【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
実施例 1
次に示す反応式に従って、分岐分子鎖中間体である化合物4を製造した。
【化16】
【0027】
(1)化合物1の製造
化合物1をH.Al−Mughaid,T.B.Grindley,Can.J.Chem.84,516−521(2006)に記載の方法により製造した。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:3.68(s,8H),3.66(s,4H),3.59(s,4H),3.53(s,4H),3.44(s,4H),1.40−1.75(m,30H).
【0028】
(2)化合物2の製造
化合物1 1.9gをジクロロメタン 50mLに溶解し、次いでトリエチルアミン 1.8mLを加えた。溶液を氷浴にて0℃に調整した後、メタンスルホニルクロリド 0.7mLを滴下した。氷浴をはずし、室温にて2時間攪拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムにて抽出を行い、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後の粗物溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム→クロロホルム/メタノール=100/5)により精製し化合物2を含む混合物を2.7g得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:4.35(s,4H),3.81(d,4H,J=12.6),3.69(s,4H),3.67(d,4H,J=12.6),3.38(s,4H),3.32(s,4H),3.03(s,6H),1.41−1.80(m,30H).
【0029】
(3)化合物3の製造
化合物2を含む混合物 2.7gとアジ化ナトリウム 0.8gをジメチルスルホキシド 15mLに溶解し、100℃で12時間攪拌した。攪拌後の溶液を室温まで放冷し、ジクロロメタン及びイオン交換水を加え抽出を行った。得られた粗物溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=100/3)により精製し化合物3を2.0g(化合物1からの2段階収率95%)で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:3.73(d,4H,J=12.1),3.70(s,4H),3.62(d,4H,J=12.1),3.50(s,4H),3.39(s,4H),3.30(s,4H),1.40−1.76(m,30H).
【0030】
(4)化合物4の製造
化合物3 2.0gとトリフェニルホスフィン 2.1gをTHF 15mLに溶解し、室温下14.5時間攪拌した。次いで、イオン交換水 3mLを加え、40℃に加温して21時間攪拌した。反応液を無水硫酸マグネシウムにより乾燥させた後、ろ過を行い、得られた粗物溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=10/1→クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=100/10/2)により精製し化合物4を1.5g(収率85%)で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:3.70−3.72(m,8H),3.64(d,4H,J=12.1),3.39(s,4H),3.38(s,4H),2.76(s,4H),1.40−1.74(m,30H).
【0031】
実施例 2
次に示す反応式に従って、グアニジニウム基を有する化合物5を製造した。
【化17】
【0032】
化合物5の製造
1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン 1.9gをジクロロメタン 3mLに溶解し、別途予め調製しておいた1,3−ジ−(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)グアニジン 0.5gのジクロロメタン溶液 1mLを滴下し、室温下3時間攪拌した。反応液にイオン交換水を加え抽出により精製した後、減圧条件下乾燥を行い、化合物5を0.49g(収率98%)で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:3.66−3.61(m,8H),3.53(t,2H,J=5.2),2.87(t,2H,J=5.2),1.50(s,18H).
【0033】
実施例 3
次に示す反応式に従って、線状分子鎖と分岐分子鎖の交差結合により脱アセタール体8(式中、l=227(平均値),n=3)を製造した。
【化18】
【0034】
(1)化合物6の製造方法
ポリエチレングリコール(Mw=10,000:l=226) 5.1gとp−ニトロフェニルクロロホルメート 0.62gをジクロロメタン 25mLに溶解した後、ピリジン 400μLを滴下し、室温下で19時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ、得られた沈殿物を回収した後、ジクロロメタンに溶解し、1M 硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に少量のジクロロメタンを加えた後、ジエチルエーテル中に注ぎ化合物6を3.8g(収率73%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.28(d,4H,J=9.2),7.40(d,4H,J=9.2),4.44(m,4H),3.44−3.82(m,〜1000H).
【0035】
(2)化合物7の製造方法
化合物6 0.43gと化合物4を0.050mmol含む混合物66mg及びN,N−ジメチルアミノピリジン 6mgをジクロロメタン 2mLに溶解し、室温下で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物7を0.41g(収率:92%)得た。
得られた化合物7はサイズ排除クロマトグラフィーによる分子量測定からn=3と決定した。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:5.32(m),4.20(s),3.41−3.78(m),3.22−3.23(m),1.40−1.74(m).
【0036】
(3)化合物8の製造方法
化合物7 0.18gをジクロロメタン 5mLに溶解し、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール 0.14g、p−トルエンスルホン酸一水和物を5.2mg加え、室温下で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物8を0.17g(収率98%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:6.02(m),4.22(s),3.
46−3.79(m),3.39(s),3.31(s),3.24(m).
【0037】
実施例 4
次に示す反応式に従って、カチオン型水溶性高分子(式中、l=227(平均値),n=3)を製造した。
【化19】
【0038】
(1)化合物9の製造方法
化合物8 0.17gにジクロロメタン 8mLを加え攪拌し完全に溶解させたあと、ピリジン0.11mL、p−ニトロフェニルクロロホルメート 0.11gのジクロロメタン(1mL)溶液の順に滴下し、室温下で13.5時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ、得られた沈殿物を回収した後、ジクロロメタンに溶解し、1M 硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に少量のジクロロメタンを加えた後、ジエ
チルエーテル中に注ぎ化合物9を0.15g(収率78%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.20−8.25(m),7.34−7.37(m),5.40(m),4.44(s),4.32−4.38(m),4.20(m),3.43−3.79(m).
【0039】
(2)化合物10の製造方法
化合物9 0.14gとN,N−ジメチルアミノピリジン 25mgをジクロロメタン3mLに溶解し、別途予め調製しておいた化合物5 0.24gのジクロロメタン(0.5mL)溶液を滴下し、室温下3日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物10を0.15g(収率89%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:5.61(br s),3.39−3.78(m),1.44−1.50(m).
