特許第6434985号(P6434985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434985
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】レーザ装置及び極端紫外光生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20181126BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H01S5/022
   H01S5/062
【請求項の数】17
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2016-556065(P2016-556065)
(86)(22)【出願日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2014078522
(87)【国際公開番号】WO2016067343
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】野極 誠二
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−065804(JP,A)
【文献】 特開2013−093308(JP,A)
【文献】 特開2012−182434(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161760(WO,A1)
【文献】 特開2010−226096(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0264089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−5/50
H01L 21/027
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された繰り返し周波数で極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置と共に用いられるレーザ装置であって、
トリガ信号が入力されるとレーザ光を出力する半導体レーザと、
前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を通過させるか否かを切り替える光スイッチと、
前記繰り返し周波数に同期して前記半導体レーザに出力する前記トリガ信号の出力タイミングを前記繰り返し周波数に基づいて変更し、
前記レーザ光が前記繰り返し周波数で通過するように前記光スイッチを制御する
制御部と、
を備え
前記制御部は、
前記トリガ信号の出力タイミングから前記半導体レーザから前記レーザ光が出力されるタイミングまでのタイムラグと、前記繰り返し周波数との関係に関する計測結果を予め記憶し、前記計測結果を参照して前記トリガ信号の出力タイミングを計算する記憶演算部を含み、
前記記憶演算部によって計算された出力タイミングを前記トリガ信号の変更後の出力タイミングとして決定する
レーザ装置。
【請求項2】
前記半導体レーザから出力された前記レーザ光を増幅し、前記光スイッチを含む再生増幅器
を備える請求項に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記再生増幅器はスラブ型増幅器を含む
請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記記憶演算部は、
前記計測結果に基づいて、前記タイムラグと前記繰り返し周波数との相関式を導出し、前記相関式に基づいて前記トリガ信号の出力タイミングを計算する
請求項に記載のレ一ザ装置。
【請求項5】
前記相関式は、線形近似関数、多項式近似関数または高次近似関数で記述されている
請求項4に記載のレ一ザ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記半導体レーザの負荷状態の変動に応じて前記トリガ信号の変更後の出力タイミングを決定し、
前記半導体レーザは、
前記制御部によって決定された出力タイミングに基づいて、前記繰り返し周波数に同期したレーザ光を出力する
請求項に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記半導体レーザは、分布帰還型の量子カスケードレーザである
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記半導体レーザは、COガスを増幅媒質とするレーザ増幅器で増幅可能な波長領域に含まれる波長のパルスレーザ光をそれぞれ出力する複数の半導体レーザである
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記複数の半導体レーザは、互いに異なる波長のパルスレーザ光を出力する
請求項8に記載のレーザ装置。
【請求項10】
予め設定された繰り返し周波数で極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置と共に用いられるレーザ装置であって、
トリガ信号が入力されるとレーザ光を出力する半導体レーザと、
前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を通過させるか否かを切リ替える光スイッチと、
前記繰り返し周波数に同期して前記半導体レーザに出力する前記トリガ信号のパルス幅を前記繰り返し周波数に基づいて変更し、
前記レーザ光が前記繰り返し周波数で通過するように前記光スイッチを制御する
制御部と、
を備え
前記制御部は、
前記トリガ信号の繰り返し周波数とパルス幅との関係を示すテーブルを予め記憶し、前記テーブルを参照して前記トリガ信号のパルス幅を特定する記憶演算部を含み、
前記記憶演算部によって特定されたパルス幅を前記トリガ信号の変更後のパルス幅として決定する
レ一ザ装置。
【請求項11】
前記半導体レーザから出力された前記レーザ光を増幅し、前記光スイッチを含む再生増幅器
を備える請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記再生増幅器はスラブ型増幅器を含む
請求項11に記載のレーザ装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記トリガ信号のデューティ比が変動しないように前記トリガ信号の変更後のパルス幅を決定する
請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記トリガ信号のパルス幅を変更することによって前記半導体レーザの負荷状態の変動を抑制し、
前記半導体レーザは、
前記負荷状態の変動が抑制されることによって前記繰り返し周波数に同期したレーザ光を出力する
請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項15】
前記半導体レーザは、分布帰還型の量子カスケードレーザである
請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項16】
前記半導体レーザは、COガスを増幅媒質とするレーザ増幅器で増幅可能な波長領域に含まれる波長のパルスレーザ光をそれぞれ出力する複数の半導体レーザである
請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項17】
前記複数の半導体レーザは、互いに異なる波長のパルスレーザ光を出力する
請求項16に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置及び極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、例えば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を生成する極端紫外(EUV)光生成装置と縮小投影反射光学系(Reduced Projection Reflective Optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma:レーザ励起プラズマ)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0148674号
【特許文献2】米国特許第8311066号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0193710号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0032735号
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るレーザ装置は、予め設定された繰り返し周波数で極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置と共に用いられるレーザ装置であって、トリガ信号が入力されるとレーザ光を出力する半導体レーザと、前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を通過させるか否かを切り替える光スイッチと、前記トリガ信号を前記繰り返し周波数の整数倍の周波数で前記半導体レーザに出力し、前記レーザ光が前記繰り返し周波数で通過するように前記光スイッチを制御する制御部と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の1つの観点に係るレーザ装置は、予め設定された繰り返し周波数で極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置と共に用いられるレーザ装置であって、トリガ信号が入力されるとレーザ光を出力する半導体レーザと、前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を通過させるか否かを切り替える光スイッチと、前記繰り返し周波数に同期して前記半導体レーザに出力する前記トリガ信号の出力タイミングを前記繰り返し周波数に基づいて変更し、前記レーザ光が前記繰り返し周波数で通過するように前記光スイッチを制御する制御部と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の1つの観点に係るレーザ装置は、予め設定された繰り返し周波数で極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置と共に用いられるレーザ装置であって、トリガ信号が入力されるとレーザ光を出力する半導体レーザと、前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を通過させるか否かを切り替える光スイッチと、前記繰り返し周波数に同期して前記半導体レーザに出力する前記トリガ信号のパルス幅を前記繰り返し周波数に基づいて変更し、前記レーザ光が前記繰り返し周波数で通過するように前記光スイッチを制御する制御部と、を備えてもよい。
【0008】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、トリガ信号が入力されるとレーザ光を出力する半導体レーザと、前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を通過させるか否かを切り替える光スイッチと、前記トリガ信号を前記繰り返し周波数の整数倍の周波数で前記半導体レーザに出力し、前記レーザ光が前記繰り返し周波数で通過するように前記光スイッチを制御する制御部と、前記レーザ光が照射されると極端紫外光を放射するターゲットを、前記光スイッチを通過した前記レーザ光が導入されるチャンバに対して、前記繰り返し周波数の整数倍の周波数で供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、レーザ装置の具体的構成が示されたEUV光生成システムの構成を示す。
図3A図3Aは、第1光スイッチの詳細な構成を説明するための図を示す。
図3B図3Bは、パルスレーザ光のポッケルスセルへの入射タイミングと、ポッケルスセルへの印加電圧との関係を説明するための図を示す。
図4図4は、再生増幅器の詳細な構成を説明するための図を示す。
図5図5は、第1QCLの詳細な構成を説明するための図を示す。
図6図6は、第1QCLで発生する波長チャーピングを説明するための図を示す。
図7図7は、第1実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システムの構成を示す。
図8図8は、第1実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システムのレーザ発振に係る動作を説明するための図を示す。
図9図9は、第2実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システムの構成を示す。
図10図10は、第2実施形態のレーザ装置に含まれる制御部から出力されるトリガ信号に対して付加される遅延時間を説明するための図を示す。
図11図11は、QCLの発光遅延時間と繰り返し周波数との関係を計測した結果を示す。
図12図12は、第3実施形態のレーザ装置に含まれる制御部から出力されるトリガ信号のパルス幅を説明するための図を示す。
図13図13は、QCLに出力されるトリガ信号の繰り返し周波数とパルス幅との関係を示す。
図14図14は、各制御部のハードウェア環境を示すブロック図を示す。
図15図15は、トリガ信号の生成に関するレーザ装置の変形例を説明するための図を示す。
【実施形態】
【0010】
〜内容〜
1.概要
2.用語の説明
3.EUV光生成システムの全体説明
3.1 構成
3.2 動作
4.EUV光生成装置と共に用いられるレーザ装置
4.1 構成
4.2 動作
4.3 光スイッチ
4.4 再生増幅器
4.5 量子カスケードレーザ
5.課題
6.第1実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システム
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.第2実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システム
8.第3実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システム
9.その他
9.1 各制御部のハードウェア環境
9.2 トリガ信号の生成に関するレーザ装置の変形例
9.3 その他の変形例
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
[1.概要]
本開示は、以下の実施形態を少なくとも開示し得る。
【0013】
レーザ装置3は、予め設定された繰り返し周波数でEUV光252を生成するEUV光生成装置1と共に用いられるレーザ装置3であって、パルスレーザ光30を出力する第1〜第4QCL311〜314と、パルスレーザ光30の光路上に配置され、パルスレーザ光30を通過させるか否かを切り替える第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374と、パルスレーザ光30が前記繰り返し周波数の整数倍で出力されるよう第1〜第4QCL311〜314を制御し、パルスレーザ光30が前記繰り返し周波数で通過するように第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374を制御する制御部330と、を備えてもよい。
このような構成により、レーザ装置3は、その動作条件が変更された際であっても所望特性のパルスレーザ光31を所望のタイミングで出力し得る。
【0014】
[2.用語の説明]
「ターゲット」は、チャンバに導入されたレーザ光の被照射物である。レーザ光が照射されたターゲットは、プラズマ化してEUV光を放射する。
「ドロップレット」は、チャンバ内へ供給されるターゲットの一形態である。
「光路軸」は、レーザ光の進行方向に沿ってレーザ光のビーム断面の中心を通る軸である。
「光路」は、レーザ光が通る経路である。光路には、光路軸が含まれてもよい。
「上流側」は、レーザ光の光路に沿ってレーザ光の発振器に近い側のことである。
「下流側」は、レーザ光の光路に沿ってレーザ光の発振器から遠い側のことである。
「光スイッチ」は、入射するレーザ光の光路を変化させるか否かを切り替える素子である。それによって、光スイッチは、入射するレーザ光を通過させるか否かを切り替えてもよい。光スイッチは、入射するレーザ光の光路を電気信号によって変化させてもよい。
【0015】
[3.EUV光生成システムの全体説明]
[3.1 構成]
図1に、例示的なLPP方式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい。本願においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2、ターゲット供給部26を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。ターゲット供給部26は、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられてもよい。ターゲット供給部26から供給されるターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0016】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔には、ウインドウ21が設けられてもよく、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過してもよい。チャンバ2の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には、例えば、モリブデンと、シリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF)292に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が設けられていてもよく、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過してもよい。
