【実施例】
【0056】
以下、図面を参照しながら、信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施例について説明する。尚、以下では、生体音信号の一例として、呼吸音を示す呼吸音信号に着目した説明を進める。但し、生体音信号として、呼吸音信号とは異なる信号が用いられてもよい。生体音信号の他の一例としては、例えば、心音を示す心音信号や、脈動(言い換えれば、脈波)に起因した音を示す脈動音信号や、内臓器官の活動状況に起因した音(例えば、腸の動きに起因した腸音)を示す内臓音信号や、血液の流れに起因した音を示す血流音信号等が一例としてあげられる。
【0057】
(1)信号処理装置の構成
はじめに、
図1を参照しながら、本実施例の信号処理装置10の構成について説明する。
図1は、本実施例の信号処理装置10の構成を示すブロック図である。
【0058】
図1に示すように、本実施例の信号処理装置10は、信号取得部101と、信号記憶部102と、「解析手段」の一具体例である信号解析部103と、「生成手段」及び「出力手段」の一具体例である表示データ生成部104と、「表示装置」の一具体例である表示部105とを備える。
【0059】
信号取得部101は、呼吸音信号を取得する。例えば、信号取得部101は、生体の呼吸音を直接的に検出することで呼吸音信号を直接的に取得してもよい。この場合、信号取得部101は、生体に取り付けられると共に生体の呼吸音を検出する呼吸音センサを含んでいてもよい。このような呼吸音センサは、典型的にはマイク(例えば、コイル型マイクや、コンデンサ型マイクや、圧電型マイク等)である。但し、呼吸音センサが呼吸音を検出することができる限りは、呼吸音センサはどのような形式のセンサであってもよい。
【0060】
尚、
図1は、信号処理装置10が信号取得部101を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、信号取得部101を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に配置されている信号取得部101から、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、呼吸音信号を取得することが好ましい。
【0061】
信号記憶部102は、信号取得部101が取得した呼吸音信号を一時的に記憶する。このため、信号記憶部102は、メモリ又はバッファを含んでいてもよい。尚、後述するように、信号記憶部102は、信号取得部101が逐次取得する呼吸音信号のうち所定期間分の呼吸音信号を記憶することが好ましい。
【0062】
尚、
図1は、信号処理装置10が信号記憶部102を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、信号記憶部102を備えていなくともよい。
【0063】
信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して所定の解析処理を実行する。本実施例では、所定の解析処理は、呼吸音信号を、互いに区別可能な複数種類の信号成分に分離する解析処理を含んでいる。言い換えれば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、互いに区別可能な複数種類の信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいる。言い換えれば、所定の解析処理は、呼吸音信号にどのような種類の信号成分が含まれているかを解析する解析処理を含んでいる。
【0064】
具体的には、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号を、正常音に相当する信号成分と、正常音とは異なる異常音に相当する信号成分とに分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、正常音に相当する信号成分及び異常音に相当する信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
【0065】
或いは、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号を、互いに区別可能な複数種類の正常音に相当する複数種類の信号成分に分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、互いに区別可能な複数種類の正常音に相当する複数種類の信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
【0066】
或いは、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号を、互いに区別可能な複数種類の異常音に相当する複数種類の信号成分に分離する解析処理を含んでいてもよい。言い換えれば、例えば、所定の解析処理は、呼吸音信号から、互いに区別可能な複数種類の異常音に相当する複数種類の信号成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を含んでいてもよい。
【0067】
信号解析部103は、解析処理の結果(例えば、複数種類の信号成分そのものや、複数種類の信号成分の特性を特定可能な任意の情報等)を、表示データ生成部104に対して出力する。
【0068】
尚、
図1は、信号処理装置10が信号解析部103を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、信号解析部103を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に配置されている信号解析部103から、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、信号処理装置10の外部に位置する信号解析部103が実行した解析処理の結果を取得することが好ましい。
【0069】
表示データ生成部104は、信号解析部103が実行した解析処理の結果に基づいて、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性(例えば、信号強度に相当する振幅レベル等)を表示部105に表示するための表示データ(例えば、画像信号)を生成する。言い換えれば、表示データ生成部104は、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性を視覚的に特定することが可能な何らかの表示対象物を表示部105に表示するための表示データを生成する。尚、表示対象物は、呼吸音信号の特性を視覚的に特定することができる限りは、どのような表示対象物であってもよい。例えば、表示対象物は、呼吸音信号の特性を視覚的に特定するテキスト(例えば、文字や数値等)を含む表示対象物であってもよい。或いは、例えば、表示対象物は、呼吸音信号の特性を視覚的に特定する図画(例えば、グラフやチャート等)を含む表示対象物であってもよい。