【0040】
(3)化合物11(p−PEG10k−GN水溶液)の製造
化合物10 20mgをジクロロメタン 0.5mL及びトリフルオロ酢酸 0.25mLからなる混合溶媒に溶かし、室温下14時間攪拌し、化合物11(p−PEG10k−GN)を得た。反応液は高真空下で溶媒と副生成物を除去した後、1.24mLのイオン交換水を加えグアニジニウム濃度0.5mMのp−PEG10k−GN水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのまま使用した。
【0041】
実施例 5
次に示す反応式に従って、線状分子鎖と分岐分子鎖の交差結合により脱アセタール体13(式中、l=227(平均値),n=1)を製造した。
【化20】
【0042】
(1)化合物12の製造方法
化合物6 0.16gと化合物4 0.31mmol含む混合物0.47g及びN,N−ジメチルアミノピリジン 38mgをジクロロメタン 2mLに溶解し、室温下で14時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物12を0.15g(収率88%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:4.20(m,4H),3.20−3.79(m,〜1000H),3.21(m,4H),1.40−1.65(m,60H).
【0043】
(2)化合物13の製造方法
化合物12 0.15gをジクロロメタン 2mLに溶解し、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール 0.18g、p−トルエンスルホン酸一水和物を5mg加え、室温下で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物13を0.13g(収率91%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:4.21(m,4H),3.40−3.79(m,〜1200H),2.35(s,4H).
【0044】
実施例 6
次に示す反応式に従って、カチオン型水溶性高分子(式中、l=227(平均値),n=1)を製造した。
【化21】
【0045】
(1)化合物14の製造方法
化合物13 0.12gをジクロロメタン 6mLに溶解した後、ピリジン 126μ
L及び、別途予め調製しておいたp−ニトロフェニルクロロホルメート 0.19gのジクロロメタン 1mL溶液をそれぞれ滴下し、室温下で13.5時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ、得られた沈殿物を回収した後、ジクロロメタンに溶解させ、1M 硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に少量のジクロロメタンを加えた後、ジエチルエーテル中に注ぎ化合物14を0.11g(収率 75%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:8.18−8.24(m,28H),7.31−7.47(m,28H),4.21−4.46(m,28H),3.43−3.79(m,〜1200H).
【0046】
(2)化合物15の製造方法
化合物14 0.10gとN,N−ジメチルアミノピリジン 26mgをジクロロメタン2.5mLに溶解し、別途予め調製しておいた化合物5 0.26gのジクロロメタン溶液 0.5mLを滴下し、室温下3日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物15を0.10g(収率 80%)得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3)δ:4.04−4.17(m,16H),3.49−3.79(m,〜940H),3.35(m,4H),1.46−1.53(m,126H).
【0047】
(3)化合物16(PEG10k−GN水溶液の製造)
化合物15 10mgをジクロロメタン 0.5mL及びトリフルオロ酢酸 0.25mLからなる混合溶媒に溶かし、室温下14時間攪拌し、化合物16を得た。反応液は高真空下で溶媒と副生成物を除去した後、0.84mLのイオン交換水を加えグアニジニウム濃度0.5mMのPEG10k−GN水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのまま使用した。
【0048】
実施例 7
ハイドロゲルの製造(バインダー:p−PEG10k−GN)
0.3重量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製:重合度22,000〜70,000)1.6mLと2.5重量%の水膨潤性ケイ酸塩(ロックウッド・アディティブズ社製ラポナイトXLG)を含有する水溶液を攪拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液に実施例4の(3)で調製したグアニジニウムイオン濃度0.5mMの化合物11(p−PEG10k−GN)水溶液を0.1mL加え、ボルテックスミキサーで攪拌したところ、30分以内にハイドロゲルを形成した。このハイドロゲルをp−PEG10k−GNゲルと命名する。
【0049】
実施例 8
ハイドロゲルの製造(バインダー:PEG10k−GN)
0.3重量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製:重合度22,000〜70,000)1.6mLと2.5重量%の水膨潤性ケイ酸塩(ロックウッド・アディティブズ社製ラポナイトXLG)を含有する水溶液を攪拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液に実施例6の(3)で調製したグアニジニウムイオン濃度0.5mMの化合物16(PEG10k−GN)水溶液を0.1mL加え、ボルテックスミキサーで攪拌したところ、30分以内にハイドロゲルを形成した。このハイドロゲルをPEG10k−GNゲルと命名する。
【0050】
実施例 9
動的粘弾性の測定
実施例7で製造したp−PEG10k−GNゲル、及び実施例8で製造したPEG10k−GNゲルの動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたAnton Paar MCR
−301レオメーター(Anton Paar社製)を用いて歪み一定(γ=0.5%)の条件で測定し、
図1に示す周波数分散を得た。これらのハイドロゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)は周波数に依存しない平坦部を有しており、この領域でG’>G’’であって、擬固体状態のゲルの特徴を表した。また、これらのハイドロゲルの強度を表すG’は、ハイドロゲルの製造に用いたPEG末端に分岐部を有するポリエチレングリコールの分岐部のグアニジニウムイオンの濃度が同一であるにも拘わらず、両末端タイプ(PEG10k−GN)のバインダーから製造されるハイドロゲルよりも交差タイプ(p−PEG10k−GN)のバインダーから製造されるハイドロゲルの方が高い値を示した。すなわちこの結果は、本発明のカチオン型水溶性高分子における線状分子鎖と分岐分子鎖との交互の繰り返し構造が、該水溶性高分子から得られるハイドロゲルの強度を高め得ることを示すものである。