特許第6437108号(P6437108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6437108仮止め接着剤、接着フィルム、接着性支持体および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437108
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】仮止め接着剤、接着フィルム、接着性支持体および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/04 20060101AFI20181203BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20181203BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181203BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   C09J183/04
   C09J11/06
   C09J183/05
   C09J183/07
   C09J7/30
   B32B27/00 M
   B32B27/00 101
   H01L21/304 622J
【請求項の数】21
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-517898(P2017-517898)
(86)(22)【出願日】2016年5月2日
(86)【国際出願番号】JP2016063546
(87)【国際公開番号】WO2016181879
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2017年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-96434(P2015-96434)
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岩井 悠
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−525953(JP,A)
【文献】 特開2013−222761(JP,A)
【文献】 特開2013−201403(JP,A)
【文献】 特開2013−082801(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190477(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
H01L21/02,21/304,21/683
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物と、を含有し、
前記親油基およびフッ素原子を含有する化合物が、シリコン原子を含まず、
前記親油基が、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の少なくとも1種であり、
前記シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する繰り返し単位を含むポリマーである、仮止め接着剤。
【請求項2】
前記親油基およびフッ素原子を含有する化合物が25℃で液体状である、
請求項1に記載の仮止め接着剤。
【請求項3】
前記親油基およびフッ素原子を含有する化合物の、25℃から、20℃/分で昇温した10%熱質量減少温度が、250℃以上である、
請求項1または2に記載の仮止め接着剤。
【請求項4】
前記シリコン原子を含有する化合物は、架橋性基を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項5】
前記仮止め接着剤が、さらに、前記架橋性基を架橋させる架橋剤を含有する、
請求項4に記載の仮止め接着剤。
【請求項6】
前記シリコン原子を含有する化合物が、Si−H構造を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項7】
前記仮止め接着剤が、触媒を含み、さらに、シリコン原子を含有する化合物であって、ビニル基を含有する化合物、および、他のビニル基を含有する化合物の少なくとも1種を含む、
請求項6に記載の仮止め接着剤。
【請求項8】
前記ビニル基を含有する化合物が、シロキサン結合を有する、
請求項7に記載の仮止め接着剤。
【請求項9】
前記シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項10】
前記シリコン原子を含有する化合物の重量平均分子量が3,000以上である、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項11】
前記仮止め接着剤は、酸化防止剤を、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対し、20.0質量部以下の割合で含む、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項12】
前記仮止め接着剤は、半導体装置製造用の仮止め接着剤である、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項13】
前記仮止め接着剤は、親油基およびフッ素原子を含有する化合物とシリコン原子を含有する化合物を、質量比で、0.001:99.999〜10:90.00の割合で含む、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の仮止め接着剤。
【請求項14】
親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層からなり、
前記親油基およびフッ素原子を含有する化合物が、シリコン原子を含まず、
前記親油基が、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の少なくとも1種であり、
前記シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する繰り返し単位を含むポリマーである、接着フィルム。
【請求項15】
支持体と、親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層を有し、
前記親油基およびフッ素原子を含有する化合物が、シリコン原子を含まず、
前記親油基が、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の少なくとも1種であり、
前記シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する繰り返し単位を含むポリマーである、接着性支持体。
【請求項16】
基材と支持体との間に、親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層を有し、
前記親油基およびフッ素原子を含有する化合物が、シリコン原子を含まず、
前記親油基が、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の少なくとも1種であり、
前記シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する繰り返し単位を含むポリマーである、積層体。
【請求項17】
前記接着層が前記基材および前記支持体に接している、
請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
前記接着層の、250℃でのJIS K 7244−6:1999に従った、せん断モードで測定した貯蔵弾性率G’が、200,000〜1,000,000Paである、請求項16または17に記載の積層体。
【請求項19】
前記基材が、デバイスウェハである、
請求項16〜18のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項20】
前記接着層が、請求項3〜13のいずれか1項に記載の仮止め接着剤を含む、
請求項16〜19のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項21】
前記接着層が単層である、
請求項18〜20のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮止め接着剤、接着フィルム、接着性支持体および積層体に関する。より詳細には、半導体装置などの製造に好ましく用いることができる、仮止め接着剤、接着フィルム、接着性支持体および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)などの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、デバイスウェハ上に多数のICチップが形成され、ダイシングにより個片化される。
電子機器の更なる小型化および高性能化のニーズに伴い、電子機器に搭載されるICチップについても更なる小型化および高集積化が求められているが、デバイスウェハの面方向における集積回路の高集積化は限界に近づいている。
【0003】
ICチップ内の集積回路から、ICチップの外部端子への電気的な接続方法としては、従来より、ワイヤーボンディング法が広く知られているが、ICチップの小型化を図るべく、近年、デバイスウェハに貫通孔を設け、外部端子としての金属プラグを貫通孔内を貫通するように集積回路に接続する方法(いわゆる、シリコン貫通電極(TSV)を形成する方法)が知られている。しかしながら、シリコン貫通電極を形成する方法のみでは、上記した近年のICチップに対する更なる高集積化のニーズに充分応えられるものではない。
【0004】
以上を鑑み、ICチップ内の集積回路を多層化することにより、デバイスウェハの単位面積当たりの集積度を向上させる技術が知られている。しかしながら、集積回路の多層化は、ICチップの厚みを増大させるため、ICチップを構成する部材の薄型化が必要である。このような部材の薄型化としては、例えば、デバイスウェハの薄型化が検討されており、ICチップの小型化につながるのみならず、シリコン貫通電極の製造におけるデバイスウェハの貫通孔製造工程を省力化できることから、有望視されている。また、パワーデバイス・イメージセンサーなどの半導体デバイスにおいても、上記集積度の向上やデバイス構造の自由度向上の観点から、薄型化が試みられている。
【0005】
デバイスウェハとしては、約700〜900μmの厚さを有するものが広く知られているが、近年、ICチップの小型化等を目的に、デバイスウェハの厚さを200μm以下となるまで薄くすることが試みられている。
しかしながら、厚さ200μm以下のデバイスウェハは非常に薄く、これを基材とする半導体デバイス製造用部材も非常に薄いため、このような部材に対して更なる処理を施したり、あるいは、このような部材を単に移動したりする場合等において、部材を安定的に、かつ、損傷を与えることなく支持することは困難である。
【0006】
上記のような問題を解決すべく、表面にデバイスが設けられた薄型化前のデバイスウェハと支持体とを仮止め接着剤により仮接着し、デバイスウェハの裏面を研削して薄型化した後に、支持体を剥がす技術が知られている。
【0007】
具体的には、特許文献1には、支持体上に、シクロオレフィン系重合体と、ジアリールシリコーン構造、ジアルキルシリコーン構造、フッ素化アルキル構造、フッ素化アルケニル構造および炭素数8以上のアルキル構造から選ばれる少なくとも1種の構造、ならびにポリオキシアルキレン構造、リン酸基を有する構造およびスルホ基を有する構造から選ばれる少なくとも1種の構造を有する化合物とを含有する仮固定材を少なくとも含む仮固定材を介して、基材を仮固定することにより、積層体を得る工程、基材を加工し、および/または積層体を移動する工程、ならびに基材面に対して略垂直方向に、基材または支持体に力を付加することで、基材を支持体から剥離する工程をこの順で有する、基材の処理方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、支持体上に仮接着剤層が形成され、かつ仮接着剤層上に、表面に回路面を有し、裏面を加工すべきウェハが積層されてなるウェハ加工体であって、上記仮接着剤層が、上記ウェハの表面に剥離可能に接着された熱可塑性シロキサン結合非含有の重合体層(A)からなる第一仮接着層と、この第一仮接着層の外周部を除く中心部のみに積層され、熱可塑性シロキサン重合体層(B)からなる第二仮接着層、更には支持体に接して、熱硬化性変性シロキサン重合体層(C)からなる第三仮接着層の3層構造を有し、上記熱可塑性シロキサン重合体層(B)が除かれた箇所において熱可塑性シロキサン結合非含有の重合体層(A)と熱硬化性変性シロキサン重合体層(C)のそれぞれの外周部が直接接していることを特徴とする複合仮接着層を備えたウェハ加工体が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献3には所定のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物を用いた接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献4には、所定の繰り返し単位を有するエポキシ基含有高分子化合物を含む接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−241568号公報
【特許文献2】特開2013−243350号公報
【特許文献3】特開2012−188650号公報
【特許文献4】特開2013−82801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、特許文献1に記載された方法について、検討したところ、剥離性が劣ることが分かった。また、特許文献2に記載された加工体は、基材と支持体の間に3層構造の仮接着剤を有しており、作業に手間がかかる構造であるという問題がある。
