特許第6440282号(P6440282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440282
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】磁性材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/01 20060101AFI20181210BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20181210BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20181210BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20181210BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20181210BHJP
   F25B 21/00 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   H01F1/01 170
   C22C33/02 Z
   C22C38/00 303Z
   C22C38/00 304
   B22F1/00 B
   B22F9/04 B
   B22F1/00 J
   !F25B21/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-546556(P2017-546556)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2016080883
(87)【国際公開番号】WO2017069131
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2018年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-205863(P2015-205863)
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麻哉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 公洋
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−316324(JP,A)
【文献】 特開2005−113209(JP,A)
【文献】 特開2015−506090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/01
B22F 1/00
B22F 9/04
C22C 33/02
C22C 38/00
F25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄粉末の表面酸化物を低減する表面酸化物低減工程と、
前記表面酸化物低減工程により得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、La元素及びSi元素により構成される化合物粉末Aとを混合し、得られた混合粉末を圧粉成型する粉末成型体形成工程と、
前記粉末成型体形成工程により得られた粉末成型体から、真空雰囲気中での固相反応により焼結体を作製する焼結体形成工程と、を有する磁性材料の製造方法。
【請求項2】
前記表面酸化物低減工程は、
電気炉の加熱チャンバ内に前記鉄粉末を配置する鉄粉末配置ステップと、
前記鉄粉末配置ステップ後、前記加熱チャンバ内を真空排気する真空排気ステップと、
前記真空排気ステップ後、前記加熱チャンバ内を400℃以上1000℃以下の処理温度まで加熱し、かつ前記鉄粉末を水素ガスに曝露することで前記鉄粉末の表面還元処理を行い、前記表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得る表面還元処理ステップと、を有する請求項1に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項3】
前記表面酸化物低減工程は、
電解鉄を溶解脱気して鉄インゴットを形成する鉄インゴット形成ステップと、
前記鉄インゴット形成ステップで得られた鉄インゴットを研削して前記表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得る研削ステップと、を有する請求項1に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項4】
前記粉末成型体形成工程において、前記表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、前記化合物粉末Aとを、
前記混合粉末中のLa元素の比率が7.1原子%以上9.3原子%以下、
Fe元素の比率が76.1原子%以上84.5原子%以下、
Si元素の比率が8.4原子%以上16.7原子%以下となるように混合する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷を低減する冷凍技術として、環境問題を引き起こすフロン系ガスを用いず、クリーンでエネルギー効率の高い磁気冷凍方式が提案されている。この磁気冷凍方式で冷媒の役割を果たすのは磁気冷凍材料であり、磁気冷凍機器を常温で動作させるためには、常温近くで大きな磁気エントロピー変化の得られる磁性材料が利用される。
【0003】