【0070】
加えて、表示データ生成部104は、生成した表示データを、表示部105に対して出力する。
【0071】
尚、信号解析部103及び表示データ生成部104は、夫々、CPU(Central Processing Unit)上で論理的に実現される処理ブロックである。但し、信号解析部103及び表示データ生成部104は、夫々、半導体チップ等によって物理的に実現される処理回路であってもよい。
【0072】
表示部105は、表示データ生成部104が生成した表示データに基づく表示処理を行うディスプレイ装置である。その結果、表示部105は、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性を、当該表示部105の表示画面上に表示する。
【0073】
尚、表示部105は、マルチモニタ表示を行う表示部(つまり、複数のディスプレイ装置を含む表示部105であって、当該複数のディスプレイ装置を連携させることで単一の仮想的な表示領域を形成する表示部105)であってもよい。或いは、表示部105は、シングルモニタ表示を行う表示部105(つまり、単一のディスプレイ装置を含む表示部105)であってもよい。
【0074】
尚、
図1は、信号処理装置10が表示部105を備える例を示している。しかしながら、信号処理装置10は、表示部105を備えていなくともよい。この場合、信号処理装置10は、信号処理装置10の外部に位置する表示部105に対して、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、表示データ生成部104が生成した表示データを転送することが好ましい。
【0075】
(2)本実施例の信号処理装置10の動作
続いて、
図2から
図8を参照しながら、本実施例の信号処理装置10の動作について説明する。
図2は、本実施例の信号処理装置10の動作の流れを示すフローチャートである。
図3は、信号取得部101の生体に対する装着態様の一例を示す模式図及び呼吸音信号の波形を時間軸上で示すグラフである。
図4は、信号記憶部102が呼吸音信号を記憶する動作の一例を示す模式図である。
図5は、呼吸音の種類を示す分類チャートである。
図6は、5種類の呼吸音(肺胞呼吸音、低音性連続性ラ音(類鼾音)、高音性連続性ラ音(笛声音)、細かい断続性ラ音(捻髪音)及び粗い断続性ラ音(水泡音))に相当する5種類の信号成分の波形を時間軸上で示すグラフである。
図7は、呼吸音信号を構成する5種類の信号成分の夫々の特性の表示態様の一例を示す平面図である。
図8は、本実施例の信号処理装置10の動作の流れを示すタイミングチャートである。
【0076】
図2に示すように、まず、信号取得部101は、呼吸音信号を取得する(ステップS101)。例えば、
図3(a)に示すように、信号取得部101は、生体の体表面(
図3(a)に示す例では、左胸付近の体表面)に取り付けられてもよい。このとき、信号取得部101の装着位置は、固定されていてもよい。或いは、医療従事者が聴診する際に聴診器をあてる位置を適宜変更していることを考慮すれば、信号取得部101の装着位置は、呼吸音信号の取得の途中で適宜変更されてもよい。その結果、信号取得部101は、呼吸音信号を取得する。このとき、信号取得部101は、所定のサンプリング周波数(例えば、44100Hz)に応じて周期的に呼吸音信号を取得してもよい。つまり、信号取得部101は、呼吸音信号のサンプル値を周期的に取得してもよい。但し、信号取得部101は、非周期的に又は連続的に呼吸音信号を取得してもよい。その結果、信号取得部101は、
図3(b)に示す時間軸上の波形として特定される呼吸音信号を取得することができる。
【0077】
尚、
図3(b)に示すように、生体の呼吸が吸気(つまり、肺への空気の取り込み)と呼気(つまり、肺からの空気の吐き出し)との繰り返しであることを考慮すれば、呼吸音信号は、周期性を有する信号であると言える。呼吸音信号の1周期は、吸気区間(つまり、吸気が行われる期間)と当該吸気区間に続く呼気区間(つまり、呼気が行われる期間)とを合算した期間となる。尚、呼吸音信号の周期は、時間の経過と共に変動してもよいことは言うまでもない。
【0078】
信号取得部101による呼吸音信号の取得と並行して、信号記憶部102は、信号取得部101が取得した呼吸音信号を一時的に記憶する(ステップS102)。このとき、信号記憶部102は、後述する信号解析部103が実行する解析処理に必要なサイズの呼吸音信号を一時的に記憶することが好ましい。本実施例では、信号解析部103が実行する解析処理に必要な呼吸音信号のサイズは、「1秒」であるものとする。この場合、信号記憶部102は、最新の(言い換えれば、直近)1秒分の呼吸音信号を一時的に記憶することが好ましい。このような直近1秒分の呼吸音信号を一時的に記憶するために、信号記憶部102は、リングバッファを含んでいることが好ましい。但し、信号解析部103が実行する解析処理に必要な呼吸音信号のサイズは、1秒以外の任意の時間であってもよい。
【0079】
例えば信号取得部101が44100Hzのサンプリング周波数に応じて呼吸音信号を取得している場合には、信号記憶部102は、44100個の呼吸音信号のサンプル値を一時的に記憶する。より具体的には、
図4に示すように、信号記憶部102は、最新の時刻(t)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t)と、時刻(t−1)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t−1)と、時刻(t−2)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t−2)と、・・・、時刻(t−44099)に取得された呼吸音信号のサンプル値S(t−44099)を一時的に記憶する。
【0080】
信号取得部101による呼吸音信号の取得と並行して、信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して所定の解析処理を実行する(ステップS103)。つまり、信号解析部103は、信号記憶部102が記憶している呼吸音信号に対して、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離する解析処理を実行する。
【0081】
ここで、
図5を参照しながら、呼吸音の種類について説明する。
