特許第6439712号(P6439712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6439712球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6439712
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   C08G77/06
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-16829(P2016-16829)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137365(P2017-137365A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 良範
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−335860(JP,A)
【文献】 特開平05−025279(JP,A)
【文献】 特開平04−202325(JP,A)
【文献】 特開2008−088430(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047654(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00−77/62
C08J 3/00− 3/215
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)メチルトリメトキシシランをpHが4.0〜7.0の水に添加し、加水分解反応を行い、透明な水溶液を得る工程、
(ii)工程(i)で得られた水溶液にフェニルトリメトキシシランを添加し、加水分解反応を行い、透明なシラン水溶液を得る工程、
(iii)工程(ii)で得られた水溶液を0〜15℃の温度に調節し、これにアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加し、撹拌混合して混合液を得る工程、及び
(iv)工程(iii)で得られた混合液を静置状態とし、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を析出させる工程を含み、
上記工程(i)及び(ii)において、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとの合計量が、水100質量部に対して5〜30質量部であり、メチルトリメトキシシラン:フェニルトリメトキシシランで表される質量比が、90:10〜20:80である配合量である、体積平均粒径が1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の製造方法。
【請求項2】
(iv)工程後、撹拌下、混合液を40〜100℃に加熱し、アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加する工程を含む、請求項1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルシルセスキオキサン粒子は、液晶ディスプレイのバックライトの光拡散用光拡散板、シートやLED照明の光拡散カバーの光拡散剤として使用されている。基材樹脂と光拡散剤粒子に屈折率差があることにより、光の屈折及び反射が起こり、光拡散性が発現する。屈折率差が大きいほど光拡散性は向上する一方、反射光が多くなるため、光の透過性が低下する。光の透過性を重視する場合には、屈折率差が小さい方が望ましい。基材樹脂にはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート等が使用されるが、ポリメチルシルセスキオキサンはこれら樹脂に対し屈折率は低く、屈折率差を小さくするには、屈折率を高くすることになる。ポリメチルシルセスキオキサンにフェニルシルセスキオキサン単位を導入することにより屈折率を高くすることができる。メチルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位の組成比率を変えることによって、屈折率を1.43〜1.57の範囲で変えることができる。
【0003】
このフェニルシルセスキオキサン単位を導入した球状のポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得る方法としては、特開平4−202325号公報(特許文献1)に、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシシランの均一混合液をアルカリ性物質の水溶液に撹拌下に滴下し加水分解、縮合反応させる方法が例示されている。この方法では、撹拌翼や槽の内壁にゲル状物が付着するという問題がある。また、特開2003−335860号公報(特許文献2)には、メチルトリアルコキシシランとフェニルトリアルコキシシランとの混合物を酸性水溶液中で加水分解し、次いでアルカリ性水溶液を添加、混合した後、撹拌を停止し、静置下で縮合反応させる方法が提案されている。ここで例示されている製造法では、ゲル状物は生成しないが、いずれも体積平均粒径は5μmより大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−202325号公報
【特許文献2】特開2003−335860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光拡散剤としては、体積平均粒径がおよそ1〜5μmである粒子が適しており、この粒径の範囲外では、光拡散性が低下する。前記の特開2003−335860号公報に例示されているポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子は、いずれも体積平均粒径は5μmより大きく、光拡散用途には適していない。本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ゲル状物が生成することなく、光拡散剤として好適な体積平均粒径1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、メチルトリメトキシシランをpHが4.0〜7.0の水に添加し、透明な水溶液を得て、これにフェニルトリメトキシシランを添加し、透明なシラン水溶液を得て、これにアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加して、混合液を静置状態とし、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を析出させ、水、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランを適量にすることで、ゲル状物が生成することなく、光拡散剤として好適な体積平均粒径1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記製造方法を提供する。
[1].(i)メチルトリメトキシシランをpHが4.0〜7.0の水に添加し、加水分解反応を行い、透明な水溶液を得る工程、
(ii)工程(i)で得られた水溶液にフェニルトリメトキシシランを添加し、加水分解反応を行い、透明なシラン水溶液を得る工程、
(iii)工程(ii)で得られた水溶液を0〜15℃の温度に調節し、これにアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加し、撹拌混合して混合液を得る工程、及び
(iv)工程(iii)で得られた混合液を静置状態とし、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を析出させる工程を含み、
上記工程(i)及び(ii)において、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとの合計量が、水100質量部に対して5〜30質量部であり、メチルトリメトキシシラン:フェニルトリメトキシシランで表される質量比が、90:10〜20:80である配合量である、体積平均粒径が1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の製造方法。
