特許第6433475号(P6433475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6433475L−アルギニンを含む流動性栄養組成物の焦げ抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433475
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】L−アルギニンを含む流動性栄養組成物の焦げ抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/175 20160101AFI20181126BHJP
   A23L 33/19 20160101ALI20181126BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20181126BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20181126BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20181126BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 33/10 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20181126BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20181126BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   A23L33/175
   A23L33/19
   A23L33/16
   A23L2/00 F
   A23L2/00 A
   A23L2/00 J
   A23L2/52
   A61K31/198
   A61K33/42
   A61K33/10
   A61K38/16
   A61K9/08
   A61P3/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-240150(P2016-240150)
(22)【出願日】2016年12月12日
(62)【分割の表示】特願2013-507769(P2013-507769)の分割
【原出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-57214(P2017-57214A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-80721(P2011-80721)
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】宮野 浩平
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 未来
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106217(JP,A)
【文献】 特表2011−507517(JP,A)
【文献】 特開2010−120906(JP,A)
【文献】 特開平10−139683(JP,A)
【文献】 特表2001−510145(JP,A)
【文献】 特開平10−139681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/
A23L 2/
A61K 31/
A61K 33/
A61K 38/
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物100ml中に1.0g以上4.5g未満のアルギニンと、タンパク源と、カルシウム源と酸性pH調整剤を含み、ミセル形成性タンパク質及び水溶性カルシウム化合物を実質的に含まないpHが6.0〜7.3である流動性栄養組成物を加熱することによって生じる焦げの抑制方法であって、
前記タンパク源が、ナトリウムカゼイネート及び/又はカリウムカゼイネートであり、
前記カルシウム源が、リン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムであり、
かつ、ナトリウムカゼイネート及びカリウムカゼイネートの合計量に対するアルギニンの配合比が質量比で5/71〜40/43の範囲内とする方法。
【請求項2】
アルギニンと、ナトリウムカゼイネート及び/又はカリウムカゼイネートと、リン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムと、酸性pH調整剤を含み、pHが6.0〜7.3である流動性栄養組成物の製造方法であって、