図5に示すように、広義の呼吸音(つまり、肺音)は、狭義の呼吸音と、異常音の一例である副雑音とに分類される。狭義の呼吸音は、正常音の一例である正常な呼吸音と、異常音の一例である異常な呼吸音とに分類される。正常な呼吸音は、肺胞呼吸音と、気管支呼吸音と、気管支肺胞呼吸音と、気管呼吸音とに分類される。異常な呼吸音は、減弱・消失に起因した呼吸音と、増強に起因した呼吸音と、呼気延長に起因した呼吸音と、気管支呼吸音化に起因した呼吸音と、気管狭窄音とに分類される。副雑音は、ラ音と、その他の音とに分類される。ラ音は、連続性ラ音と、断続性ラ音とに分類される。連続性ラ音は、低音性連続性ラ音(類鼾音)と、高音性連続性ラ音(笛声音)と、スクウォーク(吸気性の連続性ラ音)とに分類される。断続性ラ音は、細かい断続性ラ音(捻髪音)と、粗い断続性ラ音(水泡音)とに分類される。その他の音は、胸膜摩擦音と、肺血管性雑音とに分類される。
【0082】
本実施例では、信号解析部103は、呼吸音信号を、正常音の一例である肺胞呼吸音に相当する信号成分(以下、“肺胞呼吸音成分”と称する)と、異常音の一例である低音性連続性ラ音(類鼾音)に相当する信号成分(以下、“類鼾音成分”と称する)と、異常音の一例である高音性連続性ラ音(笛声音)に相当する信号成分(以下、“笛声音成分”と称する)と、異常音の一例である細かい断続性ラ音(捻髪音)に相当する信号成分(以下、“捻髪音成分”と称する)と、異常音の一例である粗い断続性ラ音(水泡音)に相当する信号成分(以下、“水泡音成分”と称する)とに分離する解析処理を行う。言い換えれば、信号解析部103は、呼吸音信号から、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分のうちの少なくとも一つを抽出する解析処理を行う。尚、
図6の1段目のグラフは、肺胞呼吸音成分の一例を示している。
図6の2段目のグラフは、類鼾音成分の一例を示している。
図6の3段目のグラフは、笛声音成分の一例を示している。
図6の4段目のグラフは、捻髪音成分の一例を示している。
図6の5段目のグラフは、水泡音成分の一例を示している。
【0083】
信号解析部103は、以下の観点から、呼吸音信号を、肺胞呼吸音成分と、類鼾音成分と、笛声音成分と、捻髪音成分と、水泡音成分とに分離してもよい。
【0084】
具体的には、肺胞呼吸音成分及び断続性ラ音に相当する信号成分(つまり、捻髪音成分及び水泡音成分)の周波数スペクトル形状が相対的に広帯域であり且つ相対的に滑らかである一方で、連続性ラ音に相当する信号成分(つまり、類鼾音成分及び笛声音成分)の周波数スペクトル形状が相対的に狭帯域であり且つ相対的に急峻であるという違いがある。従って、信号解析部103は、このような周波数スペクトル形状の違いに着目することで、呼吸音信号を、連続性ラ音に相当する信号成分と、連続性ラ音に相当する信号成分とは異なる信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分及び断続性ラ音に相当する信号成分)とに分離してもよい。
【0085】
また、類鼾音成分の周波数が相対的に低い一方で、笛声音成分の周波数が相対的に高いという違いがある。従って、信号解析部103は、このような周波数の違いに着目することで、連続性ラ音に相当する信号成分を、類鼾音成分と笛声音成分とに分離してもよい。
【0086】
また、肺胞呼吸音成分が時間的に継続する(つまり、連続する)信号成分である一方で、断続性ラ音が時間的に断続するパルス状の信号成分であるという違いがある。従って、信号解析部103は、このような時間軸上での信号成分の分布の違いに着目することで、連続性ラ音に相当する信号成分とは異なる信号成分を、肺胞呼吸音成分と断続性ラ音とに分離してもよい。
【0087】
また、水泡音成分の周波数が相対的に低い一方で、捻髪音成分の周波数が相対的に高いという違いがある。従って、信号解析部103は、このような周波数の違いに着目することで、断続性ラ音に相当する信号成分を、水泡音成分と捻髪音成分とに分離してもよい。
【0088】
尚、呼吸音信号を5種類の信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分)に分離する解析処理に関する上述の方法はあくまで一例である。従って、信号解析部103は、その他の方法で呼吸音信号を5種類の信号成分に分離する解析処理を実行してもよい。尚、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離する(或いは、呼吸音信号から特定種類の信号成分を抽出する)方法は、例えば、特表2004−531309号公報や、特開2005−66045号公報や、特表2001−505085号公報や、特表2007−508899号公報や、「肺音信号のスパース表現と断続音分離への応用、酒井・里元・喜安・宮原、長崎大学国学研究報告第41巻第76号」等に開示されている。従って、信号解析部103は、これらの文献に開示された方法を用いて、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離してもよい。
【0089】
また、信号解析部103は、呼吸音信号を上述した5種類の信号成分に分離する解析処理に加えて又は代えて、呼吸音信号を任意の複数種類の信号成分に分離する(或いは、呼吸音信号から任意の一以上の信号成分を抽出する)解析処理を実行してもよい。
【0090】
尚、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、典型的には、肺胞呼吸音信号を常に含んでいる可能性が高い。なぜならば、生体が呼吸をしている以上、その呼吸音に異常音が含まれているか否かに関わらず、正常音の一例である肺胞呼吸音に相当する信号成分が含まれているはずであるからである。一方で、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、5種類の信号成分のうちの全部を含んでいることもある。或いは、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、5種類の信号成分のうちの一部のみを含んでいることもある。或いは、信号解析部103による解析処理の対象となっている呼吸音信号は、5種類の信号成分のうちの全部を含んでいないこともある。いずれの場合であっても、信号解析部103は、呼吸音信号を上述した5種類の信号成分に分離する解析処理を実行することで、5種類の信号成分の夫々を取得することができる。例えば、信号解析部103は、解析処理を実行することで、呼吸音信号に含まれている信号成分を取得することができると共に、呼吸音信号に含まれていない信号成分を振幅レベルがゼロとなる信号成分として取得することができる。
【0091】
信号解析部103は、解析処理の結果(例えば、5種類の信号成分そのものを示す情報や、5種類の信号成分の特性を特定可能な情報等)を、表示データ生成部104に対して出力する。
【0092】
