特許第6438316号(P6438316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6438316ベルトコンベア用潤滑剤組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6438316
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ベルトコンベア用潤滑剤組成物及びベルトコンベアの潤滑性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20181203BHJP
   C10M 145/36 20060101ALI20181203BHJP
   C10M 161/00 20060101ALI20181203BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20181203BHJP
   C10M 133/08 20060101ALN20181203BHJP
   C10M 135/16 20060101ALN20181203BHJP
   C10M 155/02 20060101ALN20181203BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20181203BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20181203BHJP
   C10N 30/18 20060101ALN20181203BHJP
   C10N 40/32 20060101ALN20181203BHJP
【FI】
   C10M173/02
   C10M145/36
   C10M161/00
   !C10M133/06
   !C10M133/08
   !C10M135/16
   !C10M155/02
   !C10M135/36
   C10N30:06
   C10N30:18
   C10N40:32
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-26585(P2015-26585)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-147993(P2016-147993A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】草野 公雄
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/041014(WO,A1)
【文献】 特表2009−509024(JP,A)
【文献】 特開平09−095692(JP,A)
【文献】 特開平10−158681(JP,A)
【文献】 特開2007−119557(JP,A)
【文献】 特開2009−096997(JP,A)
【文献】 特開2009−191126(JP,A)
【文献】 特開2013−163784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0066497(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0029886(US,A1)
【文献】 特開2006−96826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 173/02
C10M 133/06
C10M 133/08
C10M 135/16
C10M 135/36
C10M 145/36
C10M 155/02
C10N 30/06
C10N 30/18
C10N 40/32
C10M 161/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、炭素数12〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤、(B)成分として水を含有し、(A)成分のノニオン界面活性剤に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が40〜100モルであり、該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項2】
(C)成分として、N,N−ジデシル−N−メチルポリオキシエチル−アンモニウムプロピネート、ベンゼトニウムクロリド、ドデシルジプロピレントリアミン塩、牛脂ジプロピレントリアミン塩からなる群から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤を、(A)成分1質量部に対して0.01〜3質量部含有する請求項1に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項3】
(D)成分として、C12及び/またはC14アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩からなる両性界面活性剤を、(A)成分1質量部に対して0.1〜1質量部含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項4】
(E)成分として、ジメチルシリコーンオイルの乳化物を、(A)成分1質量部に対して1〜100質量部含有する請求項1〜3の何れか1項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項5】
(F)成分として、2−メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2−ベンズイソチアゾリン-3-オンから選ばれる1種以上の防腐剤を、(A)成分1質量部に対して0.1〜5質量部含有する請求項1〜4の何れか1項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物を、(A)成分の濃度を0.003〜0.1質量%として被搬送品を搬送するベルトコンベア上に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項7】
ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー又は微細スプレーから選択されるスプレーノズルを使用してベルトコンベア用潤滑剤組成物をベルトコンベア上に噴霧して供給する請求項6記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【請求項8】
搬送物が、炭酸飲料を充填したPETボトルであり、ベルトコンベアのベルトが樹脂製である請求項6又は7のいずれか1項に記載のベルトコンベアの潤滑性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア用潤滑剤組成物に関し、更に詳細には、飲用水、お茶、コーヒー、紅茶、乳飲料、炭酸飲料、ビール、酒類、調味料、加工食品等の容器への充填や包装工程において、プラスチック製、紙製、金属製、ガラス製及びセラミック製容器等の移動搬送の際に用いられるベルトコンベア用の潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲用水、清涼飲料、牛乳、ジュース、酒類、ドリンク剤等の容器には、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック製容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器、セラミック製容器等が使用されるが、飲料製造工場におけるこれら容器への充填や包装工程において、連続的に大量の容器を移動搬送するために一般的にベルトコンベアが使用されている。このような工場においては、ベルトコンベアを連続運転させ、容器等の被搬送物を高速搬送することが一般的であるが、このとき容器同士あるいは容器とベルトコンベアとの接触面に発生する摩擦により、容器の変形や容器の転倒等がおこる場合があり、こうした障害を防ぐために潤滑剤をベルトコンベア上等に塗布あるいは噴霧して、容器等の被搬送物とベルトコンベアとの間の摩擦係数を下げることが一般的である。
【0003】
従来のベルトコンベア用の潤滑剤としては、界面活性剤の水溶液を用いることが一般的であった。例えば、特許文献1には、脂肪酸石鹸0.5〜40重量%とポリオキシアルキレンアルキルエーテル0〜30重量%、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン付加体0〜30重量%の三成分の配合で、後者の二成分の合計が0.5〜30重量%配合してなることを特徴とする潤滑剤組成物をコンベアに供給することにより使用することが開示されている。特許文献2には、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を0.0025重量%以上含有する水溶液を主成分としてなり、前記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤が、炭素数12〜18の一級または二級アルコールにポリオキシエチレンを付加して生成された、HLB10〜16を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、および脂肪酸の炭素数が12〜18であって、HLB9〜14を有するポリオキシエチレンモノ、またはジ脂肪酸エステルの群から選択された一種または二種であり、かつ、脂肪酸石けん、アルキルジアミンおよびリン酸エステルを含有しないことを特徴とする樹脂製コンベア用潤滑剤が開示されている。また特許文献3には、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤の中から選択したHLBが16を超える少なくとも一種の界面活性剤と、(B)水と、(C)カチオン系界面活性剤および/または両性系界面活性剤とを含み、(A)の非イオン界面活性剤と、(C)のカチオン系界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を、重量比で5:1〜1:30の割合で含む樹脂製コンベア用潤滑剤組成物が開示されている。
【0004】
また特許文献4には、炭素数10〜20炭化水素基を持つ1価の有機ヒドロキシ化合物に酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤と、水とを含有するベルトコンベア用潤滑剤が開示されている。さらに潤滑成分としてのシリコーン乳濁液に界面活性剤を添加した潤滑剤組成物も知られており、例えば特許文献5には、0.0005wt%から5.0wt%の、シリコーン乳濁液、及びシリコーン界面活性剤から成る群から選択される水混和性シリコーン物質、及び0.01wt%から0.50wt%の、脂肪アミン、アルコールエトキシレート及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種の湿潤剤を含む潤滑剤組成物を、コンベアとポリエチレンテレフタレート製容器との接触面の少なくとも一部に施用して潤滑性を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−95692号公報
【特許文献2】特許第3982860号
【特許文献3】特許第4895572号
【特許文献4】特開2009−191126号公報
【特許文献5】特許第5576043号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている潤滑剤組成物は、硬水で希釈するとカルシウムイオンやマグネシウムイオンと脂肪酸が結合して不溶性の塩を生じることで使用環境を汚染することや、炭酸飲料を充填し内圧負荷がかかったPETボトルと接触すると、製品の流通過程においてボトルに亀裂やひび割れを生じ内容物が漏出するなどの問題があった。特許文献2に記載されているようなポリエチレングリコール型ノニオン界面活性剤の水溶液を主剤として脂肪酸石鹸、アルキルジアミンおよびリン酸エステルを含有しない潤滑剤組成物は、硬度成分と不溶性の塩を形成する問題は解決されるものの、近年の高速化する飲料製造ラインにおいては潤滑性が不足しており、またPETボトルに対する適合性に劣り、内圧負荷の生じたPETボトルと接触すると亀裂やひび割れの発生要因になるという問題があった。また、特許文献3に記載されている潤滑剤組成物におけるHLB16以上のポリエチレングリコール型ノニオン界面活性剤は、炭酸飲料を充填したPETボトルに対する適合性及び潤滑性に優れるが、泡立ちが大きく、運転しているベルトコンベアに長時間適用していると蓄積した泡によるトラブルが発生する、すなわちベルトコンベア下部に設置された排水ピット等から泡があふれて製造ラインの床を汚染し、また容器に泡が付着すると外観検査機器による自動検査で泡を汚れとして誤検知してしまう、さらに泡が飲料容器とその容器を覆う商品ラベルの間に進入し汚染するなどの問題があった。
