特許第6435907号(P6435907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6435907ヘキサヒドロフロフラノール誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435907
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ヘキサヒドロフロフラノール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   C07D493/04 101C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-27257(P2015-27257)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-150901(P2016-150901A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】林 裕美
(72)【発明者】
【氏名】秋山 敏彦
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−518096(JP,A)
【文献】 特表2007−520468(JP,A)
【文献】 特表2012−501316(JP,A)
【文献】 特表2009−531441(JP,A)
【文献】 特開2004−223451(JP,A)
【文献】 芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol.18, No.10,p.81-96
【文献】 第4版 実験化学講座1、基本操作,1991年,p.184-189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程A:式(II−1)
で示される化合物、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)及び塩基を、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、又はtert−ブチルメチルエーテルである溶媒の存在下で混合して、式(I−1)
で示される化合物を含む溶液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた溶液に2−プロパノールを混合して、式(I−1)で示される化合物を析出させる工程、及び
工程C:工程Bで析出させた式(I−1)で示される化合物をろ過により取り出す工程
を含む、式(I−1)で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
工程D1:式(II−0)
で示される化合物、バークホルデリア(Burkholderia)属及びキャンディダ(Candida)属からなる群より選ばれる微生物を起源とする1以上の酵素、並びに酢酸ビニルを混合して、式(II−1)
で示される化合物と式(III−2)
で示される化合物とを含む混合物を得る工程、
工程A1:工程D1で得られた混合物、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)及び塩基を、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、又はtert−ブチルメチルエーテルである溶媒の存在下で混合して、式(I−1)
で示される化合物を含む溶液を得る工程、
工程B1:工程A1で得られた溶液に2−プロパノールを混合して、式(I−1)で示される化合物を析出させる工程、及び
工程C1:工程B1で析出させた式(I−1)で示される化合物をろ過により取り出す工程
を含む、式(I−1)で示される化合物の製造方法。
【請求項3】
酵素が、バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)及びキャンディダ アンタークティカ(Candida antarctica)からなる群より選ばれる微生物を起源とする1以上の酵素である請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗エイズ薬である化合物(特許文献1等参照)の製造中間体として有用なヘキサヒドロフロフラノール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I−1)
で示される化合物(以下、化合物(I−1)とも記す)は、抗エイズ薬である化合物の製造中間体として有用であり(特許文献1参照)、特許文献1には、(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)、トリエチルアミン及びアセトニトリルを混合し、クエンチした後に塩化メチレンを用いて抽出し、濃縮後にシリカゲルカラムにより精製して化合物(I−1)を得る方法が記載されている。
一方、特許文献2には、(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)、トリエチルアミン及びアセトニトリルを混合し、クエンチした後に酢酸エチルを用いて抽出し、濃縮後にメタノールを加えて化合物(I−1)を析出させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1999/67417号
