特許第6440802号(P6440802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6440802
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】有機デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20181210BHJP
   H01L 51/50 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   H05B33/10
   !H05B33/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-215643(P2017-215643)
(22)【出願日】2017年11月8日
【審査請求日】2018年6月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】赤津 光俊
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/096509(WO,A1)
【文献】 特開2017−022068(JP,A)
【文献】 特開2004−055333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50 − 51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された第1電極層上に、少なくとも発光層を含む有機機能層を形成する第1形成工程と、
前記有機機能層上に第2電極層を形成する第2形成工程と、を含み、
前記第1形成工程において前記発光層の形成を開始してから、前記第2形成工程において前記第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算照度の上限値を設定して、前記積算照度が当該上限値以下となるように前記有機機能層を形成し、
前記積算照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、前記積算照度と前記相対寿命及び前記相対電流発光効率との関係から、前記製品寿命が前記所定時間以上となる前記積算照度の前記上限値を設定する、有機デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記積算照度が0である場合の前記有機デバイスの製品寿命をLT、前記有機デバイスに所定時間tだけ前記光が入射した場合の前記積算照度における相対寿命をΔLT、前記有機デバイスに前記所定時間tだけ前記光が入射した場合の前記積算照度における相対電流発光効率をΔEffとした場合において、以下の式から前記有機デバイスの前記製品寿命LTを算出する、請求項1に記載の有機デバイスの製造方法。
LT=(LT)×ΔLT×(ΔEff
【請求項3】
前記積算照度の上限値を100lx・hrs以下とする、請求項1又は2に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項4】
基板上に配置された第1電極層上に、少なくとも発光層を含む有機機能層を形成する第1形成工程と、
前記有機機能層上に第2電極層を形成する第2形成工程と、を含み、
前記第1形成工程において前記発光層の形成を開始してから、前記第2形成工程において前記第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算吸収放射照度の上限値を設定して、前記積算吸収放射照度が当該上限値以下となるように前記有機機能層を形成し、
前記積算吸収放射照度は、前記発光層を形成する材料の前記光の各波長に対する積算放射照度の積分値であり、
前記積算吸収放射照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、前記積算吸収放射照度と前記相対寿命及び前記相対電流発光効率との関係から、前記製品寿命が前記所定時間以上となる前記積算吸収放射照度の前記上限値を設定する、有機デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記光の発光スペクトルの少なくとも1つのピークの波長は、前記発光層を形成する材料の吸収スペクトルの分布内である、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記光は、500nm以下の波長域を含まない、請求項1〜のいずれか一項に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機デバイスの製造方法として、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。特許文献1に記載の有機デバイスの製造方法では、アリールアミン化合物を含む発光層を、500nm以下の波長を含まない光の環境下で湿式成膜する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/104184号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光層は、光が入射すると、特性が劣化するおそれがある。そのため、上記従来の有機デバイスの製造方法のように、発光層の形成は、500nm以下の波長を遮断した光の環境下(イエロー光の環境下)で行われる。このような環境下においても、発光層にイエロー光(その他の光を含み得る)が入射すると、発光層にイエロー光が全く入射しない場合に比べて、有機デバイスの特性が低下し、信頼性が低下し得る。そのため、有機デバイスの発光層の製造においては、発光層を含む有機機能層の形成工程について、更なる改善が求められている。
【0005】
本発明の一側面は、信頼性の低下を抑制できる有機デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に一側面に係る有機デバイスの製造方法は、基板上に配置された第1電極層上に、少なくとも発光層を含む有機機能層を形成する第1形成工程と、有機機能層上に第2電極層を形成する第2形成工程と、を含み、第1形成工程において発光層の形成を開始してから、第2形成工程において第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算照度の上限値を設定して、積算照度が当該上限値以下となるように有機機能層を形成し、積算照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、製品寿命が所定時間以上となる積算照度の上限値を設定する。
