【文献】
Byung Mook Weon、外1名,Self-Pinning by Colloids Confined at a Contact Line,PHYSICAL REVIEW LETTERS [ONLINE],米国,American Physical Society,2013年 1月11日,第110巻,第2号,p.028303−1〜028303−5,[DL from APS Journals]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する半導体装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0012】
なお以下、可視波長域は波長が380nm以上780nm以下の範囲とし、青色域は波長が420nm以上480nm以下の範囲、緑色域は波長が500nm以上560nm以下の範囲、黄色域は波長が560nmより長く590nm以下の範囲、赤色域は波長が610nm以上750nm以下の範囲とする。紫外域は、波長が200nm以上380nm未満の範囲とする。
【0013】
<実施の形態1>
図1(a)は実施の形態1に係る半導体装置の概略上面図であり、
図1(b)は
図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図である。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1に係る半導体装置100は、基体10と、半導体素子20と、接着材30と、を備えている。半導体素子20は、基体10上に接着材30により接着されている。また、半導体装置100は、半導体素子20を封止する封止部材50を備えている。さらに、半導体装置100は、保護素子80を備えている。
【0015】
より詳細には、半導体装置100は、表面実装型LEDである。半導体装置100は、凹部が上面に形成された基体10と、基体10の凹部に収納された半導体素子20と、半導体素子20を覆うように基体10の凹部に充填された封止部材50と、を備える。基体10は、正負一対のリード電極と、そのリード電極を保持する白色の樹脂の成形体と、を有するパッケージである。基体10の凹部の底面の一部は、リード電極の上面により構成されている。半導体素子20は、LED素子であって、基体10の凹部の底面に接着材30で接着され、リード電極にワイヤ70で接続されている。封止部材50は、樹脂を母材とし、その母材中に蛍光体60を含有している。
【0016】
そして、接着材30は、表面処理された粒子40を含有する。接着材の縁部301の少なくとも一部は、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが偏在する領域である。なお、凝集体41は粒子40で構成されるので、接着材の縁部301の少なくとも一部は、粒子40が偏在する領域であると言える。
【0017】
このような構成を有する半導体装置100は、基体10の上面における接着材30の濡れ広がりが抑えられている。これにより、基体10上における半導体素子20の載置部及び/又はワイヤ70の接続部の接着材30による汚染を抑制することができる。したがって、基体10と半導体素子20を支障なく接続でき、基体10と半導体素子20の十分な接続強度を得ることができる。また、接着材30の塗布量を大きくしやすいこと、及び/又は十分なフィレットを形成しやすいこと、及び/又は揮発性の比較的高い組成の接着材30の固化不良の発生を抑えられること等から、基体10と半導体素子20の高い接続強度が得られやすい。さらに、基体10の上面にブリードアウト防止剤等の表面エネルギーの小さいコーティングを施したり、接着材30を濡れ広がりにくい又は揮発性の低い組成に設計したり、することを回避することができる。これらのことから、例えば、接着材30の剥離による電気的オープン不良及び放熱性の低下、並びにワイヤ70の断線等の発生を抑制でき、信頼性の高い半導体装置とすることができる。さらに、基体10上に半導体素子20を高密度に実装しやすい。
【0018】
なお、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが偏在する接着材30の領域は、接着材の縁部301の一部であってよいが、接着材の縁部301の半分以上であることが好ましく、接着材の縁部301の略全部であることがより好ましい。
【0019】
本実施の形態において、表面処理された粒子40は、分散剤と共存する粒子に代えても、同様の作用・効果を得ることができる。この分散剤と共存する粒子は、接着材に、粒子と、その粒子を分散させるための分散剤と、を配合することで得られ、例えば分散剤が吸着した粒子となる。
【0020】
また、本明細書で使用する「偏在」とは、粒子等が、特定の領域において高濃度に存在することを意味するが、その特定の領域以外の領域に低濃度で存在することを否定するものではない。
【0021】
基体10の上面において、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかによって、接着材30の濡れ広がりが抑えられる原理は、以下のように説明することができる。
【0022】
図2(a)及び(b)は、本発明における、基体上面において接着材の濡れ広がりが抑えられる原理を説明する概略図である。基体10の上面において、接着材30の濡れ広がりが抑えられる原理は、2つの段階を含むと考えられる。第1段階は、
