(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(D)成分が、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、(A)水素添加スチレンブタジエンゴム及びその誘導体の少なくともいずれか(以下、「(A)成分」とも記す)と、(B)一般式(1)で表される化合物(以下、「(B)成分」とも記す)と、(C)フィラー(以下、「(C)成分」とも記す)と、を含有する。以下、その詳細について説明する。
【0013】
本発明の樹脂組成物に用いられる(A)成分は、水素添加スチレンブタジエンゴム及びその誘導体の少なくともいずれかである。本発明における「水素添加スチレンブタジエンゴム」とは、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体の主鎖の少なくとも一部を水素添加して得られるものを意味する。すなわち、「水素添加スチレンブタジエンゴム」には、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)などが含まれる。また、「水素添加スチレンブタジエンゴムの誘導体」とは、上記の水素添加スチレンブタジエンゴムを無水マレイン酸等の酸成分で変性したものを意味する。
【0014】
(A)成分としては、公知の水素添加スチレンブタジエンゴム及びその誘導体を用いることができる。水素添加スチレンブタジエンゴム及びその誘導体の具体例としては、以下商品名で、クレイトン(登録商標)Gシリーズ(クレイトンポリマージャパン社製)、クレイトン(登録商標)FGシリーズ(クレイトンポリマージャパン社製)、タフテック(登録商標)Hシリーズ(旭化成社製)、タフテック(登録商標)Pシリーズ(旭化成社製)、タフテック(登録商標)Mシリーズ(旭化成社製)などを挙げることができる。また、(A)成分としては、無水マレイン酸変性水素添加スチレンブタジエンゴムが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して10〜90質量%であり、好ましくは35〜60質量%である。(A)成分の含有量が(A)成分及び(B)成分の総量に対して10質量%未満であると、(A)成分の配合効果が得られない。一方、90質量%よりも多いと硬化しない。
【0016】
本発明の樹脂組成物に用いられる(B)成分は、下記一般式(1)で表される化合物である。下記一般式(1)中のX
1及びX
2で表されるアルカンジイル基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、s−ブチレン、t−ブチレン、ペンテン、イソペンテン、t−ペンテン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、イソオクチレン、2−エチルヘキシレン、t−オクチレン、シクロペンタン−ジイル、シクロシキサン−ジイル等が挙げられる。なかでも、X
1及びX
2のうち少なくとも一方がメチレン基であると、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の接着性がより良好であるために好ましい。さらに、X
1及びX
2がいずれもメチレン基であると、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の接着性が特に良好になるとともに、高温及び高湿条件下であっても接着性がより劣化しにくい放熱性硬化物を形成することができるために好ましい。
【0017】
(前記一般式(1)中、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表す)
【0018】
本発明の樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して10〜90質量%であり、40〜65%質量であることが好ましい。(B)成分の含有量が(A)成分及び(B)成分の総量に対して10質量%未満であると、(B)成分の配合効果が得られない。一方、(B)成分の含有量を(A)成分及び(B)成分の総量に対して90質量%よりも多くしても、(B)成分の配合効果は向上しない。
【0019】
一般式(1)で表される化合物の好適例としては、以下に示す構造式で表される化合物No.1〜3が挙げられる。なかでも、(B)成分がトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(化合物No.1)であると、特に優れた接着性を示すことから好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物に用いられる(C)成分はフィラーである。(C)成分としては、公知のフィラーを用いることができる。(C)成分の具体例としては、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、窒化ボロン、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、カーボン等のフィラーが挙げられる。なかでも、窒化アルミニウムフィラーを用いると、特に優れた熱伝導性を示すために好ましい。本発明の樹脂組成物に用いられる(C)成分の粒径は特に限定されず、所望の大きさの硬化物を得るために必要な粒径を選択すればよい。例えば、数nm〜数百μmの粒径を有するフィラーを用いることができる。また、(C)成分の粒径は数nm〜数十μmであることが好ましい。さらに、複数種のフィラーや、異なる粒径のフィラーを組み合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明の樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して100〜500質量部であることが好ましい。(C)成分の含有量が(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して100質量部未満であると、(C)成分の配合効果が得られない。一方、500質量部よりも多いと、硬化物を製造することが困難になる。