ナトリウムカゼイネート及びカリウムカゼイネートの合計量に対するアルギニンの配合比が質量比で5/71〜40/43の範囲内であり、かつ、組成物100mlに1.0g以上4.5g未満のアルギニンと、加熱後の焦げが生じない程度にミセル形成性タンパク質及び水溶性カルシウム化合物が配合された組成物を加熱する工程を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L−アルギニンを含む流動性栄養組成物の焦げ抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炎症性疾患や感染症、腎機能傷害に補給が必要なアミノ酸として、アルギニンが注目されている。アルギニンは非常に重要な生理機能を果たし、子供では必須アミノ酸として取り扱われている。例えば、アルギニンは、体内で生成されたアンモニアを尿素に変換する尿素サイクル(オルニチンサイクル)で利用され、細胞増殖や組織修復に必須であるポリアミンの合成に利用される。また、その代謝産物である一酸化窒素(NO)を介して、成長ホルモンの分泌促進、免疫機能の向上、脂肪代謝の促進など種々の機能に関与する。さらに、アルギニンを主要成分とした輸液が術後の回復を助け、感染性合併症の発生率低下に利用されている。この他にも、狭心症、末梢血管疾患、間質性膀胱炎の症状改善などに有効性が示唆されている。
【0003】
このような状況において、L−アルギニンを含む栄養組成物ないし嗜好品が種々提案されている。例えば、特許文献1(特表2007−515417号公報)には、組成物の総熱量の1.8%以下がアルギニン由来であり、タンパク質源が組成物の総熱量の少なくとも3%量のプロリンを含む栄養組成物が開示されている。この組成物は、創傷治癒のために適切な量のアルギニンが配合された組成物である。また、特許文献2(特開2002−186425号公報)には、コーヒー分とアルギニン及び乳分を含むコーヒー飲料が開示されている。当該コーヒー飲料は、アルギニンのような塩基性物質の添加により加熱殺菌により生じる沈殿物が抑えられた飲料である。特許文献3(特開2005−137266号公報)にも、L−ヒスチジン塩酸塩とL−アルギニン塩酸塩を含むコーヒー飲料が開示されている。当該コーヒー飲料では、L−アルギニン塩酸塩とL−アルギニン塩酸塩の相乗効果により、乳入りコーヒー飲料における異風味が抑制されている。さらに、特許文献4(特開平10−139681号公報)には、L−アルギニン及びグルタミン含有ペプチドを含む小麦グルテン分解物を含む経口水性乳化栄養組成物が開示されている。当該組成物は、L−アルギニンとグルタミンの配合によって生じる著しい苦みや加熱殺菌時に生じる着色などをグルタミン含有ペプチドの使用により改善した組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−515417号公報
【特許文献2】特開2002−186425号公報
【特許文献3】特開2005−137266号公報
【特許文献4】特開平10−139681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献4にも記載されているようにL−アルギニンは特有の苦みを有する。これを改善するために糖質を組み合わせると、滅菌等のために加熱処理を行えば、アミノカルボニルとの反応を生じ、製品が著しい着色を生じるという問題がある。
【0006】
また、乳タンパク質は、アミノ酸バランスがよく、カルシウムなどのミネラル分を含むので、良質なタンパク供給源となり得る。しかしながら、L−アルギニンは塩基性アミノ酸であるので、乳タンパク質を含む飲料に配合した場合には、苦みを抑えるためにも、また乳タンパク質の沈殿を防ぐためにも、多量の酸性pH調整剤が必要となる。しかしながら、アルギニンとクエン酸などの酸性pH調整剤と乳タンパク質を含む飲料を加熱処理した際には、焦げ付きが生じ、製品価値を失う場合があった。また、殺菌装置の流路内に残る焦げを除去するため、装置の洗浄に手間がかかっていた。これらの理由により、組成物の処方によって、高濃度のアルギニンを配合することができない場合があった。
【0007】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであって、本発明は、アルギニンとタンパク質、特に乳タンパク質を含む流動性栄養組成物において、苦みや加熱処理による焦げを抑えながら、より多くのアルギニンを配合可能にした栄養組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明においては、ミセル非形成性のタンパク質と不溶性カルシウムを用いることによって、加熱処理による焦げや苦みを抑えて、風味を良好に保つことにしている。
【0009】
つまり、本発明の方法は、アルギニンとタンパク源とカルシウム源と酸性pH調整剤を含む流動性栄養組成物を加熱することによって生じる焦げの抑制方法であって、前記組成物中のタンパク源として、その全部又はその一部にミセル非形成性タンパク質を用い、かつ、前記組成物中のカルシウム源として、その全部又はその一部に不溶性カルシウム化合物を用いる方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アルギニンによる苦みや加熱処理による焦げが抑えられた流動性組成物が提供される。また、ミセル形成性のタンパクや水溶性カルシウムを用いた場合に比べて、より多くのアルギニンが配合された流動性組成物が提供される。また、連続処理における流路となる配管内に焦げ付きが抑えられ、配管内の洗浄作業が簡便になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法により得られる流動性栄養組成物は、アルギニンとミセル非形成性タンパク質を含み、pHが6.0〜7.3である加熱処理された流動性栄養組成物であって、不溶性カルシウムの配合により、焦げが抑制され、かつ、風味が良好である流動性栄養組成物である。
【0012】