図2(a)を参照して説明する。第1段階は、液状の接着材の母材35中に、粒子間の相互作用が少ない、即ち凝集性が抑制された粒子40を分散させる、好ましくは略均一に分散させることによる。固化前の接着材30は、基体10の上面に塗布された際、その縁部301にメニスカス端部を形成する。このメニスカス端部の先端(空気(気体)、接着材の母材(液体)、基体(固体)の3相が接する接触点の近傍)に存在する粒子40と、隣り合うメニスカス端部の先端に存在する粒子40と、の間には毛管力が発生する。この毛管力は、隣り合うメニスカス端部の先端に存在する粒子40を互いに引き寄せ合うように働く。そして、この毛管力が接着材の縁部301に沿って連続的に働くことによって、基体10の上面に塗布された固化前の接着材30の濡れ広がりが抑えられるのである。特に、この毛管力が接着材の縁部301の略全部に亘って働くことで、固化前の接着材30の濡れ広がりを効果的に抑えることができる。なお、この毛管力は、粒子の分散性が高いコロイド溶液において発現しやすいため(例えば上記非特許文献1参照)、粒子の凝集を抑制する表面処理を粒子40に施すことや、分散剤を粒子40と共に配合することにより、効率良く発現させることができる。
【0023】
第2段階は、
図2(b)を参照して説明する。第2段階は、接着材30の固化を促す加熱による。接着材30を固化させる過程で、上記縁部301のメニスカス端部は非常に薄く、接着材の母材35中の低沸点成分(例えばシリコーン樹脂であれば低沸点シロキサン)が最も速く揮発する。この揮発に起因する縁部301のメニスカス端部の表面張力変化により、固化前の接着材30中でそのメニスカス端部へ向かって流れる表面張力流が発生する。そして、縁部301のメニスカス端部に運ばれた固化前の接着材30は、上記毛管力により濡れ広がりが抑えられているため内側へ戻され、その結果として縁部301のメニスカス端部では対流が発生する。この過程で、縁部301のメニスカス端部において、対流により運ばれた粒子40が、上記毛管力で整列したり、粒子濃度の局所的上昇により凝集したり、する。このようにして接着材の縁部301に集まった粒子40が、加熱により体積膨張し粘度、表面張力とも低下した接着材30の濡れ広がりを更に抑制するのである。なお、この第2段階は、所謂「輪染み」の発生原理によっても説明することができる。
【0024】
以上のようにして、固化した接着材の縁部301の少なくとも一部は、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが偏在する領域となる。なお、上記毛管力は粒子の分散性に依存するため、接着材30の濡れ広がりを抑制する観点からは、粒子40が粒子の凝集体41より多いほうが好ましいが、上記毛管力は粒子の凝集体41にも働くものである。また、接着材30を固化させる過程で粒子40が凝集し、結果として、固化した接着材30に粒子の凝集体41が多く観測される場合もある。
【0025】
以下、半導体装置100の好ましい形態について説明する。
【0026】
接着材30は、半導体素子20の側面に這い上がって設けられた這い上がり部302を含んでいる。そして、接着材の這い上がり部302の少なくとも一部は、粒子40か粒子の凝集体41の少なくともいずれかが偏在する領域である。なお、凝集体41は粒子40で構成されるので、接着材の這い上がり部302の少なくとも一部は、粒子40が偏在する領域であると言える。これにより、半導体素子20の上部への接着材30の濡れ広がりが抑えられ、半導体素子20の電極及び/又は半導体層の積層体の接着材30による汚染を抑制することができる。したがって、半導体素子20にワイヤ70を支障なく接続することができると共に、接着材30による半導体層の積層体の短絡を抑制することができる。また、接着材30の塗布量を大きくしやすいこと、及び/又は十分なフィレットを形成しやすいこと、及び/又は揮発性の比較的高い組成の接着材30の固化不良の発生を抑えられること等から、基体10と半導体素子20の高い接続強度が得られやすい。これらのことから、例えば、ワイヤ70の断線及び/又は半導体素子構造の故障等の発生を抑制でき、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0027】
なお、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが偏在する接着材30の領域は、接着材の這い上がり部302の一部であってよいが、接着材の這い上がり部302の半分以上であることが好ましく、接着材の這い上がり部302の略全部であることがより好ましい。
【0028】
半導体素子20の側面において、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかによって、接着材30の濡れ広がりが抑えられる原理は、以下のように説明することができる。
【0029】
図3(a)及び(b)は、本発明における、半導体素子側面において接着材の濡れ広がりが抑えられる原理を説明する概略図である。半導体素子20の側面において、接着材30の濡れ広がりが抑えられる原理は、2つの段階を含むと考えられる。第1段階は、
図3(a)を参照して説明する。第1段階は、液状の接着材の母材35中に、粒子間の相互作用が少ない、即ち凝集性が抑制された粒子40を分散させる、好ましくは略均一に分散させることによる。固化前の接着材30は、半導体素子20の側面に這い上がった際、その這い上がり部302にメニスカス端部を形成する。このメニスカス端部の先端(空気(気体)、接着材の母材(液体)、半導体素子(固体)の3相が接する接触点の近傍)に存在する粒子40と、隣り合うメニスカス端部の先端に存在する粒子40と、の間には毛管力が発生する。この毛管力は、隣り合うメニスカス端部の先端に存在する粒子40を互いに引き寄せ合うように働く。そして、この毛管力が接着材の這い上がり部302に沿って連続的に働くことによって、半導体素子20の側面に這い上がった固化前の接着材30の濡れ広がりが抑えられるのである。特に、この毛管力が接着材の這い上がり部302の略全部に亘って働くことで、固化前の接着材30の濡れ広がりを効果的に抑えることができる。なお、この毛管力は、粒子の分散性が高いコロイド溶液において発現しやすいため(例えば上記非特許文献1参照)、粒子の凝集を抑制する表面処理を粒子40に施すことや、分散剤を粒子40と共に配合することにより、効率良く発現させることができる。
