特許第6440207号(P6440207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6440207エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440207
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/02 20060101AFI20181210BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C08G59/02
   C08L63/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-541440(P2015-541440)
(86)(22)【出願日】2014年10月7日
(86)【国際出願番号】JP2014005115
(87)【国際公開番号】WO2015052925
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-212283(P2013-212283)
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】今 喜裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−211240(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/019061(WO,A1)
【文献】 特開2012−24654(JP,A)
【文献】 特開平5−247193(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/123051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン酸化合物と、4級アンモニウム塩と、陽イオン交換樹脂と、リン酸化合物との存在下、下記式(I):
【化1】
(式中、nは1〜20の繰り返し数の平均値を表す)
で表される化合物と過酸化水素とを反応させる工程を備えることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項2】
陽イオン交換樹脂の使用量が、前記式(I)で表される化合物100質量部当たり、1〜10質量部であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記式(I)で表される化合物と過酸化水素とを反応させる工程が、有機相、水相、固相の三相系で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項4】
下記式(II):
【化2】
及び、下記式(III):
【化3】
の繰り返し単位を含み、
1分子内のアリル基の数の平均値Lと、1分子内のエポキシ基の数の平均値Mが0<L/M≦0.1の関係を満たすエポキシ樹脂。
【請求項5】
請求項4に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを含有してなる硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の製造方法、エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の様々な分野で使用されており、特に、以下の式(II)の繰り返し単位を有するエポキシ樹脂は、近年、その優れた難燃性、密着性、耐水性などにより広く使用されている。
【0003】
【化1】
【0004】
このような繰り返し単位を含むエポキシ樹脂の製造方法として、例えば、特許文献1に記載されているように、ビフェニル骨格とフェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含む化合物にエピクロロヒドリンを反応させ、水酸基をグリシジルエーテル基に変換することにより製造する手法が従来から使用されている。
【0005】
一方、近年電気・電子部品の分野においては、ICチップとリードフレームやプリント基板とを接続するワイヤーボンディングに使用する金線を、コスト削減の観点から、銅線に変換する動きが急ピッチで進んでいる。ここで、銅線を使用した半導体の封止材として、上記のような塩素含有化合物(エピクロロヒドリン)を用いる手法で製造されたエポキシ樹脂を使用すると、該エポキシ樹脂に残存する塩素により銅ワイヤーが腐食されてしまうという問題があった。このような塩素による腐食を防止するためには、塩素含有化合物を使用しない手法により得られたエポキシ樹脂を用いるのが効果的である。塩素含有化合物を用いずにエポキシ樹脂を製造する技術としては、例えば特許文献2に、炭素−炭素二重結合を有する化合物に過酸化水素を反応させ、二官能性エポキシ樹脂を製造する手法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−208802号公報
【特許文献2】特開2011−225711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは独自に、下記式(I):
【化2】
で表される化合物を原料として、特許文献2等に記載の従来の炭素−炭素二重結合の過酸化水素によるエポキシ化により、上記式(II)の繰り返し単位を有するエポキシ樹脂の製造を試みたところ、エポキシ基の生成率が十分に満足いくものとはならないことがわかった。
【0008】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、特定のアリルエーテル化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合を、効率的にエポキシ基に変換することができる、即ちエポキシ基の生成率の高いエポキシ樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、新規なエポキシ樹脂を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記エポキシ樹脂を用いた硬化性樹脂組成物、および当該硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0010】