このような磁気冷凍に好適な特性を示す磁性材料として、NaZn13型結晶構造を有するLa(Fe,Si)13系化合物が知られている。La(Fe,Si)13系化合物は大きな磁気エントロピー変化を得ることができる上に、安価なFeを主な構成元素とするため実用的に有利である。 (例えば特許文献1、2参照)
La(Fe,Si)13系化合物の製造方法に関しては、アーク溶解法等を用いて原料の一体化を行い、続いて1050℃で10日間保持する熱処理を行うことによって、NaZn13型結晶構造相を主相とする磁性材料が得られることが報告されている(非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、La(Fe,Si)13系化合物の合成工程において、アーク溶解法や高周波溶解法等を適用し、液相を経由して合金化を行った段階では、包晶反応と呼ばれる相分離金属反応が生じるため、α−Fe相とLaFeSi化合物相を多く含んだ中間状態材の出現が不可避であり、この中間材ではNaZn13型結晶構造相はほとんど生成されない。このため、中間材からLa(Fe,Si)13系化合物を得るためには、上述したように高温で長時間にわたる均質化熱処理が必要となる。
【0005】
このような高温で長時間の熱処理を回避するため、例えば特許文献3ではロール急冷法により凝固させる方法、特許文献4では溶湯金属を強制冷却する方法などが提案されている。これらの方法では中間材の均質化熱処理を短縮できるとしても、依然として中間材を経由することは不可避である。
【0006】
また特許文献5には、原料組成にホウ素Bあるいは炭素Cなどを含有させることにより、中間材におけるNaZn13型結晶構造相の生成量が増加するため、その後の均質化熱処理が容易になることが記載されている。しかし、この方法で作製された合金は、良好な効果を得るためにBを1.8原子%以上5.4原子%以下程度添加する必要があり、FeB相のような副次的生成相が特性を低下させる問題がある。
【0007】
液相を経由しない金属反応を用いることにより、中間材を経ずに最終状態のNaZn13型結晶構造相を得ることも試みられており、特許文献6ではFe−Si合金と酸化ランタンとを反応させる方法が提案されている。しかし、Laの酸化物は安定であることから、還元するにはCaなどの極めて酸素に活性なアルカリ土類金属を用いる必要があるため安全管理が複雑になる。また、反応後のCa酸化物を脱離するために水洗が必須なため、生成したLa(Fe,Si)13系化合物の表面に錆を生じさせる可能性がある。
【0008】
同様な固相反応による作製法として、特許文献7では加圧とパルス通電とを同時に行い通電加熱で焼結する方法が提案されている。この方式においては、中間材を経由すること無く、短時間で比較的多くのLa(Fe,Si)13系化合物を含む試料を作製することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特開2002−356748号公報
【特許文献2】日本国特開2003−96547号公報
【特許文献3】日本国特開2004−100043号公報
【特許文献4】日本国特開2006−265631号公報
【特許文献5】日本国特開2004−99928号公報
【特許文献6】日本国特開2006−274345号公報
【特許文献7】日本国特許第4237730号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「磁気冷凍技術の常温域への展開」 まぐね Vol.1,No.7 (2006),p308−315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献7で開示された磁性材料の製造方法によれば、短時間に得られるLa(Fe,Si)13系化合物の含有量は多いが、残留するα−Feの量も多い。このため、液相状態を経て中間材を均質化した場合より、NaZn13型結晶構造相の体積分率が低下すると共にLa(Fe,Si)13系化合物中のFe含有量が減少し、目的とする磁気エントロピー特性を低下させてしまう。
【0012】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、固相反応により、NaZn13型結晶構造相の含有分率の高い磁性材料が得られる磁性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
鉄粉末の表面酸化物を低減する表面酸化物低減工程と、
前記表面酸化物低減工程により得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、La元素及びSi元素により構成される化合物粉末Aとを混合し、得られた混合粉末を圧粉成型する粉末成型体形成工程と、
前記粉末成型体形成工程により得られた粉末成型体から、真空雰囲気中での固相反応により焼結体を作製する焼結体形成工程と、を有する磁性材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、固相反応により、NaZn13型結晶構造相の含有分率の高い磁性材料が得られる磁性材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施例1において得られた磁性材料の反射電子像。
図2】本発明に係る実施例2において得られた磁性材料の反射電子像。
図3】本発明に係る実施例1、2において得られた磁性材料の粉末X線回折測定結果。
図4】比較例1において得られた磁性材料の反射電子像。
図5】比較例1において得られた磁性材料の粉末X線回折測定結果。
図6】比較例2において得られた磁性材料の粉末X線回折測定結果。
図7】比較例2において得られた磁性材料の反射電子像。
図8】比較例3において得られた磁性材料の粉末X線回折測定結果。
