(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被処理基板として表面に下地膜が形成されたものを用い、前記下地膜の表面に前記タングステン膜を成膜することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
前記被処理基板に凹部が形成され、前記凹部内に前記主タングステン膜を成膜して、前記凹部を埋め込むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項7のいずれかのタングステン膜の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0019】
<成膜装置>
図1は本発明に係るタングステン膜の成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、成膜装置100は、気密に構成された略円筒状のチャンバー1を有しており、その中には被処理基板であるウエハWを水平に支持するためのサセプタ2が、後述する排気室の底部からその中央下部に達する円筒状の支持部材3により支持された状態で配置されている。このサセプタ2は例えばAlN等のセラミックスからなっている。また、サセプタ2にはヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5にはヒーター電源6が接続されている。一方、サセプタ2の上面近傍には熱電対7が設けられており、熱電対7の信号はヒーターコントローラ8に伝送されるようになっている。そして、ヒーターコントローラ8は熱電対7の信号に応じてヒーター電源6に指令を送信し、ヒーター5の加熱を制御してウエハWを所定の温度に制御するようになっている。なお、サセプタ2には3本のウエハ昇降ピン(図示せず)がサセプタ2の表面に対して突没可能に設けられており、ウエハWを搬送する際に、サセプタ2の表面から突出した状態にされる。また、サセプタ2は昇降機構(図示せず)により昇降可能となっている。
【0021】
チャンバー1の天壁1aには、円形の孔1bが形成されており、そこからチャンバー1内へ突出するようにシャワーヘッド10が嵌め込まれている。シャワーヘッド10は、後述するガス供給機構30から供給された成膜原料ガスであるWCl
6ガスをチャンバー1内に吐出するためのものであり、その上部には、WCl
6ガスおよびパージガスとしてN
2ガスを導入する第1の導入路11と、還元ガスとしてのH
2ガスおよびパージガスとしてN
2ガスを導入する第2の導入路12とを有している。
【0022】
シャワーヘッド10の内部には上下2段に空間13、14が設けられている。上側の空間13には第1の導入路11が繋がっており、この空間13から第1のガス吐出路15がシャワーヘッド10の底面まで延びている。下側の空間14には第2の導入路12が繋がっており、この空間14から第2のガス吐出路16がシャワーヘッド10の底面まで延びている。すなわち、シャワーヘッド10は、成膜原料ガスとしてのWCl
6ガスと還元ガスであるH
2ガスとがそれぞれ独立して吐出路15および16から吐出するようになっている。
【0023】
チャンバー1の底壁には、下方に向けて突出する排気室21が設けられている。排気室21の側面には排気管22が接続されており、この排気管22には真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気装置23が接続されている。そしてこの排気装置23を作動させることによりチャンバー1内を所定の減圧状態とすることが可能となっている。
【0024】
チャンバー1の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口24と、この搬入出口24を開閉するゲートバルブ25とが設けられている。また、チャンバー1の壁部には、ヒーター26が設けられており、成膜処理の際にチャンバー1の内壁の温度を制御可能となっている。
【0025】
ガス供給機構30は、成膜原料である塩化タングステンとしてWCl
6を収容する成膜原料タンク31を有している。WCl
6は常温では個体であり、成膜原料タンク31内には塩化タングステンであるWCl
6が固体として収容されている。成膜原料タンク31の周囲にはヒーター31aが設けられており、成膜原料タンク31内のWCl
6を適宜の温度に加熱して、WCl