【特許文献2】国際公開第2011/092687号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、化合物(I−1)の新たな製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、後述の式(II−1)で示される化合物、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)及び塩基を、エーテル類及び酢酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の溶媒の存在下で混合して、化合物(I−1)を含む溶液を得たのち、得られた溶液に2−プロパノールを混合して化合物(I−1)を析出させて、析出した化合物(I−1)をろ過することにより化合物(I−1)を製造する方法を見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 工程A:式(II−1)
で示される化合物(以下、化合物(II−1)とも記す)、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)及び塩基を、エーテル類及び酢酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の溶媒の存在下で反応させて、式(I−1)
で示される化合物を含む溶液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた溶液に2−プロパノールを混合して、式(I−1)で示される化合物を析出させる工程、及び
工程C:工程Bで析出させた式(I−1)で示される化合物をろ過により取り出す工程
を含む、式(I−1)で示される化合物の製造方法。
[2] 工程Aにおける溶媒が、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、又はtert−ブチルメチルエーテルである[1]に記載の製造方法。
[3] 工程D1:式(II−0)
で示される化合物(以下、化合物(II−0)とも記す)、バークホルデリア(Burkholderia)属及びキャンディダ(Candida)属からなる群より選ばれる微生物を起源とする1以上の酵素、並びに酢酸ビニルを混合して、式(II−1)
で示される化合物と式(III−2)
で示される化合物(以下、化合物(III−2)とも記す)とを含む混合物を得る工程、
工程A1:工程D1で得られた混合物、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)及び塩基を、エーテル類及び酢酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の溶媒の存在下で反応させて、式(I−1)
で示される化合物を含む溶液を得る工程、
工程B1:工程A1で得られた溶液に2−プロパノールを混合して、式(I−1)で示される化合物を析出させる工程、及び
工程C1:工程B1で析出させた式(I−1)で示される化合物をろ過により取り出す工程
を含む、式(I−1)で示される化合物の製造方法。
[4] 酵素が、バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)及びキャンディダ アンタークティカ(Candida antarctica)からなる群より選ばれる微生物を起源とする1以上の酵素である[3]に記載の製造方法。
[5] 工程A1における溶媒が、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、又はtert−ブチルメチルエーテルである[3]又は[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により化合物(I−1)を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
化合物(II−0)は、国際公開第2014/024898号に記載の方法により製造することができる。また、化合物(II−1)は、例えばTetrahedron Lett. 1995, 36, 505.に記載の方法により製造することができる。
【0008】
まず、工程Aについて記載する。
工程Aでは、化合物(II−1)、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)及び塩基を、エーテル類及び酢酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の溶媒の存在下で混合する。
炭酸ジ(N−スクシンイミジル)の使用量は、通常、化合物(II−1)1モルに対して1.15〜1.25モルである。
使用される塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン等が挙げられる。
塩基の使用量は、通常、化合物(II−1)1モルに対して0.5〜1.4モルである。
使用される溶媒は、エーテル類及び酢酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の溶媒である。