また、特許文献4に記載されている潤滑剤組成物に用いられている、炭素数10〜20炭化水素基を持つ1価の有機ヒドロキシ化合物に酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤は、構造によっては潤滑性が不足しており、PETボトルに対する適合性に劣る問題があった。
さらに特許文献5に記載されているようなシリコーン乳濁液またはシリコーン界面活性剤に、脂肪族アミンまたはアルコールエトキシレート型ノニオン界面活性剤から選択される湿潤成分を添加し濡れ性が改善された潤滑剤組成物は、内圧負荷の生じたPETボトルと接触すると亀裂やひび割れの発生要因になるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、泡立ちが低く、潤滑性に優れ、さらに炭酸飲料を充填した内圧負荷のかかったPETボトルに接触した場合でも、ボトルに亀裂やひび割れが発生する虞のない潤滑剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、炭素数12〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されたノニオン界面活性材であって、含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が40〜100モルであり、かつ該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%であるノニオン界面活性剤と水を含有することを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物は、驚くべきことに泡立ちが低く、潤滑性に優れ、さらに炭酸飲料を充填し内圧負荷のかかったPETボトルに接触した際でも、ボトルへの亀裂やひび割れ発生が抑制されることを発見し、本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物を開発することに成功した。
【0009】
本発明は、
(1)(A)成分として、炭素数12〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤、(B)成分として水を含有し、(A)成分のノニオン界面活性剤に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が40〜100モルであり、該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(2)(C)成分として、N,N−ジデシル−N−メチルポリオキシエチル−アンモニウムプロピネート、ベンゼトニウムクロリド、ドデシルジプロピレントリアミン塩、牛脂ジプロピレントリアミン塩からなる群から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤を、(A)成分1質量部に対して0.01〜3質量部含有する上記(1)のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(3)(D)成分として、C12及び/またはC14アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩からなる両性界面活性剤を、(A)成分1質量部に対して0.1〜1質量部含有する上記(1)または(2)のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(4)(E)成分として、ジメチルシリコーンオイルの乳化物を、(A)成分1質量部に対して1〜100質量部含有する上記(1)〜(3)の何れかのベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(5)(F)成分として、2−メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2−ベンズイソチアゾリン-3-オンから選ばれる1種以上の防腐剤を、(A)成分1質量部に対して0.1〜5質量部含有する上記(1)〜(4)の何れかのベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかのベルトコンベア用潤滑剤組成物を、(A)成分の濃度を0.003〜0.1質量%として被搬送品を搬送するベルトコンベア上に供給することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(7)ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー又は微細スプレーから選択されるスプレーノズルを使用してベルトコンベア用潤滑剤組成物をベルトコンベア上に噴霧して供給する上記(6)のベルトコンベアの潤滑性向上方法、
