【文献】
ユーグレナのニュース、[online]、2011年11月25日、[2018年4月18日検索]、インターネット<URL:http://www.euglena.jp/news/n20111125>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ユーグレナは、一般には、池や沼などの淡水中に広く分布している藻類として知られているが、生物分類上は、原生動物門鞭毛虫綱及びミドリムシ植物門ミドリムシ藻類綱の両方に分類され、植物と動物の性質を合わせ有するユニークな原生生物である。植物のように葉緑体を備え光合成を行う一方、細胞壁がなく細胞が柔軟に変形して、その細胞自体の変形や鞭毛運動により運動性に富んでいる。
【0003】
ユーグレナは、野菜に多く含まれるビタミンやミネラル、魚に含まれるDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸、アミノ酸、難消化性のβ−1,3−グルカンからなるパラミロンなど、栄養素をバランスよく豊富に含み、また、一般の植物細胞のような細胞壁がなく、消化吸収性に優れていることから、近年では、これを食品に配合したり、栄養補助食品や機能性食品の成分として利用したりすることも行われている。
【0004】
一方、藻類は、特有の臭気を有し、健康食品等に配合した場合に、食しにくいという問題があった。このような問題を改善するため、下記特許文献1には、香料を含有させることにより藻類の臭気を改善した藻類健康食品が開示されている。そして、香料として、果実系フレーバー、ミント系フレーバー、シソ系フレーバー、ヨーグルト系フレーバー、茶フレーバー又はココアフレーバーを用いることが記載されている。
また、下記特許文献2には、水性有機溶媒で処理したユーグレナの細胞を含有するユーグレナ含有食品が開示されている。そして、培養後のユーグレナを水性有機溶媒で処理することによって、培養中に生じた、耐え難い悪臭と劣悪な食感を呈する、粘質性排泄物が除去されて、風味や食感の点において、食品として耐えうるものが得られることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、香料を含有させることにより藻類の臭気を改善することが記載されているが、対象としている藻類がスピルリナやクロレラであり、ユーグレナについては記載されていない。ユーグレナは、特許文献2にも記載されているように、原生動物門鞭毛虫綱及びミドリムシ植物門ミドリムシ藻類綱の両方に分類され、植物と動物の性質を合わせ有するユニークな原生生物であり、脂質成分を多く含有している点において、スピルリナやクロレラとは異なっており、臭いや風味も異なっている。また、特許文献1には、香料として数多くのものが例示されており、スピルリナやクロレラとは異なる風味を有するユーグレナに対して有効な香料については、当業者であっても予測がつかなかった。
【0007】
一方、上記特許文献2には、ユーグレナを水性有機溶媒で処理することによって、粘質性排泄物を除去することにより、風味を改善できることが記載されているが、本発明者らの研究によれば、そのような処理をしたユーグレナであっても、液体調味料、特に醤油やダシのきいた和食用の液体調味料にユーグレナを配合すると、雑草臭、油臭さ、磯臭さ、飲み込みにくさなど、ユーグレナに特有の不快風味がきわだち、需要者に望まれる製品にはならなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ユーグレナを配合した液体調味料であって、ユーグレナに特有の不快風味が低減された液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ユーグレナ及び/又はその加工物と、シソの香味成分とを含有することを特徴とする液体調味料を提供するものである。
本発明の液体調味料においては、前記ユーグレナ及び/又はその加工物を0.3〜100mg/mL含有し、前記シソの香味成分を、ぺリルアルデヒドの量に換算して、0.0001〜1.2mg/mL含有することが好ましい。