【0030】
第2段階は、
図3(b)を参照して説明する。第2段階は、接着材30の固化を促す加熱による。接着材30を固化させる過程で、上記這い上がり部302のメニスカス端部は非常に薄く、接着材の母材35中の低沸点成分(例えばシリコーン樹脂であれば低沸点シロキサン)が最も速く揮発する。この揮発に起因する這い上がり部302のメニスカス端部の表面張力変化により、固化前の接着材30中でそのメニスカス端部へ向かって流れる表面張力流が発生する。そして、這い上がり部302のメニスカス端部に運ばれた固化前の接着材30は、上記毛管力により濡れ広がりが抑えられているため内側へ戻され、その結果として這い上がり部302のメニスカス端部では対流が発生する。この過程で、這い上がり部302のメニスカス端部において、対流により運ばれた粒子40が、上記毛管力で整列したり、粒子濃度の局所的上昇により凝集したり、する。このようにして接着材の這い上がり部302に集まった粒子40が、加熱により体積膨張し粘度、表面張力とも低下した接着材30の濡れ広がりを更に抑制するのである。なお、この第2段階もまた、所謂「輪染み」の発生原理によっても説明することができる。
【0031】
以上のようにして、固化した接着材の這い上がり部302の少なくとも一部は、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが偏在する領域となる。なお、上記毛管力は粒子の分散性に依存するため、接着材30の濡れ広がりを抑制する観点からは、粒子40が粒子の凝集体41より多いほうが好ましいが、上記毛管力は粒子の凝集体41にも働くものである。また、接着材30を固化させる過程で粒子40が凝集し、結果として、固化した接着材30に粒子の凝集体41が多く観測される場合もある。
【0032】
(粒子40)
粒子40は、接着材の母材35中に配合され、接着材30の濡れ広がりを抑える作用を有する。この粒子40について以下に詳述する。なお、粒子40を後述の充填剤や蛍光体と表記上区別する場合には、粒子40は第1の粒子と称し、その他の充填剤や蛍光体は第2の粒子、第3の粒子などと称する。
【0033】
粒子40は、粒径が例えば1nm以上100μm以下のものを用いることができるが、ナノ粒子(粒径が1nm以上100nm以下である粒子と定義できる)であることが好ましい。粒子40がナノ粒子であれば、少量の配合で、上記毛管力を得ることができ、接着材30の濡れ広がりを抑えられる。なかでも、粒子40は、粒径が5nm以上50nm以下であることがより好ましい。粒子の凝集体41は、粒子40が凝集したものである。粒子の凝集体41は、粒子40より大きいため観測されやすく、その存在の観測によって粒子40の存在を推測することができる。粒子の凝集体41の径は、例えば100nm〜300μm程度であり、好ましくは100nm以上100μm以下である。また、粒子40やその凝集体41は、半導体素子20の光を散乱させる作用を有することがあり、特に粒子40がナノ粒子である場合にはレイリー散乱により青色光など短波長光の散乱を増大させることができる。また、そのレイリー散乱の発生により、蛍光体60を励起しやすくなり、蛍光体60の配合量を減らして、半導体装置のコストを削減することができる。さらに、接着材30の光透過率が向上し、光の取り出し効率を高めることもできる。なお、粒子40の粒径は、平均粒径(例えばD
50)により定義することができる。粒子40又はその凝集体41の径は、レーザ回折・散乱法、画像解析法(走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM))、動的光散乱法、X線小角散乱法などにより測定することができる。なかでも、画像解析法が好ましい。画像解析法は、例えばJIS Z 8827−1:2008に準ずる。
【0034】
粒子40の形状は、特に限定されず、不定形破砕状などでもよいが、球状であることで、粒子間の接触を最小とすることにより凝集を抑制することができ、好ましい。また、粒子40は、板状であれば、接着材30にガスバリア性を付与することができる。
【0035】
粒子40は、特に限定されず、有機物でもよいし、無機物でもよい。粒子40は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせで構成されてもよい。粒子40は、半導体装置の光取り出し効率の観点から、透光性の物質が好ましい。また、粒子40は、半田耐熱性の観点から、融点が260℃以上であることが好ましい。さらに、粒子40は、導電性を有していてもよいが、半導体素子20の短絡等を回避する観点では、電気的絶縁性を有することが好ましい。具体的には、有機物としては、ポリメタクリル酸エステルとその共重合物、ポリアクリル酸エステルとその共重合物、架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリアクリル酸エステル、ポリスチレンとその共重合物、架橋ポリスチレン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アモルファスフッ素樹脂などの樹脂が好ましい。また、これらの中から選ばれる少なくとも1つの樹脂で無機粒子をコーティングしたコア・シェル型の粒子も含むものとする。このような有機物の粒子は、共重合で屈折率を接着材の母材35に合わせられるため、たとえ凝集しても、透光性を維持できるなど、光学的影響が少ない。一方、無機物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化イリジウム、酸化インジウム、酸化スズなどの酸化物が好ましい。このような無機物の粒子は、耐熱性、耐光性において優れており、また熱伝導性が比較的高い。なかでも、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンは、入手しやすく、比較的安価である。このほか、粒子40は、後述の蛍光体60と同じものを用いることもできる。
