特許第6436079号(P6436079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6436079リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレータ、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
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  • 特許6436079-リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレータ、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436079
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレータ、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20181203BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20181203BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20181203BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20181203BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20181203BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20181203BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M4/62 Z
   H01M10/052
   H01M10/0566
   H01M4/13
   H01M4/139
【請求項の数】7
【全頁数】69
(21)【出願番号】特願2015-526263(P2015-526263)
(86)(22)【出願日】2014年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2014067275
(87)【国際公開番号】WO2015005151
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-145001(P2013-145001)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-169193(P2013-169193)
(32)【優先日】2013年8月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-246573(P2013-246573)
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智一
(72)【発明者】
【氏名】秋池 純之介
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 康尋
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/080946(WO,A1)
【文献】 特開2006−092847(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001848(WO,A1)
【文献】 特開2002−050405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/00−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一粒子状重合体を含むリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物であって、
前記第一粒子状重合体が、コア部と、前記コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有し、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなり、
当該膨潤度は、電解液に60℃で72時間浸漬した後の試験片の重量に基づく膨潤度である、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
【請求項2】
前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上150℃以下であり、
前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
【請求項3】
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体の粒子により構成されている、請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
【請求項4】
セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用セパレータ。
【請求項5】
極板と、
前記極板上に請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項6】
正極、負極、電解液及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレータが、請求項4記載のリチウムイオン二次電池用セパレータである、リチウムイオン二次電池。
【請求項7】
正極、負極及び電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項5記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、並びに、それを用いて製造されたリチウムイオン二次電池用セパレータ、リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源として用いられている二次電池には、リチウムイオン二次電池が多用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池では、一般に、正極と負極との間の短絡を防ぐために、セパレータが設けられる。また、このセパレータには、必要に応じて、そのセパレータ基材上に多孔膜が設けられることがある。このような多孔膜としては、例えば、アルミナ等の非導電性粒子及びその非導電性粒子を結着させるバインダーを含む膜が知られている。また、前記の多孔膜を、電極の極板上に設けることも提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
さらに、特許文献3〜9のような技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/029614号
【特許文献2】国際公開第2011/040474号
【特許文献3】国際公開第2011/068215号
【特許文献4】特開2005−11822号公報
【特許文献5】特開2012−104406号公報
【特許文献6】特開2013−012357号公報
【特許文献7】国際公開第2007/088979号
【特許文献8】国際公開第2013/042720号
【特許文献9】特開2010−219335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、多孔膜が設けられたセパレータ又は電極を備える従来のリチウムイオン二次電池では、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中での結着性に課題があり、また、低温出力特性においても課題があった。また、電池に連続的に振動が与えられたりすると電解液中において多孔膜の結着性が低下することにより多孔膜が脱落して、電池の安全性に課題があった。
【0007】
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたものであって、セパレータ基材又は極板との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現でき、また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制できる多孔膜を製造できるリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物;セパレータ基材と多孔膜との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現でき、また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制できるリチウムイオン二次電池用セパレータ;極板と多孔膜との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現でき、また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制できるリチウムイオン二次電池用電極;並びに、低温出力特性に優れ、また、安全性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、電解液に対して所定の膨潤度で膨潤しうる重合体により形成され、コア部及び当該コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を備えるコアシェル構造を有する粒子状重合体を含む多孔膜が、セパレータ基材及び極板との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕 第一粒子状重合体を含むリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物であって、
前記第一粒子状重合体が、コア部と、前記コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有し、
前記コア部が、電解液に対する膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、
前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体からなる、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔2〕 前記コア部の重合体のガラス転移温度が、0℃以上150℃以下であり、
前記シェル部の重合体のガラス転移温度が、50℃以上200℃以下である、〔1〕記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔3〕 前記シェル部が、電解液に対する膨潤度が1倍より大きく4倍以下の重合体の粒子により構成されている、〔1〕又は〔2〕記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔4〕 セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用セパレータ。
〔5〕 極板と、
前記極板上に〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布して得られる多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。
〔6〕 正極、負極、電解液及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレータが、〔4〕記載のリチウムイオン二次電池用セパレータである、リチウムイオン二次電池。
〔7〕 正極、負極及び電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、〔5〕記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物によれば、セパレータ基材又は極板との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現でき、また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制できる多孔膜を製造できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、セパレータ基材と多孔膜との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現でき、また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、極板と多孔膜との電解液中での結着性に優れ、且つ、低温出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現でき、また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制できる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、低温出力特性に優れ、また、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第一粒子状重合体の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを含む。さらに、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを含む。また、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及びメタクリルアミドを含む。
【0014】
さらに、ある物質が水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0重量%以上1.0重量%未満であることをいう。また、ある物質が非水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上100重量%以下であることをいう。
【0015】
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
【0016】
さらに、「極板」とは、剛性のある板状部材だけでなく、可撓性のあるシート及びフィルムも含む。
【0017】
また、「単量体組成物」は、2種類以上の単量体を含む組成物だけでなく、1種類の単量体を指す用語としても用いる。
【0018】
[1.リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物]
本発明のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物(以下、適宜「多孔膜組成物」ということがある。)は、第一粒子状重合体を含む。
【0019】
〔1.1.第一粒子状重合体〕
図1は、第一粒子状重合体の例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、第一粒子状重合体100は、コア部110及びシェル部120を備えるコアシェル構造を有する。ここで、コア部110は、この第一粒子状重合体100においてシェル部120よりも内側にある部分である。また、シェル部120は、コア部110の外表面110Sを覆う部分であり、通常は第一粒子状重合体100において最も外にある部分である。ただし、シェル部120は、コア部110の外表面110Sの全体を覆っているのではなく、コア部110の外表面110Sを部分的に覆っている。
【0020】
第一粒子状重合体において、コア部及びシェル部は、それぞれ、電解液に対して所定の膨潤度の重合体からなる。この第一粒子状重合体を含む多孔膜組成物を用いて製造される多孔膜は、セパレータ基材又は極板との電解液中における結着性に優れる。また、この多孔膜をリチウムイオン二次電池に設ければ、そのリチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、電解液中において多孔膜の脱落を抑制でき、電池の安全性を高めることができる。さらに、通常は、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を良好にすることができる。また、多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池用セパレータ(以下、適宜「セパレータ」ということがある。)は巻き重ねられた状態で保存及び運搬されることがあるが、本発明の多孔膜組成物を用いて製造される多孔膜を備えるセパレータは巻き重ねられた場合でもブロッキングを生じ難い。このような優れた効果が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者の検討によれば、以下のように推察される。ただし、以下に推察する理由により本発明は制限されるものではない。
【0021】
i.多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性:
第一粒子状重合体のシェル部を構成する重合体は、電解液に膨潤する。このとき、例えば膨潤したシェル部の重合体が有する官能基が活性化してセパレータ基材又は極板の表面にある官能基と化学的又は電気的な相互作用を生じるなどの要因により、シェル部はセパレータ基材又は極板に強固に結着できる。そのため、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着性を向上させることが可能になっていると推察される。
【0022】
ii.低温出力特性:
リチウムイオン二次電池において多孔膜は、一般に、正極と負極との間に設けられる。ここで、従来、リチウムイオン二次電池が充放電をすると、電極活物質(特に、負極活物質)が膨張及び収縮を生じるため、多孔膜と極板との間に空隙を生じることがあった。このような現象が生じると、正極の極板と負極の極板との距離が大きくなって電池の内部抵抗が大きくなったり、リチウムイオンと電極活物質との反応場が不均一になったりするので、低温出力特性が低下することがあった。
【0023】
これに対し、本発明に係る多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜は、前記のように、第一粒子状重合体のシェル部が電解液に膨潤した状態においてセパレータ基材及び極板に対して高い結着性を発現する。このため、充放電を行っても、多孔膜と極板との間に空隙を生じ難い。
したがって、リチウムイオン二次電池において正極の極板と負極の極板との距離が大きくなり難いので、電池の内部抵抗を小さくでき、また、リチウムイオンと電極活物質との反応場が不均一になり難い。
【0024】
さらに、第一粒子状重合体のコア部の重合体は、電解液に大きく膨潤する。電解液に大きく膨潤した状態では、重合体の分子間の隙間が大きくなり、その分子間をイオンが通り易くなる。また、第一粒子重合体のコア部の重合体は、シェル部によって完全には覆われていない。そのため、電解液中においてイオンがコア部を通りやすくなるので、第一粒子状重合体は高いイオン拡散性を発現できる。したがって、多孔膜による抵抗の上昇を抑制することが可能である。
【0025】
これらの要因が組み合わさることにより、本発明に係る多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができているものと推察される。
【0026】
iii.高温サイクル特性:
リチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返すと、例えば電解液及び添加剤の分解によりガスを生じることがある。また、前記のように、リチウムイオン二次電池では充放電により電極活物質の膨張及び収縮が生じることがある。そのため、リチウムイオン二次電池の充放電を繰り返すと、多孔膜と極板との間に空隙ができ、正極の極板と負極の極板との距離が次第に大きくなって、電池容量が低下することがあった。
これに対し、第一粒子状重合体を備える多孔膜は、前記のように電解液中において極板との結着性に優れる。そのため、この多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返しても多孔膜と極板との間に空隙ができ難いので、電池容量が低下しにくい。これにより、優れた高温サイクル特性が実現できているものと推察される。
【0027】
iv.耐ブロッキング性:
シェル部の重合体は、電解液に膨潤していない状態においては、通常、結着性を有さず、電解液に膨潤することにより始めて結着性を発現する。そのため、第一粒子状重合体は、電解液に膨潤していない状態において、通常、大きな結着性を発現しない。これにより、第一粒子状重合体を備える多孔膜は、重ねてもブロッキングを生じ難いものと推察される。なお、第一粒子状重合体は電解液に膨潤していない状態であっても、一定温度以上(例えば60℃以上)に加熱されることにより、結着性を発現しうる。
【0028】
v.多孔膜の耐久性
従来、電池に連続的に振動が与えられると、電解液中において多孔膜の結着性が低下することにより多孔膜が脱落することがあった。多孔膜が脱落すると、電池が短絡する虞があるので、従来の電池には安全性に課題があった。これに対し、第一粒子状重合体は、電解液中において結着力を発現する。そのため、電池に連続的に振動が与えられても、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。したがって、電池の安全性を向上させることができると推察される。
【0029】
〔1.1.1.コア部〕
