【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未来開拓研究プロジェクト 次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハイブリッド界磁フラックススイッチングモーターには、界磁巻線と電機子巻線の2種類の巻線があり、それらが複雑に入り組んで配置されるので、コイルエンドが大きくなりがちであるし、場合によっては占積率が小さくなる。とりわけ、永久磁石の内周側と外周側の両方に界磁巻線を設ける場合には、巻線が更に複雑に入り組んで、この問題がより顕著になる。そのため、ハイブリッド界磁フラックススイッチングモーターでは、スロット内における電機子巻線の導体断面積を増やすのは容易ではない。
【0005】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、ハイブリッド界磁フラックススイッチングモーターにおいて、コイルエンドの大型化を避けつつスロット内における電機子巻線の導体断面積を増やせるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、第1の態様は、
直流が供給される界磁巻線(23)と、
交流が供給される電機子巻線(24)と、
前記界磁巻線(23)を配置するスロット(213)である界磁スロット(213a)と、前記電機子巻線(24)を配置するスロット(213)である電機子スロット(213b)とがそれぞれ周方向に並んで複数形成された円環状の固定子コア(21)と、
それぞれの界磁スロット(213a)内に収容された永久磁石(22)と、
前記固定子コア(21)と所定のエアギャップ(G)をもって対向した回転子コア(11)とを備え、
前記電機子巻線(24)は、前記永久磁石(22)上を通過する第1巻線(24a)と、前記界磁巻線(23)のコイルエンド(23a)と該界磁巻線(23)が巻回されるティース(211)との間に潜り込んだ部分を有する第2巻線(24b,24c)とによって構成されていることを特徴とする回転電気機械である。
【0007】
この構成では、固定子コア(21)において、界磁巻線(23)と電機子巻線(24)とが重なりによるコイルエンドの軸長の増大を最小化して巻回される。
【0008】
また、第2の態様は、第1の発明において、
前記界磁巻線(23)は、前記永久磁石(22)の内周側及び外周側の双方に設けられており、
前記電機子巻線(24)は、内外双方の前記界磁巻線(23)のコイルエンド(23a)に対応する第2巻線(24b,24c)を備えていることを特徴とする回転電気機械である。
【0009】
この構成では、永久磁石(22)の内外周両側に界磁巻線(23)を備えた回転電気機械(1)において、界磁巻線(23)と電機子巻線(24)とが、重なりによるコイルエンドの軸長の増大を最小化して巻回される。
【0010】
また、第3の態様は、第2の発明において、
前記第2巻線(24b,24c)は、径方向において、前記界磁巻線(23)からはみ出さないことを特徴とする回転電気機械である。
【0011】
また、第4の態様は、第1から第3の発明の何れかにおいて、
前記第1巻線(24a)と前記第2巻線(24b,24c)とは、互いに電気抵抗及び巻数が同一であり、互いに並列に結線されていることを特徴とする回転電気機械である。
【0012】
また、第5の態様は、第1から第3の発明の何れかにおいて、
前記第1巻線(24a)と前記第2巻線(24b,24c)とは、互いに直列に結線されていることを特徴とする回転電気機械である。
【0013】
また、第6の態様は、第1から第5の発明の何れかにおいて、
前記界磁巻線(23)及び前記電機子巻線(24)は、平角導線を折り曲げて形成したエッジワイズコイル、或いはフラットワイズコイルの何れかであることを特徴とする回転電気機械である。
【0014】
この構成では、界磁巻線(23)及び電機子巻線(24)が寸法精度よく形成される。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によれば、コイルエンドの大型化を避けつつスロット内における電機子巻線の導体断面積を増やすことが可能になる。
【0016】
