【文献】
HAIDER A F M Y et.al,JOURNAL OF PHYSICS C: SOLID STATE PHYSICS ,1980年11月30日,Vol.13, No.33,P.6239-6250
【文献】
STUBICAR N et.al,JOURNAL OF ALLOYS AND COMPOUNDS,2004年 5月12日,Vol.370, No.1-2,P.296-301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の記載
例えば雲母、タルク、ガラスフレーク、MIO(雲母状酸化鉄)などの無機顔料は、長年、被覆されまたは未被覆のいずれかで、複数の目的のために塗料、フィルム、コーティング組成物および化粧品などの形成において用いられている。
【0003】
上記のように通常用いられた無機顔料に加えて、チタン酸粒子はコーティングおよび組成物において複数の目的に有用であることが証明されている。チタン酸は、圧電気および導電性などの電気的性質、摩耗消滅および強化などの機械的性質、ならびに親水性および表面活性などの化学的な性質を示す。現在まで、チタン酸はセラミックコンデンサ、光触媒、半導体および電極材料など様々な用途において用いられる。チタン酸として、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸アルミニウムおよびチタン酸リチウムが特に関心が持たれる。
【0004】
薄片状チタン酸粒子からなるチタン酸粉末は、その薄片形状に基づき天然に優れた分散性および配向を示す雲母またはタルクのような標準的な無機顔料に相当する分散性および配向挙動がある。そのため、顔料および嵩高剤として用いられ得るチタン酸フレークが所望される。
【0005】
例えば、特開平5−163117公報(特許文献1)は、色を示す金属イオンを含むか金属酸化物で被覆されるかのいずれかであり、体質顔料または着色顔料として用いられる多結晶ヘキサチタン酸カリウム(K
2Ti
6O
13)のフレークを開示している。多結晶フレークの製造方法は、約500℃を超える少なくとも2つの加熱工程を必要とする。
【0006】
特開2008−162971公報(特許文献2)は、特別な大きさの範囲を示し、フラックス成長工程により製造されるレピドクロサイト型の板状チタン酸結晶粒子(K
3XLi
XTi
2−XO
4、K
3XMg
XTi
2−XO
4、またはK
3XFe
XTi
2−XO
4、いずれの場合においても0.05≦x≦0.5を有する)、ならびに光輝性顔料および嵩高剤としてのそれらの使用を開示する。ここでまた、板状チタン酸粒子の製造方法は、≧800℃の温度での少なくとも2つの加熱工程を含む。
【0007】
これらの特許文献に記載されている製造方法は、効率の観点からさらに改善される必要がある。
例えば、特許文献1に記載されている方法により得られるヘキサチタン酸カリウム(K
2Ti
6O
13)は多結晶である。そのため、それらの屈折率は同じ組成の単結晶チタン酸の屈折率より低い。さらに、高温加熱溶解工程および高温加熱焼成工程の条件は、時間がかかり、費用がかかり、および製造方法においてより複雑さをもたらす。
【0008】
これらと同様に、特許文献2に記載された方法により得られたレピドクロサイト型板状チタン酸結晶粒子の製造方法はまた、時間がかかり、費用がかかり、および製造工程においてより複雑さをもたらす2つの高温焼成工程を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、良好な誘電特性、生体適合性を有し、異方性熱膨張を示すチタン酸マグネシウムに注目し、複数の通常の顔料用途において用いられ得るチタン酸マグネシウム粒子の製造方法を開発した。
【0010】
本発明の目的は、エネルギー費用を削減した製造方法、そのため、様々な用途において顔料としての使用に適している単結晶MgTiO
3フレークを効率的に製造するための方法を提供する製造方法を提供すること、この方法により製造されたチタン酸マグネシウム単結晶フレークを提供することならびにそれらがどのように使用され得るかを示すことである。
【0011】
[発明の概要]
本発明者らは、上述の問題が解決され得ること、および顔料としての使用に適している単結晶MgTiO
3フレークが、MgTiO
3前駆体を形成するためにリン化合物とチタン化合物をマグネシウム化合物の存在下で混合することにより、およびその後得られた前駆体を焼成することにより効率的に製造され得ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本願発明は以下のとおりである。