【0036】
粒子40は、量子ドットであってもよい。量子ドットは、粒径が1nm以上100nm以下の化合物半導体の粒子であり、ナノ蛍光体とも呼ばれる。量子ドットは、サイズ(粒径)を変えることによって発光波長を選択することができる。量子ドットは、例えば、12族元素と16族元素との化合物、13族元素と16族元素との化合物、又は14族元素と16族元素との化合物である。具体的には、例えば、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化鉛、又はセレン化鉛等である。粒子40が蛍光体(量子ドットを含む)であって、半導体素子20が紫外又は青色発光の発光素子である場合、粒子40は赤色発光であることが好ましい。これにより、粒子40が発する光の封止部材50中の蛍光体60(蛍光体60は例えば緑色発光又は黄色発光)による吸収を抑え、発光効率の良好な半導体装置(発光装置)が得られる。
【0037】
粒子40は、表面処理(即ち、粒子40の表面への付着物の形成)が施されていることが好ましい。これにより、粒子40の凝集が抑制され、言い換えれば粒子40の分散性が高められ、上記毛管力を発現させやすく、接着材30の濡れ広がりを抑えやすい。このような粒子40の表面処理は、長鎖脂肪族アミンとその誘導体、長鎖脂肪族脂肪酸とその誘導体、シランカップリング剤、アミン基及び/又はカルボキシル基を有するシロキサン化合物、シラノール基、ハイドロジェンシラン基、アルコール基より選ばれる少なくとも1つを有するシロキサン化合物、シラノール基、アルコキシ基、ハイドロジェンシラン基より選ばれる少なくとも1つとビニルシリル基とを有するシロキサン化合物、モノグリシジルエーテル末端シロキサン化合物、モノヒドロキシエーテル末端シロキサン化合物、有機シラザン化合物、有機チタネート化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、リン酸およびリン酸エステル化合物などが挙げられる。また、分散剤としては、上記表面処理材のほか、酸性基又は塩基性基を有する高分子化合物、フッ素含有界面活性剤、ポリオール化合物、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、多価脂肪酸誘導体、シランカップリング剤の加水分解物、第4級アンモニウム塩化合物などが挙げられる。粒子40がナノ粒子の場合は表面処理を施すことが好ましく、粒子40がミクロン粒子の場合は分散剤の配合も好ましい。
【0038】
図4(a)及び(b)は其々、実施の形態1に係る半導体装置100の接着材における、表面処理された粒子の含有量と濡れ広がり面積の関係を示すグラフと、その関係の一部を実験例にて示す光学顕微鏡による上面観察像である。なお、
図4(a)及び(b)における接着材の濡れ広がり面積は、接着材を銀めっき付きリード電極の上面に塗布し、常温で2時間放置した後、固化させた状態における面積から塗布直後の面積を差し引いたものである。なお、接着材の塗布直後の面積(
図4(b)では点線の円で示す)は、約0.12mm
2である。また、このグラフの関係を示す接着材30は、例えば後述の実施例1のものと同様とできるが、これに限られるものではない。
図4(a)及び(b)に示すように、粒子40及び/又はその凝集体41の含有量が0.1wt%以上であれば、接着材30の濡れ広がりを抑える作用が得られやすい。粒子40及び/又はその凝集体41の含有量の上限値は、接着材30の濡れ広がりを抑える作用を得る観点では特に限定されないが、粒子40及び/又はその凝集体41の含有量が50wt%を越えると、接着材30の過度の粘度上昇や白濁、粒子40の過度の凝集などを生じる虞がある。したがって、粒子40及び/又はその凝集体41の含有量は、0.1wt%以上50wt%以下であることが好ましい。特に、粒子40及び/又はその凝集体41の含有量は、1wt%以上20wt%以下であることで、接着材30の諸特性を良好に維持しながら、接着材30の濡れ広がりを抑える作用を安定的に得られる。より好ましい粒子40及び/又はその凝集体41の含有量は、5wt%以上20wt%以下である。なお、粒子40及び/又はその凝集体41の含有量は、粒子40の配合量に相当するものであり、接着材の母材35に対する比として重量パーセントで表す。このように、粒子40のごく少ない配合量で、接着材30の濡れ広がりを抑えられることは、半導体装置の製造において大きな利点である。
【0039】
図5(a)及び(b)は其々、実施の形態1に係る半導体装置の接着材における、表面処理された粒子の含有量と熱抵抗の関係を示すグラフと、熱抵抗の低減について説明するための概略図である。なお、このグラフの関係を示す接着材30は、例えば後述の実施例1のものと同様とできるが、これに限られるものではない。
図5(a)に示すように、粒子40が配合された接着材30は、粒子40が配合されていない接着材(Ref.)に比べて、熱抵抗が低くなっている。これは、
図5(b)に示すように、固化した接着材の這い上がり部302と縁部301を結ぶ表層領域(這い上がり部302と縁部301の間の中間表層部を含む)の熱伝導性が、該表層領域に存在する粒子40及び/又はその凝集体41により高められ、この表層領域を経路として半導体素子20から基体10に熱が伝導しやすくなるためであると推測することができる(
図5(b)中の矢印参照)。特に、透光性を有する接着材30については、粒子40を光隠蔽性の低いナノ粒子、特に粒径5nm以上50nm以下のナノ粒子として、対流と毛管力により自己組織化的に接着材30の表層領域へ偏在させることにより、接着材30の優れた透光性の確保と熱抵抗の低減の両立を実現することができる。粒径5nm未満の粒子40では凝集が発生しやすく、むしろ透光性が低下しやすく、また粒径50nmを超える粒子40では僅かな凝集でも透光性が低下するため、粒子40を上記ナノ粒子とすることが好ましい。粒子40は、熱抵抗の低減の観点では、熱伝導性に優れる材料であることが好ましい。この熱伝導性に優れる材料としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などが挙げられる。なかでも、酸化アルミニウムが、熱伝導性、透光性、価格等の総合的観点で好ましい。熱伝導性の観点では、窒化アルミニウムも好ましい。また、粒子40の粒径が小さいほど、接着材の母材35(例えば樹脂)の分子鎖内に入り込みやすく、接着材の母材35を強く拘束し母材35自体の熱伝導性の向上が期待できる。
