特許第6437876号(P6437876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437876
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】光導波路接続構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   G02B6/122 311
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-93183(P2015-93183)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-212152(P2016-212152A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】西 英隆
(72)【発明者】
【氏名】樋田 啓
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−159822(JP,A)
【文献】 特開2014−170126(JP,A)
【文献】 特開平08−171020(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0249546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部クラッド層の上に形成された第1コア部と、
前記下部クラッド層の上の前記第1コア部の導波方向の延長線上に形成され、前記第1コア部と同じ厚さで前記第1コア部より細く、対象とする光の回折限界以下の幅とされた第2コア部と、
前記下部クラッド層の上で前記第1コア部の一端と前記第2コア部の一端とを連結して形成され、前記第1コア部から前記第2コア部にかけて暫時細くなる第3コア部と、
前記下部クラッド層の上で前記第2コア部の他端に接続して形成され、前記第2コア部と同じ細さで前記コア部より薄く、対象とする光の回折限界以下の幅および厚さとされ、前記第2コア部との接続端とは反対側の端部が光入出力端とされた第4コア部と、
前記第3コア部,前記第2コア部,前記第4コア部の両方の側面に接して形成された第1金属層,第2金属層と、
前記第1コア部,前記第2コア部,前記第3コア部,前記第4コア部を覆って形成された上部クラッド層と
を備え
前記第1コア部、前記第2コア部、前記第4コア部の各々の幅は、一定とされ、
前記第1コア部、前記第2コア部、前記第3コア部、前記第4コア部の各々の厚さは一定とされていることを特徴とする光導波路接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の光導波路接続構造において、
前記第1コア部、前記第2コア部、前記第3コア部,前記第4コア部は、半導体または誘電体から構成されていることを特徴とする光導波路接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力用導波路と微小な集光導波路とを光学的に低損失に結合する光導波路接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Si導波路を用いた集積光デバイスの研究開発が進展している。Si導波路は、SiよりなるコアとSiO2よりなるクラッドとの高い屈折率差によって、回折限界に近いサイズに光を閉じ込めることが可能であり、μmサイズの微小な光導波路デバイスが実現可能となる。一般的に、Si以外の半導体もSiO2と比べて高い屈折率を有するため、半導体/SiO2構造の導波路も、Si導波路と同様の特徴を有する。
【0003】
同じく近年、金属−誘電体−金属や金属−半導体−金属による構造によって、金属表面プラズモンポラリトンを利用し、誘電体や半導体内の回折限界以下のサイズに光を閉じ込める微小集光導波路が注目されている。この導波路を用いて光源、受光器、変調器といった素子を作製することで、素子の高効率化、高速化が可能になると期待されている。
【0004】
これらSi導波路技術と微小集光導波路技術の進展に伴い、回折限界に近いサイズを有する半導体導波路と、回折限界以下のサイズを有する微小集光導波路を、光学的に高効率に結合する技術が重要となり、種々の接続構造が提案されている。
【0005】
例えば非特許文献1に示されている技術では、図4に示すように誘電体からなるコア部201の上下をAu層202,203により挾んで導波路を構成している。コア部201は、導波方向に均一な径としている光入力用の光入力部コア211と、幅および高さが徐々に小さくなる3次元テーパコア212と、集光用微小コア213とから構成されている。光入力部コア211は、厚さ200nm、コア幅500nmであり、集光用微小コア213は、厚さ14nm、コア幅は80nmである。この導波路を透過させる光の波長は、約0.8μmである。
【0006】
また、非特許文献2に示されている技術では、Si導波路とSiコア上面にAu層を設置した微小集光導波路を、直接突き当てて接続している(図5)。Si導波路のコア高さおよびコア幅は300nmであり、微小集光導波路のコア高さおよびコア幅もSi導波路と等しい。透過させる光の波長は、約1.5μmである。
【0007】
また、非特許文献3に示されている技術では、Si導波路とSiコア上面にAlO2層およびAg層を設置した微小集光導波路を、直接突き当てて接続している(図6)。Si導波路のコア高さは250nm、コア幅は450nmである。微小集光導波路のコア高さはSi導波路と等しく250nm、コア幅は突き当て部では450nmであるが、徐々に狭められ200nmとなっている。透過させる光の波長は、約1.5μmである。
【0008】
また、非特許文献4に示されている技術では、Si導波路と、Siコア両脇に極微小なエアギャップを挟んでAu層を設置した微小集光導波路を、直接突き当てて接続している(図7)。Si導波路のコア高さは250nm、コア幅は950nmである。微小集光導波路のコア高さはSi導波路と等しく250nm、コア幅は突き当て部の450nmから20nm程度にまで縮小される。透過させる光の波長は約1.5μmである。
【0009】
また、非特許文献5に示されている技術では、Si導波路と、Siコア両脇および上面を絶縁層で覆い更にそれらを覆うようにCu等の金属層を設置した微小集光導波路を接続している(図8)。Si導波路のコア高さは340nm、コア幅は500nmである。微小集光導波路のコア高さはSi導波路と等しく340nm、コア幅は突き当て部500nmから20nm程度にまで縮小される。透過させる光の波長は約1.5μmである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】H. Choo et al., "Nanofocusing in a metal-insulator-metal gap plasmon waveguide with a three-dimensional linear taper", NATURE PHOTONICS, vol.6, pp.838-844, 2012.