[2].(iv)工程後、撹拌下、混合液を40〜100℃に加熱し、アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加する工程を含む、[1]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゲル状物が生成することなく、光拡散剤として好適な体積平均粒径1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の製造方法は、
(i)メチルトリメトキシシランをpHが4.0〜7.0の水に添加し、加水分解反応を行い、透明な水溶液を得る工程、
(ii)工程(i)で得られた水溶液にフェニルトリメトキシシランを添加し、加水分解反応を行い、透明な水溶液を得る工程、
(iii)工程(ii)で得られた水溶液を0〜15℃の温度に調節し、これにアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加し、撹拌混合して混合液を得る工程、及び
(iv)工程(iii)で得られた混合液を静置状態とし、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を析出させる工程を含み、
上記工程(i)及び(ii)において、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとの合計量が、水100質量部に対して5〜30質量部であり、メチルトリメトキシシラン:フェニルトリメトキシシランで表される質量比が、90:10〜20:80である配合量である、体積平均粒径が1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の製造方法。
【0010】
(i)メチルトリメトキシシランをpHが4.0〜7.0の水に添加し、加水分解反応を行い、透明なシラン水溶液を得る工程
メチルトリメトキシシランは、CH3Si(OCH33で示される。工程(i)で使用される水は、メチルトリメトキシシラン及び工程(ii)で使用するフェニルトリメトキシシランを加水分解するために、pH(25℃)を4.0〜7.0とする必要がある。pHが4.0未満又は7.0より高いと、縮合反応が進行してしまい、ゲルが生成する。好ましくは5.0〜6.8の範囲である。例えば、イオン交換水であれば、空気中の炭酸ガスの溶解によりpHが前記範囲となるため、そのまま使用できる。前記範囲のpHとするために少量の酸性物質を添加してもよい。酸性物質は特に限定されず、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、リンゴ酸等のカルボン酸、塩酸;リン酸;硫酸;メタンスルホン酸;トリフロロメタンスルホン酸等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0011】
メチルトリメトキシシランの加水分解反応速度向上やポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の粒径をコントロールする目的等で、水に水溶性の有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤は特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類やアセトン等のケトン類が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
工程(i)では、水にメチルトリメトキシシランを添加し、メチルトリメトキシシランの加水分解反応を、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等の通常の撹拌機を用いて撹拌下で行う。メチルトリメトキシシランは、一度に添加してもよいが、時間をかけて徐々に添加してもよい。また、逆にメチルトリメトキシシランに水を添加してもよいし、槽に同時に添加混合してもよい。このときの温度は限定されず、1〜100℃の範囲で行えばよく、1〜30℃、18〜30℃の範囲としてもよい。加水分解反応により、メチルトリメトキシシランは、式CH3Si(OH)3で示されるメチルシラントリオールとなり、またメタノールが副生する。それで、シランはメタノールを含む水に対して溶解性となり、透明な水溶液となる。
【0013】
撹拌は透明な水溶液となるまで続ける。その時間は、加水分解反応速度によって、すなわち、水のpH、反応温度及び撹拌強度によって異なる。また、メチルトリメトキシシランの添加量によっても異なる。なお、「透明」とは、可視光線に対して濁りがなく物質を通して向こう側が透けて見える状態をいう。
【0014】
(ii)工程(i)で得られた水溶液にフェニルトリメトキシシランを添加し、加水分解反応を行い、透明な水溶液を得る工程
フェニルトリメトキシシランは、式C65Si(OCH33で示される。なお、水溶液には、フェニルトリメトキシシランの加水分解反応速度向上等の目的で、酸性物質を添加してもよい。酸性物質は特に限定されず、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、リンゴ酸等のカルボン酸、塩酸;リン酸;硫酸;メタンスルホン酸;トリフロロメタンスルホン酸等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。さらに、フェニルトリメトキシシランの加水分解反応速度向上やポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の粒径をコントロールする目的等で、水溶液に水溶性の有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤は特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類やアセトン等のケトン類が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0015】
工程(ii)では、工程(i)で得られたシランの水溶液にフェニルトリメトキシシランを添加し、フェニルトリメトキシシランの加水分解反応を、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等の通常の撹拌機を用いて撹拌下で行う。フェニルトリメトキシシランは、一度に添加してもよいが、時間をかけて徐々に添加してもよい。このときの温度は限定されず、0〜100℃の範囲で行えばよい。加水分解反応により、フェニルトリメトキシシランは、式C65Si(OH)3で示されるフェニルシラントリオールとなり、またメタノールが副生する。それで、シランはメタノールを含む水に対して溶解性となり、透明な水溶液となる。
【0016】
撹拌は透明な水溶液となるまで続ける。その時間は、加水分解反応速度によって、すなわち、水のpH、反応温度及び撹拌強度によって異なる。また、フェニルトリメトキシシランの添加量によっても異なる。
【0017】
工程(i)及び工程(ii)における、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランの配合量は、水100質量部に対し、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が5〜30質量部であり、13〜28質量部が好ましい。メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が少ないと生産効率が悪くなり、多いとポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を5μm以下とすることが困難となる。
【0018】
メチルトリメトキシシラン:フェニルトリメトキシシランで表される質量比は、90:10〜20:80の範囲であり、85:15〜40:60、80:20〜50:50がより好ましい。トリメトキシシラン中のフェニルトリメトキシシランの割合が少ないと屈折率が低くなりすぎるし、多いと屈折率が高くなりすぎるおそれがある。。
【0019】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランの合計配合量、及びメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの配合質量比が前記の範囲にある場合、水にメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランを同時に添加して加水分解を行うと、透明な水溶液を得ることが困難となる。また、水に先にフェニルトリメトキシシランを添加しても透明な水溶液を得ることが困難となる。これは、フェニルトリメトキシシランが加水分解した後、さらに縮合反応が進行し水に不溶となるためである。この状態の液を用いて、先の工程に進めると、その不溶性分はゲルとなる。
