特許第6432479号(P6432479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432479
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】酸化チタン粒子及びそれを含む光触媒体
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/04 20060101AFI20181126BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20181126BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   C01G23/04
   B01J21/06 M
   B01J35/02 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-193451(P2015-193451)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65972(P2017-65972A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】八久保 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0239748(US,A1)
【文献】 特開2007−176753(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0160838(US,A1)
【文献】 特開2004−315356(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104071830(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00−23/08
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICP発光分光分析法により測定される酸化チタンの含有量が99.7質量%以上であり、主露出結晶面が(101)面であり、
X線回折パターンにおける(001)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(001))に対する(100)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(100))の比(DXRD(100)/DXRD(001))が、0.2以上1.0以下であるアナターゼ単相の酸化チタン粒子。
【請求項2】
請求項1記載の酸化チタン粒子を含む光触媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子及びそれを含む光触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粒子は紫外線の照射により電子−正孔対を生じ、酸化チタン表面に吸着している有機物を酸化還元によって分解する光触媒粉体として、有害物質の除去、脱臭等に利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
酸化チタンを利用した光触媒粒子は種々提案されていて、例えば特許文献2では、ルチル型及びアナターゼ型の混合結晶であって、かつ硫黄原子を含有する酸化チタン光触媒が提案されている。また特許文献3では、ビスマスを含有する酸化チタンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−171408号公報
【特許文献2】特開2005−254174号公報
【特許文献3】特開2007−117999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、光触媒用の二酸化チタンは種々提案されているが、いずれも第2成分の添加により光触媒性を向上させるものである。一方で、二酸化チタンそのものに対する光触媒性をさらに向上させることができれば、コスト面や適用範囲の拡大等、さまざまな点で有意である。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、光触媒性に優れる酸化チタン粒子及びその酸化チタン粒子を含む光触媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] ICP発光分光分析法により測定される酸化チタンの含有量が99.7質量%以上であり、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ単相の酸化チタン粒子。
[2] X線回折パターンにおける(001)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(001))に対する(100)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(100))の比(DXRD(100)/DXRD(001))が、0.2以上1.0以下である[1]記載の酸化チタン粒子。
[3] 上記[1]又は[2]記載の酸化チタン粒子を含む光触媒体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光触媒性に優れる酸化チタン粒子及びその酸化チタン粒子を含む光触媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の酸化チタン粒子及び光触媒体の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【0010】
[酸化チタン粒子]
本実施形態の酸化チタン粒子は、ICP発光分光分析法により測定される酸化チタンの含有量が99.7質量%以上であり、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ単相の酸化チタン粒子である。