[1]タングステン酸化合物と、4級アンモニウム塩と、陽イオン交換樹脂と、リン酸化合物との存在下、下記式(I):
【0011】
【化3】
(式中、nは1〜20の繰り返し数の平均値を表す)
で表される化合物と過酸化水素とを反応させる工程を備えることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【0012】
[2]陽イオン交換樹脂の使用量が、前記式(I)で表される化合物100質量部当たり、1〜10質量部であることを特徴とする前記[1]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【0013】
[3]前記式(I)で表される化合物と過酸化水素とを反応させる工程が、有機相、水相、固相の三相系で行われることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【0014】
[4]下記式(II):
【0015】
【化4】
及び、下記式(III):
【0016】
【化5】
の繰り返し単位を含み、
1分子内のアリル基の数の平均値Lと、1分子内のエポキシ基の数の平均値Mが0<L/M≦0.1の関係を満たすエポキシ樹脂。
【0017】
[5]前記[4]に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを含有してなる硬化性樹脂組成物。
【0018】
[6]前記[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定のアリルエーテル化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合を、効率的にエポキシ基に変換することができる、即ちエポキシ基の生成率の高いエポキシ樹脂の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、新規なエポキシ樹脂を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記エポキシ樹脂を用いた硬化性樹脂組成物、および当該硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】AEP(アリルエーテル樹脂)の高速液体クロマトグラフィーの測定結果の一例である。
図2】AEP(アリルエーテル樹脂)の高速液体クロマトグラフィーの測定結果の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明についてその実施形態を例示して具体的に説明する。
なお、本発明において、転化率とは、エポキシ化反応により、式(I)で表される化合物から消失したアリル基の割合(%)をいい、選択率とは、エポキシ化反応により式(I)で表される化合物から消失したアリル基の炭素−炭素二重結合中、エポキシ基に選択的に変換したものの割合(%)をいい、生成率とは、エポキシ化反応により、式(I)で表される化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合中、エポキシ基に変換したものの割合(%)をいう。
【0022】
<エポキシ樹脂の製造方法>
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、タングステン酸化合物と、4級アンモニウム塩と、陽イオン交換樹脂と、リン酸化合物の存在下、下記式(I):
【化6】
(式中、nは1〜20の繰り返し数の平均値を表す)
で表される化合物と過酸化水素とを反応させる工程を備えることを特徴とする。ここで、nは1〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
【0023】
(式(I)で表される化合物)
本発明のエポキシ樹脂の製造方法において原料として使用される、式(I)で表される化合物(アリルエーテル樹脂、以下、適宜、AEPと称する)は、対応するフェノール樹脂(フェノ−ル-ビフェニレンノボラック樹脂)とアリルハライドとを、溶媒中、塩基の存在下で反応させることによって得られる。
【0024】
((AEPを製造する方法))
[フェノール樹脂]
AEPの製造に用いるフェノール樹脂としては、例えば、フェノールと4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニルとの反応物、フェノールと4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニルとの反応物が好適に挙げられる。
【0025】
[アリルハライド]
AEPの製造に用いるアリルハライドとしては、フェノール樹脂との反応性の観点から、アリルクロライドが好ましい。
ここで、アリルクロライドは、アリルクロライド同士が重合し重合体(ポリアリルクロライド)となる傾向があるが、AEPの製造に用いるアリルクロライドは、ポリアリルクロライドの含有割合が少ないものを用いることが好ましい。
用いるアリルクロライド中のポリアリルクロライドの含有割合が多いと、得られるAEP、更には該AEPを用いて本発明の製造方法により得られるエポキシ樹脂の全塩素量を押し上げる要因になるばかりか、AEP、そして得られるエポキシ樹脂の分子量の増加に寄与し、製品化の際に微量なゲル物を残す虞がある。またこの塩素量を低下させるためには相当量の塩基性物質の追加が必要となり産業上好ましくないばかりか、系内に毒性の高いアリルアルコールを生成してしまう虞がある。
【0026】
これらポリアリルクロライドの含有割合はガスクロマトグラフィー等で容易に確認が可能であり、具体的なポリアリルクロライドの含有割合としては、ガスクロマトグラフィーで測定した際、その面積比で、アリルクロライドモノマーに対し、1面積%以下であることが好ましく、0.5面積%以下であることがより好ましく、0.2面積%以下であることが特に好ましい。