また、第2の態様によれば、永久磁石の内外周両側に界磁巻線を備えた回転電気機械において、コイルエンドの大型化を避けつつスロット内における電機子巻線の導体断面積を増やすことが可能になる。
【0017】
また、第3の態様によれば、巻線における径方向の幅をコンパクトにすることが可能になる。
【0018】
また、第6の態様によれば、回転電気機械において、銅損の低減や占積率の向上が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
《発明の実施形態1》
以下では、本発明の回転電気機械の一例として、電動機の例を説明する。
図1は、本発明の実施形態1における電動機(1)の構成を示す断面図である。この電動機(1)は、HEFSMの一例である。電動機(1)は、
図1に示すように、所定のエアギャップ(G)をもって互いに対向した回転子(10)と固定子(20)を備え、ケーシング(図示は省略)に収容されている。電動機(1)は、例えば自動車や、空気調和装置の圧縮機などに用いることができ、回転子(10)に設けられた駆動軸(12)によって、自動車のトランスミッションや空気調和装置の圧縮機などを駆動する。
【0022】
なお、以下の説明で用いる用語のうち、軸方向とは、駆動軸(12)の軸心(P)の方向をいい、径方向とは軸心(P)と直交する方向をいう。また、外周側とは軸心(P)からより遠い側をいい、内周側とは軸心(P)により近い側をいう。
【0023】
〈回転子〉
回転子(10)は、回転子コア(11)及び駆動軸(12)を備えている。回転子コア(11)は、軟磁性体によって形成されている。本実施形態の回転子コア(11)は、電磁鋼板をプレス加工によって打ち抜いて作成した多数のコア部材を軸方向に積層した積層コアであり、その中心には、
図1に示すように駆動軸(12)を挿入する貫通孔(113)が形成されている。また、回転子コア(11)には、外周側に向かって突き出た複数の突部(111)が設けられている。突部(111)は、回転子コア(11)の周方向に等ピッチで並んでいる。つまり、回転子コア(11)は、軸方向から見て、歯車状の形状である。突部(111)は、回転子(10)の固定子(20)に対する相対的位置によりインダクタンスを異なるために設けられたもので、たとえば、凹部外周に薄肉の回転子コアがあって、回転子(10)全体として外周が真円としてもよい。また、突部(111)は必ずしも厳密に等間隔である必要もない。
【0024】
〈固定子〉
固定子(20)は、固定子コア(21)、永久磁石(22)、界磁巻線(23)、及び電機子巻線(24)を備えている。
【0025】
固定子コア(21)は、軟磁性体によって円環状に形成されている。この例では、固定子コア(21)は、電磁鋼板をプレス加工によって打ち抜いて作成した多数のコア部材を軸方向に積層した積層コアである。
図2は、固定子コア(21)を軸方向から見た図である。
図2に示すように、固定子コア(21)は、固定子ヨーク(212)と、複数のティース(211)とを備えている。固定子ヨーク(212)は、円環状の形状を有した、固定子コア(21)の外周側に形成された部分である。また、それぞれのティース(211)は、固定子ヨーク(212)の内周面から内周側に向かって突き出た部分である。
図2の例では、24個のティース(211)が設けられており、これらのティース(211)は、軸心(P)回りに周方向に所定ピッチで配置されている。それにより、それぞれのティース(211)の間には、空間が形成されることになる。
【0026】
ティース(211)の間に形成されたこれらの空間は、永久磁石(22)や界磁巻線(23)や電機子巻線(24)が配置されるスロット(213)として機能する。これらスロット(213)には、界磁スロット(213a)と電機子スロット(213b)の2種類があり、何れの種類のスロットも複数設けられている。具体的には、界磁スロット(213a)は、スロット(213)のうちの、周方向において1つ飛ばしで隣り合うスロットである。また、電機子スロット(213b)は、スロット(213)のうち、界磁スロット(213a)を除くスロットである。つまり、界磁スロット(213a)と電機子スロット(213b)とは、周方向に交互に配置されている。なお、以下の説明において、界磁スロット(213a)や電機子スロット(213b)等のように複数個が存在する構成要素において、特定のものに着目する等の場合には、参照符合に枝番を付けることにする(例えば213a-1,213a-2…など)。
