(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430905
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】無線通信方法および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 74/08 20090101AFI20181119BHJP
H04W 72/14 20090101ALI20181119BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20181119BHJP
H04L 29/08 20060101ALI20181119BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20181119BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W72/14
H04W88/02 140
H04L13/00 307Z
H04W84/12
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-141426(P2015-141426)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-28341(P2017-28341A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】宗 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】丸田 一輝
【審査官】
望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0117269(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0016309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
H04L29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信方法において、
前記第1の拡張無線局が他の無線局に対してデータAを送信中に、前記第2の拡張無線局が、前記第1の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、NAVを解除した後、前記第1の拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信するステップと、
前記第1の拡張無線局が、前記送信要求メッセージを受信したときに、前記第2の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信するステップと、
前記第2の拡張無線局が、前記送信許可メッセージを受信したときに、前記第1の拡張無線局に対してデータBを送信するステップと、
前記第1の拡張無線局が、前記データAを送信中であっても、前記データBを受信するステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信方法において、
前記第1の拡張無線局が他の無線局からデータAを受信中に、前記第1の拡張無線局が、前記第2の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、前記第2の拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信するステップと、
前記第2の拡張無線局が、前記送信要求メッセージを受信したときに、NAVを解除した後、前記第1の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信するステップと、
前記第1の拡張無線局が、前記送信許可メッセージを受信したときに、前記データAを受信中であっても、前記第2の拡張無線局に対してデータBを送信するステップと、
前記第2の拡張無線局が、前記データBを受信するステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信方法において、
前記第2の拡張無線局は、送信指向性制御機能を備え、前記データBを送信する際に、前記第1の拡張無線局に対して送信指向性を形成して送信する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
請求項2に記載の無線通信方法において、
前記第2の拡張無線局は、受信指向性制御機能を備え、前記データBを受信する際に、前記第1の拡張無線局に対して受信指向性を形成して受信する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の無線通信方法において、
前記第1の拡張無線局および前記第2の拡張無線局は、前記送信要求メッセージまたは前記送信許可メッセージの少なくとも一方に、自局が同時送受信が可能な拡張無線局であることを記載する領域を備え、他局に通知する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信システムにおいて、
前記第1の拡張無線局は、
他の無線局に対してデータAを送信中に、前記第2の拡張無線局が前記第1の拡張無線局を宛先とするデータBを送信するために、NAVを解除して送信した送信要求メッセージを受信したときに、前記第2の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信する手段と、
前記データAを送信中に、前記第2の拡張無線局が送信した前記データBを受信する手段と
を備え、
前記第2の拡張無線局は、
前記第1の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、前記第1の拡張無線局が送信中であっても、NAVを解除した後、前記第1の拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信する手段と、
前記第1の拡張無線局が送信した前記送信許可メッセージを受信したときに、前記第1の拡張無線局に対してデータBを送信する手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信システムにおいて、
前記第2の拡張無線局は、
前記第1の拡張無線局が他の無線局からデータAを受信中に、前記第1の拡張無線局が前記第2の拡張無線局を宛先とするデータBを送信するために送信した送信要求メッセージを受信したときに、NAVを解除した後、前記第1の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信する手段と、
前記第1の拡張無線局が前記データAを受信中に送信した前記データBを受信する手段と
を備え、
前記第1の拡張無線局は、
前記第2の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、前記データAを受信中であっても、前記第2の拡張無線局に対して前記送信要求メッセージを送信する手段と、
前記第2の拡張無線局がNAVを解除して送信した前記送信許可メッセージを受信したときに、前記第2の拡張無線局に対してデータBを送信する手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時送受信ができる拡張無線局が送信中または受信中のときに、他の拡張無線局との通信(送信中のときに受信、受信中のときに送信)を行う無線通信方法および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)によるアクセス制御を用いた無線LANなどの無線通信システムでは、無線局(基地局または端末局)が通信開始前にキャリアセンスにより無線チャネルの使用状況を確認し、無線チャネルがアイドルのときに送信し、ビジーのときに送信を見合わせる。このようにフレーム衝突を避ける手法を用いているため、同一チャネルでは1つのフレームのみが伝送されている。
【0003】
周波数利用効率を向上させるために、同一チャネルで双方向通信を行う同一チャネル全二重無線通信(CCFD:Co-Channel Full Duplex)が検討されている(例えば非特許文献1)。CCFDを用いることにより、周波数分割復信(FDD:Frequency Division Duplex )や時分割復信(TDD:Time Division Duplex)のような復信方法と較べて2倍のスループットを実現できる。
【0004】
ここで、同時送受信ができる拡張無線局の間では、
図8(1) に示すように、拡張基地局11から拡張端末局12への通信と、拡張端末局12から拡張基地局11への通信が同一チャネルで同時に可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. I. Choi, M. Jain, K. Srinivasan, P. Levis, and S. Katti, "Achieving single channel, full duplex wireless," Proc. 16th ACM MOBICOM, pp.1-12, Sep. 2010.