【0011】
本実施形態の酸化チタン粒子は、主露出結晶面が(101)面であるので、酸化チタン粒子が有機物を吸着しやすい表面を有しており、光触媒性に優れる。
ここで、「主露出結晶面が(101)面」であるとは、電界放射型透過電子顕微鏡で格子像を観察し、面間隔から露出結晶面を決定することができ、他の露出結晶面は実質的に観察されないことを意味する。
なお、本明細書では、電界放射型透過電子顕微鏡で格子像を観察した時に、2種類以上の主露出結晶面が観察される場合には、露出表面が不定であるとする。
【0012】
また、本実施形態の酸化チタン粒子は、酸化チタンの含有量が99.7質量%以上のアナターゼ単相であるため、紫外線照射により生じた電子−正孔対が速やかに酸化チタン粒子表面に移動するので、光触媒性に優れる。酸化チタンの含有量は、99.8質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましい。
【0013】
なお、本明細書において「光触媒性に優れる」とは、以下の方法で測定したブリリアントブルーの分解率が95%以上であることを意味する。
すなわち、ブリリアントブルーの分解率は、まず、酸化チタン粒子1gを、5ppmのブリリアントブルー水溶液3mlに懸濁させ、紫外線照射装置で3分間照射する。そして、照射前と照射後の溶液の吸収スペクトルを測定することで、ブリリアントブルーの分解率を算出する。
【0014】
また、本実施形態の酸化チタン粒子は、さらに、X線回折パターンにおける(001)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(001))に対する(100)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(100))の比(DXRD(100)/DXRD(001))が、0.2以上1.0以下であることが好ましく、0.4以上0.9以下であることが好ましく、0.6以上0.8以下であることがさらに好ましい。(DXRD(100)/DXRD(001))が上記範囲であることで光触媒性がより向上する。
【0015】
本実施形態の酸化チタン粒子のBET比表面積は、40m/g以上150m/g以下であることが好ましく、50m/g以上100m/g以下であることがより好ましい。酸化チタン粒子のBET比表面積が40m/g以上150m/g以下であると、光触媒性をより向上させることができる。
【0016】
本実施形態の酸化チタン粒子は、平均一次粒子径が10nm以上かつ30nm以下であることが好ましい。実質的に全ての酸化チタン粒子の一次粒子径が、1nm以上50nm以下の範囲内であることが好ましく、5nm以上40nm以下の範囲内であることがより好ましい。このように、粒子径が揃った酸化チタン粒子を用いることで、光触媒性をより向上させることができる。
【0017】
[酸化チタン粒子の製造方法]
本発明の酸化チタン粒子の製造方法は、チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物と、窒素を含む5員環を有する化合物とを混合して混合溶液を作製する工程(A)、及び混合溶液を加熱及び加圧して酸化チタン微粒子を生成させる工程(B)を含む。これにより、(101)面が露出し、高純度でアナターゼ単相の酸化チタン粒子を製造できる。
【0018】
(工程(A))
工程(A)では、チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物と、窒素を含む5員環を有する化合物とを混合して混合溶液を作製する。
【0019】
(チタンアルコキシド及びチタン金属塩)
工程(A)で用いるチタンアルコキシドには、例えば、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン及びテトラノルマルブトキシチタンなどが挙げられる。加水分解速度の制御性及び入手容易性の観点から、好ましいチタンアルコキシドは、テトライソプロポキシチタン及びテトラノルマルブトキシチタンであり、より好ましいチタンアルコキシドはテトライソプロポキシチタンである。工程(A)で用いるチタン金属塩には、例えば、四塩化チタン及び硫酸チタンなどが挙げられる。
これらの原料は、高純度であることが好ましい。
【0020】
(加水分解生成物)
工程(A)で使用される加水分解生成物は、上記チタンアルコキシド又はチタン金属塩が加水分解して生成した生成物であればとくに限定されない。例えば、加水分解生成物は、メタチタン酸やオルトチタン酸と呼ばれる含水酸化チタンのケーキ状物質である。そのケーキ状物質の内部には加水分解の過程で生成されたアルコール類や塩酸、硫酸が含有されている。これらの物質は結晶成長の際に阻害物質となるため、純水を用いデカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法などの方法を用い洗浄し除去することが好ましい。
【0021】
(窒素を含む5員環を有する化合物)
工程(A)で用いる窒素を含む5員環を有する化合物は、水熱合成の触媒としての機能を有する。工程(A)で用いる窒素を含む5員環を有する化合物には、例えば、ピロール、イミダゾール、インドール、プリン、ピロリジン、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、カルバゾール及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンなどが挙げられる。狭小な粒度分布を有し、結晶性の優れた酸化チタン粒子を製造できることから、好ましい窒素を含む5員環を有する化合物は、5員環が含む窒素の数は1である、窒素を含む5員環を有する化合物である。そのような窒素を含む5員環を有する化合物には、例えば、ピロール、インドール、ピロリジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、カルバゾール及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンなどが挙げられる。また、狭小な粒度分布を有し、結晶性の優れた酸化チタン粒子を製造できることから、より好ましい窒素を含む5員環を有する化合物は、5員環が飽和複素環である化合物である。そのような窒素を含む5員環を有する化合物には、例えば、ピロリジン及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンなどが挙げられる。これらの触媒を使用することによって、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ単相の酸化チタン粒子を得ることができる。