(8)搬送物が、炭酸飲料を充填したPETボトルであり、ベルトコンベアのベルトが樹脂製である上記(6)又は(7)のベルトコンベアの潤滑性向上方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、泡立ちが低く、潤滑性に優れ、さらに炭酸飲料を充填し内圧負荷のかかったPETボトルに接触した際でも、亀裂やひび割れの発生が抑制される潤滑剤組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(A)成分は、炭素数12〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤である。(A)成分に使用できる脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘニコシルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。これらの脂肪族アルコールのうち、比較的安価に入手できるラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましく、生成するノニオン界面活性剤の性能と水への溶解性の点でラウリルアルコールとオレイルアルコールがより好ましい。
【0012】
本発明において用いる(A)成分は、上記の脂肪族アルコールに酸化エチレンと酸化プロピレンを付加することによって得られるが、その重合形態は、酸化エチレンと酸化プロピレンとのランダム共重合、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等でよく、より泡立ちが低いことからブロック共重合体がより好ましい。(A)成分のノニオン界面活性剤に含まれるポリオキシアルキレン基(酸化エチレン+酸化プロピレン)の重合度は、40〜100であり、好ましくは45〜80であり、より好ましくは50〜60である。重合度が40未満であると潤滑性及びPETボトルの亀裂やひび割れ抑制性が低下し、100を超えると性能が飽和し、また凝固点が高くなるためハンドリング性が低下し、製造も困難であるため好ましくない。
【0013】
また、(A)成分中のポリオキシアルキレン基に占めるオキシエチレン基の割合は80〜95モル%となるように酸化エチレンと酸化プロピレンの配合比を調整することが好ましく、オキシエチレン基の割合は90〜95モル%がより好ましい。オキシエチレン基の割合が80モル%未満になると潤滑性が不足する場合やPETボトル適合性が低下する場合があり、また、95モル%を超えると使用時の泡立ちが大きくなり、ベルトコンベアに長時間供給すると蓄積した泡によるトラブルが発生する等の問題を生じる。
【0014】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、上記の(A)成分と(B)成分である水とを混合したものであるが、(B)成分の水は特に限定されず、水道水、工業用水、再生水、イオン交換水、RO水、蒸留水、軟水等が挙げられる。
【0015】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物にはさらに(C)成分として除菌性カチオン界面活性剤を配合することが好ましい。除菌性カチオン界面活性剤としては、N,N−ジデシル−N−メチルポリオキシエチル−アンモニウムプロピネート、ベンゼトニウムクロリド、ドデシルジプロピレントリアミン塩、牛脂ジプロピレントリアミン塩からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。その他、カチオン界面活性剤として一般的なジアルキルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジアミン塩、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等は、PETボトルの亀裂やひび割れ抑制性が低下する虞れがあるため配合しないことが好ましい。(C)成分の配合量は(A)成分1質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることがより好ましく、0.5〜1質量部であることが最も好ましい。0.01質量部未満であると除菌性が低下し、使用環境で微生物が増殖する虞があり、3質量部を超えて配合すると飲料成分と反応して不溶性の物質を形成しベルトコンベア等の飲料製造設備を汚染する等の虞がある。
【0016】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物にはさらに水の硬度成分の影響を受けずにステンレス製ベルトコンベアの潤滑性を向上させるために、(D)成分として両性界面活性剤を配合することができる。両性界面活性剤としては炭素鎖長12及び/又は14のアルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される一種以上の両性界面活性剤が、PETボトルに対する亀裂やひび割れの発生を抑制し、かつ水の硬度成分の影響を受けずにステンレス製ベルトコンベアの潤滑性を向上させることができるため好ましい。(D)成分の配合量は(A)成分1質量部に対して0.1〜1質量部であることが好ましく、0.2〜0.5質量部であることがより好ましい。0.1質量部未満であるとステンレス製ベルトコンベアの潤滑性が低下し、1質量部を超えて配合すると泡立ちが増加する問題が生じる。
【0017】
また本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、さらに(E)成分としてジメチルシリコーンオイルの乳化物および/または(F)成分として2−メチル−4−イソチゾリン−3−オン、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンから選ばれる1種以上の防腐剤を配合することが好ましい。
【0018】
(E)成分のジメチルシリコーン乳化物に使用できるジメチルシリコーンオイルは下記の分子式(1)で表すことができる。
【0019】
(化1)
(CHSi−O−[−Si(CH−O−]n−Si(CH (1)
(nは50〜2000の整数を表す)
【0020】
(1)式において、nが50未満の場合にはPETボトルの亀裂やひび割れの抑制性が低下する場合があり、2000を超えると粘度が高すぎて取り扱いが困難となりまた潤滑性も低下するため好ましくない。また性能及び取り扱いの点から、上記のジメチルシリコーンオイルの25℃における粘度が100mm/s〜1000000mm/sの範囲であることが好ましく、潤滑性が良好である粘度が350〜10000mm/sの範囲のものがより好ましい。またジメチルシリコーンオイルの乳化物を調整する際に使用される乳化剤としてはアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の乳化剤が使用可能であるが、脂肪酸塩型アニオン界面活性剤及びポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤は、PETボトルの亀裂やひび割れの抑制性が低下する場合があり適さない。(E)成分の配合量は(A)成分1質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると潤滑性が低下し、100質量部を超えて配合すると過剰に滑りすぎ搬送を円滑に行うことができない等の問題がある。