【0027】
AEPの製造において、アリルクロライドなどのアリルハライドの使用量は、フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対して通常1.0〜1.15モル当量であり、好ましくは1.0〜1.10モル当量、より好ましくは1.0〜1.05モル当量である。
【0028】
[塩基]
AEPの製造に用いる塩基としては、アルカリ金属水酸化物が好ましく、その具体的な例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。このようなアルカリ金属水酸化物は、固形物の状態で使用してもよく、その水溶液の状態で使用してもよいが、特に、溶媒に対する溶解性、ハンドリングの観点からフレーク状に成型された固形物の状態で使用することが好ましい。
【0029】
AEPの製造において、アルカリ金属水酸化物などの塩基の使用量は、フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対して通常1.0〜1.15モル当量であり、好ましくは1.0〜1.10モル当量、より好ましくは1.0〜1.05モル当量である。
【0030】
[溶媒]
AEPの製造に用いる溶媒は、非プロトン性極性溶媒を含むことが好ましく、水と非プロトン性極性溶媒とを含むことがより好ましい。AEPの製造に用いる溶媒が非プロトン性極性溶媒を含むことで、フェノール樹脂の溶媒への溶解度を向上させることができる。このような非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジオキサン等が挙げられ、特にジメチルスルホキシドが好ましい。
AEPの製造において、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒の使用量は、フェノール樹脂の総質量に対し、好ましくは20〜300質量%、より好ましくは25〜250質量%、特に好ましくは25〜200質量%である。ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒は、水洗等の精製に有用ではなく、また沸点が高く除去が困難であるため、その使用量がフェノール樹脂の総質量に対し300質量%超であることは好ましくない。
【0031】
AEPの製造に用いる溶媒は、上述の水、非プロトン性極性溶媒に加え、炭素数1〜5のアルコールを含んでもよい。
また、AEPの製造に用いる溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等の、上述の非プロトン性極性溶媒と炭素数1〜5のアルコール以外の有機溶媒(他の有機溶媒)を含んでもよい。他の有機溶媒の使用量は、非プロトン性極性溶媒の使用量に対し、100質量%以下であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましい。過剰にメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等を用いると、反応時にクライゼン転移が起こり、残留するフェノール性水酸基が増加してしまい系内のアリルクロライド量が不足するばかりか、目的とする構造以外のものが生成する、またフェノール性水酸基がすべてアリルエーテル化されない、等の不具合が生じる虞があり、好ましくない。
【0032】
[反応条件等]
AEPの製造において、フェノール樹脂のアリルエーテル化反応の反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。また、より高純度にAEPを得るためには、2段階以上に分けて反応温度を上昇させることが好ましく、例えば、1段階目は35〜50℃、2段階目は45℃〜70℃とすることが特に好ましい。
フェノール樹脂のアリルエーテル化反応の反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間、特に好ましくは1〜5時間である。反応時間が0.5時間以上であることで反応が十分進行し、10時間以下であることで、副生成物の生成量を低く抑えることが可能になる。
反応終了後、溶媒を加熱減圧下で留去することで、生成物を得る。回収した生成物を炭素数4〜7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)に溶解させ、40℃〜90℃、より好ましくは50〜80℃に加温した状態で、水層がpH5〜8になるまで水洗を行う。水層のpHを8未満とするまで水洗することで、後のエポキシ化反応の際に、触媒系のバランスを崩し反応の進行が抑制されるのを防ぐことができる。
なお、フェノール樹脂のアリルエーテル化反応は、通常、窒素等不活性ガスを系内(気中、もしくは液中)に吹き込みながら行う。不活性ガスを系内に吹き込みながら該反応を行うことで、得られる生成物が着色することを防ぐことができる。
不活性ガスの単位時間当たり吹き込み量は、その反応に用いる釜の容積によっても異なり、例えば0.5〜20時間でその釜の容積が置換できるように、不活性ガスの単位時間当たりの吹き込み量を調整することが好ましい。
【0033】
[AEPの性状]
上述の反応より得られたAEPを含有する生成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定すると、そのスペクトルには前記式(I)においてn=1であるAEPのピークと、同n=2であるAEPのピークとの間に、不純物のピークが確認される場合がある。
AEPをエポキシ化する際の反応性の観点から、この不純物のピークの量が、その面積比で、AEPを含有する生成物全体に対し、1.5面積%未満、特に1.0面積%未満であることが好ましい。この面積比が2.0面積%を超える場合、エポキシ化反応の進行に大きな影響を与える虞がある。