【0040】
図6は、実施の形態1に係る半導体装置における、半導体素子と接着材の関係について説明するための概略上面図である。上面視における半導体素子20の側面と接着材の縁部301との最長距離(
図6に「d」で示す)は、特に限定されないが、半導体素子20の最長寸法(
図6に「w」で示す)の50%以下であることが好ましく、最長寸法wの30%以下であることがより好ましく、最長寸法wの20%以下であることがよりいっそう好ましい。これは、接着材30の縁部301と這い上がり部302の距離が小さいほど、縁部301と這い上がり部302の其々に集まった粒子40及び/又はその凝集体41(即ち粒子40による2つの輪染み)同士が近づき、上記表層領域の熱伝導性が高められやすいからである。最長距離dの下限値は、特に限定されず、例えば最長寸法wの1%程度である。なお、本明細書で使用する「上面視」とは、基体10の上面又は半導体素子20の上面に対して垂直に見下ろす視点を意味する。
【0041】
半導体素子20が発光素子である場合、封止部材50は、該封止部材50中における半導体素子20側に偏在する蛍光体60を含有していることが好ましい。上述のように、本実施の形態の接着材30は熱抵抗を低くすることができるため、蛍光体60を半導体素子20の近くに配置することで、熱による蛍光体60の劣化を抑えることができる。特に、蛍光体60が耐熱性の比較的小さいフッ化物蛍光体を含む場合などにより効果的である。フッ化物蛍光体としては、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウムなどが挙げられる。
【0042】
<実施の形態2>
図7(a)は実施の形態2に係る半導体装置の概略上面図であり、
図7(b)は
図7(a)におけるB−B断面を示す概略断面図である。
【0043】
図7に示すように、実施の形態2に係る半導体装置200は、基体10と、半導体素子20と、接着材30と、を備えている。半導体素子20は、基体10上に接着材30により接着されている。また、半導体装置200は、封止部材50を更に備えている。さらに、半導体装置200は、保護素子80を備えている。
【0044】
より詳細には、半導体装置200は、表面実装型LEDである。半導体装置200は、略平坦な上面を有する基体10と、基体10の上面に載置された半導体素子20と、基体10の上面において半導体素子20を覆うように設けられた封止部材と、を備える。基体10は、正負一対の配線と、この配線を保持する母体と、を有する配線基板である。半導体素子20は、LED素子であって、基体10の配線に導電性の接着材30で接着されている。封止部材50は、樹脂を母材とし、その上面が半導体素子20上において例えば半球面状などの凸面領域を有する。
【0045】
そして、接着材30は、表面処理された粒子40を含有する。また、接着材の縁部301の少なくとも一部は、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが偏在する領域である。
【0046】
このような構成を有する半導体装置200もまた、接着材30の濡れ広がりが抑えられている。なお、本実施の形態においても、表面処理された粒子40は、分散剤と共存する粒子に代えても、同様の作用・効果を得ることができる。この分散剤と共存する粒子は、接着材に、粒子と、その粒子を分散させるための分散剤と、を配合することで得られ、例えば分散剤が吸着した粒子となる。
【0047】
半導体装置200においては、粒子40かその凝集体41の少なくともいずれかが、接着材30の外縁、即ち接着材の縁部301の外側における近傍にも存在している。この接着材30の外縁に存在する粒子40及び/又はその凝集体41が接着材30を堰き止めるように作用し、接着材30の濡れ広がりをよりいっそう抑えることができる。
【0048】
以下、本発明の一実施の形態の半導体装置の各構成要素について説明する。
【0049】
(半導体装置100)
半導体装置は、少なくとも基体と半導体素子を備え、半導体素子が基体上に接着されたものである。半導体装置は、表面実装型でもよいし、リード挿入型でもよい。
【0050】
(基体10)
基体は、半導体素子が実装される筐体や台座となる部材である。基体は、主として、リード電極と成形体を含むパッケージの形態や、母体と配線を含む配線基板の形態が挙げられる。より具体的には、基体は、樹脂成形体がリードフレームにトランスファ成形や射出成形などにより一体成形されて成るものや、導電性ペーストを印刷したセラミックグリーンシートが積層・焼成されて成るものなどがある。基体の半導体素子の載置面は、略平坦であることが好ましいが、湾曲していてもよい。基体は、平板状のものや凹部(カップ部)を有するものなどを用いることができる。平板状のものは半導体素子を実装しやすく、凹部を有するものは光の取り出し効率を高めやすい。凹部は、成形体や母体自体を窪ませることで形成されてもよいし、略平坦な成形体や母体の上面に枠状の突起を別途形成することにより、その凸部の内側を凹部としてもよい。凹部の上面視形状は、矩形、角が丸みを帯びた矩形、円形、楕円形などが挙げられる。凹部の側壁面は、成形体を金型から離型しやすいように、また半導体素子の光を効率良く取り出すために、凹部底面から上方に向かって凹部が拡径するように傾斜(湾曲を含む)していることが好ましい(傾斜角は例えば凹部底面から95°以上120°以下)。凹部の深さは、特に限定されないが、例えば0.05mm以上2mm以下、0.1mm以上1mm以下が好ましく、0.25mm以上0.5mm以下がより好ましい。
