(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被処理体に対して前記第2の溶剤を高温で供給することにより前記第1の溶剤および前記第2の溶剤を加熱することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【背景技術】
【0002】
基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)などの表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程において、薬液などの洗浄液による液処理工程にてウエハの表面に付着した液体などを除去する際に、液体の表面張力によりウエハ上に形成されたパターンが倒壊するいわゆるパターン倒れと呼ばれる現象が問題となっている。
【0003】
こうしたパターン倒れの発生を抑えつつウエハ表面に付着した液体を除去する手法として超臨界状態の流体を用いる方法が知られている。超臨界状態の流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を抽出する能力も高いことに加え、超臨界状態の流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、ウエハ表面に付着した液体を超臨界状態の流体と置換し、しかる後、超臨界状態の流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0004】
例えば特許文献1では、液体と超臨界状態の流体との置換性の高さや、超臨界乾燥室への水分の持ち込み抑制や、基板を処理容器に搬入するまでの乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤の揮発、及び処理容器内におけるフッ素含有有機溶剤の分解を抑える観点から、乾燥防止用の液体、及び超臨界状態の流体の双方にフッ素含有有機溶剤(特許文献1では沸点が異なるフッ素含有有機溶剤)を用いている。また、フッ素含有有機溶剤は、難燃性である点においても乾燥防止用の液体に適している。
【0005】
ところで、ウエハ表面に付着した液体を超臨界状態の流体に置換するため、置換性の高さを考慮して複数の種類(例えば2以上)のフッ素含有有機溶剤が用いられている。しかしながらこのようなフッ素含有有機溶剤は高価であり、使用すべきフッ素含有有機溶剤の種類を減らすことが求められている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の実施の形態>
<基板処理装置>
まず本発明による基板処理装置について説明する。基板処理装置の一例として、基板であるウエハW(被処理体)に各種処理液を供給して液処理を行う液処理ユニット2と、液処理後のウエハWに付着している乾燥防止用の液体を超臨界流体(超臨界状態の流体)と接触させて除去する超臨界処理ユニット3とを備えた液処理装置1について説明する。
【0014】
図1は液処理装置1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とする。液処理装置1では、載置部11にFOUP100が載置され、このFOUP100に格納された例えば直径300mmの複数枚のウエハWが、搬入出部12及び受け渡し部13を介して後段の液処理部14、超臨界処理部15との間で受け渡され、液処理ユニット2、超臨界処理ユニット3内に順番に搬入されて液処理や乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる。図中、121はFOUP100と受け渡し部13との間でウエハWを搬送する第1の搬送機構、131は搬入出部12と液処理部14、超臨界処理部15との間を搬送されるウエハWが一時的に載置されるバッファとしての役割を果たす受け渡し棚である。
【0015】
液処理部14及び超臨界処理部15は、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハWの搬送空間162を挟んで設けられている。前方側から見て搬送空間162の左手に設けられている液処理部14には、例えば4台の液処理ユニット2が前記搬送空間162に沿って配置されている。一方、搬送空間162の右手に設けられている超臨界処理部15には、例えば2台の超臨界処理ユニット3が、前記搬送空間162に沿って配置されている。
【0016】
ウエハWは、搬送空間162に配置された第2の搬送機構161によってこれら各液処理ユニット2、超臨界処理ユニット3及び受け渡し部13の間を搬送される。第2の搬送機構161は、基板搬送ユニットに相当する。ここで液処理部14や超臨界処理部15に配置される液処理ユニット2や超臨界処理ユニット3の個数は、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、液処理ユニット2、超臨界処理ユニット3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、これら液処理ユニット2や超臨界処理ユニット3の配置数などに応じて最適なレイアウトが選択される。
【0017】
液処理ユニット2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の液処理ユニット2として構成され、
図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成する液処理ユニット用チャンバーとしてのアウターチャンバー21と、このアウターチャンバー内に配置され、ウエハWをほぼ水平に保持しながらウエハWを鉛直軸周りに回転させるウエハ保持機構23と、ウエハ保持機構2を側周側から囲むように配置され、ウエハWから飛散した液体を受け止めるインナーカップ22と、ウエハWの上方位置とここから退避した位置との間を移動自在に構成され、その先端部にノズル241が設けられたノズルアーム24と、を備えている。
【0018】
ノズル241には、各種の薬液を供給する処理液供給部201、ヘキサン等のフッ素を含有しない有機溶剤(第1の溶剤)の供給を行う有機溶剤供給部(第1の溶剤供給部)202、およびウエハWの表面に乾燥防止用の液体であるフッ素含有有機溶剤(第2の溶剤)の供給を行うフッ素含有有機溶剤供給部203(第2の溶剤供給部)が接続されている。フッ素含有有機溶剤(第2の溶剤)は、後述の超臨界処理に用いられる超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤とは、異なるものが用いられ、またヘキサン等のフッ素を含有しない有機溶剤(第1の溶剤)と、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(第2の溶剤)と、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤との間には、その沸点や臨界温度において予め決められた関係のあるものが採用されているが、その詳細については後述する。