信号解析部103により実行される解析処理と並行して、表示データ生成部104は、5種類の信号成分(つまり、肺胞呼吸音成分、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分)の夫々の特性を表示部105に表示するための表示データを生成する(ステップS104)。尚、表示データは、表示部105が表示する表示対象物を示すデータである。このような表示データは、例えば、呼吸音信号の特性を視覚的に特定するテキスト(例えば、文字や数値等)及び図画(例えば、グラフやチャート等)のうちの少なくとも一方を示す画像信号(或いは、画像信号とは異なる形式を有する任意の信号)に相当するデータであってもよい。
【0093】
このとき、表示データ生成部104は、信号解析部103が実行した解析処理の結果に基づいて、表示データを生成する。表示データ生成部104は、生成した表示データを適宜表示部105に対して出力する。
【0094】
尚、以下の説明では、信号成分の特性が振幅レベル(つまり、信号強度を示す特性)である例を用いて説明を進める。但し、信号成分の特性が振幅レベルとは異なる特性(言い換えれば、信号成分の状態を特定することが可能な指標(変量))であってもよいことは言うまでもない。
【0095】
表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを同一の表示部105に表示するための表示データを生成する。言い換えれば、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを単一の表示部105に表示するための表示データを生成する。
【0096】
尚、上述したように、表示部105は、シングルモニタ表示を行う表示部105(つまり、単一のディスプレイ装置を含む表示部105)であってもよい。この場合、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の全ての振幅レベルを単一のディスプレイ装置の表示画面上に表示するための表示データを生成する。
【0097】
また、上述したように、表示部105は、マルチモニタ表示を行う表示部105(つまり、複数のディスプレイ装置を含む表示部105であって、当該複数のディスプレイ装置を連携させることで単一の仮想的な表示領域を形成する表示部105)であってもよい。この場合、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを、単一の仮想的な表示領域を形成するように連携する複数のディスプレイ装置のうちの少なくとも一つの表示画面上に表示するための表示データを生成する。つまり、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを複数のディスプレイ装置が形成する単一の仮想的な表示領域に表示するための表示データを生成する。
【0098】
加えて、表示データ生成部104は、表示部105の表示内容を見るユーザ(例えば、医師等の医療従事者)が5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを同時に見ることができる態様で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成することが好ましい。或いは、表示データ生成部104は、ユーザが5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを一度にまとめて見ることができる態様で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成することが好ましい。このため、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを互いに近接する表示位置に表示するための表示データを生成してもよい。或いは、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルが所定の規則に応じた態様で並ぶ(言い換えれば、配列する)ように表示するための表示データを生成してもよい。
【0099】
加えて、表示データ生成部104は、ユーザが5種類の信号成分の振幅レベルを信号成分毎に分離された状態で見ることができる態様で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成することが好ましい。このため、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の振幅レベルを互いに異なる表示位置に表示するための表示データを生成してもよい。
【0100】
加えて、表示データ生成部104は、ユーザが振幅レベルの大きさを認識することが可能な態様で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成することが好ましい。例えば、表示データ生成部104は、振幅レベルが大きくなるほどサイズが大きくなる図画を用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成してもよい。或いは、例えば、表示データ生成部104は、振幅レベルそのものを示すテキスト(例えば、数値や文字等)表示を用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成してもよい。
【0101】
このような表示データの生成を前提とした上で、表示データ生成部104は、例えば、
図7(a)から
図7(d)に示す形式で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成してもよい。
【0102】
例えば、
図7(a)に示すように、表示データ生成部104は、五角形のレーダーチャートを用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値及びピーク値(例えば、所定期間毎の最大値)を表示するための表示データを生成してもよい。
図7(a)に示す例では、レーダーチャートの各軸が各信号成分に対応している。また、
図7(a)に示す例では、振幅レベルが大きくなるほど振幅レベルのプロット位置が外側にシフトしている。
【0103】
或いは、
図7(b)に示すように、表示データ生成部104は、棒グラフを用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値を表示するための表示データを生成してもよい。
図7(b)に示す例では、5種類の信号成分に対応する5つの棒が横軸に沿って順に並んでいる。また、
図7(b)に示す例では、振幅レベルが大きくなるほど棒の長さが縦軸方向に沿って長くなっている。また、
図7(b)に示す例では、棒によって示される瞬時値に加えて、線によって示されるピーク値も合わせて表示されている。
【0104】
或いは、
図7(c)に示すように、表示データ生成部104は、振幅レベルが大きくなるほど半径が大きくなる円を用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値を表示するための表示データを生成してもよい。