【非特許文献2】電子情報通信学会『知識の森』(http://www.ieice-hbkb.org/),4群−2編−8章8-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
拡張基地局11と拡張端末局12との間では同時送受信が可能であるが、
図8(2) に示すように、拡張基地局11から拡張端末局12に送信中に、拡張基地局11が他の拡張端末局13からの受信を同時に行う場合を想定する。しかし、従来のCSMA/CAによるアクセス制御では、拡張基地局11と拡張端末局12の通信中はNAV(Network Allocation Vector )が設定されるので、他の拡張端末局13は送信要求メッセージ(RTSS:Request to Simultaneous Send)を送信できず、送信中の拡張基地局11において、他の拡張端末局13からのデータ受信ができない。
【0007】
また、
図8(3) に示すように、拡張基地局11が拡張端末局12からの受信中に、拡張基地局11が他の拡張端末局13への送信を同時に行う場合を想定する。しかし、従来のCSMA/CAによるアクセス制御では、拡張基地局11と拡張端末局12の通信中はNAVが設定されるので、拡張基地局11が拡張端末局13に対して送信要求メッセージ(RTSS)を送信しても、拡張端末局13はそれに対応する送信許可メッセージ(CTSS:Clear to Simultaneous Send)を送信できず、受信中の拡張基地局11において、他の拡張端末局13へのデータ送信ができない。
【0008】
なお、
図8(2),(3) において、拡張基地局11と通信中の拡張端末局12が、同時送受信機能をもたない既存の端末局であってもよい。
【0009】
また、
図8(2) において、拡張基地局11から拡張端末局12(既存の端末局)に送信中であるときに、拡張端末局13から拡張基地局11へ送信しようとする場合には、拡張端末局13の送信信号が拡張端末局12に対して干渉とならないように、拡張端末局13から拡張基地局11の方向に対する送信指向性制御が必要になる。
【0010】
また、
図8(3) において、拡張基地局11が拡張端末局12(既存の端末局)から受信中であるときに、拡張基地局11から拡張端末局13へ送信しようとする場合には、拡張端末局13で拡張端末局12の送信信号が干渉とならないように、拡張端末局13から拡張基地局11の方向に対する受信指向性制御が必要になる。
【0011】
本発明は、拡張無線局における同時送受信機能を有効活用するために、拡張無線局が送信中または受信中のときに、他の拡張無線局との通信(送信中のときに受信、受信中のときに送信)を可能とする無線通信方法および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信方法において、第1の拡張無線局が他の無線局に対してデータAを送信中に、第2の拡張無線局が
、第1の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、
NAVを解除した後、第1の
拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信するステップと、第1の拡張無線局が
、送信要求メッセージを受信したときに、第2の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信するステップと、第2の拡張無線局が
、送信許可メッセージを受信したときに、第1の拡張無線局に対してデータBを送信するステップと、第1の拡張無線局が
、データAを送信中であっても、データBを受信するステップとを有する。
【0013】
第2の発明は、同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信方法において、第1の拡張無線局が他の無線局からデータAを受信中に、第1の拡張無線局が
、第2の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に
、第2の
拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信するステップと、第2の拡張無線局が
、送信要求メッセージを受信したときに、
NAVを解除した後、第1の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信するステップと、第1の拡張無線局が
、送信許可メッセージを受信したときに、データAを受信中であっても、第2の拡張無線局に対してデータBを送信するステップと、第2の拡張無線局が
