【文献】
PASSARELLI James et al.,EUV Resists Comprised of Main Group Organometallic Oligomeric Materials,Proceedings of SPIE,米国,SPIE,2014年 4月 4日,Vol.9051,90512A-1-90512A-9
【文献】
OUYANG Y. Christine et al.,Non-aqueous negative-tone development of inorganic metal oxide nanoparticle photoresists for next generation lithography,Proceedings of SPIE,米国,SPIE,2013年 3月29日,Vol.8682,86820R-1-86820R-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において光とは、極紫外線(EUV光)のみならず、電子線も含む。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、極紫外線(EUV光)による露光のみならず、電子線による描画も露光に含める。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0009】
[非化学増幅型レジスト組成物]
本発明の非化学増幅型レジスト組成物(以下、「本発明の組成物」又は「本発明のレジスト組成物」ともいう)は、金属塩構造を有する樹脂(Ab)を含有する。これにより、本発明の組成物は、孤立ラインパターン又は孤立スペースパターンにおける解像力に優れる。その理由は、次のように推測される。
【0010】
まず、化学増幅型のレジスト組成物について説明する。化学増幅型のレジスト組成物は、通常、酸の作用により分解して極性が変化する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう)、及び、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」ともいう)を含有する。
このような化学増幅型では、露光することにより、レジスト組成物が光を吸収して電子を発生し、その発生した電子によって光酸発生剤が分解して酸を発生し、発生した酸の作用によって樹脂の極性が変化する。
すなわち、化学増幅は、樹脂の極性を変化させる際に、酸の拡散というムラの出やすい機構を伴うため、現像後に形成されるパターン、とりわけ、孤立ラインパターン又は孤立スペースパターンの解像性が劣る場合がある。
【0011】
これに対して、非化学増幅型である本発明のレジスト組成物においては、露光によって、樹脂(Ab)が有する金属塩構造が分解して金属イオンが脱離して、極性が変化する。このとき、ムラの出やすい酸の拡散機構を伴わないため、現像後に形成されるパターン、とりわけ、孤立ラインパターン又は孤立スペースパターンの解像性が優れる。
【0012】
なお、脱離した金属イオンは、例えば、金属酸化物等になると考えられるが、その態様は特に限定されるものではない。
【0013】
また、本発明の組成物は、上記金属塩構造を有することにより、酸拡散のようなムラの出やすい機構を伴わずに、露光された領域だけ、極性を変化させやすくなる。このため、ラフネス特性(ラインエッジスラフネス(Line Edge Roughness:LER))も良好となる。
【0014】
ところで、上述した化学増幅の機構が発現するのは、酸分解性樹脂と光酸発生剤との両方が組み合わされた場合に限られる。したがって、レジスト組成物中に、酸分解性樹脂と光酸発生剤とのいずれか一方が存在していても、他方が存在していなければ、化学増幅機構は発現せず、このレジスト組成物は非化学増幅型といえる。
したがって、以下に詳述するように、一定条件のもと、本発明の非化学増幅型レジスト組成物は光酸発生剤を含有していてもよく、また、樹脂(Ab)は酸分解性繰り返し単位を有していてもよい。
【0015】
本発明の組成物は、光酸発生剤を含有してもよい。
ただし、本発明の組成物が光酸発生剤を含有する場合、樹脂(Ab)は、酸分解性基を有する繰り返し単位(以下、「酸分解性繰り返し単位」ともいう)を実質的に含まない。ここで、酸分解性繰り返し単位を実質的に含まないとは、例えば、樹脂(Ab)中に含まれる酸分解性繰り返し単位の全繰り返し単位に占める割合が、30モル%以下であることをいい、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、特に好ましくは0モル%である。
【0016】
樹脂(Ab)は、酸分解性繰り返し単位を有していてもよい。
ただし、樹脂(Ab)が酸分解性繰り返し単位を有する場合、本発明の組成物は、光酸発生剤を実質的に含有しない。ここで、光酸発生剤を実質的に含有しないとは、例えば、本発明の組成物の全固形分を基準として、光酸発生剤の割合が5質量%以下であることをいい、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
また、樹脂(Ab)が酸分解性繰り返し単位を有する場合、樹脂(Ab)は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を備えた繰り返し単位(以下、「酸発生繰り返し単位」ともいう)を実質的に含まない。ここで、酸発生繰り返し単位を実質的に含まないとは、例えば、樹脂(Ab)中に含まれる酸発生繰り返し単位の全繰り返し単位に占める割合が、10モル%以下であることをいい、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、更に好ましくは1モル%以下、特に好ましくは0モル%である。
【0017】
〔樹脂(Ab)〕
樹脂(Ab)は、好ましくはアルカリ現像液に対して不溶又は難溶性であり、好ましくは有機溶剤を含む現像液に対して可溶性である。
金属塩構造を含む樹脂(Ab)は、EUV光等の露光によって、金属塩構造が分解することにより、アルカリ現像液に対して可溶化することが好ましく、また、有機溶剤を含む現像液に対して不溶又は難溶化することが好ましい。
【0018】
樹脂(Ab)が有する上記金属塩構造に含まれる金属イオンの金属種は、特に限定されないが、EUV光等に対する金属元素の光学密度およびEUV光等に対する金属塩構造の分解率の観点から、第1〜16族に属する金属種が好ましく、第1〜2及び8〜16族に属する金属種がより好ましく、第8〜16族に属する金属種がさらに好ましく、第8〜10及び13〜16族に属する金属種が特に好ましい。
【0019】
上記金属塩構造は、例えば、樹脂(Ab)が有する官能基の部分構造として、樹脂(Ab)に含まれる。上記金属塩構造の具体例としては、下記一般式(f)で表される部分構造が挙げられる。
【0021】
ただし、一般式(f)中、
Xaは、酸基から水素原子を除いた残基を表し、
Metは、金属原子を表し、
nは1以上の整数を表す。
【0022】
一般式(f)中のXaにおける酸基としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO
3H)、リン酸基(H
2PO
4−)、フェノール性水酸基(−C
6H
4OH)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記酸基のうち、カルボキシル基が好ましい。
一般式(f)中のMetが表す金属原子の金属種は、上述した金属種と同義である。
一般式(f)中のnが表す整数は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。
【0023】
なお、一般式(f)中、波線は結合位置を示すが(以下同様)、nが2以上である場合において、一部のXaは、樹脂(Ab)に結合していなくてもよい。
【0024】
また、同様に、一般式(f)中のnが2以上である場合において、一部のXaは、ブレンステッド酸である水分子からプロトンが脱離した水酸化物イオンであってもよい。すなわち、一般式(f)は、下記一般式(f′)で表される態様を含む。
【0026】
ただし、一般式(f′)中、
Xaは、酸基から水素原子を除いた残基を表し、
Metは、金属原子を表し、
nは2以上の整数を表し、
mは1以上(n−1)以下の整数を表す。
【0027】
一般式(f′)中のXa及びMetは、一般式(f)中のXa及びMetと同義である。
一般式(f′)中のnが表す整数は、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。
一般式(f′)中のmが表す整数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0028】
一般式(f)で表される部分構造は、樹脂(Ab)を構成する繰り返し単位中に含まれているのが好ましく、具体的には、樹脂(Ab)が下記一般式(f1)〜(f4)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを有している態様がより好ましい。
【0030】
ただし、一般式(f1)〜(f4)中、
Metは、金属原子を表し、
R
faは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキルオキシカルボニル基を表す。
Y
1は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、
Y
2〜Y
4は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
なお、*は、結合位置を表す。
【0031】
一般式(f1)〜(f4)中のMetが表す金属原子の金属種は、上述した金属種と同義である。
【0032】
一般式(f1)〜(f4)中のR
faが表すアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。このアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基及びドデシル基等の炭素数が1〜20のものが挙げられ、炭素数1〜5のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましい。
R
faが表すシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数が3〜15のものが挙げられる。
R
faが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、中でも、フッ素原子が特に好ましい。
R
faが表すアルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基部分としては、例えば、先にR
faが表すアルキル基として挙げた構成を採用できる。
R
faとしては、水素原子又はアルキル基が好ましい。
【0033】
一般式(f1)〜(f4)中のY
1が表す2価の連結基としては、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基など)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)、2価の芳香環基(例えば、フェニレン基、ベンジレン基、トリレン基、ナフチレン基など)、−S−、−O−、−CO−、−SO
2−、−N(R
0)−、およびこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。なお、R
0は、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基など)である。ここで挙げた各基は、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基等の置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を有していてもよく、2重結合又は3重結合を有していてもよい。
【0034】
一般式(f1)〜(f4)中のY
2〜Y
4が表す1価の有機基としては、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。これらの各基は、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、スルホン酸エステル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カーボネート基、カルバメート基、チオール基、スルフィド基、チオケトン基、又は複素芳香族環などの置換基を有していてもよい。
【0035】
Y
2〜Y