図9】比較例3において得られた磁性材料の反射電子像。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0017】
本実施形態の磁性材料の製造方法の一構成例について、以下に説明する。
【0018】
本実施形態の磁性材料の製造方法は、以下の工程を有することができる。
【0019】
鉄粉末の表面酸化物を低減する表面酸化物低減工程。
【0020】
表面酸化物低減工程により得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、La元素及びSi元素により構成される化合物粉末Aとを混合し、得られた混合粉末を圧粉成型する粉末成型体形成工程。
【0021】
粉末成型体形成工程により得られた粉末成型体から、真空雰囲気中での固相反応により焼結体を作製する焼結体形成工程。
【0022】
以下、各工程について説明する。
(表面酸化物低減工程)
本発明の発明者らは、固相反応により、NaZn13型結晶構造相の含有分率の高い磁性材料が得られる、磁性材料の製造方法について鋭意検討を行った。
【0023】
そして、従来は着目されていなかった、焼結を施す際の雰囲気や出発原料粉末による固相反応中のLa酸化物形成に着目し、検討を行った。そして、原料粉末の1つである鉄粉末の表面に形成された酸化物として混入する酸素原子が、反応性焼結過程においてLa元素と結合してランタンの酸化物を形成することが、NaZn13型結晶構造相の生成反応の最も重大な阻害要因であることを見出した。
【0024】
そこで、本実施形態の磁性材料の製造方法においては、原料粉末の1つである、鉄粉末表面の酸化物を低減、除去する表面酸化物低減工程を設けることとした。
【0025】
表面酸化物低減工程において、鉄粉末表面の酸化物を低減する具体的な手段については特に限定されるものではない。
【0026】
表面酸化物低減工程の具体的な態様例について以下に説明する。
【0027】
例えば、表面酸化物低減工程の第1の形態例として、表面酸化物低減工程は、以下の各ステップを有することができる。表面酸化物低減工程において、以下のステップを実施することにより、出発原料粉末として供給した鉄粉末の表面に形成された表面酸化物を低減、除去した表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得ることができる。
【0028】
電気炉の加熱チャンバ内に鉄粉末を配置する鉄粉末配置ステップ。
【0029】
鉄粉末配置ステップ後、加熱チャンバ内を真空排気する真空排気ステップ。
【0030】
真空排気ステップ後、加熱チャンバ内を400℃以上1000℃以下の処理温度まで加熱し、かつ鉄粉末を水素ガスに曝露することで鉄粉末の表面還元処理を行い、表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得る表面還元処理ステップ。
【0031】
鉄粉末配置ステップでは電気炉の加熱チャンバ内に鉄粉末を配置することができる。この際用いる電気炉としては特に限定されるものではないが、真空排気ステップ、及び表面還元処理ステップを実施できるように、加熱チャンバ内、すなわち炉内を排気することができ、かつ水素ガスを供給できる電気炉であることが好ましい。
【0032】
真空排気ステップでは電気炉の加熱チャンバ内を真空排気することができる。真空排気を行う際、電気炉内の到達真空度は特に限定されるものではない。例えばロータリーポンプにより到達できる程度であれば足り、1Pa以下であることが好ましく、1.0×10−1Pa以下であることがより好ましい。
【0033】
真空排気ステップで目標の真空度に到達後、表面還元処理ステップを実施できる。表面還元処理ステップでは、電気炉の加熱チャンバ内を400℃以上1000℃以下の処理温度まで加熱し、かつ電気炉の加熱チャンバ内に水素ガスを供給し、鉄粉末を水素ガスと接触させ、鉄粉末を水素ガスに曝露することで鉄粉末の表面を還元し、鉄粉末の表面酸化物を低減できる。
【0034】
処理温度は、上述の様に400℃以上1000℃以下であることが好ましく、500℃以上700℃以下であることがより好ましく、600℃以上650℃以下であることがさらに好ましい。
【0035】
これは、処理温度が400℃未満であると、水素ガスを供給しても還元反応が十分に進行せず、鉄粉末の表面酸化物を低減する効果が十分に得られない恐れがあるからである。
【0036】
また、処理温度が1000℃を超えると、鉄粉末同士が焼結されて、鉄粉末の粒径が粗大化する恐れがあるためである。
【0037】
水素ガスを供給するタイミングは特に限定されるものではなく、例えば昇温開始時に排気から水素ガスの供給に変更することもできる。ただし、加熱チャンバ内の温度が低温の場合、還元反応が十分進行しないため、昇温開始後、上記処理温度に到達するまでは排気を継続し、処理温度に到達後、水素ガスの供給を開始することが好ましい。
【0038】
供給する水素ガスは、水素分子単体のガスであってもよいが、水素分子と不活性元素との混合ガスであってもよい。なお、不活性元素としては例えばアルゴンやヘリウム等を用いることができる。特に鉄粉末表面の表面酸化物について還元反応を十分に進行させるため、供給する水素ガスは水素分子単体のガスであることが好ましい。水素ガスを供給する際、電気炉の加熱チャンバ内の圧力が大気圧となるように供給することが好ましい。
【0039】
なお、水素ガスの電気炉への供給を開始した後の水素ガスの供給形態は特に限定されない。
【0040】
例えば、供給を開始してから電気炉内に継続して供給し、電気炉内に水素ガスの気流を形成することもできる。
【0041】
また、電気炉内の圧力が所望の圧力、例えば大気圧となるまで水素ガスを供給して、電気炉内を水素含有雰囲気とした後、供給を停止することもできる。このように水素ガスの供給を一旦停止した場合でも、電気炉内の圧力をモニターしておき、電気炉内の圧力の変動に応じて、任意のタイミングで再度水素ガスを供給することもできる。