、データBを受信するステップとを有する。
【0014】
第1の発明の無線通信方法において、第2の拡張無線局は、送信指向性制御機能を備え、データBを送信する際に、第1の拡張無線局に対して送信指向性を形成して送信する。
【0015】
第2の発明の無線通信方法において、第2の拡張無線局は、受信指向性制御機能を備え、データBを受信する際に、第1の拡張無線局に対して受信指向性を形成して受信する。
【0016】
第1または第2の発明の無線通信方法において、第1の拡張無線局および第2の拡張無線局は、送信要求メッセージまたは送信許可メッセージの少なくとも一方に、自局が同時送受信が可能な拡張無線局であることを記載する領域を備え、他局に通知する。
【0017】
第3の発明は、同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信システムにおいて、第1の拡張無線局は、他の無線局に対してデータAを送信中に、第2の拡張無線局が第1の拡張無線局を宛先とするデータBを送信するために
、NAVを解除して送信した送信要求メッセージを受信したときに、第2の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信する手段と、データAを送信中に、第2の拡張無線局が送信したデータBを受信する手段とを備え、第2の拡張無線局は、第1の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、第1の拡張無線局が送信中であっても、
NAVを解除した後、第1の
拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信する手段と、第1の拡張無線局が送信した送信許可メッセージを受信したときに、第1の拡張無線局に対してデータBを送信する手段とを備える。
【0018】
第4の発明は、同時送受信が可能な第1の拡張無線局と第2の拡張無線局との間でデータの送受信を行う無線通信システムにおいて、第2の拡張無線局は、第1の拡張無線局が他の無線局からデータAを受信中に、第1の拡張無線局が第2の拡張無線局を宛先とするデータBを送信するために送信した送信要求メッセージを受信したときに、
NAVを解除した後、第1の拡張無線局に対して送信許可メッセージを送信する手段と、第1の拡張無線局がデータAを受信中に送信したデータBを受信する手段とを備え、第1の拡張無線局は、第2の拡張無線局を宛先とするデータBを送信する際に、データAを受信中であっても、第2の
拡張無線局に対して送信要求メッセージを送信する手段と、第2の拡張無線局が
NAVを解除して送信した送信許可メッセージを受信したときに、第2の拡張無線局に対してデータBを送信する手段とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、CSMA/CAによるアクセス制御を行う無線通信システムにおいて、同時送受信が可能な拡張無線局が多数存在する環境において、第1の拡張無線局が通信中でも送信または受信可能な状況において、第2の拡張無線局との通信が可能になり、システムスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1における制御シーケンスを示す図である。
【
図2】本発明の実施例1における拡張基地局11と拡張端末局13の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1における拡張基地局11と拡張端末局13の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例2における制御シーケンスを示す図である。
【
図5】本発明の実施例2における拡張基地局11と拡張端末局13の構成例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2における拡張基地局11と拡張端末局13の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】RTSSおよびCRSSのフレームフォーマットを示す図である。
【
図8】拡張無線局の同時送受信とその課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明する実施例1では、CSMA/CAによるアクセス制御の元で、拡張基地局(
図8(2) の11)が送信中のときに、他の拡張端末局(
図8(2) の13)からの受信を可能とするための制御手順について説明する。実施例2では、CSMA/CAによるアクセス制御の元で、拡張基地局(
