特許第6437095号(P6437095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437095
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】感エネルギー性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20181203BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20181203BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20181203BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20181203BHJP
   C08G 73/08 20060101ALI20181203BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20181203BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20181203BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20181203BHJP
   C07C 211/50 20060101ALN20181203BHJP
   C07C 211/51 20060101ALN20181203BHJP
   C07C 215/32 20060101ALN20181203BHJP
   C07C 47/544 20060101ALN20181203BHJP
   C07C 63/30 20060101ALN20181203BHJP
【FI】
   C08L79/08
   C08K5/3445
   C08L79/04 B
   C08G73/10
   C08G73/08
   G03F7/038 504
   G03F7/004 503Z
   G03F7/004 501
   G03F7/20 501
   !C07C211/50
   !C07C211/51
   !C07C215/32
   !C07C47/544
   !C07C63/30
【請求項の数】13
【全頁数】112
(21)【出願番号】特願2017-509870(P2017-509870)
(86)(22)【出願日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2016059427
(87)【国際公開番号】WO2016158679
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-67031(P2015-67031)
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-89214(P2015-89214)
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-157747(P2015-157747)
(32)【優先日】2015年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-202460(P2015-202460)
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−330615(JP,A)
【文献】 特開昭59−223725(JP,A)
【文献】 特開2017−005026(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/168691(WO,A1)
【文献】 特開2014−157310(JP,A)
【文献】 特開昭58−160351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08G 73/08
C08G 73/10
C08K 5/3445
C08L 79/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)で表されるイミダゾール化合物(A)と、樹脂前駆体成分(B)と、溶剤(S)とを含有する感エネルギー性樹脂組成物であって、
前記樹脂前駆体成分(B)は、モノマー成分及び前駆体ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記モノマー成分は、下記式(2)で表されるジアミン化合物と、下記式(3a)で表されるジカルボニル化合物及び/又は下記式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを含有し、
前記前駆体ポリマーは、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体ポリマーある、感エネルギー性樹脂組成物。
【化1】
(式中、一方のRは水素原子を表し、他方のRは置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。前記Rはと結合して環状構造を形成してもよい。)
【化2】
(式中、RBNは(2+q)価の有機基を表し、qは0〜2の整数を表す。)
【化3】
(式中、RBCaは2価の有機基を表し、A及びAはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【化4】
(式中、RBCbは4価の有機基を表す。)
【化5】
(式中、RBN及びqは前記のとおりであり、RBCは(2+m)価の有機基を表し、RB3は水素原子又は炭素原子数1〜20の1価の有機基を表し、mは0〜2の整数を表す。但し、m+q>0である。)
【請求項2】
前記イミダゾール化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物を含む請求項1記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【化6】
(式中、R、R及びnは、式(1a)と同じであり、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは置換基を有してもよいアルキレン基を表す。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項3】
前記樹脂前駆体成分(B)は、
(B1)前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミン化合物とを反応させて得られるイミド環形成性ポリマー(但し、下記(B3)のポリマーを除く。)、
(B2)下記式(2a)で表されるジアミンジオールと前記式(3a)で表されるジカルボニル化合物とを反応させて得られるオキサゾール環形成性ポリマー(但し、下記(B3)のポリマーを除く。)、及び、
(B3)下記式(4c)で表される繰り返し単位を主成分とするイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー
よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【化7】
(式中、RBNaは隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基を表し、式(2a)で表されるジアミンジオールに含まれる2組のアミノ基と水酸基との組み合わせを構成する各組のアミノ基と水酸基とは、前記隣接する2つの炭素原子に結合している。)
【化8】
(式中、RBNa、RBCa、RBCb及びRB3はそれぞれ独立に前記のとおりであり、RBNbは2価の有機基を表し、RBNdは(2+q2)価の有機基を表し、RBCdは(2+m2)価の有機基を表し、m2及びq2はそれぞれ独立に1又は2であり、a、b及びcはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、a個の繰り返し単位、b個の繰り返し単位及びc個の繰り返し単位の各繰り返し単位相互間の結合順は式(4c)記載の順に限定されない。但し、a>0且つb>0である、又は、c>0である。)
【請求項4】
前記イミダゾール化合物(A)は、下記式(1−1a)で表される化合物を含む請求項1〜3の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【化9】
(式(1−1a)中及びnは、式(1a)と同じであり、Rは置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族基であり、、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、但し、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びRのうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項5】
前記イミダゾール化合物(A)は、下記式(1−1)で表される化合物を含む請求項1〜3の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【化10】
(式(1−1)中、R、R、R、及びnは、式(1)と同じであり、R、R、R、R、及びRは、式(1−1a)と同じである。R、R、R、R、及びRのうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項6】
nは0である、請求項1〜5の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【請求項7】
溶剤(S)は、下記式(5)で表される化合物(S1)を含む溶剤である請求項1〜の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【化11】
(式(5)中、RS1及びRS2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基であり、RS3は下式(5−1)又は下式(5−2):
【化12】
で表される基である。式(5−1)中、RS4は、水素原子又は水酸基であり、RS5及びRS6は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。式(5−2)中、RS7及びRS8は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
【請求項8】
露光により塩基を発生する塩基発生剤成分を更に含有する請求項1〜の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する形成工程と、
前記塗膜又は成形体を露光又は加熱することにより前記塗膜又は成形体中の樹脂前駆体成分(B)を閉環させる閉環工程と
を含む、イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜の何れか1項記載の感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する形成工程と、
前記塗膜又は成形体を選択的に露光する露光工程と、
露光後の前記塗膜又は成形体を現像する現像工程と、
現像後の前記塗膜又は成形体を加熱する加熱工程とを含むパターン形成方法。
【請求項11】
下記式(1a)で表されるイミダゾール化合物(A)と、
下記式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする前駆体ポリマーが閉環してなる、イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーと
を含有する永久膜。
【化13】
(式中、一方のRは水素原子を表し、他方のRは置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。前記Rはと結合して環状構造を形成してもよい。)
【化14】
(式中、RBNは(2+q)価の有機基を表し、qは0〜2の整数を表し、RBCは(2+m)価の有機基を表し、RB3は水素原子又は炭素原子数1〜20の1価の有機基を表し、mは0〜2の整数を表す。但し、m+q>0である。)
【請求項12】
前記イミダゾール化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物を含む請求項11記載の永久膜。
【化15】
(式中、R、R及びnは、式(1a)と同じであり、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは置換基を有してもよいアルキレン基を表す。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項13】
nは0である、請求項11又は12記載の永久膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のイミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーの前駆体ポリマー並びに/又は該前駆体ポリマーのモノマー成分を含有する感エネルギー性樹脂組成物、該感エネルギー性樹脂組成物を用いる膜又は成形体の製造方法、該感エネルギー性樹脂組成物を用いるパターン形成方法、並びに、永久膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性、機械的強度、及び絶縁性や、低誘電率等の特性を有するため、種々の素子や、多層配線基板等の電子基板のような電気・電子部品において、絶縁材や保護材として広く使用されている。また、精密な電気・電子部品において、微小な個所を選択的に絶縁又は保護するためには、所望の形状にパターニングされたポリイミド樹脂が用いられている。
【0003】
一般に、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを極性有機溶剤中で重合させて得られるポリアミック酸を、300℃程度の高温で熱処理して形成されるイミド環含有ポリマーである。そのため、電子材料用のポリイミド製品は、ポリアミック酸のようなポリイミド前駆体の溶液として供給されることが多い。電気・電子部品を製造する際には、ポリイミド前駆体の溶液が、絶縁材や保護材を形成する個所に、塗布や注入等の方法により供給された後、ポリイミド前駆体の溶液を300℃程度の高温で熱処理して、絶縁材や保護材が形成されている。
【0004】
ポリイミド前駆体からポリイミド樹脂からなる絶縁材や保護材を形成する従来の方法は、高温での熱処理が必要であるため、熱に弱い材料に適用できない問題がある。そこで、例えば、200℃前後の低温での処理でポリイミド樹脂を形成可能なポリイミド前駆体組成物が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
一方、ポリベンゾオキサゾール樹脂は、耐熱性、機械的強度、絶縁性、及び寸法安定等に優れるため、繊維やフィルムのみならず、種々の素子や多層配線基板等の電子基板のような電気・電子部品における絶縁材や保護材として広く使用されている。
【0006】
一般に、ポリベンゾオキサゾール樹脂は、芳香環中の隣接する炭素原子上にアミノ基と水酸基とを有する芳香族ジアミンジオールと、ジアルデヒド化合物や、ジカルボン酸ジハライドのようなジカルボニル化合物とを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びジメチルホルムアミド(DMF)のような有機溶媒中で重合させて得られる前駆体ポリマーを、300℃程度の高温で熱処理して形成されるオキサゾール環含有ポリマーである。
【0007】
このような方法により製造されるオキサゾール環含有ポリマーの具体例としては、芳香環中の隣接する炭素原子上にアミノ基と水酸基とを有する芳香族ジアミンジオールと、ジ(4−ホルミルフェニル)アルカン又はジ(4−ハロカルボニルフェニル)アルカンとを、ジメチルホルムアミド中で反応させて得られた前駆体ポリマーの溶液を、200℃から温度を上げ、最終的に300℃という高温で熱処理して形成されるポリベンゾオキサゾール樹脂が知られている(例えば、特許文献2)。
【0008】
また、イミド環とオキサゾール環とを併有するポリマーをポジ型感光性樹脂組成物に用いることが提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−19113号公報
【特許文献2】国際公開第2012/137840号
【特許文献3】特開2014−157297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、例えば200℃を下回るような低温で前駆体ポリマーを加熱する場合、得られるイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーの耐熱性、引張伸度並びに耐薬品性が損なわれる問題があり、また、ポリイミド樹脂の誘電性が高くなる問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、低温で前駆体ポリマーを熱処理する場合であっても、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れ、誘電率の低いイミド環含有ポリマーを含有する膜若しくは成形体、又は、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れるオキサゾール環含有ポリマーを含有する膜若しくは成形体が得られる感エネルギー性樹脂組成物、該膜若しくは成形体の製造方法、上記感エネルギー性樹脂組成物を用いるパターン形成方法、並びに、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れる永久膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のイミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーの前駆体ポリマー並びに/又は該前駆体ポリマーのモノマー成分を含有する組成物に対して、新規なイミダゾール化合物を添加することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
本発明の第一の態様は、下記式(1a)で表されるイミダゾール化合物(A)と、樹脂前駆体成分(B)と、溶剤(S)とを含有する感エネルギー性樹脂組成物であって、
上記樹脂前駆体成分(B)は、下記式(2)で表されるジアミン化合物と、下記式(3a)で表されるジカルボニル化合物及び/又は下記式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを含有するモノマー成分、並びに、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つである、感エネルギー性樹脂組成物である。
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。上記Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【化2】
(式中、RBNは(2+q)価の有機基を表し、qは0〜2の整数を表す。)
【化3】
(式中、RBCaは2価の有機基を表し、A及びAはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【化4】
(式中、RBCbは4価の有機基を表す。)
【化5】
(式中、RBN及びqは上記のとおりであり、RBCは(2+m)価の有機基を表し、RB3は水素原子又は炭素原子数1〜20の1価の有機基を表し、mは0〜2の整数を表す。但し、m+q>0である。)
【0014】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する形成工程と、
上記塗膜又は成形体を露光又は加熱することにより上記塗膜又は成形体中の樹脂前駆体成分(B)を閉環させる閉環工程と
を含む、イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法である。
【0015】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様の感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する形成工程と、
上記塗膜又は成形体を選択的に露光する露光工程と、
露光後の上記塗膜又は成形体を現像する現像工程と、
現像後の上記塗膜又は成形体を加熱する加熱工程とを含むパターン形成方法である。
【0016】
本発明の第四の態様は、下記式(1a)で表されるイミダゾール化合物(A)と、
下記式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする前駆体ポリマーが閉環してなる、イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーとを含有する永久膜である。
【化6】
(式中、Rはそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。上記Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【化7】
(式中、RBNは(2+q)価の有機基を表し、qは0〜2の整数を表し、RBCは(2+m)価の有機基を表し、RB3は水素原子又は炭素原子数1〜20の1価の有機基を表し、mは0〜2の整数を表す。但し、m+q>0である。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低温で前駆体ポリマーを熱処理する場合であっても、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れ、誘電率の低いイミド環含有ポリマーを含有する膜若しくは成形体、又は、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れるオキサゾール環含有ポリマーを含有する膜若しくは成形体が得られる感エネルギー性樹脂組成物、該膜若しくは成形体の製造方法、上記感エネルギー性樹脂組成物を用いるパターン形成方法、並びに、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れる永久膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪感エネルギー性樹脂組成物≫
本発明の第一の態様である感エネルギー性樹脂組成物は、式(1a)で表されるイミダゾール化合物(A)と、樹脂前駆体成分(B)と、溶剤(S)とを含有する。
【0019】
<イミダゾール化合物(A)>
イミダゾール化合物(A)は、下記式(1a)で表される。
【0020】
【化8】
(式中、Rはそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。上記Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0021】
式(1a)中、Rは、1価の有機基である。1価の有機基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基等であってもよく、このアルキル基は鎖中にエステル結合等を有するものであってもよい。アルキル基としては、例えば後述の式(1)におけるR等と同様であってよいが、その炭素原子数は1〜40が好ましく、1〜30がより好ましく、1〜20が更に好ましく、1〜10が更により好ましい。該アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば後述の式(1)におけるRであるアルキレン基が有していてもよい置換基と同様であってよい。置換基を有してもよい芳香族基としては、後述の式(1)におけるRと同様であり、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。Rとしての置換基を有してもよい芳香族基は、Rと同一であっても異なっていてもよい。式(1a)中、一方のRは水素原子であることが好ましく、一方のRが水素原子であり他方のRが置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族基であることがより好ましい。式(1a)中、Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成していてもよく、例えば、少なくとも1つのRが置換基を有してもよいアルキル基である場合、Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成していてもよい。
【0022】
イミダゾール化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0023】
【化9】
(式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基であり、Rは置換基を有してもよい芳香族基であり、Rは置換基を有してもよいアルキレン基であり、Rは、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、nは0〜3の整数である。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0024】
式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基である。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜20が好ましく、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0025】
として好適なアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチル−n−ヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基が挙げられる。
【0026】
式(1)中、Rは、置換基を有してもよい芳香族基である。置換基を有してもよい芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基でもよく、置換基を有してもよい芳香族複素環基でもよい。
【0027】
芳香族炭化水素基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族炭化水素基は、単環式の芳香族基であってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が縮合して形成されたものであってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が単結合により結合して形成されたものであってもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、フェナンスレニル基が好ましい。
【0028】
芳香族複素環基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族複素環基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましい。
【0029】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、及び有機基が挙げられる。フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合、当該有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0031】
芳香族基が隣接する炭素原子上に置換基を有する場合、隣接する炭素原子上に結合する2つの置換基はそれが結合して環状構造を形成してもよい。環状構造としては、脂肪族炭化水素環や、ヘテロ原子を含む脂肪族環が挙げられる。
【0032】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合に、当該有機基に含まれる結合は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0033】
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(−NR−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0034】
有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、炭化水素基以外の置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。炭化水素基以外の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状の何れでもよい。
【0035】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有する置換基としては、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアリール基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数1〜12のアリールオキシ基、炭素原子数1〜12のアリールアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0036】
としては、式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物を安価且つ容易に合成でき、イミダゾール化合物の水や有機溶剤に対する溶解性が良好であることから、それぞれ置換基を有してもよいフェニル基、フリル基、チエニル基が好ましい。
【0037】
式(1)中、Rは、置換基を有してもよいアルキレン基である。アルキレン基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキレン基が有していてもよい置換基の具体例としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐鎖アルキレン基であってもよく、直鎖アルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜20が好ましく、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。なお、アルキレン基の炭素原子数には、アルキレン基に結合する置換基の炭素原子を含まない。
【0038】
アルキレン基に結合する置換基としてのアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であっても、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
【0039】
アルキレン基に結合する置換基としてのアミノ基は、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
【0040】
として好適なアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、n−プロパン−1,3−ジイル基、n−プロパン−2,2−ジイル基、n−ブタン−1,4−ジイル基、n−ペンタン−1,5−ジイル基、n−ヘキサン−1,6−ジイル基、n−ヘプタン−1,7−ジイル基、n−オクタン−1,8−ジイル基、n−ノナン−1,9−ジイル基、n−デカン−1,10−ジイル基、n−ウンデカン−1,11−ジイル基、n−ドデカン−1,12−ジイル基、n−トリデカン−1,13−ジイル基、n−テトラデカン−1,14−ジイル基、n−ペンタデカン−1,15−ジイル基、n−ヘキサデカン−1,16−ジイル基、n−ヘプタデカン−1,17−ジイル基、n−オクタデカン−1,18−ジイル基、n−ノナデカン−1,19−ジイル基、及びn−イコサン−1,20−ジイル基が挙げられる。
【0041】