【0022】
窒素を含む5員環を有する化合物の配合量は、加水分解生成物中のチタン原子1molに対して、好ましくは0.01〜1.0molであり、より好ましくは0.1〜0.7molであり、さらに好ましくは0.1〜0.5molである。
【0023】
(水)
工程(A)では、所望により、濃度調整等のために、チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物及び窒素を含む5員環を有する化合物に適宜水を添加してもよい。
工程(A)で用いる水には、例えば脱イオン水、蒸留水及び純水などが挙げられる。
【0024】
(混合)
チタンアルコキシド又はチタン金属塩の加水分解生成物と、窒素を含む5員環を有する化合物とを混合する混合方法は、均一な混合溶液を作製できれば、とくに限定されない。例えば、上記原料を撹拌機、ビーズミル、ボールミル、アトライター及びディゾルバーなどを使用して混合することができる。
【0025】
(pH)
混合溶液のpHは、好ましくは9〜13であり、より好ましくは11〜13である。混合溶液のpHを変えることにより、得られる酸化チタン粒子の平均粒径を制御することができる。混合溶液のpHが9よりも小さい場合、窒素を含む5員環を有する化合物の核形成への触媒作用が小さくなる場合がある。これにより、工程(B)で混合溶液中に生成する粒子の核の核生成速度が遅くなり、混合溶液中に生成する粒子の核の数が少なくなる場合がある。そのため、個々の粒子の粒子径は大きくなり、得られる酸化チタン粒子の平均粒径が大きくなりすぎてしまう場合がある。一方、混合溶液のpHが13よりも大きいと、工程(B)で混合溶液中に生成する粒子の核の核生成速度が速くなり、混合溶液中に生成する粒子の核の数が多くなりすぎてしまう場合がある。これにより、個々の粒子の粒子径は小さくなり、得られる酸化チタン粒子の平均粒径が小さくなりすぎてしまう場合がある。また、混合溶液のpHが13よりも大きいと、混合溶液の分散性が変化し、工程(B)で生成する酸化チタン粒子の粒度分布幅が大きくなりすぎてしまう場合がある。
【0026】
(混合溶液中のチタンの濃度)
混合溶液中におけるチタンの濃度は、チタン原子濃度で、好ましくは0.05〜3.0mol/kgであり、より好ましくは0.5〜2.5mol/kgである。混合溶液中におけるチタンの濃度が0.05mol/kgよりも小さいと、工程(B)で混合溶液中に生成する粒子の核の核生成速度が遅くなり、混合溶液中に生成する粒子の核の数が少なくなる場合がある。そのため、個々の粒子の粒子径は大きくなり、得られる酸化チタン粒子の平均粒径が大きくなりすぎてしまう場合がある。一方、混合溶液中におけるチタンの濃度が3.0mol/kgよりも大きいと、工程(B)で混合溶液中に生成する粒子の核の核生成速度が速くなり、混合溶液中に生成する粒子の核の数が多くなりすぎてしまう場合がある。これにより、個々の粒子の粒子径は小さくなり、得られる酸化チタン粒子の平均粒径が小さくなりすぎてしまう場合がある。また、混合溶液中におけるチタンの濃度が3.0mol/kgよりも大きいと、混合溶液の分散性が変化し、工程(B)で生成する酸化チタン粒子の粒度分布幅が大きくなりすぎてしまう場合がある。
【0027】
(混合溶液中のチタン原子と窒素を含む5員環を有する化合物とのモル比)
混合溶液中のチタン原子と窒素を含む5員環を有する化合物とのモル比は、好ましくは1.00:0.01〜1.00:1.00の範囲であり、より好ましくは1.00:0.10〜1.00:0.70の範囲である。混合溶液中のチタン原子と窒素を含む5員環を有する化合物とのモル比が1.00:0.01〜1.00:1.00の範囲であると、粒度分布幅が狭く、結晶性の優れた酸化チタン粒子が合成できる。
【0028】
(工程(B))
工程(B)では、混合溶液を加熱及び加圧して酸化チタン微粒子を生成させる。工程(B)では、好ましくは高温高圧容器(オートクレーブ)が使用される。また、工程(B)では、混合溶液の水熱反応により酸化チタン粒子を生成させる。
【0029】
(加熱及び加圧)
工程(B)における加熱温度は、好ましくは150〜350℃であり、より好ましくは150〜210℃である。また、工程(B)における圧力は、密閉容器において混合溶液を上記温度に加熱したときの圧力である。工程(B)における加熱温度及び圧力が上述の範囲であると、上記加水分解生成物を混合溶液中の水に溶解させることができるとともに、酸化チタン粒子の核を生成させ、その核を成長させて酸化チタン粒子を生成させることができる。室温から加熱温度まで混合溶液を昇温させるときの昇温時間は、好ましくは1〜3時間である。
【0030】
(攪拌)
工程(B)では、好ましくは、混合溶液を攪拌しながら混合溶液を加熱及び加圧する。攪拌速度は、例えば、100〜300rpmである。
【0031】
(加熱時間)
工程(B)における上記加熱温度での加熱時間は、好ましくは3〜12時間であり、より好ましくは4〜9時間である。加熱時間が3時間よりも短いと、反応がすべて終わらない場合があり、加熱時間が12時間より長いと、混合溶液の反応が完了した後も加熱を長時間続けてしまう場合がある。
