(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タック層は、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ホスフィン類、ホスファイト類、スルフィド類、ジスルフィド類、トリスルフィド類、およびスルホキシド類の中から選択される1種もしくは2種以上からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の接合フィルム。
前記有機溶剤(S)は、常圧における沸点が100℃以上でかつ分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/もしくは多価アルコールからなる有機溶剤(SC)を含むことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の接合フィルム。
前記有機バインダー(R)は、セルロース樹脂系バインダー、アセテート樹脂系バインダー、アクリル樹脂系バインダー、ウレタン樹脂系バインダー、ポリビニルピロリドン樹脂系バインダー、ポリアミド樹脂系バインダー、ブチラール樹脂系バインダー、およびテルペン系バインダーの中から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の接合フィルム。
金属微粒子(P)を含む導電性ペーストがフィルム状に成形された導電性接合層と、タック性を有し、かつ前記金属微粒子(P)を還元させる物質を含み、前記導電性接合層に積層されたタック層とを有する接合フィルムを、半導体素子と基板との間に配置して加熱し、前記タック層を熱分解して前記導電性接合層の前記金属微粒子(P)を焼結させることによって、前記半導体素子と前記基板とを接合する接合工程を有することを特徴とする接合体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと配線基板等との接着には、フィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム)が使用されている。さらに、半導体ウエハを個々のチップに切断分離(ダイシング)する際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップを配線基板等に接着するためのダイアタッチフィルム(ダイボンディングフィルムともいう)との2つの機能を併せ持つダイシング・ダイボンディングテープが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなダイシング・ダイボンディングテープを、電力の制御や供給等を行う半導体素子(いわゆるパワー半導体素子)と回路基板、セラミック基板およびリードフレーム等の基板との接続に用いた場合、接続耐熱性が十分ではないという問題があった。
【0004】
そこで、パワー半導体素子と基板との接続では、一般に半田が使用されている。このような半田としては、半田の粉末にフラックスを加えて適当な粘度にしたクリーム半田が主に用いられている。しかしながら、フラックスを用いると、半導体素子表面を汚染する可能性があり、洗浄工程が必要という問題があった。また、近年、環境上の配慮から、鉛を含まない鉛フリー半田材料を用いることが要求されている。パワー半導体の発熱に対応可能な鉛フリー半田材料としてAu−Sn系半田があるが、高価であるため、実用的ではない。Au−Sn系半田より安価な半田材料としてSn−Ag−Cu系半田があるが、熱履歴による金属間化合物の成長が信頼性の低下につながるという問題があった。
【0005】
半田を用いない接合部材として、熱硬化性樹脂に導電性を持つ微細な金属粒子を混ぜ合わせたものを膜状に成形した異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film:ACF)がある。しかしながら、ACFは、良好な接着状態を得るため、一定割合以上の樹脂を含むため、金属粒子間の接触が点接触となり、十分な熱伝導が期待できず、接続耐熱性が十分ではないという問題点があった。また、ACFは、高熱による熱硬化性樹脂の劣化が懸念されるため、発熱量の大きいパワー半導体の接続には適さない。
【0006】
また、他の半田を用いない接合部材として、近時では金属微粒子を含むペースト( 以下、金属ペーストという)がある(例えば、特許文献2参照)。 金属ペーストは、金属微粒子に、保存時や製造工程中の金属微粒子同士の凝縮を防止する有機分散剤と、接合時に有機分散剤と反応して有機分散剤を除去する分散補助物質とを添加し、これに溶剤等を混合させてペースト状にしたものである。金属微粒子は、少なくとも粒径が1nm〜500nm程度の極めて微細な粒子を含むものであり、表面は活性状態である。
【0007】
金属ペーストを用いて半導体素子と基板とを接合するには、半導体素子および/または基板の接合面に金属ペーストをディスペンサー、またはスクリーン印刷により塗布し、150℃〜300℃で所定時間(1分〜1時間程度)加熱する。これにより、有機分散剤と分散補助材とが反応して有機分散剤が除去され、同時に溶剤も揮発して除去される。有機分散剤や溶剤が除去されると、活性状態にある金属微粒子同士が互いに結合し、その金属成分の単体膜となる。
【0008】
金属ペーストをディスペンサーやスクリーン印刷を用いて、接合面に塗布する場合、溶剤等の量を調節して、金属ペーストの粘度をある程度低くする必要がある。しかしながら、粘度を下げると、金属ペーストを接合面に塗布する際に、金属ペーストが飛散して半導体素子や基板の接合面以外の部分に付着して半導体素子や基板が汚染されてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、金属ペーストを予めシート状にした接続シートが提案されている(特許文献3、参照)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る接着フィルムおよびウエハ加工用テープを図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態に係るウエハ加工用テープを
図1乃至
図5に基づいて説明する。
図1は一実施形態に係るウエハ加工用テープ10を示す断面図である。
図2は、ウエハ加工用テープ10上に半導体ウエハ1を貼り合せた状態を示す図である。また、
図3は、半導体装置の製造工程におけるダイシング工程を説明するための図であり、
図4は、エキスパンド工程を説明するための図であり、
図5は、ピックアップ工程を説明するための図である。