は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、nは0〜3の整数である。nが2〜3の整数である場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
が有機基である場合、当該有機基は、Rについて、芳香族基が置換基として有していてもよい有機基と同様である。
【0043】
が有機基である場合、有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましく、フリル基、及びチエニル基がより好ましい。
【0044】
がアルキル基である場合、アルキル基のイミダゾール環上での結合位置は、2位、4位、5位の何れも好ましく、2位がより好ましい。Rが芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基である場合、これらの基のイミダゾール上での結合位置は、2位が好ましい。
【0045】
上記式(1a)で表されるイミダゾール化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、また、(B)成分の縮合反応の促進の点から、下記式(1−1a)で表される化合物が好ましい。ここで、(B)成分の縮合反応は、モノマー成分間の縮合反応、及び、前駆体ポリマー(後述の環形成性ポリマー)が後述の環含有ポリマーを形成することとなる閉環反応を含む。
【0046】
【化10】
(式(1−1a)中、R、R及びnは、式(1a)と同じであり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、但し、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びRのうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0047】
、R、R、R、及びRは、後述の式(1−1)と同じである。式(1−1a)中、RはRと結合して環状構造を形成していてもよく、例えば、Rが置換基を有してもよいアルキル基である場合、RはRと結合して環状構造を形成していてもよい。
【0048】
上記式(1)又は式(1−1a)で表されるイミダゾール化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、水や有機溶剤に対する溶解性に優れる点から、下記式(1−1)で表される化合物が好ましく、式(1−1)で表され、Rがメチレン基である化合物がより好ましい。
【0049】
【化11】
(式(1−1)中、R、R、R、及びnは、式(1)と同様であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びRのうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0050】
、R、R、R、及びRが有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるRが置換基として有する有機基と同様である。R、R、R、及びRは、イミダゾール化合物の溶媒に対する溶解性の点から水素原子であるのが好ましい。
【0051】
中でも、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、下記置換基であることが好ましく、Rが下記置換基であるのが特に好ましい。Rが下記置換基である場合、R、R、R、及びRは水素原子であるのが好ましい。
−O−R10
(R10は水素原子又は有機基である。)
【0052】
10が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるRが置換基として有する有機基と同様である。R10としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0053】
上記式(1−1)で表される化合物の中では、下記式(1−1−1)で表される化合物が好ましい。
【化12】
(式(1−1−1)において、R、R、及びnは、式(1)と同様であり、R11、R12、R13、R14、及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R11、R12、R13、R14、及びR15のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。)
【0054】
式(1−1−1)で表される化合物の中でも、R11、R12、R13、R14、及びR15のうち少なくとも1つが、前述の−O−R10で表される基であることが好ましく、R15が−O−R10で表される基であるのが特に好ましい。R15が−O−R10で表される基である場合、R11、R12、R13、及びR14は水素原子であるのが好ましい。
【0055】
上記式(1a)で表されるイミダゾール化合物の合成方法は特に限定されない。例えば、RCR(Hal)R(R及びRは、式(1a)と同じであり、Halはハロゲン原子である。)で表されるハロゲン化物と、後述の式(II)で表されるイミダゾール化合物とを、常法に従って反応させてイミダゾリル化を行うことによって、上記式(1a)で表されるイミダゾール化合物を合成することができる。
【0056】
上記式(1)で表されるイミダゾール化合物の合成方法は特に限定されない。例えば、下記式(I)で表されるハロゲン含有カルボン酸誘導体と、下記式(II)で表されるイミダゾール化合物とを、常法に従って反応させてイミダゾリル化を行うことによって、上記式(1)で表されるイミダゾール化合物を合成することができる。
【0057】
【化13】
(式(I)及び式(II)中、R、R、R、R及びnは、式(1)と同様である。式(I)において、Halはハロゲン原子である。)
【0058】
また、イミダゾール化合物が、式(1)で表され、且つRがメチレン基である化合物である場合、即ち、イミダゾール化合物が下記式(1−2)で表される化合物である場合、以下に説明するMichael付加反応による方法によっても、イミダゾール化合物を合成することができる。
【0059】
【化14】
(式(1−2)中、R、R、R及びnは、式(1)と同様である。)
【0060】
具体的には、例えば、下記式(III)で表される3−置換アクリル酸誘導体と、上記式(II)で表されるイミダゾール化合物とを溶媒中で混合してMichael付加反応を生じさせることによって、上記式(1−2)で表されるイミダゾール化合物が得られる。
【0061】
【化15】
(式(III)中、R、及びRは、式(1)と同様である。)
【0062】
また、下記式(IV)で表される、イミダゾリル基を含む3−置換アクリル酸誘導体を、水を含む溶媒中に加えることによって、下記式(1−3)で表されるイミダゾール化合物が得られる。
【0063】
【化16】
(式(IV)及び式(1−3)中、R、R及びnは、式(1)と同様である。)
【0064】
この場合、上記式(IV)で表される3−置換アクリル酸誘導体の加水分解により、上記式(II)で表されるイミダゾール化合物と、下記式(V)で表される3−置換アクリル酸とが生成する。そして、下記式(V)で表される3−置換アクリル酸と、上記式(II)で表されるイミダゾール化合物との間でMichael付加反応が生じ、上記式(1−3)で表されるイミダゾール化合物が生成する。
【0065】
【化17】
(式(V)中、Rは、式(1)と同様である。)
【0066】
式(1a)で表されるイミダゾール化合物の好適な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0067】
式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物の好適な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化18】
【0068】
本発明の第一の態様である感エネルギー性樹脂組成物において、(A)成分の含有量は特に限定されないが、触媒量であってもよい。後述の(B)成分を100質量部とした場合、(A)成分の含有量は、0.001〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが更に好ましい。また、感エネルギー性樹脂組成物のうち、(S)成分を除いた成分全体に対して、(A)成分の含有割合は0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
(A)成分を添加剤として用いる場合、好ましい含有量は、後述の(B)成分を100質量部とした場合、(A)成分の含有量は、1質量部以上であることが好ましく、上限は特に設定されないが、例えば60質量部以下である。10〜50質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることが更に好ましい。また、感エネルギー性樹脂組成物のうち、(S)成分を除いた成分全体に対して、(A)成分の含有割合は1〜60質量%であることが好ましく、5〜55質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましい。
【0069】
<樹脂前駆体成分(B)>
本発明の感エネルギー性樹脂組成物に含有される樹脂前駆体成分(B)は、下記式(2)で表されるジアミン化合物と、下記式(3a)で表されるジカルボニル化合物及び/又は下記式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを含有するモノマー成分、並びに、下記式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする前駆体ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0070】
<樹脂前駆体成分(B)/モノマー成分>
〔ジアミン化合物〕
ジアミン化合物は、下記式(2)で表される。ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化19】
(式中、RBNは(2+q)価の有機基を表し、qは0〜2の整数を表す。)
【0071】
式(2)中、RBNは、(2+q)価の有機基であり、式(2)における2個の−NH及び−(OH)の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましく、また、式(2)に表される−(OH)の他に−OH基、−COOH基、−COOR基を含んでいてもよい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。以上の置換基については、後述の式(2−1)〜(2−9)の何れかで表される基が芳香環上に有していてもよい1又は複数の置換基についても同様のことがいえる。
【0072】
BNについて上記「(2+q)価の有機基」における「(2+q)価」とは、式(2)に表されるRBNが有する(2+q)個の結合手、即ち、式(2)に表される2つの−NH及び−(OH)と結合する手が合計(2+q)個あることを示すものであり、RBN自体が他に置換基を有するものである場合、該置換基との結合手は該「(2+q)価」という価数に含めない。
【0073】
式(2)中、RBNとしての(2+q)価の有機基の炭素原子数は下限値として2が好ましく、6がより好ましく、上限値として50が好ましく、30がより好ましい。
BNは、脂肪族基であってもよいが、1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であることが好ましい。上記式(2)において、RBNが1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であり、qが1又は2である場合、式(2)で表されるジアミン化合物に含まれる1組又は2組のアミノ基と水酸基との組み合わせを構成する各組のアミノ基と水酸基とは、RBNに含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0074】
BNは、芳香族基であってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。RBNに含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−等が挙げられ、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−が好ましい。
【0075】
BNに含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。RBN中のアミノ基及び水酸基と結合する芳香環はベンゼン環であることが好ましい。RBN中のアミノ基及び水酸基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基及び水酸基と結合する環はベンゼン環であることが好ましい。
【0076】
BNの好適な例としては、下記式(2−1)〜(2−9)の何れかで表される基が挙げられる。下記式(2−1)〜(2−9)において芳香環が式(2)におけるアミノ基及び水酸基と結合する左右各2つの結合手は、式(2)におけるqが2である場合を例にとって記載したものであるが、最小限左右各1つの結合手を有するのであれば、qの値に応じて何れかの結合手を有しなくてもよい。
【化20】
(式(2−1)中、Xは、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。式(2−2)〜(2−5)中、Yは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。)
【0077】
上記式(2)におけるRBNは、また、後述の式(2c)で表される基であってもよいが、これについては後述する。
【0078】
[ジアミンジオール]
本発明では、ジアミン化合物として下記式(2a)で表されるジアミンジオールを用いてもよい。下記式(2a)は、上記式(2)におけるqが2である式に相当する。本発明において、ジアミンジオールは、そのアミノ基及び水酸基とジカルボニル化合物とが反応する場合、後述のオキサゾール環形成性ポリマー(B2)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなり、そのアミノ基とテトラカルボン酸二無水物とが反応する場合、ポリアミック酸等の後述のイミド環形成性ポリマー(B1)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなる。
ジアミンジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化21】
(式中、RBNaは隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基を表し、式(2a)で表されるジアミンジオールに含まれる2組のアミノ基と水酸基との組み合わせを構成する各組のアミノ基と水酸基とは、前記隣接する2つの炭素原子に結合している。)
【0079】
上記式(2a)において、RBNaとしての有機基としては、上述の式(2)におけるRBNとしての有機基と価数以外は同様の基が例示され、同様のことがいえる。RBNaは、1以上の芳香環を含む4価の有機基であることが好ましい。本明細書において、かかる式(2a)(但し、式中、RBNaは隣接する2つの炭素原子を有する1以上の芳香環を含む4価の有機基を表し、式(2a)で表されるジアミンジオールに含まれる2組のアミノ基と水酸基との組み合わせを構成する各組のアミノ基と水酸基とは、RBNaに含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合している。)で表されるジアミン化合物を「芳香族ジアミンジオール」ということがある。
【0080】
上記式(2a)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3−フルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジフルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,6−ジアミノ−1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジアミノ−2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルケトン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルフィド、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、ジ[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、ジ[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシジベンゾフラン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシフルオレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシキサンテン、9,9−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0081】
これらの中では、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性が優れる膜又は成形体を形成できる点から、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジヒドロキシベンジジンが好ましい。
【0082】
[ジアミンジオール以外のジアミン化合物]
本発明においては、上記式(2)で表されるジアミン化合物として、上記式(2a)で表されるジアミンジオール以外のジアミン化合物(以下、「ジアミン化合物(2b)」ということがある。)を用いてもよい。ジアミン化合物(2b)は、上記式(2)におけるqが0又は1である式で表される。本発明において、ジアミン化合物(2b)は、テトラカルボン酸二無水物と反応して、ポリアミック酸等の後述のイミド環形成性ポリマー(B1)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなる。
【0083】
ジアミン化合物(2b)は、脂肪族ジアミンであってもよいし、上記式(2)(但し、qは0又は1を表す。)におけるRBNとしての(2+q)価の有機基が1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基である芳香族ジアミン(本明細書において、「芳香族ジアミン化合物(2b)」ということがある。)であってもよいが、得られる膜又は成形体の耐熱性、引張伸度、耐薬品性及び低誘電率の点から、芳香族ジアミン化合物(2b)が好ましい。ジアミン化合物(2b)において、上記式(2)(但し、qは0又は1を表す。)におけるRBNとしての「1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基」としては、上述の式(2a)におけるRBNaとしての「1以上の芳香環を含む4価の有機基」と価数以外は同様の基が例示され、同様のことがいえる。ジアミン化合物(2b)は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ジアミン化合物(2b)としては特に限定されないが、例えば、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。
【0084】
芳香族ジアミン化合物(2b)の好適な具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエタン−1,1−ジイル)]ジアニリン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0085】
〔ジカルボニル化合物〕
ジカルボニル化合物は、下記式(3a)で表される。本発明において、ジカルボニル化合物は、ジアミンジオールと反応して、後述のオキサゾール環形成性ポリマー(B2)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなる。ジカルボニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化22】
(式中、RBCaは2価の有機基を表し、A及びAはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0086】
式(3a)中のRBCaは、芳香族基であってもよく、脂肪族基であってもよく、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基であってもよい。得られる膜又は成形体の耐熱性、引張伸度及び耐薬品性が良好である点から、RBCaは、芳香族基及び/又は脂環式基を含む基であることが好ましい。RBCaに含まれる芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。
【0087】
BCaは、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。RBCaが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、2価の含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、RBCaに含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、RBCaに含まれるのがより好ましい。
【0088】
式(3a)中、2つのA及びAの一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子であってもよいが、2つのA及びAがともに水素原子であるか、2つのA及びAがともにハロゲン原子であるのが好ましい。A及びAがハロゲン原子である場合、A及びAとして塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0089】
以下、ジカルボニル化合物として好適な化合物である、ジアルデヒド化合物と、ジカルボン酸ジハライドとについて説明する。
【0090】
[ジアルデヒド化合物]
ジアルデヒド化合物は、下記式(3a−1)で表される化合物である。ジアルデヒド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化23】
(式中、RBCaは、上記のとおりである。)
【0091】
式(3a−1)中のRBCaとして好適な芳香族基又は芳香環含有基としては、以下の基が挙げられる。
【化24】
(上記式中、Xは、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Xが複数である場合、複数のXは同一でも異なっていてもよい。Yは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。p及びqは、それぞれ0〜3の整数である。)
【0092】
式(3a−1)中のRBCaとして好適な脂環式基又は脂環含有基としては、以下の基が挙げられる。
【化25】
(上記式中、Xは、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Xが複数である場合、複数のXは同一でも異なっていてもよい。Yは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Zは、−CH−、−CHCH−、及び−CH=CH−からなる群より選択される1種である。pは、それぞれ0〜3の整数である。)
【0093】
上記のRBCaとして好適な基に含まれる芳香環又は脂環は、その環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましく、また、−OH基、−COOH基、−COOR基を含んでいてもよい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0094】
式(3a−1)で表されるジアルデヒド化合物が芳香族ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、ベンゼンジアルデヒド類、ピリジンジアルデヒド類、ピラジンジアルデヒド類、ピリミジンジアルデヒド類、ナフタレンジアルデヒド類、ビフェニルジアルデヒド類、ジフェニルエーテルジアルデヒド類、ジフェニルスルホンジアルデヒド類、ジフェニルスルフィドジアルデヒド類、ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類、[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類、2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類、及び含フルオレンジアルデヒドが挙げられる。
【0095】
ベンゼンジアルデヒド類の具体例としては、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、3−フルオロフタルアルデヒド、4−フルオロフタルアルデヒド、2−フルオロイソフタルアルデヒド、4−フルオロイソフタルアルデヒド、5−フルオロイソフタルアルデヒド、2−フルオロテレフタルアルデヒド、3−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、5−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルテレフタルアルデヒド、3,4,5,6−テトラフルオロフタルアルデヒド、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタルアルデヒド、及び2,3,5,6−テトラフルオロテレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0096】
ピリジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリジン−2,3−ジアルデヒド、ピリジン−3,4−ジアルデヒド、及びピリジン−3,5−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピラジンジアルデヒド類の具体例としては、ピラジン−2,3−ジアルデヒド、ピラジン−2,5−ジアルデヒド、及びピラジン−2,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピリミジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリミジン−2,4−ジアルデヒド、ピリミジン−4,5−ジアルデヒド、及びピリミジン−4,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0097】
ナフタレンジアルデヒド類の具体例としては、ナフタレン−1,5−ジアルデヒド、ナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、2,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,5−ジアルデヒド、2,3,4,5,6,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチル−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−ビス(トリフルオロメチル)メトキシ−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、及び1,5−ビス[ビス(トリフルオロメチル)メトキシ]−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0098】
ビフェニルジアルデヒド類の具体例としては、ビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、ビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、ビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、ビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、及び6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0099】
ジフェニルエーテルジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルエーテル−2,4’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルエーテル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0100】
ジフェニルスルホンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルホン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0101】
ジフェニルスルフィドジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0102】
ジフェニルケトンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルケトン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルケトン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0103】
ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類の具体例としては、ベンゼン1,3−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−ホルミルフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0104】
[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類の具体例としては、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0105】
2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類の具体例としては、2,2−ビス[4−(2−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、及び2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0106】
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド等が挙げられる。
【0107】
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
【0108】
含フルオレンジアルデヒドの具体例としては、フルオレン−2,6−ジアルデヒド、フルオレン−2,7−ジアルデヒド、ジベンゾフラン−3,7−ジアルデヒド、9,9−ビス(4−ホルミルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ホルミルフェニル)フルオレン、及び9−(3−ホルミルフェニル)−9−(4’−ホルミルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0109】
また、下記式で表される、ジフェニルアルカンジアルデヒド又はジフェニルフルオロアルカンジアルデヒドも、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用できる。
【化26】
【0110】
更に、下記式で表されるイミド結合を有する化合物も、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用することができる。
【化27】