【0007】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法では、有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、発光層の形成を開始してから第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算照度の上限値を設定する。そして、積算照度が上記上限値以下となるように、有機機能層を形成する。これにより、有機デバイスの製造方法では、製品寿命が所定時間以上となる有機デバイスを製造できる。したがって、有機デバイスの製造方法では、信頼性の低下を抑制できる。
【0008】
一実施形態においては、積算照度が0である場合の有機デバイスの製品寿命をLT、有機デバイスに所定時間tだけ光が入射した場合の積算照度における相対寿命をΔLT、有機デバイスに所定時間tだけ光が入射した場合の積算照度における相対電流発光効率をΔEffとした場合において、以下の式から有機デバイスの前記製品寿命LTを算出してもよい。
LT=(LT)×ΔLT×(ΔEff
これにより、有機デバイスの製品寿命LTを制度良く算出できるため、積算照度の上限値を制度良く設定できる。
【0009】
一実施形態においては、積算照度の上限値を100lx・hrs以下としてもよい。これにより、製品寿命が例えば40,000時間となる有機デバイスを製造できる。
【0010】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法では、基板上に配置された第1電極層上に、少なくとも発光層を含む有機機能層を形成する第1形成工程と、有機機能層上に第2電極層を形成する第2形成工程と、を含み、第1形成工程において発光層の形成を開始してから、第2形成工程において第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算照度が100lx・hrs以下となるように、有機機能層を形成する。
【0011】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法では、発光層の形成を開始してから第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算照度が100lx・hrs以下となるように有機機能層を形成する。これにより、有機デバイスの製造方法では、製品寿命が例えば40,000時間となる有機デバイスを製造できる。したがって、有機デバイスの製造方法では、信頼性の低下を抑制できる。
【0012】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法は、基板上に配置された第1電極層上に、少なくとも発光層を含む有機機能層を形成する第1形成工程と、有機機能層上に第2電極層を形成する第2形成工程と、を含み、第1形成工程において発光層の形成を開始してから、第2形成工程において第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算吸収放射照度の上限値を設定して、積算吸収放射照度が当該上限値以下となるように有機機能層を形成し、積算吸収放射照度は、発光層を形成する材料の前記光の各波長に対する積算放射照度の積分値であり、積算吸収放射照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、積算吸収放射照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、製品寿命が所定時間以上となる積算吸収放射照度の上限値を設定する。
【0013】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法では、有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、積算吸収放射照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、発光層の形成を開始してから第2電極層の形成を開始するまでの環境における光の積算吸収放射照度の上限値を設定する。そして、積算吸収放射照度が上記上限値以下となるように、有機機能層を形成する。これにより、有機デバイスの製造方法では、製品寿命が所定時間以上となる有機デバイスを製造できる。したがって、有機デバイスの製造方法では、信頼性の低下を抑制できる。
【0014】
一実施形態においては、光の発光スペクトルの少なくとも1つのピークの波長は、発光層を形成する材料の吸収スペクトルの分布内であってもよい。このように、発光層を形成する材料の吸収スペクトルの分布内に光の発光スペクトルのピーク波長が含まれる場合には、上記有機デバイスの製造方法が特に有効である。
【0015】
一実施形態においては、光は、500nm以下の波長域を含まなくてもよい。有機デバイスの製造においては、短波長域に高感度な材料を使うことがある。そのため、500nmよりも短波長の光がカットされたいわゆるイエロー光を用いることにより、短波長域に高感度な材料が反応することを抑制することができるため、光が有機デバイスの特性に影響を与えることを抑制できる。
【0016】
一実施形態においては、積算照度の上限値を、有機機能層に入射する光のスペクトルと有機機能層の材料の吸収スペクトルとに基づいて設定してもよい。これにより、積算照度の上限値をより精度良く設定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、有機デバイスの信頼性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る有機デバイスの製造方法により製造された有機EL素子の断面構成を示す図である。
図2図2は、有機EL素子の製造方法を示すフローチャートである。
図3図3は、イエロー光における波長と相対パワーとの関係を示す図である。
図4図4は、発光層の吸収スペクトル分布を示す図である。
図5図5は、積算照度と相対寿命との関係を示す図である。
図6図6は、積算照度と相対電流発光効率との関係を示す図である。
図7図7は、積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係を示す表である。
図8図8は、積算照度と推定製品寿命との関係を示す図である。
図9図9は、積算照度と製品寿命との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の一実施形態において、図1に示されるように、有機EL素子(有機デバイス)1は、支持基板3と、陽極層(第1電極層)5と、正孔注入層(有機機能層)7と、正孔輸送層(有機機能層)9と、発光層(有機機能層)11と、電子注入層(有機機能層)13と、陰極層(第2電極層)15と、を備えている。
