【課題を解決するための手段】
【0013】
定義
本明細書で用いられる場合、「LAMP1」は、「リソソーム結合膜タンパク質1」を指し、LAMPA、CD107aまたはLGP120としても知られる糖タンパク質ファミリーのメンバーである。LAMP1は、以下の実施例5に提示される非腫瘍試料と比較したヒト腫瘍試料に関するタンパク質発現データによれば、結腸腺癌、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、胃、膵臓および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍の細胞表面で発現される。
【0014】
ヒト遺伝子LAMP1は、染色体13q34(113,951,469〜113,977,441)に見出され、全長26,273kbである。
【0015】
シグナルペプチドをコードする配列を含む完全長ヒトLAMP1をコードするcDNAの参照配列は、受託番号NM_005561.3(配列番号23)の下でGeneBankデータベースから入手可能であり、シグナルペプチド(位置1〜28)を含む代表的なタンパク質配列はNP_005552.3(配列番号24)の下で入手可能である。ヒトLAMP1をコードする遺伝子のエクソン4に対応する、配列番号24の位置136〜188のアミノ酸を失うLAMP1の1つの潜在的なアイソフォームが報告されている。少なくとも60人の個体の白人集団において、同義のSNPは同定されていない。
【0016】
そのオルソログについて、ヒトLAMP1は、マウスLAMP1(NP_034814、配列番号25)およびラットLAMP1(NP_036989、配列番号26)それぞれと66%の配列同一性を有し、ヒトおよびアカゲザル(Macaca mulatta)LAMP1(XP_001087801、配列番号27)は96%の配列同一性を有する。
【0017】
アカゲザルに由来するLAMP1の配列(配列番号27)およびカニクイザルの予測される配列(配列番号39)は99%同一であり、前記配列はアカゲザルLAMP1(配列番号27)の位置11の1つのさらなるロイシンで、すなわち、シグナルペプチドが異なる。従って、アカゲザルおよびカニクイザルに由来する成熟LAMP1の配列は同一である。
【0018】
LAMP1ファミリーの最も近いメンバーは、LAMP2(P13473、ヒトLAMP2、可溶性LAMP2タンパク質、配列番号40)である。ヒトLAMP1とLAMP2タンパク質は、約36%の配列同一性を有し、いくつかの保存されたグリコシル化部位を含む。
【0019】
「ドメイン」は、一般的に配列相同性に基づいて定義されるタンパク質の任意の領域であってもよく、特異的構造的または機能的実体と関連することが多い。LAMP1のドメイン構造は、今までのところ完全には刊行されていない。
【0020】
ヒトLAMP1は、417のアミノ酸残基と切断性シグナルペプチドに対応する28のアミノ末端残基からなる。LAMP1の主要ポーションはリソソームの内腔側に存在し、N−グリカンによって重度にグリコシル化されている。LAMP1は、18の潜在的なN−グリコシル化部位を含有し、そのうちの5つはポリ−N−アセチルラクトサミングリカンで占められる(Carlsson,S.R.およびFukuda,M.、1990、J.Biol.Chem.265(33):20488〜20495頁)。それらは、多くがO−グリカンに連結されるプロリンおよびセリンに富むヒンジ様構造により隔てられる2つのドメインにクラスター化される。LAMP1は、COOH末端近くの24の疎水性アミノ酸からなる1つの膜貫通ドメインを有し、COOH末端に11のアミノ酸残基から構成される短い細胞質セグメントを含有する。
【0021】
LAMP1の2つのドメイン、「第1の内腔ドメイン」および「第2の内腔ドメイン」の命名法は、その元々の局在、リソソーム内でのLAMP1の向きに基づく。それにも拘わらず、LAMP1が細胞表面で発現される場合、2つの内腔ドメインは細胞外ドメインになり、従って、細胞表面に露出される。従って、一実施形態において、本発明の文脈における「細胞外」とは、以下に定義されるLAMP1の第1および/もしくは第2の内腔ドメインを含むLAMP1タンパク質構築物ならびに/またはそのバリアントを指す。NP_005552.3(配列番号24)によるヒトLAMP1のドメイン構造は、実施例6.1にマッピングされており、以下のように本文献で用いられる。
【0022】
【表1】
【0023】
従って、ヒトLAMP1の第1から第3のループからなるドメインは、配列番号24の位置29〜309のアミノ酸からなる。
【0024】
予測される配列(配列番号39)によるカニクイザルLAMP1のドメイン構成は、以下の通りである。
【0025】
【表2】
【0026】
従って、カニクイザルLAMP1の第1から第3のループからなるドメインは、配列番号39の位置27〜307のアミノ酸からなる。
【0027】
ヒトおよびカニクイザルLAMP1完全長タンパク質の配列アラインメントを、
図1に示す。
【0028】
ヒトおよびカニクイザルLAMP1のループ領域4はグリコシル化部位を含有せず、LAMP1のループ1〜3からループ4を区別する。
【0029】
ループ1〜4は、一次アミノ酸配列から定義されており、その構造は本研究以前には解明されていなかったため、LAMP1の3D構造からではなく、実施例6.1にマッピングされている。
【0030】
RNA、ポリペプチド、タンパク質、または酵素のような、「コード配列」または発現生成物を「コードする」配列は、発現された場合、そのRNA、ポリペプチド、タンパク質、または酵素の生成をもたらすヌクレオチド配列である、すなわち、そのヌクレオチド配列は、そのポリペプチド、タンパク質または酵素のためのアミノ酸配列をコードする。タンパク質のためのコード配列は、開始コドン(通常はATG)と停止コドンとを含んでもよい。DNA中に存在する発現生成物をコードする領域は、「コードDNA配列」または「CDS」と呼ばれる。
【0031】
本明細書で用いられる場合、特定のタンパク質(例えば、抗体)に対する参照は、天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびにその起源または製造様式と無関係なバリアントおよび改変形態を含んでもよい。天然のアミノ酸配列を有するタンパク質は、自然から得られたのと同じアミノ酸配列を有するタンパク質である。そのような天然配列タンパク質を、自然から単離するか、または標準的な組換えおよび/もしくは合成方法を用いて製造することができる。天然配列タンパク質は、天然に存在するトランケート形態または可溶性形態、天然に存在するバリアント形態(例えば、選択的にスプライスされた形態)、天然に存在する対立遺伝子バリアントおよび翻訳後改変を含む形態を特に包含する。天然配列タンパク質には、いくつかのアミノ酸残基のグリコシル化、またはリン酸化、または他の改変のような翻訳後改変を伴ったタンパク質を含む。
【0032】
本明細書で用いられる用語「マーカー」とは、生物試料中の標的遺伝子および/またはタンパク質の存在を同定する、およびおそらくその発現を定量することを可能にする任意の生物学的、化学的または物理学的手段を指す。そのようなマーカーは、当業者には周知である。有利には、本発明によるマーカーは、遺伝子マーカーおよび/またはタンパク質マーカーである。
【0033】
用語「遺伝子」は、1つまたはそれ以上のタンパク質の全部または一部を含み、例えば、その遺伝子が発現される条件を決定付けるプロモーター配列のような調節DNA配列を含んでも、または含まなくてもよい、アミノ酸の特定の配列をコードするか、またはそれと一致するDNA配列を意味する。構造遺伝子ではないいくつかの遺伝子は、DNAからRNAに転写され得るが、アミノ酸配列には翻訳されない。他の遺伝子は、構造遺伝子の調節因子として、またはDNA転写の調節因子として機能し得る。特に、遺伝子という用語は、タンパク質をコードするゲノム配列、すなわち、調節因子、プロモーター、イントロンおよびエクソン配列を含む配列を意図してもよい。
【0034】
本明細書で用いられる用語「コピー数変化」、「コピー数バリアント」および「CNV」は、区別無く用いられ、参照ゲノムと比較して可変的なコピー数で存在する1kbまたはそれより長いDNAセグメントを指す。文献中に見出される用語「構造バリアント」、「デュプリコン」、「インデル」、「中間サイズの構造バリアント(ISV)」、「低コピーリピート(LCR)」、「多部位バリアント(MSV)」、「パラログ配列バリアント(PSV)」、「セグメント複製」、「染色体間複製」および「染色体内複製」は、本明細書では用語「CNV」中に含まれる。
【0035】
さらに、コピー数変化は単一の遺伝子を指すか、または遺伝子の連続するセットを含んでもよい。
【0036】
本明細書で用いられる「遺伝子数」は、細胞中に存在する遺伝子の数を記載する。2倍体生物においては、正常状態で、2コピーの各核酸配列がゲノム中に自然に存在し、従って、コピー数(CN)は2である。特に、ゲノムは、各遺伝子の2つの対立遺伝子を示し、1つは一対の相同染色体のそれぞれの染色体上にある(性染色体上に局在する遺伝子を除く)。
【0037】
ここで、用語「遺伝子数」および「遺伝子コピー数」は互換的に用いることができる。
【0038】
本発明の文脈において、配列の「コピー」は、前記配列と同一である配列を包含するが、前記配列の対立遺伝子変異も包含する。
【0039】
DNAコピー数および従って、DNAコピー数変化を測定するための1つの例は、ゲノムにわたるDNAコピー数変化を測定するためのハイスループット技術であるアレイに基づくCGHである。試験および参照試料のDNA断片または「クローン」を、マッピングされたアレイ断片にハイブリダイズさせる。試験と参照とのLog2強度比は、コピー数におけるゲノムワイドのプロファイルに関する有用な情報を提供する。
【0040】
「Log2」または「Log2比」値は、細胞ゲノム中の遺伝子またはDNA断片のコピー数を記述するために用いられる。理想的な状況では、正常(コピー変化中性)クローンのlog2比は、log2(2/2)=0であり、単一コピー喪失はlog2(1/2)=−1であり、単一コピー増加はlog2(3/2)=0.58である。多コピー増加または増幅はlo2(4/2)、log(5/2)などの値を有する。
【0041】
本明細書で用いられる場合、配列の「増加」は、一般に、対象の2倍体ゲノム中の前記配列の2.5以上のコピー数(あるいは、Log2比≧0.32)の存在を指す。これらの2.5以上のコピーは、ゲノム上で隣接するか、またはしなくてもよい;特に、それらは、一対の染色体の異なる領域中、またはゲノムの染色体の異なる対に属する染色体上に存在してもよい。
【0042】
従って、用語「遺伝子コピー数増加」とは、対象の2倍体ゲノム中の特定の遺伝子の2.5以上のコピー数(あるいは、Log2比≧0.32)の存在を指す。コピー数が2.5である場合、コピー数を定義するために用いられる細胞の50%が2倍体生物中に通常の2コピーの遺伝子を含有し、コピー数を定義するために用いられる細胞の50%が通常の2コピーおよびさらに1コピー多い前記遺伝子(合計3コピーの前記遺伝子)を含有する。
【0043】
配列の用語「低い増加」とは、一般に、対象の2倍体ゲノム中の前記配列の2.5以上であるが、5未満のコピー数(あるいは、0.32≦log2比<1.32)の存在を指す。用語「増幅」、「Amp」、または「高い増加」とは、本明細書では、対象の2倍体ゲノム中の特定の配列の5以上のコピー数、あるいは、Log2≧1.32の存在を指す。従って、用語「遺伝子数増幅」とは、対象の2倍体ゲノム中の特定の遺伝子の5以上のコピー数の存在を指す。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「配列の断片」は、前記配列、例えば、ヌクレオチド配列の一部に対応する。前記断片は、好ましくは少なくとも10bp長である。より好ましくは、前記断片は、少なくとも15bp長、特に、少なくとも20bp長である。最も好ましくは、前記断片は、少なくとも25bp長、少なくとも30bp長、特に、少なくとも33bp長である。上記配列の断片は、特に、プライマーまたはプローブであってもよい。
【0045】
本発明の文脈において、参照配列の「変異配列」とは、1つまたはそれ以上のヌクレオチドの挿入、欠失または置換を含む配列を指し、ここで前記変異配列は参照配列と少なくとも75%同一である。配列同一性のパーセンテージは、最適に整列された変異配列を参照配列と比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列中に存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得て、一致した位置の数を参照配列の位置の総数で除算し、その結果に100を乗算して、配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。好ましくは、変異配列は、参照配列と少なくとも80%、85%、90%、95%同一である。
【0046】
好ましくは、参照配列の前記変異配列は、前記参照配列の対立遺伝子バリアントである。本明細書で用いられる場合、「対立遺伝子バリアント」は、同じ染色体座を占有する遺伝子の任意の2つまたはそれ以上の代替形態を指す。
【0047】
「参照配列と少なくとも85%同一である」配列は、その全長にわたって、参照配列の全長との、85%、またはそれ以上、特に、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列である。
【0048】
「配列同一性」のパーセンテージは、比較ウィンドウにわたって最適に整列された2つの配列を比較することによって決定することができ、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントについて参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。このパーセンテージは、両方の配列中で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を、比較ウィンドウ中の位置の総数で除算すること、およびその結果に100を乗算して、配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。比較のための配列の最適なアラインメントは、全体的ペアワイズアラインメントにより、例えば、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443頁(1970)のアルゴリズムを用いて行われる。配列同一性のパーセンテージを、例えば、BLOSUM62マトリックス、および以下のパラメーターギャップ−オープン=10、ギャップ−伸長=0.5を含むプログラムNeedleを用いて容易に決定することができる。
【0049】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖R基を有する別のアミノ酸残基により置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。類似する化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン−トリプトファン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0050】
「抗体」は、2つの重鎖がジスルフィド結合により互いに連結され、それぞれの重鎖がジスルフィド結合により軽鎖に連結される天然の、または従来の抗体であってもよい。2つの型の軽鎖、ラムダ(l)およびカッパ(k)が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。それぞれの鎖は異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、2つのドメインまたは領域、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、集合的にCHと呼ばれる)を含む。軽鎖(VL)と重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動、補体結合、およびFc受容体(FcR)への結合のような、重要な生物学的特性を付与する。Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端パートであり、1つの軽鎖と1つの重鎖の可変ポーションからなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主として超可変領域または相補性決定領域(CDR)に由来する残基から作られる。場合により、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)に由来する残基は、全体的なドメイン構造、従って、結合部位に影響する。相補性決定領域またはCDRとは、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒に定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ、CDR1−L、CDR2−L、CDR3−LおよびCDR1−H、CDR2−H、CDR3−Hと命名される3つのCDRをそれぞれ有する。従って、従来の抗体抗原結合部位は、重鎖および軽鎖V領域のそれぞれに由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含む。
【0051】
「フレームワーク領域」(FR)とは、CDR間に置かれたアミノ酸配列、すなわち、単一の種において異なる免疫グロブリン間で比較的保存された免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域のポーションを指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ、FR1−L、FR2−L、FR3−L、FR4−L、およびFR1−H、FR2−H、FR3−H、FR4−Hと命名される4つのFRをそれぞれ有する。
【0052】
本明細書で用いられる場合、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト抗体のフレームワーク領域と実質的に同一である(約85%、またはそれ以上、特に、90%、95%、97%、99%または100%)フレームワーク領域である。
【0053】
本発明の文脈において、免疫グロブリン軽鎖または重鎖におけるCDR/FRの定義は、IMGT定義(Lefranc、M.P.ら、2003、Dev Comp Immunol.27(1):55〜77頁;www.imgt.org)に基づいて決定されるべきである。
【0054】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、従来の抗体およびその断片、ならびに単一ドメイン抗体およびその断片、特に、単一ドメイン抗体の可変重鎖、ならびにキメラ、ヒト化、二重特異的または多重特異的抗体を指す。
【0055】
本明細書で用いられる場合、抗体または免疫グロブリンはまた、より最近記載され、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である「単一ドメイン抗体」も含む。単一ドメイン抗体の例としては、重鎖抗体、天然では軽鎖を含まない抗体、従来の4鎖抗体から誘導される単一ドメイン抗体、操作された単一ドメイン抗体を含む。単一ドメイン抗体は、限定されるものではないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギおよびウシなどの任意の種から誘導することができる。単一ドメイン抗体は、軽鎖を含まない重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体であってもよい。特に、ラクダ科動物の種、例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカおよびグアナコは、天然では軽鎖を含まない重鎖抗体を生成する。ラクダ科動物の重鎖抗体は、CH1ドメインも欠く。
【0056】
軽鎖を含まないこれらの単一ドメイン抗体の可変重鎖は、「VHH」または「ナノボディ」として当業界で公知である。従来のVHドメインと同様、VHHは4つのFRと3つのCDRとを含有する。ナノボディは従来の抗体を超える利点を有する:それらはIgG分子よりも約10倍小さく、結果として、高い収率を達成しながら、適切に折畳まれた機能的ナノボディをin vitroでの発現により生成することができる。さらに、ナノボディは非常に安定的であり、プロテアーゼの作用に対して耐性である。ナノボディの特性および生成は、HarmsenおよびDe Haard HJ(Appl.Microbiol.Biotechnol.2007 Nov;77(1):13〜22頁)により概説されている。
【0057】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」または「mAb」とは、特定の抗原を指向し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されない、単一アミノ酸組成の抗体分子を指す。モノクローナル抗体を、B細胞またはハイブリドーマの単一のクローンにより生成することができるが、組換えであってもよい、すなわち、タンパク質工学によって生成することもできる。
【0058】
用語「キメラ抗体」とは、その最も広い意味において、1つの抗体に由来する1つまたはそれ以上の領域および1つまたはそれ以上の他の抗体に由来する1つまたはそれ以上の領域を含有する操作された抗体を指す。特に、キメラ抗体は、非ヒト動物から誘導される抗体のVHドメインおよびVLドメインと共に、別の抗体を、特に、ヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインを含む。非ヒト動物として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどのような任意の動物を用いることができる。キメラ抗体はまた、少なくとも2つの異なる抗原に対する特異性を有する多重特異的抗体を示してもよい。ある実施形態において、キメラ抗体は、マウス起源の可変ドメインと、ヒト起源の定常ドメインとを有する。
【0059】
用語「ヒト化抗体」とは、はじめは全体的または部分的に非ヒト起源のものであり、ヒトにおける免疫応答を回避するか、または最小化するために、特に、重鎖および軽鎖のフレームワーク領域中のある特定のアミノ酸を置き換えるように改変された抗体を指す。ヒト化抗体の定常ドメインは、大体の場合、ヒトCHおよびCLドメインのものである。ある実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト起源の定常ドメインを有する。
【0060】
(従来の)抗体の「断片」は、無傷抗体の一部、特に、無傷抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディ、抗体断片から形成される二重特異的および多重特異的抗体が挙げられる。従来の抗体の断片は、重鎖抗体またはVHHのような、単一ドメイン抗体であってもよい。
【0061】
用語「Fab」は、IgGをプロテアーゼ、パパインで処理することにより得られる断片のうち、H鎖のN末端側の約半分と全L鎖が、ジスルフィド結合により一緒に結合した、約50,000の分子量および抗原結合活性を有する抗体断片を示す。
【0062】
用語「F(ab’)2」とは、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合したFab断片よりもわずかに大きい、IgGをプロテアーゼ、ペプシンで処理することによって断片間で得られる、約100,000の分子量および抗原結合活性を有する抗体断片を指す。
【0063】
一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドをコードするリンカーにより連結されたVHおよびVLをコードする遺伝子を含む遺伝子融合物から通常発現される共有的に連結されたVH::VLヘテロ二量体である。本発明のヒトscFv断片は、特に、遺伝子組換え技術を用いることにより、適切なコンフォメーション中に保持されるCDRを含む。二価および多価抗体断片は、一価scFvの会合により自発的に形成し得るか、または二価sc(Fv)
2のような、ペプチドリンカーにより一価scFvをカップリングさせることにより生成することができる。「dsFv」は、ジスルフィド結合により安定化されるVH::VLヘテロ二量体である。「(dsFv)2」は、ペプチドリンカーによりカップリングされた2つのdsFvを示す。
【0064】
用語「二重特異的抗体」または「BsAb」は、単一の分子内で2つの抗体の抗原結合部位を結合させる抗体を示す。かくして、BsAbは、2つの異なる抗原に同時に結合することができる。例えば、EP2050764A1に記載のように、所望のセットの結合特性およびエフェクター機能を有する抗体または抗体誘導体を設計、改変および生成するために、高い頻度で遺伝子操作が用いられてきた。
【0065】
用語「多重特異的抗体」は、単一の分子内で2つまたはそれ以上の抗体の抗原結合部位を結合させる抗体を示す。
【0066】
用語「ダイアボディ」とは、断片が同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を指す。同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、これらのドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を作出する。
【0067】
用語「ハイブリドーマ」は、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫することによって調製されたB細胞を、抗原特異性を有する所望のモノクローナル抗体を生成するマウスなどから誘導されるミエローマ細胞との細胞融合にかけることにより得られる細胞を示す。
【0068】
「精製された」および「単離された」とは、ポリペプチド(すなわち、本発明の抗体)またはヌクレオチド配列を言う場合、示された分子が同じ型の他の生体高分子の実質的な非存在下で存在することを意味する。本明細書で用いられる用語「精製された」とは、少なくとも75重量%、85重量%、95重量%、または98重量%の同じ型の生体高分子が存在することを特に意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子とは、対象のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指す;しかしながら、この分子は、組成物の基本的特徴に有害に影響しないいくつかのさらなる塩基または部分を含んでもよい。
【0069】
本明細書で用いられる用語「対象」は、げっ歯類、ネコ科、イヌ科、および霊長類のような哺乳動物を示す。特に、本発明による対象は、ヒトである。