【0111】
式(3a−1)で表されるジカルボニル化合物が脂環式基を含む脂環式ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、シクロヘキサン−1,4−ジアルデヒド、シクロヘキサン−1,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,4−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−エン−8,9−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,4−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−7,8−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロヘキシル−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−4,4’−ジアルデヒド、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、3,3’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、3,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、4,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6’−ジアルデヒド、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−6,6’−ジアルデヒド、及び1,3−ジホルミルアダマンタン等が挙げられる。
【0112】
以上説明したジアルデヒド化合物の中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を得やすいことから、イソフタルアルデヒドが好ましい。
【0113】
[ジカルボン酸ジハライド]
ジカルボン酸ジハライドは、下記式(3a−2)で表される化合物である。ジカルボン酸ジハライドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化28】
(式中、RBCaは、上記のとおりであり、Halはハロゲン原子を表す。)
【0114】
式(3a−2)中、Halとしては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0115】
式(3a−2)で表される化合物として好適な化合物としては、ジアルデヒド化合物の好適な例として前述した化合物が有する2つのアルデヒド基を、ハロカルボニル基、好ましくはクロロカルボニル基に置換した化合物が挙げられる。
【0116】
以上説明したジカルボン酸ジハライドの中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を得やすいことから、テレフタル酸二クロライドが好ましい。
【0117】
〔テトラカルボン酸二無水物〕
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(3b)で表される。本発明において、テトラカルボン酸二無水物は、ジアミン化合物(2b)と反応して、ポリアミック酸等の後述のイミド環形成性ポリマー(B1)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなる。ジカルボニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化29】
(式中、RBCbは4価の有機基を表す。)
【0118】
式(3b)中、RBCbは、4価の有機基であり、式(3b)における2個の−C(=O)−O−C(=O)−で表される酸無水物基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましく、また、式(3b)に表される酸無水物基の他に−OH基、−COOH基、−COOR基を含んでいてもよい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。以上の置換基については、後述の芳香族基が芳香環上に有していてもよい1又は複数の置換基についても同様のことがいえる。
【0119】
式(3b)中、RBCbは4価の有機基であり、その炭素原子数は下限値として2が好ましく、6がより好ましく、上限値として50が好ましく、30がより好ましい。RBCbは、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組み合わせた基であってもよい。RBCbは、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。RBCbが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、RBCbに含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、RBCbに含まれるのがより好ましい。
【0120】
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であっても、芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。
【0121】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシ)メタン二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、また、脂環式構造を含有するものであってもよい。かかる該脂環式構造は多環式であってもよく、多環式の脂環式構造としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の橋かけ脂環式構造を有するもの等が挙げられ、例えば、橋かけ脂環式構造が他の橋かけ脂環式構造及び/又は非橋かけ脂環式構造と縮合していてもよいし、橋かけ脂環式構造が他の橋かけ脂環式構造及び/又は非橋かけ脂環式構造とスピロ結合により連結していてもよい。脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いる場合、透明性に優れるイミド環形成性ポリマー(B1)やイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)とすることができる傾向がある。
【0122】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、3,3’,4,4’−オキシビスフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0123】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、また、例えば、下記一般式(3b−1)〜(3b−3)で表されるものであってもよい。
【0124】
【化30】
【化31】
【化32】
【0125】
上記一般式(3b−1)及び(3b−2)において、RBC1、RBC2及びRBC3は、それぞれ、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、酸素原子、硫黄原子、1つ以上の2価元素を介した芳香族基の何れかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される2価の置換基を示す。RBC2及びRBC3は、同一であっても異なっていてもよい。即ち、RBC1、RBC2及びRBC3は、炭素−炭素の一重結合、炭素−酸素−炭素のエーテル結合又はハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよく、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)プロパン二無水物や1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’,−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0126】
また、上記一般式(3b−3)において、RBC4、RBC5はハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、1つ以上の2価元素を介した芳香族基、ハロゲンの何れかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、ジフルオロピロメリット酸二無水物、ジクロロピロメリット酸二無水物等も用いることができる。
【0127】
分子構造内にフッ素を含有する含フッ素ポリイミドを得るためのテトラカルボン酸としては、例えば、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸、ペンタフルオロエチルピロメリット酸、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピロメリット酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3’,3,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0128】
テトラカルボン酸二無水物としては、得られる膜又は成形体の耐熱性、引張伸度及び耐薬品性の点、所望により更に低誘電率の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物が好ましい。
なお、これらと同じ基本骨格を有するテトラカルボン酸の酸塩化物、エステル化物等も、用いることができる。
【0129】
本発明において、テトラカルボン酸二無水物は、ジカルボン酸無水物と併用してもよい。これらのカルボン酸無水物を併用すると、得られるポリイミド樹脂等のイミド環含有ポリマーの特性が更に良好となる場合がある。ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0130】
樹脂前駆体成分(B)のうちモノマー成分において、上述の式(2)におけるRBNは下記式(2c)で表されるものであってもよく、並びに/又は、上述の式(3a)におけるRBCa及び/若しくは上述の式(3b)におけるRBCbは下記式(3c)で表されるものであってもよい。
【0131】
式(2)におけるRBNは、下記式(2c)で表される基であってもよい。
【化33】
(式中、RBCは(2+m)価の有機基を表し、RB3は水素又は炭素原子数1〜20の1価の有機基を表し、mは0〜2の整数を表す。RBNcはそれぞれ独立に3価の有機基を表す。)
【0132】
BNcはそれぞれ独立に3価の有機基を表すが、1以上の芳香環を含む3価の有機基が好ましく、この場合、式(2c)に記載された水酸基と式(2)に記載されたアミノ基とはRBNcに含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合していることが好ましい。
上記式(2c)におけるRBNcは、式(2a)におけるRBNaと価数以外は同様の基が例示され、同様のことがいえる。RBNcについて上記「3価の有機基」における「3価」とは、式(2c)に表されるRBNcが有する3つの結合手、即ち、式(2c)に表される−OH及び−NH−並びに式(2)における−NHと結合する手が式(2c)に表されるように合計3つあることを示すものであり、RBNc自体が他に置換基を有するものである場合、該置換基との結合手は該「3価」という価数に含めない。
【0133】
BNcは、上記式(2c)に表される−OHの他に−OHを有する有機基であってもよく、式(2c)に表される−OHの他に−OHを1個有する有機基である場合、上述の式(2a)におけるRBNaに相当する。
また、上記式(2c)に表される2つの−OHは、上述の式(2)における−(OH)(但し、qは2である。)に相当するものであってよく、その場合、上記式(2c)で表される基は、上述の式(2a)におけるRBNaに相当する。
上記式(2c)で表される基は、上述の式(2)(但し、qは1又は2である。)で表されるジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とが反応することにより形成されるものであってよい。
BCは、後述の式(4)におけるRBCと同じであり、式(4)に関して後述する。
【0134】
本発明において、式(2)におけるRBNが上記式(2c)で表される基であるジアミン化合物は、予めテトラカルボン酸二無水物及び/又はジカルボニル化合物と反応させて、本発明の感エネルギー性樹脂組成物に配合してもよい。
式(2)におけるRBNが上記式(2c)で表される基であるジアミン化合物は、テトラカルボン酸二無水物及び/又はジカルボニル化合物と反応して、下記式にその一部を示すように、後述のイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなる。
【化34】
【化35】
(式中、RBNc、RBCa、RBCb、RB3、A及びAは上記のとおりである。)
【0135】
上述の式(3a)におけるRBCa及び/若しくは上述の式(3b)におけるRBCbは下記式(3c)で表される基であってもよい。
【化36】
(式中、RBN及びqは上記のとおりであり、RB3はそれぞれ独立に上記のとおりであり、m1はそれぞれ独立に0又は1であり、式(3c)で表される基が上述の式(3a)におけるRBCaに相当する場合、RBCcはそれぞれ独立に(2+m1)価の有機基を表し、式(3c)に表す点線はないものとし、式(3c)で表される基が上述の式(3b)におけるRBCbに相当する場合、RBCcはそれぞれ独立に(3+m1)価の有機基を表し、式(3c)に表す点線は単結合を表す。但し、m1+q>0である。)
【0136】
BNは上述の式(2)におけるRBNと同じく、(2+q)価の有機基を表し、1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であることが好ましい。上記式(3c)において、RBNが1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であり、qが1又は2である場合、式(3c)で表される基に含まれる1組又は2組の−NH−と水酸基との組み合わせを構成する各組の−NH−と水酸基とは、RBNに含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0137】
BCcについて、式(3c)で表される基が上述の式(3a)におけるRBCaに相当する場合、上記「(2+m1)価の有機基」における「(2+m1)価」とは、式(3c)に表されるRBCcが有する(2+m1)個の結合手、即ち、式(3c)に表される−CO−及び−(COORB3m1並びに式(3a)におけるカルボニル基と結合する手が合計(2+m1)個あることを示すものであり、RBCc自体が他に置換基を有するものである場合、該置換基との結合手は該「(2+m1)価」という価数に含めない。同様のことが、式(3c)で表される基が上述の式(3b)におけるRBCbに相当する場合のRBCcについての上記「(3+m1)価の有機基」における「(3+m1)価」についてもいえる。
【0138】
上記式(3c)で表される基は、上述のモノマー成分が反応することにより得られるものであってよく、具体的には、例えば、上述の式(2)で表されるジアミン化合物と、上述の式(3a)で表されるジカルボニル化合物及び/又は式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とが反応することにより得られるものであってよく、より具体的には、式(3c)におけるqが0又は1である場合、上述のジアミン化合物(2b)と式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とが反応することにより得られるものであり(式(3c)におけるm1が1又は2となる。)、式(3c)におけるqが2である場合、上述の式(2a)で表されるジアミンジオールと式(3a)で表されるジカルボニル化合物とが反応することにより得られるものである(式(3c)におけるm1が0となる。)ことが好ましい。
【0139】
また、上記式(3c)で表される基は、上述の式(3b)におけるRBCbに相当する場合、式(3c)におけるqが2であり、上述の式(2a)で表されるジアミンジオールと、式(3a)で表されるジカルボニル化合物の−C(=O)A若しくは−C(=O)Aで表されるカルボニル基の何れか1つがイミド基に置換された化合物、又は、式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物の2つの−C(=O)−O−C(=O)−で表されるイミド基の何れか1つがカルボキシ基に置換された化合物(トリメリット酸無水物等)とが反応することにより得られるものである(式(3c)におけるm1が0となり、式(3c)に表す点線は単結合を表す。)ことが好ましい。
【0140】
式(3c)におけるRBNは、上述の式(2)におけるRBNと同じである。式(3c)におけるRBCcは、上述の式(3a)におけるRBCa又は式(3b)におけるRBCbと同じであってよく、具体的には、例えば、m1が0である場合、式(3a)におけるRBCaと同じであってよく、m1が2である場合、式(3b)におけるRBCbと同じであってよい。RB3としては水素が好ましい。
【0141】
本発明において、式(3a)におけるRBCaが上記式(3c)で表される基であるジカルボニル化合物、及び、式(3b)におけるRBCbが式(3c)で表される基であるテトラカルボン酸二無水物は、予め式(2)で表されるジアミン化合物と反応させて、本発明の感エネルギー性樹脂組成物に配合してもよい。
式(3a)におけるRBCaが式(3c)で表される基であるジカルボニル化合物、及び、式(3b)におけるRBCbが式(3c)で表される基であるテトラカルボン酸二無水物は、式(2)で表されるジアミン化合物と反応して、下記式にその一部を示すように、後述のイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)を形成することとなる。
【化37】
【化38】
(式中、RBNa、RBNb、RBCc、RB3、A及びAは上記のとおりである。)
【0142】
<樹脂前駆体成分(B)/前駆体ポリマー>
前駆体ポリマーは、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する。
【化39】
(式中、RBN及びqは上記のとおりであり、RBCは(2+m)価の有機基を表し、RB3は水素又は炭素原子数1〜20の1価の有機基を表し、mは0〜2の整数を表す。但し、m+q>0である。)
【0143】
BNは上述の式(2)におけるRBNと同じく、(2+q)価の有機基を表し、1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であることが好ましい。上記式(4)において、RBNが1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であり、qが1又は2である場合、式(4)で表される繰り返し単位に含まれる1組又は2組の−NH−と水酸基との組み合わせを構成する各組の−NH−と水酸基とは、RBNに含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0144】
BCについて上記「(2+m)価の有機基」における「(2+m)価」とは、式(4)に表されるRBCが有する(2+m)個の結合手、即ち、式(4)に表される2つの−CO−及び−(COORB3と結合する手が合計(2+m)個あることを示すものであり、RBC自体が他に置換基を有するものである場合、該置換基との結合手は該「(2+m)価」という価数に含めない。同様のことが上述の式(3a)におけるRBCa及び上述の式(3b)におけるRBCbについてもいえる。
【0145】
上記式(4)で表される繰り返し単位は、上述のモノマー成分が反応することにより得られるものであってよく、具体的には、例えば、上述の式(2)で表されるジアミン化合物と、上述の式(3a)で表されるジカルボニル化合物及び/又は式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とが反応することにより得られるものであってよく、より具体的には、式(4)におけるqが0又は1である場合、上述のジアミン化合物(2b)と式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とが反応することにより得られるものであり(式(4)におけるmが2となる。)、式(4)におけるqが2である場合、上述の式(2a)で表されるジアミンジオールと式(3a)で表されるジカルボニル化合物とが反応することにより得られるものである(式(4)におけるmが0となる。)ことが好ましい。
【0146】
式(4)におけるRBNは、上述の式(2)におけるRBNと同じである。式(4)におけるRBCは、上述の式(3a)におけるRBCa又は式(3b)におけるRBCbと同じであり、具体的には、例えば、mが0である場合、式(3a)におけるRBCaと同じであり、mが2である場合、式(3b)におけるRBCbと同じである。RB3としては水素が好ましい。
【0147】
本発明において、「前駆体ポリマー」とは、露光又は加熱により環を形成するポリマー(本明細書において、「環形成性ポリマー」ということがある。)をいい、具体的には、イミド環及び/又はオキサゾール環を形成するポリマー(本明細書において、「イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマー」ということがある。)、即ち、イミド環を形成するポリマー(本明細書において、「イミド環形成性ポリマー」ということがある。)、オキサゾール環を形成するポリマー(本明細書において、「オキサゾール環形成性ポリマー」ということがある。)、並びに、イミド環及びオキサゾール環を形成するポリマー(本明細書において、「イミド環・オキサゾール環形成性ポリマー」ということがある。)をいう。本明細書において、イミド環は、例えば、ピロメリット酸二無水物のイミド化物(−C(=O)−N−C(=O)−を有する)のように、オキサゾール環は、例えばベンゾオキサゾール環のように、それぞれ他の環(例えば、ピロメリット酸二無水物のイミド化物及びベンゾオキサゾール環においてはベンゼン環)との縮合環の一部を構成する環であってもよい。
【0148】
環形成性ポリマーは、露光又は加熱により環を形成(閉環)して、対応する環を含有するポリマー(本明細書において、「環含有ポリマー」ということがある。)となる。環含有ポリマーは、具体的には、イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマー、即ち、イミド環を含有するポリマー(本明細書において、「イミド環含有ポリマー」ということがある。)、オキサゾール環を含有するポリマー(本明細書において、「オキサゾール環含有ポリマー」ということがある。)、並びに、イミド環及びオキサゾール環を含有するポリマー(本明細書において、「イミド環・オキサゾール環含有ポリマー」ということがある。)である。
【0149】
前駆体ポリマーは、上記式(4)で表される繰り返し単位を有するが、上述のモノマー成分が反応することにより得られるポリマーであってよく、上記式(4)で表される繰り返し単位を主要構造として有するポリマーであり、上記式(4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有しないポリマーであってもよい。
【0150】
上記式(4)のRBC(COORとしては、特に限定されないが、例えば、下記に示す構造等が挙げられる。
【0151】
【化40】
【0152】
また、上記式(4)のRBN(OH)としては、特に限定されないが、例えば、下記に示す構造等が挙げられる。これらジアミン成分を2種以上用いてもかまわないが、アルカリ現像液に対する溶解性の点から、水酸基を有するジアミンの残基を60モル%以上含むことが好ましい。
【0153】
【化41】
【0154】
感エネルギー性樹脂組成物における(B)成分としては、例えば、
・(B0−1)ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物、ジアルデヒド化合物及びジカルボン酸ジハライドからなる群より選択される少なくとも1つとの組み合わせ
・(B0−2)ジアミンジオール以外のジアミン化合物(ジアミン化合物(2b))とテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ
・式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体ポリマー
のモノマー成分の組み合わせ又は前駆体ポリマーが挙げられる。なお、(B)成分として上記モノマー成分の組み合わせを用いる場合、当該感エネルギー性樹脂組成物における(A)成分は触媒又は硬化剤として作用するので各モノマー成分の縮合反応後にも残存させることが可能である。よって、各モノマー成分の縮合反応後の感エネルギー性樹脂組成物は、式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体ポリマーと(A)成分とを有する組成物となる。
【0155】
上記樹脂前駆体成分(B)は、好ましくは前駆体ポリマーであり、より好ましくは
(B1)ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるイミド環形成性ポリマー(但し、下記(B3)のポリマーを除く。)、
(B2)上述の式(2a)で表されるジアミンジオールと上述の式(3a)で表されるジカルボニル化合物とを反応させて得られるオキサゾール環形成性ポリマー(但し、下記(B3)のポリマーを除く。)、及び、
(B3)後述の式(4c)で表される繰り返し単位を主成分とするイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー
からなる群より選択される少なくとも1つである。前記(B1)〜(B3)は、(A)成分の存在下で得られたものであってもよく、(つまり、本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物であって、前記(B0−1)又は(B0−2)を縮合反応させて得られたものであってもよく)、(A)成分の非存在下で得られた前駆体ポリマーを用いてもよい。なお、(A)成分の存在下で、前記各モノマー成分から(B1)〜(B3)を得た場合、分子量分布が小さく且つ質量平均分子量の大きい前駆体ポリマー(B1)〜(B3)となるため好ましい。(A)成分の非存在下で得られた前駆体ポリマーを用いる場合、(A)成分の触媒作用、閉環反応効率への寄与、又はイミド化反応前の前駆体ポリマーの高分子量化(環形成性ポリマーの高分子量化)への寄与を向上させるために、後述の低温ベーク又はステップベークを組み合わせることが好ましい。
(A)成分の存在下で、前記各モノマー成分から(B1)〜(B3)を得る場合の、(A)成分の前記各モノマー成分((B)成分、例えば前記(B0−1)又は(B0−2))に対する割合についても、上述の(A)成分の含有量と同様の範囲とすればよい。
【0156】
本明細書において、上記(B3)のポリマーを除くイミド環形成性ポリマーを「イミド環形成性ポリマー(B1)」ということがあり、上記(B3)のポリマーを除くオキサゾール環形成性ポリマーを「オキサゾール環形成性ポリマー(B2)」ということがある。また、イミド環形成性ポリマー(B1)が閉環して得られるポリマーを「イミド環含有ポリマー(B1)」ということがあり、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)が閉環して得られるポリマーを「オキサゾール環含有ポリマー(B2)」ということがある。
【0157】
〔イミド環形成性ポリマー(B1)〕
イミド環形成性ポリマー(B1)は、上述の式(2)で表されるジアミン化合物、好ましくはジアミン化合物(2b)と、式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリマーであり、ジアミン化合物及び/又はテトラカルボン酸二無水物をそれぞれ1種又は2種類以上を用いて得られるポリマーであってもよく、例えば、ジアミン化合物と2種類以上のテトラカルボン酸二無水物からなる混合物とを重縮合して得られるイミド環形成性ポリマーであってもよい。また、イミド環形成性ポリマー(B1)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0158】
イミド環形成性ポリマー(B1)は、代表的には、従来からポリイミド樹脂の前駆体として知られているポリアミック酸(ポリアミド酸)から適宜選択されるものであってよい。好適なイミド環形成性ポリマー(B1)としては、例えば、下記式(4a−1)で表されるイミド環形成性ポリマー(B1)が挙げられる。
【化42】
(式中、RBCb及びRBNは上記のとおりであり、nは括弧内に示される構成単位の繰り返し数である。)
【0159】
上記式(4a−1)で表されるイミド環形成性ポリマーを加熱や触媒によって閉環(イミド化)させることにより、下記式(4a)で表されるイミド環含有ポリマー(B1)が得られ、ポリイミド樹脂となる。加熱閉環する方法に特に制限はなく、従来公知の方法が用いられる。
【化43】
(式中、RBCb、RBN及びnは上記のとおりである。)
【0160】
上記式(4a−1)で表されるイミド環形成性ポリマー(B1)は、溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させることにより得られる。イミド環形成性ポリマーの合成原料となるテトラカルボン酸二無水物、及びジアミン化合物は、上述したとおりであり、酸無水物基とアミノ基との反応によりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。
【0161】
イミド環形成性ポリマー(B1)を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミン化合物を0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
【0162】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸及びジアミン化合物を溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物と反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0163】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。
【0164】
これらの有機溶剤の中では、生成するイミド環形成性ポリマー(B1)やポリイミド樹脂の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0165】
〔オキサゾール環形成性ポリマー(B2)〕
オキサゾール環形成性ポリマー(B2)は、上述の式(2a)で表されるジアミンジオールと式(3a)で表されるジカルボニル化合物とを反応させて得られるポリマーであり、ジアミンジオール及び/又はジカルボニル化合物はそれぞれ1種又は2種類以上を用いて得られるポリマーであってもよく、例えば、2種類以上のジアミンジオールとジカルボニル化合物からなる混合物とを重縮合して得られるオキサゾール環形成性ポリマーであってもよい。また、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。式(2a)で表されるジアミンジオールとしては、芳香族ジアミンジオールが好ましい。オキサゾール環形成性ポリマー(B2)は、代表的には、従来からポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリオキサゾール樹脂の前駆体として知られているポリマーから適宜選択されるものであってよい。
【0166】
