣接するサブスペクトラム間ごとのオフセット位相角Δθと式(1)とを用い、各サブスペクトラムの送信信号のオフセット位相角θを算出する。
【0051】
ステップS210では、スペクトラム分析器80は、全てのサブスペクトラムの送信信号のオフセット位相角θを算出したか否かを判定する。スペクトラム分析器80が全てのサブスペクトラムの送信信号のオフセット位相角Δθを算出した場合、送信装置200の処理はステップS220に移る。一方、スペクトラム分析器80が全てのサブスペクトラムの送信信号のオフセット位相角Δθを算出していない場合、送信装置200の処理はステップS200に移る。
【0052】
ステップS220では、スペクトラム分析器80は、ステップS180で算出された振幅と、ステップS200で算出された各サブスペクトラムの送信信号のオフセット位相角θとを用い、各振幅・位相調整回路40における振幅および位相の
校正係数を更新する。
【0053】
そして、送信装置200は、ステップS100からステップS220の処理を繰り返し実行する。
【0054】
以上、
図1から
図4に示した実施形態では、振幅・位相調整回路40は、隣接するサブスペクトラム間の送信信号のうち重畳する周波数帯域のいずれか一方の周波数帯域の送信信号の位相を反転させる。これにより、受信機70が受信した合成信号は、隣接するサブスペクトラム間で重畳する各周波数帯域での信号電力(すなわち、各分割周波数における信号電力)が最小となる。スペクトラム分析器80は、重畳する周波数帯域ごとの合成信号の信号電力を取得し、各周波数帯域での合成信号の信号電力が最小に維持されるように、振幅およびオフセット位相角を算出する。
【0055】
すなわち、スペクトラム分析器80は、隣接するサブスペクトラム間で重畳する各周波数帯域の合成信号の信号電力を並列にモニタリングすることで、隣接するサブスペクトラム間ごとのオフセット位相角Δθを並列に算出できる。そして、スペクトラム分析器80は、算出した隣接するサブスペクトラム間ごとのオフセット位相角Δθと式(1)とを用い、各サブスペクトラムの送信信号のオフセット位相角θを算出する。これにより、送信装置200は、従来と比べて短い時間で各サブスペクトラムの送信信号の位相を調整できる。
【0056】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。