コア部は、電解液に対して所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、コア部の重合体の電解液に対する膨潤度は、通常5倍以上、好ましくは6倍以上、より好ましくは7倍以上であり、通常30倍以下、好ましくは25倍以下、より好ましくは20倍以下である。コア部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、多孔膜のイオン拡散性を高めることができるので、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を改善することができる。また、コア部の重合体の膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、通常は、多孔膜のセパレータ基材又は極板に対する電解液中での結着性を高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。さらに、上限値以下にすることにより、通常は、リチウムイオン二次電池の寿命を長くすることができる。
【0030】
ここで、コア部の重合体の膨潤度を測定するために用いる電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm1/2)に、支持電解質としてLiPFを溶媒に対して1mol/リットルの濃度で溶かした溶液を用いる。
【0031】
コア部の重合体の膨潤度は、具体的には、下記のようにして測定しうる。
まず、第一粒子状重合体のコア部の重合体を用意する。例えば、第一粒子状重合体の製造方法においてコア部を製造するために行うのと同様の工程を行うことにより得られた重合体を用意する。
その後、用意した重合体によりフィルムを作製する。例えば重合体が固体であれば、25℃、48時間の条件で重合体を乾燥した後、その重合体をフィルム状に成形して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。また、例えば、重合体がラテックス等の溶液又は分散液である場合は、その溶液又は分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。
こうして作製したフィルムを1cm角に裁断して、試験片を得る。この試験片の重量を測定し、W0とする。
また、この試験片を電解液に60℃で72時間浸漬し、その試験片を電解液から取り出す。取り出した試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定する。
そして、これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算する。
【0032】
コア部の重合体の膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該コア部の重合体を製造するための単量体の種類及び量を適切に選択することが挙げられる。一般に、重合体のSP値が電解液のSP値に近い場合、その重合体はその電解液に膨潤しやすい傾向がある。他方、重合体のSP値が電解液のSP値から離れていると、その重合体はその電解液に膨潤し難い傾向がある。
【0033】
ここでSP値とは、溶解度パラメーターのことを意味する。
SP値は、Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook,2ndEd(CRCPress)で紹介される方法を用いて算出することができる。
また、有機化合物のSP値は、その有機化合物の分子構造から推算することが可能である。具体的には、SMILEの式からSP値を計算できるシミュレーションソフトウェア(例えば「HSPiP」(http=//www.hansen−solubility.com))を用いて計算しうる。また、このシミュレーションソフトウェアでは、Hansen SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook SecondEdition、Charles M.Hansenに記載の理論に基づき、求められている。
【0034】
コア部の重合体を製造するために用いる単量体としては、その重合体の膨潤度が前記範囲となるものを用いうる。そのような単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記の単量体の中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、(メタ)アクリロニトリル単量体単位とは、(メタ)アクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位を示す。これにより、重合体の膨潤度の制御が容易になる。また、多孔膜のイオン拡散性を一層高めることができる。
【0036】
コア部の重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位の合計の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、膨潤度を前記範囲に制御しやすい。また、多孔膜のイオン拡散性を高めることができる。さらに、リチウムイオン二次電池の低温出力特性をより向上させることができる。
【0037】
なお、前記の「コア部の重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位の合計」は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位だけを含んでいてもよく、(メタ)アクリロニトリル単量体単位だけを含んでいてもよく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び(メタ)アクリロニトリル単量体単位を組み合わせて含んでいてもよいことを意味する。
【0038】
また、コア部の重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。酸基含有単量体としては、シェル部に含み得る酸基含有単量体と同様のものが用いられる。これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、コア部の重合体における酸基含有量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。酸基含有量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、コア部の重合体の分散性を高め、コア部の重合体の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる。
【0040】
また、コア部の重合体は、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体単位とは、架橋性単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、重合体の膨潤度を、前記の範囲に容易に収めることができる。
【0041】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、コア部の重合体の膨潤度を容易に制御する観点から、ジメタクリル酸エステル化合物及びエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、ジメタクリル酸エステル化合物がより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
一般に、重合体において架橋性単量体単位の割合が増えると、その重合体の電解液に対する膨潤度は小さくなる傾向がある。したがって、架橋性単量体単位の割合は、使用する単量体の種類及び量を考慮して決定することが好ましい。コア部の重合体における架橋性単量体単位の具体的な割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中での結着性を高め、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、二次電池の寿命を長くすることができる。
【0043】
また、コア部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上、より更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは60℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは110℃以下、より更に好ましくは100℃以下、特に好ましくは90℃以下、より特に好ましくは80℃以下である。コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜のセパレータ基材又は極板に対する電解液中での結着性を高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。さらに、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の寿命を長くすることができる。また、コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲に収めることにより、通常は、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を改善することができる。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に従って測定しうる。
【0044】
コア部の径は、第一粒子状重合体の体積平均粒子径100%に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、好ましくは99%以下、より好ましくは98.5%以下、特に好ましくは98%以下である。コア部の径を前記範囲の下限値以上にすることにより、イオン伝導度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着力を高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。
【0045】
ここで、コア部の径は、第一粒子状重合体の製造過程において得られるシェル部を形成する前の粒子状重合体(即ち、コア部を構成する粒子状の重合体)の体積平均粒子径として測定しうる。また、体積平均粒子径とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0046】
〔1.1.2.シェル部〕
シェル部は、電解液に対して、コア部の膨潤度よりも小さい所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、シェル部の重合体の電解液に対する膨潤度は、通常1倍より大きく、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、更に好ましくは1.2倍以上であり、また、通常4倍以下、好ましくは3.5倍以下、より好ましくは3倍以下である。シェル部の重合体の膨潤度を前記範囲に収めることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着性を高めることができる。そのため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を小さくできるので、電池特性を良好に維持することができる。また、シェル部の重合体の膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、通常は、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。さらに、上限値以下にすることにより、通常は、多孔膜のセパレータ基材又は極板に対する電解液中における結着性を高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。
【0047】
ここで、シェル部の重合体の膨潤度を測定するために用いる電解液としては、コア部の重合体の膨潤度を測定するために用いる電解液と同様のものを用いる。
【0048】
シェル部の重合体の膨潤度は、具体的には、下記のようにして測定しうる。
まず、第一粒子状重合体のシェル部の重合体を用意する。例えば、第一粒子状重合体の製造方法において、コア部の製造に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の製造に用いる単量体組成物を用いて、コア部の製造方法と同様にして重合体を製造する。
その後、コア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様の方法で、シェル部の重合体によりフィルムを作製し、そのフィルムから試験片を得て、膨潤度Sを測定する。
【0049】
シェル部の重合体の膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該シェル部の重合体を製造するための単量体の種類及び量を適切に選択することが挙げられる。
【0050】
シェル部の重合体を製造するために用いる単量体としては、その重合体の膨潤度が前記範囲となるものを用いうる。そのような単量体としては、例えば、コア部の重合体を製造するために用いうる単量体として例示した単量体と同様の例が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
これらの単量体の中でも、芳香族ビニル単量体が好ましい。すなわち、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。ここで、芳香族ビニル単量体単位とは、芳香族ビニル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレン及びスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましい。芳香族ビニル単量体を用いると、重合体の膨潤度を制御し易い。また、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着力を一層高めることができる。
【0052】
シェル部の重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、膨潤度を前記範囲に制御しやすい。また、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着力をより高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。
【0053】
また、シェル部の重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。酸基含有単量体単位とは、酸基を有する単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。酸基含有単量体としては、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、及び、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0054】
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0055】
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0056】
リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
【0057】
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0058】
これらの中でも、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
シェル部の重合体中の酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは7重量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、多孔膜組成物中での第一粒子状重合体の分散性を向上させ、多孔膜の全面に渡って良好な結着性を発現することができる。
【0060】
また、シェル部の重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、コア部の重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の例が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
シェル部の重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
【0062】
シェル部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜のブロッキングを抑制することができ、また、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中での結着性を更に高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。また、シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲に収めることにより、通常は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を改善することが可能である。
【0063】
また、シェル部は、コア部の外表面を部分的に覆っている。すなわち、シェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない。外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆う本発明に係るシェル部である。したがって、例えば、シェル部の外表面(即ち、第一粒子状重合体の周面)からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える第一粒子状重合体は、本発明に係る第一粒子状重合体に含まれる。
【0064】
コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは60%以上であり、好ましくは99.9%以下、より好ましくは98%以下、更に好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下である。コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合を前記範囲に収めることにより、イオンの拡散性、並びに、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着性や、電解液中での多孔膜の脱落の抑制とのバランスを良好にできる。
【0065】
コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、第一粒子状重合体の断面構造の観察結果から測定しうる。具体的には、以下に説明する方法により測定しうる。
まず、第一粒子状重合体を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分に分散させた後、包埋し、第一粒子状重合体を含有するブロック片を作製する。次に、ブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ80nm〜200nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製する。その後、必要に応じて、例えば四酸化ルテニウム又は四酸化オスミウムを用いて測定用試料に染色処理を施す。
次に、この測定用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)にセットして、第一粒子状重合体の断面構造を写真撮影する。電子顕微鏡の倍率は、第一粒子状重合体1個の断面が視野に入る倍率が好ましく、具体的には10,000倍程度が好ましい。
撮影された第一粒子状重合体の断面構造において、コア部の外表面に相当する周の長さD1、及び、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を測定する。そして、測定された長さD1及び長さD2を用いて、下記の(1)式により、その第一粒子状重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出する。
被覆割合Rc(%)=D2/D1×100 (1)
前記の被覆割合Rcを、20個以上の第一粒子状重合体について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合とする。
前記の被覆割合Rcは、断面構造からマニュアルで計算することもできるが、市販の画像解析ソフトを用いて計算することもできる。市販の画像解析ソフトとして、例えば「AnalySIS Pro」(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
【0066】
シェル部は、第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対して、所定の範囲に収まる平均厚みを有することが好ましい。具体的には、第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対するシェル部の平均厚みは、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、特に好ましくは5%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。シェル部の平均厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着力を更に高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に高めることができる。
