特許第6440613号(P6440613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6440613耐熱性シラン架橋樹脂成形体、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びそれらの製造方法、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品、
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6440613
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】耐熱性シラン架橋樹脂成形体、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びそれらの製造方法、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品、
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20181210BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20181210BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20181210BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20181210BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C08J5/00CFH
   C08L101/00
   C08K9/06
   C08K5/14
   C08J3/22
【請求項の数】16
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-518202(P2015-518202)
(86)(22)【出願日】2014年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2014062813
(87)【国際公開番号】WO2014188925
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-106656(P2013-106656)
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】西口 雅己
(72)【発明者】
【氏名】松村 有史
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−302234(JP,A)
【文献】 特開2012−255077(JP,A)
【文献】 特開2012−149163(JP,A)
【文献】 特開2008−297453(JP,A)
【文献】 特開2000−212291(JP,A)
【文献】 特開2003−160704(JP,A)
【文献】 特開2005−239997(JP,A)
【文献】 特開平11−79738(JP,A)
【文献】 特開2012−77223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、5/00−5/02、
5/12−5/22
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分(R)を含有する樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、少なくとも下記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含むフィラー(S)10〜400質量部とを該有機過酸化物(P)の分解温度以上で溶融混合し、前記樹脂成分(R)に対して、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加水分解性シランカップリング剤をグラフト化反応させて、シランマスターバッチを調製する工程(a)と、
前記シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)と、
前記混合物を成形する工程(c)と、
前記成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(d)とを有することを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<シランカップリング剤予備混合フィラー(F)>
無機フィラーに加水分解性シランカップリング剤が混合されてなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した際の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であるシランカップリング剤予備混合フィラー。
【請求項2】
前記シランマスターバッチにおいて、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)における、105℃で2時間加熱した際の水分を除いた加熱減量分(X×W)との関係において下記式(1)で表されるZが少なくとも0.15となるように、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)が溶融混合されることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
式(1): Z=X×W/Y
式中、
Xは、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の配合量(質量部)、
Wは、前記加熱減量の比率(質量%)、
Yは、樹脂組成物(RC)の配合量(質量部)
である。
【請求項3】
前記有機過酸化物(P)の一部又は全部が、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)中に含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記有機過酸化物(P)の一部又は全部が、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)中に含有されておらず、前記フィラー(S)中に含まれる、加水分解性シランカップリング剤を含まない予備混合フィラー(S2)に含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
樹脂成分(R)を含有する樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、少なくとも下記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含むフィラー(S)10〜400質量部とを該有機過酸化物(P)の分解温度以上で溶融混合し、前記樹脂成分(R)に対して、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加水分解性シランカップリング剤をグラフト化反応させて、シランマスターバッチを調製する工程(a)と、
前記シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)とを有することを特徴とする耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
<シランカップリング剤予備混合フィラー(F)>
無機フィラーに加水分解性シランカップリング剤が混合されてなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した際の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であるシランカップリング剤予備混合フィラー。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする耐熱性シラン架橋性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体。
【請求項8】
請求項7に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含むことを特徴とする耐熱性製品。
【請求項9】
前記耐熱性シラン架橋樹脂成形体が、電線又は光ファイバケーブルの被覆として設けられていることを特徴とする請求項8に記載の耐熱性製品。
【請求項10】
加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーと有機過酸化物(P)とを混合してなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した後の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であることを特徴とするシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
【請求項11】
前記加熱減量の比率Wが、0.2質量%以上2.5質量%以下であることを特徴とする請求項10に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
【請求項12】
前記無機フィラーが、金属水酸化物、炭酸カルシウム又はシリカであることを特徴とする請求項10又は11に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
【請求項13】
前記無機フィラーが、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム又は炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)と加水分解性シランカップリング剤を含まない予備混合フィラー(S2)とからなることを特徴とするフィラー(S)。
【請求項15】
前記加水分解性シランカップリング剤を含まない予備混合フィラー(S2)が、有機過酸化物(P)を含むことを特徴とする請求項14に記載のフィラー(S)。
【請求項16】
加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーとを混合してなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した後の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であるシランカップリング剤予備混合フィラー(F)と、加水分解性シランカップリング剤を含まず、有機過酸化物(P)を含む予備混合フィラー(S2)とからなることを特徴とするフィラー(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品、シランカップリング剤予備混合フィラー、並びに少なくとも該シランカップリング剤混合フィラーを含むフィラーに関する。
本発明は、特に、機械特性、補強性、耐熱性、難燃性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を電線の絶縁体やシース等として用いた耐熱性製品、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法に好適に用いられるシランカップリング剤予備混合フィラー及び少なくとも該シランカップリング剤混合フィラーを含むフィラーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気、電子機器の内部及び外部配線に使用される絶縁電線、ケーブル、コード及び光ファイバ心線、光ファイバコードには、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性)、耐摩耗性など種々の特性が要求されている。これらの配線材に使用される材料としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを多量に配合した樹脂組成物が用いられる。
【0003】
また、電気、電子機器に使用される配線材は、連続使用の状態で80〜105℃、さらには125℃位にまで昇温することがあり、これに対する耐熱性が要求される場合もある。このような場合、配線材に高耐熱性を付与することを目的として、被覆材料を電子線架橋法、化学架橋法等によって架橋する方法が採られている。
【0004】
従来、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂を架橋する方法として、電子線を照射して橋架け(架橋ともいう)させる電子線架橋法、成形後に熱を加えることにより有機過酸化物等を分解させて架橋反応させる化学架橋法、シラン架橋法等が知られている。
シラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤をポリマーにグラフト反応させてシラングラフトポリマーを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させることにより架橋成形体を得る方法である。
これらの架橋法の中でも特にシラン架橋法は特殊な設備を要しないことが多いため、幅広い分野で使用することができる。
【0005】