4が表すアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、炭素数は1〜10が好ましく、1〜3がより好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。
Y
2〜Y
4が表すアルケニル基は、炭素数3〜20が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、スチリル基などが挙げられる。
Y
2〜Y
4が表すアルキニル基は、炭素数2〜16が好ましく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基などが挙げられる。
Y
2〜Y
4が表すシクロアルキル基は、単環式であっても多環式であってもよく、炭素数は3〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
Y
2〜Y
4が表すアリール基は、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0036】
なお、Y
2〜Y
4が表す1価の有機基は、樹脂(Ab)の繰り返し単位を構成していてもよい。この場合、Y
2〜Y
4が表す1価の有機基は、下記式で表される基を表す。下記式中のR
faは、上述したとおりである。
【0038】
一般式(f1)〜(f4)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
また、一般式(f2)で表される繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、例えば、下記式で例示されるモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
なお、下記式中、R
5は上述したR
faに相当し、Zは、2価の金属原子を表す。
【0061】
また、一般式(f1)で表される繰り返し単位を得るためのモノマーとしては、例えば、下記式で例示されるモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
5は上述したR
faに相当し、Zは、1価の金属原子を表す。
【0063】
樹脂(Ab)における一般式(f1)〜(f4)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、1〜80モル%が好ましく、10〜65モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。
【0064】
樹脂(Ab)は、酸分解性基を有する繰り返し単位(酸分解性繰り返し単位)を有していてもよい。ただし、上述したように、この場合、本発明の組成物は光酸発生剤を実質的に含有せず、また、樹脂(Ab)は酸発生繰り返し単位を実質的に含まない。
【0065】
酸分解性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基等の極性基の水素原子が、酸の作用により脱離する基で保護された基を挙げることができる。
【0066】
酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
36)(R
37)(OR
39)、−C(=O)−O−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
01)(R
02)(OR
39)、−C(R
01)(R
02)−C(=O)−O−C(R
36)(R
37)(R
38)等を挙げることができる。
【0067】
式中、R
36〜R
39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R
36とR
37とは、互いに結合して環を形成してもよい。R
01〜R
02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0068】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0070】
一般式(AI)に於いて、
Xa
1は、水素原子、メチル基又は−CH
2−R
9で表される基を表す。R
9は、水酸基または1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、アシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。Xa
1は好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx
1〜Rx
3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx
1〜Rx
3の少なくとも2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0071】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH
2−基、−(CH
2)
3−基がより好ましい。
Rx
1〜Rx
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx
1〜Rx
3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx
1〜Rx
3の少なくとも2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx
1がメチル基またはエチル基であり、Rx
2とRx
3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0072】
また、酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(A1)又は(A2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0074】
一般式(A1)中、
nは1〜5の整数を表し、mは1≦m+n≦5なる関係を満足する0〜4の整数を表す。
S
1は、置換基(水素原子を除く)を表し、mが2以上の場合には、複数のS
1は互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
A
1は、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、少なくとも1つのA
1は酸の作用により脱離する基を表す。n≧2の場合には、複数のA
1は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0075】
一般式(A2)中、
Xは、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
A
2は、酸の作用により脱離する基を表す。
【0076】
まず、一般式(A1)により表される繰り返し単位について説明する。
nは、上述したように、1〜5の整数を表し、好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
mは、上述したように、1≦m+n≦5なる関係を満足する0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
S
1は、上述したように、置換基(水素原子を除く)を表す。この置換基としては、例えば、後述する一般式(A)におけるS
1について説明する置換基と同様のものが挙げられる。
【0077】
A
1は、上述したように、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表し、少なくとも1つのA
1は酸の作用により脱離する基である。
【0078】
酸の作用により脱離する基としては、例えば、t−ブチル基及びt−アミル基等の3級アルキル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、並びに、式−C(L
1)(L
2)−O−Z
2により表されるアセタール基が挙げられる。
【0079】
以下、式−C(L
1)(L
2)−O−Z
2により表されるアセタール基について説明する。式中、L
1及びL
2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基を表す。Z
2は、アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基を表す。なお、Z
2とL
1とは、互いに結合して、5員又は6員環を形成していてもよい。
【0080】
アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
直鎖アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましい。このような直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられる。
【0081】
分岐鎖アルキル基の炭素数は、3〜30が好ましく、3〜20がより好ましい。このような分岐鎖アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基、i−ヘプチル基、t−ヘプチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、iノニル基及びt−デシル基が挙げられる。
【0082】
これらアルキル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、水酸基;フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;アミド基;スルホンアミド基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基等のアシル基;アセトキシ基及びブチリルオキシ基等のアシロキシ基、並びにカルボキシ基が挙げられる。
【0083】
アルキル基としては、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシルエチル基、フェニルメチル基又はフェニルエチル基が特に好ましい。
【0084】
シクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。後者の場合、シクロアルキル基は、有橋式であってもよい。即ち、この場合、シクロアルキル基は、橋かけ構造を有していてもよい。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0085】
単環型のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のものが好ましい。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0086】
多環型のシクロアルキル基としては、例えば、ビシクロ、トリシクロ又はテトラシクロ構造を有する基が挙げられる。多環型のシクロアルキル基としては、炭素数が6〜20のものが好ましい。このようなシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、 α−ピナニル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基及びアンドロスタニル基が挙げられる。
【0087】
L
1、L
2及びZ
2におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基及びフェネチル基等の炭素数が7〜15のものが挙げられる。
【0088】
これらアラルキル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、好ましくは、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基及びアラルキルチオ基が挙げられる。置換基を有するアラルキル基としては、例えば、アルコキシベンジル基、ヒドロキシベンジル基及びフェニルチオフェネチル基が挙げられる。なお、これらアラルキル基が有し得る置換基の炭素数は、好ましくは12以下である。
【0089】
Z
2とL
1とが互いに結合して形成し得る5員又は6員環としては、例えば、テトラヒドロピラン環及びテトラヒドロフラン環が挙げられる。これらのうち、テトラヒドロピラン環が特に好ましい。
【0090】
Z
2は、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。これにより、本発明の効果が一層顕著になる。