【0020】
(iii)工程(ii)で得られた水溶液を0〜15℃の温度に調節し、これにアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加し、撹拌混合して混合液を得る工程
アルカリ性物質は加水分解したメチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシラン、すなわちメチルシラントリオール及びフェニルシラントリオールの縮合反応触媒として作用し、それにより工程(iv)において、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成する。アルカリ性物質は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。アルカリ性物質はそのまま添加してもよいが、短時間で水に均一に溶解させる必要があるため、固体状及び気体状であるものは水溶液にして添加する。水に可溶であれば、その濃度は特に限定されない。アルカリ性物質の量は、少なくとも、工程(iv)において縮合反応が進行してポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成する量が必要である。最低必要量は、工程(i)における水のpHやアルカリ性物質の種類や反応温度により異なる。アルカリ性物質が多すぎると、縮合反応速度が速くなり、工程(iii)においてポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成し始めると共に、凝集粒やゲルが生成する。そのため、工程(iii)においてポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成しないような量に抑える必要がある。その最大量は、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランの配合量や、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの配合比やアルカリ性物質の種類や反応温度により異なる。例えば、28質量%のアンモニア水溶液の場合で、工程(i)で用いた水100質量部に対し0.01〜0.20質量部、好適には0.03〜0.10質量部の範囲で適宜選定される。
【0021】
アルカリ性物質は特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;アンモニア水;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン等のアミン類等を使用することができる。中でも、揮発させることにより、得られるポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子から容易に除去できることから、アンモニア水が好ましい。
【0022】
アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加する際、シランの水溶液の温度は0〜15℃であり、0〜10℃が好ましい。温度が高いと縮合反応速度が速くなり、工程(iii)においてポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成し始めると共に凝集粒やゲルが生成する。
【0023】
(ii)で得られた水溶液へのアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液の添加は、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等の通常の撹拌機を用いて撹拌下で行う。アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液は、一度に添加し、短時間で水に均一に溶解させることが望ましい。均一に溶解まで時間がかかると、粒度分布が広くなったり、ゲルが生成したりするおそれがある。
【0024】
撹拌は少なくともアルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液がシランの水溶液に均一に溶解するまで必要であるが、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成し始めると粒子の凝集やゲルを生じるため、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成する前に撹拌を停止する。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成する時間は、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランの配合量、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの配合比、アルカリ物質の種類及び量、温度によって異なる。通常、5秒〜10分、好適には10秒〜5分の範囲で適宜選定される。
【0025】
(iv)工程(iii)で得られた混合液を静置状態とし、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を析出させる工程
ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が生成すると、液は白濁してくる。白濁しても十分に粒子が固化していないため、しばらくの間そのまま静置しておく。固化していない状態で撹拌を行うと粒子が凝集したりゲルを生じたりする。必要とされる静置時間は、縮合反応速度によって、すなわち、アルカリ物質の種類及び量、反応温度によって異なる。通常、30分〜24時間、好適には1時間〜12時間の範囲で適宜選定される。以上により、体積平均粒径が1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得ることができる。
【0026】
(iv)の工程後、球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の表面を変性するために、撹拌下、一般式R1Si(OR23で示されるオルガノトリアルコキシシランや、一般式R32Si(OR22で示されるジオルガノジアルコキシシラン、一般式R33SiOR2で示されるトリオルガノアルコキシシラン、一般式Si(OR24で示されるテトラアルコキシシラン、一般式R23SiOHで示されるトリオルガノシラノール及び式[(CH33Si]2NHで示されるヘキサメチルジシシラザンの1種以上を添加し、縮合反応させてもよい。式中、R1はメチル基及びフェニル基を除く非置換もしくは置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基、R2は非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R3は非置換もしくは置換の炭素数1〜20の1価炭化水素基である。
【0027】
(iv)の工程後、縮合反応を完結させるために、撹拌下、アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を追加したり、40〜100℃で加熱したりしてもよい。例えば、撹拌下、(iv)工程後の混合液を40〜100℃に加熱し、アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液を添加してもよい。アルカリ性物質又はアルカリ性物質を溶解した水溶液としては、上記で挙げられたものを用いることができる。撹拌する時間としては特に限定されず、30分〜12時間で適宜選定される。(iv)の工程後、必要であれば、撹拌下、酸性物質を投入して中和してもよい。
【0028】
工程(iv)で得られたポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の分散液から水分及び加水分解反応で副生したアルコールを除去することによって、球状のポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得ることができる。水分の除去は、例えば、反応後の水分散液を常圧下又は減圧下に加熱することにより行うことができ、具体的には、分散液を加熱下で静置して水分を除去する方法、分散液を加熱下で撹拌流動させながら水分を除去する方法、スプレードライヤーのように熱風気流中に分散液を噴霧、分散させる方法、流動熱媒体を利用する方法等が挙げられる。なお、この操作の前処理として、加熱脱水、濾過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法で分散液を濃縮してもよいし、必要ならば分散液を水やアルコールで洗浄してもよい。