6を昇華させるようになっている。なお、塩化タングステンとしては、WCl
5、WCl
4を用いることもできる。WCl
5、WCl
4を用いても、WCl
6とほぼ同じ挙動を示す。
【0026】
成膜原料タンク31には、上方からキャリアガスであるN
2ガスを供給するためのキャリアガス配管32が挿入されている。キャリアガス配管32にはN
2ガス供給源33が接続されている。また、キャリアガス配管32には、流量制御器としてのマスフローコントローラ34およびその前後のバルブ35が介装されている。また、成膜原料タンク31内には原料ガスラインとなる原料ガス送出配管36が上方から挿入されており、この原料ガス送出配管36の他端はシャワーヘッド10の第1の導入路11に接続されている。原料ガス送出配管36にはバルブ37が介装されている。原料ガス送出配管36には成膜原料ガスであるWCl
6ガスの凝縮防止のためのヒーター38が設けられている。そして、成膜原料タンク31内で昇華したWCl
6ガスがキャリアガスとしてのN
2ガス(キャリアN
2)により搬送されて、原料ガス送出配管36および第1の導入路11を介してシャワーヘッド10内に供給される。また、原料ガス送出配管36には、配管74を介してパージガスとしてのN
2ガス(パージN
2)を供給するN
2ガス供給源71が接続されている。配管74には流量制御器としてのマスフローコントローラ72およびその前後のバルブ73が介装されている。N
2ガス供給源71からのN
2ガスは原料ガスライン側のパージガスとして用いられる。
【0027】
なお、キャリアガス配管32と原料ガス送出配管36との間は、バイパス配管48により接続されており、このバイパス配管48にはバルブ49が介装されている。キャリアガス配管32および原料ガス送出配管36におけるバイパス配管48接続部分の下流側
および上流側にはそれぞれバルブ35a,37aが介装されている。そして、バルブ35a,37aを閉じてバルブ49を開くことにより、N
2ガス供給源33からのN
2ガスを、キャリアガス配管32、バイパス配管48を経て、原料ガス送出配管36をパージすることが可能となっている。なお、キャリアガスおよびパージガスとしては、N
2ガスに限らず、Arガス等の他の不活性ガスであってもよい。
【0028】
シャワーヘッド10の第2の導入路12には、H
2ガスラインとなる配管40が接続されており、配管40には、還元ガスであるH
2ガスを供給するH
2ガス供給源42と、配管64を介してパージガスとしてのN
2ガス(パージN
2)を供給するN
2ガス供給源61が接続されている。また、配管40には流量制御器としてのマスフローコントローラ44およびその前後のバルブ45が介装され、配管64には流量制御器としてのマスフローコントローラ62およびその前後のバルブ63が介装されている。N
2ガス供給源61からのN
2ガスはH
2ガスライン側のパージガスとして用いられる。
【0029】
還元ガスとしては、H
2ガスに限らず、SiH
4ガス、B
2H
6ガス、NH
3ガスを用いることもできる。H
2ガス、SiH
4ガス、B
2H
6ガス、およびNH
3ガスのうち2つ以上を供給できるようにしてもよい。また、これら以外の他の還元ガス、例えばPH
3ガス、SiH
2Cl
2ガスを用いてもよい。
【0030】
この成膜装置100は、各構成部、具体的にはバルブ、電源、ヒーター、ポンプ等を制御する制御部50を有している。この制御部50は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ51と、ユーザーインターフェース52と、記憶部53とを有している。プロセスコントローラ51には成膜装置100の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェース52は、プロセスコントローラ51に接続されており、オペレータが成膜装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、成膜装置の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部53もプロセスコントローラ51に接続されており、この記憶部53には、成膜装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ51の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部53の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0031】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース52からの指示等にて所定の処理レシピを記憶部53から呼び出してプロセスコントローラ51に実行させることで、プロセスコントローラ51の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0032】