【0017】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御部5、ターゲットセンサ4等を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよく、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度等を検出するよう構成されてもよい。
【0018】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と露光装置6の内部とを連通させる接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャ293が形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャ293がEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0019】
更に、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0020】
[3.2 動作]
図1を参照すると、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射されてもよい。
【0021】
ターゲット供給部26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力するよう構成されてもよい。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。パルスレーザ光が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251が、他の波長の光の放射に伴って放射され得る。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射されてもよい。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252は、中間集光点292で集光され、露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0022】
EUV光生成制御部5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括するよう構成されてもよい。EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理するよう構成されてもよい。また、EUV光生成制御部5は、例えば、ターゲット27が出力されるタイミング制御及びターゲット27の出力方向等の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。更に、EUV光生成制御部5は、例えば、レーザ装置3の出力タイミングの制御、パルスレーザ光32の進行方向の制御、パルスレーザ光33の集光位置の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0023】
[4.EUV光生成装置と共に用いられるレーザ装置]
[4.1 構成]
図2を用いて、EUV光生成装置1と共に用いられるレーザ装置3の具体的な構成について説明する。
図2は、レーザ装置3の具体的構成が示されたEUV光生成システム11の構成を示す。
図2のEUV光生成システム11は、図1に示されたEUV光生成システム11と同様に、EUV光生成装置1と、レーザ装置3と、を含んでもよい。
図2のEUV光生成システム11の構成において、図1に示されたEUV光生成システム11と同様の構成については説明を省略する。
【0024】
レーザ装置3は、発振器310と、第1光スイッチ321と、第2光スイッチ322と、制御部330と、第1〜第4増幅器351〜354と、第1〜第4RF(Radio Frequency)電源361〜364と、再生増幅器370と、RF(Radio Frequency)電源380と、を備えてもよい。
本実施形態では、レーザ装置3が備える増幅器の台数は、便宜的に第1〜第4増幅器351〜354の4台であるとして説明されているが、特に限定されず、1又は複数の台数であってもよい。第1〜第4RF電源361〜364の台数は、第1〜第4増幅器351〜354の台数と同数であってもよい。
発振器310と、第1〜第4増幅器351〜354とは、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システムを構成してもよい。
【0025】
発振器310は、MOPAシステムを構成するマスターオシレータであってもよい。
発振器310は、パルスレーザ光30を出力してもよい。
発振器310は、半導体レーザと、光路調節器315と、を含んでもよい。
【0026】
発振器310に含まれる半導体レーザは、量子カスケードレーザ(Quantum-Cascade Laser:QCL)であってもよい。
発振器310に含まれる半導体レーザは、分布帰還型の半導体レーザであってもよい。
発振器310に含まれる半導体レーザは、COガスを増幅媒質とするレーザ増幅器で増幅可能な波長領域に含まれる波長のパルスレーザ光を出力する半導体レーザであってもよい。
【0027】
発振器310には、複数の半導体レーザが含まれていてもよい。
発振器310に含まれる複数の半導体レーザは、第1〜第4QCL311〜314であってもよい。
本実施形態では、発振器310に含まれるQCLの台数は、便宜的に第1〜第4QCL311〜314の4台であるとして説明されているが、特に限定されず、1又は複数の台数であってもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、制御部330に接続されてもよい。第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、制御部330からの制御により、レーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力してもよい。
【0028】
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、互いに異なる波長のパルスレーザ光を出力してもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるパルスレーザ光の互いに異なる各波長は、レーザ増幅器における増幅可能な波長領域が互いに異なってもよい。
本開示では、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるパルスレーザ光が有する波長領域のうち、当該第1〜第4QCL311〜314に後続して設けられたレーザ増幅器で増幅可能な波長領域を、「増幅波長領域」ともいう。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、直線偏光のパルスレーザ光を出力してもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されたパルスレーザ光は、光路調節器315に入射してもよい。
なお、第1〜第4QCL311〜314の詳細な構成については、図5を用いて後述する。
【0029】
光路調節器315は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されたパルスレーザ光の各光路を、実質的に1つの光路に重ね合せてパルスレーザ光30として出力してもよい。
光路調節器315は、図示しない光学系を含んでもよい。
光路調節器315に含まれる光学系は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されたパルスレーザ光の光路上であって、第1〜第4QCL311〜314の下流側に設けられてもよい。
光路調節器315によって1つの光路を通って出力されたパルスレーザ光30は、第1光スイッチ321に入射してもよい。
【0030】
第1光スイッチ321は、入射するパルスレーザ光30を通過させるか否かを切り替えてもよい。
第1光スイッチ321は、光路調節器315から出力されたパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
第1光スイッチ321は、制御部330に接続されてもよい。第1光スイッチ321は、制御部330からの制御により、パルスレーザ光30を通過させるか否かを切り替えてもよい。
第1光スイッチ321を通過したパルスレーザ光30は、再生増幅器370に入射してもよい。
なお、第1光スイッチ321の詳細な構成については、図3A及び図3Bを用いて後述する。
【0031】
再生増幅器370は、入射したパルスレーザ光30を増幅して特定のタイミングで出力してもよい。
再生増幅器370は、第1光スイッチ321を通過したパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
再生増幅器370は、共振器ミラー371と、共振器ミラー372と、第3光スイッチ373と、第4光スイッチ374と、増幅器375と、を含んでもよい。
【0032】
共振器ミラー371及び372は、再生増幅器370の光共振器を構成してもよい。
共振器ミラー371及び372は、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30が当該共振器ミラー371及び372の間を往復するように当該パルスレーザ光30を反射してもよい。
【0033】
増幅器375は、パルスレーザ光30が共振器ミラー371及び372の間を往復する度に当該パルスレーザ光30を増幅してもよい。
増幅器375は、COガスを増幅媒質とするレーザ増幅器であってもよい。
増幅器375は、図示しない一対の放電電極を含んでもよい。
増幅器375に含まれる一対の放電電極のそれぞれは、RF電源380に接続されてもよい。増幅器375は、RF電源380から供給された放電電圧に応じて、当該パルスレーザ光30を増幅してもよい。
【0034】
第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させるか否かを切り替えてもよい。
第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、制御部330に接続されてもよい。第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、制御部330からの制御により、パルスレーザ光30の光路を変化させるか否かを切り替えてもよい。それにより、第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、入射するパルスレーザ光30を再生増幅器370内に導くと共に特定のタイミングで再生増幅器370から出力させてもよい。
【0035】
再生増幅器370で増幅されたパルスレーザ光30は、高反射ミラーを介して、第2光スイッチ322に入射してもよい。
なお、再生増幅器370の詳細な構成については、図4を用いて後述する。
【0036】
RF電源380は、再生増幅器370に含まれる増幅器375に高周波の放電電圧を供給する電源であってもよい。
RF電源380は、制御部330に接続されてもよい。RF電源380は、制御部330からの制御により、増幅器375に放電電圧を供給してもよい。
【0037】
第2光スイッチ322は、入射するパルスレーザ光30を通過させるか否かを切り替える光スイッチであってもよい。
第2光スイッチ322は、再生増幅器370から出力されたパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
第2光スイッチ322は、制御部330に接続されてもよい。第2光スイッチ322は、制御部330からの制御により、パルスレーザ光30を通過させるか否かを切り替えてもよい。
第2光スイッチ322を通過したパルスレーザ光30は、第1〜第4増幅器351〜354に入射してもよい。
なお、第2光スイッチ322の詳細な構成については、図3A及び図3Bを用いて後述する。
また、第2光スイッチ322は、レーザ装置3に複数設けられてもよい。複数の第2光スイッチ322のそれぞれは、再生増幅器370及び第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれの下流側に配置されてもよい。
【0038】
第1〜第4増幅器351〜354は、MOPAシステムを構成するパワーアンプリファイアであってもよい。
第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、一対の放電電極を含み、COガスを増幅媒質とするレーザ増幅器であってもよい。第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、スラブ型増幅器、3軸直交型増幅器、又は高速軸流型増幅器の何れかであってもよい。
【0039】
第1〜第4増幅器351〜354は、第2光スイッチ322を通過したパルスレーザ光30を順次増幅してもよい。
具体的には、第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれには、それぞれの上流側に配置された前段の再生増幅器370又は第1〜第3増幅器351〜353から出力された各パルスレーザ光30が入射してもよい。第1〜第3増幅器351〜353のそれぞれは、入射した各パルスレーザ光30を増幅し、それぞれの下流側に配置された後段の第2〜第4増幅器352〜354に出力してもよい。最終段の第4増幅器354は、入射したパルスレーザ光30を増幅し、増幅されたパルスレーザ光30をパルスレーザ光31としてレーザ装置3の外部に出力してもよい。
【0040】
第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれと接続されてもよい。
第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれから供給された放電電流に応じて、入射する各パルスレーザ光30を増幅してもよい。
【0041】
第1〜第4RF電源361〜364は、第1〜第4増幅器351〜354に放電電流を供給する電源であってもよい。
第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれは、制御部330に接続されてもよい。第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれは、制御部330からの制御により、第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれに放電電流を供給してもよい。
【0042】
ここで、レーザ装置3と共に用いられるEUV光生成装置1に含まれるEUV光生成制御部5には、EUV光出力指令信号が露光装置制御部61から送信されてもよい。
EUV光出力指令信号は、EUV光252の出力に係る制御指令を示す信号であってもよい。
EUV光出力指令信号には、EUV光252の目標出力開始タイミング、目標繰り返し周波数、目標パルスエネルギ等の各種目標値が含まれていてもよい。EUV光生成制御部5には、当該EUV光出力指令信号が送信されることによって、EUV光252の各種目標値が設定され得る。
【0043】
EUV光生成制御部5は、露光装置制御部61から送信されたEUV光出力指令信号に基づいて、ターゲット供給信号を生成しターゲット供給部26に出力してもよい。
ターゲット供給信号は、ドロップレット271のチャンバ2内への出力に係る制御指令を示す信号であってもよい。ターゲット供給信号は、EUV光出力指令信号に含まれる各種目標値に応じてドロップレット271が出力されるよう、ターゲット供給部26の動作を制御する信号であってもよい。
ターゲット供給信号には、ドロップレット271の目標直径等の各種目標値が含まれていてもよい。ドロップレット271の各種目標値は、EUV光出力指令信号に含まれる各種目標値に応じて決定された値であってもよい。
EUV光生成制御部5は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標出力開始タイミング及び目標繰り返し周波数に応じて、ドロップレット271の目標出力開始タイミング及び目標繰り返し周波数を決定してもよい。
ドロップレット271の目標繰り返し周波数は、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ値であってもよい。ドロップレット271の目標出力開始タイミングは、EUV光252の目標出力開始タイミングに応じて決定された値であってもよい。
EUV光生成制御部5は、決定されたドロップレット271の目標出力開始タイミング及び目標繰り返し周波数に応じて、ターゲット供給信号をターゲット供給部26に出力してもよい。
【0044】
また、EUV光生成制御部5には、ドロップレット検出信号がターゲットセンサ4から入力されてもよい。
ドロップレット検出信号は、ターゲット供給部26からプラズマ生成領域25に供給されるターゲット27であるドロップレット271がチャンバ2内に出力されたことを示す検出信号であってもよい。
ドロップレット271は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標出力開始タイミング及び目標繰り返し周波数を反映したターゲット供給信号に基づいて、ターゲット供給部26から出力され得る。当該ターゲット供給信号に基づいてターゲット供給部26から出力されたドロップレット271は、出力毎にターゲットセンサ4に検出され得る。ドロップレット検出信号は、当該ドロップレット271が検出される毎にターゲットセンサ4からEUV光生成制御部5に出力され得る。
この時、ドロップレット271の出力間隔は、厳密には一定でなくある程度の不安定性を伴うことがあり得る。このため、ドロップレット検出信号の繰り返し周波数は、ほぼEUV光252の目標繰り返し周波数となるものの厳密には僅かに揺らぐことがあり得る。