具体的には、ハロゲンフリーの耐熱性シラン架橋樹脂の製造方法は、ポリオレフィン樹脂に不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤をグラフトさせたシランマスターバッチと、ポリオレフィン及び無機フィラーを混練した耐熱性マスターバッチと、シラノール縮合触媒を含有した触媒マスターバッチとを溶融混合させる方法である。しかし、この方法ではポリオレフィン樹脂100質量部に対して無機フィラーが100質量部を超える場合では、シランマスターバッチと耐熱性マスターバッチとを乾式混合により、単軸押出機や二軸押出機内にて均一に溶融混練することが困難になる。また、シランマスターバッチを含む割合が制限されてしまうため、より高難燃化・高耐熱化することが困難であった。しかも、このような方法を用いると優れた強度や耐摩耗性、補強性を得ることが出来なかった。
【0006】
通常、このような無機フィラーが、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して100質量部を超える場合の混練には、連続混練機、加圧式ニーダーやバンバリーミキサー等の密閉型ミキサーを用いることが一般的である。
ところが、ニーダーやバンバリーミキサーでシラングラフトを行う場合には、不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤は一般に揮発性が高く、グラフト反応する前に揮発してしまうという問題がある。そのため所望のシラン架橋マスターバッチを作製することが非常に困難であった。
【0007】
そこで、バンバリーミキサーやニーダーにて、耐熱性シランマスターバッチを製造する場合、ポリオレフィン樹脂及び難燃剤を溶融混合した耐熱性マスターバッチに、加水分解性不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤と有機過酸化物を加え、単軸押出機にてグラフト重合させる方法が考えられる。しかし、この方法では反応のばらつきによって成形体に外観不良が生じたり、マスターバッチの無機フィラーの配合量を非常に多くしなければならず押出負荷が非常に大きくなったり、製造が非常に難しくなったりして所望の材料や成形体を得ることができない。また2工程となり、コスト面でもこれが難点となっている。
【0008】
特許文献1にはポリオレフィン系樹脂にシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー、シランカップリング剤、有機過酸化物、架橋触媒をニーダーにて十分に溶融混練した後に、単軸押出機にて成形する方法が提案されている。
しかし、この方法では、ニーダーでの溶融混練中に架橋してしまい成形体は外観不良(表面に突出したツブ状物を形成)を引き起こすばかりでなく、無機フィラーに表面処理されたシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の大部分は、揮散するか又はシランカップリング剤同士が縮合するおそれがある。そのため、所望の耐熱性を得ることができないばかりか、シランカップリング剤同士の縮合が電線の外観悪化の要因となるおそれがある。
【0009】
また、特許文献2〜4にはブロック共重合体等をベース樹脂とし、軟化剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を加えたビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を、シラン表面処理された無機フィラーを介して有機過酸化物を用いて部分架橋する技術が提案されている。
このような技術であっても、まだ、樹脂が十分な網状構造になっておらず、樹脂と無機フィラーの結合は高温で結合が外れるため、高温下では溶融し、例えば電線をハンダ加工中に絶縁材が熔けてしまったり、また成形体を2次加工する際に変形したり、発泡を生じたりする問題があった。さらに200℃程度に短時間加熱されると、外観が著しく劣化したり、変形したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−101928号公報
【特許文献2】特開2000−143935号公報
【特許文献3】特開2000−315424号公報
【特許文献4】特開2001−240719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決し、加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑え、機械特性、補強性、耐熱性、難燃性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法で得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法に好適に用いられるシランカップリング剤予備混合フィラー、並びに、少なくとも該シランカップリング剤混合フィラーを含むフィラーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、樹脂成分のシラン架橋法において、揮発しやすい加水分解性シランカップリング剤を予め一部の無機フィラーと混合し(これを予備混合という)、無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑える程度に結合させたシランカップリング剤予備混合フィラーを含むフィラー部分と、シラノール縮合触媒部分とに、それぞれ分けて調製し、両者を混合して反応させる方法を採ることにより、加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑えて、目的のシラン架橋性樹脂の合成が効果的にできることを見出した。この場合、無機フィラーと予備混合する加水分解性シランカップリング剤の量が、シラン架橋性樹脂及びそれをシラン架橋して得られる耐熱性シラン架橋樹脂成形体の物性を左右する。この予備混合する加水分解性シランカップリング剤の量は、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の水分を除く加熱減量の比率Wによって設定できることも見出した。
【0013】
本発明者らはこれらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
ここで、乾燥によって揮散しないのは、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)中で加水分解性シランカップリング剤が無機フィラーと比較的強く結合しているためと推定される。これは加水分解性シランカップリング剤のシラノール基と無機フィラーの官能基との水素結合等によって無機フィラーに化学的に結合していると考えられる。
【0014】
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
(1)樹脂成分(R)を含有する樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、少なくとも下記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含むフィラー(S)10〜400質量部とを該有機過酸化物(P)の分解温度以上で溶融混合し、前記樹脂成分(R)に対して、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加水分解性シランカップリング剤をグラフト化反応させて、シランマスターバッチを調製する工程(a)と、
前記シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)と、
前記混合物を成形する工程(c)と、
前記成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(d)とを有することを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<シランカップリング剤予備混合フィラー(F)>
無機フィラーに加水分解性シランカップリング剤が混合されてなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した際の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であるシランカップリング剤予備混合フィラー。
(2)前記シランマスターバッチにおいて、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)における、105℃で2時間加熱した際の水分を除いた加熱減量分(X×W)との関係において下記式(1)で表されるZが少なくとも0.15となるように、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)が溶融混合されることを特徴とする(1)に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
式(1): Z=X×W/Y
式中、
Xは、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の配合量(質量部)、
Wは、前記加熱減量の比率(質量%)、
Yは、樹脂組成物成分(RC)の配合量(質量部)
である。
(3)前記有機過酸化物(P)の一部又は全部が、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)中に含有されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
(4)前記有機過酸化物(P)の一部又は全部が、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)中に含有されておらず、前記フィラー(S)中に含まれる、加水分解性シランカップリング剤を含まない予備混合フィラー(S2)に含有されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【0015】
(5)樹脂成分(R)を含有する樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、少なくとも下記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含むフィラー(S)10〜400質量部とを該有機過酸化物(P)の分解温度以上で溶融混合し、前記樹脂成分(R)に対して、前記シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加水分解性シランカップリング剤をグラフト化反応させて、シランマスターバッチを調製する工程(a)と、
前記シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)とを有することを特徴とする耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
<シランカップリング剤予備混合フィラー(F)>
無機フィラーに加水分解性シランカップリング剤が混合されてなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した際の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であるシランカップリング剤予備混合フィラー。
【0016】
(6)(5)に記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする耐熱性シラン架橋性樹脂組成物。
(7)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする耐熱性シラン架橋樹脂成形体。
(8)(7)に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含むことを特徴とする耐熱性製品。
(9)前記耐熱性シラン架橋樹脂成形体が、電線又は光ファイバケーブルの被覆として設けられていることを特徴とする(8)に記載の耐熱性製品。
【0017】
(10)加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーと有機過酸化物(P)とを混合してなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した後の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であることを特徴とするシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
(11)前記加熱減量の比率Wが、0.2質量%以上2.5質量%以下であることを特徴とする(10)に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
(12)前記無機フィラーが、金属水酸化物、炭酸カルシウム又はシリカであることを特徴とする(10)又は(11)に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
(13)前記無機フィラーが、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム又は炭酸カルシウムであることを特徴とする(10)〜(12)のいずれか1項に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)。
14)(10)〜(13)のいずれか1項に記載のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)と加水分解性シランカップリング剤を含まない予備混合フィラー(S2)とからなることを特徴とするフィラー(S)。