【0021】
(F)成分の配合量は(A)成分1質量部に対して0.1〜5質量部配合することが好ましく、2〜4質量部配合することがより好ましい。1質量部未満であると防腐性が低下し腐敗する問題があり、5質量部を超えて配合するとPETボトルの亀裂やひび割れの抑制性が低下する。また、除菌成分として一般的であるカチオン界面活性剤は、組成物の安定性を悪化させるため配合しないことが好ましい。
【0022】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物には、更に公知の潤滑用添加剤が添加されていても良く、使用目的に応じて、キレート剤、溶剤、界面活性剤、粘稠剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0023】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に配合できる界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸やその塩、ポリオキシエチレンアルキエーテルリン酸エステルやその塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、アセチレングリコール酸化エチレン(EO)付加物、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)のブロックコポリマー、(A)成分以外のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルジメチルアミンオキシド、ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサン・コポリマーなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に配合できる溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの溶剤の配合量は、(A)成分1質量部に対して1〜500質量部が好ましく、2〜400質量部がより好ましい。
【0025】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は塩基成分や酸成分を添加して、pHを4から9.5の範囲に調整することが好ましく、6.0〜9.0に調整することがより好ましい。pHが4.0未満であるとベルトコンベアや飲料製造工程中の機器が腐食する問題や、ベルトコンベアや飲料製造工程中の機器が腐食する問題が生じる虞があり、またpHが9.5を超えるとPETボトルに対する亀裂やひび割れ抑制性が低下し、亀裂やひび割れを発生する等の問題が生じる虞がある。pH調整のための塩基成分としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、pH調整のための酸成分としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルコン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸、リン酸などが挙げられるが、好ましくは、酢酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸である。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0026】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、ベルトコンベア上及び/または被搬送物上に、(A)成分濃度が0.003〜0.1質量%となるように、原液または水で希釈したものを滴下、塗布あるいは噴霧して供給し使用するが、輸送コスト及び在庫スペースを削減するために予め調製された濃厚液を使用時に水で希釈して使用することが好ましい。使用時の(A)成分濃度は、0.005〜0.025質量%がより好ましい。(A)成分濃度が0.002質量%未満であると潤滑性が低下し、0.1質量%を超えると潤滑性能は飽和するため経済的に好ましくなく、また泡立ちが増加し、PETボトルのに対する亀裂やひび割れの抑制性が低下する場合がある。潤滑剤組成物を滴下して供給する方法としては、実使用濃度に調整したベルトコンベア用潤滑剤組成物を0.1〜0.3MPaの圧力で送液し、樹脂製またはSUS製のチューブを通して40〜100ml/ 分の流量でベルトコンベア上及び/または被搬送物上に供給することが好ましい。またベルトコンベア上の広範囲に比較的少量の潤滑剤組成物を無駄なく均一に供給できるためスプレー等で噴霧することが好ましい。噴霧の形状はスプレーノズルの種類によって変わるが、用途に応じて使い分ければよく、公知のものであればいずれも使用することはできるが、中でも、ホロコーンタイプ、フルコーンタイプ、フラットスプレー、広角スプレー、微細スプレー等の使用が好ましく、その場合10〜50ml/分の流量でベルトコンベア上及び/または被搬送物上に供給することが好ましい。
【0027】
ここで、ベルトコンベア用潤滑剤組成物を希釈するために使用される水としては、硬度成分のない純水を用いることもできるが、一般的には水道水のような硬度成分を含有する水を使用することが想定され、水道水は、ドイツ硬度0〜53.6°DHのものであれば使用することができる。
【0028】