【0067】
シェル部の平均厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による第一粒子状重合体の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、第一粒子状重合体の断面構造におけるシェル部の最大厚みを測定し、任意に選択した20個以上の第一粒子状重合体のシェル部の最大厚みの平均値を、シェル部の平均厚みとする。ただし、シェル部が重合体の粒子によって構成されており、かつ、第一粒子状重合体の径方向で、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成している場合は、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径をシェル部の平均厚みとする。
【0068】
シェル部の形態は特に制限されないが、シェル部は、重合体の粒子によって構成されていることが好ましい。シェル部が重合体の粒子によって構成されている場合、第一粒子状重合体の径方向にシェル部を構成する粒子が複数重なり合っていてもよい。ただし、第一粒子状重合体の径方向では、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成していることが好ましい。
【0069】
シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。個数平均粒子径を前記範囲に収めることにより、イオンの拡散性、並びに、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における結着性や、電解液中での多孔膜の脱落の抑制とのバランスを良好にできる。
【0070】
シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による第一粒子状重合体の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、第一粒子状重合体の断面構造におけるシェル部を構成する粒子の最長径を測定し、任意に選択した20個以上の第一粒子状重合体のシェル部を構成する粒子の最長径の平均値を、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径とする。
【0071】
〔1.1.3.任意の構成要素〕
第一粒子状重合体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部及びシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。
例えば、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、第一粒子状重合体をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。
ただし、本発明の効果を顕著に発揮する観点からは、第一粒子状重合体はコア部及びシェル部のみを備えることが好ましい。
【0072】
〔1.1.4.第一粒子状重合体の大きさ〕
第一粒子状重合体の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。第一粒子状重合体の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物及び多孔膜における第一粒子状重合体の分散性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中での結着力を高め、低温出力特性を高めることができ、また、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。
【0073】
〔1.1.5.第一粒子状重合体の量〕
多孔膜組成物における第一粒子状重合体の量は、多孔膜における第一粒子状重合体の割合が所定の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的には、多孔膜における第一粒子状重合体の割合は、好ましくは0.1重量%以上、好ましくは99.9重量%以下である。
【0074】
中でも、多孔膜における第一粒子状重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下、特に好ましくは98重量%以下である。この場合、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中での結着力を高め、かつ、イオン拡散性を高めることができる。
【0075】
また、多孔膜中に第一粒子状重合体が含まれていることにより、電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができる。この場合、多孔膜における第一粒子状重合体の割合が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、上限値は特に限定されないが、多孔膜とセパレータ基材又は極板との電解液中における大きな結着力を発現させない場合、好ましくは50重量%未満、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。
【0076】
〔1.1.6.第一粒子状重合体の製造方法〕
第一粒子状重合体は、例えば、コア部の重合体の単量体とシェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、製造しうる。具体的には、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法及び多段階懸濁重合法によって得ることができる。
【0077】
多段階乳化重合法によりコアシェル構造を有する第一粒子状重合体を得る場合の一例を示す。
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、又はオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0078】
重合手順としては、まず、溶媒である水に、コア部を形成する単量体及び乳化剤を混合し、その後重合開始剤を入れ、乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。さらに、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、コアシェル構造を有する第一粒子状重合体を得ることができる。
【0079】
この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う観点から、シェル部の重合体の単量体は複数回に分割して、もしくは、連続で重合系に供給することが好ましい。シェル部の重合体の単量体を重合系に分割して、もしくは、連続で供給することにより、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0080】
シェル部の重合体の単量体を複数回に分割して供給する場合には、単量体を分割する割合に応じてシェル部を構成する粒子の粒子径およびシェル部の平均厚みを制御することが可能である。また、シェル部の重合体の単量体を連続で供給する場合には、単位時間あたりの単量体の供給量を調整することで、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径およびシェル部の平均厚みを制御することが可能である。
【0081】
また、シェル部の重合体を形成する単量体は、重合溶媒に対して親和性の低い単量体を用いると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向がある。重合溶媒が水の場合、シェル部の重合体を形成する単量体は、疎水性単量体を含むことが好ましく、芳香族ビニル単量体を含むことが特に好ましい。
【0082】
また、用いる乳化剤量を少なくすると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向があり、適宜乳化剤量を調整することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0083】
また、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径、シェル部を形成した後の第一粒子状重合体の体積平均粒子径、及び、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、例えば、乳化剤の量、単量体の量などを調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0084】
さらに、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径に対応して、例えば、乳化剤の量、及び、シェル部の重合体の単量体の量を調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0085】
〔1.2.第二粒子状重合体〕
本発明の多孔膜組成物は、第二粒子状重合体を含むことが好ましい。第二粒子状重合体は、粒子状の重合体であり、多孔膜においてバインダーとして機能できる。そのため、第二粒子状重合体は第一粒子状重合体同士を結着させて、多孔膜の機械的強度を高める作用を奏する。また、第二粒子状重合体は、第一粒子状重合体とセパレータ基材又は極板とを結着させる作用を奏するので、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めることができる。
【0086】
第二粒子状重合体としては、非水溶性の重合体を用いることが好ましく、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体等を用いうる。
【0087】
中でも、第二粒子状重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体をいう。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、イオン伝導性が高く、二次電池のレート特性を向上しうる点、及び電気化学的に安定で、電池の高温サイクル特性を向上しうる点で、好適である。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に対応する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、柔軟性に優れる点から、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0089】
第二粒子状重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、特に好ましくは97重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記下限値以上にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めて、多孔膜と他の層との結着性を高めることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記上限値以下にすることにより、多孔膜の剛性を高めて、これによっても多孔膜と他の層との結着性を高めることができる。
【0090】
さらに、第二粒子状重合体は、アミド単量体単位を含むことが好ましい。ここでアミド単量体単位とは、アミド単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、アミド単量体とは、アミド基を有する単量体であり、アミド化合物だけでなく、イミド化合物も含む。アミド単量体単位を有することにより、第二粒子状重合体は、電解液中のハロゲン化物イオンを捕捉できる。そのため、ハロゲン化物イオンを原因とした電解液及びSEI(Solid Electrolyte Interphase)の分解を抑制できるので、充放電に伴うガスの発生を抑制できる。また、第二粒子状重合体は、電解液中の遷移金属イオンを捕捉できる。例えば、正極から溶出する金属イオンを、第二粒子状重合体で捕捉できる。そのため、充放電に伴う負極での遷移金属の析出を抑制できる。したがって、第二粒子状重合体を用いれば、充放電に伴う電池容量の低下の程度を小さくできるので、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0091】
また、第二粒子状重合体を用いれば、前記のように充放電に伴うガスの発生を抑制できる。そのため、そのガスによる極板と多孔膜との間での空隙の発生を抑制できる。したがって、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に改善することが可能である。
ここで、前記のガスの発生量は、充放電を繰り返したときのリチウムイオン二次電池のセルの体積変化により評価することができる。
【0092】
アミド単量体としては、例えば、カルボン酸アミド単量体、スルホン酸アミド単量体、リン酸アミド単量体などが挙げられる。
【0093】
カルボン酸アミド単量体は、カルボン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の、不飽和カルボン酸アミド化合物;N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の、不飽和カルボン酸アミドのN−アミノアルキル誘導体;などが挙げられる。
【0094】
スルホン酸アミド単量体は、スルホン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。スルホン酸アミド単量体としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−t−ブチルアクリルアミドスルホン酸などが挙げられる。
【0095】
リン酸アミド単量体は、リン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。リン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミドホスホン酸、アクリルアミドホスホン酸誘導体などが挙げられる。
【0096】
これらのアミド単量体の中でも、多孔膜の耐久性を高める観点から、カルボン酸アミド単量体が好ましく、不飽和カルボン酸アミド化合物がより好ましく、(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
また、アミド単量体及びアミド単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0097】
第二粒子状重合体におけるアミド単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。アミド単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池におけるガスの発生を効果的に抑制でき、また、電解液中の遷移金属イオンを効果的に捕捉できる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を高めることができる。
【0098】
また、第二粒子状重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。酸基含有単量体単位としては、例えば、第一粒子状重合体に用いうるものとして説明したものと同様の範囲から選択されるものを用いうる。また、酸基含有単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0099】
第二粒子状重合体における酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上、特に好ましくは0.6重量%以上であり、好ましくは10.0重量%以下、より好ましくは6.0重量%以下、特に好ましくは4.0重量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を前記範囲内とすることにより、多孔膜の凝集破壊が抑制されて、電解液中の、多孔膜と隣接する層との結着力が向上しうる。
【0100】
さらに、第二粒子状重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含みうる。この際、(メタ)アクリロニトリル単量体単位に対応する(メタ)アクリロニトリル単量体としては、アクリロニトリルを用いてもよく、メタクリロニトリルを用いてもよく、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとを組み合わせて用いてもよい。
【0101】
第二粒子状重合体における(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは20.0重量%以下、より好ましくは10.0重量%以下、特に好ましくは5.0重量%以下である。(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記下限値以上にすることにより、二次電池の寿命を特に長くすることができる。また、(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記上限値以下にすることにより、多孔膜の機械的強度を高めることができる。
【0102】
また、第二粒子状重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体単位に対応する架橋性単量体の例としては、第一粒子状重合体の説明において例示したものと同様の例が挙げられる。さらに、カルボン酸アミド単量体として例示したN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドは、アミド単量体及び架橋性単量体の両方として作用しうるので、このN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドを架橋性単量体として用いてもよい。架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0103】
第二粒子状重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.6重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下、特に好ましくは3.0重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記下限値以上にすることにより、多孔膜の機械的強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の柔軟性が損なわれて脆くなることを防止できる。
【0104】
さらに、第二粒子状重合体は、上述した構造単位以外に、任意の構造単位を含みうる。例えば、第二粒子状重合体は、上述した構造単位と組み合わせて、スチレンを重合して形成される構造を有する構造単位(スチレン単位)、ブタジエンを重合して形成される構造を有する構造単位(ブタジエン単位)、アクリロニトリルを重合して形成される構造を有する構造単位(アクリロニトリル単位)を含んでいてもよい。また、これらの任意の構造単位は、1種類を単独で用いていてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0105】
第二粒子状重合体のガラス転移温度は、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−90℃以上、特に好ましくは−80℃以上であり、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−10℃以下である。第二粒子状重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。
【0106】
第二粒子状重合体の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.9μm以下、特に好ましくは0.8μm以下である。第二粒子状重合体の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物及び多孔膜における第二粒子状重合体の分散性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めることができる。
【0107】
第二粒子状重合体の製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、水中で重合をすることができ、そのまま多孔膜組成物の材料として好適に使用できるので、乳化重合法及び懸濁重合法が好ましい。また、第二粒子状重合体を製造する際、その反応系は分散剤を含むことが好ましい。第二粒子状重合体は、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合に際して用いた添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
【0108】
第二粒子状重合体の量は、第一粒子状重合体と非導電性粒子の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、特に好ましくは1重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。第二粒子状重合体の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着力を高め、また、多孔膜の脱落を抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、第一粒子状重合体の有するイオン拡散性を十分に発揮することができる。