15)前記加水分解性シランカップリング剤を含まない予備混合フィラー(S2)が、有機過酸化物(P)を含むことを特徴とする(14)に記載のフィラー(S)。
(16)加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーとを混合してなるシランカップリング剤予備混合フィラーであって、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱した後の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下であるシランカップリング剤予備混合フィラー(F)と、加水分解性シランカップリング剤を含まず、有機過酸化物(P)を含む予備混合フィラー(S2)とからなることを特徴とするフィラー(S)。
【発明の効果】
【0018】
シラン架橋法において、所定の加熱減量の比率Wを有する本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を用いると、混練り時の加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑えることができる。
また、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)において無機フィラーに比較的強く結合している加水分解性シランカップリング剤同士が縮合反応して樹脂成分同士の架橋部位とともに無機フィラーを包含したままネットワーク化し、非常に優れた機械特性、補強性を得ることが可能となる。
一方、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)において、上述の無機フィラーに比較的強く結合している加水分解性シランカップリング剤以外の、揮散しやすい加水分解性シランカップリング剤(本発明において、便宜的に、無機フィラーに弱く結合している加水分解性シランカップリング剤という)は、無機フィラーから離脱して有機過酸化物が分解して発生するラジカルによってその架橋基が樹脂成分の架橋部位にグラフト反応した後に加水分解性基が縮合反応することで樹脂成分同士を架橋させ、優れた耐熱性を発揮させることが可能となる。さらに、本発明によれば、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を電子線架橋装置等の特殊な装置を使用することなく製造することができる。
したがって、本発明によれば、加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑え、機械特性、補強性、耐熱性、難燃性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法、並びに、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供できる。また、本発明によれば、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法で得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品を提供できる。さらに、本発明によれば、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法に好適に用いられるシランカップリング剤予備混合フィラー、並びに少なくとも該シランカップリング剤混合フィラーを含むフィラーを提供できる。
【0019】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明及び本発明における好ましい実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」は、樹脂成分(R)を含有する樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、後述するシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含有するフィラー(S)10〜400質量部とを、有機過酸化物(P)の分解温度以上で、溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程(a)と、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)と、得られた混合物を成形する工程(c)と、得られた成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(d)とを有している。
【0022】
また、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法に用いる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法は、樹脂成分(R)を含有する樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、後述するシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含有するフィラー(S)10〜400質量部とを、有機過酸化物(P)の分解温度以上で、溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程(a)と、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)とを有し、上述の工程(c)及び工程(d)を必要としない。
【0023】
このように、本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」と本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」は、工程(c)及び工程(d)の有無以外は基本的に同様である。したがって、本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」及び本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」(両者の共通部分の説明においては、これらを併せて、本発明の製造方法ということがある。)を、併せて、以下に説明する。
【0024】
まず、本発明において用いる各成分について説明する。
【0025】
<樹脂組成物(RC)>
本発明に使用される樹脂組成物(RC)は、樹脂成分(R)と、所望により可塑剤又は軟化剤として使用される各種オイルとを含有している。樹脂組成物(RC)における樹脂成分(R)の含有量は、耐熱性能、架橋性能及び強度の点で、樹脂組成物(RC)の全質量に対して、20質量%以上であるのが好ましく、45%質量以上であるのがさらに好ましく、60質量%以上であるのが特に好ましい。樹脂成分(R)の含有量は、最多で100質量%であるが、例えば80質量%以下にすることもできる。
【0026】
樹脂組成物(RC)は、柔軟性を保持し、外観を良好に保つためには適宜オイルを混合するのが好ましい。その際に樹脂組成物(RC)におけるオイルは、樹脂組成物(RC)の全質量に対して、80質量%以下に設定されることが好ましく、55質量%以下であるのがより好ましく、40質量%以下であるのがさらに好ましい。オイルの含有量は、最少で0質量%であるが、例えば20質量%以上にすることもできる。
なお、樹脂組成物(RC)は樹脂成分(R)及びオイルに加えて他の成分、例えば、後述する各種添加剤、溶媒、有機過酸化物(C)などを含有していてもよい。
【0027】
(樹脂成分(R))
樹脂成分(R)としては、後述する加水分解性シランカップリング剤の架橋基と有機過酸化物の存在下で架橋反応する架橋部位、例えば炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子を主鎖中又はその末端に有する樹脂であればよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂(PO)、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリオール系樹脂等が挙げられる。その中でもポリオレフィン樹脂(PO)が好ましい。この樹脂成分(R)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂(PO)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来、耐熱性樹脂組成物に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン樹脂とのブロック共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体、及びそれらのゴム、エラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン−プロピレン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等が挙げられる。これらの中でも、金属水和物等をはじめとする各種フィラーに対する受容性が高く、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)(本発明において、フィラー(F)ということがある)を多量に配合しても機械的強度を維持する効果があり、また耐熱性を確保しつつ耐電圧、特に高温での耐電圧特性の低下を抑制する点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、エチレン−プロピレン系ゴム等が好適である。これらのポリオレフィン系樹脂(PO)は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
ポリエチレン(PE)は、主成分がエチレン成分である樹脂であればよく、エチレンのみからなる単独重合体(ホモポリエチレンともいう)、エチレンと5mol%以下のα−オレフィレン(プロピレンを除く)との共重合体、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィンとの共重合体が包含される(例えば、JIS K 6748)。なお、上述のα−オレフィレン及びの非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いられる。
【0030】
本発明において用い得るポリエチレン(PE)としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。このなかでも、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。ポリエチレン(PE)は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリプロピレン(PP)は、主成分がプロピレン成分である樹脂であればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレンともいう)のほか、ランダムポリプロピレン等のエチレン−プロピレン共重合体(プロピレン系重合体ということがある。)及びブロックポリプロピレンを包含する。
ここでいう「ランダムポリプロピレン」は、プロピレンとエチレンとの共重合体であって、エチレン成分含有量が1〜5質量%のプロピレン系共重合体をいう(なお、エチレン成分がランダムで結合していてもブロックで結合していてもかまわない。)。
また、「ブロックポリプロピレン」は、ホモポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体とを含む組成物であって、エチレン成分含有量が5〜15質量%程度以下で、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
ポリプロピレン(PP)は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(なお、上述のポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)に含まれるものを除く。)が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン構成成分の具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の各構成成分が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、好ましくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)に含まれるものを除く。)であり、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体(EPR、ただし、ポリプロピレン(PP)に含まれるものを除く。)、エチレン−ブチレン共重合体(EBR)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0033】