一方、特許文献3および特許文献4には、所定のシリコン原子を含有する化合物を含む接着剤組成物に、界面活性剤を配合することが記載されている。しかしながら、界面活性剤は、塗布性の向上のために配合してもよいことが記載されているにとどまり、実際に界面活性剤を配合した接着剤組成物については記載がない。さらに、本発明者が鋭意検討を行ったが、特許文献3および特許文献4に記載の界面活性剤であって、親油基およびフッ素原子の両方を含有する化合物が記載されていることは確認できなかった。また、特許文献3に記載の接着剤は、いわゆる永久接着剤であり、加工処理後に剥離することを目的としたものではない。また、特許文献4に記載の接着剤組成物は、仮止め接着剤であるが、剥離性に劣るという問題がある。
本発明は、かかる状況下において、上述の課題を解決することを目的とするものであって、接着性に優れ、基材と支持体の間に、基材および支持体と接着層がそれぞれ接するように設けた態様でも、剥離が可能な仮止め接着剤、ならびに、接着フィルム、接着性支持体および積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、シリコン原子を含有する化合物に、親油基およびフッ素原子を含有する化合物を配合することにより、密着性と剥離性に優れた仮止め接着剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは、<2>〜<21>の手段により、上記課題は解決された。
<1>親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物と、を含有する仮止め接着剤。
<2>上記親油基およびフッ素原子を含有する化合物が25℃で液体状である、<1>に記載の仮止め接着剤。
<3>上記親油基およびフッ素原子を含有する化合物の、25℃から、20℃/分で昇温した10%熱質量減少温度が、250℃以上である、<1>または<2>に記載の仮止め接着剤。
<4>上記シリコン原子を含有する化合物は、架橋性基を有する、<1>〜<3>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<5>上記仮止め接着剤が、さらに、上記架橋性基を架橋させる架橋剤を含有する、<4>に記載の仮止め接着剤。
<6>上記シリコン原子を含有する化合物が、Si−H構造を有する、<1>〜<3>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<7>上記仮止め接着剤が、触媒を含み、さらに、シリコン原子を含有する化合物であって、ビニル基を含有する化合物、および、他のビニル基を含有する化合物の少なくとも1種を含む、<6>に記載の仮止め接着剤。
<8>上記ビニル基を含有する化合物が、シロキサン結合を有する、<7>に記載の仮止め接着剤。
<9>上記シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する、<1>〜<8>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<10>上記シリコン原子を含有する化合物の重量平均分子量が3,000以上である、<1>〜<9>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<11>上記仮止め接着剤は、酸化防止剤を、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対し、20.0質量部以下の割合で含む、<1>〜<10>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<12>上記仮止め接着剤は、半導体装置製造用の仮止め接着剤である、<1>〜<11>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<13>上記仮止め接着剤は、親油基およびフッ素原子を含有する化合物とシリコン原子を含有する化合物を、質量比で、0.001:99.999〜10:90.00の割合で含む、<1>〜<12>のいずれかに記載の仮止め接着剤。
<14>親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層からなる接着フィルム。
<15>支持体と、親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層を有する接着性支持体。
<16>基材と支持体との間に、親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層を有する積層体。
<17>上記接着層が上記基材および上記支持体に接している、<16>に記載の積層体。
<18>上記接着層の、250℃でのJIS K 7244−6:1999に従った、せん断モードで測定した貯蔵弾性率G’が、200,000〜1,000,000Paである、<16>または<17>に記載の積層体。
<19>上記基材が、デバイスウェハである<16>〜<18>のいずれかに記載の積層体。
<20>上記接着層が、<3>〜<13>のいずれかに記載の仮止め接着剤を含む、<16>〜<19>のいずれかに記載の積層体。
<21>上記接着層が単層である、<18>〜<20>のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0013】
基材と支持体の間に、基材および支持体のそれぞれと接するように接着層を設けた態様でも、基材の剥離が可能な仮止め接着剤、ならびに、接着フィルム、接着性支持体および積層体を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体装置の製造方法を示す第一の実施形態の概略図である。
図2】半導体装置の製造方法を示す第二の実施形態の概略図である。
図3】従来の接着性支持体とデバイスウェハとの仮接着状態の解除を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」を表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220(東ソー製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー製、6.0mm内径(ID)×15.0cm)を、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液を用いることによって求めることができる。
本明細書において、「親油基」とは、親水基を含まない官能基を意味する。また、「親水基」とは、水との間に親和性を示す官能基を意味する。
なお、以下に説明する実施の形態において、既に参照した図面において説明した部材等については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略化する。
【0016】
<仮止め接着剤>
本発明の仮止め接着剤は、親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物と、を含有することを特徴とする。
本発明の仮止め接着剤によれば、基材と支持体の接着性が向上し、かつ、基材の剥離性に優れた接着層が得られる。従って、デバイスウェハ等の基材に対して、機械的または化学的な処理などを施す際に、基材を支持体に安定して仮接着でき、また基材から接着層を容易に除去できる。特に、本発明では、接着層を常温下(例えば、40℃以下)でも、基材から剥離できる点でも有益である。さらに、接着層が基材および支持体と隣接し、分離層や剥離層等を用いない態様でも、機械等で容易に剥離できる点でも有益である。
これまで、接着層の主剤として、熱硬化性のポリマーを用いると、高い接着性は達成できたが、基材からの剥離性が劣る傾向にあった。本発明ではシリコン原子を含有する化合物を用いることにより、高い接着性を維持しつつ、基材からの剥離性を達成することに成功したものである。さらに、本発明では、シリコン原子を含有する化合物に、親油基およびフッ素原子を含有する化合物を配合することにより、より高い剥離性を達成している。 親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、接着層の表面およびその近くに偏在し、接着層の剥離性を向上させることが可能になる。さらに、本発明の仮止め接着剤を用いた場合、基材を薄型化した後の反りも効果的に抑止可能である。加えて、剥離後の仮止め接着剤の面性状が良好なものとなる。
本発明の仮止め接着剤は、半導体装置製造用の仮止め接着剤として特に好ましく用いることができる。
以下、本発明の仮止め接着剤について具体的に説明する。
【0017】
<<親油基およびフッ素原子を含有する化合物>>
本発明の仮止め接着剤は、親油基およびフッ素原子を含有する化合物を有する。親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、液体状であっても、固体状であってもよいが、液体状であることが好ましい。本発明において、液体状とは、25℃で流動性を有する化合物であって、例えば、25℃での粘度が、1〜100,000mPa・sである化合物を意味する。尚、本発明における親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、シリコン原子を含むものは含まれない。
また、本発明における親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、親水基を含んでいても良い。
親油基およびフッ素原子を含有する化合物の25℃での粘度は、例えば、10〜20,000mPa・sがより好ましく、100〜15,000mPa・sが一層好ましい。親油基およびフッ素原子を含有する化合物の粘度が上記範囲であれば、接着層の表層に親油基およびフッ素原子を含有する化合物が偏在しやすい。
【0018】
本発明において、親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、オリゴマー、ポリマーのいずれの形態の化合物であっても好ましく用いることができる。また、オリゴマーとポリマーとの混合物であってもよい。かかる混合物には、モノマーを更に含んでいてもよい。また、親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、モノマーであってもよい。
親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、耐熱性等の観点から、オリゴマー、ポリマーおよびこれらの混合物が好ましい。
オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、ラジカル重合体、カチオン重合体、アニオン重合体などが挙げられ、何れも好ましく用いることができる。ビニル系重合体が特に好ましい。
親油基およびフッ素原子を含有する化合物の重量平均分子量は、500〜100000が好ましく、1000〜50000がより好ましく、2000〜20000が更に好ましい。
【0019】
本発明において、親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、仮接着に供する基材の処理時に変性しない化合物が好ましい。例えば、250℃以上での加熱後や、種々の薬液で基材を処理した後でも液体状として存在しうる化合物が好ましい。具体的な一例としては、25℃の状態から10℃/分の昇温条件で250℃まで加熱した後、25℃に冷却した後の25℃での粘度が1〜100,000mPa・sであることが好ましく、10〜20,000mPa・sがより好ましく、100〜15,000mPa・sが一層好ましい。
このような特性を有する親油基およびフッ素原子を含有する化合物としては、反応性基を有さない、非熱硬化性化合物であることが好ましい。ここでいう反応性基とは、250℃の加熱で反応する基全般を指し、重合性基、加水分解性基などが挙げられる。具体的には、例えば、メタ(アクリル)基、エポキシ基、イソシアナト基などが挙げられる。
また、親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、25℃から、20℃/分で昇温した10%熱質量減少温度が、250℃以上であることが好ましく、280℃以上がより好ましい。また、上限値は、特に限定はないが、例えば、1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましい。この態様によれば、耐熱性に優れた接着層を形成しやすい。なお、熱質量減少温度とは、熱重量測定装置(TGA)により、窒素気流下において、上記昇温条件で測定した値である。
【0020】
本発明で用いる親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、親油基を含有する。
親油基としては、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。
【0021】
アルキル基の炭素数は、2〜30が好ましく、4〜30がより好ましく、6〜30がさらに好ましく、12〜20が特に好ましい。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基が挙げられる。
アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。
アルコキシ基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルコキシ基は、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基は、単環であってもよく、多環であってもよい。アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が最も好ましい。
【0022】
シクロアルキル基は、単環であってもよく、多環であってもよい。シクロアルキル基の炭素数は、3〜30が好ましく、4〜30がより好ましく、6〜30がさらに好ましく、12〜20が最も好ましい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基及びピネニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は、上述した置換基を有していてもよい。
【0023】
アリール基は、単環であってもよく、多環であってもよい。アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が最も好ましい。アリール基は、環を構成する元素に、ヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)を含まないことが好ましい。アリール基の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環が挙げられる。