【0021】
有機EL素子1は、支持基板3側から光を出射する形態、又は、支持基板3と反対側から光を出射する形態を取り得る。以下では、有機EL素子1として、支持基板3側から光を出射する形態について説明する。
【0022】
[支持基板]
支持基板3は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する部材から構成されている。支持基板3としては、例えば、ガラス等が挙げられる。支持基板3がガラスである場合、その厚さは、例えば、0.05mm〜1.1mmである。
【0023】
支持基板3は、樹脂から構成されていてもよく、例えば、フィルム状の基板(フレキシブル基板、可撓性を有する基板)であってもよい。この場合、支持基板3の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。支持基板3が樹脂の場合は、その厚さは、ロールツーロール方式の連続時の基板のヨレ、シワ、及び伸びの観点からは45μm以上が好ましく、可撓性の観点から125μm以下が好ましい。
【0024】
支持基板3が樹脂である場合、その材料としては、例えば、プラスチックフィルム等が挙げられる。支持基板3の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
支持基板3の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、又はポリエチレンナフタレートが更に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
支持基板3の一方の主面3a上には、ガスバリア層、或いは、水分バリア層(バリア層)が配置されていてもよい。支持基板3の他方の主面3bは、発光面である。他方の主面3bには、光取出しフィルムが設けられていてもよい。
【0027】
[陽極層]
陽極層5は、支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。陽極層5には、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、及び銅等からなる薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。陽極層5として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。
【0028】
陽極層5の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定することができる。陽極層5の厚さは、10nm以上10μm以下であり、好ましくは20nm以上1μm以下であり、更に好ましくは50nm以上500nm以下である。
【0029】
陽極層5の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法及び塗布法等を挙げることができる。塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェットプリント法等を挙げることができる。
【0030】
[正孔注入層]
正孔注入層7は、陽極層5の主面(支持基板3に接する面とは反対側)上に配置されている。正孔注入層7は、陽極層5から発光層11への正孔注入効率を向上させる機能を有する機能層である。正孔注入層7を構成する材料の例としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び、酸化アルミニウム等の酸化物、フェニルアミン化合物、スターバースト型アミン化合物、フタロシアニン化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、及び、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)のようなポリチオフェン誘導体等を挙げることができる。
【0031】
電荷輸送性を有する従来知られた有機材料は、これと電子受容性材料とを組み合わせることにより、正孔注入層7の材料として用いることができる。電子受容性材料としては、ヘテロポリ酸化合物やアリールスルホン酸を好適に用いることができる。
【0032】
ヘテロポリ酸化合物とは、Keggin型あるいはDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。ヘテロポリ酸化合物の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、及び、ケイタングステン酸等が挙げられる。
【0033】
アリールスルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p−スチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7−ジブチル−2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3−ドデシル−2−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4−ヘキシル−1−ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2−オクチル−1−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7−へキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−ヘキシル−2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7−ジノニル−4−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、及び、2,7−ジノニル−4,5−ナフタレンジスルホン酸、等が挙げられる。ヘテロポリ酸化合物と、アリールスルホン酸を混合して用いてもよい。
【0034】
正孔注入層7の厚さは、例えば1nm以上1μm以下であり、好ましくは2nm以上500nm以下であり、更に好ましくは5nm以上200nm以下である。
【0035】
正孔注入層7は、例えば、上記材料を含む塗布液を用いた塗布法によって形成される。
【0036】
塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェットプリント法等を挙げることができる。これら塗布法のうちの1つを用いて、陽極層5上に塗布液を塗布することによって、正孔注入層7を形成することができる。