以下の説明においては、「EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値」という表現や、「EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数」という表現が用いられている。これらの表現は、厳密にはEUV光252の目標繰り返し周波数と僅かに異なるものの、実質的にはEUV光252の目標繰り返し周波数とみなせる場合において用いられている。後述する「マスタ繰り返し周波数と略同じ値」という表現や、後述する「マスタ繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数」という表現も同様であり得る。
EUV光生成制御部5には、EUV光出力指令信号を反映したドロップレット検出信号が入力され得る。当該ドロップレット検出信号の繰り返し周波数は、EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値であり得る。
【0045】
また、EUV光生成制御部5は、EUV光出力指令信号を反映したドロップレット検出信号に基づいて、レーザ出力信号を生成し制御部330に出力してもよい。
レーザ出力信号は、パルスレーザ光31の出力に係る制御指令を示す信号であってもよい。レーザ出力信号は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の各種目標値に応じてパルスレーザ光31が出力されるよう、レーザ装置3の動作を制御する信号であってもよい。
レーザ出力信号には、パルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値が含まれていてもよい。パルスレーザ光31の目標パルスエネルギは、EUV光252の目標パルスエネルギに応じて決定された値であってもよい。
EUV光生成制御部5は、EUV光出力指令信号を反映したドロップレット検出信号が入力されてから所定の遅延時間だけ遅延したタイミングで、レーザ出力信号を1パルス毎に制御部330に出力してもよい。
なお、EUV光生成制御部5のハードウェア構成については、図14を用いて後述する。
【0046】
一方、制御部330は、EUV光生成制御部5と接続され、EUV光生成制御部5から出力されたレーザ出力信号が入力されてもよい。
制御部330は、当該レーザ出力信号に基づいて、レーザ装置3に含まれる各構成要素の動作を制御してもよい。
【0047】
制御部330は、レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力してもよい。
制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を1パルス毎に出力してもよい。
トリガ信号は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれがレーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力する契機を与える信号であってもよい。
トリガ信号の繰り返し周波数は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの繰り返し周波数を規定してもよい。トリガ信号の繰り返し周波数は、ドロップレット検出信号の繰り返し周波数と同じ値であり得る。
トリガ信号が出力されるタイミングは、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれのレーザ発振に係る動作を開始するタイミングを規定してもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、トリガ信号の繰り返し周波数にて、レーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力し得る。
【0048】
トリガ信号には、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに供給される励起電流の設定値が含まれてもよい。
トリガ信号に含まれる励起電流の設定値は、レーザ出力信号に含まれるパルスレーザ光31の目標パルスエネルギと、図示しないエネルギモニタによって計測されたパルスレーザ光30のパルスエネルギとに基づいて定められてもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、入力されたトリガ信号に含まれる当該設定値に応じた励起電流で、レーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力し得る。
【0049】
制御部330は、レーザ出力信号がEUV光生成制御部5から入力されたタイミングから所定の遅延時間だけ遅延したタイミングで、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力してもよい。
トリガ信号に対して付加される遅延時間は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに出力されるトリガ信号毎で異なる遅延時間Dq1〜4であってもよい。
上述のように、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるパルスレーザ光に対応する増幅波長領域は、互いに異なってもよい。それぞれ異なる波長を有するパルスレーザ光が第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるタイミングは、互いに異なり得る。
遅延時間Dq1〜4のそれぞれの長さは、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから互いに略同一のタイミングで出力されるように定められてもよい。
【0050】
また、制御部330は、レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれに駆動信号を出力してもよい。
制御部330は、レーザ出力信号がEUV光生成制御部5から入力されたタイミングに同期して、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれに駆動信号を出力してもよい。
光スイッチへの駆動信号は、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれに入射するパルスレーザ光30を通過させるよう、当該第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374の動作を制御する信号であってもよい。
【0051】
制御部330は、レーザ出力信号がEUV光生成制御部5から入力されたタイミングから所定の遅延時間だけ遅延したタイミングで、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれに駆動信号を出力してもよい。
これらの駆動信号に対して付加される遅延時間は、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれに出力される当該駆動信号毎で異なる遅延時間Dp1〜4であってもよい。
遅延時間Dp1〜4のそれぞれの長さは、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力された増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれを通過し得るように定められてもよい。
【0052】
また、制御部330は、レーザ出力信号に基づいて、RF電源380に電圧設定信号を出力してもよい。
制御部330は、レーザ出力信号がEUV光生成制御部5から入力されたタイミングに同期して、RF電源380に電圧設定信号を出力してもよい。
RF電源380に出力される電圧設定信号は、再生増幅器370の増幅器375に供給される放電電圧の設定値を、RF電源380に設定する信号であってもよい。
当該電圧設定信号に含まれる放電電圧の設定値は、レーザ出力信号に含まれるパルスレーザ光31の目標パルスエネルギと、図示しないエネルギモニタによって計測された増幅後のパルスレーザ光30のパルスエネルギとに基づいて定められてもよい。
RF電源380は、入力された電圧設定信号に含まれる当該設定値に応じた放電電圧を再生増幅器370の増幅器375に供給し得る。再生増幅器370の増幅器375は、供給された放電電圧に応じて、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30を増幅し得る。
【0053】
また、制御部330は、レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれに電流設定信号を出力してもよい。
制御部330は、レーザ出力信号がEUV光生成制御部5から入力されたタイミングに同期して、第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれに電流設定信号を出力してもよい。
第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれに出力される電流設定信号は、第1〜第4増幅器351〜354に供給される放電電流の設定値を、第1〜第4RF電源361〜364に設定する信号であってもよい。
当該電流設定信号に含まれる放電電流の設定値は、レーザ出力信号に含まれるパルスレーザ光31の目標パルスエネルギと、図示しないエネルギモニタによって計測された増幅後のパルスレーザ光30のパルスエネルギとに基づいて定められてもよい。
第1〜第4RF電源361〜364のそれぞれは、入力された電流設定信号に含まれる当該設定値に応じた放電電流を第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれに供給し得る。第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、供給された放電電流に応じて、第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれに入射したパルスレーザ光30を増幅し得る。
なお、制御部330のハードウェア構成については、図14を用いて後述する。
【0054】
EUV光生成システム11の他の構成については、図1に示されたEUV光生成システム11の構成と同様であってもよい。
【0055】
[4.2 動作]
レーザ装置3のレーザ発振に係る動作について、当該レーザ装置3と共に用いられるEUV光生成装置1の動作に言及しつつ説明する。
図2のEUV光生成システム11の動作において、図1に示されたEUV光生成システム11と同様の動作については説明を省略する。
【0056】
EUV光生成制御部5は、露光装置制御部61から送信されたEUV光出力指令信号に基づいて、ターゲット供給信号を生成しターゲット供給部26に出力してもよい。
ターゲット供給部26は、当該ターゲット供給信号に基づいて、チャンバ2内のプラズマ生成領域25にドロップレット271を出力し得る。ターゲットセンサ4は、チャンバ2内に出力されたドロップレット271を検出し、ドロップレット検出信号をEUV光生成制御部5に出力し得る。
EUV光生成制御部5は、当該EUV光出力指令信号及び当該ドロップレット検出信号に基づいて、新たにターゲット供給信号を生成しターゲット供給部26に出力してもよい。
【0057】
また、EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4から出力されたドロップレット検出信号に基づいて、レーザ出力信号を生成し制御部330に出力してもよい。
【0058】
制御部330は、当該レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4QCL311〜314に出力されるトリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1〜4を決定してもよい。
制御部330は、当該レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374に出力される駆動信号に対して付加される遅延時間Dp1〜4を決定してもよい。
制御部330は、当該レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4QCL311〜314に出力されるトリガ信号に含まれる励起電流の設定値を決定してもよい。
制御部330は、当該レーザ出力信号に基づいて、RF電源380に出力される電圧設定信号に含まれる放電電圧の設定値を決定してもよい。
制御部330は、当該レーザ出力信号に基づいて、第1〜第4RF電源361〜364に出力される電流設定信号に含まれる放電電流の設定値を決定してもよい。
【0059】
制御部330は、決定された放電電圧の設定値を含む電圧設定信号を、RF電源380に出力してもよい。
RF電源380は、入力された電圧設定信号に基づいて、再生増幅器370の増幅器375の放電電極に放電電圧を供給し得る。
制御部330は、決定された放電電流の設定値を含む電流設定信号を、第1〜第4RF電源361〜364に出力してもよい。
第1〜第4RF電源361〜364は、入力された電流設定信号に基づいて、第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれの放電電極に放電電流を供給し得る。
【0060】
制御部330は、決定された励起電流の設定値を含むトリガ信号を、レーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dq1〜4だけ遅延したタイミングで、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに出力してもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、入力されたトリガ信号に基づいて、パルスレーザ光を出力し得る。光路調節器315は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されたパルスレーザ光の光路を実質的に1つの光路に重ね合せて、パルスレーザ光30として第1光スイッチ321に出力し得る。
【0061】
制御部330は、第1光スイッチ321への駆動信号を、レーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp1だけ遅延したタイミングで、第1光スイッチ321に出力してもよい。
第1光スイッチ321は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30を通過させ、再生増幅器370に出力し得る。
【0062】
制御部330は、第3光スイッチ373への駆動信号を、レーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp3だけ遅延したタイミングで、第3光スイッチ373に出力してもよい。
第3光スイッチ373は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させ、再生増幅器370内にパルスレーザ光30を導入し得る。再生増幅器370内に導入されたパルスレーザ光30は、共振器ミラー371及び372の間で往復しながら増幅器375を通過する度に増幅し得る。
【0063】
制御部330は、第4光スイッチ374への駆動信号を、レーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp4だけ遅延したタイミングで、第4光スイッチ374に出力してもよい。
第4光スイッチ374は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させ、再生増幅器370から高反射ミラーに出力し得る。高反射ミラーは、入射したパルスレーザ光30を反射して第2光スイッチ322に出力し得る。
【0064】
制御部330は、第2光スイッチ322への駆動信号を、レーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp2だけ遅延したタイミングで、第2光スイッチ322に出力してもよい。
第2光スイッチ322は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30を通過させ、第1増幅器351に出力し得る。第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、当該パルスレーザ光30を順次増幅し得る。最終段の第4増幅器354で増幅されたパルスレーザ光30は、パルスレーザ光31としてレーザ装置3の外部に出力され得る。
【0065】
レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、EUV光生成装置1のレーザ光進行方向制御部34及びウインドウ21を経由して、パルスレーザ光32としてチャンバ2の内部に導入され得る。チャンバ2の内部に導入されたパルスレーザ光32は、レーザ光集光ミラー22によって、パルスレーザ光33としてプラズマ生成領域25に集光され得る。プラズマ生成領域25に集光されたパルスレーザ光33は、ターゲット供給部26からプラズマ生成領域25に出力されたドロップレット271を照射し得る。ドロップレット271は、パルスレーザ光33が照射されると、プラズマ化してEUV光251を含む光を放射し得る。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射され、EUV光252として露光装置6に出力され得る。
【0066】
EUV光生成システム11の他の動作については、図1に示されたEUV光生成システム11の動作と同様であってもよい。
【0067】
[4.3 光スイッチ]
図3A及び図3Bを用いて、第1及び第2光スイッチ321及び322の詳細な構成について説明する。
第1及び第2光スイッチ321及び322のそれぞれの内部構成は、互いに略同一の構成であってもよい。
図3A及び図3Bの説明では、第1光スイッチ321を例に挙げて説明する。
図3Aは、第1光スイッチ321の詳細な構成を説明するための図を示す。図3Bは、パルスレーザ光30のポッケルスセル321aへの入射タイミングと、ポッケルスセル321aへの印加電圧との関係を説明するための図を示す。
【0068】
第1光スイッチ321は、電気光学素子を用いて構成されてもよい。
第1光スイッチ321は、ポッケルスセル321aと、偏光子321bと、偏光子321cと、電源321dと、を含んでもよい。