図7(c)に示す例では、5種類の信号成分に対応する5つの円が並んでいる。
【0105】
或いは、
図7(d)に示すように、表示データ生成部104は、数値(テキスト文字)を用いて5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの瞬時値を表示するための表示データを生成してもよい。
図7(d)に示す例では、5種類の信号成分に対応する5つの数値が並んでいる。
【0106】
もちろん、表示データ生成部104は、
図7(a)から
図7(d)に示す表示形式とは異なる表示形式で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成してもよい。
【0107】
尚、表示データ生成部104は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示する際の表示形式を選択するユーザの指示に従って、当該ユーザが選択した表示形式で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示するための表示データを生成してもよい。
【0108】
表示データ生成部104による表示データの生成と並行して、表示部105は、表示データ生成部104が生成した表示データに基づく表示処理を行う(ステップS105)。その結果、表示部105は、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示する。例えば、表示部105は、
図7(a)から
図7(d)に示す形式で5種類の信号成分の夫々の振幅レベルを表示する。
【0109】
以上説明したステップS101からステップS105までの動作が、信号処理装置(10)の動作が終了するまで繰り返し行われる(ステップS106)。このとき、ステップS101からステップS105までの動作が繰り返されるに当たって、ステップS101からステップS105までの各動作は、周期的若しくは非周期的に又は連続的に行われることが好ましい。つまり、ステップS101からステップS105までの各動作は、リアルタイムに又は動的に行われることが好ましい。
【0110】
尚、ステップS101において、信号取得部101が周期的に呼吸音信号を取得している(例えば、所定のサンプリング周波数に応じて取得している)ことは上述したとおりである。但し、信号取得部101は、非周期的に若しくは連続的に呼吸音信号を取得してもよい。
【0111】
同様に、ステップS102において、信号記憶部102が周期的に呼吸音信号を記憶している(つまり、信号取得部101が呼吸音信号を周期的に取得する都度、新たに取得した呼吸音信号を記憶している)ことは上述したとおりである。但し、信号記憶部102は、信号取得部101が呼吸音信号を非周期的に又は連続的に取得する都度、新たに取得した呼吸音信号を記憶してもよい。
【0112】
ステップS103において、信号解析部103は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に解析処理を実行することが好ましい。つまり、信号解析部103の解析処理の結果は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に更新されることが好ましい。言い換えれば、信号解析部103は、リアルタイムに又は動的に解析処理を実行することが好ましい。つまり、信号解析部103の解析処理の結果は、リアルタイムに又は動的に更新されることが好ましい。
【0113】
尚、信号取得部101が周期的に若しくは非周期的に又は連続的に呼吸音信号を取得していることを考慮すれば、信号解析部103は、信号取得部101が新たな呼吸音信号を取得する都度(言い換えれば、信号記憶部102が記憶している所定期間分の呼吸音信号の内容に変化が生ずる都度)、新たな解析処理を実行してもよい。この場合であっても、信号解析部103は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に解析処理を実行していると言える。
【0114】
ステップS104において、表示データ生成部104は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に表示データを生成することが好ましい。つまり、表示データは、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に更新されることが好ましい。言い換えれば、表示データ生成部104は、リアルタイムに又は動的に表示データを生成することが好ましい。つまり、表示データは、リアルタイムに又は動的に更新されることが好ましい。
【0115】
尚、信号解析部103が周期的に若しくは非周期的に又は連続的に解析処理を実行していることを考慮すれば、表示データ生成部104は、信号解析部103が解析処理を実行する都度(言い換えれば、信号解析部103の解析結果が更新される都度)、新たな表示データを生成してもよい。この場合であっても、表示データ生成部104は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に表示データを生成していると言える。
【0116】
ステップS104において、表示データ生成部104は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に表示データを表示部105に対して出力することが好ましい。言い換えれば、表示データ生成部104は、リアルタイムに又は動的に表示データを表示部105に対して出力することが好ましい。
【0117】
ステップS105において、表示データ生成部104が周期的に若しくは非周期的に又は連続的に表示データを表示部105に対して出力していることを考慮すれば、表示部105は、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に表示処理を行っていると言える。その結果、表示部105が表示する表示対象物(例えば、
図7(a)から
図7(c)に示す画像又は
図7(d)に示す数値)もまた、周期的に若しくは非周期的に又は連続的に更新される。つまり、表示部105が表示する表示対象物の内容は、信号取得部101が取得する呼吸音信号に応じてリアルタイムに又は動的に更新される。
【0118】
ここで、
図8を参照しながら、ステップS101からステップS105における動作のタイミングの一例について説明する。
図8に示すように、時刻t1の時点で解析処理を開始する信号解析部103は、時刻t1の時点での直近の1秒分の呼吸音信号#1に対して解析処理を実行する。更に、その解析処理の結果に基づいて、表示データ生成部104が表示データを生成する。信号解析部103による解析処理及び表示データ生成部104による表示データの生成処理に、処理時間T1(例えば、0.25秒)を要するとする。その結果、時刻t1から処理時間T1が経過した時点で、時刻t1の時点での直近の1秒分の呼吸音信号#1を構成する5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの表示が開始される。