また、前記ユーグレナ及び/又はその加工物の含有量と、前記シソの香味成分のぺリルアルデヒドの量に換算した含有量の比が、9000:1〜9:1であることが好ましい。
また、前記シソの香味成分が、ぺリルアルデヒドを含む、シソフレーバー、シソ抽出物、シソ粉砕物から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、醤油成分と、甘味成分と、ユーグレナ及び/又はその加工物と、シソの香味成分とを含有することが好ましい。
また、更に、酸味成分と、旨味成分とを含有することが好ましい。
また、前記ユーグレナ及び/又はその加工物が、ユーグレナを加熱処理して乾燥した粉末であることが好ましい。
本発明の液体調味料は、納豆のタレ、ドレッシング、めんつゆ、ポン酢、パスタソースから選ばれた1種として利用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーグレナを配合した液体調味料において、これに更にシソの香味成分を配合することにより、ユーグレナに特有の不快風味を低減させることができる。よって、栄養素をバランスよく豊富に含むユーグレナを配合した液体調味料であって、需要者に望まれる製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液体調味料は、ユーグレナ及び/又はその加工物と、シソの香味成分とを含有することを特徴としている。
【0012】
本発明の液体調味料に用いるユーグレナとしては、一般にユーグレナ属に属するものであればよく、例えば、代表的な種としてはユーグレナ グラシリス(Euglena gracilis)、ユーグレナ グラシリス バシラリス(Euglena gracilis var. bacillaris)、ユーグレナ ビリデディス(Euglena viridis)、アスタシア ロンガ(astasia longa)などが挙げられる。また、これらの変種、変異種であってもよい。これらのうち、培養が容易であることや安全性が確認できていることなどから、ユーグレナ グラシリスを用いることが特に好ましい。
【0013】
ユーグレナは、その生育に適した培地を用いて培養することにより、工業的に生産することができる。ユーグレナ用培地としては、例えば、TYG(peptone, yeast extract, glucose含有)培地、Cramer−Myers培地(Arch,Mikrobiol.17384−402(1952))、Koren−Hutner 培地(J.Protozool.,6,p23(1959))、Hutner培地(J.Protozool.,14,Suppl.,p17(1967))などが従来知られている。よってこれらの培地を用いた培養、あるいはそれに準じた培養により、ユーグレナを工業的に生産することができる。培養方法は、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養など、特に制限はない。屋外のプールあるいはタンクなどで太陽光に曝し、光合成によりCO
2を炭素源として利用して、エネルギー・コスト上効率よく培養するようにしてもよい。但し光合成は必須ではなく、光合成を行わなくても、培地の栄養に依存した培養を行うことができる。培養後には、培養物を遠心分離、ろ過等の固液分離手段に供することにより、ユーグレナを回収することができる。
【0014】
本発明の液体調味料に用いるユーグレナの形態に特に制限はなく、培養後、培養液より分離した菌体を生菌として用いてもよいが、食品衛生上は、その乾燥物を用いることが好ましい。特に好ましくは、殺菌処理等のために80〜140℃で加熱処理して、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、熱風乾燥等で乾燥して調製された粉末である。そのような加熱乾燥粉末の形態のユーグレナは、市場でも調達可能である(例えばユーグレナ社製)。また、ユーグレナの形態としては、それに物理的、化学的、あるいは酵素的な処理等を施してなる、その加工物であってもよい。例えば、粉末を更に微粉砕手段に供して調製した微粉砕物や、湿潤な状態ですりつぶして調製したペーストや、有機溶媒でクロロフィルを脱色したもの、酵素で細胞膜や細胞内容物を部分的に消化して消化吸収性や呈味性などを改善したものなどが挙げられる。但し、加工物としては、これらの形態のものに限られるものではない。