エーテル類としては、テトラヒドロフラン(以下、THFとも記す)、tert−ブチルメチルエーテル及びシクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
酢酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及び酢酸イソブチル等が挙げられる。
使用される溶媒としては、好ましくはTHF、酢酸エチル、及びtert−ブチルメチルエーテルである。
溶媒の使用量は、少ない場合には攪拌が困難となり、多すぎる場合には収率が低下することから、通常化合物(II−1)1重量部に対して1.0〜5.0重量部、好ましくは1.0〜3.0重量部、より好ましくは1.5〜1.8重量部である。
混合温度は通常35℃〜45℃であり、混合時間は通常3〜24時間である。
化合物(I−1)の生成は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により確認することができる。
【0009】
工程Bについて記載する。
工程Bでは、工程Aで得られた溶液に2−プロパノールを混合することにより、化合物(I−1)を析出させる。
混合は、化合物(I−1)を含む溶液に2−プロパノールを滴下するのが好ましい。
2−プロパノールの使用量は、工程Aで得られた溶液中の溶媒量の1〜30重量倍であり、好ましくは2〜7重量倍である。
混合温度は通常5〜45℃であるが、15〜25℃で混合するのが好ましい。
混合時間は通常0.5〜2時間である。
混合終了後は、通常0℃〜5℃に冷却して、1〜24時間同温度で撹拌を行う。
【0010】
工程Cについて記載する。
工程Cでは、工程Bで析出した化合物(I−1)をろ過により取り出す。
ろ過としては、加圧ろ過器、減圧ろ過器、遠心ろ過器等を用いるろ過が挙げられ、ろ過後の化合物(I−1)は、メタノール、2−プロパノール、tert−ブチルメチルエーテルまたはトルエン等で洗浄し、乾燥してもよい。また、得られた化合物(I−1)は、さらに精製してもよい。
【0011】
工程D1について記載する。
工程D1では、化合物(II−0)、バークホルデリア(Burkholderia)属及びキャンディダ(Candida)属からなる群より選ばれる微生物を起源とする1以上の酵素、並びに酢酸ビニルを混合して、化合物(II−1)と化合物(III−2)とを含む混合物を得る。
酵素はバークホルデリア(Burkholderia)属及びキャンディダ(Candida)属からなる群より選ばれる微生物を起源とし、バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)及びキャンディダ アンタークティカ(Candida antarctica)からなる群より選ばれる微生物を起源とするのが好ましい。
該酵素は市販のものを使用すればよく、バークホルデリア属由来の微生物を起源とする酵素としては、
Lipase PS Amano SD、
Lipase PS−D Amano I immobilized on Diatomaceous Earth、
Lipase PS−C Amano I immobilized in ceramic、
Lipase PS−C Amano II immobilized in ceramic、
リパーゼPS「アマノ」IM
(以上、天野エンザイム社製)が挙げられ、キャンディダ属由来の微生物を起源とする酵素としては、
CHIRAZYME L−2 CB、
CHIRAZYME L−3 CR、
CHIRAZYME L−5 CA、
CHIRAZYME L−2,c−f,C2 Lyo、
CHIRAZYME L−2,c−f,C3 Lyo、
CHIRAZYME L−2,c,−f Lyo
(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス製)が挙げられる。
操作を行いやすい点で、バークホルデリア セパシア及びキャンディダ アンタークティカからなる群より選ばれる微生物を起源とする固定化酵素が好ましく、具体的には
Lipase PS−D Amano I immobilized on Diatomaceous Earth、
Lipase PS−C Amano I immobilized in ceramic、
Lipase PS−C Amano II immobilized in ceramic、
リパーゼPS「アマノ」IM、
CHIRAZYME L−2,c−f,C2 Lyo、
CHIRAZYME L−2,c−f,C3 Lyo、及び
CHIRAZYME L−2,c,−f Lyo
が好ましい。
酵素の使用量は、通常化合物(II−0)1重量部に対して0.03〜0.05重量部である。
酢酸ビニルの使用量は、通常化合物(II−0)1モルに対して0.25〜0.50モルである。
混合に用いられる溶媒としてはtert−ブチルメチルエーテル、THF、アセトニトリル、及び塩化メチレン等があげられ、効率性の点で、次工程で用いることのできるtert−ブチルメチルエーテルおよびTHFが好ましい。
混合温度は通常20〜40℃であり、好ましくは20〜30℃である。
混合時間は、通常24〜72時間である。
混合終了後は酵素をろ過により除去する。また、ろ液を濃縮して次工程に用いてもよい。
【0012】
工程A1は、工程Aに記載の方法に準じて行われる。
工程B1は、工程Bに記載の方法に準じて行われる。
