特許第6435557号(P6435557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6435557カチオン型水溶性高分子およびそれよりなるハイドロゲル
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  • 特許6435557-カチオン型水溶性高分子およびそれよりなるハイドロゲル 図000027
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435557
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】カチオン型水溶性高分子およびそれよりなるハイドロゲル
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20181203BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20181203BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20181203BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20181203BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   C08G65/333
   C08L71/02
   C08K3/34
   C08L33/02
   C08L101/14
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-155404(P2017-155404)
(22)【出願日】2017年8月10日
(62)【分割の表示】特願2013-104214(P2013-104214)の分割
【原出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-28081(P2018-28081A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】中澤 太一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】相田 卓三
(72)【発明者】
【氏名】石田 康博
(72)【発明者】
【氏名】為末 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大谷 政孝
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/001657(WO,A1)
【文献】 特開2011−057962(JP,A)
【文献】 特開2002−069177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00−65/48
C08L71/00−71/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1
【化1】
[式中、R及びRメチレン基を表し、X及びZはそれぞれ独立してエーテル結合、カルバメート結合又は尿素結合を表し、Yはペンタエリスリトール由来の構造又はそのオリゴマー若しくはそれらの組合せからなる構造を表し、lは100乃至1000の整数を表し、nは1乃至の整数を表し、Qは式7
【化2】
(式中、Rはグアニジン基の、塩酸塩、臭化水素塩、フッ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩を表し、R及びRメチレン基を表し、kは乃至の整数を表す。)で表
される基を表し、X−Y−Zで表される構造は式3
【化3】
(式中、X、Z及びQは前記定義と同様の意味を表し、Zは前記Zの定義と同様の意味を表し、Zと同一であっても異なっていてもよく、pはの整数を表す。)で表される分岐点を有する構造を表す。]で表される、カチオン型水溶性高分子。
【請求項2】
式8:
【化4】
(式中、lは20乃至100000の整数を表し、nは1乃至10の整数を表す)で表される、カチオン型水溶性高分子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカチオン型水溶性高分子およびケイ酸塩粒子を含有してなるハイドロゲル材料。
【請求項4】
前記ハイドロゲル材料が、さらにカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子を含有してなる請求項3に記載のハイドロゲル材料。
【請求項5】
前記水溶性有機高分子が、完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である請求項4に記載のハイドロゲル材料。
【請求項6】
前記水溶性有機高分子が、重量平均分子量100万乃至1,000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である請求項5に記載のハイドロゲル材料。
【請求項7】
前記ケイ酸塩粒子が、水膨潤性ケイ酸塩粒子である請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載のハイドロゲル材料。
【請求項8】
前記ケイ酸塩粒子が、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である請求項7に記載のハイドロゲル材料。
【請求項9】
請求項3乃至請求項8のいずれか一項に記載のハイドロゲル材料に水を含有させてなるハイドロゲル。