【0051】
(パッケージ)
リード電極の材料としては、半導体素子に接続されて導電可能な金属を用いることができる。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、又はこれらの合金、燐青銅、鉄入り銅などが挙げられる。リード電極は、これらの金属の積層体で構成されてもよいが、単層で構成されるのが簡便で良い。特に、銅を主成分とする銅合金が好ましい。また、その表層に、銀、アルミニウム、ロジウム、金、銅、又はこれらの合金などのめっきや光反射膜が設けられていてもよく、なかでも光反射性に優れる銀が好ましい。リード電極は、例えばリードフレームがカット・フォーミングにより個々の半導体装置の一部として個片化されたものである。リードフレームは、上記材料からなる金属板に、プレスやエッチング、圧延など各種の加工を施したものが母体となる。リード電極の厚さは、任意に選択できるが、例えば0.1mm以上1mm以下であり、好ましくは0.2mm以上0.4mm以下である。
【0052】
成形体は、リード電極と一体に成形され、パッケージを構成する。成形体の母材は、脂環ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリカーボネート樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂などの熱可塑性樹脂、又は、ポリビスマレイミドトリアジン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、などの熱硬化性樹脂、若しくはこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂が挙げられる。また、これらの母材中に、充填剤又は着色顔料として、ガラス、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ワラストナイト、マイカ、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、酸化アンチモン、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、カーボンブラックなどの粒子又は繊維を含有させることができる。
【0053】
(配線基板)
配線基板の母体は、電気的絶縁性を有するものがよいが、導電性を有するものでも、絶縁膜などを介することで配線と電気的に絶縁させることができる。配線基板の母体の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム又はこれらの混合物を含むセラミックスや、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン又はこれらの合金を含む金属や、エポキシ樹脂、BTレジン、ポリイミド樹脂などの樹脂又はこれらの繊維強化樹脂(強化材はガラスなど)が挙げられる。配線基板は、母体の材質や厚さにより、リジッド基板、又は可撓性基板(フレキシブル基板)とすることができる。また、配線基板は、平板状の形態に限らず、上記パッケージと同様の凹部を有する形態とすることもできる。
【0054】
配線は、母体の少なくとも上面に形成され、母体の内部、下面や側面にも形成されていてもよい。また、配線は、半導体素子が接合されるランド(ダイパッド)部、外部接続用の端子部、これらを接続する引き出し配線部などを有するものでもよい。配線の材料としては、銅、ニッケル、パラジウム、ロジウム、タングステン、クロム、チタン、アルミニウム、銀、金又はそれらの合金が挙げられる。特に、放熱性の観点においては銅又は銅合金が好ましい。また、その表層に、銀、アルミニウム、ロジウム、金、銅、又はこれらの合金などのめっきや光反射膜が設けられていてもよく、なかでも光反射性に優れる銀が好ましい。これらの配線は、電解めっき、無電解めっき、スパッタ、蒸着、印刷、塗布、コファイア法、ポストファイア法などにより形成することができる。
【0055】
(半導体素子20)
半導体素子は、少なくとも半導体素子構造を備え、多くの場合に基板を更に備える。半導体素子は、発光素子のほか、受光素子でもよいし、電子素子でもよい。発光素子としては、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)などが挙げられる。受光素子としては、フォトダイオードや太陽電池などが挙げられる。電子素子としては、ダイオード(非発光)、トランジスタ、ICやLSIなどが挙げられる。半導体素子の上面視形状は、四角形、特に正方形又は一方向に長い矩形であることが好ましいが、その他の形状であってもよい。半導体素子(特に基板)の側面は、上面に対して、略垂直であってもよいし、内側又は外側に傾斜していてもよい。半導体素子は、同一面側にp,n両電極を有する構造のものでもよいし、p電極とn電極が素子の上面と下面に別個に設けられる、対向電極(上下電極)構造のものでもよい。同一面側にp,n両電極を有する構造の半導体素子は、各電極をワイヤでリード電極や配線と接続されるか(フェイスアップ実装)、又は各電極を導電性の接着材でリード電極や配線と接続される(フリップチップ(フェイスダウン)実装)。対向電極構造の半導体素子は、下面電極が導電性の接合部材でリード電極や配線に接合され、上面電極がワイヤでリード電極や配線と接続される。1つの半導体装置に搭載される半導体素子の個数は1つでも複数でもよい。複数の半導体素子は、直列又は並列に接続することができる。
【0056】
(基板)