図6は、本発明の実施形態に係るウエハ加工用テープを用いて製造された半導体装置を模式的に示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るウエハ加工用テープ10は、基材フィルム12aとその上に形成された粘着剤層12bとからなる粘着フィルム12と、この粘着フィルム12上に積層された接合フィルム13とを有する。接合フィルム13は、金属微粒子(P)を含む導電性ペーストがフィルム状に成形された導電性接合層13aと、タック性を有し導電性接合層13aに積層されたタック層13bとを有し、粘着剤層12b上に導電性接合層13aが設けられている。ウエハ加工用テープ10は、半導体ウエハ1を半導体素子2(チップまたは半導体チップともいう)に切断するダイシング工程と、切断された半導体素子2を回路基板、セラミック基板およびリードフレーム等の基板40(
図6参照)に接合するダイボンディング工程との両工程に使用される。ダイシング工程については
図3を参照して後述する。
【0028】
なお、粘着剤層12bは一層の粘着剤層により構成されていても良いし、二層以上の粘着剤層が積層されたもので構成されていても良い。なお、
図1においては、接合フィルム13を保護するため、離型フィルム11がウエハ加工用テープ10に設けられている様子が示されている。離型フィルム11としては、公知のものを使用することができる。
【0029】
粘着フィルム12および接合フィルム13は、使用工程や装置にあわせて予め所定形状に形成されていても良い。
【0030】
以下、本実施形態のウエハ加工用テープ10の各構成要素について詳細に説明する。
【0031】
(接合フィルム)
接合フィルム13は、半導体ウエハ1が貼り合わされてダイシングされた後、個片化された半導体素子2をピックアップする際に、粘着フィルム12から剥離して半導体素子2に付着してピックアップされ、半導体素子2を基板40に固定する際の接合材として使用されるものである。従って、接合フィルム13は、ピックアップ工程において、個片化された半導体素子2に付着したままの状態で、粘着フィルム12から剥離することができる粘着性と剥離性を有し、さらに、半導体素子2と基板40とを接合して、十分な接合信頼性を有するものである。ピックアップ工程については
図5を参照して後述する。
【0032】
接合フィルム13は、金属微粒子(P)を含む導電性ペーストがフィルム状に成形された導電性接合層13aと、タック性を有し導電性接合層13aに積層されたタック層13bとを有する。
なお、本発明においてタック性とは、接着性を意味し、具体的には、導電性接合層13aを半導体ウエハ1や半導体素子2に保持させることのできる接着性を意味する。
【0033】
[導電性接合層]
導電性ペーストは、金属微粒子(P)を含む他、有機分散媒(D)を含むことが好ましい。
【0034】
導電性ペーストに含まれる金属微粒子(P)としては、銅、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、錫、アンチモン、鉛、ビスマス、チタン、マンガン、ゲルマニウム、銀、金、ニッケル、白金およびパラジウムからなる金属元素群から選ばれる1種の微粒子、前記金属元素群から選ばれる2種以上を混合した微粒子、前記金属元素群から選ばれる2種以上の元素の合金からなる微粒子、前記金属元素群から選ばれる1種の微粒子または前記金属元素群から選ばれる2種以上を混合した微粒子と前記金属元素群から選ばれる2種以上の元素の合金からなる微粒子とを混合した微粒子、これらの酸化物、または、これらの水酸化物等を用いることができる。
【0035】
金属微粒子(P)は、導電性、加熱処理の際の焼結性を考慮すると、(i)銅微粒子(P1)、または(ii)銅微粒子(P1)90〜100質量%と、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、錫、アンチモン、鉛、ビスマス、チタン、マンガン、およびゲルマニウムから選択された1種もしくは2種以上の第二の金属微粒子(P2)10〜0質量%、からなる金属微粒子を使用することが好ましい。前記銅微粒子(P1)は相対的に導電性の高い金属であり、一方、金属微粒子(P2)は相対的に融点が低い金属である。銅微粒子(P1)に第二の金属微粒子(P2)を併用する場合には、金属微粒子(P2)が金属微粒子(P)中で銅微粒子(P1)と合金を形成しているか、または前記金属微粒子(P2)が金属微粒子(P)中で銅微粒子(P1)の表面で被覆層を形成していることが好ましい。前記銅微粒子(P1)および金属微粒子(P2)を併用することにより、加熱処理温度を低下でき、又金属微粒子間の結合をより容易にすることができる。
【0036】
金属微粒子(P)は、加熱処理前の平均一次粒径が10〜500nmであることが好ましい。金属微粒子(P)の平均粒子径が10nm未満では、加熱処理(焼結)により焼結体全体に渡って均質な粒子径と空孔を形成することが困難になるおそれがあり、熱サイクル特性が低下し、ひいては接合強度も低下する場合がある。一方、該平均粒子径が500nmを超えると焼結体を構成している金属微粒子および空孔径がミクロンサイズ近くになり、やはり熱サイクル特性が低下する。加熱処理前の金属微粒子(P)の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によりその直径を測定することができる。例えば、二次元形状が略円形状である場合はその円の直径、略楕円形状である場合はその楕円の短径、略正方形状である場合はその正方形の辺の長さ、略長方形状である場合はその長方形の短辺の長さを測定する。「平均粒子径」は、無作為に10〜20個選択された複数の粒子の粒子径を上記顕微鏡で観察して計測し、その平均値を計算することによって求められる。
【0037】
前記金属微粒子(P)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば湿式化学還元法、アトマイズ法、めっき法、プラズマCVD法、MOCVD法等の方法を用いることができる。
【0038】
平均一次粒子径10〜500nmの金属微粒子(P)の製造方法は、具体的には特開2008−231564号公報に開示された方法を採用することができる。該公報に開示された製造方法を採用すると、平均一次粒子径が10〜500nmの金属微粒子(P)を容易に得ることが可能であり、また該公報に開示された金属微粒子の製造方法において、金属イオンの還元反応終了後に還元反応水溶液に凝集剤を添加して遠心分離等により回収される、反応液中の不純物が除去された金属微粒子に有機分散媒(D)を添加して混練して、本発明の導電性ペーストを製造することができる。
【0039】
導電性ペースト中に金属微粒子(P)を均一に分散させるためには、分散性、加熱処理の際の焼結性等に優れる特定の有機分散媒(D)を選択することが重要である。有機分散媒(D)は、導電性ペースト中で金属微粒子(P)を分散させ、導電性ペーストの粘度を調節して、フィルム形状を維持し、かつ加熱処理の際に液状およびガス状で還元剤としての機能を発揮することができる。有機分散媒(D)は、少なくとも有機溶剤(S)を含み、さらに有機バインダー(R)を含むことが好ましい。