式(3a)で表されるジカルボニル化合物として、A及びAがともに水素原子であるジアルデヒド化合物を用いる場合、下記式(4b)で表されるオキサゾール環形成性ポリマー(B2)が製造される。
【化44】
(式中、RBNa及びRBCaは、上記のとおりであり、nは式(4b)で表される単位の繰り返し数である。)
【0167】
式(3a)で表されるジカルボニル化合物として、A及びAがともにハロゲン原子であるジカルボン酸ジハライドを用いる場合、下記式(4b−1)で表されるオキサゾール環形成性ポリマー(B2)が製造される。
【化45】
(式中、RBNa及びRBCaは、上記のとおりであり、nは式(4b−1)で表される単位の繰り返し数である。)
【0168】
オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の製造方法
本発明において、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)は、上述の式(2a)で表されるジアミンジオールと、上述の式(3a)で表されるジカルボニル化合物とを、溶剤中で、周知の方法に従って反応させることによって製造される。以下、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の製造方法の代表的な例として、ジカルボニル化合物がジアルデヒド化合物である場合の製造方法と、ジカルボニル化合物がジカルボン酸ハライドである場合の製造方法とについて説明する。
【0169】
(ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応)
ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、溶剤中で行われる。ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応はシッフ塩基の形成反応であり、周知の方法に従って行うことができる。反応温度は特に限定されないが、通常、20〜200℃が好ましく、20〜160℃がより好ましく、100〜160℃が特に好ましい。
【0170】
ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、溶剤にエントレーナーを添加し、還流脱水しながら行われてもよい。エントレーナーとしては、特に限定されず、水と共沸混合物を形成し、室温にて水と二相系を形成する有機溶剤から適宜選択される。エントレーナーの好適な例としては、酢酸イソブチル、酢酸アリル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、及びプロピオン酸イソブチル等のエステル;ジクロロメチルエーテル、及びエチルイソアミルエーテル等のエーテル類;エチルプロピルケトン等のケトン類;トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0171】
ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
【0172】
オキサゾール環形成性ポリマー(B2)を製造する際の、ジアルデヒド化合物の使用量は、ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
【0173】
溶剤の使用量は、ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、ジアミンジオールの質量と、ジアルデヒド化合物の質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
【0174】
ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、生成するオキサゾール環形成性ポリマー(B2)の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
【0175】
(ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応)
ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応は、溶剤中で行われる。反応温度は特に限定されないが、通常、−20〜150℃が好ましく、−10〜150℃がより好ましく、−5〜70℃が特に好ましい。ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応ではハロゲン化水素が副生する。かかるハロゲン化水素を中和するために、トリエチルアミン、ピリジン、及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の有機塩基や、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を、反応液中に少量加えてもよい。
【0176】
ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
【0177】
オキサゾール環形成性ポリマー(B2)を製造する際の、ジカルボン酸ジハライドの使用量は、ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
【0178】
溶剤の使用量は、ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、ジアミンジオールの質量と、ジカルボン酸ジハライドの質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
【0179】
ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応は、生成するオキサゾール環形成性ポリマー(B2)の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
【0180】
以上説明した方法により、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の溶液が得られる。本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物を調製する場合には、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の溶液をそのまま用いることができる。また、減圧下に、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)からオキサゾール環含有ポリマーへの変換が生じない程度の低温で、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の溶液から溶剤の少なくとも一部を除去して得られる、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)のペースト又は固体を用いることもできる。また、上記の反応により得られるオキサゾール環形成性ポリマー(B2)の溶液に対して、溶剤等を適量加えて、固形分濃度が調整されたオキサゾール環形成性ポリマー(B2)の溶液を本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物の調製に用いることもできる。
【0181】
ジアミンジオールとジカルボニル化合物との反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。
【0182】
これらの有機溶剤の中では、生成するオキサゾール環形成性ポリマー(B2)やオキサゾール環含有ポリマーの溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0183】
〔イミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)〕
イミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)は、下記式(4c)で表される繰り返し単位を主成分とする。
【化46】
(式中、RBNa、RBCa、RBCb及びRB3はそれぞれ独立に上記のとおりであり、RBNbは2価の有機基を表し、RBNdは(2+q2)価の有機基を表し、RBCdは(2+m2)価の有機基を表し、m2及びq2はそれぞれ独立に1又は2であり、a、b及びcはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、a個の繰り返し単位、b個の繰り返し単位及びc個の繰り返し単位の各繰り返し単位相互間の結合順は式(4c)記載の順に限定されない。但し、a>0且つb>0である、又は、c>0である。)
【0184】
BNb及びRBNdは上述の式(2)におけるRBNとしての有機基と価数以外は同様の基が例示され、同様のことがいえ、有機基としては、1以上の芳香環を含む有機基であることが好ましい。上記式(4c)において、RBNdが1以上の芳香環を含む(2+q)価の有機基であり、qが1又は2である場合、RBNaと同様に、式(4)で表される繰り返し単位に含まれる1組又は2組の−NH−と水酸基との組み合わせを構成する各組の−NH−と水酸基とは、RBNdに含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0185】
BCdについて上記「(2+m2)価の有機基」における「(2+m2)価」とは、式(4c)に表されるRBCdが有する(2+m2)個の結合手、即ち、式(4c)に表される2つの−CO−及び−(COORB3m2と結合する手が合計(2+m2)個あることを示すものであり、RBCd自体が他に置換基を有するものである場合、該置換基との結合手は該「(2+m2)価」という価数に含めない。同様のことがRBNdについてもいえる。
【0186】
イミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)は、上述の式(2)で表されるジアミン化合物と、上述の式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び式(3a)で表されるジカルボニル化合物とを反応させて得られるポリマーであり、具体的には、式(2)で表されるジアミン化合物、好ましくはジアミン化合物(2b)と、式(3b)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるイミド環形成性の構造と、式(2a)で表されるジアミンジオールと上述の式(3a)で表されるジカルボニル化合物とを反応させて得られるオキサゾール環形成性の構造とを併有するポリマーである。
【0187】
イミド環形成性の構造は、例えば、式(2)においてa個の繰り返し単位又はc個の繰り返し単位における−RBCd[(COORB3m2)]−CO−NH−で表される。オキサゾール環形成性の構造は、例えば、式(2)においてb個の繰り返し単位又はc個の繰り返し単位における−CO−NH−RBNd[(OH)q2)]−で表される。
【0188】
イミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)は、ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物及び/又はジカルボニル化合物をそれぞれ1種又は2種類以上を用いて得られるイミド環・オキサゾール環形成性ポリマーであってもよい。また、イミド環形成性ポリマー(B1)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0189】
<溶剤(S)>
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物は、塗布性の点で溶剤を含有し、固体を含むペーストであってもよく、溶液であってもよく、溶液であるのが好ましい。溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で、特に限定されない。好適な溶剤の例は、上述のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に用いられる溶剤の例、また、ジアミンジオールとジカルボニル化合物との反応に用いられる溶剤の例等と同様である。溶剤は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコール等のアルコール系溶剤を含んでいてもよい。溶剤が、アルコール系溶剤を含む場合、耐熱性に優れるパターンを形成しやすい。
【0190】
溶剤は、また、下式(5)で表される化合物(S1)を含む溶剤を用いてもよい。
【化47】
(式(5)中、RS1及びRS2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基であり、RS3は下式(5−1)又は下式(5−2):
【化48】
で表される基である。式(5−1)中、RS4は、水素原子又は水酸基であり、RS5及びRS6は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。式(5−2)中、RS7及びRS8は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
【0191】
式(5)で表される化合物(S1)のうち、RS3が式(5−1)で表される基である場合の具体例としては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−エチル,N,2−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチル−2−メチルプロピオンアミド、N,N,2−トリメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、N−エチル−N,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、及びN,N−ジエチル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド等が挙げられる。
【0192】
式(5)で表される化合物(S1)のうち、RS3が式(5−2)で表される基である場合の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N,N,N’,N’−テトラエチルウレア等が挙げられる。
【0193】
上記の化合物(S1)の例のうち、特に好ましいものとしては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアが好ましい。N,N,2−トリメチルプロピオンアミドの大気圧下での沸点は175℃であって、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアの大気圧下での沸点は177℃である。このように、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマー及びそのモノマー成分を溶解可能な溶媒の中では比較的沸点が低い。このため、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアから選択される少なくとも1種を含む溶剤を用いて合成されたイミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーを用いてイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーを形成すると、イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーを加熱する際に、生成するイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーを含有する膜又は成形体中に溶剤が残存しにくく、得られる膜又は成形体の引張伸度の低下等を招きにくい。
【0194】
更に、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、EU(欧州連合)でのREACH規則において、有害性が懸念される物質であるSVHC(Substance of Very High Concern、高懸念物質)に指定されていないように、有害性が低い物質である点でも有用である。
【0195】
イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーの調製に用いる溶剤中の、前述の化合物(S1)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。溶剤の質量に対する化合物(S1)の比率は、典型的には、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
【0196】
化合物(S1)とともに使用することができる有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素極性溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸−n−ブチル等のエステル類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等の環状エステル類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0197】
感エネルギー性樹脂組成物中の溶剤(S)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。感エネルギー性樹脂組成物中の溶剤(S)の含有量は、感エネルギー性樹脂組成物中の固形分含有量に応じて適宜調整される。感エネルギー性樹脂組成物中の固形分含有量は、例えば、1〜80質量%であり、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0198】
<その他の成分>
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記成分以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、塩基発生剤成分、ケイ素含有化合物、モノマー等の重合性成分、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、消泡剤、高誘電フィラー又は低誘電フィラー等の種々のフィラー、及び着色剤等が挙げられる。低誘電フィラーとしてはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィラー等が挙げられる。後述の膜若しくは成形体の製造方法又はパターン形成方法において、露光工程を有する場合は、露光により塩基を発生する塩基発生剤成分を更に含有していることが好ましい。本明細書において、「光」は、放射線の照射全般を意味し、「露光」における「光」についても同様である。
【0199】
〔塩基発生剤成分〕
塩基発生剤成分を含有する感エネルギー性樹脂組成物を露光すると、露光部において発生した塩基により、感エネルギー性樹脂組成物中の(B)成分の閉環が促進され、露光部は現像液に対して不溶となる。一方、未露光部は、現像液に対して可溶であるため、現像液に溶解させて除去することができる。よって、上記感エネルギー性樹脂組成物を選択的に露光することにより、所望のパターンを形成することができる。
【0200】
塩基発生剤成分としては、例えば、光の作用により分解してイミダゾール化合物を発生する化合物(D−1)や、オキシムエステル化合物(D−2)が挙げられる。以下、化合物(D−1)及び(D−2)について説明する。
【0201】
[光の作用により分解してイミダゾール化合物を発生する化合物(D−1)]
化合物(D−1)が発生するイミダゾール化合物は、塩基性のイミド化触媒として、本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物中の(B)成分の閉環を促進する。化合物(D−1)が発生するイミダゾール化合物は、イミダゾールであっても、イミダゾール中の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が置換基で置換された化合物であってもよく、下記式(d3)で表されるイミダゾール化合物であることが好ましい。
【化49】
(式中、RD1、RD2、及びRD3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
【0202】
D1、RD2、又はRD3により示される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上となり得る。
【0203】
D1及びRD2は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
【0204】
D1、RD2、又はRD3により示される有機基がヘテロ原子を含む場合、そのヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、珪素原子が挙げられる。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−又は−C(=NR)−(ただし、Rは水素原子又は有機基を示す)。以下、同じ)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。中でも、イミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0205】
D1、RD2、又はRD3により示される、有機基以外の基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。この炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状の何れでもよい。
【0206】
D1、RD2、及びRD3としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアリール基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。RD1、RD2、及びRD3が何れも水素原子であるイミダゾールは、立体的な障害の少ない単純な構造であるため、イミド化触媒としてポリアミック酸に容易に作用することができる。
【0207】
化合物(D−1)は、光の作用により分解してイミダゾール化合物、好ましくは上記式(d3)で表されるイミダゾール化合物を発生させることができる化合物であれば特に限定されない。従来から感光性組成物に配合されている、光の作用によりアミンを発生する化合物について、露光時に発生するアミンに由来する骨格を、イミダゾール化合物、好ましくは上記式(d3)で表されるイミダゾール化合物に由来する骨格に置換することにより、化合物(D−1)として使用される化合物が得られる。
【0208】
好適な化合物(D−1)としては、下記式(d4)で表される化合物が挙げられる。
【化50】
(式中、RD1、RD2、及びRD3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。RD4及びRD5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。RD6、RD7、RD8、RD9、及びRD10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。RD6、RD7、RD8、RD9、及びRD10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0209】
式(d4)において、RD1、RD2、及びRD3は、式(d3)について説明したものと同様である。
【0210】
式(d4)において、RD4又はRD5により示される有機基としては、RD1、RD2、及びRD3について例示したものが挙げられる。この有機基は、RD1、RD2、及びRD3の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよい。
【0211】
D4及びRD5としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数4〜13のシクロアルキル基、炭素原子数4〜13のシクロアルケニル基、炭素原子数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素原子数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアミド基、炭素原子数1〜10のアルキルチオ基、炭素原子数1〜10のアシル基、炭素原子数2〜11のエステル基(−COOR又は−OCOR(ただし、Rは炭化水素基を示す。))、炭素原子数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素原子数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、RD4及びRD5の両方が水素原子であるか、又はRD4がメチル基であり、RD5が水素原子である。
【0212】
式(d4)において、RD6、RD7、RD8、RD9、又はRD10により示される有機基としては、RD1、RD2、及びRD3において例示したものが挙げられる。この有機基は、RD1及びRD2の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよい。
【0213】
D6、RD7、RD8、RD9、及びRD10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、RD6、RD7、RD8、RD9、及びRD10は、それらの2つ以上が結合して、RD6、RD7、RD8、RD9、及びRD10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0214】
D6、RD7、RD8、RD9、及びRD10としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数4〜13のシクロアルキル基、炭素原子数4〜13のシクロアルケニル基、炭素原子数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素原子数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアミド基、炭素原子数1〜10のアルキルチオ基、炭素原子数1〜10のアシル基、炭素原子数2〜11のエステル基、炭素原子数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素原子数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0215】
また、RD6、RD7、RD8、RD9、及びRD10としては、それらの2つ以上が結合して、RD6、RD7、RD8、RD9、及びRD10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0216】
上記式(d4)で表される化合物の中では、下記式(d5)で表される化合物が好ましい。
【化51】
(式中、RD1、RD2、及びRD3は、式(d3)及び(d4)と同義である。RD4〜RD9は式(d4)と同義である。RD11は、水素原子又は有機基を示す。RD6及びRD7が水酸基となることはない。RD6、RD7、RD8、及びRD9は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0217】
式(d5)で表される化合物は、置換基−O−RD11を有するため、有機溶剤に対する溶解性に優れる。
【0218】
式(d5)において、RD11が有機基である場合、その有機基としては、RD1、RD2、及びRD3において例示したものが挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよい。RD11としては、水素原子、又は炭素原子数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0219】
好適な化合物(D−1)としては、下記式(d6)で表される化合物も挙げられる。
【化52】
(式中、RD1、RD2、及びRD3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。RD12は、置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
【0220】
式(d6)において、RD1、RD2、及びRD3は、式(d3)について説明したものと同様である。
【0221】
式(d6)において、RD12としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられ、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基が好ましい。上記アリール基又はアラルキル基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0222】
式(d6)で表される化合物は、式(d3)で表されるイミダゾール化合物と下記式(d7)で表されるクロロギ酸エステルとの反応、式(d3)で表されるイミダゾール化合物と下記式(d8)で表されるジカーボネートとの反応、又は下記式(d9)で表されるカルボニルジイミダゾール化合物と下記式(d10)で表されるアルコールとの反応により合成することができる。
【化53】
(式(d7)〜(d10)中、RD1、RD2、及びRD3は、式(d3)と同義である。RD12は式(d6)と同義である。)
【0223】
化合物(D−1)として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化54】
【0224】
[オキシムエステル化合物(D−2)]
オキシムエステル化合物(D−2)は、光の作用により分解して塩基を発生する。化合物(D−2)が分解して発生した塩基により、本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物中の(B)成分の閉環が促進される。
【0225】
好適な化合物(D−2)としては、下記式(d11)で表される化合物が挙げられる。
【化55】
【0226】
上記式(d11)中、RD13は、炭素原子数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を示す。pは、0又は1である。RD14は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を示す。RD15は、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0227】
D13が炭素原子数1〜10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この場合、アルキル基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0228】
D13が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基が有していてもよい置換基の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。RD13が、置換基を有してもよいフェニル基であり、フェニル基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0229】
フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。この場合、フェニル基が有する置換基としては、例えば、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がアルコキシアルキル基である場合、−RD16−O−RD17で表される基が好ましい。RD16は、炭素原子数1〜10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキレン基である。RD17は、炭素原子数1〜10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキル基である。RD16の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。RD17の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0230】
フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合、その炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、アルコキシ基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、2−メトキシ−1−メチルエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0231】
フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素原子数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0232】
フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0233】
フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチルオキシカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0234】
フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合、その炭素原子数は、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。またフェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合、その炭素原子数は、11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、置換基は、フェニル基又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0235】
フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
【0236】
フェニル基が有する置換基が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例としては、フェニル基が有する置換基について上記したものと同様のものが挙げられる。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、β−ナフトイルアミノ基、及びN−アセチル−N−アセチルオキシアミノ基等が挙げられる。
【0237】
フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0238】
以上、RD13が置換基を有してもよいフェニル基である場合の置換基について説明したが、これらの置換基の中では、アルキル基又はアルコキシアルキル基が好ましい。
【0239】
D13が置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の数と、置換基の結合位置とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。RD13が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、塩基の発生効率に優れる点で、置換基を有してもよいフェニル基は、置換基を有していてもよいo−トリル基であるのが好ましい。
【0240】
D13が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カルバゾリル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいフェニルカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフチルカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0241】
D13が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0242】
カルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、RD13が置換基を有してもよいフェニル基である場合の、フェニル基が有する置換基の例と同様である。
【0243】
D13において、カルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。カルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0244】
D14は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。
【0245】
D14が置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この場合、アルキル基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0246】
D14において、アルキル基、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
アルキル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
フェニル基、及びカルバゾリル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、アルキル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基として上記で例示した基に加えて、炭素原子数1〜20のアルキル基が挙げられる。
【0247】
アルキル基、フェニル基、又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、RD13が置換基を有してもよいフェニル基である場合の、フェニル基が有する置換基の例と同様である。
【0248】
D14において、アルキル基、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。アルキル基又はフェニル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0249】
式(d11)で表される化合物の塩基発生効率の点から、RD14としては、下記式(d12):
【化56】
で表される基、及び下記式(d13):
【化57】
で表される基が好ましい。
【0250】
式(d12)中、RD18及びRD19は、それぞれ1価の有機基であり、qは0又は1である。式(d13)中、RD20は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、rは0〜4の整数である。
【0251】
式(d12)におけるRD18は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。RD18の好適な例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0252】
D18の中では、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0253】
式(d12)におけるRD19は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。RD19として好適な基の具体例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。RD19として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基、及び置換基を有してもよいナフチル基がより好ましく、2−メチルフェニル基及びナフチル基が特に好ましい。
【0254】
D18又はRD19に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。RD18又はRD19に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。RD18又はRD19に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0255】
式(d13)におけるRD20が有機基である場合、RD20は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(13)においてRD20が有機基である場合の好適な例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基が挙げられる。
【0256】
D20の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0257】
また、式(d13)において、rは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1であるのが特に好ましい。rが1である場合、RD20の結合する位置は、RD20が結合するフェニル基が硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0258】
D15は、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基を有していてもよいフェニル基である場合、フェニル基が有していてもよい置換基は、RD13が置換基を有していてもよいフェニル基である場合と同様である。RD15としては、メチル基、エチル基、又はフェニル基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0259】
上記式(d11)で表されるオキシムエステル化合物は、pが0である場合、例えば、以下に説明する方法により合成できる。まず、RD14−CO−RD13で表されるケトン化合物を、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して、RD14−(C=N−OH)−RD13で表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、RD15−CO−Hal(Halはハロゲンを示す)で表される酸ハロゲン化物や、(RD15CO)Oで表される酸無水物によりアシルして、pが0である上記式(d11)で表されるオキシムエステル化合物が得られる。
【0260】
また、上記式(d11)で表されるオキシムエステル化合物は、pが1である場合、例えば、以下に説明する方法により合成できる。まず、RD14−CO−CH−RD13で表されるケトン化合物を、塩酸の存在下に亜硝酸エステルと反応させ、RD14−CO−(C=N−OH)−RD13で表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、RD15−CO−Hal(Halはハロゲンを示す)で表される酸ハロゲン化物や、(RD15CO)Oで表される酸無水物によりアシルして、pが1である上記式(d11)で表されるオキシムエステル化合物が得られる。
【0261】
上記式(d11)で表される化合物としては、下記式(d14)で表される化合物が挙げられる。
【化58】
【0262】
上記式(d14)中、p及びRD14は上記のとおりである。RD21は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、sは0〜4の整数であり、RD22は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0263】
上記式(d14)中、RD21は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、有機基である場合、種々の有機基から適宜選択される。RD21の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。sが2〜4の整数である場合、RD21は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素原子数には、置換基が更に有する置換基の炭素原子数を含まない。
【0264】
D21がアルキル基である場合、炭素原子数1〜20が好ましく、炭素原子数1〜6がより好ましい。また、RD21がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。RD21がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、RD21がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0265】
D21がアルコキシ基である場合、炭素原子数1〜20が好ましく、炭素原子数1〜6がより好ましい。また、RD21がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。RD21がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、RD21がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0266】
D21がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、炭素原子数3〜10が好ましく、炭素原子数3〜6がより好ましい。RD21がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。RD21がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0267】
D21が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、炭素原子数2〜20が好ましく、炭素原子数2〜7がより好ましい。RD21が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。RD21が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0268】
D21がアルコキシカルボニル基である場合、炭素原子数2〜20が好ましく、炭素原子数2〜7がより好ましい。RD21がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチルオキシカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0269】
D21がフェニルアルキル基である場合、炭素原子数7〜20が好ましく、炭素原子数7〜10がより好ましい。またRD21がナフチルアルキル基である場合、炭素原子数11〜20が好ましく、炭素原子数11〜14がより好ましい。RD21がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。RD21がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。RD21が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、RD21は、フェニル基、又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0270】
D21がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。RD21がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
【0271】
D21が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、RD21と同様である。1又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0272】
D21に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。RD21に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。RD21に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0273】
D21の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であること等から、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、及び炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキルがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0274】
D21がフェニル基に結合する位置は、RD21が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位、又は5位が好ましく、5位がより好ましい。また、sは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0275】
上記式(d14)におけるRD22は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。RD22としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0276】
化合物(D−2)として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化59】
【0277】
下式(d15)で表される化合物も、オキシムエステル化合物(D−2)として好適に使用される。
【化60】
(RD23は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、RD24及びRD25は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、RD24とRD25とは相互に結合して環を形成してもよく、RD26は1価の有機基であり、RD27は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、n3は0〜4の整数であり、m3は0又は1である。)
【0278】
式(d15)中、RD23は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。RD23は、式(d15)中のフルオレン環上で、−(CO)m3−で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。式(d15)中、RD23のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。式(d15)で表される化合物が1以上のRD23を有する場合、式(d15)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRD23のうちの1つがフルオレン環中の2位に結合するのが好ましい。RD23が複数である場合、複数のRD23は同一であっても異なっていてもよい。
【0279】
D23が有機基である場合、RD23は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。RD23が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。
【0280】
D23がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、RD23がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。RD23がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、RD23がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0281】
D23がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、RD23がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。RD23がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、RD23がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0282】
D23がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。RD23がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。RD23がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0283】
D23が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2〜21が好ましく、2〜7がより好ましい。RD23が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。RD23が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0284】
D23がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。RD23がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチルオキシカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0285】
D23がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。また、RD23がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。RD23がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。RD23がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。RD23が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、RD23は、フェニル基、又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0286】
D23がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。RD23がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
【0287】
D23がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、RD23がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0288】
D23が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜21の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、RD23と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0289】
D23に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。RD23に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。RD23に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0290】
以上説明した基の中でも、RD23としては、ニトロ基、又はRD28−CO−で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。RD28は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。RD28として好適な基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。RD28として、これらの基の中では、2−メチルフェニル基、チオフェン−2−イル基、及びα−ナフチル基が特に好ましい。
また、RD23が水素原子であると、透明性が良好となる傾向があり好ましい。なお、RD23が水素原子であり且つRD26が後述の式(R4−2)で表される基であると透明性はより良好となる傾向がある。
【0291】
式(d15)中、RD24及びRD25は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。RD24とRD25とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、RD24及びRD25として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。RD24及びRD25が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0292】
D24及びRD25が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。RD24及びRD25が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、RD24及びRD25がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0293】
D24及びRD25が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、シアノ基、ハロゲン原子、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、RD23がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、RD23がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。RD23がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0294】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1〜20であり、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0295】
D24及びRD25が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。RD24及びRD25が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、RD24及びRD25が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0296】
D24及びRD25が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素−炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0297】
D24及びRD25が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0298】
D24及びRD25がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0299】
D24とRD25とは相互に結合して環を形成してもよい。RD24とRD25とが形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。RD24とRD25とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環〜6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0300】
D24とRD25とが結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0301】
以上説明したRD24及びRD25の中でも好適な基の例としては、式−AD1−AD2で表される基が挙げられる。式中、AD1は直鎖アルキレン基であり、AD2は、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である。
【0302】
D1の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。AD2がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。AD2がハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。AD2がハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。AD2が環状有機基である場合、環状有機基の例は、RD24及びRD25が置換基として有する環状有機基と同様である。AD2がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、RD24及びRD25が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0303】
D24及びRD25の好適な具体例としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、及びn−オクチル基等のアルキル基;2−メトキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、5−メトキシ−n−ペンチル基、6−メトキシ−n−ヘキシル基、7−メトキシ−n−ヘプチル基、8−メトキシ−n−オクチル基、2−エトキシエチル基、3−エトキシ−n−プロピル基、4−エトキシ−n−ブチル基、5−エトキシ−n−ペンチル基、6−エトキシ−n−ヘキシル基、7−エトキシ−n−ヘプチル基、及び8−エトキシ−n−オクチル基等のアルコキシアルキル基;2−シアノエチル基、3−シアノ−n−プロピル基、4−シアノ−n−ブチル基、5−シアノ−n−ペンチル基、6−シアノ−n−ヘキシル基、7−シアノ−n−ヘプチル基、及び8−シアノ−n−オクチル基等のシアノアルキル基;2−フェニルエチル基、3−フェニル−n−プロピル基、4−フェニル−n−ブチル基、5−フェニル−n−ペンチル基、6−フェニル−n−ヘキシル基、7−フェニル−n−ヘプチル基、及び8−フェニル−n−オクチル基等のフェニルアルキル基;2−シクロヘキシルエチル基、3−シクロヘキシル−n−プロピル基、4−シクロヘキシル−n−ブチル基、5−シクロヘキシル−n−ペンチル基、6−シクロヘキシル−n−ヘキシル基、7−シクロヘキシル−n−ヘプチル基、8−シクロヘキシル−n−オクチル基、2−シクロペンチルエチル基、3−シクロペンチル−n−プロピル基、4−シクロペンチル−n−ブチル基、5−シクロペンチル−n−ペンチル基、6−シクロペンチル−n−ヘキシル基、7−シクロペンチル−n−ヘプチル基、及び8−シクロペンチル−n−オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2−メトキシカルボニルエチル基、3−メトキシカルボニル−n−プロピル基、4−メトキシカルボニル−n−ブチル基、5−メトキシカルボニル−n−ペンチル基、6−メトキシカルボニ−n−ヘキシル基、7−メトキシカルボニ−n−ヘプチル基、8−メトキシカルボニ−n−オクチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、3−エトキシカルボニル−n−プロピル基、4−エトキシカルボニル−n−ブチル基、5−エトキシカルボニル−n−ペンチル基、6−エトキシカルボニ−n−ヘキシル基、7−エトキシカルボニ−n−ヘプチル基、及び8−エトキシカルボニ−n−オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2−クロルエチル基、3−クロル−n−プロピル基、4−クロル−n−ブチル基、5−クロル−n−ペンチル基、6−クロル−n−ヘキシル基、7−クロル−n−ヘプチル基、8−クロル−n−オクチル基、2−ブロモエチル基、3−ブロモ−n−プロピル基、4−ブロモ−n−ブチル基、5−ブロモ−n−ペンチル基、6−ブロモ−n−ヘキシル基、7−ブロモ−n−ヘプチル基、8−ブロモ−n−オクチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−n−ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0304】
