(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー層と前記視認側偏光板との間に、(2n−1)λ/4の位相差[但し、nは正の整数である]を有する光学フィルムを更に備え、前記視認側偏光板は、偏光フィルムを有し、積層方向から見て、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約45°である、および/または、
前記表示パネル側基材は、光学補償用の位相差フィルムを有する、
請求項1に記載の静電容量式タッチパネル付き表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、近年、静電容量式タッチパネル付き表示装置には、装置の更なる薄型化・軽量化が求められている。
しかし、上記従来の静電容量式タッチパネル付き表示装置では、表面に導電層を形成した2枚の透明基板を用いてタッチセンサー部を形成しているため、液晶パネルまたはOLEDパネルとカバーガラス層との間の厚さが厚くなり、結果として装置全体の厚さが厚くなるという問題があった。
特に、液晶パネルまたはOLEDパネルとカバーガラス層との間の厚さが厚くなる問題は、上述したような、視野角補償用の位相差フィルムや、偏光サングラスを装着した状態でのタッチパネル付き表示装置の操作を可能にするための1/4波長板や、反射防止用の円偏光板を設けた場合など、表示パネルとカバーガラス層との間の部材数が多い場合に大きかった。
【0009】
そこで、本発明は、薄型化された静電容量式タッチパネル付き表示装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、偏光サングラスを装着した状態でも操作が可能であり、且つ、薄型化された静電容量式タッチパネル付き表示装置を提供することを第2の目的とする。
更に、本発明は、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することが可能であり、且つ、薄型化された静電容量式タッチパネル付き表示装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、静電容量式タッチパネル付き表示装置に用いられている位相差フィルムや、1/4波長板や、反射防止用の円偏光板などの位相差を与える光学部材の両面に導電層を形成し、導電層形成用の透明基板を不要にすることで、静電容量式タッチパネル付き表示装置を薄厚化することに着想した。
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的としたものであり、本発明の第一発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、表示パネルとカバー層との間に、視認側偏光板、第一の導電層、第二の導電層および基材を有する積層体を備え、前記第一の導電層、前記第二の導電層および前記基材は、前記視認側偏光板よりも前記カバー層側に位置し、且つ、前記第一の導電層は、前記第二の導電層よりも前記カバー層側に位置し、前記第一の導電層および前記第二の導電層は、積層方向に互いに離隔して配置されて静電容量式タッチセンサーを構成し、前記第一の導電層は、前記基材の前記カバー層側の表面に形成され、前記第二の導電層は、前記基材の前記表示パネル側の表面に形成され、前記基材は、(2n−1)λ/4の位相差[但し、nは正の整数である]を有する光学フィルムを有し、前記視認側偏光板は、偏光フィルムを有し、積層方向から見て、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約45°であることを特徴とする。このように、光に所定の位相差を与える光学フィルムを有する基材を視認側偏光板よりもカバー層側に設け、且つ、光学フィルムの遅相軸と、偏光フィルムの透過軸との交差角を約45°とすれば、偏光サングラスを装着した状態でもタッチパネル付き表示装置の操作が可能となる。また、第一の導電層および第二の導電層の双方を一つの基材に形成すれば、導電層を形成するための透明基板を削減し、タッチセンサーの構造を簡素化して表示パネルとカバー層との間の厚さを薄くすることができる。
なお、上記第一発明において、「約45°」とは、表示パネル側から視認側偏光板を通ってカバー層側へと進む直線偏光を基材の光学フィルムで円偏光または楕円偏光に変えて偏光サングラスを装着した状態での操作を可能とし得る角度であり、例えば、45°±10°の角度範囲を指す。
【0011】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的としたものであり、本発明の第二発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、表示パネルとカバー層との間に、視認側偏光板、第一の導電層、第二の導電層および表示パネル側基材を有する積層体を備え、前記第一の導電層、前記第二の導電層および前記表示パネル側基材は、前記視認側偏光板よりも前記表示パネル側に位置し、且つ、前記第一の導電層は、前記第二の導電層よりも前記カバー層側に位置し、前記第一の導電層および前記第二の導電層は、積層方向に互いに離隔して配置されて静電容量式タッチセンサーを構成し、前記第一の導電層は、前記表示パネル側基材の前記カバー層側の表面に形成され、前記第二の導電層は、前記表示パネル側基材の前記表示パネル側の表面に形成されることを特徴とする。このように、第一の導電層および第二の導電層の双方を一つの表示パネル側基材に形成すれば、導電層を形成するための透明基板を削減し、タッチセンサーの構造を簡素化して表示パネルとカバー層との間の厚さを薄くすることができる。
【0012】
ここで、本発明の第二発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、(i)前記カバー層と前記視認側偏光板との間に、(2n−1)λ/4の位相差[但し、nは正の整数である]を有する光学フィルムを更に備え、前記視認側偏光板は、偏光フィルムを有し、積層方向から見て、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約45°である、および/または、(ii)前記表示パネル側基材は、光学補償用の位相差フィルムを有する、ことが好ましい。このように、光に所定の位相差を与える光学フィルムを視認側偏光板よりもカバー層側に設け、且つ、光学フィルムの遅相軸と、偏光フィルムの透過軸との交差角を約45°とすれば、偏光サングラスを装着した状態でもタッチパネル付き表示装置の操作が可能となる。また、光学補償用の位相差フィルムを有する表示パネル側基材を視認側偏光板よりも表示パネル側に設ければ、視野角依存性や、斜視時の偏光板の光漏れ現象を補償することができる。
なお、上記第二発明において、「約45°」とは、表示パネル側から視認側偏光板を通ってカバー層側へと進む直線偏光を光学フィルムで円偏光または楕円偏光に変えて偏光サングラスを装着した状態での操作を可能とし得る角度であり、例えば、45°±10°の角度範囲を指す。
【0013】
また、これらの第一及び第二発明の場合、前記表示パネルが、液晶パネルであることが好ましい。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的としたものであり、本発明の第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、表示パネルとカバー層との間に、円偏光板、第一の導電層および第二の導電層を有する積層体を備え、前記円偏光板は、基材と、偏光板とを含み、前記第一の導電層、前記第二の導電層および前記基材は、前記偏光板よりも前記表示パネル側に位置し、且つ、前記第一の導電層は、前記第二の導電層よりも前記カバー層側に位置し、前記第一の導電層および前記第二の導電層は、積層方向に互いに離隔して配置されて静電容量式タッチセンサーを構成し、前記第一の導電層は、前記基材の前記カバー層側の表面に形成され、前記第二の導電層は、前記基材の前記表示パネル側の表面に形成され、前記基材は、λ/4の位相差を有する光学フィルムを有し、前記偏光板は、偏光フィルムを有することを特徴とする。このように、光にλ/4の位相差を与える光学フィルムを有する基材を偏光板よりも表示パネル側に有する円偏光板を表示パネルとカバー層との間に設ければ、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することが可能となる。また、第一の導電層および第二の導電層の双方を一つの基材に形成すれば、導電層を形成するための透明基板を別途使用する必要がないので、タッチセンサーの構造を簡素化して表示パネルとカバー層との間の厚さを薄くすることができる。
なお、本発明において、「円偏光板」とは、カバー層側から表示パネル側に向かって入射した光を直線偏光に変えた後、該直線偏光を円偏光に変えると共に、該円偏光の表示パネルでの反射光である逆円偏光を前記直線偏光とは直交する他の直線偏光に変えることにより、反射光のカバー層側への透過を防止することができる部材であり、少なくとも、偏光板と、該偏光板よりも表示パネル側に配置された、λ/4の位相差を有する光学フィルムとを備えるものである。具体的には、「円偏光板」としては、例えば、偏光フィルムを有する偏光板と、λ/4の位相差を有する光学フィルムとを光学フィルムの遅相軸と偏光フィルムの透過軸との交差角が所定角度となるように順次積層したものや、後述する、偏光フィルムを有する偏光板と、λ/2の位相差を有する光学フィルムと、λ/4の位相差を有する光学フィルムとを各光学フィルムの遅相軸と偏光フィルムの透過軸との交差角が所定角度となるように順次積層したものが挙げられる。なお、円偏光板を構成する偏光板と各種光学フィルムとは、積層方向に互いに離隔して配置されていてもよく、偏光板と光学フィルムとの間や、光学フィルム間には他の部材が介装されていてもよい。