【0015】
また、前記特許文献2(特開昭60−196157号公報)に記載された方法等により、培養後のユーグレナを水性有機溶媒で処理することによって、培養中に生じた、悪臭と劣悪な食感を呈する、粘質性排泄物を除去したものを利用してよい。
【0016】
一方、本発明の液体調味料に用いるシソの香味成分としては、シソ科シソ属(Perilla)植物のものを用いることができる。シソ科シソ属植物としては、例えばアオジソ(Perilla frutescens var. crispa f. viridis)、アカジソ(Perilla frutescens var. crispa f. purpurea)、チリメンジソ(P. frutescens var. crispa f. crispa)などが知られている。但し、それらに限られるものではない。また、シソの葉由来の香味成分ばかりでなく、茎または花穂由来の香味成分でもよく、あるいはこれらの部位の香味成分を組み合わせても用いることができる。
【0017】
シソには、その独特の香味を生じさせる成分として、ペリルアルデヒド、リモネン、ピネンなどが含まれている。これらの成分の含有量やその比は、生葉や花穂の収穫時期や栽培条件によって変動するが、例えば、8月上旬に収穫したアオジソの葉では、収油率が0.6%以上となり、油中のペリルアルデヒドの含有量は60%以上となることが報告されている(日本作物学会紀事 第37巻 118−122ページ 1968年)。なお、ペリルアルデヒドには鏡像異性体が存在し、シソ中に含有するのは、l−ペリルアルデヒドである。よって、本発明に用いられるシソの香味成分としては、シソに由来する、これらの香味成分を含む、シソフレーバー、シソ抽出物(精油を含む)、シソ粉砕物などを単独であるいは組み合わせて用いることができる。シソの香味成分は、シソに含まれる香味成分のすべてを含むことは必ずしも必須ではなく、それを部分的に欠いているものを用いてもよいが、シソの主要な香味成分であるぺリルアルデヒドを含むものを用いることが、特に好ましい。
【0018】
シソフレーバーとしては、上記のようにシソの香味を生じさせる成分として知られた、1種又は2種以上の組み合わせからなる化合物を、シソから精油などとして分離し、あるいは更にカラムクロマトグラフィーなどの精製手段で精製する等して調製されたものを用いることができる。あるいは、そのような化合物は化学的に合成されたものであっても構わない。特にペリルアルデヒドおよびペリルアルデヒドから合成されるペリルアルコールは、香料として食品に使用できる指定添加物であり、シソフレーバーとして好適に用いることができる。また、特公平06−057120号公報に記載されているような、香味の持続性を高めたぺリルアルデヒドの誘導体などであってもよい。シソフレーバーは、上記のようにシソの香味を生じさせる成分として知られた化合物の2種以上を含んでいてもよく、配合が異なる2種以上のシソフレーバーを組み合わせて用いてもよい。
【0019】
シソ抽出物としては、シソから水蒸気蒸留などによって調製された精油、シソに適当な溶媒を加えて抽出した抽出液あるいはそれを濃縮したオレオレジンや濃縮エキス、その抽出液もしくは濃縮エキスをデキストリンなどの賦形剤などとともに乾燥することにより調製された抽出乾燥粉末などであって、上記のようにシソの香味を生じさせる成分として知られた、1種又は2種以上の組み合わせからなる化合物を含むものを用いることができる。抽出後に適当な分画あるいは精製手段を用いて、ペリルアルデヒド等の特定の成分の含有量が高まるようにして調製されたものを用いてもよい。
【0020】