<成膜方法の実施形態>
次に、以上のように構成された成膜装置100を用いて行われる成膜方法の実施形態について説明する。
【0033】
本実施形態では、表面に下地膜が形成されたウエハを被処理基板として用いる。例えば熱酸化膜の表面、またはトレンチやホール等の凹部を有する層間絶縁膜の表面にバリアメタル膜が下地膜として形成されたものを用いることができる。下地膜としては、TiN膜、TiSiN膜が好ましい。下地膜としてTiN膜やTiSiN膜を用いることによりタングステン膜の成膜性を良好にすることができる。
【0034】
成膜に際しては、まず、ゲートバルブ25を開け、搬送装置(図示せず)によりウエハWを搬入出口24を介してチャンバー1内に搬入し、ヒーター5により所定温度に加熱されたサセプタ2上に載置し、所定の真空度まで減圧した後、以下のようにしてCVD法またはALD法によりタングステン膜の成膜を行う。
【0035】
(CVD法による成膜)
まず、CVD法による成膜について説明する。
図2は、CVD法による成膜の際の処理レシピを示す図である。最初に、
図1の成膜装置100におけるバルブ37,37aおよび45を閉じた状態で、バルブ63および73を開き、N
2ガス供給源61,71から配管64,74を介してパージガスとしてのN
2ガス(パージN
2)をチャンバー1内に供給して圧力を上昇させ、サセプタ2上のウエハWの温度を安定させる。
【0036】
チャンバー1内が所定圧力に到達した後、N
2ガス供給源61,71からのパージN
2を流したまま、バルブ37,37aを開くことにより、キャリアガスとしてのN
2ガス(キャリアN
2)を成膜原料タンク31内に供給し、成膜原料タンク31内でWCl
6を昇華させ、生成されたWCl
6ガスをチャンバー1内に供給するとともに、バルブ45を開いてH
2ガス供給源42からH
2ガスをチャンバー1内に供給する。これにより、ウエハWの表面の下地膜上で、タングステン原料ガスであるWCl
6ガスと、還元ガスであるH
2ガスとの反応が生じ、タングステン膜が成膜される。タングステン原料ガスとしてWCl
5ガス、WCl
4ガスを用いた場合も同様である。
【0037】
タングステン膜の膜厚が所定の値となるまで成膜を続けた後、バルブ45を閉じてH
2ガスの供給を停止し、さらにバルブ37,37aを閉じて、WCl
6ガスを停止するとともにN
2ガスをパージガスとしてチャンバー1内に供給し、チャンバー1内のパージを行う。以上でCVD法による成膜が終了する。このときのタングステン膜の膜厚は、成膜時間により制御することができる。
【0038】
(ALD法による成膜)
次に、ALD法により成膜について説明する。
図3は、ALD法による成膜の際の処理レシピを示す図である。最初にCVD法のときと同様、バルブ37,37aおよび45を閉じてバルブ63および73を開き、N
2ガス供給源61,71から配管64,74を介してパージガスとしてのN
2ガス(パージN
2)をチャンバー1内に供給して圧力を上昇させ、サセプタ2上のウエハWの温度を安定させる。
【0039】
チャンバー1内が所定圧力に到達した後、N
2ガス供給源61から配管64を介してパージN
2を流したまま、バルブ73を閉じて配管74側のパージN
2を停止し、バルブ37,37aを開くことにより、N
2ガス供給源33からキャリアN
2を成膜原料タンク31内に供給し、成膜原料タンク31内で昇華したWCl
6ガスを短時間チャンバー1内に供給してウエハW表面に形成された下地膜上にWCl
6を吸着させ(WCl
6ガス供給ステップ)、次いで、バルブ37,37aを閉じ、バルブ73を開いて、WCl
6ガスを停止するとともに配管64のパージN
2に加えて配管74側からのパージN
2もチャンバー1内に供給し、チャンバー1内の余剰のWCl
6ガスをパージする(パージステップ)。
【0040】