【0015】
また、上記第三発明の場合、積層方向から見て、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約45°であることが好ましい。光学フィルムの遅相軸と、偏光フィルムの透過軸との交差角を約45°とし、偏光板と、λ/4の位相差を有する光学フィルムとで円偏光板を形成すれば、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することが可能となる。
なお、上記第三発明において、「約45°」とは、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することが可能とし得る角度であり、例えば、45°±5°の角度範囲を指す。
なお、上記第三発明の場合、前記光学フィルムが、逆波長分散特性を有することが好ましい。このようにすれば、光学フィルムに入射した光が長波長になるほど与えられる位相差の絶対値が大きくなり、短波長になるほど与えられる位相差の絶対値が小さくなるので、広い波長領域で所望の偏光特性を得て、直線偏光を良好に円偏光に変えることができる。
【0016】
また、本発明の第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、前記円偏光板が、前記基材と前記偏光板との間に位置する偏光板側基材を更に含み、前記偏光フィルムが、前記偏光板の前記表示パネル側の表面に位置し、前記偏光板側基材が、前記偏光フィルムの前記表示パネル側の表面に貼り合わされており、積層方向から見て、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約75°であり、前記偏光板側基材がλ/2の位相差を有する他の光学フィルムを有し、積層方向から見て、前記他の光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約15°であることが好ましい。光学フィルムの遅相軸と、偏光フィルムの透過軸との交差角を約75°とし、前記他の光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角を約15°とすれば、光学フィルムと他の光学フィルムとで所謂広帯域1/4波長板を形成し、広い波長領域で所望の偏光特性を得て、直線偏光を良好に円偏光に変えることができる。従って、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを良好に防止することが可能となる。また、前記偏光フィルムが、前記偏光板の前記表示パネル側の表面に位置し、前記偏光板側基材が、前記偏光フィルムの前記表示パネル側の表面に貼り合わされていれば、偏光板側基材を偏光フィルムの保護フィルムとして用いることができる。その結果、偏光板の表示パネル側保護フィルムを不要とし、偏光板の厚さを薄くすることができる。
なお、上記第三発明において、「約75°」および「約15°」とは、広帯域1/4波長板を形成して入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することを可能とし得る角度であり、それぞれ、例えば、「75°±5°」、「15°±5°」の角度範囲を指し、「約75°」および「約15°」とは、偏光フィルムの透過軸に対して同じ方向に測定された角度である。
さらに、本発明の第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、前記円偏光板が、前記基材と前記偏光板との間に位置する偏光板側基材を更に含み、前記偏光フィルムが、前記偏光板の前記表示パネル側の表面に位置し、前記偏光板側基材が、前記偏光フィルムの前記表示パネル側の表面に貼り合わされており、積層方向から見て、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約90°であり、前記偏光板側基板がλ/2の位相差を有する他の光学フィルムを有し、積層方向から見て、前記他の光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角が約22.5°であることが好ましい。光学フィルムの遅相軸と、偏光フィルムの透過軸との交差角を約90°とし、前記他の光学フィルムの遅相軸と、前記偏光フィルムの透過軸との交差角を約22.5°とすれば、光学フィルムと他の光学フィルムとで所謂広帯域1/4波長板を形成し、広い波長領域で所望の偏光特性を得て、直線偏光を良好に円偏光に変えることができる。従って、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することが可能となる。また、前記偏光フィルムが、前記偏光板の前記表示パネル側の表面に位置し、前記偏光板側基材が、前記偏光フィルムの前記表示パネル側の表面に貼り合わされていれば、偏光板側基材を偏光フィルムの保護フィルムとして用いることができる。その結果、偏光板の表示パネル側保護フィルムを不要とし、偏光板の厚さを薄くすることができる。
なお、上記第三発明において、「約90°」および「約22.5°」とは、広帯域1/4波長板を形成して入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することを可能とし得る角度であり、それぞれ、例えば、「90°±5°」、「22.5°±5°」の角度範囲を指し、「約90°」および「約22.5°」とは、偏光フィルムの透過軸に対して同じ方向に測定された角度である。
なお、上記第三発明の場合、前記表示パネルが、有機EL表示パネルを含むことが好ましい。
【0017】
そして、第一〜第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置では、前記光学フィルム、前記位相差フィルム、および/または前記他の光学フィルムの比誘電率が、2以上5以下であることが好ましい。また、前記光学フィルム、前記位相差フィルム、および/または前記他の光学フィルムの飽和吸水率が、0.01質量%以下であることが好ましい。さらに、前記光学フィルム、前記位相差フィルム、および/または前記他の光学フィルムが、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートまたはトリアセチルセルロースからなることが好ましく、極性基を有さないシクロオレフィンポリマーであることがより好ましい。上述した光学フィルム、位相差フィルム、および/または他の光学フィルムを、基材および/または偏光板側基材に用いれば、静電容量式タッチセンサーを良好に形成することができる。
なお、本発明において、「比誘電率」は、ASTM D150に準拠して測定することができる。また、本発明において、「飽和吸水率」は、ASTM D570に準拠して測定することができる。
【0018】
そして、第一〜第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置では、前記光学フィルムおよび/または前記他の光学フィルムが、斜め延伸フィルムであることが好ましい。光学フィルムおよび/または他の光学フィルムが斜め延伸フィルムであれば、偏光板と、光学フィルムおよび/または他の光学フィルムとを含む積層体をロール・トゥ・ロールで容易に製造することができる。
【0019】
そして、第一〜第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置では、前記第一の導電層および前記第二の導電層が、酸化インジウムスズ、カーボンナノチューブまたは銀ナノワイヤーを用いて形成されていることが好ましい。
【0020】
そして、第三発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置では、円偏光板が基材と偏光板との間に位置する偏光板側基材を更に含む場合、インデックスマッチング層を有さないことが好ましい。このようにすれば、タッチセンサーの構造を簡素化して表示パネルとカバー層との間の厚さを薄くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄型化された静電容量式タッチパネル付き表示装置を提供することができる。
特に、本発明によれば、偏光サングラスを装着した状態でも操作が可能であり、且つ、薄型化された静電容量式タッチパネル付き表示装置を提供することができる。また、本発明によれば、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することが可能であり、且つ、薄型化された静電容量式タッチパネル付き表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。また、各図において、各部材間に位置している空間部分には、本発明の目的を達成し得る範囲内で、追加の層またはフィルムを設けてもよい。ここで、追加の層またはフィルムとしては、例えば、各部材同士を貼りあわせて一体化するための接着剤層または粘着剤層が挙げられ、接着剤層または粘着剤層は、可視光に対して透明であることが好ましく、また、無用な位相差を発生させないものであることが好ましい。