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体における酸共重合成分等としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル等の各構成成分が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキル構成成分のアルキル基は、炭素数1〜12のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基が挙げられる。酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体(ポリエチレン(PE)に含まれるものを除く。)としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。この中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、さらにはフィラー(F)の受容性及び耐熱性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体は1種単独で使用され、又は2種以上が併用される。
【0034】
スチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体及びランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−(t−ブチル)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−(t−ブチル)スチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、これらの中でも、スチレンが好ましい。この芳香族ビニル化合物は、1種単独で使用され、又は2種以上が併用される。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、これらの中でも、ブタジエンが好ましい。この共役ジエン化合物は、1種単独で使用され、又は2種以上が併用される。また、スチレン系エラストマーとして、同様な製法で、スチレン成分が含有されてなく、スチレン以外の芳香族ビニル化合物を含有するエラストマーを使用してもよい。
スチレン系エラストマーとして、具体的には、例えば、セプトン4077、セプトン4055、セプトン8105(いずれも商品名、株式会社クラレ製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、6200P、8601P、9901P(いずれも商品名、JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
(各種オイル)
樹脂組成物(RC)に所望により含有されるオイルは、樹脂成分(R)の可塑剤又はゴムの鉱物油軟化剤としてのオイルが挙げられる。このような鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系オイル、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系オイル、芳香族炭素数が30%以上のものはアロマ系オイル(芳香族系オイルともいう)と呼ばれて区別されている。これらの中でも、液状又は低分子量の合成軟化剤、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルが好適に用いられ、特にパラフィン系オイルが好適に用いられる。このようなオイルとして、例えば、ダイアナプロセスオイルPW90、PW380(いずれも商品名、株式会社出光興産製)、コスモニュートラル500(コスモ石油株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
<有機過酸化物(P)>
有機過酸化物(P)は、熱分解によりラジカルを発生して、加水分解性シランカップリング剤の樹脂成分(R)へのグラフト化反応の促進、特に加水分解性シランカップリング剤がエチレン性不飽和基を含む場合における該基と樹脂成分(R)とのラジカル反応(樹脂成分からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を促進させる働きをする。有機過酸化物(P)は、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はないが、例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R、RC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましく用いられる。ここで、R、R、R及びRは各々独立にアルキル基、アリール基、アシル基を表す。このうち、本発明においては、R、R、R及びRがいずれもアルキル基であるか、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
【0037】
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
【0038】
有機過酸化物(P)の分解温度は、80〜195℃であるのが好ましく、125〜180℃であるのが特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物(P)の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物(P)を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味し、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
【0039】
<フィラー(S)>
本発明の工程(a)で用いるフィラー(S)は、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含み、所望により、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)以外の、加水分解性シランカップリング剤を含有しない他のフィラー(S2)を含んでいてもよい。加水分解性シランカップリング剤を含有しない他のフィラー(S2)としては、例えば、加水分解性シランカップリング剤で表面処理されていない無機フィラーもしくは加水分解性シランカップリング剤以外の処理剤で表面処理された無機フィラー(未処理無機フィラーということがある)、この未処理無機フィラーが有機過酸化物(P)と混合されてなるフィラー(過酸化物予備混合フィラーということがある)等を挙げることができる。
フィラー(S2)及びシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、それぞれ、1種単独で、又は2種以上の併用使用することができる。
【0040】
本発明の工程(a)で使用しうる各種フィラーは、ぞれぞれ、平均粒径が0.2〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましく、0.35〜5μm、0.35〜3μmであることがさらに好ましい。平均粒径が0.2μm未満では、加水分解性シランカップリング剤混合時に2次凝集を引き起こして、成形体の外観が低下し、又はブツを生じるおそれがある。一方、10μmを超えると、外観が低下したり、加水分解性シランカップリング剤の保持効果が低下して架橋に問題が生じたりするおそれがある。
なお、平均粒径とは、アルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
【0041】
未処理無機フィラー、過酸化物予備混合フィラー、及び、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)において加水分解性シランカップリング剤が混合される無機フィラーとしては、無機フィラーの表面に、加水分解性シランカップリング剤のシラノール基などの反応部位と水素結合などが形成できる部位もしくは共有結合による化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラーにおける、加水分解性シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水もしくは結晶水の水分子、カルボキシル基などのOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
【0042】
このような未処理無機フィラーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウム、水和珪酸アルミニウム、アルミナ、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物のような金属水酸化物や金属水和物、さらには、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等を使用することができる。
【0043】
無機フィラーは、上述した中でも、金属水酸化物、炭酸カルシウム、シリカが好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムがさらに好ましい。
【0044】
この無機フィラーは、加水分解性シランカップリング剤以外の表面処理剤で予め処理されていてもよい。その種類については特には限定しないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸等の脂肪酸、リン酸エステル、ポリエステル、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。その表面処理量は無機フィラーに対して1.0質量%以下であることが好ましい。この量が多すぎると、架橋密度が低下し、耐熱性や加熱変形性が大幅に低下することがある。
【0045】
シランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、上述の未処理無機フィラーに加水分解性シランカップリング剤を予め混合し、この加水分解性シランカップリング剤で無機フィラーを表面処理してなる。したがって、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、シランカップリング剤含有フィラー、シランカップリング剤処理フィラーともいうことができる。
そして、このシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、後述するように、105℃で2時間加熱した際の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下である。
このような加熱減量の比率Wを有するシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、シラノール同士の縮合も含めたシラン架橋法に好適に用いられる。なお、このシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、その安定性及び反応性等を利用してシラン架橋法以外にも用いることができる。
【0046】
加水分解性シランカップリング剤は、ラジカルの存在下で樹脂成分(R)にグラフト反応しうる基と、未処理無機フィラーと化学結合しうる基とを有するものであればよく、末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基と加水分解性とを含有する基を有しているものが好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基と加水分解性を含有する基とを有している加水分解性シランカップリング剤である。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等が挙げられる。またこれらの加水分解性シランカップリング剤とその他の末端基を有する加水分解性シランカップリング剤を併用しても良い。
【0047】
このような加水分解性シランカップリング剤としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0048】
【化1】
【0049】
(式中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基もしくは水素原子あるいはY13である。Y11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0050】
上記一般式(1)で表される加水分解性シランカップリング剤のRa11は、エチレン性不飽和基を含有する基が好ましく、エチレン性不飽和基を含有する基は、上述した通りであり、好ましくはビニル基である。
【0051】
b11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13であり、脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられ、好ましくは後述のY13である。
【0052】
11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基であり、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。加水分解しうる有機基としは具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシ等を挙げることができる。この中でも、加水分解性シランカップリング剤が100℃で揮発性を有するものが好ましく、加水分解性シランカップリング剤の揮発性及び反応性の点から、メトキシ又はエトキシがさらに好ましく、メトキシが特に好ましい。ここで、「揮発性を有する」とは、100℃において常圧放置しておくと少なくとも一部が揮発することをいう。
【0053】
上記加水分解性シランカップリング剤としては、好ましくは加水分解速度の速い加水分解性シランカップリング剤、より好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じである加水分解性シランカップリング剤であり、さらに好ましくは、Y11、Y12及びY13の少なくとも1つ、特に好ましくはすべてがメトキシ基である。