アリール基は、上述した置換基を有していてもよい。
【0024】
親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、親油基を1種のみ含む化合物であってもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、本発明における親油基は、フッ素原子を含んでいないものとする。
親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、一分子中に親油基を1個以上有し、2〜100個有することが好ましく、6〜80個有することが特に好ましい。
【0025】
フッ素基としては、既知のフッ素基を使用することができる。例えば、含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基等が挙げられる。
含フッ素アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜15がより好ましい。含フッ素アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、エーテル結合を有していてもよい。また、含フッ素アルキル基は、水素原子の全てがフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基であってもよい。
含フッ素アルキレン基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜15がさらに好ましい。含フッ素アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、エーテル結合を有していてもよい。また、含フッ素アルキレン基は、水素原子の全てがフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキレン基であってもよい。
【0026】
親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、フッ素原子の含有率が1〜90質量%であることが好ましく、2〜80質量%がより好ましく、5〜70質量%が更に好ましい。フッ素含有率が上記範囲であれば、剥離性に優れる。
フッ素原子の含有率は、「{(1分子中のフッ素原子数×フッ素原子の質量)/1分子中の全原子の質量}×100」で定義される。
【0027】
親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、市販品を用いることもできる。例えば、DIC製メガファックシリーズのF−251、F−281、F−477、F−552、F−553、F−554、F−555、F−556、F−557、F−558、F−559、F−560、F−561、F−562、F−563、F−565、F−567、F−568、F−571、R−40、R−41、R−43、R−94や、ネオス製フタージェントシリーズの710F、710FM、710FS、730FL、730LM、ダイキン製、ダイフリーFB962が挙げられる。
【0028】
本発明の仮止め接着剤における、親油基およびフッ素原子を含有する化合物の含有量は、溶剤を除いた仮止め接着剤の質量に対し、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.02〜5質量%がより好ましい。親油基およびフッ素原子を含有する化合物の含有量が上記範囲であれば、接着性および剥離性に優れる。親油基およびフッ素原子を含有する化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、合計の含有量が上記範囲であることが好ましい。
【0029】
<<シリコン原子を含有する化合物>>
本発明は、シリコン原子を含有する化合物を含む。シリコン原子を含有する化合物は、いわゆる熱硬化性化合物(例えば、少なくとも、100℃以上で硬化が開始する化合物)であることが好ましい。
また、本発明で用いるシリコン原子を含有する化合物は、耐熱性の高い化合物が好ましく、25℃から、20℃/分で昇温した10%熱質量減少温度が、250℃以上であることが好ましく、280℃以上がより好ましい。また、上限値は、特に限定はないが、例えば、1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましい。この態様によれば、耐熱性に優れた接着層を形成しやすい。なお、熱質量減少温度とは、熱重量測定装置(TGA)により、窒素気流下において、上記昇温条件で測定した値である。
【0030】
シリコン原子を含有する化合物は、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってよいが、オリゴマーまたはポリマーが好ましい。シリコン原子を含有する化合物の重量平均分子量は、1,000以上が好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000以上であってもよく、さらには、10,000以上であってもよい。重量平均分子量の上限値としては、500,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがさらに好ましい。
本発明で用いる、シリコン原子を含有する化合物は、シロキサン結合を有することが好ましく、下記式で表されるシロキサン結合を有する繰り返し単位を含有することがより好ましい。
【化1】
上記式において、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基である。シリコン原子を含有する化合物が、シロキサン結合を有する繰り返し単位を含有することにより、より耐熱性に優れた仮止め接着剤が得られる。
ここで、Rは、水素原子および炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基およびアリール基がより好ましく、水素原子および炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
また、本発明の仮止め接着剤に含まれるシリコン原子を含有する化合物は、その20質量%以上が上記シロキサン結合を有する繰り返し単位であることが好ましい。
本発明で用いるシリコン原子を含有する化合物は、上記シロキサン結合を有する繰り返し単位に加え、さらに、下記の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化2】
上記式において、R1は、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、Xは、アルキレン基またはアリーレン基である。
1は、水素原子および炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基およびアリール基がより好ましく、水素原子および炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
Xは、炭素数1〜3のアルキレン基またはフェニレン基が好ましい。
また、本発明の仮止め接着剤に含まれるシリコン原子を含有する化合物は、その80質量%以下が上記繰り返し単位であることが好ましい。
【0031】
本発明で用いるシリコン原子を含有する化合物の好ましい第一の実施形態としては、架橋性基を有する態様が例示される。架橋性基としては、加熱(例えば、150℃以上)に加熱することにより、架橋構造を形成する基をいい、具体的には、フェノール性水酸基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基およびアルコキシメチロール基が好ましい例として挙げられる。第一の本実施形態では、さらに、仮止め接着剤が、上記架橋性基を架橋させる架橋剤を含有することが好ましい。
【0032】
第一の実施形態で用いるシリコン原子を含有する化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーが好ましい。
一般式(1)
【化3】
上記一般式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、mは1〜100の整数であり、Bは、正の整数、Aは0または正の整数である。
Xは架橋性基を含む2価の有機基である。
【0033】
1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
mは、3〜80の整数であることが好ましく、8〜60の整数であることがより好ましく、10〜40の整数であることがさらに好ましい。
Bは、5〜100の整数が好ましい。Aは、0〜5の整数が好ましい。また、A/Bは、0〜20であることが好ましく、特に0.5〜5であることが好ましい。
Xが有する架橋性基としては、フェノール性水酸基、エポキシ基およびオキセタニル基が好ましく、フェノール性水酸基およびエポキシ基がより好ましい。
Xは、さらに好ましくは、下記一般式(2)または一般式(4)で表される2価の有機基である。
【0034】
一般式(2)
【化4】
上記一般式(2)中、Zは、2価の連結基であり、好ましくは
【化5】
のいずれか1つ、または、2つ以上の組み合わせからなる2価の有機基である。
nは0又は1であり、1が好ましい。
5およびR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または、炭素数1〜4のアルコキシ基である。
kは、それぞれ独立に、0、1、2のいずれかであり、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0035】
一般式(4)
【化6】
上記一般式(4)中、Vは2価の連結基であり、Vの好ましい範囲は、一般式(2)におけるZと同じである。
pは0又は1であり、1が好ましい。
7およびR8は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基または、炭素数1〜4のアルコキシ基である。
hは、それぞれ独立に、0、1、2のいずれかであり、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0036】
架橋剤としては、ホルマリンもしくはホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基またはアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選択されることが好ましく、1分子中に平均して2個以上のメチロール基またはアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選択されることがより好ましい。
【0037】
1分子中に平均して2個以上のヒドロキシフェニル基を有するフェノール化合物は、シリコン原子を含有する化合物が有する架橋性基がエポキシ基である場合に好ましく用いられる。1分子中に平均して2個以上のヒドロキシフェニル基を有するフェノール化合物は、1分子中に3〜5個のヒドロキシフェニル基を有する化合物が好ましく、クレゾールノボラック樹脂やα,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレンが例示される。市販品としては、例えば、旭有機材工業製のEP−6030G、本州化学製のTris−P−PA、旭有機材工業製のTEP−TPA等が挙げられる。
【0038】
1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物は、シリコン原子を含有する化合物が有する架橋性基がフェノール性水酸基である場合に好ましく用いられる。
1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物は、1分子中に2〜5個のエポキシ基を有する化合物が好ましく、市販品としては、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、XD−1000、NC−2000−L、EPPN−201、GAN、NC6000(以上、日本化薬製)が例示される。また、下記に示す構造の架橋剤も好ましく用いられる。
【化7】
【0039】
架橋剤の配合量は、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは1〜20質量部である。架橋剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態の仮止め接着剤には、触媒を配合することが好ましい。触媒としては、硬化触媒を用いることができ、酸無水物などが例示され、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン(和光純薬工業製、BSDM)、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化製、リカシッドHH−A)が好ましい。触媒の配合量は、配合する場合、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲で配合することができる。上記触媒は、1種のみ用いても良いし、2種以上用いてもよい。
【0041】
本発明で用いるシリコン原子を含有する化合物の好ましい第ニの実施形態としては、シリコン原子を含有する化合物が、Si−H構造を有する態様が例示される。ここで、Si−H構造とは、シリコン原子の4つの結合子のうちの少なくとも1つが水素原子と結合している構造をいう。シリコン原子の残りの結合子は、水素原子と結合していてもよいし、他の原子(例えば、酸素原子や炭素原子など)と結合していてもよい。