【0042】
電気炉内を水素含有雰囲気とし、処理温度で保持している時間、すなわち処理時間は特に限定されるものではなく、電気炉内に配置した鉄粉末の量や、表面酸化物の形成の程度等により選択することができる。特に鉄粉末表面の表面酸化物を十分に低減できるように、例えば処理時間は1時間以上であることが好ましい。処理時間の上限は特に限定されるものではないが、生産性等を考慮して2時間以下であることが好ましい。
【0043】
表面還元処理ステップを終了後は加熱を止め、室温、またはその近傍まで冷却することができる。なお、加熱を停止した後も電気炉内は水素ガス含有雰囲気に保っていることが好ましい。これは室温またはその近傍まで冷却する過程で鉄粉末表面が再び酸化されることを防止するためである。
【0044】
室温、またはその近傍まで冷却した後は、加熱チャンバ内から還元処理を施した鉄粉末、すなわち表面酸化物低減処理済み鉄粉末を取り出し、後述する粉末成型体形成工程に供給することができる。
【0045】
表面酸化物低減工程の第2の形態例について説明する。表面酸化物低減工程は、以下の各ステップを有することができる。表面酸化物低減工程において、以下のステップを実施することにより、出発原料として供給した電解鉄の表面に形成された表面酸化物を低減、除去した表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得ることができる。
【0046】
電解鉄を溶解脱気して鉄インゴットを形成する鉄インゴット形成ステップ。
【0047】
鉄インゴット形成ステップで得られた鉄インゴットを研削して表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得る研削ステップ。
【0048】
鉄インゴット形成ステップでは電解鉄を溶解脱気して鉄インゴットを形成することができる。電解鉄を溶解脱気する具体的な方法は特に限定されるものではないが、例えばアルゴン雰囲気下アーク溶解により溶解脱気することができる。
【0049】
鉄インゴット形成ステップを実施することで、酸素の含有量を低減した鉄インゴットを形成することができる。
【0050】
そして、研削ステップにおいて、得られた鉄インゴットを研削することで、表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得ることができる。研削ステップで鉄インゴットを研削する方法、条件は特に限定されるものではなく、所望の粒径の表面酸化物低減処理済み鉄粉末を得られるようにして実施できる。例えばドリルビットにより鉄インゴットを研削することができる。
【0051】
研削ステップにより得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末は、後述する粉末成型体形成工程に供給することができる。
【0052】
以上に、表面酸化物低減工程について2つの形態例を挙げて説明したが、表面酸化物低減工程の構成については上述の形態に限定されるものではなく、鉄粉末の表面酸化物を低減除去できる方法であれば各種方法を用いることができる。
【0053】
後述する粉末成型体形成工程に供する表面酸化物低減処理済み鉄粉末のサイズについては特に限定されるものではないが、係る表面酸化物低減処理済み鉄粉末はJISZ8801(1982)に規定する基準寸法が106μmのふるいを通過した粉末であることが好ましい。
【0054】
これは、粉末成型体形成工程に供する表面酸化物低減処理済み鉄粉末は、粉末成型体形成工程後、焼結体形成工程を実施する際の固相反応の促進を考慮すると、後述する化合物粉末Aと同程度の粒径であることが好ましいからである。そして、化合物粉末Aは後述のようにJISZ8801(1982)で規定する基準寸法が106μmのふるいを通過した粉末が好ましいため、上述の様に粉末成型体形成工程に供する表面酸化物低減処理済み鉄粉末はJISZ8801(1982)で規定する基準寸法が106μmのふるいを通過した粉末であることが好ましい。
【0055】
特に、後述する粉末成型体形成工程に供する表面酸化物低減処理済み鉄粉末は、表面酸化物低減処理済み鉄粉末のうち、JISZ8801(1982)で規定する基準寸法が53μmのふるいを通過した表面酸化物低減処理済み鉄粉末であることがより好ましい。中でも、後述する粉末成型体形成工程に供する表面酸化物低減処理済み鉄粉末は、表面酸化物低減処理済み鉄粉末のうち、JISZ8801(1982)で規定する基準寸法が32μmのふるいを通過した表面酸化物低減処理済み鉄粉末であることがさらに好ましい。
【0056】
これは、後述する焼結体形成工程において、粉末の大きさは元素拡散距離、及び速度に影響するため、焼結体形成工程において十分に反応を進行させるため、少なくとも上記基準寸法が106μmのふるいによりふるい分けを行うことで、粗大な粒子を除去できるからである。ただし、基準寸法が32μmのふるいよりもさらに細かい基準寸法のふるいによりふるい分けを行った鉄粉末は、発火様の酸化反応をする粉末を多く含む恐れがあるため実用的ではない。
【0057】
なお、表面酸化物低減工程により得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末の粒径は、上述のようにJISZ8801(1982)に規定する基準寸法が106μmのふるいを通過した粉末であることが好ましいが、表面酸化物低減処理を終えた直後の段階では上記範囲を外れていても良い。この場合、表面酸化物低減工程後の表面酸化物低減処理済み鉄粉末について、その粒径が上記粒径範囲内に入るように所定の基準寸法を備えたふるいを用いてふるい分けすることができる。