より具体的に説明するため、図1,2にAEPを含有する生成物のHPLCデータを示す。31分程度に確認される3本の大きなピークが式(I)においてn=1であるAEPに相当し、35分付近程度に確認される3本の大きなピーク(ショルダーピークが見えるが1本として換算している。)がn=2であるAEPに相当する。図1においては、これらの間の32〜34分付近に不純物のピークが見られる。このピークが存在する場合、後のAEPのエポキシ化の際に悪影響を及ぼすため好ましくない。一方の図2においては、該範囲に大きなピークはみられず、好ましい。
【0034】
また、本発明のエポキシ樹脂の製造方法に用いるAEPは、軟化点が120℃以下であることが好ましい。AEPの軟化点が120℃を超えると、溶剤への溶解が非常に困難であるため洗浄等によりAEPに含まれる塩を除くことが困難となり、特に電気信頼性の必要な分野においては、腐食の懸念から好ましくない。
【0035】
(タングステン酸化合物)
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、タングステン酸化合物の存在下で行う。本発明においてタングステン酸化合物は、水中でタングステン酸イオン(WO42-)を生成する化合物であれば特に限定されず、例えば、タングステン酸、三酸化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム二水和物、タングステン酸ナトリウム二水和物などが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基の生成率の向上の観点から、タングステン酸、三酸化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸ナトリウム二水和物が好ましい。これらタングステン酸化合物類は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。タングステン酸化合物の使用量は、エポキシ基の生成率の向上の観点から、式(I)で表される化合物1モル当たり、1×10-6〜0.2モルが好ましく、0.0001〜0.2モルがより好ましい。
【0036】
(4級アンモニウム塩)
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、4級アンモニウム塩の存在下で行う。本発明において4級アンモニウム塩は、相間移動触媒として働くものであれば特に限定されない。4級アンモニウム塩は、4級アンモニウムカチオンと、アニオンから構成される。
【0037】
4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムカチオンとしては、特に限定されないが、トリデカニルメチルアンモニウムカチオン、ジラウリルジメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、ジオクチルデカニルメチルアンモニウムカチオン、ジデカニルオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリヘキサデシルメチルアンモニウムカチオン、トリメチルステアリルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、セチルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオン、ジセチルジメチルアンモニウムカチオン、トリセチルメチルアンモニウムカチオン、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0038】
これらの中でも、疎水性と親水性のバランスを良好とするために、4級アンモニウムカチオン中の炭素数が16〜100のものが好ましく、25〜100のものがより好ましい。そして、該カチオンの窒素原子に結合する炭素鎖が脂肪族鎖であることが好ましい。4級アンモニウムカチオン中の炭素数が25〜100であって、かつ窒素原子に結合する炭素鎖が脂肪族鎖である4級アンモニウムカチオンとしては、トリデカニルメチルアンモニウムカチオン、ジラウリルジメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、ジオクチルデカニルメチルアンモニウムカチオン、ジデカニルオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリヘキサデシルメチルアンモニウムカチオン、ジセチルジメチルアンモニウムカチオン、トリセチルメチルアンモニウムカチオン、などが挙げられる。また、上記窒素原子に結合する炭素鎖は、直鎖の脂肪族鎖であることが好ましい。
【0039】
4級アンモニウム塩を構成するアニオンとしては、特に限定されないが、ハロゲン化物イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなど)、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸メチルイオン、硫酸水素イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオン、などのアニオンが挙げられ、これらの中でも、エポキシ基の生成率の向上の観点から、硫酸イオン、硫酸メチルイオン、硫酸水素イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオンが好ましく、酢酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオン、硫酸メチルイオン、硫酸水素イオンが特に好ましい。
【0040】
即ち、本発明において使用する4級アンモニウム塩としては、上述した観点から、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート(TOMAA)、トリオクチルメチルアンモニウム硫酸水素塩、トリオクチルメチルアンモニウム硫酸メチル塩、などが好ましい。
【0041】