一般式(A1)により表される繰り返し単位の具体例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0247]〜[0249]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0091】
次に、一般式(A2)により表される繰り返し単位について説明する。
Xは、上述したように、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基を表す。
【0092】
Xとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、直鎖、分岐のいずれでもよい。直鎖アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、さらに好ましくは1〜20であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは3〜20であり、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基、i−ヘプチル基、t−ヘプチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、i−ノニル基、t−デシル基等が挙げられる。
【0093】
Xとしてのアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば炭素数1〜8の上記アルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0094】
Xとしてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0095】
Xとしてのアシル基は、置換基を有していてもよく、例えば炭素数2〜8個のアシル基であって、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等を好ましく挙げることができる。
【0096】
Xとしてのアシロキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜8のアシロキシ基であり、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルリオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等を挙げることができる。
【0097】
Xとしてのシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、単環型でもよく、多環型でもよく、有橋式であってもよい。例えば、シクロアルキル基は橋かけ構造を有していてもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。尚、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0098】
Xとしてのアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14であり、例えば、フェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0099】
Xとしてのアルキルオキシカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0100】
Xとしてのアルキルカルボニルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基を挙げることができる。
【0101】
Xとしてのアラルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜16のアラルキル基である、例えば、ベンジル基を挙げることができる。
【0102】
Xとしてのアルキル基、アルコキシ基、アシル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アラルキル基が更に有していてもよい置換基としては、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はアラルキル基などが挙げられる。
【0103】
A
2は、上述したように、酸の作用により脱離する基を表す。即ち、一般式(A2)により表される繰り返し単位は、酸分解性基として、「−COOA
2」により表される基を備えている。A
2としては、例えば、先に一般式(A1)におけるA
1について説明したのと同様のものが挙げられる。
【0104】
A
2は炭化水素基(好ましくは炭素数20以下、より好ましくは4〜12)であることが好ましく、t−ブチル基、t−アミル基、脂環構造を有する炭化水素基(例えば、脂環基自体、及び、アルキル基に脂環基が置換した基)がより好ましい。
A
2は、3級のアルキル基又は3級のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0105】
脂環構造は、単環でも、多環でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらの脂環構造を有する炭化水素基は置換基を有していてもよい。
脂環構造の例としては、特開2013−83966号公報の段落[0264]〜[0265]に記載された脂環構造を挙げることができる。
【0106】
本発明においては、上記脂環構造の好ましいものとしては、一価の脂環基の表記として、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基である。
【0107】
これらにおける脂環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基である。上記アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルキル基、アルコキシ基は、更に置換基を有していてもよい。アルキル基、アルコキシ基が更に有する置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0108】
脂環構造を有する酸分解性基としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0268]〜[0275]に記載された一般式(pI)〜一般式(pV)で示される基が好適に挙げられる。
【0109】
また、一般式(A2)で表される繰り返し単位は、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0277]〜[0296]に記載された一般式(A3)で表される繰り返し単位であってもよい。
【0110】
一般式(A2)により表される繰り返し単位、又は、この繰り返し単位に対応したモノマーの具体例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0296]〜[0300]に記載された繰り返し単位又はモノマーが挙げられる。
また、一般式(A3)により表される繰り返し単位の構造の具体例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0301]〜[0308]に記載された繰り返し単位が挙げられ、なかでも、同段落[0309]〜[0310]に記載された繰り返し単位が好ましい。
【0111】
樹脂(Ab)は、下記一般式(A5)で表される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0113】
式(A5)中、
Xは、水素原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシロキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、又はアラルキル基を表す。
A
4は、酸の作用により脱離しない炭化水素基を表す。
【0114】
一般式(A5)に於ける、A
4の酸の作用により脱離しない炭化水素基としては、上記の酸分解性基以外の炭化水素基が挙げられ、例えば、酸の作用により脱離しないアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、酸の作用により脱離しないシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、酸の作用により脱離しないアリール基(好ましくは炭素数6〜1
5)等を挙げることができる。
【0115】
A
4の酸の作用により脱離しない炭化水素基は、更に、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等で置換されていてもよい。
【0116】
以下に、一般式(A5)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるがこれらに限定するものではない。
【0118】
樹脂(Ab)は、一般式(A6)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0120】
一般式(A6)中、
R
2は、水素原子、メチル基、シアノ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のペルフルオロ基を表す。
R
3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基又はアシル基を表す。
qは、0〜4の整数を表す。
Arは、q+2価の芳香環を表す。
Wは、酸の作用により分解しない基又は水素原子を表す。
【0121】
Arにより表される芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
【0122】
Wは酸の作用により分解しない基(酸安定基ともいう)を表すが、上記の酸分解性基以外の基が挙げられ、具体的にはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルキルアミド基、アリールアミドメチル基、アリールアミド基等が挙げられる。酸安定基としては、好ましくはアシル基、アルキルアミド基であり、より好ましくはアシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基である。
【0123】
Wの酸安定基において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基の様な炭素数1〜4個のものが好ましく、シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基の様な炭素数3〜10個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アリール基としてはフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基の様な炭素数6〜14個のものが好ましい。Wはベンゼン環上のどの位置にあってもよいが、好ましくはスチレン骨格のメタ位かパラ位であり、特に好ましくはパラ位である。
【0124】
以下に、一般式(A6)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるがこれらに限定するものではない。
【0127】
また、樹脂(Ab)は、更に、下記一般式(c1)〜(c5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを有することも好ましい。
【0129】
式中、R
10〜R
14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ハロゲン原子、又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基である。Z
2は、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。
【0130】
R
10〜R
14としてのアルキル基は、及び、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置換されたアルキル基における炭素数は1〜30であることが好ましい。
R
10〜R
14としてのアルコキシ基における炭素数は1〜8であることが好ましい。
R
10〜R
14としてのアルカノイル基における炭素数は1〜8であることが好ましい。
R
10〜R
14としてのアルコキシカルボニル基における炭素数は2〜8であることが好ましい。
R
10〜R