【0024】
<静電容量式タッチパネル付き表示装置(第一実施形態)>
図1に、本発明に従う第1の静電容量式タッチパネル付き表示装置の要部の断面構造を模式的に示す。ここで、
図1に示す静電容量式タッチパネル付き表示装置100は、画面に画像情報を表示する表示機能と、操作者が触れた画面位置を検知して外部へ情報信号として出力するタッチセンサー機能とを重ね備える装置である。
【0025】
静電容量式タッチパネル付き表示装置100は、バックライトが照射される側(
図1では下側。以下、単に「バックライト側」という。)から操作者が画像を視認する側(
図1では上側。以下、単に「視認側」という。)に向かって、バックライト側偏光板10と、表示パネル20としての液晶パネルと、光学補償用の位相差フィルム30と、視認側偏光板40と、第二の導電層50と、基材60と、第一の導電層70と、カバー層80とを順次積層して有している。そして、この静電容量式タッチパネル付き表示装置100では、第一の導電層70が基材60の一方(カバー層80側)に形成されており、第二の導電層50が基材60の他方(表示パネル20側)の表面に形成されている。
なお、バックライト側偏光板10と、表示パネル20と、位相差フィルム30と、視認側偏光板40と、第一の導電層70及び第二の導電層50が形成された基材60と、カバー層80とは、接着剤層または粘着剤層、或いは、部材表面のプラズマ処理等の既知の手段を用いて各部材同士を互いに貼り合わせることにより、一体化することができる。即ち、
図1における積層構造の隙間部分には、例えば、接着剤層または粘着剤層が形成される。
【0026】
[バックライト側偏光板]
バックライト側偏光板10としては、偏光フィルムを有する既知の偏光板、例えば、偏光フィルムを2枚の保護フィルムで挟んでなる偏光板を用いることができる。そして、バックライト側偏光板10は、バックライト側偏光板10の偏光フィルムの透過軸と、後に詳細に説明する視認側偏光板40の偏光フィルム42の透過軸とが積層方向(
図1では上下方向)に見て直交するように配置されて、表示パネル20としての液晶パネルを利用した画像の表示を可能にする。
【0027】
[表示(液晶)パネル]
表示パネル20としての液晶パネルとしては、2枚の基板間に液晶層を挟んでなる液晶パネル、例えば、バックライト側に位置する薄膜トランジスタ基板21と、視認側に位置するカラーフィルタ基板23との間に液晶層22を挟んでなる液晶パネルを用いることができる。そして、静電容量式タッチパネル付き表示装置100では、バックライト側偏光板10と視認側偏光板40との間に配置された液晶パネルの液晶層22に通電することにより、操作者に対して所望の画像を表示する。
なお、薄膜トランジスタ基板21およびカラーフィルタ基板23としては、既知の基板を用いることができる。また、液晶層22としては、既知の液晶層を用いることができる。なお、本発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置に用い得る表示パネル20は、上記構造の液晶パネルに限定されることはない。
【0028】
[位相差フィルム]
位相差フィルム30は、光学補償用のフィルムであり、液晶層22の視野角依存性や、斜視時の偏光板10,40の光漏れ現象を補償して、静電容量式タッチパネル付き表示装置100の視野角特性を向上させる。
そして、位相差フィルム30としては、例えば、既知の縦一軸延伸フィルム、横一軸延伸フィルム、縦横二軸延伸フィルム、または、液晶性化合物を重合させてなる位相差フィルムを用いることができる。具体的には、位相差フィルム30としては、特に限定されることなく、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂を既知の方法で製膜してなる熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸したものが挙げられる。そして、市販の熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、「エスシーナ」、「SCA40」(積水化学工業製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン製)、「アートンフィルム」(JSR製)などが挙げられる(いずれも商品名)。
また、位相差フィルム30の両表面に、後述するハードコート層を形成してもよい。
なお、位相差フィルム30は、積層方向に見て、位相差フィルム30の遅相軸と、偏光板10,40の偏光フィルムの透過軸とが、例えば、平行になるように、または、直交するように配置することができる。
【0029】
[視認側偏光板]
視認側偏光板40としては、特に限定されることなく、例えば、偏光フィルム42を2枚の保護フィルム(バックライト側保護フィルム41およびカバー層側保護フィルム43)で挟んでなる偏光板40を用いることができる。
【0030】
[第二の導電層]
第二の導電層50は、基材60の一方(表示パネル20側)の表面に形成されており、視認側偏光板40と、基材60との間、より詳細には視認側偏光板40のカバー層側保護フィルム43と、基材60との間に位置している。そして、第二の導電層50は、基材60を挟んで積層方向に離隔して位置する第一の導電層70と共に静電容量式のタッチセンサーを構成する。
【0031】
ここで、第二の導電層50は、可視光領域において透過度を有し、かつ導電性を有する層であればよく、特に限定されないが、導電性ポリマー;銀ペーストやポリマーペーストなどの導電性ペースト;金や銅などの金属コロイド;酸化インジウムスズ(スズドープ酸化インジウム:ITO)、アンチモンドープスズ酸化物(ATO)、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物、カドミウム−スズ酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物;ヨウ化銅などの金属化合物;金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの金属;銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブ(CNT)などの無機または有機系ナノ材料;を用いて形成することができる。これらの中でも、酸化インジウムスズ、カーボンナノチューブまたは銀ナノワイヤーが好ましく、光透過性および耐久性の観点からは酸化インジウムスズが特に好ましい。
なお、CNTを使用する場合、用いられるCNTは、単層CNT、二層CNT、三層以上の多層CNTの何れであってもよいが、直径が0.3〜100nmであり、長さが0.1〜20μmであることが好ましい。なお、導電層の透明性を高め、表面抵抗値を低減する観点からは、直径10nm以下、長さ1〜10μmの単層CNTまたは二層CNTを用いることが好ましい。また、CNTの集合体にはアモルファスカーボンや触媒金属などの不純物は極力含まれないことが好ましい。
【0032】
[第一の導電層]
第一の導電層70は、基材60の他方(カバー層80側)の表面に形成されており、第二の導電層50よりもカバー層80側、より具体的には、基材60と、カバー層80との間に位置している。そして、第一の導電層70は、基材60を挟んで積層方向に離隔して位置する第二の導電層50と共に静電容量式のタッチセンサーを構成する。
【0033】
そして、第一の導電層70は、第二の導電層50と同様の材料を用いて形成することができる。
【0034】
ここで、静電容量式のタッチセンサーを構成する導電層50,70は、パターン化して形成される場合が多い。具体的には、静電容量式タッチセンサーを構成する第一の導電層70および第二の導電層50は、対向配置して積層方向に見た際に、直線格子、波線格子またはダイヤモンド状格子などを形成するパターンで形成することができる。なお、波線格子とは、交差部間に少なくとも一つの湾曲部を有する形状を指す。
【0035】
そして、基材60の各表面上への第一の導電層70および第二の導電層50の形成は、特に限定されることなく、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法、コーティング法などを用いて行うことができる。
【0036】
なお、第一の導電層70および第二の導電層50の厚みは、例えばITOからなる場合には、特に限定されることなく、好ましくは10〜150nmとすることができ、更に好ましくは15〜70nmとすることができる。また、第一の導電層70および第二の導電層50の表面抵抗率は、特に限定されることなく、好ましくは100〜1000Ω/□とすることができる。
【0037】
[光学フィルムを有する基材]
第一の導電層70および第二の導電層50が形成された基材60は、(2n−1)λ/4の位相差[但し、nは正の整数である]を有する光学フィルム62と、光学フィルム62の両表面に形成されたハードコート層61,63とを有している。そして、基材60は、第二の導電層50と第一の導電層70との間に位置しており、第一の導電層70および第二の導電層50を用いて構成される静電容量式タッチセンサーの絶縁層として機能する。なお、基材60の光学フィルム62は、当該光学フィルム62の遅相軸と、視認側偏光板40の偏光フィルム42の透過軸との交差角が、積層方向から見て、所定の角度となるように配置されている。
【0038】
