(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
従来の発泡剤としてCCl3F(CFC−11)のようなCFC(シクロフルオロカーボン系)が、硬質及び軟質ポリウレタン及びイソシアネート−基礎発泡体の製造に基準発泡剤として使用されてきた。しかし、前記物質の大気中への放出による成層圏でのオゾン層損傷によって使用が禁止された。そこで、CHCl
2CF
3(HCFC−123)、CH
2ClCHClF(HCFC−141b)のような大気中で比較的短い寿命を有する水素含有クロロフルオロアルカン(HCFCs)が代替発泡剤として提案された。しかし、前記HCFCs化合物もまた塩素を一部含有するため、比較的高い地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)とオゾン破壊係数(ODP:Ozone Depletion Potential)を有する。
【0005】
そこで、HCFCs化合物を代替し得る発泡剤として、非−塩素化、部分−水素化されたフルオロ炭素(HFCs)が提案されたが、HFCsは、相対的に高い固有熱伝導性、すなわち、低い絶縁性の問題があるため、絶縁性が改善されたCF
3CH
2CF
2H(HFC−245fa)などのHFC系発泡剤が提案された。しかし、HFC−245faを含め、最近開発されたHFC−134a、HFC−365mfcなどのHFC系発泡剤は、依然として所望の地球温暖化係数よりは高い地球温暖化係数を示すという欠点がある。
【0006】
その他に、イソ−及びノルマル−ペンタン、あるいはシクロペンタンのような炭化水素発泡剤の場合、非常に低い地球温暖化係数を示すが、熱絶縁効率が、一例として、HFC−245fa発泡剤による熱絶縁効率に比べて低いだけでなく、可燃性の特性を有する。
【0007】
前記のような発泡剤は、ウレタン発泡層を提供するようにポリウレタンの発泡時に使用され、このように製造されたポリウレタン発泡体は、冷蔵庫部品の素材において外部鉄板と内部樹脂成形物との間に断熱材として使用することができる。
【0008】
前記内部樹脂成形物としては、加工性、成形性、耐衝撃性、強度及び光沢性などに優れることで各種電機電子及び雑貨部品に広く適用されるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、ABS樹脂という)を使用することができ、製品の製造及び使用中にクラックなどの不良の発生を抑制するためには、上述した発泡剤によって変質しない優れた耐化学性を備えなければならない。
【0009】
そこで、ABS樹脂の耐化学性を改善するように、ABS樹脂に含まれたアクリロニトリルの含量を高めたり、樹脂の分子量を高めたり、ブタジエンゴムの含量を高めたり、ゴムの平均粒径が大きい製品を使用したり、アクリレート系ゴムを使用するなどの様々な方式が試みられたが、環境に優しい特性を有し、発泡効率が改善された新たな発泡剤の開発に伴い、冷蔵庫内箱用ABS樹脂もまた同等以上の衝撃強度、光沢度及び真空成形性などを維持しながら、より厳格なレベルの耐化学性を有する熱可塑性樹脂組成物の提供には困難がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、発泡剤としてオゾン破壊係数(ODP)が0である発泡剤で製造された発泡シートに対して、内箱の基材に適用時の成分として、ジエン系ゴム以外にアクリル系ゴムを混合使用し、特定のポリエステル系エラストマーを含む場合、前記発泡剤が要求するより厳格なレベルの耐化学性を達成しながら、同等レベルの衝撃強度、光沢度及び真空成形性を提供することを確認し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明すると、次の通りである。
【0020】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ジエン系グラフト共重合体0超〜35重量%、アクリル系グラフト共重合体0超〜30重量%、及びシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体35〜85重量%を含む基本樹脂100重量部に、溶融指数が0.1〜10g/10min(230℃、2.16kg)であるポリエステル系エラストマーを1超重量部含むことを特徴とする。
【0021】
前記ジエン系グラフト共重合体は、一例として、ジエン系ゴム質重合体30〜70重量%と;芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計30〜70重量%と;を含んでグラフト重合された共重合体であってもよく、前記範囲内で、耐化学性に影響を及ぼさないと共に、衝撃強度、光沢度及び真空成形性が改善された効果を提供することができる。
【0022】
前記ジエン系グラフト共重合体は、他の例として、ジエン系ゴム質重合体35〜65重量%と;芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計35〜65重量%と;を含んでグラフト重合された共重合体であってもよい。
【0023】
前記芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物(以下、化合物という)のうちビニルシアン化合物は、化合物の合計100重量%に対して、一例として、20〜40重量%、あるいは25〜35重量%含まれてもよく、この範囲内で、衝撃強度、光沢度、真空成形性及び耐化学性を改善する効果を提供することができる。
【0024】
本記載の芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0025】
本記載のビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0026】