基板は、半導体素子構造を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長用基板であってもよいし、結晶成長用基板から分離した半導体素子構造に接合させる接合用基板であってもよい。基板が透光性を有することで、フリップチップ実装を採用しやすく、また光の取り出し効率を高めやすい。基板が導電性を有することで、対向電極構造を採用することができ、また半導体素子構造に面内均一に給電しやすく電力効率を高めやすい。結晶成長用基板の母材としては、サファイア、スピネル、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコン、炭化珪素、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。接合用基板としては、遮光性基板であることが好ましい。遮光性基板は、熱伝導性に優れるものが多く、半導体素子の放熱性を高めやすい。具体的には、シリコン、炭化珪素、窒化アルミニウム、銅、銅−タングステン、ガリウム砒素、セラミックスなどを用いることができる。また、半導体素子構造から基板内部への光の進行を抑制する接合層があれば、光学特性よりも熱伝導性や導電性を優先的に考慮して基板を選択することができる。基板の厚さは、例えば20μm以上1000μm以下であり、基板の強度や半導体装置の厚さの観点において、50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0057】
(半導体素子構造)
半導体素子構造は、発光素子構造、又は受光素子構造、又は電子素子構造と成り得る。半導体素子構造は、半導体層の積層体、即ち少なくともn型半導体層とp型半導体層を含み、また活性層をその間に介することが好ましい。さらに、半導体素子構造は、電極や保護膜を含んでもよい。電極は、金、銀、錫、プラチナ、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル又はこれらの合金で構成することができる。保護膜は、珪素、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物又は窒化物で構成することができる。半導体素子が発光素子又は受光素子である場合、半導体素子構造の発光波長又は受光波長は、半導体材料やその混晶比によって、紫外域から赤外域まで選択することができる。半導体材料としては、蛍光体を効率良く励起できる短波長の光を発光可能な、また高周波及び高温動作の電子デバイスの実現が可能な、さらに高効率の太陽電池を実現可能な材料である、窒化物半導体(主として一般式In
xAl
yGa
1−x−yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)で表される)を用いることが好ましい。このほか、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化珪素などを用いることもできる。
【0058】
(金属膜)
半導体素子の基板の下面(半導体素子構造が設けられる側の面と反対側の面)には、金属膜が設けられてもよい。金属膜の材料としては、金、銀、錫、ロジウム、タングステン、ニッケル、モリブデン、プラチナ、パラジウム、チタン又はこれらの合金を用いることができる。金属膜は、単層膜でも多層膜でもよい。金属膜の形成方法は、特に限定されないが、スパッタ、蒸着などが挙げられる。なお、この金属膜は省略してもよい。
【0059】
(接着材30)
接着材は、半導体素子を基体に固定する部材である。特に、接着材は、透光性を有することで、半導体素子から出射される光を装置外部に効率良く取り出すことができ好ましいが、これに限定はされない。電気的絶縁性の接着材の母材は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ビスマレイミド樹脂、又はこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂などを用いることができる。なかでも、接着材の母材は、透光性が要求される場合には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂が透光性に優れており、好ましい。より詳細には、酸無水物硬化エポキシ樹脂、カチオン硬化エポキシ樹脂、付加型シリコーン樹脂、又はこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂が好ましい。また、接着材は、熱伝導性の向上などのため、これらの樹脂に金属、金属酸化物又は金属窒化物などの充填剤を含有させていてもよい。導電性の接着材としては、銀、金、銅、プラチナ、アルミニウム、パラジウムなどの金属粉末と樹脂バインダを含む金属ペーストや、錫−ビスマス系、錫−銅系、錫−銀系、金−錫系などの半田や、低融点金属などのろう材を用いることができる。また、このほか、導電性の接着材としては、銀粒子及び/又は酸化銀粒子と、低級アルコールなどの有機溶剤と、を含む銀粒子焼結型ペースト(例えば国際公開公報WO2009/090915参照)を用いることができる。
【0060】
(封止部材50)
封止部材は、半導体素子やワイヤ、リード電極や配線の一部などを、封止して、埃や外力などから保護する部材である。封止部材は、電気的絶縁性を有することが好ましい。また、封止部材は、半導体素子から出射される光又は装置外部から受光すべき光を透過可能(好ましくは光透過率70%以上)であることが好ましい。また、半導体素子が電子素子の場合には、封止部材と上述の成形体や母体が一体として設けられてもよい。封止部材の具体的な母材としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの変性樹脂やこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂が挙げられる。ガラスでもよい。なかでも、シリコーン樹脂又はその変性樹脂は、耐熱性や耐光性に優れ、固化後の体積収縮が少ないため、好ましい。特に、封止部材の母材は、フェニルシリコーン樹脂を主成分とすることが好ましい。フェニルシリコーン樹脂は、ガスバリア性にも優れ、腐食性ガスによるリード電極や配線の劣化を抑制しやすい。封止部材は、その母材中に、充填剤や蛍光体などを含有することが好ましいが、含有していなくてもよい。