【0019】
また、アウターチャンバー21には、FFU(Fan Filter Unit)205が設けられ、このFFU205から清浄化された空気がアウターチャンバー21内に供給される。さらにアウターチャンバー21には、低湿度N
2ガス供給部206が設けられ、この低湿度N
2ガス供給部206から低湿度N
2ガスがアウターチャンバー21内に供給される。
【0020】
また、ウエハ保持機構23の内部にも開口231aを有する薬液供給路231を形成し、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄を行ってもよい。この場合、薬液供給路231を用いて、後述のように高温の脱イオン水(DeIonized Water:DIW)をウエハWの裏面に供給することもできる。アウターチャンバー21やインナーカップ22の底部には、内部雰囲気を排気するための排気口212やウエハWから振り飛ばされた液体を排出するための排液口221、211が設けられている。
【0021】
液処理ユニット2にて液処理を終えたウエハWに対しては、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(第2の溶剤)が供給され、ウエハWはその表面が乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤で覆われた状態で、第2の搬送機構161によって超臨界処理ユニット3に搬送される。超臨界処理ユニット3では、ウエハWを超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の超臨界流体と接触させて乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤を除去し、ウエハWを乾燥する処理が行われる。以下、超臨界処理ユニット3の構成について
図3、
図4を参照しながら説明する。
【0022】
超臨界処理ユニット3は、ウエハW表面に付着した乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤を除去する処理が行われる超臨界処理ユニット用容器としての処理容器3Aと、この処理容器3Aに超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の超臨界流体を供給する超臨界流体供給部4A(超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤供給部)とを備えている。
【0023】
図4に示すように処理容器3Aは、ウエハWの搬入出用の開口部312が形成された筐体状の容器本体311と、処理対象のウエハWを横向きに保持することが可能なウエハトレイ331と、このウエハトレイ331を支持すると共に、ウエハWを容器本体311内に搬入したとき前記開口部312を密閉する蓋部材332とを備えている。
【0024】
容器本体311は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な、200〜10000cm3程度の処理空間が形成された容器であり、その上面には、処理容器3A内に超臨界流体を供給するための超臨界流体供給ライン351と、処理容器3A内の流体を排出するための開閉弁342が介設された排出ライン341(排出部)とが接続されている。また、処理容器3Aには処理空間内に供給された超臨界状態の処理流体から受ける内圧に抗して、容器本体311に向けて蓋部材332を押し付け、処理空間を密閉するための不図示の押圧機構が設けられている。
【0025】
容器本体311には、例えば抵抗発熱体などからなる加熱部であるヒーター322と、処理容器3A内の温度を検出するための熱電対などを備えた温度検出部323とが設けられており、容器本体311を加熱することにより、処理容器3A内の温度を予め設定された温度に加熱し、これにより内部のウエハWを加熱することができる。ヒーター322は、給電部321から供給される電力を変えることにより、発熱量を変化させることが可能であり、温度検出部323から取得した温度検出結果に基づき、処理容器3A内の温度を予め設定された温度に調節する。
【0026】
超臨界流体供給部4Aは、開閉弁352が介設された超臨界流体供給ライン351の上流側に接続されている。超臨界流体供給部4Aは、処理容器3Aへ供給される超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の超臨界流体を準備する配管であるスパイラル管411と、このスパイラル管411に超臨界流体の原料である超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の液体を供給するため超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤供給部414と、スパイラル管411を加熱して内部の超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤を超臨界状態にするためのハロゲンランプ413と、を備えている。
【0027】
スパイラル管411は例えばステンレス製の配管部材を長手方向に螺旋状に巻いて形成された円筒型の容器であり、ハロゲンランプ413から供給される輻射熱を吸収しやすくするために例えば黒色の輻射熱吸収塗料で塗装されている。ハロゲンランプ413は、スパイラル管411の円筒の中心軸に沿って411の内壁面から離間して配置されている。
【0028】
ハロゲンランプ413の下端部には、電源部412が接続されており、電源部412から供給される電力によりハロゲンランプ413を発熱させ、主にその輻射熱を利用してスパイラル管411を加熱する。電源部412は、スパイラル管411に設けられた不図示の温度検出部と接続されており、この検出温度に基づいてスパイラル管411に供給する電力を増減し、予め設定した温度にスパイラル管411内を加熱することができる。
【0029】