前記ジエン系ゴム質重合体は、一例として、平均粒径が0.2〜0.4μmであってもよく、好ましくは0.25〜0.35μmであることが、衝撃強度、光沢度、真空成形性及び耐化学性の改善に効果的である。
【0027】
前記ジエン系ゴム質重合体は、一例として、共役ジエン化合物を重合して形成されたものであって、前記共役ジエン化合物は、一例として、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及びイソプレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0028】
前記ジエン系グラフト共重合体は、一例として、基本樹脂100重量%のうち5〜35重量%、あるいは10〜35重量%であってもよく、この範囲内で、耐化学性に影響を及ぼさないと共に、衝撃強度、光沢度及び真空成形性が改善された効果を提供することができる。
【0029】
前記アクリル系グラフト共重合体は、一例として、アクリル系ゴム質重合体30〜70重量%と;前記芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計30〜70重量%と;を含んでグラフト重合された共重合体であってもよく、前記範囲内で、衝撃強度、光沢、及び真空成形性に影響を及ぼさないと共に、耐化学性が改善された効果を提供することができる。
【0030】
前記アクリル系グラフト共重合体は、他の例として、アクリル系ゴム質重合体35〜65重量%と;前記芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計35〜65重量%と;を含んでグラフト重合された共重合体であることが好ましい。
【0031】
前記芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物(以下、化合物という)のうちビニルシアン化合物は、化合物の合計100重量%に対して、一例として、20〜40重量%、または25〜35重量%含まれてもよく、この範囲内で、衝撃強度、光沢度、真空成形性及び耐化学性を改善する効果を提供することができる。
【0032】
前記アクリル系ゴム質重合体は、一例として、平均粒径が0.3〜0.6μmであってもよく、好ましくは0.35〜0.55μmであることが、衝撃強度、光沢度、真空成形性及び耐化学性の改善に効果的である。
【0033】
前記アクリル系ゴム質重合体は、一例として、アクリレート単量体を重合して形成されたものであって、前記アクリレート単量体は、一例として、炭素数2〜8のアルキルアクリレートであり、具体例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、n−ブチルアクリレート又はn−ブチルメタクリレートである。
【0034】
前記アクリル系グラフト共重合体は、一例として、基本樹脂100重量%のうち5〜30重量%、あるいは5〜20重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、真空成形性及び光沢に影響を及ぼさないと共に、耐化学性が改善された効果を提供することができる。
【0035】
前記シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体は、一例として、芳香族ビニル化合物55〜95重量%とビニルシアン化合物5〜45重量%を含んで重合された共重合体であってもよく、この範囲内で、マトリックス樹脂として製品の加工に必要な成形性、及び製品への適用に必要な耐化学性及び剛性を改善する役割を提供することができる。
【0036】
前記シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体は、他の例として、芳香族ビニル化合物60〜90重量%とビニルシアン化合物10〜40重量%を含んで重合された共重合体であってもよい。
【0037】
前記シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体は、一例として、塊状重合体、乳化重合体、あるいは懸濁重合体であってもよい。
【0038】
前記シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル化合物共重合体は、一例として、基本樹脂100重量%のうち35〜85重量%、あるいは38〜80重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度及び光沢に影響を及ぼさないと共に、耐化学性が改善された効果を提供することができる。
【0039】
前記ポリエステル系エラストマーは、これに限定するものではないが、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体、脂肪族ジオール及びポリアルキレンオキシドから溶融重合で製造された樹脂を固相重合させたものであって、ショア(Shore)硬度が35〜55D、あるいは40〜50Dであり、溶融指数(MI)が、ASTM D1238に準拠して、230℃で、荷重が2.16kgであるときに10分間測定される重量をgで測定して0.1g/10min〜10g/10min、あるいは1g/10min〜10g/10minであるものであって、前記範囲内で、押出加工及び真空成形性に影響を及ぼさないと共に、耐化学性を改善させる効果がある。
【0040】
前記芳香族ジカルボン酸は、一例として、テレフタル酸(Terephthalic acid)、イソフタル酸(Isophthalic acid)、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0041】