D24及びRD25として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−フェニルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−n−ペンチル基である。
【0305】
D26の好適な有機基の例としては、RD23と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。これらの基の具体例は、RD23について説明したものと同様である。また、RD26としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、RD23に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0306】
有機基の中でも、RD26としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2−メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2−(4−クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0307】
また、RD26としては、−AD3−CO−O−AD4で表される基も好ましい。AD3は、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。AD4は、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0308】
D3がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。AD3がアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0309】
D4の好適な例としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、及び炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。AD4の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、及びβ−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0310】
−AD3−CO−O−AD4で表される基の好適な具体例としては、2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、2−n−プロピルオキシカルボニルエチル基、2−n−ブチルオキシカルボニルエチル基、2−n−ペンチルオキシカルボニルエチル基、2−n−ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2−ベンジルオキシカルボニルエチル基、2−フェノキシカルボニルエチル基、3−メトキシカルボニル−n−プロピル基、3−エトキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−ブチルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−ペンチルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−ヘキシルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−ベンジルオキシカルボニル−n−プロピル基、及び3−フェノキシカルボニル−n−プロピル基等が挙げられる。
【0311】
以上、RD26について説明したが、RD26としては、下記式(R4−1)又は(R4−2)で表される基が好ましい。
【化61】
(式(R4−1)及び(R4−2)中、RD29及びRD30はそれぞれ有機基であり、p2は0〜4の整数であり、RD29及びRD30がベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、RD29とRD30とが互いに結合して環を形成してもよく、q2は1〜8の整数であり、r1は1〜5の整数であり、s1は0〜(r+3)の整数であり、Rは有機基である。)
【0312】
式(R4−1)中のRD29及びRD30についての有機基の例は、RD23と同様である。RD29としては、アルキル基又はフェニル基が好ましい。RD29がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。つまり、RD29はメチル基であるのが最も好ましい。RD29とRD30とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(R4−1)で表される基であって、RD29とRD30とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン−1−イル基や、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−5−イル基等が挙げられる。上記式(R4−1)中、p2は0〜4の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0313】
上記式(R4−2)中、Rは有機基である。有機基としては、RD23について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0314】
上記式(R4−2)中、r1は1〜5の整数であり、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(R4−2)中、s1は0〜(r1+3)であり、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0が特に好ましい。上記式(R4−2)中、q2は1〜8の整数であり、1〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0315】
式(d15)中、RD27は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。vがアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、RD23がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0316】
式(d15)中、RD27としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0317】
式(d15)で表される化合物の製造方法は特に限定されない。式(d15)で表される化合物は、好ましくは、下式(d16)で表される化合物に含まれるオキシム基(=N−OH)を、=N−O−CORD27で表されるオキシムエステル基に変換する工程を含む方法により製造される。RD27は、式(d15)中のRD27と同様である。
【化62】
(RD23、RD24、RD25、RD26、m3、及びn3は、式(d15)と同様である。n3は0〜4の整数であり、m3は0又は1である。)
【0318】
このため、上記式(d16)で表される化合物は、式(d15)で表される化合物の合成用中間体として有用である。
【0319】
オキシム基(=N−OH)を、=N−O−CORD27で表されるオキシムエステル基に変換する方法は特に限定されない。典型的には、オキシム基中の水酸基に、−CORD27で表されるアシル基を与えるアシル化剤を反応させる方法が挙げられる。アシル化剤としては、(RD27CO)Oで表される酸無水物や、RD27COHal(Halはハロゲン原子)で表される酸ハライドが挙げられる。
【0320】
一般式(d15)で表される化合物は、m3が0である場合、例えば、下記スキーム1に従って合成することができる。スキーム1では、下記式(d1−1)で表されるフルオレン誘導体を原料として用いる。RD23がニトロ基又は1価の有機基である場合、式(d1−1)で表されるフルオレン誘導体は、9位をRD24及びRD25で置換されたフルオレン誘導体に、周知の方法によって、置換基RD23を導入して得ることができる。9位をRD24及びRD25で置換されたフルオレン誘導体は、例えば、RD24及びRD25がアルキル基である場合、特開平06−234668号公報に記載されるように、アルカリ金属水酸化物の存在下に、非プロトン性極性有機溶媒中で、フルオレンとアルキル化剤とを反応させて得ることができる。また、フルオレンの有機溶媒溶液中に、ハロゲン化アルキルのようなアルキル化剤と、アルカリ金属水酸化物の水溶液と、ヨウ化テトラブチルアンモニウムやカリウムtert−ブトキシドのような相間移動触媒とを添加してアルキル化反応を行うことで、9,9−アルキル置換フルオレンを得ることができる。
【0321】
式(d1−1)で表されるフルオレン誘導体に、フリーデルクラフツアシル化反応により、−CO−RD26で表されるアシル基を導入し、式(d1−3)で表されるフルオレン誘導体が得られる。−CO−RD26で表されるアシル基を導入するためのアシル化剤は、ハロカルボニル化合物であってもよく、酸無水物であってもよい。アシル化剤としては、式(d1−2)で表されるハロカルボニル化合物が好ましい。式(d1−2)中、Halはハロゲン原子である。フルオレン環上にアシル基が導入される位置は、フリーデルクラフツ反応の条件を適宜変更したり、アシル化される位置の他の位置に保護及び脱保護を施したりする方法で、選択することができる。
【0322】
次いで、得られる式(d1−3)で表されるフルオレン誘導体中の−CO−RD26で表される基を、−C(=N−OH)−RD26で表される基に変換し、式(d1−4)で表されるオキシム化合物を得る。−CO−RD26で表される基を、−C(=N−OH)−RD26で表される基に変換する方法は特に限定されないが、ヒドロキシルアミンによるオキシム化が好ましい。式(d1−4)のオキシム化合物と、下式(d1−5)で表される酸無水物((RD27CO)O)、又は下記一般式(d1−6)で表される酸ハライド(RD27COHal、Halはハロゲン原子。)とを反応させて、下記式(d1−7)で表される化合物を得ることができる。
【0323】
なお、式(d1−1)、(d1−2)、(d1−3)、(d1−4)、(d1−5)、(d1−6)、及び(d1−7)において、RD23、RD24、RD25、RD26、及びRD27は、式(d15)と同様である。
【0324】
また、スキーム1において、式(d1−2)、式(d1−3)、及び式(d1−4)それぞれに含まれるRD26は、同一であっても異なってもいてもよい。つまり、式(d1−2)、式(d1−3)、及び式(d1−4)中のRD26は、スキーム1として示される合成過程において、化学修飾を受けてもよい。化学修飾の例としては、エステル化、エーテル化、アシル化、アミド化、ハロゲン化、アミノ基中の水素原子の有機基による置換等が挙げられる。RD26が受けてもよい化学修飾はこれらに限定されない。
【0325】
<スキーム1>
【化63】
【0326】
式(d15)で表される化合物は、m3が1である場合、例えば、下記スキーム2に従って合成することができる。スキーム2では、下記式(d1−7)で表されるフルオレン誘導体を原料として用いる。式(d2−1)で表されるフルオレン誘導体は、スキーム1と同様の方法によって、式(d1−1)で表される化合物に、フリーデルクラフツ反応によって−CO−CH−RD26で表されるアシル基を導入して得られる。アシル化剤としては、式(d1−8):Hal−CO−CH−RD26で表されるカルボン酸ハライドが好ましい。次いで、式(d1−7)で表される化合物中の、RD26とカルボニル基との間に存在するメチレン基をオキシム化して、下式(d2−3)で表されるケトオキシム化合物を得る。メチレン基をオキシム化する方法は特に限定されないが、塩酸の存在下に下記一般式(d2−2)で表される亜硝酸エステル(RONO、Rは炭素数1〜6のアルキル基。)を反応させる方法が好ましい。次いで、下記式(d2−3)で表されるケトオキシム化合物と、下記式(d2−4)で表される酸無水物((RD27CO)O)、又は下記一般式(d2−5)で表される酸ハライド(RD27COHal、Halはハロゲン原子。)とを反応させて、下記式(d2−6)で表される化合物を得ることができる。なお、下記式(d2−1)、(d2−3)、(d2−4)、(d2−5)、及び(d2−6)において、RD23、RD24、RD25、RD26、及びRD27は、一般式(d15)と同様である。
m3が1である場合、式(d15)で表される化合物を含有する感光性組成物を用いて形成されるパターン中での異物の発生をより低減できる傾向がある。
【0327】
また、スキーム2において、式(d1−8)、式(d2−1)、及び式(d2−3)それぞれに含まれるRD26は、同一であっても異なってもいてもよい。つまり、式(d1−8)、式(d2−1)、及び式(d2−3)中のRD26は、スキーム2として示される合成過程において、化学修飾を受けてもよい。化学修飾の例としては、エステル化、エーテル化、アシル化、アミド化、ハロゲン化、アミノ基中の水素原子の有機基による置換等が挙げられる。RD26が受けてもよい化学修飾はこれらに限定されない。
【0328】
<スキーム2>
【化64】
【0329】
式(d15)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物1〜化合物41が挙げられる。
【化65】
【0330】
【化66】
【0331】
塩基発生剤成分としては、化合物(D−1)と(D−2)とを併用してもよい。
【0332】
感エネルギー性樹脂組成物における塩基発生剤成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。感エネルギー性樹脂組成物における塩基発生剤成分の含有量は、(B)成分100質量に対して1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。また、感エネルギー性樹脂組成物のうち、(S)成分を除いた成分全体に対して、塩基発生剤成分の含有割合は0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることが更に好ましい。
【0333】
〔ケイ素含有化合物〕
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物は、ケイ素含有樹脂、ケイ素含有樹脂前駆体、及びシランカップリング剤からなる群より選択される1種以上のケイ素含有化合物を含んでいてもよい。ケイ素含有樹脂としては、例えばシロキサン樹脂又はポリシランが挙げられる。ケイ素含有樹脂前駆体としては、例えばシロキサン樹脂又はポリシランの原料モノマーとなるシラン化合物が挙げられる。
【0334】
感エネルギー性樹脂組成物が、ケイ素含有化合物を含む場合、感エネルギー性樹脂組成物から得られる膜と、被塗布体との密着性が良好である。被塗布体に密着させることができるので、塗膜形成のプロセスマージンが向上する。この効果は、被塗布体の材質がガラスである場合に顕著である。
【0335】
以下、シロキサン樹脂、ポリシラン、及びシランカップリング剤について順に説明する。
【0336】
[シロキサン樹脂]
シロキサン樹脂について、溶剤(S)に可溶である樹脂であれば、特に制限はない。
シロキサン樹脂は、以下説明するシラン化合物から選ばれる1種以上のシラン化合物を少なくとも含むシラン化合物組成物を加水分解及び縮合させることにより得られるシロキサン樹脂であってもよい。
【0337】
シロキサン樹脂としては、例えば下記式(c1)で表されるシラン化合物から選択される少なくとも1種を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂が好適に使用される。
(Rc14−pSi(ORc2・・・(c1)
【0338】
式(c1)において、Rc1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、Rc2はアルキル基又はフェニル基を表し、pは2〜4の整数を表す。Siに複数のRc1が結合している場合、該複数のRc1は同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(ORc2)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0339】
また、Rc1としてのアルキル基は、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
c1としてのアルケニル基は、好ましくは炭素原子数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルケニル基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルケニル基である。
【0340】
c1がアリール基、又はアラルキル基である場合、これらの基に含まれるアリール基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アリール基の好適な例としては、下記式の基が挙げられる。
【0341】
【化67】
【0342】
上記式の基の中では、下記式の基が好ましい。
【化68】
【0343】
上記式中、Rc3は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等の炭化水素基である。上記式中、Rc3’は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。
【0344】
c1がアリール基又はアラルキル基である場合の好適な具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0345】
アリール基又はアラルキル基に含まれるベンゼン環の数は1〜3個であることが好ましい。ベンゼン環の数が1〜3個であると、シロキサン樹脂の製造性が良好であり、シロキサン樹脂の重合度の上昇により焼成時の揮発が抑制され、膜の形成が容易である。アリール基又はアラルキル基は、置換基として水酸基を有していてもよい。
【0346】
また、Rc2としてのアルキル基は好ましくは炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。Rc2としてのアルキル基の炭素原子数は、特に加水分解速度の点から1又は2が好ましい。
式(c1)におけるpが4の場合のシラン化合物(i)は下記式(c2)で表される。
Si(ORc4(ORc5(ORc6(ORc7・・・(c2)
【0347】
式(c2)中、Rc4、Rc5、Rc6及びRc7は、それぞれ独立に上記Rc2と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0348】
a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、且つa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
【0349】
式(c1)におけるnが3の場合のシラン化合物(ii)は下記式(c3)で表される。
c8Si(ORc9(ORc10(ORc11・・・(c3)
【0350】
式(c3)中、Rc8は水素原子、上記Rc1と同じアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rc9、Rc10、及びRc11は、それぞれ独立に上記Rc2と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0351】
e、f、及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、且つe+f+g=3の条件を満たす整数である。
【0352】
式(c1)におけるnが2の場合のシラン化合物(iii)は下記式(c4)で表される。
c12c13Si(ORc14(ORc15・・・(c4)
【0353】
式(c4)中、Rc12及びRc13は水素原子、上記Rc1と同じアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Rc14、及びRc15は、それぞれ独立に上記Rc2と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0354】
h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、且つh+i=2の条件を満たす整数である。
【0355】
シラン化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0356】
シラン化合物(ii)の具体例としては、
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、及びモノフェニルオキシジエトキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びメチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のメチルシラン化合物;
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びエチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のエチルシラン化合物;
プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、及びプロピルトリフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びプロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のプロピルシラン化合物;
ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジブロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のブチルシラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリペンチルオキシシラン、フェニルトリフェニルオキシシラン、フェニルモノメトキシジエトキシシラン、フェニルモノメトキシジプロポキシシラン、フェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、フェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のフェニルシラン化合物;
ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシフェニルシラン化合物;
ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、ナフチルトリペンチルオキシシラン、ナフチルトリフェニルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジエトキシシラン、ナフチルモノメトキシジプロポキシシラン、ナフチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びナフチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のナフチルシラン化合物;
ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、ベンジルトリペンチルオキシシラン、ベンジルトリフェニルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のベンジルシラン化合物;
ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリエトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシベンジルシラン化合物;
が挙げられる。
【0357】
シラン化合物(iii)の具体例としては、
ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、及びエトキシフェニルオキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルエトキシプロポキシシラン、メチルジプロポキシシラン、メチルジペンチルオキシシラン、メチルジフェニルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン等のメチルヒドロシラン化合物;
エチルジメトキシシラン、エチルメトキシエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルメトキシペンチルオキシシラン、エチルエトキシプロポキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、エチルメトキシフェニルオキシシラン等のエチルヒドロシラン化合物;
プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルメトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシペンチルオキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジプロポキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシフェニルオキシシラン等のプロピルヒドロシラン化合物;
ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルメトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシペンチルオキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルジペンチルオキシシラン、ブチルジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシフェニルオキシシラン等のブチルヒドロシラン化合物;
フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フェニルエトキシプロポキシシラン、フェニルジプロポキシシラン、フェニルジペンチルオキシシラン、フェニルジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン等のフェニルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシフェニルジメトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシフェニルジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシフェニルヒドロシラン化合物;
ナフチルジメトキシシラン、ナフチルメトキシエトキシシラン、ナフチルジエトキシシラン、ナフチルメトキシプロポキシシラン、ナフチルメトキシペンチルオキシシラン、ナフチルエトキシプロポキシシラン、ナフチルジプロポキシシラン、ナフチルジペンチルオキシシラン、ナフチルジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシフェニルオキシシラン等のナフチルヒドロシラン化合物;
ベンジルジメトキシシラン、ベンジルメトキシエトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメトキシプロポキシシラン、ベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ベンジルエトキシプロポキシシラン、ベンジルジプロポキシシラン、ベンジルジペンチルオキシシラン、ベンジルジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のベンジルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシベンジルジメトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシベンジルジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシベンジルヒドロシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルメトキシプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン等のジメチルシラン化合物;
ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシエトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジペンチルオキシシラン、ジエチルジフェニルオキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン等のジエチルシラン化合物;
ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルメトキシプロポキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジプロピルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジプロポキシシラン化合物;
ジブチルジメトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジペンチルオキシシラン、ジブチルジフェニルオキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン等のジブチルシラン化合物;
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシエトキシシラン、ジフェニルメトキシプロポキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジペンチルオキシシラン、ジフェニルジフェニルオキシシラン、ジフェニルエトキシプロポキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン等のジフェニルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
ジナフチルジメトキシシラン、ジナフチルメトキシエトキシシラン、ジナフチルメトキシプロポキシシラン、ジナフチルジエトキシシラン、ジナフチルジペンチルオキシシラン、ジナフチルジフェニルオキシシラン、ジナフチルエトキシプロポキシシラン、ジナフチルジプロポキシシラン等のジナフチルシラン化合物;
ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルメトキシエトキシシラン、ジベンジルメトキシプロポキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ジベンジルジペンチルオキシシラン、ジベンジルジフェニルオキシシラン、ジベンジルエトキシプロポキシシラン、ジベンジルジプロポキシシラン等のジベンジルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシエトキシシラン、メチルエチルメトキシプロポキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン等のメチルエチルシラン化合物;
メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルメトキシエトキシシラン、メチルプロピルメトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジペンチルオキシシラン、メチルプロピルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルエトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジプロポキシシラン等のメチルプロピルシラン化合物;
メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルメトキシエトキシシラン、メチルブチルメトキシプロポキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジペンチルオキシシラン、メチルブチルジフェニルオキシシラン、メチルブチルエトキシプロポキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン等のメチルブチルシラン化合物;
メチル(フェニル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(フェニル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
メチル(ナフチル)ジメトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジエトキシシラン、メチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のメチル(ナフチル)シラン化合物;
メチル(ベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ベンジル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキベンジル)シラン化合物;
エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、エチルプロピルメトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルプロピルジペンチルオキシシラン、エチルプロピルジフェニルオキシシラン、エチルプロピルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジプロポキシシラン等のエチルプロピルシラン化合物;
エチルブチルジメトキシシラン、エチルブチルメトキシエトキシシラン、エチルブチルメトキシプロポキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、エチルブチルジペンチルオキシシラン、エチルブチルジフェニルオキシシラン、エチルブチルエトキシプロポキシシラン、エチルブチルジプロポキシシラン等のエチルブチルシラン化合物;
エチル(フェニル)ジメトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジエトキシシラン、エチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(フェニル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
エチル(ナフチル)ジメトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジエトキシシラン、エチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のエチル(ナフチル)シラン化合物;
エチル(ベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ベンジル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキベンジル)シラン化合物;
プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルメトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、プロピルブチルジペンチルオキシシラン、プロピルブチルジフェニルオキシシラン、プロピルブチルエトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジプロポキシシラン等のプロピルブチルシラン化合物;
プロピル(フェニル)ジメトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジエトキシシラン、プロピル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(フェニル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
プロピル(ナフチル)ジメトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジエトキシシラン、プロピル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ナフチル)シラン化合物;
プロピル(ベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ベンジル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
が挙げられる。
【0358】
また、シラン化合物としては、例えば下記式(c5)で表されるシラン化合物であってもよい。
(Rc20O)c183−qSi−Rc17−Si(ORc21c193−r・・・(c5)
c17は2価の多環式芳香族基を表す。
c18及びRc19は、ケイ素原子に直結した1価基であり、前述の式(c1)中のRc1と同様に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
c20及びRc21は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
q及びrはそれぞれ独立に1〜3の整数である。
【0359】
多環式芳香族基は、2以上の芳香族環を含む2以上の環が縮合した基であっても、2以上の芳香族環を含む2以上の環が単結合又は2価の連結基により相互に結合した基であってもよい。
多環式芳香族基中の部分構造としては、非芳香族環が含まれていてもよい。
2価の連結基の具体例としては、炭素原子数1〜6のアルキレン基、−CO−、−CS−、−O−、−S−、−NH−、−N=N−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−S−、−CS−O−、−CS−S−、−CO−NH−CO−、−NH−CO−NH−、−SO−、及び−SO−等が挙げられる。
多環式芳香族基は、炭化水素基であってもよく、1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子の例としては、N、S、O、及びP等が挙げられる。
多環式芳香族基に含まれる、環の数は、2〜5の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましい。
多環式芳香族基は、置換基を有してもよい。置換基の例としては、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、及び炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基等が挙げられる。
これらの置換基の中では、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基や、メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等のアルキル基が好ましい。
多環式芳香族基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は、典型的には、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。
【0360】
2価の多環式芳香族基の具体例としては、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、アントラセン、フェナントレン、アントラキノン、ピレン、カルバゾール、N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−n−プロピルカルバゾール、N−n−ブチルカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、9,9−ジエチルフルオレン、9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、及びフルオレノンからなる群より選択される多環式芳香族化合物から、芳香族環に結合する2つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0361】
式(c5)で表されるシラン化合物の好ましい具体例を下記に示す。
【化69】
【0362】
以上説明したシラン化合物を、常法に従って加水分解縮合することによりシロキサン樹脂が得られる。
シロキサン樹脂の質量平均分子量は、300〜30000が好ましく、500〜10000がより好ましい。かかる範囲内の質量平均分子量を有するシロキサン樹脂を感エネルギー性樹脂組成物に配合する場合、製膜性に優れる。
【0363】
以上説明したシラン化合物を加水分解縮合させて得られるシロキサン樹脂の好適な例としては、下記式(C−1)で示される構造単位を有するシロキサン樹脂が挙げられる。当該シロキサン樹脂において、ケイ素原子1個に対する炭素原子の数は2個以上である。
【化70】
(式(C−1)中、Rc22はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、Rc23は水素又はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、sは0又は1である。)
【0364】
c22及びRc23におけるアルキル基、アリール基、又はアラルキル基は、前述の式(c1)におけるアルキル基、アリール基、又はアラルキル基と同様である。
【0365】
アルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、フルオレニル基、及びピレニル基等が挙げられる。
【0366】
アリール基及びアラルキル基としては、具体的には下記の構造を有するものが好ましい。
【化71】
【0367】
上記式中、Rc24は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等の炭化水素基であり、Rc25は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。なお、上記芳香族炭化水素基は、該芳香族炭化水素基における少なくとも1つの芳香環に、上記Rc24を有していればよく、複数有していてもよい。複数のRc24を有する場合には、これらのRc24は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0368】
特に好ましいRc22としては、下記式(Rc22−a)(Rc22−b)で表される構造を有する基が好ましく、特に(R22−b)が好ましい。
【化72】
【0369】
式(C−1)において、sは0であることが好ましく、その場合にはシロキサン樹脂は、シルセスキオキサン骨格を有する。更に、シロキサン樹脂は、ラダー型のシルセスキオキサンであることがより好ましい。
【0370】
更に、式(C−1)で示される構造単位(単位骨格)において、ケイ素原子1個に対して、炭素原子が2個以上15個以下となる原子数比を有していることが好ましい。
【0371】
シロキサン樹脂は、式(C−1)で示される構造単位を2種類以上有していてもよい。また、シロキサン樹脂は、式(C−1)で示される異なる構造単位からなるシロキサン樹脂を混合したものであってもよい。
式(C−1)で示される構造単位を2種類以上有するシロキサン樹脂としては、具体的には下記式(C−1−1)〜(C−1−3)で示される構造単位で表されるシロキサン樹脂が挙げられる。
【化73】
【化74】
【化75】
【0372】
[ポリシラン]
ポリシランは、溶剤(S)に可溶であれば特に限定されず、ポリシランの構造は特に限定されない。ポリシランは直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、網目状であっても、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造が好ましい。
【0373】
好適なポリシランとしては、例えば、下記式(C−2)及び(C−3)で表される単位の少なくとも1つを必須に含み、下記式(C−4)、(C−5)及び(C−6)で表される単位から選択される少なくとも1つの単位を任意に含有するポリシランが挙げられる。かかるポリシランは、シラノール基、又はケイ素原子に結合するアルコキシ基を必須に有する。
【0374】
【化76】
式(C−2)、(C−4)、及び(C−5)中、Rc26及びRc27は、水素原子、有機基又はシリル基を表す。Rc28は、水素原子又はアルキル基を表す。
c28がアルキル基である場合、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましい
【0375】
c26及びRc27について、有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基や、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
これらの基の中では、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基が好ましい。アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の好適な例は、前述の式(c1)中のRc1がアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である場合の例と同様である。
【0376】
c26及びRc27がシリル基である場合、シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi1−10シラニル基(Si1−6シラニル基等)が挙げられる。
【0377】
ポリシランは、下記(C−7)から(C1−10)のユニットを含むのが好ましい。
【化77】
(C−7)〜(C−10)中、Rc26及びRc27は、(C−2)、(C−4)、及び(C−5)中におけるRc26及びRc27と同様である。a、b、及びcは、それぞれ、2〜1000の整数である。
a、b、及びcは、それぞれ、10〜500が好ましく、10〜100がより好ましい。各ユニット中の構成単位は、ユニット中に、ランダムに含まれていても、ブロック化された状態で含まれていてもよい。
【0378】
以上説明したポリシランの中では、それぞれケイ素原子に結合している、シラノール基と、アルキル基と、アリール基又はアラルキル基とを組み合わせて含むポリシランが好ましい。より具体的には、それぞれケイ素原子に結合している、シラノール基と、メチル基と、ベンジル基とを組み合わせて含むポリシランや、それぞれケイ素原子に結合している、シラノール基と、メチル基と、フェニル基とを組み合わせて含むポリシランが好ましく使用される。
【0379】
ポリシランの質量平均分子量は、100〜100000が好ましく、1000〜50000がより好ましく、2000〜30000が特に好ましい。
【0380】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、ケイ素原子に結合するアルコキシ基及び/又は反応性基を介して、感エネルギー性樹脂組成物に含まれる種々の成分と結合又は相互作用したり、基板等の支持体の表面と結合したりする。このため、感エネルギー性樹脂組成物にシランカップリング剤を配合することにより、形成される膜の基板等の支持体への密着性が改良される。
【0381】
シランカップリング剤としては、特に限定されない。シランカップリング剤の好適な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のモノビニルトリアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルモノアルキルジアルコキシシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有トリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の非脂環式エポキシ基含有アルキルトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の非脂環式エポキシ基含有アルキルモノアルキルジアルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の脂環式エポキシ基含有アルキルトリアルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等の脂環式エポキシ基含有アルキルモノアルキルジアルコキシシラン;〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン等のオキセタニル基含有アルキルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトアルキルモノアルキルジアルコキシシラン;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドアルキルトリアルコキシシラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートアルキルトリアルコキシシラン;3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基含有アルキルトリアルコキシシラン;N−t−ブチル−3−(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド等のイミド基含有アルキルトリアルコキシシラン;等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0382】
また、下記式(c6)で表される化合物も、シランカップリング剤として好適に使用される。
c29c30(3−d)Si−Rc31−NH−C(O)−Y−Rc32−X・・・(c6)
(式(c6)中、Rc29はアルコキシ基であり、Rc30はアルキル基であり、dは1〜3の整数であり、Rc31はアルキレン基であり、Yは−NH−、−O−、又は−S−であり、Rc32は単結合、又はアルキレン基であり、Xは、置換基を有していてもよく単環でも多環でもよい含窒素ヘテロアリール基であり、X中の−Y−Rc33−と結合する環は含窒素6員芳香環であり、−Y−Rc33−は前記含窒素6員芳香環中の炭素原子と結合する。)
【0383】
式(c6)中、Rc29はアルコキシ基である。Rc29について、アルコキシ基の炭素原子数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、シランカップリング剤の反応性の観点から1又は2が特に好ましい。Rc29の好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、及びn−ヘキシルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましい。
【0384】
アルコキシ基であるRc29が加水分解されて生成するシラノール基が基板の表面等と反応することで、感エネルギー性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の基板等の支持体の表面への密着性が向上されやすい。このため、塗膜の基板等の支持体の表面への密着性を向上させやすい点から、dは3であるのが好ましい。
【0385】
式(c6)中、Rc30はアルキル基である。Rc30について、アルキル基の炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、シランカップリング剤の反応性の観点から1又は2が特に好ましい。Rc30の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、及びn−ドデシル基が挙げられる。
【0386】
式(c6)中、Rc31はアルキレン基である。Rc31について、アルキレン基の炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜4が特に好ましい。Rc31の好ましい具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、及びヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、及びドデカン−1,12−ジイル基が挙げられる。これらのアルキレン基の中では、1,2−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、及びブタン−1,4−ジイル基が好ましい。
【0387】
Yは−NH−、−O−、又は−S−であり、−NH−であるのが好ましい。−CO−O−、又は−CO−S−で表される結合よりも、−CO−NH−で表される結合のほうが加水分解を受けにくいため、Yが−NH−である化合物をシランカップリング剤として含む感エネルギー性樹脂組成物を用いると、基板等の支持体への密着性に優れる塗膜を形成できる。
【0388】
c32は単結合、又はアルキレン基であり、単結合であるのが好ましい。Rc32がアルキレン基である場合の好ましい例は、Rc31と同様である。
【0389】
Xは、置換基を有していてもよく単環でも多環でもよい含窒素ヘテロアリール基であり、X中の−Y−Rc33−と結合する環は含窒素6員芳香環であり、−Y−Rc33−は該含窒素6員芳香環中の炭素原子と結合する。理由は不明であるが、このようなXを有する化合物をシランカップリング剤として含む感エネルギー性樹脂組成物を用いると、基板等の支持体への密着性に優れる塗膜を形成できる。
【0390】
Xが多環ヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基は、複数の単環が縮合した基であってもよく、複数の単環が単結合を介して結合した基であってもよい。Xが多環ヘテロアリール基である場合、多環ヘテロアリール基に含まれる環数は1〜3が好ましい。Xが多環ヘテロアリール基である場合、X中の含窒素6員芳香環に縮合又は結合する環は、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、芳香環であっても芳香環でなくてもよい。
【0391】
含窒素ヘテロアリール基であるXが有していてもよい置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。Xが有する置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Xが有する置換基の数は、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。Xが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同じであっても、異なっていてもよい。
【0392】
Xの好ましい例としては、下記式の基が挙げられる。
【化78】
【0393】
上記の基の中でも、下記式の基がXとしてより好ましい。
【化79】
【0394】
以上説明した、式(c6)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物1〜8が挙げられる。
【化80】
【0395】
以上説明したケイ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0396】
以上説明したケイ素含有化合物の感エネルギー性樹脂成物中の含有量は、組成物の固形分に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが好ましい。感エネルギー性樹脂組成物におけるケイ素含有化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、ケイ素含有化合物の添加により期待される効果が十分に発現しやすい。
【0397】
<感エネルギー性樹脂組成物の調製>
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物を調製する方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂前駆体成分(B)として上述の各種モノマー成分及び前駆体ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1つと、溶剤(S)と、イミダゾール化合物(A)と、必要に応じ上述のその他の成分とを配合することにより調製することができる。
【0398】
樹脂前駆体成分(B)としては、モノマー成分と前駆体ポリマーとの両方を配合してもよいが、通常、モノマー成分のみ又は前駆体ポリマーのみを配合することで十分である。後述のようにイミダゾール化合物(A)の存在下に環形成性ポリマーの高分子量化を進めることができる点で、(B)成分として、モノマー成分を配合したうえで、環形成性ポリマーを合成することが好ましい。
また、イミダゾール化合物(A)の存在下に環形成性ポリマーの閉環効率を高めることができる点で、(B)成分として、前駆体ポリマーを配合することが好ましい。
【0399】
モノマー成分としては、ジアミン化合物と、ジカルボニル化合物又はテトラカルボン酸二無水物とを用いてよく、前記(B0−1)又は(B0−2)の組み合わせが挙げられる。各モノマー成分については、得られる膜又は成形体に必要な特性により、芳香族系化合物又は脂肪族系化合物を適宜選択すればよい。
前駆体ポリマーとしては、得られる膜又は成形体の耐熱性、引張伸度、耐薬品性及び低誘電率の点から、イミド環形成性ポリマー(B1)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)が好ましく、イミド環形成性ポリマー(B1)がより好ましい。
【0400】
樹脂前駆体成分(B)としてモノマー成分を配合する場合、イミダゾール化合物(A)により、分子量分布の狭く且つ高分子量の環形成性ポリマー(前駆体ポリマー)を得ることができるため好適である。
例えば、溶剤(S)に、ジアミン化合物と、ジカルボニル化合物及び/又はテトラカルボン酸二無水物とを含有するモノマー成分を配合することにより、該モノマー成分間で反応して環形成性ポリマーを形成するが、イミダゾール化合物(A)も配合することにより、該反応を促進することができ、環形成性ポリマーの高分子量化が容易となる。イミダゾール化合物(A)の存在下におけるモノマー成分間の反応は、イミダゾール化合物(A)の分解温度未満で行うことが好ましく、イミダゾール化合物(A)の分解温度未満の温度において環形成性ポリマーを形成することができる。イミダゾール化合物(A)の存在下では、低温、例えば水の沸点以下の温度であっても、モノマー成分間の反応により形成されるアミド結合の加水分解反応を抑制することができるので、モノマー成分間の反応の平衡をアミド化の方向に安定して進めることができ、環形成性ポリマーの高分子量化を進めることができる。
【0401】
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物は、樹脂前駆体成分(B)としてモノマー成分を配合し、好ましくはイミダゾール化合物(A)の存在下に環形成性ポリマーを形成したものをも包含する概念である。樹脂前駆体成分(B)として配合したモノマー成分間の反応により形成した環形成性ポリマーは、前駆体ポリマーに相当する。従って、樹脂前駆体成分(B)として配合したモノマー成分間の反応により形成された環形成性ポリマーを含有する感エネルギー性樹脂組成物は、樹脂前駆体成分(B)として前駆体ポリマーを配合した感エネルギー性樹脂組成物に相当することにもなる。即ち、得られる本発明の感エネルギー性樹脂組成物において、樹脂前駆体成分(B)としての前駆体ポリマーは、上述のようにイミダゾール化合物(A)の存在下に製造したものであってもよいし、イミダゾール化合物(A)の不存在下に製造したものであってもよい。
【0402】
樹脂前駆体成分(B)として配合したモノマー成分間の反応による高分子量化は、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)に相当するポリマーが形成される場合にも適合するが、イミド環形成性ポリマー(B1)又はイミド環・オキサゾール環形成性ポリマー(B3)に相当するポリマーが形成される場合、より効果的である。
【0403】
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物の調製において、各成分を配合(添加)する順序としては、特に限定されず、例えば、イミダゾール化合物(A)の配合は、樹脂前駆体成分(B)を配合する前であっても後であってもよく、同時に混合してもよい。
【0404】
≪イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法≫
本発明の第二の態様であるイミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法は、本発明の第一の態様である感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する形成工程と、上記塗膜又は成形体を露光又は加熱することにより上記塗膜又は成形体中の樹脂前駆体成分(B)を閉環させる閉環工程とを含むものである。以下、各工程について説明する。
【0405】
<形成工程>
形成工程では、本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物を被塗布体の表面に塗布したり、上記感エネルギー性樹脂組成物を適当な成形方法で成形したりして、上記感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。塗膜の厚さは、特に限定されない。典型的には、塗膜の厚さは、例えば、0.1〜1000μmであり、2〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。塗膜の厚さは、塗布方法や感エネルギー性樹脂組成物の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。また、被塗布体又は後述の閉環工程時の支持体として、ガラス基板を使用した場合、本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物を用いて得られた膜は、UVレーザー等によって剥離してもよい。剥離の際のUVレーザーの使用は、後述する閉環工程における膜又は成形体を露光する場合とは別である。
【0406】