【0037】
[正孔輸送層]
正孔輸送層9は、正孔注入層7の主面(陽極層5に接する面とは反対側の面)上に配置されている。正孔輸送層9は、正孔注入層7又は陽極層5により近い正孔輸送層9から発光層11への正孔注入効率を向上させる機能を有する機能層である。正孔輸送層9の材料には、公知の正孔輸送材料が用いられ得る。正孔輸送層9の材料の例は、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン若しくはその誘導体、ピラゾリン若しくはその誘導体、アリールアミン若しくはその誘導体、スチルベン若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン若しくはその誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0038】
正孔輸送層9の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定される。正孔輸送層9の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0039】
正孔輸送層9の形成方法としては、例えば、上記材料を含む塗布液を用いた塗布法等が挙げられる。塗布法としては、正孔注入層7で例示した方法が挙げられる。塗布液の溶媒としては、上記材料を溶解するものであればよく、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の含塩素溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、及び、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒を挙げることができる。
【0040】
[発光層]
発光層11は、光(可視光を含む)を発する機能層であり、正孔輸送層9の主面(正孔注入層7に接する面とは反対側の面)上に配置されている。発光層11は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、或いは該有機物とこれを補助する発光層用ドーパント材料を含む。発光層用ドーパント材料は、例えば、発光効率を向上させたり、発光波長を変化させたりするために加えられる。なお、有機物は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。発光層11を形成する発光材料としては、例えば、下記の色素材料、金属錯体材料、高分子材料等の主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、発光層用ドーパント材料等を挙げることができる。
【0041】
(色素材料)
色素材料としては、例えば、シクロペンダミン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリフェニルアミン及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、ピラゾロキノリン及びその誘導体、ジスチリルベンゼン及びその誘導体、ジスチリルアリーレン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、チオフェン化合物、ピリジン化合物、ペリノン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0042】
(金属錯体材料)
金属錯体材料としては、例えば、Tb、Eu、Dy等の希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Ir等を中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を配位子に有する金属錯体を挙げることができる。金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体等を挙げることができる。
【0043】
(高分子材料)
高分子材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、上記色素材料、又は金属錯体材料を高分子化した材料等を挙げることができる。
【0044】
(発光層用ドーパント材料)
発光層用ドーパント材料としては、例えば、ペリレン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ルブレン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、スクアリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、スチリル色素、テトラセン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、デカシクレン及びその誘導体、フェノキサゾン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0045】
発光層11の厚さは、通常約2nm〜200nmである。発光層11は、例えば、上記のような発光材料を含む塗布液(例えばインク)を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。
【0046】
[電子注入層]
電子注入層13は、発光層11の主面(正孔輸送層9と接する面とは反対側の面)上に配置されている。電子注入層13は、陰極層15から発光層11への電子注入効率を向上させる機能を有する機能層である。電子注入層13の材料には、公知の電子注入材料が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、及び炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【0047】
従来知られた電子輸送性の有機材料と、アルカリ金属の有機金属錯体を混合した材料も、電子注入材料として利用することができる。
【0048】
電子注入層13の厚さは、例えば、1〜50nmである。
【0049】
電子注入層13の形成方法としては、真空蒸着法等が挙げられる。
【0050】
[陰極層]
陰極層15は、電子注入層13の主面(発光層11に接する面の反対側)上に配置されている。陰極層15の材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等を用いることができる。陰極層15の材料としては、具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0051】