【0058】
ただし、ふるい分けの操作の手間を省くため、例えば、上述の表面酸化物低減工程の2つの形態例のうち、第1の形態例の場合であれば、電気炉の加熱チャンバ内に供給する鉄粉が上記所定の基準寸法のふるいを通過する粉末で構成されていることが好ましい。また、上述の表面酸化物低減工程の第2の形態例の場合であれば、研削ステップにおいて、所定の基準寸法のふるいを通過する粒径の表面酸化物低減処理済み鉄粉末が得られるように鉄インゴットを研削することが好ましい。
(粉末成型体形成工程)
粉末成型体形成工程では、表面酸化物低減工程により得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、La元素及びSi元素により構成されるLaSi化合物の化合物粉末Aとを混合し、得られた混合粉末を圧粉成型し、粉末成型体を形成することができる。
【0059】
ここでまず、化合物粉末Aについて説明する。
【0060】
化合物粉末Aは、上述の様にLa元素及びSi元素により構成することができる。
【0061】
係る化合物粉末Aは、例えば鉄粉末と化合物粉末Aとの混合粉末中に含まれるLaと、Siとの比率と一致するような組成のバルク材が得られるように、ランタン単体の粉末と、シリコン単体の粉末とを秤量した後、溶解混合し、得られたバルク材を粉砕して得られる。なお、その組成により、バルク材は単一化合物として構成される場合もあるが、複数の化合物相から構成されていてもよい。
【0062】
化合物粉末Aは上述の様に、バルク材を一旦形成した後、粉砕することで粉末形状とすることができる。この際、化合物粉末Aのサイズについては特に限定されるものではないが、例えばJISZ8801(1982)に規定する基準寸法が106μmのふるいを通過した粉末であることが好ましい。
【0063】
後述する焼結体形成工程においては、固相反応によりNaZn13型結晶構造相の含有分率の高い磁性材料の焼結体を形成することができる。そして、粉末の大きさは元素拡散距離、及び速度に影響するため、焼結体形成工程において十分に反応を進行させるため、化合物粉末AはJISZ8801(1982)に規定する基準寸法が106μmのふるいを通過した粉末であることが好ましい。
【0064】
特に、化合物粉末Aは、上記バルク材を粉砕することで得られた粉末のうち、JISZ8801(1982)で規定する基準寸法が53μmのふるいを通過した粉末であることがより好ましい。中でも、化合物粉末Aは、上記バルク材を粉砕することで得られた粉末のうち、JISZ8801(1982)で規定する基準寸法が32μmのふるいを通過した粉末であることがさらに好ましい。
【0065】
これは、後述する焼結体形成工程において、粉末の大きさは元素拡散距離、及び速度に影響するため、焼結体形成工程において十分に反応を進行させるため、少なくとも基準寸法が106μmのふるいによりふるい分けを行うことで、粗大な粒子を除去できるからである。ただし、基準寸法が32μmよりもさらに細かい基準寸法のふるいによりふるい分けを行った化合物粉末Aは、発火様の酸化反応をする粉末を多く含む恐れがあるため実用的ではない。
【0066】
次に混合粉末について説明する。上述の様に、粉末成型体形成工程においては、表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、化合物粉末Aとを所定比となるように秤量し、混合することで混合粉末を調製することができる。この際、混合粉末の組成は特に限定されるものではないが、La元素の比率が7.1原子%以上9.3原子%以下、Fe元素の比率が76.1原子%以上84.5原子%以下、Si元素の比率が8.4原子%以上16.7原子%以下となるように混合することが好ましい。
【0067】
本実施形態の磁性材料の製造方法においては、NaZn13型結晶構造相の含有分率の高い磁性材料を製造することができる。そして、NaZn13型結晶構造相としてはLa(Fe,Si)13系化合物を好適に製造することができる。このため、混合粉末中に含まれる各元素が目的とする組成に応じた比率となるように混合粉末を調製することが好ましい。
【0068】
ただし、Laは焼結体形成工程等で微量の酸化物を形成する恐れがあることから、混合物中に量論比よりも多めに添加しておくことが好ましい。このため、上述の様に混合粉末中のLa元素の比率は7.1原子%以上とすることが好ましい。ただし、La元素の比率が高くなりすぎると、目的とは異なる相が生じる恐れがあることから、混合粉末中のLa元素の比率は9.3原子%以下であることが好ましい。
【0069】
Fe元素、及びSi元素については、混合粉末に含まれるFe元素、及びSi元素中のFe元素の比率が高くなるにつれて、磁気熱量効果が大きくなるため、上述の様にFe元素の比率は76.1原子%以上であることが好ましく、Si元素の比率は16.7原子%以下であることが好ましい。ただし、Fe元素、及びSi元素のうち、Fe元素の比率が高くなりすぎると、不純物相を生成し易くなることから、上述の様にFe元素の比率は84.5原子%以下であることが好ましく、Si元素の比率は、8.4原子%以上であることが好ましい。
【0070】
特に混合粉末の組成は、La元素の比率は7.1原子%以上7.5原子%以下であることがより好ましく、Fe元素の比率は81.5原子%以上83.0原子%以下であることがより好ましく、Si元素の比率は9.2原子%以上11.1原子%以下であることがより好ましい。
【0071】
混合粉末を調製する際、鉄粉末と、化合物粉末Aとを混合する具体的な方法は特に限定されるものではなく、両粉末を略均一に混合できる手段であれば良い。
【0072】
そして、粉末成型体形成工程では、得られた混合粉末を圧粉成型することで粉末成型体を得ることができる。