【0109】
〔1.3.非導電性繊維〕
本発明の多孔膜組成物は、非導電性繊維を含むことが好ましい。本発明の多孔膜組成物が非導電性繊維を含むことにより、通常は、下記の利点のうち1以上を得ることができる。
a.多孔膜の電解液中での膨れを抑制できる。
b.多孔膜の機械的強度を向上させることができる。
c.リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。
d.リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性を更に良好にすることができる。
これらのような優れた効果が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者の検討によれば、以下のように推察される。ただし、以下に推察する理由により本発明は制限されるものではない。
【0110】
a.電解液中での多孔膜の膨れの抑制:
多孔膜が非導電性繊維を含む場合、通常、非導電性繊維同士の絡み合い、及び、非導電性繊維と第一粒子状重合体との絡み合いにより、多孔膜は変形を生じ難くなっている。そのため、多孔膜を電解質に浸漬したときに多孔膜中の重合体が膨潤しても、非導電性繊維が多孔膜の変形を抑制しようと働く。そのため、電解液中において、多孔膜は膨れ難くなっていると推察される。
【0111】
b.多孔膜の機械的強度:
多孔膜が非導電性繊維を含む場合、通常、多孔膜中では、前記のように、非導電性繊維同士が絡み合ったり、非導電性繊維と第一粒子状重合体とが絡み合ったりしている。そのため、多孔膜の機械的強度が向上しているものと推察される。
【0112】
c.低温出力特性:
電解液中で多孔膜が膨れると、電池の内部抵抗が上昇して、リチウムイオン二次電池の低温出力特性の低下を招く可能性がある。
これに対し、多孔膜が非導電性繊維を含む場合、通常、非導電性繊維の作用により、電解液中で多孔膜は膨れ難い。したがって、リチウムイオン二次電池において正極の極板と負極の極板との距離が大きくなり難いので、電池の内部抵抗を小さくできる。
また、多孔膜が膨れ難いと、多孔膜と極板との間に空隙を生じ難くなるので、リチウムイオンと電極活物質との反応場が不均一になり難い。
【0113】
さらに、多孔膜が非導電性繊維を含むことにより、通常は、多孔膜中への電解液の拡散性が向上する。特に、非導電性繊維として例えばセルロースのように電解液との親和性の高いものを用いると、多孔膜中への電解液の拡散性を特に向上させることができる。
【0114】
また、多孔膜をリチウムイオンが通りやすくなるので、電解液中でのリチウムの析出を防止できる。そのため、析出したリチウムによる抵抗の増加を抑制できる。
【0115】
これらの要因が組み合わさることにより、非導電性繊維を含む多孔膜組成物を用いた場合に、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を更に向上させることができているものと推察される。
【0116】
d.高温サイクル特性:
多孔膜が非導電性繊維を含む場合、通常、前記のように、電解液中でのリチウムの析出を抑制できる。そのため、充放電の繰り返しによる抵抗の増大が生じ難い。これにより、非導電性繊維を含む多孔膜組成物を用いた場合に、更に優れた高温サイクル特性が実現できているものと推察される。
【0117】
非導電性繊維は、非導電性を有する繊維である。非導電性繊維は、多孔膜組成物中において溶解せず、繊維の形状を維持しうる。また、非導電性繊維は、電解液中において溶解せず、繊維の形状を維持しうる。このような非導電性繊維は、有機材料で形成されていてもよく、無機材料で形成されていてもよく、有機材料及び無機材料の組み合わせにより形成されていてもよい。中でも、金属の溶出が無く、入手が容易であるため、有機材料で形成された非導電性繊維が好ましい。
【0118】
前記の非導電性繊維の材料としては、非導電性を有しており、電気化学的に安定で、且つ、電解液に安定なものが好ましい。このような観点から、非導電性繊維の材料として好適な例としては、セルロース、セルロース変成体、キチン、キトサンなどの多糖類、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の重合体が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れ、電解液の拡散性に優れることから、多糖類が好ましく、セルロースがより好ましい。また、非導電性繊維の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、非導電性繊維は、構成成分として、上記の構成材料の他に、必要に応じて任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0119】
非導電性繊維の繊維径は、通常0.01μm以上、好ましくは0.015μm以上、より好ましくは0.02μm以上であり、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。このような範囲の繊維径を有する非導電性繊維を用いることにより、電解液中での多孔膜の膨れを効果的に抑制することができる。また、繊維径を前記範囲の下限値以上にすることにより、非導電性繊維の分散性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、電池の内部抵抗を低減させることができる。
【0120】
前記の非導電性繊維の繊維径とは、非導電性繊維の繊維の太さを示す。前記の繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定できる。具体的には、非導電性繊維について50000倍のSEM写真を撮影し、撮影した写真上において、写真を横切る任意の位置に2本の線を引き、線と交差する全ての非導電性繊維の径それぞれを測定して、その平均値(n=20以上)を計算することで繊維径を算出しうる。線の引き方は、線と交差する繊維の数が20以上となれば、特に限定されない。なお、最大繊維径が1μmを超える繊維の場合には、5000倍のSEM写真を用いて算出しうる。
【0121】
また、非導電性繊維の繊維長は、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、特に好ましくは70μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは200μm以下である。繊維長を前記範囲にすることにより、非導電性繊維同士の絡み合い、及び、非導電性繊維と第一粒子状重合体との絡み合いが起こりやすい。そのため、多孔膜の機械的強度を向上させたり、電解液に浸った時に多孔膜の膨れを抑制したりできるので、二次電池の低温出力特性及びサイクル特性を向上させることができる。ここで、非導電性繊維の繊維長とは、非導電性繊維の繊維一本当たりの長さを示す。
【0122】
非導電性繊維の量は、「第一粒子状重合体/非導電性繊維」で表される第一粒子状重合体と非導電性繊維との重量比が所定の範囲に収まる量に設定することが好ましい。具体的には、前記の重量比「第一粒子状重合体/非導電性繊維」は、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、特に好ましくは60/40以上であり、好ましくは99.99/0.01以下、より好ましくは99.9/0.1以下、特に好ましくは99/1以下である。重量比「第一粒子状重合体/非導電性繊維」を前記範囲の下限値以上にすることにより、電池の内部抵抗を低減させることができる。また、上限値以下にすることにより、電極とセパレータの密着性を向上させることができる。
【0123】
〔1.4.溶媒〕
本発明の多孔膜組成物は、通常、溶媒を含む。溶媒としては、水を用いることが好ましい。第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体は通常は非水溶性であるので、溶媒として水を用いた場合には、第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体は水中において粒子状となって分散している。また、非導電性繊維は通常は非水溶性であるので、溶媒として水を用いた場合には、非導電性繊維は水中において繊維状となって分散している。
【0124】
溶媒として、水以外の溶媒を水と組み合わせて用いてもよい。水と組み合わせて用いうる溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、溶媒としては、水を単独で用いることが好ましい。
【0125】
多孔膜組成物における溶媒の量は、多孔膜組成物の固形分濃度が所望の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的な多孔膜組成物の固形分濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。ここである組成物の固形分とは、その組成物の乾燥を経て残留する物質のことをいう。
【0126】
〔1.5.任意の粒子〕
本発明の多孔膜組成物は、更に、非導電性粒子を含んでいてもよい。非導電性を有する粒子を多孔膜に充填することにより、多孔膜の絶縁性を高め、リチウムイオン二次電池における短絡を更に安定して防止することができる。また、通常、非導電性粒子は高い剛性を有し、これにより、多孔膜の機械的強度を高めることができる。そのため、熱によってセパレータ基材に収縮しようとする応力が生じた場合でも、多孔膜がその応力に抗することができるので、セパレータ基材の収縮による短絡の発生を防止することが可能である。このような非導電性粒子としては、無機粒子を用いてもよく、有機粒子を用いてもよい。
【0127】
無機粒子は、通常、水中での分散安定性に優れ、多孔膜組成物において沈降し難く、均一なスラリー状態を長時間維持することができる。また、無機粒子を用いると、通常は多孔膜の耐熱性を高くできる。
【0128】
非導電性粒子の材料としては、電気化学的に安定な材料が好ましい。このような観点から、非導電性粒子の無機材料として好ましい例を挙げると、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アルミニウムの水和物(ベーマイト(AlOOH)、ギブサイト(Al(OH))、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。
【0129】
これらの中でも、電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化物粒子が好ましく、中でも吸水性が低く耐熱性(例えば180℃以上の高温に対する耐性)に優れる観点から酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムがより好ましく、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムがより好ましく、酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0130】
有機粒子としては、通常は重合体の粒子を用いる。有機粒子は、当該有機粒子の表面の官能基の種類及び量を調整することにより、水に対する親和性を制御でき、ひいては多孔膜に含まれる水分量を制御できる。また有機粒子は、通常は金属イオンの溶出が少ない点で、優れる。
【0131】
非導電性粒子を形成する重合体としては、上述した第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体以外の重合体を用いうる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の各種高分子化合物などが挙げられる。粒子を形成する上記高分子化合物は、例えば、混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、架橋体等であっても使用しうる。有機粒子は、2種類以上の高分子化合物の混合物により形成されていてもよい。
【0132】
非導電性粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。非導電性粒子の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、電解液の浸透性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の厚みを薄くすることができる。
【0133】
非導電性粒子の量は、第一粒子状重合体100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは99重量部以下、より好ましくは50重量部以下、更に好ましくは40重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。非導電性粒子の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の耐熱性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の割れを防ぐことができる。
【0134】
〔1.6.水溶性重合体〕
本発明の多孔膜組成物は、更に、水溶性重合体を含みうる。多孔膜組成物において水溶性重合体は、通常は粘度調整剤として機能する。また、特に多孔膜組成物が溶媒として水を含む場合は、多孔膜組成物において、一部の水溶性重合体は溶媒中に遊離しているが、別の一部の水溶性重合体は第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体の表面に吸着する。これにより、第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体の表面が水溶性重合体の層で覆われるので、第一粒子状重合体及び第二粒子状重合体の水中における分散性を向上させることができる。
【0135】
水溶性重合体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマー及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸若しくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体等のポリビニルアルコール化合物;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。ここで、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」及び「変性ポリ」を意味する。
【0136】
水溶性重合体の量は、第一粒子状重合体と非導電性粒子の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。また、多孔膜組成物が非導電性繊維を含む場合、水溶性重合体の量は、第一粒子状重合体及び非導電性繊維の合計100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。水溶性重合体の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物の分散性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、第一粒子状重合体の有するイオン拡散性を十分に発揮することができる。
【0137】
〔1.7.任意の成分〕
多孔膜組成物は、上述した第一粒子状重合体、第二粒子状重合体、非導電性繊維、溶媒、非導電性粒子及び水溶性重合体以外に、任意の成分を含みうる。このような任意の成分としては、電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものを用いうる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0138】
例えば、多孔膜組成物は、イソチアゾリン系化合物、キレート化合物、ピリチオン化合物、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、及び、電解液分解抑制の機能を有する電解液添加剤などを含んでいてもよい。
【0139】
〔1.8.多孔膜組成物の物性〕
本発明の多孔膜組成物は、通常、流体状のスラリー組成物となっている。また、本発明の多孔膜組成物において、その多孔膜組成物に含まれる各成分は、高い分散性を有する。そのため、本発明の多孔膜組成物の粘度は、通常、容易に低くできる。多孔膜組成物の具体的な粘度は、多孔膜を製造する際の塗布性を良好にする観点から、10mPa・s〜2000mPa・sが好ましい。ここで、前記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
【0140】
また、非導電性繊維は、その非導電性繊維の材料の種類によっては、多孔膜組成物の分散安定性を向上させる効果を奏しうる。例えば、セルロースの繊維を非導電性繊維として用いた場合、多孔膜組成物の濃度が高い場合であっても、その多孔膜組成物の経時的な変化を抑制する効果を奏する。そのため、非導電性繊維を含む多孔膜組成物は、通常、分散安定性に優れる。
【0141】
〔1.9.多孔膜組成物の製造方法〕
多孔膜組成物の製造方法は、特に限定はされない。通常は、上述した各成分を混合することにより、多孔膜組成物が得られる。
各成分の混合順序には特に制限は無い。また、混合方法にも特に制限は無い。通常は、粒子を速やかに分散させるため、混合装置として分散機を用いて混合を行う。
【0142】
分散機は、上記成分を均一に分散及び混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。中でも、高い分散シェアを加えることができることから、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置が特に好ましい。
【0143】
[2.リチウムイオン二次電池用多孔膜]
本発明の多孔膜組成物を適切な基材上に塗布し、必要に応じて乾燥することにより、多孔膜組成物の固形分により形成された膜として、リチウムイオン二次電池用多孔膜(以下、適宜「多孔膜」ということがある。)を製造することができる。例えば、多孔膜組成物を基材上に塗布して当該多孔膜組成物の膜を得る工程と、必要に応じてその膜から乾燥によって水等の溶媒を除去する工程とを含む製造方法により、多孔膜を製造できる。
【0144】
こうして得られる多孔膜は、第一粒子状重合体を含み、多数の細孔を形成している。第一粒子状重合体は、電解液中においてシェル部が膨潤して結着性を発現する。したがって、多孔膜はセパレータ基材又は極板に強力に結着できる。また、第一粒子状重合体のコア部が高いイオン拡散性を有するので、本発明に係る多孔膜による抵抗の上昇は小さい。さらに、第一粒子状重合体のシェル部は、その剛性を過度に損なうほど大きくは膨潤しないので、第一粒子状重合体は適度な剛性を有する。したがって、第一粒子状重合体を含む多孔膜は剛性に優れるので、その多孔膜を備えるセパレータにおいては、セパレータ基材の熱による収縮を抑制したり、異物によるセパレータ基材の破損を防止したりできる。また、この多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)においては、多孔膜が電極活物質層上に設けられることがある。その場合、多孔膜によって電極活物質層からの電極活物質等の粒子の脱離、並びに電極活物質層の集電体からの剥離を防止することができる。また、多孔膜は、電池に連続的に振動が与えられても電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができ、電池の安全性を向上させることができる。さらに、この多孔膜が非導電性繊維を含む場合、通常は、多孔膜の電解液中での膨れを抑制できる。
【0145】
基材は、多孔膜組成物の膜を形成する対象となる部材である。基材に制限は無く、例えば剥離フィルムの表面に多孔膜組成物の膜を形成し、その膜から溶媒を除去して多孔膜を形成し、剥離フィルムから多孔膜を剥がしてもよい。しかし、通常は、多孔膜を剥がす工程を省略して製造効率を高める観点から、基材として電池の構成要素を用いる。このような電池の構成要素の例としては、セパレータ基材及び極板などが挙げられる。
【0146】
塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔膜が得られる点で、ディップ法及びグラビア法が好ましい。
【0147】
また、乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風等の風による乾燥;真空乾燥;赤外線、遠赤外線、及び電子線などの照射による乾燥法;などが挙げられる。
【0148】
乾燥の際の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。乾燥温度を前記範囲の下限以上にすることにより多孔膜組成物からの溶媒及び低分子化合物を効率よく除去できる。また、上限以下とすることにより基材の熱による変形を抑えることができる。
【0149】
乾燥時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、特に好ましくは15秒以上であり、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、特に好ましくは1分以下である。乾燥時間を前記範囲の下限以上にすることにより、多孔膜組成物から溶媒を十分に除去できるので、電池の出力特性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、製造効率を高めることができる。
【0150】