(1)以下の工程:
1.少なくとも1つのチタン化合物、少なくとも1つのマグネシウム化合物および少なくとも1つのリン化合物を混合することにより、MgTiO
3前駆体を形成すること、および
2.単一の焼成工程として800℃〜1400℃の範囲における温度でMgTiO
3前駆体を焼成すること、
により単結晶MgTiO
3フレークを製造する方法。
【0013】
(2)混合が水媒体中で行われる、(1)に記載の方法。
(3)混合工程において融剤が存在する、(1)または(2)のいずれか一に記載の方法。
(4)融剤がNa
2SO
4、K
2SO
4、NaClおよびKClの1または2以上から選択される化合物である、(3)に記載の方法。
(5)方法が焼成工程の前にMgTiO
3前駆体の乾燥を含む、(2)〜(4)のいずれか一に記載の方法。
【0014】
(6)焼成が酸素含有雰囲気において行われる、(1)〜(5)のいずれか一に記載の方法。
(7)(3)に記載の焼成工程において得られた生成物が熱い水で処理される、(3)〜(6)のいずれか一に記載の方法。
(8)チタン化合物が四塩化チタン、硫酸チタニル、硫酸チタンおよび三塩化チタンの1以上から選択される化合物である、(1)〜(7)のいずれか一に記載の方法。
【0015】
(9)マグネシウム化合物が塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび炭酸マグネシウムの1以上から選択される化合物である、(1)〜(8)のいずれか一に記載の方法。
(10)リン化合物がリン酸三ナトリウム、五酸化リン、リン酸、亜リン酸およびリン酸三カリウムの1以上から選択される化合物である、(1)〜(9)のいずれか一に記載の方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか一に記載の方法により得られた単結晶MgTiO
3フレーク。
【0016】
(12)ゲイキー石結晶構造を有する、(11)に記載の単結晶MgTiO
3フレーク。
(13)相当する円の直径と同等のものによると、10〜100μmの範囲の粒径を有する、(11)または(12)に記載の単結晶MgTiO
3フレーク。
(14)塗料、インク、コーティング組成物、プラスチックまたは化粧品における、(11)〜(13)のいずれか一に記載の単結晶MgTiO
3フレークの使用。
【0017】
(15)白色顔料、光触媒、色素増感太陽電池のためのホスト材料、UV吸収剤または撥水剤としての(14)に記載の使用。
本発明によると、顔料としての使用に適している単結晶MgTiO
3フレークを効率的に製造する方法を提供することができる。
【0018】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明による単結晶MgTiO
3フレークの製造方法およびこの方法により得られた単結晶MgTiO
3フレークが詳細に記載される。しかしながら、本発明の意図が続く限り、これらの特別な態様に限定されない。
【0019】
本発明の第1の態様による単結晶MgTiO
3フレークの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す)は:「少なくとも1つのチタン化合物、少なくとも1つのマグネシウム化合物および少なくとも1つのリン化合物を混合することにより、MgTiO
3前駆体を形成する工程」;および「単一の焼成工程として800℃〜1400℃の範囲における温度でMgTiO
3前駆体を焼成する工程」を含む。
【0020】
本発明者らは、顔料としての使用に適している単結晶MgTiO
3フレークが、MgTiO
3前駆体を形成するためにリン化合物とチタン化合物およびマグネシウム化合物を混合することにより、およびその後、単一の焼成段階で得られた前駆体を焼成することにより効率的に製造され得るということを見出した。単結晶MgTiO
3フレークは、高い屈折率および高度な光沢を有し、そのため、それらは高度に反射性の顔料、特に干渉顔料として、または干渉顔料のための基質として特に適している。本発明の製造方法は、良質な単結晶MgTiO
3フレークの効果的な製造を単一の焼成工程のみの必要性で可能にする。そのため、この方法は製造費用や尽力の抑制に非常に適している。さらには、それは単結晶MgTiO
3フレークを製造でき、双晶結晶や凝固はめったに生じず、結晶化度が高く、直径制御が可能である。そのため、高度な屈性率を有するゲイキー石結晶構造において単結晶MgTiO
3フレークが製造され得る。
【0021】
本発明による単結晶MgTiO
3フレークの形成のための詳細な機構は十分に明らかにされていないが、本発明者らは、MgTiO