4級アンモニウム塩の使用量は、エポキシ基の生成率の向上の観点から、式(I)で表される化合物1モル当たり、0.01〜0.5モルが好ましく、0.05〜0.3モルがより好ましい。
【0042】
(陽イオン交換樹脂)
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、陽イオン交換樹脂の存在下で行う。本発明の製造方法は、陽イオン交換樹脂の存在下で行うことで、エポキシ基の生成率を大幅に向上させることができる。これは、陽イオン交換樹脂の周囲では局所的にpHが低くなるため、強酸性において高い効率を示す炭素−炭素二重結合からエポキシ基への反応の反応性が特に高まるからであると推察される。また、反応系の水相全体のpHを低くし過ぎると、加水分解によりエポキシ基が分解され、エポキシ基の生成率が下がるというデメリットがあるが、陽イオン交換樹脂を使用する本発明の製造方法は、該樹脂の周囲に局所的に低pHの環境を作ることができ、上記のような低過ぎるpHによる生成したエポキシ基の水付加による分解およびエポキシ基どうしの重合などによる高分子量化を低減できる点において有利であると推察される。
【0043】
本発明において陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂であっても、弱酸性陽イオン交換樹脂であってもよいが、エポキシ基の生成率の向上の観点から、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂としては、重合系のスチレンに少量のジビニルベンゼンを共重合させて三次元的網目構造をつくり、これにスルホン酸基(−SO3H)などの強酸性基を導入した多孔質タイプ(MR形)の陽イオン交換樹脂が挙げられる。
本発明において使用可能な陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、日本国内においてオルガノが販売するアンバーリスト(登録商標)15DRY、15JWET、16WET、31WET、35WET、A21等の強酸性タイプのイオン交換樹脂、日本国内において住化ケムテックスが販売するDUOLITE(登録商標)C20J、C20LF、C255LFH、C26A、C26TRH等の強酸性タイプのイオン交換樹脂、DUOLITE C433LF、C476等の弱酸性タイプのイオン交換樹脂、三菱化学が製造販売するダイヤイオン(登録商標)SKシリーズ(ゲル型)、UBKシリーズ(ゲル型均一粒径)、PKシリーズ(ポーラス型)、HPK25・RCPシリーズ(ハイポーラス型)、クロマト分離用UBK500シリーズ、などが挙げられる。また、本発明の製造方法においては、陽イオン交換樹脂が反応系に含まれているため、式(I)で表される化合物と過酸化水素とを反応させる工程が、有機相、水相、固相(陽イオン交換樹脂)の三相系で行われることとなる。
【0044】
陽イオン交換樹脂の使用量は、エポキシ基の生成率の向上の観点から、式(I)で表される化合物100質量部当たり、1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部が好ましい。
【0045】
(リン酸化合物)
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、リン酸化合物の存在下で行う。リン酸化合物としては、水中でリン酸イオン(PO43-)を生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、リン酸、リン酸二水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ土類金属塩、リン酸水素二アルカリ金属塩、リン酸水素二アルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩、ポリリン酸、ポリリン酸アルカリ金属塩、ポリリン酸アルカリ土類金属塩、トリポリリン酸、トリポリリン酸アルカリ金属塩、トリポリリン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられるが、これらの中でも、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの塩を含有する物が、入手が簡便であり好ましい。
【0046】
リン酸化合物の使用量は、エポキシ基の生成率の向上の観点から、式(I)で表される化合物1モル当たり、0.01〜1.0モルが好ましく、0.05〜0.5モルがより好ましい。
【0047】
(過酸化水素)
本発明の製造方法において、式(I)で表される化合物と反応させる過酸化水素は、特に限定されないが、通常水に溶解させて過酸化水素水として添加する。過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は、特に限定されないが、取扱いの簡便さから過酸化水素濃度が10〜40質量%の濃度であることが好ましい。また過酸化水素水の使用量は、特に限定されないが、過酸化水素の量が、式(I)で表される化合物のアリル基1モル当量に対して、0.3〜10モル当量が好ましく、1〜5モル当量がより好ましい。過酸化水素水の量が、式(I)で表される化合物のアリル基1モル当量に対して0.3モル当量以上であることで、エポキシ化を効率よく進めることができ、10モル当量以下であることで、生成するエポキシ基の加水分解を抑制することができる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、特に限定されないが、式(I)で表される化合物が溶解可能なトルエン、キシレン、メシチレン、1,2−ジクロロベンゼン、トリクロロメタン、酢酸エチル、ジクロロエタンなどの有機溶媒に、上記式(I)で表される化合物、タングステン酸化合物、4級アンモニウムイオン塩と、陽イオン交換樹脂と、リン酸化合物を加えてから、その後、過酸化水素水を加えてエポキシ化反応を開始させることが好ましい。しかしながら、本発明の製造方法が、この添加順序に限定されることはなく、タングステン酸化合物と、4級アンモニウム塩と、陽イオン交換樹脂と、リン酸化合物との存在下であれば、式(I)で表される化合物のアリル基中の炭素−炭素二重結合の、エポキシ基への変換を効率よく行うことができる。