【0027】
−永久磁石(22)−
固定子(20)には、複数の永久磁石(22)が設けられている。この例では、それぞれの永久磁石(22)は、希土類元素を用いたいわゆる希土類磁石である。より具体的には、永久磁石(22)は、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とした磁石(ネオジム-ボロン-鉄系の磁石)であって、必要に応じて重希土類元素(具体的にはジスプロシウム(Dy)或いはテルビウム(Tb))を含む合金、または、重希土類元素を粒界拡散法によって表面付近のみに含ませた焼結磁石を含む希土類磁石である。
【0028】
この永久磁石(22)は、軸心(P)に直交する方向の断面(
図1で見える面)が方形(この例では径方向が長辺となる長方形)であり、その軸方向の長さは、固定子コア(21)の軸方向長さと概ね同じである。つまり、本実施形態の永久磁石(22)は、直方体である。また、これらの永久磁石(22)は、周方向において同じ極性の磁極面が向かい合うように、界磁スロット(213a)内に配置されている(
図1を参照)。つまり、永久磁石(22)は、周方向に沿って磁化されており、これらの永久磁石(22)は、周方向の一方側に向かって、交互に異なる極性の磁極面を向けて配置されている。
【0029】
−界磁巻線(23)−
界磁巻線(23)は、永久磁石(22)の磁束を制御するための巻線である。界磁巻線(23)は、ティース(211)に巻回されて、界磁スロット(213a)に配置されている。この例では、周方向において互いに隣り合う一対の界磁スロット(213a)によって挟まれる一対のティース(211)(以下、一対の界磁ティース(211a)とも呼ぶ)に対して、2つの界磁巻線(23)が巻回されている。詳しくは、2つの界磁巻線(23)のそれぞれは、径方向に沿う軸を巻回軸として、この一対の界磁ティース(211a)に巻回されている。つまり、一対の界磁ティース(211a)を一つのティースとみなして、これに2つの界磁巻線(23)が集中巻で巻回されているのである。このようにして、本実施形態では、ひとつの界磁スロット(213a)内に、2つの界磁巻線(23)が収められることになる。この例では、界磁スロット(213a)内の2つの界磁巻線(23)は、周方向に並んでいる。
図3に、軸方向から見た界磁巻線(23)及び電機子巻線(24)の配置を示す。なお、
図3では、巻線同士の境界を分かりやすく表示する目的で、巻線間の間隔を大きく表示してある。ただし、実際には、巻線同士の隙間は、任意であるが、絶縁部材を挟んでほぼゼロであるのが望ましい。
【0030】
前記の配置を容易にするために、それぞれの界磁巻線(23)は、いわゆるエッジワイズコイルで形成されている。エッジワイズコイルは、断面が長方形の平角導線(例えば銅で形成される)を折り曲げて構成されたコイルである。詳しくは、エッジワイズコイルは、平角導線の両端面を除く残り4面の内の、幅の狭い面の一方を内にして曲げて巻回することによって形成されており、外面には絶縁皮膜を有している。このエッジワイズコイルの採用により、界磁巻線(23)を寸法精度よく形成することが可能になる。なお、以下では、平角導線の断面(長方形)における長辺の長さを平角導線の「幅(W)」と呼び、短辺の長さを平角導線の「厚さ(t)」と呼ぶことにする。
【0031】
−電機子巻線(24)−
電機子巻線(24)は、回転磁界を形成するための巻線である。電機子巻線(24)には、回転磁界を形成するために、交流が供給される。例えば、電機子巻線(24)として三相の電機子巻線を採用した場合には、電機子巻線(24)には三相の交流電流を流すことになる。電機子巻線(24)に流れる交流電流は、インバータ回路などによって制御することができる。
【0032】
固定子(20)では、電機子巻線(24)は、ティース(211)に巻回されて、電機子スロット(213b)内に配置されている。より具体的には、電機子巻線(24)は、周方向において隣り合う一対の電機子スロット(213b)によって挟まれる一対のティース(211)(以下、一対の電機子ティース(211b)とも呼ぶ)に対して巻回されている。詳しくは、電機子巻線(24)は、径方向に沿う軸を巻回軸として、一対の電機子ティース(211b)に巻回されている。つまり、一対の電機子ティース(211b)を一つのティースとみなして、これに電機子巻線(24)が集中巻で巻回されているのである。これを具体的に