【0070】
本出願を通して、用語「含む(comprising)」は、全ての具体的に記載された特徴ならびに任意選択の、追加の、特定されない特徴を包含するものと解釈されるべきである。本明細書で用いられる場合、用語「含む(comprising)」の使用はまた、具体的に記載された特徴以外の特徴が存在しない(すなわち、「からなる(consisting of)」)実施形態も開示する。
【0071】
本出願を通して、用語「および/または」は、それが接続する1つまたはそれ以上の事例が生じてもよいことを包含すると解釈されるべきである文法的接続詞である。例えば、「生物試料中の標的遺伝子および/またはタンパク質の発現を定量すること」という文は、標的遺伝子の発現を定量することができるか(mRNA)、またはタンパク質の発現もしくは標的遺伝子の発現(mRNA)と、タンパク質とを一緒に定量することができることを示す。
【0072】
従って、「配列番号1の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/または配列番号5の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン」という表現は、「配列番号1の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメイン」または「配列番号5の配列、もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン」または「配列番号1の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび配列番号5の配列、もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン」と解釈されるべきである。
【0073】
用語「がん」、「新生物」、「腫瘍」、および「癌腫」は、相対的に自律的な増殖を示す細胞を指すように本明細書では互換的に用いられ、それらは細胞増殖の制御の有意な喪失を特徴とする異常な増殖表現型を示し得る。一般に、本出願における検出または処置のための対象となる細胞としては、前がん性(例えば、良性)、悪性、転移性、および非転移性細胞が挙げられる。
【0074】
イムノコンジュゲート
治療目的で、抗体薬物コンジュゲートとしての使用のための最適な特徴を有する抗体、すなわち、がん細胞の表面上に存在する標的を特異的に認識し、一度、前記標的に結合したら、内在化を効率的に誘発することができる抗体を作出することが有利である。
【0075】
本発明者らは、結腸腫瘍細胞または肺腫瘍細胞に対する抗体を生じさせ、腫瘍細胞および非腫瘍組織への示差的結合について、得られたクローンをスクリーニングした。
【0076】
本発明者らは、このように、非腫瘍組織から腫瘍組織を区別する抗体を同定した。特に、ADCの形態での、治療的適用にとって必要な予想される特徴を満たす、3つのこれらの抗体が選択された(いわゆる抗体「MAb1」、「MAb2」および「MAb3」)。これらの3つの抗体は、がん細胞中で細胞表面に発現されるLAMP1への高い結合親和性(ナノモル濃度範囲内)を示した。さらに、これらの3つの抗LAMP1抗体は、実施例4.4および4.3に示されるような、LAMP1/抗LAMP1抗体複合体の内在化を誘発する高い能力を示した。
【0077】
本発明者らは、MAb1、MAb2、MAb3から誘導されるキメラ抗体(chMAb1、chMAb2、chMAb3)が、細胞傷害性メイタンシノイド(DM4)と共に、ヒトLAMP1またはカニクイザルLAMP1、次いで実施例8.1.7および8.1.8に示されるような裸の抗体に対する、同様に高いが、わずかに異なる結合親和性を示すことを証明した。
【0078】
従って、一実施形態において、本発明の文脈におけるイムノコンジュゲートは、組換え細胞系の細胞表面に発現される完全長ヒトLAMP1およびカニクイザルLAMP1に対する親和性(EC
50)を有し、ここで細胞系はHCT116であってもよく、フローサイトメトリーにより測定される見かけの親和性は30nM以下、例えば、20nM以下または15nM以下である。
【0079】
完全長ヒトLAMP1およびカニクイザルLAMP1に対する親和性(EC
50)を測定するための方法は、「抗体」のセクションでさらに説明される。
【0080】
本発明者らはさらに、MAb1から誘導されるキメラ抗体(chMAb1)が、細胞傷害性メイタンシノイド(DM4)と共に、ゲノムDNA中へのLAMP1をコードするDNA配列の安定な組込みを含有し、表面上にLAMP1を発現するヒトHCT116腫瘍細胞上でin vitroで細胞傷害活性を誘導することを証明した。
【0081】
さらに、本発明者らは、MAb1から誘導されるヒト化抗体(huMAb1_1、huMAb1_2、huMAb1_3)が、細胞傷害性メイタンシノイド(DM4)と共に、ゲノムDNA中へのLAMP1をコードするDNA配列の安定な組込みを含有するヒトHCT116腫瘍細胞上でin vitroで細胞傷害活性を誘導することを証明した。
【0082】
本発明者らはまた、イムノコンジュゲートDM4−SPDB−chMAb1が、実施例10.1.1に記載のように、単回注射で、10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgの用量で用いた場合、患者CR−LRB−010Pから誘導される原発性ヒト結腸腺癌異種移植片を担持するマウスにおいてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することも示した。
【0083】
さらに、本発明者らは、このイムノコンジュゲートが、実施例10.1.2に記載のように、単回注射で、10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgの用量で用いた場合、患者LUN−NIC−0014から誘導される原発性ヒト肺腫瘍異種移植片を担持するマウスにおいてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することを示した。
【0084】
本発明者らはまた、イムノコンジュゲートDM4−SPDB−huMAb1_1、DM4−SPDB−chMAb2、およびDM4−SPDB−chMAb3が、実施例10.2〜10.4に示されるように、異なる患者由来異種移植片においてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することも示した。
【0085】
例えば、イムノコンジュゲートDM4−SPDB−huMAb1_1は、実施例10.2.2および10.2.3に記載のように、単回注射で、10mg/kg、5mg/kg、2.5mg/kg、または1.25mg/kgの用量で用いた場合、患者に由来する原発性ヒト浸潤性腺管癌異種移植片および原発性ヒト肺腫瘍異種移植片においてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することが示された。
【0086】
また、イムノコンジュゲートDM4−SPDB−chMAb2およびDM4−SPDB−chMAb3も、実施例10.3.2および10.4に記載のように、単回注射で、それぞれ、10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgまたは5mg/kg、2.5mg/kgおよび1.25mg/kgの用量で用いた場合、患者に由来する原発性ヒト浸潤性腺管癌異種移植片のマウスモデルにおいてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導した。
【0087】
要するに、初めて、これらの結果は、がんの処置のための治療標的としてLAMP1を正当に同定するものである。
【0088】
従って、本発明は、
a)ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に結合し;
b)少なくとも1つの増殖阻害剤に連結またはコンジュゲートされている
抗体を含むイムノコンジュゲートに関する。
【0089】
本出願を通して記載されるように、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に結合する任意の抗体(例えば、MAb4、その断片、またはそのキメラ型もしくはヒト化型)を、本発明によるイムノコンジュゲートに組み入れることができる。
【0090】
本明細書で用いられる場合、「コンジュゲート」、「イムノコンジュゲート」、「抗体−薬物コンジュゲート」または「ADC」は、同じ意味を有し、互換的である。
【0091】
区別無く用いることができる、「増殖阻害剤」または「抗増殖剤」とは、in vitroまたはin vivoで、細胞、特に、腫瘍細胞の増殖を阻害する化合物または組成物を指す。増殖阻害剤は、特に、細胞傷害剤または放射性同位体を指す。
【0092】
用語「放射性同位体」は、At
211、Ac
225、Bi
212、Bi
213、Pb
212、Er
169、I
131、I
124、I
125、Y
90、In
111、P
32、Re
186、Re
188、Sm
153、Sr
89、Zr
89、Tc
99m、Ga
68、Cu
64およびLu
177のようなLuの放射性同位体のような、がんを処置するのに好適な放射性同位体を含むことが意図される。そのような放射性同位体は一般に、主としてベータ線を放射する。ある実施形態において、放射性同位体は、アルファ放射体同位体、より正確には、アルファ線を放射するトリウム227(Th
227)である。本発明によるイムノコンジュゲートを、特許出願WO2004/091668に記載のように製造することができる。
【0093】
一実施形態において、放射性同位体は、At
211、Ac
225、Bi
213、Pb
212、Er
169、I
124、I
125、In
111、P
32、Re
186、Sm
153、Sr
89、Zr
89、Tc
99m、Ga
68、Cu
64およびLuの放射性同位体からなる群、例えば、At
211、Er
169、I
125、In
111、P
32、Re
186、Sm
153、Sr
89、Luの放射性同位体、およびTh
227から選択される。
【0094】
本明細書で用いられる用語「細胞傷害剤」とは、細胞の機能を阻害もしくは防止する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。用語「細胞傷害剤」は、化学療法剤、酵素、抗生物質、および低分子毒素または細菌、菌類、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素のような毒素、例えば、その断片および/またはバリアント、ならびに以下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤を含むことが意図される。いくつかの実施形態において、細胞傷害剤は、抗チューブリン剤、例えば、タキソイドまたはタキサン、ビンカアルカロイド、メイタンシノイドまたはメイタンシノイド類似体、例えば、DM1もしくはDM4、クリプトフィシン誘導体、オーリスタチンまたはドラスタチン類似体;DNAアルキル化剤、例えば、トメイマイシンまたはピロロベンゾジアゼピン誘導体、CC−1065またはCC−1065類似体;レプトマイシン誘導体;トポイソメラーゼII阻害剤、RNAポリメラーゼII阻害剤、例えば、アルファ−アマニチンにある化合物の薬物またはプロドラッグである。
【0095】
第1の実施形態によれば、前記少なくとも1つの増殖阻害剤は、未定義の放射性同位体、化学療法剤、タンパク質もしくはレクチンでも、洋種ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、アブリン、リシンおよびその各A鎖、ドキソルビシン、シスプラチン、ヨウ素−131、イットリウム−90、レニウム−188、ビスマス−212、タキソール、5−フルオロウラシル、VP−16(エトポシド)、ブレオマイシン、メトトレキサート、ビンデシン、アドリアマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビス−クロロエチルニトロソウレア(BCNU)、マイトマイシン、シクロホスファミドならびにサイトカイン、例えば、TNFおよびTNF−βでもない。
【0096】
この第1の実施形態によれば、本発明は特に、
a)ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に結合し;ならびに
b)少なくとも1つの増殖阻害剤:
(i)洋種ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質以外の酵素;ブレオマイシンおよびマイトマイシン以外の抗生物質;その断片および/もしくはバリアントを含む、アブリンおよびリシン以外の細菌、真菌、もしくは動物起源もしくは植物起源の毒素;抗チューブリン剤、例えば、メイタンシノイドもしくはメイタンシノイド類似体、例えば、DM1もしくはDM4、パクリタキセル(タキソール)以外のタキソイドもしくはタキサン、ビンデシン、ビンクリスチンおよびビンブラスチン以外のビンカアルカロイド、クリプトフィシン誘導体、オーリスタチンもしくはドラスタチン類似体にある化合物の薬物もしくはプロドラッグ;BCNUおよびシクロホスファミド、例えば、トメイマイシンもしくはピロロベンゾジアゼピン誘導体、CC−1065もしくはCC−1065類似体以外のDNAアルキル化剤;レプトマイシン誘導体;ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびエトポシド以外のトポイソメラーゼII阻害剤、RNAポリメラーゼII阻害剤、例えば、アルファ−アマニチンからなる群から選択される細胞傷害剤、または
(ii)At
211、Ac
225、Bi
213、Pb
212、Er
169、I
124、I
125、In
111、P
32、Re
186、Sm
153、Sr
89、Zr
89、Tc
99m、Ga
68、Cu
64およびLuの放射性同位体、例えば、Lu
177およびTh
227からなる群から選択される放射性同位体
に連結またはコンジュゲートされている抗体を含むイムノコンジュゲートに関する。
【0097】
一実施形態において、放射性同位体は、At
211、Er
169、I
125、P
32、Re
186、Sm
153、Sr
89、Luの放射性同位体、およびTh
227からなる群から選択される。
【0098】
前記第1の実施形態において、抗体は特に、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインに結合してもよく;ヒトLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインは配列番号24のアミノ酸Ala29〜Ile309からなり、カニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインは配列番号39のアミノ酸Ala27〜Thr307からなる。
【0099】
第2の実施形態によれば、本発明は、抗体がヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインに結合し;ヒトLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインが配列番号24のアミノ酸Ala29〜Ile309からなり、カニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインが配列番号39のアミノ酸Ala27〜Thr307からなるイムノコンジュゲートに関する。
【0100】
従って、この第2の実施形態によれば、イムノコンジュゲートは、
a)ヒトLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインが配列番号24のアミノ酸Ala29〜Ile309からなり、カニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインが配列番号39のアミノ酸Ala27〜Thr307からなる、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインに結合し;
b)前記少なくとも1つの増殖阻害剤に連結またはコンジュゲートされている
抗体を含む。
【0101】
強制的ではないが、前記第2の実施形態において、少なくとも1つの増殖阻害剤は、未定義の放射性同位体、化学療法剤、タンパク質またはレクチン、特に、洋種ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、アブリン、リシンおよびその各A鎖、ドキソルビシン、シスプラチン、ヨウ素−131、イットリウム−90、レニウム−188、ビスマス−212、タキソール、5−フルオロウラシル、VP−16(エトポシド)、ブレオマイシン、メトトレキサート、ビンデシン、アドリアマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、BCNU、マイトマイシン、シクロホスファミドおよびサイトカイン、例えば、TNFおよびTNF−βとは異なっていてもよい。
【0102】
従って、前記少なくとも1つの増殖阻害剤は、At
211、Ac
225、Bi
213、Pb
212、Er
169、I
124、I
125、In
111、P
32、Re
186、Sm
153、Sr
89、Zr
89、Tc
99m、Ga
68、Cu
64およびLuの放射性同位体、例えば、Lu
177およびTh
227からからなる群から選択される放射性同位体、例えば、At
211、Er
169、I
125、In
111、P
32、Re
186、Sm
153、Sr
89、Luの放射性同位体、例えば、Lu
177およびTh
227、または前記第1の実施形態で定義された細胞傷害剤であってもよい。
【0103】
前記第1および第2の実施形態において、前記少なくとも1つの増殖阻害剤は、特に、メイタンシノイドまたはメイタンシノイド類似体、例えば、DM1もしくはDM4、トメイマイシンまたはピロロベンゾジアゼピン誘導体、クリプトフィシン誘導体、レプトマイシン誘導体、オーリスタチンまたはドラスタチン類似体、またはCC−1065もしくはCC−1065類似体、RNAポリメラーゼII阻害剤、例えば、アルファ−アマニチンにある化合物の薬物またはプロドラッグであってもよい。
【0104】
一実施形態において、好適なトママイシンは、トママイシン二量体である。前記トママイシン二量体は、例えば、(2E,2’E,11aS,11a’S)−8,8’−(((4−(2−(2−(2−((2−メルカプト−2−メチルプロピル)(メチル)アミノ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)ピリジン−2,6−ジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(2−エチリデン−7−メトキシ−2,3−ジヒドロ−1Hベンゾ[e]ピロロ[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5(11aH)−オン)である。
【0105】
(2E,2’E,11aS,11a’S)−8,8’−(((4−(2−(2−(2−((2−メルカプト−2−メチルプロピル)(メチル)アミノ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)ピリジン−2,6−ジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(2−エチリデン−7−メトキシ−2,3−ジヒドロ−1Hベンゾ[e]ピロロ[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5(11aH)−オン)の構造式は、
【化1】
である。
【0106】
本明細書で用いられる「メイタンシノイド」は、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体を指す。メイタンシノイドは、微小管形成を阻害し、哺乳動物細胞にとって高度に毒性である薬物である。
【0107】
好適なメイタンシノイドの例としては、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体が挙げられる。
【0108】
好適なメイタンシノール類似体の例としては、改変芳香環を有するものおよび他の位置に改変を有するものが挙げられる。そのような好適なメイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;第4,256,746号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,362,663号;第4,364,866号;第4,450,254号;第4,322,348号;第4,371,533号;第6,333,410号;第5,475,092号;第5,585,499号;および第5,846,545号に開示されている。
【0109】
改変芳香環を有するメイタンシノールの好適な類似体の具体例としては、
(1)C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサミトシンP2のLAH還元により製造される);
(2)C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号および第4,307,016号)(ストレプトミセス(Streptomyces)もしくはアクチノミセス(Actinomyces)を用いる脱メチル化またはLAHを用いる脱塩素化により製造される);ならびに
(3)C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(アシルクロリドを用いるアシル化により製造される)
が挙げられる。
【0110】
他の位置の改変を有するメイタンシノールの好適な類似体の具体例としては、
(1)C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(メイタンシノールとH
2SまたはP
2S
5との反応により製造される);
(2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2OR)(米国特許第4,331,598号);
(3)C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH
2OHもしくはCH
2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジア(Nocardia)から製造される);
(4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトミセスによるメイタンシノールの変換により製造される);
(5)C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および第4,315,929号)(トレウィア・ヌジフローラ(Trewia nudiflora)から単離される);
(6)C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号および第4,322,348号)(ストレプトミセスによるメイタンシノールの脱メチル化により製造される);ならびに
(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により製造される)
が挙げられる。
【0111】
特定の実施形態において、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは、細胞傷害剤として、以前はN
2’−デアセチル−N
2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシンと呼ばれたチオール含有メイタンシノイド(DM1)を用いる。DM1は、以下の構造式(I):
【化2】
により表される。
【0112】
別の実施形態において、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは、細胞傷害剤として、以前はN
2’−デアセチル−N
2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシンと呼ばれたチオール含有メイタンシノイドDM4を用いる。DM4は、以下の構造式(II):
【化3】
により表される。
【0113】
本発明のさらなる実施形態において、硫黄原子を担持する炭素原子上にモノまたはジ−アルキル置換を担持するチオールおよびジスルフィド含有メイタンシノイドを含む他のメイタンシンを用いることができる。これらのものとしては、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、またはC−20デスメチルに、チオール官能基を担持するアシル基の炭素原子が1つまたは2つの置換基を有し、前記置換基がCH
3、C
2H
5、1〜10の試薬を有する線状もしくは分枝状アルキルまたはアルケニルおよび溶液中に存在してもよい任意の凝集体である、妨害されたスルフヒドリル基を担持するアシル基を有するアシル化されたアミノ酸側鎖を有するメイタンシノイドが挙げられる。
【0114】
これらの細胞傷害剤およびコンジュゲーション方法の例は、参照により組み入れられる特許出願WO2008/010101にさらに与えられる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態において、抗体は、少なくとも1つの増殖阻害剤に、直接的に、または切断性もしくは非切断性リンカーにより共有結合している。
【0116】
本明細書で用いられる場合、「リンカー」は、ポリペプチドを薬物部分に共有的に結合させる共有結合または原子の鎖を含む化学部分を意味する。
【0117】
コンジュゲートを、in vitroでの方法により製造することができる。薬物またはプロドラッグを抗体に連結するために、連結基が用いられる。好適な連結基は当業界で周知であり、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基およびエステラーゼ不安定基が挙げられる。本発明の抗体と、細胞傷害剤または増殖阻害剤とのコンジュゲーションを、限定されるものではないが、N−スクシンイミジルピリジルジチオブチレート(SPDB)、ブタン酸4−[(5−ニトロ−2−ピリジニル)ジチオ]−2,5−ジオキソ−1−ピロリジニルエステル(ニトロ−SPDB)、4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)−2−スルホ−酪酸(スルホ−SPDB)、N−スクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、SNPP(N−スクシンイミジル4−(5−ニトロ−2−ピリジルジチオ)ペンタノエート)、スクシンイミジル(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCLなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)−ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6−ジイソシアネートなど)、およびビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などの様々な二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンを、Vitettaら(1987)に記載のように製造することができる。炭素標識された1−イソチオシアナトベンジルメチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート化剤である(WO94/11026)。