【0040】
有機溶剤(S)は、常圧における沸点が100℃以上でかつ分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/もしくは多価アルコールからなる有機溶剤(SC)を含むことが好ましい。さらには、有機溶剤(S)は、(i)少なくとも、アミド基を有する有機溶剤(SA)5〜90体積%、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶剤(SB)5〜45体積%、および常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/もしくは多価アルコールからなる有機溶剤(SC)5〜90体積%含む有機溶剤(S1)、並びに(ii)少なくとも、アミド基を有する有機溶剤(SA)5〜95体積%、および常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/もしくは多価アルコールからなる有機溶剤(SC)5〜95体積%含む有機溶剤(S2)、の中から選択される1種であることが好ましい。
【0041】
上記以外の他の有機溶剤成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤を使用することができる。
【0042】
有機溶剤(S1)は、少なくとも、アミド基を有する有機溶剤(SA)5〜90体積%、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶剤(SB)5〜45体積%、並びに常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/もしくは多価アルコールからなる有機溶剤(SC)5〜90体積%含む有機溶剤である。有機溶剤(SA)は、有機溶剤(S1)中に5〜90体積%含まれ、導電性ペースト中で分散性と保存安定性を向上し、更に前記接合面上の導電性接合層を加熱処理して焼結体を形成する際に接合面での密着性を向上する作用を有している。有機溶剤(SB)は、有機溶剤(S1)中に5〜45体積%以上含まれ、導電性ペースト中で溶媒分子間の相互作用を低下させ、分散している金属微粒子(P)の有機溶剤(S1)に対する親和性を向上する作用を有している。有機溶剤(SC)は、有機溶剤(S1)中に5〜90体積%以上含まれ、導電性ペースト中で分散性と、分散性の一層の長期安定化を図ることが可能になる。また有機溶剤(SC)を混合有機溶剤中に存在させると、その導電性接合層を接合面に配置して加熱処理すると焼結体の均一性が向上し、また有機溶剤(SC)の有する酸化被膜の還元促進効果も働き、導電性の高い接合部材を得ることが出来る。「有機溶剤(S1)は、少なくとも、有機溶剤(SA)5〜90体積%、有機溶剤(SB)5〜45体積%、並びに有機溶剤(SC)5〜90体積%含む有機溶剤である。」とは、有機溶剤(S1)が有機溶剤(SA)、有機溶剤(SB)、および有機溶剤(SC)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶剤成分を配合してもよいことを意味するが、この場合、有機溶剤(SA)、有機溶剤(SB)、および有機溶剤(SC)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
【0043】
有機溶剤(S2)は、少なくとも、アミド基を有する有機溶剤(SA)5〜95体積%、および常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/もしくは多価アルコールからなる有機溶剤(SC)5〜95体積%含む有機溶剤である。有機溶剤(SA)は、有機溶剤(S2)中に5〜95体積%含まれ、該混合有機溶剤中で分散性と保存安定性を向上し、更に導電性ペーストを加熱処理して金属多孔質体を形成する際に接合面での密着性を向上する作用を有している。有機溶剤(SC)は、有機溶剤(S2)中に5〜95体積%含まれ、導電性ペースト中で分散性を一層向上させる。また有機溶剤(SA)と有機溶剤(SC)とを有機溶剤(S2)中に存在させると、導電性接合層を接合面上に配置後、加熱処理する際に、比較的低い加熱処理温度でも焼結を進行させることができる。「有機溶剤(S2)は、少なくとも、有機溶剤(SA)5〜95体積%、および有機溶剤(SC)5〜95体積%含む有機溶剤である。」とは、有機溶剤(S2)が有機溶剤(SA)、および有機溶剤(SC)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で更に、本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶剤成分を配合してもよいことを意味するが、この場合、有機溶剤(SA)、および有機溶剤(SC)からなる成分が90体積%以上含まれることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
【0044】
以下に上記した有機溶剤(SC)、有機溶剤(SA)、および有機溶剤(SB)の具体例を示す。
【0045】
有機溶剤(SC)は、常圧における沸点が100℃以上で、分子中に1または2以上のヒドロキシル基を有するアルコールおよび/または多価アルコールからなり、還元性を有する有機化合物である。また、炭素数が5以上のアルコール、および炭素数が2以上の多価アルコールが好ましく、常温で液状であり、比誘電率が高いもの、例えば10以上のものが好ましい。平均一次粒子径10〜500nmの金属微粒子(P)は微粒子の表面積が大きいので酸化の影響を考慮する必要があるが、以下に挙げる有機溶剤(SC)は加熱処理(焼結)の際に液状およびガス状で還元剤としての機能を発揮するので、加熱処理の際に金属微粒子(P)の酸化を抑制して焼結を促進する。有機溶剤(SC)の具体例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等が例示できる。
【0046】