水道水は、pH=5.8〜8.6、ドイツ硬度0〜53.6°DH、塩化物イオン0〜200mg/L、ナトリウム及びその化合物0〜200mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素0〜10mg/L、フッ素及びその化合物0〜0.8mg/L、ホウ素及びその化合物0〜1.0mg/L、総トリハロメタン0〜0.1mg/L、残留塩素0〜1mg/L、有機物量(全有機炭素量)0〜3mg/Lであれば、本発明の潤滑剤組成物の希釈用として使用することができる。また総アルカリ度は特に制限はないが、工業用水道供給標準水質として記載されている0〜75mg/L(炭酸カルシウム換算として)が好ましい。
【0029】
ベルトコンベア上及び/または被搬送物上への供給方法としては連続供給または間欠供給のいずれの方法でもよい。間欠供給は、供給時間に対して0.5〜3倍の停止時間を設ける短時間間欠と、供給時間に対して40〜720倍の停止時間を設ける長時間間欠による供給方法が可能である。間欠供給において、供給停止時にも潤滑性が保たれる理由は、一度供給した潤滑剤組成物がコンベアベルト上に残存しているためである。供給方法としては、廃棄物が削減でき、潤滑剤組成物および水の使用量も削減できることから、間欠供給による方法が好ましい。更に、長時間間欠供給の場合は、供給を停止している間の潤滑機能を良好に保つために(E)成分を添加することが好ましく、(A)成分濃度が0.03〜0.01質量%、(E)成分が0.02〜0.4質量%の潤滑剤組成物を供給することがより好ましい。
【0030】
被搬送物の形状、構造、材質等は特に規定されないが、飲料物用の容器が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製、ポリアミド製、ポリカーボネート製等のプラスチック製容器;紙パック等の紙製容器(ワックス仕上げや樹脂コーティングを含む);鉄製、アルミニウム製、錫製、銅製、亜鉛製、あるいはこれらの複合材料等からなる金属製容器;ガラス製容器;セラミックス製容器等が挙げられる。これらの容器の中でも、本発明の効果が顕著に表れることから、ペットボトル等のPET製容器や紙パック、アルミ製容器が好ましく、特に炭酸飲料を充填したPETボトルへの使用が好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。なお、以下の実施例等において「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
試験に使用した化合物を下記に記す。なお、アルコールの後の括弧内は脂肪族アルコールの炭素数を、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略であり、その後の数字はそれぞれEO、POの付加モル数を表す。尚、表中における実施例および比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。
【0032】
ノニオン界面活性剤
A−1:ラウリルアルコール(C12)のEO47モル、PO3モル付加物
A−2:ラウリルアルコール(C12)のEO38モル、PO2モル付加物
A−3:オレイルアルコール(C18)のEO80モル、PO20モル付加物
A−4:ベヘニルアルコール(C22)のEO55モル、PO5モル付加物
A′−5:ステアリルアルコール(C18)のEO34モル、PO23モル付加物
A′−6:トリデシルアルコール(C13)のEO22モル、PO3モル付加物
A′−7:ラウリルアルコール(C12)のEO52モル付加物
A′−8:合成アルコール(C9〜11)のEO8.3モル付加物
【0033】

B−1:東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)
【0034】
カチオン界面活性剤
C−1:N,N−ジデシル−N−メチルポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネート(ロンザジャパン社製「バーダップ26」)
C−2:ベンゼトニウムクロリド(ロンザジャパン社製「ハイアミン1622」)
C−3:ドデシルジプロピレントリアミン・酢酸塩(ライオン社製「トリアミンY12D」を酢酸中和して使用)
C−4:牛脂アルキルジプロピレントリアミン(ライオン社製「トリアミンT」を塩酸中和して使用)
C−5:ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド(ロンザジャパン社製「バーダックLF−80」)
C−6:N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン(AkzoNobel社製「Duomeen OL」、酢酸中和して使用)
C−7:アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(ライオン社製「アーカードCB−50」)
【0035】
両性界面活性剤
D−1:C12〜14アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩(三洋化成工業社製「レボンT−2」)
D−2:C8アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩(三洋化成工業社製「レボン50」)
【0036】
ジメチルシリコーンオイル乳化物
E−1:粘度350mm/sのジメチルシリコーン乳化物(東レダウコーニング社製「SH7024」)
E−2:粘度10000mm/sのジメチルシリコーン乳化物(東レダウコーニング社製 「SM7025EX」)
【0037】
防腐剤
F−1:2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(ソージャパン社製「アクティサイドM20」)
F−2:1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(ソージャパン社製「アクティサイドB20(N)」)
【0038】
実施例1〜54、比較例1〜6
東京都荒川区の水道水を用い、表に示す濃度となるように潤滑剤組成物を調製した。
【0039】
上記の潤滑剤組成物を使用して下記の試験を行った。各潤滑剤組成物の配合及び評価については、ジメチルシリコーンの乳化物を添加していない系については表1及び2に、ジメチルシリコーンの乳化物を添加した系については表3及び4に記した。