ここで、「所定の角度」とは、表示パネル20としての液晶パネル側から視認側偏光板40を通ってカバー層80側へと進む直線偏光を円偏光または楕円偏光に変えて、操作者が偏光サングラスを装着した状態でも表示内容を視認可能にし得る角度である。具体的には、所定の角度は、約45°程度、より具体的には45°±10°、好ましくは45°±3°、より好ましくは45°±1°、更に好ましくは45°±0.3°の範囲内の角度である。
【0039】
また、「(2n−1)λ/4の位相差[但し、nは正の整数である]を有する」とは、光学フィルム62を積層方向に透過した光に対して与える位相差(レタデーションRe)が光の波長λの約(2n−1)/4倍[但し、nは正の整数であり、好ましくは1である]であることを指す。具体的には、透過する光の波長範囲が400nm〜700nmの場合、Reが波長λの約(2n−1)/4倍であるとは、Reが(2n−1)λ/4±65nm、好ましくは(2n−1)λ/4±30nm、より好ましくは(2n−1)λ/4±10nmの範囲であることをいう。なお、Reは、式:Re=(nx−ny)×d[式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の遅相軸に面内で直交する方向の屈折率であり、dは光学フィルム62の厚みである]で表される面内方向レターデーションである。
【0040】
また、
図1に示すように、この一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置100では、静電容量式のタッチセンサーを構成する第一の導電層70と、第二の導電層50とが光学フィルム62を有する基材60を挟んで対向しているところ、基材60の厚みムラが均一であれば、第一の導電層70と第二の導電層50との間の距離を一定に保ってタッチセンサーの検出感度を良好なものとすることができる。
【0041】
[[光学フィルム]]
光学フィルム62としては、熱可塑性樹脂を製膜および延伸することにより得られる、配向処理が施されたフィルムを用いることができる。
ここで、熱可塑性樹脂の延伸方法としては、既知の延伸方法を用いることができるが、斜め延伸を用いることが好ましい。光学フィルム62は、光学フィルム62の遅相軸と、視認側偏光板40の偏光フィルム42の透過軸とが所定の角度で交差するように積層する必要があるところ、一般的な延伸処理(縦延伸処理または横延伸処理)を施した延伸フィルムの光軸の向きは、フィルムの幅方向と平行な方向または幅方向に直交する方向である。そのため、当該一般的な延伸フィルムと、偏光フィルムとを所定の角度で積層するには、延伸フィルムを斜め枚葉に裁断する必要がある。しかし、斜め延伸したフィルムでは、光軸の向きがフィルムの幅方向に対して傾斜した方向になるので、光学フィルム62として斜め延伸フィルムを使用すれば、視認側偏光板40および光学フィルム62を含む積層体をロール・トゥ・ロールで容易に製造することができるからである。なお、視認側偏光板40および光学フィルム62を含む積層体をロール・トゥ・ロールで製造する場合には、光学フィルム62として用いる斜め延伸フィルムの配向角は、積層体を形成した際に光学フィルム62の遅相軸と、偏光フィルム42の透過軸とが上記所定の角度となるように調整すればよい。
【0042】
斜め延伸の方法としては、特開昭50−83482号公報、特開平2−113920号公報、特開平3−182701号公報、特開2000−9912号公報、特開2002−86554号公報、特開2002−22944号公報などに記載されたものを用いることができる。斜め延伸に用いる延伸機は特に制限されず、従来公知のテンター式延伸機を使用することができる。また、テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機などがあるが、長尺のフィルムを連続的に斜め延伸できるものであれば、特に制限されず、種々のタイプの延伸機を使用することができる。
【0043】
また、熱可塑性樹脂を斜め延伸するときの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg−30℃からTg+60℃の間、より好ましくはTg−10℃からTg+50℃の間である。また、延伸倍率は、通常、1.01〜30倍、好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.01〜5倍である。
【0044】
光学フィルム62の形成に使用し得る熱可塑性樹脂としては、特に限定されることなく、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。この中でも、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびトリアセチルセルロースが好ましく、比誘電率が低いため、シクロオレフィンポリマーが更に好ましく、比誘電率および吸水率の双方が低いため、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの極性基を有さないシクロオレフィンポリマーが特に好ましい。
【0045】
シクロオレフィンポリマーとしては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、および、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体またはそれらの水素化物、或いは、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体またはそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0046】
市販のシクロオレフィンポリマーとしては、例えば、「Topas」(Ticona製)、「アートン」(JSR製)、「ゼオノア(ZEONOR)」および「ゼオネックス(ZEONEX)」(日本ゼオン製)、「アペル」(三井化学製)などがある(いずれも商品名)。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、熱可塑性樹脂製の光学フィルム62を得ることができる。製膜には、溶剤キャスト法や溶融押出法など、公知の製膜手法が適宜用いられる。また、製膜されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されており、例えば、「エスシーナ」、「SCA40」(積水化学工業製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン製)、「アートンフィルム」(JSR製)などがある(いずれも商品名)。延伸前の熱可塑性樹脂フィルムは、一般には未延伸の長尺のフィルムであり、長尺とは、フィルムの幅に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0047】
上述した熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃である。また、熱可塑性樹脂の光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10
-12Pa
-1以下、より好ましくは7×10
-12Pa
-1以下、特に好ましくは4×10
-12Pa
-1以下である。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。光弾性係数がこのような範囲にある透明な熱可塑性樹脂を用いると、光学フィルムの面内方向レターデーションReのバラツキを小さくすることができる。更に、このような光学フィルムを、液晶パネルを用いた表示装置に適用した場合に、表示装置の表示画面の端部の色相が変化する現象を抑えることができる。
【0048】
なお、光学フィルム62の形成に用いる熱可塑性樹脂には、他の配合剤を配合してもよい。配合剤としては、格別限定はないが、層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤;等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、或いは、二種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0049】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、低吸水性等を低下させることなく、フィルム成形時の酸化劣化等によるフィルムの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、熱可塑性樹脂100質量部に対して通常0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0050】
無機微粒子としては、0.7〜2.5μmの平均粒子径と、1.45〜1.55の屈折率を有するものが好ましい。具体的には、クレー、タルク、シリカ、ゼオライト、ハイドロタルサイトが挙げられ、中でも、シリカ、ゼオライトおよびハイドロタルサイトが好ましい。無機微粒子の添加量は、特に制限されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、通常0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部である。
【0051】