【0073】
圧粉成型の方法としては特に限定されるものではなく、混合粉末を成型器に充填し加圧することで成型し、粉末成型体を得ることができる。具体的には例えば、混合粉末を金型ダイ中に投入後、上下をパンチで塞ぎ、パンチに荷重を印加してペレット状の粉末成型体を得ることができる。
【0074】
成型する際、印加する荷重(圧力)は特に限定されるものではない。荷重が大きければ焼結後試料中の空隙率を減らせるが、あまり大きすぎるとパンチとダイが塑性変形して荷重が均等に分散しなくなる。このため、用いたパンチやダイの材質や、焼結体に要求される空隙率等により成型時の圧力を選択することが好ましい。
(焼結体形成工程)
焼結体形成工程では、粉末成型体形成工程で得られた粉末成型体から、真空雰囲気中での固相反応により焼結体を作製することができる。
【0075】
焼結体形成工程においては、具体的には例えば、粉末成型体を真空中において、1050℃以上1140℃以下の温度で加熱し、反応性焼結を進行させることが好ましい。
【0076】
焼結体形成工程においては、加熱炉内に粉末成型体を載置した後、昇温前にチャンバ内を真空にすることができる。このように粉末成型体形成工程で成型後に粉末成型体を金型から取り出して、真空排気環境下に置くことで、粉末成型の際に巻込まれた残留大気を取り除くことができる。この過程は加圧と昇温を同時に行う通電焼結法では実現し得ない。
【0077】
また、本発明の発明者らの検討によれば、表面酸化物低減工程において原料の鉄粉末の表面酸化物を低減したことに加え、焼結体形成工程で真空雰囲気下とし、試料外部からの酸素侵入を抑制した環境下で加熱を行うことで、鉄粉末表面の酸化物を除去した効果が明瞭に表れる。すなわち、NaZn13型結晶構造相の生成反応を促進することができる。
【0078】
チャンバ内を排気する際、常温での真空度は特に限定されるものではなく、大気圧である0.1MPa未満であれば良いが、1×10−3Pa以上1×10−1Pa以下であることが好ましく、5×10−3Pa以上1×10−2Pa以下であることがさらに好ましい。
【0079】
焼結体形成工程では、上述の様にチャンバ内が大気圧以下に排気されていればよく、真空度は特に限定されないが、1×10−1Paより真空度が悪い場合、チャンバ内に酸素や水分が焼結反応に影響するくらい残留している場合があるため真空度は1×10−1Pa以下が好ましい。また、1×10−3Paよりも高真空を実現するためには、高い能力を持った非汎用の排気系が必要になるため1×10−3Pa以上が好ましい。特に、5×10−3Pa以上が真空度到達として実用的である。
【0080】
なお、ここではチャンバ内を真空とする旨記載したが、例えば粉末成型体をガラス管等に真空封止して、加熱することもできる。この場合は、真空封止する際にガラス管内を真空引きし、ガラス管内を所望の真空度とすることができる。
【0081】
焼結体形成工程においては、チャンバ内を所定の真空度とした後、または、チャンバ内の排気を実施しながら昇温を開始し、粉末成型体を加熱することができる。なお、粉末成型体中に巻き込まれた残留大気を十分除去するため、チャンバ内を所定の真空度とした後に昇温を開始することが好ましい。
【0082】
そして、加熱を行う際の到達温度、すなわち熱処理温度は、既述のように1050℃以上1140℃以下であることが好ましい。
【0083】
包晶分解温度は、Feが高濃度であるほど低下するため、La(Fe,Si)13化合物において、FeとSiの組成比が0.91:0.09より大きいFe濃度が高い領域では1050℃においても包晶分解反応が生じ、FeとSiの組成比が0.88:0.12組成付近では1140℃まで温度を上昇させた方が、反応が促進され生成効率が良くなる。このため、上述の様に熱処理温度は1050℃以上1140℃以下とすることができ、特に調製する磁性材料の組成に応じて熱処理温度を選択することができる。
【0084】
そして、熱処理温度を1050℃以上1140℃以下とすることで、固相反応により、NaZn13型結晶構造相の含有分率の高い焼結体を形成することができる。このため、液相を経由して形成する場合とは異なり、中間材の生成を伴わないため、従来のように長時間にわたり熱処理を適用する必要がなく、NaZn13型結晶構造相の製造効率を高めることができる。
【0085】
焼結体形成工程において、熱処理温度に到達後、保持する時間は特に限定されるものではなく、粉末成型体のサイズ等に応じて任意に選択することができる。例えば予備試験等を行い、得られる焼結体中のNaZn13型結晶構造相の比率の生成割合等に応じて選択することができる。
【0086】
なお、焼結体形成工程を実施する際の炉の種類は特に限定されるものではなく、大気圧以下の減圧雰囲気下、所望の温度で加熱できる炉であれば良い。例えば、大気圧以下の減圧雰囲気で昇温する方式は、炉心管を排気できる熱処理炉でも可能であり、また、既述のように石英管中に粉末成型体を真空封止して管状炉等の均熱帯に所定時間保持しても実現できる。
【0087】
このように、粉末成型体に含まれる原料の鉄粉末の表面酸化物に由来する酸素を減少させ、また反応性焼結を真空中で進行させることにより、NaZn13型結晶構造相の生成比率を短時間で効率的に高めることができる。従って、磁気冷凍材料として優れた特性を示す磁性材料の製造効率を高められる。
【0088】
なお、磁気冷凍材料としての磁気熱量効果のみを考慮した場合、NaZn13型結晶構造相の比率を100%により近づけることが望ましいが、体積分率で10%以下のα−Fe相を含む状態で一旦反応を止めると磁性材料の実用特性である機械加工性などを高めることができるので、システムに搭載する際に形状が選択しやすい。従って、焼結体形成工程で得られる焼結体は体積分率で10%以下の微量であれば第2相を含んでいてもよい。