前記芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体は、一例として、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレート、及びジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートなどからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ジメチルテレフタレートである。
【0042】
前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、一例として、前記ポリエステル系エラストマーの総重量に対して25〜65重量%含まれてもよく、好ましくは35〜65重量%含まれ、この範囲内で、反応バランスに優れ、反応が円滑に行われる。
【0043】
前記脂肪族ジオールは、分子量が300g/mol以下であるジオールであってもよく、具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールなどからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは1,4−ブタンジオールであってもよく、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーの総重量に対して20〜40重量%含まれてもよく、好ましくは2〜35重量%含まれ、この範囲内で、反応バランスに優れ、反応が円滑に行われる。
【0044】
前記ポリアルキレンオキシドは、一例として、脂肪族ポリエーテルで軟質ソフトセグメントを構成するようになり、具体例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加重合体、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ポリテトラメチレングリコールである。
【0045】
前記ポリアルキレンオキシドは、一例として、前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーの総重量に対して10〜50重量%含まれてもよく、好ましくは15〜45重量%含まれ、10重量%未満である場合、製造される熱可塑性ポリエステル系エラストマーの硬度が高すぎるため、柔軟性に問題があり、50重量%を超える場合、製造される熱可塑性ポリエステル系エラストマーの耐熱性及び相溶性などに問題がある。
【0046】
前記ポリテトラメチレングリコールは、数平均分子量が600〜3,000g/molであることが好ましく、より好ましくは約2,000g/molであり、この範囲内で、重合共重合体の安定した重合反応性及び物性を得るという効果がある。
【0047】
参考に、前記エラストマーの硬度は、一般的にショア硬度(Shore D)で示し、前記ポリアルキレンオキシドの含量によって決定され得る。
【0048】
前記エラストマーは、重合製造時に分岐剤などが使用されてもよく、これを使用する場合、製造されるエラストマーの溶融粘度及び溶融張力が高くなり得る。
【0049】
前記分岐剤は、一例として、グリセロール、ペンタエリスリトール(Pentaerythritol)、無水トリメリット酸(Trimellitic Anhydride)、トリメリット酸(Trimellitic Acid)、トリメチロールプロパン(Trimethylol Propane)及びネオペンチルグリコール(Neopentyl Glycol)などからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは無水トリメリット酸であり、一例として、熱可塑性ポリエステル系エラストマーの総重量に対して0.05〜0.1重量%含まれてもよく、0.05重量%未満である場合、製造されるエラストマーの溶融粘度の上昇を期待しにくく、0.1重量%を超える場合、製造されるエラストマーの重合度が過度に上昇してしまい、溶融重合反応の制御及び生成された樹脂の吐出が難しくなり得る。
【0050】
前記溶融重合は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーの製造時に使用できる通常の溶融重合であれば、特に制限されず、具体例として、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びポリアルキレンオキシドからなる出発物質に、触媒であるチタンブトキシドを投入した後、140〜215℃で約120分間エステル交換反応を行ってBHBT(Bis(4−Hydroxy Butyl)Terephthalate)オリゴマーを製造し、この製造されたオリゴマーに、再び触媒であるチタンブトキシドを投入した後、215〜245℃で、760torrから0.3torrまで段階的に減圧しながら、ASTM D1238による溶融指数(MFI)が20g/10min(230℃、2.16kg)になる時点まで(約120分間反応)縮重合反応を行った後、窒素圧で反応器内で生成物をストランド状に吐出させ、これをペレット化することで、最終的に熱可塑性ポリエステルエラストマーをペレット状に製造する。
【0051】
前記固相重合は、前記溶融重合で製造された熱可塑性ポリエステル系エラストマーを固相重合反応器に投入した後、約140〜200℃で不活性気流下に高真空で漸進的に減圧し、ASTM D1238による溶融指数(MFI)が15g/10min(230℃、2.16kg)以下、好ましくは10g/10min(230℃、2.16kg)以下になるまで10〜24時間重合反応させることであり、高粘度化された熱可塑性ポリエステル系エラストマーを製造することができる。
【0052】
前記固相重合反応器は、回転可能な高真空ポンプが連結されたベッセル(vessel)真空乾燥機などであってもよく、前記不活性気流は窒素気流などであってもよい。
【0053】