滑剤としては、炭化水素系滑剤;脂肪酸系滑剤;高級アルコール系滑剤;脂肪酸アマイド系滑剤;脂肪酸エステル系滑剤;金属石鹸系滑剤;が挙げられる。中でも、炭化水素系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤および脂肪酸エステル系滑剤が好ましい。更に、この中でも、融点が80℃〜150℃および酸価が10mgKOH/mg以下のものが特に好ましい。
融点が80℃〜150℃をはずれ、さらに酸価が10mgKOH/mgよりも大きくなるとヘイズ値が大きくなる虞がある。
【0052】
そして、光学フィルム62として用いられる延伸フィルムの厚みは、例えば、5〜200μm程度となるようにするのが適当であり、好ましくは20〜100μmである。フィルムが薄すぎると強度が不足したりレターデーション値が不足する虞があり、厚すぎると透明性が低下したり目的のレターデーション値が得られ難くなる虞がある。
【0053】
また、光学フィルム62として用いられる延伸フィルムは、フィルム内に残留している揮発性成分の含有量が100質量ppm以下であることが好ましい。揮発性成分含有量が上記範囲にある延伸フィルムは、長期間使用しても表示ムラが発生せず、光学特性の安定性に優れる。ここで、揮発性成分は、熱可塑性樹脂に微量含まれる分子量が200以下の比較的低沸点の物質であり、例えば、熱可塑性樹脂を重合した際に残留した残留単量体や、溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、ガスクロマトグラフィーを用いて熱可塑性樹脂を分析することにより定量することができる。
【0054】
なお、揮発性成分含有量が100質量ppm以下の延伸フィルムを得る方法としては、例えば、(a)揮発性成分含有量が100質量ppm以下の未延伸フィルムを斜め延伸する方法、(b)揮発性成分含有量が100質量ppmを超える未延伸フィルムを用いて、斜め延伸の工程中、または延伸後に乾燥して揮発性成分含有量を低減する方法などが挙げられる。これらの中でも、揮発性成分含有量がより低減された延伸フィルムを得るには、(a)の方法が好ましい。(a)の方法において、揮発性成分含有量が100質量ppm以下である未延伸フィルムを得るには、揮発性成分含有量が100質量ppm以下の樹脂を溶融押出成形することが好ましい。
【0055】
そして、光学フィルム62として用いられる延伸フィルムの飽和吸水率は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.007質量%以下である。飽和吸水率が0.01質量%を越えると、使用環境により延伸フィルムに寸法変化が生じて内部応力が発生することがある。そして、例えば、表示パネル20として反射型液晶パネルを用いた場合に、黒表示が部分的に薄くなる(白っぽく見える)などの表示ムラが発生するおそれがある。一方で、飽和吸水率が上記範囲にある延伸フィルムは、長期間使用しても表示ムラが発生せず、光学特性の安定性に優れる。
また、光学フィルム62の飽和吸水率が0.01質量%以下であれば、吸水により光学フィルム62の比誘電率が経時的に変化するのを抑制することができる。従って、
図1に示すように、静電容量式のタッチセンサーを構成する第一の導電層70と第二の導電層50との間に光学フィルム62を有する基材60を配置した場合であっても、光学フィルム62の比誘電率の変化に起因したタッチセンサーの検出感度の変動を抑制することができる。
なお、延伸フィルムの飽和吸水率は、フィルムの形成に使用する熱可塑性樹脂の種類などを変更することにより調整することができる。
【0056】
また、光学フィルム62として用いられる延伸フィルムの比誘電率は、2以上であることが好ましく、5以下であることが好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。
図1に示すように、この一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置100では、静電容量式のタッチセンサーを構成する第一の導電層70と第二の導電層50との間に光学フィルム62を有する基材60が配置されている。従って、基材60に含まれる光学フィルム62の比誘電率を小さくすれば、第一の導電層70と第二の導電層50との間の静電容量を低くし、静電容量式タッチセンサーの検出感度を向上させることができるからである。
【0057】
[[ハードコート層]]
光学フィルム62の両表面に形成されたハードコート層61,63は、光学フィルム62の傷つきやカールを防止するためのものである。ハードコート層61,63の形成に用いられる材料としては、JIS K5700に規定される鉛筆硬度試験で、「HB」以上の硬度を示すものが好適である。このような材料としては、例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリレート系、多官能(メタ)アクリル系化合物等の有機系ハードコート層形成材料;二酸化ケイ素等の無機系ハードコート層形成材料;等が挙げられる。中でも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、(メタ)アクリレート系、多官能(メタ)アクリル系化合物のハードコート層形成材料の使用が好ましい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを指し、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを指す。
【0058】
(メタ)アクリレートとしては、重合性不飽和基を分子内に1つ有するもの、2つ有するもの、3つ以上有するもの、重合性不飽和基を分子内に3つ以上含有する(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。(メタ)アクリレートは、単独で用いられてもよく、2種類以上のものを用いてもよい。
【0059】
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、ハードコート層形成材料の塗工液を、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、ダイコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法等、公知の方法により光学フィルム62上に塗工し、空気や窒素などの雰囲気下で乾燥により溶剤を除去した後に、アクリル系ハードコート層材料を塗布し、紫外線や電子線等によって架橋硬化させたり、シリコーン系、メラミン系、エポキシ系のハードコート層材料を塗布し、熱硬化させたりして行われる。乾燥時に、塗膜の膜厚ムラが生じやすいため、塗膜外観を損ねないよう吸気と排気とを調整し、塗膜全面が均一になるように制御することが好ましい。紫外線で硬化する材料を使用する場合、塗布後のハードコート層形成材料を紫外線照射により硬化させる照射時間は、通常0.01秒から10秒の範囲であり、エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、通常40mJ/cm
2から1000mJ/cm
2の範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素およびアルゴン等の不活性ガス中において行なってもよく、空気中で行ってもよい。
【0060】
なお、ハードコート層61,63を設ける場合、光学フィルム62として用いる延伸フィルムには、ハードコート層61,63との接着性を高める目的で表面処理を施してもよい。該表面処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理等が挙げられる。とりわけ光学フィルム62が熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる場合には、コロナ処理を用いることで、上記熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルム62とハードコート層61,63との密着を強固とすることができる。コロナ処理条件としては、コロナ放電電子の照射量が1〜1000W/m
2/minであることが好ましい。上記コロナ処理後の光学フィルム62の水に対する接触角は、10〜50°であることが好ましい。また、ハードコート層形成材料の塗工液は、コロナ処理をした直後に塗工しても、除電させてから塗工してもよいが、ハードコート層61,63の外観が良好となることから、除電させてから塗工した方が好ましい。
【0061】
光学フィルム62上に形成されるハードコート層61,63の平均厚みは、通常0.5μm以上30μm以下、好ましくは2μm以上15μm以下である。ハードコート層61,63の厚さがこれよりも厚すぎると、視認性で問題になる可能性があり、薄すぎると耐擦傷性が劣る可能性がある。
【0062】
ハードコート層61,63のヘイズは、0.5%以下、好ましくは0.3%以下である。このようなヘイズ値であることにより、ハードコート層61,63をタッチパネル付き表示装置100内で好適に使用することができる。
【0063】
なお、ハードコート層形成材料には、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、有機粒子、無機粒子、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等を添加してもよい。
【0064】