また、有機溶剤(SC)の具体例として、トレイトール(D−Threitol)、エリトリトール(Erythritol)、ペンタエリスリトール(Pentaerythritol)、ペンチトール(Pentitol)、ヘキシトール(Hexitol)等の糖アルコール類も使用可能であり、ペンチトールには、キシリトール(Xylitol)、リビトール(Ribitol)、アラビトール(Arabitol)が含まれる。前記ヘキシトールには、マンニトール(Mannitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ズルシトール(Dulcitol)等が含まれる。更に、グリセロールアルデヒド(Glyceric aldehyde)、ジオキシアセトン(Dioxy−acetone)、トレオース(threose)、エリトルロース(Erythrulose)、エリトロース(Erythrose)、アラビノース(Arabinose)、リボース(Ribose)、リブロース(Ribulose)、キシロース(Xylose)、キシルロース(Xylulose)、リキソース(Lyxose)、グルコース(Glucose)、フルクトース(Fructose)、マンノース(Mannose)、イドース(Idose)、ソルボース(Sorbose)、グロース(Gulose)、タロース(Talose)、タガトース(Tagatose)、ガラクトース(Galactose)、アロース(Allose)、アルトロース(Altrose)、ラクト−ス(Lactose)、イソマルトース(Isomaltose)、グルコヘプトース(Gluco−heptose)、ヘプトース(Heptose)、マルトトリオース(Maltotriose)、ラクツロース(Lactulose)、トレハロース(Trehalose)、等の糖類も使用可能であるが融点が高いものについては他の融点の低い有機溶剤(SC)と混合して使用することが可能である。上記アルコール類のなかでは、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールがより好ましく、エチレングリコールおよびグリセロールが特に好ましい。
【0047】
有機溶剤(SA)は、アミド基(−CONH−)を有する化合物であり、特に比誘電率が高いものが好ましい。有機溶剤(A)として、N−メチルアセトアミド(191.3 at 32℃)、N−メチルホルムアミド(182.4 at 20℃)、N−メチルプロパンアミド(172.2 at 25℃)、ホルムアミド(111.0 at 20℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78 at 25℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(37.6 at 25℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.7 at 25℃)、1−メチル−2−ピロリドン(32.58 at 25℃)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(29.0 at 20℃)、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、アセトアミド等が挙げられるが、これらを混合して使用することもできる。尚、上記アミド基を有する化合物名の後の括弧中の数字は各溶媒の測定温度における比誘電率を示す。これらの中でも比誘電率が100以上である、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトアミドなどが好適に使用できる。尚、N−メチルアセトアミド(融点:26〜28℃)のように常温で固体の場合には他の溶剤と混合して処理温度で液状として使用することができる。
【0048】
有機溶剤(SB)は、常圧における沸点が20〜100℃の範囲にある有機化合物である。常圧における沸点が20℃未満であると、有機溶剤(SB)を含む粒子分散液を常温で保存した際、有機溶剤(SB)の成分が揮発し、ペースト組成が変化してしまうおそれがある。また常圧における沸点が100℃以下の場合に、該溶媒添加による溶媒分子間の相互引力を低下させ、微粒子の分散性を更に向上させる効果が有効に発揮されることが期待できる。有機溶剤(SB)として、一般式R
1−O−R
2(R
1、R
2は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(SB1)、一般式R
3−OH(R
3は、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール(SB2)、一般式R
4−C(=O)−R
5(R
4、R
5は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(SB3)、および一般式R
6−(N−R
7)−R
8(R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立にアルキル基、または水素原子で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物(SB4)が例示できる。
【0049】
以下に上記有機溶剤(SB)を例示するが、化合物名の後のカッコ内の数字は常圧における沸点を示す。前記エーテル系化合物(SB1)としては、ジエチルエーテル(35℃)、メチルプロピルエーテル(31℃)、ジプロピルエーテル(89℃)、ジイソプロピルエーテル(68℃)、メチル−t−ブチルエーテル(55.3℃)、t−アミルメチルエーテル(85℃)、ジビニルエーテル(28.5℃)、エチルビニルエーテル(36℃)、アリルエーテル(94℃)等が例示できる。前記アルコール(SB2)としては、メタノール(64.7℃)、エタノール(78.0℃)、1−プロパノール(97.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、2−ブタノール(100℃)、2−メチル2−プロパノール(83℃)等が例示できる。前記ケトン系化合物(SB3)としては、アセトン(56.5℃)、メチルエチルケトン(79.5℃)、ジエチルケトン(100℃)等が例示できる。また、前記アミン系化合物(SB4)としては、トリエチルアミン(89.7℃)、ジエチルアミン(55.5℃)等が例示できる。
【0050】
有機バインダー(R)は、導電性ペースト中で金属微粒子(P)の凝集の抑制、導電性ペーストの粘度の調節、および導電接続部材前駆体の形状を維持する機能を発揮する。前記有機バインダー(R)は、セルロース樹脂系バインダー、アセテート樹脂系バインダー、アクリル樹脂系バインダー、ウレタン樹脂系バインダー、ポリビニルピロリドン樹脂系バインダー、ポリアミド樹脂系バインダー、ブチラール樹脂系バインダー、およびテルペン系バインダーの中から選択される1種または2種以上が好ましい。具体的には、前記セルロース樹脂系バインダーがアセチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ブチルセルロース、およびニトロセルロース;アセテート樹脂系バインダーがメチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、およびブチルジグリコールアセテート;アクリル樹脂系バインダーがメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびブチルメタクリレート;ウレタン樹脂系バインダーが2,4−トリレンジイソシアネート、およびp−フェニレンジイソシアネート;ポリビニルピロリドン樹脂系バインダーがポリビニルピロリドン、およびN−ビニルピロリドン;ポリアミド樹脂系バインダーがポリアミド6、ポリアミド66、およびポリアミド11;ブチラール樹脂系バインダーがポリビニルブチラール;テルペン系バインダーがピネン、シネオール、リモネン、およびテルピネオール、の中から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0051】