【0023】
(C)成分の形状は特に限定されるものではなく、球状、破砕状、角状、鱗片状、板状等の形状を有するフィラーを用いることができる。なかでも、フィラーの形状が球状であると充填率を高くすることができる。このため、得られる硬化物の放熱性をより高めることができるために好ましい。なお、本明細書における「球状」とは、真球状、円粒状、楕円状などの形状を含む概念をいう。より具体的には、個々のフィラーの短径に対する長径の比率が150%以下であることが好ましく、120%以下であることがさらに好ましく、110%以下であることが特に好ましい。本発明の樹脂組成物に用いられる(C)成分は、その90質量%以上が球状フィラーであることが好ましく、95質量%以上が球状フィラーであることがさらに好ましい。球状フィラーを多く含む(C)成分を用いると、シリコンウェハーやアルミウェハー等に代表される基体へ転写した際の密着性により優れるために好ましい。特に、実質的に球状フィラーのみからなる(C)成分を用いると、シリコンウェハーやアルミウェハー等に代表される基体へ転写した際の密着性がさらに高くなるために好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、さらに(D)シランカップリング剤(以下、「(D)成分」とも記す)を含有することが好ましい。(D)成分の種類は特に限定されず、公知のシランカップリング剤を用いることができる。(D)成分の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのなかでも、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いると、高温かつ高湿な条件下であってもシリコンウェハー等の基体に対する接着性の劣化を防ぐ効果がより大きくなるために好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。(D)成分の含有量が(A)成分及び(B)成分の総量に対して0.01質量%未満であると、(D)成分の配合効果が得られなくなる場合がある。一方、(D)成分の含有量を(A)成分及び(B)成分の総量に対して20質量%よりも多くしても、(D)成分の配合効果は向上しなくなる。
【0026】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加物を含有させることができる。このような添加物としては、例えば、ラジカル重合開始剤;エポキシ樹脂に使用される硬化剤;天然ワックス類、合成ワックス類、長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤;酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤;ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、ブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤;リン系難燃剤;チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤;染料や顔料等の着色剤;酸化安定剤;光安定剤;耐湿性向上剤;チキソトロピー付与剤;希釈剤;消泡剤;各種の樹脂(但し、(A)成分を除く);粘着付与剤;帯電防止剤;滑剤;紫外線吸収剤;アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類、芳香族系溶剤等の有機溶剤等を挙げることができる。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることができる。ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ(t−ブチルーパーオキシ)ブチルバレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類の他;ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4'−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、テトラメチルチラウムジスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4'−イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2'−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノンとミヒラーズケトンの併用、ヘキサアリールビイミダゾールとメルカプトベンズイミダゾールの併用、チオキサントンとアミンの併用、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0028】