14としてのアリール基における炭素数は6〜10であることが好ましい。
【0131】
樹脂(Ab)における一般式(c1)〜(c5)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、5〜95モル%が好ましく、より好ましくは5〜60モル%であり、特に好ましくは5〜30モル%である。
【0132】
樹脂(Ab)は、更に酸の作用により分解しない(メタ)アクリル酸誘導体からなる繰り返し単位を有していてもよい。以下に具体例を挙げるがこれに限定するものではない。
【0134】
樹脂(Ab)における酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、5〜95モル%が好ましく、より好ましくは10〜60モル%であり、特に好ましくは15〜50モル%である。
【0135】
樹脂(Ab)における一般式(A1)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、0〜90モル%が好ましく、より好ましくは10〜70モル%であり、特に好ましくは20〜50モル%である。
樹脂(Ab)における一般式(A2)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、0〜90モル%が好ましく、より好ましくは5〜75モル%であり、特に好ましくは10〜60モル%である。
【0136】
樹脂(Ab)における一般式(A3)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、0〜90モル%が好ましく、より好ましくは5〜75モル%であり、特に好ましくは10〜60モル%である。
【0137】
樹脂(Ab)における一般式(A5)で表される繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、0〜50モル%が好ましく、より好ましくは0〜40モル%であり、特に好ましくは0〜30モル%である。
【0138】
樹脂(Ab)における一般式(A6)で表される繰り返し単位の含有率は、それぞれの全繰り返し単位中、0〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは0〜40モル%であり、特に好ましくは0〜30モル%である。
【0139】
また、樹脂(Ab)は、アルカリ可溶性基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基が導入され得るように適切な他の重合性モノマーが共重合されていてもよいし、膜質向上のためにアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートのような疎水性の他の重合性モノマーが共重合されてもよい。
【0140】
樹脂(Ab)は、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0142】
式中、nは1〜5の整数を表し、mは1≦m+n≦5なる関係を満足する0〜4の整数を表す。nは、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。mは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
【0143】
S
1は置換基を表す。mが2以上の場合、複数のS
1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
S
1により表される置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基が挙げられる。
【0144】
たとえばアルキル基、シクロアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの炭素数1〜20個の直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基が好ましい。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0145】
更に有し得る好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、チオフェンカルボニルオキシ基、チオフェンメチルカルボニルオキシ基、ピロリドン残基等のヘテロ環残基などが挙げられ、好ましくは、炭素数12以下の置換基である。
【0146】
置換基を有するアルキル基として、例えばシクロヘキシルエチル基、アルキルカルボニルオキシメチル基、アルキルカルボニルオキシエチル基、シクロアルキルカルボニルオキシメチル基、シクロアルキルカルボニルオキシエチル基、アリールカルボニルオキシエチル基、アラルキルカルボニルオキシエチル基、アルキルオキシメチル基、シクロアルキルオキシメチル基、アリールオキシメチル基、アラルキルオキシメチル基、アルキルオキシエチル基、シクロアルキルオキシエチル基、アリールオキシエチル基、アラルキルオキシエチル基、アルキルチオメチル基、シクロアルキルチオメチル基、アリールチオメチル基、アラルキルチオメチル基、アルキルチオエチル基、シクロアルキルチオエチル基、アリールチオエチル基、アラルキルチオエチル基等が挙げられる。
【0147】
これらの基におけるアルキル基、シクロアルキル基は特に限定されず、更に前述のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有してもよい。
【0148】
上記アルキルカルボニルオキシエチル基、シクロアルキルカルボニルオキシエチル基の例としては、シクロヘキシルカルボニルオキシエチル基、t−ブチルシクロヘキシルカルボニルオキシエチル基、n−ブチルシクロヘキシルカルボニルオキシエチル基等を挙げることができる。
【0149】
アリール基も特に限定されないが、一般的にフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6〜14のものが挙げられ、更に前述のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有してもよい。
上記アリールオキシエチル基の例としては、フェニルオキシエチル基、シクロヘキシルフェニルオキシエチル基等を挙げることができる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0150】
アラルキルも特に限定されないが、ベンジル基などを挙げることができる。
上記アラルキルカルボニルオキシエチル基の例としては、ベンジルカルボニルオキシエチル基等を挙げることができる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0151】
一般式(A)により表される繰り返し単位としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0153】
樹脂(Ab)における、一般式(A)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂(Ab)中の全繰り返し単位に対し、0〜90モル%が好ましく、より好ましくは5〜80モル%であり、更に好ましくは10〜70モル%であり、特に好ましくは20〜60モル%である。
【0154】
樹脂(Ab)においては、特開2013−83966号公報の段落[0345]〜[0346]に記載された繰り返し単位を有していてもよい。
【0155】
樹脂(Ab)は、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する構造部位を備えた繰り返し単位(B)(以下において、「酸発生繰り返し単位(B)」又は「繰り返し単位(B)」という)を含んでいてもよい。
この構造部位は、例えば、活性光線又は放射線の照射により分解することにより、繰り返し単位(B)中に酸アニオンを生じさせる構造部位であってもよいし、酸アニオンを放出して繰り返し単位(B)中にカチオン構造を生じさせる構造部位であってもよい。
この場合、酸発生繰り返し単位(B)が、後述する活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)に相当すると考えることができる。
【0156】
ただし、この場合、上述したように、樹脂(Ab)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を実質的に含まない。
【0157】
酸発生繰り返し単位(B)としては、例えば、特開2013−083966号公報の段落[0347]〜[0485]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(Ab)が繰り返し単位(B)を含有する場合、樹脂(Ab)における、繰り返し単位(B)の含有率は、樹脂(Ab)中の全繰り返し単位に対し、0.1〜80モル%が好ましく、より好ましくは0.5〜60モル%であり、更に好ましくは1〜40モル%である。
【0158】
また、本発明の組成物から得られる非化学増幅型レジスト膜をArFエキシマレーザーで露光する際には、ArFエキシマレーザーに対する透明性の観点から、樹脂(Ab)として芳香環を有さない樹脂を用いることが好ましい。
【0159】
樹脂(Ab)は、更に、ラクトン基、水酸基、シアノ基及びアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
【0160】
樹脂(Ab)が含有し得るラクトン基を有する繰り返し単位について説明する。
ラクトン基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。
【0161】
好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでLERがより良好になる。
【0163】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb
2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb
2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n
2は、0〜4の整数を表す。n
2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb
2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb
2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0164】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0166】
一般式(AII)中、
Rb
0は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb
0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rb
0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0167】
Abは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは、単結合、−Ab
1−CO
2−で表される2価の連結基である。
【0168】
Ab
1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
【0169】
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)の内のいずれかで示される構造を有する基を表す。
【0170】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0171】
ラクトン基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(Ab)中の全繰り返し単位に対し、15〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。
ラクトン基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0175】
樹脂(Ab)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0177】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
R
2c〜R
4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R