【0069】
偏光子321b及び321cは、入射したパルスレーザ光30のうち、特定の直線偏光成分を透過させ、それ以外の直線偏光成分を反射してもよい。
偏光子321b及び321cは、入射したパルスレーザ光30の光路軸に対して略直交するように配置されてもよい。
偏光子321b及び321cは、入射したパルスレーザ光30の光路上にクロスニコルの状態で配置されてもよい。
偏光子321bは、例えばY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を透過させ、X方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を反射してもよい。偏光子321cは、例えばX方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を透過させ、Y方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を反射してもよい。
【0070】
電源321dは、ポッケルスセル321aに電圧を印加する電源であってもよい。
電源321dは、ポッケルスセル321aに入射するパルスレーザ光30の進行方向と略直交する方向の電場がポッケルスセル321a内に生じるよう、ポッケルスセル321aに電圧を印加してもよい。
電源321dは、制御部330に接続されてもよい。電源321dには、制御部330から出力された第1光スイッチ321への駆動信号が入力されてもよい。電源321dは、入力された当該駆動信号によって指定される印加電圧の電圧値、パルス幅、及び印加タイミングで、ポッケルスセル321aに対して印加電圧を印加してもよい。
【0071】
ポッケルスセル321aは、複屈折材料を用いて形成されてもよい。
ポッケルスセル321aは、偏光子321b及び321cの間に配置されてもよい。ポッケルスセル321aは、パルスレーザ光30が入射する面が、当該パルスレーザ光30の光路軸に対して略直交するように配置されてもよい。
ポッケルスセル321aの屈折率は、電源321dから電圧が印加されると、ポッケルス効果により、印加電圧に応じて変化してもよい。
ポッケルスセル321aは、入射したパルスレーザ光30の位相を変調し、印加電圧に応じた位相差(retardation)を当該パルスレーザ光30に発生させてもよい。
ポッケルスセル321aは、電源321dから半波長電圧が印加されている場合、偏光子321bを透過して入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30に対して位相差πを発生させて、X方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30に変換してもよい。
一方、ポッケルスセル321aは、電源321dから電圧が印加されていない場合、偏光子321bを透過して入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を、偏光状態を変換せずに透過させてもよい。
【0072】
制御部330は、パルスレーザ光30がポッケルスセル321aに入射するタイミングに同期してポッケルスセル321aに電圧が印加されるよう、電源321dに駆動信号を出力してもよい。
制御部330は、パルスレーザ光30の時間ジッタを吸収し得る程度のパルス幅を有する電圧がポッケルスセル321aに印加されるよう、電源321dに駆動信号を出力してもよい。例えば、図3Bに示されるように、パルスレーザ光30のパルス幅が20ns程度である場合、制御部330は、印加電圧のパルス幅が100ns程度となるような駆動信号を出力してもよい。
【0073】
第1光スイッチ321に入射したパルスレーザ光30は、上流側に配置された偏光子321bに入射し得る。偏光子321bに入射したパルスレーザ光30は、Y方向の直線偏光成分が透過されて、Y方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30としてポッケルスセル321aに入射し得る。
【0074】
ポッケルスセル321aに電圧が印加されていない場合、ポッケルスセル321aに入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30は、Y方向の直線偏光でポッケルスセル321aを透過して、下流側に配置された偏光子321cに入射し得る。
この場合、偏光子321cに入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30は、偏光子321cにて反射され得る。
それにより、第1光スイッチ321に入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30は、当該第1光スイッチ321を通過し得ない。
【0075】
同様に、ポッケルスセル321aに電圧が印加されていない場合、ポッケルスセル321aに下流側から入射したX方向の直線偏光にある戻り光等の光は、X方向の直線偏光でポッケルスセル321aを透過して、上流側に配置された偏光子321bに入射し得る。
この場合、偏光子321bに入射したX方向の直線偏光にある光は、偏光子321bにて反射され得る。
また、第1光スイッチ321に下流側から入射したY方向の直線偏光にある戻り光等の光は、偏光子321cにて反射され得る。
【0076】
一方、ポッケルスセル321aに半波長電圧が印加されている場合、ポッケルスセル321aに入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30は、X方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30に変換され、下流側に配置された偏光子321cに入射し得る。
この場合、偏光子321cに入射したX方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30は、偏光子321cを透過し得る。
それにより、第1光スイッチ321に入射したY方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30は、X方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30に変換されて、当該第1光スイッチ321を通過し得る。
【0077】
このように、第1光スイッチ321は、パルスレーザ光30の入射タイミングに合せてポッケルスセル321aに電圧が印加されることでパルスレーザ光30を通過させ得る。そして、第1光スイッチ321は、第1光スイッチ321の下流側に配置された再生増幅器370等からの戻り光の通過は抑制し得る。すなわち、第1光スイッチ321は、光アイソレータの機能を有し得る。
第2光スイッチ322も、第1光スイッチ321と同様の原理で動作し、光アイソレータの機能を有し得る。
なお、第1及び第2光スイッチ321及び322は、ポッケルスセルではなくカーセルを含む電気光学素子を用いて構成されてもよい。
或いは、第1及び第2光スイッチ321及び322は、電気光学素子ではなく、音響光学素子や磁気光学素子を用いて構成されてもよい。
【0078】
[4.4 再生増幅器]
図4を用いて、再生増幅器370の詳細な構成について説明する。
図4は、再生増幅器370の詳細な構成を説明するための図を示す。
再生増幅器370は、上述のように、共振器ミラー371と、共振器ミラー372と、第3光スイッチ373と、第4光スイッチ374と、増幅器375と、を含んでもよい。
【0079】
第3光スイッチ373は、第1光スイッチ321を通過して再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
第3光スイッチ373は、共振器ミラー371と増幅器375との間に配置されてもよい。
第3光スイッチ373は、電気光学素子を用いて構成されてもよい。
第3光スイッチ373は、ポッケルスセル373aと、偏光子373bと、図示しない電源と、を含んでもよい。
【0080】
偏光子373bは、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
偏光子373bは、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の光路軸と略45°の角度を成して交差するように配置されてもよい。
偏光子373bは、共振器ミラー371及び372の間で往復されるパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
偏光子373bは、当該偏光子373bに入射したパルスレーザ光30のうち、特定の直線偏光成分を透過させ、それ以外の直線偏光成分を反射してもよい。
上述したように、第1光スイッチ321を通過するパルスレーザ光30は、特定方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30であってもよい。再生増幅器370に入射するパルスレーザ光30は、当該特定方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30であり得る。
偏光子373bは、再生増幅器370に入射した当該特定方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を反射し、当該特定方向と略垂直方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30を透過させてもよい。
【0081】
第3光スイッチ373に含まれる図示しない電源は、ポッケルスセル373aに電圧を印加する電源であってもよい。
当該電源には、制御部330から出力された第3光スイッチ373への駆動信号が入力されてもよい。当該電源は、入力された当該駆動信号によって指定される印加電圧の電圧値、パルス幅、及び印加タイミングで、ポッケルスセル373aに対して印加電圧を印加してもよい。
当該電源の他の構成については、第1光スイッチ321に含まれる電源321dと同様であってもよい。
【0082】
ポッケルスセル373aは、共振器ミラー371及び372の間で往復されるパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
ポッケルスセル373aは、共振器ミラー371と偏光子373bとの間に配置されてもよい。
ポッケルスセル373aは、図示しない電源から電圧が印加されている場合、入射した直線偏光のパルスレーザ光30に対して位相差π/2を発生させて、円偏光のパルスレーザ光30に変換してもよい。
また、ポッケルスセル373aは、図示しない電源から電圧が印加されている場合、入射した円偏光のパルスレーザ光30に対して位相差π/2を発生させて、直線偏光のパルスレーザ光30に変換してもよい。
一方、ポッケルスセル321aは、図示しない電源から電圧が印加されていない場合、入射した直線偏光のパルスレーザ光30を、偏光状態を変換せずに透過させてもよい。
ポッケルスセル321aの他の構成については、第1光スイッチ321に含まれるポッケルスセル321aと同様であってもよい。
【0083】
第4光スイッチ374は、共振器ミラー371及び372の間で往復されるパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
第4光スイッチ374は、共振器ミラー372と増幅器375との間に配置されてもよい。
第4光スイッチ374は、電気光学素子を用いて構成されてもよい。
第4光スイッチ374は、ポッケルスセル374aと、偏光子374bと、図示しない電源と、を含んでもよい。
【0084】
偏光子374bは、共振器ミラー371及び372の間で往復されるパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
偏光子374bは、共振器ミラー371及び372の間で往復されるパルスレーザ光30の光路軸と略45°の角度を成して交差するように配置されてもよい。
偏光子374bは、当該偏光子374bに入射したパルスレーザ光30のうち、特定の直線偏光成分を透過させ、それ以外の直線偏光成分を反射してもよい。
偏光子374bは、第3光スイッチ373に含まれる偏光子373bに対してパラレルニコルの状態で配置されてもよい。
【0085】
第4光スイッチ374に含まれる図示しない電源は、ポッケルスセル374aに電圧を印加する電源であってもよい。
当該電源には、制御部330から出力された第4光スイッチ374への駆動信号が入力されてもよい。当該電源は、入力された当該駆動信号によって指定される印加電圧の電圧値、パルス幅、及び印加タイミングで、ポッケルスセル374aに対して印加電圧を印加してもよい。
当該電源の他の構成については、第3光スイッチ373に含まれる電源と同様であってもよい。
【0086】
ポッケルスセル374aは、共振器ミラー371及び372の間で往復されるパルスレーザ光30の光路上に配置されてもよい。
ポッケルスセル374aは、共振器ミラー372と偏光子374bとの間に配置されてもよい。
ポッケルスセル374aの他の構成については、第3光スイッチ373に含まれるポッケルスセル373aと同様であってもよい。
【0087】
増幅器375は、スラブ型増幅器であってもよい。
増幅器375は、第3光スイッチ373と第4光スイッチ374との間に配置されてもよい。
増幅器375は、図示しない一対の放電電極の他に、筐体375aと、ウインドウ375bと、ウインドウ375cと、凹面ミラー375dと、凹面ミラー375eと、を含んでもよい。
【0088】
筐体375aの内部には、増幅媒質であるCOガスが気密に充填されていてもよい。
筐体375aの側面部には、ウインドウ375b及び375cが配置されてもよい。
ウインドウ375b及び375cは、増幅器375に入射するパルスレーザ光30を筐体375aの内部に導いてもよい。ウインドウ375b及び375cは、増幅器375から出力されるパルスレーザ光30を筐体375aの外部に導いてもよい。
【0089】
一対の放電電極は、筐体375aの内部に配置されてもよい。
一対の放電電極のそれぞれは、略板状に形成されてもよい。
一対の放電電極のそれぞれは、互いに所定間隔だけ離間して、対向して配置されてもよい。一対の放電電極のそれぞれは、増幅器375に入射したパルスレーザ光30の光路軸と略平行となるように配置されてもよい。図4の例では、一対の放電電極のそれぞれは、図4の紙面と略平行となるように配置されてもよい。一対の放電電極の間には、放電空間が形成され得る。
一対の放電電極のそれぞれは、図示しない冷却装置によって冷却されてもよい。
一対の放電電極の一方の放電電極は接地され、他方の放電電極はRF電源380に接続されてもよい。一対の放電電極の間には、RF電源380によって高周波の放電電圧が供給されてもよい。
一対の放電電極の間に放電電圧が供給されると、一対の放電電極の間に形成された放電空間を満たすCOガスは、励起され得る。それにより、増幅器375に入射したパルスレーザ光30は、当該放電空間を通過する際にエネルギが付与されて増幅され得る。
【0090】
凹面ミラー375d及び375eのそれぞれは、筐体375aの内部に配置されてもよい。
凹面ミラー375d及び375eは、一対の放電電極の間に形成された放電空間を挟むように配置されてもよい。
凹面ミラー375d及び375eのぞれぞれは、共焦点型のシリンドリカルミラーであってもよい。
凹面ミラー375d及び375eのそれぞれは、増幅器375に入射したパルスレーザ光30をマルチパスで多数回反射させてもよい。それにより、当該パルスレーザ光30は、一対の放電電極の間に形成された放電空間においてマルチパス増幅され得る。
なお、増幅器375は、3軸直交型増幅器や高速軸流型増幅器であってもよい。
【0091】
再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30は、特定方向の直線偏光にあるパルスレーザ光30であってもよい。当該パルスレーザ光30は、偏光子373bに入射し得る。偏光子373bに入射したパルスレーザ光30は、当該偏光子373bで反射されて直線偏光のままポッケルスセル373aに入射し得る。
ここで、制御部330は、当該パルスレーザ光30がポッケルスセル373aに入射するタイミングに同期してポッケルスセル373aに電圧が印加されるよう、第3光スイッチ373の電源に駆動信号を出力してもよい。
ポッケルスセル373aに電圧が印加されている場合、ポッケルスセル373aに入射した直線偏光のパルスレーザ光30は、当該ポッケルスセル373aを通過する際に円偏光のパルスレーザ光30に変換されて共振器ミラー371に入射し得る。共振器ミラー371に入射したパルスレーザ光30は、当該共振器ミラー371で反射されて円偏光のまま再びポッケルスセル373aに入射し得る。
【0092】
ポッケルスセル373aに再び入射した円偏光のパルスレーザ光30は、当該ポッケルスセル373aを再び通過する際に直線偏光のパルスレーザ光30に変換され得る。この際、ポッケルスセル373aを再び通過したパルスレーザ光30は、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の偏光方向に対して略垂直な偏光方向を有する直線偏光のパルスレーザ光30に変換され得る。ポッケルスセル373aを再び通過した直線偏光のパルスレーザ光30は、偏光子373bに再び入射し得る。偏光子373bに再び入射したパルスレーザ光30は、当該偏光子373bを透過して直線偏光のまま増幅器375に入射し得る。
ここで、制御部330は、パルスレーザ光30がポッケルスセル373aを再び通過した後に、ポッケルスセル373aに電圧が印加されないよう、第3光スイッチ373の電源に出力していた駆動信号の出力を停止してもよい。
【0093】
増幅器375に入射したパルスレーザ光30は、ウインドウ375bを介して筐体375a内に入射し得る。筐体375a内に入射したパルスレーザ光30は、一対の放電電極の間に形成された放電空間において凹面ミラー375d及び375eによって多数回反射されながらマルチパス増幅され得る。マルチパス増幅されたパルスレーザ光30は、直線偏光のままウインドウ375cを介して増幅器375から出力され得る。増幅器375から出力された直線偏光のパルスレーザ光30の偏光方向は、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の偏光方向に対して略垂直な偏光方向のままであり得る。