なお、シソ抽出物中のペリルアルデヒドの含量は、上記の調製法等に依存するが、例えば、シソ抽出物としてシソの精油を用いる場合は、原料であるシソの産地、あるいは、採取時期などによりシソ中の含有量は変動するが、一般的には精油中のぺリルアルデヒドの含量は30〜60質量%である。シソ抽出物は、ペリルアルデヒドの安定性を高めるために、あるいは、ハンドリングの向上を目的として、エタノールなどの水溶性溶剤等により希釈したシソ抽出物液、あるいは、澱粉などの賦形剤を用いて粉末化したシソ抽出物末などが市販されている。これらに含まれているペリルアルデヒドの量は、香料として用いる商品に応じて適宜調整されているが、本発明においては、液体調味料の風味や香りを妨げることなく、ユーグレナの特異的な不快風味をマスキングできる量を、液体調味料に配合できるペリルアルデヒドを含有するシソ抽出物を用いることが好ましく、シソ抽出物全体に対して、10質量%以上のペリルアルデヒドを含有するシソ抽出物を用いることがより好ましい。本発明の液体調味料には、ペリルアルデヒドの含有量が異なるシソ抽出物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
シソ粉砕物としては、シソを粉砕して乾燥するかあるいはシソを乾燥してから粉砕することにより調製された乾燥粉末、シソをすりつぶして調製されたペーストなどが用いられる。これらシソ粉砕物には、上記に記載したペリルアルデヒド、リモネン、ピネン等のシソの香味を生じさせる成分として知られた化合物の1種又は2種以上を組み合わせて添加して用いてもよい。また、シソ粉砕物を、シフター等の適当な篩手段にかけ、所定の粒度に揃えられるように調製されたものを用いてもよい。特に、乾燥したシソ葉から由来するシソ粉砕物、あるいは、生葉を粉砕後乾燥したシソ粉砕物を用いる場合は、乾燥したシソ粉砕物中に、ぺリルアルデヒドを0.2質量%以上含有するシソ粉砕物を用いることが好ましく、0.5質量%以上含有するシソ粉砕物を用いることがより好ましい。なお、本発明の液体調味料には、2種以上のシソ粉砕物を組み合わせて用いてもよく、上記に記載したシソフレーバーやシソの精油等のシソ抽出物の1種又は2種以上を組み合わせて添加して用いてもよい。
【0022】
ユーグレナは、マウスによる急性経口毒性試験やラットによる反復経口投与毒性試験等の安全性試験により、経口摂取した場合、安全性が高い食品素材と考えられる。その推奨摂取量は、1日あたり500mg以上とされている(ユーグレナ.NAVI、http://www.eu−glena.net/kitai/point/)。したがって、液体調味料中のユーグレナ及び/又はその加工物の含有量は、上記の1日推奨摂取量に基づいて、液体調味料への配合量を適宜調整することができるが、液体調味料に対して0.3〜100mg/mLであることが好ましく、10〜100mg/mLであることがより好ましく、20〜100mg/mLであることが更により好ましい。上記範囲未満であると、ユーグレナの栄養素を充分に付与できない傾向があり、また、上記範囲を超えると、ユーグレナの不快風味が強まり、シソの香味成分を添加することによっても改善しにくくなる傾向がある。
【0023】
液体調味料中のシソの香味成分の含有量は、ぺリルアルデヒドの量に換算して、液体調味料全体に対して0.0001〜1.2mg/mLであることが好ましく、0.001〜1.2mg/mLであることがより好ましく、0.01〜1.2mg/mLであることが更により好ましく、0.02〜1.2mg/mLであることが最も好ましい。上記範囲未満であると、シソの香味成分が少なすぎて、ユーグレナの不快風味を十分に改善できない傾向があり、また、上記範囲を超えると、シソの香りが強調されすぎ風味のバランスが崩れるために、調味料としての好ましさを損ねる傾向となる。
なお、液体調味料中に含まれるぺリルアルデヒドの量は、常法に従い、日本薬局方に記載の生薬ソヨウ(蘇葉)のペリルアルデヒドの定量法に基づき、液体調味料からペリルアルデヒドを有機溶剤で抽出後、液体クロマトグラフィーによって、定量することができる。
【0024】