導電性ペーストは、金属微粒子(P)と、有機溶剤(S)からなる有機分散媒(D)とを含む導電性ペースト、または、前記金属微粒子(P)と、有機溶剤(S)および有機バインダー(R)からなる有機分散媒(D)とを含む導電性ペーストである。これに加熱処理すると、ある温度に達すると有機溶剤(S)の蒸発、または有機溶剤(S)の蒸発と有機バインダー(R)の熱分解が進行して、金属微粒子(P)の表面が現れ、互いに表面で結合(焼結)する原理を利用して接合材として機能するものである。前記導電性ペースト中の、金属微粒子(P)と有機分散媒(D)との配合割合(P/D)は50〜85質量%/50〜15質量%(質量%の合計は100質量%)であることが好ましい。尚、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の導電性ペーストに上述以外の金属微粒子、有機分散媒等を配合することができる。
【0052】
金属微粒子(P)の配合割合が前記85質量%を超えるとペーストが高粘度となり、加熱処理において金属微粒子(P)表面間の結合不足が生じて導電性が低下するおそれがある。一方、金属微粒子(P)の配合割合が前記50質量%未満では、ペーストの粘度が低下してフィルム形状維持が困難となり、また加熱処理の際に収縮という不具合が生ずるおそれがあり、更に、加熱処理する際に有機分散媒(D)の蒸発する速度が遅くなる不都合を伴うおそれもある。かかる観点から、前記金属微粒子(P)と有機分散媒(D)との配合割合(P/D)は55〜80質量%/45〜20質量%であることがより好ましい。また、該有機分散媒(D)中の有機溶剤(S)と有機バインダー(R)との配合割合(S/R)は80〜100質量%/20〜0質量%(質量%の合計はいずれも100質量%)であることが好ましい。
【0053】
有機分散媒(D)中の有機バインダー(R)の配合割合が20質量%を超えると、導電性接合層13aを加熱処理する際に有機バインダー(R)が熱分解して飛散する速度が遅くなり、また導電接続部材中に残留カーボン量が増えると焼結が阻害されて、クラック、剥離等の問題が生ずる可能性があり好ましくない。有機溶剤(S)の選択により、該溶剤のみで金属微粒子(P)を均一に分散させ、導電性ペーストの粘度の調節、およびフィルム形状を維持できる機能を発揮できる場合には、有機分散媒(D)として有機溶剤(S)のみからなる成分を使用できる。導電性ペーストには、前記した成分に必要に応じて消泡剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤など公知の添加物を加えることができる。導電性ペーストを製造する際に、各成分を混合した後にボールミル等を用いて混練することができる。
【0054】
[タック層]
タック層13bは、導電性接合層13aを半導体ウエハ1や半導体素子2に保持させるためのものであり、タック性を有している。また、タック層13bは、半導体素子2と基板40とを接合する際の加熱により熱分解される。タック層13bは、このような性質を有するものであれば、特に限定されるものではなくどのようなもので構成されていてもよい。
【0055】
タック層13bは、導電性接合層13aにはタック性がないため、半導体ウエハ1や半導体素子2と導電性接合層13aとの接着性を改善するための層である。タック層13bがないと、半導体ウエハ1や半導体素子2と導電性接合層13aとの接着力が弱いため、半導体ウエハ1のダイシング時や半導体素子2のピックアップ時に、半導体ウエハ1や半導体素子2と導電性接合層13aとの間で剥離が生じてしまう。また、タック層13bは、導電性接合層13aの半導体ウエハ1や半導体素子2への密着力を上げるための層でもある。密着力が上がることにより、導電性接合層13aを介して半導体素子2と基板40とを接合させたときの接合強度も向上する。
【0056】
本発明においては、タック層13bが半導体素子2と基板40とを接合する際の加熱で熱分解されることにより、半導体素子2と基板40とが導電性接合層13aを介して機械的に接合されることが重要である。このため、タック層13bは、接合時の加熱温度で、空気雰囲気下、昇温速度5℃/分の熱重量測定における重量減少が70重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0057】
また、タック層13bは、接合時に半導体素子2と直接接触しているため、半導体素子2の電極の表面を活性化させる効果も期待される。これは、タック層13bに含まれる物質が加熱時分解する際に、金属である電極表面の酸化層と反応して金属面をクリーニングするためと考えられる。このように半導体素子2の電極の表面が活性化されることにより、半導体素子2の電極と導電性接合層13aとの密着力を向上させることができる。
【0058】
タック層13bを構成する材料としては、極性もしくは非極性溶媒中に、室温では溶けないが、融点まで加熱すると溶けやすいものを用いることが好ましい。このような材料を融点まで加熱して溶媒中に溶かし、導電性接合層13a等の上に塗布した後、室温まで冷却し、溶媒を蒸発させることによりタック性を有する膜状体を形成することができる。溶媒としては、公知の溶剤を適宜使用することができるが、成膜時の蒸発を容易にするため低沸点の溶剤を用いることが好ましい。
【0059】
さらに、タック層13bは、導電性ペースト中の金属微粒子(P)を加熱焼結させる際に、金属微粒子(P)を還元させる物質で構成されることがより好ましい。タック層13bの分解反応が多段反応で起きる物質では反応温度領域が広く、金属微粒子(P)が還元され、これにより金属微粒子(P)の焼結後の抵抗率が下がり、導電性が向上する。
【0060】
タック層13bは、例えば、ポリグリセリン;グリセリンモノカプレート(融点:46℃)、グリセリンモノラウレート(融点:57℃)、グリセリンモノステアレート(融点:70℃)、グリセリンモノベヘネ・BR>[ト(融点:85℃)等のグリセリン脂肪酸エステル;ジグリセリンステアレート(融点:61℃)、ジグリセリンラウレート(融点:34℃)等のポリグリセリン脂肪酸エステル;スチレンp−スチリルジフェニルホスフィン(融点:75℃)、トリフェニルホスフィン(融点:81℃)、トリ−n−オクチルホスフィン(融点:30℃)等のホスフィン類;ホスファイト類;ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(融点:64℃)、フェニルp−トリルスルフィド(融点:23℃)、フルフリルスルフィド(融点:32℃)等のスルフィド類;ジフェニルジスルフィド(融点:61℃)、ベンジルジスルフィド(融点:72℃)、テトラエチルチウラムジスルフィド(融点:70℃)等のジスルフィド類;トリスルフィド類;およびスルホキシド類の中から選択される1種もしくは2種以上からなることが好ましい。