【非特許文献2】S. Sederberg et al., "Monolithic integration of plasmonic waveguides into a complimentary metal-oxide-semiconductor- and photonic-compatible platform", Applied Physics Letters, vol.96, no.12, 121101, 2010.
【非特許文献3】Y. Song et al., "Broadband coupler between silicon waveguide and hybrid plasmonic waveguide", OPTICS EXPRESS, vol.18, no.12, pp.13173-13179, 2010.
【非特許文献4】B. Desiatov et al., "Plasmonic nanofocusing of light in an integrated silicon photonics platform", Plasmonic nanofocusing of light in an integrated silicon photonics platform, vol.19, no.14, pp.13150-13157, 2011.
【非特許文献5】S. Zhu et al., "Silicon-based horizontal nanoplasmonic slot waveguides for on-chip integration", OPTICS EXPRESS, vol.19, no.9, pp.8888-8902, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した技術では、以下に示す問題があった。まず、非特許文献1の技術では、入力用導波路と微小集光導波路の接続構造が3次元テーパ形状とされている。このため、特に接続構造は、厚さを徐々に薄くする技術が必要となるが、このためにはFIB加工など特殊かつ高度な作製技術が必要となり、製造が容易ではないという問題がある。
【0012】
一方、非特許文献2,3、4の技術では、入力用導波路と微小集光導波路の接続に特殊な構造を必要とせず作製も容易である。しかしながら、これらの技術では、微小集光導波路のコア高さを入力用導波路と同じ高さ(回折限界以上)にせざるを得ず、光源、受光器、変調器の高効率化および高速化のためのサイズ効果が十分に得られないという問題があった。
【0013】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、製造が容易な状態で光源、受光器、変調器の高効率化および高速化のためのサイズ効果が十分に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る光導波路接続構造は、下部クラッド層の上に形成された第1コア部と、下部クラッド層の上の第1コア部の導波方向の延長線上に形成され、第1コア部と同じ厚さで第1コア部より細く、対象とする光の回折限界以下の幅とされた第2コア部と、下部クラッド層の上で第1コア部の一端と第2コア部の一端とを連結して形成され、第1コア部から第2コア部にかけて暫時細くなる第3コア部と、下部クラッド層の上で第2コア部の他端に接続して形成され、第2コア部と同じ細さでコア部より薄く、対象とする光の回折限界以下の幅および厚さとされ、第2コア部との接続端とは反対側の端部が光入出力端とされた第4コア部と、第3コア部,第2コア部,第4コア部の両方の側面に接して形成された第1金属層,第2金属層と、第1コア部,第2コア部,第3コア部,第4コア部を覆って形成された上部クラッド層とを備え、第1コア部、第2コア部、第4コア部の各々の幅は、一定とされ、第1コア部、第2コア部、第3コア部、第4コア部の各々の厚さは一定とされている。
【0015】
上記光導波路接続構造において、第1コア部、第2コア部、第3コア部,第4コア部は、半導体または誘電体から構成されていればよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことにより、本発明によれば、製造が容易な状態で光源、受光器、変調器の高効率化および高速化のためのサイズ効果が十分に得られるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す斜視図である。
図2A図2Aは、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す断面図である。
図2B図2Bは、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す断面図である。
図2C図2Cは、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す断面図である。
図2D図2Dは、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す断面図である。
図3図3は、実施の形態における光導波路接続構造の、第1コア部121から第4コア部124にかけての光透過率の、第3コア部123の導波方向長さ依存性を示す特性図である。
図4図4は、非特許文献1のFig.3aに示された導波路の構成を示す斜視図である。
図5図5は、非特許文献2のFig.1.(a)に示された導波路の構成を示す斜視図である。
図6図6は、非特許文献3のFig.3.(a)に示された導波路の構成を示す斜視図である。
図7図7は、非特許文献4のFig.1.b)に示された導波路を説明する説明である。
図8図8は、非特許文献5のFig.1.(a)に示された導波路の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図1図2A図2Dを参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す斜視図である。また、図2A図2Dは、本発明の実施の形態における光導波路接続構造の一部構成を示す断面図である図2Aは、図1の部分(a)の導波方向に垂直な断面を示している。図2Bは、図1の部分(b)の導波方向に垂直な断面を示している。図2Cは、図1の部分(c)の導波方向に垂直な断面を示している。図2Dは、図1の部分(d)の導波方向に垂直な断面を示している。