多孔膜の製造方法においては、上述した以外の任意の操作を行ってもよい。
例えば、金型プレス及びロールプレス等のプレス方法によって、多孔膜に加圧処理を施してもよい。加圧処理を施すことにより、基材と多孔膜との結着性を向上させることができる。ただし、多孔膜の空隙率を好ましい範囲に保つ観点では、圧力および加圧時間が過度に大きくならないように適切に制御することが好ましい。
また、残留水分除去のため、例えば真空乾燥やドライルーム内で乾燥することが好ましい。
さらに、例えば加熱処理することも好ましく、これにより重合体成分に含まれる熱架橋基を架橋させて、結着力を高めることができる。
【0151】
多孔膜の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。多孔膜の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより、多孔膜の耐熱性を高くすることができる。また上限値以下とすることにより、多孔膜によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0152】
[3.リチウムイオン二次電池用セパレータ]
本発明のセパレータは、セパレータ基材と多孔膜とを備える。本発明のセパレータが本発明に係る多孔膜を備えるので、当該セパレータを備えるリチウムイオン二次電池においては、多孔膜とセパレータ基材及び極板とは強力に結着されている。また、本発明にかかる多孔膜はイオン拡散性に優れるので、本発明のセパレータによる内部抵抗の上昇は小さい。また、本発明の多孔膜は、電池に連続的に振動が与えられても電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができ、電池の安全性を向上させることができる。
【0153】
〔3.1.セパレータ基材〕
セパレータ基材としては、例えば、微細な孔を有する多孔性基材を用いうる。このようなセパレータ基材を用いることにより、二次電池において電池の充放電を妨げることなく短絡を防止することができる。セパレータ基材の具体例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微孔膜または不織布などが挙げられる。
【0154】
セパレータ基材の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。この範囲であると二次電池内でのセパレータ基材による内部抵抗の上昇が小さくなり、また、電池製造時の作業性に優れる。
【0155】
〔3.2.リチウムイオン二次電池用セパレータが備える多孔膜〕
本発明のセパレータは、セパレータ基材上に上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明のセパレータは、セパレータ基材と、前記セパレータ基材上に多孔膜組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して得られる多孔膜とを備える。このようなセパレータは、例えば、基材としてセパレータ基材を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、セパレータ基材の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。
【0156】
[4.リチウムイオン二次電池用電極]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)は、極板と多孔膜とを備える。また、極板は、通常、集電体及び電極活物質層を備える。本発明の電極が本発明に係る多孔膜を備えるので、当該電極を備えるリチウムイオン二次電池においては、多孔膜とセパレータ基材又は極板とは強力に結着されている。また、本発明にかかる多孔膜はイオン拡散性に優れるので、電極の内部抵抗を小さくできる。さらに、本発明の多孔膜はセパレータとして機能しうるので、リチウムイオン二次電池の内部短絡を防止することができる。また、本発明の多孔膜は、電池に連続的に振動が与えられても電解液中での多孔膜の脱落を抑制することができ、電池の安全性を向上させることができる。
【0157】
〔4.1.集電体〕
集電体は、電気導電性を有し、且つ、電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。通常、この集電体の材料としては、金属材料を用いる。その例を挙げると、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、正極に用いる集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極に用いる集電体としては銅が好ましい。また、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0158】
集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001mm〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。
【0159】
集電体は、電極活物質層との結着強度を高めるため、表面に予め粗面化処理して使用することが好ましい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、例えば、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極活物質層の結着強度や導電性を高めるために、集電体の表面に中間層を形成してもよい。
【0160】
〔4.2.電極活物質層〕
電極活物質層は、集電体上に設けられた層であり、電極活物質を含む。
リチウムイオン二次電池の電極活物質は、電解液中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入又は放出できるものを用いうる。
【0161】
正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、例えば、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、例えば、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVO等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13等の遷移金属酸化物などが挙げられる。一方、有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性重合体が挙げられる。
【0162】
さらに、無機化合物及び有機化合物を組み合わせた複合材料からなる正極活物質を用いてもよい。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
さらに、前記の化合物を部分的に元素置換したものを正極活物質として用いてもよい。
これらの正極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、前述の無機化合物と有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
【0163】
正極活物質の粒子径は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで選択されうる。負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、正極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。正極活物質の体積平均粒子径がこの範囲であると、充放電容量が大きい電池を得ることができ、かつ電極用スラリー組成物および電極を製造する際の取扱いが容易である。
【0164】
電極活物質層における正極活物質の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であり、また、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。正極活物質の量を上記範囲とすることにより、リチウムイオン二次電池の容量を高くでき、また、正極の柔軟性並びに集電体と正極活物質層との結着性を向上させることができる。
【0165】
負極活物質は、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性重合体;などが挙げられる。また、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄およびニッケル等の金属並びにこれらの合金;前記金属又は合金の酸化物;前記金属又は合金の硫酸塩;なども挙げられる。また、金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等を使用してもよい。さらに、電極活物質は、機械的改質法により表面に導電材を付着させたものを使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0166】
負極活物質の粒子径は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、負極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0167】
負極活物質の比表面積は、出力密度向上の観点から、好ましくは2m/g以上、より好ましくは3m/g以上、さらに好ましくは5m/g以上であり、また、好ましくは20m/g以下、より好ましくは15m/g以下、さらに好ましくは10m/g以下である。負極活物質の比表面積は、例えばBET法により測定しうる。
【0168】
電極活物質層における負極活物質の割合は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは88重量%以上であり、また、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。負極活物質の量を上記範囲とすることにより、高い容量を示しながらも優れた柔軟性及び結着性を示す負極を実現できる。
【0169】
電極活物質層は、電極活物質の他に、電極用バインダーを含むことが好ましい。電極用バインダーを含むことにより、電極活物質層の結着性が向上し、電極の撒回時等の工程においてかかる機械的な力に対する強度が上がる。また、電極活物質層が集電体及び多孔膜から剥がれにくくなることから、剥れた脱離物による短絡の危険性が小さくなる。
【0170】
電極用バインダーとしては、例えば重合体を用いうる。電極用バインダーとして用いうる重合体としては、例えば、第二粒子状重合体の説明の項又は水溶性重合体の説明の項において説明した重合体と同様の範囲から選択される重合体が挙げられる。
さらに、以下に例示する軟質重合体の粒子を、電極用バインダーとして用いてもよい。軟質重合体としては、例えば、
(i)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
(ii)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
(iii)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
(iv)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
(v)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
(vi)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
(vii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
(viii)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
(ix)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体;などが挙げられる。これらの中でも、ジエン系軟質重合体及びアクリル系軟質重合体が好ましい。また、これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、変性により官能基を導入したものであってもよい。
また、電極用バインダーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0171】
電極活物質層における電極用バインダーの量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。電極用バインダーの量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から電極活物質が脱落するのを防ぐことができる。
【0172】
電極活物質層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、電極活物質及び電極用バインダー以外にも、任意の成分が含まれていてもよい。その例を挙げると、導電材、補強材などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0173】
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン;黒鉛等の炭素粉末;各種金属のファイバー及び箔;などが挙げられる。導電材を用いることにより、電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、サイクル特性等の電池特性を改善できる。
【0174】
導電材の比表面積は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは60m/g以上、特に好ましくは70m/g以上であり、好ましくは1500m/g以下、より好ましくは1200m/g以下、特に好ましくは1000m/g以下である。導電材の比表面積を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、電極活物質層と集電体との結着性を高めることができる。
【0175】
補強材としては、例えば、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。補強材を用いることにより、強靭で柔軟な電極を得ることができ、優れた長期サイクル特性を得ることができる。
【0176】
導電材及び補強剤の使用量は、電極活物質100重量部に対して、それぞれ、通常0重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
【0177】
電極活物質層の厚みは、正極及び負極のいずれも、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
【0178】
電極活物質層の製造方法は特に制限されない。電極活物質層は、例えば、電極活物質及び溶媒、並びに、必要に応じて電極用バインダー及び任意の成分を含む電極用のスラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させて製造しうる。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用しうる。
【0179】
〔4.3.リチウムイオン二次電池用電極が備える多孔膜〕
本発明の電極は、前記の極板上に、上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明の電極は、極板と、極板上に多孔膜組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して得られる多孔膜とを備える。このような電極は、例えば、基材として極板を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、極板の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。ただし、通常は、多孔膜が電極活物質層上に設けられるので、本発明の電極は、集電体、電極活物質層及び多孔膜をこの順に備える。
【0180】
[5.リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を備える。また、本発明の二次電池は、下記の要件(A)を満たすか、要件(B)を満たすか、要件(A)及び(B)の両方を満たす。
(A)本発明のリチウムイオン二次電池の正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電極である。
(B)本発明のリチウムイオン二次電池がセパレータを備え、且つ、そのセパレータが本発明のセパレータである。
【0181】
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明に係る多孔膜を備えるので、低温出力特性に優れる。また、通常は、本発明のリチウムイオン二次電池は、高温サイクル特性に優れる。
【0182】
〔5.1.電極〕
本発明のリチウムイオン二次電池は、原則として、正極及び負極の一方又は両方として、本発明の電極を備える。ただし、本発明のリチウムイオン二次電池がセパレータとして本発明のセパレータを備える場合には、正極及び負極の両方として本発明の電極以外の電極を備えていてもよい。
【0183】
〔5.2.セパレータ〕
本発明のリチウムイオン二次電池は、原則として、セパレータとして本発明のセパレータを備える。ただし、本発明の二次電池が正極及び負極の少なくとも一方として本発明の電極を備える場合には、セパレータとして本発明のセパレータ以外のセパレータを備えていてもよい。また、本発明の電極が備える多孔膜はセパレータとしての機能を有するので、本発明の電極を備える二次電池においてはセパレータを省略してもよい。
【0184】
〔5.3.電解液〕
電解液としては、第一粒子状重合体のコア部の重合体及びシェル部の重合体を、前述した所定の範囲の膨潤度で膨潤させられるものを用いうる。このような電解液としては、有機溶媒と、その有機溶媒に溶解した支持電解質とを含む有機電解液が好ましく用いうる。
【0185】
支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すことから、LiPF、LiClO及びCFSOLiが好ましい。また、支持電解質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほど、リチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0186】
電解液中における支持電解質の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。また、支持電解質の種類に応じて、支持電解質は、好ましくは0.5モル/リットル〜2.5モル/リットルの濃度で用いられる。支持電解質の量をこの範囲に収めることにより、イオン導電度を高くできるので、リチウムイオン二次電池の充電特性及び放電特性を良好にできる。
【0187】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものを用いうる。有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート化合物;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル化合物;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;などが好適に挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広い範囲で有するので、カーボネート化合物が好ましい。また、用いる溶媒の粘度が低いほど、リチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0188】
また、電解液は、必要に応じて添加剤を含みうる。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0189】
上述した電解液の中でも、第一粒子状重合体のコア部の重合体及びシェル部の重合体の膨潤度を制御し易いという観点から、電解液の溶媒としては所望のSP値を有するものを用いることが好ましい。電解液の溶媒の具体的なSP値は、好ましくは8(cal/cm1/2以上、より好ましくは9(cal/cm1/2以上であり、また、好ましくは15(cal/cm1/2以下、より好ましくは14(cal/cm1/2以下である。前記の範囲内に収まるSP値を有する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状エステル化合物;エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル化合物;などが挙げられる。
【0190】
〔5.4.リチウムイオン二次電池の製造方法〕
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
【実施例】
【0191】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0192】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0193】
[I.第一群の実施例及び比較例に係る説明]
以下、第一群の実施例及び比較例について説明する。第一群の実施例及び比較例は、非導電性繊維を含まない多孔膜組成物についての実施例及び比較例である。
【0194】
[第一群の実施例及び比較例に係る評価方法]
〔I−1.高温サイクル試験の前後でのセル体積変化の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。この捲回型セルを流動パラフィンに浸漬し、セルの体積X0を測定した。