塗膜又は成形体の形成後、閉環工程に移行する前に、塗膜又は成形体中の溶剤を除去する目的で、塗膜又は成形体を加熱してもよい。加熱温度や加熱時間は、感エネルギー性樹脂組成物に含まれる成分に熱劣化や熱分解が生じない限り特に限定されない。塗膜又は成形体中の溶剤の沸点が高い場合、減圧下に塗膜又は成形体を加熱してもよい。
【0407】
<閉環工程>
閉環工程では、上記形成工程で形成された塗膜又は成形体を露光又は加熱することにより上記塗膜又は成形体中の樹脂前駆体成分(B)を閉環させる。具体的には、樹脂前駆体成分(B)としてモノマー成分を配合する場合、露光又は加熱により、式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする前駆体ポリマー、即ち、イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーを形成し、好ましくはこれら環形成性ポリマーの高分子量化が進む。かかるモノマー成分から形成される前駆体ポリマーは、引き続き閉環工程において閉環してイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーに変化する。樹脂前駆体成分(B)として前駆体ポリマーを配合した場合、同様に閉環してイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーに変化する。
【0408】
上述のように、閉環工程において、イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーがイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーに変化する。即ち、イミド環形成性ポリマー(B1)がイミド環含有ポリマー(B1)に、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)がオキサゾール環含有ポリマー(B2)に、イミド環・オキサゾール環形成性ポリマーがイミド環・オキサゾール環含有ポリマーに、それぞれ変化する。
このようなイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーへの変換の結果、イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体が形成される。
【0409】
上記塗膜又は成形体を露光する場合、露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、i線ステッパー等から放射される紫外線、電子線、レーザー光線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の膜厚等によっても異なるが、通常、1〜1000mJ/cm、好ましくは10〜500mJ/cmである。なお、閉環工程として露光を行う場合、前駆体ポリマー(環形成性ポリマー)の閉環反応は完全でなくてもよく、例えば、後述の現像工程においてコントラストが得られる程度の処理でもよい。
【0410】
上記塗膜又は成形体を加熱する場合、加熱温度は、例えば、100〜500℃、好ましくは120〜350℃、より好ましくは150〜350℃に設定される。このような範囲の温度で樹脂前駆体成分(B)を加熱することにより、生成するイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーの熱劣化や熱分解を抑制しつつ、膜又は成形体を生成させることができる。
【0411】
また、樹脂前駆体成分(B)の加熱を高温で行う場合、多量のエネルギーの消費や、高温での処理設備の経時劣化が促進される場合があるため、樹脂前駆体成分(B)の加熱を低めの温度(「低温ベーク」ということがある。)で行うことも好ましい。具体的には、樹脂前駆体成分(B)を加熱する温度の上限を、例えば220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下、更により好ましくは150℃以下にすることができる。このような比較的低温で加熱する場合であっても、本発明においては、比較的短時間の加熱で十分にイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーへの変換を行うことができる。加熱時間は、塗膜又は成形体の組成、厚さ等にもよるが、下限値として、例えば0.5時間、好ましくは1時間、より好ましくは1.5時間、上限値として、例えば4時間、好ましくは3時間、より好ましくは2.5時間とすることができ、かかる加熱時間は、例えば130〜150℃、代表的には140℃で加熱する場合にも適用することができる。
【0412】
低温ベークにより、環形成性ポリマーの高分子量化を進めることができ、好ましくは分子量分布をあまり広げることなく高分子量化を進めることができる。低温ベークによる環形成性ポリマーの高分子量化は、特に、樹脂前駆体成分(B)としてモノマー成分を配合する場合に、形成される環形成性ポリマーの高分子量化を進める点で、好適である。低温ベークを行う際、イミダゾール化合物(A)が通常残存しており、環形成性ポリマーは、該イミダゾール化合物(A)により高分子量化が進み、得られる膜又は成形体の耐熱性、引張伸度及び耐薬品性、なかでも引張伸度を優れたものにすることができる。
【0413】
このような比較的低温で加熱することによっても、本発明の感エネルギー性樹脂組成物には式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)が含有されるので、従来のイミド樹脂よりも耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れ、低誘電率のイミド環含有ポリマーを含有する膜又は成形体、及び、従来のベンゾオキサゾール樹脂よりも耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れるオキサゾール環含有ポリマー若しくはイミド環・オキサゾール環含有ポリマーを含有する膜又は成形体を得ることができる。式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)は、触媒として作用しているものと考えられる。得られる膜又は成形体は、引張伸度に優れることから機械的特性に優れるものと思われる。
【0414】
塗膜又は成形体の加熱としては、また、低温ベークを行った後に、低温ベークにおける加熱温度よりも高温による加熱(「高温ベーク」ということがある。)を行う段階的加熱(「ステップベーク」ともいう。)を行ってもよい。
高温ベークは、加熱温度の上限として、例えば500℃以下、好ましくは450℃以下、より好ましくは420℃以下、更に好ましくは400℃以下にすることができ、加熱温度の下限として、例えば220℃超、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、更に好ましくは350℃以上、更により好ましくは380℃以上にすることができる。高温ベークにおける加熱時間は、塗膜又は成形体の組成、厚さ等にもよるが、下限値として、例えば10分以上、好ましくは20分程度以上、必要に応じて1時間以上としてもよく、上限値として、例えば4時間、好ましくは3時間、より好ましくは2.5時間とすることができ、かかる加熱時間は、例えば390〜410℃、代表的には400℃で加熱する場合にも適用することができる。
イミダゾール化合物(A)は、少なくとも高温ベークの際に分解が促進され、実質的に完全に分解し昇華させることも可能であり、得られる膜又は成形体において実質的に残存しないので、耐熱性に優れた膜又は成形体を得ることができる。また、高温ベークにより得られた膜又は成形体のアウトガスが低い点で好ましい。また、高温ベークは、誘電率の低い膜又は成形体が得られる傾向がある低い点で好ましく、特に、イミダゾール化合物(A)の存在下に環形成性ポリマー(前駆体ポリマー)を得る場合、かかる傾向がある。イミダゾール化合物(A)の分解としては、イミダゾールと経皮酸とに分解すると思われる。
【0415】
段階的加熱を行う場合、低温ベークは省略してもよい。特に、樹脂前駆体成分(B)としてモノマー成分を配合する場合、イミダゾール化合物(A)の存在下に予め環形成性ポリマーの高分子量化を進めることができるので、低温ベークを行わなくても十分に高分子量の環形成性ポリマーを得ることができる。
【0416】
イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーへの変換は、低温ベークによっても本発明の課題を解決するのに十分な程度に行うことができ、例えば、未閉環構造を実質的になくして閉環反応を実質的に完結することもできるが、低温ベーク後に未閉環構造が一部残存してもよい。高温ベークを行うことにより、閉環反応を実質的に完結することができる。
【0417】
形成工程で形成された塗膜又は成形体を露光することは、例えば、後述のパターン製造方法における露光工程において行うことができる。また、塗膜又は成形体を加熱することは、例えば、後述のパターン製造方法における加熱工程において行うことができる。
【0418】
本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物を用いて得られる膜又は成形体は、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れ、低誘電率のイミド環含有ポリマーを含有する膜又は成形体であり、また、耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れるオキサゾール環含有ポリマー若しくはイミド環・オキサゾール環含有ポリマーを含有する膜又は成形体である。そのため、かかる膜又は成形体は、特に耐熱性、引張伸度及び/又は耐薬品性が要求される用途に好適である。かかる用途としては、例えば、電子回路基板部材、半導体デバイス、リチウムイオン電池部材、太陽電池部材、燃料電池部材、モーター巻線、エンジン周辺部材、塗料、光学部品、放熱基材及び電磁波シールド基材、サージ部品等における接着剤や封止材、絶縁材料、基板材料、又は保護材料等が挙げられ、また、ディスプレイ材料等に使用されているガラスの代替として用いることができ、例えば、自動車用リフレクターの他、ディスプレイ用又はフォルダブルディスプレイ用のフレキシブルフィルム、低透湿膜等にも好適である。本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物を用いて得られる膜又は成形体は、これらの用途に応じて、例えば以下のパターン製造方法等により、具体的な形態を有するものとすることができ、形成された微細パターンは例えば、マイクロ流体チップやマイクロ流体リアクター等のマイクロ流体デバイスとして使用することができる。
【0419】
≪パターン製造方法≫
本発明の第三の態様であるパターン製造方法は、本発明の第一の態様の感エネルギー性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成する形成工程と、上記塗膜又は成形体を選択的に露光する露光工程と、露光後の上記塗膜又は成形体を現像する現像工程と、現像後の上記塗膜又は成形体を加熱する加熱工程とを含むものである。
【0420】
<形成工程>
上記パターン製造方法における形成工程は、本発明に係る感エネルギー性樹脂組成物において、上記イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法における形成工程について、説明したことと同様である。
【0421】
<露光工程>
露光工程では、形成工程で得られる塗膜又は成形体を、所定のパターンに選択的に露光する。選択的露光は、通常、所定のパターンのマスクを用いて行われる。露光に用いられる放射線や露光量は、上記イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法における閉環工程において、塗膜又は成形体を露光する場合について、説明したことと同様である。
【0422】
<現像工程>
現像工程では、露光工程において所定のパターンに選択的に露光された塗膜又は成形体から未露光部を除去して、上記塗膜又は成形体を現像する。未露光部は、通常、アルカリ現像液に溶解させて除去される。現像方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。アルカリ現像液としては、無機アルカリ化合物及び有機アルカリ化合物から選択される1種以上のアルカリ化合物を含有する水溶液を用いることができる。現像液中のアルカリ化合物の濃度は、露光後の塗膜又は成形体を良好に現像できる限り特に限定されない。典型的には、現像液中のアルカリ化合物の濃度は、1〜10質量%が好ましい。
【0423】
無機アルカリ化合物の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、及びアンモニア等が挙げられる。有機アルカリ化合物の例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
【0424】
更に、現像液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、又はエチレングリコール等の水溶性有機溶剤、界面活性剤、保存安定剤、及び樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
【0425】
<加熱工程>
加熱工程では、現像工程において、未露光部が除去されることによって、所定のパターンに現像された塗膜又は成形体を加熱する。これにより、露光工程を経て塗膜又は成形体中に残存していたイミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーからイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーへの変換が更に促進され、かかる変換がより十分なものとなる。加熱温度は、上記イミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法における閉環工程において、塗膜又は成形体を加熱する場合について、説明したことと同様である。
【0426】
このような比較的低温で加熱することによっても、式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)が含有されるので、従来のイミド樹脂よりも耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れ、低誘電率のイミド環含有ポリマーを含有するパターン、及び、従来のベンゾオキサゾール樹脂よりも耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れるオキサゾール環含有ポリマー若しくはイミド環・オキサゾール環含有ポリマーを含有するパターンを形成することができる。
【0427】
≪永久膜≫
本発明の第四の態様の永久膜は、上述の式(1a)又は式(1)で表されるイミダゾール化合物(A)と、式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする前駆体ポリマーが閉環された、イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーとを含有する。
本発明の永久膜は、上述の低温ベークを行うが高温ベークを行うことなく形成したものである場合、イミダゾール化合物(A)が残存していてもよいが、高温ベークを行って形成したものである場合、イミダゾール化合物(A)が高温ベークにより分解され、更に昇華する場合もあるので実質的に残存していない。
本発明の永久膜は、上述した本発明の第二の態様であるイミド環及び/若しくはオキサゾール環含有ポリマーを含む膜又は成形体の製造方法並びに本発明の第三の態様であるパターン形成方法により好適に得ることができる。
高温ベークを行って形成したものであっても、(A)成分からの分解物(例えば下記式(a1’−2)が、(B)成分と反応して前駆体ポリマーが閉環してなる、イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーの一部と結合することで、永久膜に含有される場合がある。第二の態様により製造される膜又は成形体、第三の態様により形成されるパターン、及び第四の態様の永久膜が(A)を含有する場合には、当該イミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーの一部と結合する場合も含まれるものとする。
【化81】
【0428】
本発明の永久膜は、イミダゾール化合物(A)を含有するものであり、比較的低温で前駆体ポリマーを閉環させて得たものであっても、従来のイミド樹脂よりも耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れ、低誘電率のイミド環含有ポリマーを含有する膜であり、また、従来のベンゾオキサゾール樹脂よりも耐熱性、引張伸度及び耐薬品性に優れるオキサゾール環含有ポリマー若しくはイミド環・オキサゾール環含有ポリマーを含有する膜である。
【0429】
本発明の永久膜は、従って、例えば、液晶素子用又は有機EL素子用の永久膜として用いることができ、有機EL素子用の永久膜として好適である。永久膜としては、絶縁膜、平坦化膜、隔壁等が好適であり、隔壁が特に好適である。隔壁としては、有機EL素子用の隔壁、インクジェット法により画素を形成する際の隔壁が好適である。
【実施例】
【0430】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0431】
<実施例1〜27、比較例1〜14>
実施例及び比較例では、以下に示すジアミン化合物(2b)、カルボン酸無水物、ジアミンジオール、ジカルボニル化合物、溶剤、イミダゾール化合物(A)及び比較化合物を用いた。
【0432】
・ジアミン化合物(2b)
DA1:ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
DA2:PPD:p−フェニレンジアミン
DA3:MPD:m−フェニレンジアミン
DA4:2,4−TDA:2,4−ジアミノトルエン
DA5:BAFL:9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
DA6:BTFL:9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン
DA7:BisA−P:4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエタン−1,1−ジイル)]ジアニリン
DA8:MDA:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
【化82】
DA9:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
DA10:1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン
DA11:1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン
DA12:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン
【0433】
・カルボン酸無水物
TC1:PMDA:ピロメリット酸二無水物
TC2:s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TC3:a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TC4:THPA:cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物
TC5:1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
PD1:下記化合物
【化83】
【0434】
・ジアミンジオール
DD1:2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
DD2:3,3’−ジヒドロキシベンジジン
【化84】
【0435】
・ジカルボニル化合物
DK1:イソフタルアルデヒド
DK2:テレフタル酸二クロライド
【化85】
【0436】
・溶剤
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
TMU:N,N,N’,N’−テトラメチルウレア
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DMIB:N,N,2−トリメチルプロピオンアミド
【0437】
・イミダゾール化合物(A)
化合物1:下記化学式
化合物2:下記化学式
・比較化合物
化合物3:下記化学式
化合物4:2−エチル−1−メチルイミダゾール
化合物5:1−エチル−2−メチルイミダゾール
【化86】
【0438】
[イミダゾール化合物(A)の合成例]
1.化合物1の合成例
まず、下記式の構造の桂皮酸誘導体30gをメタノール200gに溶解させた後、メタノール中に水酸化カリウム7gを添加した。次いで、メタノール溶液を40℃で撹拌した。メタノールを留去し、残渣を水200gに懸濁させた。得られた懸濁液にテトラヒドロフラン200gを混合、撹拌し、水相を分液した。氷冷下、塩酸4gを添加、撹拌した後に酢酸エチル100gを混合、撹拌した。混合液を静置した後、油相を分取した。油相から目的物を晶析させ、析出物を回収して、上記構造のイミダゾール化合物(化合物1)を得た。
【化87】
【0439】
化合物1のH−NMRの測定結果は以下のとおりである。
H−NMR(DMSO):11.724(s,1H),7.838(s,1H),7.340(d,2H,J=4.3Hz),7.321(d,1H,J=7.2Hz),6.893(d,2H,J=4.3Hz),6.876(d,1H,J=6.1Hz),5.695(dd,1H,J=4.3Hz,3.2Hz),3.720(s,3H),3.250(m,2H)
【0440】
2.化合物2の合成例
具体的には、原料化合物を下記式の構造の桂皮酸誘導体に変更することの他は、1.化合物1の合成例と同様にして上述の化合物2を得た。
【化88】
【0441】
[イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーの調製例]
1.イミド環形成性ポリマー(B1)
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却機、窒素ガス導入管を備えた容量5Lのセパラブルフラスコに、それぞれ、表1に記載の種類及び量の、カルボン酸無水物と、ジアミン化合物(2b)と、溶剤2951g(ただし、実施例30〜35については、溶剤73g)とを投入した。窒素ガス導入管よりフラスコ内に窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、フラスコの内容物を撹拌しながら、50℃で20時間、カルボン酸無水物と、ジアミン化合物(2b)とを反応させて、イミド環形成性ポリマー(B1)(ポリアミック酸)溶液を得た。
【0442】
2.オキサゾール環形成性ポリマー(B2)
以下の方法に従って調製した。オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の調製方法について、ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応、及びジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応を以下に記す。
【0443】
(ジアミンジオールと、ジアルデヒド化合物との反応)
回転子を入れた三角フラスコに、表1に記載の種類及び量のジアミンジオールと、表1に記載の種類及び量の溶剤2951gを加えた後、マグネッチックスターラーを用いてフラスコの内容物5分間撹拌した。その後、表1に記載の量のジアルデヒド化合物(DK1)をフラスコ内に入れ、窒素雰囲気下でフラスコの内容物を3時間還流させて反応を行った。次いで、減圧蒸留にて、反応液を脱水し、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)(ポリベンゾオキサゾ−ル樹脂)の溶液を得た。一例として、実施例17では、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の数平均分子量は約1500であった。
【0444】
(ジアミンジオールと、ジカルボン酸ジハライドとの反応)
回転子を入れた三角フラスコに、表1に記載の種類及び量のジアミンジオールと、ジアミンジオールの2倍モル量のトリエチルアミンと、表1に記載の種類の溶剤(量は、2951gの半分)を加えた。次いで、表1に記載の量のジカルボン酸ジハライド(DK2)を表1に記載の種類の溶剤(量は、2951gの半分)に溶解させた溶液を、窒素雰囲気下において、三角フラスコ内に0℃で30分かけて滴下した。滴下終了後、室温にて三角フラスコ内の反応液を更に5時間撹拌して、オキサゾール環形成性ポリマー(B2)の溶液を得た。
【0445】
3.イミド環・オキサゾール環形成性ポリマー
カルボン酸無水物としてPD1を用い、上述の1.イミド環形成性ポリマー(B1)の調製方法と同様にして、イミド環・オキサゾール環形成性ポリマーの溶液を得た。
【0446】
[感エネルギー性樹脂組成物の調製例]
(実施例1〜25)
各調製例で得られたイミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーの溶液に、化合物1〜5の何れかを、表1に記載の量で添加し撹拌して、感エネルギー性樹脂組成物を調製した。
(実施例26)
実施例2における種類及び量の、カルボン酸無水物と、ジアミン化合物(2b)と、溶剤2951gとを投入し、更に化合物1を49.22g添加し他は、上記1.イミド環形成性ポリマー(B1)と同様にして、イミド環形成性ポリマー(B1’)((A)成分が残存しているポリアミック酸)溶液を得た。
なお、実施例26の溶液には、(A)成分として予め化合物1が添加されているので、上記(実施例1〜25)と異なり、イミド環形成性ポリマー(B1)調整後に更に化合物1を添加することなく評価した。
(実施例27)
実施例26と同様のイミド環形成性ポリマー(B1’)溶液を得た後、(B1’)成分に対し5質量%となるよう塩基発生剤成分(D1)を添加した。
【0447】
[膜の調製と評価]
各実施例及び比較例で得られた感エネルギー性樹脂組成物を用いて下記の方法に従って膜を形成し、膜の耐熱性、引張伸度、耐薬品性(NMP)及び誘電率を評価した。結果を表1に記す。なお、表1中記載はないが、実施例27と実施例29の感エネルギー性樹脂組成物は同組成であり(D1)成分を含む。実施例28の感エネルギー性樹脂組成物は実施例2と同組成である。
【0448】
(耐熱性)
得られた感エネルギー性樹脂組成物をウエハ基板上に、スピンコーター(ミカサ社製、1H−360S)により塗布した。ウエハ基板上の塗膜を表1記載の加熱温度及び条件で加熱して、膜厚約0.9μmの膜を形成した。得られた膜から、耐熱性評価用の試料5μgを削り取った。耐熱性評価用の膜の試料を用いて、示差熱/熱重量測定装置(TG/DTA−6200、セイコーインスツル株式会社製)により、空気気流中、昇温速度10℃/分の条件化で測定を行い、TG曲線を得た。得られたTG曲線から、試料の5%重量減少温度を求めた。5%重量減少温度が350℃以上である場合を良(◎)と判定し、300℃以上350℃未満である場合をやや良(○)と判定し、300℃未満である場合を不良(×)と判定した。
【0449】
(引張伸度評価)
得られた感エネルギー性樹脂組成物をウエハ基板上に、アプリケーター(YOSHIMITSU SEIKI製、TBA−7型)により塗布した。ウエハ基板上の塗布膜を表1に記載の条件で加熱して、膜厚約10μmの膜を形成した。得られた膜から、IEC450規格に従った形状のダンベル型試験片を打ち抜いて、引張伸度測定用の試験片を得た。得られた試験片を用いて、チャック間距離20mm、引張速度2mm/分の条件で、万能材料試験機(TENSILON、株式会社オリエンテック製)によって、膜の破断伸度を測定した。破断伸度が10%以上である場合を○と判定し、10%未満である場合を×と判定した。
【0450】
(耐薬品性/NMP耐性)
引張伸度評価と同様にして膜厚約0.9μmの膜を形成した。形成された膜上にNMPを1cc滴下し、1分間又は2分間放置した後にNMPを除去した。NMP除去後の膜の表面状態を目視で観察し、2分間の放置でも膜表面に変化がなかったものを○と判定し、2分間の放置では膜表面に窪み等の痕が残ったが、1分間の放置では膜表面に変化がなかったものを△と判定し、1分間の放置でも膜表面に窪み等の痕が残ったものを×と判定した。
【0451】
(誘電率)
比誘電率が3.5以下である場合を優(◎)とし、3.8以下〜3.5超である場合を良(○)と判定し、3.8超4.2以下である場合をやや不良(△)と判定し、4.2超である場合を不良(×)と判定した。
【0452】
(実施例27のパターニング特性)
実施例27の感エネルギー性樹脂組成物をウエハ基板上に、スピンコーター(ミカサ製、1H−360S)により塗布し、80℃で5分間プリベークして、膜厚1μmの塗膜を形成した。ラインアンドスペースパターンのマスクを用いて、高圧水銀灯により300mJ/cmの条件で露光した。露光された塗膜を、現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38質量%水溶液とイソプロパノールを9:1で混合した溶液)に浸漬した。その結果、露光部が現像液に溶解せず残存したパターン(5μmの1:1ライン&スペースパターン)を得ることができた。次いで、得られたパターンを140℃で2時間加熱(ポストベーク。表1中、加熱温度欄に記載)した。
【0453】
【表1】
【0454】
実施例1〜25及び実施例30〜35によれば、イミダゾール化合物(A)を添加することで、140℃という低温で熱処理した場合であっても、イミド環及び/又はオキサゾール環形成性ポリマーを含有する感エネルギー性樹脂組成物から、耐熱性、引張伸度、耐薬品性(NMP)に優れるイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーを含有する膜が得られることがわかり、更に、実施例1〜16から、イミド環含有ポリマー(B1)を含有する膜の誘電率が低いことがわかった。実施例26より、イミダゾール化合物(A)を予め添加した場合にも同様に耐熱性、引張伸度、耐薬品性(NMP)に優れるイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーを含有する膜が得られることがわかった。
また、実施例27より、耐熱性、引張伸度、耐薬品性(NMP)に優れるイミド環及び/又はオキサゾール環含有ポリマーを含有するパターンが得られることがわかった。耐熱性の結果は、(D1)成分が残存している影響と考えられる。更に高温ベークを行った場合の実施例28、29においては誘電率の改善が確認できた。
低温ベーク後に高温ベークを行った実施例28と、低温ベークを行い高温ベークを行わなかった実施例2との対比から、前者の方が誘電率が改善されることがわかった。この誘電率が改善は、高温ベークにより樹脂前駆体成分(B)の閉環反応が進んだことによると思われる。
イミダゾール化合物(A)の存在下に低温ベーク後に高温ベークを行った実施例28及び29と、低温ベークを行うことなくイミダゾール化合物(A)の非存在下に高温ベークを行った比較例5との対比から、前者の方が誘電率が改善されることがわかった。この誘電率が改善は、イミダゾール化合物(A)の存在下における低温ベークにより樹脂前駆体成分(B)の高分子量化が進んだことによると思われる。
【0455】
比較例1〜4及び6〜14によれば、イミダゾール化合物(A)を添加しない場合、耐熱性、引張伸度、耐薬品性(NMP)に劣る膜が得られることがわかり、更に、比較例1〜5から、イミド環含有ポリマーを含有する膜の誘電率が高いことがわかった。
比較例5と実施例2との対比から、実施例2と同等程度に耐熱性、引張伸度、耐薬品性(NMP)に優れるイミド環含有ポリマー(B1)を含有する膜を同じ加熱時間で得るためには320℃もの高温で加熱する必要があること、及び、比較例5から、そのような加熱条件で得られた膜であっても、イミダゾール化合物(A)を添加しない場合、誘電率が高いことがわかった。