【請求項10】
前記水の含有量が、前記ハイドロゲル材料に対して80%以上である請求項9に記載のハイドロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲルに関し、より詳しくは、ハイドロゲル材料であるカチオン型水溶性高分子、およびそれを含有してなるハイドロゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトマテリアルであるハイドロゲルは主成分が水であることから、生体に対して適合性が高く、環境への負荷が低く、近年さまざまな分野において利用が広がっている。そのため、ハイドロゲルの特徴である吸水性、伸縮性、透明性を維持しつつ機械的強度を向上させる技術が数多く報告されている。ハイドロゲルの構成成分としては、ポリアクリルアミドやポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなど水溶性高分子が広く使用されている。中でもポリアクリルアミド系又は架橋ポリエチレングリコール系の水溶性高分子と水膨潤性ケイ酸塩粒子の2成分からなる複合ハイドロゲルは、ハイドロゲルを高強度化させることに成功し、格段に利用範囲を広めることになった(特許文献1及び特許文献2)。しかし、これら有機無機複合ハイドロゲルでは、毒性が懸念される未反応のモノマーや、重合開始剤などの試薬がゲル中に残存する可能性がある。また、ゲル化の際に化学反応を伴うため、非化学製造業者が有機無機複合ハイドロゲルを製造するのは困難である。
室温で混合することで製造できる自己支持性の有機無機複合ハイドロゲルとして、ポリカチオン性の末端基を有するデンドリマー型バインダーと層状粘土鉱物を含有するハイドロゲルが知られている(特許文献3)。該デンドリマーのデンドロン部は、多段階の合成反応によって製造されるため、製造コストが高いという課題がある。そこで、デンドリマー型バインダーの合成法を簡素化したブロックポリマー型バインダーが報告されている(非特許文献1)。
最近では、水膨潤性ケイ酸塩粒子とその分散剤、ポリアクリル酸塩とを混合するだけで作製可能な汎用性の高い有機無機複合ハイドロゲルも報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−053629号公報
【特許文献2】特許第4704506号公報
【特許文献3】国際公開第2011/001657号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第60回高分子討論会予稿集、Vol.60,No.2,p.5541(2011)
【非特許文献2】第61回高分子学会年次大会予稿集、Vol.61,No.1,p.683(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような従来のハイドロゲルの欠点を克服し、簡便に製造できかつ機械的強度の高い新規なハイドロゲルおよびその材料であるカチオン型水溶性高分子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、安価な原料から合成可能なバインダーとして、新規なカチオン型水溶性高分子を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、当該バインダーとケイ酸塩を混合して作製されるハイドロゲルを提供するものである。
本発明は第1観点として、線状分子鎖と分岐分子鎖とが交互に結合して主鎖を形成し、末端基がカチオン性官能基である側鎖を有するカチオン型水溶性高分子に関する。
第2観点として前記側鎖が、ポリエーテル構造を有する側鎖である第1観点に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第3観点として前記カチオン性官能基がグアニジン基、チオ尿素基、イソチオ尿素基、及びイソ尿素基からなる群より選択される少なくとも1種と酸との付加塩である第1観点又は第2観点に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第4観点として前記酸との付加塩が塩酸塩、臭化水素塩、フッ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である第3観点に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第5観点として前記線状分子鎖と分岐分子鎖とがエーテル(―O―)結合、アミノ(―NH―)結合、チオエーテル(―S―)結合、炭酸エステル(―OCOO―)結合、カルバメート(―OCONH―)結合、及び尿素(―NHCONH―)結合からなる群より選択される少なくとも1種で結合された第1観点乃至第4観点のいずれか一に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第6観点として前記ポリエーテル構造がポリアルキレングリコール構造である第2観点乃至第5観点のいずれか一つに記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第7観点として前記分岐分子鎖が多価アルコール由来の分岐点を有する第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第8観点として、前記カチオン型水溶性高分子が、一般式1
【化5】