前記ポリアルキレンオキシドは、一例として、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールであり、分子量が600〜3,000g/molであること、あるいは末端がエチレンオキシドでキャッピング(capping)されたポリプロピレングリコールであり、分子量が2,000〜3,000g/molであることが好ましく、この範囲内で、適切な重合反応性及び物性を期待することができる。
【0054】
本記載で使用する前記ポリエステル系エラストマーは、一例として、市販製品の中でKEYFLEX BT 2140D(LG化学社製、DSC融点198℃、硬度Shore A 95、Shore D 43)などを使用することができる。
【0055】
前記ポリエステル系エラストマーは、一例として、前記基本樹脂100重量部に対して、1超重量部、1超〜20重量部、1〜10重量部、あるいは3〜10重量部含まれてもよく、この範囲内で、発泡剤、特に環境に優しい発泡剤に対して改善された耐化学性を提供すると共に、表面光沢、衝撃強度及び真空成形性を維持する効果を提供することができる。
【0056】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、無機物添加剤、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、相溶化剤、滑剤、静電気防止剤、着色剤、顔料、染料、難燃剤、難燃補助剤、滴下防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤及び紫外線遮断剤からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0057】
本記載の前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ポリウレタン発泡シートの基材として使用できるもので、ここで、ポリウレタン発泡シートは、一例として、炭素数2〜6のフルオロアルケン化合物を含み、地球温暖化係数(GWP)が7未満であり、オゾン破壊係数(ODP)が0である発泡剤が混合あるいは単独使用されて発泡されたシートであってもよい。ここで、混合発泡剤としては、従来使用されていた141b、245fa、シクロペンテンなどであってもよい。
【0058】
前記発泡剤は、他の例として、炭素数3〜5のフルオロアルケン化合物を含むものであってもよく、下記化学式1を有する化合物を含む発泡剤であることが好ましい。
【0060】
(上記式中、Xは、C
1、C
2、C
3、C
4又はC
5不飽和、置換又は非置換ラジカルであり、Rは、それぞれ独立に、Cl、F、Br又はHであり、zは1〜3である。)
【0061】
一例として、前記化学式1を有する化合物は、最小4個のハロゲン置換体を有し、その中で最小3個はFであってもよい。
【0062】
他の例として、前記化学式1を有する化合物は、3〜5個のフルオロ置換体を有し、他の置換体は存在または存在しないプロペン、ブテン、ペンテンまたはヘキセンであることが好ましい。
【0063】
他の例として、前記プロペンは、テトラフルオロプロペンあるいはフルオロクロロプロペンであることが好ましく、CF
3CH=CHCl(HFO−1233zd)あるいはCF
3CH=CHF(HFO−1234ze)であることがより好ましい。
【0064】
前記HFO−1233zd、HFO−1234zeという用語は、cisあるいはtransの形態と関係なく、それぞれ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを指すものとして使用される。したがって、HFO−1233zdという用語は、cis HFO−1233zd、trans HFO−1233zd及びこれらの全ての組み合わせを指し、HFO−1234zeという用語は、cis HFO−1234ze、trans HFO−1234ze及びこれらの全ての組み合わせを指す。
【0065】
前記HFO−1233zdは、一例として、地球温暖化係数(GWP)が7未満であり、オゾン破壊係数(ODP)が約0であり、大気中寿命が約26であり、沸点が約19℃である液状発泡剤であり、前記HFO−1234zeは、地球温暖化係数(GWP)が6未満であり、オゾン破壊係数(ODP)が0であり、大気中寿命が約14日であり、沸点が約−19℃である気体状発泡剤である。
【0066】
他の例として、前記ブテンは、フルオロクロロブテンであることが好ましい。
【0067】
本記載の発泡剤は、必要に応じて、炭素数1〜4であるHFCs発泡剤をさらに含むことができる。前記HFCs発泡剤は、一例として、ジフルオロメタン(HFC−32)、フルオロエタン(HFC−161)、ジフルオロエタン(HFC−152)、トリフルオロエタン(HFC−143)、テトラフルオロエタン(HFC−134)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ペンタフルオロプロパン(HFC−245)、ヘキサフルオロプロパン(HFC−236)、ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、ペンタフルオロブタン(HFC−365)、ヘキサフルオロブタン(HFC−356)及びその異性質体からなる群から1つ以上選択されてもよい。
【0068】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、炭素数2〜6のフルオロアルケン化合物を含み、地球温暖化係数(GWP)が1であり、オゾン破壊係数(ODP)が約0である発泡剤に浸漬し、−40℃で20hr経過後に観察した表面クラックの発生率がゼロ(0%)であり得る。
【0069】
本記載の前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、アイゾット衝撃強度(ASTM D256)が20超kgf.cm/cm、または20超〜40以下kgf.cm/cmであってもよい。