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂の製造方法において、エポキシ化の際の反応温度は、特に限定されなないが、10〜120℃であることが好ましく、25〜100℃であることがより好ましい。10℃以上であることで、反応速度を好適なものとすることができ、120℃以下であることで、生成したエポキシ基の加水分解反応を抑制することができる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂の製造方法において、反応時間は、反応温度触媒などの量にもよるが、エポキシ化が十分に進行する時間を確保するため、及び、工業的に効率よく生産するため、所定量の過酸化水素水を添加後、1〜48時間が好ましく、3〜36時間がより好ましく、4〜24時間が特に好ましい。
【0051】
反応終了後、過剰な過酸化水素のクエンチ処理を行う。過酸化水素のクエンチの手法としては、還元剤を使用する手法、塩基性化合物を使用する手法が挙げられ、本発明においては、その両方で行うことが好ましい。具体的には、塩基性化合物で水相のpH6〜11に調整後、還元剤を添加し、過酸化水素をクエンチすることが好ましい。pHを6以上とすることで、還元する際の発熱を抑制し生成したエポキシ基の加水分解を防ぐことができ、pHを11以下とすることでも、生成したエポキシ基の加水分解を防ぐことができる。還元剤、塩基性化合物の種類、量については、特開2011−225711号公報に記載のものと同様のものをそれぞれ同様の範囲で使用することができる。
【0052】
次に、過酸化水素のクエンチ処理後、有機相と、水相及び固相(陽イオン交換樹脂)とを分離する。この際、有機相と水相とが上手く分離しない場合は、反応に使用した有機溶媒をさらに添加して、水相より反応生成物の抽出を行う。また、固形分は濾過、デカンテーション、遠心分離等の手法によって分離する。分離した有機相を、必要に応じて水洗して精製する。なお、この分離操作は、上記過酸化水素のクエンチ処理前に行ってもよい。
【0053】
得られた有機相は、複合金属塩、活性炭、粘土鉱物、フェノール−ホルムアルデヒド系樹脂、金属酸化物などの公知の処理剤により、不純物(例えば残存する4級アンモニウム塩)を除去し、必要に応じてさらに水洗、ろ過などを行った後、溶剤を留去することで、目的とするエポキシ樹脂が得られる。複合金属塩、活性炭、粘土鉱物、フェノール−ホルムアルデヒド系樹脂としては、例えば特開2011−225711号公報に記載のものを使用することができる。これら処理剤による精製を行うことで、蒸留などによる精製工程を減らすことができ、高い収率で目的のエポキシ樹脂を取り出すことができる。
【0054】
上記本発明のエポキシ樹脂の製造方法を用いることで、式(I)で表される化合物のアリル基の炭素−炭素二重結合を効率よくエポキシ基に変換することができる。言い換えると、本発明のエポキシ樹脂の製造方法によれば、式(I)で表される化合物中のアリル基の炭素−炭素二重結合を高い転化率で反応させることができ、エポキシ基への選択率も高く、即ち、高い生成率でエポキシ基を得ることができる。
【0055】
<エポキシ樹脂>
本発明のエポキシ樹脂は、上記本発明のエポキシ樹脂の製造方法により得ることができるものであり、下記式(II):
【0056】
【化7】
の繰り返し単位及び、下記式(III):
【0057】
【化8】
の繰り返し単位を含み、
1分子内のアリル基の数の平均値Lと、1分子内のエポキシ基の数の平均値Mが0<L/M≦0.1の関係を満たすエポキシ樹脂である。
【0058】
1分子内のアリル基の数の平均値Lと、1分子内のエポキシ基の数の平均値Mは、1H−NMR測定により決定することができる。また、L、M、及びL/Mは、上述の本発明のエポキシ樹脂の製造方法の評価の際に使用する転化率(%)、生成率(%)と以下の関係を有する。
【0059】
L=(100−転化率/100)×(n+1)
M=(生成率/100)×(n+1)
L/M=(100−転化率)/生成率)
なお、上記式中nは、上述の本発明のエポキシ樹脂の製造方法において原料として用いられる式(I)で表される化合物の繰り返し数の平均値である。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂は、上述の本発明のエポキシ樹脂の製造方法により得られるものであるため、1分子内の全繰り返し単位の数の平均値(n)は、1〜20であり、1〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。そして、1分子内の式(II)の繰り返し単位の数の平均値(o)と1分子内の式(III)の繰り返し単位の数の平均値(p)を足した値はnとなることが好ましい。このような場合、本発明のエポキシ樹脂の繰り返し単位は、上記式(II)の繰り返し単位と上記式(III)の繰り返し単位のみから構成されることとなる。また、1分子内の式(II)の繰り返し単位の数の平均値(o)は、1分子内の全繰り返し単位の数の平均値(n)に対して80%以上100%未満であることが好ましく、1分子内の式(III)の繰り返し単位の数の平均値(p)は、1分子内の全繰り返し単位の数の平均値(n)に対して0%超20%未満であることが好ましい。
【0061】
本発明のエポキシ樹脂の末端は、水素原子、以下の式(IV)、又は、式(V)の構造を有することが好ましく、式(II)又は式(III)の繰り返し単位の隣にエポキシ樹脂の末端が存在する場合は、ベンゼン環側の末端は水素原子であることが好ましく、メチレン基(−CH2−)側の末端は、以下の式(IV)又は式(V)の構造を有することが好ましい。
【0062】
【化9】
【0063】
【化10】
【0064】
本発明のエポキシ樹脂は、難燃性に優れているため、難燃剤としてハロゲンを添加させることなく難燃性を発現できうる組成物を製造でき、環境に対する付加が少ない。かつ、その疎水性の高さから、多少塩素等のイオンが含まれてもそれらの移動を抑制することができ、高い電気信頼性を有しており、電気電子部品材料として有用である。
