(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434515
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】放射システム及びリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
H05G 2/00 20060101AFI20181126BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
H05G2/00 K
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-537188(P2016-537188)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公表番号】特表2016-530686(P2016-530686A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2014065905
(87)【国際公開番号】WO2015028211
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】61/870,128
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ノールドマン,オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ユーリングズ,マーカス
【審査官】
原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−020926(JP,A)
【文献】
特表昭61−503066(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102010005774(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 2/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料液滴流を液滴路に沿ってプラズマ形成位置に向けて誘導するノズルと、
ガウス強度分布を有し、所定の波長を有し、かつ、所定の軌跡に沿って伝播するガウス放射ビームを受け、前記プラズマ形成位置で燃料液滴に前記放射ビームを集束させる、放射源と、
少なくとも2つの位相板を備える位相板構造であって、第1ゾーン及び第2ゾーンを有し、前記ゾーンは、前記第1ゾーンを通過する前記所定の波長を有する放射及び前記第2ゾーンを通過する前記所定の波長を有する放射が、異なる光路長を有するそれぞれの光路に沿って伝播するように配置される、位相板構造と、を備え、
前記第1ゾーンを通過する前記放射及び前記第2ゾーンを通過する前記放射が前記プラズマ形成位置で前記燃料液滴のうちの1つに衝突する時に、前記第1ゾーンを通過する前記放射と前記第2ゾーンを通過する前記放射との間の前記光路長の差が前記所定の波長の半分の奇数倍であり、
前記少なくとも2つの位相板のうちの少なくとも2つは、少なくとも第1領域及び第2領域を備え、前記第1領域を通過する前記所定の波長を有する放射及び前記第2領域を通過する前記所定の波長を有する放射は、それぞれの光路に沿って伝播し、前記第1領域を通過する前記放射と前記第2領域を通過する前記放射との間の前記光路長の差は、前記位相板に対して下流の前記放射ビームの前記軌跡上の位置で前記所定の波長の半分の奇数倍であり、
前記少なくとも2つの位相板は、前記第1ゾーンのサイズ及び/若しくは位置、並びに/又は前記第2ゾーンのサイズ及び/若しくは位置が調整可能であるように、前記放射ビームに対して直交する方向に互いに対して移動可能である、
放射システム。
【請求項2】
前記第1ゾーンを通過する前記放射及び前記第2ゾーンを通過する前記放射は、前記ガウス放射ビームの異なる部分である、請求項1に記載の放射システム。
【請求項3】
前記第1ゾーンを通過する前記放射は、前記強度分布の少なくとも頂部を含む、請求項2に記載の放射システム。
【請求項4】
前記第2ゾーンを通過する前記放射は、前記強度分布の頂部から離れて位置する、請求項2又は3に記載の放射システム。
【請求項5】
前記所定の波長は9μm〜11μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射システム。
【請求項6】
前記位相板構造を通過後の前記放射ビームの強度プロファイル及び波面に関するデータを提供するフォーカスメトロロジユニットと、
前記データに基づいて前記プラズマ形成位置でのビームプロファイルを計算するデータ処理システムと、
前記ビームプロファイルに基づいて前記少なくとも2つの位相板を位置決めするアクチュエータシステムと、
をさらに備える
請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射システム。
【請求項7】
前記放射システムは極端紫外線放射を生成するものであり、CO2レーザ源又はイットリウム−アルミニウム−ガーネットレーザ源などのレーザ源をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射システム。
【請求項8】
前記プラズマ形成位置で前記燃料液滴に衝突するプレパルスと、前記プレパルスが前記燃料液滴に衝突した後の、前記プラズマ形成位置で前記燃料液滴に衝突する後続の主パルスと、を提供して極端紫外線放射生成プラズマを生成する、請求項7に記載の放射システム。