本発明は、納豆のたれ、ドレッシング、めんつゆ、ポン酢、パスタソースなどの各種液体調味料に好ましく適用され、特に醤油成分と甘味成分をベースとした液体調味料、いわゆる和風味の液体調味料に好ましく適用される。
【0025】
以下には、醤油成分と甘味成分をベースとした液体調味料について、更に説明する。
液体調味料に含有せしめる醤油成分としては、生醤油、火入れ醤油いずれでもよく、例えば濃口醤油、淡口醤油などの通常の醤油が用いられ、これらの醤油を限外濾過、精密濾過などの膜処理をおこなった醤油、電気透析などにより脱塩処理されたもの、脱色処理をおこなったものも用いられる。醤油は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
液体調味料に含有せしめる甘味成分としては、通常のたれ・つゆ類、ポン酢、ドレッシング、パスタソース等に用いられるものであればよく、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、液糖、ブドウ糖、水飴、糖蜜、デキストリン、澱粉、ソルビト−ル、マルチト−ル等の糖アルコ−ル類などが挙げられ、また、みりんや酒精含有甘味調味料なども好適に用いられる。また、必要によりグリチルリチン、ステビオサイド、アスパルテ−ムなどの非糖質系の甘味料を用いても差支えない。甘味成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記液体調味料には、更に旨味成分を含有せしめてもよい。旨味成分としては、通常のたれ・つゆ類、ポン酢、ドレッシング、パスタソース等に用いられるものであればよく、例えば、ダシ汁、魚介類の抽出エキス、蛋白加水分解物、グリシン、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系調味料、コハク酸ナトリウム等の旨味調味料などが挙げられる。ダシ汁は、例えば、鰹節、宗田節、鮪節、鯖節、鯵節、鰯節等の魚節類の粉砕物又はこれらの削り節類、また例えば鰯、鯖、鯵などを干して乾燥した煮干し類などを、熱水や醤油などで抽出して得ることができる。また、コンブ等の海藻類、シイタケ等のきのこ類から得られたダシ汁なども好適に用いられる。旨味成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、上記液体調味料には、味を引き締めたり、雑菌の繁殖を抑制するpHに調整したりする目的で、酸味成分を加えてもよい。酸味成分としては、醸造酢等の食酢、果汁類(特に柑橘類の果汁)、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸などの有機酸が好ましく用いられる。酸味成分は、液体調味料のpHが3.5〜6.5となるように添加することが好ましい。酸味成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に醸造酢は、アミノ酸などの呈味成分を含有することから、食した際に風味向上の効果も得られるので、より好ましく用いられる。
【0029】
更に、本発明の液体調味料は、ドレッシングに適用することもできる。ドレッシングの調製は、常法に準じて行うことができ、ドレッシングの原料となる水、食酢、醤油、もろみ、みりん、ワイン、果汁、野菜汁、植物油、食塩、糖類、酸類、調味料、香辛料などに加えて、上記ユーグレナ及び/又はその加工物と、上記シソの香味成分とを原料として適宜量混合又は添加すればよい。ドレッシングは分散相としての油相を水相中に乳化分散させた乳化型であってもよく、乳化処理を施さないで水相部と油相部とを共存させて、使用時に強く振盪して用いる分離型であってもよい。ドレッシングの油脂含量としては、好ましくは50質量%以下、より好ましくは8.5質量%以下がより好適であるが、それ以上の油脂を含有するドレッシングであってもよい。
【0030】