図1で見ると、例えば電機子巻線(24-1)は、周方向において隣り合う電機子スロット(213b-1)と電機子スロット(213b-2)によって挟まれている、ティース(211-1)とティース(211-2)とによって構成された一対の電機子ティース(211b)に巻回されている。
【0033】
同様に、電機子巻線(24-2)は、周方向において隣り合う電機子スロット(213b-1)と電機子スロット(213b-3)によって挟まれている、ティース(211-4)とティース(211-5)とによって構成された一対の電機子ティース(211b)に巻回されている。このようにして、本実施形態では、ひとつの電機子スロット(213b)内に、2つの電機子巻線(24)が収められるのである。
【0034】
本実施形態では、各電機子巻線(24)は、一群のエッジワイズコイル(以下、巻線群とも呼ぶ)によって構成され、四角筒状の形態を有している。より具体的には、電機子巻線(24)は、3つのエッジワイズコイルから成る巻線群によって形成されている。電機子巻線(24)においても、エッジワイズコイルを採用したことによって、寸法精度よく形成することが可能になる。
【0035】
本実施形態では、巻線群を構成する各エッジワイズコイルは、電機子巻線(24)の巻数をなるべく増やすために、それぞれ形状の特徴を有している。
図4に、内周側から見た電機子巻線(24)(巻線群)の斜視図を示す。また、
図5に外周側から見た電機子巻線(24)の斜視図を示す。また、
図6には、巻線群(電機子巻線(24))を構成する各エッジワイズコイルの斜視図を示す。
図6に示すように、電機子巻線(24)は、中央部巻線(24a)、内側部巻線(24b)、及び外側部巻線(24c)によって構成されている。これらの巻線(24a,24b,24c)は、界磁巻線(23)と同様に、平角導線で構成されている。この例では、これらの巻線(24a,24b,24c)を構成する平角導線には、界磁巻線(23)に用いる平角導線と同じ幅(W)及び厚さ(t)のものが採用されている。
【0036】
−中央部巻線(24a)−
中央部巻線(24a)は、本発明の第1巻線の一例である。この例では、各ティース(211)は、同型状のコア部材が積層されているので、電機子巻線(24)は、巻回軸に直交する断面が長方形の1つのティースに巻回されると見なしてよい。そのため、中央部巻線(24a)は、四角筒状に形成されている(
図4、
図6参照)。すなわち、中央部巻線(24a)を巻回軸に沿って見ると、電動機(1)の軸方向が長手(長辺)となり、短手側の辺がティース(211)に面することになる。なお、以下では説明の便宜のため、中央部巻線(24a)において当該長方形の短辺に相当する部分を短辺部(24a_s)と呼ぶことにする。
【0037】
この短辺部(24a_s)は、既述の通りティース(211)の軸方向端面に面しており、中央部巻線(24a)のコイルエンドに相当する。この例では、後に詳述するように、中央部巻線(24a)を電機子ティース(211b)に取り付けた状態で、電機子ティース(211b)の軸方向端面と、短辺部(24a_s)との間に隙間ができるように、中央部巻線(24a)の長手方向の寸法(軸方向長さ(H)と呼ぶ)が設定されている。軸方向長さ(H)は、短辺部(24a_s)間の最短距離である。この例では、中央部巻線(24a)と電機子ティース(211b)との隙間は、概ね、平角導線の幅(W)である。なお、中央部巻線(24a)は、
図3に示すように、径方向において、界磁巻線(23o)と界磁巻線(23i)との間に収まるように、径方向の幅(具体的には、巻数)が設定されている。
【0038】
−内側部巻線(24b)−
内側部巻線(24b)は、本発明の第2巻線の一例である。内側部巻線(24b)は、中央部巻線(24a)よりも内周側に設けられている(
図4参照)。内側部巻線(24b)は、四角筒状に形成されている(
図4、