【請求項9】
前記放射システムは、使用中、前記レーザ源が前記プレパルス及び前記後続の主パルスを生成するように構成される、請求項8に記載の放射システム。
【請求項10】
前記放射システムは、使用中、前記レーザ源が前記プレパルスを生成するように構成され、前記放射システムはさらなるレーザ源を備え、前記放射システムは、使用中、前記さらなるレーザ源が前記主パルスを生成するように構成される、請求項8に記載の放射システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射システムを備えるリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、2013年8月26日に出願された米国仮出願第61/870,128号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は放射源及びリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、又は1つ以上のダイを含む)に転写可能である。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
【0004】
[0004] リソグラフィは、IC並びに他のデバイス及び/又は構造の製造における重要なステップの1つとして広く認識されている。しかしながら、リソグラフィを使用して作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれ、リソグラフィは、小型IC若しくは他のデバイス及び/又は構造の製造を可能にするためのより重要な要因になってきている。
【0005】
[0005] パターン印刷の限界の理論的に推定値は、式(1)に示す解像度についてのレイリー基準によって得られる。
【数1】
ここで、λは、使用される放射の波長であり、NAは、パターンを印刷するために使用される投影システムの開口数であり、k
1は、レイリー定数とも呼ばれるプロセス依存調整係数であり、CDは、印刷されたフィーチャのフィーチャサイズ(又はクリティカルディメンジョン)である。式(1)から、フィーチャの最小印刷可能サイズは、露光波長λを短くすること、開口数NAを大きくすること、あるいはk
1の値を小さくすること、の3つの方法によって縮小することができると言える。
【0006】
[0006] 露光波長を短くするため、ひいては最小印刷可能サイズを縮小するために、極端紫外線(EUV)放射源を使用することが提案されている。EUV放射は、5〜20nmの範囲内、例えば、13〜14nmの範囲内、例えば、6.7nmや6.8nmなどの5〜10nmの範囲内の波長を有する電磁放射である。考えられる放射源としては、例えば、レーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源、又は電子蓄積リングによって提供されるシンクロトロン放射に基づく放射源が含まれる。
【0007】
[0007] EUV放射は、プラズマを使用して生成することができる。EUV放射を生成する放射システムは、燃料を励起してプラズマを供給するレーザ源と、プラズマを収容するソースコレクタモジュールとを含むことができる。プラズマは、例えば、レーザビームを適切な材料(例えば、スズ)の液滴、適切なガス流又は蒸気流(Xeガス、Li蒸気など)などの燃料に誘導することによって生成することができる。結果として得られるプラズマは、放射コレクタを使用して集光される出力放射、例えば、EUV放射を放出する。放射コレクタは、ミラー垂直入射放射コレクタとすることができ、ミラー垂直入射放射コレクタは、放射を受け、その放射をビームに集束させる。ソースコレクタモジュールは、真空環境を提供してプラズマを支持するように配置された閉鎖構造又はチャンバを含むことができる。そのような放射システムは、通常、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれる。
【0008】
[0008] EUV放射を生成する別の公知の方法は、デュアルレーザパルシング(DLP)として知られている。DLP方法において、例えば、ネオジウムがドープされたイットリウム−アルミニウム−ガーネット(Nd:YAG)レーザによって液滴を予熱することで液滴(例えば、スズ液滴)が蒸気及び小さい粒子に分解され、それらは次にCO
2レーザによって非常に高い温度まで加熱される。
【0009】
[0009] LPP法及びDLP法などの公知の方法において、液滴流が生成される。液滴は、連続流又はパルスとして生成されることができる。
【0010】
[0010] 例えば、特にLPP法に関して使用される1つの公知の方法において、加熱した容器を、フィルタ及びピエゾアクチュエータを介して、この容器から毛細管まで進む溶融スズで満たす。ピエゾアクチュエータによって速度が調整される、連続するジェットは、毛細管の端部から出る。飛行中、このジェットは小さい液滴に分解され、調整された速度に起因して、これらのより小さい液滴は、より離れて間隔をおいた、まとまった、より大きい液滴になる。
【0011】
[0011] 液滴を予熱して蒸気及び小さい粒子に分解するレーザビームは、このレーザビームが予熱する液滴に対してわずかにずれることがある。そのようなわずかなずれは、CO
2レーザが蒸気及び小さい粒子を非常に高い温度まで加熱する時にさらなるずれを引き起こす可能性がある。そのようなさらなるずれは、結果として得られるプラズマによって放出されたEUV放射の量に対して、悪影響を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【0012】