【0029】
反応後の水分散液から水分を除去した後、体積平均粒径が1〜5μmの球状ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子が凝集している場合には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機で解砕すればよい。
【0030】
なお、本発明において、体積平均粒径とは、電気抵抗法によって求めた体積基準の平均粒径を意味する。体積平均粒径は、電位抵抗法粒度分布測定装置で測定することができる。例えば、ベックマン・コールター株式会社製のマルチサイザーにより測定することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0032】
[平均屈折率の測定]
屈折率が1.40のデカメチルシクロペンタンシロキサンと、屈折率が1.51のメチルフェニルポリシロキサンを用い、その配合比率を変えて、屈折率が1.46、1.47、1.48、1.49、1.50の混合溶解液を用意した。また、屈折率が1.51のメチルフェニルポリシロキサンを用意した。用意した液20gをそれぞれ25mlガラス瓶に量り取り、さらに粉体を1gずつ添加し、フタをして5分間振とうして、液中に粉体を均一に分散させた。静置10分後に透明性を観察し、最も透明性が高い液の屈折率を粉体の平均屈折率とした。
【0033】
[実施例1]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水801gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン95.5gを投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。3分後に透明な状態になり、さらに7分撹拌した。ついで、フェニルトリメトキシシラン62.5gを投入し、20〜25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、50分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.53gとイオン交換水2.65gの混合溶解液を投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止12秒後に白濁が起こった。
【0034】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が19.7質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が60.4:39.6となる配合量である。
【0035】
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ゲルの付着は認められなかった。得られた液を、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
【0036】
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.1μmであった。また、標準偏差(S.D.)は0.29μm、変動係数(C.V.)は13.6%であった。前記の方法にて平均屈折率を測定したところ、1.49であった。
【0037】
[実施例2]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水815gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン77.6gを投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。3分後に透明な状態になり、さらに7分撹拌した。ついでフェニルトリメトキシシラン66.4gを投入し、20〜25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、55分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.54gとイオン交換水2.7gの混合溶解液を投入し、20秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止12秒後に白濁が起こった。
【0038】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が17.7質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が53.9:46.1となる配合量である。
【0039】
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ゲルの付着は認められなかった。得られた液を、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
【0040】
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.1μmであった。また、標準偏差(S.D.)は0.19μm、変動係数(C.V.)は8.6%であった。前記の方法にて平均屈折率を測定したところ、1.50であった。
【0041】
[実施例3]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水789gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.8であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン110.5gを投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。4分後に透明な状態になり、さらに6分撹拌した。ついでフェニルトリメトキシシラン59.5gを投入し、20〜25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、45分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.52gとイオン交換水2.6gの混合溶解液を投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止30秒後に白濁が起こった。
【0042】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が21.5質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が65.0:35.0となる配合量である。
【0043】
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ゲルの付着は認められなかった。得られた液を、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
【0044】
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.2μmであった。また、標準偏差(S.D.)は0.27μm、変動係数(C.V.)は12.0%であった。前記の方法にて平均屈折率を測定したところ、1.48であった。
【0045】
[実施例4]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水754gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン142.9gを投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。7分後に透明な状態になり、さらに8分撹拌した。ついでフェニルトリメトキシシラン62.1gを投入し、20〜25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、35分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.50gとイオン交換水2.5gの混合溶解液を投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止1分15秒後に白濁が起こった。