2c〜R
4cの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R
2c〜R
4cの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、R
2c〜R
4cの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0178】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0180】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、
R
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。
R
2c〜R
4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、R
2c〜R
4cと同義である。
【0181】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(Ab)中の全繰り返し単位に対し、5〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜30モル%、更に好ましくは10〜25モル%である。
【0182】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0184】
樹脂(Ab)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子吸引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)等が挙げられる。
樹脂(Ab)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有する場合、その含有率は、樹脂(Ab)中の全繰り返し単位に対し、0〜20モル%が好ましく、より好ましくは3〜15モル%、更に好ましくは5〜10モル%である。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0518]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0185】
樹脂(Ab)は、更に、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位などが挙げられる。
【0186】
上述した(f1)〜(f4)で表される繰り返し単位を除く、樹脂(Ab)が有する繰り返し単位の組み合わせの例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0527]〜[0559]に記載された繰り返し単位の組み合わせが挙げられる。
【0187】
なお、樹脂(Ab)が酸発生繰り返し単位(B)を含有しない場合は、フッ素原子を含む繰り返し単位の含有率は1モル%以下が好ましく、フッ素原子は含有しないことがより好ましい。樹脂(Ab)が繰り返し単位(B)を有する場合は、繰り返し単位(B)以外の繰り返し単位であって、フッ素原子を含む繰り返し単位の含有率は1モル%以下であることが更に好ましく、フッ素原子は含有しないことが最も好ましい。
【0188】
樹脂(Ab)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000の範囲であることが好ましい。樹脂自体のアルカリに対する溶解速度、感度の点から200,000以下が好ましい。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜2.5、特に好ましくは、1.0〜2.0である。
【0189】
その中で、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1,000〜100,000の範囲であり、特に好ましくは1,000〜50,000の範囲であり、最も好ましくは1,000〜25,000の範囲である。
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、展開溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリスチレン換算値をもって定義される(以下、同様)。
【0190】
アゾ系重合開始剤を用いてラジカル重合を行うことで分散度2.0以下の樹脂(Ab)を合成することができる。さらに好ましい分散度1.0〜1.5の樹脂(Ab)は例えばリビングラジカル重合によって合成可能である。
【0191】
樹脂(Ab)は、公知のアニオン重合法またはラジカル重合法などで重合することが好ましい。
アニオン重合法は、アルカリ金属又は有機アルカリ金属を重合開始剤として、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中において、−100〜90℃の温度で行なわれる。そして、共重合においては、モノマー類を反応系に逐次添加して重合することによりブロック共重合体が、また、各モノマー類の混合物を反応系に添加して重合することによりランダム共重合体が得られる。
【0192】
上記重合開始剤のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられ、有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物およびアリール化物が使用することができ、具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1、1−ジフェニルヘキシルリチウム、1、1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等を挙げることができる。
【0193】
ラジカル重合法は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;等の公知のラジカル重合開始剤を用い、必要に応じて、1−ドデカンチオール等の公知の連鎖移動剤を併用して、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中において、50〜200℃の温度で行なわれる。この有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒を用いることができ、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0493]に記載された有機溶媒が挙げられる。
【0194】
樹脂(Ab)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
樹脂(Ab)の添加量は、総量として、本発明の組成物の全固形分に対し、通常10〜99質量%であり、好ましくは20〜99質量%であり、特に好ましくは30〜99質量%である。
【0195】
〔活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物〕
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」ともいう)を含有してもよい。
ただし、この場合、上述したように、樹脂(Ab)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を実質的に含まない。
【0196】
光酸発生剤としては、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。これらの例としては、スルホニウム塩及びヨードニウム塩等のオニウム塩、並びに、ビス(アルキルスルホニルジアゾメタン)等のジアゾジスルホン化合物が挙げられる。
光酸発生剤の好ましい例としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0563]〜[0663]に記載された光酸発生剤が挙げられる。
光酸発生剤の具体例としては、特開2013−83966号公報の段落[0665]〜[0682]に記載されたB−1〜B−183の化合物、及び、同段落[0683]〜[0686]に記載された(Y−1)〜(Y−75)の化合物が好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
光酸発生剤を含有する場合、その含有量は、本発明の組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜40質量%であり、更に好ましくは1〜30質量%である。
【0197】
〔酸の作用により分解して酸を発生する化合物〕
本発明の組成物は、更に、酸の作用により分解して酸を発生する化合物(以下、「酸増殖剤」とも表記する)を1種又は2種以上含んでいてもよい。本発明に使用できる酸増殖剤としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0690]に記載された化合物が挙げられる。
【0198】
〔塩基性化合物〕
本発明の組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物は、好ましくは、フェノールと比較して塩基性がより強い化合物である。また、この塩基性化合物は、有機塩基性化合物であることが好ましく、含窒素塩基性化合物であることが更に好ましい。
使用可能な塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0693]〜[0791]に記載された(1)〜(7)の化合物、同段落[0792]〜[0793]で引用されている文献に記載の化合物などが挙げられ、その含有量等も、同段落[0794]〜[0797]に記載されたとおりである。
【0199】
〔界面活性剤〕
本発明の組成物は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。この界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が特に好ましい。界面活性剤としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0799]〜[0801]に記載された界面活性剤が挙げられ、その含有量等も、同段落[0802]に記載されたとおりである。
【0200】
〔疎水性樹脂〕
本発明の組成物は、疎水性樹脂を含有してもよい。
疎水性樹脂はレジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂を添加することの効果として、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角の制御、アウトガスの抑制などを挙げることができる。
【0201】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH
3部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがさらに好ましい。
疎水性樹脂が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂に於ける上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0202】
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、US2012/0251948A1の段落0519に例示されたものを挙げることが出来る。
【0203】
また、上記したように、疎水性樹脂は、側鎖部分にCH
3部分構造を含むことも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH
3部分構造(以下、単に「側鎖CH
3部分構造」ともいう)には、エチル基、プロピル基等が有するCH
3部分構造を包含するものである。
一方、疎水性樹脂の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα−メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH
3部分構造に包含されないものとする。
【0204】
より具体的には、疎水性樹脂が、例えば、下記一般式(M)で表される繰り返し単位などの、炭素−炭素二重結合を有する重合性部位を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含む場合であって、R
11〜R
14がCH