[0012] 本発明の一態様によれば、燃料液滴流を液滴路に沿ってプラズマ形成位置に向けて誘導するように構成されたノズルを含む放射源が提供される。放射源は、ガウス強度分布を有し、所定の波長を有し、かつ、所定の軌跡に沿って伝播するガウス放射ビームを受けるように構成される。放射源は、放射ビームをプラズマ形成位置において燃料液滴に集束させるようにさらに構成される。放射源は、1つ以上の位相板を備える位相板構造を含む。位相板構造は第1ゾーン及び第2ゾーンを有する。これらのゾーンは、第1ゾーンを通過する所定の波長を有する放射及び第2ゾーンを通過する所定の波長を有する放射が、異なる光路長を有するそれぞれの光路に沿って伝播するように配置される。第1ゾーンを通過する放射及び第2ゾーンを通過する放射がプラズマ形成位置において燃料液滴のうちの1つに衝突する時に、第1ゾーンを通過する放射と第2ゾーンを通過する放射との間の光路長の差が所定の波長の半分の奇数倍である。
【0013】
[0013] この態様の効果は、プラズマ形成位置において、放射ビームのプロファイルがより平坦に、かつ、より広くなるようにこのプロファイルを調整することが可能となることである。
【0014】
[0014] 液滴に対する放射ビームの位置合わせ要件の許容値を高めることによって、わずかなずれが、放出されるEUV放射の量に対して悪影響を及ぼすという問題を解決することができる。
【0015】
[0015] 第1ゾーンを通過する放射及び第2ゾーンを通過する放射は、ガウス放射ビームの異なる部分であり得る。第1ゾーンを通過する放射は、強度分布の少なくとも頂部を含み得る。第2ゾーンを通過する放射は、強度分布の頂部から離れて位置してよく、これによってガウス分布の曲線の端部の少なくとも一部を強度分布の頂部に対して逆位相にすることが可能となり得る。
【0016】
[0016] 本発明の一態様によれば、位相板構造は2つの位相板を含み、位相板のうちの少なくとも1つは、少なくとも第1領域及び第2領域を含み、第1領域を通過する所定の波長を有する放射及び第2領域を通過する所定の波長を有する放射は、それぞれの光路に沿って伝播し、第1領域を通過する放射と第2領域を通過する放射との間の光路長の差は、位相板に対して下流の放射ビームの軌跡上の位置において所定の波長の半分の奇数倍である。
【0017】
[0017] 本発明の一態様によれば、位相板構造は2つの位相板を含み、位相板のうちの少なくとも2つは、少なくとも第1領域及び第2領域を含み、第1領域を通過する所定の波長を有する放射及び第2領域を通過する所定の波長を有する放射は、それぞれの光路に沿って伝播し、第1領域を通過する放射と第2領域を通過する放射との間の光路長の差は、位相板に対して下流の放射ビームの軌跡上の位置において所定の波長の半分の奇数倍である。
【0018】
[0018] 1つ以上の位相板はZnSe及び/又はZnSから形成され得る。
【0019】
[0019] さらなる特徴及び利点、並びに、さまざまな実施形態の構造及び動作を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。なお本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されない。そのような実施形態は例示のためにのみ本明細書で示される。本明細書の教示に基づいて、追加の実施形態が当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[0020] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において、同じ参照符号は対応する部分又は機能的に同様な部分を示す。
【0021】
【
図1】[0021] 本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示す。
【
図2】[0022] 法線入射ミラーを有するソースコレクタモジュールを含む、
図1のリソグラフィ装置をより詳細に示す。
【
図3】[0023]
図2に示すソースコレクタモジュールのビームデリバリシステムを概略的に示す。
【
図4】[0024]
図4のビームデリバリシステムの位相板構造を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0025] 明細書中の「一つの実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」等への言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得ることを示すが、必ずしもすべての実施形態がその特定の特徴、構造、又は特性を含んでいなくてもよい。また、かかる表現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性がある実施形態に関連して説明される場合、かかる特徴、構造、又は特性を他の実施形態との関連においてもたらすことは、それが明示的に説明されているか否かにかかわらず、当業者の知識内のことであると理解される。
【0023】
[0026]