また、ラジカル重合開始剤としては、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、国際公開第2006/018973号に記載の化合物等を用いることもできる。なかでも、ラジカル重合開始剤としては過酸化物類が好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂に使用される硬化剤としては、潜在性硬化剤、酸無水物、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物、及びカチオン系光開始剤などが挙げられる。
【0030】
潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミンなどが挙げられる。これらの潜在性硬化剤を用いると、取り扱いが容易な一液型の硬化性組成物とすることができるために好ましい。
【0031】
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
【0032】
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの脂環族ポリアミン;m−キシレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0033】
ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0034】
また、潜在性硬化剤の一例であるイミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類;これらのイミダゾール類と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
【0035】
本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物(放熱性硬化物)は良好な熱伝導性を示すものである。また、樹脂組成物の組成を適宜選択することによって、塗布性、低タック性、硬化前の塗膜の可撓性、硬化後の硬化物の可撓性、及び基材への密着性等を付与することができる。したがって、本発明の放熱成硬化物は、プリント配線基板、半導体封止絶縁材、パワー半導体、LED照明、LEDバックライト、パワーLED、太陽電池等の電気・電子分野の種々の部材の樹脂基材として広く応用することができる。具体的には、プリプレグ、封止剤、積層基板、塗布性の接着剤、接着シート等の硬化性成分、及び各種塗料の硬化性成分として有用である。
【0036】
本発明の放熱性硬化物は、上記の本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物である。放熱性硬化物の形状は特に限定されないが、例えば、シート状、フィルム状、板状などが挙げられる。シート状の放熱性硬化物は、例えば、キャリアフィルムや金属箔等の支持体上に樹脂組成物を塗布して形成した塗布層を硬化させることによって製造することができる。また、樹脂組成物からなる塗布層を支持体から基体に転写した後に硬化させることでも、シート状の放熱性硬化物を製造することができる。基体としては、シリコンウェハーやアルミウェハー等が挙げられる。基体の形状としては、シート状、フィルム状、板状などが挙げられる。
【0037】
塗布層(樹脂組成物)は、光照射や加熱により硬化させることができる。本発明の樹脂組成物は、200℃以下の温度、より具体的には150℃程度の温度で加熱することで、可撓性が良好であるとともに、高温及び高湿条件下であっても接着性が劣化しにくい放熱性硬化物とすることができる。有機溶剤を含有する樹脂組成物を硬化させると、有機溶剤を含有する放熱性硬化物が得られる場合と、有機溶剤が揮発して実質的に残留していない(含有しない)放熱性硬化物が得られる場合がある。本発明の放熱性硬化物には、有機溶剤を含有するものと、有機溶剤を実質的に含有しないものの両方が含まれる。
【0038】
本発明の放熱性硬化物は、周知の方法を適用することによって製造することができる。例えば、シート状の放熱性硬化物を製造する場合には、各種塗工装置を使用して支持体上に樹脂組成物を塗工してもよく、スプレー装置を使用して支持体上に樹脂組成物を噴霧して塗工してもよい。塗工装置としては、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷装置などを用いることができる。また、刷毛塗りによって樹脂組成物を支持体上に塗工してもよい。
【0039】
シート状の放熱性硬化物を形成する際に用いる支持体としては、取扱いが容易なものを選択することが好ましい。また、シート状の放熱性硬化物を使用時する際には支持体から剥離させるため、放熱性硬化物の剥離が容易な支持体を用いることが好ましい。支持体としては、キャリアフィルムが好ましい。キャリアフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;フッ素系樹脂;ポリイミド樹脂などの耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムが好適である。
【0040】
また、金属箔を支持体として使用する場合には、放熱性硬化物の形成後に金属箔を剥離してもよいし、金属箔をエッチングしてもよい。金属箔としては、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、鉄、鉄系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金等の金属箔が好適に選択される。また、キャリア箔付き極薄金属箔を支持体として用いてもよい。
【0041】