次いで、N
2ガス供給源71から配管74を介してパージN
2ガスを流したまま、バルブ63を閉じて配管64側のパージN
2を停止し、バルブ45を開いてH
2ガス供給源42からH
2ガスを短時間チャンバー1内に供給し、ウエハW上に吸着したWCl
6と反応させ(H
2ガス供給ステップ)、次いでバルブ45を閉じてバルブ63を開き、H
2ガスの供給を停止するとともに配管74のパージN
2に加えて配管64側からのパージN
2もチャンバー1内に供給し、チャンバー1内の余剰のH
2ガスをパージする(パージステップ)。
【0041】
以上のWCl
6ガス供給ステップ、パージステップ、H
2ガス供給ステップ、パージステップの1サイクルにより、薄いタングステン単位膜が形成される。そして、これらのステップを複数サイクル繰り返すことにより所望の膜厚のタングステン膜を成膜する。このときのタングステン膜の膜厚は、上記サイクルの繰り返し数により制御することができる。タングステン原料ガスとしてWCl
5ガス、WCl
4ガスを用いた場合も同様である。また、還元ガスの一部または全部を、H
2ガスに代えてSiH
4ガス、B
2H
6ガス、NH
3ガスの少なくとも一種とした場合も同様である。他の還元ガス、例えばPH
3ガス、SiH
2Cl
2ガスを用いた場合も同様に成膜することができる。
【0042】
(成膜条件)
タングステン原料としてWCl
6等の塩化タングステンを用いた場合には、塩化タングステンガス自体がエッチング作用も有するため、温度および圧力の条件によっては塩化タングステンガスによる下地膜や成膜しているタングステン膜に対するエッチング反応が生じて成膜され難いことがある。したがって、温度・圧力条件が、そのようなエッチング反応が生じる条件以外であることが好ましい。より詳細には、温度が低い領域では成膜反応もエッチング反応も生じないため、成膜反応を生じさせるためにはある程度高いことが好ましいが、成膜反応が生じる温度では、圧力が低いとエッチング反応が生じる傾向があるため、高圧条件が好ましい。
【0043】
具体的には、下地膜やガスの種類にもよるが、上記CVD法およびALD法ともに、ウエハ温度(サセプタ表面温度):250℃以上、チャンバー内圧力:5Torr(667Pa)以上で成膜することが可能である。還元ガスとしてH
2ガスのみを用いた場合には、ウエハ温度(サセプタ表面温度)が400℃以上が好ましいが、還元ガスとしてH
2ガスにNH
3ガスを添加したものを用いることにより、反応性が良好となり、ウエハ温度を250℃程度まで低下させることが可能となる。ウエハ温度が250℃より低くなるとNH
3ガスを用いても成膜反応が生じ難くなる。また、圧力が5Torrより低いと250℃以上においてエッチング反応が生じやすくなる。このような点からは、ウエハ温度に上限は存在しないが、装置の制約や反応性の点から、事実上の上限は800℃程度である。好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは550℃以下である。なお、還元ガスとしてH
2ガスのみを用いた場合のウエハ温度の好適な範囲は400〜550℃であり、H
2ガスにNH
3ガスを添加した場合のウエハ温度の好適な範囲は250〜550℃である。
【0044】
還元ガスとしてNH
3ガスを添加することにより、反応性が良好になるため、成膜温度を低下させることのみならず、成膜レートを上昇させることができる。ただし、NH
3ガスを添加すると、H
2ガスのみの場合に比べて成膜したタングステン膜中に残存する不純物が多くなる傾向にあるため、膜中の不純物を低減して良質な膜を得る観点からは、還元ガスとしてH
2ガスのみを用いることが好ましい。不純物量が許容範囲で低温成膜および高成膜レートを実現する観点から、還元ガスとしてH
2ガスに添加するNH
3ガスの割合は、流量%で10〜80%程度が好ましい。
【0045】
また、圧力に関しても上記点からは上限は存在しないが、同様に装置の制約や反応性の点から、事実上の上限は100Torr(13333Pa)である。より好ましくは、10〜30Torr(1333〜4000Pa)である。
【0046】
塩化タングステンガスとしてWCl
6ガスを用い、還元ガスとしてH
2ガスを用い、キャリアガスおよびパージガスしてN
2ガスを用いた場合の他の条件の好ましい範囲は以下の通りである。
・CVD法
キャリアN
2ガス流量:20〜500sccm(mL/min)