第ニの実施形態では、仮止め接着剤が、触媒を含み、かつ、上記Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物に加え、シリコン原子を含有する化合物であって、ビニル基を含有する化合物(すなわち、シリコン原子およびビニル基を含有する化合物)、および、他のビニル基を含有する化合物(すなわち、シリコン原子を含有せず、ビニル基を含有する化合物)の少なくとも1種を含むことが好ましい。第ニの実施形態では、仮止め接着剤が、少なくとも、Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物と、シリコン原子およびビニル基を含有する化合物を含むことが好ましい。さらに、Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物、ならびに、シリコン原子およびビニル基を含有する化合物は、それぞれ、シロキサン結合を有することが好ましい。
【0042】
まず、シリコン原子を含有する化合物が、Si−H構造を有する態様について説明する。シリコン原子を含有する化合物が、Si−Hを有する場合、シリコン原子を含有する化合物は、好ましくは、下記式で表されることが好ましい。
【化8】
上記式中、vは0〜1の範囲内であり、uは0〜2の範囲内であり、zは0〜1の範囲内であり、R1、R2、R3、R7、R8、R9、及びR10は、それぞれ独立に、有機基を表し、R9、R10、及びR11の少なくとも1つは、(u+v+z)の合計が0であるとき、水素原子である。pは、正の整数である。
上記式において、pは、好ましくは1〜100の整数であり、20〜80の整数であることがより好ましい。
Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物の例としては、Dow Corning Corp.製、F1−3546や6−3570が例示される。
Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物は、1種のみ用いても良いし、2種以上用いても良い。
【0043】
次に、ビニル基を含有する化合物について説明する。本発明で用いるビニル基を含有する化合物は、モノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、好ましくは、オリゴマーまたはポリマーであり、ビニル基を含有する化合物の重量平均分子量は、1,000以上が好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000以上であってもよく、さらには、10,000以上であってもよい。重量平均分子量の上限値としては、500,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがさらに好ましい。
ビニル基を含有する化合物は、シロキサン結合を有することが好ましく、下記式E1に従い、C1、C2及びC3の3つのシロキサン結合を含む繰り返し単位の少なくとも1つを含むことがより好ましい。
式E1
E(C1)m(C2)n(C3)o
上記式E1中、Eは、それぞれ独立に、エンドキャッピング基を表し、m、nおよびoは、それぞれ独立に、ビニル基を含有する化合物中の各繰り返し単位のモル比を表し、mは、0.025〜1.0の範囲、nは0.0〜0.95の範囲、oは0.0〜0.60の範囲である。Eおよび(C1)の少なくとも一方はビニル基を含む。
【0044】
上記式E1は、以下の式E2で表されることが好ましい。
式E2
【化9】
上記式E2中、R1、R2、R3、R4、R5、R15及びR16は、それぞれ独立に、有機基を表し、R2、R3、R4、R15、及びR16の少なくとも1つはビニル基を含む。R6は水素原子または1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、vは0〜1の範囲内であり、uは0〜2の範囲内であり、m、nおよびoは、それぞれ独立に、ビニル基を含有する化合物中の各繰り返し単位のモル比を表し、mは、0.025〜1.0の範囲、nは0.0〜0.95の範囲、oは0.0〜0.60の範囲である。
2、R3、R4、R15、及びR16の少なくとも1つはビニル基を含む脂肪族基またはアリール基であることが好ましい。脂肪族基は、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。また、アリール基は、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。ビニル基は、脂肪族基またはアリール基の水素原子に置換して、存在していることが好ましい。
このような化合物の例としては、Dow Corning Corp.製、SFD−119、SFD−120および6−3444が例示される。
第ニの実施形態において、ビニル基を含有する化合物の配合量は、Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対し、20〜500質量部であることが好ましく、40〜300質量部であることがより好ましい。
ビニル基を含有する化合物は、1種のみ用いても良いし、2種以上用いても良い。
【0045】
第ニの実施形態で用いられる触媒について説明する。第二の実施形態では、触媒は、シリコン原子を含有する化合物とビニル基を含有する化合物の熱硬化反応(特に、150℃以上の熱により硬化が進行する反応)を促進するために配合される。
触媒は、塩化白金酸触媒、脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と塩化白金酸または二塩化白金とを反応させて得られた白金含有触媒(例えば、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体)、白金アセチルアセトネート、およびヒドロシリル化反応において使用される任意の他の遷移金属触媒の群から選択される。
触媒の配合量は、触媒の種類等に応じて適宜定めることができる。触媒の配合量は、配合する場合、例えば、仮止め接着剤の質量に対し、0.01〜40質量%の割合で配合することができる。触媒は、1種のみ用いても良いし、2種以上用いてもよい。
【0046】
また、第ニの実施形態では、触媒反応の開始を遅らせるために触媒と相互作用することができる阻害剤を含んでいてもよい。阻害剤は、ジアリルマレアート、エチニルシクロヘキサノール、ビス−2−メトキシ−1−メチルエチルマレアートおよびN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンが例示される。阻害剤は、配合する場合、触媒の0.01〜40質量%の割合で配合することができる。阻害剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上用いてもよい。
【0047】
また、上記、第ニの実施形態で述べた、Si−H構造を有し、シリコン原子を含有する化合物として、低分子化合物を用いても良い。低分子化合物としては、以下の化合物が例示される。
【化10】
上記の他、本発明で用いられるシリコン原子を含有する化合物としては、特開2012−188650号公報の請求項1等に記載のエポキシ基含有高分子化合物、および特開2013−82801号公報の請求項1等に記載の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンも用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明の仮止め接着剤における、シリコン原子を含有する化合物の含有量は、溶剤を除いた仮止め接着剤の質量に対し、50.00〜99.99質量%が好ましく、70.00〜99.99質量%がより好ましく、88.00〜99.99質量%が特に好ましい。シリコン原子を含有する化合物の含有量が上記範囲であれば、より接着性および剥離性に優れる。
また、本発明の仮止め接着剤における、シリコン原子を含有する化合物は1種のみでもよいが、複数種類の組合せであってもよい。この場合、上記含有量は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
また、本発明の仮止め接着剤は、親油基およびフッ素原子を含有する化合物とシリコン原子を含有する化合物とを、質量比で、親油基およびフッ素原子を含有する化合物:シリコン原子を含有する化合物=0.001:99.999〜10:90.00が好ましく、0.001:99.999〜5:95.00がより好ましく、0.010:99.99〜5:95.00がさらに好ましい。
【0049】
<<溶剤>>
本発明の仮止め接着剤は、溶剤を含有することが好ましい。本発明の仮止め接着剤を塗布することにより接着層を形成にする場合においては、溶剤を配合することが好ましい。溶剤は、公知のものを制限なく使用でき、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、以下のものが好適に挙げられる:
酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキル(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチルおよび2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等のエステル類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエーテル類;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、N−メチル−2−ピロリドン、γブチロラクトン等のケトン類;
トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、(2,2−ジメチルプロピル)ベンゼン、1−フェニルへキサン、1−フェニルヘプタン、1−フェニルオクタン、1−フェニルノナン、1−フェニルデカン、シクロプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2−エチルトルエン、1,2−ジエチルベンゼン、o−シメン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、3−エチルトルエン、m−シメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−エチルトルエン、1,4−ジエチルベンゼン、p−シメン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、4−tert−ブチルトルエン、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、5−tert−ブチル−m−キシレン、3,5−ジ−tert−ブチルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、等の芳香族炭化水素類;
リモネン、p−メンタン、ノナン、デカン、ドデカン、デカリン等の炭化水素類。
【0050】
これらの溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。この場合、特に好ましくは、メシチレン、tert−ブチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、p−メンタン、γブチロラクトン、アニソール、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶剤である。
【0051】
仮止め接着剤が溶剤を有する場合、仮止め接着剤の溶剤の含有量は、塗布性の観点から、仮止め接着剤の全固形分濃度が5〜80質量%になる量が好ましく、5〜70質量%がさらに好ましく、10〜60質量%が特に好ましい。
溶剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。溶剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0052】
<<酸化防止剤>>
本発明の仮止め接着剤は、加熱時の酸化によるシリコン原子を含有する化合物の低分子化やゲル化を防止する観点から、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが使用できる。
フェノール系酸化防止剤としては例えば、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、BASF製「Irganox1010」、「Irganox1330」、「Irganox3114」、「Irganox1035」、住友化学製「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer GA−80」、アデカ製「AO−60」などが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては例えば、3,3’−チオジプロピオネートジステアリル、住友化学製「Sumilizer TPM」、「Sumilizer TPS」、「Sumilizer TP−D」などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスフィト、ジフェニルイソデシルホスフィト、2−エチルヘキシルジフェニルホスフィト、トリフェニルホスフィト、BASF製「Irgafos168」、「Irgafos38」などが挙げられる。
キノン系酸化防止剤としては例えば、p−ベンゾキノン、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノンなどが挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては例えば、ジメチルアニリンやフェノチアジンなどが挙げられる。
酸化防止剤は、IRGANOX1010、Irganox1330、3,3’−チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TP−Dが好ましく、Irganox1010、Irganox1330がより好ましく、Irganox1010が特に好ましい。
また、上記酸化防止剤のうち、フェノール系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤とを併用することが好ましく、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することが最も好ましい。フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用する場合、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤との質量比は、フェノール系酸化防止剤:硫黄系酸化防止剤=95:5〜5:95が好ましく、25:75〜75:25がより好ましい。