図8(3) の11)が受信中のときに、他の拡張端末局(
図8(3) の13)への送信を可能とするための制御手順について説明する。
【0022】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1における制御シーケンスを示す。
図2は、本発明の実施例1における拡張基地局11と拡張端末局13の構成例を示す。
図3は、本発明の実施例1における拡張基地局11と拡張端末局13の処理手順を示す。
【0023】
図1〜
図3において、拡張基地局11は、拡張端末局(または既存端末局でも可)12に対してデータAを送信中とする(S11)。データAは、変調部111、必要に応じて指向性制御部112、無線部(RF)113、アンテナ114を介して送信される。このとき、拡張基地局11が送信したRTSおよび拡張端末局12が送信したCTSにより、拡張端末局13にはデータAの送信期間に応じたNAVが設定される(S21)。なお、拡張端末局12が同時送受信機能をもたない既存端末局であっても同様である。ここまでは、通常のCSMA/CAによるアクセス制御であり、NAVが設定されていなければ通常のアクセス制御になる。
【0024】
ここで、拡張端末局13において、拡張基地局11へ送信するデータBが変調部131および同時送信制御部137に入力される(S22)。同時送信制御部137は、データBの宛先が拡張基地局であるか否かを判定する(S23)。拡張基地局であるか否かの判断は、拡張端末局13がこれまでに拡張基地局11が送受信しているRTSSまたはCTSSをモニタして判断できる。データBの宛先が拡張基地局でなければ、同時送受信の対象ではないので、通常のCSMA/CAによるアクセス制御になる。データBの宛先が拡張基地局11であれば、拡張端末局13の同時送信制御部137はNAVを解除し(S24)、拡張基地局11へRTSSを送信する(S25)。
【0025】
拡張基地局11の同時送信制御部117は、拡張端末局13が送信したRTSSを受信すると(S12)、データの受信が可能か否かを判定する(S13)。例えば、拡張基地局11がすでに他の拡張端末局からデータを受信中であれば、データ受信不可となる。一方、拡張基地局11がデータAを送信中であるものの、同時送受信機能を用いてデータ受信が可能であれば、RTSSの送信元である拡張端末局13へCTSSを送信する(S14)。
【0026】
拡張端末局13の同時送信制御部137は、拡張基地局11が送信したCTSSを受信すると(S26)、指向性制御部132に対して拡張基地局11へ向けて送信指向性制御を行いながら、RF133およびアンテナ134を介して拡張基地局11へデータBを送信する(S27)。
【0027】
拡張基地局11では、アンテナ114、RF113、必要に応じて指向性制御部115を介して復調部116でデータBを受信する(S15)。
以上により、拡張基地局11では、拡張端末局12に対してデータAを送信しながら、拡張端末局13から送信されたデータBを受信することができる。なお、拡張端末局13がデータBを送信する際には、拡張基地局11へ向けて送信指向性制御が行われるので、すでにデータAを受信中の拡張端末局12に対する干渉を回避することができる。
【0028】
なお、拡張基地局11と拡張端末局13との間で送受信されるRTSSおよびCTSSについても、それぞれ指向性制御を行ってもよいが、データAを受信中の拡張端末局12の誤り訂正処理で対応可能であれば必ずしもその必要はない。
【0029】
(実施例2)
図4は、本発明の実施例2における制御シーケンスを示す。
図5は、本発明の実施例2における拡張基地局11と拡張端末局13の構成例を示す。
図6は、本発明の実施例2における拡張基地局11と拡張端末局13の処理手順を示す。
【0030】
図4〜
図6において、拡張基地局11は、拡張端末局(または既存端末局でも可)12から送信されたデータAを受信中とする(S31)。データAは、アンテナ114、RF113、必要に応じて指向性制御部112を介して復調部111で受信処理される。このとき、拡張端末局12が送信したRTSまたは拡張基地局11が送信したCTSにより、拡張端末局13にはデータAの送信期間に応じたNAVが設定される(S41)。なお、拡張端末局12が同時送受信機能をもたない既存端末局であっても同様である。ここまでは、通常のCSMA/CAによるアクセス制御であり、NAVが設定されていなければ通常のアクセス制御になる。
【0031】