【0061】
また、タック層13bは、タック性および熱分解性を阻害せず、半導体素子2や基板40への汚染や突沸ガス発生の面で問題が生じない範囲で、必要に応じて消泡剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤など公知の添加物を加えることができる。
【0062】
次に、接合フィルム13を製造する方法について説明する。まず、載置台の上に、離型フィルムを載置し、離型フィルムの上にスペーサーを配置する。スペーサーは、例えばSUS等の金属製の板で、中央部に円形の開口部を有している。スペーサーの開口部であって離型フィルムの上に、上述の導電性ペーストを配置し、スキージを用いてスクリーン印刷を行って導電性ペーストを均一に圧延することにより、導電性ペーストが円形のフィルム状になる。その後、離型フィルムおよびスペーサーを除去する。そして、円形のフィルム状に成形された導電性ペーストを予備乾燥させることにより、導電性接合層13aが形成される。予備乾燥の時間は、印刷厚によるが、例えば5〜20分に設定することができる。
【0063】
その後、上述のタック層13bの構成成分の材料を加熱して溶剤中で混錬し、導電性接合層13a上にスキージ法あるいはスプレーコート法等を用いて塗布し、冷却する。その後、加熱乾燥させて溶剤を蒸発させることにより、タック層13bが形成される。
【0064】
なお、本実施形態においては、本発明の接合フィルム13は、粘着フィルム12上に設けられ、全体としてウエハ加工用テープ10を構成するようにしたが、ウエハ加工用テープ10を製造する材料として接合フィルム13単体で取引されてもよく、その場合、接合フィルム13は、両面を保護フィルムにより保護されていることが好ましい。保護フィルムとしては、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、その他、離型処理がされたフィルム等公知のものを使用することができるが、接合フィルム13を保持するのに適した硬さを有するという観点から、ポリエチレンフィルムまたはポリスチレンフィルムを用いることが好ましい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、10〜300μmが好ましい。
【0065】
(粘着フィルム)
粘着フィルム12は、半導体ウエハ1をダイシングする際には接合フィルム13に保持された半導体ウエハ1が剥離しないように十分な粘着力を有し、ダイシング後に個片化された半導体素子2をピックアップする際には容易に接合フィルム13から剥離できるような低い粘着力を有するものである。本実施形態において、粘着フィルム12は、
図1に示すように、基材フィルム12aに粘着剤層12bを設けたものを例示したが、これに限定されるものではなく、ダイシングテープとして使用される公知の粘着フィルムを用いることができる。
【0066】
粘着フィルム12の基材フィルム12aとしては、従来公知のものであれば特に制限することなく使用することができるが、後述するように、本実施形態においては、粘着剤層12bとして、エネルギー硬化性の材料のうち放射線硬化性の材料を使用することから、放射線透過性を有するものを使用する。
【0067】
例えば、基材フィルム12aの材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテン共重合体もしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。また、基材フィルム12aはこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層または複層化されたものでも良い。基材フィルム12aの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定して良いが、50〜200μmが好ましい。
【0068】
本実施形態においては、紫外線などの放射線を粘着フィルム12に照射することにより、粘着剤層12bを硬化させ、粘着剤層12bを接合フィルム13から剥離しやすくしていることから、粘着剤層12bの樹脂には、粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、付加反応型オルガノポリシロキサン系樹脂、シリコンアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリイソプレンやスチレン・ブタジエン共重合体やその水素添加物等の各種エラストマー等やその混合物に、放射線重合性化合物を適宜配合して粘着剤を調製することが好ましい。また、各種界面活性剤や表面平滑化剤を加えても良い。粘着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定して良いが、5〜30μmが好ましい。
【0069】
放射線重合性化合物としては、例えば、光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物や、光重合性炭素−炭素二重結合基を置換基に持つポリマーやオリゴマーが用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等、シリコンアクリレート等、アクリル酸や各種アクリル酸エステル類の共重合体等が適用可能である。
【0070】
また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。なお、粘着剤層12bには、上記の樹脂から選ばれる2種以上が混合されたものでも良い。
【0071】
なお、粘着剤層12bの組成物としては、放射線の照射により硬化する放射線重合性化合物の他、アクリル系粘着剤、光重合開始剤、硬化剤等を適宜配合した組成物を用いることもできる。
【0072】
光重合開始剤を使用する場合、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0073】
粘着フィルム12は、ダイシングテープの製造方法として従来公知の方法により製造することができる。ウエハ加工用テープ10は、粘着フィルム12の粘着剤層12b上に、上述の導電性接合層13の導電性接合層13aを貼合することにより、製造することができる。
【0074】
(ウエハ加工用テープの使用方法)
半導体装置100(
図6参照)の製造工程の中で、ウエハ加工用テープ10は、以下のように使用される。
図2においては、ウエハ加工用テープ10に、半導体ウエハ1とリングフレーム20とが貼り合わされた様子が示されている。
まず、