【0118】
リンカーは、細胞中での細胞傷害剤または増殖阻害剤の放出を容易にする「切断性リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、エステラーゼ不安定リンカー、光不安定リンカーまたはジスルフィド含有リンカー(例えば、米国特許第5,208,020号を参照されたい)を用いることができる。リンカーはまた、いくつかの場合、より良好な許容性をもたらし得る「非切断性リンカー」(例えば、SMCCリンカー)であってもよい。
【0119】
あるいは、本発明の抗体と、細胞傷害または増殖阻害ポリペプチドとを含む融合タンパク質を、組換え技術またはペプチド合成により作製することができる。DNAの長さは、互いに隣接するか、またはコンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により隔てられたコンジュゲートの2つのポーションをコードするそれぞれの領域を含んでもよい。
【0120】
本発明の抗体はまた、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照されたい)を、活性な抗がん剤(例えば、WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照されたい)に変換するプロドラッグ活性化酵素にポリペプチドをコンジュゲートさせることによる依存的酵素媒介性プロドラッグ療法において用いることもできる。ADEPTにとって有用なイムノコンジュゲートの酵素成分は、それをそのより活性な細胞傷害形態に変換するような方法でプロドラッグに対して作用することができる任意の酵素を含む。本発明の方法において有用である酵素としては、限定されるものではないが、リン酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性フルオロシトシンを抗がん剤5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用である、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(カテプシンBおよびLなど)のようなプロテアーゼ;D−アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なO−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼのような炭水化物切断酵素;P−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なP−ラクタマーゼ;ならびにそのアミン窒素において誘導体化された薬物を、それぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基で遊離薬物に変換するのに有用な、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼのようなペニシリンアミダーゼが挙げられる。上記で考察されたヘテロ二官能性架橋試薬の使用のような当業界で周知の技術により、酵素を本発明のポリペプチドに共有結合させることができる。
【0121】
前記第1および第2の実施形態によれば、本発明のコンジュゲートにおいて、増殖阻害剤はメイタンシノイド、特に、DM1またはDM4である。
【0122】
そのようなコンジュゲートにおいて、抗体は連結基によって前記少なくとも1つの増殖阻害剤にコンジュゲートされている。特に、前記連結基は、SPDB、スルホ−SPDB、またはSMCCのような非切断性リンカーである。
【0123】
特に、コンジュゲートを、
i)式(III)
【化4】
の抗体−SPDB−DM4コンジュゲート;
ii)式(IV)
【化5】
の抗体−スルホ−SPDB−DM4コンジュゲート;および
iii)式(V)
【化6】
の抗体−SMCC−DM1コンジュゲート
からなる群から選択することができる。
【0124】
さらなる実施形態において、本発明のコンジュゲート中、増殖阻害剤は、トママイシン、例えば、トママイシン二量体、例えば、(2E,2’E,11aS,11a’S)−8,8’−(((4−(2−(2−(2−((2−メルカプト−2−メチルプロピル)(メチル)アミノ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)ピリジン−2,6−ジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(2−エチリデン−7−メトキシ−2,3−ジヒドロ−1Hベンゾ[e]ピロロ[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5(11aH)−オン)であってもよい。
【0125】
そのようなコンジュゲートにおいて、抗体は、連結基、例えば、SNPPによって前記少なくとも1つの増殖阻害剤にコンジュゲートされている。
【0126】
従って、一実施形態において、コンジュゲートは、抗体−SNPP−(2E,2E’,11aS,11a’S)−8,8’−(((4−(2−(2−(2−((2−メルカプト−2−メチルプロピル)(メチル)アミノ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)ピリジン−2,6−ジイル)であってもよい。
【0127】
一般に、コンジュゲートを、
(i)細胞結合剤(例えば、本発明による抗体)の場合により緩衝化された水性溶液を、リンカーおよび細胞傷害化合物の溶液と接触させる工程;
(ii)次いで、場合により、未反応の細胞結合剤から(i)で形成されたコンジュゲートを分離する工程
を含む方法により取得することができる。
【0128】
細胞結合剤の水性溶液を、例えば、リン酸、酢酸、クエン酸カリウムまたはN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(Hepes緩衝液)のような緩衝液で緩衝化することができる。緩衝液は、細胞結合剤の性質に依存する。細胞傷害化合物は、有機極性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)中の溶液中にある。
【0129】
反応温度は通常、20〜40℃を含む。反応時間は1〜24時間で変化してもよい。細胞結合剤と細胞傷害剤との反応を、屈折率検出器および/またはUV検出器を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によりモニタリングすることができる。コンジュゲートの収量が低すぎる場合、反応時間を延長することができる。
【0130】
当業者であれば、いくつかの異なるクロマトグラフィー法を用いて、工程(ii)の分離を実行することができる:コンジュゲートを、例えば、SEC、吸着クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、IECなど)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのような混合支持体クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製することができる。透析または透析濾過による精製を用いることもできる。
【0131】
本明細書で用いられる用語「凝集体」とは、コンジュゲーションにより改変されたか、または改変されていない2つまたはそれ以上の細胞結合剤の間で形成させることができる会合を意味する。凝集体を、溶液中の高濃度の細胞結合剤、溶液のpH、高い剪断力、結合した二量体の数およびその疎水性、温度のような多数のパラメータの影響下で形成させることができる(Wang,L.およびGosh,R.、2008、J.Membr Sci.、318:311〜316頁、およびそこに引用される参考文献を参照されたい);これらのパラメータのいくつかの相対的影響は明確に確立されていないことに留意されたい。タンパク質および抗体の場合、当業者であれば、Cromwell,M.E.ら(2006、AAPS Jounal、8(3):E572〜E579頁)を参照するであろう。凝集体中の内容物を、SECのような、当業者には周知の技術を用いて決定することができる(Walterら、1993、Anal.Biochem.、212(2):469〜480頁を参照されたい)。
【0132】
工程(i)または(ii)の後、コンジュゲート含有溶液を、クロマトグラフィー、限外濾過および/または透析濾過のさらなる工程(iii)にかけることができる。
【0133】
コンジュゲートは、水性溶液中でのこれらの工程の終わりに回収される。
【0134】
ある実施形態によれば、本発明によるコンジュゲートは、DAR UVによって測定される1〜10、例えば、2〜5、特に、3〜4の範囲の「薬物抗体比」(または「DAR」)を特徴とする。これは一般に、メイタンシノイド分子を含むコンジュゲートの場合である。
【0135】
このDAR数は、コンジュゲーションのために用いられる実験条件(増殖阻害剤/抗体の比、反応時間、溶媒および存在する場合、共溶媒の性質など)と共に、用いられる抗体および薬物(すなわち、増殖阻害剤)の性質に応じて変化してもよい。かくして、抗体と増殖阻害剤との接触は、異なる薬物抗体比;場合により裸の抗体;場合により凝集体により互いに異なるいくつかのコンジュゲートを含む混合物をもたらす。かくして、決定されるDARは平均値である。
【0136】
本明細書ではDAR UVと呼ばれる、DARを決定するために用いることができる方法は、λ
Dおよび280nmでの実質的に精製されたコンジュゲートの溶液の吸光度の比を分光光度測定することにある。280nmは、抗体濃度のような、タンパク質濃度を測定するために一般的に用いられる波長である。波長λ
Dは、薬物を抗体から識別することができるように選択される、すなわち、当業者には容易にわかるように、λ
Dは、薬物が高い吸光度を有する波長であり、λ
Dは薬物と抗体の吸光度のピークにおける実質的な重複を回避するために280nmから十分に離れている。メイタンシノイド分子の場合、λ
Dを、252nmであると選択することができる。DAR算出の方法を、Antony S.Dimitrov(編)、LLC、2009、Therapeutic Antibodies and Protocols、vol 525、445頁、Springer Scienceから誘導することができる。
【0137】
λ
D(A
λD)および280nm(A
280)でのコンジュゲートの吸光度は、古典的な分光光度計装置を用いて測定される(「DARパラメータ」を算出することができる)。吸光度を以下のように表すことができる:
A
λD=(C
Dxε
DλD)+(C
Axε
AλD)
A
280=(C
Dxε
D280)+(C
Axε
A280)
(式中、
・C
DおよびC
Aはそれぞれ、薬物および抗体の溶液中での濃度であり、
・ε
DλDおよびε
D280はそれぞれ、λ
Dおよび280nmでの薬物のモル吸光係数であり、
・ε
AλDおよびε
A280はそれぞれ、λ
Dおよび280nmでの抗体のモル吸光係数である)。
【0138】
2つの未知数を用いてこれらの2つの式を分解すると、以下の式が得られる:
C
D=[(ε
A280xA
λD)−(ε
AλDxA
280)]/[(ε
DλDxε
A280)−(ε
AλDxε
D280)]
C
A=[A
280−(C
Dxε
D280)]/ε
A280
【0139】
次いで、平均DARを、抗体:DAR比=C
D/C
Aに対する薬物濃度の比から算出する。
【0140】
本発明によるイムノコンジュゲートにおいて、抗体は特に、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に特異的である。
【0141】
抗体は、特に、キメラまたはヒト化抗体である。抗体はまた、抗体断片、または二重特異的もしくは多重特異的抗体であってもよい。
【0142】
本発明のイムノコンジュゲート中に含めることを特に企図されるヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に特異的に結合する抗体は、以下の「抗体」のセクションでさらに詳細に説明される。
【0143】
抗体
本発明者らは、ヒトLAMP1に特異的に結合し、非腫瘍組織から腫瘍組織を識別する4つの抗体(いわゆる抗体「MAb1」、「MAb2」、「MAb3」および「MAb4」)を同定した。抗体MAb1、MAb2、MAb3により、細胞外で発現されたLAMP1を初めて検出し、かくして、凍結OCT(最適切削温度の)標本およびAFA(アルコールホルマリン酢酸固定)上でのIHC分析を実施して、非がん組織からがん組織を識別することができた。
【0144】
しかしながら、生体バンクから、または患者の処置前もしくは処置中の病院からの腫瘍組織のIHC分析は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料を用いて日常的に行われている。MAb1、MAb2およびMAb3は凍結OCTおよびAFA(アルコールホルマリン酢酸固定)試料形式でLAMP1膜強化を可能にするが、それらはFFPE形式でのLAMP1強化の検出をもたらすことはできない。その理由の1つは、おそらくタンパク質の複雑性と組み合わせたホルマリン固定の効果である。本発明者らは、FFPE形式でIHC実験のためにさらに用いることができるモノクローナル抗体MAb4の生成を可能にし、かくして、FFPE腫瘍生体バンクおよびFFPE病院試料に対する本明細書で提供される方法の適用を可能にするペプチドを発見した。
【0145】
これらの4つの抗体は、がん細胞における細胞表面に発現されたLAMP1に対する高い結合親和性(ナノモル濃度範囲内)を示した。さらに、少なくとも抗LAMP1 MAb1、MAb2およびMAb3抗体は、実施例4.4に示されるように、LAMP1/抗LAMP1抗体複合体の内在化を誘発する高い能力を示した。
【0146】
さらに、4つの抗体は、カニクイザルLAMP1と交差反応するが、ヒトLAMP2タンパク質とはいかなる交差反応性も示さない。
【0147】
抗体MAb1、MAb2およびMAb3の結合部位は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメイン、特に、ヒトLAMP1の第1の内腔ドメインにマッピングされている。より具体的には、MAb1の結合部位は、ループ1〜2にマッピングされ、MAb2およびMAb3の結合部位はループ1にマッピングされた。抗体MAb1およびMAb2は、ヒトLAMP1への結合について互いに競合しない。従って、LAMP1上の少なくとも2つのエピトープが、本発明の抗体と相互作用することが見出された。
【0148】
抗体MAb4の結合部位は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第3〜第4のループからなるドメイン、特に、ヒトLAMP1の第4のループにマッピングされている。より具体的には、抗体MAb4は、配列番号82の配列からなるヒトLAMP1のアミノ酸360〜375を含むループ4の領域に結合する。
【0149】
本発明者らは、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に対するこれらのモノクローナル抗体の可変重鎖および軽鎖の配列を決定した。
【0150】
いわゆる抗体「MAb1」は、
− FR1−Hがアミノ酸位置1〜25にまたがり、CDR1−Hがアミノ酸位置26〜33にまたがり(配列番号2)、FR2−Hがアミノ酸位置34〜50にまたがり、CDR2−Hがアミノ酸位置51〜58(配列番号3)にまたがり、FR3−Hがアミノ酸位置59〜96にまたがり、CDR3−Hがアミノ酸位置97〜107にまたがり(配列番号4)、およびFR4−Hがアミノ酸位置108〜118にまたがる、配列
【化7】
からなる重鎖の可変ドメインと、
− FR1−Lがアミノ酸位置1〜26にまたがり、CDR1−Lがアミノ酸位置27〜32にまたがり(配列番号6)、FR2−Lがアミノ酸位置33〜49にまたがり、CDR2−Lがアミノ酸位置50〜52にまたがり、FR3−Lがアミノ酸位置53〜88にまたがり、CDR3−Lがアミノ酸位置89〜96にまたがり(配列番号7)、およびFR4−Hがアミノ酸位置97〜106にまたがる、配列
【化8】
からなる軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0151】
いわゆる抗体「MAb2」は、
− FR1−Hがアミノ酸位置1〜25にまたがり、CDR1−Hがアミノ酸位置26〜33にまたがり(配列番号9)、FR2−Hがアミノ酸位置34〜50にまたがり、CDR2−Hがアミノ酸位置51〜58(配列番号10)にまたがり、FR3−Hがアミノ酸位置59〜96にまたがり、CDR3−Hがアミノ酸位置97〜111にまたがり(配列番号11)、およびFR4−Hがアミノ酸位置112〜122にまたがる、配列
【化9】
からなる重鎖の可変ドメインと、
− FR1−Lがアミノ酸位置1〜26にまたがり、CDR1−Lがアミノ酸位置27〜36にまたがり(配列番号13)、FR2−Lがアミノ酸位置37〜53にまたがり、CDR2−Lがアミノ酸位置54〜56にまたがり、FR3−Lがアミノ酸位置57〜92にまたがり、CDR3−Lがアミノ酸位置93〜101にまたがり(配列番号14)、およびFR4−Hがアミノ酸位置102〜111にまたがる、配列
【化10】
からなる軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0152】
本明細書では「MAb2
Can」と呼ばれる、抗体MAb2のバリアントはまた、重鎖の可変ドメイン中のA116Tの置換により、ならびに軽鎖の可変ドメイン中のV9A、V51L、I58L、S72GおよびA108Tの置換により標準的な残基を導入することによっても作成された。
【0153】
いわゆる「抗体MAb2
Can」は、
− 配列
【化11】
からなる重鎖の可変ドメイン、
− 配列
【化12】
からなる軽鎖の可変ドメイン
を含む。
【0154】
キメラ形態下にある「MAb2
Can」と「MAb2」は両方とも、ヒトLAMP1に対する同じ親和性を有する(表13を参照されたい)。
【0155】
いわゆる抗体「MAb3」は、
− FR1−Hがアミノ酸位置1〜25にまたがり、CDR1−Hがアミノ酸位置26〜33にまたがり(配列番号43)、FR2−Hがアミノ酸位置34〜50にまたがり、CDR2−Hがアミノ酸位置51〜58(配列番号44)にまたがり、FR3−Hがアミノ酸位置59〜96にまたがり、CDR3−Hがアミノ酸位置97〜111にまたがり(配列番号45)、およびFR4−Hがアミノ酸位置112〜122にまたがる、配列
【化13】
からなる重鎖の可変ドメインと、
− FR1−Lがアミノ酸位置1〜26にまたがり、CDR1−Lがアミノ酸位置27〜32にまたがり(配列番号47)、FR2−Lがアミノ酸位置33〜49にまたがり、CDR2−Lがアミノ酸位置50〜52にまたがり、FR3−Lがアミノ酸位置53〜88にまたがり、CDR3−Lがアミノ酸位置89〜97にまたがり(配列番号48)、およびFR4−Hがアミノ酸位置98〜107にまたがる、配列
【化14】
からなる軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0156】
MAb3のバリアント(「MAb3 VL R24 R93」)は、MAb3のVL配列中に、以下のアミノ酸置換:N24RおよびK93Rを導入することによって作成された。従って、MAb3 VL_R24_R93の軽鎖の可変ドメインは、
【化15】
からなる。
【0157】
かくして、MAb3 VL_R24_R93のCDR3−Lは、QQYTRLPFT(配列番号52)からなる。
【0158】
いわゆる抗体「MAb4」は、
− FR1−Hがアミノ酸位置1〜25にまたがり、CDR1−Hがアミノ酸位置26〜33にまたがり(配列番号83)、FR2−Hがアミノ酸位置34〜50にまたがり、CDR2−Hがアミノ酸位置51〜58(配列番号84)にまたがり、FR3−Hがアミノ酸位置59〜96にまたがり、CDR3−Hがアミノ酸位置97〜108にまたがり(配列番号85)、およびFR4−Hがアミノ酸位置109〜119にまたがる、配列
【化16】
からなる重鎖の可変ドメインと、
− FR1−Lがアミノ酸位置1〜26にまたがり、CDR1−Lがアミノ酸位置27〜32にまたがり(配列番号86)、FR2−Lがアミノ酸位置33〜49にまたがり、CDR2−Lがアミノ酸位置50〜52にまたがり、FR3−Lがアミノ酸位置53〜88にまたがり、CDR3−Lがアミノ酸位置89〜97にまたがり(配列番号87)、およびFR4−Hがアミノ酸位置98〜107にまたがる、配列
【化17】
からなる軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0159】
抗体はまた、ヒト化抗体またはヒト化抗体の断片であってもよい。例えば、本発明の抗体は、上記で定義された抗体のいずれかのヒト化から生じてもよい。
【0160】
抗体配列のヒト化のためのいくつかの方法が当業界で公知である;例えば、Almagro&Fransson(2008)Front Biosci.13:1619〜1633頁による概説を参照されたい。1つの一般的に用いられる方法は、CDR移植、またはドナー抗体、一般的にはマウス抗体のCDR配列を、異なる特異性のヒト抗体のフレームワーク足場に移植することを含む抗体再形成である。CDR移植は親抗体の結合特異性および親和性、かくして、生物活性を低下させ得るため、CDR移植された抗体の選択された位置に復帰変異を導入して、親抗体の結合特異性および親和性を保持することができる。可能な復帰変異のための位置の同定を、文献および抗体データベース中で入手可能な情報を用いて実施することができる。CDR移植および復帰変異に対する代替的なヒト化技術は、非ヒト起源の表面露出していない残基を保持するが、表面残基をヒト残基に変化させるリサーフェシング(resurfacing)である。別の代替的な技術は、「誘導選択(guided selection)」(Jespers,L.S.ら(1994)Biotechnology 12(9):899〜993頁)として公知であり、これを用いて、マウス抗体から、親抗体のエピトープおよび結合特性を保持する完全ヒト抗体を誘導することができる。特許出願WO2009/032661に開示された分子動力学算出に基づくヒト化の技術を用いることができる。かくして、一実施形態において、ヒト化抗体を、「リサーフェシングされた」抗体と呼ぶこともできる。
【0161】
キメラ抗体について、ヒト化は、典型的には、可変領域配列のフレームワーク領域の改変を含む。
【0162】
CDRの一部であるアミノ酸残基は、典型的には、ヒト化に関連して変化されないが、ある特定の事例では、個々のCDRアミノ酸残基を変化させて、例えば、グリコシル化部位、脱アミド化部位、望ましくないシステイン残基、ADCの場合、リシン残基を除去することが望ましい場合がある。N結合グリコシル化は、トリペプチド配列Asn−X−SerまたはAsn−X−Thr(式中、XはPro以外の任意のアミノ酸であってよい)中のアスパラギン残基へのオリゴ糖鎖の結合により生じる。N−グリコシル化部位の除去を、特に、例えば、保存的置換により、AsnまたはSer/Thr残基のいずれかを異なる残基に変異させることにより達成することができる。アスパラギンおよびグルタミン残基の脱アミド化は、pHおよび表面露出のような因子に依存して起こり得る。アスパラギン残基は、主に配列Asn−Gly中に存在する場合、脱アミド化の影響を特に受けやすく、Asn−Alaのような他のジペプチド配列中ではその程度はより低い。そのような脱アミド化部位、特に、Asn−GlyがCDR配列中に存在する場合、従って典型的には、関与する残基の1つを除去するための保存的置換によってその部位を除去することが望ましい場合がある。ADCの場合、mAbへの細胞傷害剤の結合を、リシン側鎖残基への共有的連結により製造することができる。この立体障害は、抗原に結合するmAbを阻害し得る。従って、典型的には、アルギニン保存的置換により、リシン残基を除去することが望ましい場合がある。関与する残基の1つを除去するためのCDR配列中の置換もまた、本発明により包含されることが意図される。本発明者らはさらに、実施例7.2.1および本明細書の以下に記載されるCDR移植および/または分子力学的軌跡(4Dヒト化プロトコール)に基づいてヒト化抗体「huMAb1_1」、「huMAb1_2」、「huMAb1_3」を作成した。
【0163】
従って、一実施形態において、本発明の文脈における抗LAMP1抗体は、CDR移植により、および/または分子力学的軌跡(4Dヒト化プロトコール)に基づいて得られるヒト化抗LAMP1抗体である。
【0164】
従って、ある実施形態において、ヒト化抗LAMP1抗体「huMAb1_1」は、
− 配列
【化18】
からなる重鎖の可変ドメイン(VH1)、および
− 配列
【化19】
からなるhuMAb1_1の軽鎖の可変ドメイン(VL1)
を含む。
【0165】
ヒト化抗体「huMAb1_2」は、
− 配列
【化20】
からなる重鎖の可変ドメイン(VH2)、および
− 配列
【化21】
からなる軽鎖の可変ドメイン(VL2)
を含む。
【0166】
ヒト化抗体「huMAb1_3」は、
− 配列
【化22】
からなる重鎖の可変ドメイン(VH3)、および
− 配列
【化23】
からなる軽鎖の可変ドメイン(VL3)
を含む。
【0167】
本発明は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に特異的に結合する抗体に関する。
【0168】
「親和性」は、理論的には、全抗体と抗原との間の平衡会合により定義される。それを、表面プラズモン共鳴を用いる会合および解離速度の測定または免疫化学アッセイ(ELISA、FACS)におけるEC