(WCl
6ガス供給量として、0.25〜15sccm(mL/min))
H
2ガス流量:500〜5000sccm(mL/min)
成膜原料タンクの加温温度:130〜170℃
・ALD法
キャリアN
2ガス流量:20〜500sccm(mL/min)
(WCl
6ガス供給量として、0.25〜15sccm(mL/min))
WCl
6ガス供給時間(1回あたり):0.5〜10sec
H
2ガス流量:500〜5000sccm(mL/min)
H
2ガス供給時間:(1回あたり):0.5〜10sec
成膜原料タンクの加温温度:130〜170℃
【0047】
(実施形態の効果等)
原料ガスとしてWF
6を用いてタングステン膜を成膜する従来の方法の場合には、熱酸化膜や層間絶縁膜に対する密着力が悪く、かつインキュベーション時間も長くなるため、下地膜上に高ステップカバレッジで直接成膜することが困難であった。このため、従来は、還元ガスとしてSiH
4またはB
2H
6を用いて核生成に特化した条件で、下地膜の上に核生成用の初期タングステン膜(ニュークリエーション膜)を形成してから、還元ガスとしてH
2ガスを用いて主タングステン膜の成膜を行う2段階の成膜を行うことにより高ステップカバレッジの成膜を確保する必要があった。
【0048】
しかし、ニュークリエーション膜は核生成のために形成されるものであり、バルクの主タングステン膜に比べて抵抗値が高いため、半導体デバイスの微細化にともない、凹部に埋め込むタングステン膜に占めるニュークリエーション膜の割合が増加すると、タングステン膜の抵抗値が上昇する。
【0049】
これに対し、本実施形態のようにタングステン原料としてWCl
6のような塩化タングステンを用いて上記のようなCVD法およびALD法にて成膜することにより、ニュークリエーション膜を用いることなく、1段階の成膜により高ステップカバレッジでタングステン膜を形成することができる。このため、ニュークリエーション膜を形成する煩雑さを回避することができ、微細化によっても抵抗値の上昇を生じ難くすることができる。例えば、還元ガスとしてH
2ガスを用いた場合には、膜厚20nmで25〜35μΩ・cm程度の低抵抗を実現することができ、微細配線でも低抵抗を維持することができる。
【0050】
<適用例>
次に、本実施形態の成膜方法の適用例について
図4を参照して説明する。
最初に、下部トランジスタまたはシリコン基板の上の拡散領域からなる下部構造101(詳細は省略)の上にSiO
2膜、低誘電率(Low−k)膜(SiCO、SiCOH等)等の層間絶縁膜102を有し、そこにトレンチやホール等の凹部103が形成されたウエハWを準備する(
図4(a))。
【0051】
次いで、凹部103を含む全面に下地膜として、メタルバリア膜104を成膜する(
図4(b))。メタルバリア膜104としては、TiN膜が好ましい。TiN膜はCVD法やALD法により好適に成膜することができる。メタルバリア膜104の厚さは2〜5nm程度が好ましい。
【0052】
次いで、下地膜としてメタルバリア膜104が形成されたウエハWに対し、上述したように、減圧雰囲気下で原料ガスであるWCl
6ガスおよび還元ガスであるH
2ガスを用いて、CVD法またはALD法によりメタルバリア膜104の表面に、ニュークリエーション膜を成膜することなく、直接タングステン膜105を成膜して凹部103を埋め込む(
図4(c))。
【0053】
これにより、一段階の成膜により、低抵抗のタングステン膜を高ステップカバレッジで成膜して凹部103内に配線やプラグを形成することができる。
【0054】
従来のタングステン膜では、
図5に示すように、メタルバリア膜104の上に高抵抗のニュークリエーション膜106を成膜してから低抵抗の主タングステン膜107を成膜して埋め込むため、配線幅(凹部103の幅)が例えば20nmと微細になった場合は、ニュークリエーション膜106の割合が高くなって、タングステン配線(プラグ)の抵抗値が上昇する。これに対して、本実施形態では、上記
図4(c)のように凹部103の全体に低抵抗のタングステン膜105を埋め込むことがでるので、配線幅が20nm程度と微細化しても、低抵抗のタングステン配線(プラグ)を得ることができる。
【0055】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
(実験例1)
まず、タングステン膜の膜厚と膜の比抵抗との関係を求めた。ここでは、