図2に示すように、粘着フィルム12の粘着剤層12bをリングフレーム20に貼り付け、半導体ウエハ1を接合フィルム13のタック層13bに貼り合わせる。これらの貼り付け順序に制限はなく、半導体ウエハ1を接合フィルム13に貼り合わせた後に粘着フィルム12の粘着剤層12bをリングフレーム20に貼り付けても良い。また、粘着フィルム12のリングフレーム20への貼り付けと、半導体ウエハ1の接合フィルム13への貼り合わせとを、同時に行っても良い。
【0075】
そして、
図3に示すように、半導体ウエハ1のダイシング工程を実施し、次いで、粘着フィルム12にエネルギー線、例えば紫外線を照射する工程を実施する。具体的には、まず、ダイシングブレード21によって半導体ウエハ1と接合フィルム13とをダイシングするため、吸着ステージ22により、ウエハ加工用テープ10を粘着フィルム12面側から吸着支持する。そして、ダイシングブレード21によって半導体ウエハ1と接合フィルム13を半導体素子2単位に切断して個片化し、その後、粘着フィルム12の下面側からエネルギー線を照射する。このエネルギー線照射によって、粘着剤層12bを硬化させてその粘着力を低下させる。なお、エネルギー線の照射に代えて、加熱などの外部刺激によって粘着フィルム12の粘着剤層12bの粘着力を低下させても良い。粘着剤層12bが二層以上の粘着剤層により積層されて構成されている場合、各粘着剤層の内の一層または全層をエネルギー線照射によって硬化させて、各粘着剤層の内の一層または全層の粘着力を低下させても良い。
【0076】
その後、
図4に示すように、ダイシングされた半導体素子2および接合フィルム13を保持した粘着フィルム12をリングフレーム20の周方向に引き伸ばすエキスパンド工程を実施する。具体的には、ダイシングされた複数の半導体素子2および接合フィルム13を保持した状態の粘着フィルム12に対して、中空円柱形状の突き上げ部材30を、粘着フィルム12の下面側から上昇させ、粘着フィルム12をリングフレーム20の周方向に引き伸ばす。
【0077】
エキスパンド工程を実施した後、
図5に示すように、粘着フィルム12をエキスパンドした状態のままで、半導体素子2をピックアップするピックアップ工程を実施する。具体的には、粘着フィルム12の下面側から半導体素子2をピン31によって突き上げるとともに、粘着フィルム12の上面側から吸着冶具32で半導体素子2を吸着することで、個片化された半導体素子2を接合フィルム13とともにピックアップする。
【0078】
そして、ピックアップ工程を実施した後、接合工程を実施する。具体的には、ピックアップ工程で半導体素子2とともにピックアップされた接合フィルム13の導電性接合層13a側をリードフレームやパッケージ基板等の基板40の接合位置に配置する。その後、接合フィルム13を150〜350℃度の温度で加熱処理する。このとき、タック層13bが熱分解するとともに、導電性接合層13a中の有機分散媒(D)が除去され、金属微粒子(P)が、その表面のエネルギーによってバルク状態の金属の融点より低温で凝集して、金属微粒子表面間での結合(焼結)が進み、金属多孔質体からなる導電接続部材50が形成される。加熱処理の際に有機溶剤(S)中に、有機溶剤(SC)が含有されていると、該溶剤が液状及び気体状で還元機能を発揮するので、金属微粒子(P)の酸化が抑制されて焼結が促進される。なお、導電性接合層13a中の有機分散媒(D)として比較的低沸点の有機溶剤(S)が含有されている場合には、加熱処理に先立ち、予め乾燥工程を設けて有機溶剤(S)の少なくとも一部を蒸発、除去しておくことができる。このような加熱処理により、半導体素子2と基板40とが機械的に接合される。なお、接合工程は無加圧で行ってもよく、加圧してもよい。加圧された場合、導電性ペーストとリードフレームやパッケージ基板等との密着性が向上される。
【0079】
導電接続部材50は、金属微粒子(P)同士が面接触し、結合(焼結)して形成された金属多孔質体であるので、適度な弾力性と柔らかさを有し、かつ、導電性も損なわれることがない。金属多孔質体の空隙率が6〜9体積%で、平均空孔径が15〜120nmの範囲である。尚、導電接続部材50における、空隙率、金属微粒子の平均粒子径、及び平均空孔径の測定方法は次の通りである。
【0080】
(1)金属微粒子の平均粒子径の測定方法
金属微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)によって、無作為に10個選択された粒子の断面を観察し、その断面の二次元形状に対する最大内接円の直径を測定し、その平均値を求める。尚、電子顕微鏡の断面写真において、二次元形状が略円形状である場合はその円の直径、略楕円形状である場合はその楕円の短径、略正方形状である場合はその正方形の辺の長さ、略長方形状である場合はその長方形の短辺の長さを測定する。
(2)平均空孔径の測定方法
「平均空孔径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選択された10〜20の空孔径の断面形状を観察して計測し、その平均値とする。
(3)空隙率の測定方法
空隙率の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)により、電子顕微鏡写真を撮り、その断面像の解析で決定することができる。また、空孔サイズが100nmより小さい場合の空隙率はウルトラミクロトーム法により薄片化することで、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して測定する。
【0081】
その後、
図6に示すように、基板40の端子部(図示しない)の先端と半導体素子2上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー60で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。ボンディングワイヤー60としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線などが用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは120℃以上であり、該温度は、好ましくは250℃以下、より好ましくは175℃以下である。また、その加熱時間は数秒〜数分間(例えば、1秒〜1分間)行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0082】
続いて、封止樹脂70により半導体素子2を封止する封止工程を行う。本工程は、基板40に搭載された半導体素子2やボンディングワイヤー60を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂70としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上であり、加熱温度は、好ましくは185℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0083】