【0195】
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。1000サイクル後の捲回型セルを流動パラフィンに浸漬し、セルの体積X1を測定した。
【0196】
充放電を1000サイクル繰り返す高温サイクル試験の前後でのセル体積変化率ΔXを、ΔX(%)=(X1−X0)/X0×100にて計算した。このセル体積変化率ΔXの値が小さいほど、ガス発生の抑制能力に優れていることを示す。
【0197】
〔I−2.セパレータ基材と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例I−1〜I−23及びI−25〜I−34並びに比較例I−1〜I−6において製造した多孔膜を備えるセパレータを、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)に3日間浸漬した。電解液から試験片を取り出し、多孔膜の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、電解液を拭き取った多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータ基材の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度Pとした。測定されたピール強度Pが大きいほど、セパレータ基材と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度Pが大きいほど、結着強度が大きいことを示す。
【0198】
〔I−3.極板と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例I−24において製造した電極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)に3日間浸漬した。電解液から試験片を取り出し、多孔膜の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、電解液を拭き取った多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度Pとした。測定されたピール強度Pが大きいほど、極板と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度Pが大きいほど、結着強度が大きいことを示す。
【0199】
〔I−4.高温サイクル特性の評価方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
【0200】
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電を1000サイクル繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。
【0201】
容量維持率ΔCを、ΔC=C1/C0×100(%)にて計算した。この容量維持率ΔCの値が高いほど、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が優れ、電池が長寿命であることを示す。
【0202】
〔I−5.耐ブロッキング性の評価方法〕
実施例及び比較例で製造したセパレータを、幅5cm×長さ5cm、及び、幅4cm×長さ4cmにそれぞれ正方形に切って試験片を得た。これらを二枚重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cmの加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、各サンプルのセパレータ同士の結着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングしない。
B:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングするが剥がれる。
C:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングして剥がれない。
D:未プレスの状態のサンプルにおいて、セパレータ同士がブロッキングする。
【0203】
〔I−6.低温出力特性の評価方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cの充電レートで5時間の充電の操作を行い、充電後の電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始から15秒後の電圧V1を測定した。
電圧変化ΔVを、ΔV=V0−V1にて計算した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、低温出力特性に優れることを示す。
【0204】
〔I−7.コア部の重合体の膨潤度の測定方法〕
実施例及び比較例においてコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した方法と同様にして、第一粒子状重合体のコア部を構成する重合体を含む水分散液を製造した。この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを製造した。
【0205】
このフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の重量を測定し、W0とした。
また、前記の試験片を電解液に、60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量W1を測定した。
これらの重量W0及びW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算した。
【0206】
この際、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとビニレンカーボネートの混合溶媒(体積混合比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm1/2)に、支持電解質としてLiPFを溶媒に対し1mol/リットルの濃度で溶かしたものを用いた。
【0207】
〔I−8.シェル部の重合体の膨潤度の測定方法〕
コア部の製造に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の製造に用いる単量体組成物を用いたこと以外は実施例及び比較例において第一粒子状重合体を含む水分散液を製造した方法と同様にして、シェル部を形成する重合体からなる粒子状重合体を含む水分散液を製造した。試験片を製造するための水分散液として、このシェル部を形成する重合体からなる粒子状重合体を含む水分散液を用いたこと以外はコア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様にして、シェル部の重合体の膨潤度Sを測定した。
【0208】
〔I−9.第一粒子重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法〕
第一粒子状重合体を、可視光硬化性樹脂(日本電子株式会社製「D−800」)に十分分散させた後、包埋し、第一粒子状重合体を含有するブロック片を作製した。次に、ブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ100nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製した。その後、四酸化ルテニウムを用いて測定用試料に染色処理を施した。
【0209】
次に、染色した測定用試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM−3100F」)にセットして、加速電圧80kVにて、第一粒子状重合体の断面構造を写真撮影した。電子顕微鏡の倍率は、視野に第一粒子状重合体1個の断面が入るように倍率を設定した。
【0210】
撮影された第一粒子状重合体の断面構造において、コア部の周の長さD1、及び、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を計測し、下記(1)式により、その第一粒子状重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出した。
被覆割合Rc(%)=D2/D1×100 (1)
前記の被覆割合Rcを、任意に選択した20個の第一粒子状重合体について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合とした。
【0211】
〔I−10.第一粒子状重合体の体積平均粒子径の測定方法〕
第一粒子状重合体の体積平均粒子径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−3100」)により測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径とした。
【0212】
〔I−11.コアシェル比率の測定方法〕
第一粒子状重合体のシェル部の平均厚みを、以下の手順で測定した。
シェル部が重合体の粒子により構成されている場合、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法の項で説明したのと同様にして、透過型電子顕微鏡によって、第一粒子状重合体の断面構造を観察した。観察された第一粒子状重合体の断面構造から、シェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定した。任意に選択した20個の第一粒子状重合体について、前記の方法でシェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定し、その最長径の平均値をシェル部の平均厚みとした。
【0213】
また、シェル部が粒子以外の形状を有している場合、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法の項で説明したのと同様にして、透過型電子顕微鏡によって、第一粒子状重合体の断面構造を観察した。観察された第一粒子状重合体の断面構造から、シェル部の最大厚みを測定した。任意に選択した20個の第一粒子状重合体について、前記の方法でシェル部の最大厚みを測定し、その最大厚みの平均値をシェル部の平均厚みとした。
【0214】
そして、測定されたシェル部の平均厚みを第一粒子状重合体の体積平均粒子径で割ることにより、コアシェル比率を計算した。
【0215】
〔I−12.負極における金属の析出の評価方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。その後、電池を分解して負極を取り出し、その負極における金属の析出を評価した。
負極における金属の析出は、ICP発光分光分析装置「SPS3000」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、負極中のコバルトの割合を重量基準で評価した。
負極中のコバルト重量が大きいほど、負極に金属析出が起こっていることを示す。
【0216】
[I−13.多孔膜の耐久性の評価方法]
多孔膜を備えるセパレータを5cm×5cmに切り出して、セパレータの試験片を得た。この試験片の重量を測定した。試験片の重量から、当該試験片に含まれるセパレータ基材の重量を差し引いて、多孔膜の重量M0を算出した。
【0217】
続いて、前記のように切り出した試験片を、60℃の非水系電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF)中に浸漬し、10分間、30kHzの超音波振動を与えた。その後、試験片を取出し、60℃の雰囲気下で10時間乾燥した。乾燥後、試験片の重量を測定し、この試験片の重量から、当該試験片に含まれるセパレータ基材の重量を差し引いて、乾燥後の多孔膜の重量M1を測定した。
【0218】
そして、ΔM(%)={(M0−M1)/M0}×100の式を用いて、振動脱落率ΔMを算出し、下記のように評価した。振動脱落率ΔMの値が小さいほど、耐久性に優れることを示す。
A:振動脱落率ΔMが、20%未満。
B:振動脱落率ΔMが、20%以上40%未満。
C:振動脱落率ΔMが、40%以上60%未満。
D:振動脱落率ΔMが、60%以上。
【0219】
〔I−14.ガラス転移温度の測定方法〕
示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR DSC6220」)を用い、測定試料10mgをアルミパンに計量し、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲−100℃〜500℃の間で、昇温速度10℃/minで、常温常湿下で、DSC曲線を測定した。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/min/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点を、ガラス転移温度として求めた。
【0220】
[実施例I−1]
(I−1−1.第一粒子状重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して、重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体を含む水分散液を得た。
【0221】
次いで、この水分散液を70℃に加温した。前記水分散液に、シェル部の製造に用いる単量体組成物としてスチレン20部を30分かけて連続で供給し、重合を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止することにより、第一粒子状重合体を含む水分散液を製造した。得られた第一粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、0.45μmであった。得られた第一粒子重合体の断面を観察したところ、シェル部は重合体の粒子によって構成されていた。また、シェル部において、そのシェル部を構成する重合体の粒子同士は、第一粒子状重合体の径方向に重なり合っておらず、それらの粒子が単層でシェル部を構成していた。シェル部を構成する重合体の粒子の個数平均粒子径は、45nmであった。得られた第一粒子状重合体について、上述した方法で、コアシェル比率及びコア部の表面がシェル部によって覆われる平均割合を測定した。
【0222】
(I−1−2.第二粒子状重合体の製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
【0223】
一方、別の容器でイオン交換水50部、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、ブチルアクリレート93部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、アリルメタクリレート1部及びアクリルアミド2部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、第二粒子状重合体を含む水分散液を製造した。
得られた第二粒子状重合体の体積平均粒子径D50は0.3μm、ガラス転移温度は−40℃であった。
【0224】
(I−1−3.多孔膜組成物の製造)
水溶性重合体として、エーテル化度0.8〜1.0のカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製、製品名「D1200」)を用意した。この水溶性重合体の1%水溶液の粘度は、10mPa・s〜20mPa・sであった。
【0225】
第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部、及び、水溶性重合体を1.5部混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が40重量%になるように混合して、第一粒子状重合体を分散させた。これに、第二粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で6部、及び、レベリング剤としてポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ社製、製品名「SNウェット366」)0.2部を混合して、スラリー状の多孔膜組成物を製造した。
【0226】
(I−1−4.セパレータの製造)
ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)をセパレータ基材として用意した。用意したセパレータ基材の両面に、前記の多孔膜組成物を塗布し50℃で1分間乾燥させた。これにより、1層当たりの厚みが2μmの多孔膜を両面に備えるセパレータを得た。
このセパレータについて、上述した方法で、ピール強度の測定及び耐ブロッキング性の評価を行った。
【0227】
(I−1−5.負極用の粒子状バインダーの製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状バインダー(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状バインダーを含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって前記の混合物から未反応単量体の除去を行い、30℃以下まで冷却して、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
【0228】
(I−1−6.負極用スラリーの製造)
人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部混合し、さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を68%に調製し、25℃で60分間混合した。こうして得られた混合液に、イオン交換水を加えて固形分濃度を62%に調製した後、さらに25℃で15分間混合した。この混合液に、上記の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当で1.5部入れ、さらにイオン交換水を加えて最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
【0229】
(I−1−7.負極の製造)
前記負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
【0230】
(I−1−8.正極用スラリーの製造)
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)を2部、及び、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部混合し、これにN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70%にした。これをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリーを得た。
【0231】
(I−1−9.正極の製造)
前記正極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極を得た。
【0232】
(I−1−10.リチウムイオン二次電池の製造)
プレス後の正極を49×5cmに切り出した。切り出された正極の正極活物質層上に、55×5.5cmに切り出したセパレータを配置した。さらに、プレス後の負極を50×5.2cmの長方形に切り出し、この切り出された負極を前記セパレータの正極とは反対側に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機によって捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃0.5MPaでプレスし、扁平体とした。この扁平体を、電池の外装としてのアルミニウム包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口した。これにより、800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、高温サイクル試験の前後でのセル体積変化、高温サイクル特性、低温出力特性、及び、負極における金属の析出を評価した。
【0233】
[実施例I−2]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.85部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.15部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0234】
[実施例I−3]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を71.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を4.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0235】
[実施例I−4]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.95部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0236】
[実施例I−5]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、メタクリル酸メチル55部と2−エチルヘキシルアクリレート20部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0237】