また、陰極層15としては、例えば、導電性金属酸化物及び導電性有機物等からなる透明導電性電極を用いることができる。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、及びIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、陰極層15は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、電子注入層が陰極層15として用いられる場合もある。
【0052】
陰極層15の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層15の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、更に好ましくは50nm〜500nmである。陰極層15の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、塗布法等を挙げることができる。
【0053】
[有機EL素子の製造方法]
続いて、上記構成を有する有機EL素子1の製造方法について、図2を参照しながら説明する。
【0054】
支持基板3が可撓性を有し、長手方向に延在する基板である形態では、有機EL素子1の製造方法には、ロールツーロール方式が採用され得る。ロールツーロール方式で有機EL素子1を製造する場合、巻出しロールと巻取りロールとの間に張り渡された長尺の可撓性の支持基板3を連続的に搬送ロールで搬送しながら、各層を支持基板3側から順に形成する。また、本実施形態では、有機EL素子1の製造は、イエロー光環境下で行われる。図3に示されるように、イエロー光は、500nm以下の波長域を含まない(500nm以下の波長が遮断された)光である。
【0055】
有機EL素子1を製造する場合、図2に示されるように、支持基板3を洗浄する(基板洗浄工程S01)。支持基板3の洗浄方法としては、例えば、シャワー洗浄、ブラシ洗浄、ディップ洗浄等が挙げられる。次に、洗浄した支持基板3上に、陽極層5を形成する(陽極層形成工程S02)。陽極層5は、陽極層5の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。続いて、陽極層5上に正孔注入層7及び正孔輸送層9をこの順番で形成する(正孔注入層形成工程S03、正孔輸送層形成工程S04)。正孔注入層7及び正孔輸送層9は、正孔注入層7及び正孔輸送層9の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。
【0056】
次に、正孔輸送層9上に発光層11を形成する(発光層形成工程(第1形成工程)S05)。発光層11は、発光層11の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。具体的には、発光層11を形成する発光材料を有機溶媒に溶解させた塗布液を用いて、塗布法によって発光層11を形成する。イエロー光の発光スペクトルの少なくとも1つのピークの波長は、上記塗布液の吸収スペクトルの分布内である。図4は、発光層の吸収スペクトル分布を示す図である。図4では、横軸が波長[nm]を示し、縦軸が吸収度を示している。吸収度は、log(Io/I)である。Ioは、入射光強度であり、Iは、透過光強度である。図4では、有機溶媒として、THF(tetrahydrofuran:テトラヒドロフラン)を20ppm又は2000ppm用いた塗布液の一例を示している。
【0057】
本実施形態では、発光層11の形成を開始(上記塗布液を塗布)してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における発光層11に入射する光(入射光)の積算照度の上限値を設定して、積算照度が当該上限値以下となるように有機機能層(発光層11及び電子注入層13)を形成する。具体的には、積算照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機EL素子1の製品寿命が所定時間以上となるように、積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、製品寿命が所定時間以上となる積算照度の上限値を設定する。積算照度は、入射光の累積の照度値(入射光の照度と照射時間との積)である。相対寿命は、積算照度が「0(ゼロ)」である場合の有機EL素子1の寿命を100%としたときの、寿命の相対値である。相対電流発光効率は、積算照度が「0(ゼロ)」である場合の有機EL素子1の電流発光効率を100%としたときの、電流発光効率の相対値である。
【0058】
有機EL素子1の製品寿命は、以下の式から算出される。
LT=(LT)×ΔLT×(ΔEff
上記式において、LT[khrs]は、有機EL素子1の推定される製品寿命である。LTは、イエロー光環境下において積算照度が「0」である場合の製品寿命である。ΔLTは、イエロー光環境下において有機EL素子1に所定時間「t」だけイエロー光が入射した場合の積算照度における相対寿命である。ΔEffは、イエロー光環境下において有機EL素子1に所定時間「t」だけイエロー光が入射した場合の積算照度における相対電流発光効率である。
【0059】
図5は、本実施形態における積算照度と相対寿命との関係を示す図である。図5では、横軸が積算照度[lx・hrs]を示し、縦軸が相対寿命[%]を示している。図6は、本実施形態における積算照度と相対電流発光効率との関係を示す図である。図6では、横軸が積算照度[lx・hrs]を示し、縦軸が相対電流発光効率[%]を示している。図7は、本実施形態における積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率とを示す表である。図5図7では、7つのサンプルを一例に示している。図5及び図6では、図7において「1」で示される、積算照度が「0」の場合のプロットを省略している。図9に示されるように、積算照度が「0」の場合、有機EL素子1の製品寿命は、例えば、140[khrs]である。積算照度と相対寿命との関係、及び、積算照度と相対電流発光効率との関係は、例えば、実験、試験等により得られる。積算照度と相対寿命との関係、及び、積算照度と相対電流発光効率との関係は、有機機能層(本実施形態では発光層11及び電子注入層13)を形成する前の工程で取得され得る。
【0060】