必要に応じて、封止物を更に加熱をしてもよい(後硬化工程)。これにより、封止工程で硬化不足の封止樹脂70を完全に硬化できる。加熱温度は適宜設定できる。これにより、半導体装置100が製造される。
【0084】
なお、上述の例では、接合フィルムを半導体素子2の回路が形成されていない裏面と基板40とを接合する場合に用いたが、これに限定されるものではなく、半導体素子2の回路が形成されている表面と基板40を接合(いわゆるフリップチップ実装)する場合に用いてもよい。
【実施例】
【0085】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
(i)銅微粒子ならびに銅微粒子ペーストの調製
水溶液中で銅イオンからの無電解還元により調製された、平均一次粒子径150nmの銅微粒子70質量%と、有機溶剤としてグリセロール40体積%、N−メチルアセトアミド55体積%、及びトリエチルアミン5体積%からなる混合溶剤(有機溶剤(S1)に相当する)95質量%と有機バインダーとしてエチルセルロース(平均分子量1000,000)5質量%からなる有機分散媒30質量%とを混錬して、導電性ペーストを調製した。
【0087】
(ii)銀微粒子ならびに銀微粒子ペーストの調製
平均一次粒径100nmの銀微粒子(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、型番:730777)70質量%と、有機溶剤としてグリセロール40体積%、N−メチルアセトアミド55体積%、及びトリエチルアミン5体積%からなる混合溶剤(有機溶剤(S1)に相当する)95質量%と有機バインダーとしてエチルセルロース(平均分子量1000,000)5質量%からなる有機分散媒30質量%とを混錬して、導電性ペーストを調製した。
【0088】
載置台の上に、離型フィルム(50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)、その上に、350μm厚で中央部に6inchの円形の開口を有するSUS製のスペーサーを配置し、スペーサーの開口部から臨む離型フィルムの上に、上述の導電性ペーストを5.0g載置し、スキージを用いてスクリーン印刷を行って導電性ペーストを圧延し、円形のシート形状に成形した。そして、スペーサーを除去した後、不活性雰囲気中で110℃で15分間予備乾燥を行い、導電性接合層を作製した。
【0089】
また、ポリグリセリン10質量%にメタノール90質量%を混合させ、ポリグリセリンを希釈してタック層組成物を調製した。
【0090】
そして、50℃に温めたホットプレート上で導電性接合層の上に上述のタック層組成物を乾燥後の膜厚が2μmとなるようにスプレーコート法で塗布し、50℃で180秒乾燥させ、タック層を形成した。このようにして、接合フィルムを得た。
【0091】
一方、次のようにして粘着フィルムを作製した。ブチルアクリレート65重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート25重量部、アクリル酸10重量部をラジカル重合させ、2−イソシアネートエチルメタクリレートを滴下反応させて合成した重量平均分子量80万のアクリル共重合体に硬化剤としてポリイソシアネート3重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン1重量部を加えて混合し、粘着剤層組成物とした。作製した粘着剤層組成物を乾燥膜厚が10μmとなるようにフィルム(基材フィルム以外の塗工用フィルム)に塗工し、120℃で3分間乾燥させた。この後、そのフィルムに塗工した粘着剤層組成物を、基材フィルムである厚さ100μmのポリプロピレン−エラストマー(PP:HSBR=80:20のエラストマー)樹脂フィルム上に転写させることで粘着フィルムを作製した。
なお、ポリプロピレン(PP)は、日本ポリケム株式会社製のノバテックFG4を用い、水添スチレンブタジエン(HSBR)はJSR株式会社製のダイナロン1320Pを用いた。また、塗工用フィルムはシリコーン離型処理されたPETフィルム(帝人:ヒューピレックスS−314、厚み25μm)を用いた。
【0092】
その後、上記粘着フィルムの粘着剤層上に上記接合フィルムの導電性接合層を貼合し、実施例に係るウエハ加工用テープを得た。
【0093】
半導体ウエハとして、厚み230μmの半導体ウエハの表面にTi/Au=100nm/200nmのチップ電極層を形成したものを準備し、基板として、厚みが1.2mmの調質が半硬質の無酸素銅板を準備した。上記実施例に係るウエハ加工用テープを80℃に熱したホットプレート上に載置して加熱してタック層の半導体ウエハの表面(チップ電極層側の面)への密着性を高めた状態でタック層に半導体ウエハの表面を貼り付け、その後室温に戻し、タック層を冷却硬化させた状態でダイシング装置(DISCO社製、DAD340(商品名))を用いて、接合フィルムとともに7mm×7mmの半導体チップにダイシングした。その後、高圧水銀灯ランプの紫外線照射機を用いて、粘着フィルムの基材フィルム面側から照射量が200mJ/cm
2となるように紫外線照射を行った。そして、ダイボンダ―(キヤノンマシナリー株式会社製、CPS−6820(商品名))を用いて粘着フィルムをエキスパンドし、その状態で半導体チップを接合フィルムとともにピックアップし、接合フィルムの導電性接合層側を基板上に載置した。
【0094】
その後、上述の半導体チップ、接合フィルム、基板の積層体を、銅微粒子ペーストで形成したものは、300℃で60分間、銀微粒子ペーストで形成したものは、250℃で60分間、それぞれ加熱して、導電性接合層を焼結させ、20個の実装サンプルを作製した。
【0095】
実装サンプルについて、−55℃で30分間と200℃で30分間を1サイクルとする冷熱衝撃試験を行った。100回ごとにサンプルを取り出し、割れ、剥離が無いか目視にて検査した。その後、その後、超音波顕微鏡(日立建機株式会社製、 Mi-Scope(商品名))とプローブ(型式「PQ2−13」、50MHz)を使用して、半導体チップ側から超音波を照射し、反射法で剥離の測定を行った。剥離面積が10%を超えたものを故障と判定した。本実施例に係るウエハ加工用テープの接合フィルムを用いた実装サンプルは、銅微粒子で形成されたもの、銀微粒子で形成されたもの、いずれも故障と判定されるまでのTCT回数が1000回以上と信頼性が高い結果となった。
【0096】
また、本実施例に係るウエハ加工用テープを用いたことにより、半導体ウエハと接合フィルムを同時にダイシングすることができ、さらに、ダイシング後の半導体チップを接合フィルムとともにピックアップして基板に載置することができたため、実装工程を簡易に行うことができた。