【0119】
一方で、信号解析部103による解析処理及び表示データ生成部104による表示データの生成処理が周期的に行われることが好ましいことは上述したとおりである。従って、時刻t1の時点での直近の1秒分の呼吸音信号#1に対する上述の処理に続いて、時刻t2の時点での直近の1秒分の呼吸音信号#2に対する解析処理等が行われる。時刻t2の時点での直近の1秒分の呼吸音信号#2に対する解析処理等にもまた処理時間T1を要するものとする。その結果、時刻t2から処理時間T1が経過した時点で、時刻t2の時点での直近の1秒分の呼吸音信号#2を構成する5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの表示が開始される。
【0120】
尚、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの表示の更新間隔T2は、少なくとも信号解析部103による解析処理及び表示データ生成部104による表示データの生成処理に要する処理時間T1以上に設定されることが好ましいことが、
図8に示すタイミングチャートから分かる。
図8に示す例では、5種類の信号成分の夫々の振幅レベルの表示の更新間隔T2は、処理時間T1に対して所定のマージンを追加した更新間隔T2(例えば、0.4秒)に設定されている。
【0121】
以上説明したように、本実施例の信号処理装置10は、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性を同一の表示部105に表示することができる。その結果、ユーザは、どのような種類の信号成分が呼吸音信号に含まれているかを容易に見分けることができる。例えば、ユーザは、呼吸音信号に異常音に相当する信号成分が含まれているかを容易に見分けることができる。更には、ユーザは、呼吸音信号に異常音に相当する信号成分が含まれている場合には、当該異常音に相当する信号成分の振幅レベルがどの程度のレベルであるかを容易に見分けることができる。従って、ユーザは、どのような種類の信号成分が呼吸音信号に含まれているかを見分ける(或いは、聞き分ける)ための高度なスキルを持っていなくとも、呼吸音信号に基づいて生体の病態を診断することができる。つまり、ユーザは、信号成分の種類と病態との関連性についての知識を有していれば、呼吸音信号に基づいて生体の病態を診断することができる。
【0122】
加えて、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性が同一の表示部105に表示されるがゆえに、複数種類の信号成分の夫々の特性の認識に対して、ユーザの主観やユーザのスキルの差が与える影響を小さくすることができる。つまり、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性が客観的に表示されるがゆえに、複数のユーザの間で同一の呼吸音信号に対する認識が大きく異なってしまうという事態が生じにくくなる。
【0123】
加えて、複数種類の信号成分の夫々の特性が同一の表示部105に表示されるがゆえに、複数種類の信号成分のうちの2つ以上の信号成分に起因した疾病が存在する場合であっても、ユーザの適切な診断を仰ぐことができる。つまり、信号処理装置10は、各信号成分のみに着目した自動的な診断を行うことなく、ユーザの適切な診断を補助することができる。但し、信号処理装置10は、複数種類の信号成分に着目した自動的な診断を行ってもよい。
【0124】
加えて、本実施例では、信号解析部103による解析処理や表示データ生成部104による表示データの生成及び出力が動的に行われてもよいことは上述したとおりである。従って、表示部105には、呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性が、呼吸音信号の時間的な変化(つまり、各信号成分の夫々の特性の時間的な変化)に同期して、動的に表示される。つまり、表示部105には、複数種類の信号成分の夫々の特性が、動的に更新されながら表示される。従って、ユーザは、複数種類の信号成分の夫々がどのようなタイミングでどのような特性を有しているかを容易に認識することができる。
【0125】
(3)変形例
続いて、
図9から
図15を参照しながら、変形例の信号処理装置について説明する。
【0126】
(3−1)第1変形例
はじめに、
図9を参照しながら、第1変形例の信号処理装置10aについて説明する。
図9は、第1変形例の信号処理装置10aの構成を、当該信号処理装置10aを含む信号処理システム1aの構成と共に示すブロック図である。尚、本実施例の信号処理装置10が備える構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を照射する。
【0127】
図9に示すように、第1変形例の信号処理装置10aは、信号処理システム1aの一部の構成要件として、信号処理システム1aに含まれている。第1変形例の信号処理システム1aは、信号処理装置10aに加えて、信号取得部101aと、音声出力装置11aとを備えている。
【0128】
第1変形例の信号取得部101aは、上述した信号取得部101と同様に、呼吸音信号を取得する。このため、信号取得部101aは、呼吸音を直接的に検出する呼吸音センサ1011aを備えている。
【0129】
第1変形例では、信号取得部101aが信号処理装置10aの外部に配置されているがゆえに、信号取得部101aは、取得した呼吸音信号を信号処理装置10aに対して伝送するための信号伝送部1012aを備えている。信号伝送部1012aは、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、呼吸音信号を信号処理装置10a(具体的には、信号処理装置10aが備える信号記憶部102)に対して伝送する。
【0130】
加えて、信号伝送部1012aは、呼吸音信号を、信号処理装置10aに加えて、音声出力装置11aに対して伝送する。音声出力装置11aは、呼吸音信号を音声として出力する。従って、音声出力装置11aは、スピーカ等を含んでいてもよい。
【0131】
第1変形例の信号処理装置10aは、上述した信号処理装置10と同様に、信号記憶部102と、信号解析部103と、表示データ生成部104と、表示部105とを備えている。第1変形例の信号処理装置10aは、上述した信号処理装置10と比較して、信号取得部101を備えていなくともよく且つ呼吸音特徴DB(DataBase:データベース)106aを更に備えていてもよいという点で異なっている。
【0132】