【0094】
増幅器375から出力されたパルスレーザ光30は、偏光子374bに入射し得る。偏光子374bに入射したパルスレーザ光30は、当該偏光子374bを透過して直線偏光のままポッケルスセル374aに入射し得る。
ここで、制御部330は、当該パルスレーザ光30がポッケルスセル374aに入射する際には、ポッケルスセル374aに電圧が印加されないよう、第4光スイッチ374の電源に駆動信号が出力されないようにしてもよい。
ポッケルスセル374aに電圧が印加されていない場合、ポッケルスセル374aに入射した直線偏光のパルスレーザ光30は、当該ポッケルスセル374aをそのまま通過して共振器ミラー372に入射し得る。共振器ミラー372に入射したパルスレーザ光30は、当該共振器ミラー372で反射されて直線偏光のまま再びポッケルスセル374aを通過し得る。ポッケルスセル374aを再び通過した直線偏光のパルスレーザ光30は、偏光子374bに再び入射し得る。偏光子374bに再び入射したパルスレーザ光30は、当該偏光子374bを透過して直線偏光のまま増幅器375に再び入射し得る。
【0095】
増幅器375に再び入射したパルスレーザ光30は、上記と同様に、マルチパス増幅されて増幅器375から再び出力され得る。増幅器375から再び出力された直線偏光のパルスレーザ光30の偏光方向は、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の偏光方向に対して略垂直な偏光方向のままであり得る。
増幅器375から再び出力されたパルスレーザ光30は、偏光子373b及びポッケルスセル373aを通過して共振器ミラー371で反射され得る。
【0096】
ポッケルスセル373a及び374aに電圧が印加されていない期間、パルスレーザ光30は、ポッケルスセル373a及び374a並びに偏光子373b及び374bを通過し、増幅器375で増幅されつつ共振器ミラー371及び372の間を往復し得る。
【0097】
その後、制御部330は、増幅器375から出力されたパルスレーザ光30がポッケルスセル374aに入射するタイミングに同期して、ポッケルスセル374aに電圧が印加されるよう、第4光スイッチ374の電源に駆動信号を出力してもよい。
ポッケルスセル374aに電圧が印加されている場合、ポッケルスセル374aに入射した直線偏光のパルスレーザ光30は、当該ポッケルスセル374aを通過する際に円偏光のパルスレーザ光30に変換されて共振器ミラー372に入射し得る。共振器ミラー372に入射したパルスレーザ光30は、当該共振器ミラー372で反射されて円偏光のまま再びポッケルスセル374aに入射し得る。
ポッケルスセル374aに再び入射した円偏光のパルスレーザ光30は、当該ポッケルスセル374aを再び通過する際に直線偏光のパルスレーザ光30に変換され得る。この際、ポッケルスセル374aを再び通過したパルスレーザ光30は、再生増幅器370に入射したパルスレーザ光30の偏光方向と略平行な偏光方向を有する直線偏光のパルスレーザ光30に変換され得る。ポッケルスセル374aを再び通過した直線偏光のパルスレーザ光30は、偏光子374bに再び入射し得る。偏光子374bに再び入射したパルスレーザ光30は、当該偏光子374bで反射されて再生増幅器370から出力され得る。
【0098】
このようにして、再生増幅器370は、制御部330からの制御により、入射したパルスレーザ光30を増幅して特定のタイミングで出力し得る。
再生増幅器370で増幅され出力されたパルスレーザ光30は、高反射ミラーを介して、第2光スイッチ322に入射し得る。
【0099】
[4.5 量子カスケードレーザ]
図5を用いて、第1〜第4QCL311〜314の詳細な構成について説明する。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの内部構成は、互いに略同一の構成であってもよい。
図5の説明では、第1QCL311を例に挙げて説明する。
図5は、第1QCL311の詳細な構成を説明するための図を示す。
【0100】
第1QCL311は、分布帰還型の量子カスケードレーザであってもよい。
第1QCL311は、半導体素子3111と、ペルチェ素子3112と、を含んでもよい。
【0101】
半導体素子3111は、量子井戸構造におけるサブバンド間の電子遷移を利用して光を生成する半導体素子であってもよい。
半導体素子3111は、活性層3111aと、半導体層3111bと、半導体層3111cと、を含んでもよい。
半導体素子3111は、半導体層3111b、活性層3111a、及び半導体層3111cがこの順に積層された積層構造を有していてもよい。
【0102】
活性層3111aは、光を生成し増幅する機能を有してもよい。
活性層3111aは、光の生成に用いられる量子井戸層と当該量子井戸層に電子を注入する注入層とが交互に積層されたカスケード構造にて構成されてよい。
【0103】
半導体層3111b及び3111cは、半導体素子3111の積層方向の両側から活性層3111aを挟むように設けられてもよい。
半導体層3111b及び3111cは、活性層3111aにて生成された光を導波するガイド層や当該光を閉じ込めるクラッド層等を含んでもよい。
半導体層3111bの活性層3111a近傍には、多数の溝が所定溝間隔Aで形成されたグレーティング3111dが設けられてもよい。
【0104】
グレーティング3111dは、所定溝間隔Aに応じて特定の波長付近の光を選択的に帰還する光共振器として機能し得る。利得が閾値を超えると帰還光量が急激に増加し、活性層3111aの一端又は両端から当該特定の波長付近の光がレーザ光として出力され得る。
なお、グレーティング3111dを構成する溝の一部は、上記所定溝間隔A以外の間隔で形成されてもよい。当該所定溝間隔A以外の間隔で形成される溝は、パルスレーザ光の出力方向における1又は複数の所定箇所に形成されてもよい。一般的に、分布帰還型レーザは、グレーティングの溝が均一間隔で形成されると、理想的には2つの波長のパルスレーザ光を発振し得る。これに対し、グレーティング3111dの溝の一部が所定溝間隔A以外の間隔で形成される場合、第1QCL311は単一の波長のパルスレーザ光を発振し得る。
【0105】
半導体層3111b及び3111cには、半導体素子3111の積層方向の両外側から挟まれるように、図示しない一対の電極層が設けられてもよい。
当該一対の電極層は、図示しない電流制御器を介して制御部330に接続されてもよい。当該一対の電極層には、制御部330から出力されたトリガ信号に応じた励起電流が当該電流制御器から供給されてもよい。それにより、当該一対の電極層に挟持された半導体層3111b及び3111c並びに活性層3111aには、当該トリガ信号に応じた励起電流が流れ得る。
【0106】
ペルチェ素子3112は、半導体素子3111を冷却するための素子であってもよい。
ペルチェ素子3112は、制御部330に接続されてもよい。ペルチェ素子3112は、制御部330からの制御により、半導体素子3111を冷却してもよい。
【0107】
第1QCL311に制御部330からトリガ信号が入力されると、当該第1QCL311の活性層3111aには励起電流が流れ得る。
活性層3111aに励起電流が流れると、活性層3111aは光を生成し得る。生成された光は、グレーティング3111dによって波長選択されると共に活性層3111aを通過する度に増幅されつつ共振し得る。そして、当該光は、パルスレーザ光として、半導体素子3111の端面から出力され得る。
このようにして、第1QCL311は、制御部330からの制御により、パルスレーザ光を出力し得る。なお、第1QCL311の発振波長は、半導体素子3111内の光共振器の光路長とグレーティング3111dの選択波長とに依存し得る。
第2〜第4QCL312〜314のそれぞれも、第1QCL311と同様の原理で動作し、パルスレーザ光を出力し得る。
【0108】
図6を用いて、第1〜第4QCL311〜314の波長チャーピングについて説明する。
波長チャーピングは、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれで同様に発生し得る。
図6の説明では、第1QCL311を例に挙げて説明する。
図6は、第1QCL311で発生する波長チャーピングを説明するための図を示す。
【0109】
第1QCL311に励起電流が供給されレーザ発振が行われると、当該第1QCL311に含まれる半導体素子3111の発熱によって、図6に示されるように、半導体素子3111の活性層3111aの温度は上昇し得る。
活性層3111aの温度が変化すると、活性層3111aの屈折率は変化し得る。更に、活性層3111aの温度が変化すると、半導体素子3111内の光共振器の光路長やグレーティング3111dの溝の間隔Aが変化し得る。
それにより、第1QCL311の発振波長は、図6に示されるように、変化し得る。
【0110】
第1QCL311の半導体素子3111は、ペルチェ素子3112によって冷却されてもよい。そのため、活性層3111aの温度は、恒久的には、半導体素子3111の発熱とペルチェ素子3112の冷却との熱平衡によって略一定に保たれ得る。
しかしながら、活性層3111aの温度は、過渡的には、次のように変化し得る。
すなわち、活性層3111aの温度は、図6に示されるように、第1QCL311に励起電流が供給された直後から急激に上昇し、時間経過と伴に緩やかに上昇し得る。そして、活性層3111aの温度は、当該励起電流の供給が停止され直後から急激に低下し、時間経過と伴に緩やかに低下し得る。
このとき、活性層3111aの温度上昇に伴って、活性層3111aの屈折率は増加し得ると共に半導体素子3111内の光共振器の光路長は増加してしまい、第1QCL311の発振波長も長くなり得る。
QCLを含む半導体レーザの発振波長が変化するこのような現象を、波長チャーピングという。
第1QCL311から出力されるパルスレーザ光の波長は、波長チャーピングによって変化し得る。
【0111】
一方、再生増幅器370や第1〜第4増幅器351〜354において増幅可能なパルスレーザ光30の波長領域は、これらの増幅器の増幅媒質によって予め決まっていてもよい。
このため、第1QCL311から出力されたパルスレーザ光は、これらの増幅器において増幅可能な波長領域の波長を有する場合に限って適切に増幅され得る。
波長チャーピングにより第1QCL311の発振波長が変化する場合、第1QCL311から出力されたパルスレーザ光は、当該パルスレーザ光の波長が増幅可能な波長領域に到達したタイミングでのみ適切に増幅され得る。言い換えると、出力されるパルスレーザ光の波長が増幅波長領域に到達するタイミングにおいて第1QCL311から出力されたパルスレーザ光だけが適切に増幅され得る。
つまり、第1QCL311に励起電流が供給されたタイミングから、出力されるパルスレーザ光の波長が増幅波長領域に到達するタイミングまでには、タイムラグが発生し得る。すなわち、第1QCL311にトリガ信号が出力されたタイミングから、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が第1QCL311から出力されるタイミングまでには、タイムラグが発生し得る。
本開示では、QCLにトリガ信号が出力されたタイミングから、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光がQCLから出力されるタイミングまでのタイムラグを、QCLの「発光遅延時間」ともいう。
【0112】
第2〜第4QCL312〜314のそれぞれから出力されるパルスレーザ光の波長も、第1QCL311と同様に、波長チャーピングによって変化し得る。
そして、第2〜第4QCL312〜314のそれぞれにも、第1QCL311と同様に、発光遅延時間が発生し得る。
【0113】
これらの第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの発光遅延時間は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態によっても変動し得る。
例えば、繰り返し周波数が100kHz等の高負荷状態の第1QCL311の挙動と、繰り返し周波数が20kHz等の低負荷状態の第1QCL311の挙動とを比較して説明する。図6では、高負荷状態の第1QCL311における活性層温度等は実線で示され、低負荷状態の第1QCL311における活性層温度等は破線で示されている。
【0114】
高繰り返し周波数で発振する高負荷状態の第1QCL311では、単位時間当たりに励起電流が供給される回数が、低繰り返し周波数で発振する低負荷状態の第1QCL311に比べて増加し得る。
このため、第1QCL311における活性層3111aの温度は、低繰り返し周波数で発振する低負荷状態よりも高繰り返し周波数で発振する高負荷状態の方が高くなり得る。
これに伴って、第1QCL311に励起電流が供給された直後の発振波長は、低負荷状態よりも高負荷状態の方が長波長側にシフトし得る。更に、第1QCL311における波長チャーピングによる発振波長の変動幅は、低負荷状態よりも高負荷状態の方が大きくなり得る。
その結果、第1QCL311の発光遅延時間は、低負荷状態よりも高負荷状態の方が短くなり得る。
すなわち、第1QCL311において、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が出力されるタイミングは、低負荷状態よりも高負荷状態の方が早くなり得る。
第2〜第4QCL312〜314のそれぞれにおいても、第1QCL311と同様に、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が出力されるタイミングは、低負荷状態よりも高負荷状態の方が早くなり得る。
このように、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるタイミングは、それぞれのQCLの負荷状態に依存して変動し得る。
トリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1〜D4は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの発光遅延時間を考慮して、増幅波長領域の波長を有する各パルスレーザ光30が互いに略同一のタイミングで出力されるよう予め定められている。
【0115】
[5.課題]
レーザ装置3では、増幅波長領域にあるパルスレーザ光が第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるタイミングと、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374のそれぞれが駆動されるタイミングとは同期させる必要があり得る。
しかしながら、レーザ装置3の動作条件が変更された際、両者のタイミングが同期しないことがあり得る。
【0116】
例えば、露光装置6からの指令等によりレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光31の繰り返し周波数が低く変更される場合があり得る。この場合、第1〜第4QCL311〜314の負荷状態は低くなり、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるタイミングは遅くなり得る。
それにより、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されるタイミングと、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374が駆動されるタイミングとは同期しなくなり得る。
その結果、第1〜第4QCL311〜314の何れかから出力されたパルスレーザ光が適切に増幅されないことがあり得る。また、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374の何れかをパルスレーザ光30が通過しないことがあり得る。
【0117】
よって、レーザ装置3の動作条件が変更された際であってもパルスレーザ光30を適切に増幅して、所望の特性を有するパルスレーザ光31を所望のタイミングで出力し得る技術が求められている。
なお、レーザ装置3の動作条件の変更に応じて、例えばペルチェ素子3112の冷却動作を変更することも考えられる。しかし、ペルチェ素子3112の冷却動作を変更するだけでは、活性層3111aの過渡的な温度変化を抑制することは困難であり、波長チャーピングに対処することは困難であり得る。
【0118】
[6.第1実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システム]
[6.1 構成]
図7及び図8を用いて、第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11について説明する。
図7は、第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の構成を示す。
第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11は、EUV光生成制御部5及び制御部330の構成が、図2に示されたEUV光生成システム11と異なってもよい。
第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の構成において、図2に示されたEUV光生成システム11と同様の構成については説明を省略する。
【0119】
図7のEUV光生成制御部5は、マスタトリガ生成部51を含んでもよい。
マスタトリガ生成部51は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数に関わらず、ドロップレット271の目標繰り返し周波数をマスタ繰り返し周波数に決定してもよい。
マスタ繰り返し周波数は、EUV光生成装置1、レーザ装置3、又は露光装置6の仕様に基づいて予め定められた一定値の繰り返し周波数であってもよい。
マスタ繰り返し周波数は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数が取り得る上限値の繰り返し周波数であってもよい。