【0070】
本記載の前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、真空成形性の指標となる高温引張強度(150℃での測定値)が4.5超kgf/cm
2、または4.5超〜5.0以下kgf/cm
2であってもよい。
【0071】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、原料成分をミキサーあるいはスーパーミキサーで一次混合した後、二軸押出機、一軸押出機、ロールミル、またはニーダーなどの様々な配合加工機器のうち1つに投入するか、または原料成分を投入比率に合わせて定量で二軸押出機、ニーダーなどの配合機器のうち1つに投入し、200〜300℃の温度区間で溶融混練して、所望の形態の押出成形製品を提供したり、ペレットを収得し、このペレットを再び押出成形機器に投入して押出製品を提供してもよい。必要に応じて、前記ペレットを除湿乾燥あるいは熱風乾燥した後、射出加工し、射出成形品として提供することができる。
【0072】
本発明によれば、上述した熱可塑性樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【0073】
前記成形品は、押出シートであってもよく、一例として、冷蔵庫内箱用押出シート、冷蔵庫ドア用シート、一般のドアなど、シート状に加工される様々な分野で有用に使用することができる。
【0074】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0077】
下記の表1に示した成分を、その記載された含量でスーパーミキサーに投入し、二軸押出機を用いて、230℃下で溶融混練した後、押出加工してペレットを収得し、物性テスト試片として使用した。
【0079】
(A)
ブタジエン系グラフト共重合体:平均粒径0.2〜0.4μm(LG化学社製DP270)
【0080】
(B)
アクリル系グラフト共重合体:平均粒径0.3〜0.6μm(LG化学社製SA927)
【0081】
(C)
シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(SAN樹脂):97HC(LG化学社製)
【0082】
(D)
ポリエステル系エラストマー(Thermoplastic Polyester elastomer):
【0083】
(D1)KEYFLEX BT 2140D(LG化学社製)、MI5g/10min(230℃、2.16kg)、硬度Shore A 95、Shore D 43
【0084】
(D2)KEYFLEX BT 1045D(LG化学社製)、MI25g/10min(230℃、2.16kg)、硬度Shore A 95、Shore D 42
【0085】
前記平均粒径は、ダイナミックレーザーライトスキャタリング方法でNicomp370HPLを用いて測定した。
【0087】
前記実施例1〜3及び比較例1〜4で収得した試片の物性を、下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0090】
それぞれ収得した試片を射出を通じて測定用試片を作製した後、0.7%ストレーンの屈曲ジグに射出試片を掛けて、Honeywel社の発泡剤HFO−1233zd(製品名Solstice LBA)溶液に浸漬し、−40℃下で20hr経過後に表面クラックの有無を目視観察した。
【0092】
それぞれ収得した試片を射出を通じて測定用試片(厚さ1/4")を作製した後、ASTM D256方法によって測定した。
【0094】
それぞれ収得した試片を、Tダイが連結された単軸押出機でシート状に230℃で成形して試片を作製した後、ASTM D2457方法によって60°の角度で測定した。
【0096】
ポリエステル系エラストマーの溶融指数は、ASTM D1238に準拠して、230℃で2.16kgの荷重で測定し、10分間溶融されて出た重合体の重量(g)で示した。
【0097】
<高温引張強度>
それぞれ収得した試片を、射出を通じて100mm×100mm×3.2mmの大きさで射出した後に、この射出試片を全体長さ51mm、全体幅15mm、測定部位の幅6.5mmになるように試片をカッティングして準備した。準備した試片の測定条件は、温度150℃で15分間維持した後、200mm/minの速度で高温引張強度を測定した。このとき、引張強度が高いと、真空成形性に優れることを示す。
【0098】
【表1】
**:*3種の合計100重量部に基づいた重量部
【0099】
前記表1からわかるように、本発明によって製造された実施例1〜3の場合、熱可塑性樹脂組成物から収得された成形品は、冷蔵庫の内箱の用途において同等レベルの衝撃強度、光沢度及び真空成形性を提供しながらも、環境に優しい発泡剤に対してより高いレベルの耐化学性を提供する結果が確認できた。
【0100】
反面、比較例1〜4の場合、光沢度、衝撃強度及び真空成形性が劣悪であることが確認できた。
【0101】
追加実験例1
前記実施例1において、(D)ポリエステルエラストマーを20重量部使用した以外は、実施例1と同様の工程を繰り返した。
【0102】
耐化学性−変形ESCR測定の結果、No crackで表面クラックの発生率が0%であり、表面光沢(60度)は75であり、アイゾット衝撃強度は33kgf.cm/cmであり、高温引張強度は4.9kgf/cm
2であって、実施例1〜3と比較して表面光沢が不良であることを確認した。
【0103】
これから、本発明者らは、発泡剤としてオゾン破壊係数(ODP)が0である発泡剤で製造された発泡シートに対して、内箱の基材に適用時の成分として、ジエン系ゴム以外にアクリル系ゴムを混合使用し、特定のポリエステル系エラストマーを含む場合、前記発泡剤が要求するより厳格なレベルの耐化学性を達成しながら、同等レベルの衝撃強度、光沢度及び真空成形性を提供する熱可塑性樹脂組成物を具現できることが確認できた。