図1は、一実施形態に係るリソグラフィ装置100を概略的に示している。このリソグラフィ装置はEUV放射源を含む。リソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク又はレチクル)MAを支持するように構築され、かつ、パターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、基板W(例えば、レジストコートウェーハ)を保持するように構築され、かつ、基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、反射投影システム)PSと、を備える。
【0024】
[0027] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し又は制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0025】
[0028] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計及び、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定又は可動式にすることができるフレーム又はテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0026】
[0029] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定機能層に対応し得る。
【0027】
[0030] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフト、及びハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、並びに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0028】
[0031] 投影システムは、照明システムと同様、使われている露光放射にとって、若しくは、真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又は他のタイプの光学コンポーネント、若しくは、それらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光学コンポーネントを含むことができる。EUV放射では、他のガスが放射を吸収し過ぎるおそれがあるため、真空を使用することが望ましい場合がある。従って、真空壁及び真空ポンプを使用して、ビームパス全体に真空環境を提供してもよい。
【0029】
[0032] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)である。
【0030】
[0033] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」マシンにおいては、追加のテーブルを並行して使うことができ、又は、予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0031】
[0034]
図1を参照すると、イルミネータILは、ソースコレクタモジュールSOから極端紫外線(EUV)放射ビームを受ける。EUV放射を生成する方法としては、材料を、例えば、キセノン、リチウム又はスズなどの少なくとも1つの元素を有し、EUV範囲内の1つ以上の輝線を有するプラズマ状態へと変換することが含まれるが、必ずしもこれに限定されない。そのような方法のうちの1つであり、しばしばレーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれる方法では、所望の輝線を放出する元素を有する材料の液滴などの燃料を、レーザビームで照射することにより所望のプラズマを生成することができる。ソースコレクタモジュールSOは、燃料を励起するレーザビームを提供するために、レーザ(
図1に示していない)を含むEUV放射源の一部であり得る。結果として生じたプラズマは、EUV放射などの出力放射を放出し、この出力放射は、ソースコレクタモジュールSO内に配置される放射コレクタを使用して集光される。
【0032】
[0035] 例えば、CO
2レーザを使用して燃料励起のためのレーザビームを提供する場合、レーザ及びソースコレクタモジュールは、別個の構成要素とすることができる。そのような場合には、放射ビームは、レーザからソースコレクタモジュールへ、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送られる。レーザ及び燃料供給源は、EUV放射源を構成するとみなすことができる。
【0033】
[0036] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(通常、それぞれσ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセットフィールド(facetted field)及び瞳ミラーデバイスなどのさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性及び強度分布をもたせることができる。
【0034】
[0037] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射された後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPW及び(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は静電容量センサを使用する)位置センシングシステムPS2を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPM及び別の位置センシングシステムPS1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使って、位置合わせされてもよい。