50の測定のような様々な公知の方法によって実験的に評価することができる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、液体試料または湿潤試料中の、物質、通常は抗原の存在を検出するための固相酵素免疫アッセイを用いる生化学アッセイである。試料由来抗原を、表面に結合させる。次いで、さらなる特異的抗体を表面上に加え、それを抗原に結合させることができる。この抗体は酵素に連結され、最終工程において、酵素の基質を含有する物質を添加する。その後の反応は、検出可能なシグナル、最も多くは、基質中での色の変化を生成する。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、各細胞の特異的光散乱および蛍光特性に基づいて、1つの細胞を同時に、生物細胞の異種混合物を2つまたはそれ以上の容器中で選別するための方法を提供する。これらのアッセイにおいて、EC
50は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)による規定濃度の抗原またはFACS(蛍光活性化細胞選別)による抗原を発現する細胞へのある特定の曝露時間後のベースラインと最大との間の中間の応答を誘導する抗体の濃度である。
【0169】
抗原1(Ag1)に結合するモノクローナル抗体は、EC
50が両抗原について類似する範囲にある場合、抗原2(Ag2)と「交差反応」する。本出願において、Ag1に結合するモノクローナル抗体は、Ag2の親和性とAg1の親和性との比が10以下(特に、5、2、1または0.5)である場合、Ag2と交差反応し、その親和性は両抗原について同じ方法を用いて測定される。
【0170】
Ag1に結合するモノクローナル抗体は、親和性が2つの抗原について非常に異なる場合、Ag2と「有意に交差反応しない」。Ag2に対する親和性は、結合応答が低すぎる場合、測定可能でなくてもよい。本出願において、Ag1に結合するモノクローナル抗体は、Ag2に対するモノクローナル抗体の結合応答が、同じ実験設定および同じ抗体濃度でAg1に対する同じモノクローナル抗体の結合応答の5%未満である場合、Ag2と有意に交差反応しない。実際には、用いられる抗体濃度は、EC
50またはAg1を用いて得られる飽和プラトーに達するのに必要とされる濃度であってもよい。
【0171】
モノクローナル抗体は、それがAg2と有意に交差反応しない場合、Ag1に「特異的に結合する」。
【0172】
本発明による抗体は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に特異的に結合する。それは、ヒトLAMP2(配列番号40)と有意に交差反応しない。
【0173】
一実施形態において、本発明による抗体は、組換え細胞系の細胞表面に発現されるヒトおよび/またはカニクイザルLAMP1に対する親和性(EC
50)を有し、ここで、細胞系はHEK293および/またはHCT116であってもよく、フローサイトメトリーにより測定される見かけの親和性は、70nM以下、例えば、60nM以下、50nM以下、45nM以下、40nM以下、35nM以下、30nM以下、25nM以下、20nM以下、15nM以下または10nM以下である。
【0174】
一実施形態において、本発明による抗体は、組換え細胞系の細胞表面に発現される完全長ヒトおよびカニクイザルLAMP1に対する親和性(EC
50)を有し、ここで、細胞系はHCT116であってもよく、フローサイトメトリーにより測定される見かけの親和性は、20nM以下、特に、10nM以下、8nM以下または7nM以下である。
【0175】
一例において、本発明による抗体は、組換え細胞系の細胞表面に発現されるカニクイザルLAMP1に対する親和性(EC
50)を有し、ここで、細胞系はHEK293であってもよく、フローサイトメトリーにより測定される見かけの親和性は、50nM以下、例えば、40nM以下または35nM以下である。
【0176】
別の例において、本発明による抗体は、HEK293細胞中で発現される完全に精製されたヒトLAMP1(配列番号28)に対するKDを有し、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定されるKDは、70nM以下、例えば、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下または10nM以下である。
【0177】
決定するための表面プラズモン共鳴の使用は、当業者には公知である。一例において、例えば、マウス、キメラまたはヒト化抗LAMP1 mAbの結合速度論を、典型的には、BIAcore2000(BIAcore Inc.、Uppsala、NJ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイにより決定した。従って、例えば、CM5 BIAcoreバイオセンサーチップを機器にドッキングし、例えば、室温で1:1 NHS/EDC 70μLを用いて活性化した。典型的には、マウス抗αヒトFc IgG1(BIAcore番号BR−1008−39)およびウサギ抗αマウスFc IgG1(BIAcore番号BR−1008−38)(1M酢酸緩衝液、pH5中の50μg/mL)を、全てのフローセル中の活性化されたチップ上に固定化した。固定化を、飽和するまで、例えば10μL/分の流速で実行した。次いで、例えば、エタノールアミン−HCl、pH8.5 70μLの注入することによりチップをブロッキングし、次いで、抗αヒトFc IgG1については3M MgCl
2で1回の洗浄および抗αマウスFc IgG1については10mMグリシン−HCl pH1.7で1回の洗浄をした。例えば、LAMP1への抗LAMP1 mAbの結合を測定するために、抗体をBIAcoreランニング緩衝液(HBS−EP)中、1〜5μg/mLで用いた。例えば、抗原(実施例6.2に記載のように生成される配列番号28のタンパク質)を、例えば、1〜256nMで注入した。注入期間の完了後、典型的には600秒間同じ流速でBIAcoreランニング緩衝液中で解離をモニタリングした。典型的には、表面を、例えば、抗αヒトFc IgG1については2x5μLの3M MgCl
2(2x30秒)および抗αマウスFc IgG1については1x30μLの10mMグリシン−HCl pH1.7(180秒)を用いて注入と注入の間で再生した。個々のセンサーグラムを、典型的には、BIAevaluationソフトウェアを用いて分析した。
【0178】
かくして、本発明によるポリペプチドを、サルにおいて実施される毒性試験において用いることができ、ここで、これらの試験から得られる毒性プロファイルは、ヒトにおける潜在的な有害効果を予測するのに関連する。
【0179】
あるいは、またはさらに、本発明による抗体は、進行性のヒト原発性結腸腫瘍CR−IGR−034Pの表面上に発現されるLAMP1に対する親和性(EC
50)を有し、フローサイトメトリーにより測定されるのは、50nM以下、40nM以下、特に、30nM以下、20nM以下または5nM以下である。
【0180】
抗体結合能力またはABCは、細胞表面抗原の定量である。ABCを、QIFIKIT(登録商標)(BIOCYTEXの登録商標)を用いて測定することができる。本発明による抗体は、異なる起源の多くの患者由来異種移植片(20.000以上、特に、50.000以上、100.000以上、150.000以上のABC)および腫瘍細胞系、特に、Colo205、SW480またはLS174Tのような結腸腫瘍細胞(1.500以上、2.500以上、4.000以上のABC)に対する高いABCを有する。
【0181】
あるいは、またはさらに、本発明による抗体は、LAMP1を細胞膜に内在化させ、再循環する能力を有する。特に、本発明による抗体により結合した場合、がん細胞の膜にあるLAMP1の分子は、細胞膜で少なくとも1、4、7または9回の再循環を受ける能力を有する。換言すれば、がん細胞の表面に発現される1分子のLAMP1を、少なくとも2、5、8または10分子の本発明による抗体により結合させ、従って、内在化させることができる。さらに換言すれば、ある実施形態によれば、少なくとも2、5、8または10分子の本発明による抗体は、がん細胞の表面に発現される1分子のLAMP1により内在化される。
【0182】
内在化を、例えば、内在化スコアを決定することによるか、または蛍光に基づくクエンチング法によりアッセイすることができる。
【0183】
内在化スコア(IS)は、細胞内部の蛍光強度と、全細胞の強度との比として定義される。それを、イメージングフローサイトメーターImageStream
x(供給業者Amnis(登録商標)Corporation、2505 Third Avenue、Suite 210、Seattle、WA 98121−1480、www.amnis.comから)を用いることにより記載のように測定することができる。スコアが高くなるほど、細胞内部の蛍光強度は高くなる。Amnis(www.amnis.comを参照されたい)により記載されたように、細胞の内部は、細胞の膜に適合するマスクの浸食により定義される。スコアは、細胞サイズに対して不変であり、濃く明るい領域および小さく薄いスポットに適合することができる。その比は{−inf、inf}間の値にダイナミックレンジを増加させるように対数尺度でマッピングされる。膜の厚さ(ピクセル)は、細胞の境界および膜ポーションを規定するためにどのピクセルが用いられるかを決定するものである。ユーザーは、細胞の内部、ピクセル中の膜の厚さおよび対象の蛍光チャンネルを包含する明視野画像に基づいて「内部」マスクを供給する。細胞は2つの領域:外部(B)および内部(I)に分割される。ユーザーは、マスクとして内部領域を供給する。外部領域を、1.内部マスクを膜の厚さで拡張する、2.1と、対象のチャンネルの対象マスクとを組み合わせる、3.外部領域はマスク2に等しく、内部マスクとは等しくない、によって決定する。次に、各領域中のピクセルの上位四分位点の平均強度を決定する。次いで、内在化スコア(IS)を、以下のように計算する:
【数1】
(式中、
【数2】
であり、
mI=Iにおける上位四分位点ピクセルの平均強度であり、mB=Bにおける上位四分位点ピクセルの平均強度であり、
pI=Iにおける上位四分位点ピクセルのピーク強度であり、pB=Bにおける上位四分位点ピクセルのピーク強度である)。
【0184】
トランスフェリンの場合(Williams A.ら、1996、Biomembranes、4:255〜287頁)、著者らは、細胞を氷上に静置した場合は0のISおよび細胞を37℃で1時間インキュベートした場合は0.9のISを得た。
【0185】
本発明の抗体について、本発明者らは、37℃での内在化スコア(IS)が4℃でのそれよりも10倍高いことを示した。抗体の内在化は4℃では起こらないため、4℃で得られた内在化スコアは細胞表面でのLAMP1分子の密度を反映する。従って、4℃でのISパラメータよりも37℃でのISパラメータの値が10倍高い場合、LAMP1タンパク質が細胞膜で迅速かつ反復的に再循環していることを意味する。換言すれば、本発明による抗体は、細胞表面でのLAMP1タンパク質の密度から算出される能力よりもはるかに高い、非常に高い内在化能力を有する。
【0186】
内在化の定量を、蛍光に基づくクエンチング法によって実施することもできる。特に、蛍光に基づくAlexa488クエンチング法が、標的化剤の内在化を分析するために記載されている(Frejdら、2010、International Journal of Oncology、36:757〜763頁)。前記記載によれば、内在化は、以下の式:
【数3】
に従って、37℃でのクエンチされていない細胞(細胞表面と細胞内区画との両方)の平均蛍光強度(MFI)値で除算したクエンチされた細胞(細胞内区画のみ)のMFI値として算出される。
【0187】
抗体の内在化は4℃では起こらないため、4℃でAlexa488標識化合物と共にインキュベートした細胞を、対照として用いる。
【0188】
本発明者らは、クエンチングの後、37℃で標識された細胞(細胞表面と細胞内区画との両方)から測定されたAlexa488−MAb1の総蛍光は、4時間後、4℃で標識された細胞(細胞表面)の蛍光よりも10倍高いことを示した(実施例4.4)。従って、これらの結果はまた、LAMP1タンパク質が細胞膜で迅速かつ反復的に再循環していることも示している。
【0189】
かくして、本発明者らは、LAMP1が抗体の内在化を媒介する受容体として機能し、特定の内在化抗体の利用可能性ががん細胞の内部に特異的に送達しようとする毒素、薬物または短距離同位体を標的化するための新規治療方法を開発するのに役立つはずであることを示唆することができることを初めて示した。
【0190】
さらに、本発明者らは、総合すれば、実施例4.4からの結果が、各LAMP1分子が実験経過中に細胞膜での再循環を介していくつか(少なくとも平均で最大10)の内在化サイクルに関与すると示唆することを示すことができた。
【0191】
本発明の抗体は、特に、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインに特異的に結合する。ヒトLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインは、配列番号24のアミノ酸Ala29〜Ile309により定義され、カニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインは、配列番号39のアミノ酸Ala27〜Thr307により定義される。ある実施形態によれば、本発明の抗体は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1の内腔ドメインに特異的に結合する。
【0192】
ヒトLAMP1の第1の内腔ドメインは、配列番号24の位置Ala29〜Arg195のアミノ酸により定義され、カニクイザルLAMP1タンパク質の第1の内腔ドメインは、配列番号39の位置Ala27〜Arg193のアミノ酸により定義される。より具体的には、抗体は、可溶性細胞外ドメイン(例えば、ヒトLAMP1(配列番号24)のアミノ酸Ala29〜Met382もしくはカニクイザルLAMP1(配列番号39)のAla27〜Met380)として、または細胞系、例えば、HT29、Colo205およびHCT116、HEK293細胞系の表面に組換え的に発現される膜に固定された型完全長LAMP1タンパク質として区別無く発現されるヒトおよびカニクイザルの第1の内腔ドメインに結合することができる。本発明者らは、MAb1が、ヒトLAMP1のループ2、例えば、本明細書中、実施例4.8に記載されるように、配列番号24のアミノ酸101〜110(配列番号72)、144〜157(配列番号73)および174〜188(配列番号74)に対応する配列番号24のアミノ酸101〜195に結合することを示した。MAb1の結合部位が配列番号24のループ1に位置するアミノ酸Asn35、Cys80、Gly81、Glu83、Asn84をさらに包含することが、結晶解析によりさらに同定された。
【0193】
従って、MAb1はまた、ヒトLAMP1のループ1、例えば、配列番号24の位置35〜84のアミノ酸(配列番号97)からなる領域、または配列番号24のAsn35および配列番号24の位置80〜84のアミノ酸からなる2つの領域に対応する配列番号24の位置29〜100のアミノ酸に結合する。
【0194】
さらに、MAb2とMAb3は両方とも、ヒトLAMP1のループ1に対応する配列番号24のアミノ酸29〜100(配列番号77)に結合し、例えば、MAb2とMAb3は両方とも、配列番号24のアミノ酸29〜41(配列番号75)および68〜80(配列番号76)に結合する。
【0195】
さらなる抗体において、本発明の抗体は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第2の内腔ドメイン、例えば、第4のループに特異的に結合する。
【0196】
ヒトLAMP1タンパク質の第4のループは、配列番号24の位置Leu310〜Met382のアミノ酸からなり、カニクイザルLAMP1タンパク質の第4のループは、配列番号39の位置Leu308〜Met380のアミノ酸からなる。
【0197】
より具体的には、抗体は、配列番号82の配列からなるヒトLAMP1のアミノ酸360〜375を含むループ4の領域に結合する。
【0198】
別の実施形態において、本発明の抗体は、非グリコシル化またはグリコシル化形態にあるかと区別無く、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質に特異的に結合する。
【0199】
従って、ある実施形態において、本発明は、
− それぞれ配列番号72、配列番号73および配列番号74の配列からなるヒトLAMP1のループ2の3つの領域、ならびに場合によりさらに、配列(配列番号97)からなるヒトLAMP1のループ1の領域;または
− それぞれ配列番号75および配列番号76の配列からなるヒトLAMP1のループ1の2つの領域;または
− 配列番号82の配列からなるヒトLAMP1のループ4の領域
に結合する抗体に関する。
【0200】
さらに、本発明者らは、実施例6.5に記載のようにMAb1と相互作用する可能性が高いとして配列番号24の残基R146、D150、K152、R106、A108、N181、S182、S183、R186およびG187を同定した。本発明者らは、MAb2および/またはMAb3と相互作用する可能性が高いとして配列番号24の残基A29、M30、M32、G36、A40、S69、D70、T72、V74、L75、およびR77をさらに同定した。これらの残基は、実施例6.6に記載のように、hLAMP1_ΔGYQTIから誘導され、プラスミドpXL5626中にコードされるLAMP1配列中のアラニン残基により個別に置き換えられている。本発明者らは、LAMP1タンパク質中の配列番号24の位置I149、D150およびR186のアラニン変異についてMAb1への結合の喪失を観察したが、これは、これらの位置がLAMP1へのMAb1結合にとって重要であることを示している。さらに、結合の喪失は、LAMP1タンパク質中のAla置換のため配列番号24の位置G38およびD70のアラニン変異についてMAb3に対してLAMP1について証明されたが、これは、これらの位置がLAMP1へのMAb3結合にとって重要であることを示している。
【0201】
従って、ある実施形態において、本発明は、
− 配列番号24のアミノ酸I149、D150およびR186、または
− 配列番号24のアミノ酸G38およびD70、または
に結合する抗体に関する。
【0202】
本発明はまた、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメインへの結合について、いわゆる抗体Mab1、Mab2、MAb2
Can、MAb3、MAb3 VL_R24_R93、huMAb1_1およびヒトMAb1_2、huMAb1_3からなる群から選択される抗体、すなわち、
(i)配列番号1の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号5の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(ii)配列番号8の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号12の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(iii)配列番号15の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号16の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(iv)配列番号42の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号46の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(v)配列番号42の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号51の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(vi)配列番号53の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号56の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(vii)配列番号54の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号57の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体;または
(viii)配列番号55の配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号58の配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体
と競合する抗体も提供する。
【0203】
ある実施形態において、前記抗体は、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1の内腔ドメインへの結合について競合する。例えば、本発明は、
− それぞれ、配列番号72、配列番号73および配列番号74の配列からなるヒトLAMP1のループ2の3つの領域;または
− それぞれ、配列番号75および配列番号76の配列からなるヒトLAMP1のループ1の2つの領域
への結合について、必要に応じて、上記のi〜viii)に記載のように定義された重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインを含む抗体(すなわち、上記のiおよびvi〜viii)に記載のように定義された抗体についてはループ2の前記3つの領域、またはii〜v)に記載のように定義された抗体についてはループ1の前記2つの領域)と競合する抗体を提供する。
【0204】
一実施形態において、競合は、本明細書の実施例4.8に記載のようなELISAの使用により決定され、ここで、競合は2つの競合する抗体が類似するモル濃度で溶液中にある場合、吸収により評価された場合、mAb対照のみと比較したシグナルの80%未満のシグナルにより定義され、競合は、80%未満、例えば、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%未満のシグナルにより定義される。
【0205】
ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1〜第3のループからなるドメイン、特に、第1の内腔ドメインへの結合について、いわゆる抗体MAb1、MAb2、MAb2
Can、MAb3、MAb3_VLR24−R93、huMAb1_1、huMAb1_2およびhuMAb1_3(以後、「参照」抗体)からなる群から選択される抗体の可変重鎖および軽鎖を含む抗体と競合する抗体の能力を、例えば、抗原(すなわち、LAMP1の第1〜第3のループ、または第1の内腔ドメインを含む、ヒトもしくはカニクイザルLAMP1の断片を含むか、またはそれからなるポリペプチド、特に、実施例6.3に提示されるようなヒトおよびカニクイザル起源に由来するLAMP1の第1の内腔ドメインを含有するタンパク質)を固相支持体に結合させ、それぞれ、候補抗体と参照抗体とを含有する2つの溶液を添加し、抗体を、抗原への結合について競合させる競合的ELISAによって容易にアッセイすることができる。次いで、抗原に結合した参照抗体の量を測定し、陰性対照に対して測定された場合の抗原に結合した参照抗体の量と比較することができる。陰性対照の存在下での結合した参照抗体の量と比較して減少した候補抗体の存在下での結合した参照抗体の量は、候補抗体が参照抗体と競合したことを示す。便宜上、参照抗体を標識(例えば、蛍光的に)して、結合した参照抗体の検出を容易にすることができる。反復測定を、候補および/または参照抗体の連続希釈液を用いて実施することができる。
【0206】
別の例において、MAb1と、MAb2またはMAb3との結合競合を、典型的には、プレート上でコーティングした組換えヒトLAMP1を用いるELISA(実施例6.2に記載のような)により2つの抗LAMP1 mAb間で測定することができる。簡単に言えば、典型的には、2つのmAbを、例えば、0.06および15mg/Lの濃度で同時に添加したが、典型的には0.06mg/Lの濃度がEC
50に近い。2つのmAbが異なるFcドメイン(ヒトまたはマウスのいずれか)を有するようにMAb形式を選択した。mAb結合の個々の測定を、典型的には、Fcへの(例えば、ペルオキシダーゼ−AffiniPureヤギ抗ヒトIgG Ab、Fcγ断片特異的(Jackson 109−035−098)またはペルオキシダーゼ−AffiniPureヤギ抗マウスIgG Ab、Fcγ断片特異的(Jackson 115−035−164)との)そのユニークな特異的結合により実施することができた。その結果を、同じ濃度のmAbのみから得られた値のパーセンテージとして報告した。
【0207】
特に、本発明による抗体は、いわゆる抗LAMP1抗体MAb1、MAb2およびMAb3の1つの重鎖および/または軽鎖のCDR配列を含む。より具体的には、抗体は、いわゆる抗体LAMP1抗体MAb1、MAb2、MAb3およびMAb3 VL_R24_R93の1つの重軽鎖のCDR配列、または重鎖および軽鎖のCDR配列を含んでもよい。
【0208】
従って、本発明の抗体は、
(i)配列番号2の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号2と異なる配列のCDR1−H、配列番号3の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号3と異なる配列のCDR2−H、および配列番号4の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号4と異なる配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号6の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号6と異なる配列のCDR1−L、配列DTSもしくは1個のアミノ酸置換によりDTSと異なる配列のCDR2−Lおよび配列番号7の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号7と異なる配列のCDR3−L;または
(ii)配列番号9の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号9と異なる配列のCDR1−H、配列番号10の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号10と異なる配列のCDR2−H、配列番号11の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号11と異なる配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号13の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号13と異なる配列のCDR1−L、配列AASもしくは1個のアミノ酸置換によりAASと異なる配列のCDR2−Lおよび配列番号14の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号14と異なる配列のCDR3−L;または