【0054】
末端にビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基を有する加水分解性シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのオルガノシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。これらの加水分解性シランカップリング剤は単独又は2種以上併用してもよい。このような架橋性の加水分解性シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有する加水分解性シランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
末端にグリシジル基を有するものは、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0055】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、上述の未処理無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤とを混合して得られる。加水分解性シランカップリング剤及び未処理無機フィラーを混合する方法としては、アルコールや水中で加水分解性シランカップリング剤と未処理無機フィラーを混合させる湿式処理、未処理無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤とをブレンドする乾式処理、及び、その両方が挙げられる。
湿式処理は、例えば、未処理無機フィラーを水等の溶媒に均一に分散させ、この中に加水分解性シランカップリング剤を添加し、十分混合した後にスラリー状の混合物を乾燥する。また、乾式処理は、例えば、未処理無機フィラーを例えばリボンブレンダーに投入し、そこに加水分解性シランカップリング剤を加えて撹拌する。これら湿式処理及び乾式処理における条件は特に限定されず、適宜選択される。
【0056】
このようにして未処理の無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤とを、過酸化物と混合して得られる混合物の溶融加熱前に、予備混合すると、上述のように、加水分解性シランカップリング剤の一部が無機フィラーと強く結合(その理由は、例えば、無機フィラー表面の水酸基等との化学結合の形成が考えられる)して、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)が調製される。
【0057】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)において、無機フィラーと強く結合する加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーと弱く結合(水素結合による相互作用、イオン、部分電荷もしくは双極子間での相互作用、吸着による作用など)する加水分解性シランカップリング剤とは、後述するように、異なる挙動を示す。したがって、これら加水分解性シランカップリング剤の割合によって得られる効果が相違する。例えば、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)をシラン架橋法のフィラーとして用いる場合には、無機フィラーと弱く結合する加水分解性シランカップリング剤は樹脂成分(R)同士の架橋に寄与し、無機フィラーと強く結合する加水分解性シランカップリング剤は加水分解性シランカップリング剤同士の縮合も含み、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)と樹脂成分(R)との結合等に寄与する。
【0058】
このように、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)において、無機フィラーと弱く結合する加水分解性シランカップリング剤の割合を設定することによって、無機フィラーと弱く結合する加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーと強く結合する加水分解性シランカップリング剤との機能を調整できる。例えば、両加水分解性シランカップリング剤の割合を調整することで、シラン架橋法において、耐熱性と、機械特性、補強性、難燃性及び外観とを両立できる。
【0059】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)においては、無機フィラーと弱く結合する加水分解性シランカップリング剤の割合を加熱減量の比率Wによって定量できる。すなわち、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、下記範囲の加熱減量の比率Wを満たす量の、無機フィラーと弱く結合する加水分解性シランカップリング剤を含有している。具体的には、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、加熱前の該シランカップリング剤予備混合フィラーの質量に対する、105℃で2時間加熱された際の水分を除く加熱減量の比率Wが0.15質量%以上3.0質量%以下である。加熱減量の比率Wが上述の範囲内にあると、無機フィラーと弱く結合する加水分解性シランカップリング剤の割合が好適化され、所期の効果を発揮する。例えば、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)をシラン架橋法のフィラーとして用いる場合に、加熱減量の比率Wが0.15質量%未満であると、樹脂成分(R)同士の架橋が十分に行われず耐熱性を十分に維持することが出来ない。また加熱減量の比率Wが3.0質量%を超えると加水分解性シランカップリング剤同士が架橋してしまいブツが発生したり、コンパウンド製造時に大量に加水分解性シランカップリング剤が揮発して、得られる物性が安定しなかったり、製造環境面の問題が生じたりする。
【0060】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加熱減量の比率Wは、例えばシラン架橋法のフィラーとして用いる場合には、耐熱性と、機械特性、補強性、難燃性及び外観とをバランスよく両立できる点で、0.2質量%以上2.5質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0061】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加熱減量の比率Wは次のようにして測定できる。すなわち、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)約10gを正確に質量測定し、これをシャーレに載せて105℃で2時間加熱する。加熱後速やかに質量を正確に測定する。一方、加熱前のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)約1gを正確に質量測定行い、カールフィッシャー滴定法により、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を160℃に加熱し、乾燥窒素ガスで捕集される水分を電気化学的に発生させたヨウ素で自動的滴定して、水分量を測定する。シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加熱減量の比率Wは、このようにして測定された質量及び水分量から、下記式によって算出される。
式: W=[(Whp−Wha)/Wha×100]−水分量(%)
式において、Whpは加熱前のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の質量を表し、Whaは加熱後のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の質量を表す。
【0062】
シランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、適宜調製してもよく、また市販品を使用することもできる。例えば、加水分解性シランカップリング剤が予め混合されてなる水酸化マグネシウムとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学社製)、マグシーズS6、マグシーズHV−6F(いずれも商品名神島化学工業(株))、加水分解性シランカップリング剤が予め混合されてなる水酸化アルミニウムとして、ハイジライトH42−ST−V、ハイジライトH42−ST−E(いずれも商品名、昭和電工(株))などが挙げられる。
【0063】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加熱減量の比率Wを調整する方法は、例えば、加水分解性シランカップリング剤と無機フィラーとを常温で混合することにより調整する方法やこれをある程度常温或いは加熱保管することによりシランカップリング剤をある程度揮発させて調整する方法、或いは予めフィラーを加熱しておきシランカップリング剤をこれに投入することによりフィラーの熱による加熱減量を調整する方法等が挙げられる。なお、混合後又は市販品の加熱減量の比率Wが上述の範囲内にある場合には、加熱減量の比率Wを調整する方法を実施しなくてもよい。
【0064】
本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)において、加熱減量の比率Wを0.15質量%以上3.0質量%以下に調整するには、無機フィラーに混合する加水分解性シランカップリング剤の混合量を無機フィラーに対して例えば0.3〜10質量%にするとよい。
【0065】
<シラノール縮合触媒(C)>
シラノール縮合触媒(C)は、樹脂成分(R)にグラフト化された加水分解性シランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒(C)の働きに基づき、加水分解性シランカップリング剤を介して、樹脂成分(R)同士が架橋される。その結果、耐熱性に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体が得られる。
【0066】
シラノール縮合触媒(C)としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物などが用いられる。一般的なシラノール縮合触媒(C)としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物などが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物である。
【0067】
<キャリア樹脂(E)>
触媒マスターバッチに所望により添加されるキャリア樹脂(E)としては、特に限定されない。キャリア樹脂(E)としては、樹脂組成物(RC)の樹脂成分(R)と同様の樹脂が挙げられる。キャリア樹脂(E)は、シラノール縮合触媒(C)と親和性がよく耐熱性にも優れる点で、ポリオレフィン系樹脂(PO)であるのが好ましく、中でもポリエチレン(PE)であるのが特に好ましい。
【0068】
<添加剤>
耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、電線、電気ケーブル、電気コード、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、充填剤、他の樹脂などが本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合されていてもよい。これらの添加剤は、いずれの成分に含有されてもよいが、キャリア樹脂(E)に加えた方がよく、特に酸化防止剤や金属不活性剤はフィラー(F)に混合された加水分解性シランカップリング剤が樹脂成分(R)へのグラフトを阻害しないように、キャリア樹脂(E)に加えた方が良い。このとき、架橋助剤は実質的に含有していないことが好ましい。特に架橋助剤はシランマスターバッチを調製する工程(a)において実質的に混合されないのが好ましい。架橋助剤を加えると、混練り中に有機過酸化物(P)により架橋助剤が反応し、樹脂成分(R)同士の架橋が生じ、ゲル化が生じて耐熱性シラン架橋樹脂成形体の外観が著しく低下し、又は、加水分解性シランカップリング剤の樹脂成分(R)へのグラフトが進まないことにより、最終的な成形体の耐熱性が得られなくなるおそれがある。ここで、実質的に含有しない又は混合されないとは、架橋助剤を積極的に添加又は混合しないことを意味し、不可避的に含有又は混合されることを除外するものではない。
【0069】
架橋助剤は、有機過酸化物の存在下において樹脂成分(R)との間に部分架橋構造を形成する化合物をいい、例えばポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を挙げることができる。
【0070】
酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどのフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、樹脂成分(R)100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部で加えることができる。
【0071】
滑剤としては、炭化水素系、シロキサン系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。これらの滑剤はキャリア樹脂(E)に加えた方がよい。