なお、本発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置では、基材60は、ハードコート層61,63を有していなくてもよいし、また、ハードコート層61,63に替えて、或いは、加えて、インデックスマッチング層や低屈折率層等の光学機能層を有していてもよい。
【0065】
[[インデックスマッチング層]]
ここで、インデックスマッチング層は、基材60の光学フィルム62と基材60上に形成された導電層50,70との間、特に、光学フィルム62と第一の導電層70との間に生じる屈折率の差に起因して起きる層の界面における光の反射を防ぐ目的で、例えば、光学フィルム62と導電層50,70との間(界面)に設けられるものである。インデックスマッチング層としては、交互に配置された複数の高屈折率膜および低屈折率膜を含むものや、ジルコニア等の金属を含む樹脂層が挙げられる。光学フィルム62と導電層50,70との屈折率が大きく異なっていたとしても、光学フィルム62と導電層50,70との間で導電層50,70に隣接配置されたインデックスマッチング層によって、基材60の、導電層50,70が設けられている領域と、導電層50,70が設けられていない領域とで反射率が大きく変化してしまうことを防止することができる。
【0066】
[[低屈折率層]]
低屈折率層は、光の反射を防止する目的で設けられるものであり、例えばハードコート層61,63上に設けることができる。ハードコート層61,63上に設ける場合、低屈折率層とは、ハードコート層61,63の屈折率よりも低い屈折率を有する層を指す。低屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nmで1.30〜1.45の範囲であることが好ましく、1.35〜1.40の範囲であることがより好ましい。
【0067】
低屈折率層としては、SiO
2、TiO
2、NaF、Na
3AlF
6、LiF、MgF
2、CaF
2、SiO、SiO
X、LaF
3、CeF
3、Al
2O
3、CeO
2、Nd
2O
3、Sb
2O
3、Ta
2O
5、ZrO
2、ZnO、ZnS等よりなる無機化合物が好ましい。また、無機化合物と、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機化合物との混合物も低屈折率層形成材料として好ましく用いられる。一例として、紫外線硬化樹脂とシリカ中空粒子とを含む組成物を塗布し、紫外線を照射することにより形成した低屈折率層が挙げられる。低屈折率層の膜厚は、膜厚70nm以上120nm以下が好ましく、より好ましくは80nm以上110nm以下である。低屈折率層の膜厚が120nmを超えると、反射色に色味が付き、黒表示の時の色再現性が無くなるため、視認性が低下し、好ましくない場合がある。
【0068】
[カバー層]
カバー層80は、既知の部材、例えば、ガラス製またはプラスチック製の、可視光に対して透明な板を用いて形成することができる。
【0069】
そして、静電容量式タッチパネル付き表示装置100によれば、視認側偏光板40とカバー層80との間に所定の位相差を有する光学フィルム62を備えた基材60を配置しているので、視認側偏光板40を通ってカバー層80側へと進む直線偏光を円偏光または楕円偏光に変えることができる。従って、静電容量式タッチパネル付き表示装置100は、操作者の偏光サングラスの透過軸と視認側偏光板40の偏光フィルム42の透過軸とが直交し、所謂クロスニコル状態になった場合でも、操作者が表示内容を視認することができる。
また、静電容量式タッチパネル付き表示装置100では、第二の導電層50及び第一の導電層70の双方が一つの基材60に設けられているので、第二の導電層を形成するための透明基板及び第一の導電層を形成するための透明基板を別途設ける必要が無い。従って、タッチセンサーの構造を簡素化し、視認側偏光板40とカバー層80との間に存在する部材の数を削減して、表示パネル20としての液晶パネルとカバー層80との間の厚さを薄くすることができる。その結果、表示装置100の薄厚化を達成することができる。なお、この表示装置100では、基材60の両面に導電層50,70を形成しているので、基材60の表面に導電層50,70の一方を形成し、他部材の表面に導電層50,70の他方を形成した場合と比較して、例えば、部材積層時に第一の導電層70と第二の導電層50のパターンがずれることを防止することができる。
【0070】
更に、上記一例の表示装置100では、静電容量式タッチセンサーを構成する第一の導電層70および第二の導電層50を視認側偏光板40とカバー層80との間に配設しているので、視認側偏光板40よりも表示パネル20としての液晶パネル側に第一の導電層70および第二の導電層50を設けた場合と比較し、装置を薄厚化した場合であっても、液晶パネルと、タッチセンサーを構成する第一の導電層70および第二の導電層50との間の距離を確保して、液晶パネル側から受ける電気的なノイズの影響によるタッチセンサーの感度低下を抑制することができる。
また、表示装置100では、第一の導電層70と第二の導電層50との間に基材60を配設しているので、静電容量式タッチセンサーを容易に構成することができる。また、基材60の光学フィルム62として、比誘電率が低く、また、飽和吸水率が小さいフィルムを用いることができるので、静電容量式タッチセンサーを良好に形成することができる。
【0071】
<静電容量式タッチパネル付き表示装置(第二実施形態)>
図2に、本発明に従う第2の静電容量式タッチパネル付き表示装置の要部の断面構造を模式的に示す。
ここで、
図2に示す静電容量式タッチパネル付き表示装置200は、
・第二の導電層50が、基材60の一方(表示パネル20側)の表面に形成されておらず、光学補償用の位相差フィルム30からなる表示パネル側基材の一方(表示パネル20側)の表面に形成されている点、
・第一の導電層70が、基材60の他方(カバー層80側)の表面に形成されておらず、光学補償用の位相差フィルム30からなる表示パネル側基材の他方(カバー層80側)の表面に形成されている点、
において先の一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置100と構成が異なっており、他の点では、静電容量式タッチパネル付き表示装置100と同様の構成を有している。
【0072】
ここで、位相差フィルム30からなる表示パネル側基材上への第二の導電層50及び第一の導電層70の形成は、静電容量式タッチパネル付き表示装置100における導電層の形成で用いたのと同様の方法を用いて行うことができる。
また、
図2に示すように、この一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置200では、静電容量式のタッチセンサーを構成する第一の導電層70と、第二の導電層50とが位相差フィルム30からなる表示パネル側基材を挟んで対向しているところ、位相差フィルム30からなる表示パネル側基材の厚みムラが均一であれば、第一の導電層70と第二の導電層50との間の距離を一定に保ってタッチセンサーの検出感度を良好なものとすることができる。
なお、この静電容量式タッチパネル付き表示装置200は、基材60を有していなくてもよい。また、静電容量式タッチパネル付き表示装置200の表示パネル側基材は、位相差フィルム30の両表面にハードコート層や、インデックスマッチング層や、低屈折率層を形成したものであってもよい。ここで、ハードコート層、インデックスマッチング層および低屈折率層としては、基材60の光学フィルム62の表面に形成するものと同様のものを用いることができる。さらに、静電容量式タッチパネル付き表示装置200の表示パネル側基材は、位相差フィルム30からなるものではなく、所定の光学機能を有する原反フィルムからなるものであってもよい。
【0073】
そして、上述した静電容量式タッチパネル付き表示装置200によれば、先の一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置100と同様に、操作者の偏光サングラスの透過軸と視認側偏光板40の偏光フィルム42の透過軸とが直交し、所謂クロスニコル状態になった場合でも、操作者が表示内容を視認することができる。また、第二の導電層50及び第一の導電層70の双方が一つの表示パネル側基材(位相差フィルム30)に設けられているので、表示パネル20としての液晶パネルの視野角依存性や、斜視時の偏光板の光漏れ現象を位相差フィルム30で補償しつつ、タッチセンサーの構造を簡素化し、表示パネル20としての液晶パネルとカバー層80との間の厚さを薄くすることができる。また、表示装置200では、位相差フィルム30からなる表示パネル側基材を用いて静電容量式タッチセンサーを、容易に且つ良好に形成することができる。
なお、この表示装置200では、表示パネル側基材としての位相差フィルム30の両面に導電層50,70を形成しているので、位相差フィルム30の表面に導電層50,70の一方を形成し、他部材の表面に導電層50,70の他方を形成した場合と比較して、例えば、部材積層時に第一の導電層70と第二の導電層50のパターンがずれることを防止することができる。
【0074】
<静電容量式タッチパネル付き表示装置(第三実施形態)>
図3に、本発明に従う第3の静電容量式タッチパネル付き表示装置の要部の断面構造を模式的に示す。ここで、
図3に示す静電容量式タッチパネル付き表示装置300は、画面に画像情報を表示する表示機能と、操作者が触れた画面位置を検知して外部へ情報信号として出力するタッチセンサー機能とを重ね備える装置である。