[式中、R及びRはそれぞれ独立して、1種又はそれ以上の炭素原子数1乃至10のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキレン基を表し、X及びZはそれぞれ独立してエーテル結合、アミノ結合、チオエーテル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、尿素結合、又はアミド結合を表し、Yはペンタエリスリトール又はイノシトール由来の構造、又はそれらのオリゴマー若しくはそれらの組合せからなる構造を表し、lは20乃至100000の整数を表し、nは1乃至10の整数を表し、Qは式7
【化6】
(式中、Rはグアニジン基、チオ尿素基、イソチオ尿素基又はイソ尿素基の、塩酸塩、臭化水素塩、フッ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩を表し、R及びRはそれぞれ独立して、1種又はそれ以上の炭素原子数1乃至10のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキレン基を表し、kは1乃至10の整数を表す。)で表される基を表す。]で表される第6観点又は第7観点に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第9観点として、一般式1におけるX−Y−Zで表される構造が式2乃至式6で表される分岐点を有する構造を表す第8観点に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
【化7】
(式中、X、Z及びQは前記式1における定義と同様の意味を表し、Zは前記式1におけるZの定義と同様の意味を表し、Zと同一であっても異なっていてもよく、pは0乃至3の整数を表す。)
第10観点として前記カチオン型水溶性高分子が式8
【化8】
(式中、lは20乃至100000の整数を表し、nは1乃至10の整数を表す)で表される第8観点又は第9観点に記載のカチオン型水溶性高分子に関する。
第11観点として第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のカチオン型水溶性高
分子およびケイ酸塩粒子を含有してなるハイドロゲル材料に関する。
第12観点として前記ハイドロゲル材料が、さらにカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子を含有してなる第11観点に記載のハイドロゲル材料に関する。
第13観点として前記水溶性有機高分子が、完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である第12観点に記載のハイドロゲル材料に関する。
第14観点として前記水溶性有機高分子が、重量平均分子量100万乃至1,000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である第13観点に記載のハイドロゲル材料に関する。
第15観点として前記ケイ酸塩粒子が、水膨潤性ケイ酸塩粒子である第11観点乃至第14観点のいずれか一つに記載のハイドロゲル材料に関する。
第16観点として前記ケイ酸塩粒子が、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である第15観点に記載のハイドロゲル材料に関する。
第17観点として第11観点乃至第16観点のいずれか一つに記載のハイドロゲル材料に水を含有させてなるハイドロゲルに関する。
第18観点として前記水の含有量が、前記ハイドロゲル材料に対して80%以上である第17観点に記載のハイドロゲルに関する。
ここで、本発明の好ましい態様のうち一つは、一般式1
【化9】
[式中、R及びRメチレン基を表し、X及びZはそれぞれ独立してエーテル結合、カルバメート結合又は尿素結合を表し、Yはペンタエリスリトール由来の構造又はそのオリゴマー若しくはそれらの組合せからなる構造を表し、lは100乃至1000の整数を表し、nは1乃至の整数を表し、Qは式7
【化10】
(式中、Rはグアニジン基の、塩酸塩、臭化水素塩、フッ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩を表し、R及びRメチレン基を表し、kは乃至の整数を表す。)で表される基を表し、X−Y−Zで表される構造は式3
【化11】
(式中、X、Z及びQは前記定義と同様の意味を表し、Zは前記Zの定義と同様の意味を表し、Zと同一であっても異なっていてもよく、pはの整数を表す。)で表される分岐点を有する構造を表す。]で表される、カチオン型水溶性高分子に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカチオン型水溶性高分子は、線状分子鎖と、カチオン性官能基を末端基として有する側鎖が結合した分岐分子鎖とが交互に結合して主鎖を形成するという構成であり、粘土鉱物及びポリアクリル酸と混合することにより、機械的強度の高いハイドロゲルを形成し得るものである。
すなわち、本発明のカチオン型水溶性高分子をハイドロゲル材料として適用することにより、自立性のハイドロゲルを簡便かつ迅速に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の実施例7で製造したp−PEG10k−GNゲル及び実施例8で製造したPEG10k−GNゲルの実施例9における動的粘弾性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカチオン型水溶性高分子は、線状分子鎖と分岐分子鎖とが交互に結合して主鎖を形成し、そして末端基がカチオン性官能基である側鎖を有するものである。