【0019】
この光導波路接続構造は、下部クラッド層101の上に形成された第1コア部121,第2コア部122,第3コア部123,第4コア部124と、第1金属層103,第2金属層104とを備える。第1コア部121,第2コア部122,第3コア部123,第4コア部124は、一体に形成されている。また、第1コア部121,第2コア部122,第3コア部123,第4コア部124を覆って形成された上部クラッド層105を備える。なお、図1では、上部クラッド層105を省略している。
【0020】
第1コア部121は、図1図2Aに示すように、対象とする光の回折限界近い断面寸法(厚さおよび幅)とされている。例えば、厚さ(高さ)が200nmとされ、幅が400nmとされている。なお、断面は、導波方向に垂直な断面である。また、第2コア部122は、図1図2Cに示すように、下部クラッド層101の上の第1コア部121の導波方向の延長線上に形成され、第1コア部121と同じ厚さで第1コア部121より細く、対象とする光の回折限界以下の幅とされている。例えば、第2コア部122は、幅60nmとされている。
【0021】
第3コア部123は、図1図2Bに示すように、下部クラッド層101の上で第1コア部121の一端と第2コア部122の一端とを連結して形成され、第1コア部121から第2コア部122にかけて暫時細くなる状態に形成されている。なお、第3コア部123は、第1コア部121側の一端から第2コア部122側の他端にかけて、高さは一定とされている。
【0022】
また、第4コア部124は、図1図2Dに示すように、下部クラッド層101の上で第2コア部122の他端に接続して形成され、第2コア部122と同じ細さでコア部より薄く、対象とする光の回折限界以下の幅および厚さとされている。また、第4コア部124は、第2コア部122との接続端とは反対側の端部131が光入出力端とされている。例えば、第4コア部124は、厚さ60nmとされている。第2コア部122から第4コア部124にかけて、高さが階段状に変化している。
【0023】
また、第1金属層103,第2金属層104は、第3コア部123,第2コア部122,第4コア部124の両方の側面に接して形成されている。第1金属層103,第2金属層104とコア部との界面における金属表面プラズモンポラリトンにより光閉じ込めがなされている。特に、第4コア部124においては、金属表面プラズモンポラリトンにより、対象とする光の回折限界以下のサイズに光が閉じ込められる状態となっている。
【0024】
例えば、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)基板を用い、埋め込み絶縁層を下部クラッド層101とし、表面シリコン層をパターニングすることで、第1コア部121,第2コア部122,第3コア部123,第4コア部124を形成すれば良い。
【0025】
第1コア部121,第2コア部122,第3コア部123,第4コア部124の形成では、まず、平面視でこれらの形状となるように、公知のリソグラフィー技術およびエッチング次述により表面シリコン層をパターニングする。この後、リソグラフィー技術により、第4コア部124の領域外開口したレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、他よりも薄い第4コア部124を形成すれば良い。
【0026】
また、リソグラフィー技術により、金属層形成部が開口したリフトオフマスクを形成し、この上に蒸着法やスパッタ法などによりAlなどの金属を堆積する。このとき、所望とする第1金属層103,第2金属層104の厚さに、金属を堆積する。この後、リフトオフマスクを除去(リフトオフ)すれば、第1金属層103,第2金属層104が形成できる。
【0027】
これらのように、第1コア部121,第2コア部122,第3コア部123,第4コア部124、および第1金属層103,第2金属層104を形成した後、よく知られたプラズマアシストCVD(Chemical Vapor Deposition)法や、スパッタ法などにより酸化シリコンを堆積することで、上部クラッド層105が形成できる。
【0028】
図3は、上述した実施の形態における光導波路接続構造の、第1コア部121から第4コア部124にかけての光透過率(Coupling Loss)の、第3コア部123の導波方向長さ依存性を示す特性図である。図3より明らかなように、第3コア部123の導波方向長さが500nmの条件で、第1コア部121から第4コア部124にかけての光透過率が最小となり、約3.7dBとなる。
【0029】
以上に説明したように、本発明によれば、第3コア部は、幅を暫時変化させることで形成しており、また、第2コア部から第4コア部にかけては、高さを階段状に変化させ、これらの側面に接して第1金属層,第2金属層を設けているので、厚さ方向に連続的に変化させるような加工を用いることなく、高さの異なる2つのコアを光学的に低損失に結合することが可能となる。また、各コア部は、同じコア材料の層に形成することができる。このように、本発明によれば、光源、受光器、変調器の高効率化および高速化のためのサイズ効果が十分に得られる微小導波路と入出力用導波路との光学的結合が、製造が容易な状態で得られる。
【0030】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、各コアは、Siに限らず、InP、GaAsなどの半導体や、SiO2やAl23など誘電体から構成することができる。また、金属層は、Alに限らず、Au,Ag,Ru、Ti、TiN、Ta、Crから構成しても良い。
【符号の説明】
【0031】
101…下部クラッド層、103…第1金属層、104…第2金属層、105…上部クラッド層、121…第1コア部、122…第2コア部、123…第3コア部、124…第4コア部、131…端部。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8