【0075】
静電容量式タッチパネル付き表示装置300は、有機EL表示(OLED)パネルが配置される側(
図3では下側。以下、単に「表示パネル側」という。)から操作者が画像を視認する側(
図3では上側。以下、単に「視認側」という。)に向かって、表示パネル20としての有機EL表示(OLED)パネル24およびバリア層25と、第二の導電層50と、基材60と、第一の導電層70と、偏光板40としての表示パネル側保護フィルム41、偏光フィルム42およびカバー層側保護フィルム43と、カバー層80とを順次積層して有している。そして、この静電容量式タッチパネル付き表示装置300では、第一の導電層70が基材60の一方(カバー層80側)の表面に形成されており、第二の導電層50が基材60の他方(表示パネル20側)の表面に形成されている。また、この表示装置300では、偏光板40と、偏光板40よりも表示パネル20側に位置する基材60とが円偏光板を構成している。
なお、表示パネル20と、第二の導電層50及び第一の導電層70が形成された基材60と、表示パネル側保護フィルム41と、偏光フィルム42と、カバー層側保護フィルム43と、カバー層80とは、接着剤層または粘着剤層、或いは、部材表面のプラズマ処理等の既知の手段を用いて各部材同士を互いに貼り合わせることにより、一体化することができる。即ち、
図3における積層構造の隙間部分には、例えば、接着剤層または粘着剤層が形成される。
【0076】
[有機EL表示(OLED)パネル]
有機EL表示(OLED)パネル24としては、例えば、透明基板表面に透明な電極材料により形成された透明電極と、この透明電極に積層され、EL材料からなる発光層と、この発光層に積層され、上記透明電極に対向して形成された背面電極とを有し、透明基板側に発光する有機EL表示(OLED)パネルを用いることができる。そして、静電容量式タッチパネル付き表示装置300では、有機EL表示(OLED)パネル24に通電することにより、操作者に対して所望の画像を表示する。
なお、透明電極、発光層および背面電極としては、既知の材料を用いることができる。また、本発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置に用い得る表示パネルは、上記構造の有機EL表示(OLED)パネル24を使用したものに限定されることはない。
【0077】
[バリア層]
有機EL表示(OLED)パネル24の視認側に位置するバリア層25としては、既知の部材、例えば、ガラス製またはプラスチック製の、可視光に対して透明な板を用いて形成することができる。
【0078】
[第二の導電層]
第二の導電層50は、基材60の他方(表示パネル20側)の表面に形成されており、バリア層25と、基材60との間に位置している。そして、第二の導電層50は、第一の導電層70と共に静電容量式のタッチセンサーを構成する。
ここで、第二の導電層50としては、静電容量式タッチパネル付き表示装置100で用いたのと同様のものを用いることができる。
【0079】
[第一の導電層]
第一の導電層70は、基材60の一方(カバー層80側)の表面に形成されており、第二の導電層50よりもカバー層80側、より具体的には、偏光板40と、基材60との間に位置している。そして、第一の導電層70は、基材60を挟んで積層方向に離隔して位置する第二の導電層50と共に静電容量式のタッチセンサーを構成する。
ここで、第一の導電層70は、第二の導電層50と同様の材料を用いて形成することができる。
【0080】
そして、基材60の表面上への第一の導電層70および第二の導電層50の形成は、静電容量式タッチパネル付き表示装置100と同様の方法を用いて行うことができる。
【0081】
[光学フィルムを有する基材]
基材60は、第一の導電層70と第二の導電層50との間に位置しており、
図3に示すように、λ/4の位相差を有する光学フィルム62と、光学フィルム62の両表面に形成されたハードコート層61,63とを有している。そして、基材60の光学フィルム62は、当該光学フィルム62の遅相軸と、後に詳細に説明する偏光板40の偏光フィルム42の透過軸との交差角が、積層方向から見て、所定の角度となるように配置されている。
【0082】
ここで、「所定の角度」とは、偏光板40と光学フィルム62とで円偏光板を形成し、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することを可能にし得る角度である。具体的には、所定の角度は、カバー層80側から偏光板40を通って表示パネル20側に進む直線偏光を光学フィルム62で円偏光にし得る角度(例えば、約45°程度)、より具体的には45°±5°、好ましくは45°±3°、より好ましくは45°±1°、更に好ましくは45°±0.3°の範囲内の角度である。
【0083】
また、「λ/4の位相差を有する」とは、光学フィルム62を積層方向に透過した光に対して与える位相差(レタデーションRe)が光の波長λの約1/4倍であることを指す。具体的には、透過する光の波長範囲が400nm〜700nmの場合、Reが波長λの約1/4倍であるとは、Reがλ/4±65nm、好ましくはλ/4±30nm、より好ましくはλ/4±10nmの範囲であることをいう。なお、Reは、式:Re=(nx−ny)×d[式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の遅相軸に面内で直交する方向の屈折率であり、dは光学フィルム62の厚みである]で表される面内方向レターデーションである。
【0084】
また、
図3に示すように、この一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置300では、静電容量式のタッチセンサーを構成する第一の導電層70と、第二の導電層50とが光学フィルム62を有する基材60を挟んで対向しているところ、基材60の厚みムラが均一であれば、第一の導電層70と第二の導電層50との間の距離を一定に保ってタッチセンサーの検出感度を良好なものとすることができる。
【0085】
[[光学フィルム]]
光学フィルム62としては、静電容量式タッチパネル付き表示装置100で用いたのと同様のものを用いることができる。
【0086】
なお、この静電容量式タッチパネル付き表示装置300において円偏光板の一部を構成する光学フィルム62は、光学フィルムに入射した光が長波長側で与えられる位相差が大きくなり、短波長側で与えられる位相差が小さくなる逆波長分散特性を有することが好ましい。このようにすれば、光学フィルムに入射した光が長波長になるほど与えられる位相差の絶対値が大きくなり、短波長になるほど与えられる位相差の絶対値が小さくなるので、広い波長領域で所望の偏光特性を得て、直線偏光を円偏光に変えることができる。
【0087】
[[ハードコート層]]
光学フィルム62の両表面に形成されたハードコート層61,63としては、静電容量式タッチパネル付き表示装置100で用いたのと同様のものを用いることができる。
【0088】
[[インデックスマッチング層]]
インデックスマッチング層としては、静電容量式タッチパネル付き表示装置100で用いたのと同様のものを用いることができる。
【0089】
静電容量式タッチパネル付き表示装置100と同様に、基材60は、ハードコート層61,63を有していなくてもよいし、また、ハードコート層61,63に替えて、或いは、加えて、インデックスマッチング層や低屈折率層等の光学機能層を有していてもよい。
【0090】
[偏光板]
偏光板40としては、特に限定されることなく、例えば、偏光フィルム42を2枚の保護フィルム(表示パネル側保護フィルム41およびカバー層側保護フィルム43)で挟んでなる偏光板40を用いることができる。そして、上述したように、偏光フィルム42の透過軸と、基材60における光学フィルム62の遅相軸とは、積層方向(
図3では上下方向)に見て、約45°で交差するように配置される。なお、偏光板40および基材60を含む積層体をロール・トゥ・ロールで製造する場合には、光学フィルム62として用いる斜め延伸フィルムの配向角は、積層体を形成した際に光学フィルム62の遅相軸と、偏光フィルム42の透過軸とが上記所定の角度となるように調整すればよい。
【0091】
[カバー層]
カバー層80は、既知の部材、例えば、ガラス製またはプラスチック製の、可視光に対して透明な板を用いて形成することができる。
【0092】
そして、静電容量式タッチパネル付き表示装置300によれば、カバー層80と表示パネル20との間に、偏光フィルム42を有する偏光板40と、所定の位相差を有し且つ所定の光軸角度で配置された光学フィルム62を有する基材60とからなる円偏光板を配置しているので、入射外光の反射光により表示内容が視認しづらくなるのを防止することができる。具体的には、カバー層80側から偏光板40を通って表示パネル20側に進む直線偏光を、基材60の光学フィルム62で円偏光に変えると共に、該円偏光の表示パネル20での反射光である逆円偏光を基材60の光学フィルム62で前記直線偏光と直交する他の直線偏光に変え、偏光板40で該他の直線偏光のカバー層80側への透過を防止することができる。従って、静電容量式タッチパネル付き表示装置300は、反射光に阻害されずに、操作者が表示内容を容易に視認することができる。