工程C1は、工程Cに記載の方法に準じて行われる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
なお、ジアステレオマー比は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いた面積百分率法により決定した。
GC条件:カラム:DB−17(30m×0.25mm,0.25μm),Inj.温度180℃,カラム温度110℃(15min)→10℃/min→280℃(8min),Det.温度300℃(FID)。
また、エナンチオマー過剰率は、高速液体クロマトグラフィー(LC)を用いた方法により決定した。
LC条件(エナンチオマー過剰率):カラム:CHIRALPAK(登録商標) IA−3(4.6mm×250mm,3μm),移動相:[A]ヘキサン,[B]0.01%トリフルオロ酢酸/THF,流量:0.5ml/min,検出器:UV225nm。
【0014】
実施例1
THF13.2g、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)21.18g(81.3mmol)、及び参考例1と同様にして得られた10.50gの化合物(II−1)(ジアステレオマーを含む含量84.0%、化合物(II−1)と(3S,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オール(以下、3S,3aS,6aR−OH体とも記す)とのジアステレオマー比:91.3/8.7)を室温で混合し、40℃に昇温した。得られた溶液にピリジン7.18g(90.3mmol)を40℃で滴下し、40℃で10時間撹拌した。この溶液全量にTHF2.64gを加え、40℃のまま、20℃に調節した2−プロパノール88.16gに滴下して化合物(I−1)を析出させた。滴下終了後、0〜5℃に冷却した後、0〜5℃で25時間撹拌した。析出した化合物(I−1)をろ過し、洗浄することにより、化合物(I−1)を16.65gを得た。
ジアステレオマーを含む含量99.2%、化合物(I−1)の収率90%。
化合物(I−1)と1−[[[[(3S,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル]オキシ]カルボニル]オキシ]ピロリジン−2,5−ジオン(以下、3S,3aS,6aR−ON体とも記す)とのジアステレオマー比:93.4/6.6。
【0015】
実施例2
tert−ブチルメチルエーテル30.0g、11.87gの化合物(II−0)(ジアステレオマーを含む含量84.3%、化合物(II−1)と3S,3aS,6aR−OH体とのジアステレオマー比:91.1/8.9)および酵素(CHIRAZYME(登録商標) L−2 c,−flyo、ロシュ・ダイアグノスティックス製)0.50gを混合した。この混合物に25℃で酢酸ビニル3.31g(38.4mmol)を滴下し、25℃で40時間撹拌した後、不溶物をろ過した。このろ液を濃縮し、化合物(II−1)と化合物(III−2)とを含む混合物12.73gを得た(化合物(II−1)の収率90%、化合物(II−1)と3S,3aS,6aR−OH体とのジアステレオマー比:100.0/0.0)。
【0016】
実施例3
tert−ブチルメチルエーテル26.3g、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)35.09g(135mmol)、及び実施例2と同様にして得られた化合物(II−1)と化合物(III−2)とを含む混合物20.00g(化合物(II−1)の含量73.0%、)を室温で混合し、40℃に昇温した。得られた溶液にピリジン11.89g(150mmol)を40℃で滴下し、40℃で22時間撹拌した。この溶液全量を20℃に冷却し、20℃で2−プロパノール73.0gを滴下して化合物(I−1)を析出させて、0〜5℃に冷却した後、0〜5℃で19時間撹拌した。析出した化合物(I−1)をろ過し、洗浄することにより、化合物(I−1)27.83gを得た(含量97.8%、収率90%、化合物(I−1)のエナンチオマー過剰率>99.9%ee)。
【0017】
実施例4
THF13.7g、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)18.33g(70.4mmol)、及び実施例2と同様にして得られた化合物(II−1)と化合物(III−2)とを含む混合物10.00g(化合物(II−1)の含量76.3%)を室温で混合し、40℃に昇温した。得られた溶液にピリジン6.214g(78.2mmol)を40℃で滴下し、40℃で23時間撹拌した。この溶液全量を20℃に冷却し、20℃で2−プロパノール76.3gを滴下して化合物(I−1)を析出させて、続いて0〜5℃に冷却した後、0〜5℃16時間撹拌した。析出した化合物(I−1)をろ過し、洗浄することにより、化合物(I−1)14.32gを得た。(含量98.8%、収率90%、化合物(I−1)のエナンチオマー過剰率>99.9%ee)。
【0018】
実施例5