図7に示されるように、積算照度が「0」の場合には、相対電流発光効率及び相対寿命は「100(%)」である。図5及び図7に示されるように、積算照度が高くなると、相対寿命が低下する傾向にある。図6及び図7に示されるように、積算照度が高くなると、相対電流発光効率が低下する傾向にある。例えば、積算照度が「100(lx・hrs)」の場合には、相対寿命が「45(%)」になり、相対電流発光効率が「84(%)」になる。相対電流発光効率が「84(%)」となると、有機EL素子1において定格輝度を出力するためには、電流値が1.19倍(1/0.84)となる。有機EL素子1に高電流を供給すると、電流値の2乗で、有機EL素子1の寿命が短くなる。
【0061】
図5図7に示される相対電流発光効率及び相対寿命に基づいて、上記式から算出される製品寿命を図8及び図9に示す。図8は、積算照度と製品寿命との関係を示す図である。図8では、横軸が積算照度[lx・hrs]を示し、縦軸が製品寿命[khrs]を示している。図9は、積算照度と製品寿命との関係を示す表である。
【0062】
有機EL素子1が照明等に用いられる場合、40[khrs](40,000時間)以上の製品寿命であることが好ましい(図8において破線で示す)。図9に示されるように、本実施形態において、製品寿命が40[khrs]となるのは、積算照度が100[lx・hrs]以下の場合である。以上により、本実施形態では、有機EL素子1の製品寿命が40[khrs]以上となるように、積算照度の上限値を100[lx・hrs]と設定することが好ましい。つまり、発光層11の形成を開始してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における光の積算照度を100[lx・hrs]以下とすることが好ましい。
【0063】
続いて、図2に示されるように、発光層11上に電子注入層13を形成する(電子注入層形成工程S06)。電子注入層13は、電子注入層13の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。そして、電子注入層13上に陰極層15を形成する(陰極層形成工程(第2形成工程)S07)。陰極層15は、陰極層15の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。その後、陰極層15上に封止部材(図示省略)を貼り合わせ、支持基板3を切断することにより有機EL素子1を個片化する。以上により、有機EL素子1が製造される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、有機EL素子1の製品寿命が所定時間以上となるように、積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、製品寿命が所定時間以上となる積算照度の上限値を設定する。そして、有機EL素子1の製造方法では、発光層11に入射する光の積算照度が上限値以下となるように、有機機能層(発光層11、電子注入層13)を形成する。これにより、有機EL素子1の製造方法では、製品寿命が所定時間以上となる有機EL素子1を製造できる。したがって、有機EL素子1の製造方法では、信頼性の低下を抑制できる。
【0065】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、光の積算照度が100lx・hrs以下となるように、発光層11から陰極層15までを形成する。これにより、有機EL素子1の製造方法では、製品寿命が40[khrs]以上となる有機EL素子1を製造できる。
【0066】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、発光層11に入斜し得る光の発光スペクトルの少なくとも1つのピークの波長は、有機溶媒に溶解した発光層11を形成する材料の吸収スペクトルの分布内である。このように、発光層11を形成する材料の吸収スペクトルの分布内に光の発光スペクトルのピーク波長が含まれる場合には、上記有機EL素子1の製造方法が特に有効である。
【0067】
本実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、発光層11に入射し得る光は、500nm以下の波長域を含まない。有機EL素子1の製造においては、短波長域に高感度な材料を使うことがある。そのため、500nmよりも短波長の光がカットされたいわゆるイエロー光を用いることにより、短波長域に高感度な材料が反応することを抑制することができるため、光が有機EL素子1の特性に影響を与えることを抑制できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、陽極層5、正孔注入層7、正孔輸送層9、発光層11、電子注入層13及び陰極層15がこの順番で配置された有機EL素子1を例示した。しかし、有機EL素子1の構成はこれに限定されない。有機EL素子1は、以下の構成を有していてもよい。
(a)陽極層/発光層/陰極層
(b)陽極層/正孔注入層/発光層/陰極層
(c)陽極層/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極層
(d)陽極層/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
(e)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極層
(f)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極層
(g)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
(h)陽極層/発光層/電子注入層/陰極層
(i)陽極層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。上記(f)は、上記実施形態の構成を示している。
【0070】
電子輸送層は、陰極層、電子注入層又は陰極により近い電子輸送層から発光層への電子注入効率を向上させる機能を有する機能層である。電子輸送層の厚さは、電気的な特性や成膜の容易性などを勘案して適宜設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0071】
電子輸送層を構成する電子輸送材料には、公知の材料が用いられ得る。電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などが挙げられる。
【0072】
電子輸送層の形成方法としては、例えば、陽極層5で例示した方法が挙げられる。
【0073】