【0065】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂と硬化剤を含有してなる。本発明の硬化性樹脂組成物に使用する硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物など公知の硬化剤を使用することができ、これらの具体例としては、国際公開第2006/090662号に記載のものが挙げられる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物において、硬化剤の使用量は、本発明のエポキシ樹脂のエポキシ基1モル当量に対して0.5〜1.5モル当量が好ましく、0.6〜1.2モル当量が特に好ましい。硬化剤の使用量が上記の範囲であることで、良好な硬化物性を得ることができる。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、国際公開第2006/090662号に記載された、公知の、硬化促進剤、無機充填剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料などの種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂、その他添加剤を適宜含有してもよい。本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤など各種の用途に使用することができる。
【0068】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られる。硬化の方法としては、公知の方法を用いることができ、硬化により得られた本発明の硬化物は、例えば、プリント基板の絶縁材料や半導体の封止剤などの各種の用途に使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例において、転化率、選択率、生成率、及び、L/Mは、以下の手法により求めた。
【0070】
<転化率、選択率、生成率>
転化率、選択率、生成率は、1H−NMR測定(溶媒:CDCl3、内標準物質:ナフタレン)により、得られたデータをもとに以下の式により計算した。計算した各々の値の少数第一位を四捨五入して、それぞれ転化率、選択率、生成率とした。
【0071】
・転化率(%)=(1−得られたエポキシ樹脂1分子内に残存するアリル基の数の平均値/反応前のAEP1分子内のアリル基の数の平均値)×100
・選択率(%)={得られたエポキシ樹脂1分子内に存在するエポキシ基の数の平均値/(反応前のAEP1分子内のアリル基の数の平均値−得られたエポキシ樹脂1分子内に残存するアリル基の数の平均値)}×100
・生成率(%)=転化率×選択率/100
【0072】
<L/M>
上記1H−NMR測定により得られた「得られたエポキシ樹脂1分子内に残存するアリル基の数の平均値」(即ち、L)を「得られたエポキシ樹脂1分子内に存在するエポキシ基の数の平均値」(即ち、M)で除して求めた。
【0073】
[AEPの合成]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水40質量部、ジメチルスルホキシド400質量部、フェノール樹脂(フェノール−ビフェニレン型 水酸基当量210g/eq.軟化点74℃)210質量部を加え、45℃に昇温し溶解させた。次いで38〜40℃に冷却、そのままフレーク状の苛性ソーダ(純度 99% 東ソー製)44.4質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.1モル当量)を60分かけて添加した。その後、さらにアリルクロライド(純度98.7% 市販のアリルクロライドを蒸留生成により分離。アリルクロライドポリマーが0.2面積%未満であることをガスクロマトグラフィーにより確認)101.5質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.3モル当量)を60分かけて滴下し、そのまま38〜40℃で5時間、60〜65℃で1時間反応を行った。
反応終了後、ロータリーエバポレータにて135℃以下で加熱減圧下、水やジメチルスルホキシド等を留去した。そして、メチルイソブチルケトン740質量部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した。その後油層からロータリーエバポレータを用いて、減圧下、窒素バブリングしながら溶剤類を留去することで、n=2.4である式(I)のAEP240質量部を得た。得られたAEPの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定結果は、上述の図2に相当する。
【0074】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、上記合成したAEPを含むトルエン溶液(AEPの濃度:15質量%)を投入し、さらにAEP1モル部当たり、タングステン酸化合物としてのタングステン酸ナトリウム2水和物を0.16モル部、4級アンモニウム塩としてのトリオクチルメチルアンモニウムアセテート(TOMAA)を0.08モル部、リン酸化合物としてのリン酸を0.1モル部(85%リン酸水溶液)、そして、AEP100質量部当たり陽イオン交換樹脂としてのアンバーリスト35WET(オルガノより購入)を2.7質量部投入し、この混合液を90℃に昇温した。昇温後、攪拌しながら、30%過酸化水素水溶液を、AEP中のアリル基1モル当量に対し、過酸化水素が3モル当量となる量を20分間かけて添加した。添加終了後、そのまま90℃で2時間攪拌した。
ついでチオ硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、水相を分離することでエポキシ樹脂を含む溶液を得た。1H−NMRで確認したところ、転化率は94%、選択率は98%、生成率は92%であった。