(iii)配列番号43の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号43と異なる配列のCDR1−H、配列番号44の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号44と異なる配列のCDR2−H、および配列番号45の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号45と異なる配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号49の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号47と異なる配列のCDR1−L、配列YTSもしくは1個のアミノ酸置換によりYTSと異なる配列のCDR2−Lおよび配列番号48もしくは配列番号52の配列もしくは1個のアミノ酸置換により配列番号48もしくは配列番号52の配列と異なる配列のCDR3−L
を含んでもよい。
【0209】
さらなる実施形態において、本発明による抗体は、いわゆる抗LAMP1抗体MAb4の重鎖および/または軽鎖のCDR配列を含む。より具体的には、抗体は、いわゆる抗LAMP1抗体MAb4の重軽鎖のCDR配列、または重鎖および軽鎖のCDR配列を含んでもよい。
【0210】
従って、本発明の抗体は、配列番号83の配列のCDR1−H、配列番号84の配列のCDR2−H、配列番号85の配列のCDR3−H、配列番号86の配列のCDR1−L、配列NAKのCDR2−L、および配列番号87の配列のCDR3−Lを含んでもよい。
【0211】
さらに、本発明の抗体は、配列番号98の配列の重鎖および/もしくは配列番号99の配列の軽鎖(すなわち、実施例17.2.3に記載のMAb4の重鎖および/または軽鎖)を含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0212】
一実施形態において、この抗体は、キメラ、ヒト化、または抗体断片であってもよい。
【0213】
本発明の抗体において、1つの個々のアミノ酸を、上記CDR配列の1つまたはそれ以上(特に、1つのみ)における、置換、特に、保存的置換により変化させることができる。そのような変化は、例えば、抗体のヒト化と関連する、グリコシル化部位または脱アミド化部位を除去することを意図してもよい。また、リシン側鎖残基による細胞傷害剤への共有結合は、ADCの場合、抗原への結合を阻害し得るため、別の変化は、CDR中のリシンを除去することを意図することもできる。例えば、配列番号48および配列番号52は、その位置5において1つのアミノ酸置換により異なるCDR3−L配列である。
【0214】
ある実施形態によれば、抗体は、
(i)配列番号2の配列のCDR1−H、配列番号3の配列のCDR2−H、および配列番号4の配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号6の配列のCDR1−L、配列DTSのCDR2−L、および配列番号7の配列のCDR3−L;または
(ii)配列番号9の配列のCDR1−H、配列番号10の配列のCDR2−H、配列番号11の配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号13の配列のCDR1−L、配列AASのCDR2−L、および配列番号14の配列のCDR3−L;または
(iii)配列番号43の配列のCDR1−H、配列番号44の配列のCDR2−H、および配列番号45の配列のCDR3−H、ならびに/もしくは
配列番号47の配列のCDR1−L、配列YTSのCDR2−L、および配列番号48もしくは配列番号52の配列のCDR3−L
を含む。
【0215】
特に、抗体は、
(i)配列番号2の配列のCDR1−H、配列番号3の配列のCDR2−H、配列番号4の配列のCDR3−H、ならびに/もしくは
配列番号6の配列のCDR1−L、配列DTSのCDR2−L、および配列番号7の配列のCDR3−L;または
(ii)配列番号9の配列のCDR1−H、配列番号10の配列のCDR2−H、配列番号11の配列のCDR3−H、ならびに/もしくは
配列番号13の配列のCDR1−L、配列AASのCDR2−L、および配列番号14の配列のCDR3−L;または
(iii)配列番号43の配列のCDR1−H、配列番号44の配列のCDR2−H、配列番号45の配列のCDR3−H、ならびに/もしくは
配列番号47の配列のCDR1−L、配列YTSのCDR2−L、および配列番号48もしくは配列番号52の配列のCDR3−L、または
(iv)(i)、(ii)、もしくは(iii)に定義された抗体の断片
を含んでもよい。
【0216】
本発明者らは、実施例7.3.1に記載のプロトコールに従って非グリコシル化LAMP1タンパク質との複合体中のループ1およびループ2に結合すると同定されたhuMAb1_1に由来する組換えFabを結晶化した。LAMP1との複合体中のhuMab1_1の三次元構造の決定に基づいて、そのCDRの多くを、上記のAl−Lazikini、LeskおよびChothia(1997)J.Mol.Biol.273:927〜948頁で参照されたような特定の標準構造と関連付けることができる。結晶構造により、前記標準構造を阻害することなくCDR中に導入することができる変異を決定することができた。前記標準構造の阻害は、結合挙動の改変をもたらすことが当業者には公知である。かくして、彼らは、結晶構造を分析することにより、CDR1−L中に位置する配列番号68のQ27およびD28を、ループが標準構造2Bを保持する限り任意のアミノ酸により置き換えることができ、配列番号68のI29を、等価な疎水性残基、例えば、LeuまたはValにより置き換えることができることを同定した。配列番号68のT51および配列番号68のS52は、両方ともCDR2−L中に位置し、このループが古典的なγ−ターンコンフォメーションを保持する限り、T51の場合、Serにより、S52の場合、任意のアミノ酸により置き換えることができる。CDR3−L中に位置する、配列番号68の残基D92、N93、L94を、ループが標準構造λ1Bを保持する限り、任意のアミノ酸により置き換えることができる。さらに、ループが標準構造1を保持する限り、CDR−1H中に位置する、配列番号69のG26を任意のアミノ酸により、CDR−1H中に位置する、配列番号69のY27をフェニルアラニンにより、CDR−1H中に位置する、配列番号69のT30を任意のアミノ酸により置き換えることができる。CDR−3H中に位置する、配列番号69の残基D102、V103およびA104を、類似するサイズおよび特性の任意のアミノ酸により置き換えることができる。
【0217】
従って、本発明は、それぞれ、配列番号72、配列番号73および配列番号74の配列からなるヒトLAMP1のループ2の3つの領域に結合する抗体であって、
a)配列X
1X
2X
3DRY(配列番号93)(式中、X
1およびX
2はそれぞれ任意のアミノ酸であり、X
3はIle、LeuおよびValから選択される)からなるCDR1−L;ならびに
配列DX
1X
2(式中、X
1はTもしくはSから選択され、X
2は任意のアミノ酸である)からなるCDR2−L;ならびに
配列LQYX
1X
2X
3WT(式中、X
1、X
2およびX
3は任意のアミノ酸である)からなるCDR3−L;ならびに/または
b)配列X
1X
2IFX
3NYN(配列番号82)(式中、X
1およびX
3はそれぞれ任意のアミノ酸であり、X
2はTyrもしくはPheから選択される)からなるCDR1−H;ならびに配列番号3からなるCDR2−H;ならびに配列VRANWX
1X
2X
3FAY(配列番号84)(式中、X
1、X
2、X
3はそれぞれ任意のアミノ酸である)からなるCDR3−H
を含む抗体を提供する。
【0218】
一実施形態において、前記抗体は、ループ2に結合する能力を保持する。
【0219】
当業者であれば、定義された抗体が、それぞれ配列番号72、配列番号73および配列番号74の配列からなるヒトLAMP1のループ2の3つの領域に結合するその能力を保持するかどうかを検証する方法を知っており、かくして、標準構造の阻害に悩まされない。
【0220】
本発明はまた、いわゆる抗LAMP1抗体MAb1、MAb2、MAb2
Can、MAb3、MAb3 VL_R24_R93、huMAb1_1およびhuMAb1_2、huMAb1_3、例えば、MAb1、MAb2、MAb2
Can、MAb3,MAb3 VL_R24_R93の1つの少なくとも重鎖の可変ドメインおよび/または軽鎖の可変ドメインをさらに含む上記で定義された抗体も提供する。
【0221】
かくして、本発明は、特に、
(i)配列番号1の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号5の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン;または
(ii)配列番号8の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号12の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン;または
(iii)配列番号15の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号16の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン;または
(iv)配列番号42の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号46もしくは配列番号51の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン;または
(v)配列番号53の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号56の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン;または
(vi)配列番号54の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号57の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン;または
(vii)配列番号55の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/もしくは配列番号58の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメイン
を含む抗体に関する。
【0222】
一実施形態において、本発明は、
(i)配列番号2の配列のCDR1−H、配列番号3の配列のCDR2−H、および配列番号4の配列のCDR3−H、ならびに/もしくは
配列番号6の配列のCDR1−L、配列DTSのCDR2−L、および配列番号7の配列のCDR3−L;または
(ii)配列番号9の配列のCDR1−H、配列番号10の配列のCDR2−H、配列番号11の配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号13の配列のCDR1−L、配列AASのCDR2−L、および配列番号14の配列のCDR3−L;または
(iii)配列番号43の配列のCDR1−H、配列番号44の配列のCDR2−H、および配列番号45の配列のCDR3−H;ならびに/もしくは
配列番号47の配列のCDR1−L、配列YTSのCDR2−L、および配列番号48もしくは配列番号52の配列のCDR3−L;または
(iv)配列番号83の配列のCDR1−H、配列番号84の配列のCDR2−H、配列番号85の配列のCDR3−H、ならびに/もしくは配列番号86の配列のCDR1−L、配列NAKのCDR2−L、および配列番号87の配列のCDR3−L;もしくは配列番号60の配列の重鎖もしくは配列番号59の配列の軽鎖;または
(v)配列番号62の配列の重鎖もしくは配列番号61の配列の軽鎖;または
(vi)配列番号64の配列の重鎖もしくは配列番号63の配列の軽鎖
を含む、単離された抗LAMP1抗体に関する。
【0223】
例えば、重鎖または軽鎖の可変ドメインの配列は、1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換、特に、1つもしくはそれ以上の保存的アミノ酸置換および/または標準的な残基を含む置換により、配列番号1、5、8、12、15、16、42、46または51、53、56、54、57、55、58の参照配列、例えば、必要に応じて、配列番号1、5、8、12、15、16、42、46または51と異なっていてもよい。
【0224】
特に、重鎖または軽鎖の可変ドメインの配列は、保存的アミノ酸置換のみにより、配列番号1、5、8、12、15、16、42、46または51、53、56、54、57、55、58の参照配列、例えば、配列番号1、5、8、12、15、16、42、46または51と異なっていてもよい。
【0225】
配列番号1、5、8、12、15、16、42、46または51、53、56、54、57、55、58の配列、例えば、配列番号1、5、8、12、15、16、42、46または51と比較した配列変化は、特に、本質的には1つまたはそれ以上のフレームワーク領域、FR1−L、FR2−L、FR3−L、FR4−Lおよび/またはFR1−H、FR2−H、FR3−H、FR4−H中に存在する。
【0226】
しかしながら、1つまたはそれ以上のCDR中のアミノ酸置換も可能である。
【0227】
本発明はまた、いわゆる抗LAMP1抗体MAb4の1つの少なくとも重鎖の可変ドメインおよび/または軽鎖の可変ドメインをさらに含む、上記で定義された抗体も提供する。
【0228】
かくして、本発明は、特に、配列番号88の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖の可変ドメインおよび/または配列番号89の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖の可変ドメインを含む抗体に関する。
【0229】
本発明による抗体は、特に、従来の抗体、特に、従来のモノクローナル抗体、または抗体断片、二重特異的または多重特異的抗体である。
【0230】
ある実施形態によれば、本発明による抗体は、IgG、もしくはその断片を含むか、またはそれからなる。
【0231】
本発明の抗体およびその断片は、それぞれ、マウス抗体およびマウス抗体の断片であってもよい。
【0232】
抗体はまた、キメラ抗体であってもよく、特に、マウス/ヒト抗体、例えば、重鎖および軽鎖のマウス可変ドメインと、ヒト抗体に由来するCHドメインおよびCLドメインとを含む抗体であってもよい。抗体は、そのような抗体の断片であってもよい。
【0233】
ある実施形態によれば、本発明の抗体は、
a)配列番号17の配列の重鎖および/もしくは配列番号18の配列の軽鎖(すなわち、実施例7に記載のchMAb1の重鎖および/または軽鎖)を含む、もしくはそれからなるキメラ抗体;または
b)配列番号19の配列の重鎖および/もしくは配列番号20の配列の軽鎖(すなわち、実施例7に記載のchMAb2の重鎖および/または軽鎖)を含む、もしくはそれからなるキメラ抗体;または
c)配列番号21の配列の重鎖および/もしくは配列番号22の配列の軽鎖(すなわち、実施例7に記載のchMAb2
Canの重鎖および/または軽鎖)を含む、もしくはそれからなるキメラ抗体;または
d)配列番号49の配列の重鎖および/もしくは配列番号50の配列の軽鎖(すなわち、chMAb3の重鎖および/または軽鎖)を含む、もしくはそれからなるキメラ抗体;または
e)配列番号49の配列の重鎖および/もしくは配列番号81の配列の軽鎖(すなわち、chMAb3_VLR24−R93の重鎖および/または軽鎖)を含む、もしくはそれからなるキメラ抗体;または
f)a)、b)、c)、d)およびe)に定義されたキメラ抗体の断片
である。
【0234】
また、本発明の抗体は、ヒト化抗体であってもよい。かくして、ある実施形態によれば、本発明の抗体は、
i)配列番号60の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖および/もしくは配列番号59の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖(すなわち、実施例7.2に記載のhuMAb1_1の重鎖および/もしくは軽鎖);または
ii)配列番号62の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖および/もしくは配列番号61の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖(すなわち、実施例7.2に記載のhuMAb1_2の重鎖および/もしくは軽鎖);または
iii)配列番号64の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の重鎖および/もしくは配列番号63の配列もしくはそれと少なくとも85%同一である配列の軽鎖(すなわち、実施例7.2に記載のhuMAb1_3の重鎖および/もしくは軽鎖)
を含むか、またはそれからなる。
【0235】
一実施形態において、本発明の抗体はヒト化抗体である。さらなる実施形態において、前記ヒト化抗体は、リサーフェシング技術により得られる。また、そのような抗体を、「リサーフェシングされた」抗体と呼ぶこともできる。
【0236】
本発明による抗体はまた、単一ドメイン抗体またはその断片であってもよい。特に、単一ドメイン抗体断片は、上記の抗体のCDR1−H、CDR2−HおよびCDR3−Hを含む可変重鎖(VHH)からなっていてもよい。抗体はまた、重鎖抗体、すなわち、軽鎖を含まない抗体であってもよく、CH1ドメインを含有しても、または含有しなくてもよい。
【0237】
単一ドメイン抗体またはその断片はまた、ラクダ科動物単一ドメイン抗体のフレームワーク領域、および場合により、ラクダ科動物単一ドメイン抗体の定常ドメインを含んでもよい。
【0238】
本発明による抗体はまた、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、およびダイアボディからなる群から選択される、抗体断片、特に、ヒト化抗体断片であってもよい。
【0239】
抗体はまた、抗体断片から形成される二重特異的または多重特異的抗体であってもよく、少なくとも1つの抗体断片は、本発明による抗体断片である。多重特異的抗体は、例えば、EP2050764A1またはUS2005/0003403A1に記載の多価タンパク質複合体である。
【0240】
本発明による二重特異的または多重特異的抗体は、(a)いわゆるMAb1、MAb2、MAb2
Can、MAb3、MAb3_VLR24−R93抗体の1つにより標的化されるヒト/カニクイザルLAMP1上の第1〜第3のループ、特に、第1の内腔ドメインおよび(b)少なくとも1つの他の抗原に対する特異性を有してもよい。ある実施形態によれば、少なくとも1つの他の抗原は、ヒトまたはカニクイザルLAMP1ファミリーメンバーではなく、特に、ヒトおよびカニクイザルLAMP2の少なくとも1つまたは全部ではない。別の実施形態によれば、少なくとも1つの他の抗原は、いわゆるMAb1、MAb2、MAb2
CanおよびMAb3抗体の1つにより標的化される前記第1〜第3のループ、特に、第1の内腔ドメイン以外のヒトカニクイザルLAMP1上のエピトープであってもよい。
【0241】
前記抗体を、当業界で周知の任意の技術により生成することができる。特に、前記抗体を、以後に記載の技術により生成する。
【0242】
本発明による抗体およびその断片を、単離された(例えば、精製された)形態で用いるか、または膜もしくは脂質ベシクル(例えば、リポソーム)のようなベクター中に含有させることができる。
【0243】
本発明の抗体は、上記特徴の任意の組合せを表してもよい。
【0244】
核酸、ベクターおよび組換え宿主細胞
本発明のさらなる目的は、上記で定義された本発明の抗体をコードする配列を含むか、またはそれからなる核酸配列に関する。
【0245】
典型的には、前記核酸は、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターのような任意の好適なベクター中に含むことができるDNAまたはRNA分子である。
【0246】
用語「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」は、DNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞中に導入して、宿主を形質転換し、導入される配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進することができるビヒクルを意味する。
【0247】
従って、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。
【0248】
そのようなベクターは、対象への投与の際に前記ポリペプチドの発現を引き起こすか、または指令するプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの調節エレメントを含んでもよい。動物細胞のための発現ベクターにおいて用いられるプロモーターおよびエンハンサーの例としては、ヒトサイトメガロウイルスのエンハンサーおよびプロモーター(Nelson,J.、1996、J.Virology 70:3207〜3986頁)、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー(Mizukami,T.およびItoh,S.ら、1987、J Biochem.101(5):1307〜1310頁)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー(Kuwana Y.ら、1987、Biochem Biophys Res Commun.149:960〜968頁)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason,J.O.ら、1985、Cell 41:479〜487頁)およびエンハンサー(Gillies,S.D.ら、1983、Cell 33:717〜728頁)などが挙げられる。
【0249】
ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入し、発現させることができる限り、動物細胞のための任意の発現ベクターを用いることができる。好適なベクターの例としては、pAGE107(Miyaji,H.ら、1990、Cytotechnology 3(2):133〜140頁)、pAGE103(Mizukami,T.およびItoh,S.ら、1987、J Biochem.101(5):1307〜1310頁)、pHSG274(Brady,G.ら、1984、Gene 27(2):223〜232頁)、pKCR(O’Hare,K.ら、1981、Proc Natl Acad Sci USA.78(3):1527〜1531頁)、pSG1ベータd2−4−(Miyaji,H.ら、1990、Cytotechnology 4:173〜180頁)などが挙げられる。
【0250】
プラスミドの他の例としては、複製起点pCEP5を含む複製プラスミド、または例えば、pUC、pcDNA、pBRなどの組込みプラスミドが挙げられる。
【0251】
ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびAAVベクターが挙げられる。そのような組換えウイルスを、パッケージング細胞にヘルパープラスミドまたはウイルスをトランスフェクトするか、または一過的にトランスフェクトすることのような、当業界で公知の技術により生成することができる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。そのような複製欠損組換えウイルスを生成するための詳細なプロトコールを、例えば、WO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056およびWO94/19478に見出すことができる。
【0252】
本発明のさらなる目的は、本発明による核酸および/またはベクターによりトランスフェクト、感染または形質転換された細胞に関する。
【0253】
用語「形質転換」は、宿主細胞が、導入された遺伝子または配列を発現して、所望の物質、典型的には、導入された遺伝子または配列によりコードされるタンパク質または酵素を生成するような、宿主細胞への「外来」(すなわち、外因性)遺伝子、DNAまたはRNA配列の導入を意味する。導入されたDNAまたはRNAを受容し、発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。
【0254】
本発明の核酸を用いて、好適な発現系中で本発明の組換え抗体を生成させることができる。用語「発現系」は、例えば、ベクターにより担持され、宿主細胞に導入される外来DNAによりコードされるタンパク質の発現のための好適な条件下での宿主細胞および適合可能なベクターを意味する。
【0255】
一般的な発現系としては、大腸菌(E.coli)宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターが挙げられる。宿主細胞の他の例としては、限定されるものではないが、原核細胞(細菌のような)および真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などのような)が挙げられる。具体例としては、大腸菌、クルイベロミセス(Kluyveromyces)またはサッカロミセス(Saccharomyces)酵母、哺乳動物細胞系(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞、HEK293細胞など)ならびに初代または確立された哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから生成される)が挙げられる。また、例として、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子(本明細書では以後「DHFR遺伝子」と呼ぶ)が欠損したCHO細胞(Urlaub G.ら、1980、Proc Natl Acad Sci USA.77(7):4216〜4220頁)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、本明細書では以後「YB2/0細胞」と呼ぶ)なども挙げられる。キメラまたはヒト化抗体のADCC活性がYB2/0細胞中で発現された場合に増強されるため、この細胞が対象となる。