3フレークがリンイオンの共存在下でチタン化合物およびマグネシウム化合物を用いて形成されることを確かめた。
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0022】
本発明の製造方法は、第1の工程として、少なくとも1つのチタン化合物、少なくとも1つのマグネシウム化合物および少なくとも1つのリン化合物を混合することによりMgTiO
3前駆体を形成する工程(以下、「混合工程」と略す)を含む。
【0023】
本発明の第1の最も単純な態様において、チタン化合物、マグネシウム化合物についてのおよびリン化合物についての具体的な種類ならびに混合する具体的な方法は、MgTiO
3前駆体が形成され得る限りいずれの仕様にも限定されない。純粋なチタンが用いられる場合でさえMgTiO
3前駆体の形成が生じるので、MgTiO
3前駆体は、チタン化合物、マグネシウム化合物およびリン化合物の各々の出発物質の種類と独立に形成される。ここで、「MgTiO
3前駆体」は、主成分としてチタン酸化物水和物およびマグネシウム酸化物水和物を含有すると考えられる。
【0024】
第2の工程として、本発明に記載の製造方法は、単一の焼成工程として800℃〜1400℃の範囲の温度でMgTiO
3前駆体を焼成する工程(以下、「焼成工程」と略す)を含む。
【0025】
本製造方法における焼成温度は通常少なくとも800℃、およびより好ましくは少なくとも900℃である。また、結晶物質を製造する観点から通常最高1400℃およびより好ましくは最高1250℃である。このため、単一の焼成工程の最良の温度範囲は900℃〜1250℃である。
【0026】
焼成時間は単結晶MgTiO
3フレークの望ましい形状(粒径、厚さおよびアスペクト比)により適切に選択されるべきである。それは通常少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、およびより好ましくは少なくとも2時間である。さらに、この値は通常最大12時間、好ましくは最大10時間、より好ましくは最大5時間である。
【0027】
焼成雰囲気はMgTiO
3が形成され得る限りいずれの仕様にも限定されない。しかしながら、酸化物を確実に製造するために、焼成工程は好ましくは酸素含有雰囲気下で行われる。
【0028】
混合工程でのチタン化合物、マグネシウム化合物とリン化合物の混合のための具体的な方法はいずれの仕様にも限定されないが、水溶液中における作業は快適で取り扱いやすいので、それらは好ましくは水性媒体中で混合される。本発明による混合工程が水性媒体において実施される場合、本方法のこの変化は本発明の第2の態様を表す。
【0029】
水性媒体へのマグネシウム化合物の添加はチタン化合物の添加前に、チタン化合物の添加と同時に、またはチタン化合物の添加後に行われ得る。しかしながら、マグネシウム化合物がチタン化合物の添加前に水性媒体に添加されるとき、MgTiO
3フレークの収率が増加し得る。そのため、後者の順番が好ましい。
【0030】
水性媒体へのリン化合物の添加はチタン化合物の添加の前に、チタン化合物の添加と同時に、またはチタン化合物の添加の後に行われてもよい。しかしながら、リン化合物がチタン化合物の添加前に水性媒体に添加されるとき、MgTiO
3フレークの収率は増加し得る。そのため、後者の順番が好ましい。
【0031】
混合が水性媒体中で行われるとき、焼成中に発生した気体によるるつぼへの損傷を回避するため、6〜8の範囲におけるpH値で水溶液を保つのが好ましい。例えば、四塩化チタンなどの酸性チタン化合物が、リン酸三ナトリウムなどの塩基性リン化合物を含む水溶液に添加されるとき、この溶液は十分にまたは少なくともある程度は中和される。
【0032】
さらに、pH値は塩酸または硫酸などの酸性溶液あるいは水酸化ナトリウム水溶液または炭酸ナトリウムなどの塩基性溶液をそれぞれ加えることにより6〜8に調整してもよい。
その上、急なpH変化を抑制するためにチタン化合物の添加はより時間をかけて徐々に行うことが望ましい。
【0033】
本発明によると、「水性媒体」は、主に水道水または精製水を含む媒体を指し、また、脱イオン水などの純水に加えて他の成分を含む水性溶液であってもよい。
【0034】
本発明の第3の態様によると、焼成工程の前に融剤が上記出発物質に添加されることが好ましい。ここで、「融剤」は、焼成工程でMgTiO
3前駆体からMgTiO
3の形成を導く、いわゆる「フラックス成長工程」において融解手段として機能する化合物の種類、特に金属塩を指す。
【0035】
本発明による製造工程において融剤として有用であるために、対応する金属塩は800℃未満ではないが、得られるMgTiO