【0075】
[実施例2]
過酸化水素水添加終了後の反応時間を2.5時間とした以外は実施例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は96%、選択率は96%、生成率は92%であった。
【0076】
[実施例3]
陽イオン交換樹脂としてのアンバーリスト35WETの量をAEP100質量部当たり3.0質量部とした以外は、実施例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は97%、選択率は86%、生成率は83%であった。
【0077】
[実施例4]
陽イオン交換樹脂としてのアンバーリスト35WETの量をAEP100質量部当たり3.5質量部とした以外は、実施例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は100%、選択率は71%、生成率は71%であった。
【0078】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、上記合成したAEPを含むトルエン溶液(AEPの濃度:10質量%)を投入し、さらにAEP1モル部当たり、タングステン酸化合物としてのタングステン酸ナトリウム2水和物を0.02モル部、4級アンモニウム塩としてのトリオクチルメチルアンモニウムクロライド(TOMACl)を0.01モル部、および、リン酸化合物としてのリン酸を0.26モル部(85%リン酸水溶液)投入し、この混合液を90℃に昇温した。なお、陽イオン交換樹脂は使用しなかった。昇温後、攪拌しながら、30%過酸化水素水溶液を、AEP中のアリル基1モル当量に対し過酸化水素が1モル当量となる量を、30分間かけて添加した。添加終了後、そのまま90℃で3時間攪拌した。
ついでチオ硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、水相を分離することでエポキシ樹脂を含む溶液を得た。1H−NMRで確認したところ、転化率は40%、選択率72%、生成率は29%であった。
【0079】
[比較例2]
AEPのトルエン溶液の濃度を5質量%にした以外(AEP自体の投入量は比較例1と同じ)は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は29%、選択率は66%、生成率は19%であった。
【0080】
[比較例3]
AEPのトルエン溶液の濃度を15質量%にした以外(AEP自体の投入量は比較例1と同じ)は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は55%、選択率は60%、生成率は32%であった。
【0081】
[比較例4]
AEPのトルエン溶液の濃度を20質量%にした以外(AEP自体の投入量は比較例1と同じ)は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は50%、選択率は54%、生成率は27%であった。
【0082】
[比較例5]
AEPを1,2−ジクロロベンゼン溶液(AEPの濃度:10質量%、AEP自体の投入量は比較例1と同じ)にした以外は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は45%、選択率は32%、生成率は15%であった。
【0083】
[比較例6]
AEPをトリクロロメタン溶液(AEPの濃度:10質量%、AEP自体の投入量は比較例1と同じ)にし、反応温度を60℃とした以外は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は24%、選択率は75%、生成率は18%であった。
【0084】
[比較例7]
AEPをジクロロエタン溶液(AEPの濃度:10質量%、AEP自体の投入量は比較例1と同じ)にし、反応温度を60℃とした以外は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は13%、選択率は72%、生成率は9%であった。
【0085】
[比較例8]
AEPをジクロロエタン溶液(AEPの濃度:10質量%、AEP自体の投入量は比較例1と同じ)にした以外は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は25%、選択率は69%、生成率は17%であった。
【0086】
[比較例9]
AEPをジクロロエタン溶液(AEPの濃度:10質量%、AEP自体の投入量は比較例1と同じ)にし、反応温度を80℃とし、過酸化水素水添加終了後の反応時間を24時間とした以外は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は38%、選択率は46%、生成率は17%であった。
【0087】
[比較例10]
AEPを酢酸エチル溶液(AEPの濃度:10質量%、AEP自体の投入量は比較例1と同じ)にし、反応温度を60℃とした以外は、比較例1と同様の操作でエポキシ樹脂を得た。転化率は14%、選択率は27%、生成率は4%であった。
【0088】
結果を以下の表1、2にまとめた。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1の結果からわかるように、実施例1〜4はエポキシ基の生成率が70%以上であり、比較例1〜10に比して高い値を示した。実施例1〜3は生成率が80%以上であり、特に高い値を示した。比較例1〜10は、陽イオン交換樹脂を用いておらず、特に転化率、生成率が低かった。
また、実施例1〜3において得られたエポキシ樹脂は、L/Mの値が0を超えて0.1以下であり、エポキシ基とアリル基を両方含有し、かつエポキシ基がアリル基に比して10倍以上多く、エポキシ樹脂として有用であることがわかる。一方比較例1〜10において得られたエポキシ樹脂は、L/Mの値が0.1を大幅に超えており、エポキシ基とアリル基を両方含有するが、エポキシ基の占める比率が十分ではないことがわかる。
図1
図2