またスパイラル管411の下端部からは配管部材が伸びだして超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の受け入れライン415を形成している。この受け入れライン415は、耐圧性を備えた開閉弁416を介して超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤供給部414に接続されている。超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤供給部414は、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤を液体の状態で貯留するタンクや送液ポンプ、流量調節機構などを備えている。
【0030】
以上に説明した構成を備えた液処理ユニット2や超臨界処理ユニット3を含む液処理装置1は、
図1〜
図3に示すように制御部5に接続されている。制御部5は図示しないCPUと記憶部5aとを備えたコンピュータからなり、記憶部5aには液処理装置1の作用、即ちFOUP100からウエハWを取り出して液処理ユニット2にて液処理を行い、次いで超臨界処理ユニット3にてウエハWを乾燥する処理を行ってからFOUP100内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0031】
次に、液処理ユニット2にてウエハWの表面に供給される第1の溶剤としてのヘキサン等のフッ素を含有しない有機溶剤、第2の溶剤としての乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤、および乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤をウエハWの表面から除去するために、処理容器3Aに超臨界流体の状態で供給される超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤について説明する。このうち乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤、および超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤は、いずれも炭化水素分子中にフッ素原子を含むフッ素含有有機溶剤である。
【0032】
ヘキサン等のフッ素を含有しない有機溶剤(第1の溶剤)、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(第2の溶剤)および超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の組み合わせの例を(表1)に示す。
【表1】
【0033】
(表1)の分類名中、PFC(PerFluoro Carbon)は、炭化水素の全ての水素をフッ素に置換したフッ素含有有機溶剤を示し、PFE(PerFluoro Ether)は、分子内にエーテル結合をもつ炭化水素の全ての水素をフッ素に置換したフッ素含有有機溶剤である。
【0034】
これらのフッ素含有有機溶剤のうち、1つのフッ素含有有機溶剤を超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤として選んだとき、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤には、この超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤よりも沸点の高い(蒸気圧が低い)ものが選ばれる。これにより、乾燥防止用の液体として超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤を採用する場合と比較して、液処理ユニット2から超臨界処理ユニット3へと搬送される間に、ウエハWの表面からの揮発するフッ素含有有機溶剤量を低減することができる。
【0035】
乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤の沸点(沸点は標準沸点)はヘキサンの沸点より高い100℃以上(例えば174℃)であることが好ましい。沸点が100℃以上の乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤は、ウエハW搬送中の揮発量がより少ないので、例えば直径300mmのウエハWの場合は0.01〜5cc程度、直径450mmのウエハWの場合は0.02〜10cc程度の少量のフッ素含有有機溶剤を供給するだけで、数十秒〜10分程度の間、ウエハWの表面が濡れた状態を維持できる。参考として、IPAにて同様の時間だけウエハWの表面を濡れた状態に保つためには10〜50cc程度の供給量が必要となる。ところでヘキサンと乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤、例えばFC43は、常温(5〜35℃)(JISZ8703)では溶解しないが、常温より高い温度(例えば60℃)まで加熱することにより互いに溶解(溶解温度)する。
【0036】
また、超臨界流体として利用される超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤として、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤よりも沸点が低いものを選ぶことにより、低温で超臨界流体を形成することが可能なフッ素含有有機溶剤を利用することが可能となり、フッ素含有有機溶剤の分解によるフッ素原子の放出が抑えられる。
【0037】
<本実施の形態の作用>
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について
図5を用いて説明する。
本実施の形態においては、フッ素を含有しない有機溶剤(第1の溶剤)としてヘキサンを用い、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(第2の溶剤)としてFC43を用い、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤としてFC72を用いた場合の作用について説明する。
【0038】
はじめに、FOUP100から取り出されたウエハWが搬入出部12及び受け渡し部13を介して液処理部14のアウターチャンバー21内に搬入され、液処理ユニット2のウエハ保持機構23に受け渡される。次いで、回転するウエハWの表面に処理液供給部201から各種の処理液が供給されて液処理が行われる。
【0039】
図5に示すように液処理は、例えば酸性の薬液であるDHF(希フッ酸)によるパーティクルや有機性を汚染物質を除去するWet洗浄、およびリンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄が行われる。