反応完了後、酸化チタン粒子は混合溶液中に分散した分散溶液の状態で得られる。この分散溶液中の酸化チタン粒子の平均粒径(50%累積強度粒度分布径:D50)は、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上80nm以下であることがより好ましい。酸化チタン粒子の平均粒径が10nm以上100nm以下であると、光触媒性をより向上させることができる。
この分散溶液をデカンテーションやヌッチェ法等により固液分離し、乾燥することで、本実施形態の酸化チタン粒子を得ることができる。
なお、反応完了後、所望の純度を得るために、不純物除去等のために、必要に応じて得られた酸化チタン粒子を純水等で洗浄してから乾燥してもよい。
【0032】
[光触媒体]
本実施形態の光触媒体とは、本実施形態の酸化チタン粒子を含有していればよく、酸化チタン単独でも、酸化チタンと助触媒等とを混合した混合物でもよい。また、本実施形態の光触媒体は、粉の形態であってもよく、酸化チタン粒子を分散媒に分散させた分散液の形態であってもよく、酸化チタン粒子と、分散媒と、バインダとを含有する塗料の形態であってもよく、これらの分散液や塗料により形成された塗膜の形態であってもよい。
本実施形態の光触媒体は、本発明に係る酸化チタン粒子を含むため、優れた光触媒性を有し、例えば、空気洗浄、悪臭除去、抗菌等の用途に好適である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
【0034】
(実施例1)
(酸化チタン粒子の作製)
容量2Lのビーカーに純水1Lを投入し、攪拌しながらテトライソプロポキシチタン(日本曹達(株)製、品名:A−1)1molを滴下し、白色懸濁液を得た。この白色懸濁液をろ過してチタンアルコキシドの加水分解生成物を得た。次いで、チタン原子の含有量が1molになる量の上記加水分解生成物、加水分解生成物中のチタン原子1molに対して0.15molになる量のピロリジン(関東化学(株)製)、ならびに加水分解生成物、ピロリジン及び純水の合計量が1kgになるような量の純水をオートクレーブ(植田技研社製、型番:SR−200)に投入し、混合して混合溶液を作製した。そして、オートクレーブの中で210℃の加熱温度で混合溶液を4時間30分間加熱して、酸化チタン粒子の分散溶液を作製した。なお、オートクレーブの中は密閉されているので、オートクレーブの中で混合溶液を210℃の加熱温度に加熱することによって、混合溶液は加圧される。
得られた分散溶液の平均粒径(50%累積強度粒度分布径:D50)を、粒度分布計((株)堀場製作所製、型番:SZ−100)を使用して測定した。その結果、平均粒径は35nmであった。
【0035】
次いで、酸化チタン粒子の分散溶液をろ過により固液分離し、得られた酸化チタン粒子を純水で洗浄した。この洗浄後の酸化チタン粒子を200℃で乾燥させて、実施例1の酸化チタン粒子を得た。
【0036】
(酸化チタン粒子の評価)
X線回折装置(スペクトリス社製、型番:X’Pert PRO)で実施例1の酸化チタン粒子の結晶相を同定したところ、アナターゼ単相であることが確認された。
また、X線回折パターンにおける(001)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(001))に対する(100)面の回折ピーク半値幅から算出するシェラー径(DXRD(100))の比(DXRD(100)/DXRD(001))は、0.74であった。
【0037】
実施例1の酸化チタン粒子を電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM) JEM−2100F(日本電子社製)で観察した。その結果、実施例1の酸化チタン粒子は主露出面が(101)面であることが確認された。
【0038】
実施例1の酸化チタン粒子の含有量を、ICP発光分光分析装置((株)リガク社製高周波誘導結合プラズマ発光分光装置CIROS−120 EOP)で測定した。その結果、酸化チタンの含有量は99.9質量%であり、酸化チタン粒子以外のものは実質的に含有されておらず、高純度な酸化チタン粒子が得られていることが確認された。
【0039】
実施例1の酸化チタン粒子のBET比表面積を、比表面積計(日本ベル(株)製、型番:BELSORP−mini)を使用して測定した。その結果、実施例1の酸化チタン粒子の比表面積は75m/gであった。
また、電界放射型透過型電子顕微鏡により測定した平均一次粒子径は20nmであった。
【0040】
(光触媒活性の評価)
実施例1の酸化チタン粒子1gを、5ppmのブリリアントブルー水溶液3mlに懸濁させ、紫外線照射装置で3分間照射した。照射前と照射後の溶液の吸収スペクトルを測定し、ブリリアントブルーの分解率を算出したところ、97%であった。
【0041】
(比較例1)
実施例1の酸化チタン粒子の替わりに、市販品の酸化チタン粒子A(アナターゼ単相で、DXRD(100)/DXRD(001)は、1.3で、露出表面が不定であり、ICP発光分光分析装置での酸化チタン含有量が99.5%で、比表面積が70m/g)を用いて、実施例1と同様に光触媒活性を評価した。その結果、ブリリアントブルーの分解率は56%と低かった。
なお、酸化チタン粒子の平均一次粒子径は18nmであった。
【0042】
(比較例2)
実施例1の酸化チタン粒子の替わりに、市販品の酸化チタン粒子B(アナターゼ単相で、DXRD(100)/DXRD(001)は、1.1で、露出表面が不定であり、ICP発光分光分析装置での酸化チタン含有量が99.2%で、比表面積が300m/g)を用いて、実施例1と同様に光触媒活性を評価した。その結果、ブリリアントブルーの分解率は75%と低かった。
なお、酸化チタン粒子の平均一次粒子径は5nmであった。
【0043】
実施例1、比較例1、2の光触媒活性の評価結果より、主露出面が(101)面であり、ICP発光分光分析法により測定される酸化チタンの含有量が99.7%以上であり、DXRD(100)/DXRD(001)が、0.2以上1.0以下のアナターゼ単相酸化チタン粒子は、光触媒活性に優れることが確認された。