【0035】
[0038] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用することができる。
【0036】
[0039] 1.ステップモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、X及び/又はY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。
【0037】
[0040] 2.スキャンモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率及び像反転特性によって決めることができる。
【0038】
[0041] 3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、又はスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、又は、スキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0039】
[0042] 上述の使用モードの組合せ及び/又はバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0040】
[0043]
図2は、ソースコレクタモジュールSO、照明システムIL及び投影システムPSを含むリソグラフィ装置100をより詳細に示している。ソースコレクタモジュールSOは、ソースコレクタモジュールの閉鎖構造220内に真空環境を維持することができるように構築及び配置されている。
【0041】
[0044] レーザ源LAが、液滴流を経路に沿ってプラズマ形成位置211に向けて誘導するように構成されたノズルを有する燃料液滴流ジェネレータ200から供給されるキセノン(Xe)、スズ(Sn)、又はリチウム(Li)などの燃料内に、レーザビーム205を介してレーザエネルギーを堆積させるように配置される。これによって、数十電子ボルト(eV)の電子温度を有するプラズマ形成位置211において高電離プラズマ210が作り出される。イオンの脱励起及び再結合中に生成されたエネルギー放射は、プラズマから放出され、近法線入射放射コレクタCOによって集光及び集束される。レーザシステムLA及び液滴流ジェネレータ200はともに、EUV放射源を構成すると考えられ得る。EUV放射源は、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれることがある。
【0042】
[0045] 放射コレクタCOによって反射された放射は仮想放射源点IFに集束する。仮想放射源点IFは、通常、中間焦点と呼ばれ、ソースコレクタモジュールSOは、中間焦点IFが閉鎖構造220の開口部221に、又は、この開口部221付近に位置するように配置される。仮想放射源点IFは放射放出プラズマ210の像である。
【0043】
[0046] 続いて、放射は照明システムILを横切る。照明システムILは、パターニングデバイスMAにおいて放射ビーム21に所望の角度分布を提供し、かつ、パターニングデバイスMAにおいて放射強度に所望の均一性を提供するように配置されたファセットフィールドミラーデバイス22及びファセット瞳ミラーデバイス24を含み得る。サポート構造MTに保持されたパターニングデバイスMAにおいて放射ビーム21が反射されると、パターン付きビーム26が形成され、このパターン付きビーム26は、反射要素28、30を介して、ウェーハステージ又は基板テーブルWTに保持された基板W上に投影システムPSにより結像される。
【0044】
[0047] レーザシステムLAは、燃料を予熱するために使用され得る。このことは
図3に示されている。
図3は、レーザシステムLAを概略的に示している。レーザ源LAは、パルス形の放射ビーム303a、303bを生成するように構築及び配置された2つのレーザ源301a、301bを備える。主パルスレーザ源301aは、10.59μmの波長を有する放射を生成するように構成され、プレパルスレーザ源301bは、10.23μmの波長を有する放射を生成するように構成され得る。ミラー302a及びビームスプリッタ302bは、
図3に示すように10.23μmの波長を有する放射を反射する。
【0045】
[0048]
図3の実施形態は、使用中、レーザ源301bが最初に作動してパルスを生成し、例えば1μs後に、レーザ源301aが作動してパルスを生成するように構成される。
【0046】
[0049] レーザシステムLAは、ビームデリバリシステム305を備える。ビームデリバリシステム305は、リフレクタ307、309及びビームスプリッタ311、313、315を含む。リフレクタ307、309及びビームスプリッタ311、313、315は、放射ビームが所定の主軌跡317及び所定のプレパルス軌跡319に沿って伝播するように構成される。ビームスプリッタ311は、約10.59μmの波長を有する放射を反射し、かつ、約10.23μmの波長を有する放射を透過させるように構成される。こうして、レーザ源301aによって生成されたパルスは軌跡317に沿って伝播し、レーザ源301bによって生成されたパルスは軌跡319に沿って伝播する。軌跡317、319の両方は、フォーカスユニット320を通り、このフォーカスユニット320は、放射ビームをプラズマ生成位置211に集束させて液滴322のうちの1つに衝突させる。