【0072】
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
【0073】
充填剤(難燃(助)剤を含む。)としては、上述の各種フィラー以外の充填剤が挙げられる。
【0074】
次に、本発明の製造方法を具体的に説明する。
本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」は、上記の通り、工程(a)と工程(b)と工程(c)と工程(d)とを有している。一方、本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」は、工程(a)と(b)とを有し、少なくとも工程(c)、所望により工程(d)を有していない。
【0075】
本発明の製造方法において、工程(a)は、樹脂組成物(RC)100質量部に対して、有機過酸化物(P)0.01〜0.6質量部と、フィラー(F)を含むフィラー(S)10〜400質量部とを、有機過酸化物(P)の分解温度以上で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程である。
【0076】
工程(a)において、フィラー(S)の配合量は、樹脂組成物(RC)100質量部に対して、10〜400質量部であり、30〜280質量部であるのが好ましい。フィラー(S)の配合量が10質量部未満の場合は、加水分解性シランカップリング剤のグラフト反応が不均一となり、所望の耐熱性が得られず、又は、不均一な反応により外観が低下するおそれがある。一方、400質量部を超えると、成型時や混練時の負荷が非常に大きくなり、2次成形が難しくなるおそれがある。
【0077】
フィラー(S)中には上述のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)が含まれている。シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の量は、後述する式(1)を満足する関係を満たすような量で含まれることが好ましい。例えば、好ましくはフィラー(S)中に少なくとも30質量%以上、より好ましくは50質量%、さらに好ましくは70質量%以上である。フィラー(F)の量が30質量%未満であると、機械強度、耐摩耗性、補強性が劣ることがある。
【0078】
前記シランマスターバッチにおいて、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)における、105℃で2時間加熱した際の水分を除いた加熱減量分(X×W)との関係において下記式(1)で表されるZが少なくとも0.15となるように、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)が溶融混合されることが好ましい。
【0079】
式(1): Z=X×W/Y
式中、Xはシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の配合量(質量部)であり、Wは上述の加熱減量の比率(質量%)であり、Yは樹脂組成物(RC)の配合量(質量部)である。
【0080】
シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の、工程(a)における配合量は上記Zを満たす含有量であり、このZは、少なくとも、0.15以上が好ましい。この範囲とすることで、架橋ネットワークが十分に広がり、強度に調整でき、高度の耐熱性が可能となる。
Zは、耐熱性及び外観等の点で、0.3〜4.5であるのがより好ましく、0.3〜2.0であるのがさらに好ましく、0.5〜1.5であるのが特に好ましい。
【0081】
有機過酸化物(P)の配合量は、樹脂組成物(RC)100質量部に対して、0.01〜0.6質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜0.5質量部である。有機過酸化物(P)の配合量をこの範囲内にすることにより、適切な範囲で樹脂成分(R)同士を重合させることができ、架橋ゲル等に起因する凝集塊も発生することなく押し出し性に優れた組成物が得ることができる。
すなわち、有機過酸化物(P)の配合量が0.01質量部未満では、架橋時に架橋反応が進行せずに全く架橋反応が進まなかったり、遊離した加水分解性シランカップリング剤同士が結合してしまったりして耐熱性や機械的強度、耐摩耗性、補強性を十分にえることができない場合がある。一方、0.6質量部を超えると、加水分解性シランカップリング剤が揮発しやすくなって、副反応によって樹脂成分(R)同士が多く直接的に架橋してしまいブツが生じるおそれがある。
【0082】
工程(a)において、樹脂組成物(RC)と有機過酸化物(P)とフィラー(S)とを、混合機に投入し、有機過酸化物(P)の分解温度以上に加熱しながら溶融混練して、シランマスターバッチを調製する。
工程(a)において、樹脂組成物(RC)と有機過酸化物(P)とフィラー(S)との混合方法は、特に限定されない。例えば、有機過酸化物(P)は、単独で樹脂組成物(RC)及びフィラー(S)に混合してもよいが、本発明においてはフィラー(S)に含むのが好ましい。この場合、予め、その一部又は全部が、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)に混合されてもよいし、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)に混合されず、フィラー(S)に含有される、加水分解性シランカップリング剤を含まない他の予備混合フィラー(S2)に混合されてもよい。すなわち、工程(a)において、有機過酸化物(P)を含有しないシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を用いてもよいし、有機過酸化物(P)を含有するシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を用いてもよい。このように、フィラー(S)中にどのような形態であっても有機過酸化物(P)を含有するのが好ましく、有機過酸化物(P)を含有する、いわゆる過酸化物予備混合フィラーを用いてもよいし、有機過酸化物(P)を含有しないフィラーを用いてもよい。工程(a)では、有機過酸化物(P)をどのような方法であれ、これを含んだフィラー(S)と樹脂組成物(RC)とを添加するのが好ましい。なお、有機過酸化物(P)の混合は有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度で行われる。
【0083】
ここで、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)および該フィラーを含むフィラー(S)は、工程(a)に先立って、調製又は準備する。例えば、常法等により、未処理無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤とを混合すると、上述のように、加水分解性シランカップリング剤が無機フィラーと強く又は弱く結合してなるシランカップリング剤予備混合フィラー(F)が得られる。
【0084】
また、工程(a)においては、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)に加えて、生産条件によっては、加水分解性シランカップリング剤を追加で加えることもできる。加水分解性シランカップリング剤を加える場合には、例えば、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)、フィラー(S)等に混合することができる。このときの、加水分解性シランカップリング剤の配合量もしくは、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の配合量に追加して加える場合は、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)において満たすことが好ましい前記式(1)におけるZ等を考慮して適宜に設定される。
【0085】
工程(a)において、混練温度は、有機過酸化物(P)の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物(P)の分解温度+(25〜110)℃である。この分解温度は樹脂成分(R)が溶融してから設定することが好ましい。また、混練時間などの混練条件も適宜設定することができる。有機過酸化物(P)の分解温度未満で混練りすると、シラングラフト反応、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)と樹脂成分(R)との結合、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)間の結合が起こらず、所望の耐熱性を得ることができないばかりか、押出中に有機過酸化物(P)が反応してしまい、所望の形状に成形できない場合がある。
【0086】
混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、混練装置は例えばフィラー(S)の量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダーなどが用いられ、バンバリーミキサー又は各種のニーダーなどの密閉型ミキサーが樹脂成分(R)の分散性及び架橋反応の安定性の面で好ましい。
また、通常、このようなフィラー(S)が樹脂組成物(RC)100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーでの混練りが一般的である。
【0087】
なお、樹脂組成物(RC)と有機過酸化物(P)とフィラー(S)との混合は、溶融混練工程と別工程とすることなく、樹脂組成物(RC)と有機過酸化物(P)とフィラー(S)とを一緒に有機過酸化物(P)の分解温度以上で混合して、シランマスターバッチを生成することができる。
【0088】
このようにして工程(a)を実施して、シランマスターバッチが調製される。
【0089】
工程(a)で調製されるシランマスターバッチは、有機過酸化物(P)の分解物と、樹脂組成物(RC)及びシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の反応混合物であり、後述の工程(c)により成形可能な程度に加水分解性シランカップリング剤が樹脂成分(R)にグラフトしたシラン架橋性樹脂を含有している。
【0090】
本発明の製造方法において、次いで、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程(b)を実施する。
【0091】
シラノール縮合触媒(C)の混合量は、樹脂成分(R)100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。シラノール縮合触媒(C)の配合量が、0.0001質量部未満では加水分解性シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応が進みにくくなり、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性が十分に向上せず、生産性が低下し、架橋反応が不均一になるおそれがある。一方、0.5質量部を超えると、シラノール縮合反応が非常に速く進行し、部分的なゲル化が生じ、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の外観及び樹脂物性が低下するおそれがある。なお、触媒マスターバッチにおけるシラノール縮合触媒(C)の配合量は、樹脂成分(R)に対する配合量が前記範囲となるように、適宜に設定される。
【0092】
工程(b)においては、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合する。このときの混合条件はシラノール縮合触媒(C)の混合方法によって適宜に選択される。すなわち、シラノール縮合触媒(C)を単独でシランマスターバッチに混合する場合には、混合条件は樹脂成分(R)の溶融混合条件に設定される。一方、シラノール縮合触媒(C)を触媒マスターバッチとして混合する場合にはシランマスターバッチと溶融混合される。このときの溶融混合は工程(a)と基本的に同様である。溶融温度は、キャリア樹脂(E)の溶融温度に応じて適宜に選択される。例えば、混練温度は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。なお、混練時間などの混練条件は適宜設定することができる。
【0093】
この工程(b)は、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)とを混合して混合物を得る工程であればよく、これらを溶融混合してもよい。本発明の製造方法において、工程(b)は、シラノール縮合触媒(C)及びキャリア樹脂(E)を含有する触媒マスターバッチとシランマスターバッチとを溶融混合する工程であるのが好ましい。
【0094】
触媒マスターバッチにおけるキャリア樹脂(E)の混合量は、工程(d)においてシラン架橋を早く促進させることができるうえ、成形中にゲル化ブツが生じにくい点で、樹脂組成物(RC)100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは2〜40質量部である。
【0095】