前記線状分子鎖としては、特に限定されるものではないが、ポリエーテル構造を有する線状分子鎖であることが好ましい。ポリエーテル構造としてはポリアルキレングリコール構造が好ましく、より好ましくはポリエチレングリコール構造である。
また、前記線状分子鎖は親水性である必要があり、アルキレングリコールの繰り返し数(l)としては、特に制限はないが、20乃至100000、好ましくは100乃至1000、より好ましくは150乃至1000、更に好ましくは200乃至500である。
【0010】
前記分岐分子鎖は分岐点を有するものである。また、該分岐点としては特に限定されるものでないが、多価アルコール由来の構造が好ましく、そして多価アルコールとしては下記の式2a乃至式6aで表される多価アルコールが特に好ましい。
【化8】
(式3a中、pは0乃至3の整数を表す。)
そして、線状分子鎖と分岐分子鎖は、エーテル(―O―)結合、アミノ(―NH―)結合、チオエーテル(―S―)結合、炭酸エステル(―OCOO―)結合、カルバメート(―OCONH―)結合、尿素(―NHCONH―)結合及びアミド結合等から選択される少なくとも1種の任意の結合を介して結合することができる。
また、本発明のカチオン型水溶性高分子において主鎖を形成する線状高分子鎖と分岐分子鎖を含む繰り返し単位の個数(n)としては、特に限定されるものでないが、好ましくは1乃至10、より好ましくは1乃至5である。
【0011】
末端基にカチオン性官能基を有する側鎖の構造としては特に限定されるものではないが、ポリエーテル構造を有するものであることが好ましい。ポリエーテル構造としては、ポリアルキレングリコール構造を有することが好ましく、より好ましくはポリエチレングリコール構造を有する。
側鎖におけるアルキレングリコールの繰り返し数(k)としては、特に制限はないが、1乃至10、好ましくは2乃至5である。
また、側鎖の末端に結合する前記カチオン性官能基としては、酸との付加塩の形態である、グアニジン基、チオ尿素基、イソチオ尿素基及びイソ尿素基が挙げられるが、これに限定されるものでない。前記酸との付加塩としては、特に限定されるものでないが、塩酸塩、臭化水素塩、フッ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩が好ましい。
【0012】
また、本発明に用いるカチオン型水溶性高分子は、好ましくは一般式1で表される。
【化9】
一般式1において、R及びRはそれぞれ独立して、1種又はそれ以上の炭素原子数1乃至10のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキレン基を表す。また、X及びZはそれぞれ独立してエーテル(―O―)結合、アミノ(―NH―)結合、チオエーテル(―S―)結合、炭酸エステル(―OCOO―)結合、カルバメート(―OCONH―)結合、尿素(―NHCONH―)結合又はアミド結合を表し、好ましくはエーテル結合、カルバメート結合、尿素結合を表し、Yはペンタエリスリトール又はイノシトール由来の構造、又はそれらのオリゴマー若しくはそれらの組合せからなる構造を表す。
また、一般式1において、Qは式7で表される基を表す。
【化10】
式7において、Rはグアニジン基、チオ尿素基、イソチオ尿素基又はイソ尿素基の、塩酸塩、臭化水素塩、フッ化水素塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩を表し、R及びRはそれぞれ独立して、1種又はそれ以上の炭素原子数1乃至10のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20のアルキレン基を表す。)で表される基を表す。
また、一般式1のlは20乃至100000の整数を表し、好ましくは100乃至1000の整数を表し、nは1乃至10の整数を表し、好ましくは1乃至5の整数である。式7のkは1乃至10の整数を表し、好ましくは2乃至5の整数である。
【0013】
一般式1のZ−Y−Xは式2乃至式6に示す多分岐構造を表す。
【化11】
式2乃至式6中、X、Z及びQは前記式1における定義と同様の意味を表し、Zは前記式1におけるZの定義と同様の意味を表し、Zと同一であっても異なっていてもよく、pは0乃至3の整数を表す。
Z−Y−Xは、好ましくは式3においてpが1であるトリペンタエリスリトール由来の多分岐構造を表す。
【0014】
一般式1で表される直鎖の親水性ポリマーとしては、ポリアルキレングリコールでも良く、好ましくはポリエチレングリコールである。
【0015】
本発明のさらに好ましいカチオン型水溶性高分子は、式8
【化12】
(式中、lは100乃至1000の整数を表し、nは1乃至5の整数を表す)で表されるカチオン型水溶性高分子である。
【0016】
本発明のカチオン型水溶性高分子は以下の方法で製造することができる。
一般式1のY部の製造は、以下の反応式に示す方法で製造できる。
【化13】
(式中、pTSAはp−トルエンスルホン酸を表し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを表し、TEAはトリエチルアミンを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、THFはテトラヒドロフランを表す)
【0017】
トリペンタエリスリトールへのシクロヘキサノンのアセタール保護は公知の方法、例えばH.Al−Mughaid,T.B.Grindley,Can.J.Chem.84,516−521(2006)に記載の方法により製造することができる。その後のヒドロキシ基(OH)のアミノ基(NH)変換は、上記図に示す通り、メシル化、アジ化、還元反応を経て製造することができる。