【実施例】
【0089】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない
[実施例1]
以下の手順により磁性材料を製造し、その評価を行った。
(表面酸化物低減工程)
市販の鉄粉末(株式会社高純度化学研究所製、粒径53μm以下、純度3N)100gを直径8cmのアルミナ皿の上に拡げ、電気炉の加熱チャンバの均熱帯に配置した(鉄粉末配置ステップ)。
【0090】
次に電気炉の加熱チャンバ内をロータリーポンプで1×10−1Paまで排気した(真空排気ステップ)。
【0091】
加熱チャンバ内の真空度が1×10−1Paとなった後、昇温を開始し、昇温開始から経過時間1時間で目的温度である600℃まで昇温した。目的温度到達後、水素を加熱チャンバ内が大気圧と同等になる条件で導入し、水素ガスに対して、加熱チャンバ内に設置した鉄粉末を1時間曝露した(表面還元処理ステップ)。なお、水素ガスの供給を開始してから、表面還元処理ステップを実施している間、加熱チャンバ内の圧力が大気圧と同等になるように水素ガスの供給は継続して実施した。
【0092】
表面還元処理ステップ終了後、水素ガスの加熱チャンバ内への導入を継続したまま電気炉のヒータを遮断し、加熱チャンバ内の温度が室温まで低下した段階でチャンバ内の水素供給を停止し、表面酸化物を低減した鉄粉末(表面酸化物低減処理済み鉄粉末)を回収した。
【0093】
得られた鉄粉末のうち、焼結等により偶発的に粗大化した粉末を除去するため、JISZ8801(1982)で規定する基準寸法が53μmの標準ふるいにかけ、メッシュを通過した粉粒だけを表面酸化物低減処理済み鉄粉末として粉末成型体形成工程に供した。
(粉末成型体形成工程)
まず、化合物粉末Aを準備した。化合物粉末Aとしては以下の手順によりLaと、Siとを含有し、その組成比が1:1のLaSi化合物粉末を準備した。
【0094】
LaSi化合物粉末は、La金属(日本イットリウム株式会社製)とSi粉末(株式会社高純度化学研究所製 純度4N)とを物質量比で1:1になるように秤量し、アーク溶解により作製したLaSi化合物を、大気中で瑪瑙乳鉢・乳棒で粉砕することにより得た。得られたLaSi化合物粉末は、JISZ8801(1982)で規定する基準寸法が32μmの標準ふるいにかけ、メッシュを通過した粉粒だけを化合物粉末Aとして用いた。
【0095】
表面酸化物低減工程で得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末と、上述の化合物粉末AとをLa1+d(Fe0.90Si0.1013の組成比となるように混合し、混合粉末を調製した。なお、Laの化学量論比からの過剰分dは0.3とした。これは不可避のLa酸化が発生した際でも、La(Fe0.90Si0.1013を構成できるだけの元素量が存在するように調整したためである。
【0096】
得られた混合粉末0.3gを非磁性鋼製のダイの貫通穴(直径:8mm)に入れ、同質鋼のパンチで上下を抑え、両端よりハンドプレスで100MPa相当の面圧力を印加して粉末成型体であるペレットを作製した。
(焼結体形成工程)
粉末成型体形成工程で得られたペレットを厚さ0.05mmのMoフォイルで包み込み、一端の閉じた石英管中に入れた後、内部を5×10−3Paまで排気し、排気口側を封じ切ることにより真空アンプルを形成した。
【0097】
作成した真空アンプルをマッフル炉内部に配置し、昇温開始から2時間で反応性焼結実施のための熱処理温度である1130℃まで昇温した後、該熱処理温度で12時間保持した。
【0098】
12時間保持後、降温は炉の加熱通電を切り、炉体の自然冷却に従った。炉から取り出したアンプルは外部石英管を粉砕し、焼結された磁性材料を得た。
【0099】
得られた磁性材料中における化合物相を調べるために、表面を研磨して走査型電子顕微鏡SEM(株式会社日立テクノロジーズ製 型式:TM3000)の反射電子像を観測した。観察像を図1に示す。
【0100】
図1の灰色部分11についてSEM付属のエネルギー分散X線分析装置(Bruker製 型式:Quantax 700)を用いて組成分析したところ、La、FeおよびSiの組成比はLa(Fe0.9Si0.113に一致し、NaZn13型結晶構造相と識別された。
【0101】
また白い部分12はLaリッチ相であり黒い部分13はFe相であった。図1から明らかなように、NaZn13型結晶構造相が主相として生成しており、Fe相の大きさは、出発原料粉末として用いた鉄粉末の53μmに比べ大幅に減少していることが確認できた。
[実施例2]
表面酸化物低減工程を以下の手順により実施し、得られた表面酸化物低減処理済み鉄粉末を用いた点以外は実施例1と同様にして、すなわち、表面酸化物低減工程以外は、実施例1の粉末成型体形成工程、及び焼結体形成工程と同様にして磁性材料の製造を行った。
(表面酸化物低減工程)
まず、市販の電解鉄(昭和電工株式会社製 商品名:アトミロン)15gをアルゴン中アーク溶解により溶解脱気し、ボタン状インゴットを成形した(鉄インゴット形成ステップ)。
【0102】
次に工業ダイヤモンドが焼き付けられたドリルビットをボール盤に取り付け、鉄インゴット形成ステップで形成したボタン状インゴットを研削した(研削ステップ)。
【0103】
得られた研削粒をJISZ8801(1982)で規定する基準寸法が53μmの標準ふるいにかけ、メッシュを通過した粉粒だけを表面酸化物低減処理済み鉄粉末として粉末成型体形成工程に供した。
【0104】
そして、得られた磁性材料中における化合物相を調べるために、実施例1と同様にして表面を研磨して走査型電子顕微鏡の反射電子像を観測した。観察像を図2に示す。
【0105】