また、このキャリア樹脂(E)にはフィラーを加えてもよいし、加えなくてもよい。その際のフィラーの量は、特には限定しないが、キャリア樹脂(E)の樹脂成分100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。あまりフィラー量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋が進行しにくくなるためである。一方、キャリア樹脂が多すぎると、成形体の架橋度が低下してしまい、適正な耐熱性が得られないおそれがある。
【0096】
なお、触媒マスターバッチにおけるシラノール縮合触媒(C)の配合量は、樹脂成分(R)に対する配合量が前記範囲となるように適宜に設定される。
触媒マスターバッチは、シラノール縮合触媒(C)及びキャリア樹脂(E)、所望により添加されるフィラーの混合物である。
【0097】
触媒マスターバッチとシランマスターバッチとの混合は、加熱しながら溶融混練する。この溶融混練は、DSCなどで融点が測定不可できない樹脂成分(R)、例えばエラストマーもあるが、少なくとも樹脂成分(R)及び有機過酸化物(P)のいずれかが溶融する温度で混練する。キャリア樹脂(E)はシラノール縮合触媒(C)を分散させるために溶融させるのが好ましい。なお混練時間などの混練条件は適宜設定することができる。
【0098】
このようにして、発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法が実施され、少なくとも2種の架橋方法の異なるシラン架橋性樹脂を含有する耐熱性シラン架橋性樹脂組成物が製造される。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、工程(a)と(b)とを実施することによって得られる組成物であって、樹脂成分(R)、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)及びフィラー(S)を原料成分として含む、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバッチとの混和物と考えられる。その成分は、基本的には、シランマスターバッチ及びシラノール縮合触媒(C)又は触媒マスターバッチと同じである。
【0099】
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法は、次いで、工程(c)及び工程(d)を実施する。すなわち、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、得られた混合物、つまり本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を成形して成形体を得る工程(c)を行う。この工程(c)は、混合物を成形できればよく、本発明の耐熱性製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。例えば、本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバケーブルである場合には、押出成形などが選択される。
工程(c)は、工程(b)と同時に又は連続して実施することができる。例えば、シランマスターバッチと触媒マスターバッチとを被覆装置内で溶融混練し、次いで例えば押出し電線やファイバに被覆して所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
このようにして、本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物が成形され、工程(a)、工程(b)及び工程(c)で得られる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の成形体は未架橋体である。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、工程(a)、工程(b)、工程(c)の後に、下記工程(d)を実施することによって架橋もしくは最終架橋された成形体とするものである。
【0100】
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法においては、工程(c)で得られた成形体(未架橋体)を水と接触させて加水分解性シランカップリング剤の加水分解性の基を加水分解してシラノールとし、樹脂中に存在するシラノール縮合触媒(C)により、シラノールの水酸基同士が縮合して架橋反応が起こり、架橋した成形体の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程(d)を実施する。この工程(d)の処理自体は通常の方法によって行うことができる。成形物に水分を接触させることで、加水分解性シランカップリング剤の加水分解しうる基が加水分解し、加水分解性シランカップリング剤同士が縮合し、架橋構造を形成する。
【0101】
加水分解性シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(d)において、成形体(未架橋体)を水に積極的に接触させる必要はないが、架橋をさらに加速させるために、水分と接触させる際に、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
【0102】
このようにして、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法が実施され、本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物から耐熱性シラン架橋樹脂成形体が製造される。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、工程(a)、工程(b)、工程(c)及び工程(d)を実施することによって得られる成形体である。
【0103】
本発明の製造方法について、反応機構の詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。
すなわち、樹脂成分(R)は、有機過酸化物(P)成分の存在下、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)を含むフィラー(S)と共に、有機過酸化物(P)の分解温度以上で加熱混練すると、有機過酸化物(P)が分解してラジカルを発生し、樹脂成分(R)に対して、加水分解性シランカップリング剤によりグラフト化が起こる。また、このとき、部分的には、このときの加熱により、加水分解性シランカップリング剤と無機フィラー表面での水酸基等の基との共有結合による化学結合の形成反応も促進される。
本発明では、工程(d)で、最終的な架橋反応を行うこともあり、樹脂成分(R)に加水分解性シランカップリング剤を上述のように特定量配合、成形時の押し出し加工性を損なうことなくフィラー(S)を多量に配合することが可能になり、優れた難燃性を確保しながらも耐熱性及び機械特性等を併せ持つことができる。
【0104】
また、本発明の上記プロセスの作用のメカニズムはまだ定かではないが次のように推定される。すなわち、樹脂成分(R)と混練り前及び/又は混練り時に、本発明のシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を用いることにより、混練り時の加水分解性シランカップリング剤の揮発を抑えると共に、フィラーに対して強い結合で結びつく加水分解性シランカップリング剤と弱い結合で結びつく加水分解性シランカップリング剤を形成出来る。
【0105】
このようなフィラー(F)を有機過酸化物(P)の存在下で樹脂成分(R)と共に有機過酸化物(P)の分解温度以上で混練りを行うと、フィラー(F)の加水分解性シランカップリング剤のうち無機フィラーと強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤は、その架橋基であるエチレン性不飽和基等が樹脂成分(R)の架橋部位とグラフト反応、特に、1つの無機フィラー粒子の表面に複数の加水分解性シランカップリング剤が強い結合を介して存在した場合、この無機フィラー粒子を介して樹脂成分(R)が複数結合することになり、この無機フィラーでの架橋ネットワークが広がる。一方、フィラー(F)の加水分解性シランカップリング剤のうち無機フィラーと弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤は、無機フィラーの表面から離脱して、加水分解性シランカップリング剤の架橋基であるエチレン性不飽和基等が、樹脂成分(R)の有機過酸化物(P)の分解で生じたラジカルによる水素ラジカル引き抜きで生じた樹脂ラジカルと反応してグラフト反応が起こる。このようにして生じたグラフト部分の加水分解性シランカップリング剤は、その後シラノール縮合触媒と混合され、水分と接触することにより、縮合反応により架橋反応が生じる。
なお、上記の無機フィラーと強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤の場合は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応で、無機フィラーの表面の水酸基と共有結合により化学結合した加水分解性シランカップリング剤同士も縮合反応して、さらに架橋のネットワークが広がる。
【0106】
特に、本発明では、この工程(d)における、水存在下でのシラノール縮合触媒を使用した縮合による架橋反応を成形体を形成した後に行うことにより、従来の最終架橋反応後に成形体を形成する方法と比較して、成形体形成までの工程での作業性に優れるとともに、1つの無機フィラー粒子表面に複数の加水分解性シランカップリング剤を複数結合でき、従来以上に高い耐熱性を得ることが可能となると共に、高い機械強度、耐摩耗性、耐外傷性を得ることができる。
このように未処理無機フィラーに対して強い結合で結合した加水分解性シランカップリング剤は高い機械的強度、耐摩耗性、耐外傷性、補強性に寄与し、また未処理無機フィラーに対して弱い結合で結合した加水分解性シランカップリング剤は架橋度の向上に寄与すると考えられる。
【0107】
シランカップリング剤予備混合フィラー(F)として、上述の加熱減量の比率Wを小さな値に調整したシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を用いると、又は、加水分解性シランカップリング剤を後に追加して添加すると、未処理無機フィラーに対して強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤が多く形成され、高い機械特性、耐摩耗性、耐外傷性の成形体を得ることが出来る。一方で、上述の加熱減量の比率Wを大きな値に調整したシランカップリング剤予備混合フィラー(F)を用いると、未処理無機フィラーに対して強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤はあまり形成されないため、強度は向上しないものの、柔軟性等の優れた成形体を得ることが出来ると考えられる。
【0108】
このように、本発明において、未処理無機フィラーと弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤を多く生じさせると高い架橋度の成形体を得ることが出来、また弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤を少なく制御することにより、架橋度が下がり、柔軟性の高い成形体を得ることが可能となる。
【0109】
また、加水分解性シランカップリング剤で未処理無機フィラーを多く予備処理すると、未処理無機フィラーと強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤が多く形成される。さらに後処理の加水分解性シランカップリング剤を加えた際にも予め加えた加水分解性シランカップリング剤と反応し、未処理無機フィラーと強い結合の加水分解性シランカップリング剤が形成される。したがって加水分解性シランカップリング剤をあまり多く予備処理すると、成形体の架橋密度が上がりにくくなる。
【0110】
さらに、加水分解性シランカップリング剤を少量、具体的には上述の加熱減量の比率Wが上述の範囲となるように、予備処理しておくことにより、未処理無機フィラーと強い結合を有する加水分解性シランカップリング剤と弱い結合を有する加水分解性シランカップリング剤がバランス良く形成され、予備処理の量を調整することにより簡易に架橋度や強度を制御することが可能である。
【0111】
一方、予め大量の加水分解性シランカップリング剤で処理されているフィラーに対して加水分解性シランカップリング剤を混合すると、後に混合された加水分解性シランカップリング剤が予めコーティングされている加水分解性シランカップリング剤と結合してしまうため、フィラーに対して弱い結合で結びつく加水分解性シランカップリング剤を形成出来なくなる。したがって予め大量の加水分解性シランカップリング剤で処理されているフィラーに対して加水分解性シランカップリング剤を混合すると、得られる樹脂組成物並びに成形体と架橋度は低下し、耐熱性を向上させることが出来ない。
【0112】
本発明によれば、未処理無機フィラーと結合している強い結合の加水分解性シランカップリング剤の量と弱い結合の加水分解性シランカップリング剤の割合は、フィラー(F)の加熱減量の比率Wを測定することにより、確認できる。すなわち、上述したように、本発明者等は、フィラー(F)を100℃程度に加熱すると弱い結合の加水分解性シランカップリング剤は揮発し、強い結合の加水分解性シランカップリング剤のみが残る(すなわち、フィラーの表面の水酸基等で共有結合による化学結合により揮発できない)ことを、見出している。したがって、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の含有量とシランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加熱減量の比率Wにより、未処理無機フィラーに対して強い結合の加水分解性シランカップリング剤と弱い結合の加水分解性シランカップリング剤の量を確認することが可能となる。シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の加熱減量の比率Wについては上述した通りである。