【0256】
特に、ヒト化抗体の発現のために、発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子と抗体軽鎖をコードする遺伝子とが別々のベクター上に存在する型または両方の遺伝子が同じベクター上に存在する型(タンデム型)のいずれかであってもよい。ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易性、動物細胞への導入の容易性、および動物細胞中での抗体HおよびL鎖の発現レベル間の平衡の点では、タンデム型のヒト化抗体発現ベクターが好ましい(Shitara、K.ら、1994、J Immunol Methods.Jan.3:167(1−2):271〜8頁)。タンデム型ヒト化抗体発現ベクターの例としては、pKANTEX93(WO97/10354)、pEE18などが挙げられる。
【0257】
本発明はまた、本発明による抗体を発現する組換え宿主細胞を生成する方法であって、(i)in vitroまたはex vivoで、上記の組換え核酸またはベクターをコンピテント宿主細胞中に導入すること、(ii)in vitroまたはex vivoで、得られた組換え宿主細胞を培養することならびに(iii)場合により、前記抗体を発現および/または分泌する細胞を選択することからなる工程を含む方法に関する。
【0258】
そのような組換え宿主細胞を、本発明の抗体の生成のために用いることができる。
【0259】
本発明の抗体を生成する方法
本発明の抗体を、限定されるものではないが、単独の、または組み合わせた、任意の化学的、生物学的、遺伝学的または酵素的技術のような当業界で公知の任意の技術により生成することができる。
【0260】
所望の配列のアミノ酸配列を知れば、当業者であれば、ポリペプチドの生成のための標準的な技術により、前記抗体または免疫グロブリン鎖を容易に生成することができる。例えば、それらを、特に製造業者の説明書に従って市販のペプチド合成装置(Applied Biosystems、Foster City、Californiaにより製造されたものなど)を使用する周知の固相方法を用いて合成することができる。あるいは、本発明の抗体および免疫グロブリン鎖を、当業界で周知の組換えDNA技術により合成することができる。例えば、これらの断片を、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列の発現ベクター中への組込みおよび所望のポリペプチドを発現する好適な真核または原核宿主中へのそのようなベクターの導入後にDNA発現生成物として取得した後、周知の技術を用いてそれらを単離することができる。
【0261】
特に、本発明はさらに、(i)本発明による形質転換された宿主細胞を培養すること;(ii)本発明の抗体またはポリペプチドを発現させること;および(iii)発現された抗体またはポリペプチドを回収することからなる工程を含む、前記抗体を生成する方法に関する。
【0262】
従来の組換えDNAおよび遺伝子トランスフェクション技術を含むヒト化またはキメラ抗体を生成するための方法は、当業界で周知である(Morrison,S.L.およびOi,V.T.、1984、Annu Rev Immunol 2:239〜256頁ならびに特許文献US5,202,238およびUS5,204,244を参照されたい)。
【0263】
特定の実施形態において、本発明のキメラ抗体を、以前に記載されたマウスVLおよびVHドメインをコードする核酸配列を取得し、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクター中にそれらを挿入することによってヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞中に発現ベクターを導入することによりコード配列を発現させることによって生成することができる。
【0264】
別の特定の実施形態において、本発明のヒト化抗体を、以前に記載されたヒト化VLおよびVHドメインをコードする核酸配列を取得し、それらを、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞のための発現ベクター中に挿入することによってヒト化抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを動物細胞中に導入することによってコード配列を発現させることにより生成することができる。
【0265】
ヒト化またはキメラ抗体のCHドメインとして、それはヒト免疫グロブリン重鎖に属する任意の領域であってもよいが、IgGクラスのものが好適であり、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のようなIgGクラスに属するサブクラスのいずれか1つを用いることもできる。また、ヒトキメラ抗体のCLとして、それはヒト免疫グロブリン軽鎖に属する任意の領域であってもよく、カッパクラスまたはラムダクラスのものを用いることができる。
【0266】
例えば、特許出願WO2009/032661に開示された技術、CDR移植(EP239,400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(EP592,106;EP519,596;Padlan EA(1991);Studnicka、G.M.ら、1994、Protein Eng.7(6):805〜814頁;Roguska、M.A.ら、1994、Proc Natl Acad Sci USA 91(3):969〜973頁)、および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)などの、当業界で公知の様々な技術を用いて、抗体をヒト化することができる。そのような抗体の製造のための一般的な組換えDNA技術も公知である(欧州特許出願EP125023および国際特許出願WO96/02576を参照されたい)。
【0267】
本発明の抗体は、例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィー、セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、混合様式クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどのような、従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地から好適に分離される。
【0268】
本発明のFabを、LAMP1と特異的に反応する抗体を、パパインのようなプロテアーゼで処理することにより取得することができる。また、Fabを、抗体のFabの両方の鎖をコードするDNA配列を、原核発現のための、または真核発現のためのベクター中に挿入し、このベクターを原核または真核細胞(必要に応じて)中に導入して、Fabを発現させることにより生成することができる。
【0269】
本発明のF(ab’)2を、LAMP1と特異的に反応する抗体を、プロテアーゼであるペプシンで処理することにより取得することができる。また、F(ab’)2を、チオエーテル結合またはジスルフィド結合により、以下に記載のFab’を結合することにより生成することができる。
【0270】
本発明のFab’を、LAMP1と特異的に反応するF(ab’)2をジチオトレイトールのような還元剤で処理することにより取得することができる。また、Fab’を、抗体のFab’鎖をコードするDNA配列を、原核発現のためのベクター、または真核発現のためのベクター中に挿入し、このベクターを原核または真核細胞(必要に応じて)中に導入して、その発現を行うことにより生成することができる。
【0271】
本発明のscFvを、以前に記載のようにCDRまたはVHおよびVLドメインの配列を取得し、scFv断片をコードするDNAを構築し、そのDNAを原核または真核発現ベクター中に挿入した後、発現ベクターを原核または真核細胞(必要に応じて)中に導入して、scFvを発現させることにより生成することができる。ヒト化scFv断片を作成するために、本発明による相補性決定領域(CDR)を選択し、それらを既知の三次元構造のヒトscFv断片フレームワーク上に移植することを含む、CDR移植と呼ばれる周知の技術を用いることができる(例えば、W098/45322;WO87/02671;US5,859,205;US5,585,089;US4,816,567;EP0173494を参照されたい)。
【0272】
LAMP1に対する一本鎖抗体またはVHHを、例えば、(a)LAMP1に対する抗体(特に、重鎖抗体)を惹起するように、ラクダ科動物に属する哺乳動物をLAMP1またはその断片で免疫する工程;(b)かくして免疫されたラクダ科動物から、LAMP1に対する重鎖抗体配列および/またはV
HH配列を含む生物試料を取得する工程;ならびに(c)前記生物試料からLAMP1に対する重鎖抗体配列および/またはVH
H配列を回収する(例えば、単離する)工程を含む方法により取得することができる。また、好適な一本鎖抗体またはVHHを、重鎖抗体配列および/または重鎖抗体配列のためのVHH配列および/または第1〜第3のループ、特に、ヒトおよびカニクイザルLAMP1タンパク質の第1の内腔ドメインへの結合について、いわゆる抗体MAb1、MAb2、MAb2
Can、MAb3、huMAb1_1およびhuMAb1_2、huMAb1_3からなる群から選択される抗体、例えば、MAb1、MAb2、MAb2
Can、MAb3の可変重鎖および軽鎖を含む抗体と競合するVHH配列を含むライブラリーをスクリーニングすることによって取得することもできる。
【0273】
本発明の抗体の改変
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列改変が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。
【0274】
本発明の抗体の構造、およびそれらをコードするDNA配列中で改変および変化を作製し、依然として望ましい特徴を有する機能的抗体またはポリペプチドを得ることができる。
【0275】
ポリペプチドのアミノ酸配列中に変化を作製する際に、アミノ酸のハイドロパシー指標(hydropathic index)を考慮することができる。タンパク質に対して相互作用的生物機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当業界で一般的に理解される。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次いで、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが受け入れられている。それぞれのアミノ酸に、その疎水性および電荷特性に基づいてハイドロパシー指標を割当てた。これらのものは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
【0276】
本発明のさらなる目的は、本発明のポリペプチドの機能保存的バリアントも包含する。
【0277】
例えば、ある特定のアミノ酸を、活性を感知できるほどに失わせることなくタンパク質構造中で他のアミノ酸により置換することができる。タンパク質の相互作用能力および性質はその生物機能的活性を規定するため、ある特定のアミノ酸置換をタンパク質配列、勿論、そのDNAコード配列中で行うことができるが、それにも拘わらず、同様の特性を有するタンパク質を取得することができる。かくして、本発明の抗体配列、または前記ポリペプチドをコードする対応するDNA配列中で、その生物活性を感知できるほどに失わせることなく様々な変化を作製することができることが企図される。
【0278】
ある特定のアミノ酸を、類似するハイドロパシー指標またはスコアを有し、依然として類似する生物活性を有するタンパク質をもたらす、すなわち、依然として生物機能的に等価なタンパク質を取得する他のアミノ酸により置換することができることは当業界で公知である。また、本発明の抗体またはポリペプチド中の、抗原への結合を有意に失わせることなく置換することができる全てのアミノ酸を同定するために、アラニンスキャニング手法のようなよく確立された技術を使用することもできる。そのような残基は抗原結合または抗体の構造の維持に関与しないため、それを中性として定性化することができる。これらの中性位置の1つまたはそれ以上を、本発明の抗体またはポリペプチドの主特性を変化させることなく、アラニンまたは別のアミノ酸により置換することができる。
【0279】
上記に概略したように、従って、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前記特徴のいくつかを考慮に入れる例示的置換は当業者には周知であり、アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。
【0280】
また、例えば、抗体の抗原依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存的細胞傷害性(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を改変することも望ましい場合がある。これを、抗体のFc領域中に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成することができる。あるいは、またはさらに、システイン残基をFc領域中に導入することによって、この領域中での鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。かくして作成されたホモ二量体抗体は、改善された内在化能力および/または増加した補体媒介性細胞殺傷および/または抗体依存的細胞傷害性(ADCC)を有してもよい(Caron、P.C.ら、1992、J Exp Med.176(4):1191〜1195頁およびShopes B.、1992、J Immunol.148(9):2918〜2922頁)。
【0281】
本発明の抗体の別の型のアミノ酸改変は、すなわち、抗体中に見出される1つもしくはそれ以上の炭水化物部分を欠失させること、および/または抗体中に存在しない1つもしくはそれ以上のグリコシル化部位を付加することにより、抗体の元のグリコシル化パターンを変化させるのに有用であり得る。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリン、およびアスパラギン−X−トレオニン(式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作出する。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、アミノ酸配列が1つまたはそれ以上の上記トリペプチド配列を含有するようにアミノ酸配列を変化させる(N結合グリコシル化部位について)ことによって都合良く達成される。
【0282】
リシン側鎖残基を介する細胞傷害剤への共有結合は、ADCの場合、抗原への結合を阻害し得るため、本発明の抗体の別の型の改変は、CDR中の、またはCDRに空間的に近いリシンを除去することであってもよい。
【0283】
別の型の改変は、分解生成物または抗体製造物の不均質性を潜在的にもたらすとしてin silicoで、または実験的に同定される配列の除去を含む。例として、アスパラギンおよびグルタミン残基の脱アミド化は、pHおよび表面露出のような因子に依存して起こり得る。アスパラギン残基は、主に配列Asn−Gly中に存在する場合、脱アミド化を特に受けやすく、Asn−Alaのような他のジペプチド配列中でのその程度はより低い。そのような脱アミド化部位、特に、Asn−Glyが本発明の抗体またはポリペプチド中に存在する場合、従って典型的には、関与した残基の1つを除去するための保存的置換により、その部位を除去することが望ましい場合がある。関与した残基の1つまたはそれ以上を除去するための配列中でのそのような置換もまた、本発明により包含されることが意図される。
【0284】
別の型の共有改変は、抗体に化学的または酵素的にカップリングするグリコシドを含む。これらの手順は、それらがNまたはO結合グリコシル化のためのグリコシル化能力を有する宿主細胞中での抗体の生成を必要としない点で有利である。用いられるカップリング様式に依存して、糖を、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのもののような遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのもののような遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシンのもののような芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合させることができる。例えば、そのような方法は、WO87/05330に記載されている。
【0285】
抗体上に存在する任意の炭水化物部分の除去を、化学的または酵素的に達成することができる。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸化合物、または等価な化合物への抗体の曝露を必要とする。この処理は、抗体を無傷のままにしながら、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外の多くの、または全ての糖の切断をもたらす。化学的脱グリコシル化は、Sojahr、H.ら(1987、Arch Biochem Biophys.259(1):52〜57頁)およびEdge、A.S.ら(1981、Anal Biochem.118(1):131〜137頁)により記載されている。抗体上の炭水化物部分の酵素的切断を、Thotakura、N.R.ら(1987、Methods Enzymol 138:350〜359頁)により記載されたように様々なエンド−およびエキソ−グルコシダーゼの使用により達成することができる。
【0286】
抗体の別の型の共有改変は、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号または第4,179,337号に記載の様式での、様々な非タンパク質性ポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンへの抗体の連結を含む。
【0287】
医薬組成物
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートを、薬学的に許容される賦形剤、および場合により、生分解性ポリマーのような持続放出マトリックスと組み合わせて、治療組成物を形成させることができる。
【0288】
かくして、本発明の別の目的は、本発明の抗体またはイムノコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0289】
本発明はまた、薬剤としての使用のための、本発明によるポリペプチドまたはイムノコンジュゲートに関する。
【0290】
「薬学的に」または「薬学的に許容される」とは、必要に応じて、哺乳動物、特に、ヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー反応または他の望ましくない反応を生成しない分子的実体および組成物を指す。薬学的に許容される担体または賦形剤とは、任意の型の非毒性固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、封入材料または製剤補助剤を指す。
【0291】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量およびレジメンは、処置しようとする状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重、および性別などに自然に依存する。
【0292】
本発明の医薬組成物を、局所、経口、非経口、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下または眼内投与などのために製剤化することができる。
【0293】
特に、医薬組成物は、注射することができる製剤にとって薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらのものは、特に、等張性、無菌性の塩溶液(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなど、またはそのような塩の混合物)、または場合により、滅菌水もしくは生理食塩水の添加時に、注射溶液の構成を許容する乾燥、特に、凍結乾燥組成物であってもよい。
【0294】
投与に用いられる用量を、様々なパラメーターの関数として、特に、用いられる投与様式、関連する病理、あるいは、所望の処置期間の関数として適合させることができる。
【0295】
医薬組成物を製造するために、本発明の抗体またはイムノコンジュゲートの有効量を、薬学的に許容される担体または水性媒体中に溶解するか、または分散させることができる。
【0296】
注射的使用にとって好適な医薬形態としては、滅菌水性溶液または分散物;および滅菌注射溶液または分散物の即興の製造のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合、この形態は無菌でなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度で流動性でなければならない。それは製造および保存の条件下で安定であり、細菌および菌類のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0297】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤、安定化剤、凍結防止剤または酸化防止剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止を、抗細菌剤および抗真菌剤によりもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0298】
適切な溶媒中に必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙された他の成分のいくつかと共に組み入れた後、滅菌濾過を行うことにより、滅菌注射溶液を製造する。一般に、様々な滅菌活性成分を、基本分散媒と、上記に列挙されたものからの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に組み入れることにより、分散物を製造する。滅菌注射溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、活性成分の粉末と、予め滅菌濾過されたその溶液に由来する任意のさらなる所望の成分とを得る減圧乾燥および凍結乾燥技術である。
【0299】
製剤化の際に、投与量製剤と適合する様式で、および治療上有効であるような量で溶液を投与する。製剤は、上記の注射溶液の型のような様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどを用いることもできる。
【0300】
水性溶液中での非経口投与のために、例えば、必要に応じて溶液を好適に緩衝化させ、液体希釈剤を最初に十分な塩水またはグルコースで等張性にするべきである。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与にとって特に好適である。これに関連して、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示を考慮すると当業者には公知である。例えば、1つの投与量を、等張性NaCl溶液1mLに溶解し、皮下注入液1000mLに添加するか、または提唱される輸注部位に注射することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照されたい)。投与量のいくらかの変動が処置される対象の状態に応じて必ず生じる。投与を担う人が、いずれにせよ、個々の対象のための適切な用量を決定する。
【0301】
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートを、用量当たり約0.01〜100ミリグラムを含むように治療混合物内で製剤化することができる。
【0302】
治療方法および使用
本発明者らは、LAMP1の第1〜第3のループに対する、特に、LAMP1の第1の内腔ドメインに対する抗体、特に、MAb1およびMAb2およびMAb3が、おそらくコーティングされたピットにより結合および蓄積した後にLAMP1受容体−抗体複合体を活発に内在化させることができることを示した。内在化された抗体MAb1、MAb2およびMAb3は初期エンドソームに局在化した後、輸送され、リソソーム区画中に蓄積した。
【0303】
ImageStreamマルチスペクトルイメージングフローサイトメーター(Amnis corp.)は、内在化された抗体がリソソーム区画中に蓄積することを示す。4℃でMAb1、MAb2およびMAb3と共にインキュベートした生存可能なColo205細胞の免疫蛍光分析により、異なる細胞質膜染色が示された。37℃でのMAb1、MAb2およびMAb3との細胞のインキュベーションにより、インキュベーションの4時間後に細胞質膜と細胞内ベシクルの両方の標識が示された。細胞内部の蛍光(37℃で測定)を示す内在化スコア(IS)は細胞表面での蛍光(4℃で測定)よりも10倍高いため、これは、LAMP1タンパク質が細胞膜で迅速に再循環していることを意味する。総合すると、本発明者らの結果は、LAMP1が抗体の内在化を媒介する受容体として機能し得ることを初めて示し、特定の内在化抗体の可用性が、がん細胞の内部に特異的に送達される毒素、薬物または短距離同位体を標的化するための新規治療方法を開発するのに役立つはずであることを示唆するものである。
【0304】
さらに、本発明者らは、本発明による抗体が、細胞傷害性メイタンシノイド(DM4)と共に、ゲノムDNA中にLAMP1をコードするDNA配列の安定な組込みを含有するヒトHCT116腫瘍細胞またはHEK293細胞であって、個々のクローンが細胞表面上で異なる強度のLAMP1を提示する前記細胞上、in vitroで細胞傷害活性を誘導することを示した。
【0305】
別の実施例9.4において、本発明者らは、本発明による抗体が、細胞傷害性トママイシン二量体と共に、in vitroで細胞傷害活性を誘導することを示した。本発明者らはまた、細胞傷害性メイタンシノイド(DM4)と組み合わせた抗体が、実施例10.1.1に記載のように、腫瘍埋め込み後17日目での単回注射で10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgの用量で用いた場合、患者に由来する原発性ヒト結腸腺癌異種移植片のマウスモデルにおいてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することも示した。
【0306】