【0018】
線状分子鎖と分岐分子鎖との交差結合および脱アセタール化は以下の反応式に示す方法で実施することができる。
【化14】
(式中、DMAPはN,N−ジメチルアミノピリジンを表し、pTSAはp−トルエンスルホン酸を表す)
【0019】
このように製造された交差化合物のヒドロキシ基およびアミノ基末端へ、以下の反応式に示す方法でグアニジン基を導入し、カチオン型水溶性高分子を製造することができる。
【化15】
(式中、DMAPはN,N−ジメチルアミノピリジンを表し、TFAはトリフルオロ酢酸を表し、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す)
【0020】
このようにして製造された本発明のカチオン型水溶性高分子は、溶液状としてそのままハイドロゲル材料とすることもできるし、乾燥させてハイドロゲルの材料とすることもできる。
ハイドロゲル製造に使用するカチオン型水溶性高分子の使用量はハイドロゲル100部の質量に基いて0.001質量部から10質量部の範囲であり、好ましくは0.01質量部から5質量部である。
【0021】
本発明に用いるケイ酸塩としては、例えば、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母等が挙げられ、水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成するものが好ましい。ケイ酸塩粒子の一次粒子の形状としては、円盤状、板状、球状、粒状、立方
状、針状、棒状、無定形等が挙げられ、直径5nm乃至1000nmの円盤状又は板状のものが好ましい。
ケイ酸塩の好ましい具体例としては、層状ケイ酸塩が挙げられ、市販品として容易に入手可能な例として、ロックウッド・アディティブズ社製のラポナイト(LAPONITE、ロックウッド・アディティブス社登録商標)XLG(合成ヘクトライト)、XLS(合成ヘクトライト、分散剤としてピロリン酸ナトリウム含有)、XL21(ナトリウム・マグネシウム・フルオロシリケート)、RD(合成ヘクトライト)、RDS(合成ヘクトライト、分散剤として無機ポリリン酸塩含有)、及びS482(合成ヘクトライト、分散剤含有);コープケミカル株式会社製のルーセンタイト(コープケミカル株式会社登録商標)SWN(合成スメクタイト)及びSWF(合成スメクタイト)、ミクロマイカ(合成雲母)、及びソマシフ(コープケミカル株式会社登録商標、合成雲母);クニミネ工業株式会社製のクニピア(クニミネ工業株式会社登録商標、モンモリロナイト)、スメクトン(クニミネ工業株式会社登録商標)SA(合成サポナイト);株式会社ホージュン製のベンゲル(株式会社ホージュン登録商標、天然ベントナイト精製品)等が挙げられる。
ケイ酸塩の使用量はハイドロゲル100部の質量に基いて0.01質量部乃至20質量部の範囲であり、好ましくは0.1質量部乃至5質量部である。
【0022】
本発明に用いるカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子としては、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの酸又はその塩などが挙げられ、好ましくはポリアクリル酸又はその塩である。ポリアクリル酸又はその塩としては架橋又は共重合されてもよく、塩としてはナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
ポリアクリル酸又はその塩の平均分子量としては100万以上(100万乃至1000万)であり、好ましくは平均分子量が250万以上500万以下の高重合ポリアクリル酸又はその塩である。
高重合ポリアクリル酸塩としては完全中和物から部分中和物のいずれも使用できる。
高重合ポリアクリル酸又はその塩の使用量はハイドロゲル100部の質量に基いて0.001質量部乃至10質量部の範囲であり、好ましくは0.01質量部乃至5質量部である。
【0023】
本発明のハイドロゲルの製造方法としては、重合反応や架橋反応が不要であり、構成成分をただ混合するだけでよい。
カチオン型水溶性高分子、ケイ酸塩、高重合ポリアクリル酸又はその塩の混合方法は、予め調製した粘土鉱物の水分散液に高重合ポリアクリル酸又はその塩の水溶液を混合させたのち、バインダーを加えて1乃至30秒撹拌するとハイドロゲルが作製できる。
撹拌は撹拌羽根や撹拌子による撹拌のほかに振盪機(ボルテックスミキサー)や自転・公転ミキサーを使用することにより行っても良い。
混合の際の温度は0℃乃至100℃の範囲であり、好ましくは5℃乃至50℃である。
【0024】
本発明のハイドロゲルは高い含水量、高透明、高伸縮性を有するため、ソフトマテリアル素材として医療、化粧品、生活用品、衛生用品、建築など幅広い分野において好適に使用することを可能とする。
本発明のハイドロゲルは乾燥させることも可能で、これにより高い吸水性、膨潤性を示すことができる。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
実施例 1
次に示す反応式に従って、分岐分子鎖中間体である化合物4を製造した。
【化16】
【0027】
(1)化合物1の製造
化合物1をH.Al−Mughaid,T.B.Grindley,Can.J.Chem.84,516−521(2006)に記載の方法により製造した。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:3.68(s,8H),3.66(s,4H),3.59(s,4H),3.53(s,4H),3.44(s,4H),1.40−1.75(m,30H).