【0113】
本発明の製造方法は、耐熱性が要求される製品(半製品、部品、部材も含む。)、強度が求められる製品、ゴム材料などの製品の構成部品又はその部材の製造に適用することができる。このような製品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線、耐熱難燃ケーブル被覆材料、ゴム代替電線・ケーブル材料、その他耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気、電子機器の内部及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ケーブルの製造に適用することができる。本発明の製造方法は、上述の製品の構成部品等の中でも、特に電線及び光ケーブルの絶縁体、シースなどの製造に好適に適用され、これらの被覆として形成することができる。
絶縁体、シースなどは、それらの形状に、押出し被覆装置内で溶融混練しながら被覆する等により成形することができる。このような絶縁体、シースなどの成形品は、無機フィラーを大量に加えた高耐熱性の高温溶融しない架橋組成物を電子線架橋機などの特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添えもしくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚線などの任意のものを用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。導体の周りに形成される絶縁層(本発明の耐熱性樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが通常0.15〜8mm程度である。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1〜表3において、各実施例及び比較例における数値は特に断らない限り質量部を表す。
【0115】
実施例1〜26、比較例1〜7は、表1〜表3の各成分を用いて、それぞれの諸元を変更して、それぞれ実施した。
【0116】
なお、表1〜表3中に示す各化合物としては下記のものを使用した。
<樹脂組成物(RC)の樹脂成分(R)>
「UE320」(商品名):日本ポリエチレン株式会社製のノバテックPE(商品名、直鎖低密度ポリエチレン(PE))、
「エボリューSP1540」(商品名):プライムポリマー株式会社製の直鎖状メタロセン系ポリエチレン(LLDPE)
「PM900A」(商品名):サロンアロマー社製のホモポリプロピレン
「EV360」(商品名):三井・デュポンケミカル社製のエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(VA含有量33質量%)
「セプトン4077」(商品名):株式会社クラレ製のスチレン系エラストマー(スチレン含有量40%)
「ダイアナプロセスPW90」(商品名):出光興産株式会社製のパラフィンオイル
「NUC6510」(商品名):ダウケミカル日本株式会社製のエチレンエチルアクリレート樹脂(EA含有量22質量%)
「三井3092EPM」(商品名):三井化学株式会社製のエチレン−プロピレン−ジエンゴム(エチレン含有量66%)
【0117】
<加水分解性シランカップリング剤>
「KBM1003」(商品名):信越化学工業社製のビニルトリメトキシシラン
「KBE1003」(商品名):信越化学工業社製のビニルトリエトキシシラン
<無機フィラー(S)>
表1に示す各種無機フィラーを調製した。
(ア)シランカップリング剤予備混合フィラー(F) (過酸化物を含有するものを含む)の調製
シランカップリング剤予備混合フィラー(F)(f1)〜(f25)は、未処理無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤と所望により有機過酸化物(P)とを未処理無機フィラー100質量部に対して表1に示す配合量(質量部)で、有機過酸化物(P)の分解温度未満の温度、具体的には室温で、東洋精機製10Lヘンシェルミキサーに投入して10分混合して、粉体混合物として、調製した。得られたシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、未処理無機フィラーと加水分解性シランカップリング剤と場合により有機過酸化物(P)との混合物であって、加水分解性シランカップリング剤は未処理無機フィラーに強く結合するものと弱く結合するものとが混在している。
なお、得られたシランカップリング剤予備混合フィラー(F)は、それぞれ、表1の「備考」欄に記載された条件又は処理後に使用した。
【0118】
各シランカップリング剤予備混合フィラー(F)の使用直前の加熱減量の比率Wを上述のようにして測定し、測定結果を揮発量(質量%)及び水分量(質量%)と共に表2及び表3に示す。
なお、表2及び表3における「揮発量(質量%)」は上述の式における「(Whp−Wha)/Wha×100」で算出された値である。
【0119】
(イ)予備混合フィラー(S2)の調製
予備混合フィラー(S2−AおよびS2−B)は、未処理無機フィラーと有機過酸化物(P)とを未処理無機フィラー100質量部に対して表1に示す配合量(質量部)で、シランカップリング剤予備混合フィラー(F)と同様にして、調製した。得られた予備混合フィラー(過酸化物予備混合フィラーともいう)は未処理無機フィラーと有機過酸化物との混合物である。
未処理フィラー(S2−C)は、炭酸カルシウム(「ソフトン1500」(商品名、備北粉化工業株式会社製)をそのまま使用した。
【0120】
なお、各フィラーの原料となる未処理無機フィラーとして、水酸化マグネシウム「キスマ5」(商品名、協和化学工業製)、炭酸カルシウム「ソフトン1500」(商品名、備北粉化工業株式会社製)、水酸化アルミニウム「BF013」(商品名、日本軽金属株式会社製)、シリカ「クリスタライト5X」(商品名、株式会社龍森製)を使用した。
【0121】
<有機過酸化物(P)>
「DCP」(商品名):日本化薬社製のジクミルパーオキサイド(分解温度151℃)
「パーヘキサ25B」(商品名):日本油脂社製の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(分解温度149℃)
<シラノール縮合触媒(C)>
「アデカスタブOT−1」(商品名):旭電化工業社製のジオクチルスズラウリレート
<キャリア樹脂(E)>
上述の「UE320」(商品名)
【0122】
<酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)>
「イルガノックス1010」(商品名):長瀬産業社製、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート])
【0123】
次いて、調製したシランカップリング剤予備混合フィラー(F)、過酸化物予備混合フィラー(S2)または未処理無機フィラー(S2−C)と表2及び表3に示す樹脂組成物(RC)を、表2及び表3に示す質量割合で、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物(P)の分解温度以上の温度、具体的には180〜190℃で、約12分混練り後、材料排出温度180〜190℃で排出し、樹脂成分(R)に加水分解性シランカップリング剤がグラフト反応した少なくとも2種のシラン架橋性樹脂を含有するシランマスターバッチを得た(工程(a))。
なお、実施例25については、予めパーヘキサ25Bを未処理無機フィラーとヘンシェルミキサーで混合せずに、未処理無機フィラーと別々にバンバリーミキサーで投入し、樹脂組成物(RC)と混合した。
また、実施例26については、予めDCPを混合した、シランカップリング剤予備混合フィラー(f15)とは別に、DCP0.06質量部をバンバリーミキサーで投入した。
【0124】
一方、キャリア樹脂(E)「UE320」5質量部とシラノール縮合触媒(C)「ジオクチルスズラウリレート」(表2及び表3において「触媒(C)」と表記する。)と酸化防止剤「イルガノックス1010」とを表2及び表3に示す混合割合(質量部)で180〜190℃でバンバリーミキサーにて別途溶融混合し、材料排出温度180℃〜190℃で排出し、触媒マスターバッチを得た。
なお、実施例26は材料排出温度を160℃で行い、DCPの分解温度151℃以上160℃以下の温度で混練を行った。
この触媒マスターバッチは、キャリア樹脂(E)、シラノール縮合触媒(C)及び酸化防止剤との混合物である。
【0125】
次いで、シランマスターバッチと触媒マスターバッチを、表2及び表3に示す質量部、すなわち、シランマスターバッチの樹脂組成物(RC)が100質量部で触媒マスターバッチのキャリア樹脂(E)が5質量部となる割合で、バンバリーミキサーによって180℃で溶融混合した(工程(b))。このようにして、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を調製した。
この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、シランマスターバッチと触媒マスターバッチとの混合物であって、上述の少なくとも2種のシラン架橋性樹脂を含有している。
【0126】
次いで、この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を、L/D=24の40mm押出機(圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入し、1/0.8TA導体の外側に肉厚1mmで被覆し、外径2.8mmの電線を得た(工程(c))。
得られた電線を温度80℃湿度95%の雰囲気に24時間放置した(工程(d))。
このようにして、耐熱性シラン架橋樹脂成形体からなる被覆を有する電線を製造した。
この耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、上述のように、シラン架橋性樹脂が加水分解性シランカップリング剤の加水分解しうる基の縮合反応によって架橋した上述の各種シラン架橋体を含有している。
【0127】
製造した電線について下記評価をし、その結果を表2及び表3に示した。
【0128】
<機械特性>
電線の機械特性として引張試験を行った。この引張試験は、UL1581に基づき、標線間25mm、引張速度500mm/分で行い、引張強さ(単位:MPa)及び破断時伸び(%)を測定した。なお、破断時伸びは100(%)以上を合格とし、引張強さは10(MPa)以上で合格とする。
【0129】
<補強性(加熱変形特性)>
電線の補強性として加熱変形試験を行った。この加熱変形試験(%)は、UL1581に基づいて、測定温度160℃、荷重5Nで行った。加熱変形試験は50%以下を合格とした。
【0130】
<耐熱性(高温熱変形特性)>
電線の耐熱性としてホットセット試験(高温熱変形特性)を行った。ホットセットは、各実施例及び比較例と同様にして電線の管状片を作成し、長さ50mmの評線を付けた後に、200℃の恒温槽の中に117gのおもりを取り付け15分間放置し、放置後の長さを測定し伸び率(%)を求めた。次に、荷重を取り外し、放置後の長さを測定して伸び率(%)を求めた。荷重保持時ホットセットは伸び率が100%以下を合格とし、加重除去後のホットセットは伸び率が80%以下で合格とした。
【0131】
<電線の押出外観特性>
電線の押出外観特性として押出外観試験を行った。押出外観1は、電線を製造する際に押出外観を観察した。なお、25mm押出機にて線速10mで作製した際に外観が良好だったものを「A」、外観がやや悪かったものを「B」、外観が著しく悪かったものを「C」とし、「B」以上は製品レベルとして合格とした。
【0132】
押出外観2は、電線を製造する際に押出外観を観察した。具体的には、65mm押出機にて線速80mで作製した際に外観が良好だったものを「A」、外観がやや悪かったものを「B」、外観が著しく悪かったものを「C」とした。「B」以上を製品レベルとして合格としたが、押出外観2は生産性向上を目的として線速を8倍にまで高めた過酷試験であるから、本試験は必ずしも合格する必要はない。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
表2及び表3の結果から明らかなように、実施例1〜26は、機械特性、補強性、耐熱性及び押出外観のいずれをも両立できた。すなわち、実施例1〜26の電線の被覆として設けられた本発明における耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、機械特性、補強性及び外観のいずれにも優れていることが分かった。なお、難燃性は無機フィラー(S)の含有量から優れていることが容易に推測できる。
一方、比較例1〜7は、機械的特性、補強性、耐熱性及び外観の少なくともいずれか1つが劣り、これらすべてを満足させることができなかった。
【0137】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0138】
本願は、2013年5月20日に日本国で特許出願された特願2013−106656に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。