【0046】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が27.2質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が69.7:30.3となる配合量である。
【0047】
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ゲルの付着は認められなかった。得られた液を、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
【0048】
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.8μmであった。また、標準偏差(S.D.)は0.37μm、変動係数(C.V.)は13.4%であった。前記の方法にて平均屈折率を測定したところ、1.47であった。
【0049】
[実施例5]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水759gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ6.0であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン151.6gを投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。8分後に透明な状態になり、さらに7分撹拌した。ついでフェニルトリメトキシシラン48.4gを投入し、20〜25℃の温度を保ち撹拌を続けたところ、30分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.50gとイオン交換水2.5gの混合溶解液を投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止1分40秒後に白濁が起こった。
【0050】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が26.3質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が75.8:24.2となる配合量である。
【0051】
3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38g添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ゲルの付着は認められなかった。得られた液を、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。
【0052】
このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、球状であった。ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、3.2μmであった。また、標準偏差(S.D.)は0.52μm、変動係数(C.V.)は16.3%であった。前記の方法にて平均屈折率を測定したところ、1.46であった。
【0053】
[比較例1]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水801gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、メチルトリメトキシシラン95.5g及びフェニルトリメトキシシラン62.5gの混合溶解液を投入したところ発熱が起こり24℃まで温度が上昇した。20〜25℃の温度を保ち300分間撹拌を続けたが、灰色に濁った状態で透明にならなかった。
【0054】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が19.7質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が60.4:39.6となる配合量である。
【0055】
25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.54gとイオン交換水2.7gの混合溶解液を投入し、20秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止10秒後に白濁が起こった。3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ガラスフラスコの底部及び撹拌翼に硬いゲルの付着が認められた。
【0056】
[比較例2]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水801gを仕込み、水温を20℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、フェニルトリメトキシシラン62.5gを投入し20〜25℃の温度を保ち300分間撹拌を続けたが、灰色に濁った状態で透明にならなかった。ついでメチルトリメトキシシラン95.5gを投入したところ発熱が起こり26℃まで温度が上昇した。20〜25℃の温度を保ち60分間撹拌を続けたが、灰色に濁った状態で透明にならなかった。
【0057】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が19.7質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が60.4:39.6となる配合量である。
【0058】
25分かけて、5℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.54gとイオン交換水2.7gの混合溶解液を投入し、20秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止9秒後に白濁が起こった。3時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ガラスフラスコの底部及び撹拌翼に硬いゲルの付着が認められた。
【0059】
[比較例3]
1リットルのガラスフラスコにイオン交換水722gを仕込み、水温を25℃とした。イオン交換水のpHを測定したところ5.9であった。翼回転数150rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行い、フェニルトリメトキシシラン47.9gを投入し20〜25℃の温度を保ち60分間撹拌を続けたが、灰色に濁った状態で透明にならなかった。ついでメチルトリメトキシシラン191.7gを投入したところ、発熱が起こり32℃まで温度が上昇した。38分後に透明な状態となり、さらに5分間撹拌した。25分かけて、20℃まで冷却した。28質量%アンモニア水溶液0.064gとイオン交換水0.32gの混合溶解液を投入し、30秒間撹拌した後、撹拌を停止した。撹拌停止9分後に白濁が起こった。
【0060】
メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランは、水100質量部に対するメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの合計量が33.1質量部であり、またメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランの質量比が80:20となる配合量である。12時間静置した後、翼回転数150rpmの条件で撹拌を開始した。75℃まで加熱し、28質量%アンモニア水溶液38gを添加し、さらに73〜77℃の温度で1時間撹拌を行った。
【0061】
30℃以下まで冷却後、1リットルのガラスビーカに移し、ガラスフラスコの内壁及び撹拌翼を観察したところ、ゲルの付着は認められなかった。得られた液を、加圧濾過器を用いて脱液しケーキ状物とし、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕して、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子を得た。このポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の形状を電子顕微鏡にて観察したところ、球状であった。
【0062】
ポリメチルフェニルシルセスキオキサン粒子の体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、8.4μmであった。また、標準偏差(S.D.)は1.13μm、変動係数(C.V.)は13.4%であった。前記の方法にて平均屈折率を測定したところ、1.45であった。