また、静電容量式タッチパネル付き表示装置300では、第二の導電層50及び第一の導電層70の双方が一つの基材60に設けられているので、第二の導電層50及び第一の導電層70を形成するための透明基板を別途設ける必要が無い。従って、タッチセンサーの構造を簡素化し、表示パネル20とカバー層80との間に存在する部材の数を削減して、表示パネル20とカバー層80との間の厚さを薄くすることができる。その結果、表示装置300の薄厚化を達成することができる。なお、この表示装置300では、基材60の両面に導電層50,70を形成しているので、基材60の表面に導電層50,70の一方を形成し、他部材の表面に導電層50,70の他方を形成した場合と比較して、例えば、部材積層時に第一の導電層70と第二の導電層50のパターンがずれることを防止することができる。
【0093】
さらに、上記一例の表示装置300では、第一の導電層70と第二の導電層50との間に基材60を配設しているので、静電容量式タッチセンサーを容易に構成することができる。また、基材60の光学フィルム62として、比誘電率が低く、また、飽和吸水率が小さいフィルムを用いることができるので、静電容量式タッチセンサーを良好に形成することができる。
【0094】
<静電容量式タッチパネル付き表示装置(第三実施形態の変形例)>
図4に、本発明に従う第4の静電容量式タッチパネル付き表示装置の要部の断面構造を模式的に示す。
ここで、
図4に示す静電容量式タッチパネル付き表示装置400は、
・偏光板40が表示パネル側保護フィルム41を有しておらず、偏光フィルム42が偏光板40の表示パネル20側の表面(
図4では下面)に位置している点、
・基材60と、偏光板40との間、より具体的には、基材60の表面に形成された第一の導電層70と偏光板40の偏光フィルム42との間に偏光板側基材90を更に含み、円偏光板が、基材60と、偏光板側基材90と、偏光板40とで形成されている点、
・偏光板側基材90が偏光板40の偏光フィルム42の表示パネル20側の表面に貼り合わされ、偏光板側基材90が第一の導電層70のカバー層80側の表面に貼り合わされている点、
・偏光板側基材90が、λ/2の位相差を有する他の光学フィルム92を有する点、
・光学フィルム62の遅相軸と、他の光学フィルム92の遅相軸と、偏光フィルム42の透過軸とが所定の角度で交差している点、
において先の一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置300と構成が異なっており、他の点では、静電容量式タッチパネル付き表示装置300と同様の構成を有している。
【0095】
ここで、偏光板側基材90の偏光フィルム42上への貼り付け、及び、偏光板側基材90の第一の導電層70上への貼り付けは、既知の接着剤層または粘着剤層を用いて行うことができる。
【0096】
偏光板側基材90は、λ/2の位相差を有する他の光学フィルム92と、光学フィルム92の両表面に形成されたハードコート層91,93とを有している。そして、他の光学フィルム92は、光学フィルム62と同様の材料および方法を使用して製造することができる。
ここで、「λ/2の位相差を有する」とは、偏光板側基材90の他の光学フィルムを積層方向に透過した光に対して与える位相差(レタデーションRe)が光の波長λの約1/2であることを指す。具体的には、透過する光の波長範囲が400nm〜700nmの場合、Reが波長λの約1/2倍であるとは、Reがλ/2±65nm、好ましくはλ/2±30nm、より好ましくはλ/2±10nmの範囲であることをいう。なお、Reは、式:Re=(nx−ny)×d[式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の遅相軸に面内で直交する方向の屈折率であり、dは他の光学フィルム92の厚みである]で表される面内方向レターデーションである。
【0097】
また、基材60の光学フィルム62および偏光板側基材90の他の光学フィルム92は、2枚の組合せでλ/4の位相差を与える光学板(所謂、広帯域1/4波長板)となるものであり、また、共に、同じ波長分散特性を有している同一の素材からなるものであることが好ましい。
さらに、光学フィルム62および他の光学フィルム92は、光学フィルム62の遅相軸と、偏光板40の偏光フィルム42の透過軸との交差角、および、偏光板側基材90の他の光学フィルム92の遅相軸と、偏光板40の偏光フィルム42の透過軸との交差角が、それぞれ、積層方向から見て、所定の角度となるように配置されている。
【0098】
ここで、「所定の角度」とは、広帯域1/4波長板を形成し得る角度、具体的には、カバー層80側から偏光板40を通って表示パネル20側に進む直線偏光Aが他の光学フィルム92および光学フィルム62を順次通過すると円偏光Aに変わり、また、円偏光Aが表示パネル20で反射してなる逆円偏光Bが光学フィルム62および他の光学フィルム92を順次通過すると、前記直線偏光Aと直交する他の直線偏光Bに変わる角度である。
具体的には、「所定の角度」は、他の光学フィルム92および光学フィルム62が同一の波長分散特性を有している場合には、光学フィルム62の遅相軸と偏光フィルム42の透過軸との交差角をX°、偏光板側基材90の他の光学フィルム92の遅相軸と偏光フィルム42の透過軸との交差角をY°としたときに、X−2Y=45°が成り立つ角度である。より具体的には、「所定の角度」は、例えば、(i)光学フィルム62の遅相軸と偏光フィルム42の透過軸との交差角を約75°とし、偏光板側基材90の他の光学フィルム92の遅相軸と偏光フィルム42の透過軸との交差角を約15°とした組合せ、(ii)光学フィルム62の遅相軸と偏光フィルム42の透過軸との交差角を約90°とし、偏光板側基材90の他の光学フィルム92の遅相軸と偏光フィルム42の透過軸との交差角を約22.5°とした組合せ、などが挙げられる。
ここで、「約75°」は、より具体的には、75°±5°、好ましくは75°±3°、より好ましくは75°±1°、更に好ましくは75°±0.3°の範囲内の角度であり、「約15°」は、より具体的には、15°±5°、好ましくは15°±3°、より好ましくは15°±1°、更に好ましくは15°±0.3°の範囲内の角度であり、「約90°」は、より具体的には、90°±5°、好ましくは90°±3°、より好ましくは90°±1°、更に好ましくは90°±0.3°の範囲内の角度であり、「約22.5°」は、より具体的には、22.5°±5°、好ましくは22.5°±3°、より好ましくは22.5°±1°、更に好ましくは22.5°±0.3°の範囲内の角度である。
なお、偏光板40を含む積層体をロール・トゥ・ロールで容易に製造することができる点で、偏光フィルム42の透過軸との交差角が約90°となる光学フィルム62は、縦延伸フィルムであることが好ましく、偏光フィルム42の透過軸との交差角が約75°となる光学フィルム62は、斜め延伸フィルムであることが好ましく、偏光フィルム42の透過軸との交差角が約15°となる他の光学フィルム92は、斜め延伸フィルムであることが好ましく、偏光フィルム42の透過軸との交差角が約22.5°となる他の光学フィルム92は、斜め延伸フィルムであることが好ましい。
【0099】
上記第三実施形態の変形例では、基材と、該基材に直接積層する層(例えば、導電層、ハードコート層、接着剤層、粘着剤層)との屈折率差が0.05以上であっても、界面反射の影響がない(例えば、偏光板側基材90の表示パネル20側に第一の導電層70が形成されている)場合には、インデックスマッチング層を設ける必要が無い。
【0100】
そして、上述した静電容量式タッチパネル付き表示装置400によれば、先の一例の静電容量式タッチパネル付き表示装置300と同様に、操作者が表示内容を容易に視認することができる。また、タッチセンサーの構造を簡素化し、表示パネル20とカバー層80との間に存在する部材の数を削減して、表示パネル20とカバー層80との間の厚さを薄くすることができる。また、表示装置400では、基材60を用いて静電容量式タッチセンサーを、容易に且つ良好に形成することができる。
【0101】
さらに、静電容量式タッチパネル付き表示装置400によれば、インデックスマッチング層を設ける必要がないので、タッチセンサーの構造を簡素化して表示パネルとカバー層との間の厚さを薄くすることができる。
なお、この表示装置400では、偏光板側基材90を偏光フィルム42の保護フィルムとして機能させることができるので、偏光板40の表示パネル側保護フィルム41を不要として、偏光板40の厚さを薄くすることができる。従って、表示パネル20とカバー層80との間の厚さを更に薄くすることができる。
また、この表示装置400では、光学フィルム62と他の光学フィルム92とで所謂広帯域1/4波長板を形成し、広い波長領域で所望の偏光特性を得て、直線偏光を良好に円偏光に変えることができる。
なお、この表示装置400では、基材60の両面に導電層50,70を形成しているので、基材60の表面に導電層50,70の一方を形成し、他部材の表面に導電層50,70の他方を形成した場合と比較して、例えば、部材積層時に第一の導電層70と第二の導電層50のパターンがずれることを防止することができる。
【0102】
以上、一例を用いて本発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置について説明したが、本発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置は、上記一例に限定されることはなく、本発明の静電容量式タッチパネル付き表示装置には、適宜変更を加えることができる。