マスタ繰り返し周波数は、EUV光252の目標繰り返し周波数の整数倍の値であってもよい。例えば、マスタ繰り返し周波数は100kHzであり、EUV光252の目標繰り返し周波数は100Hz、50kHz、33.3kHz、25kHz、20kHz、10kHz、1kHz等であってもよい。
【0120】
EUV光生成制御部5は、マスタトリガ生成部51にて決定されたマスタ繰り返し周波数をドロップレット271の目標繰り返し周波数として、ターゲット供給信号を生成してもよい。
EUV光生成制御部5は、生成されたターゲット供給信号を、マスタ繰り返し周波数でターゲット供給部26に出力してもよい。
ターゲット供給部26は、マスタ繰り返し周波数にてドロップレット271を生成し出力し得る。ターゲットセンサ4は、マスタ繰り返し周波数にて出力されたドロップレット271を検出し、EUV光生成制御部5にドロップレット検出信号を出力し得る。
EUV光生成制御部5には、マスタ繰り返し周波数を反映したドロップレット検出信号が入力され得る。
【0121】
EUV光生成制御部5は、マスタ繰り返し周波数を反映したドロップレット検出信号に基づいて、レーザ出力信号を生成し制御部330に出力してもよい。
具体的には、EUV光生成制御部5は、マスタ繰り返し周波数にて出力されたドロップレット271のドロップレット検出信号が入力されたタイミングに同期して、レーザ出力信号を1パルス毎に制御部330に出力してもよい。
制御部330には、マスタ繰り返し周波数を反映したレーザ出力信号が入力され得る。
【0122】
なお、EUV光生成制御部5は、パルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値をレーザ出力信号に含めずに別途制御部330に出力してもよい。
この場合、EUV光生成制御部5は、マスタ繰り返し周波数で出力されたドロップレット271のドロップレット検出信号をそのままレーザ出力信号として制御部330に出力してもよい。EUV光生成制御部5は、レーザ出力信号の出力前に、パルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値を制御部330に出力してもよい。制御部330は、トリガ信号に含まれる励起電流の設定値、電圧設定信号に含まれる放電電圧の設定値、及び電流設定信号に含まれる放電電流の設定値のそれぞれを、レーザ出力信号の入力前に予め決定してもよい。
【0123】
また、EUV光生成制御部5は、分周設定信号を生成し制御部330に出力してもよい。
EUV光生成制御部5は、レーザ出力信号の出力前に分周設定信号を制御部330に出力してもよい。
分周設定信号は、マスタ繰り返し周波数を分周する際の分周比を制御部330に設定するための制御信号であってもよい。
分周比は、マスタ繰り返し周波数の値を、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数の値で除算した値であってもよい。
【0124】
図7の制御部330は、分周器331を含んでもよい。
分周器331は、EUV光生成制御部5から出力された分周設定信号に基づいて、EUV光生成制御部5から出力されたレーザ出力信号を分周してもよい。
分周器331は、分周設定信号に含まれる分周比を用いて、マスタ繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて入力されるレーザ出力信号を分周してもよい。分周されたレーザ出力信号の繰り返し周波数は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数となり得る。分周されていないレーザ出力信号の繰り返し周波数は、マスタ繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数であり得る。
【0125】
制御部330は、分周されたレーザ出力信号に基づいて、光スイッチへの駆動信号、RF電源380への電圧設定信号、及び第1〜第4RF電源361〜364への電流設定信号を出力してもよい。
制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて、当該光スイッチへの駆動信号、当該電圧設定信号、及び当該電流設定信号を出力してもよい。制御部330は、当該光スイッチへの駆動信号、当該電圧設定信号、及び当該電流設定信号のそれぞれを、分周器331から直接出力してもよい。
第1及び第2光スイッチ321及び322のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて、入射するパルスレーザ光30を通過させ得る。第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させ得る。
再生増幅器370の増幅器375は、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を増幅して出力し得る。第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を増幅して出力し得る。
【0126】
また、制御部330は、分周されていないレーザ出力信号に基づいて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力してもよい。
制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、マスタ繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にて当該トリガ信号を出力してもよい。
この際、制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングから所定の遅延時間Dq1〜4だけ遅延したタイミングで、当該トリガ信号を出力してもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、マスタ繰り返し周波数と略同じ値の繰り返し周波数にてパルスレーザ光を出力し得る。
【0127】
第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の他の構成については、図2に示されたEUV光生成システム11と同様であってもよい。
【0128】
[6.2 動作]
図8は、第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11のレーザ発振に係る動作を説明するための図を示す。
第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の動作において、図2に示されたEUV光生成システム11と同様の動作については説明を省略する。
【0129】
EUV光生成制御部5には、露光装置制御部61からEUV光出力指令信号が送信されてもよい。
EUV光生成制御部5は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標パルスエネルギ等の各種目標値に基づいて、パルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値を制御部330に出力してもよい。
制御部330は、EUV光生成制御部5から出力されたパルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値に基づいて、第1〜第4QCL311〜314に設定される励起電流の設定値を決定してもよい。
制御部330は、当該パルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値に基づいて、RF電源380に出力される電圧設定信号に含まれる放電電圧の設定値を決定してもよい。
制御部330は、当該パルスレーザ光31の目標パルスエネルギ等の各種目標値に基づいて、第1〜第4RF電源361〜364に出力される電流設定信号に含まれる放電電流の設定値を決定してもよい。
【0130】
EUV光生成制御部5は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数とマスタ繰り返し周波数とを用いて分周設定信号を生成し、制御部330に出力してもよい。
EUV光252の目標繰り返し周波数は、例えば50kHzであってもよい。マスタ繰り返し周波数は、例えば100kHzであってもよい。この例では、分周設定信号に含まれる分周比は、2であり得る。
【0131】
EUV光生成制御部5は、ドロップレット271の目標繰り返し周波数をマスタ繰り返し周波数とするターゲット供給信号を生成し、ターゲット供給部26に出力してもよい。
ターゲット供給部26は、マスタ繰り返し周波数にてドロップレット271を生成しチャンバ2内に出力し得る。ターゲットセンサ4は、マスタ繰り返し周波数で出力されたドロップレット271のドロップレット検出信号をEUV光生成制御部5に出力し得る。
EUV光生成制御部5は、マスタ繰り返し周波数を反映したドロップレット検出信号をそのままレーザ出力信号として制御部330に出力してもよい。
【0132】
制御部330は、分周されていないレーザ出力信号に基づいて、トリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1〜4を決定してもよい。
制御部330は、分周設定信号に基づいて、レーザ出力信号を分周してもよい。
制御部330は、分周されたレーザ出力信号に基づいて、光スイッチへの駆動信号に対して付加される遅延時間Dp1〜4を決定してもよい。
【0133】
制御部330は、予め決定された励起電流の設定値を含むトリガ信号を、分周されていないレーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dq1〜4だけ遅延したタイミングで、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに出力してもよい。
第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、入力されたトリガ信号に基づいて、パルスレーザ光を出力し得る。
このとき、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数の整数倍の値を有するマスタ繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30を出力し得る。
光路調節器315は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから出力されたパルスレーザ光の光路を実質的に1つの光路に重ね合せて、パルスレーザ光30として第1光スイッチ321に出力し得る。
【0134】
制御部330は、予め決定された放電電圧の設定値を含む電圧設定信号を、分周されたレーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、RF電源380に出力してもよい。
RF電源380は、入力された電圧設定信号に基づいて、再生増幅器370の増幅器375の放電電極に放電電圧を供給し得る。
制御部330は、予め決定された放電電流の設定値を含む電流設定信号を、分周されたレーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、第1〜第4RF電源361〜364に出力してもよい。
第1〜第4RF電源361〜364は、入力された電流設定信号に基づいて、第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれの放電電極に放電電流を供給し得る。
【0135】
制御部330は、第1光スイッチ321への駆動信号を、分周されたレーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp1だけ遅延したタイミングで、第1光スイッチ321に出力してもよい。
第1光スイッチ321は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30を選択的に通過させ、再生増幅器370に出力し得る。
このとき、第1光スイッチ321を通過するパルスレーザ光30の繰り返し周波数は、EUV光252の目標繰り返し周波数と略等しくなり得る。すなわち、第1光スイッチ321は、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30を通過させ得る。
第1光スイッチ321を通過しなかったパルスレーザ光30は、図3の偏光子321cで反射され図示しないビームダンパに吸収されてもよい。
【0136】
制御部330は、第3光スイッチ373への駆動信号を、分周されたレーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp3だけ遅延したタイミングで、第3光スイッチ373に出力してもよい。
第3光スイッチ373は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させ、再生増幅器370内にパルスレーザ光30を導入し得る。
このとき、再生増幅器370内に導入されたパルスレーザ光30は、第1光スイッチ321によって選択的に通過されたパルスレーザ光30だけであり得る。すなわち、第3光スイッチ373は、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30を再生増幅器370内に導入し得る。
再生増幅器370内に導入されたパルスレーザ光30は、共振器ミラー371及び372の間で往復しながら増幅器375を通過する度に増幅され得る。
【0137】
制御部330は、第4光スイッチ374への駆動信号を、分周されたレーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp4だけ遅延したタイミングで、第4光スイッチ374に出力してもよい。
第4光スイッチ374は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させ、再生増幅器370から高反射ミラーに出力し得る。
このとき、第4光スイッチ374は、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有し且つ適切に増幅されたパルスレーザ光30を再生増幅器370から出力し得る。
高反射ミラーは、入射したパルスレーザ光30を反射して第2光スイッチ322に出力し得る。
【0138】
制御部330は、第2光スイッチ322への駆動信号を、分周されたレーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dp2だけ遅延したタイミングで、第2光スイッチ322に出力してもよい。
第2光スイッチ322は、入力された駆動信号に基づいて、入射するパルスレーザ光30を通過させ、第1〜第4増幅器351〜354に出力し得る。
このとき、第2光スイッチ322は、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有し且つ適切に増幅されたパルスレーザ光30を通過させ得る。
第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、当該パルスレーザ光30を順次適切に増幅し得る。
最終段の第4増幅器354で増幅されたパルスレーザ光30は、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数で、パルスレーザ光31としてレーザ装置3の外部に出力され得る。
【0139】
第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の他の動作については、図2に示されたEUV光生成システム11と同様であってもよい。
【0140】
[6.3 作用]
このように、制御部330は、露光装置制御部61から要求されるEUV光252の目標繰り返し周波数に関わらず、マスタ繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて第1〜第4QCL311〜314にトリガ信号を出力し得る。
そのため、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態は、露光装置制御部61からの要求によりEUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、大きく変動せずに略一定となり得る。
それにより、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数に関わらず、互いに略同一のタイミングで、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光を出力し得る。
一方、第1及び第2光スイッチ321及び322のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30を通過させ得る。第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30の光路を変更し得る。再生増幅器370及び第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を適切に増幅して出力し得る。
それにより、第1実施形態のレーザ装置3は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されたら、当該EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光31を出力し得る。加えて、第1実施形態のレーザ装置3は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、第1〜第4QCL311〜314の負荷状態の変動を抑制しつつ、適切に増幅されたパルスレーザ光31を出力し得る。
よって、第1実施形態のレーザ装置3は、その動作条件が変更された際であってもパルスレーザ光30を適切に増幅して、所望の特性を有するパルスレーザ光31を所望のタイミングで出力し得る。
【0141】
[7.第2実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システム]
図9図11を用いて、第2実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11について説明する。