3「そのもの」である場合、そのCH
3は、本発明における側鎖部分が有するCH
3部分構造には包含されない。
一方、C−C主鎖から何らかの原子を介して存在するCH
3部分構造は、本発明におけるCH
3部分構造に該当するものとする。例えば、R
11がエチル基(CH
2CH
3)である場合、本発明におけるCH
3部分構造を「1つ」有するものとする。
【0206】
上記一般式(M)中、
R
11〜R
14は、各々独立に、側鎖部分を表す。
側鎖部分のR
11〜R
14としては、水素原子、1価の有機基などが挙げられる。
R
11〜R
14についての1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
【0207】
疎水性樹脂は、側鎖部分にCH
3部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、このような繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を有していることがより好ましい。
【0208】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0210】
上記一般式(II)中、X
b1は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R
2は1つ以上のCH
3部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表す。ここで、酸に対して安定な有機基は、より具体的には、樹脂(A)において説明した“酸分解性基”を有さない有機基であることが好ましい。
【0211】
X
b1のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
X
b1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
R
2としては、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基が挙げられる。上記のシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基は、更に、置換基としてアルキル基を有していてもよい。
R
2は、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基が好ましい。
R
2としての1つ以上のCH
3部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH
3部分構造を2個以上10個以下有することが好ましく、2個以上8個以下有することがより好ましい。
一般式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0213】
一般式(II)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
以下、一般式(III)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0215】
上記一般式(III)中、X
b2は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R
3は1つ以上のCH
3部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表し、nは1から5の整数を表す。
X
b2のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、水素原子である事が好ましい。
X
b2は、水素原子であることが好ましい。
R
3は、酸に対して安定な有機基であるため、より具体的には、上記樹脂(A)において説明した“酸分解性基”を有さない有機基であることが好ましい。
【0216】
R
3としては、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基が挙げられる。
R
3としての1つ以上のCH
3部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH
3部分構造を1個以上10個以下有することが好ましく、1個以上8個以下有することがより好ましく、1個以上4個以下有することが更に好ましい。
nは1から5の整数を表し、1〜3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
【0217】
一般式(III)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0219】
一般式(III)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0220】
疎水性樹脂が、側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合であり、更に、特にフッ素原子及び珪素原子を有さない場合、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)の含有量は、疎水性樹脂の全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。含有量は、疎水性樹脂の全繰り返し単位に対して、通常、100モル%以下である。
【0221】
疎水性樹脂が、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を、疎水性樹脂の全繰り返し単位に対し、90モル%以上で含有することにより、疎水性樹脂の表面自由エネルギーが増加する。その結果として、疎水性樹脂がレジスト膜の表面に偏在しやすくなる。
【0222】
また、疎水性樹脂は、(i)フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合においても、(ii)側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合においても、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)酸基、
(y)ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基、
(z)酸の作用により分解する基
【0223】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましい酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0224】
酸基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に、直接、酸基が結合している繰り返し単位、或いは、連結基を介して樹脂の主鎖に酸基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、更には酸基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。酸基(x)を有する繰り返し単位が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。
酸基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、より好ましくは3〜35モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
酸基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、Rxは水素原子、CH
3、CF
3、又は、CH
2OHを表す。
【0227】
ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基(y)としては、ラクトン構造を有する基が特に好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位は、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接この基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、この基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、この基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂(A)の項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0228】
ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、3〜98モル%であることがより好ましく、5〜95モル%であることが更に好ましい。
【0229】
疎水性樹脂に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。疎水性樹脂に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対し、1〜80モル%が好ましく、より好ましくは10〜80モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。
【0230】
疎水性樹脂がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂の重量平均分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂に含まれる全繰り返し単位中10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
疎水性樹脂が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂の重量平均分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂に含まれる全繰り返し単位中、10〜100モル%であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましい。
【0231】
一方、特に疎水性樹脂が側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂が、フッ素原子及び珪素原子を実質的に含有しない形態も好ましく、この場合、具体的には、フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の含有量が、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが更に好ましく、理想的には0モル%、すなわち、フッ素原子及び珪素原子を含有しない。また、疎水性樹脂は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。より具体的には、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位が、疎水性樹脂の全繰り返し単位中95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、理想的には100モル%である。
【0232】
疎水性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更に好ましくは2,000〜15,000である。
また、疎水性樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
疎水性樹脂の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましい。
【0233】
疎水性樹脂は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体及びオリゴマー成分が0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%、0.05〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物及び感度等の経時変化のない組成物が得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲である。
【0234】