【0040】
(1)潤滑性試験A(ジメチルシリコーン乳化物非添加配合)
以下の試験方法によりジメチルシリコーン乳化物を含まない潤滑剤組成物を用いた場合の摩擦係数を測定し、潤滑剤組成物の潤滑性を評価した。
試験方法:
角底、900ml容積のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器をコンベアスピード30m/分の樹脂製ベルトコンベア上に置き、ベルトコンベア上に潤滑剤組成物を60ml/分の供給速度で5分間供給した後、更に潤滑剤組成物を同条件で供給しながら摩擦係数を測定した。なお、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、コンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)
潤滑性評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.08以上0.10未満(滑りが良好)
△:摩擦係数(μ)=0.10以上0.12未満(問題なく滑る)
×:摩擦係数(μ)=0.12以上(滑りが悪い)0.08未満(滑りすぎる)
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0041】
(2)潤滑性試験B(ジメチルシリコーン乳化物添加配合)
以下の試験方法によりジメチルシリコーン乳化物を含有する潤滑剤組成物を用いた場合の摩擦係数を測定し、潤滑剤組成物の潤滑性を評価した。
試験方法:
角底、900ml容積のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器をベルトコンベア上に置き、ベルトコンベアスピード30m/分の樹脂コンベア上に、フルコーンスプレーノズルを介して潤滑剤組成物を50ml/分の供給速度で2分間噴霧した後、噴霧終了直後の摩擦係数(付着直後)と、噴霧終了30分後の乾燥時の摩擦係数(乾燥後)を測定した。なお、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、コンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)
潤滑性評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.08以上0.10未満(滑りが良好)
△:摩擦係数(μ)=0.10以上0.12未満(問題なく滑る)
×:摩擦係数(μ)=0.12以上(滑りが悪い)0.08未満(滑りすぎる)
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0042】
(3)泡立ち性試験
ベルトコンベアスピード60m/分の樹脂コンベア上に、潤滑剤組成物を60ml/分の供給速度で30分供給した後、ベルトコンベアの稼動を続けたまま、潤滑剤組成物の供給を停止し、2分後のコンベア表面の泡立ちについて評価を行った。
泡立ち評価基準:
○:泡が見られない
△:少量の泡が見られる
×:明らかな泡が見られる
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0043】
(4)シュリンクラベル防汚性試験
ベルトコンベアスピード60m/分の樹脂コンベア上に、潤滑剤組成物を60ml/分の供給速度で30分供給した後、底部から5mm以内の高さまでラベルで覆われた500ml容積の市販PETボトル飲料をコンベア上に置き、ボトルをタコ糸でコンベアガイドに固定してボトルを引っ張ったまま30秒間ベルトコンベアを稼動させた。その後ラベルとボトルの間における潤滑剤組成物の侵入の有無を確認した。
シュリンクラベル防汚性評価基準:
○:ラベルとボトルの間に潤滑剤組成物の進入が見られない
×:ラベルとボトルの間に潤滑剤組成物が進入している
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
(5)炭酸飲料入りPETボトル適合性試験
試験方法:
炭酸飲料入りPETボトルとして市販の500ml容量のコーラ入りボトルを用い、ボトルの底部が、潤滑剤組成物10gを入れたビーカー中で、ボトル底部が潤滑剤組成物に浸るように接触させ、40℃、湿度90%で1週間保存した後、ボトル底面のひび割れの状態を観察した。
炭酸飲料入りPETボトル適合性評価基準:
◎:ボトル底面にひび割れが発生していない。
○:僅かにボトル底面にひび割れが発生している。
△:ボトル底面にひび割れが発生しているが問題ないレベル。
×:無数のひび割れがボトル底面に発生している。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0045】
(6)安定性試験(ジメチルシリコーン乳化物添加配合)
ジメチルシリコーン乳化物を添加した潤滑剤組成物について、以下の方法で安定性試験を行い、評価した。
試験方法:
調製した潤滑剤組成物100gを透明ガラス瓶に入れ、50℃で1ヶ月静置した後に外観を観察した。
安定性評価基準:
○:油相と水相の分離が見られず安定である
△:全体的な分離はないが、底部に若干の水相の分離が見られる
×:クリーミング(分散した油相の液滴が上昇して不均一になること)及び液面に油滴が見られる。
【0046】
(7)除菌性試験
潤滑剤組成物の除菌性を以下の方法で試験し、評価した。
試験方法:
緑膿菌(供試菌株:NBRC13736)を、滅菌したSCD培地を用いて37℃で24時間培養し、10の9乗レベルcfu/mlの菌液とした。潤滑剤組成物100gに対して菌液100μlを添加して試験液とし25℃で静置した。48時間後に試験液1mlを分取して滅菌したSCDLP寒天培地で混釈し、生菌数を確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
◎:5Logリダクション以上の菌数減少
○:Logリダクションが4以上、5未満の菌数減少
△:Logリダクションが2以上、4未満の菌数減少
×:2Logリダクション未満の菌数減少
とし、◎、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】