酢酸エチル7.50g、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)12.32g(47.3mmol)、及び参考例1と同様にして得られた5.74gの化合物(II−1)(ジアステレオマーを含む含量87.1%、化合物(II−1)と3S,3aS,6aR−OH体とのジアステレオマー比:91.4/8.6)を室温で混合し、40℃に昇温した。得られた溶液にピリジン4.15g(52.2mmol)を40℃で滴下し、40℃で4時間撹拌した。この溶液全量に酢酸エチル1.50gを加えて、2−プロパノール25.0gに20℃で滴下して化合物(I−1)を析出させて、続いて0〜5℃に冷却した後、0〜5℃で28時間撹拌した。析出した化合物(I−1)をろ過し、洗浄することにより、化合物(I−1)8.19gを得た(ジアステレオマーを含む含量100%、収率81%、化合物(I−1)と3S,3aS,6aR−ON体とのジアステレオマー比94.9/5.1)。
【0019】
実施例6〜12

tert−ブチルメチルエーテル0.739g、参考例1と同様にして得られた0.045gの化合物(II−0)(ジアステレオマーを含む含量88.6%、化合物(II−1)と3S,3aS,6aR−OH体とのジアステレオマー比:92.2/7.8)および[表1]のいずれかに示す酵素0.020gを混合した。この混合物に25℃で酢酸ビニル0.020g(0.23mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。得られた混合物のジアステレオマー比の結果を[表2]に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】

なお[表2]における「化合物(II−1)残存率」及び「3S,3aS,6aR−OH体残存率」は、下式に従い求めた。
化合物(II−1)残存率=化合物(II−1)の面積値/(化合物(II−1)の面積値+化合物(III−1)の面積値)
3S,3aS,6aR−OH体残存率=3S,3aS,6aR−OH体の面積値/(3S,3aS,6aR−OH体の面積値+化合物(III−2)の面積値)
上記式における面積値は、GCにより求めた。
なお、化合物(III−1)とは、式(III−1)
で示される化合物を表す。
【0022】
参考例1
国際公開第2014/024898号の実施例12に記載の方法に準じて(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−オールを製造した(ジアステレオマーを含む収率91.1%、ジアステレオマーを含む含量90.0%、化合物(I−1)と3S,3aS,6aR−OH体とのジアステレオマー比:92.4/7.6)。
【0023】
参考例2
アセトニトリル2.53g、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)2.74g(10.5mmol)、及び1.0gの化合物(II−1)(ジアステレオマーを含む含量100%、化合物(II−1)と3S,3aS,6aR−OH体との98.4/1.6ジアステレオマー比の混合物)を室温で混合し、40℃に昇温した。得られた溶液にピリジン0.93g(11.68mmol)を40℃で滴下し、同温で3時間撹拌した。この溶液をGCにより分析したところ、化合物(I−1)を収率94%で得た。次にこの溶液を5℃に冷却し、5℃の水1.0gを加えたところ懸濁した。この懸濁液を5℃で24時間撹拌した後、GCを用いた内部標準法により測定したところ、化合物(I−1)の収率は68%であり、化合物(II−1)の収率は11%であった。
【0024】
参考例3
THF13.3g、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)17.24g(67.0mmol)、及び実施例2と同様にして得られた化合物(II−1)と化合物(III−2)とを含む混合物10.00g(化合物(II−1)の含量73.9%)を室温で混合し、40℃に昇温した。得られた溶液にピリジン5.918g(74.5mmol)を40℃で滴下し、40℃で23時間撹拌した。この溶液を20℃に冷却し、20℃でメタノール73.9gを滴下して化合物(I−1)を析出させて、続いて0〜5℃に冷却した後、0〜5℃で16時間撹拌し、ろ過および洗浄を行うことにより、化合物(I−1)8.88gを得た(含量99.7%、収率58.8%、化合物(I−1)のエナンチオマー過剰率>99.9%ee)。
【0025】
参考例4
アセトン14.5gに、実施例1と同様にして得られた6.00gの化合物(I−1)(ジアステレオマーを含む含量98.6%、化合物(I−1)と3S,3aS,6aR−ON体とのジアステレオマー比:95.2/4.8)を室温で加え、45℃に昇温して溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、40℃でヘプタン14.5gを滴下して化合物(I−1)を析出させて、続いて30℃に冷却し、30℃で13時間撹拌した後、析出した化合物(I−1)をろ過し、洗浄することにより、化合物(I−1)を4.54gを得た。
ジアステレオマーを含む含量99.6%、化合物(I−1)の収率83%。
化合物(I−1)と3S,3aS,6aR−ON体とのジアステレオマー比:99.96/0.04。
化合物(I−1)のエナンチオマー過剰率>99.9%ee)。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、抗エイズ薬である化合物の製造中間体として有用なヘキサヒドロフロフラノール誘導体を製造することができる。