疎水性樹脂は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒、重合開始剤、反応条件(温度、濃度等)、及び、反応後の精製方法は、樹脂(A)で説明した内容と同様であるが、疎水性樹脂の合成においては、反応の濃度が30〜50質量%であることが好ましい。
【0235】
〔染料〕
本発明の組成物は、染料を更に含んでいてもよい。好適な染料としては、例えば、油性染料及び塩基性染料が挙げられる。具体的には、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0803]に記載された染料が挙げられる。
【0236】
〔光塩基発生剤〕
本発明の組成物は、光塩基発生剤を更に含んでいてもよい。光塩基発生剤としては、例えば、特開平4−151156号公報、同4−162040号公報、同5−197148号公報、同5−5995号公報、同6−194834号公報、同8−146608号公報、同10−83079号公報、及び欧州特許第622682号明細書に記載の化合物が挙げられる。好ましい光塩基発生剤としては、具体的には、特開2013−83966号公報の段落[0804]に記載された光塩基発生剤が挙げられる。
【0237】
〔酸化防止剤〕
本発明の組成物は、酸化防止剤を更に含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、特開2013−83966号公報の段落[0808]〜[0812]に記載された酸化防止剤を好適に使用でき、同段落[0813]に記載された量で添加できる。
【0238】
〔溶剤〕
本発明の組成物は、溶剤を更に含んでいてもよい。この溶剤としては、典型的には、有機溶剤を使用する。この有機溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を含有していてもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキルが挙げられる。
【0239】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名1−メトキシ−2アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
【0240】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0241】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル及び乳酸ブチルが挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル及び3−メトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。
【0242】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン及び α−ヒドロキシ−γブチロラクトンが挙げられる。
【0243】
環を含有していてもよいモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン及び3−メチルシクロヘプタノンが挙げられる。
【0244】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネートが挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3メチルブチル、及び酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びピルビン酸プロピルが挙げられる。
【0245】
溶剤としては、常温常圧下における沸点が130℃以上であるものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、シクロペンタノン、 γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、PGMEA、3エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル及びプロピレンカーボネートが挙げられる。
【0246】
これら溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。後者の場合、水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との混合溶剤を使用することが好ましい。
【0247】
水酸基を含んだ溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、PGME、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル及び乳酸エチル等が挙げられる。これらのうち、PGME、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル及び乳酸エチルが特に好ましい。
【0248】
水酸基を含んでいない溶剤としては、例えば、PGMEA、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、 γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、 γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン及び酢酸ブチルが挙げられる。これらのうち、PGMEA、エチルエトキシプロピオネート及び2−ヘプタノンが特に好ましい。
【0249】
水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との混合溶剤を使用する場合、これらの質量比は、好ましくは1/99〜99/1とし、より好ましくは10/90〜90/10とし、更に好ましくは20/80〜60/40とする。
【0250】
なお、水酸基を含んでいない溶剤を50質量%以上含んだ混合溶剤を用いると、特に優れた塗布均一性を達成し得る。また、溶剤は、PGMEAと他の1種以上の溶剤との混合溶剤であることが特に好ましい。
【0251】
本発明の組成物中における溶剤の含有率は、所望の膜厚等に応じて適宜調整可能であるが、一般的には組成物の全固形分濃度が0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%となるように調製される。
【0252】
[非化学増幅型レジスト膜]
本発明は、上述した本発明の組成物を用いて形成される非化学増幅型レジスト膜に関する。以下、「非化学増幅型レジスト膜」を、単に「レジスト膜」とも呼ぶ。
【0253】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した本発明の組成物を用いて非化学増幅型レジスト膜(レジスト膜)を形成する工程と、
(ii)上記レジスト膜を露光する工程と、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像してパターンを形成する工程と、を少なくとも備えるパターン形成方法である。
上記工程(iii)における現像液は、有機溶剤を含む現像液であってもよく、アルカリ現像液であってもよい。有機溶剤を含む現像液を用いて現像する場合はネガ型のパターンを形成し、アルカリ現像を用いて現像する場合はポジ型のパターンを形成する。
また、上記工程(ii)における露光が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、上記工程(iii)における現像液が、有機溶剤を含む現像液である場合には、(v)アルカリ現像液を用いて現像する工程を更に有していてもよく、一方、上記工程(iii)における現像液が、アルカリ現像液である場合には、(v)有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程を更に有していてもよい。
本発明において、有機溶剤現像工程によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975号公報の段落[0077]と同様のメカニズム)。
本発明のパターン形成方法においては、アルカリ現像工程及び有機溶剤現像工程の順序は特に限定されないが、アルカリ現像を、有機溶剤現像工程の前に行うことがより好ましい。
【0254】
レジスト膜は、上記した本発明の組成物から形成されるものであり、より具体的には、基板上に形成されることが好ましい。本発明のパターン形成方法において、非化学増幅型レジスト組成物による膜を基板上に形成する工程、膜を露光する工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
【0255】
この組成物は、例えば、精密集積回路素子又はインプリント用モールドなどの製造等に使用される基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン及びクロム蒸着された石英基板など)上に、スピナー及びコーター等を用いて塗布される。その後、これを乾燥させて、非化学増幅型レジスト膜を形成することができる。
【0256】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズ、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0257】
レジスト膜の上層には、トップコートを設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト膜上層部への塗布適性、現像液への溶解性である。トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートについては、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014−059543号公報の段落[0072]〜[0082]の記載に基づいてトップコートを形成できる。
また、上述した疎水性樹脂は、トップコート形成用途にも好適に使用できる。
後述する現像工程において、有機溶剤を含有する現像液を使用する場合は、特開2013−61648号公報に記載された塩基性化合物を含有するトップコートをレジスト膜上に形成することが好ましい。
【0258】
活性光線又は放射線としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、及び電子線が挙げられる。これら活性光線又は放射線としては、例えば250nm以下、特には220nm以下の波長を有したものがより好ましい。このような活性光線又は放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、及び電子線が挙げられる。好ましい活性光線又は放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、電子線、X線及びEUV光が挙げられる。より好ましくは、電子線、X線及びEUV光である。
【0259】
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができ、例えば、シリコン、SiN、SiO
2などの無機基板;SOG(Spin On Glass)などの塗布系無機基板;等が挙げられる。更に、必要に応じて有機反射防止膜を膜と基板の間に形成させてもよい。
【0260】
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドドキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジンなどの環状アミン類;等のアルカリ性水溶液を使用できる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が望ましい。
【0261】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0262】
本発明のパターン形成方法が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程を有する場合、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ブタン酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノールなどのアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノールなどのグリコールエーテル系溶剤;等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましい。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0263】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。5kPa以下(2kPa以下)の蒸気圧を有する具体的な例としては、特開2014−71304号公報の段落[0165]に記載された溶剤が挙げられる。