【0028】
(2)化合物2の製造
化合物1 1.9gをジクロロメタン 50mLに溶解し、次いでトリエチルアミン 1.8mLを加えた。溶液を氷浴にて0℃に調整した後、メタンスルホニルクロリド 0.7mLを滴下した。氷浴をはずし、室温にて2時間攪拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムにて抽出を行い、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後の粗物溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム→クロロホルム/メタノール=100/5)により精製し化合物2を含む混合物を2.7g得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:4.35(s,4H),3.81(d,4H,J=12.6),3.69(s,4H),3.67(d,4H,J=12.6),3.38(s,4H),3.32(s,4H),3.03(s,6H),1.41−1.80(m,30H).
【0029】
(3)化合物3の製造
化合物2を含む混合物 2.7gとアジ化ナトリウム 0.8gをジメチルスルホキシド 15mLに溶解し、100℃で12時間攪拌した。攪拌後の溶液を室温まで放冷し、ジクロロメタン及びイオン交換水を加え抽出を行った。得られた粗物溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=100/3)により精製し化合物3を2.0g(化合物1からの2段階収率95%)で得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:3.73(d,4H,J=12.1),3.70(s,4H),3.62(d,4H,J=12.1),3.50(s,4H),3.39(s,4H),3.30(s,4H),1.40−1.76(m,30H).
【0030】
(4)化合物4の製造
化合物3 2.0gとトリフェニルホスフィン 2.1gをTHF 15mLに溶解し、室温下14.5時間攪拌した。次いで、イオン交換水 3mLを加え、40℃に加温して21時間攪拌した。反応液を無水硫酸マグネシウムにより乾燥させた後、ろ過を行い、得られた粗物溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=10/1→クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=100/10/2)により精製し化合物4を1.5g(収率85%)で得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:3.70−3.72(m,8H),3.64(d,4H,J=12.1),3.39(s,4H),3.38(s,4H),2.76(s,4H),1.40−1.74(m,30H).
【0031】
実施例 2
次に示す反応式に従って、グアニジニウム基を有する化合物5を製造した。
【化17】
【0032】
化合物5の製造
1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン 1.9gをジクロロメタン 3mLに溶解し、別途予め調製しておいた1,3−ジ−(tert−ブトキシカルボニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニル)グアニジン 0.5gのジクロロメタン溶液 1mLを滴下し、室温下3時間攪拌した。反応液にイオン交換水を加え抽出により精製した後、減圧条件下乾燥を行い、化合物5を0.49g(収率98%)で得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:3.66−3.61(m,8H),3.53(t,2H,J=5.2),2.87(t,2H,J=5.2),1.50(s,18H).
【0033】
実施例 3
次に示す反応式に従って、線状分子鎖と分岐分子鎖の交差結合により脱アセタール体8(式中、l=227(平均値),n=3)を製造した。
【化18】
【0034】
(1)化合物6の製造方法
ポリエチレングリコール(Mw=10,000:l=226) 5.1gとp−ニトロフェニルクロロホルメート 0.62gをジクロロメタン 25mLに溶解した後、ピリジン 400μLを滴下し、室温下で19時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ、得られた沈殿物を回収した後、ジクロロメタンに溶解し、1M 硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に少量のジクロロメタンを加えた後、ジエチルエーテル中に注ぎ化合物6を3.8g(収率73%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:8.28(d,4H,J=9.2),7.40(d,4H,J=9.2),4.44(m,4H),3.44−3.82(m,〜1000H).