有機EL素子1は、一層の有機機能層を有していてもよいし、複層(2層以上)の有機機能層を有していてもよい。上記(a)〜(i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極層5と陰極層15との間に配置された積層構造を「構造単位A」とすると、2層の有機機能層を有する有機EL素子の構成として、例えば、下記(j)に示す層構成を挙げることができる。2個ある(構造単位A)の層構成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデン等からなる薄膜を挙げることができる。
(j)陽極層/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極層
【0074】
また、「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層11を有する有機EL素子の構成として、例えば、以下の(k)に示す層構成を挙げることができる。
(k)陽極層/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極層
【0075】
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0076】
電荷発生層を設けずに、複数の有機機能層を直接的に積層させて有機EL素子を構成してもよい。
【0077】
上記実施形態では、500nm以下の波長域を含まないイエロー光の環境下において有機EL素子1を製造する形態を一例に説明した。しかし、イエロー光以外の光の環境下において有機デバイスを製造してもよい。この場合、光の発光スペクトルと発光層の吸収スペクトルとに基づいて、積算照度の上限値を設定すればよい。
【0078】
上記実施形態では、第1電極層が陽極層5であり、第2電極層が陰極層15である形態を一例に説明した。しかし、第1電極層が陰極層であり、第2電極層が陽極層であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、発光層11を形成した後で電子注入層13を形成し、電子注入層13を形成した後で陰極層15を形成する形態を一例に説明した。しかし、発光層11(電子注入層13)を形成した後、陰極層15の形成を開始するまでに、有機機能層が形成された支持基板3が一時的に保管されてもよい。この場合、有機機能層が形成された支持基板3は、積算照度の上限値以下となる環境において保管されればよい。
【0080】
上記実施形態では、発光層11の形成を開始してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における光の積算照度の上限値を設定して、当該上限値以下となるように有機機能層を形成する形態を一例に説明した。しかし、発光層を形成する前に形成される有機機能層を形成する工程においても、光の積算照度の上限値を設定して、当該上限値以下となるように有機機能層を形成してもよい。
【0081】
上記実施形態では、発光層11の形成を開始してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における光の積算照度の上限値を設定する形態を一例に説明した。しかし、上記積算照度の上限値を設定する代わりに、発光層11の形成を開始してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における光の積算吸収放射照度の上限値を設定してもよい。すなわち、発光層11の形成を開始してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における光の積算吸収放射照度の上限値を設定して、積算吸収放射照度が当該上限値以下となるように有機機能層を形成してもよい。
【0082】
上記積算吸収放射照度は、発光層11を形成する材料の光の各波長に対する積算放射照度の積分値である。発光層11を形成する材料の光の各波長に対する積算放射照度は、発光層11を形成する材料の光の各波長に対する吸収率を、発光層11の形成を開始してから陰極層15の形成を開始するまでの環境における光の各波長に対する積算放射照度に重みとして掛け合わせたものである。なお、積算放射照度とは、光の累積の放射照度値(光の放射照度と照射時間との積)である。発光層11を形成する材料の光の各波長に対する積算放射照度を全波長で積分することにより、積算吸収放射照度を算出することができる。当該積算吸収放射照度の上限値は、当該積算吸収放射照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機デバイスの製品寿命が所定時間以上となるように、当該積算吸収放射照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、製品寿命が所定時間以上となるように設定する。当該積算吸収放射照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係は、前述の積算照度と同様、実験、試験等により得られる。また、積算吸収放射照度と相対寿命との関係、及び、積算吸収放射照度と相対電流発光効率との関係は、有機機能層(本実施形態では発光層11及び電子注入層13)を形成する前の工程で取得され得る。
【0083】
上記実施形態では、有機デバイスとして、有機EL素子を一例に説明した。有機デバイスは、有機薄膜トランジスタ、有機フォトディテクタ、有機薄膜太陽電池等であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…有機EL素子(有機デバイス)、3…支持基板、5…陽極層(第1電極層)、7…正孔注入層(有機機能層)、9…正孔輸送層(有機機能層)、11…発光層(有機機能層)、13…電子注入層(有機機能層)、15…陰極層(第2電極層)。
【要約】
【課題】信頼性の低下を抑制できる有機デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】有機デバイスの製造方法は、基板3上に配置された第1電極層5上に、少なくとも発光層11を含む有機機能層を形成する第1形成工程と、有機機能層上に第2電極層15を形成する第2形成工程と、を含み、発光層11の形成を開始してから、第2電極層15の形成を開始するまでの環境における光の積算照度の上限値を設定して、積算照度が当該上限値以下となるように有機機能層を形成し、積算照度に起因する相対寿命及び相対電流発光効率に基づいて設定される有機デバイス1の製品寿命が所定時間以上となるように、積算照度と相対寿命及び相対電流発光効率との関係から、製品寿命が所定時間以上となる積算照度の上限値を設定する。
【選択図】図1
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