【0264】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、本発明の組成物が含みうる塩基性化合物におけるものと同様である。
【0265】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性又は非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができ、例えば、特開2014−71304号公報の段落[0166]で引用されている文献に記載の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0.0001〜2質量%、特に好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0266】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
【0267】
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm
2以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm
2以下である。流速の下限は特に無いが、0.2mL/sec/mm
2以上が好ましい。なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm
2)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などが挙げられる。
【0268】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0269】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよい。リンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤(好ましくはデカン)、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。
上記溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及び、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤が好ましく、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤がより好ましく、1価アルコールがさらに好ましく、炭素数5以上の1価アルコールが特に好ましい。
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
リンス液の蒸気圧は、20℃において、0.05〜5kPaが好ましく、0.1〜5kPaがより好ましく、0.12〜3kPaが更に好ましい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0270】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0271】
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作製してもよく、その詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報を参照されたい。
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも用いることができる。
また、上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば特開平3−270227号公報及び特開2013−164509号公報に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
【0272】
[電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイス]
本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載される。
【実施例】
【0273】
以下、本発明の態様を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0274】
〔樹脂〕
〈合成例1:樹脂(P−3)の合成〉
反応容器に、5.35gの化合物(1)と、6.61gの化合物(2)と、8.72gの化合物(3)と、1.61gの重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)と、38.40gのテトラヒドロフランを入れ、窒素ガス雰囲気下、室温で撹拌した。その後、60℃まで昇後、15時間に亘って加熱撹拌した後、これを室温まで放冷した。
上記反応溶液を、800gのヘプタン中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。150gのヘプタンを用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、15.92gの樹脂(P−3)を得た。
【0275】
【化53】
【0276】
得られた樹脂(P−3)のGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=6000、分散度はMw/Mn=1.77であった。
13C−NMRにより測定した組成比(モル比;左から順に対応)は30/30/40であった。
【0277】
合成例1と同様の操作を行ない、以下に示す樹脂(P−1)〜(P−15)、及び、樹脂(P′−1)〜(P′−3)を合成した。
【0278】
【化54】
【0279】
【化55】
【0280】
【化56】
【0281】
【化57】
【0282】
【化58】
【0283】
【化59】
【0284】
〔光酸発生剤〕
光酸発生剤としては、下記化合物(PAG−1)を用いた。
【0285】
【化60】
【0286】
〔疎水性樹脂〕
疎水性樹脂としては、下記疎水性樹脂HR−1及びHR−2の何れかを用いた。
【0287】
【化61】
【0288】
〔溶剤〕
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;沸点(b.p.)=146℃)
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;b.p.=120℃)
S−3:乳酸エチル(b.p.=145℃)
S−4:シクロヘキサノン(b.p.=157℃)
【0289】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、下記W−1〜W−4を用いた。
W−1:メガファックR08(DIC(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−2:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−3:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製;フッ素系)
W−4:PF6320(OMNOVA(株)製)(フッ素系)
【0290】
〔現像液〕
現像液としては、以下のものを用いた。
G−1:酢酸ブチル
G−2:メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)
G−3:アニソール
G−4:TMAH(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)
【0291】
〔リンス液〕
リンス液として、以下のものを用いた。
R−1:4−メチル−2−ペンタノール
R−2:1−ヘキサノール
R−3:デカン
R−4:水
【0292】
[実施例1〜15及び比較例1〜3]
〔レジスト組成物の塗液調製及び塗設〕
下表に示す組成(各成分の濃度(質量%)は全固形分濃度中の濃度を表す)を有する固形分濃度1.5質量%の塗液組成物を0.05μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト組成物溶液を得た。
実施例6の組成物には、1.0質量%の疎水性樹脂HR-1を添加した。同様に、実施例7の組成物には、1.0質量%の疎水性樹脂HR-2を添加した。
得られたレジスト組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
実施例13のレジスト膜上には、疎水性樹脂HR-1を4−メチル−2−ペンタノールに溶解させたトップコート形成用樹脂組成物(固形分濃度3.0質量%)を用いて、厚さ300Åのトップコート層を形成した。
【0293】
〔EUV露光及び現像〕
得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、X−dipole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、露光マスクを使用して、パターン露光を行った。照射後、下表に記載の有機系現像液(G−1〜G−3)をパドルして30秒間現像し、下表に記載のリンス液を用いてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、95℃で60秒間ベークを行なうことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0294】
〔レジストパターンの評価〕
得られたレジストパターンを下記の方法で、孤立ラインパターンにおける解像力及びLERについて評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0295】
〈孤立ラインパターンにおける解像力〉
線幅50nmのライン:スペース=1:1のパターンを解像するときの照射エネルギーを感度(Eop)とし、上記Eopにおける孤立ラインパターン(ライン:スペース=1:5)の限界解像力(ラインとスペースとが分離解像する最小の線幅)を求めた。そして、この値を「解像力(nm)」とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0296】
〈LER(ラインエッジラフネス)〉
上記の線幅50nmのライン:スペース=1:1のパターンを、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9260)を用いて観察した。そして、その長さ方向50μmに含まれる等間隔の30点について、エッジがあるべき基準線と実際のエッジとの間の距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。そして、この3σを「LER(nm)」とした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0297】
〔その他の事項〕
アルカリ現像液(G−4)を用いた場合は、露光マスクのパターンを反転させた露光マスクを使用して、パターン露光を行い、有機系現像液に代えて、アルカリ現像液(G−4)により現像を行い、リンス液を水(R−4)とした以外は、上記と同様にして、レジスト組成物の調製、パターン形成を行い、レジストパターンを評価した。
また、比較例1では、照射後、ホットプレートを用いて、95℃で60秒間加熱して、その後、現像した。
【0298】
【表1】
【0299】
上記表1から分かるように、実施例1〜15は、酸分解性樹脂(P′−1)と光酸発生剤(PAG−1)とを併用した「化学増幅型」である比較例1と比べて、孤立ラインパターンの解像力に優れ、また、LERも優れていた。
なお、金属塩構造を有さない樹脂を用いた比較例2及び3は、露光後現像しても、露光部又は未露光部が除去されず、パターン形成されなかった。
【0300】
なお、実施例1と実施例2とを対比すると、金属塩構造の金属種がZnである実施例1よりも、Coである実施例2の方が、効果が優れていた。
また、実施例4〜6を対比すると、金属塩構造における酸基としてリン酸基を有する実施例6よりも、スルホン酸基を有する実施例5の方がより効果が優れ、この実施例5よりも、カルボキシル基を有する実施例4の方がさらに効果が優れていた。