酸化防止剤の組み合わせとしては、Irganox1010とSumilizer TP−D、Irganox1330とSumilizer TP−D、および、Sumilizer GA−80とSumilizer TP−Dが好ましく、Irganox1010とSumilizer TP−D、Irganox1330とSumilizer TP−Dがより好ましく、Irganox1010とSumilizer TP−Dが特に好ましい。
【0053】
酸化防止剤の分子量は加熱中の昇華防止の観点から、400以上が好ましく、600以上がさらに好ましく、750以上が特に好ましい。
【0054】
仮止め接着剤における、酸化防止剤の含有量は、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対して、20.0質量部以下が好ましく、10.0質量部以下がより好ましく、さらには、0.5質量部未満とすることもでき、特には、0.4質量部以下とすることもできる。酸化防止剤の含有量の下限値としては、シリコン原子を含有する化合物100質量部に対して、0質量部であってもよく、0.001質量部以上とすることもでき、0.005質量部以上とすることもできる。本発明では、酸化防止剤の配合量を少なくしても、シリコン原子を含有する化合物の耐熱性を高くできるため、良好な仮止め接着剤が得られる。
酸化防止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。酸化防止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0055】
<<その他の成分>>
本発明における仮止め接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加物、例えば、可塑剤、硬化剤、上記以外の触媒、充填剤、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、エラストマーや他の高分子化合物等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その配合量は、それぞれ、仮止め接着剤の全固形分の3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。また、これらの添加剤の合計配合量は、仮止め接着剤の全固形分の10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明における仮止め接着剤は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。接着剤に含まれる不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、1質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下がさらに好ましく、10質量ppt以下がよりさらに好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
仮止め接着剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルタを用いた濾過を挙げることができる。フィルタ孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルタが好ましい。フィルタは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルタ濾過工程では、複数種類のフィルタを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルタを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルタを組み合わせて使用しても良い。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。
また、仮止め接着剤に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、仮止め接着剤を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、仮止め接着剤を構成する原料に対してフィルタ濾過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。仮止め接着剤を構成する原料に対して行うフィルタ濾過における好ましい条件は、上述した条件と同様である。
フィルタ濾過の他、吸着材を用いて不純物を除去しても良く、フィルタ濾過と吸着材による除去を組み合わせて使用しても良い。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0057】
<仮止め接着剤の調製>
本発明の仮止め接着剤は、上述の各成分を混合して調製することができる。各成分の混合は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、各成分を混合した後、例えば、フィルタでろ過することが好ましい。ろ過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、ろ過した液を再ろ過することもできる。
フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、例えば、0.003〜5.0μm程度が適している。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、組成物に含まれる不純物や凝集物など、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせても良い。その際、第一のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は1回目のフィルタリングの孔径に対して2回目以降の孔径が同じ、もしくは小さい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第一のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
【0058】
<仮止め接着剤の用途>
本発明の仮止め接着剤は、接着性および剥離性に優れた接着層を形成することができる。このため、例えば、デバイスウェハに対し、機械的または化学的な処理を施す際に、デバイスウェハと支持体とを安定して仮接着できるとともに、デバイスウェハに対する仮接着を容易に解除でき、半導体装置製造用の仮止め接着剤として好適に用いることができる。
【0059】
<接着フィルム>
次に、本発明の接着フィルムについて説明する。
本発明の接着フィルムは、上述した親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層からなる。すなわち、接着層単層の場合を、接着フィルムと称する。接着フィルムは、上述した本発明の仮止め接着剤を用いて形成することができる。
本発明の接着フィルムは、表層に親油基およびフッ素原子を含有する化合物が偏在している。このため、剥離性に優れる。また、接着フィルムはシリコン原子を含有する化合物を含むので、支持体や基材の微細な凹凸にも追従し適度なアンカー効果により、優れた接着性が得られる。このため、接着性と剥離性を両立できる。
本発明の接着フィルムは、親油基およびフッ素原子を含有する化合物の濃度が、接着フィルムのいずれか一方の表面から、接着フィルムの厚みの5%の範囲における領域と、厚み方向に5%を超えて50%の範囲における領域とで異なることが好ましい。
接着フィルムにおける親油基およびフッ素原子を含有する化合物の濃度は、例えば、エッチングを行いながらX線光電子分光(ESCA)測定を行う方法や、斜め切削と飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)測定を組み合わせる方法で測定できる。
【0060】
本発明の接着フィルムは、溶剤含有率が、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、溶剤を含有しないことが特に好ましい。なお、接着フィルムの溶剤含有率は、ガスクロマトグラフィー法で測定できる。
【0061】
本発明の接着フィルムにおいて、接着層の平均厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜500μmが好ましく、0.1〜200μmがより好ましく、10〜200μmが更に好ましく、50〜200μmが特に好ましい。接着層の平均厚みが上記範囲であれば、平坦性に優れた接着フィルムとし易い。本発明において、接着層の平均厚みは、エリプソメトリーにより5点測定した点の平均値と定義する。
【0062】
本発明における接着フィルムの、250℃でのJIS(日本工業規格) K 7244−6:1999に従った、せん断モードで測定した貯蔵弾性率G’(以下単に、「貯蔵弾性率G'」ということがある)が、200,000〜1,000,000Paであることが好ましく、300,000〜1,000,000Paであることがより好ましく、500,000〜800,000Paであることがさらに好ましい。このような貯蔵弾性率は、上記シリコン原子を含有する化合物の種類を選択することによって好ましく調整される。ここで、貯蔵弾性率G’は、後述する実施例で述べる方法に従った値をいう。また、実施例で用いる測定機器等が廃版等の理由により入手不可能な場合は、同等の性能を有する他の機器を用いて測定した値とする。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
ここで、接着フィルムが250℃であるとは、接着フィルムを昇温速度5℃/分で加熱したときの、加熱炉内の温度が250℃であることを意味する。
【0063】
本発明の接着フィルムは、その片面または両面に、離型フィルムを貼合して「離型フィルム付き接着フィルム」としてもよい、この態様によれば、長尺状の接着フィルムをロール状に巻き取る際に、接着層の表面に傷がついたり、保管中に貼りついたりするトラブルを防止することができる。
離型フィルムは、使用する際に剥離除去することができる。例えば、両面に離型フィルムが貼合されている場合においては、片面の離型フィルムを剥がし、接着面を基材や支持体などにラミネートした後で、残った離型フィルムを剥がすことで、シート面の清浄をできるだけ保つことができる。
【0064】
<接着フィルムの製造方法>
本発明の接着フィルムは、従来公知の方法により製造できる。例えば、溶融製膜法、溶液製膜法などにより製造できる。
溶融製膜法は、原料組成物を過熱して溶融することで流動性を実現し、この融液を押出成型装置や射出成型装置を使用してシート状にし、冷却することでフィルム(シート)を得る方法である。
押出成型法では、ロール状の長尺フィルムを得ることができる。射出成型法では長尺フィルムを得ることは難しいが高い膜厚精度が得られる。他の添加剤も混合溶融撹拌することで添加することができる。このフィルムの片面または両面に離型フィルムを貼合して、「離型フィルム付き接着フィルム」としても良い。
溶液製膜法は、原料組成物を溶剤で溶解することで流動性を実現し、この溶液をフィルムやドラムやバンドなどの支持体に塗工してシート状にし、乾燥することでフィルム(シート)を得る方法である。塗工するには、スリット状の開口から溶液を圧力で押し出して塗工する方法、グラビアやアロニクスローラーで溶液を転写して塗工する方法、スプレーやディスペンサーから溶液を吐出しながら走査して塗工する方法、溶液をタンクに溜めてその中にフィルムやドラムやバンドを通過させることでディップ塗工する方法、ワイヤバーで溶液を押流ししながらかきとって塗工する方法などが挙げられる。他の添加剤も、溶解して混合撹拌した溶液を使うことで添加することができる。支持体に溶液を塗工した後に、乾燥して固体化したシートになった後、シートを支持体から機械的に引き剥がすことにより、単体のフィルム(シート)を得ることができる。引き剥がしやすいように、予め支持体上に離型性を付与する処理として、離型層の塗布、浸漬処理、ガス処理、電磁波照射処理、プラズマ照射処理などを行っても良い。あるいは、フィルムを支持体から引き剥がさずにそのまま残して、フィルム支持体上にシートが接着した状態のまま、「離型フィルム付き接着フィルム」としても良い。これらの処理を連続的に行うことで、ロール状の長尺フィルムを得ることができる。また、接着フィルムの両面に、離型フィルムを貼合して、「両面離型フィルム付きシート」としても良い。
【0065】
<接着性支持体>
次に、本発明の接着性支持体について説明する。
本発明の接着性支持体は、支持体と、上述した親油基およびフッ素原子を含有する化合物およびシリコン原子を含有する化合物を含む接着層とを有する。この接着層は、上述した本発明の仮止め接着剤を用いて形成することができる。
接着層の平均厚みは、用途により異なるが、例えば、0.1〜500μmが好ましい。
接着層は、支持体表面に、本発明の仮止め接着剤を、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、フローコート法、ドクターコート法、浸漬法などを用いて塗布し、乾燥(ベーク)することにより形成することができる。乾燥条件は、例えば、60〜220℃で、10〜600秒が好ましい。乾燥温度は、80〜200℃がより好ましい。乾燥時間は、30〜500秒がより好ましく、40〜400秒が更に好ましい。
乾燥は、二段階に分けて段階的に温度を上げて実施してもよい。例えば、90〜130℃で、30秒〜250秒加熱した後、170〜220℃で、30秒〜250秒加熱することが挙げられる。
接着層の平均厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜100μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
また、接着層は、支持体上に、上述した本発明の接着フィルムをラミネートして形成することもできる。接着フィルムを使用して接着層を形成することで、溶剤への溶解性の悪いシリコン原子を含有する化合物などの材料を用いても接着層を形成できるため、耐熱性や耐薬品性に優れた接着層を形成しやすい。また、10μm以上の厚膜の接着層を厚みムラなく平坦に作製することができる。この場合の接着層の平均厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜200μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。