[実施例I−6]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりにアクリロニトリル75部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0238】
[実施例I−7]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、アクリロニトリル65部と2−エチルヘキシルアクリレート10部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0239】
[実施例I−8]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりにアクリロニトリル72部を用い、エチレンジメタクリレートの量を4.0部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0240】
[実施例I−9]
前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン10部とアクリロニトリル10部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0241】
[実施例I−10]
前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン5部とアクリロニトリル15部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0242】
[実施例I−11]
前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりにスチレンスルホン酸のナトリウム塩20部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0243】
[実施例I−12]
前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレンスルホン酸のナトリウム塩15部とアクリロニトリル5部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0244】
[実施例I−13]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を72.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を3.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0245】
[実施例I−14]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を90部に変更した。
また、前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を5部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0246】
[実施例I−15]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を52.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を3.5部に変更した。
また、前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を40部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0247】
[実施例I−16]
前記工程(I−1−1)において、乳化剤として用いたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を2部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0248】
[実施例I−17]
前記工程(I−1−1)において、乳化剤として用いたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を0.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0249】
[実施例I−18]
前記工程(I−1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにN−メチロールアクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0250】
[実施例I−19]
前記工程(I−1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにメタクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0251】
[実施例I−20]
前記工程(I−1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0252】
[実施例I−21]
前記工程(I−1−2)において、アクリルアミド2部の代わりにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを2部用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0253】
[実施例I−22]
前記工程(I−1−2)において、ブチルアクリレートの量を94.5部に変更し、アクリルアミドの量を0.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0254】
[実施例I−23]
前記工程(I−1−2)において、ブチルアクリレートの量を86.5部に変更し、アクリルアミドの量を8.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0255】
[実施例I−24]
実施例I−1の工程(I−1−7)で製造したプレス後の負極と同様の構成を有する極板を用意した。この極板の負極活物質層上に、実施例I−1の工程(I−1−3)で得た多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、極板を20m/分の速度で100℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、極板と多孔膜とを備える負極を得た。
この負極について、上述した方法で、ピール強度の測定を行った。
【0256】
セパレータとして多孔膜を有さないポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)を用いたこと、及び、負極として実施例I−24で製造した多孔膜を備える負極を用いたこと以外は実施例I−1の工程(I−1−10)と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、高温サイクル試験の前後でのセル体積変化、高温サイクル特性、低温出力特性、及び、負極における金属の析出を評価した。
【0257】
[実施例I−25]
前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部用いる代わりに、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で50部とアルミナ粒子(体積平均粒子径0.8μm)50部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0258】
[実施例I−26]
前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部用いる代わりに、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で90部とポリスチレン粒子(体積平均粒子径0.5μm)50部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0259】
[実施例I−27]
前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン19部とメタクリル酸1部とを組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0260】
[実施例I−28]
前記工程(I−1−3)において、レベリング剤として用いたポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ社製「SNウェット366」)の量を0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0261】
[実施例I−29]
前記工程(I−1−3)において、レベリング剤として用いたポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ社製「SNウェット366」)の量を1.0部に変更した。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0262】
[実施例I−30]
前記工程(I−1−6)において、人造黒鉛100部の代わりに、人造黒鉛90部と珪素酸化物(信越化学社製「KSC−1064」)10部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0263】
[実施例I−31]
前記工程(I−1−6)において、人造黒鉛100部の代わりに、人造黒鉛70部と珪素酸化物(信越化学社製「KSC−1064」)30部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0264】
[実施例I−32]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部及びメタクリル酸4部の代わりに、アクリロニトリル79部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0265】
[実施例I−33]
前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部用いる代わりに、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で1部とアルミナ粒子(体積平均粒子径0.8μm)99部とを組み合わせて用いた。
さらに、実施例I−33では、セル体積変化率ΔXを測定せず、多孔膜の耐久性の評価を行った。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0266】
[実施例I−34]
前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で100部用いる代わりに、第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で10部とアルミナ粒子(体積平均粒子径0.8μm)90部とを組み合わせて用いた。
さらに、実施例I−34では、セル体積変化率ΔXを測定せず、多孔膜の耐久性の評価を行った。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0267】
[比較例I−1]
前記工程(I−1−2)において、ブチルアクリレートの量を95部に変更し、アクリルアミドを用いなかった。
また、前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を使用しないで、代わりに実施例I−25と同様のアルミナ粒子100部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0268】
[比較例I−2]
前記工程(I−1−2)において、ブチルアクリレートの量を80部に変更し、アクリルアミドの量を15部に変更した。
また、前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を使用しないで、代わりに実施例I−25と同様のアルミナ粒子100部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0269】
[比較例I−3]
前記工程(I−1−2)において、ブチルアクリレートの量を95部に変更し、アクリルアミドを用いなかった。
また、前記工程(I−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液を使用しないで、代わりにポリメチルメタクリレート粒子(体積平均粒子径0.5μm;膨潤度25倍)100部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0270】
[比較例I−4]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート60部、スチレン15部及びメタクリル酸5部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0271】
[比較例I−5]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、メタクリル酸メチル50部、アクリロニトリル25部及びメタクリル酸5部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0272】
[比較例I−6]
前記工程(I−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、メタクリル酸メチル50部、2−エチルヘキシルアクリレート25部及びメタクリル酸5部を用いた。
また、前記工程(I−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりにアクリロニトリル20部を用いた。
以上の事項以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0273】
[比較例I−7]
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して、重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、粒子状の重合体を含む水分散液を得た。得られた粒子状の重合体は、実施例I−1に係るコア部を構成する粒子状の重合体と同様のものである。以下、この粒子状の重合体を、適宜、コア重合体と呼ぶ。この粒子状のコア重合体の体積平均粒子径は、0.405μmであった。
【0274】
また、別の攪拌機付き5MPa耐圧容器に、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。耐圧容器内の反応液を60℃に加温し、30分かけて単量体組成物としてスチレン20部を連続で供給して重合させた。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、粒子状の重合体を含む水分散液を得た。得られた粒子状の重合体は、実施例I−1に係るシェル部と同様の重合体で構成された粒子状の重合体である。以下、この粒子状の重合体を、適宜、シェル重合体と呼ぶ。この粒子状のシェル重合体の個数平均粒子径は、45nmであった。
【0275】
粒子状のコア重合体を含む水分散液の全量と、粒子状のシェル重合体を含む水分散液の全量とを混合して、混合分散液を得た。
この混合分散液を、第一粒子状重合体を含む水分散液の代わりに用いたこと以外は実施例I−1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0276】
[結果]
前記の第一群の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。また、下記の表において、単量体の項において単量体の略称の隣に記載の数値は、その単量体の重量部を表す。
「EDMA」:エチレンジメタクリレート
「MMA」:メタクリル酸メチル
「MAA」:メタクリル酸
「2−EHA」:2−エチルヘキシルアクリレート
「AN」:アクリロニトリル
「PMMA」:ポリメチルメタクリレート
「Tg」:ガラス転移温度
「ST」:スチレン
「NaSS」:スチレンスルホン酸のナトリウム塩
「コアシェル比率」:第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対するシェル部の平均厚みの比率
「平均被覆割合」:コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合
「BA」:ブチルアクリレート
「AMA」:アリルメタクリレート
「AAm」:アクリルアミド
「NMA」:N−メチロールアクリルアミド
「MAAm」:メタクリルアミド
「DMAEAA」:N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド
「DMAPAA」:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
「CMC」:カルボキシメチルセルロース
「セパ」:セパレータ基材
「PST」:ポリスチレン
【0277】
【表1】
【0278】
【表2】
【0279】
【表3】
【0280】
【表4】
【0281】
【表5】
【0282】
【表6】
【0283】
【表7】
【0284】
【表8】
【0285】
【表9】
【0286】
【表10】
【0287】
【表11】
【0288】
[検討]
第一群の実施例においては、電解液により膨潤した多孔膜とセパレータ基材又は極板とが強力に結着していることが確認された。これにより、本発明に係る多孔膜組成物により製造される多孔膜が、電解液中において、セパレータ基材及び極板に対して高い結着性を有することが確認された。
また、第一群の実施例においては、第一群の比較例よりも低い電圧変化ΔVが得られた。これにより、本発明に係るリチウムイオン二次電池が、低温出力特性に優れることが確認された。
【0289】
さらに、上述した第一群の実施例及び比較例の結果から、本発明に係る多孔膜が耐ブロッキング性に優れること、本発明のリチウムイオン二次電池は充放電に伴うガスの発生が少ないこと、並びに、本発明のリチウムイオン二次電池が高温サイクル特性に優れることが確認された。
また、特に実施例I−33及び実施例I−34の結果から、本発明のリチウムイオン二次電池では電解液中において多孔膜の脱落を抑制でき、そのため安全性に優れることが確認された。
【0290】
[II.第二群の実施例及び比較例に係る説明]
以下、第二群の実施例及び比較例について説明する。第二群の実施例及び比較例は、非導電性繊維を含む多孔膜組成物についての実施例及び比較例である。
【0291】
[第二群の実施例及び比較例に係る評価方法]
〔II−1.セパレータ基材と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例II−1〜II−18及び比較例II−1〜II−5で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。その後、さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。1000サイクル後の電池を分解し、多孔膜を備えるセパレータを取り出した。取り出したセパレータの表面に付着した電解液を拭き取った。その後、そのセパレータを、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータ基材の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度Pとした。測定されたピール強度Pが大きいほど、セパレータ基材と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度Pが大きいほど、結着強度が大きいことを示す。
【0292】
〔II−2.極板と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例II−19で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。その後、さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。1000サイクル後の電池を分解し、多孔膜を備える負極を取り出した。取り出した負極の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、その負極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度Pとした。測定されたピール強度Pが大きいほど、極板と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度が大きいほど、結着強度が大きいことを示す。
【0293】
〔II−3.高温サイクル特性の評価方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−4.高温サイクル特性の評価方法〕の項で説明したのと同様の方法により、容量維持率ΔCを測定した。この容量維持率ΔCの値が高いほど、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が優れ、電池が長寿命であることを示す。
【0294】
〔II−4.セル膨れ率の測定方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−1.高温サイクル試験の前後でのセル体積変化の測定方法〕の項で説明したのと同様の方法により、セル体積変化率ΔXを測定した。この体積変化率ΔXの値が小さいほど、その電池内の多孔膜が膨れ難く、かつ、電極とセパレータ間に空隙が発生し難いことを示す。