さらに、本発明者らはまた、このイムノコンジュゲートが、実施例10.1.2に記載のように腫瘍埋め込み後26日目での単回注射で10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgの用量で用いた場合、患者に由来する原発性ヒト肺腫瘍異種移植片のマウスモデルにおいてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することも示した。
【0307】
本発明者らはまた、DM4−SPDB−huMAb1_1、DM4−SPDB−chMAb2、DM4−SPDB−chMAb3のイムノコンジュゲートが、実施例10.2〜10.4に示されるように、様々ながん異種移植片モデルの様々なマウスモデルにおいてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することも示した。
【0308】
例えば、イムノコンジュゲートDM4−SPDB−huMAb1_1は、実施例10.2.2および10.2.3に記載のように、単回注射で10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgの用量で用いた場合、患者に由来する原発性ヒト浸潤性腺管癌異種移植片および原発性ヒト肺腫瘍異種移植片においてin vivoで顕著な抗腫瘍活性を誘導することが示された。
【0309】
また、イムノコンジュゲートDM4−SPDB−chMAb2およびDM4−SPDB−chMAb3も、実施例10.3.2および10.4に記載のように、単回注射で、それぞれ10mg/kg、5mg/kgおよび2.5mg/kgまたは5mg/kg、2.5mg/kgおよび1.25mg/kgの用量で用いた場合、患者に由来する原発性ヒト浸潤性腺管癌異種移植片において顕著な抗腫瘍活性を誘導する。
【0310】
かくして、本発明のポリペプチド、抗体、イムノコンジュゲート、または医薬組成物は、がんを処置するのに有用であり得る。
【0311】
本発明はさらに、がん細胞中にLAMP1遺伝子コピー数増加がある患者におけるがんを処置するための使用のための抗LAMP1治療剤に関する。
【0312】
ある実施形態において、がん細胞中にLAMP1遺伝子コピー数増加がある前記患者を、本発明によるがんを有する患者を選択するin vitroでの方法によって選択した。特に、その使用は、本発明によるがんを有する患者を選択する方法によってがん細胞中にLAMP1遺伝子コピー数増加がある前記患者を選択することを含む。
【0313】
本発明はまた、
a)本発明によるがんを有する患者を選択するin vitroでの方法により抗LAMP1療法に応答する可能性が高いがんを有する患者を選択すること;および
b)前記選択された患者に抗LAMP1療法を投与すること
を含む、がんを有する患者を処置する方法に関する。
【0314】
本発明はさらに、抗LAMP1療法のためにがんを有する患者を選択する方法であって、
(a)がん細胞を含むがんを有する患者の生物試料中で、前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加があるかどうかを決定すること;および
(b)前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加がある場合、前記患者に、抗LAMP1療法を投与すること
を含む、方法に関する。
【0315】
本発明はまた、患者におけるがんを処置する方法であって、
(a)がん細胞を含むがんを有する患者の生物試料中で、前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加があるかどうかを決定すること;および
(b)前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加がある場合、前記患者に抗LAMP1療法を投与すること
を含む、方法に関する。
【0316】
本発明の抗体、イムノコンジュゲート、または医薬組成物を用いて処置されるがんは、細胞表面上でLAMP1を発現する、特に、同じ組織源の正常(すなわち、非腫瘍)細胞と比較して細胞表面上でLAMP1を過剰発現するがんである。
【0317】
がん細胞によるLAMP1の発現を、例えば、以下のセクション「診断的使用」に記載のような、本発明による抗体を用いることにより、特に、例えば、実施例5に記載のような免疫組織化学的方法により容易にアッセイすることができる。
【0318】
特に、がんは結腸腺癌であってもよいが、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、膵臓、胃および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍であってもよく、例えば、がんは、結腸腺癌、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、膵臓および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭または軟部組織腫瘍からなる群から選択される。
【0319】
一実施形態において、消化管腫瘍は、小腸腫瘍、直腸腫瘍および/または耳下腺腫瘍である。
【0320】
一実施形態において、生殖器腫瘍、消化管腫瘍は、肺腫瘍、肝腫瘍、膵腫瘍、胃腫瘍および腎腫瘍である。
【0321】
一実施形態において、生殖器腫瘍は、乳房腫瘍、卵巣腫瘍または前立腺腫瘍である。
【0322】
本発明によるマウス抗ヒトLAMP1抗体を用いる免疫組織化学分析によるヒト腫瘍のパネルのスクリーニングにより、実施例5にさらに詳細に記載されるように、これらの型のがんにおける抗体染色が実際に示された。
【0323】
特に、LAMP1を発現するヒト腫瘍細胞を、結腸、胃、直腸、肺扁平上皮癌、浸潤性乳管癌および浸潤性小葉癌および前立腺癌細胞からなる群から選択することができる。これらの腫瘍は実際、細胞膜でのLAMP1発現について陽性である50%を超える細胞を示すことがわかった(実施例5を参照されたい)。
【0324】
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートを、単独で、または任意の好適な増殖阻害剤と組み合わせて用いることができる。
【0325】
本発明の抗体を、以前に記載されたような増殖阻害剤、細胞傷害剤、またはプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートまたは連結することができる。本発明の抗体は、前記増殖阻害剤、細胞傷害剤、またはプロドラッグを、表面上にLAMP1を発現するか、または過剰発現するがん性細胞に標的化するのに実際に有用であってもよい。
【0326】
また、治療的モノクローナル抗体は、該抗体により特異的に認識される抗原を担持する細胞の枯渇をもたらし得ることも周知である。この枯渇は、少なくとも3つの機構:抗体媒介性細胞性細胞傷害性、補体依存的溶解、および抗体により標的化される抗原を介して与えられるシグナルによる腫瘍増殖の直接的抗腫瘍阻害によって媒介され得る。
【0327】
「補体依存的細胞傷害性」または「CDC」とは、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1の成分の、その同族抗原に結合した抗体への結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoroら(1997)に記載のようなCDCアッセイを実施することができる。
【0328】
「抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性」または「ADCC」とは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合した分泌抗体が、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて標的細胞を殺傷することができるようにする細胞傷害性の形態を指す。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載のもののようなin vitroでのADCCアッセイも企図された。Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、National Institute of Health、Bethesda、MD、1991)により記載された命名法に従うD265A変異のような特定の変異は、Fc RおよびADCCへの結合を有意に低下させることが当業者には公知である(Lundら、J.Immunol.、157:4963〜4969頁、1996;Shieldsら、J.Biol.Chem.、276(1):6591〜6604頁、2001)。
【0329】
一例において、huIgG1中の、例えば、配列番号56の266Aの変異は、上記のD265A変異に対応し、かくして、Fc RおよびADCCへの結合を有意に低下させる。
【0330】
かくして、本発明の目的は、治療上有効量の本発明のポリペプチド、抗体、イムノコンジュゲートまたは医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、がんを処置するための方法に関する。
【0331】
「抗体依存的細胞食作用」または「ADCP」とは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、マクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合した抗体が、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を、抗原を担持する標的細胞に特異的に結合させ、続いて、食作用により標的細胞を殺傷することができる細胞傷害性の形態を指す。対象の分子のADCP活性を評価するために、McEarchemら、2007、Blood 109:1185頁に記載のようなin vitroでのADCPアッセイ。
【0332】
本発明の文脈において、本明細書で用いられる用語「処置すること」または「処置」は、そのような用語が適用される障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1つもしくはそれ以上の症状の進行を逆転させること、軽減すること、阻害すること、またはそれを防止することを意味する。本明細書で用いられる用語「がんを処置すること」は、腫瘍の悪性細胞の増殖および/または前記腫瘍からの転移の進行の阻害を意味する。そのような処置はまた、腫瘍増殖の退縮、すなわち、測定可能な腫瘍サイズの減少ももたらし得る。特に、そのような処置は、腫瘍または転移の完全な退縮をもたらす。
【0333】
本発明によれば、用語「患者」または「それを必要とする患者」は、悪性腫瘍に罹患したか、または罹患する可能性があるヒトまたは非ヒト哺乳動物を意図する。特に、前記患者は、LAMP1を標的とする治療剤、特に、本発明による、例えば、以下に記載の方法による抗体またはイムノコンジュゲートに対して感受性であると決定された患者であってもよい。
【0334】
上記で開示されたように、「抗LAMP1療法」は、LAMP1を標的化する治療剤を含む療法である。本発明によれば、用語「LAMP1を標的化する治療剤」または「抗LAMP1治療剤」は、LAMP1に結合し、細胞傷害活性および/または細胞増殖抑制活性を有する薬剤を記載する。
【0335】
本明細書で用いられる用語「結合剤」とは、LAMP1に対する特異的結合活性を示す分子を指す。そのような結合分子は、例えば、高分子および小有機分子などの、様々な異なる型の分子を含んでもよい。小分子結合剤は、例えば、受容体リガンド、アンタゴニストおよびアゴニストを含んでもよい。高分子は、例えば、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ポリペプチド結合剤をコードする核酸、レクチン、炭水化物および脂質を含んでもよい。この用語は、結合機能が保持される限り、薬剤の断片およびドメインを含むことが理解される。同様に、結合活性が維持される限り、ドメインの境界は重要ではない。結合剤がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である特定の例において、そのような結合タンパク質は、単量体または多量体種を含んでもよい。異種結合タンパク質は、多量体結合タンパク質の具体例である。多量体結合タンパク質を言う場合、この用語は、ポリペプチドの集合および集合した複合体の結合機能が保持される限り、サブユニットの断片を含むことが理解される。異種結合タンパク質としては、例えば、FabおよびF(ab’)2ポーションのような抗体およびその断片が挙げられる。
【0336】
ある実施形態によれば、抗LAMP1治療剤は、抗LAMP1抗体または抗LAMP1抗体と少なくとも1つの増殖阻害剤とを含むイムノコンジュゲートである。
【0337】
本発明のポリペプチドの「治療上有効量」とは、任意の医学的処置に適用可能な合理的なリスク/ベネフィット比で、前記がん疾患を処置するためのポリペプチドの十分な量を意味する。しかしながら、本発明のポリペプチドおよび組成物の1日当たりの総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者のための特定の治療上有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;用いられる特定のポリペプチドの活性;用いられる特定の組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;用いられる特定のポリペプチドの投与の時間、投与経路、および排出の速度;処置の持続期間;用いられる特定のポリペプチドと組み合わせて用いられる、またはそれと同時に存在する薬物;ならびに医学業界において周知の同様の因子などの様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるものよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまでその投与量を徐々に増加させることは、当業者には周知である。本発明の別の目的は、悪性腫瘍の処置における使用のための本発明のポリペプチド、抗体、イムノコンジュゲートまたは医薬組成物に関する。
【0338】
特に、ポリペプチド、抗体、イムノコンジュゲートまたは医薬組成物を、悪性腫瘍の転移の進行を阻害するために用いることができる。
【0339】
本発明のポリペプチドを、悪性腫瘍を処置するため(例えば、アジュバント療法)、および/または転移性腫瘍の増殖を減少させるための任意の他の治療戦略と組み合わせて用いることができる。
【0340】
本発明による抗体またはイムノコンジュゲートを用いる処置の効能を、in vivoで、例えば、がんのマウスモデル上で、および例えば、実施例10に定義されるような処置群と対照群との間の腫瘍体積の変化、腫瘍退縮、部分的退縮および/または完全な退縮(%)を測定することにより、容易にアッセイすることができる。
【0341】
一実施形態において、抗体は、上記の「抗体」のセクションでさらに記載されたように、ヒトLAMP1に特異的に結合し、非腫瘍組織から腫瘍組織を識別する、本出願人により開発された抗LAMP1抗体(いわゆる抗体「MAb1」、「MAb2」、「MAb3」、huMAb1_1およびhuMAb1_2、huMAb1_3)の1つである。
【0342】
診断的使用
本発明による抗体は、いくらかのLAMP1発現が非腫瘍細胞の膜で生じるが、胃上皮細胞、食道上皮細胞、乳房上皮細胞、前立腺上皮細胞、精巣上皮細胞およびほんの数種の細胞に限定されることを示した。それにも拘わらず、非腫瘍試料の膜でのLAMP1発現の罹患率および平均強度は、腫瘍中に認められるものよりも低かった。
【0343】
その代わりに、LAMP1は、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、胃、膵臓および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍を含む結腸腺癌、例えば、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、膵臓および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍以外にも様々な癌腫の表面に高度に発現される。従って、LAMP1は、ある特定のがんのマーカーであり、従って、抗がん療法の有効性または疾患の再発の検出を示すために用いられる能力を有する。
【0344】
特に、LAMP1は、結腸、直腸、肺扁平上皮癌、胃、浸潤性乳管癌および浸潤性小葉癌および前立腺癌細胞、より特には、結腸、直腸、肺扁平上皮癌、浸潤性乳管癌および浸潤性小葉癌および前立腺癌細胞からなる群から選択される癌腫の表面に高度に発現される。
【0345】
「抗体」の章で上述した通り、本発明者らは、細胞外で発現されたLAMP1を検出し、かくして、凍結OCT(最適切削温度の)標本およびAFA(アルコールホルマリン酢酸固定)上でのIHC分析を実施することを初めて可能にする抗体MAb1、MAb2、MAb3およびFFPE形式でのLAMP1強化を可能にし、かくして、非がん組織からがん組織を識別するのを可能にするMAb4を開発した。
【0346】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、治療剤に対する患者の感受性を決定するため、抗がん療法の有効性をモニタリングするため、または処置後の疾患の再発を検出するために、LAMP1発現腫瘍を標的とする療法の文脈におけるアッセイの成分として用いられる。特に、本発明の同じ抗体は、治療剤の成分および診断アッセイの成分の両方として用いられる。
【0347】
かくして、本発明のさらなる目的は、対象におけるLAMP1発現をin vivoで検出するための使用のため、または対象の生物試料中でのLAMP1発現をex vivoで検出するための使用のための本発明による抗体に関する。前記検出は、特に、腫瘍細胞上での表面タンパク質LAMP1の発現を検出することにより、
a)対象におけるがんの存在を診断すること、または
b)LAMP1を標的とする治療剤、特に、本発明によるイムノコンジュゲートに対する、がんを有する患者の感受性を決定すること、または
c)抗LAMP1がん療法の有効性をモニタリングすること、もしくは抗LAMP1がん療法、特に、本発明によるイムノコンジュゲートを用いる療法後のがんの再発を検出すること
を意図してもよい。
【0348】
ある実施形態において、抗体は、in vitroまたはex vivoでの使用を意図される。例えば、LAMP1を、本発明の抗体を用いて、対象から得られた生物試料中、in vitroまたはex vivoで検出することができる。本発明による使用はまた、in vivoでの使用であってもよい。例えば、本発明による抗体を、対象に投与し、抗体−細胞複合体を検出および/または定量し、それによって前記複合体の検出ががんを示す。
【0349】
本発明はさらに、対象におけるがんの存在を検出するin vitroまたはex vivoでの方法であって、
(a)対象の生物試料を、本発明による抗体と、特に、抗体が前記生物試料との複合体を形成するのに十分な条件で接触させること、
(b)前記生物試料に結合した抗体のレベルを測定すること、
(c)結合した抗体の測定されたレベルを対照と比較することによってがんの存在を検出し、対照と比較した結合した抗体のレベルの増加ががんを示すこと
からなる工程を含む方法に関する。
【0350】
本発明はまた、LAMP1を標的とする治療剤、特に、本発明によるイムノコンジュゲートに対する、がんを有する患者の感受性を決定するin vitroまたはex vivoでの方法であって、
(a)がんを有する患者の生物試料を、本発明による抗体と、特に、抗体が前記生物試料との複合体を形成するのに十分な条件で接触させること、
(b)前記生物試料に結合した抗体のレベルを測定すること、
(c)前記生物試料に結合した抗体の測定されたレベルを、対照に結合した抗体のレベルと比較すること、
からなる工程を含み、対照と比較した前記生物試料に結合した抗体のレベルの増加が、患者がLAMP1を標的とする治療剤に感受性であることを示す方法に関する。
【0351】
上記方法において、前記対照は、同じ型の正常な、非がん性、生物試料、または同じ型の正常な生物試料中での抗体結合レベルを表すとして決定された参照値であってもよい。ある実施形態において、本発明の抗体は、結腸腺癌、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、膵臓および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍のような、LAMP1を発現するがんを診断するのに有用である。
【0352】
本発明はさらに、抗LAMP1がん療法の有効性をモニタリングするin vitroまたはex vivoでの方法であって、
(a)抗LAMP1がん療法を受けている対象の生物試料を、本発明による抗体と、特に、該抗体が前記生物試料と複合体を形成するのに十分な条件で接触させること、
(b)前記生物試料に結合した抗体のレベルを測定すること、
(c)結合した抗体の測定されたレベルを、対照に結合した抗体のレベルと比較すること
からなる工程を含み、対照と比較した前記生物試料に結合した抗体のレベルの低下が、前記抗LAMP1がん療法の有効性を示す方法に関する。
【0353】
前記方法において、対照と比較した前記生物試料に結合した抗体のレベルの増加は、前記抗LAMP1がん療法の無効性を示す。
【0354】
前記対照は、特に、分析にかけられた生物試料と同じ型の生物試料であるが、抗LAMP1がん療法の経過中に、時間において以前に対象から得られた生物試料である。
【0355】
本発明はさらに、抗LAMP1がん療法後のがんの再発を検出するin vitroまたはex vivoでの方法であって、
(a)抗LAMP1がん療法を完了した対象の生物試料を、本発明による抗体と、特に、該抗体が前記生物試料と複合体を形成するのに十分な条件で接触させること、
(b)前記生物試料に結合した抗体のレベルを測定すること、
(c)結合した抗体の測定されたレベルを、対照に結合した抗体のレベルと比較すること、
からなる工程を含み、対照と比較した前記生物試料に結合した抗体のレベルの増加が、抗LAMP1がん療法後のがんの再発を示す方法に関する。
【0356】
前記対照は、特に、分析にかけられた生物試料と同じ型の生物試料であるが、抗LAMP1がん療法の完了時に、またはその後に、時間において以前に対象から得られた生物試料である。
【0357】
前記抗LAMP1がん療法は、特に、本発明による抗体またはイムノコンジュゲートを用いる療法である。前記抗LAMP1がん療法は、LAMP1を発現するがん、特に、結腸腺癌、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、膵臓、胃および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍を標的とする。
【0358】
ある実施形態において、本発明の抗体を、蛍光分子、放射性分子またはシグナルを提供する(直接的もしくは間接的に)当業界で公知の任意の他の標識のような、検出可能な分子または物質で標識することができる。
【0359】
本発明による抗体に関する、本明細書で用いられる用語「標識された」とは、放射性薬剤またはフルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)もしくはフィコエリトリン(PE)もしくはインドシアニン(Cy5))のような検出可能物質をポリペプチドにカップリングさせる(すなわち、物理的に連結する)ことによる抗体の直接的標識化、ならびに検出可能物質との反応性によるポリペプチドの間接的標識化を包含することが意図される。
【0360】
本発明の抗体を、当業界で公知の任意の方法によって放射性分子で標識することができる。例えば、放射性分子としては、限定されるものではないが、I
123、I
124、I
125、In
111、Re
186、Re
188、Tc
99のようなシンチグラフィー試験のための放射性原子、およびZr
89、I
124、Ga
68またはCu
64のようなポジトロン放出断層撮影のための同位体が挙げられる。
【0361】
「生物試料」は、対象から得られる様々な試料の型を包含し、診断またはモニタリングアッセイにおいて用いることができる。生物試料としては、限定されるものではないが、血液および生物起源の他の液体試料、生検標本のような固形組織試料または組織培養物もしくはそれから誘導される細胞、およびその子孫が挙げられる。従って、生物試料は、臨床試料、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的流体、および組織試料、特に、腫瘍試料を包含する。
【0362】
特に、生物組織を、凍結OCT(最適切削温度)またはAFA(酢酸ホルマリンアルコール)試料として製造することができる。実際、本発明による抗体は、組織試料を収集、保管するために病院で用いられる形式であるAFA試料上で有利に用いることができる。
【0363】
前記生物試料に結合した抗体のレベルの測定または決定を、例えば、FACSまたはIHCのような当業界で公知の任意の好適な方法によって実施することができる。
【0364】
本発明はまた、
a)検出可能に標識された本発明による抗体を患者に投与すること、
b)画像化によって患者における前記検出可能に標識された抗体の局在化を検出すること
からなる工程を含む、対象におけるがんの存在を検出するin vivoでの方法に関する。
【0365】
本発明の抗体は、がんの段階評価(例えば、放射性イメージングにおける)にとって有用であってよい。それらを単独で、または他のがんマーカーと組み合わせて用いることができる。
【0366】
本明細書で用いられる用語「検出」または「検出された」は、対照に対する参照を用いるか、または用いない定性的および/または定量的検出(レベルの測定)を含む。
【0367】
本発明の内容において、本明細書で用いられる用語「診断すること」は、いくつかの収集されたデータから対象に影響する病理を同定することを意図される医学的状態の性質の決定を意味する。
【0368】
前記方法において、がんは、LAMP1を発現するがん、特に、結腸腺癌、消化管腫瘍(小腸、直腸、耳下腺)、重要臓器腫瘍(肺、肝臓、膵臓および腎臓)、生殖器腫瘍(乳房、卵巣および前立腺)ならびに皮膚、喉頭および軟部組織腫瘍である。
【0369】
がんを有する患者を選択する方法
本発明は、がんを有する患者を選択するin vitroでの方法であって、
a)がん細胞を含むがんを有する患者の生物試料中で、前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加があるかどうかを決定すること;および
b)LAMP1遺伝子コピー数増加の存在に基づいて患者を選択すること
を含む方法に関する。
【0370】