呼吸音特徴DB106aは、信号解析部103が解析処理を行う際に参照するデータベースであって、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離するために必要な各種情報を格納している。従って、信号解析部103は、呼吸音特徴DB106aを参照することで、比較的容易に、呼吸音信号を複数種類の信号成分に分離することができる。
【0133】
このような第1変形例の信号処理システム1aの一例として、診断の対象となっている生体に装着されている可搬型の信号取得部101aが、可搬型の信号処理装置10aと、ブルートゥース(登録商標)等の無線の通信回線を介して接続されている信号処理システム1aがあげられる。
【0134】
このような第1変形例の信号処理装置10aであっても、上述した本実施例の信号処理装置10が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0135】
(3−2)第2変形例
続いて、
図10から
図14を参照しながら、第2変形例の信号処理装置10bについて説明する。
図10は、第2変形例の信号処理装置10bの構成を、当該信号処理装置10bを含む信号処理システム1bの構成と共に示すブロック図である。
図11は、複数の呼吸音センサ1011aの装着態様の一例を示す平面図である。
図12は、第2変形例における表示部105による表示態様の一例を示す平面図である。
図13は、対象データ抽出部108bの動作を設定するために表示部105が表示する表示対象物(例えば、画像)の一例を示す平面図である。
図14は、アラーム判定部109bの動作を設定するために表示部105が表示する表示対象物(例えば、画像)の一例を示す平面図である。尚、本実施例の信号処理装置10又は第1変形例の信号処理システム1aが備える構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を照射する。
【0136】
図10に示すように、第2変形例の信号処理装置10bは、信号処理システム1bの一部の構成要件として、信号処理システム1bに含まれている。第2変形例の信号処理システム1bは、信号処理装置10bに加えて、信号取得部101bと、信号解析装置12bと、入力装置13bと、アラーム出力装置14bとを備えている。
【0137】
第2変形例の信号取得部101bは、第1変形例の信号取得部101aと同様に、呼吸音信号を取得する。但し、第2変形例の信号取得部101bは、第1変形例の信号取得部101aと比較して、複数の呼吸音センサ1011aを備えているという点で異なっている。複数の呼吸音センサ1011bは、例えば、
図11に示すように、生体の体表面の異なる箇所に装着される。従って、第2変形例では、信号取得部101bは、複数の呼吸音信号を取得する。
【0138】
第2変形例においても、第1変形例と同様に、信号取得部101bは、取得した呼吸音信号を信号解析装置12bに対して伝送するための信号伝送部1012aを備えている。但し、第2変形例では、信号伝送部1012aは、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、呼吸音信号を信号解析装置12b(具体的には、信号解析装置12bが備える信号記憶部102)に対して伝送する。
【0139】
第2変形例の信号解析装置12bは、上述した第1変形例の信号処理装置10aと同様に、信号記憶部102と、信号解析部103と、呼吸音特徴DB106aとを備えている。つまり、第2変形例では、解析処理を行うための構成要素(つまり、信号記憶部102、信号解析部103及び呼吸音特徴DB106a)が、信号処理装置10bの外部に配置されるという点で、第1変形例とは異なる。尚、第2変形例では、上述したように信号取得部101bが複数の呼吸音信号を取得するがゆえに、信号解析部103は、複数の呼吸音信号の夫々に対して別個独立に、上述した解析処理を行う。
【0140】
第2変形例では、信号解析装置12bが信号処理装置10bの外部に配置されているがゆえに、信号解析装置12bは、解析処理の結果を信号処理装置10bに対して伝送するための信号伝送部121bを備えている。信号伝送部121bは、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して、解析処理の結果を信号処理装置10b(具体的には、信号処理装置10bが備える解析結果記憶部107b)に対して伝送する。
【0141】
第2変形例の信号処理装置10bは、上述した本実施例の信号処理装置10と同様に、表示データ生成部104と、表示部105とを備えている。第2変形例では、上述したように信号取得部101bが複数の呼吸音信号を取得するがゆえに、表示データ生成部104は、複数の呼吸音信号の夫々を対象として、複数種類の信号成分の夫々の特性を表示するための表示データを生成する。つまり、表示データ生成部104は、複数の呼吸音信号の夫々に対応する表示データを生成する。その結果、第2変形例では、
図12に示すように、表示部105には、複数種類の信号成分の夫々の特性が、呼吸音信号毎に表示される。つまり、表示部105には、各呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性を示す表示群が、呼吸音信号の数だけ表示される。尚、
図12に示す例では、各呼吸音信号を構成する複数種類の信号成分の夫々の特性が、各呼吸音信号が取得された生体の体表面の位置に対応付けられる態様で表示されている。
【0142】
第2変形例の信号処理装置10aは、上述した本実施例の信号処理装置10と比較して、信号取得部101、信号記憶部102及び信号解析部103を備えていなくともよく、且つ、解析結果記憶部107b、対象データ抽出部108b及びアラーム判定部109bを更に備えていてもよいという点で異なっている。
【0143】
解析結果記憶部107bは、信号解析装置12bが実行した解析処理の結果を記憶する。このため、解析結果記憶部107bは、メモリ又はバッファを含んでいてもよい。
【0144】
対象データ抽出部108bは、解析結果記憶部107bが記憶している解析処理の結果から、表示データ生成部104が表示データを生成するために参照するべき対象データを抽出する。例えば、対象データ抽出部108bは、表示データ生成部104が表示データを生成するために参照するべき対象データとして、所定期間中の呼吸音信号に対する解析処理の結果を抽出してもよい。その結果、第3変形例では、表示データ生成部104は、対象データ抽出部108bが抽出した解析処理の結果に基づいて、表示データを生成してもよい。
【0145】
対象データ抽出部108bは、キーボードやマウスやタッチパネル等の入力装置13bを用いて行われるユーザの操作内容に応じて、所定期間中の呼吸音信号に対する解析処理の結果を抽出してもよい。この場合、表示部105は、ユーザの操作を受け付けるために、例えば
図13に示す表示対象物(例えば、画像)を表示してもよい。
図13に示す例では、ユーザは、シークバーやタイミングバーを動かすことで、対象データ抽出部108bが解析処理の結果を抽出するべき期間を指定してもよい。