更にまた、本発明の液体調味料は、パスタソースに適用することもできる。パスタソースの調製は、常法に準じて行うことができ、パスタソースの原料となる具材、水、植物油、バター、マーガリン、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズなどの乳製品、ソース、ケチャップ、酒類、ワインビネガー、食酢、食塩、糖類、酸類、調味料、香辛料などに加えて、上記ユーグレナ及び/又はその加工物と、上記シソの香味成分とを原料として適宜量混合又は添加すればよい。
【0031】
本発明の好ましい態様においては、水などで希釈しないで風味を濃厚のまま食することができる液体調味料であることが好ましく、その食塩濃度としては10〜160mg/mLであることが好ましく、20〜120mg/mLであることがより好ましい。なお、食塩の摂取量を低減するため、食塩に代替して、塩化カリウム等の塩味を有するといわれるミネラル類やペプチド類を、食塩の配合量に対して0.5〜1倍量となるように配合してもよい。また、水などで希釈して食する形態としてもよく、その場合、ユーグレナ及び/又はその加工物を、液体調味料の塩分含有量(食塩と食塩代替物の合計含有量、以下同じ。)1質量%当たり0.01〜4.0質量%含有し、且つ、シソの香味成分を、ぺリルアルデヒドの量に換算して、液体調味料の塩分含有量1質量%当たり0.000003〜0.05質量%含有することが好ましく、ユーグレナ及び/又はその加工物を、液体調味料の塩分含有量1質量%当たり0.01〜2.0質量%含有し、且つ、前記シソの香味成分を、ぺリルアルデヒドの量に換算して、液体調味料の塩分含有量1質量%当たり0.00003〜0.05質量%含有することがより好ましい。
【0032】
また、ユーグレナの栄養素の摂取量の目安となるために、1食分もしくは1使用当たりの量を個包装の形態とすることが好ましい。その場合、ユーグレナ及び/又はその加工物をその1包当たりに10〜200mgの量で含むように個包装の形態とされていることが好ましく、50〜100mgの量で含むように個包装の形態とされていることがより好ましい。これによれば、例えば、納豆のたれの場合、納豆本体に納豆のたれを封入した小袋が添付されている場合が多いが、小袋中の納豆のたれ4mLに50〜200mgのユーグレナを配合し、3食/日、食することで、150〜600mgのユーグレナを摂取することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、ペリルアルデヒドの定量は以下のようにして行った。
【0034】
(ペリルアルデヒドの定量法)
試料4〜8gに水150ml、ヘプタン4ml、消泡剤数滴を添加し、精油定量用蒸留装置で90分蒸留し、ヘプタン層を約4ml得た。そのヘプタン層について、下記条件によるガスクロマトグラフ−質量分析法によって、ペリルアルデヒドを定量した。
(ガスクロマトグラフ−質量分析法)
・機種:6890N/5975 inertXL [Agilent Technologies,Inc.]
・カラム:DB-WAX[Agilent Technologies,Inc.]
φ0.25mm×30m, 膜圧0.25μm
・導入系:スプリット 10:1
・温度:試料注入口 220 ℃
・カラム条件:カラムを1分間40℃で保持してから、1分間に10℃ずつ昇温させ180℃達温後、さらに、1分間に15℃ずつ昇温させ220℃達温後、7分間保持した。
・ガス流量:ヘリウム(キャリヤーガス) 1ml/min
・イオン源温度:230℃
・イオン化法:EI
・設定質量数:m/z 150,121
【0035】
<試験例1>
濃口醤油19.3質量部、果糖ぶどう糖液糖16.7質量部、食塩8.3質量部、砂糖4.2質量部、醸造酢4.2質量部、L−グルタミン酸Na2.9質量部、イノシン酸二Na0.05質量部、グアニル酸二Na0.05質量部、グアガム0.4質量部、キサンタンガム0.1質量部、95%アルコール1.2質量部、水41.3質量部、ユーグレナ乾燥粉末(ユーグレナ社製)1.3質量部を混合して、液体調味料を調製した。この基本調合に対して、下記表1に示す各配合割合となるように、ペリルアルデヒドを38mg/g含有するシソフレーバー(商品名「シソフレーバーKM−1796」、長谷川香料工業社製)を更に混合して、各試料を調製した。なお、ユーグレナ乾燥粉末の配合量の増減に際しては、水の量にて調製し、合計を100質量部となるように混合した。