【0047】
[0050]
図3のビームデリバリシステム305は、位相板構造321を含み、この位相板構造321は
図4に詳細に示されている。位相板構造321は、第1位相板323及び第2位相板325を含む。位相板323、325の各々は、第1領域327、329及び第2領域331、333を含む。位相板323、325は、所定のプレパルス軌跡319に沿って伝播するレーザビーム303の一部が、第1位相板323及び第2位相板325の両方を通って伝播するように位置決め及び方向付けされる。
【0048】
[0051] 位相板323、325の各々は、第1領域327、329を通過する放射ビーム303からの放射及び第2領域331、333を通過する放射ビーム303からの放射が光路長の差を有するように構築及び配置される。この差は、放射ビーム303の波長の半分の奇数倍であり得る。そのような波長は、プレパルスレーザ源301bの放射の波長、この実施形態では約10.23μmの波長であり得る。
【0049】
[0052]
図4において、放射ビーム303の断面335が示されている。放射ビームの一部が第1ゾーン337を通過し、放射ビームの別の部分が第2ゾーン339を通過する。これによって、放射ビーム303の放射が位相板構造321に対して上流で同位相であった場合に、第1ゾーン337を透過した放射を、第2ゾーン339を透過した放射に対して逆位相にする位相シフトがもたらされる、ということが当業者には容易に理解されるであろう。第1ゾーン337のサイズは、第1位相板323及び第2位相板325の位置によって決まり、これらの位相板の位置の一方又は両方は、
図3に示すアクチュエータシステム341によって決まる。
【0050】
[0053]
図3に戻ると、最終フォーカスメトロロジユニット343が放射ビーム303の強度プロファイル及び波面に関するデータ345を提供する。データ処理システム347が、フォーカスユニット320及びビームスプリッタ313、315の組合せの焦点付近のビームプロファイルを計算する。これは、放射ビームが位相構造321を通過した場合であり得る。データ処理システム347は、軌跡319に沿って通る放射ビームの一部に対して位相板323、325を位置決めするアクチュエータシステム341を動作させる。
【0051】
[0054] 位相板323、325の位置は、プレパルス軌跡319に沿って伝播したプラズマ形成位置211でのビームの断面がガウス形ではなく、より平坦なプロファイルを有するように動作する。
【0052】
[0055] 動作中、プレパルスレーザ源302bは最初にパルスを生成する。このパルスは、軌跡319に沿って位相板構造321を通って伝播する。これによって、パルスの波面が上述の通りに平坦になる。パルスは、パンケーキ形のクラウドに気化する液滴322に照射される。次に、主パルスレーザ源302aが作動され、軌跡317に沿って伝播するパルスを生成し、クラウドに衝突してEUV放出プラズマを生成する。
【0053】
[0056] 本発明から逸脱せずに多くの変形及び修正が可能であることを理解されたい。CO
2レーザであり得る上述のプレパルスレーザ源の代わりに、例えば約1.064μmの波長を有する放射を生成するネオジウムがドープされたイットリウム−アルミニウム−ガーネット(Nd:YAG)レーザが使用され得る。
【0054】
[0057] 一般に、照明システムIL及び投影システムPS内には、図示されるよりも多い要素が存在し得る。さらに、図示されるよりも多いミラーが存在してもよく、例えば、
図2に示されるよりも1〜6個多い追加の反射要素が投影システムPS内に存在してもよい。注目に値するソースコレクタモジュールSOの1つの特徴は、レーザ源に対して角度をつけることであり、これは、燃料液滴がコレクタCOに衝突することを回避するために、レーザ源LAに供給された燃料液滴流が実質的に水平である必要がある、ということを意味する。
【0055】
[0058] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターン及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド、LED、太陽電池、フォトニックデバイス等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」又は「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」又は「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、及び/又はインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツール及びその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0056】
[0059] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、及び静電型光学コンポーネントを含む様々な種類の光学コンポーネントのいずれか1つ又はこれらの組合せを指すことができる。
【0057】
[0060] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。従って、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。