図6参照)。当該四角筒では、巻回軸に直交する断面が長方形であり、この長方形の長手側の辺が電動機(1)の軸方向を向いている。すなわち、内側部巻線(24b)を巻回軸に沿って見ると、電動機(1)の軸方向が長手(長辺)となる長方形である。なお、以下では説明の便宜のため、内側部巻線(24b)において当該長方形の短辺に相当する部分を短辺部(24b_s)と呼び、長辺に相当する部分を長辺部(24b_l)と呼ぶことにする。この短辺部(24b_s)は、ティース(211)の軸方向端面に面しており、内側部巻線(24b)のコイルエンドに相当する。
【0039】
そして、内側部巻線(24b)では、各短辺部(24b_s)は、径方向外方(すなわち中央部巻線(24a)の短辺部(24a_s)側)にそれぞれ屈曲している。ここで、内側部巻線(24b)の短辺部(24b_s)において屈曲した部分を屈曲部(24b_b)と命名する。
【0040】
内側部巻線(24b)の屈曲部(24b_b)は、中央部巻線(24a)の短辺部(24a_s)におけるティース(211)側の面に重なっている(
図4参照)。既述の通り、中央部巻線(24a)の各短辺部(24a_s)とティース(211)との間には、概ね、平角導線の幅(W)に相当する隙間ができるように、中央部巻線(24a)の軸方向長さ(H)(
図4参照)が設定されている。そのため、それぞれの屈曲部(24b_b)は、ティース(211)と中央部巻線(24a)との間に入り込むことになる。
【0041】
−外側部巻線(24c)−
外側部巻線(24c)も本発明の第2巻線の一例である。外側部巻線(24c)は、中央部巻線(24a)よりも外周側に設けられている。外側部巻線(24c)も、四角筒状に形成されている(
図6参照)。この外側部巻線(24c)に係る四角筒でも、巻回軸に直交する断面が長方形であり、この長方形の長手側の辺が電動機(1)の軸方向を向いている。なお、以下では説明の便宜のため、外側部巻線(24c)において当該長方形の短辺に相当する部分を短辺部(24c_s)と呼ぶことにする。この短辺部(24c_s)は、ティース(211)の軸方向端面に面しており、外側部巻線(24c)のコイルエンドに相当する。
【0042】
外側部巻線(24c)の各短辺部(24c_s)には、径方向内方に屈曲している部分と、屈曲していない真っ直ぐな部分とがある(
図6参照)。以下では、短辺部(24c_s)において径方向内方に屈曲した部分を屈曲部(24c_b)と命名し、屈曲していない部分を平坦部(24c_f)と命名する。本実施形態では、
図6に示すように、外側部巻線(24c)の各短辺部(24c_s)では、屈曲部(24c_b)と、平坦部(24c_f)とは、屈曲部(24c_b)の方が、ティース(211)側となるように、互いに重なっている。すなわち、外側部巻線(24c)では、コイルエンド相当部分において平角導線同士が軸方向で重なり合っている。
【0043】
また。外側部巻線(24c)では、それぞれの屈曲部(24c_b)は、中央部巻線(24a)の短辺部(24a_s)にも重なっている(
図5参照)。既述の通り、中央部巻線(24a)の短辺部(24a_s)とティース(211)との間に、概ね、平角導線の幅(W)に相当する隙間ができるように、中央部巻線(24a)の軸方向長さ(H)(
図4参照)が設定されている。そのため、それぞれの屈曲部(24c_b)は、ティース(211)と中央部巻線(24a)との間に入り込むことになる。
【0044】
−各コイルと永久磁石の位置関係−
界磁巻線(23)と永久磁石(22)の位置関係を見ると、
図1に示すように各永久磁石(22)は、界磁スロット(213a)内において、外周側及び内周側の両方から界磁巻線(23)が面している。より詳しくは、一対の界磁ティース(211a)に対して、2つの界磁巻線(23)が設けられており、それらの界磁巻線(23)は、永久磁石(22)の内周側と外周側の両方から永久磁石(22)に接している。永久磁石(22)を挟んで内周側と外周側で互いに対向する界磁巻線(23)同士は、電源(30)からの電流の流入側の端から見た場合に巻回方向が同じである。
【0045】