接着フィルムを用いて支持体上に接着層を形成するには、例えば、接着フィルムを真空ラミネーターにセットし、本装置にて接着フィルムを支持体上に配置させ、真空下で、接着フィルムと支持体とを接触させ、ローラなどで圧着して接着フィルムを支持体に固定(積層)する方法などが挙げられる。また、支持体に固定された接着フィルム(接着層)は、例えば円形状など、所望の形状にカットしてもよい。
【0066】
本発明の接着性支持体の接着層において、親油基およびフッ素原子を含有する化合物の濃度が、支持体の反対側の表面から接着層の厚み方向に5%の範囲における領域が、支持体の反対側の表面から接着層の厚み方向に5%を超えて50%の範囲における領域よりも高くされていることが好ましい。この態様によれば、接着性支持体をデバイスウェハ等の基材に仮接着したのち、デバイスウェハから剥離する際において、剥離性が向上する。
更には、基材やデバイスウェハ等の表面から接着層を機械剥離等の方法で容易に除去することができる。
親油基およびフッ素原子を含有する化合物の濃度は、支持体の反対側の表面から接着層の厚み方向に5%の範囲における領域が、支持体の反対側の表面から接着層の厚み方向に5%を超えて50%の範囲における領域より10質量%以上多いことが好ましく、30質量%以上多いことがより好ましい。
【0067】
本発明の接着性支持体において、支持体(キャリア支持体ともいう)は特に限定されないが、例えば、シリコン基板、ガラス基板、金属基板、化合物半導体基板などが挙げられる。なかでも、半導体装置の基板として代表的に用いられるシリコン基板を汚染しにくい点や、半導体装置の製造工程において汎用されている静電チャックを使用できる点などを鑑みると、シリコン基板であることが好ましい。また、デバイスウェハの表面に接着層を直接に設けた場合は、基材の裏面や基材の外周部などに付着している余分な仮止め接着剤を洗浄する工程を含んでいることが好ましい。この際の洗浄は、溶剤を用いた洗浄が好ましく、このような溶剤としては、仮止め接着剤の組成との関係で適宜定められ、一例として、メシチレンが挙げられる。
支持体の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、300μm〜100mmが好ましく、300μm〜10mmがより好ましい。
支持体の表面には、離型層を有するものであってもよい。すなわち、支持体は、シリコン基板等の基板の表面に離型層を有する離型層付支持体であってもよい。
離型層としては、フッ素原子および/またはケイ素原子を含む低表面エネルギー層が好ましく、フッ素原子および/またはケイ素原子を含む材料を有することが好ましい。離型層のフッ素含有率は、30〜80質量%が好ましく、40〜76質量%がより好ましく、60〜75質量%が特に好ましい。
離型層の材料としては、上述した接着フィルムの表層に形成されていてもよい離型層と同様のものを用いることができる。
【0068】
<積層体>
次に、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、基材と支持体との間に、上述した親油基およびフッ素原子を含有する化合物と、シリコン原子を含有する化合物とを含む接着層を有するものであり、接着層が基材および支持体に接しているものが好ましい。この接着層は、上述した本発明の仮止め接着剤を用いて形成することができる。
本発明の積層体において、接着層は単層であってもよいし、多層であってもよいが、好ましくは単層である。
【0069】
基材は、デバイスウェハが好ましく用いられる。デバイスウェハは、公知のものを制限なく使用することができ、例えば、シリコン基板、化合物半導体基板などが挙げられる。化合物半導体基板の具体例としては、SiC基板、SiGe基板、ZnS基板、ZnSe基板、GaAs基板、InP基板、GaN基板などが挙げられる。
デバイスウェハの表面には、機械構造や回路が形成されていてもよい。機械構造や回路が形成されたデバイスウェハとしては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、パワーデバイス、イメージセンサー、マイクロセンサー、発光ダイオード(LED)、光学デバイス、インターポーザー、埋め込み型デバイス、マイクロデバイスなどが挙げられる。
デバイスウェハは、金属バンプ等の構造を有していることが好ましい。本発明によれば、表面に構造を有しているデバイスウェハに対しても、安定して仮接着できるとともに、デバイスウェハに対する仮接着を容易に解除できる。構造の高さは、特に限定はないが、例えば、1〜150μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
機械的または化学的な処理を施す前のデバイスウェハの膜厚は、500μm以上が好ましく、600μm以上がより好ましく、700μm以上が更に好ましい。上限は、例えば、2000μm以下が好ましく、1500μm以下がより好ましい。
機械的または化学的な処理を施して薄膜化した後のデバイスウェハの膜厚は、例えば、500μm未満が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下が更に好ましい。下限は、例えば、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。
【0070】
本発明の積層体において、支持体(キャリア支持体)としては、上述した接着性支持体で説明した支持体と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
本発明の積層体において、支持体と接着層との密着強度Aと、接着層と基材との密着強度Bは、以下の式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。
A<B ・・・・式(1)
B≦4N/cm ・・・・式(2)
密着強度Aおよび密着強度Bが上記式(1)の関係を満たすことにより、基材から支持体を剥離する際に、支持体と接着層との界面から剥離することができる。
そして、密着強度Bが上記式(2)の関係を満たすことにより、接着層をフィルム状のまま基材表面から容易に剥離することができる。すなわち、接着層を機械的剥離により簡単に剥離することができる。
上記密着強度Bは3N/cm以下が好ましく、2N/cm以下がより好ましい。
なお、本発明における密着強度は、90℃方向に引き上げた時にかかる強度を測定した値である。密着強度Aは基材を固定し、支持体の端部を90°方向に、50mm/分の速度で引き上げた時に掛かる力を表す。密着強度Bは、基材を固定し、フィルム状の接着層を90°方向に50mm/分の速度で引き上げた時に掛かる力を表す。
【0072】
本発明の積層体は、基材から支持体を剥離する際に、接着層が基材と接着層との界面から剥離されて、基材の接着層との剥離面の面積の50%以上の範囲において、上記親油基およびフッ素原子を含有する化合物の残渣が付着しているか、あるいは、接着層が支持体と接着層との界面から剥離されて、支持体の接着層の剥離面の面積の50%以上の範囲において、上記親油基およびフッ素原子を含有する化合物の残渣が付着していることが好ましい。また、シリコン原子を含有する化合物由来の残渣は、上記剥離面の面積の50%以上の範囲において付着していないことが好ましく、99%以上の範囲において付着していないことがより好ましい。
親油基およびフッ素原子を含有する化合物の残渣、および、シリコン原子を含有する化合物由来の残渣は、目視、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、X線光電子分光などで観測できるが、本発明では、剥離面をX線光電子分光により測定したものとする。
なお、本明細書において、「親油基およびフッ素原子を含有する化合物の残渣」は、接着層の親油基およびフッ素原子を含有する化合物成分であり、「シリコン原子を含有する化合物由来の残渣」とは、接着層のシリコン原子を含有する化合物成分を意味する。
【0073】
本発明の積層体は、上述した本発明の接着性支持体の、接着層が形成された側の面と、基材とを加熱圧着することにより製造できる。加圧接着条件は、例えば、温度100〜200℃、圧力0.01〜1MPa、時間1〜15分が好ましい。
また、基材表面に、本発明の仮止め接着剤を塗布し、加熱(ベーク)して接着層を形成した後、接着層の表面に支持体を配置し、加熱圧着して製造することもできる。
また、基材上に接着層A、支持体上に接着層Bをそれぞれ設け、接着層Aと接着層Bとを接着させてもよい。この場合、接着層Aと接着層Bとは同じであっても異なっていてもよい。異なっている場合、シリコン原子を含有する化合物の種類を変えたり、あるいは親油基およびフッ素原子を含有する化合物の種類や添加量を変えることで、剥離選択性(基材界面と支持体界面の剥離選択性)や剥離力を適宜調整することができる。
また、支持体と基材との間に、上述した本発明の接着シートを配置し、加熱圧着して製造することもできる。
【0074】
<半導体装置の製造方法>
<<第一の実施形態>>
以下、積層体を製造する工程を経る半導体装置の製造方法の一実施形態について、図1を合わせて参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1(A)〜(E)は、それぞれ、支持体とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(図1(A)、(B))、支持体に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(図1(C))、支持体とデバイスウェハを剥離した状態(図1(D))、デバイスウェハから接着層を除去した後の状態(図1(E))を示す概略断面図である。
【0075】
この実施形態では、図1(A)に示すように、先ず、支持体12に接着層11が設けられてなる接着性支持体100が準備される。
接着層11は、実質的に溶剤を含まない態様であることが好ましい。
デバイスウェハ60(基材)は、シリコン基板61の表面61aに複数のデバイスチップ62が設けられてなる。
シリコン基板61の厚さは、例えば、200〜1200μmが好ましい。デバイスチップ62は例えば金属構造体であることが好ましく、高さは10〜100μmが好ましい。
【0076】
次いで、図1(B)に示す通り、接着性支持体100とデバイスウェハ60とを圧着させ、支持体12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。
接着層11は、デバイスチップ62を完全に覆っていることが好ましく、デバイスチップの高さがXμm、接着層の厚みをYμmとした場合、「X+100≧Y>X」の関係を満たすことが好ましい。
【0077】
接着層11がデバイスチップ62を完全に被覆していることは、薄型デバイスウェハのTTV(Total Thickness Variation)をより低下したい場合(すなわち、薄型デバイスウェハの平坦性をより向上させたい場合)に有効である。
すなわち、デバイスウェハを薄型化する際において、複数のデバイスチップ62を接着層11によって保護することにより、支持体12との接触面において、凹凸形状をほとんど無くすことが可能である。よって、このように支持した状態で薄型化しても、複数のデバイスチップ62に由来する形状が、薄型デバイスウェハの裏面61b1に転写されるおそれは低減され、その結果、最終的に得られる薄型デバイスウェハのTTVをより低下することができる。
【0078】
次いで、図1(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理(特に限定されないが、例えば、グラインディングや化学機械研磨(CMP)等の薄膜化処理、化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD)などの高温・真空下での処理、有機溶剤、酸性処理液や塩基性処理液などの薬品を用いた処理、めっき処理、活性光線の照射、加熱・冷却処理など)を施して、シリコン基板61の厚さを薄くし(例えば、平均厚さ500μm未満であることが好ましく、1〜200μmであることがより好ましい)、薄型デバイスウェハ60aを得る。
また、機械的または化学的な処理として、薄膜化処理の後に、薄型デバイスウェハ60aの裏面61b1からシリコン基板を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔内にシリコン貫通電極(図示せず)を形成する処理を行ってもよい。
また、機械的または化学的な処理において、加熱処理における最高到達温度は130℃〜400℃が好ましく、180℃〜350℃がより好ましい。加熱処理における最高到達温度は接着層の分解温度よりも低い温度とすることが好ましい。加熱処理は、最高到達温度での30秒〜30分の加熱であることが好ましく、最高到達温度での1分〜10分の加熱であることがより好ましい。
【0079】
次いで、図1(D)に示すように、支持体12を、薄型デバイスウェハ60aから除去(通常は、剥離)させる。剥離の際の温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下とすることもできる。剥離の際の温度の下限値としては、例えば、0℃以上であり、好ましくは、10℃以上である。本発明の剥離は、15〜35℃程度の常温で行える点で価値が高い。
剥離の方法は特に限定されるものではないが、薄型化デバイスウェハ60aを固定し、支持体12の端部から薄型化デバイスウェハ60aに対して垂直方向に引き上げて剥離することが好ましい。このとき、剥離界面は、支持体12と接着層11の界面で剥離されることが好ましい。剥離の際の引き上げ速度は、30〜70mm/分の速さであることが好ましく、40〜60mm/分の速さであることがより好ましい。この場合、支持体12と接着層11の界面の密着強度A、デバイスウェハ表面61aと接着層11の密着強度Bは、以下の式を満たすことが好ましい。
A<B ・・・・式(1)
また、剥離の際の端部を引き上げる際の力は、100N以下とすることができ、80N以下とすることもできる。下限値としては、好ましくは20N以上である。この際の力は、ロードセルを用いて測定することができる。