また、実施例1の場合と同様にして、図2の灰色部分21についてエネルギー分散X線分析装置を用いて組成分析したところ、La、FeおよびSiの組成比はLa(Fe0.9Si0.113に一致し、NaZn13型結晶構造相と識別された。
【0106】
また白い部分22はLaリッチ相であり黒い部分23はFe相であった。図2においては、残留Fe相は少なく、ほとんどがNaZn13型結晶構造相であることが確認できた。
【0107】
Fe相とNaZn13型結晶構造相の構成量を比較するために、実施例1および実施例2で得られた試料に対する粉末X線回折測定した結果を図3に示す。
【0108】
図3中下段に示した棒線は結晶構造から計算したNaZn13型La(Fe,Si)13およびα−Feのモデルパターン図形を示している。
【0109】
図3に示した結果から、実施例1、実施例2いずれの場合でも明らかにLa(Fe,Si)13相はα−Fe相よりも多くなることを確認できた。詳細に解析すると、実施例1ではLa(Fe,Si)13とα−Feの相分率の比は99.0:1.0、また実施例2では97.7:2.3となり、極めて良好なNaZn13型La(Fe,Si)13が作製されていることが確認できた。
[比較例1]
実施例1と同じ鉄粉末(高純度化学研究所製、粒径53μm以下、純度3N)を表面酸化物低減工程に供することなく粉末成型体成形工程に供した点、及び焼結体形成工程において通電加圧焼結を用いて焼結を行った点以外は実施例1と同様にして、供試体1を作製した。
【0110】
なお、焼結体形成工程は、焼結前のチャンバ内の真空度は2×10−2Pa、印加圧は38MPaで、直径10mmの断面積試料空間に300Aの通電を行い、1120℃まで昇温を行い、最高温度に到達後、直ちに通電量を0とし加熱を停止して行った。
【0111】
得られた供試体1について実施例1と同様にSEM観察と粉末X線回折測定を行った結果をそれぞれ図4および図5に示す。
【0112】
図4の像における相の種類は実施例1、実施例2の場合と同様であるが、実施例1、実施例2の場合と比較して灰色のNaZn13型結晶構造相に対し、黒色のα−Fe相の量が多いことがわかる。
【0113】
図5の粉末X線回折パターンには明瞭なα−Feのピークが見られ、La(Fe,Si)13とα−Feの相分率の比は72.7:27.3であった。また、La酸化物の含有割合は24.0%であった。
【0114】
すなわち、NaZn13型結晶構造相の生成は進んでいるが、実施例1と比較してα−Fe相が大量に残っていた。また、特徴的なことは、酸化Laの存在を示す回折ピークが強く観測されることである。これは、LaSiがLaに酸化されるとLa(Fe,Si)13への反応に寄与できないために、大量の残留Feが生じることを示している。
[比較例2]
比較例2は、実施例1と同じ鉄粉末(高純度化学研究所製、粒径53μm以下、純度3N)を表面酸化物低減工程に供することなく粉末成型体成形工程に供した点、及び焼結体形成工程において、熱処理温度である1130℃に到達した後の保持時間を48時間とした点以外は、実施例1と同様にして、供試体2を作製した。
【0115】
得られた供試体2について、粉末X線回折測定を行った結果を図6に示す。供試体1と比較すると残留Feが減少しており、La(Fe,Si)13とα−Feの相分率の比は92.7:7.3であった。
【0116】
従って、混合粉末を成形したペレットを真空中に保持して反応性焼結を行うことにより、比較例1で示した通電加圧焼結に較べ、粉粒中の残留大気が排気され酸化の度合いを低下できることを確認できた。しかし、実施例1あるいは実施例2と比較して、残留Feの存在分率は2.3倍あるいは7倍に相当し、真空雰囲気での焼結単独では、本発明で実施されるようなLa(Fe,Si)13生成比率の促進は達成できないことを確認できた。
【0117】
また、図7に供試体2のSEM像を示すが、白色のLaリッチ相に対し、黒色のα−Fe相の組織が、部分的に53μm以上に粗大化しており、Fe粒の成長が生じていることを示す。このような変化の原因としては、LaSi粒とFe粒間の元素の拡散は、Fe粒周囲の酸化層がバリアになるため進まず、その間に、いわゆるオストワルド成長機構によってFe粒の粗大化が生じるためと説明される。
[比較例3]
比較例3は、焼結体形成工程において、石英管を封じず、大気雰囲気のまま加熱した点以外は実施例1と同様にして供試体3を作製した。
【0118】
得られた供試体3について、粉末X線回折測定を行った結果を図8に示す。また、図9に供試体3のSEM像を示す。
【0119】
図8に示した粉末X線回折測定の結果において、供試体2と比較すると、ほぼ同量の残留Feが存在しているが、図9に示したSEM画像によれば、灰色のNaZn13型結晶構造相および白色のLaリッチ相に対し黒色のFe相組織の粗大化は発生していないことがわかる。したがって、Fe表面を還元することで、酸化Fe由来のLa化合物の酸化は抑制されるが、反応性焼結が進行する間に外部雰囲気から酸素が侵入するため、反応が完了する前に外部侵入酸素によりLaが酸化され、この場合もLa(Fe,Si)13を形成する反応が妨げられることが確認できた。
【0120】
以上に磁性材料の製造方法を、実施形態および実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態および実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0121】
本出願は、2015年10月19日に日本国特許庁に出願された特願2015−205863号に基づく優先権を主張するものであり、特願2015−205863号の全内容を本国際出願に援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9