図9は、第2実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の構成を示す。
第2実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11は、露光装置制御部61からの要求によりEUV光252の目標繰り返し周波数が変更された場合、これに応じてドロップレット271の目標繰り返し周波数を変更してもよい。
この場合、第2実施形態に係るEUV光生成システム11では、ドロップレット271の目標繰り返し周波数に応じて出力されるドロップレット271のドロップレット検出信号の繰り返し周波数は変更され得る。そして、当該ドロップレット検出信号に基づいて出力されるトリガ信号の繰り返し周波数も変更され得る。それにより、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態は変動し得る。
そこで、第2実施形態に係るEUV光生成システム11は、トリガ信号に付加される遅延時間Dq1〜4を調整することによって、波長チャーピングに対処してもよい。
【0142】
第2実施形態に係るEUV光生成システム11は、EUV光生成制御部5及び制御部330の構成が、図7に示された第1実施形態に係るEUV光生成システム11と異なってもよい。
第2実施形態に係るEUV光生成制御部5は、マスタトリガ生成部51を含まなくてもよく、分周設定信号を制御部330に出力しなくてもよい。
第2実施形態に係る制御部330は、分周器331を含まなくてもよい。
第2実施形態に係るEUV光生成システム11の構成及び動作において、図7及び図8に示された第1実施形態に係るEUV光生成システム11と同様の構成及び動作については説明を省略する。
【0143】
図9のEUV光生成制御部5は、ドロップレット271の目標繰り返し周波数を、マスタ繰り返し周波数ではなく、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数と同じ値に決定してもよい。
EUV光生成制御部5は、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ値をドロップレット271の目標繰り返し周波数として、ターゲット供給信号を生成してもよい。
EUV光生成制御部5は、生成されたターゲット供給信号を、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ繰り返し周波数でターゲット供給部26に出力してもよい。
ターゲット供給部26は、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ繰り返し周波数にてドロップレット271を生成し出力し得る。ターゲットセンサ4は、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ繰り返し周波数にて出力されたドロップレット271を検出し、EUV光生成制御部5にドロップレット検出信号を出力し得る。
EUV光生成制御部5には、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数を反映したドロップレット検出信号が入力され得る。
【0144】
EUV光生成制御部5は、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数を反映したドロップレット検出信号に基づいて、レーザ出力信号を生成し制御部330に出力してもよい。
具体的には、EUV光生成制御部5は、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ繰り返し周波数にて出力されたドロップレット271のドロップレット検出信号が入力されたタイミングに同期して、レーザ出力信号を1パルス毎に制御部330に出力してもよい。
制御部330には、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数を反映したレーザ出力信号が入力され得る。
【0145】
図9の制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数にて、光スイッチへの駆動信号、RF電源380への電圧設定信号、及び第1〜第4RF電源361〜364への電流設定信号を出力してもよい。
第1及び第2光スイッチ321及び322のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、入射するパルスレーザ光30を通過させ得る。第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、入射するパルスレーザ光30の光路を変化させ得る。
再生増幅器370の増幅器375は、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を増幅して出力し得る。第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を増幅して出力し得る。
【0146】
また、制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力してもよい。
この際、制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングから所定の遅延時間Dq1’〜4’だけ遅延したタイミングで、当該トリガ信号を出力してもよい。
トリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1’〜4’は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態の変動に応じて、遅延時間Dq1〜4から調整された値であってもよい。
遅延時間Dq1’〜4’のそれぞれの長さは、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態が変動しても、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が互いに略同一のタイミングで出力されるように定められてもよい。
制御部330は、トリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1’〜4’を計算する記憶演算部332を含んでもよい。
【0147】
図10及び図11を用いて、トリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1’〜4’について説明する。
図10は、第2実施形態のレーザ装置3に含まれる制御部330から出力されるトリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1’〜4’を説明するための図を示す。図11は、QCLの発光遅延時間と繰り返し周波数との関係を計測した結果を示す。
【0148】
上述のように、第2実施形態のレーザ装置3では、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれが、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光を出力してもよい。
すなわち、第2実施形態のレーザ装置3では、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されるとトリガ信号の繰り返し周波数も変更され得ることから、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態が変動し得る。
この場合、図10上段に示されるように、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれから増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光が出力されるタイミングは、変動し得る。すなわち、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに発光遅延時間が発生し得る。
特に、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの発光遅延時間は、図11に示されるように、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの繰り返し周波数に応じて変動し得る。
図11には、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの繰り返し周波数を100Hzを基準にして変動させた際に、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの発光遅延時間がどのように変動するかが示されている。
更に、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれ発光遅延時間の変動量は、図11の各グラフの傾きが異なることからも明らかなように、第1〜第4QCL311〜314ごとに異なり得る。
【0149】
そこで、制御部330の記憶演算部332は、図11に示されたQCLの発光遅延時間と繰り返し周波数との関係に関する計測結果を予め記憶していてもよい。
記憶演算部332は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されると、図11に示されたQCLの発光遅延時間と繰り返し周波数との関係に関する計測結果に基づいて、次のような処理を行ってもよい。それにより、記憶演算部332は、トリガ信号に対して付加される遅延時間Dq1’〜4’を計算してもよい。
【0150】
すなわち、記憶演算部332は、図11のQCLの発光遅延時間と繰り返し周波数との関係に関する計測結果を参照して、EUV光252の目標繰り返し周波数に応じて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの発光遅延時間の変動量を特定してもよい。
この際、発光遅延時間の値が図11の当該計測結果に掲載されていない場合には、記憶演算部332は、図11の当該計測結果に基づいて、発光遅延時間と繰り返し周波数との相関式を導出してもよい。当該相関式は、線形近似関数や多項式近似関数や高次近似関数で記述されてもよい。そして、記憶演算部332は、導出された相関式を用いて第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの発光遅延時間の変動量を計算してもよい。
続いて、記憶演算部332は、特定した発光遅延時間の変動量を、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更される前のトリガ信号に付加された遅延時間Dq1〜4から減算することによって、遅延時間Dq1’〜4’を計算してもよい。
【0151】
制御部330は、記憶演算部332で求められた値を、トリガ信号に対して付加される新たな遅延時間Dq1’〜4’として決定してもよい。
そして、制御部330は、図10下段に示されるように、レーザ出力信号が入力されたタイミングから新たに決定された遅延時間Dq1’〜4’だけ遅延したタイミングで、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力してもよい。
それにより、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、レーザ出力信号が制御部330に入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光を出力し得る。加えて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、負荷状態が変動されても、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光を、互いに略同一のタイミングで出力し得る。
【0152】
第2実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の他の構成及び動作については、図7及び図8に示された第1実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11と同様であってもよい。
【0153】
このように、制御部330は、露光装置制御部61から要求されるEUV光252の目標繰り返し周波数に基づいて遅延時間Dq1〜4をDq1’〜4’に調整して、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力し得る。
そのため、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、露光装置制御部61からの要求によりEUV光252の目標繰り返し周波数が変更され負荷状態が変動しても、互いに略同一のタイミングで、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光を出力し得る。
一方、第1及び第2光スイッチ321及び322のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30を通過させ得る。第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30の光路を変更し得る。再生増幅器370及び第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を適切に増幅して出力し得る。
それにより、第2実施形態のレーザ装置3は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されたら、当該EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光31を出力し得る。加えて、第2実施形態のレーザ装置3は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、第1〜第4QCL311〜314の負荷状態の変動に対処しつつ、適切に増幅されたパルスレーザ光31を出力し得る。
よって、第2実施形態のレーザ装置3は、その動作条件が変更された際であってもパルスレーザ光30を適切に増幅して、所望の特性を有するパルスレーザ光31を所望のタイミングで出力し得る。
【0154】
[8.第3実施形態のレーザ装置を含むEUV光生成システム]
図12及び図13を用いて、第3実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11について説明する。
トリガ信号は、トリガ信号のパルス幅を含んでもよい。トリガ信号のパルス幅とは、1パルスにおいて第1〜第4QCL311〜314に励起電流を供給している時間である。言い換えると、トリガ信号のパルス幅は、第1〜第4QCL311〜314に供給される励起電流の1パルスごとの時間幅であり得る。
【0155】
図12は、第3実施形態のレーザ装置3に含まれる制御部330から出力されるトリガ信号のパルス幅W’を説明するための図を示す。図13は、QCLに出力されるトリガ信号の繰り返し周波数とパルス幅との関係を示す。
第3実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11は、露光装置制御部61からの要求によりEUV光252の目標繰り返し周波数が変更された場合、これに応じてドロップレット271の目標繰り返し周波数を変更してもよい。
この場合、第3実施形態に係るEUV光生成システム11では、ドロップレット271の目標繰り返し周波数に応じて出力されるドロップレット271のドロップレット検出信号の繰り返し周波数は変更され得る。そして、当該ドロップレット検出信号に基づいて出力されるトリガ信号の繰り返し周波数も変更され得る。それにより、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの負荷状態は変動し得る。
そこで、第3実施形態に係るEUV光生成システム11は、トリガ信号のパルス幅Wを調整することによって、波長チャーピングに対処してもよい。
【0156】
第3実施形態に係るEUV光生成システム11は、制御部330の構成が、図9に示された第2実施形態に係るEUV光生成システム11と異なっていてもよい。
第3実施形態に係る制御部330の記憶演算部332は、図11に示されたQCLの発光遅延時間と繰り返し周波数との関係に関する計測結果を予め記憶していなくてもよい。
第3実施形態に係るEUV光生成システム11の構成及び動作において、図9図11に示された第2実施形態に係るEUV光生成システム11と同様の構成及び動作については説明を省略する。
【0157】
第3実施形態に係るEUV光生成制御部5は、第2実施形態に係るEUV光生成制御部5と同様に、ドロップレット271の目標繰り返し周波数を、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数と同じ値に決定してもよい。
そして、EUV光生成制御部5は、EUV光252の目標繰り返し周波数と同じ値をドロップレット271の目標繰り返し周波数として、ターゲット供給信号を生成してもよい。
更に、EUV光生成制御部5は、第2実施形態に係るEUV光生成制御部5と同様に、EUV光出力指令信号に含まれるEUV光252の目標繰り返し周波数を反映したドロップレット検出信号に基づいて、レーザ出力信号を生成し制御部330に出力してもよい。
【0158】
第3実施形態に係る制御部330は、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力してもよい。
この際、制御部330は、図12に示されるように、レーザ出力信号が入力されたタイミングから所定の遅延時間Dq1〜4だけ遅延したタイミングで、パルス幅W’のトリガ信号を出力してもよい。
トリガ信号のパルス幅W’は、EUV光252の目標繰り返し周波数の変更に応じて、変更前のトリガ信号のパルス幅Wから調整された値であってもよい。
トリガ信号のパルス幅W’の大きさは、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、第1〜第4QCL311〜314に供給される励起電流のデューティ比が変動しないように定められてもよい。
制御部330は、トリガ信号のパルス幅W’を計算する記憶演算部332を含んでもよい。