【0080】
そして、図1(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから接着層11を除去することにより、薄型化デバイスウェハを得ることができる。
接着層11の除去方法は、例えば、接着層をそのままの状態で剥離除去する方法、接着層を、剥離液を用いて除去する方法(接着層を剥離液で膨潤させた後に剥離除去する方法、接着層に剥離液を噴射して破壊除去する方法、接着層を剥離液に溶解させて溶解除去する方法)、接着層を活性光線、放射線または熱の照射により分解、気化して除去する方法などが挙げられる。
接着層をそのままの状態で剥離除去する方法とは、剥離液を用いる等の化学的処理を行うことなくそのままの状態で剥離することをいい、本発明では、接着層をフィルム状のまま剥離除去する方法がより好ましい。接着層をそのままの状態で剥離する場合、機械剥離が好ましい。接着層をフィルム状のまま除去するためには、デバイスウェハ表面61aと接着層11の密着強度Bが以下の式(2)を満たすことが好ましい。
B≦4N/cm ・・・・式(2)
接着層を、剥離液を用いて除去する場合、以下の剥離液を好ましく用いることができる。
【0081】
<剥離液>
以下、剥離液について詳細に説明する。
剥離液としては、水および、溶剤(有機溶剤)を使用することができる。
また、剥離液としては、接着層11を溶解する有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)、リモネン、p−メンタン、ノナン、デカン、ドデカン、デカリン、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、(2,2−ジメチルプロピル)ベンゼン、1−フェニルへキサン、1−フェニルヘプタン、1−フェニルオクタン、1−フェニルノナン、1−フェニルデカン、シクロプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2−エチルトルエン、1,2−ジエチルベンゼン、o−シメン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、3−エチルトルエン、m−シメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−エチルトルエン、1,4−ジエチルベンゼン、p−シメン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、4−tert−ブチルトルエン、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、4−tert−ブチル−o−キシレン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、5−tert−ブチル−m−キシレン、3,5−ジ−tert−ブチルトルエン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)、極性溶剤が挙げられる。極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。
【0082】
さらに、剥離性の観点から、剥離液は、アルカリ、酸、および界面活性剤を含んでいても良い。これらの成分を配合する場合、配合量は、それぞれ、剥離液の0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
さらに剥離性の観点から、2種以上の有機溶剤および水、2種以上のアルカリ、酸および界面活性剤を混合する形態も好ましい。
【0083】
アルカリとしては、例えば、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第二リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ剤や、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤を使用することができる。これらのアルカリ剤は、単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
酸としては、ハロゲン化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸を使用することができる。
【0085】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性イオン系の界面活性剤を使用することができる。この場合、界面活性剤の含有量は、アルカリ水溶液の全量に対して1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
界面活性剤の含有量を上記した範囲内とすることにより、接着層11と薄型デバイスウエハ60aとの剥離性をより向上できる傾向となる。
【0086】
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。この中で、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0087】
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0088】
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中で、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換または無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物またはアルキル置換または無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0089】
両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。具体的には、特開2008−203359号公報の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号公報の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号公報の段落番号〔0022〕〜〔0029〕で示される化合物を用いることができる。
【0090】
さらに必要に応じ、消泡剤および硬水軟化剤のような添加剤を含有することもできる。
支持体12を薄型デバイスウェハ60aから剥離した後、必要に応じて、薄型デバイスウェハ60aに対して、種々の公知の処理を施し、薄型デバイスウェハ60aを有する半導体装置を製造する。
【0091】
また、支持体に接着層が付着している場合は、接着層を除去することにより、支持体を再生することができる。接着層を除去する方法としては、フィルム状のままと、ブラシ、超音波、氷粒子、エアロゾルの吹付けにより物理的に除去する方法、水溶液または有機溶剤に溶解させて溶解除去する方法、活性光線、放射線、熱の照射により分解、気化させる方法などの化学的に除去する方法が挙げられるが、支持体に応じて、従来既知の洗浄方法を利用することができる。
例えば、支持体としてシリコン基板を使用した場合、従来既知の洗浄方法を使用することができ、例えば化学的に除去する場合に使用できる水溶液または有機溶剤としては、強酸、強塩基、強酸化剤、またはそれらの混合物が挙げられ、具体的には、硫酸、塩酸、フッ酸、硝酸、有機酸などの酸類、テトラメチルアンモニウム、アンモニア、有機塩基などの塩基類、過酸化水素などの酸化剤、またはアンモニアと過酸化水素の混合物、塩酸と過酸化水素水の混合物、硫酸と過酸化水素水の混合物、フッ酸と過酸化水素水の混合物、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合物などが挙げられる。
【0092】
再生した支持体を使った場合の接着性の観点から、支持体洗浄液を用いることが好ましい。
支持体洗浄液は、pKaが0未満の酸(強酸)と過酸化水素を含んでいることが好ましい。pKaが0未満の酸としては、ヨウ化水素、過塩素酸、臭化水素、塩化水素、硝酸、硫酸などの無機酸、又はアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸などの有機酸から選択される。支持体上の接着層の洗浄性の観点から無機酸であることが好ましく、硫酸が最も好ましい。
【0093】
過酸化水素としては、30質量%過酸化水素水が好ましく使用でき、上記強酸と30質量%過酸化水素水との混合比は、質量比で0.1:1〜100:1が好ましく、1:1〜10:1がより好ましく、3:1〜5:1が最も好ましい。
【0094】
<<第二の実施形態>>
積層体を製造する工程を経る半導体の製造方法の第二の実施形態について、図2を合わせて参照しながら説明する。上述した第一の実施形態と同一箇所は、同一符号を付してその説明を省略する。
図2(A)〜(E)は、それぞれ、支持体とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(図2(A)、(B))、支持体に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(図2(C))、支持体とデバイスウェハを剥離した状態(図2(D))、デバイスウェハから接着層を除去した後の状態(図2(E))を示す概略断面図である。
この実施形態では、図2(A)に示すように、デバイスウェハの表面61a上に接着層を形成する点が上記第一の実施形態と相違する。
デバイスウェハ60の表面61a上に、接着層11aを設ける場合は、デバイスウェハ60の表面61aの表面に仮止め接着剤を適用(好ましくは塗布)し、次いで、乾燥(ベーク)することにより形成することができる。乾燥は、例えば、60〜150℃で、10秒〜2分行うことができる。
次いで、図2(B)に示す通り、支持体12とデバイスウェハ60とを圧着させ、支持体12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。次いで、図2(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理を施して、図2(C)に示すように、シリコン基板61の厚さを薄くし、薄型デバイスウェハ60aを得る。次いで、図2(D)に示すように、支持体12を、薄型デバイスウェハ60aから剥離させる。そして、図2(E)に示すように、薄型デバイスウェハ60aから接着層11を除去する。
【0095】
<<従来の実施形態>>
次いで、従来の実施形態について説明する。
図3は、従来の接着性支持体とデバイスウェハとの仮接着状態の解除を説明する概略断面図である。
従来の実施形態においては、図3に示すように、接着性支持体として、支持体12の上に、従来の仮止め用接着剤により形成された接着層11aが設けられてなる接着性支持体100aを使用し、それ以外は、図1を参照して説明した手順と同様に、接着性支持体100aとデバイスウェハとを仮接着し、デバイスウェハにおけるシリコン基板の薄膜化処理を行い、次いで、上記した手順と同様に、接着性支持体100aから薄型デバイスウェハ60aを剥離する。
【0096】
しかしながら、従来の仮止め用接着剤によれば、高い接着力によりデバイスウェハを仮支持し、デバイスウェハに損傷を与えることなく、デバイスウェハに対する仮支持を容易に解除することが困難である。例えば、デバイスウェハと支持体との仮接着を充分にしようとするべく、従来の仮止め用接着剤の内、接着性の高いものを採用すると、デバイスウェハと支持体との仮接着が強すぎる傾向となる。よって、この強すぎる仮接着を解除するべく、例えば、図3に示すように、薄型デバイスウェハ60aの裏面にテープ(例えば、ダイシングテープ)70を貼り付け、接着性支持体100aから薄型デバイスウェハ60aを剥離する場合においては、構造体63が設けられたデバイスチップ62から、構造体63が剥離するなどして、デバイスチップ62を破損する不具合が生じやすい。
一方、従来の仮止め用接着剤の内、接着性が低いものを採用すると、デバイスウェハに対する仮支持を容易に解除することはできるが、そもそもデバイスウェハと支持体との仮接着が弱すぎ、デバイスウェハを支持体で確実に支持できないという不具合が生じやすい。
【0097】
これに対し、本発明の積層体は、充分な接着性を発現するとともに、デバイスウェハ60と支持体12との仮接着を容易に解除できる。すなわち、本発明の積層体によれば、高い接着力によりデバイスウェハ60を仮接着できるとともに、薄型デバイスウェハ60aに損傷を与えることなく、薄型デバイスウェハ60aに対する仮接着を容易に解除できる。
【0098】
本発明の半導体装置の製造方法は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハとして、シリコン基板を挙げたが、これに限定されるものではなく、半導体装置の製造方法において、機械的または化学的な処理に供され得るいずれの被処理部材であっても良い。例えば、化合物半導体基板を挙げることもでき、化合物半導体基板の具体例としては、SiC基板、SiGe基板、ZnS基板、ZnSe基板、GaAs基板、InP基板、および、GaN基板などが挙げられる。
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハ(シリコン基板)に対する機械的または化学的な処理として、デバイスウェハの薄膜化処理、および、シリコン貫通電極の形成処理を挙げたが、これらに限定されるものではなく、半導体装置の製造方法において必要ないずれの処理も挙げられる。
その他、上述した実施形態において例示した、デバイスウェハにおけるデバイスチップの形状、寸法、数、配置箇所等は任意であり、限定されない。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0100】
後述する表に示す仮止め接着剤を調製した。このとき、(C−1)を用いたときはシクロヘキサノンを用いて固形分濃度が40質量%になるように、(C−2)を用いたときはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて固形分濃度が40質量%になるように、(C−3)〜(C−5)を用いたときは後述する方法で調製した(C−3)〜(C−5)を、固形分濃度を調整することなく使用した。