【0295】
〔II−5.リチウム金属の析出量の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、−10℃の環境下で、1Cの充電レートで4.35Vまで1時間かけて充電する操作を行った。その後、室温アルゴン環境下で、負極を取り出した。取り出した負極を観察して、リチウム金属が析出している面積S(cm)を測定した。測定された面積を、下記の評価基準にて評価した。リチウム金属が析出している面積が小さいほど、充放電によるリチウム金属の析出が少なく、負極が電解液中のリチウムイオンを円滑に受け入れることが可能であることを示す。すなわち、リチウム金属が析出している面積が小さいほど、低温受け入れ特性に優れることを示す。
【0296】
(リチウム金属の析出量の評価基準)
A:0≦S<1(cm
B:1(cm)≦S<5(cm
C:5(cm)≦S<10(cm
D:10(cm)≦S<15(cm
E:15(cm)≦S<20(cm
F:20(cm)≦S≦25(cm
【0297】
〔II−6.低温出力特性の評価方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−6.低温出力特性の評価方法〕の項で説明したのと同様の方法により、電圧変化ΔVを測定した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、低温特性に優れることを示す。
【0298】
〔II−7.耐ブロッキング性の評価方法〕
実施例II−1〜II−18及び比較例II−1〜II−5で製造したセパレータを、幅5cm×長さ5cm、及び、幅4cm×長さ4cmの正方形にそれぞれ切って試験片とする。これらを二枚重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cmの加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、各サンプルのセパレータ同士の結着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記の基準で評価した。
【0299】
また、実施例II−19で製造した負極を、幅5cm×長さ5cm、及び、幅4cm×長さ4cmの正方形にそれぞれ切って試験片とする。これらを、多孔膜が対向する向きで二枚重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cmの加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、各サンプルの負極同士の結着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記の基準で評価した。
【0300】
(ブロッキング状態の評価基準)
A:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士又は負極同士がブロッキングしない。
B:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士又は負極同士がブロッキングするが剥がれる。
C:プレスしたサンプルにおいて、セパレータ同士又は負極同士がブロッキングし剥がれない。
D:未プレスの状態のサンプルにおいて、セパレータ同士又は負極同士がブロッキングする。
【0301】
〔II−8.コア部の重合体の膨潤度の測定方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−7.コア部の重合体の膨潤度の測定方法〕の項で説明したのと同様の方法により、コア部の重合体の膨潤度S(倍)を測定した。
【0302】
〔II−9.シェル部の重合体の膨潤度の測定方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−8.シェル部の重合体の膨潤度の測定方法〕の項で説明したのと同様の方法により、シェル部の重合体の膨潤度Sを測定した。
【0303】
〔II−10.コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−9.第一粒子重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合の測定方法〕の項で説明したのと同様の方法により、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合を測定した。
【0304】
〔II−11.粒子の体積平均粒子径の測定方法〕
レーザ回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−3100」)により試料となる粒子の粒子径分布を測定した。測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を、体積平均粒子径として求めた。
【0305】
〔II−12.コアシェル比率の測定方法〕
第一群の実施例及び比較例に係る〔I−11.コアシェル比率の測定方法〕の項で説明したのと同様の方法により、コアシェル比率を測定した。
【0306】
[実施例II−1]
(II−1−1.第一粒子状重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して、重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体を含む水分散液を得た。
【0307】
次いで、この水分散液に、シェル部の製造に用いる単量体組成物としてスチレン20部を30分かけて連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止することにより、第一粒子状重合体を含む水分散液を製造した。得られた第一粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、0.45μmであった。得られた粒子状重合体について、上述した方法で、コアシェル比率及びコア部の表面がシェル部によって覆われる平均割合を測定した。
【0308】
(II−1−2.第二粒子状重合体の製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
【0309】
一方、別の容器でイオン交換水50部、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、ブチルアクリレート93部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−メチロールアクリルアミド1部及びアクリルアミド2部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、(メタ)アクリル重合体からなる第二粒子状重合体を含む水分散液を製造した。
得られた第二粒子状重合体の体積平均粒子径D50は0.36μm、ガラス転移温度は−45℃であった。
【0310】
(II−1−3.多孔膜組成物の製造)
水溶性重合体として、エーテル化度0.8〜1.0のカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製、製品名「D1200」)を用意した。この水溶性重合体の1%水溶液の粘度は、10mPa・s〜20mPa・sであった。
【0311】
非導電性繊維としてセルロース繊維(ダイセル社製「セリッシュKY−100G」、繊維径0.07μm)5重量部、前記の第一粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で95重量部、及び、水溶性重合体1部を混合し、さらにイオン交換水を混合して固形分濃度を40重量%に調整し、攪拌した。さらに、前記の第二粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で6部、及び、ポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ社製「SNウェット366」)0.2部を混合し、スラリー状の多孔膜組成物を製造した。
【0312】
(II−1−4.セパレータの製造)
ポリエチレン製の多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)をセパレータ基材として用意した。用意したセパレータ基材の両面に、前記の多孔膜組成物を塗布し50℃で3分間乾燥させた。これにより、1層当たりの厚みが3μmの多孔膜を備え両面に備えるセパレータを得た。
このセパレータについて、上述した方法で耐ブロッキング性の評価を行った。
【0313】
(II−1−5.負極用の粒子状バインダーの製造)
実施例I−1の工程(I−1−5)と同様にして、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を製造した。
【0314】
(II−1−6.負極用スラリーの製造)
実施例I−1の工程(I−1−6)と同様にして、流動性の良い負極用スラリーを製造した。
【0315】
(II−1−7.負極の製造)
実施例I−1の工程(I−1−7)と同様にして、負極を製造した。
【0316】
(II−1−8.正極用スラリーの製造)
実施例I−1の工程(I−1−8)と同様にして、正極用スラリーを製造した。
【0317】
(II−1−9.正極の製造)
実施例I−1の工程(I−1−9)と同様にして、正極を製造した。
【0318】
(II−1−10.リチウムイオン二次電池の製造)
実施例I−1の工程(I−1−10)と同様にして、捲回型のリチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、ピール強度、高温サイクル特性、セル膨れ率、リチウム金属の析出量及び低温出力特性の評価を行った。
【0319】
[実施例II−2]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.85部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.15部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0320】
[実施例II−3]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を71.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を4.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0321】
[実施例II−4]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.95部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0322】
[実施例II−5]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、メタクリル酸メチル55部及び2−エチルヘキシルアクリレート20部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0323】
[実施例II−6]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの代わりにアクリロニトリルを用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0324】
[実施例II−7]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりに、アクリロニトリル65部及び2−エチルヘキシルアクリレート10部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0325】
[実施例II−8]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部の代わりにアクリロニトリル72部を用い、さらに、エチレンジメタクリレートの量を4.0部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0326】
[実施例II−9]
前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン10部及びアクリロニトリル10部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0327】
[実施例II−10]
前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレン5部及びアクリロニトリル15部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0328】
[実施例II−11]
前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの代わりにスチレンスルホン酸のナトリウム塩を用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0329】
[実施例II−12]
前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部の代わりに、スチレンスルホン酸のナトリウム塩15部及びアクリロニトリル5部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0330】
[実施例II−13]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を72.5部に変更し、エチレンジメタクリレートを用いなかった。
また、前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレン20部に加えてエチレンジメタクリレート3.5部を用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0331】
[実施例II−14]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を90部に変更した。
また、前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を5部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0332】
[実施例II−15]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を52.5部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を3.5部に変更した。
また、前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの量を40部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0333】
[実施例II−16]
前記工程(II−1−3)において、非導電性繊維としてダイセル社製「セリッシュKY−100G」の代わりに、セルロース繊維(スギノマシン社製「BiNFIs−セルロース」;繊維径0.02μm)を用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0334】
[実施例II−17]
前記工程(II−1−3)において、セルロース繊維の量を0.5部に変更し、第一粒子状重合体を含む水分散液の量を固形分相当で99.5重量部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0335】
[実施例II−18]
前記工程(II−1−3)において、セルロース繊維の量を45部に変更し、第一粒子状重合体を含む水分散液の量を固形分相当で55重量部に変更した。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0336】
[実施例II−19]
実施例II−1の工程(II−1−7)で得たプレス後の負極と同様の構成を有する極板を用意した。この極板の両面に、実施例II−1の工程(II−1−3)で得た多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、極板を20m/分の速度で100℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、多孔膜、集電体、負極活物質層及び多孔膜をこの順に備える負極を得た。
この負極について、上述した方法で耐ブロッキング性の評価を行った。
【0337】
前記工程(II−1−10)において、セパレータとして、多孔膜を備えないポリエチレン製の多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)を用いた。
また、前記工程(II−1−10)において、負極として、実施例II−19で製造した多孔膜を備える負極を用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0338】
[比較例II−1]
前記工程(II−1−3)において、前記の第一粒子状重合体を含む水分散液の代わりに、ポリスチレン粒子(体積平均粒子径0.5μm)95部を用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0339】
[比較例II−2]
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、単量体組成物として、メタクリル酸メチル70部、アクリロニトリル25部及びメタクリル酸5部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して、重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コアシェル構造を有さない粒子状重合体を含む水分散液を得た。
【0340】
前記工程(II−1−3)において、第一粒子状重合体を含む水分散液の代わりに、比較例II−2で製造した前記のコアシェル構造を有さない粒子状重合体を含む水分散液を用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0341】
[比較例II−3]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート60部、スチレン15部及びメタクリル酸5部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0342】
[比較例II−4]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、メタクリル酸メチル50部、アクリロニトリル25部及びメタクリル酸5部を組み合わせて用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0343】
[比較例II−5]
前記工程(II−1−1)に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル75部、メタクリル酸4部及びエチレンジメタクリレート1部の代わりに、メタクリル酸メチル50部、2−エチルヘキシルアクリレート25部及びメタクリル酸5部を組み合わせて用いた。
また、前記工程(II−1−1)に係るシェル部の製造に用いる単量体組成物において、スチレンの代わりにアクリロニトリルを用いた。
以上の事項以外は実施例II−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し評価した。
【0344】
[結果]
前記の第二群の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。また、下記の表において、単量体の項において単量体の略称の隣に記載の数値は、その単量体の重量部を表す。
【0345】
「EDMA」:エチレンジメタクリレート
「MMA」:メタクリル酸メチル
「MAA」:メタクリル酸
「2−EHA」:2−エチルヘキシルアクリレート
「AN」:アクリロニトリル
「ST」:スチレン
「PST」:ポリスチレン
「Tg」:ガラス転移温度
「NaSS」:スチレンスルホン酸のナトリウム塩
「コアシェル比率」:第一粒子状重合体の体積平均粒子径に対するシェル部の平均厚みの比率
「被覆率」:コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合
「D50」:体積平均粒子径
「KY−100G」:セルロース繊維(ダイセル社製「セリッシュKY−100G」)
「BiNFIs」:セルロース繊維(スギノマシン社製「BiNFIs−セルロース」)
「粒:繊」:第一粒子状重合体と非導電性繊維との重量比
「CMC−Na」:カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩
「セパ」:セパレータ基材
【0346】
【表12】
【0347】
【表13】
【0348】
【表14】
【0349】
【表15】
【0350】
【表16】
【0351】
[検討]
上述した第二群の実施例及び比較例から分かるように、本発明の多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜は、電解液中において、セパレータ基材及び極板との結着性に優れる。さらに、多孔膜組成物が非導電性繊維を含むことにより、その多孔膜組成物を用いて形成された多孔膜は、電解液中での膨れを抑制できる。そのため、本発明のリチウムイオン二次電池は、低温出力特性に優れる。
【符号の説明】
【0352】
100 第一粒子状重合体
110 コア部
110S コア部の外表面
120 シェル部
図1