【0159】
ここで、QCLの波長チャーピングと、QCLに供給される励起電流のデューティ比との関係について説明する。
例えば、第1QCL311の波長チャーピングを引き起こす半導体素子3111の温度変化ΔTと、第1QCL311に供給される励起電流のデューティ比との関係は、次式によって記述され得る。
ΔT=Rth・(I・V)・D
Rthは、半導体素子3111の熱抵抗であり得る。
Iは、半導体素子3111に供給される励起電流の電流値であり得る。
Vは、半導体素子3111に生じる電圧であり得る。
Dは、半導体素子3111に供給される励起電流のデューティ比であり得る。半導体素子3111に供給される励起電流のデューティ比は、トリガ信号のデューティ比と同じ値であり得る。トリガ信号のデューティ比は、トリガ信号のパルス幅と繰り返し周波数との積であり得る。
【0160】
上記の式により、熱抵抗Rthを一定とすると、電流値Iを一定に保てば電圧Vは変化せず、温度変化ΔTはデューティ比Dに依存することが分かり得る。
よって、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、トリガ信号に含まれる励起電流の設定値を維持した上で、トリガ信号のデューティ比が変動しないようトリガ信号のパルス幅を調整すれば、温度変化ΔTは抑制され得る。このため、第1QCL311の負荷状態の変動は抑制され得る。
【0161】
そこで、制御部330の記憶演算部332は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに出力されるトリガ信号のデューティ比を予め記憶していてもよい。
記憶演算部332に記憶されたデューティ比は、遅延時間Dq1〜4との関係から実験等によって予め決定された一定値であってもよい。記憶演算部332に記憶されたデューティ比は、例えば40000ns・kHzのような一定値を記憶していてもよい。
そして、記憶演算部332は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されると、予め記憶しておいたデューティ比に基づいて、次のような処理を行ってトリガ信号のパルス幅W’を計算してもよい。
例えば、EUV光252の目標繰り返し周波数が100kHzから50kHzに変更されると、記憶演算部332は、パルス幅W’を次式のように計算し得る。
パルス幅W’=デューティ比(40000ns・kHz)/繰り返し周波数(50kHz)=800ns
【0162】
或いは、記憶演算部332は、図13に示されるような、トリガ信号の繰り返し周波数とパルス幅との関係を示すテーブルを予め記憶していてもよい。
そして、記憶演算部332は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されると、予め記憶しておいたテーブルを参照して、トリガ信号のパルス幅W’を特定してもよい。
【0163】
制御部330は、記憶演算部332で求められた値を、トリガ信号の新たなパルス幅W’に決定してもよい。
そして、制御部330は、図12下段に示されるように、レーザ出力信号が入力されたタイミングから遅延時間Dq1〜4だけ遅延したタイミングで、新たに決定されたパルス幅W’のトリガ信号を第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに出力してもよい。
それにより、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、レーザ出力信号が入力されたタイミングに同期して、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光を出力し得る。加えて、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、負荷状態の変動が抑制されて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光を、互いに略同一のタイミングで出力し得る。
なお、記憶演算部332は、デューティ比として第1〜第4QCL311〜314のそれぞれで異なる値を用いた方が好適である場合は、第1〜第4QCL311〜314ごとに異なる値のデューティ比を予め記憶してもよい。
【0164】
第3実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11の他の構成及び動作については、図9図11に示された第2実施形態のレーザ装置3を含むEUV光生成システム11と同様であってもよい。
【0165】
このように、制御部330は、露光装置制御部61から要求されるEUV光252の目標繰り返し周波数に基づいてトリガ信号のパルス幅WをW’に調整して、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれにトリガ信号を出力し得る。
そのため、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、露光装置制御部61からの要求によりEUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、負荷状態の変動が抑制され得る。このため、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれは、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光を、互いに略同一のタイミングで出力し得る。
一方、第1及び第2光スイッチ321及び322のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30を通過させ得る。第3及び第4光スイッチ373及び374のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、増幅波長領域の波長を有するパルスレーザ光30の光路を変更し得る。再生増幅器370及び第1〜第4増幅器351〜354のそれぞれは、EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光30を適切に増幅して出力し得る。
それにより、第3実施形態のレーザ装置3は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されたら、当該EUV光252の目標繰り返し周波数を反映した繰り返し周波数にて、パルスレーザ光31を出力し得る。加えて、第3実施形態のレーザ装置3は、EUV光252の目標繰り返し周波数が変更されても、第1〜第4QCL311〜314の負荷状態の変動を抑制しつつ、適切に増幅されたパルスレーザ光31を出力し得る。
よって、第3実施形態のレーザ装置3は、その動作条件が変更された際であってもパルスレーザ光30を適切に増幅して、所望の特性を有するパルスレーザ光31を所望のタイミングで出力し得る。
【0166】
[9.その他]
[9.1 各制御部のハードウェア環境]
当業者は、汎用コンピュータまたはプログラマブルコントローラにプログラムモジュールまたはソフトウェアアプリケーションを組み合わせて、ここに述べられる主題が実行されることを理解するだろう。一般的に、プログラムモジュールは、本開示に記載されるプロセスを実行できるルーチン、プログラム、コンポーネント、データストラクチャー等を含む。
【0167】
図14は、開示される主題の様々な側面が実行され得る例示的なハードウェア環境を示すブロック図である。図14の例示的なハードウェア環境100は、処理ユニット1000と、ストレージユニット1005と、ユーザインターフェイス1010と、パラレルI/Oコントローラ1020と、シリアルI/Oコントローラ1030と、A/D、D/Aコンバータ1040とを含んでもよいが、ハードウェア環境100の構成は、これに限定されない。
【0168】
処理ユニット1000は、中央処理ユニット(CPU)1001と、メモリ1002と、タイマ1003と、画像処理ユニット(GPU)1004とを含んでもよい。メモリ1002は、ランダムアクセスメモリ(RAM)とリードオンリーメモリ(ROM)とを含んでもよい。CPU1001は、市販のプロセッサのいずれでもよい。デュアルマイクロプロセッサや他のマルチプロセッサアーキテクチャが、CPU1001として使用されてもよい。
【0169】
図14におけるこれらの構成物は、本開示において記載されるプロセスを実行するために、相互に接続されていてもよい。
【0170】
動作において、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005に保存されたプログラムを読み込んで、実行してもよい、また、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005からプログラムと一緒にデータを読み込んでもよい、また、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005にデータを書き込んでもよい。CPU1001は、ストレージユニット1005から読み込んだプログラムを実行してもよい。メモリ1002は、CPU1001によって実行されるプログラムおよびCPU1001の動作に使用されるデータを、一時的に保管する作業領域であってもよい。タイマ1003は、時間間隔を計測して、プログラムの実行に従ってCPU1001に計測結果を出力してもよい。GPU1004は、ストレージユニット1005から読み込まれるプログラムに従って、画像データを処理し、処理結果をCPU1001に出力してもよい。
【0171】
パラレルI/Oコントローラ1020は、露光装置制御部61、EUV光生成制御部5、レーザ光進行方向制御部34、及び制御部330等の、処理ユニット1000と通信可能なパラレルI/Oデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらパラレルI/Oデバイスとの間の通信を制御してもよい。シリアルI/Oコントローラ1030は、第1~第4RF電源361~364、RF電源380、第1〜第4光スイッチ321、322、373及び374、ターゲット供給部26、第1〜第4QCL311〜314等の、処理ユニット1000と通信可能なシリアルI/Oデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらシリアルI/Oデバイスとの間の通信を制御してもよい。A/D、D/Aコンバータ1040は、アナログポートを介して、温度センサ、圧力センサ、真空計各種センサ、ターゲットセンサ4等のアナログデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらアナログデバイスとの間の通信を制御したり、通信内容のA/D、D/A変換を行ってもよい。
【0172】
ユーザインターフェイス1010は、操作者が処理ユニット1000にプログラムの停止や、割込みルーチンの実行を指示できるように、処理ユニット1000によって実行されるプログラムの進捗を操作者に表示してもよい。
【0173】
例示的なハードウェア環境100は、本開示における露光装置制御部61、EUV光生成制御部5、レーザ光進行方向制御部34、及び制御部330の構成に適用されてもよい。当業者は、それらのコントローラが分散コンピューティング環境、すなわち、通信ネットワークを介して繋がっている処理ユニットによってタスクが実行される環境において実現されてもよいことを理解するだろう。本開示において、露光装置制御部61、EUV光生成制御部5、レーザ光進行方向制御部34、及び制御部330は、イーサネットやインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、ローカルおよびリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。
【0174】
[9.2 トリガ信号の生成に関するレーザ装置の変形例]
上述のように、トリガ信号は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれがレーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力する契機を与える信号であってもよい。トリガ信号には、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに供給される励起電流の設定値が含まれてもよい。トリガ信号のパルス幅は、第1〜第4QCL311〜314に供給される励起電流の1パルスごとの時間幅であってもよい。
第1〜第3実施形態のレーザ装置3では、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに出力されるトリガ信号を制御部330が生成していたが、本開示のレーザ装置3はこれに限定されない。
本開示のレーザ装置3では、制御部330は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれに含まれる第1〜第4QCL制御部のそれぞれにトリガ信号を生成させてもよい。
すなわち、本開示のレーザ装置3は、トリガ信号の生成に関して以下のような変形例を採用し得る。
【0175】
図15を用いて、トリガ信号の生成に関するレーザ装置3の変形例について説明する。
図15は、トリガ信号の生成に関するレーザ装置3の変形例を説明するための図を示す。
なお、図15の説明では、第1QCL311を例に挙げて説明する。
【0176】
変形例のレーザ装置3が備える制御部330は、トリガ信号の代りに、励起電流の電流値及び時間幅に関する設定値と出力タイミング信号とを、第1〜第4QCL制御部のそれぞれに出力してもよい。
出力タイミング信号は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれからパルスレーザ光が出力されるタイミングであることを通知する信号であってもよい。出力タイミング信号には、トリガ信号と同様に、所定の遅延時間Dq1〜Dq4やDq1’〜Dq4’が付加されて制御部330から出力されてもよい。
励起電流の電流値及び時間幅に関する設定値は、第1〜第4QCL311〜314のそれぞれの半導体素子に供給される励起電流のパルス波形における電流値及び時間幅を定める設定値であってもよい。当該設定値における励起電流の時間幅は、トリガ信号のパルス幅Wやパルス幅W’を規定してもよい。
【0177】
変形例のレーザ装置3が備える第1QCL311は、図15に示されるように、半導体素子3111と、ペルチェ素子3112と、温度センサ3113と、電流制御器3114と、温度制御部3115と、第1QCL制御部3116と、を含んでもよい。
【0178】
第1QCL制御部3116には、制御部330から出力された第1QCL311に供給される励起電流の電流値及び時間幅に関する設定値が入力されてもよい。
第1QCL制御部3116は、入力された当該設定値における電流値及び時間幅に応じた励起電流のパルス波形を有するトリガ信号を生成してもよい。
第1QCL制御部3116には、制御部330から出力された第1QCL311に対する出力タイミング信号が入力されてもよい。
第1QCL制御部3116は、入力された当該出力タイミング信号に応じて、生成された当該トリガ信号を電流制御器3114に出力してもよい。
第1QCL制御部3116は、半導体素子3111の温度を所定温度にするための温度設定値を温度制御部3115に出力してもよい。
【0179】
電流制御器3114には、第1QCL制御部3116から出力されたトリガ信号が入力されてもよい。
電流制御器3114は、入力された当該トリガ信号が有するパルス波形に応じた励起電流を、半導体素子3111に設けられた上記一対の電極層に供給してもよい。
当該一対の電極層に挟持された半導体層3111b及び3111c並びに活性層3111aには、当該トリガ信号に応じた励起電流が流れ得る。
【0180】
温度センサ3113は、半導体素子3111の温度を検出し、その検出信号を温度制御部3115に出力してもよい。
【0181】
温度制御部3115には、第1QCL制御部3116から出力された温度設定値が入力されてもよい。
温度制御部3115には、温度センサ3113から出力された検出信号が入力されてもよい。
温度制御部3115は、入力された当該検出信号によって示される温度検出値が、入力された当該温度設定値に近付くよう、ペルチェ素子3112の冷却動作を制御する信号をペルチェ素子3112に出力してもよい。
【0182】
上記構成によって、変形例のレーザ装置3が備える第1QCL311は、制御部330からの制御により、第1QCL制御部3116にてトリガ信号を生成し、当該トリガ信号に応じた励起電流を半導体素子3111に供給し得る。それにより、変形例のレーザ装置3が備える第1QCL311は、制御部330からの制御により、半導体素子3111からパルスレーザ光を出力し得る。
【0183】
なお、図15に示された半導体素子3111及びペルチェ素子3112の構成については、図5に示された半導体素子3111及びペルチェ素子3112と同様であってもよい。
変形例のレーザ装置3が備える第2〜第4QCL312〜314においても、図15に示された第1QCL311と同様に構成されてもよい。
【0184】
[9.3 その他の変形例]
EUV光生成制御部5及び制御部330は、その一部又は全部を組み合わせて一体の制御部として構成されてもよい。
【0185】
上記で説明した実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0186】
例えば、変形例のレーザ装置3が備える制御部330及び第1〜第4QCL311〜314は、第1〜第3実施形態の各レーザ装置3が備える制御部330及び第1〜第4QCL311〜314にそれぞれ適用されてもよい。
【0187】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0188】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0189】
1 …EUV光生成装置
2 …チャンバ
27 …ターゲット
3 …レーザ装置
311〜314 …第1〜第4QCL
321、322 …第1及び第2光スイッチ
330 …制御部
373、374 …第3及び第4光スイッチ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図15