第一のシリコンウェハ上にスピンコーター(MS−A300、ミカサ製)により50rpmで回転させながら、30秒間の間に接着剤を15mL滴下した。ホットプレートを用いて、110℃で3分加熱し、さらに、190℃で3分加熱することで、第一のシリコンウェハの表面に接着層を形成した。
得られた接着層付シリコンウェハと第二のシリコンウェハを、ウェハボンダー(EVG 520IS、EVG製)にて、真空下150℃で、0.11MPaの圧力で、3分間圧着し、さらに窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱し、サンプル1を作製した。このとき、第ニのシリコンウェハの表面が、接着層側と接するように配した。得られたサンプル1を、超音波顕微鏡(SAM)(日立パワーソリューションズ製、FS200III)にて、周波数140MHzで観察し、ボイドの有無を目視で確認し、以下の基準に従って、接着性を評価した。
つづいて、サンプル1を第ニのシリコンウェハが、57μmの厚さになるまでバックグラインダーDFG8540(ディスコ製)を用いて研磨し、サンプル2を得た。サンプル2を250℃で30分間加熱し、サンプル3を作製した。サンプル3の反りを以下の方法によって、測定した。また、サンプル3の、第ニのシリコンウェハを固定し、25℃の温度で、第一のシリコンウェハの端部を、接着層との界面から、50mm/分の速さで、第ニのシリコンウェハの基板面に対し垂直な方向に、第一のシリコンウェハの端部を、引き上げることによって、剥離した。このときの剥離力を、後述する剥離性の評価方法に従って、測定した。さらに、剥離後の接着層の面状を目視で確認し、以下の通り評価した。
第一のシリコンウェハおよび第ニのシリコンウェハは、いずれも、4インチの(1インチは2.54cmである)のものを用いた。
【0101】
<仮止め接着剤の組成>
<<シリコン原子を含有する化合物を含む溶液>>
<<<溶液(C−1)>>>
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に9,9'−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(M−1)43.1g、平均構造式(M−3)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン29.5g、トルエン135g、塩化白金酸0.04gを仕込み、80℃に昇温した。その後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(M−5)17.5gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。このとき、フラスコ内温度は、85℃まで上昇した。滴下終了後、さらに80℃で2時間熟成した後、トルエンを留去すると共に、シクロヘキサノンを80g添加して、固形分濃度50質量%の溶液を得た。この溶液の高分子成分の重量平均分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量45,000であった。更に、この溶液50gに、架橋剤としてエポキシ基を有する化合物であるEOCN−1020(日本化薬製)を7.5g、触媒としてビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン(和光純薬工業製、BSDM)を0.2g、さらに、酸化防止剤としてAO−60(アデカ製)0.1gを添加し、孔径0.2μmのフィルタで濾過して、溶液(C−1)を得た。
【0102】
<<<溶液(C−2)>>>
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内にエポキシ化合物(M−2)84.1gをトルエン600gに溶解後、化合物(M−3)294.6gおよび化合物(M−4)25.5gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)1gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、90℃まで加温し、3時間熟成した。次いで室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)600gを加え、本反応溶液をフィルタにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。この溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、PGMEAを添加して、固形分濃度60質量%の溶液を得た。この溶液の高分子成分の重量平均分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量28,000であった。さらにこの溶液100gにα,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン(旭有機材工業製、TEP−TPA)を9g、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化製、リカシッドHH−A)0.2gを添加して、孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過して、溶液(C−2)を得た。
【0103】
【化11】
【0104】
<<<溶液(C−3)>>>
室温で1時間、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンに、87mgの白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体と混合して、合計244mgの溶液を得た。得られた溶液中の、白金は22mgであった。次いで、130.35mgのポリメチル水素シロキサン−co−ポリジメチルシロキサン共重合体(Dow Corning Corp.製、F1−3546)および79.8gのポリメチル水素シロキサン−co−ポリジメチルシロキサン共重合体(Dow Corning Corp.製、6−3570)を上記溶液に加えた。この混合液Aを室温で24時間攪拌した。
上記混合液A16.30gに、末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンオリゴマー(Dow Corning Corp.製、SFD−119)とビニル基を有するシリカ(Dow Corning Corp.製、6−3444)との混合物100gを攪拌しながら徐々に加えた。その混合液を2時間攪拌して、溶液(C−3)を得た。
【0105】
<<<溶液(C−4)>>>
上記溶液(C−3)で調製した混合液Aに、100gの末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンオリゴマー(Dow Corning Corp.製、SFD−120)を攪拌しながら徐々に加えた。その混合液を室温で2時間攪拌して、溶液(C−4)を得た。
【0106】
<<<溶液(C−5)>>>
上記溶液(C−3)で調製した混合液Aに、100gの下記化合物(東京化成製)を攪拌しながら徐々に加えた。その混合液を室温で2時間攪拌して、溶液(C−5)を得た。
【化12】
【0107】
<<フッ素原子を含有する化合物>>
(a−1):メガファックF−553(フッ素基・親水基・親油基含有オリゴマー、液体状化合物(25℃での粘度が1〜100,000mPa・sの範囲)、10%熱質量減少温度=247℃、Mw=0.2万以上2.0万未満、DIC製)
(a−2):メガファックF−554(フッ素基・親油基含有オリゴマー、液体状化合物(25℃での粘度が1〜100,000mPa・sの範囲)、10%熱質量減少温度=267℃、Mw=0.2万以上2.0万未満、DIC製)
(a−3):メガファックF−556(フッ素基・親水基・親油基含有オリゴマー、液体状化合物(25℃での粘度が1〜100,000mPa・sの範囲)、10%熱質量減少温度=277℃、Mw=0.2万以上2.0万未満、DIC製)
(a−4):メガファックF−557(フッ素基・親水基・親油基含有オリゴマー、液体状化合物(25℃での粘度が1〜100,000mPa・sの範囲)、10%熱質量減少温度=299℃、Mw=0.2万以上2.0万未満、DIC製)
(a−5):メガファックF−559(フッ素基・親水基・親油基含有オリゴマー、液体状化合物(25℃での粘度が1〜100,000mPa・sの範囲)、10%熱質量減少温度=286℃、Mw=2.0万以上5.0万未満、DIC製)
(a−6):フタージェント710FL(フッ素基・親水基・親油基含有オリゴマー、液体状化合物(25℃での粘度が1〜100,000mPa・sの範囲)、ネオス製)
(a−7):ダイフリーFB962(フッ素基含有固体、親油基含有、Mw=0.2万以上2.0万未満、ダイキン製)
(a−8):メガファックF552(フッ素基・親油基含有オリゴマー、ロウ状、Mw=0.2万以上2.0万未満、DIC製)
(a−9):メガファックF562(フッ素基・親水基・親油基含有オリゴマー、固体、Mw=2.0万以上5.0万未満、DIC製)
【0108】
(Ra−1):メガファックF430(フッ素基含有・親水基含有・親油基不含有オリゴマー、液体状化合物、Mw=0.05万〜0.2万未満、DIC製)
(Ra−2):メガファックF444(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、親油基不含有、液体状化合物、Mw=0.05万〜0.2万未満、DIC製)
(Ra−3):デムナムS-200(フッ素原子含有・親油基不含有、液体状化合物、ダイキン製)
(Ra−4):フロラード「FC−4430」、親油基不含有、住友スリーエム製
(Ra−5):サーフロン「S−141」、親油基不含有、旭硝子製
(Ra−6):サーフロン「S−145」、親油基不含有、旭硝子製
【0109】
<比較例用樹脂成分>
<<Rb−1>>
ZEONEX 480R(日本ゼオン製、シクロオレフィン系重合体)
30質量部
p-メンタン 70質量部
【0110】
<<Rb−2>>
Durimide(登録商標)284(富士フイルム製、ポリイミド)
30質量部
γ-ブチロラクトン 70質量部
【0111】
<<Rb−3>>
PCZ300(三菱ガス化学製ポリカーボネート) 30質量部
アニソール 70質量部
【0112】
<接着性>
サンプル1のせん断接着力を、引っ張り試験機((株)イマダ製デジタルフォースゲージ、型式:ZP−50N)を用いて、250mm/分の条件で接着層の面に沿った方向に引っ張ることによって測定し、以下の基準で評価した。
A:50N以上の接着力
B:10N以上50N未満の接着力
【0113】
<反り>
サンプル3について、薄膜応力測定装置FLX−2320−S(東朋テクノロジー製)を用いて反り(曲率半径)の計測を行い、以下の基準で評価を行った。なお、反りの方向に関わらず、絶対値をもって評価を行った。
A:40μm以下
B:40μmを超え80μm未満
C:80μm以上
【0114】
<剥離性>
サンプル3を、引っ張り試験機((株)イマダ製デジタルフォースゲージ、型式:ZP−50N)を用いて、250mm/分の条件で仮接着層の垂直方向に引っ張り、剥離性を確認した。
A:最大の剥離力が15N未満で剥離できた
B:最大の剥離力が15N以上25N未満で剥離できた
C:最大の剥離力が25N以上40N未満で剥離できた
D:最大の剥離力が40N以上もしくはウェハが破損してしまった
【0115】
<接着層の面性状>
剥離性がA〜C評価であったものについて、剥離後の接着層の面性状を目視で確認し、以下の基準で確認した。
A:第一のシリコンウェハへの接着層の転写を確認できない。
B:接着層内で凝集破壊されて、第一のシリコンウェハへの接着層の転写が確認できる。
【0116】
<接着層のせん断モードで測定した貯蔵弾性率G’の測定>
本試験測定用の接着層は、以下の方法により製造した。
実施例7〜12および比較例9、10、11に使用した仮止め接着剤を使ってシリコンウェハの表面上に厚さ800μmの接着層を形成した。さらに、窒素雰囲気下200℃で1時間加熱し、室温まで放冷後、シリコンウェハ表面から接着層を剥離した。
得られた試験測定用の接着層を用い、接着層の温度が250℃となる条件下で、JIS K 7244−6:1999に準拠し、せん断モードで測定した貯蔵弾性率G’を測定した結果、実施例7〜12で使用した接着層の貯蔵弾性率は500,000〜800,000Paの範囲内であり、比較例9で使用した接着層の貯蔵弾性率は、200,000Pa未満、比較例10で使用した接着層の貯蔵弾性率は、1,000,000Paを超える値、比較例11で使用した接着層の貯蔵弾性率は、200,000Pa未満であった。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
第一のシリコンウェハ上にスピンコーター(MS−A300、ミカサ製)により50rpmで回転させながら、C−1(100質量部)とa−3(0.16質量部)からなる仮止め接着剤を、30秒間の間に7.5mL滴下し、ホットプレートを用いて、110℃で3分加熱し、積層体Aを得た。第二のシリコンウェハにスピンコーター(MS−A300、ミカサ製)により50rpmで回転させながら、C−2(100質量部)とa−6(0.16質量部)からなる仮止め接着剤を、30秒間の間に7.5mL滴下し、ホットプレートを用いて、110℃で3分加熱し、積層体Bを得た。積層体Aと積層体Bとを仮接着層が接するようにして重ね、190℃で3分加熱し、さらに、ウェハボンダー(EVG 520IS、EVG製)にて、真空下150℃で、0.11MPaの圧力で、3分間圧着し、さらに窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱し、サンプル1を作製した。それ以外は、実施例1と同様にして、サンプル2およびサンプル3を調製し、評価を行ったところ、ボイド=なし、接着性=A、反り=A、剥離性=A、面状=Aであった。
【0120】
上記結果から明らかなとおり、本発明の仮止め接着剤は、接着性および剥離性に優れ、かつ、反りが小さかった。さらに、接着層の面性状にも優れていた。
【符号の説明】
【0121】
11、11a:接着層
12:支持体
60:デバイスウェハ
60a:薄型デバイスウェハ
61:シリコン基板
61a:表面
61b:、61b1:裏面
62:デバイスチップ
63:構造体
100、100a:接着性支持体
図1
図2
図3