【0040】
薬液による液処理やリンス洗浄を終えたら、回転するウエハWの表面にまず有機溶剤供給部(第1の溶剤供給部)202からIPA(水溶性の有機溶剤)を供給し、ウエハWの表面のパターンWP間及び裏面に残存しているDIWをIPAと置換する(
図5参照)。ウエハWの表面のパターンWP間の液体が十分にIPAと置換されたら、有機溶剤供給部202からのIPAの供給が停止し、代わりに有機溶剤供給部202からウエハWの表面へヘキサン(第1の溶剤)が供給され、このようにしてウエハWのパターンWP間のIPAがヘキサンと置換される。次にフッ素含有有機溶剤供給部(第2の溶剤供給部)203から回転するウエハWの表面に乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)を供給した後、ウエハWの回転を停止する。回転停止後のウエハWは乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤によってその表面のパターンWPが覆われた状態となっている。この場合、IPAはDIWとの親和性が高いため、DIWをIPAにより置換することができ、またヘキサンはIPAとの親和性が高いためIPAはヘキサンにより置換される。他方、FC43はヘキサンと常温(5〜30℃)では溶解することはない。このためヘキサンはFC43中において、FC43と混じることなく、とりわけウエハWのパターンWP間に存在する。
【0041】
ところで、フッ素含有有機溶剤供給部203からウエハWの表面に乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)を供給する間、ウエハ保持機構23の薬液供給路231から開口231aを介して高温(80℃)のDIWがウエハWの裏面に供給される。このようにウエハWの裏面に高温のDIWを供給することにより、ウエハWの表面に供給されたヘキサンとFC43が上記の溶解温度(60℃)以上まで加熱され、ヘキサンとFC43が互いに溶解する。そしてフッ素含有有機溶剤供給部203からウエハWの表面にFC43を更に供給することにより、ウエハW上のヘキサン、とりわけパターンWP間のヘキサンがFC43に徐々に置換されていく。
【0042】
図5に示すように液処理を終えたウエハWは、第2の搬送機構161によって液処理ユニット2から搬出され、超臨界処理ユニット3へと搬送される。このとき、ウエハW上のヘキサンは乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤により置換され、とりわけパターンWP間にフッ素含有有機溶剤が残る。なお、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤として沸点の高い(蒸気圧の低い)フッ素含有有機溶剤を利用しているので、搬送される期間中にウエハWの表面から揮発するフッ素含有有機溶剤の量を少なくすることができる。
【0043】
超臨界処理ユニット3の処理容器3AにウエハWが搬入される前のタイミングにおいて、超臨界流体供給部4Aは、開閉弁416を開いて超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤供給部414から超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の液体を所定量送液してから開閉弁352、416を閉じ、スパイラル管411を封止状態とする。このとき、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の液体はスパイラル管411の下方側に溜まっており、スパイラル管411の上方側には超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤を加熱したとき、蒸発した超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤が膨張する空間が残されている。
【0044】
このようにして、液処理を終え、その表面が乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤で覆われたウエハWは、超臨界処理ユニット3の処理容器3Aのウエハトレイ331上に載置され、蓋部材332が閉じられて超臨界処理ユニット3内に搬入される。
【0045】
次に超臨界処理ユニット3の処理容器3A内において、ウエハWがヒーター322により加熱され、このことにより乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)が加熱される。
【0046】
この状態で、電源部412からハロゲンランプ413へ給電を開始し、ハロゲンランプ413を発熱させると、スパイラル管411の内部が加熱され超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤が蒸発し、さらに昇温、昇圧されて臨界温度、臨界圧力に達して超臨界流体となる。
【0047】
スパイラル管411内の超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤は、処理容器3Aに供給された際に、臨界圧力、臨界温度を維持することが可能な温度、圧力まで昇温、昇圧される。
【0048】
その後、蓋部材332が閉じられて密閉状態とした状態で、ウエハWの表面の乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)が乾燥する前に超臨界流体供給ライン351の開閉弁352を開いて超臨界流体供給部41から超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)の超臨界流体を供給する。
【0049】
超臨界流体供給部4Aから超臨界流体が供給され、処理容器3A内が超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)の超臨界流体雰囲気となったら、超臨界流体供給ライン351の開閉弁352を閉じる。超臨界流体供給部4Aは、ハロゲンランプ413を消し、不図示の脱圧ラインを介してスパイラル管411内の流体を排出し、次の超臨界流体を準備するために超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤供給部414から液体の超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)を受け入れる態勢を整える。