【0146】
アラーム判定部109bは、解析処理の結果に基づいて、異常音に相当する信号成分(例えば、類鼾音成分、笛声音成分、捻髪音成分及び水泡音成分)に関するアラームを出力するか否かを判定する。例えば、アラーム判定部109bは、解析処理の結果に基づいて、異常音に相当する信号成分の振幅レベルが所定閾値以上になるか否かを判定してもよい。アラーム判定部109bは、異常音に相当する信号成分の振幅レベルが所定閾値以上になる場合に、アラームを出力すると判定してもよい。
【0147】
アラーム判定部109bは、アラームを出力すると判定した場合には、スピーカ等のアラーム出力装置14bがアラーム音を出力するように、アラーム出力装置14bを制御してもよい。或いは、アラーム判定部109bは、アラームを出力すると判定した場合には、ディスプレイ装置等のアラーム出力装置14bがアラーム画面を表示するように、アラーム出力装置14bを制御してもよい。
【0148】
アラーム判定部109がアラームを出力するか否かを判定する際の判定基準は、キーボードやマウスやタッチパネル等の入力装置13bを用いて行われるユーザの操作内容に応じて設定されてもよい。この場合、表示部105は、ユーザの操作を受け付けるために、例えば
図14に示す表示対象物(例えば、画像)を表示してもよい。
図14に示す例では、ユーザは、テキストボックスに数値を入力することで、アラーム判定部109がアラームを出力するか否かを判定する際の判定基準の一つである「所定閾値」を設定してもよい。同様に、
図14に示す例では、ユーザは、異常音に相当する信号成分に対応付けられたチェックボックスにチェックを入れることで、アラーム判定部109がアラームを出力するか否かを判定する際の判定基準の一つである「アラームを出力するべき信号成分の種類」を設定してもよい。
【0149】
このような第2変形例の信号処理システム1bの一例として、(i)手術室やICU(Intensive Care Unit:集中治療室)に収容されている生体が装着している信号取得部101bが、当該生体が横たわっているベッド脇に配置されている信号解析装置12bと、有線の通信回線又は信号線を介して接続されていると共に、(ii)信号解析装置12bが、所望のソフトウェアを実行しているパソコン等によって実現される信号処理装置10bと有線の通信回線又は信号線を介して接続されている信号処理システム1bがあげられる。
【0150】
このような第2変形例の信号処理装置10bであっても、上述した本実施例の信号処理装置10が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。加えて、信号処理装置10bが信号解析装置12bを備えていなくともよいがゆえに、信号処理装置10bの負荷を低減できる。その結果、信号処理装置10bの低コスト化や小型化が実現される。
【0151】
(3−3)第3変形例
続いて、
図15を参照しながら、第3変形例の信号処理装置10cについて説明する。
図15は、第3変形例の信号処理装置10cの構成を、当該信号処理装置10cを含む信号処理システム1cの構成と共に示すブロック図である。尚、本実施例の信号処理装置10、第1変形例の信号処理システム1a又は第2変形例の信号処理システム1bが備える構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を照射する。
【0152】
図15に示すように、第3変形例の信号処理装置10cは、信号処理システム1cの一部の構成要件として、信号処理システム1cに含まれている。第3変形例の信号処理システム1cは、信号処理装置10cに加えて、信号取得部101aと、信号解析装置12bと、音声出力装置11aとを備えている。
【0153】
第3変形例の信号取得部101aは、上述した第1変形例の信号取得部101aと同一である。但し、第3変形例では、信号取得部101aは、有線若しくは無線の通信回線又は有線の信号線を介して呼吸音信号を信号処理装置10c(具体的には、信号処理装置10cが備える転送用バッファ110c)に対して伝送する。
【0154】
第3変形例の信号解析装置12bは、上述した第2変形例の信号解析装置12bと同一である。
【0155】
第3変形例の信号処理装置10cは、上述した第2変形例の信号処理装置10bと同様に、解析結果記憶部107bと、表示データ生成部104と、表示部105とを備えている。第3変形例の信号処理装置10cは更に、転送用バッファ110c及び音同期調整部110cを更に備えていてもよい。
【0156】
転送用バッファ110cは、信号取得部101aから伝送される呼吸音信号を一時的に記憶すると共に、記憶している呼吸音信号を信号解析装置12bに対して伝送する。このため、転送用バッファ110cは、メモリ又はバッファを含んでいてもよい。
【0157】
音同期調整部111cは、複数種類の信号成分の夫々の特性が表示部105に表示される時刻と呼吸音信号が音声出力部11aから出力される時刻とが同期するように、信号取得部101aが備える信号伝送部1012aが呼吸音信号を音声出力装置11aに対して出力するタイミングを調整する。その結果、信号処理装置10cが信号解析装置12bに対して呼吸音信号を伝送してから信号解析装置12bが信号処理装置10cに対して解析処理の結果を伝送するまでの間のタイムラグが相対的に大きい場合であっても、表示部105が表示する表示対象物の内容と音声出力部11aの出力音声とに大きなズレが生じてしまうことは殆ど又は全くなくなる。
【0158】
このような第3変形例の信号処理システム1cの一例として、(i)診断の対象となっている生体に装着されている可搬型の信号取得部101aが、可搬型の信号処理装置10cと、ブルートゥース等の無線の通信回線を介して接続されていると共に、(ii)信号処理装置10cが、外部サーバとして構築される信号解析装置12bとインターネット等の通信回線を介して接続されている信号処理システム1cがあげられる。
【0159】
このような第3変形例の信号処理装置10cであっても、上述した本実施例の信号処理装置10が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。加えて、信号処理装置10cが信号解析装置12bを備えていなくともよいがゆえに、信号処理装置10cの負荷を低減できる。その結果、信号処理装置10cの低コスト化や小型化が実現される。
【0160】
尚、上述した本実施例で採用した構成要素、上述した第1変形例で採用した構成要素、上述した第2変形例で採用した構成要素及び上述した第3変形例で採用した構成要素のうちの少なくとも一部が適宜組み合わせられてもよい。
【0161】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号処理装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術思想に含まれる。