当該流動性栄養組成物は、少なくともタンパク質源、好ましくは乳タンパク質を含み、室温(1〜30℃)において流動性を有する組成物を意味する。当該栄養組成物は、タンパク質源の他に糖質、脂質、ミネラル類、ビタミン類を含み得る。流動性栄養組成物は、例えば、飲料様の組成物、ゲル化剤の使用により粘性を有するゾル状の組成物であり得る。本発明の流動性栄養組成物は、主として経口される組成物であり、例えば、嗜好品である清涼飲料水やコーヒー飲料、スポーツドリンクのような飲料であり、健常人や病弱な人の体力維持、増進に必要な栄養を補給するための経口栄養剤や経口栄養流動食であり得る。また、経腸栄養流動食や経腸栄養剤や中心静脈栄養剤のように、経口以外の投与経路で投与される栄養組成物でもあり得る。
【0013】
本発明に係る組成物は、アルギニンとミセル非形成性タンパク質と不溶性カルシウムを必須成分とする。アルギニンはL−アルギニン、D−アルギニン、ラセミ体であるDL−アルギニンのいずれでもよいが、その有用性よりL−アルギニンが望ましい。また、アルギニンとして、遊離のアルギニンやアルギニンの塩の1種若しくは2種以上が用いられる。アルギニンの塩として、アルギニン塩酸塩、アルギニンリン酸塩、アルギニングルタミン酸塩が例示される。
【0014】
ミセル非形成性タンパク質は、水及び油を含む系においてミセルを形成しないタンパク質である。ミセル非形成性タンパク質として、ナトリウムカゼイネート又はカリウムカゼイネートが例示される。本発明においては、良質なアミノ酸の供給源となることから、乳タンパク質由来のミセル非形成性タンパク質が好ましく用いられる。流動性栄養組成物に汎用し得る乳タンパク質として、MPC(乳タンパク濃縮物:milk protein concentrate)、脱脂粉乳、MPI(乳タンパク分離物:milk protein isolate)、カゼインやその塩であるカゼイネートが例示される。これらの乳タンパク質のうち、MPC、脱脂粉乳、MPIはミセルを形成する性質を有する。また、カゼイネートは、その塩によって性質が異なり、カルシウムカゼイネートやマグネシウムカゼイネートはミセルを形成するが、ナトリウムカゼイネートやカリウムカゼイネートはミセルを形成しない。もっとも、本発明の目的を逸脱しない範囲で、本発明の組成物では、タンパク源としてカゼイネート以外のミセル非形成性のタンパク質を用いることもできる。例えば、ホエイ、大豆タンパク質、ペプチドなどが例示される。
【0015】
組成物におけるタンパク質の配合量は焦げや風味の低下を引き起こさない限り、任意である。その下限量は、例えば、組成物100ml中0.01gであり、0.1gであり、0.5gであり、1gであり得る。その上限量は、例えば、組成物100ml中50gであり、30gであり、20gであり、10gであり得る。また、病弱な人や術前術後の患者の栄養補給に用いられる組成物であれば、好ましくは組成物100ml中における総熱量に対するタンパク質由来の熱量が、2〜30%となるように調整される。
【0016】
本発明に係る組成物は、不溶性カルシウム化合物を含む。不溶性カルシウム化合物を用いることにより、加熱時による焦げを防止できるからである。不溶性カルシウム化合物は、水にほとんど溶解しない物質であり、20℃における水に対する溶解度が0.05g/ml以下の物質、好ましくは0.01g/ml以下、望ましくは0.005g/ml以下の物質である。リン酸カルシウムや炭酸カルシウムが例示され、食品や医薬品に用いられるリン酸カルシウムが好ましく用いられる。不溶性カルシウム化合物は、MPCや脱脂粉乳、MPIなどの乳タンパク質に含まれるカルシウム分の代替としての意義を有し、栄養補給のために用いられる。不溶性カルシウム化合物の配合量は栄養補給の観点等から適宜定められる。その下限量は例えば組成物100ml中、0.0001gであり、0.001gであり、0.005gであり、0.01gであり、0.05gであり、0.1gであり得る。また、その上限量は例えば10gであり、5gであり、2gであり、1gであり得る。
【0017】
タンパク質の沈殿やアルギニンによる苦みを抑えるために酸性pH調整剤によって、組成物のpHが6.0〜7.3に調整される。組成物のpHが6.0未満であれば、加熱による滅菌時に焦げが生じるおそれがある。また、組成物のpHが7.3を越えると、アルギニンの苦みや焦げにより組成物の風味が損なわれるおそれがある。
【0018】
酸性pH調整剤は組成物のpHを調整する成分であって、主として塩基性成分であるアルギニンを中和する酸性物質である。酸性pH調整剤はリン酸、塩酸、硫酸などの無機酸や、クエン酸やシュウ酸、リンゴ酸、酢酸などの有機酸が例示される。本発明の組成物は栄養組成物であるので、リン酸やクエン酸、リンゴ酸、酢酸など食品添加物として使用され得る酸が好ましい。もっとも、アルギニン塩を構成する酸も当該酸性pH調整剤として利用され得る。
【0019】
本発明では、タンパク源としてのミセル非形成性タンパク質と不溶性カルシウムの配合が、加熱による焦げを防止し、風味の維持を図る。このメカニズムは十分に解明されたものではないが、焦げの原因は、乳タンパクを用いた組成物では、アルギニンと共に配合される酸が乳タンパクのミセルを破壊し、それによりカルシウム(イオン)が遊離することであると考えられる。つまり、本発明の組成物は、ミセル非形成性タンパク質によるミセル形成の防止と不溶性カルシウムの使用によるカルシウムの遊離抑制が図られた組成物であると言える。この結果、液性の調整に使用しえる酸性pH調整剤の増量が可能となり、高濃度にアルギニンが配合され得ることになる。そして、さらに言い換えると、本発明の方法は、アルギニンとタンパク源とカルシウム源と酸性pH調整剤を含む流動性組成物を加熱した際に生じる焦げの発生を、当該組成物中のタンパク源としてその全部又はその一部にミセル非形成性タンパク質を用い、かつ、組成物中のカルシウム源としてその全部又はその一部に不溶性カルシウム化合物を用いて抑制する方法であると言える。