ここで、拡張基地局11において、拡張端末局13へ送信するデータBが変調部111および同時送信制御部117に入力される(S32)。同時送信制御部117は、データBを送信可能であるか否かを判定する(S33)。例えば、拡張基地局11がすでに他の拡張端末局へデータを送信中であれば、データ送信不可となる。一方、拡張基地局11がデータAを受信中であるものの、同時送受信機能を用いてデータ送信が可能であれば、データBの宛先が拡張端末局であるか否かを判定する(S34)。データBの宛先が拡張端末局でなければ、同時送受信の対象ではないので、通常のCSMA/CAによるアクセス制御になる。データBの宛先が拡張端末局13であれば、拡張端末局13へRTSSを送信する(S35)。
【0032】
拡張端末局13の同時送信制御部137は、拡張基地局11が送信したRTSSを受信すると(S42)、データの受信が可能か否かを判定する(S43)。例えば、拡張端末局13がすでに他の拡張基地局からデータを受信中であれば、データ受信不可となる。一方、拡張端末局13がデータ受信可能であれば、同時送信制御部137はNAVを解除し(S44)、RTSSの送信元である拡張基地局11へCTSSを送信する(S45)。
【0033】
拡張基地局11の同時送信制御部117は、拡張端末局13が送信したCTSSを受信すると(S36)、RF113およびアンテナ114を介して拡張端末局13へデータBを送信する(S27)。
【0034】
拡張端末局13では、拡張基地局11へCTSSを送信後に、指向性制御部135に対して拡張基地局11へ向けて受信指向性制御を行いながら、アンテナ114、RF113を介して復調部116でデータBを受信する(S46)。
【0035】
以上により、拡張基地局11では、拡張端末局12からデータAを受信しながら、拡張端末局13へデータBを送信することができる。なお、拡張端末局13がデータBを受信する際には、拡張基地局11へ向けて受信指向性制御が行われるので、すでにデータAを送信中の拡張端末局12からの干渉を回避することができる。また、拡張端末局13において受信指向性制御を行わなくても、所望のデータBと干渉波(データA)の受信レベル差が所定以上あれば、NOMA(Non-Orthogonal Multiple Access)技術を用いて所望のデータBの復元が可能である。
【0036】
また、拡張基地局11と拡張端末局13との間で送受信されるRTSSおよびCTSSについても、それぞれ指向性制御を行ってもよいが、拡張端末局12,13の誤り訂正処理で対応可能であれば必ずしもその必要はない。
【0037】
また、実施例1における送信指向性制御および実施例2における受信指向性制御は、アンテナを複数本用いたアダプティブアレーアンテナなどの技術により実現する。これまでに受信したRTSSやCTSSなどにより、伝送路情報などを算出し、それを用いて指向性制御を行う(非特許文献2)。
【0038】
図7は、RTSSおよびCRSSのフレームフォーマットを示す。
図7(1) において、RTSSは、フレームの種類を判別する「フレーム制御」フィールド、送信予定期間(NAV)を示す「デュレーション」フィールド、宛先を示す「受信機アドレス」フィールド、同時送受信可能か否かを示す「同時送受信用フラグ」フィールド、送信者を示す「送信機アドレス」フィールド、フレーム誤り検査のための「FCS」フィールドを備える。
【0039】
図7(2) において、CTSSは、「フレーム制御」フィールド、「デュレーション」フィールド、「受信機アドレス」フィールド、「同時送受信用フラグ」フィールド、「FCS」フィールドを備える。
【0040】
また、拡張基地局11および拡張端末局12,13は、通常のRTSおよびCTSを用いてもよい。その場合に拡張基地局11および拡張端末局12,13は、ローカルエリアネットワーク接続時、および定期的に、自装置が本発明による通信プロトコルに対応する旨を報知する専用制御メッセージ(拡張報知メッセージ)を送信する。拡張報知メッセージには、送信元MACアドレスを記載し、これを受けた拡張基地局11および拡張端末局12,13は、拡張報知メッセージを送信した装置のMACアドレスを記憶する。
【0041】
送信制御においては、RTSフレームを受信した際に、「送信機アドレス」を記憶した拡張対応装置のMACアドレスと照合することで、送信元装置が本発明による拡張機能を具備しているか否かを判断する。
【符号の説明】
【0042】
11 拡張基地局
12 拡張端末局(既存端末局)
13 拡張端末局
111 変調部
112 指向性制御部
113 無線部(RF)
114 アンテナ
115 指向性制御部
116 復調部
117 同時送信制御部
131 変調部
132 指向性制御部
133 無線部(RF)
134 アンテナ
135 指向性制御部
136 復調部
137 同時送信制御部