【0061】
(充填剤)
充填剤は、拡散剤や着色剤などを用いることができる。具体的には、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、ガラス、カーボンブラックなどが挙げられる。充填剤の形状は、球状、不定形破砕状、針状、柱状、板状(鱗片状を含む)、繊維状、又は樹枝状などが挙げられる(後述の蛍光体も同様である)。また、中空又は多孔質のものでもよい。
【0062】
(蛍光体60)
蛍光体は、半導体素子から出射される一次光の少なくとも一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。蛍光体は、1種でもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム、ユウロピウムで賦活されたサイアロン、ユウロピウムで賦活されたシリケート、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウムなどが挙げられる。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する半導体装置や、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する半導体装置とすることができる。
【0063】
(ワイヤ70)
ワイヤは、半導体素子の電極と、リード電極や配線と、を接続する導線である。具体的には、金、銅、銀、プラチナ、アルミニウム又はこれらの合金の金属線を用いることができる。特に、封止部材からの応力による破断が生じにくく、熱抵抗などに優れる金線が好ましい。また、光反射性を高めるために、少なくとも表面が銀又は銀合金で構成されていてもよい。
【0064】
(保護素子80)
保護素子は、例えば静電気や高電圧サージから半導体素子を保護するための素子である。具体的な保護素子としては、ツェナーダイオードが挙げられる。保護素子は、光吸収を抑えるために、白色顔料を含有する樹脂など、光反射性の被覆部材で被覆されていてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0066】
<実施例1>
実施例1の半導体装置は、
図1に示す例の半導体装置100の構造を有する、縦5.0mm、横6.5mm、厚さ1.35mmの基体を備えた、上面発光(トップビュー)式の表面実装型LEDである。基体は、表面に銀のめっきが施された銅合金製の正負一対のリード電極に、酸化チタンの白色顔料とシリカの充填剤を含むエポキシ樹脂製の成形体が一体成形されて、構成されている。基体の略中央には、成形体によって、直径4.3mm、深さ0.85mmの上面視円形状で2段式の凹部が形成されている。リード電極は、その表面の一部が凹部底面の一部を構成し、且つ成形体の外側に延出している。このような基体は、金型内に、リードフレームを設置して、成形体の構成材料を注入し固化させることで作製される。
【0067】
基体の凹部底面には、2つの半導体素子が、負極側のリード電極上に接着材で接着され、その各電極が金のワイヤ(線径25μm)により正負両極のリード電極と各々接続されている。この半導体素子は、青色(中心波長約455nm)発光可能な、縦460μm、横460μm、厚さ120μmのLED素子である。半導体素子は、サファイア基板の上面に、窒化物半導体のn型層、活性層、p型層が順次積層された発光素子構造を有する。接着材は、フェニルシリコーン樹脂を母材とし、その中に酸化ジルコニウムの粒子を含有している。この酸化ジルコニウムの粒子は、粒径が約5nmであり、シロキサン化合物の表面処理がなされており、母材の樹脂に対して5wt%配合されている。
【0068】
また、正極側のリード電極の上面には、縦150μm、横150μm、厚さ85μmの対向電極構造のツェナーダイオードである保護素子が、銀ペーストである導電性接着材で接着されている。また、保護素子は、その上面電極が負極側のリード電極の上面にワイヤ(同上)で接続されている。
【0069】
そして、封止部材は、基体の凹部の内側において、半導体素子を被覆して設けられている。この封止部材は、屈折率1.53のフェニルシリコーン樹脂を母材とし、その中にセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の蛍光体と、シリカの充填剤と、を含有している。また、封止部材の上面は、基体の上面と略同一面であり、ほぼ平坦面(厳密には硬化収縮により若干の凹面)になっている。このような封止部材は、流動性を有する状態において、ディスペンサから滴下され、加熱により固化させることで形成される。なお、蛍光体は、封止部材中における半導体素子側(つまり凹部の底面側)に偏在している。
【0070】
図8は、実施例1に係る半導体装置の接着材の走査型電子顕微鏡(日立製作所社製S−4800)による上面観察像である。
図9は、
図8に示す接着材のエネルギー分散型X線(EDX)分析のデータである。
図8,9に示すように、接着材の縁部の少なくとも一部は、酸化ジルコニウムの粒子かその粒子の凝集体の少なくともいずれかが偏在する領域となっている。また、同図に示すように、接着材の半導体素子側面への這い上がり部の少なくとも一部は、酸化ジルコニウムの粒子かその粒子の凝集体の少なくともいずれかが偏在する領域となっている。
【0071】
以上のように構成された実施例1の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置100と同様の効果を奏することができる。なお、実施例1の半導体装置は、接着材に酸化ジルコニウムの粒子が配合されていないこと以外は同様に構成される半導体装置と比較しても、光束、半導体素子の接着強度(ダイシェア強度)とも同等の値を維持することができる。