【0036】
各試料について、上記基本調合の液状調味料と比較したときの不快風味について、官能評価を行った。評価基準としては、雑草臭(土手の草を刈った後のような臭さ)、油臭さ(油焼け、油の酸化のような臭さ)、磯臭さ(海辺、水辺に打ち捨てられた海藻のような臭さ)、飲みこみにくさ(喉を通らない、粉っぽい感じ)の観点から、パネラー5名に下記評価点にて点数付けしてもらい、その多数意見を採用した。
4点:とても強く感じる
3点:感じる
2点:感じるが許容の範囲
1点:ほとんど感じられない
0点:全く感じられない
なお、試験例1においては調味料としての好ましさを下記の4段階にて評価した。
◎:非常に好ましい
○:好ましい
△:やや好ましい
×:好ましくない
【0037】
【表1】
【0038】
その結果、表1に示すように、液体調味料にユーグレナ乾燥粉末を配合すると、それによって雑草臭、油臭さ、磯臭さ、飲みこみにくさなどの不快風味を呈するようになるが、シソフレーバーを配合することによって官能評価の改善が見られた。その改善効果は、ぺリルアルデヒド量に換算して、10ppm含有したあたりから見られ始め、10〜55ppmの範囲では添加量に依存した改善が見られ、55ppm以上では、ユーグレナ乾燥粉末の不快風味が全く感じられないほどまで顕著に改善した。ただし、2300ppm以上ではシソフレーバーが強すぎるため、調味料としての好ましさを損ねている結果となった。なお、シソフレーバー中のペリルアルデヒドの含有量は、上記定量方法によって38mg/gと分析されたことから、液体調味料中のペリルアルデヒドの含有量は、シソフレーバー中のペリルアルデヒドの含有量から計算される値に比べ、4割程度減少して分析された。この理由は定かではないが、液体調味料中でのペリルアルデヒドの含有量は、少なくなるかあるいは少なく測定される傾向があることが考えられた。
【0039】
<試験例2>
濃口醤油19.3質量部、果糖ぶどう糖液糖16.7質量部、食塩8.3質量部、砂糖4.2質量部、醸造酢4.2質量部、L−グルタミン酸Na2.9質量部、イノシン酸二Na0.05質量部、グアニル酸二Na0.05質量部、グアガム0.4質量部、キサンタンガム0.1質量部、95%アルコール1.2質量部、水41.3質量部、ユーグレナ乾燥粉末(ユーグレナ社製)1.3質量部を混合して、ユーグレナを1.3量%含有する液体調味料を調製した。この基本調合に対して、アオジソの葉より得られたアルコール抽出物、水抽出物、及びアオジソ粉末を、下記表1に示す各配合割合となるように更に混合して、各試料を調製した。
【0040】
アオジソのアルコール抽出物及び水抽出物は、市販のアオジソの葉より調製した。すなわち、水で洗浄したアオジソの葉5gを細かく刻んだ後、99.5%の純度のエチルアルコール(和光純薬工業社製)50mLに5分間浸漬した後、ミキサーを用いて粉砕混合した。ついで、ロ紙を用いて固形物を除去し、45mLのアオジソ葉由来のアルコール抽出物を得た。一方、アオジソ葉の水抽出物は、上記の99.5%の純度のエチルアルコールに換えて水50mLに浸漬し、ミキサーで粉砕混合した後、ロ紙で濾過することで、アオジソ葉由来の水抽出物42mLを得た。アオジソ葉由来の粉末は、市販のアオジソ粉末(こだま食品社製)を用いた。なお、アオジソの抽出物や粉末の配合量の増減に際しては、水の量にて調製し、合計を100質量部となるように混合した。この液体調味料におけるユーグレナの不快風味について、上記試験例1と同様にして官能評価を行い、表2に結果を示した。
【0041】
【表2】
【0042】
その結果、表2に示すように、ユーグレナ乾燥粉末の配合により生じた雑草臭、油臭さ、磯臭さ、飲みこみにくさなどの不快風味は、アオジソ葉のアルコール抽出物、水抽出物、及びアオジソ粉末をそれぞれ添加することにより改善することが明らかとなった。なお、アオジソ葉のアルコール抽出物及び水抽出物中のぺリルアルデヒドの含有量は、上記定量方法により、それぞれ0.35mg/mL及び0.10mg/mLと分析された。よって、不快見改善効果が見られ始める、液体調味料中のペリルアルデヒド濃度は、およそ3.5〜5ppmと算出された。また、アルコール抽出物及びアオジソ粉末を併用しても、ユーグレナの不快風味の改善効果が見られた。