3の融解温度に達しないかまたは超えない融解温度を提示すべきである。その上、それらは水溶性でなければならない。例はNa
2SO
4、K
2SO
4、NaClおよびKClなどの金属塩であり、単独でまたはそれらの2以上の組み合わせのいずれでもあり、ここでKClは示唆された他の塩の少なくとも1つとの組み合わせでのみ使用され得る。費用や入手しやすさの観点から、Na
2SO
4、K
2SO
4が好ましく、Na
2SO
4が特に好ましい。
【0036】
融剤の添加は得られる顔料の結晶成長工程に影響を与えるので、融剤の使用量は単結晶MgTiO
3フレークの所望の形状(粒径、厚さおよびアスペクト比)により適切に選択されるべきである。用いられるチタン化合物における融剤のモル数のTi原子のモル数に対する比(チタン化合物における、融剤のモル数/Ti原子のモル数)は通常少なくとも1.0であり、より好ましくは少なくとも3.0である。さらに、この値は通常最大で30であり、より好ましくは最大で10である。1.0未満の比の場合において、塩処理効果は不十分であるだろう。他方で、比が30の値を超える場合、フレーク形成におけるさらなる改善は起こらず、後にそれらを除去するためにより大きいスケールでの洗浄工程が必要になるだろう。
【0037】
出発物質の混合物への融剤の添加はチタン化合物の添加の前に、チタン化合物の添加と同時に、またはチタン化合物の添加の後に実施されてもよい。しかしながら、融剤がチタン化合物の添加の後に添加されるとき、MgTiO
3フレークの収率は増加し得る。そのため、後者の順番が特に好ましい。
【0038】
本発明による製造方法は好ましくはまた、混合工程および焼成工程に加えて他の工程を含んでもよい。これは以下の工程に属する。
【0039】
− 焼成工程の前に溶融塩混合物の粉末を得るための、MgTiO
3前駆体の乾燥工程(以下、「乾燥工程1」と略す);乾燥工程1における温度は、これに限定されないが、好ましくは70℃〜180℃の範囲である。
【0040】
− 焼成工程において得られた生成物から例えば塩化物、硫酸塩などの不純物を除去するために、温水を用いた焼成工程で得られた生成物を処理するための工程(以下、「洗浄工程」と略す);洗浄工程で用いられる温水はいずれの仕様にも限定されないが、精製水および脱イオン水が好ましい。ここで、水の温度は好ましくは40℃〜100℃の範囲である。融剤が本製造方法に用いられる場合、かかる洗浄工程は必須である。
【0041】
− 洗浄工程後に溶解した不純物を含有する溶液からMgTiO
3フレークを分離するために、洗浄工程後に溶解していない固体(MgTiO
3フレーク)を濾過し分離するための工程(以下、「濾過工程」と略す);および
− MgTiO
3フレークを乾燥するために、MgTiO
3フレークを乾燥するための工程(以下、「乾燥工程2」と略す)。本工程はこれに限定されないが、この乾燥工程は好ましくは20℃〜180℃の温度範囲で実施される。
【0042】
本製造方法の出発物質として用いられ得るチタン化合物に関して、水溶性のチタン化合物が、特にその工程が水性媒体において実施される場合には好ましい。有機チタン化合物ならびに無機チタン化合物が用いられ得るが、無機チタン化合物が明らかに好ましい。水溶性無機チタン化合物を用いることは、高価な装置および防爆の必要がないのと合わせて、製造工程を単純にかつ取扱いを容易にする。
無機チタン化合物は、好ましくは無機チタン塩である。チタン塩の例は:四塩化チタン、硫酸チタニル、硫酸チタンおよびトリクロロチタンである。しかしながら、費用や入手しやすさの観点から、四塩化チタンおよび硫酸チタンが好ましい。ここで、使用されるチタン化合物の種類は1つの種類に限られず、少なくとも2つの種類が共に用いられ得る。
【0043】
チタン化合物の使用量は製造される単結晶MgTiO
3フレークの所望の量により適切に選択されるべきである。単結晶MgTiO
3フレークにおけるTi原子のモル数の使用されたチタン化合物のモル数に対する比(単結晶MgTiO
3フレークにおけるTi原子のモル数/チタン化合物におけるTi原子のモル数)として、それは通常少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.4およびより好ましくは少なくとも0.5である。さらにこの値は通常最大で0.9、好ましくは最大で0.95およびより好ましくは最大で1.0である。
【0044】