なお、以下の説明において、永久磁石(22)の内周側の界磁巻線(23)と該永久磁石(22)の外周側の界磁巻線(23)とを区別する必要がある場合には、内周側の界磁巻線(23)の参照符合に接尾辞として”i”を付けて界磁巻線(23i)と記載し、外周側の界磁巻線(23)の参照符合に接尾辞として”o”を付けて界磁巻線(23o)と記載することにする。また、界磁巻線(23i)や界磁巻線(23o)において特定のものに着目する等の場合には、接尾辞の後に更に枝番を付けることにする(例えば23i-1,23o-1等)。
【0046】
本実施形態における永久磁石(22)と界磁巻線(23)との配置を具体的に
図1で見ると、界磁巻線(23o-1)は、周方向において互いに隣り合う界磁スロット(213a-1)と界磁スロット(213a-2)によって挟まれるティース(211-2)とティース(211-3)によって構成された一対の界磁ティース(211a)に対して巻回されている。この界磁巻線(23o-1)は、永久磁石(22-1)や永久磁石(22-2)よりも外周側に位置している。同様に界磁巻線(23i-1)は、ティース(211-2)とティース(211-3)に対して巻回されている。この界磁巻線(23i-1)は、永久磁石(22-1)や永久磁石(22-2)よりも内周側に位置している。
【0047】
これらの界磁巻線(23)は、必要に応じて直流励磁される。そのため、界磁巻線(23)は、電源(30)に接続されている(
図1参照)。なお、界磁巻線(23)に直流電力を供給する電源(30)には種々のものを採用できる。例えば電源(30)として、チョッパ回路(降圧チョッパ回路、昇圧チョッパ回路または昇降圧チョッパ回路を含む)を用いることで、界磁巻線(23)に流す直流電流を容易に制御することができる。つまり、界磁巻線(23)に流す直流は、脈動成分を含んでいるものでもかまわない。
【0048】
なお、本実施形態では、永久磁石(22)の外周側の全ての界磁巻線(23o)は、互いに直列接続されている。同様に、永久磁石(22)の内周側の全ての界磁巻線(23o)も、互いに直列接続されている。
【0049】
また、永久磁石(22)と電機子巻線(24)の関係を見ると、この例では、電機子巻線(24)は、所定の界磁スロット(213a)を跨ぎ、且つ跨いでいる界磁スロット(213a)内の永久磁石(22)における軸方向端面上を、該電機子巻線(24)の一部分が通過するようにコイルエンドが配置されている。
図3に、電機子巻線(24)等のコイルエンドの配置を示す。例えば、電機子巻線(24-1)に着目すると、
図3に示すように、電機子巻線(24-1)は、界磁スロット(213a-1)を跨いでいる。その際、電機子巻線(24-1)は、その中央部巻線(24a)におけるコイルエンド部分(短辺部(24a_s))が永久磁石(22-1)上(軸方向端面上)を通過するように配置されている。
【0050】
そして、電機子巻線(24-1)は、電機子スロット(213b-1)内に収められている。この電機子スロット(213b-1)内には、もう1つの電機子巻線(24-2)も配置されている。この固定子(20)では、電機子スロット(213b)内には、電機子巻線(24)が周方向に並んで配置される。例えば、電機子スロット(213b-1)内には、電機子巻線(24-1)と電機子巻線(24-2)とが周方向に並んで配置されている(
図1、
図3参照)。以下、同様に、本実施形態では、固定子コア(21)の端面に、電機子巻線(24)のコイルエンドが合計12個並ぶことになる。
【0051】
−電機子巻線と界磁巻線の位置関係−
本実施形態では、電機子巻線(24)の巻数をなるべく増やすため、電機子巻線(24)と界磁巻線(23)との位置関係(具体的には巻線同士の重なり)に工夫を加えてある。
図7に、
図3のVII-VII断面に相当する固定子(20)の断面斜視図を示す。また、
図8に、
図3のVII-VII断面に相当する固定子(20)の断面斜視図を示す。内側部巻線(24b)は、屈曲部(24b_b)の端部(四角筒のコーナーに相当する付近)が、界磁巻線(23)のコイルエンド(23a)と、該界磁巻線(23)が巻回されるティース(211)との間に潜り込んでいる(
図7参照)。これを実現するため、界磁巻線(23)とティース(211)との間には、概ね、平角導線の幅(W)と同等の隙間が形成されるように、界磁巻線(23)の軸方向長さ(H2)が定められている。軸方向長さ(H2)は、短辺部間の最短距離である。
【0052】