本発明の放熱性硬化物の形状がシート状である場合、シート状の放熱性硬化物の厚さは用途により適宜設定すればよく、通常20〜150μmの範囲である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明の樹脂組成物をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1〜3)
以下に示す配合にしたがって樹脂組成物No.1〜3(実施例1〜3)を調製した。
【0044】
[樹脂組成物No.1]
・無水マレイン酸変性水素添加スチレンブタジエンゴム 50質量部
(クレイトン社製、商品名「FG1901」)
・化合物No.1 50質量部
(新中村化学工業社製、商品名「A−DCP」)
・窒化アルミニウムフィラー 500質量部
(99質量%が球状、粒径1〜5μm)
・イミダゾール化合物(潜在性硬化剤) 5質量部
(日本曹達社製、商品名「HIPA−2P4MHZ」、5−ヒドロキシイソフタル酸により包接された2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
・有機過酸化物 5質量部
(日油社製、商品名「パーブチルP」)
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1質量部
【0045】
[樹脂組成物No.2]
・無水マレイン酸変性水素添加スチレンブタジエンゴム 50質量部
(クレイトン社製、商品名「FG1901」)
・化合物No.1 50質量部
(新中村化学工業社製、商品名「A−DCP」)
・窒化アルミニウムフィラー 450質量部
(99質量%が球状、粒径1〜5μm)
・有機過酸化物 2質量部
(日油社製、商品名「パーブチルP」)
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1質量部
【0046】
[樹脂組成物No.3]
・無水マレイン酸変性水素添加スチレンブタジエンゴム 40質量部
(クレイトン社製、商品名「FG1901」)
・化合物No.1 60質量部
(新中村化学工業社製、商品名「A−DCP」)
・窒化アルミフィラー(99質量%が球状、粒径1〜5μm) 450質量部
・有機過酸化物 2質量部
(日油社製、商品名「パーブチルP」)
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1重量部
【0047】
(比較例1)
以下に示す配合にしたがって比較樹脂組成物No.1(比較例1)を調製した。
【0048】
[比較樹脂組成物No.1]
・無水マレイン酸変性水素添加スチレンブタジエンゴム 40質量部
(クレイトン社製、商品名「FG1901」)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂 20質量部
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 40質量部
(大日本インキ化学工業製、商品名「HP−7200」)
・窒化アルミニウムフィラー 500質量部
(99質量%が球状、粒径1〜5μm)
・イミダゾール化合物(潜在性硬化剤) 5質量部
(日本曹達社製、商品名「HIPA−2P4MHZ」、5−ヒドロキシイソフタル酸により包接された2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 1質量部
【0049】
<硬化物の製造>
(実施例4〜6)
樹脂組成物No.1〜3をキシレンで希釈して、固形分濃度約50質量%の評価用サンプルNo.1〜3を得た。評価用サンプルNo.1〜3を各々厚さ35μmの銅箔マット面上に乾燥後の厚さが20〜30μmとなるように塗布した後、大気条件下、100℃で10分加熱して溶媒を乾燥除去して接着前駆体層を得た。真空ラミネータを使用して、120℃、60秒、0.7MPaの条件下で厚さ1mmのAl板の上に接着前駆体層を真空熱ラミネートした。大気条件下、150℃で1時間加熱して樹脂を硬化させて硬化物No.1〜3(実施例4〜6)を得た。樹脂材料熱抵抗測定装置(日立テクノロジーアンドサービス社製)を使用し、ASTM D5470法によって得られた硬化物No.1〜3の熱伝導率を測定した。その結果、硬化物No.1〜3の熱伝導率は1.0〜3.0W/(m・K)以上であり、いずれの硬化物も十分な熱伝導性を有することが確認された。
【0050】
(比較例2)
比較樹脂組成物No.1をキシレンで希釈して、固形分濃度約50質量%の比較用サンプルNo.1を得た。比較用サンプルNo.1を厚さ35μmの銅箔マット面上に乾燥後の厚さが20〜30μmとなるように塗布した後、大気条件下、100℃で10分加熱して溶媒を乾燥除去して接着前駆体層を得た。真空ラミネータを使用して、120℃、60秒、0.7MPaの条件下で厚さ1mmのAl板の上に接着前駆体層を真空熱ラミネートした。大気条件下、150℃で1時間加熱して樹脂を硬化させて比較硬化物No.1(比較例2)を得た。
【0051】
<評価>
(密着性試験)
硬化物No.1〜3及び比較硬化物No.1を以下に示す条件(1)及び(2)でそれぞれ保存した。保存後、銅箔の90°ピール強度を測定して硬化物の密着性を評価した。90°ピール強度の測定結果を表2に示す。
条件(1):23℃、50%RH、24時間
条件(2):121℃、100%RH、96時間
【0052】
【0053】
表1に示すように、硬化物No.1〜3については、条件(1)で保存後のピール強度と条件(2)で保存後のピール強度がほぼ同一であり、温度及び湿度が変化しても密着性が劣化しないことが判明した。これに対して、比較硬化物No.1は硬化物No.1〜3よりもピール強度が低く、さらに、条件(2)で保存後に密着性が大幅に劣化することが判明した。