【0043】
<試験例3>
濃口醤油20.0質量部、砂糖4.0質量部、みりん3.5質量部、L−グルタミン酸Na0.2質量部、イノシン酸二Na0.005質量部、グアニル酸二Na0.005質量部、かつお節エキス(キッコーマン食品社製)1.5質量部、水67.79質量部を混合して、つゆを調製した。ついで、このつゆに、ユーグレナ乾燥粉末(ユーグレナ社製)3.0質量部を配合してユーグレナ含有つゆを製造した。このユーグレナ含有つゆに、ペリルアルデヒドを38mg/g含有するシソフレーバー(商品名「シソフレーバーKM−1796」、長谷川香料工業社製)を、0.1%(w/v)となるように混合して、ユーグレナとシソフレーバーを含有するつゆを調製した。なお、ユーグレナ乾燥粉末の配合量の増減に際しては、水の量にて調製し、合計を100質量部となるように混合した。このつゆにおけるユーグレナの不快風味について、上記試験例1と同様にして官能評価を行い、表3に結果を示した。
【0044】
【表3】
【0045】
その結果、表3に示すように、つゆにユーグレナを配合することで不快風味が感じられるが、シソフレーバーを添加することにより、不快風味が改善されることが分かった。
【0046】
<試験例4>
濃口醤油40.0質量部、食塩1.2質量部、砂糖8.0質量部、みりん4.0質量部、醸造酢10.0質量部、ゆず果汁(丸共青果問屋社製)1.0質量部、L−グルタミン酸Na2.0質量部、イノシン酸二Na0.05質量部、グアニル酸二Na0.05質量部、水32.2質量部を混合して、ポン酢を調製した。ついで、このポン酢に、ユーグレナ乾燥粉末(ユーグレナ社製)1.5質量部を配合してユーグレナ含有ポン酢を製造した。このユーグレナ含有ポン酢に、ペリルアルデヒドを38mg/g含有するシソフレーバー(商品名「シソフレーバーKM−1796」、長谷川香料工業社製)を、0.1%(w/v)となるように混合して、ユーグレナとシソフレーバーを含有するポン酢を調製した。なお、ユーグレナ乾燥粉末の配合量の増減に際しては、水の量にて調製し、合計を100質量部となるように混合した。このポン酢におけるユーグレナの不快風味について、上記試験例1と同様にして官能評価を行い、表4に結果を示した。
【0047】
【表4】
【0048】
その結果、表4に示すように、ポン酢にユーグレナを配合することで不快風味が感じられるが、シソフレーバーを添加することにより、不快風味が改善されることが分かった。
【0049】
<試験例5>
濃口醤油17.7質量部、食塩7.6質量部、砂糖3.8質量部、醸造酢3.9質量部、果糖ぶどう糖液糖15.3質量部、サラダ油8.5質量部、L−グルタミン酸Na2.7質量部、イノシン酸二Na0.05質量部、グアニル酸二Na0.05質量部、グアガム0.4質量部、キサンタンガム0.1質量部、95%アルコール1.1質量部、水37.7質量部を混合して、植物油含有ドレッシングを調製した。ついで、この植物油含有ドレッシングに、ユーグレナ乾燥粉末(ユーグレナ社製)1.1質量部を配合してユーグレナ含有ドレッシングを製造した。このユーグレナ含有ドレッシングに、ペリルアルデヒドを38mg/g含有するシソフレーバー(商品名「シソフレーバーKM−1796」、長谷川香料工業社製)を、0.1%(w/v)となるように混合して、ユーグレナとシソフレーバーを含有するドレッシングを調製した。なお、ユーグレナ乾燥粉末の配合量の増減に際しては、水の量にて調製し、合計を100質量部となるように混合した。このドレッシングにおけるユーグレナの不快風味について、上記試験例1と同様にして官能評価を行い、表5に結果を示した。
【0050】
【表5】
【0051】
その結果、表5に示すように、植物油含有ドレッシングにユーグレナを配合することで不快風味が感じられるが、シソフレーバーを添加することにより、不快風味が改善されることが分かった。