【0035】
(2)化合物7の製造方法
化合物6 0.43gと化合物4を0.050mmol含む混合物66mg及びN,N−ジメチルアミノピリジン 6mgをジクロロメタン 2mLに溶解し、室温下で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物7を0.41g(収率:92%)得た。
得られた化合物7はサイズ排除クロマトグラフィーによる分子量測定からn=3と決定した。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:5.32(m),4.20(s),3.41−3.78(m),3.22−3.23(m),1.40−1.74(m).
【0036】
(3)化合物8の製造方法
化合物7 0.18gをジクロロメタン 5mLに溶解し、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール 0.14g、p−トルエンスルホン酸一水和物を5.2mg加え、室温下で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物8を0.17g(収率98%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:6.02(m),4.22(s),3.
46−3.79(m),3.39(s),3.31(s),3.24(m).
【0037】
実施例 4
次に示す反応式に従って、カチオン型水溶性高分子(式中、l=227(平均値),n=3)を製造した。
【化19】
【0038】
(1)化合物9の製造方法
化合物8 0.17gにジクロロメタン 8mLを加え攪拌し完全に溶解させたあと、ピリジン0.11mL、p−ニトロフェニルクロロホルメート 0.11gのジクロロメタン(1mL)溶液の順に滴下し、室温下で13.5時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ、得られた沈殿物を回収した後、ジクロロメタンに溶解し、1M 硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に少量のジクロロメタンを加えた後、ジエ
チルエーテル中に注ぎ化合物9を0.15g(収率78%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:8.20−8.25(m),7.34−7.37(m),5.40(m),4.44(s),4.32−4.38(m),4.20(m),3.43−3.79(m).
【0039】
(2)化合物10の製造方法
化合物9 0.14gとN,N−ジメチルアミノピリジン 25mgをジクロロメタン3mLに溶解し、別途予め調製しておいた化合物5 0.24gのジクロロメタン(0.5mL)溶液を滴下し、室温下3日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物10を0.15g(収率89%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:5.61(br s),3.39−3.78(m),1.44−1.50(m).
【0040】
(3)化合物11(p−PEG10k−GN水溶液)の製造
化合物10 20mgをジクロロメタン 0.5mL及びトリフルオロ酢酸 0.25mLからなる混合溶媒に溶かし、室温下14時間攪拌し、化合物11(p−PEG10k−GN)を得た。反応液は高真空下で溶媒と副生成物を除去した後、1.24mLのイオン交換水を加えグアニジニウム濃度0.5mMのp−PEG10k−GN水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのまま使用した。
【0041】
実施例 5
次に示す反応式に従って、線状分子鎖と分岐分子鎖の交差結合により脱アセタール体13(式中、l=227(平均値),n=1)を製造した。
【化20】
【0042】
(1)化合物12の製造方法
化合物6 0.16gと化合物4 0.31mmol含む混合物0.47g及びN,N−ジメチルアミノピリジン 38mgをジクロロメタン 2mLに溶解し、室温下で14時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物12を0.15g(収率88%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:4.20(m,4H),3.20−3.79(m,〜1000H),3.21(m,4H),1.40−1.65(m,60H).
【0043】
(2)化合物13の製造方法
化合物12 0.15gをジクロロメタン 2mLに溶解し、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール 0.18g、p−トルエンスルホン酸一水和物を5mg加え、室温下で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物13を0.13g(収率91%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:4.21(m,4H),3.40−3.79(m,〜1200H),2.35(s,4H).