【0020】
本発明に係る組成物におけるアルギニンの配合量は、焦げが防止され、風味を良好に維持できる限り特に限定されるものではない。その下限は例えば遊離のアルギニンとして組成物100ml中、0.001gであり、0.01gであり、0.1gであり、0.5gであり、1.0g、1.5gであり得る。また、その上限は例えば組成物100ml中4.5gであり、4.0gであり、3.5gであり、3.0gであり得る。組成物100ml中4.5g以上になると、組成物の風味が低下するおそれがあるので、その配合量は組成物100ml中4.5g未満であるのが好ましい。
【0021】
本発明に係る組成物は、経口栄養用の組成物や経腸栄養用の組成物など、術前術後の栄養補給用の組成物としても用いられる。従って、当該組成物は、糖質、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミン類、ゲル化剤のような組成物の粘度調整剤を含み得る。しかしながら、タンパク質源としてミセル形成性タンパク質を用いた場合やミネラルであるカルシウム源として不溶性カルシウム以外のカルシウム化合物を用いた場合には、焦げを生じる場合や風味の低下を招く場合がある。従って、組成物中のタンパク質源が前記ミセル非形成性タンパク質のみであり、かつ、組成物中のカルシウム源が前記不溶性カルシウムのみであることが望まれる。もっとも、焦げを生じず、風味の維持が図られる限りにおいて、タンパク源としてミセル形成性タンパク質の配合が可能であり、カルシウム源として水溶性カルシウム化合物の配合も可能である。この場合、ミセル形成性タンパク質の配合量の上限は、組成物100ml中0.1gであり、0.05gであり、0.01gであり、0.005gであり得る。水溶性カルシウム化合物の配合量の上限は、組成物100ml中0.1gであり、0.05gであり、0.01gであり、0.005gであり得る。
【0022】
上記の成分は水と共に、pHが6.0〜7.3となるように液体組成物に調製される。調製された液体組成物は加熱され、殺菌ないし滅菌される。加熱処理方法として、オートクレーブによるバッチ処理やスチームインジェクションによる連続処理が例示される。加熱処理後は、常温にまで冷却される。この結果、加熱処理中に焦げを生じず、風味が良好である流動性栄養組成物が得られる。また、連続処理における配管内に焦げ付きがなくなるので、製造ラインの洗浄作業が簡便になる。
【0023】
次に本発明について、下記の実施例に基づいて詳細に説明する。下記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本発明は下記の実施例に限られないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0024】
〔焦げの発生と使用タンパク質、カルシウムとの関係〕
L−アルギニン(協和発酵株式会社製)を配合した組成物における焦げの発生と、使用するタンパク質の種類、カルシウムの種類との関係について調べた。表1に示す配合量となるように水を加えて液状組成物を調整し、スチームインジェクション(145℃、5秒)による加熱後、45MPaで均質化して、その後冷却した。なお、脱脂粉乳は明治乳業株式会社製(たんぱく質含量34w/w%)、乳たんぱく質濃縮物(MPC)はフォンテラジャパン株式会社製(たんぱく質含量80w/w%)、リン酸カルシウムは丸尾カルシウム株式会社製のカルシウムスラリー(リン酸カルシウムとして21w/w%含有)、乳清カルシウムはフォンテラジャパン株式会社製乳清カルシウム(カルシウムとして30w/w%含有)を用いた。
【0025】
【表1】
【0026】
これによると、1%以上のL−アルギニンとミセル形成性タンパク質、水溶性カルシウムを用いた場合には、ミセル非形成性のタンパク質の有無によらず、焦げ付きの発生が見られた。
【0027】
〔アルギニン添加量の検討〕
次に表2に示す配合量となるように水を加えて液状組成物を調整し、スチームインジェクション(145℃、5秒)による加熱後、45MPaで均質化して、その後冷却した。
【0028】
【表2】
【0029】
これによると、4.5%未満のL−アルギニンを含む場合には焦げ付きの発生が見られなかったが、4.5%以上になるとL−アルギニンを含む場合に焦げ付きは見られないものの、風味が低下する場合があった。
【0030】
〔pHの検討〕
次に表3に示す配合量となるように水を加えて液状組成物を調整し、スチームインジェクション(145℃、5秒)による加熱後、45MPaで均質化して、その後冷却した。
【0031】
【表3】
【0032】
これによると、pHが6.0未満の場合には焦げ付きが見られた。一方、pHが7.3を越えると、焦げ付きは見られないものの、風味が悪くなる場合があった。
【実施例2】
【0033】
表4に示す成分から、本発明の組成物である飲料を製造した。当該組成物は焦げ付きがなく、また風味が良好であった。また、この飲料は経腸栄養組成物又は経口栄養組成物としても適したものであった。
【0034】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、少量の摂取量で比較的多量のアルギニンを摂取できる流動性栄養組成物を提供する。