【0050】
一方、処理容器3Aは、外部からの超臨界流体の供給が停止され、その内部が超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)の超臨界流体で満たされて密閉された状態となっている。このとき、処理容器3A内のウエハWの表面に着目すると、パターンWP内に入り込んだ乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)の液体に、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)の超臨界流体が接している。この場合、処理容器3A内は、温度200℃、圧力2MPaとなっている。
【0051】
このように乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤の液体と、超臨界流体とが接した状態を維持すると、互いに混じりやすい乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)、および超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)同士が混合されて、パターンWP間の液体が超臨界流体と置換される。やがて、ウエハWの表面から乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤の液体が除去され、パターンWPの周囲には、乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤と超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤との混合物の超臨界流体の雰囲気が形成される。このとき、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の臨界温度に近い比較的低い温度で乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤の液体を除去できるので、フッ素含有有機溶剤が殆ど分解せず、パターンなどにダメージを与えるフッ化水素の生成量も少ない。
【0052】
こうして、ウエハWの表面から乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤の液体が除去されるのに必要な時間が経過したら、排出ライン341の開閉弁342を開いて処理容器3A内からフッ素含有有機溶剤を排出する。このとき、例えば処理容器3A内が超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の臨界温度以上に維持されるようにヒーター322からの給熱量を調節する。この結果、超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤の臨界温度よりも高い沸点を持つ乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤を液化させずに、混合流体を超臨界状態または気体の状態で排出でき、流体排出時のパターン倒れの発生を避けることができる。
【0053】
超臨界流体による処理を終えたら、液体が除去され乾燥したウエハWを第2の搬送機構161にて取り出し、受け渡し部13および搬入出部12を介してFOUP100に格納し、当該ウエハWに対する一連の処理を終える。液処理装置1では、FOUP100内の各ウエハWに対して、上述の処理が連続して行われる。
【0054】
以上のように本実施の形態によれば、アウターチャンバー21内において、ウエハWにDIWを供給した後、ウエハWにIPAを供給することにより、DIWをIPAによって置換することができ、さらにこのIPAに対してヘキサンを供給することによりIPAとヘキサンに置換することができる。次にこのようにして置換されたヘキサンに対して乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)を供給する。この場合、ヘキサンとFC43は常温で溶解することはないが、ヘキサンとFC43を常温より高い溶解温度以上まで加熱することにより、ヘキサンとFC43は互いに溶解し、ヘキサンが徐々にFC43により置換される。その後ウエハWに超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤(FC72)を供給することにより、FC43とFC72を混合させて、ウエハWに対して超臨界処理を施すことにより、FC43とFC72をウエハWの表面からパターンなどにダメージを与えることなく、効果的に除去することができる。
【0055】
このように、IPAが供給されたウエハW上に、IPAとFC43の双方に親和性をもつ別個のフッ素含有有機溶剤を供給してウエハW上のIPAからFC43まで順次置換する必要はなく、ウエハWにIPAを供給した後、ヘキサンとFC43を順次供給しながらヘキサンとFC43を溶解温度以上まで加熱することにより、ヘキサンとFC43を溶解させてヘキサンをFC43により置換することができる。このようにIPAとFC43の双方に親和性をもつ別個のフッ素含有有機溶剤を用いる必要はなく、高価なフッ素含有有機溶剤の種類を可能な限り抑えることができる。
【0056】
<変形例>
次に本発明の変形例について説明する。
本変形例は、ウエハWに供給された乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)を加熱する方法が異なるのみであり、他の構成は
図1乃至
図5に示す上記実施の形態と略同一である。
【0057】
すなわち、上記実施の形態において、ウエハWの裏面を高温のDIWで加熱することによりヘキサンと乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)を溶解させてヘキサンをFC43により置換する例を示したが、これに限らずウエハWに高温、例えば60℃以上に加熱された乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)を供給することにより、ヘキサンと乾燥防止用のフッ素含有有機溶剤(FC43)とを溶解させて、ヘキサンをFC43により置換してもよい(
図5参照)。
【0058】
なお、上述した実施の形態においては、外部から超臨界流体が超臨界処理ユニット3に供給される例を示したが、これに限らず超臨界処理ユニット3に気体または液体の超臨界処理用のフッ素含有有機溶剤を供給し、その後、超臨界処理ユニット3内で超臨界状態にしてもよい。