【0044】
実施例 6
次に示す反応式に従って、カチオン型水溶性高分子(式中、l=227(平均値),n=1)を製造した。
【化21】
【0045】
(1)化合物14の製造方法
化合物13 0.12gをジクロロメタン 6mLに溶解した後、ピリジン 126μ
L及び、別途予め調製しておいたp−ニトロフェニルクロロホルメート 0.19gのジクロロメタン 1mL溶液をそれぞれ滴下し、室温下で13.5時間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ、得られた沈殿物を回収した後、ジクロロメタンに溶解させ、1M 硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に少量のジクロロメタンを加えた後、ジエチルエーテル中に注ぎ化合物14を0.11g(収率 75%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:8.18−8.24(m,28H),7.31−7.47(m,28H),4.21−4.46(m,28H),3.43−3.79(m,〜1200H).
【0046】
(2)化合物15の製造方法
化合物14 0.10gとN,N−ジメチルアミノピリジン 26mgをジクロロメタン2.5mLに溶解し、別途予め調製しておいた化合物5 0.26gのジクロロメタン溶液 0.5mLを滴下し、室温下3日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル中に注ぎ化合物15を0.10g(収率 80%)得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)δ:4.04−4.17(m,16H),3.49−3.79(m,〜940H),3.35(m,4H),1.46−1.53(m,126H).
【0047】
(3)化合物16(PEG10k−GN水溶液の製造)
化合物15 10mgをジクロロメタン 0.5mL及びトリフルオロ酢酸 0.25mLからなる混合溶媒に溶かし、室温下14時間攪拌し、化合物16を得た。反応液は高真空下で溶媒と副生成物を除去した後、0.84mLのイオン交換水を加えグアニジニウム濃度0.5mMのPEG10k−GN水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのまま使用した。
【0048】
実施例 7
ハイドロゲルの製造(バインダー:p−PEG10k−GN)
0.3重量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製:重合度22,000〜70,000)1.6mLと2.5重量%の水膨潤性ケイ酸塩(ロックウッド・アディティブズ社製ラポナイトXLG)を含有する水溶液を攪拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液に実施例4の(3)で調製したグアニジニウムイオン濃度0.5mMの化合物11(p−PEG10k−GN)水溶液を0.1mL加え、ボルテックスミキサーで攪拌したところ、30分以内にハイドロゲルを形成した。このハイドロゲルをp−PEG10k−GNゲルと命名する。
【0049】
実施例 8
ハイドロゲルの製造(バインダー:PEG10k−GN)
0.3重量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製:重合度22,000〜70,000)1.6mLと2.5重量%の水膨潤性ケイ酸塩(ロックウッド・アディティブズ社製ラポナイトXLG)を含有する水溶液を攪拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液に実施例6の(3)で調製したグアニジニウムイオン濃度0.5mMの化合物16(PEG10k−GN)水溶液を0.1mL加え、ボルテックスミキサーで攪拌したところ、30分以内にハイドロゲルを形成した。このハイドロゲルをPEG10k−GNゲルと命名する。
【0050】
実施例 9
動的粘弾性の測定
実施例7で製造したp−PEG10k−GNゲル、及び実施例8で製造したPEG10k−GNゲルの動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたAnton Paar MCR
−301レオメーター(Anton Paar社製)を用いて歪み一定(γ=0.5%)の条件で測定し、図1に示す周波数分散を得た。これらのハイドロゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)は周波数に依存しない平坦部を有しており、この領域でG’>G’’であって、擬固体状態のゲルの特徴を表した。また、これらのハイドロゲルの強度を表すG’は、ハイドロゲルの製造に用いたPEG末端に分岐部を有するポリエチレングリコールの分岐部のグアニジニウムイオンの濃度が同一であるにも拘わらず、両末端タイプ(PEG10k−GN)のバインダーから製造されるハイドロゲルよりも交差タイプ(p−PEG10k−GN)のバインダーから製造されるハイドロゲルの方が高い値を示した。すなわちこの結果は、本発明のカチオン型水溶性高分子における線状分子鎖と分岐分子鎖との交互の繰り返し構造が、該水溶性高分子から得られるハイドロゲルの強度を高め得ることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、新規なカチオン型水溶性高分子およびそれを含有してなるハイドロゲルを提供するものである。当該ハイドロゲルは、例えば、医療、化粧品、生活用品、衛生用品、バイオ関連、建築などの分野において好適に使用することができる。
図1