マグネシウム化合物として、水溶性マグネシウム化合物同様に好まれ、特に無機マグネシウム塩が好まれる。有用なマグネシウム塩の例は:塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび炭酸マグネシウムである。しかしながら、費用および入手しやすさの観点から、塩化マグネシウムが好ましい。ここで、用いられるマグネシウム化合物の種類は、1つに限られず、少なくとも2つの種類が共に用いられ得る。
【0045】
マグネシウム化合物の使用量は製造される所望の量の単結晶MgTiO
3フレークにより適切に選択されるべきである。単結晶MgTiO
3フレークにおけるMg原子のモル数の、使用されるマグネシウム化合物のMg原子のモル数に対する比率(単結晶MgTiO
3フレークにおけるMg原子のモル数/マグネシウム化合物におけるMg原子のモル数)として、それは通常少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.4、およびより好ましくは少なくとも0.5である。さらに、この値は通常最大0.9、好ましくは最大0.95およびより好ましくは最大1.0である。
【0046】
リン化合物として、リン酸、リン酸塩、縮合リン酸および縮合リン酸塩などのリン酸化合物が列記され得、いずれも水溶性である限り用いられ得る。それらの中で、費用や入手しやすさの観点から、リン酸三ナトリウム、五酸化二リン、リン酸、亜リン酸およびリン酸三カリウムが好ましい。リン酸三ナトリウムが特に好ましい。ここで用いられたリン化合物の種類は1つの種類に限定されず、少なくとも2つの種類が共に用いられ得る。
【0047】
リン化合物の使用量は単結晶MgTiO
3フレークの所望の形状(粒径、厚さおよびアスペクト比)により適切に選択されるべきである。リン化合物のモル数の使用されたチタン化合物におけるTi原子のモル数に対する比(リン化合物のモル数/チタン化合物におけるTi原子のモル数)として、それは通常少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1、およびより好ましくは少なくとも1.0である。さらに、この値は通常最大10であり、好ましくは最大7.0であり、より好ましくは最大5.0である。
【0048】
本製造方法において、高品質単結晶MgTiO
3は効率的に製造され得る。そのため、本発明のさらなる目的は、上記の方法により製造される単結晶MgTiO
3フレークである。
【0049】
本発明の単結晶MgTiO
3フレークは、今詳細に記載されるだろう。これらの特徴は開示される値に限られないが、それらは通常、以下に記載されるような形状、大きさおよび結晶構造を示す。
【0050】
単結晶MgTiO
3フレークの平均粒径は通常少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μmである。およびこの値は通常最大100μm、好ましくは最大90μmである。
【0051】
MgTiO
3フレークの平均粒径が上記の範囲内であればすぐに、高度な光沢を有する顔料を得ることが可能である。ここで、「平均粒径」はフレークの最大の長さまたは幅に対応する円の直径を表し、体積に基づく粒子の大きさの分布から得られる平均値を示す。
【0052】
フレークの厚さは通常少なくとも0.1μm、好ましくは少なくとも0.2μmである。およびこの値は通常最大0.5μm、好ましくは最大0.4μmである。厚さがこの範囲である限り、任意に干渉色との組み合わせで、フレークの実際の厚さに依存して、得られるMgTiO
3フレークの真珠光沢が起こり得る。
【0053】
フレークのアスペクト比は通常少なくとも20、好ましくは少なくとも40である。およびこの値は通常最大200、好ましくは最大100である。高いアスペクト比は添加され得るいずれのコーティング層においても得られるMgTiO
3フレークの良好な配向およびしたがって高度な光沢を導く。
【0054】
本発明によるMgTiO
3フレークの結晶構造は単一結晶でありゲイキー石型である。この結晶構造は、本発明の製造方法により、Mgドープされたチタン酸化物よりむしろ本物の混合酸化物の形成を証明する。
【0055】
本発明による製造方法を用いて、顔料として適切である単結晶MgTiO
3フレークは被覆されているか被覆されていないかのいずれでも、特に塗料、インク、コーティング組成物、プラスチックまたは化粧品のために製造され得る。したがって、塗料、インク、コーティング組成物、プラスチックまたは化粧品における顔料としての本単結晶MgTiO
3フレークの使用はまた、本発明の1つの目的である。さらに、本発明の単結晶MgTiO
3フレークは高い屈折率、良好な光沢、良好な誘電特性ならびに異方性熱膨張を示すので、それらはまた、ほんの2〜3例を挙げると、光触媒、色素増感太陽電池のためのホスト材料、UV吸収剤および撥水剤において用いられ得る。