図1の成膜装置を用いて、シリコンウエハ表面に形成されたTiN膜の上にALD法により種々の膜厚のタングステン膜を成膜し、各膜の比抵抗を測定した。この際の条件は、キャリアN
2ガス流量:500sccm(WCl
6流量:10sccm)、H
2ガス流量:4500sccm、WCl
6供給ステップ1回の時間:1.5sec、H
2ガス供給ステップ1回の時間:3sec、パージステップ1回の時間:5sec、サイクル数:200〜1000回に固定し、温度・圧力条件を、以下の条件A、条件B、条件Cの3条件とした。
[条件A] 温度:500℃、圧力:30Torr
[条件B] 温度:500℃、圧力:20Torr
[条件C] 温度:430℃、圧力:30Torr
【0056】
上記実験の結果を
図6に示す。この図に示すように、いずれの条件においても、20nmという薄膜において、40μΩ・cm以下の低い比抵抗値が得られ、条件を選択することにより30μΩ・cm以下が可能であり、微細配線でも低抵抗値が得られることが確認された。
【0057】
(実験例2)
ここでは、トップの径が180nm、アスペクト比が60のホールに下地膜としてTiN膜を形成し、その上に直接ALD法によりタングステン膜を成膜してホールを埋め込んだ。このときの条件は、
図1の成膜装置を用いてウエハ温度:500℃、チャンバー内圧力:30Torr、キャリアN
2ガス流量:500sccm(WCl
6流量:10sccm)、H
2ガス流量:4500sccm、WCl
6供給ステップ1回の時間:1.5sec、H
2ガス供給ステップ1回の時間:3sec、パージステップ1回の時間:5sec、サイクル数:500回とした。
【0058】
この際の断面のSEM写真を
図7に示す。
図7に示すように、ニュークリエーション膜を用いることなく、1段階の成膜によりトップの径が180nm、アスペクト比が60のホールの底までタングステン膜が、良好なステップカバレッジが得られることが確認された。
【0059】
(実験例3)
ここでは、還元ガスとしてH
2ガスのみを用いた場合と、H
2ガスにNH
3ガスを添加した場合における成膜性について評価した。
図1の成膜装置を用いて、シリコンウエハ表面に形成されたTiN膜の上にALD法により種々の温度でタングステン膜を成膜した。この際の条件としては、キャリアN
2ガス流量:500sccm(WCl
6流量:10sccm)とし、WCl
6ガス供給ステップ1回の時間:1.5sec、H
2ガス供給ステップ1回の時間:3sec、パージステップ1回の時間:5sec、サイクル数:50〜300回とし、還元ガスとして、H
2ガスのみを2000sccmにした場合と、H
2ガス2000sccmにNH
3ガス25〜1500sccm添加した場合について、ウエハ温度(サセプタ表面温度):250〜500℃の範囲でタングステン膜の成膜を行った。
【0060】
還元ガスとしてH
2ガスのみを用いた場合のウエハ温度と成膜レート(1サイクルあたり)との関係を
図8に示し、還元ガスとしてH
2ガスにNH
3ガスを添加したものを用いた場合のウエハ温度と成膜レート(1サイクルあたり)との関係を
図9に示す。これらの図に示すように、還元ガスとしてH
2ガスのみを用いた場合には、400℃以下では成膜されなかったのに対し、NH
3ガスを添加した場合には、250℃以上で成膜可能であることが確認された。また、還元ガスがH
2ガスのみの場合には、成膜レートは、最も高い500℃でも0.11nm/cycleであったのに対し、NH
3ガスを添加した場合には、250℃でも成膜レートが0.5nm/cycleを超えており、400℃で2nm/cycle付近、500℃で5nm/cycleとなり、還元ガスとしてNH
3ガスを添加することにより、成膜温度が低下するとともに、成膜レートが著しく上昇することが確認された。なお、比抵抗に関しては、還元ガスとしてH
2ガスのみの場合のほうが低い傾向が得られ、良好な膜質を得る観点からは還元ガスがH
2ガスのみの場合のほうが有利であることが確認された。
【0061】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハはシリコンであっても、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体でもよく、さらに、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。