ある実施形態において、前記方法は、抗LAMP1療法に応答する可能性が高いがんを有する患者を選択するためのものであり、前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加がある場合、抗LAMP1療法に応答する可能性が高いとして前記患者は選択される。腫瘍細胞の表面でのLAMP1の発現または過剰発現はLAMP1遺伝子コピー数増加以外の原因を有し得るため、前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加がない場合、それにも拘わらず患者を、例えば、LAMP1の細胞表面発現の検出に基づいて抗LAMP1療法に応答する可能性が高いとして選択することができる。
【0371】
LAMP1遺伝子増加は、限局性体細胞増加または増幅、13q上の体細胞大領域増加または増幅、体細胞染色体複製、体細胞染色体3倍性または倍数性と関連し得る。LAMP1遺伝子コピー数増加または増幅は、より大きいアンプリコン中に含まれる。本明細書で用いられる用語「アンプリコン」とは、複数の線状コピーを形成するゲノムのセグメントを指す。本発明によれば、LAMP1遺伝子コピー数増加をもたらすコピー数変化を受け得るアンプリコンを、本明細書ではLAMP1アンプリコンと呼ぶ。
【0372】
前記「LAMP1増幅」は、378kb〜34.2MBの間で測定することができる。前記「LAMP1増加」は、523kb〜95.8MBの間で測定することができるDNA領域を含む。
【0373】
一実施形態において、LAMP1遺伝子コピー数増加を、ヒト第13染色体(NC_000013)上で塩基113785387〜塩基114240314の少なくとも454kbを含む結腸PDX中のLAMP1アンプリコンのCNVにより表すことができる。前記最小LAMP1アンプリコンは、LAMP1以外の他の遺伝子、例えば、遺伝子ADPRHL1、CUL4A、DCUNID2、GRTP1、LAMP1、LOC100130463、PCID2、PRO7、TFDP1、TMCO3およびF10を含有する。
【0374】
別の実施形態において、前記LAMP1アンプリコンは、少なくとも遺伝子:ADPRHL1、ATP11A、ATP4B、CUL4A、DCUN1D2、F10、F7、FAM70B、FLJ41484、FLJ44054、GAS6、GRK1、GRTP1、LAMP1、LINC00552、LOC100128430、LOC100130463、LOC100506063、LOC100506394、MCF2L、MCF2L−AS1、PCID2、PROZ、RASA3、TFDP1およびTMCO3C13orf35を含む。
【0375】
さらなる実施形態において、LAMP1アンプリコンは、ヒト第13染色体(NC_000013)上の塩基19,296,544〜塩基115,107,245の95.8Mbを含む。
【0376】
本発明の文脈において、ヌクレオチドの位置は、NCBIヒトゲノム配列(Build37、Feb 2009)に従って示される。ゲノム配列は個体間で変化してもよいことが当業者には公知である。従って、LAMP1アンプリコンに関して本明細書で定義される位置は、用いられるヒトゲノム配列に従ってわずかに変化してもよい。しかしながら、ゲノム配列およびヌクレオチド位置を比較するための方法は、当業者には周知である。
【0377】
当業者には周知である生物試料中のLAMP1遺伝子コピー数変化の存在を決定を可能にする多数の方法が存在する。これらの方法としては、限定されることなく、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、マトリックス−CGH、アレイ−CGH、オリゴヌクレオチドアレイ、リプリゼンテーショナルオリゴヌクレオチドマイクロアレイ(ROMA)、SNP遺伝子型決定のためのハイスループット技術、例えば、Affymetrix SNPチップのようなマーカー配列に特異的なDNAプローブを用いるハイブリダイゼーション方法、および定量的PCRのような増幅方法が挙げられる。
【0378】
特に、前記マーカーLAMP1遺伝子コピー数変化の存在は、増幅によるか、またはLAMP1遺伝子もしくはLAMP1アンプリコン中に含まれる遺伝子に特異的なDNAプローブとのハイブリダイゼーションにより決定される。ある実施形態において、本発明の方法は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、新世代配列決定(NGS)および/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により実行される。
【0379】
従って、本発明は、LAMP1遺伝子コピー数増加がFISH、CGH、NGSおよび/またはPCRからなる群から選択される方法を用いて決定される方法に関する。
【0380】
定量的PCRの方法は当業界で周知であり、リアルタイムPCR、競合的PCRおよび放射性PCRを含む。例えば、DNAコピー数を数えるための定量的PCT法が、米国特許第6,180,349号に記載されている。
【0381】
本明細書で用いられる用語「プライマー」とは、標的配列にアニーリングし、前記標的配列と相補的であるプライマー伸長生成物の増幅にとって好適な条件下でのDNA合成の開始点として役立つことができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、典型的には、増幅における最大効率のために一本鎖である。特に、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーの長さは、温度およびプライマーの配列などのいくつかの因子に依存するが、増幅生成物の合成を開始するのに十分に長いものでなければならない。ある実施形態において、プライマーは、15〜35ヌクレオチドの長さである。プライマーは、増幅された生成物の検出、固定、または操作を可能にするさらなる特徴をさらに含んでもよい。プライマーは、プライマーおよび標的配列または蛍光特性を変化させるために二本鎖DNA/RNAと相互作用することができる非共有結合蛍光染料からなるハイブリッドに対して特定の蛍光特性を付与する、共有結合蛍光染料をさらに含んでもよい。用いることができる蛍光染料は、例えば、SYBR−グリーンまたは臭化エチジウムである。
【0382】
本明細書で用いられる「プライマーの対」または「プライマー対」とは、PCR増幅のようなDNA増幅の業界で一般的に用いられるような1つのフォワードおよび1つのリバースプライマーを指す。
【0383】
本明細書で用いられる場合、「プローブ」とは、核酸の相補鎖に塩基特異的様式で結合することができるオリゴヌクレオチドを指す。プローブは、検出可能な部分で標識することができる。様々な標識部分が当業界で公知である。前記部分は、例えば、放射性化合物、検出可能な酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP))または熱量測定、蛍光、化学発光もしくは電気化学発光シグナルのような検出可能なシグナルを生成することができる任意の他の部分であってもよい。検出可能な部分を、公知の方法を用いて検出することができる。プローブは、約5〜100ヌクレオチド、例えば、約10〜50ヌクレオチド、または約20〜40ヌクレオチドの長さで変化してもよい。ある実施形態において、プローブは33ヌクレオチドを含む。
【0384】
用語「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイゼーション」とは、当業者には公知であるように、好適な条件下、すなわち、ストリンジェントな条件下での、特定のヌクレオチド配列へのある核酸分子の結合を指す。
【0385】
本明細書で用いられる用語「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、所定のレベルの相補性を有する核酸間での結合対を生成するのに好適であるが、前記所定のレベルより低い相補性を示す核酸間での結合対の形成にとっては好適ではない条件に対応する。ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションと洗浄条件との両方の組合せであり、配列依存的である。これらの条件は、当業者には公知の方法に従って改変することができる(Tijssen、1993、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology − Hybridization with Nucleic Acid Probes、Part I、Chapter 2 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、Elsevier、New York)。一般に、高ストリンジェンシー条件は、熱融点(Tm)より約5℃低くなるように、例えば、完全に塩基対形成した二重鎖のTmに近い温度となるように選択される(Andersen、Nucleic acid Hybridization、Springer、1999、54頁)。ハイブリダイゼーション手順は当業界で周知であり、例えば、Ausubel,F.M.、Brent,R.、Kingston,R.E.、Moore,D.D.、Seidman,J.G.、Smith,J.A.、Struhl,K.(編)(1998)Current protocols in molecular biology. V.B. Chanda(シリーズ編)New York:John Wiley & Sonsに記載されている。
【0386】
高ストリンジェンシー条件は、典型的には、5xSSC/5xDenhardt液/1.0%SDS中、約50℃〜約68℃でのハイブリダイズ、および0.2xSSC/0.1%SDS中、約60℃〜約68℃での洗浄を含む。
【0387】
一実施形態において、本発明は、がん細胞中での平均LAMP1遺伝子コピー数が2.5以上である方法に関する。特に、がん細胞中での平均LAMP1遺伝子コピー数は、2.5以上かつ5未満であってもよい。
【0388】
一実施形態において、本発明は、がん細胞中での平均LAMP1遺伝子コピー数が5以上である方法に関する。
【0389】
本発明の方法は、LAMP1が患者のがん細胞の表面で発現されるかどうかを決定することをさらに含んでもよく、i)前記患者にLAMP1遺伝子コピー数増加がある場合、および患者の前記がん細胞がその表面にLAMP1を発現する場合、前記患者は抗LAMP1療法に応答する可能性が高いとして選択されるか、またはii)患者の前記がん細胞がその表面にLAMP1を発現しない場合、前記患者は抗LAMP1療法に応答する可能性が低いとして選択される。
【0390】
LAMP1が、がん細胞の表面に発現されるか、または同じ組織起源の正常細胞(すなわち、非腫瘍細胞)と比較して過剰発現されるかどうかを決定することを可能にする多数の方法が存在し、これらは当業者には周知である。これらの方法としては、例えば、限定されることなく、IHC、ウェスタンブロット(WB)、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析、免疫蛍光(IF)、免疫沈降(IP)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられる。
【0391】
ある実施形態において、LAMP1ががん細胞の表面に発現されるか、または過剰発現されるかどうかを決定するために、免疫組織化学(IHC)が用いられる。
【0392】
がん細胞によるLAMP1の発現を、例えば、実施例3に記載の抗LAMP1抗体を用いることによって容易にアッセイすることができる。
【0393】
本発明者らは、LAMP1増加が、結腸直腸腺癌、胃、肝臓、肺(腺癌および扁平上皮)、乳房(基底、BRCA、LUMA、LUMBおよびHER2)、卵巣、頭頸部、腎臓(腎臓嫌色素性、腎明細胞癌、腎乳頭)、細胞癌腫、子宮頸部扁平上皮細胞、膵臓、前立腺、膀胱尿路上皮、グリオーマ(低悪性度グリオーマおよび多形成膠芽腫)、子宮、甲状腺、白血病、リンパ腫、食道、黒色腫および軟部組織肉腫を含む28の腫瘍型において検出されることを示した。高い増加または増幅は、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、グリア芽腫、頭頸部がん、肝臓がん、肺がん、グリオーマ、卵巣がん、胃がんおよび子宮がんにおいて検出される。
【0394】
従って、本発明の方法のある実施形態において、患者は、結腸直腸がん、胃がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、グリオーマ、膀胱がん、甲状腺がんならびに白血病、リンパ腫、食道がん、黒色腫および軟部肉腫からなる群から選択されるがん、例えば、結腸直腸がん、胃がん、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、頭頸部がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、グリオーマ、膀胱がん、甲状腺がんならびに白血病、リンパ腫、食道がん、黒色腫および軟部肉腫を有している。
【0395】
さらなる実施形態において、患者は、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、グリア芽腫、頭頸部がん、肝臓がん、肺がん、グリオーマ、卵巣がん、胃がん、および子宮がんからなる群から選択されるがん;または特に、子宮頸がん、結腸直腸がん、グリア芽腫、頭頸部がん、肝臓がん、肺がん、グリオーマ、卵巣がん、胃がん、甲状腺がん、および子宮がんからなる群から選択されるがん;またはさらにより特には、結腸がんおよび肺がんからなる群から選択されるがんを有している。
【0396】
LAMP1遺伝子コピー数増加およびLAMP1の高発現を、結腸がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がんからなる群から選択されるがんの表面で検出することができる。
【0397】
かくして、一実施形態において、がんを、結腸がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、例えば、結腸がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がんから選択することができる。
【0398】
さらに、LAMP1遺伝子コピー増加は、膀胱がん、乳がん、結腸がん、肺がん、胃がんおよび卵巣がんにおけるLAMP1 mRNA発現と相関する。有意な関係は、LAMP1遺伝子コピー数増加/増幅と、結腸、胃および肺腫瘍PDXの腫瘍細胞の細胞質膜でのLAMP1の発現との間で示される。
【0399】
従って、本発明の方法のさらなる実施形態において、患者は、乳がん、結腸がん、肺がん、胃がん、および卵巣がんからなる群から選択されるがんを有している。別の実施形態において、患者は、結腸がん、肺がん、胃がんおよび卵巣がんからなる群から選択されるがんを有している。
【0400】
「抗LAMP1療法」は、LAMP1を標的化する治療剤を含む療法である。一実施形態において、そのような抗LAMP1療法は、抗LAMP1抗体またはイムノコンジュゲートである。抗LAMP1療法は、本明細書の以後でさらに詳細に説明される。
【0401】
がんは、特に、膀胱がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、グリア芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、グリオーマ、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、甲状腺がん、および子宮がんであってもよい。別の例において、がんは、特に、結腸直腸がんまたは肺がんである。
【0402】
キット
最後に、本発明は、本発明の少なくとも1つの抗体またはイムノコンジュゲートを含むキットも提供する。本発明の抗体を含有するキットは、表面タンパク質LAMP1の検出、または治療的もしくは診断的アッセイにおいて有用である。本発明のキットは、固相支持体、例えば、組織培養プレートまたはビーズ(例えば、セファロースビーズ)にカップリングされたポリペプチドまたは抗体を含有してもよい。in vitroでの、例えば、ELISAまたはウェスタンブロットにおける表面タンパク質LAMP1の検出および定量のための抗体を含有するキットを提供することができる。検出にとって有用なそのような抗体を、蛍光または放射性標識のような標識と共に提供することができる。
【0403】
以下の図面および実施例によって本発明をさらに例示する。
【0404】
配列の簡単な説明
配列番号1は、「MAb1」抗体のVH配列を示す。
【0405】
配列番号2〜4は、「MAb1」抗体のCDR1−H、CDR2−H、CDR3−Hの配列を示す。
【0406】
配列番号5は、「MAb1」抗体のVL配列を示す。
【0407】
配列番号6〜7は、「MAb1」抗体のCDR1−L、CDR3−Lの配列を示す。
【0408】
配列番号8は、「MAb2」抗体のVH配列を示す。
【0409】
配列番号9〜11は、「MAb2」抗体のCDR1−H、CDR2−H、CDR3−Hの配列を示す。
【0410】
配列番号12は、「MAb2」抗体のVL配列を示す。
【0411】
配列番号13〜14は、「MAb2」抗体のCDR1−L、CDR3−Lの配列を示す。
【0412】
配列番号15は、いわゆる「MAb2
Can」抗体のVH配列を示す。
【0413】
配列番号16は、いわゆる「MAb2
Can」抗体のVL配列を示す。
【0414】
配列番号17は、キメラ抗体「chMAb1」抗体の重鎖の配列を示す。
【0415】
配列番号18は、キメラ抗体「chMAb1」抗体の軽鎖の配列を示す。
【0416】
配列番号19は、キメラ抗体「chMAb2」抗体の重鎖の配列を示す。
【0417】
配列番号20は、キメラ抗体「chMAb2」抗体の軽鎖の配列を示す。
【0418】
配列番号21は、キメラ抗体「chMAb2
Can」抗体の重鎖の配列を示す。
【0419】
配列番号22は、キメラ抗体「chMAb2
Can」抗体の軽鎖の配列を示す。
【0420】
配列番号23は、受託番号NM_005561.3の下でGenBankデータベースから入手可能な完全長ヒトLAMP1のDNA配列を示す。
【0421】
配列番号24は、NP_005552.3の下でGenBankデータベースから入手可能な完全長ヒトLAMP1のタンパク質配列を示す。
【0422】
配列番号25は、NP_034814の下でGenBankデータベースから入手可能な完全長マウスLAMP1のタンパク質配列を示す。
【0423】
配列番号26は、NP_036989の下でGenBankデータベースから入手可能な完全長ラットLAMP1のタンパク質配列を示す。
【0424】
配列番号27は、XP_002723509の下でGenBankデータベースから入手可能な完全長アカゲザルLAMP1のタンパク質配列を示す。
【0425】
配列番号28は、ペプチドシグナルを含まないヒトLAMP1細胞外ドメイン、次いで、C末端6アミノ酸His−Tagの配列を示す。
【0426】
配列番号29は、ペプチドシグナルを含まないカニクイザルLAMP1細胞外ドメイン、次いで、6アミノ酸のHis配列を含むC末端タグの配列を示す。
【0427】
配列番号30は、ペプチドシグナルを含まないLAMP1のマウスループ1領域およびLAMP1のヒトループ2〜4を含有するヒトおよびマウスLAMP1キメラ、次いで、C末端6アミノ酸His−Tagの配列を示す。
【0428】
配列番号31は、ペプチドシグナルを含まないLAMP1のマウスループ1〜2領域およびLAMP1のヒトループ3〜4を含有するヒトおよびマウスLAMP1キメラ、次いで、C末端6アミノ酸His−Tagの配列を示す。
【0429】
配列番号32は、ペプチドシグナルを含まないLAMP1のヒトループ1〜2領域およびLAMP1のマウスループ3〜4を含有するヒトおよびマウスLAMP1キメラ、次いで、6アミノ酸のHis配列を含むC末端タグの配列を示す。
【0430】
配列番号33は、ペプチドシグナルを含まないLAMP1のヒトループ1〜3領域およびLAMP1のマウスループ4を含有するヒトおよびマウスLAMP1キメラ、次いで、6アミノ酸のHis配列を含むC末端タグの配列を示す。
【0431】
配列番号34は、ペプチドシグナルを含まないマウスLAMP1細胞外ドメイン、次いで、6アミノ酸のHis配列を含むC末端タグの配列を示す。
【0432】
配列番号35は、「MAb1」抗体の軽鎖配列を示す。
【0433】
配列番号36は、「MAb1」抗体の重鎖配列を示す。
【0434】
配列番号37は、「MAb2」抗体の軽鎖配列を示す。
【0435】
配列番号38は、「MAb2」抗体の重鎖配列を示す。
【0436】
配列番号39は、カニクイザルの予測される完全長LAMP1タンパク質配列を示す。
【0437】
配列番号40は、ペプチドシグナルを含まないヒトLAMP2細胞外ドメイン、次いで、C末端10アミノ酸His−Tagの配列を示す。
【0438】
配列番号41は、ヒトLAMP2の完全長タンパク質配列を示す。
【0439】
配列番号42は、「MAb3」抗体のVH配列を示す。
【0440】
配列番号43〜45は、「MAb3」抗体のCDR1−H、CDR2−H、CDR3−Hの配列を示す。
【0441】
配列番号46は、「MAb3」抗体のVL配列を示す。
【0442】
配列番号47および48は、「MAb3」抗体のCDR1−L、CDR3−Lの配列を示す。
【0443】
配列番号49は、キメラ抗体「chMAb3」抗体の重鎖の配列を示す。
【0444】
配列番号50は、キメラ抗体「chMAb3」抗体の軽鎖の配列を示す。
【0445】
配列番号51は、抗体「MAb3 VL_R24_R93」の軽鎖の可変ドメインの配列を示す。
【0446】
配列番号52は、抗体「MAb3 VL_R24_R93」のCDR3−Lの配列を示す。
【0447】
配列番号53は、ヒト化抗体「huMAb1_1」のVH1配列を示す。
【0448】
配列番号54は、ヒト化抗体「huMAb1_2」のVH2配列を示す。
【0449】
配列番号55は、ヒト化抗体「huMAb1_3」のVH3配列を示す。
【0450】
配列番号56は、ヒト化抗体「huMAb1_1」のVL1配列を示す。
【0451】
配列番号57は、ヒト化抗体「huMAb1_2」のVL2配列を示す。
【0452】
配列番号58は、ヒト化抗体「huMAb1_3」のVL3配列を示す。
【0453】
配列番号59は、「huMAb1_1」抗体の軽鎖バリアント1配列を示す。
【0454】
配列番号60は、「huMAb1_1」抗体の重鎖バリアント1配列を示す。
【0455】
配列番号61は、「huMAb1_2」抗体の軽鎖バリアント2配列を示す。
【0456】
配列番号62は、「huMAb1_2」抗体の重鎖バリアント2配列を示す。
【0457】
配列番号63は、「huMAb1_3」抗体の軽鎖バリアント3配列を示す。
【0458】
配列番号64は、「huMAb1_3」抗体の重鎖バリアント3配列を示す。
【0459】
配列番号65は、変異36Aおよび95Aを有する陰性対照「huMAb1_negA」抗体の軽鎖配列を示す。
【0460】
配列番号66は、変異101Aを有する陰性対照「huMAb1_negA」抗体の重鎖配列を示す。
【0461】
配列番号67は、変異266Aを有する陰性対照「huMAb1_negB」抗体の重鎖配列を示す。
【0462】
配列番号68は、結晶化のための組換えhuMAb1_1の軽鎖配列を示す。
【0463】
配列番号69は、C末端His−タグを含む結晶化のための組換えhuMAb1_1の重鎖配列を示す。
【0464】
配列番号70は、切断可能なチオレドキシン(trx A)タグ、His−Tagおよびトロンビン切断部位を含むLAMP1のヒトループ1〜2領域の配列を示す。
【0465】
配列番号71は、非タグ付hLAMP1−29−195の配列を示す。
【0466】
配列番号72は、配列番号24のアミノ酸101〜110に対応するアミノ酸配列を示す。
【0467】
配列番号73は、配列番号24のアミノ酸144〜157に対応するアミノ酸配列を示す。
【0468】
配列番号74は、配列番号24のアミノ酸174〜188に対応するアミノ酸配列を示す。
【0469】
配列番号75は、配列番号24のアミノ酸29〜41に対応するアミノ酸配列を示す。
【0470】
配列番号76は、配列番号24のアミノ酸68〜80に対応するアミノ酸配列を示す。
【0471】
配列番号77は、配列番号24のアミノ酸29〜100に対応するアミノ酸配列を示す。
【0472】
配列番号78は、配列番号24のアミノ酸97〜110に対応するアミノ酸配列を示す。
【0473】
配列番号79は、配列番号24のアミノ酸173〜189に対応するアミノ酸配列を示す。
【0474】
配列番号80は、配列番号70のアミノ酸132〜302に対応するアミノ酸配列を示す。
【0475】
配列番号81は、キメラ抗体「chMAb3 VL_R24_R93」の軽鎖の配列を示す。配列番号82は、配列番号24のアミノ酸360〜375に対応するアミノ酸配列を示す。
【0476】
配列番号83〜85は、「MAb4」抗体のCDR1−H、CDR2−H、CDR3−Hの配列を示す。
【0477】
配列番号86および87は、「MAb4」抗体のCDR1−LおよびCDR3−Lの配列を示す。
【0478】
配列番号88は、抗体「MAb4」のVH1配列を示す。
【0479】
配列番号89は、抗体「MAb4」のVL1配列を示す。
【0480】
配列番号90は、配列番号24のアミノ酸47〜61に対応するアミノ酸配列を示す。
【0481】
配列番号91は、配列番号24のアミノ酸140〜155に対応するアミノ酸配列を示す。
【0482】
配列番号92は、配列番号24のアミノ酸307〜321に対応するアミノ酸配列を示す。
【0483】
配列番号93は、結晶解析を用いて標準構造およびかくしてヒトLAMP1の結合にとって重要であるとして同定された残基に基づいてMAb1/huMAb1_1/huMAb1_2/huMAb1_3抗体ファミリーのCDR1−Lのコンセンサス配列を示す。
【0484】
配列番号94は、結晶解析を用いて標準構造およびかくしてヒトLAMP1の結合にとって重要であるとして同定された残基に基づいてMAb1/huMAb1_1/huMAb1_2/huMAb1_3抗体ファミリーのCDR3−Lのコンセンサス配列を示す。
【0485】
配列番号95は、結晶解析を用いて標準構造およびかくしてヒトLAMP1の結合にとって重要であるとして同定された残基に基づいてMAb1/huMAb1_1/huMAb1_2/huMAb1_3抗体ファミリーのCDR1−Hのコンセンサス配列を示す。
【0486】
配列番号96は、結晶解析を用いて標準構造およびかくしてヒトLAMP1の結合にとって重要であるとして同定された残基に基づいてMAb1/huMAb1_1/huMAb1_2/huMAb1_3抗体ファミリーのCDR3−Hのコンセンサス配列を示す。
【0487】
配列番号97は、配列番号24のアミノ酸35〜84に対応するアミノ酸配列を示す。
【0488】
配列番号98は、「MAb4」抗体の軽鎖配列を示す。
【0489】
配列番号99は、「MAb4」抗体の重鎖配列を示す。