同様に、外側部巻線(24c)は、その屈曲部(24c_b)の端部(四角筒もコーナーに相当する付近)が、界磁巻線(23)のコイルエンド(23a)と、該界磁巻線(23)が巻回されるティース(211)との間に潜り込んでいる(
図8参照)。界磁巻線(23)とティース(211)との間には、概ね、平角導線の幅(W)と同等の隙間が形成されているので、これを容易に実現することができる。なお、内側部巻線(24b)及び外側部巻線(24c)は、界磁巻線(23)と重なった状態において、界磁巻線(23)からは、径方向においてはみ出さないように、それぞれの屈曲部(24b_b,24c_b)が形成されている。
【0053】
以上のように、本実施形態では、内側部巻線(24b)及び外側部巻線(24c)は、界磁巻線(23)のコイルエンド(23a)と、該界磁巻線(23)が巻回されるティース(211)との間に潜り込んだ部分を、それぞれ有している。それにより、電機子巻線(24)が界磁巻線(23)と重なる部分において、電機子巻線(24)の巻数を増やすことができるのである。この形態では、界磁巻線(23)との重なりを設けずに、単に電機子巻線(24)の巻数を増やす場合と比べ、電機子巻線(24)の軸方向全長(コイルエンド間の距離)を小さくすることが可能になる。
【0054】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、電機子巻線(24)と界磁巻線(23)とが、コイルエンド相当部分において、互いに重なり合うように構成されている。そのため、本実施形態(ハイブリッド界磁フラックススイッチングモーター)では、コイルエンドの大型化を避けつつスロット内における電機子巻線の導体断面積を増やすことが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の巻回の形態では、容易にエッジワイズコイルを採用でき、その結果、電動機(1)における銅損を低減や占積率の向上が可能になる。なお、本実施形態の巻回の形態では、エッジワイズコイルに代えて、フラットワイズコイルを採用することも容易である。フラットワイズコイルを採用した場合にも、電動機(1)における銅損を低減や占積率の向上が可能になる。
【0056】
《発明の実施形態2》
図9は、実施形態2における電機子巻線(24)を示す斜視図である。
図9では、電機子巻線(24)の配置を分かりやすくするため、固定子コア(21)、界磁巻線(23)、永久磁石(22)の記載を省略してある。本実施形態の固定子(20)は、中央部巻線(24a)のみからなる電機子巻線(24)と、内側部巻線(24b)と外側部巻線(24c)との巻線群からなる電機子巻線(24)とが周方向に交互に配置されている。
【0057】
この構成においても、実施形態1と同様に、コイルエンドの大型化を避けつつスロット内における電機子巻線の導体断面積を増やすことが可能になる。
【0058】
《発明の実施形態3》
図10は、実施形態3における電機子巻線(24)を示す斜視図である。
図10でも、電機子巻線(24)の配置を分かりやすくするため、固定子コア(21)、界磁巻線(23)、永久磁石(22)の記載を省略してある。本実施形態の固定子(20)は、内側部巻線(24b)のみからなる電機子巻線(24)と、中央部巻線(24a)と外側部巻線(24c)との巻線群からなる電機子巻線(24)とが周方向に交互に配置されている。
【0059】
この構成においても、実施形態1と同様に、コイルエンドの大型化を避けつつスロット内における電機子巻線の導体断面積を増やすことが可能になる。
【0060】
《その他の実施形態》
なお、電機子巻線(24)を構成する中央部巻線(24a)、内側部巻線(24b)、外側部巻線(24c)は、並列に結線してもよい、これらの巻線(24a,24b,24c)を並列に結線する場合には、互いに電気抵抗及び巻数が同一とするのが好ましい。
【0061】
また、前記実施形態で説明した巻線(23,24)の構成は、電動機(1)の他に、発電機にも適用してもよい。
【0062】
また、固定子(20)におけるティース(211)の数や、回転子(10)の突部(111)の数も例示であり、実施形態で示した例には限定されない。
【0063】
また、永久磁石(22)の材料は例示であり、重希土類元素を含まない磁石材料で永久磁石(22)を構成してもよい。